主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告株式会社芦田に対し,金1億0526万7160円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告共栄プレス工業株式会社に対し,金4199万5363円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告なにわ金属株式会社に対し,金4199万5363円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告有限会社猪尻鉄工所に対し,金800万円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告株式会社桜製作所に対し,金4452万4150円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は,原告株式会社辻本金型製作所に対し,金1010円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告有限会社コマキに対し,金702万8494円及びこれに対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告は,原告株式会社セラに対し,金995万9372円及びこれに対する対する平成6年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 訴訟物等本件は,大阪国際空港(以下「空港」という。)の南西に位置するA工業団地内に工場,事業所を有していた原告らが,空港の排水施設等の設置管理に瑕疵があったことから,平成6年9月6日深夜から7日未明にかけての集中豪雨により,空港からA工業団地に大量の雨水が流入し,原告ら工場 に工場,事業所を有していた原告らが,空港の排水施設等の設置管理に瑕疵があったことから,平成6年9月6日深夜から7日未明にかけての集中豪雨により,空港からA工業団地に大量の雨水が流入し,原告ら工場,事業者が浸水して甚大な損害を被ったなどとして,空港を設置管理する被告に対し,国賠法2条1項に基づき,その損害の賠償を請求した事案である。 2 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実。証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。)(1) 原告ら原告らは,兵庫県が昭和50年ころに造成した同県尼崎市に位置する通称「A工業団地」に工場,事業所を有するものである。 A工業団地とその周辺の地勢は,別紙図面のとおりである。なお,A工業団地は,空港,空港川,幹線排水路,猪名川に囲まれた地域(以下「B地区」という。)に存している。(乙19)(2) 空港別紙図面のとおり,空港は,大阪府豊中市,池田市,兵庫県伊丹市の境界の北西方向から南東方向へ緩やかに傾斜する地形に位置し,さらに,空港敷地は,北東から南西方向へも緩やかに傾斜している。空港の敷地面積は約317万平方メートルであり,空港の西方には一部を空港の敷地に接して猪名川が流れている。(乙19)空港の北東の位置には空港ターミナルがあり,南東側から北西側には2本の滑走路が走っている。空港は,第一種空港として運輸大臣が設置管理し,空港内のスクリーンは空港長が管理し,水路は空港長が事実上管理している。空港では,昭和39年に滑走路の拡幅工事が行われた。 (3) 集中豪雨による水害の発生平成6年9月6日午後9時ころから翌7日午前3時ころにかけて,空港北部から池田市南部を中心に集中豪雨があり(以下「本件集中豪雨」という。),A工業団地一帯が浸水する被害があった(以下「本件水害」という。) 年9月6日午後9時ころから翌7日午前3時ころにかけて,空港北部から池田市南部を中心に集中豪雨があり(以下「本件集中豪雨」という。),A工業団地一帯が浸水する被害があった(以下「本件水害」という。)。 原告らの工場・事業所の床面の標高は,株式会社芦田の第2工場が7・47メートル,同本社が7・02メートル,共栄プレス工業株式会社が6・49メートル,なにわ金属株式会社が6・50メートル,有限会社猪尻鉄工所が7・39メートル,株式会社桜製作所が7・17メートル,株式会社辻本金型製作所が7・18メートル,有限会社コマキが6・88メートル,株式会社セラが7・63メートルであり,浸水面の標高は約7.7から7.8メートルである。(甲20の1)(4) 空港の排水施設空港には,空港内排水施設として下水道網が整備されており,また,空港内のグリーンベルト(滑走路,誘導路,エプロン等の舗装面以外の敷地)は,周囲よりも低くなっており,雨水を貯留できる機能を有している。(乙14,38)空港周辺の排水路としては,幹線排水路と空港川がある。 幹線排水路は,空港のほぼ北東縁に沿って南下した後,暗渠部分の入口にある格子状の鉄製スクリーン(以下「7号スクリーン」という。)を通過して滑走路下の暗渠を通ると,同様の構造を有する6号スクリーンを通過する直前に開水路となり,猪名川に至る水路である。幹線排水路の北側部分には暗渠が続き,南側部分には暗渠と開水路が交互に続いている。空港川は,空港の北縁を西行した後,ほぼ空港の南西縁に沿って南下して猪名川に至る。(乙19)(5) 本件水害時の7号スクリーン平成6年9月6日から7日にかけて,7号スクリーンは幹線排水路底面まで降ろされていたが,7日午前2時半ころに上げられた。 3 争点(1) 本件水害が空港からの大量の雨水の流出によ の7号スクリーン平成6年9月6日から7日にかけて,7号スクリーンは幹線排水路底面まで降ろされていたが,7日午前2時半ころに上げられた。 3 争点(1) 本件水害が空港からの大量の雨水の流出により発生したものであるか否か。 (2) 下記の点についての営造物の設置管理の瑕疵及びこれらと原告らの被害との因果関係の有無ア空港排水施設の設置にあたり既往最大雨量を基準にしなかった点。 イ空港川と幹線排水路の流域設定及び空港とB地区との境界に止水壁や開水路を設置しなかった点。 ウ本件集中豪雨の際に7号スクリーンを引き上げなかった点。 (3) 原告らの損害額 4 証拠状況(1) 本件水害の原因等につき,専門家による調査・解析として,原告らからは,国土問題研究会A工業団地水害調査団作成の調査報告書(甲1),補充書(甲12),上記調査団の一員として上記報告書及び補充書の作成に参加したC(以下「C」という。)作成の計算書(甲19)が提出され(以下,これらの書証をまとめて「調査報告書等」という。),被告からは,パシフィックコンサルタンツ株式会社作成の鑑定書(乙19,以下「鑑定書」という。管理技術者はD(以下「D」という。)。)が提出されている。 (2) 調査報告書等の内容調査報告書等の内容は以下のとおりである。 本件集中豪雨時の約3時間におけるB地区の総降水量から,地中への浸透量,鶴田ポンプ場から猪名川への排水量,B地区内にある原田下水処理場および清掃工場(以下,まとめて「清掃工場等」という。)の範囲に降った雨水の幹線排水路又は空港川への排水量をそれぞれ引いた,B地区に滞留する雨水(以下「内水」という。)の量は3万1361立方メートルであり,浸水面の平均標高は6. 649メートルとなるので,内水の影響だけであれば,原告らの工場・事業所の浸水はなか 引いた,B地区に滞留する雨水(以下「内水」という。)の量は3万1361立方メートルであり,浸水面の平均標高は6. 649メートルとなるので,内水の影響だけであれば,原告らの工場・事業所の浸水はなかったか,あるいは極めて軽微であった。本件集中豪雨時の約3時間における空港からB地区への雨水の流入量は,約30万立方メートルであった。7号スクリーンが閉鎖されていたために幹線排水路から溢れた雨水が,空港に流入し,その大半が空港敷地を横切って流れ,空港からB地区へと流入した。 原告らは,調査報告書等を重要な根拠として,内水のみでは本件水害による原告らの浸水被害は発生せず,原告らの浸水被害は空港からの雨水の流入が原因であり,その雨水の大半は,7号スクリーンが閉鎖されていたために生じた溢水である旨主張している。 (3) 鑑定書の内容鑑定書の内容は以下のとおりである。 本件集中豪雨時における降雨量は,上池田,池田下水処理場,桜井谷ポンプ場では1,2,3時間雨量とも1000年確率を超えるものであり,B地区近傍でも,大阪航空測候所で1,2,3時間雨量とも1000年確率を超え,原田下水処理場で1時間雨量が60年確率,2,3時間雨量が100年確率を超えるものであった。空港の排水処理施設及び空港川,幹線排水路は10年確率降雨を想定して作られており,本件集中豪雨による雨水の流出量は,幹線排水路の最下流端で評価した場合,その流下能力の2.4倍であった。空港のグリーンベルト内の低地は,ポンディングとして機能しており,約6万1902立方メートルの雨水貯留が可能である。空港には,強烈な降雨があった上に,上流部から大量の雨水が流入し,その量は幹線排水路の排水能力及び空港の貯留能力を大きく超えていたため,その一部はより低地部に移動し,B地区に越流した。空港からB地区への は,強烈な降雨があった上に,上流部から大量の雨水が流入し,その量は幹線排水路の排水能力及び空港の貯留能力を大きく超えていたため,その一部はより低地部に移動し,B地区に越流した。空港からB地区への雨水の流入は,7号スクリーン全閉の状態と全開の状態とで大きな差はなく,約21.9ないし24.7万立方メートルであり,B地区の湛水深の差異も,10センチメートル未満にすぎない。 被告は,鑑定書を重要な根拠として,原告らの調査報告書には信用性がなく,B地区の浸水状況に7号スクリーンの及ぼす影響はなかった旨主張している。 5 当事者の主張(1) 争点(1)(本件水害が空港からの大量の雨水の流入により発生したものであるか否か)について(原告ら)ア調査報告書等に基づく主張(ア) 内水による影響が極めて軽微であったことについて① B地区の降水量B地区の降水量については,大阪航空測候所の,約3時間で207ミリメートルとの観測結果とほぼ同様に考えてよい。そして,内水の影響で検討対象となる地域については,鶴田ポンプ場からの排水対象地域は56.9万平方メートルであり,その内空港川右岸から左岸には地表を伝わって越流はなかったので,空港川右岸の34万平方メートルは検討地域から除外すべきである。一方,これに下水処理場,清掃工場の面積21. 75万平方メートルを加える必要があるから,内水の影響の前提となる検討対象地域は約44.65万平方メートルとなる。 よって,検討対象地域の降雨量は,約9万2425立方メートル(207ミリメートル×44.65万平方メートル)となる。 ② 雨水の地中への浸透量乙第33号証の尼崎全域の公共下水道の流出係数表(公共下水道から流出される当該地域の雨量の割合)によれば,B地区の流出係数は,尼崎全域で最も低い0.54とされている。こ ② 雨水の地中への浸透量乙第33号証の尼崎全域の公共下水道の流出係数表(公共下水道から流出される当該地域の雨量の割合)によれば,B地区の流出係数は,尼崎全域で最も低い0.54とされている。このことが意味するのは,B地区が尼崎市域内で地中への浸透量が相対的に大きい地域であるということである。そして,尼崎市域の流出係数の最大が0.65であり,B地区との差が0.11であること,流出係数の大きい0.65の地域でも通常10パーセント地中への浸透量が見込めること,さらにB地区内には地中への浸透量が大きくなる田んぼ等が広範に存在していることなどから,B地区内の地中への浸透量は約20パーセントと見ることが妥当である。 したがって,雨水の地中への浸透量は,約3時間で約1万8485立方メートル(9万2425立方メートル×0.2)となる。 ③ 鶴田ポンプ場からの排水量排水対象地域(56.9万平方メートル)の内,空港側右岸(34万平方メートル)から左岸のB地区(22.9万平方メートル)へは,ポンプ場の排水系統以外では雨水の流入はなかったので,空港川左岸のB地区と右岸地区は分けて考える必要がある。 鶴田ポンプの排水処理能力は,5.3立方メートル毎秒であったので,鶴田ポンプ場から排水されたB地区(空港川左岸)の雨水の量は,約3時間で約2万3004立方メートル(5.3×22.9÷56.9×3600×3)となる。 ④ 清掃工場等の排水量乙第33号証(平成元年(改訂版)尼崎市下水道管渠流量計算基準抜粋)によれば,B地区の下水道の流出係数は,0.54であり,これは時間雨量50ミリメートルの内54パーセントを下水道で流出させるということである。したがって,その量は,時間雨量27ミリメートル(50×0.54)に対応する。さらに,この数値は,10パーセ ,これは時間雨量50ミリメートルの内54パーセントを下水道で流出させるということである。したがって,その量は,時間雨量27ミリメートル(50×0.54)に対応する。さらに,この数値は,10パーセント程度の安全率を加味しているのが通常であり,したがって,実際の下水道からの流出量は時間雨量30ミリメートルと見るのが妥当である。 以上によれば,清掃工場等の下水道からの排出量は,約1万9575立方メートル(30ミリメートル÷1000×3×21.75×10000)となる。 ⑤ 小括以上のデータから内水量を計算すれば,3万1361立方メートル(9万2425-1万8485-2万3004-1万9575)となる。 そして,この内水によるB地区の湛水深を甲第1号証の図5-2をもとに計算すれば,同図面で標高が6.4メートルより低い地域(太い破線で囲まれた地域)の面積は約6万9800平方メートルであり,仮に,内水3万1361立方メートルがこの地域に滞留されると仮定すれば,平均的な浸水深は44.93センチメートル(3万1361÷69800×100)となる。この地域の平均標高は,約6.2メートルであると考えられるので,浸水面の平均標高は,約6.649メートルとなる。さらに,実際には標高6.4メートルよりも高い地域にも窪地が存在し,少なくともそうした窪地には貯留されることなどを考慮すれば,実際には,平均浸水面は前述の標高約6.649メートルよりも低くなると思われる。 そうであれば,仮に,空港からの雨水の流入がなかった場合のB地区内の湛水深,すなわち内水による影響は,大きく見ても24.9センチメートル(6.649メートル-6.4メートル)である。 そして,この湛水深と,原告らの工場,事業所の標高を照らし合わせれば,原告なにわ金属株式会社と原告共栄 る影響は,大きく見ても24.9センチメートル(6.649メートル-6.4メートル)である。 そして,この湛水深と,原告らの工場,事業所の標高を照らし合わせれば,原告なにわ金属株式会社と原告共栄プレス工業株式会社は,床面の標高が6.649メートルよりも低いので,内水による一定の影響があったと考えられるが,それでも内水の影響はわずか約16センチメートルである。一方,それ以外の工場,事業所はいずれも6.649メートルより高いので,内水によっては全く浸水しなかったのである。 (イ) 空港からのB地区への大量の雨水の流入があったことについて① 空港からの流水の痕跡国土問題研究会が,水害発生から1か月半後の平成6年10月22日に現地調査を行ったところ,空港とB地区の境界に設置されている螺旋状の有刺鉄線には,長さ約280メートルにわたって雨水流入の痕跡が存在し,その高さは,一番高い所で20から30センチメートルであった。したがって,この痕跡を参考にして空港からB地区への雨水の流入量を概算することができる。 ② 流入量の概算螺旋状の有刺鉄線の痕跡で最も高いのは,20から30センチメートルであるから,平均水深を控えめに10センチメートルと見ることができるのであり,そうであれば,空港からの流入量は,毎秒27.7立方メートルとなる。この流入量は,鶴田ポンプ場の排水能力の実に5.2倍もの量である。 ③ B地区への雨水の流入時間空港からB地区への雨水の流入時間は,現地の住民が目撃した状況(甲18),豪雨の状況等から考えれば,午前0時から3時頃であったと考えられる。 すなわち,B字甲乙番地丙において三研設備有限会社を経営し,同社の事務所建物の3階に居住していたEは,午前0時30分ころに火災報知器の音が鳴り出し,従業員から起こされて階下の様子を 考えられる。 すなわち,B字甲乙番地丙において三研設備有限会社を経営し,同社の事務所建物の3階に居住していたEは,午前0時30分ころに火災報知器の音が鳴り出し,従業員から起こされて階下の様子を見に行ったが,そのときには既に表の道路も約50センチメートルの水深となっており,水は濁流となって波を打って空港方面から流れてきた,午前3時ころには少し水が引いたと述べている。 こうした当日の目撃証言によれば,雨水は午前0時ころから3時ころまでの3時間にわたって空港からB地区に流入したと見ることは十分に合理性がある。 ④ 空港からB地区への流入量以上によれば,空港からB地区への雨水の流入量は,概算で約30万立方メートルであり,内水量約3万1361立方メートルの9.44倍にもなる。 (ウ) まとめ以上より,内水のみでは本件水害による原告らの浸水被害は発生せず,原告らの浸水被害は空港からの雨水の流入が原因であることが明らかである。(以上甲1,12,19)イ調査報告書等の信用性(ア) 変遷について被告は,調査報告書等の内容が節操なく変遷していると批判する。 しかし,調査報告書等の変遷は,新たな事実に基づき進展したものであって,十分な理由がある。 (イ) 基礎データや資料について被告は,Cらの行った現地調査やヒアリングの範囲,程度等が不明であり,これに基づく調査報告書等には信用性がないと批判する。 しかし,Cらは,水害直後に水害現場に臨み,現場調査やヒアリングをつぶさに行ったものであるから,これに基づく調査報告書等には十分信用性がある。 (ウ) 計算方法について① 内水による影響について(あ) 地中への浸透率被告は,非常に激しい大雨の場合にいずれの時間においても降雨量の20パーセントが地中へ浸透するのは無理があると批判する (ウ) 計算方法について① 内水による影響について(あ) 地中への浸透率被告は,非常に激しい大雨の場合にいずれの時間においても降雨量の20パーセントが地中へ浸透するのは無理があると批判する。 しかし,もともとこうした地中への浸透割合の数値は平均的な数値であり,降り始めなどには大きな浸透量があるため,全体を通して20パーセントと推定することは何ら不合理ではない。 (い) 清掃工場等からの排水量被告は,B地区内にある原田下水処理場,清掃工場の排水量について,乙第49号証(大阪航空局総務課環境係長F作成の調査報告書)をもとにして,原田下水処理場から幹線排水路への3時間の総排水量は1万1966立方メートルであり,Cらの計算は過大であると批判している。 しかし,乙第33号証によるB地区の流出係数は0.54であるので,それと異なる乙第49号証は信用性に疑問がある。また,乙第49号証には清掃工場からの排水量が含まれていないことを考慮すれば,Cらの計算は決して過大なものではない。 (う) 空港より高地からの雨水の流入について被告は,Cらの計算は空港より高地から自然に流れてくる雨水を考慮に入れていないと批判する。 しかし,被告の主張にはその量がどの程度のものであったかの具体的な主張立証がなく,一般論にしか過ぎない。 ② 空港からB地区への雨水の流入量について(あ) 流入幅と水深空港からB地区への雨水の流入につき,被告は,流入幅,流入水深が絶えず変化しているにもかかわらず,調査報告書等ではそれらが考慮されていないので,科学的でないと批判する。 しかし,空港からの雨水の流入量の計算は概算で行うしかなく,かつ,本件水害がどこからの雨水の流入によって生じたかを検討するには,概算で十分である。また,流入幅を一定の280メートルとしている 。 しかし,空港からの雨水の流入量の計算は概算で行うしかなく,かつ,本件水害がどこからの雨水の流入によって生じたかを検討するには,概算で十分である。また,流入幅を一定の280メートルとしていることについては,空港よりも上流域全体の平均雨量が23時から翌2時までの間,1時間あたり60ないし80ミリメートルとほぼ同程度であること,降雨と流出との間には時間的なずれがあるのが一般的であることを含めて考えるならば,十分な合理性がある。 さらに,被告の鑑定書を正確に補正すれば,調査報告書等と似たような数値になる点も重要である。すなわち,鑑定書では,空港の排水施設が100パーセント機能していることを前提としているため,空港からB地区への雨水の流入時間が実際の流入時間よりも大幅に遅れる計算となっている。しかし,実際は,空港の排水施設は目詰まりによって十分に機能していなかったので,鑑定書の前提的な誤りを事実に基づいて補正すれば,鑑定書による空港からの雨水の流入量は,調査報告書等による概算に近づくのである。したがって,調査報告書等を本件水害の原因究明の基礎として使用することに何ら不合理なところはない。 (い) 実績湛水深空港からB地区への雨水の流入につき,被告は,Cらの採用した水深は最も高い位置の平均であって誤りである,そもそも実績湛水深は誤差を含むからその信頼性には限界がある,Cらの主観的判断でデータが選択されている等と批判する。 しかし,Cらは,本件水害の直後にフェンスに残った痕跡の最大値から0まで全範囲を調査し,流入水の最大値を20から30センチメートルと評価して実績湛水深を確認したのであり,最も事実に接近した調査を行ったものである。 ③ 空港への雨水の流入について(あ) Gの陳述書(甲9)及びヒアリング結果被告は,甲第9号証は本 チメートルと評価して実績湛水深を確認したのであり,最も事実に接近した調査を行ったものである。 ③ 空港への雨水の流入について(あ) Gの陳述書(甲9)及びヒアリング結果被告は,甲第9号証は本件水害から2年半後に作成されたものであり供述者の記憶の正確さに疑問がある,Cらが調査報告書等の基礎資料とした平成7年4月以前のヒアリングはその状況・程度が明らかでなく信用性に疑問がある等と批判する。 しかし,Cらは,水害直後に水害現場に臨み,被害に遭った人,遭っていない人,原告になる人,なっていない人らにヒアリングをつぶさに行ったのであるから,十分信用性がある。 (い) 流入量の計算被告は,7号スクリーン付近から空港への雨水の流入について,2時間にわたって同量の雨水が流入したことを前提としているのはおかしい等と批判する。しかし,この点についてはGの陳述書(甲9)及びH証人の証言より明らかである。 ウ鑑定書に対する批判(ア) 氾濫水理解析について鑑定書で用いられている氾濫水理解析という手法は,過去に生起した水害を正確に解析,再現できる状況には達しておらず,おのずから適用限界があり,パラメーターの数が多すぎて正確に過去の事実を再現できない。 (イ) 観測・観察結果と係数について一般的に,数理解析は,現場の観測,観察結果に適合するように係数を変えて,繰り返し計算を行い,現場における実際の状況と整合した結果が得られたときに初めて,現実の状況を最もよく再現したものと考えられる。 鑑定書は,現場の状況をあまり調査することなく,係数や前提となる事実を勝手に決めて計算されたものであるから,再現性がない。 (ウ) シミュレーション万能主義について鑑定書は,計算結果に反する目撃証言などを無視しようとするシミュレーション万能主義に基づいている。 ( 勝手に決めて計算されたものであるから,再現性がない。 (ウ) シミュレーション万能主義について鑑定書は,計算結果に反する目撃証言などを無視しようとするシミュレーション万能主義に基づいている。 (エ) 確率雨量計算について① 観測期間について鑑定書は,確率雨量の計算の基礎として,31年間や39年間の雨量観測データを用いているが,それは単なる机上の計算以上の意味はなく,瑕疵の前提事実を判断する材料にしては観測期間が短すぎる。 ② 本件集中豪雨を基礎データに組み入れるべきか否かについて本件集中豪雨やその後の豪雨を基礎データに組み入れて確率降雨を論ずれば,間違いなく本件集中豪雨の生起確率も上昇するのだから,瑕疵判断の前提となる雨量を問題にするとき,確率雨量のみによって,不可抗力である,又は予見可能性がない等と決めることはできない。 ③ 観測場所を広げるべきか否かについて鑑定書は,確率雨量の計算の基礎として,本件集中豪雨地域のみのデータを用いているが,同一気候区内に降った雨量強度の降雨は,同一気候区内にある他のところでもいつでも発生する蓋然性が高いのであるから,本件降雨の降雨量確率を計算するのに本件集中豪雨地域のみのデータに限定するのは狭きにすぎ,本件集中豪雨地域外の同一気候区内にある雨量データをも斟酌して確率降雨を論ずべきである。 ④ 2,3時間雨量の確率計算の必要性について鑑定書は,確率雨量の計算の基礎として,2,3時間雨量を用いているが,本件のような狭い流域では10分間もすれば雨が流出してくるのであるから,排水機構が10分間でどれだけ排水できるかが問題となるのであり,2,3時間雨量確率を持ち出してもあまり意味がない。 (オ) 粗度係数について① 幹線排水路の開渠部幹線排水路の側壁はブロック積みになっているので,水理公式集 け排水できるかが問題となるのであり,2,3時間雨量確率を持ち出してもあまり意味がない。 (オ) 粗度係数について① 幹線排水路の開渠部幹線排水路の側壁はブロック積みになっているので,水理公式集の「コンクリート,底面砂利」と「石積み,モルタル目地」の中間の粗度係数0. 020を採用すべきである。 ② 幹線排水路の暗渠部水理公式集の「コンクリート」における平均値の粗度係数0.015を採用すべきである。 ③ 空港川幹線排水路の開渠部と同様である。 (カ) 流出係数について平成元年(改訂版)尼崎市下水道管渠流量計算基準(乙33)によれば,B地区の流出係数は0.54である。 (キ) その他の定数の選択やデータの推定について① 等価粗度流出解析における等価粗度の選択について,鑑定書では何ら根拠が示されていない。 ② 降雨量流出解析における降雨量について,鑑定書は,ある測定点の欠測を他の測定点のデータで補完したり,1時間値しかない測定点のデータを6等分して10分間雨量とするなどしており,仮説にすぎない。 ③ 有効雨量鑑定書は,すべてのメッシュで地目にかかわらず50ミリメートルまで50パーセント(0.5)の有効雨量としているが,常識的に考えて,空港内の芝地の地中浸透量は他の地域に比べてもっと大きいのではないかと思われ,結局,計算の煩さを理由として行った簡略計算は根拠がない。 (ク) 空港川の溢水鑑定書では,B地区で空港川が溢水したという結果になっている。 しかし,原告らの現地調査から,B地区で空港川が溢水していなかったことは明らかであり,鑑定書は,本件水害を再現していない。 (ケ) 実積湛水深とのずれ鑑定書では,A2,A4,B3地点で,計算値と実積湛水深が大きく異なっており,その他の地点でも,計算値と実積湛水深は必ずしも一致 り,鑑定書は,本件水害を再現していない。 (ケ) 実積湛水深とのずれ鑑定書では,A2,A4,B3地点で,計算値と実積湛水深が大きく異なっており,その他の地点でも,計算値と実積湛水深は必ずしも一致しておらず,本件水害を再現していない。 被告は,計算値と実積湛水深が異なるのは実積湛水深の精度に問題があるなどと主張しており,本末転倒である。 (コ) 空港からB地区への越流開始時間のずれ鑑定書のRUN1では,空港からB地区への越流の開始が事実よりも2時間も遅れており,本件水害を再現していない。 (サ) 6号スクリーンの河積障害について鑑定書の計算は,6号スクリーンが全開していることを前提にしている。 しかし,実際には,6号スクリーンは河積障害が生じている可能性がある。6号スクリーンを全閉として計算すれば,7号スクリーン全開のRUN3より7号スクリーン全閉のRUN1の方がB地区への越流時刻が遅くなるという非常識な結論にはならなかったはずである。 さらに,6号スクリーンに河積障害が生じていなくても,そもそも6号スクリーンに雨水が集まる前段階である空港内の排水施設が目詰まりしていることは明らかである。 こうしたことからすると,鑑定書は,流入量を過小評価しているものであって,信用性がない。 (被告)ア鑑定書に基づく主張鑑定書に反する原告らの調査報告書には信用性がない。よって,「内水のみでは本件水害による原告らの浸水被害は発生せず,原告らの浸水被害は空港からの雨水の流入が原因である」という原告らの主張は立証されていない。(乙19)イ鑑定書の信用性(ア) 鑑定書の特色Dらは,「平成6年9月6日の集中豪雨について,降雨現象としての視点から分析,評価するとともに,空港の排水路を取り込んだ氾濫水理解析による浸水状況の予測等により, 書の信用性(ア) 鑑定書の特色Dらは,「平成6年9月6日の集中豪雨について,降雨現象としての視点から分析,評価するとともに,空港の排水路を取り込んだ氾濫水理解析による浸水状況の予測等により,この集中豪雨により発生した浸水実態について検討する」ことを目的として,氾濫水理解析を実施し,鑑定書を作成した。その際,7号及び8号の各スクリーンで河積阻害の影響があったと考えたが,その程度が分からず,有効河積率をRUN1からRUN3までの3ケースに分けることによって目詰まりのバリエーションがすべて考えられることから,そのように想定計算をした。鑑定書は,2次元不定流モデルを用いて本件集中豪雨がもたらした雨水の水理解析を行っているところ,2次元不定流モデルは,現時点において雨水の挙動を最も厳密に再現できる解析モデルであって,氾濫水理解析手法の主流となっており,治水事業において数多く使われ,水理公式集にも掲載されている広く認知された方法であるから,相当の科学的根拠も有している。 本件氾濫水理解析は,対象流域を細かくメッシュ(格子)状に分割した上,各メッシュの中に,地盤高・地目といった土地条件,道路・盛土・家屋などの構造物の条件,排水路・樋門などの排水条件,ティーセン分割法によって算出した広範囲の降雨条件といったデータをモデル化してインプットし,雨水の流れの方向・速さ・量をコンピュータ解析するという手法を採用しているところ,モデル化するにあたり,基礎データとして最新の地形図,排水施設図,測量図等を使用するとともに,現地調査の結果も踏まえ,対象流域中に存在する雨水に影響を与える様々な客観的要因を把握する一方,重要な降雨データについても使用可能なものはすべて使用した上で,氾濫状況を再現したものである。 そして,本件氾濫水理解析の計算結果は,実績湛水 する雨水に影響を与える様々な客観的要因を把握する一方,重要な降雨データについても使用可能なものはすべて使用した上で,氾濫状況を再現したものである。 そして,本件氾濫水理解析の計算結果は,実績湛水深とおおむね整合し,水深の断面積も標高の高い位置から低い位置にスムーズに移行しており,不自然な結果が認められないことからすると,歴史的事実の原因を究明するための資料としての信頼性は,極めて高いというべきである。 (イ) 原告らの批判に対する反論① 氾濫水理解析について原告らは,氾濫水理解析について,パラメーターの数が多すぎて正確に過去の事実を再現できないなどと批判する。 しかし,過去の判例においても,氾濫水理解析の結果に相当の科学的根拠のあることが認められている。 ② 観測・観察結果と係数について原告らは,鑑定書について,現場の状況をあまり調査することなく,係数や前提となる事実を勝手に決めて計算したのみであるから再現性がないなどと批判する。 しかし,鑑定書の氾濫水理解析における係数は,氾濫域の流出係数と粗度係数だけであるところ,これらは単なる憶測に基づくものではなく,前者については土地の利用条件を,後者については水路の状況をそれぞれ踏まえた上,既往の関係書類を検討するとともに,現地に赴いて幹線排水路及び空港川の材質,潤辺,凹凸状態等を調査し,それを専門家として分析した結果を水理公式集に当てはめて設定された数値であり,恣意的に選択されたものではない。 ③ シミュレーション万能主義との批判について原告らは,鑑定書は目撃証言などを無視しようとするシミュレーション万能主義に基づくものであるなどと批判する。 しかし,目撃証言は,多分に主観的要素を有し,数量的な判断をする根拠資料としては不適当である。また,鑑定書は,シミュレーション万能主 るシミュレーション万能主義に基づくものであるなどと批判する。 しかし,目撃証言は,多分に主観的要素を有し,数量的な判断をする根拠資料としては不適当である。また,鑑定書は,シミュレーション万能主義でないからこそ,再現性を検討するために実績湛水深との比較検証作業を行っているのである。 ④ 確率雨量計算について(あ) 観測期間について原告らは,確率雨量計算について,基礎とする観測期間が短すぎると批判する。 しかし,将来にどれだけの大きさの降雨がどれだけの頻度で発生し得るかは,過去の観測資料から合理的に推測するほかなく,人の行動や思考は過去から収集された経験則に規定されるから,可能な限り長い観測期間を有する観測所のデータを基礎として算出した確率時間雨量の評価は,治水計画論的にも法的にも妥当である。 (い) 本件集中豪雨を基礎データに組み入れるべきか否かについて本件水害と,空港からの雨水の流出量との関係や,スクリーン管理の瑕疵の存否等を検討するにあたり,本件集中豪雨がどの程度の確率で生起する降雨であったかを論じる場合には,本件集中豪雨より前の観測データを基礎にして通常予想される程度の降雨量に対処していたかどうかがポイントとなるのであるから,本件集中豪雨を基礎データに組み入れるのはおかしい。 (う) 観測場所を広げるべきか否かについて原告らは,本件集中豪雨地域外の同一気候区内にある雨量データをも斟酌して確率降雨を論ずべき等と主張する。 しかし,降雨,特に短時間降雨は地形条件の影響を強く受けるものであるから,同一気候区内又は同一水系内まで場所的範囲を押し広げて論ずるのは,降雨のメカニズムを無視した主張であって失当である。 (え) 2,3時間雨量の確率計算の必要性について原告らは,本件のような狭い流域では,排水機構が10分間でどれ 所的範囲を押し広げて論ずるのは,降雨のメカニズムを無視した主張であって失当である。 (え) 2,3時間雨量の確率計算の必要性について原告らは,本件のような狭い流域では,排水機構が10分間でどれだけ排水できるかが問題となるのであり,2,3時間雨量を持ち出してもあまり意味がないなどと批判する。 しかし,降雨の地中への浸透について,累加雨量50ミリメートルまでが地中に浸透し,50ミリメートルを超えると100パーセントが流出するというメカニズムからすると,本件集中豪雨のように短時間で地中への浸透量を超えた降雨があった後,どのぐらいの時間,地表へ流出する量を生じさせる降雨が継続したのかを看過することはできないのである。なぜなら,地中への浸透能力を超える降雨があった場合,その後に継続した降雨は,一部は下水管渠への排水,地表面に存在する窪地などの貯留によって処理されることになるが,排水能力,貯留能力の限界を超えると空港外に溢れることになるため,排水能力,貯留能力を超えるような降雨の継続時間は氾濫原因,被害の大きさを把握するためには不可欠というべきだからである。実際,本件集中豪雨において,地表へ流出した雨水は空港の南東端やグリーンベルトで一時的に貯留している時間があるから,2,3時間雨量についての確率時間雨量の計算は必要かつ重要である。 ⑤ 粗度係数に対する批判について鑑定書の粗度係数は,以下のとおり妥当である。 (あ) 幹線排水路の開渠部の粗度係数について幹線排水路の開渠部の両岸は,モルタル目地を入れたコンクリートブロック積みであるところ,このコンクリートブロックには凸凹がついているし,河底には土砂の堆積,水草,苔などの付着が認められるから,形状的には石材と同じであり,水理公式集にいう「石積み,モルタル目地」に相当し,0.025を採 のコンクリートブロックには凸凹がついているし,河底には土砂の堆積,水草,苔などの付着が認められるから,形状的には石材と同じであり,水理公式集にいう「石積み,モルタル目地」に相当し,0.025を採用すべきである。本件氾濫水理解析は,現地調査の結果やDの専門家としての経験をも踏まえて粗度係数が設定されているのであり,妥当なものである。 (い) 幹線排水路の暗渠部の粗度係数について原告らの主張する0.015の値は,暗渠部の材料及び潤辺が「コンクリート,コテ仕上げ」の性質を有し,しかも水路内に土砂などの堆積を想定しない暗渠,例えば水道水の導入路などに適用すべき値である。幹線排水路の暗渠部には,その開渠部と同様に河底に土砂などの堆積を想定することが合理的であり,水理公式集による「ライニングした水路」の「コンクリート,底面砂利」の場合に相当するものであるから,粗度係数0.017を採用すべきである。 鑑定書は,現地調査の結果や「建設省河川砂防基準(案)同解説書調査編」(乙42)に記載されたコンクリート人工水路の粗度係数をも踏まえて粗度係数が設定されており,妥当なものである。 (う) 空港川の粗度係数について空港川の開渠部は,ブロック積みの構造を有している施工区間がほとんどであるから,幹線排水路の開渠部と同様に,0.025を採用すべきであるし,空港川の暗渠部については,前記(い)と同様の理由から0.017を採用すべきである。 ⑥ 流出係数についてB地区の公共下水道の流出係数について,原告らの主張する0.54と,鑑定書の採用する0.5のいずれの数値を採用しても,以下のとおり,本件氾濫水理解析の結果に影響はない。 すなわち,流出係数0.54の場合と0.5の場合とを比較して,地表への流出量の点で相違するのは,累加雨量50ミリメートルまでの雨量 を採用しても,以下のとおり,本件氾濫水理解析の結果に影響はない。 すなわち,流出係数0.54の場合と0.5の場合とを比較して,地表への流出量の点で相違するのは,累加雨量50ミリメートルまでの雨量で,前者の場合が後者の場合よりも地表への流出量が2ミリメートル分多い(地面への浸透量が2ミリメートル分少なく,その分が地表へ流出する。)という点のみであり,累加雨量50ミリメートルまでの雨量の内の2ミリメートル分が地表へ流出したとしても,この段階で流出した雨水は降雨初期段階におけるものであるから,雨水の流入先である排水路にもまだ空きがあり,下水管渠を通じて排水路から流下してしまうのである。したがって,上記2ミリメートル分の雨量が地上において氾濫し,湛水深に影響を与えることはない。 ⑦ その他の定数の選択やデータの推定について(あ) 等価粗度について原告らは,等価粗度の選択につき根拠がないなどと批判する。 しかし,鑑定書は,幹線排水路,空港川の各流域・河道定数について,既往の検討結果を参考に設定しており,特に,幹線排水路流域の土地利用形態はほとんど市街地であるとみなせることから,市街地に対応する等価粗度として0.05を採用したものであり,その設定方法は妥当なものである。また,R8流域については,山林を抱えている点で他の流域と大きく異なっているため,市街地の等価粗度0.05よりもワンランク大きな0.10を採用したものであり,その設定方法も妥当なものである。 (い) 降雨量について鑑定書における降雨量データの選択は,いずれも科学的に合理的な方法を採用した妥当なものである。 (う) 有効雨量について原告らの批判は,原告ら自身の主張と矛盾するなど合理性に欠け,失当である。 ⑧ 空港川の溢水について原告らは,B地区で空港川は溢水していな を採用した妥当なものである。 (う) 有効雨量について原告らの批判は,原告ら自身の主張と矛盾するなど合理性に欠け,失当である。 ⑧ 空港川の溢水について原告らは,B地区で空港川は溢水していなかったのであるから,これと異なる鑑定書は本件水害を再現していないと批判する。 しかし,原告らがその主張の根拠としている証拠には,以下のとおり信用性がない。 (あ) 尼崎市の回答書(甲11)について尼崎市の回答書には,「空港川の溢水はなく」との記載があるが,結論が記載されているのみで,その根拠や原資料等は全く記載されていない。また,この回答書は,尼崎市に人為的な瑕疵がないことに主眼がおかれていることに留意すべきである。そして,尼崎市内の空港川の右岸は水田が多く,しかもB地区からの溢水が大量に流れ込んでいる危険な状況において,深夜で大雨の中,空港川の最高水位時の状況につき,正確に把握した目撃者,体験者等があるとは考え難く,どのような証拠に基づいて結論づけたのか全く不明である。 (い) C証人Cは,「この(空港川の水深が)70パーセントというのは少し小さいかなというふうに思っております」と疑問をもっている(C証人第11回口頭弁論期日58,59ページ)し,そもそも,この「70パーセント」の根拠についても,I氏からのヒアリングの結果である旨証言しながら,「Iさん自身も見たんじゃなくて他の人から聞いたんではないかという,そんな感じの記憶になっています」(同調書54ページ)と証言しており,証拠としての価値は極めて低い。 ⑨ 実績湛水深とのずれについて原告らは,鑑定書は複数の地点で計算値と実績湛水深とが相違しているからその計算結果は信頼できないなどと主張する。 しかし,実績湛水深の信頼性は,そもそも一定の限界がある。すなわち,実績湛水深はもとも 告らは,鑑定書は複数の地点で計算値と実績湛水深とが相違しているからその計算結果は信頼できないなどと主張する。 しかし,実績湛水深の信頼性は,そもそも一定の限界がある。すなわち,実績湛水深はもともと誤差を含んでおり,治水実務上,絶対的な正確さを持つものとして取り扱われていないから,実績湛水深そのものの精度のチェックが不可欠であり,それをせずに無批判に用いることはできず,実績湛水深を絶対視して実績湛水深と計算値との完全な一致を追求することは,かえって氾濫解析の信頼性を損なわせる。 鑑定書において,実績湛水深を水位換算し,標高のより低い地点の実績湛水深が標高のより高い実績湛水深を上回ってしまう現象である「水位の逆転」が生じていないかをチェックしたところ,標高の低いB3地点の水位の方が,B1,B2各地点の水位より高かったことになり,「水位の逆転」が生じていた。B3地点の実績湛水深は,凸凹した高いコンクリート壁の痕跡から計測されたところ,B3地点付近ではコンクリート壁に沿って北東から南西方面に雨水が流れたと見られ,B3地点での雨水の流れは,流下する進行方向のコンクリート壁に遮られてぶつかるとともに,側方の凸凹した高いコンクリート壁に遮られてぶつかるため,B3地点では,周囲に比べてせき上げられると同時に流速が抑えつけられることにより,部分的に水位が上昇したものと考えられる。このような特殊な流れは,B3地点の部分的な水位上昇にとどまり,周辺の地域における水位にはほとんど影響を及ぼさない。 一方,B3地点に隣接するブラストフェンスにおいて測定された実績湛水深は,1.1メートルであるところ,このブラストフェンスの周辺には水流を遮断するような構造物はなく,これと本件氾濫水理解析におけるB3地点の計算値とを比較すると,実績湛水深をよく再現できている 湛水深は,1.1メートルであるところ,このブラストフェンスの周辺には水流を遮断するような構造物はなく,これと本件氾濫水理解析におけるB3地点の計算値とを比較すると,実績湛水深をよく再現できているということができる。 ⑩ 空港からB地区への越流の開始時間のずれについて(あ) 原告らは,RUN1では空港からB地区への越流の開始時間が事実よりも2時間遅れて出現しているから,鑑定書の結果を信用できないなどと批判する。 しかし,これは,強雨域の中心核の移動が極めて早いことから,計算値と実績湛水深との間に時間的ずれが生じたためである。すなわち,ティーセン分割によりシミュレーションに条件として与える各ティーセン分割区域内の面積雨量と特定の一時点のある一点における実際の雨量とにはどうしても時間的なずれが生じるから,計算値と実績湛水深との間に時間的なずれが生じたのである。実際の強雨域の時間的変化を厳密に把握することは不可能であるから,計算ではティーセン法によって各流域の面積雨量から算出しており,時間的なずれがあるからといって,計算値が直ちに否定されるものではない。 (い) 7号スクリーンが全開の場合には,幹線排水路は満水状態であるため,空港内に流入した雨水は空港内の排水路から排水されず,逆に7号スクリーンが全閉状態の場合には,下流の幹線排水路に余裕があるため,空港内に流入した雨水が空港内の排水路を通じて幹線排水路へと排水される結果,7号スクリーンが全閉状態の場合の方が全開状態の場合と比べて,B地区への流入開始が遅れることになるのであり,このこと自体,別段非常識な結論ではなく,十分合理的に説明できる。 ⑪ 6号スクリーンの河積阻害について7号及び8号の各スクリーン以外の排水施設をいかなる条件として設定するかについては,最終的には専門家の経験に基 非常識な結論ではなく,十分合理的に説明できる。 ⑪ 6号スクリーンの河積阻害について7号及び8号の各スクリーン以外の排水施設をいかなる条件として設定するかについては,最終的には専門家の経験に基づき合理的に考えるしかないところ,以下のとおり,6号スクリーンがごみ等の付着によって河積阻害を起こすことはなく,あったとしても無視し得る程度のものであるから,6号スクリーンを全開として計算することには合理的な理由があり,この条件により得られた本件氾濫水理解析の結果についても十分信頼できるのである。 (あ) 6号スクリーンの設置場所の特色について6号スクリーンは,7号スクリーンの下流にあり,幹線排水路の暗渠部分を通過して空港敷地外に出る地点に設置されているから,表面流によって運ばれてくるごみは,空港敷地内に張り巡らされた二重のフェンスによりスクリーニングされ,地表のごみが入ってくることはない。 (い) 7号スクリーンを通過したごみについて7号スクリーンでごみがせき止められるので,6号スクリーンに集まるごみは少なく,7号スクリーンを通過したごみの大部分は6号スクリーンを通過すると考えられる。 (う) 6号スクリーン右岸フェンスの湾曲について原告らは,6号スクリーン右岸のフェンスが湾曲しているのは,6号スクリーンが目詰まりしていたためだと主張する。 しかし,6号スクリーン右岸のフェンスが湾曲している原因は,7号スクリーンを引き上げたことによって,同スクリーン付近にたまっていた雨水及びごみ,浮遊物等が同スクリーンより下流部にある6号スクリーンに流れ込んで目詰まりさせ,付近の水位を上げさせ,それによって6号スクリーン右岸にあるつた等が絡まっていたフェンスにも水圧がかかり,同フェンスを湾曲させたものと考えられる。 (え) 7号スクリーンを引き れ込んで目詰まりさせ,付近の水位を上げさせ,それによって6号スクリーン右岸にあるつた等が絡まっていたフェンスにも水圧がかかり,同フェンスを湾曲させたものと考えられる。 (え) 7号スクリーンを引き上げたときの水位の変動について6号スクリーンが全閉の状態であれば,6号スクリーンに至るまでの暗渠部分は満水状態であり,7号スクリーンを引き上げたとしても,6号スクリーンが引き上げられるまでその状態が続くはずであるから,原告らの主張する「幹線排水路の7号水門を2時30分に上げに来るまでほぼ同じ水位が続き,その後20から30分で急に水が引いた」というようなことはあり得ず,このことはかえって6号スクリーンが河積阻害を起こしていなかったことを推認させる。 (お) 空港内の排水集水口の目詰まりについて原告らは,プラスチック等豪雨でも水没して流されるごみが多数あり,それが空港内の排水集水口に付着して目詰まりを起こしており,6号スクリーンを含む空港の排水施設は機能していなかったなどと主張する。 しかし,空港の敷地の内と外とではごみの量は比べるまでもなく違うのであり,それを同一条件として批判しても意味がないし,ごみの質について付け加えると,空港上流地域から原告らが主張するような「豪雨でも水没して流されるごみ」があるとしても,空港敷地内外の境界にある二重構造のフェンスやフェンス沿いにある植木等によってせき止められるものが大多数で,それらのごみが空港敷地内に入ってくることはまずないのである。また,7号スクリーンにごみが集中するのは,同スクリーンが水の流れを遮断する位置にあるために水流が同スクリーンにごみを押しつけるからであり,これに対し,排水集水口は,雨水の主たる流れを遮断する位置にはないことから,ごみが雨水の流れに乗って押し流されてしまい,ごみが集 する位置にあるために水流が同スクリーンにごみを押しつけるからであり,これに対し,排水集水口は,雨水の主たる流れを遮断する位置にはないことから,ごみが雨水の流れに乗って押し流されてしまい,ごみが集まりにくいのである。 (ウ) 小括以上より,鑑定書に対する原告らの批判はいずれも失当であり,被告の鑑定書の信用性に影響するものではない。 ウ調査報告書等に対する批判原告らは,本件水害が空港からの大量の雨水の流出により発生したものであると主張し,これに沿う主要な証拠は,Cらが作成した調査報告書等であるところ,この調査報告書等については,内容が節操なく変遷していることからも明らかなとおり,基礎データや資料が不足し,かつ,その検討が不完全であり,Cらが都市における氾濫現象を研究した経歴を有していないことをも併せ考えると,その信用性には大きな疑問が存在するとともに,その計算方法等についても誤りや限界があり,また,その計算の結果も,鑑定書に照らして採用することができない。 (ア) 節操のない変遷調査報告書等の計算方法は,以下のように節操なく変遷している。 まず,甲第1号証では,内水の計算式は「B地区における総降水量-鶴田ポンプ場から猪名川への排水量=B地区における雨水の滞留量」とされていた。そして,B地区に最も近い観測点は大阪航空測候所であるにもかかわらず,観測点が原田下水処理場とされていた。 次に,甲第12号証では,原告らは,大阪航空測候所における観測値をもとにB地区における総降水量を算出した上,計算式を,「B地区における総降水量-{地中への浸透量(総降水量の10パーセントが浸透)+鶴田ポンプ場から猪名川への排水量+清掃工場等の範囲に降った雨水の幹線排水路又は空港川への排水量(1時間40ミリメートルの排水がされたと仮定)}=B地区におけ 量(総降水量の10パーセントが浸透)+鶴田ポンプ場から猪名川への排水量+清掃工場等の範囲に降った雨水の幹線排水路又は空港川への排水量(1時間40ミリメートルの排水がされたと仮定)}=B地区における雨水の滞留量」と変更したが,のちに,鶴田ポンプ場の排水量の算定に誤りがあることが判明した。 甲第19号証では,原告らは,鶴田ポンプ場からの排水量を訂正した上,浸透量を総降水量の20パーセントと変更し,清掃工場等の排水量を1時間30ミリメートルと変更した。 調査報告書等のこのような変遷の原因は,新たな事実が判明したからではなく,観測点の誤認,鶴田ポンプ場によるB地区の排水量の誤認など,被告から間違いの指摘を受けたことや,現地調査がずさんであったことから生じた間違いや,このような計算をする際に重要な条件となる数値(例えば,地中への浸透率や清掃工場等の範囲に降った雨水は,内水量を計算する際に非常に重要であり,最初から計算しておくことが必要な数値である。)の訂正によるものである。 また,その訂正をするにあたっても,間違いの訂正だけではなく,新たな要因を追加したり,従前の数値の変更をしたりするなど,自らの都合のいい結論を導き出すためのつじつま合わせをしている可能性がある。 (イ) 基礎データや資料の不足等原告らは,調査報告書等について,水害直後に水害現場を踏査して正確に観察するとともに,被害に遭った人などから水害時の状況をヒアリングした上,調査結果を専門家の立場から総合して水害原因を究明した正確なものであると主張する。 しかし,ヒアリング等の結果は,伝聞であったり,被告の指摘を受けて訂正に応じるなどしているほどであり,このような調査結果にどれだけの信頼性をおくことができるか疑問である。 本件のような水害原因を究明するにあたっては,最も基本 ,伝聞であったり,被告の指摘を受けて訂正に応じるなどしているほどであり,このような調査結果にどれだけの信頼性をおくことができるか疑問である。 本件のような水害原因を究明するにあたっては,最も基本的な氾濫実態を把握するために,原告ら工場の浸水被害現場だけでなく,空港上流地域,空港施設,B地区全域という極めて広範囲にわたる現地調査を行わなければならないところ,調査報告書等における調査は,その点が不十分であり,どの範囲についてどの程度の踏査,観察をしたのか,どのくらいの人数やどの程度の状況をどの程度詳細にヒアリングしたのか不明である。本件集中豪雨は,深夜の短時間に起こったものであり,降雨の時間的変化に照らすと,溢水状況は時間的・場所的にかなりの強弱の波が生じていたであろうから,多くの正確な目撃情報が得られたものとは到底考えられないし,大多数が原告らの従業員やこれを支持する地域住民からのヒアリングであるということは推認するに難くなく,表現上の誇張が全くないとも言い切れない。 なお,原告らが提出した陳述書(甲9)及び報告書(甲18)は,その作成日付等に照らしても調査報告書等を作成するためのヒアリングの結果ではなく,本件水害後かなりの時間が経過してから作成されており,供述者等の記憶が不鮮明になっていることも考えられるから,これらの書証をもって調査報告書等における調査の正確性を推し量ることは到底できない。 (ウ) 計算方法の誤り等調査報告書等における上記計算方法等は,以下のとおり誤っている。 ① 内水の影響について(あ) 地中への浸透率について降雨の地中への浸透量を総雨量の20パーセントとするのは,その根拠が明らかでなく,誤っている。すなわち,B地区の降雨を代表する大阪航空測候所における3時間の降雨量に注目すると,1時間目が63ミリメ 降雨の地中への浸透量を総雨量の20パーセントとするのは,その根拠が明らかでなく,誤っている。すなわち,B地区の降雨を代表する大阪航空測候所における3時間の降雨量に注目すると,1時間目が63ミリメートル,2時間目が91ミリメートル,3時間目が53ミリメートルとなっており,このような非常に激しい大雨の場合に,いずれの時間においても降雨量の20パーセントが地中へ浸透すると考えることには全く無理があり,総雨量から単純に何割かが浸透するというのは明らかに誤りであるから,このような計算方法に合理的な根拠があるとは到底認め難い。 (い) 清掃工場等からの排水量について清掃工場等から空港川又は幹線排水路への排水量を1時間30ミリメートルとする計算方法は,不正確である。 すなわち,大阪航空局が大阪府北部流域下水道事務所に対して行ったヒアリング(乙49)の結果,原田下水処理場の内幹線排水路より西側(敷地面積19万9188平方メートル)から幹線排水路への排水量は,毎秒1.108立方メートルで,3時間の排水量にして1万1966立方メートルであることが判明した。ところが,調査報告書等によると,上記範囲における幹線排水路への排水量は1万7927立方メートル(30ミリメートル毎時×3時間×19万9188平方メートル)にもなり,不正確である。 (う) B地区内の排水施設などについて調査報告書等は,B地区における6.4メートル以下の地域やA工業団地の排水設備やその能力について,検討すらしていない。すなわち,上記計算方法は,B地区の降雨量から地中への浸透量等を差し引いた分がB地区の滞留量であるとしているところ,鶴田ポンプ場でポンプアップし,あるいは下水処理場で処理されているとしても下水道に流れ込んだ雨水のことであり,6.4メートル以下の地域に集まった雨水は いた分がB地区の滞留量であるとしているところ,鶴田ポンプ場でポンプアップし,あるいは下水処理場で処理されているとしても下水道に流れ込んだ雨水のことであり,6.4メートル以下の地域に集まった雨水は,排水溝からしか下水管渠に流れないのであるから,結局のところ,B地区に降った雨水のほとんどが6.4メートル以下の地域やA工業団地にある排水溝に集まり,それが排水溝で処理できる流量以上であれば当然溢水が生じるのであり,排出量として控除された雨量の中にも排水溝からの溢水により滞留するものもあると考えられる。したがって,このような計算方法により滞留量を算出するにあたっては,6.4メートル以下の地域やA工業団地の排水設備及びその能力がどの程度であるのか,そこに集まった雨水がどう処理されるのかについても併せて検討すべきである。ところが,調査報告書等は,その重要なことを全く考慮せず,単に自己に有利な結論を導き出すための仮定を作り出した結果,事実とそぐわないものとなったのである。 (え) 空港より高地からの雨水の流入についてについて原告らは,上記計算方法に基づき,内水のみから生じるであろう想定湛水深と実績湛水深との差が空港からの雨水の流入によって生じたもので,被告に責任があるかのように論じているが,土地に高低差がある以上,空港より高地から自然に流れてくる雨水をも加算した上での想定湛水深と実績湛水深との差を検討すべきであり,比較対照を明らかに間違っている。 ② 空港からB地区への雨水の流入量について調査報告書等は,空港からB地区への雨水の流入量について,「毎秒27.7立方メートルが3時間にわたって流入したから29万9160立方メートルである」としている。 しかしながら,河川実務においては,流量を正確に把握するためには,水の流れの断面積(流入幅×流入 27.7立方メートルが3時間にわたって流入したから29万9160立方メートルである」としている。 しかしながら,河川実務においては,流量を正確に把握するためには,水の流れの断面積(流入幅×流入水深)×流速を正確に把握するように努めるべきであるとされているところ,流入幅,流入水深及び流速は絶えず変化をしているから,これらを固定して計算することはできず,最大幅をもって流入幅とするには疑問があり,流速についての観測値も全く存在しない上,以下の諸点をも併せ考えると,上記計算の結果は,到底信用できるものではない。 (あ) 流入幅と水深について空港とB地区との境界は,北西から南東方向に向けて次第に低く傾斜しているから,空港にたまった雨水がB地区に流出するのであれば,境界の南東から流出し始め,空港での浸水深の変化に伴い北西方向に向けて次第に流入幅を増加させ,それに伴って流入水深も時々刻々と変化していき,水深が小さくなると流入幅も短く,水深が大きくなると流入幅も大きくなるという関係にあり,正確な流量を計算するためには,特に詳細な基礎資料が必要とされるところ,調査報告書等は,土地の傾斜,流入幅の変化,流入雨水の水深の変化を根拠付ける資料やヒアリングは皆無であり,その計算の結果が正しいかどうかの検証作業も全くされていないのである。 この点につき,原告らは,空港は非常に広い面積を有しているから,空港が受ける雨水が少しぐらい変化してもその全体の水深はそれほど敏感に変化しないと主張する。 しかし,大阪航空測候所では0時から1時の雨量が63ミリメートル,1時から2時の雨量が91ミリメートル,2時から3時の雨量が53ミリメートルであって,このような降雨量の変化をもって,少しぐらいの変化ということはできないし,空港より上流域に降った雨がすべて空港とB 時から2時の雨量が91ミリメートル,2時から3時の雨量が53ミリメートルであって,このような降雨量の変化をもって,少しぐらいの変化ということはできないし,空港より上流域に降った雨がすべて空港とB地区との境界に集まるわけではないとしても,流入幅を決定する空港への流入量は,時間的に大きく変化しているし,空港からの流出量を検討するには,空港における降雨量の変化も重要な要因であるのは当然であるから,この主張は失当である。 (い) 実績湛水深について調査報告書等は,フェンスの枯れ草の痕跡から,南側の方が水深が高く,その最大実績湛水深が20から30センチメートルで,北側の端が0センチメートルになっていることから,それを平均して水深を10センチメートルとする結論を導き出している。 しかしながら,これは,最も高い位置の平均であって,時間的な水深の変化を全く考慮に入れておらず,誤りである。また,そもそも,フェンス等に付着したごみ,泥などの痕跡から測定された実績湛水深は,計測の目的,使用した計測機器の精度,計測時間帯,計測地点の地形状況,計測者の計測技術の習熟度,フェンスなどへの付着物に係る不安定要因(自重,風雨,人為的要因)からおのずと限界があり,誤差を含んでいるから,その信頼性には限界がある。さらに,調査報告書等は,Cらの主観的な判断のみで平均湛水深を決定しており,到底採用することはできない。 ③ 空港への雨水の流入について調査報告書等は,7号スクリーンから空港への雨水の流入量について,「毎秒10.7から14.6立方メートルの雨水が午前0時30分ころから2時間にわたって流入したとして算出した結果,総量が7万7000から10万5000立方メートルである」とした上,この雨水が空港を横切ってB地区に流入し,本件水害を発生させたとしている。 し ろから2時間にわたって流入したとして算出した結果,総量が7万7000から10万5000立方メートルである」とした上,この雨水が空港を横切ってB地区に流入し,本件水害を発生させたとしている。 しかしながら,7号スクリーンから空港へ流入した雨水は,直接B地区方向に向かわず,空港南西端に貯留されるものがあるし,空港内には下水道による下水管渠が存在し,空港内に流入した雨水は下水管渠を通じて,空港川又は幹線排水路に排水されるから,7号スクリーンから空港への流入量が直ちに空港からB地区への流出量とはならないのである。 また,調査報告書等の上記結論は,水位の変動についての正確な基礎資料がないにもかかわらず,これを2時間にわたって一定であるとして計算された結果に基づくものであって不正確であり,以下の点をも併せ考えると,採用できないというべきである。 (あ) 平社長の陳述書及びヒアリングの結果について調査報告書等の上記結論に沿う証拠として,ロータリー印刷株式会社の代表取締役Gの陳述書(甲9)があるが,これは,本件水害から2年半後の平成9年3月に作成されたものである上,当時,同社の事務所に雨水が流入し始めた以降は混乱状態にあったと思われ,当時の事実関係が正確に認識・把握して記憶されたのかどうか疑問である。 また,調査報告書等は,上記陳述書に基づいて作成されたのではなく,平成7年4月以前にCらが実施したヒアリングの結果に基づいて作成されたものであるところ,どの程度の状況をどの程度詳細にヒアリングをしたのか不明であるし,そもそも,スクリーンや浸水状況などは,夜間の大雨でかなり暗かったはずで,室内からどこまで正確に見えていたのか疑問であるから,ヒアリングの結果の信用性には疑問がある。 (い) 流入量の計算について調査報告書等は,幹線排水路から空港 夜間の大雨でかなり暗かったはずで,室内からどこまで正確に見えていたのか疑問であるから,ヒアリングの結果の信用性には疑問がある。 (い) 流入量の計算について調査報告書等は,幹線排水路から空港への雨水の流入について,フェンスの穴部分及びフェンス下の洗掘部分から流入したものとして計算している。 しかしながら,流速の観測値はないし,フェンスからの流入について,流出係数を0.2から0.3とする根拠も不明である。また,フェンス下の洗掘部分からの雨水の流入についても,洗掘に至る状況を示すヒアリング等の証拠はないにもかかわらず,調査報告書等は,空港敷地内に2時間にわたって同量の雨水が流入したことを前提に計算しており,明らかに誤っている。 (ウ) 小括以上のとおり,調査報告書等は,基礎データや資料が不足し,かつ,その検討が不完全であって,計算方法も誤っているというべきであり,到底信用することができない。また,Cらが都市における氾濫水理について研究をしていないことをも併せ考えると,調査報告書等は,信用することができない。 したがって,他に原告らの上記主張を認めるに足りる証拠は存しないから,原告らの本件請求は,その余を検討するまでもなく失当というべきである。 (2) 争点(2)ア(空港排水施設の設置にあたり既往最大雨量を基準にしなかった点の設置管理瑕疵及び原告らの被害との因果関係)について(原告ら)被告は,空港の排水施設が10年確率降雨に対応する1時間50ミリメートルで設計されていることをもって,何ら「瑕疵」はなかった旨主張している。 しかし,整備基準は,財政的な制約なども考慮して設定された行政的側面からの整備基準に過ぎず,損害賠償請求判断の司法的な基準となるものではない。司法的な基準においては,国の営造物が単に行政的な整備基準に適 ,整備基準は,財政的な制約なども考慮して設定された行政的側面からの整備基準に過ぎず,損害賠償請求判断の司法的な基準となるものではない。司法的な基準においては,国の営造物が単に行政的な整備基準に適合しているからといって,それによって国賠法2条1項の「瑕疵」がないとはいえないものである。このことは,幾多の公害裁判等の判例によっても確認されている。「瑕疵」判断においては,現実に発生した危害との関係で,過去の観測データや危害防止対策の容易さ,発生した被害の大きさなどを総合的に考慮して判断されるべきものである。 本件について,歴史的には,例えば昭和32年6月27日に池田土木において1時間66.7ミリメートルの降雨が観測され,同40年9月16日にも1時間57ミリメートルの降雨が,同42年7月9日にも51ミリメートルの降雨が観測されている。被告のいう50ミリメートルの降雨が10年確率であるといっても,それは机上の計算上のことであり,現実には昭和39年からの空港拡幅の直近でもそれを超える降雨が観測されているものである。また,空港敷地は広大でかつ舗装や芝生で覆われており,そのためにひとたび下水管等の排水能力を越えて雨水が生じた場合は,空港は本件の如く巨大な水たまりとなる。そして,こうした巨大な水たまりに集まった雨水は,それが大量に越流する事態になれば,当然隣接地域に越流していき,そこに集中した被害を生じさせる可能性があるのである。 したがって,空港のような巨大な営造物の場合には,通常の場合以上に排水設備を強化することが求められるのである。具体的には,少なくとも,被告は空港拡幅時には昭和32年の1時間66.7ミリメートルの降雨があることは十分に予見できたものであり,当然にこれに対応する排水設備を講ずべき義務があったのである。 (被告)原告らは, とも,被告は空港拡幅時には昭和32年の1時間66.7ミリメートルの降雨があることは十分に予見できたものであり,当然にこれに対応する排水設備を講ずべき義務があったのである。 (被告)原告らは,空港排水施設の設置管理の瑕疵を判断するにあたっては,既往最大雨量を考慮すべきであり,少なくとも昭和32年に池田土木において観測された1時間雨量66.7ミリメートルを基準にすべきであるなどと主張する。 しかし,空港の排水施設は予想された計画雨量に対応する排水能力を備えており,通常予想される降雨に対しては水害発生の危険がないのであるから,原告らの主張は,被告に対して過大なことを要求するものであって失当である。 ア空港の排水施設の設置基準について幹線排水路及び空港川の2本の排水路は,昭和39年度から昭和43年度にかけて整備されたものであるところ,この整備にあたっては流域の地方自治体から提示を受けた各排水路に流れ込む水量を前提に,空港内からの排水量について,降雨確率年数を10年とし,その雨量である1時間50ミリメートルの降雨に対応できる排水能力を有する排水路として,設計・施工されたものである。 イ設置基準の合理性について空港の排水施設は,以下のとおり,放流先の猪名川の河川改修状況,周辺自治体の下水道整備状況等に加え,過去における降水量,溢水被害の有無等から判断して,適正な流量計画に基づく排水能力を備えており,排水施設としての一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えているものである。 (ア) 周辺自治体の整備規模との整合性について空港排水施設の整備規模については,周辺自治体の整備規模と整合性をとる必要があり,空港であるという一事をもって他に比べて特別に排水施設を強化する必要性が認められるものではない。したがって,排水施設の流 排水施設の整備規模については,周辺自治体の整備規模と整合性をとる必要があり,空港であるという一事をもって他に比べて特別に排水施設を強化する必要性が認められるものではない。したがって,排水施設の流量計画については,その社会的,技術的,財政的制約等を総合考慮して決定すべきであるところ,その排水施設が通常の降雨に対応できずに冠水してしまうような不合理なものでない限り,通常有すべき安全性を有するものと解され,既往最大降雨量を上回る雨量をも想定した計画を立てなければならない義務はない。 (イ) 他の施設との比較について空港の排水施設の整備状況を周辺自治体の下水排水施設の整備状況と比較すると,豊中市,池田市が5年確率降雨,伊丹市,尼崎市が6年確率降雨に対応する排水施設であるから,空港は,その周辺自治体より大きい排水能力を有している。また,この排水能力は,FAA(米国連邦航空局)の採用している確率年が5年,全国の自治体等の下水道部局の採用している確率年が5年ないし10年となっていることなどに照らしても,適正なものである。 (ウ) 河川との関連性について空港の排水は,最終的には河川に放流することになるので,河川の流下能力いかんによっても排水路の排水能力の上限が画される関係にあり,放流先の河川との関連性を考慮しながら双方の安全性確保のための調整を図らなければならない。昭和57年に国土交通省(旧建設省)が猪名川における総合治水対策推進のために策定した猪名川流域整備計画では,猪名川の内府県管理区間の河道の処理については「毎時50ミリメートル相当の河川の改修を促進する」とされているのであるから,幹線排水路及び空港川の計画流量に何ら問題はない。単に既往最大雨量のみを基準に排水能力を高め,制限なく猪名川に排水すると,猪名川の氾濫というより大きな災害を 修を促進する」とされているのであるから,幹線排水路及び空港川の計画流量に何ら問題はない。単に既往最大雨量のみを基準に排水能力を高め,制限なく猪名川に排水すると,猪名川の氾濫というより大きな災害を招く結果となるし,多くの財政負担も伴い,周辺自治体の下水道整備規模と整合性がとれないものとなり,妥当ではない。 ウ排水能力の調査及び確認について2本の排水路は,昭和45年に大阪府により排水能力の調査が行われ,その結果いずれも1時間雨量50ミリメートルの降雨に対応できる排水能力があることが確認されている。 また,昭和63年8月24日に大阪航空測候所が観測した最大1時間雨量51ミリメートルの降雨の際にも,空港内の駐車場が一部浸水したものの空港外への溢水はなかったし,平成11年6月29日に同測候所において観測した最大1時間雨量63.5ミリメートルの降雨においても同様であり,幹線排水路及び空港川の流量計画に合理的な安全性が備わっていたことは明らかである。 エポンディング機能について仮に既往最大雨量である1時間雨量66.7ミリメートルを基準にすべきであるとしても,空港のグリーンベルトには,滑走路,誘導路,エプロン等に降った雨水を速やかに受けて下水管渠に流せるようにするため,集水口付近が窪地状に削られているところ,この窪地部分には,空港全体に1時間19.5ミリメートルの降雨があったときに相当する6万1902立方メートルの貯水能力を有するので,結果として合計1時間雨量69ミリメートルに対応するだけの能力が備わっている。 オ小括以上より,空港排水施設は予想された計画雨量に対応する排水能力を備えているものであり,通常予想される降雨に対しては水害発生の危険がないのであるから,設置管理に瑕疵はない。 (3) 争点2イ(空港川と幹線排水路の流域設定及び 予想された計画雨量に対応する排水能力を備えているものであり,通常予想される降雨に対しては水害発生の危険がないのであるから,設置管理に瑕疵はない。 (3) 争点2イ(空港川と幹線排水路の流域設定及び空港とB地区との境界に止水壁や開水路を設置しなかった点の設置管理の瑕疵及び原告らの被害との因果関係)について(原告ら)ア流域設定について仮に1時間50ミリメートルの降雨に対応する排水設備しか設置することができなかったとしても,本件水害では,空港川が空港周辺では何ら越流していなかったにもかかわらず,B地区との境界では幅280メートルにわたって越流水が発生していたという事実から見れば,幹線排水路と空港川の流域設定を適切にしていれば,本件水害被害は最小限に押さえられたものである。 イ止水壁・開水路の設置について空港は,昭和39年からの拡幅工事によって人為的に流域が分離され,B地区との境界に雨水が集中するような地形に変えられた。被告は,人為的に雨水がB地区との境界に集中する構造を作り出した,あるいはそうした構造を放置した以上,空港内の雨水を低地であるB地区に集中的に流出させない対策(超過洪水対策)を講ずることが当然に求められていたものである。そして,本件水害時の空港とB地区との境界での湛水深は最大約30センチメートルであったことを考えれば,仮に流域界すなわち分水嶺に適切な高さを持った止水壁が設置されていれば,あるいは空港南西部に開水路を巡らせていれば,本件水害は発生しなかったか,あるいは原告らの被害は最小限にとどめられたものである。しかも,止水壁や開水路の設置は費用的にも多額を要するものではなく容易に設置が可能であったものである。 この点被告は,止水壁は,遊水池,地下貯留施設などと併用するなどの方策が必要である,あるいは,原告らの超過 壁や開水路の設置は費用的にも多額を要するものではなく容易に設置が可能であったものである。 この点被告は,止水壁は,遊水池,地下貯留施設などと併用するなどの方策が必要である,あるいは,原告らの超過洪水対策は,空港に過度の浸水被害を受忍すべきとするものであると主張しているが,原告らの主張している,そして被告に求められていた止水壁は,河川の氾濫などを想定した大規模なものではなく,単に一時的に空港からの雨水が特定地域に集中することを防止する程度の止水壁の設置である。本件水害は,その程度の対策が行われただけで,被害の防止あるいは最小化がなされた事案である。 そして,空港ビルの床面は空港とB地区との境界部分と比較して1メートル以上も高く,そうした止水壁を設置してもその影響は軽微であり,滑走路にしても,仮に水に浸かって一定時間使用することができなかったとしても,こうした豪雨のときはそもそも離着陸自体が不可能であり,その意味では空港の負担は極めて軽微なものである。空港という公共的役割を持つ施設が緊急にその程度の負担を受忍すべきは十分にあり得ることであり,むしろ受忍すべき義務でもある。 (被告)ア幹線排水路及び空港川の流域設定について幹線排水路及び空港川の流域設定は,本件水害を除くと現在に至るまで一度も空港からB地区に溢水したことがないことからも明らかなとおり,雨水を適切に配分しているから,変更する必要がない。 仮にやむを得ず流域変更をするとしても,この場合には河川管理者や周辺住民と十分協議することが必要であり,空港の一存のみで設定変更できるものではなく,流域変更の不備をもって空港の排水施設の瑕疵を論じることはできないのである。また,いかなる降雨状況によっても,いつも同様に空港川に余裕が生じるわけではなく,猪名川の水位が高い場合や空港川流域 はなく,流域変更の不備をもって空港の排水施設の瑕疵を論じることはできないのである。また,いかなる降雨状況によっても,いつも同様に空港川に余裕が生じるわけではなく,猪名川の水位が高い場合や空港川流域に大量の降雨があったときには,空港川が大氾濫するおそれもある。流域変更は,あらゆる場合を想定してされなければならず,本件集中豪雨ではこうであったから流域設定が適切でなかったというような単純なものではない。 そもそも,原告らは,本来あるべき又は越流を防ぎ得た流域設定について,何ら具体的に主張しておらず,本件流域設定の瑕疵を論じる前提を欠いている。 イ止水壁・開水路の設置について(ア) 雨水が集中した原因空港の滑走路の縦断勾配は,航空機の運航上の理由からできるだけ水平になるように設計されているだけで,周辺地域の地形勾配を著しく変化させたり,人為的に雨水を低地部に集中させる地形を作り出すことはないのであり,被告が滑走路拡幅工事によって空港とB地区との境界に雨水が集中するような構造的な状態を作り出したことはない。 そもそも,B地区一帯は,豊中,池田の丘陵地帯からの勾配が平たんとなる地形勾配の末端地点の土地であり,しかも前面は猪名川の堤防で仕切られているので,空港の在否にかかわらず雨水が集中する地域であり,通常の量を超える降雨があったときは浸水しやすい土地であった上に,同地域内に下水処理場等が氾濫対策として盛土をした上に建設された結果,B地区内における雨水がA工業団地に集中する状態になったのである。 (イ) 超過洪水対策の意義等超過洪水対策には,遊水池・地下貯留施設の造成,住宅のかさ上げ,止水壁の設置など様々な方法が考えられるところ,これらの実施には,市街地における用地取得が困難なこと(社会的制約),選択方法によっては多大な事業費がかか 遊水池・地下貯留施設の造成,住宅のかさ上げ,止水壁の設置など様々な方法が考えられるところ,これらの実施には,市街地における用地取得が困難なこと(社会的制約),選択方法によっては多大な事業費がかかること(財政的制約),流水をせき止め又は集める等することにより流路が変わるので,他の地域への被害の転嫁を生じさせないこと(技術的制約)という諸制約が存在し,このような制約を伴う超過洪水対策を,過去に計画流量を超えた降雨が一度でも存在したすべての地域に要求することは不可能である。 (ウ) 超過洪水対策の不備と空港設置管理の瑕疵確かに,超過洪水対策を講じることによって周辺地域の安全性は高まる。 しかし,超過洪水対策は,街作りと一体となった総合的治水対策が目標であり,超過洪水対策の不備を空港の設置管理の瑕疵と直ちに結び付けて論ずることは誤りである。 超過洪水対策の不備をもって空港の設置に瑕疵があるというためには,過去に空港周辺の流域に計画雨量を超える降雨がしばしばあり,これによって空港からの溢水により被害を生じさせ,又は生じる可能性が著しく高い場合であって,空港が超過洪水対策を講じることが財政的にも技術的にも可能かつ必要不可欠であることが明らかで,このような対策の不存在から生じる溢水被害が社会通念上看過することができず,その放置が著しく不合理であることを要すると解すべきである。 これを本件について見ると,過去に計画雨量を超える降雨がしばしばあったわけではないこと,過去に空港からの溢水被害が発生していないこと,A工業団地においても空港からの溢水被害が生じたことがなかったこと,空港の単独事業として超過洪水対策を講じることには技術的な困難があることに,証人Jの証言及び原告ら各代表者尋問の結果中に,原告らもB地区が浸水被害を受けることを想定していなか たことがなかったこと,空港の単独事業として超過洪水対策を講じることには技術的な困難があることに,証人Jの証言及び原告ら各代表者尋問の結果中に,原告らもB地区が浸水被害を受けることを想定していなかったとの供述部分があることをも併せ考えると,本件集中豪雨の当時に空港が超過洪水対策を講じていなかったとしても,著しく不合理であるとはいえず,空港の設置に瑕疵があるということは到底できない。 (エ) 止水壁や開水路の設置が妥当な超過洪水対策といえるか否か仮に超過洪水対策を講ずる必要があるとしても,原告らの主張する超過洪水対策の内容(止水壁・開水路の設置)は,空港及びその上流域に雨水をためて浸水被害を受忍させ,空港より下流域の浸水を回避しようとするものであったり,空港川に雨水を導くことによって空港川流域に浸水被害の危険をもたらそうとするものであり,妥当でない。 また,現状として,空港とB地区との境界に沿って空港の場外に下水溝が存在し,鶴田雨水幹線を通じて鶴田ポンプ場から猪名川に排水される一方,空港内にも下水管渠が存在し,幹線排水路を通じて十ノ坪排水樋門から猪名川に排水されており,空港とB地区との境界において,下水排水施設は十分合理的な能力を有すると考えられる。よって,これらの下水排水施設に加えて,さらに,空港とB地区との境界に沿って止水壁又は開水路を設置すべきだとする原告らの主張は,合理性がない。 (4) 争点(2)ウ(本件集中豪雨の際に7号スクリーンを引き上げなかった点の設置管理の瑕疵及び原告らの被害との因果関係)(原告ら)ア保安対策とスクリーンの設置についてスクリーンが,保安上の必要から通常は引き下げられているものだとしても,排水のための重要な設備である排水路に,別目的で,排水路を遮断する構造で付随的に設置されている以上,排水路の ンの設置についてスクリーンが,保安上の必要から通常は引き下げられているものだとしても,排水のための重要な設備である排水路に,別目的で,排水路を遮断する構造で付随的に設置されている以上,排水路の機能を阻害しないことが優先されるべきである。 イ予見可能性について7号スクリーンは,本件水害以前にも,ある程度の量の雨が降ったときに大量のごみ等が付着して流下を阻害していたことが何度となくあった。すなわち,7号スクリーンは,豪雨時にだけ目詰まりを起こすのではなく,引き下げられた状態が続けば通常の降雨状況でも目詰まりは進行し,その状態で豪雨となった場合には,目詰まりの程度がさらに進むとともに,流下水量の急増によって,溢水に至るのである。 したがって,本件当日において,早ければ兵庫・大阪ともに大雨・雷注意報が出された19時頃,遅くとも大阪に大雨・洪水警報が出された23時20分には,被告は,スクリーンを引き下げた状態が続けば流下するごみの増加による目詰まりが進行するということを認識し得たのであり,大雨がさらに続けば溢水に至る危険性があるということも予見可能だったのである。 ウ回避可能性について被告は,大阪に大雨・洪水警報が出た23時20分には,40から50ミリメートルの大雨だったから,各スクリーンを順次回って引き上げ作業を実施することは不可能だったと主張する。 しかし,作業に一定の時間は要する等の事情はあるとしても,作業自体ができないような状態ではない。また,兵庫・大阪ともに大雨・雷注意報が出された19時頃においては,引き上げ作業には何の支障もなかった。 エ因果関係について調査報告書等によれば,7号スクリーンが閉鎖されていたことからスクリーンに大量のごみが付着していたため,漏れ出た雨水の一部が金網やその下の部分を通って空港内に流入 なかった。 エ因果関係について調査報告書等によれば,7号スクリーンが閉鎖されていたことからスクリーンに大量のごみが付着していたため,漏れ出た雨水の一部が金網やその下の部分を通って空港内に流入し,その流入量は少なく見ても1秒あた10.7から14.6立方メートルである。そして,流入時間はGやH証人によれば午前0時30分頃から同2時30分頃の2時間である。したがって,雨水の流入総量は7万7000から10万5000立方メートルにも及ぶことが分かる。この流入量は,空港からB地区への雨水の流出量約30万立方メートルの3分の1にもあたり,7号スクリーン付近から空港に流入した雨水は,空港の地形的な特徴,すなわちB地区が空港敷地内で最も低い地域であることから,B地区に集中したものである。したがって,空港からB地区への大量の雨水の流出には,7号スクリーンの閉鎖が大きな影響を与えていたことも明らかである。 (被告)ア保安対策とスクリーンの設置について空港の保安対策は,空港の管理者としての重要な職務であり,航空機や空港施設が過激派等によるゲリラ活動,航空機爆破等のテロの対象になると,重大な結果を惹起することは明らかであるから,保安対策の一環として,空港への不法侵入を未然に防止する目的でスクリーンが設置された。 スクリーンは,通常の降雨状況であればそれ自体では排水施設の流下能力を低下させるようなことはないから,スクリーンを設置し,これを引き下げていたからといって,排水施設が通常有すべき安全性を欠いているとはいえない。 むしろ,スクリーンを時期を問わずに引き上げていたり,相当程度の降雨により引き上げていたりすると,保安対策にならないのである。 イ予見可能性について(ア) 本件集中豪雨の降雨特性本件集中豪雨は,空港北西端部から池田市を中心とする東西 げていたり,相当程度の降雨により引き上げていたりすると,保安対策にならないのである。 イ予見可能性について(ア) 本件集中豪雨の降雨特性本件集中豪雨は,空港北西端部から池田市を中心とする東西3キロメートル,南北1・5キロメートルの極めて限られた範囲の地域で約4時間という深夜の短時間の内に総雨量400ミリメートルを超え,また,東西11キロメートル,南北6キロメートルの範囲の地域においても総雨量200ミリメートルに達する局地的な大雨であった。特に空港北西部に近接する池田下水処理場では,総雨量408ミリメートル,最大1時間雨量127ミリメートルを記録し,また,A工業団地があるB地区に最も近い大阪航空測候所でも,総雨量221・5ミリメートル,最大1時間雨量91ミリメートルに達し,いずれの観測所でも1,2,3時間雨量とも1000年確率を超える降雨を観測し,大阪府及び兵庫県の警報基準を大きく上回る観測史上経験したことのないみぞうの局地的かつ短時間の集中豪雨であった。 (イ) 予見可能性の判断時期について空港における気象情報は,大阪空港事務所が大阪管区気象台大阪航空測候所から発信される情報を気象情報受信装置により受信しているところ,一般の天気予報から7号スクリーンの溢水やB地区の浸水被害を予見することは到底不可能である。 大阪航空測候所は,空港とその周辺地域を対象とする一般の天気予報よりきめ細かな情報に基づいて気象現象の予測をしており,飛行場施設に災害等の重大な影響を及ぼすおそれがあると予想される場合には,飛行場警報を発信して航空関係者に警戒を呼びかけ,飛行場施設に被害を及ぼすおそれがあると予想される場合には,飛行場気象情報を発信して航空関係者に注意を促すこととしているところ,大阪空港事務所は,こうした専門家からの情報に基づいて対策を 呼びかけ,飛行場施設に被害を及ぼすおそれがあると予想される場合には,飛行場気象情報を発信して航空関係者に注意を促すこととしているところ,大阪空港事務所は,こうした専門家からの情報に基づいて対策を検討している。 したがって,本件集中豪雨,ひいては本件水害の発生の予見可能性を判断するにあたっては,保安対策との兼ね合いを考慮しても,大阪航空測候所から飛行場警報や飛行場気象情報を受信した時点を基準とすべきである。 (ウ) 予見可能性本件集中豪雨について,気象情報受信装置によって入手した情報は,平成6年9月6日23時30分の大雨と雷に関する飛行場気象情報(1時間に20ミリメートル以上の降雨が続く見込み)及び同月7日0時45分の飛行場大雨警報(空港では雷を伴い1時間に50ミリメートル以上の強い雨が降る見込み)であるところ,飛行場気象情報は空港排水施設の排水能力を上回る降雨予想ではなかったこと,これまでに短時間の降雨や排水能力を超える降雨によって7号スクリーンから溢水が生じるような目詰まりが生じたことがないこと,これまで市街地から大量の雨水やごみが流入したことがないこと,1000年確率を超える規模の豪雨を予測することは到底できなかったこと等に照らすと,平成6年9月6日23時30分の時点で溢水の危険性を予見することは到底不可能であった。 ウ回避可能性について同年9月7日午前0時ころ,空港の当直職員は,空港事務所への浸水に気が付き,庁舎内への浸水を防止する作業を行い,空港施設の状況把握に出掛け,空港の場周道路に入ろうとしたが,場周道路にも湛水が生じていた上,1時間80ミリメートルに達する豪雨と激しい雷のため場周道路を通行することができず,7号スクリーンに近づくことは不可能な状態であった。 したがって,空港事務所が大阪航空測候所から飛行場大 ていた上,1時間80ミリメートルに達する豪雨と激しい雷のため場周道路を通行することができず,7号スクリーンに近づくことは不可能な状態であった。 したがって,空港事務所が大阪航空測候所から飛行場大雨警報を入手した同日午前0時45分の時点においては,7号スクリーンに近づくことは不可能な状態で,これを引き上げることはもはやできなかったから,仮に7号スクリーンからの溢水が本件水害発生の原因であるとしても,回避可能性はなかったというべきである。 エ因果関係について原告らは,本件集中豪雨時に7号スクリーンを引き下げていたという瑕疵により本件水害を被ったと主張するところ,7号スクリーンの瑕疵と本件水害の発生との間に因果関係が認められるためには,本件集中豪雨時に7号スクリーンが閉鎖されていたため,そこに大量の廃棄物が引っかかり,幹線排水路の水がせき止められ,あふれ出た雨水が同所周辺から大量に空港に流れ込み,それが空港を横切って空港とB地区との境界からB地区に流入したということが立証されなければならない。しかしながら,原告らは,上記のとおり,7号スクリーンから溢水した雨水が空港とB地区との境界から流出した雨水であることは,何ら立証していないし,7号スクリーンが目詰まりをしたときと目詰まりをしないときとを比べて,原告らの浸水深にどのような影響を与えたか,空港上流地域からどのくらいの雨量の流入があったのか等についても検討していない。 そして,鑑定書によれば,7号スクリーンの瑕疵と本件水害の発生との間に因果関係は認められない。 (ア) 7号スクリーンから空港に流入した雨水の動向について7号スクリーンから空港に流入した雨水の中には,7号スクリーン付近に降った雨や,土地の高低差によってその上流地域から流れてきた雨水も含まれている。 また,7号スク 港に流入した雨水の動向について7号スクリーンから空港に流入した雨水の中には,7号スクリーン付近に降った雨や,土地の高低差によってその上流地域から流れてきた雨水も含まれている。 また,7号スクリーンから空港に流入した雨水は,空港を横切るとき,直接B地区方向に向かわず,空港南西端に貯留されるものもあれば,空港内に存在する下水管渠を通じて空港川又は幹線排水路に再び導かれるものもある一方,グリーンベルトには約6万1902立方メートルの雨量を貯水できるのであって,7号スクリーンからの溢水がすべてB地区に流入するわけではない。 (イ) 鑑定書について鑑定書によると,7号,8号の各スクリーンの開閉にかかわらず,①空港川最上流域付近において溢水が生じた状態で空港敷地内に流入し,空港川に沿って空港南東端方面に流下する雨水,②空港前面駐車場において溢水が生じ,空港ターミナルビル北西側付近から空港敷地内に流入した後,滑走路に沿って空港南東端方面に流下する雨水,③空港前面駐車場において溢水が生じ,幹線排水路に沿って氾濫流下しつつ7号スクリーンに至る途中で空港内に流入し,誘導路に沿って空港南東端方面に流下する雨水が生じていることが判明し,空港とB地区との境界から流出した雨水には,上記の大量の雨水も含まれており,7号スクリーン付近から空港に流入した雨水はほんの一部に過ぎず,同スクリーン付近から空港に雨水の流入があった一事をもって直ちにB地区の浸水原因と結び付けることはできない。 そして,本件氾濫水理解析では,7号,8号の各スクリーンが全閉であった場合をRUN1,全開であった場合をRUN3としてシミュレーションを行った結果,RUN1の湛水深はスクリーンがRUN3の湛水深と比較して約8センチメートル深くなる程度であって,7号スクリーンの開閉はB地区の浸 N1,全開であった場合をRUN3としてシミュレーションを行った結果,RUN1の湛水深はスクリーンがRUN3の湛水深と比較して約8センチメートル深くなる程度であって,7号スクリーンの開閉はB地区の浸水状況にほとんど影響を及ぼしていないのである。 (5) 争点5(本件水害により原告らが被った損害額)について(原告ら)ア原告株式会社芦田原告株式会社芦田は,A工業団地に工場を2つ持っており,購入した中古の半導体製造装置を修理,改造して商品とし,芦田第2工場のクリーンルームに保管していた。(別表(一)のとおり)(ア) 使用,販売不能による損害①真空蒸着装置EBX-6D4インチ用500万円② 酸化拡散炉2基DD-9400V44000万円③ 膜圧組成測定装置CAT-NO36202000万円④ 反射微小寸法測定器LAMPAS-MS800万円(イ) 修理費用芦田本社工場のマシニングセンター(平面加工機)1台とボーリング(繰り抜き機)1台の修理費用326万7160円(ウ) 工場,倉庫,クリーンルームの修理,清掃費用900万円(1平方メートルあたり3万円)合計 1億0526万7160円イ原告共栄プレス工業株式会社原告共栄プレス工業株式会社は,金属プレス加工業を業務としているが,現在のプレス機械は自働送り部分に電子機器が使われているため,同部分が水に浸かっただけで,深刻な損傷を受けるため,極めて多数の機械類の修理が必要となり,また,工場内部や機械類の洗浄,使用不能となった機械類の廃棄処分を余儀なくされ,そのために多額の費用を要した。 (ア) 機械類の修理費用(別表(二)のとおり)3635万9515円(イ) 工場内部や機械類の洗浄,使用不能となった機械類の廃棄費用(別表(三)のとおり)285万7954円 を要した。 (ア) 機械類の修理費用(別表(二)のとおり)3635万9515円(イ) 工場内部や機械類の洗浄,使用不能となった機械類の廃棄費用(別表(三)のとおり)285万7954円(ウ) 営業損害(別表(四)のとおり)277万7894円合計 4199万5363円ウなにわ金属株式会社なにわ金属株式会社は,長尺のボルト,座金の製造販売を行っており,工場内には多数の工作機械と,製造した商品を保管していた。 (ア) 機械等の使用不能による損害(本件水害時の時価)① 3.5トントラック1台14万6433円② 事務用品1式・電話・ファックス機11万9000円(イ) 修理費用① 1.7トンリフト1台23万円② クレーン1台(スイッチの取替)20万円③ 機械モーター(オーバーホール他)835万7323円(ウ) 座金,ナットが錆びたためにパーカー処理をして使用可能にするための修理費用① 有限会社杉村工業での修理分25万0740円② 中村螺子株式会社での修理分8万5250円③ 東和工業株式会社での修理分13万4863円(エ) 復旧費用工場内部の水,泥,油の除去,片付けなどのために,平成6年9月7日から同月14日まで従業員13人(1日あたの給与合計は24万2650円)が7日間,同月16日から21日まで従業員12名(1日あたの給与合計は10万2650円)が5日間,それぞれ本来の作業に従事できず,復旧作業にあたった費用221万1800円(オ) 営業損失本件水害により従業員が全く就労できなかった12日間の損害115万1604円合計 1288万7013円エ原告有限会社猪尻鉄工所原告有限会社猪尻鉄工所は,鉄板の切断,穴開け作業を主な業務内容としており,製品は建 く就労できなかった12日間の損害115万1604円合計 1288万7013円エ原告有限会社猪尻鉄工所原告有限会社猪尻鉄工所は,鉄板の切断,穴開け作業を主な業務内容としており,製品は建設機械の部品であった。 (ア) 機械設備や電気機器類の修理費用370万円(イ) ボルト等の製品,鋼材等の原材料の使用不能による損害150万円(ウ) 外注費や売上減による営業損失280万円合計 800万円オ原告株式会社桜製作所原告株式会社桜製作所は,プラスティック成形,組立およびプラスティック成形金型制作を業務内容とする会社であった。 (ア) 機械類の修理費用(別表(五)のとおり)2143万6400円(イ) 製品及び原材料の損害(別表(六)のとおり)2119万1750円(ウ) 復旧費用工場内を6日間にわたって清掃し,それに要した人件費102万円(エ) 受注中止やキャンセルによる営業損害87万6000円合計 4452万4150円カ原告株式会社辻本金型製作所原告株式会社辻本金型製作所は,携帯電話,テレビ,プリンター等の超精密部品の金型を製造しており,製造のための機械もメーカーに特注した極めて特殊なものであったが,本件水害によってこれらの機械類が水に浸かって修理が必要となった修理費用等。(別表(七)のとおり)合計 1010万円キ原告有限会社コマキ原告有限会社コマキは,亜鉛鉄板を材料として,木造住宅用建材のメタルタスの製造販売をしていた。 (ア) 機械類の使用不能による損害① 電話機1台1万円② コンピュータ1式14万円③ 研磨機1台7万5000円(イ) 修理費用① モーター19万1034円② カウンター点検修理2万3175円③ ラス機44万6093円④ 円② コンピュータ1式14万円③ 研磨機1台7万5000円(イ) 修理費用① モーター19万1034円② カウンター点検修理2万3175円③ ラス機44万6093円④ 金型研磨8万0340円⑤ コンプレッサー1万3287円⑥ ホルダー研磨23万1750円⑦ 事務所補修費用24万2050円⑧ 自動車集積等250万円(ウ) 原材料等の使用不能による損害(別表(八)のとおり)製品,原材料が使用不能となり,スクラップとなり,その合計損害額は,334万1300円からスクラップとして処分して得た26万5535円を控除した額307万5765円合計 702万8494円ク原告株式会社セラ原告株式会社セラは,プレス加工,自動車用ブレーキ部品の製造販売業者である。 (ア) 修理費用① オイルクーラー用クーリングタワーの排水ポンプ20万円② 油圧プレス(FB5001)のシリンダー用サーボ弁34万円③ 油圧プレス(FB8001)のCNCコントローラ等250万円(イ) 材料の使用不能による損害(別表(九)のとおり)477万6162円(ウ) 復旧費用本件水害による復旧作業のために,A工場の従業員35名がのべ350時間,本社工場の従業員28名がのべ168時間勤務した費用129万5000円(エ) 営業損失本件水害直前1年9か月の全社1日あたりの平均売上高は135万円であったが,この内A工場の売上貢献度は少なくとも50パーセントであり,平成6年8月30日時点の営業利益率4.7パーセントで試算した額32万2000円合計 995万9372円(被告)ア原告株式会社芦田関係(ア) 使用,販売不能による損害について半導体製造装置の使用不能について,甲(ヒ)第1号 パーセントで試算した額32万2000円合計 995万9372円(被告)ア原告株式会社芦田関係(ア) 使用,販売不能による損害について半導体製造装置の使用不能について,甲(ヒ)第1号証の1の作成時期等が不明であり,本件水害の当時,それらの製品がすべて完成し,存在していたことを的確に裏付ける証拠はない。 価格については,いわゆるバブル経済の崩壊後,一山7000万円で購入したものが修理等しただけで10倍にもなるとは考え難いところ,同原告は,この点につき甲(ヒ)第1号証の94(株式会社トーメンの平成6年1月の見積書)を提出するが,この見積書は,見積有効期限が1か月に過ぎず,本件水害までの約8か月間,売買契約が締結されていないことからすると,見積書の価格で購入する会社があったとはにわかに信じ難い。また,同原告は,これらの製品をグレードアップした証拠として,同号証の5ないし93を提出しているが,これによっても販売不能による損害を主張している5つの機械につきどの程度の費用をかけたのか不明である。 (イ) 修理費用についてマシニングセンターやボーリングが本件水害の当時存在したことを的確に裏付ける証拠はないし,そもそも,金額は,326万7160円ではなく,32万6716円であると思われる(同号証の96ないし99)。 (ウ) 工場,倉庫,クリーンルームの修理,清掃費用について同原告が被ったと主張する損害は,近隣工場から流出した重油の影響が多大であるところ,当該重油の保管の過誤に基づく損害をも被告に請求することは失当である。また,復旧作業代が1平方メートルあたり3万円であるとする根拠が不明である。さらに,クリーンルームがどの程度の性能のある部屋であるのか不明であるし,床材を張り替えたことを的確に裏付ける証拠がなく,構造体内部の土砂も 1平方メートルあたり3万円であるとする根拠が不明である。さらに,クリーンルームがどの程度の性能のある部屋であるのか不明であるし,床材を張り替えたことを的確に裏付ける証拠がなく,構造体内部の土砂も本件浸水が原因であることを認めるに足りる証拠もない。 イ原告共栄プレス工業株式会社関係(ア) 機械類の修理費用について本件水害の当時,これらの機械が存在したことを的確に裏付ける証拠はないし,同原告の主張を前提としても,20年以上使用している機械もあり,それらのすべてが正常に作動していたか疑問である。 (イ) 営業損害について外注費を営業損害としているが,外注に出した仕事は,いつ受注し,その納期はいつだったのか,納期を延期できなかったのかどうか不明であるし,自分の工場で作業した場合は経費等が生じるはずであるから,少なくともその分は差し引いた額を損害とすべきである。 ウ原告なにわ金属株式会社関係(ア) 機械等の使用不能による損害について本件水害の当時,トラック等が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。 甲(ヒ)第3号証の1(同原告代表者の報告書)の2⑥には,「電気系統がたびたび故障して」とあるところ,修理業者の修理方法が適切でなかった可能性もあり,特に平成7年7月の故障の原因が本件浸水であると認めるに足りる証拠はない。 (イ) 修理費用について同原告が主張する製品等が存在したことを的確に裏付ける証拠はないし,製品等の保管状況から考えると,錆びが本件浸水によって生じたものか疑問がある。 (ウ) 復旧費用について同原告は,従業員13名が7日間,12名が5日間も復旧作業に従事したと主張するが,この事実を的確に裏付ける証拠はないし,支払ったと主張する金額についても,給料明細などの資料が存在せず,計算の根拠が明らかでない。 (エ) が7日間,12名が5日間も復旧作業に従事したと主張するが,この事実を的確に裏付ける証拠はないし,支払ったと主張する金額についても,給料明細などの資料が存在せず,計算の根拠が明らかでない。 (エ) 営業損失について領収書等の重要な資料が全くない以上,損害の認定は困難である。 エ原告有限会社猪尻鉄工所関係(ア) 機械設備や電気機器類の修理費用について本件水害の当時,同原告が主張する機械類が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。 また,同原告が自ら修理できたということは,大した故障ではない可能性があるし,損害額の根拠も全く明らかでない。 (イ) ボルト等の製品,鋼材等の原材料の使用不能による損害について本件水害の当時,どのような材料がどのくらい存在し,どの程度の損傷があったのか,廃棄処分するしかなかったのか不明であり,同原告の主張を的確に裏付ける証拠が全くない。 (ウ) 外注費や売上減による営業損害について工場が稼働できなかった期間等が不明である上,外注に出した事実,売上が減った事実等を的確に裏付ける証拠が全くない。 オ原告株式会社桜製作所関係(ア) 機械類の修理費用について本件水害の当時,同原告が主張する機械類が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。また,領収書が存在せず,同原告の主張どおり実際に修理し,費用等を支払ったのか否か不明である。 箱詰機及びロボットは,同原告が自ら修理しているから,大した故障ではない可能性があるし,損害額の根拠も全く明らかでない。同原告が主張する「交換オイル」は,その主張する機械類の修理といかなる関係があるのか不明である。自動車修理についても,本件水害の当時当該自動車が工場内に存在したことを的確に裏付ける証拠はない。機械室の解体建て替えは,本件水害といかなる関係があるのか不明である。甲 る関係があるのか不明である。自動車修理についても,本件水害の当時当該自動車が工場内に存在したことを的確に裏付ける証拠はない。機械室の解体建て替えは,本件水害といかなる関係があるのか不明である。甲(ヒ)第5号証の43(同原告代表者の陳述書)の別表1に記載されている「同等中古相場」は,これを的確に裏付ける証拠がない。 (イ) 製品及び原材料の損害について原材料及び部品の修理不能は,本件水害の当時実際に存在した個数を前提とすべきであるところ,どのくらいの製品が存在し,どのくらい廃棄処分したか不明である(同号証の36では,製品の内容や数量がはっきりしない。)。成形品は,ポリ袋に入れて保管していたのであるから,損傷の程度は少ないはずである。材料については,粉砕100キログラム(同号証の29)がどこから発生したのか不明であるし,その単価も不明である。同号証の33(製品棚札)については,他の製品棚札と比較すると,一時期にまとめて記載されたことが推認され,その証明力には疑問がある。 (ウ) 復旧費用について機械等に付いた泥などの清掃,機械の良品・不良品の選別等の作業に21名が従事して6日間も要するのか疑問がある。また,諸手当を含めた給与総額を根拠に損害額を算定するのはおかしいし,復旧作業以外の業務を4割とした根拠も不明である。 (エ) 営業損害について受注中止やキャンセルが本件浸水のみに起因するものなのかどうか不明である。同原告が主張する将来の受注継続期間,個数,平均利益率を的確に裏付ける証拠はない。 カ原告株式会社辻本金型製作所関係本件水害の当時,同原告が主張する機械類が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。また,本件浸水によりどのような損傷があったのかを明らかにする証拠もない。 キ原告有限会社コマキ関係(ア) 機械類の使用不 の当時,同原告が主張する機械類が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。また,本件浸水によりどのような損傷があったのかを明らかにする証拠もない。 キ原告有限会社コマキ関係(ア) 機械類の使用不能による損害について甲(ヒ)第7号証の1(被害明細書)は,資産表から物品の価格を計上しているが,それが時価なのか購入価格なのか不明である上,それを裏付ける証拠がない。 (イ) 修理費用について同号証の2の1ないし8(請求書)は,何についての請求書なのか明らかでなく,実際に支払済みであるのか否かも不明である。 「事務所補修」や「自動車集積等」は,本件水害とどういう関係があるのか不明である。 (ウ) 原材料等の使用不能による損害について本件水害の当時,同原告が主張する原材料等が存在したことを的確に裏付ける証拠はない(同号証の1によって認定することはできない。)。 ク原告株式会社セラ関係(ア) 修理費用について本件水害の当時,同原告が主張する機械が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。甲(ヒ)第8号証の1(同原告代表者の陳述書)3(1)に記載された「会計帳簿」によっては,修理内容等が判明しないし,本件浸水に基づく修理に係る支払であるかどうかも不明である。 (イ) 材料の使用不能による損害について本件水害の当時,同原告が主張する材料が存在したことを的確に裏付ける証拠はない。本件浸水の結果,どのように使用不能になったのか,使用不能になった材料はどうなったのか,スクラップ処分したのか否かも不明である。特に,鉄板が雨水に浸っただけで直ちに使用不能になるのか疑問である。 (ウ) 復旧費用について同原告は,63名が延べ518時間も復旧作業に従事したと主張するが,それが妥当な復旧作業と認めるに足りる証拠はないし,平均時間賃金を2500円で になるのか疑問である。 (ウ) 復旧費用について同原告は,63名が延べ518時間も復旧作業に従事したと主張するが,それが妥当な復旧作業と認めるに足りる証拠はないし,平均時間賃金を2500円で算出する根拠やそれを裏付ける資料はない。 (エ) 営業損失についてバブル経済の崩壊による売上の減少が考えられるのに,平成4年からの数字を持ち出して算出するには疑問がある。また,1日あたりの売上を135万円とする根拠が不明であり,A工場の売上高に示す割合が50パーセントであるとする根拠や営業利益率が4.7パーセントであるとする証拠もない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件水害が空港からの大量の雨水の流出により発生したものであるか否か)について原告らは,調査報告書等を重要な根拠として,B地区の内水量3万1361立方メートルに対し空港からB地区への雨水の流入量は約30万立方メートルであると主張し,被告は,7号スクリーンの有効河積0%であるRUN1の場合で約21.9万立方メートル,同50%であるRUN2の場合で約24.7万立方メートル,同100%であるRUN3の場合で約22.8万立方メートルとの記載のある鑑定書を重要な根拠としてこれを否定するので,検討する。 (1) 調査報告書等の信用性についてア証拠(甲1,12,19,乙19,31,32,C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (ア) 甲第1号証(国土問題研究会A工業団地水害調査団作成)では,内水の計算式は「B地区における総降水量-鶴田ポンプ場から猪名川への排水量=B地区における雨水の滞留量」とされ,鶴田ポンプ場からの排水量を約4万5000立方メートル,A地区周辺の雨量を代表する観測点として原田下水処理場をあげて,「原田(下水処理場)の総降水量が160ミリメー 区における雨水の滞留量」とされ,鶴田ポンプ場からの排水量を約4万5000立方メートル,A地区周辺の雨量を代表する観測点として原田下水処理場をあげて,「原田(下水処理場)の総降水量が160ミリメートルという比較的小さな値であることが注目される」として,空港から雨水の流入がなかった場合の平均的な浸水深は37センチメートルであるとされていた。 (イ) 被告は,平成9年10月20日付け準備書面で,A工業団地に最も近い観測点が原田下水処理場ではなく,大阪航空測候所であると主張した。 (ウ) 国土問題研究会A工業団地水害調査団は,平成12年2月付けの補充書(甲12)を作成し,大阪航空測候所における観測値をもとにB地区における総降水量を算出した上,内水の計算式を,「B地区における総降水量-{地中への浸透量(総降水量の10パーセントが浸透)+鶴田ポンプ場から猪名川への排水量+清掃工場等の範囲に降った雨水の幹線排水路又は空港川への排水量(1時間40ミリメートルに相当する降雨量の排水がされたとして計算)}=B地区における雨水の滞留量」と変更した。上記計算式で,1時間40ミリメートルに相当する降水量の排水としたのは,設計雨量毎時50ミリメートルの排水路があることを根拠として,少し控え目に見て,その8割程度の40ミリメートルが0時から3時まで排水されたと仮定したものであった。これにより,空港から雨水の流入がなかった場合の平均的な浸水深は,清掃工場等の範囲に降った雨水の幹線排水路又は空港川への排水量がなかった場合に53.7センチメートル,これがあった場合の参考値を16.9センチメートルと算出された。 (エ) 被告側から,鶴田ポンプ場のB地区からの排水量の算定を調査したところ,空港川流域の面積は,甲第1,第12号証で前提とされている約11.4ヘクタールではなく 6.9センチメートルと算出された。 (エ) 被告側から,鶴田ポンプ場のB地区からの排水量の算定を調査したところ,空港川流域の面積は,甲第1,第12号証で前提とされている約11.4ヘクタールではなく,約34ヘクタールであるとの内容の記載がある乙第19号証が第7回口頭弁論期日(平成9年10月20日)に,乙第32号証が第11回口頭弁論期日(平成12年6月9日)に,それぞれ提出された。乙第32号証に関連して,尼崎市の下水道計画の流出係数の証拠として乙第33号証も,第8回口頭弁論期日(平成9年12月17日)に提出された。 (オ) Cは,鶴田ポンプ場からの排水量を,乙第19,第32号証の値を採用して,鶴田ポンプ場からの総排水量を約2万3000立方メートルと訂正し,さらに,清掃工場等の排水量を1時間30ミリメートルと変更した上,地中への浸透量を総降水量の20パーセントと変更した甲第19号証を平成12年11月30日付けで作成した。上記1時間30ミリメートルの根拠は,被告提出の乙第33号証に尼崎市の公共下水道の流出係数は0.5ないし0.54であったことが記載されていたことによるものである。 イ調査報告書等は,その内容が2度にわたって変遷している。内容が変遷すること自体により,直ちに調査報告書等の信用性が否定されるべきものではない。しかし,変遷の根拠は,合理的に説明し得るものでなければならない。そこで,この点について検討する。 (ア) 調査報告書は,被告側が指摘ないし提出した観測点や鶴田ポンプ場からの排水量の誤りを訂正するにとどまらず,訂正を契機に雨水の地中への浸透量,清掃工場等から幹線排水路又は空港川への排水量という新たな要素を計算式に付け加えた。Cは,新たな要素を付け加えた理由について,甲第1号証では計算するまでもなく浸透や下水道処理場からの排水を 浸透量,清掃工場等から幹線排水路又は空港川への排水量という新たな要素を計算式に付け加えた。Cは,新たな要素を付け加えた理由について,甲第1号証では計算するまでもなく浸透や下水道処理場からの排水を考えれば被害はほとんど起らないであろうことが誰の目にも明らかであったから計算していなかったと説明する。しかし,甲第1号証は,「水害の実態と原因,さらに水害対策について,総合的な調査検討がなされた」(1頁)という客観的な立場で作成されたものであって,被告に責任があることになれば足りるという立場で作成されたものではないから,上記説明は,甲第1号証の作成時点で本来考慮すべき要素を計算しなかった理由としては,必ずしも首肯できるものではない。 (イ) また,調査報告書等は,雨水の地中への浸透率という,内水の量を計算する際に欠かせないデータについて数値を変更している。そして,浸透率を最終的に20%とした根拠について,「乙第33号証の流出係数が0.54から0.65となっており最大と最小の差が0.11であること,及び流出係数が大きい0.65の場合でも10パーセント程度の浸透量が見込めることを考慮すると,地中への浸透率は20パーセント程度と考えることができる」(甲19)として,主として尼崎市公共下水道の平均流出係数を挙げている。しかし,雨が降った場合,少量のうちはほとんどが地中に浸透して流出はせず,雨量が多くなると次第に地中には浸透できなくなって流出量が増加し,更に雨量が多くなると降った雨はほとんど地中に浸透せず全部が流出することは明らかである。したがって,地中への浸透量は,どの程度の雨量で地中に浸透できなくなるかが問題であって,総雨量の何%が浸透できるかという「浸透率」を問題とすべきものではないというべきである。そして,証拠(乙19,33)によれば,尼崎市 透量は,どの程度の雨量で地中に浸透できなくなるかが問題であって,総雨量の何%が浸透できるかという「浸透率」を問題とすべきものではないというべきである。そして,証拠(乙19,33)によれば,尼崎市公共下水道は最大1時間雨量46.8ミリメートルの雨を前提として計画されて,A地区の流出係数は0.54であることが認められるから,地中への浸透量は,約22ミリメートル(46.8×(1-0.54))前後と認められる。ところが,証拠(乙1の1)によれば,A地区では3時間で200ミリメートル前後の降雨があったことが認められるから,その20パーセント(40ミリメートル前後)とは,相当異なるように思われる。したがって,上記地中への浸透率を20%としたことについては,その算定方法においても,結果においても,疑問が持たれる。 (ウ) 調査報告書等は,清掃工場等の排水量についても数値を変更し,最終的には,敷地面積21.4ヘクタールの清掃工場等から,3時間にわたり,毎時30ミリメートルが排水され,合計約1万9000立方メートルとしたが,その根拠については,「安全率を考慮して毎時30ミリメートル程度の排水が可能」(甲19)というものである。しかし,証拠(乙49)によれば,清掃工場等の一部である原田下水処理場のうち,幹線排水路より西側(敷地面積約19.9ヘクタール)から幹線排水路への排水量は,毎秒1.108立方メートル,3時間の排水量にして約1万2000立方メートルであって,調査報告書等のように毎時30ミリメートルの排水がされたと仮定した場合に計算される3時間の排水量(約1万8000立方メートル)ではない。したがって,上記調査報告書等には,原田下水処理場からの排水量に反する部分があり,この点にも誤差があることが認められる。 この点に関して,原告らは,乙第49号証に 万8000立方メートル)ではない。したがって,上記調査報告書等には,原田下水処理場からの排水量に反する部分があり,この点にも誤差があることが認められる。 この点に関して,原告らは,乙第49号証には清掃工場からの排水量が含まれていないから,これを考慮すれば調査報告書等の数値は過大ではないと主張する。しかし,証拠(乙19)によれば,地図上でみても清掃工場の面積は原田下水処理場の面積より相当小さいことが認められるから,同工場からの排水が上記誤差を補えるほど大量であったとは認めがたい。原告らの主張は採用することができない。 ウ調査報告書等は,空港からB地区へ流入した雨水の量を計算するにあたって,流入幅が約280メートル,水深を示す枯れ草の高さが,最高で20ないし30センチメートル,最低が0であったことから,流入水の水深を10センチメートル,幅280メートルという一定の状態で,3時間流入し続けたとして,流入量を約30万立方メートルと計算しているので,この点について検討する。 証拠(C,D)によれば,空港とB地区の境界は,南が低く,北が高くなっており,水深最高の20ないし30センチメートルとは上記流入幅280メートルの南端の数値であり,最低の0とは上記流入幅280メートルの北端の数値であることが認められる。そうだとすると,幅280メートル,水深10センチメートルの長方形の断面を持つ水の断面積は,底辺280メートル,南端の水深(高さ)20センチメートル,北端の水深0の直角三角形の断面を持つ水の断面積と同じであるから,流入水の水深を10センチメートル,幅280メートルとして3時間流入し続けたと計算することは,280メートルにわたり,南端20センチメートル,北端0という,ほぼ最高水深で3時間にわたり流入し続けたのと同じ前提に立った計算ということが 280メートルとして3時間流入し続けたと計算することは,280メートルにわたり,南端20センチメートル,北端0という,ほぼ最高水深で3時間にわたり流入し続けたのと同じ前提に立った計算ということができる。 しかし,降雨量等の変化に伴い,流入幅や流入水深等が時間的に変化することは明らかである。また,空港とB地区の境界の上記地形からすれば,水深が少ないときは流入幅も少なくなるから,流入幅280メートルとは,流入量が最大になったときの幅であるものと認められる。そうだとすると,流入水が最大幅である280メートルにわたり,南端20センチメートル,北端0というほぼ最高の水深で3時間流入し続けた(すなわち,ほぼ最大流入量が3時間続いた)と計算することは,流入量を過大に計算しているのではないかとの疑問を禁じ得ない。 この点に関して,C証人は,「空港付近の雨の降り方」と「空港が非常に広い面積を有していて降雨量が少しぐらい変化しても全体の水深がそれほど敏感に変化しない」と供述するけれども,その計算の根拠として首肯するに足りるものではない。かえって,証拠(乙1の1)によれば,空港の雨量を代表する大阪航空測候所では,午前0時から午前1時の雨量は63ミリメートル,午前1時から午前2時の雨量が91ミリメートルが,午前2時から午前3時の雨量が53ミリメートルであったことが認められるから,「降雨量が少しぐらい変化しても」という程度ではなかったものというべきである。 エ調査報告書等は,7号スクリーンから溢水して空港へ流入した雨水の量を計算するにあたって,2時間にわたって同量の雨水が流入したことを前提に計算している。しかし,上記計算は,2時間にわたり同一水位でフェンス下の洗掘が完了した状態が継続したと仮定したものであるうえ,流出係数,流速について根拠を欠くものであ 量の雨水が流入したことを前提に計算している。しかし,上記計算は,2時間にわたり同一水位でフェンス下の洗掘が完了した状態が継続したと仮定したものであるうえ,流出係数,流速について根拠を欠くものであって,上記水位と洗掘の点からすると過大である可能性もあり,これをそのまま計算の前提とするには正確さに疑問が持たれる。 オ以上のとおり,調査報告書等は,当初の甲第1号証の段階から,誤りが後に判明した箇所があり,適切な調査に基づいてデータが選択されたのかという正確性に疑問があること,計算の基礎とすべきデータを変更していることの合理性に疑問があること,いかに概算であるにしても計算方法が大雑把すぎないかとの疑問があることから,本件水害の状況を再現したものと直ちに認めることはできない。 (2) そうすると,空港からB地区への雨水の流入量については,鑑定書に記載された数値である約21.9万ないし約24.7万立方メートルを超えていたと認めるに足りる証拠はないものというべきである。 (3) もっとも,仮に,空港からB地区への雨水の流入量が約21.9万ないし約24. 7万立方メートルであるとしても,この流入した雨水が本件水害に大きな影響を与えたことは明らかである。よって,更に次の争点について判断することとする。 2 争点(2)ア(空港排水施設の設置に当たっての瑕疵及びこれと本件水害との相当因果関係の有無)について(1) 国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい,かかる瑕疵の存否については,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである。 そして,空港の排水施設は,空港に降る雨水という自然的原因により発生した水を,河川等 ,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである。 そして,空港の排水施設は,空港に降る雨水という自然的原因により発生した水を,河川等に排水する施設であって,一種の治水施設である。このような排水施設の設置管理についての瑕疵の有無は,それが設けられている場所の流域特性等を前提とし,排水施設としての一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである。 (2) 証拠(乙15,19,28,47,D,株式会社芦田代表者,株式会社セラ代表者)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる(重要な証拠については,末尾に掲記する。)。 ア幹線排水路及び空港川は,昭和39年度から43年度にかけて整備されたものである。その整備に当たっては,流域の地方自治体から提示を受けた各排水路に流れ込む水量を前提に,空港内からの排水量について,1時間50ミリメートルの降雨に対応できる排水能力を有する排水路として,設計・施工された。幹線排水路と空港川がこの排水能力を有することは,昭和45年の大阪府による調査で確認された。なお,1時間50ミリメートルは,土木学会雨水流出に関する研究報告書より土木学会公式で算出した10年確率の雨量であり,付近の小花観測所で算出すると53.90ミリメートルと試算されたが,この差は水路の余裕として計画されていた。(乙15)イ空港のグリーンベルト等は周辺より低くなっており,約6万1902立方メートルの水を貯留する能力がある。これは,空港全体に約19.5ミリメートルの降雨があった場合の水量である。したがって,空港は,上記幹線排水路及び空港川の排水能力の外に,それだけの降雨を溢水させない能力を有している。 (乙19の2- これは,空港全体に約19.5ミリメートルの降雨があった場合の水量である。したがって,空港は,上記幹線排水路及び空港川の排水能力の外に,それだけの降雨を溢水させない能力を有している。 (乙19の2-36)ウ周辺自治体の下水排水施設の整備状況は,豊中市及び池田市が5年確率降雨(1時間44.2ミリメートル),伊丹市及び尼崎市が6年確率降雨(1時間46.8ミリメートル)に対応する排水施設として整備を進めている。全国の主な地方自治体百数十のうち,10年確率を超える計画下水量で計画されているのは大阪市(12年確率)のみであり,他の地方自治体は10年確率またはそれ以下である。(乙19の2-4,47)エ幹線排水路及び空港川は,最終的に猪名川に流れ込む。しかし,猪名川に流入する各河川や排水路(幹線排水路及び空港川も含む。)から猪名川へ無制限に排水が行われると,猪名川が氾濫するおそれがあるため,各河川からの排水量は制限されざるを得ず,幹線排水路については十ノ坪樋門,空港川についてはB樋門により流量が規制され,各樋門の容量以上の水が排水できないようになっている。そして,猪名川の改修には,財政的,技術的な制約があるため,本件集中豪雨当時,幹線排水路及び空港川から猪名川への排水能力として許されていたのは,最大で10年確率降雨,すなわち1時間50ミリメートルの降雨に対応する水量であった。(乙15,28,D)オ原告株式会社芦田は昭和52年ころから,原告株式会社セラは昭和54年ころからB地区のA工業団地で操業していたが,各社の代表者らには,A工業団地が低地にあるという認識もなかったものであって,本件水害以前にA工業団地に空港からの溢水による水害が発生していたとか,原告らが水害に悩まされていたということではなかった。(原告株式会社芦田代表者,同株式会社セラ いう認識もなかったものであって,本件水害以前にA工業団地に空港からの溢水による水害が発生していたとか,原告らが水害に悩まされていたということではなかった。(原告株式会社芦田代表者,同株式会社セラ代表者)(3) 前記(2)認定の事実,とりわけ下記の諸点に照らせば,本件全証拠によっても,空港の排水施設に設置管理の瑕疵があったと認めることはできない。 ア空港の排水施設は,その地域の排水施設の一部という側面も有するので,周辺自治体の排水施設(下水施設)との整合性も考慮する必要がある。また,空港の排水は,最終的には河川に放流することになるので,単に排水能力を高め,制限なく放流先河川に排水すると,放流先河川の氾濫という大きな災害を招く結果となる。したがって,空港の排水は,放流先河川の流下能力いかんによって排水能力の上限が画される関係にあるから,放流先河川との関連性を考慮しながら双方の安全性確保のための調整を図らなければならない。流域特性として以上の点を考慮すると,空港の排水施設について空港周辺の地方自治体の下水整備計画(5年ないし6年確率降雨に対応する。)及び放流先の猪名川が受け入れ可能な排水量(10年確率降雨に対応する。)以上の排水施設を設けることが必要であったとは認めがたい点。 イ雨水を宅地等から河川に排水するという下水について,全国の主な地方自治体のほとんどは,雨水について,10年確率以下の降雨での計画下水量で計画されている。空港が,他に比べて特別に排水施設を強化しなければならないとする理由は見出せない点。 ウ過去十数年ないしそれ以上の間,空港からB地区への溢水はなかった点。 (4) 原告らは,空港敷地は広大でかつ舗装や芝生で覆われており,そのためにひとたび下水管等の排水能力を越えて雨水が生じた場合は,空港は本件の如く巨大な水たまりと 港からB地区への溢水はなかった点。 (4) 原告らは,空港敷地は広大でかつ舗装や芝生で覆われており,そのためにひとたび下水管等の排水能力を越えて雨水が生じた場合は,空港は本件の如く巨大な水たまりとなり,そこに集まった雨水は,それが大量に越流する事態になれば,当然隣接地域に越流していき,そこに集中した被害を生じさせる可能性があるから,空港のような巨大な営造物の場合には,通常の場合以上に排水設備を強化することが求められ,昭和32年の1時間66.7ミリメートルの降雨があることは十分に予見できたものであり,当然にこれに対応する排水設備を講ずべき義務があったと主張する。しかし,単に,空港であるとか,面積が広いとか,という理由で,排水設備を強化しなければならない義務が生じるものと解することはできない。 また,原告らは,空港が舗装や芝生で覆われていることをも,その主張の根拠とする。しかし,雨が降った場合,少量のうちはほとんどが地中に浸透して流出はせず,雨量が多くなると次第に地中には浸透できなくなって流出量が増加し,更に雨量が多くなると降った雨はほとんど地中に浸透せず全部が流出することは明らかである。そして,地中に浸透できない状態になった後に下水管等の排水能力を超えて雨水が生じた場合には,その雨水は水たまりとなったり,低地に溢水したりしていくことは,その地目が舗装と芝生で覆われているか,宅地や田畑であるかとは関係がない。原告らは,調査報告書等が,総降水量の何パーセントが地中に浸透するかを論じているのと同様に,地目によって,総降水量にかかわらず雨水が一定割合で地中に浸透することを前提として主張しているのかもしれないが,そうだとすると,それは前提において失当である。 3 争点(2)イ(空港川と幹線排水路の流域設定,止水壁や開水路不設置の瑕疵,及びこれら で地中に浸透することを前提として主張しているのかもしれないが,そうだとすると,それは前提において失当である。 3 争点(2)イ(空港川と幹線排水路の流域設定,止水壁や開水路不設置の瑕疵,及びこれらと本件水害との因果関係の有無)について(1) 流域設定について原告らは,本件水害では,空港川が空港周辺では何ら越流していなかったにもかかわらず,B地区との境界では幅280メートルにわたって越流水が発生していたという事実から見れば,幹線排水路と空港川の流域設定を適切にしていれば,本件水害被害は最小限に押さえられたと主張する。 しかし,いかなる降雨状況にあっても,常に空港川に余裕が生じるというものではなく,空港川に大量に排水するという流域設定をすれば,空港川流域に大量の降雨があった場合には空港川が氾濫するおそれがあることは自明である。そうである以上,単に,本件水害において幹線排水路が氾濫したとの一事を持って流域設定が誤りであったとすることはできない。ところが,原告らは,どのような流域設定をすれば「瑕疵のない」流域設定であるのかを具体的に主張しない。 そして,他に,流域設定が誤りであったと認めるに足りる証拠はない。 (2) 止水壁,開水路の設置についてア原告らは,昭和39年からの空港の拡幅工事によって人為的に流域が分離され,B地区との境界に雨水が集中するような地形に変えられたものであって,被告は,人為的に雨水がB地区との境界に集中する構造を作り出したとし,これを前提として,被告において,止水壁や開水路の設置という超過洪水対策を行うべきであったと主張する。 しかし,昭和39年からの空港の拡幅工事によって,B地区との境界に雨水が集中するような地形に変えられたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙15,48)によれば,昭和39年の滑走路 。 しかし,昭和39年からの空港の拡幅工事によって,B地区との境界に雨水が集中するような地形に変えられたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙15,48)によれば,昭和39年の滑走路拡幅工事以前は,空港の東側排水路(幹線排水路と重なる部分が多い)の水はB地区を流れる貝原樋水路(貝原排水路)から流下され,空港の西側排水路(空港川と重なる部分が多い)の水は,猪名川を水源とする用水と合流して(用排兼用水路),一部が空港排水路(飛行場排水路)から流下され,一部が用水路を経由して東側排水路と合流して貝原樋門を通じ貝原樋水路から猪名川へ流下されていたものが,上記空港の拡幅工事に伴い,東側排水路は幹線排水路として,西側排水路は空港川として整備され,流域が分離されて空港川(旧西側排水路)の水が幹線排水路(旧東側排水路)に流れ込むことがなくなったことが認められる。そうだとすると,この流域分離により,幹線排水路(旧東側排水路)に雨水が集中するような変化があったとは考えがたく,むしろ,空港川(旧西側排水路)の雨水が幹線排水路(旧東側排水路)や幹線排水路付近のB地区に集中しない構造に変化したもののように思われるところである。 イ原告らは,被告がB地区との境界に雨水が集中するような地形であることを放置したとして,このことをも,止水壁や開水路の設置という超過洪水対策を行うべきであったことの根拠とする。 しかし,空港の排水施設が社会通念上,是認し得る安全性を備えているにもかかわらず,さらに超過洪水対策を要求するのは,排水施設の安全性について二重の基準を設けるに等しく,被告に,必要とされる設置義務を超えた過大な負担を強いるものというべきである。被告がB地区との境界に雨水が集中するような地形を作出したのでないにもかかわらず,被告において,超過洪水対 けるに等しく,被告に,必要とされる設置義務を超えた過大な負担を強いるものというべきである。被告がB地区との境界に雨水が集中するような地形を作出したのでないにもかかわらず,被告において,超過洪水対策を行わなければならない義務を見出すことはできない。 4 争点(2)ウのうち,本件集中豪雨の際に7号スクリーンを引き上げなかったこと本件水害との因果関係について(1) 本件集中豪雨の際に7号スクリーンを引き上げなかったために,幹線排水路を流れてきたごみにより目詰まりし,幹線排水路の流れを妨げて溢水したとしても,そのことと,原告らの損害との間の因果関係は,原告らに立証責任がある。 (2) 証拠(甲1,乙1,14,19,26,38,46,52ないし54(枝番のあるものは,特に注記しない限り枝番も含む。以下同じ。),D)によれば,空港のある猪名川左岸地域は,北や東が高く南や西が低い地勢となっており,幹線排水路や空港川流域より土地が高いのは,空港の北東から北側(主に池田市)を流れる箕面川流域及び空港の東側(主に豊中市)にある千里川流域であること,箕面川流域及び千里川流域と幹線排水路流域及び空港川流域の間には自然の分水嶺は存在しないこと,本件集中豪雨の際には,空港北部に近接し箕面川と猪名川に挟まれている池田下水処理場では3時間最大雨量331ミリメートル,1時間最大雨量127ミリメートル,空港の東方にあって千里川に接する桜井谷ポンプ場では3時間最大雨量229.5ミリメートル,1時間最大雨量96.5ミリメートル,桜井谷ポンプ場と箕面川を挟んで反対側(空港の北方)にある上池田観測所では3時間最大雨量266ミリメートル,1時間最大雨量130ミリメートル,空港の南西にありB地区に最も近い大阪航空測候所では,3時間最大雨量207.5ミリメートル,1時間最大雨量91ミ 上池田観測所では3時間最大雨量266ミリメートル,1時間最大雨量130ミリメートル,空港の南西にありB地区に最も近い大阪航空測候所では,3時間最大雨量207.5ミリメートル,1時間最大雨量91ミリメートルであったこと,本件集中豪雨により,空港より上流の池田市では床上浸水約900棟,床下浸水約1800棟,道路陥没34か所,河川の護岸崩壊1か所,ため池ののり面損壊1か所,農地の冠水9ha等の被害が出,豊中市でも床上浸水世帯が多数出,空港川の上流域にも浸水被害が出ていること,空港内には多数の集水口(集水桝)があり,それが下水道につながっていて,空港内の水は最終的には空港川か幹線排水路に流出して行くこと,空港では,滑走路に降った雨を速やかに排水する目的で集水口の集水域付近に窪地を作ってグリーンベルトとしており,このグリーンベルトは周辺より低く,約6万1902立方メートルの水を貯留する能力があることが認められる。 そうだとすると,単純に考えれば,本件集中豪雨時に7号スクリーンが目詰まりして溢水したとしても,そのことから直ちに,その溢水が原因で原告らが浸水被害を受けたということはできないように思われる。すなわち,ア箕面川流域(主として池田市)や千里川流域(主として豊中市)に降った1時間最大雨量96.5ないし130ミリメートル,3時間最大雨量229.5ないし331ミリメートルなどという降雨は,豊中市及び池田市の下水排水施設の整備計画(1時間44.2ミリメートルの降雨に対応する排水施設)を大きく超えるものであったから,下水により排水できない雨水が相当多く発生する。排水できない降雨は,地表に溜まり,道路等を伝わって低地に移動し,より低い幹線排水路流域及び空港川流域に流れ込む。しかし,幹線排水路流域及び空港川流域でも,下水排水施設の能力を大きく超え 発生する。排水できない降雨は,地表に溜まり,道路等を伝わって低地に移動し,より低い幹線排水路流域及び空港川流域に流れ込む。しかし,幹線排水路流域及び空港川流域でも,下水排水施設の能力を大きく超える降雨があるため,下水により排水できない雨水がここでも相当多く発生する(そのため池田市,豊中市にも浸水被害が発生した。)。これらの雨水は,地表面(道路等)を流れてより低い空港内に流入する(これを「a」とする。)。 イ空港内でも,排水施設の能力(1時間50ミリメートルの降雨に対応する排水能力)を大きく超える1時間最大雨量91ミリメートル,3時間最大雨量207.5ミリメートル程度の降雨があるため,排水できない雨水が発生する(これを「b」とする。)。 ウ 7号スクリーンが目詰まりしていた場合上記アの状態では,幹線排水路には流下能力(これを「c」とする。)一杯の水が流れてきている。ところが,7号スクリーンが目詰まりして下流に全く水を流せないならば,その分だけの水(これも「c」である。)は,幹線排水路の両岸に溢水する。溢水した水(c)は,空港内に流れ込む(現実には,一部の水は左岸に貯留されて空港内には流れ込まないから(c)より少ないはずであるが,単純化するために(c)と同量とする。)。 地表面(道路等)を流れて空港内に入ってきた水(a),空港内に降った雨水(b),7号スクリーンから溢水した水(c)の3種類は,一体となって,いったん空港内で窪地になっているグリーンベルトに池状態に溜まる(a+b+c)。 グリーンベルトに溜まった水は,7号スクリーンよりも下流の幹線排水路に余裕のある限度まで,空港内の集水口から下水道を経由して幹線排水路に流れ出す(7号スクリーン付近から溢水した水は,まず,乙第54号証の着陸帯G-B1ないし3,GW-2ないし4,GO-1 幹線排水路に余裕のある限度まで,空港内の集水口から下水道を経由して幹線排水路に流れ出す(7号スクリーン付近から溢水した水は,まず,乙第54号証の着陸帯G-B1ないし3,GW-2ないし4,GO-1ないし3等の集水桝(集水口)方面に向かうであろうから,そこから7号スクリーンより下流の幹線排水路に流れ出る。)。7号スクリーンの下流は,上流から来る水がないため流下能力一杯の余力(c)があるから,その分(c)だけ排水することができる。したがって,空港内に溜まり続ける水は,(a+b+c-c)であるから,(a+b)である。この量(a+b)が,空港内のグリーンベルトの貯留能力を超えた分だけ溢水が起こる。 エ 7号スクリーンが目詰まりしていない場合上記アの状態では,幹線排水路には流下能力(c)一杯の水が流れてきている。7号スクリーンが目詰まりしていなければ,それより下流の幹線排水路は,流下能力一杯の状態であるから,地表面を流れて空港内に入ってきた雨水(a),空港内に降った雨水(b)は,着陸帯GB-1ないし3,GW-2ないし4,GO-1ないし3等の集水桝(集水口)付近に来た段階で,その先の幹線排水路が流下能力一杯であるために,流出できず,溜まり続ける。その水の量は(a+b)である。この量(a+b)が空港内のグリーンベルトの貯留能力を超えた分だけ溢水が起こる。 オそうだとすると,単純に考えた場合には,7号スクリーンが目詰まりしていても,いなくても,空港から溢水する量は同じであって,B地区の浸水被害は変わらないことになる。 カもとより,これは単純な仮定であって,①空港内の下水道の排水処理能力は幹線排水路の流下能力(c)と同じとは限らず,それより小さいのではないかとの疑問があり,仮にそうだとすると,7号スクリーンが目詰まりした影響は発生することになる。 ,①空港内の下水道の排水処理能力は幹線排水路の流下能力(c)と同じとは限らず,それより小さいのではないかとの疑問があり,仮にそうだとすると,7号スクリーンが目詰まりした影響は発生することになる。しかし,上記単純な仮定は,7号スクリーンが完全に目詰まりしていたとした場合の話であって,仮に,7号スクリーンの目詰まり(河積阻害)が50パーセント(7号スクリーンから溢水した水は0.5c)であれば,空港内の下水道の排水処理能力が幹線排水路の流下能力の50パーセント(0.5c)であっても,空港内に貯まり続ける水は,結局a+b(a+b+0.5c-0.5c)となって,上記単純な仮定と同様,7号スクリーンの目詰まりによる影響はないことになる。 キしかも,その他に,①7号スクリーンから溢水した水の一部は幹線排水路の左岸に溢れてそこに貯留されるため,右岸のB地区方向に向かって空港に流れ込む水は(c)より少ないはずであるから,7号スクリーンから溢水したことに対するB地区への影響は更に少ないのではないか,②7号スクリーンとB地区との間には,高いB滑走路があって堤防のような役割を果たし,7号スクリーンから溢水してグリーンベルト(滑走路の北側)に来た水は,B地区へは向かわず,B滑走路に沿って南東に流れ,空港の南端に貯留するものもあり,そうだとすると,7号スクリーンから溢水したことに対するB地区への影響は更に少ないのではないか,との疑問もある。 クもとより,上記単純な図式では,時間の経過による変動を始めとして様々な要因の検討が欠落しているため,現実はこのように単純なものでないことは明らかである。しかし,少なくとも,上記のように単純な図式を考えることができる以上,7号スクリーンから溢水があったとの事実から,直ちに,そのことと,B地区が一定以上浸水して原告らが浸水 でないことは明らかである。しかし,少なくとも,上記のように単純な図式を考えることができる以上,7号スクリーンから溢水があったとの事実から,直ちに,そのことと,B地区が一定以上浸水して原告らが浸水被害を受けたこととの因果関係を推認することはできないのである。 (3) 調査報告書等には,7号スクリーンが目詰まりして溢水した雨水の大部分が空港に流入し,その大半は空港の丁度反対側に当たるB地区へと流出して,A工業団地付近まで流れて大きな被害の発生につながったと考えられる旨の記載がある。 しかし,調査報告書等には,そのように考えられるとする理由について記載がない。しかも,調査報告書等は,前記のとおり,正確性に疑問があること,計算の基礎とすべきデータを変更していることの合理性に疑問があること,いかに概算であるにしても計算方法が大雑把すぎないかとの疑問があることから,上記記載を直ちに採用することはできない。 (4) かえって,鑑定書には,氾濫水理解析の結果として,7号スクリーン付近から空港に流入した雨水の流れには,空港南端やグリーンベルトで滞留するものもあり,7号スクリーンでの溢水がそのままB地区へ流入しているものではなく,本件集中豪雨の際の空港からB地区への雨水の越流状況は,7号スクリーンの全閉状態(RUN1)で21万9416立方メートル,有効河積率50%(RUN2)で23万5177立方メートル,全開状態(RUN3)で22万8230立方メートル,そこから空港川への越流ボリュームを差し引いた有効ボリュームの最大値は,RUN1で14万3497立方メートル,RUN2で13万4136立方メートル,RUN3で12万0617立方メートルであって,これをB地区の水深に換算すると,もっとも差の大きいRUN1とRUN3でも,約8センチメートルにすぎないから,B地 RUN2で13万4136立方メートル,RUN3で12万0617立方メートルであって,これをB地区の水深に換算すると,もっとも差の大きいRUN1とRUN3でも,約8センチメートルにすぎないから,B地区では7号スクリーンの影響による大きな差異は見られないとの記載がある。これについても検討することとする。 証拠(乙19,28,D)によれば,鑑定書は,提内地の氾濫水に対するモデルとして二次元不定流モデルを採用した氾濫水理解析の手法を用いて本件水害の状況を検討したものであること,上記氾濫水理解析は,「建設省河川砂防技術基準(案)同解説調査編」にも掲載されて治水実務に取り入れられ広く認知された方法であり,二次元不定流モデルは氾濫流解析手法の主流となっている手法であって,一定の科学的根拠を有するものと認められる。 また,証拠(乙19,D)によれば,鑑定書は,上記氾濫水理解析に当たり,空港,B地区及びその周辺の流域を細かく格子状(メッシュ)に分割し,地形図,測量図,排水施設図,降雨データ等の資料を使用して,各メッシュの中に,地盤高・地目等の土地条件,道路・盛土・家屋等の構造物の条件,排水路・樋門等の排水条件,広範囲の降雨条件等のデータをモデル化して入力し,これにより氾濫水の流れの方向・速さ・量を解析するという手法を採用していることが認められるところ,本件全証拠によっても,使用された資料やその手法に誤りや不合理な点や誤りがあるものとも認められない。 そして,証拠(乙19)によれば,鑑定書の氾濫水理解析の結果は,実際に本件水害の直後に残されていた水の痕跡から推測される実績湛水深(12か所)とも概ね整合性があり(この点は,後記キにおいて更に検討する。),水深の断面積も標高の高い位置から低い位置に不自然なく移行しており,特段不自然な点も窺われないこと ら推測される実績湛水深(12か所)とも概ね整合性があり(この点は,後記キにおいて更に検討する。),水深の断面積も標高の高い位置から低い位置に不自然なく移行しており,特段不自然な点も窺われないことが認められる。 そうだとすると,鑑定書の氾濫水理解析は,本件水害の状況を再現したとものとして,一応の合理性があるから,信用性を覆すような事情がない限り,一概には排斥できないものというべきである。 そこで,鑑定書の氾濫水理解析の信用性に関する原告らの主張について検討する。 ア粗度係数について原告らは,幹線排水路及び空港川の開渠部について,側壁はブロック積みになっているので,水理公式集(乙41)の「コンクリート,底面砂利」(0.015~0.020,標準値0.017)と「石積み,モルタル目地」(0.017~0.030,標準値0.025)の中間の粗度係数0.020を採用すべきであると主張する。 しかし,証拠(乙19の1の4ないし9・4-7ないし15,乙51の1ないし6)によれば,幹線排水路及び空港川の開渠部の両岸は,凹凸のついたコンクリートブロック積み,モルタル目地で,底面には土砂が堆積して草や苔が生えていることが認められるから,コンクリート,底面砂利の場合とは相当異なるものと認められる。したがって,鑑定書が,幹線排水路及び空港川の開渠部について,「石積み,モルタル目地」と同じ粗度係数0.025を採用したことには適切であったと認められる。 また,原告は,幹線排水路及び空港川の暗渠部の粗度係数について,0.015を採用すべきであると主張する。しかし,証拠(乙41,51の1ないし6)によれば,0.015とは「コンクリート,コテ仕上げ」の場合の粗度係数であること,幹線排水路及び空港川の開渠部分の底面には土砂が堆積していることが認められるところ,上記 (乙41,51の1ないし6)によれば,0.015とは「コンクリート,コテ仕上げ」の場合の粗度係数であること,幹線排水路及び空港川の開渠部分の底面には土砂が堆積していることが認められるところ,上記事実によれば暗渠部分の底面にも同様に土砂が堆積しているものと推認されるから,暗渠部分の粗度係数については,「コンクリート,コテ仕上げ」ではなく「コンクリート,底面砂利」の数値である0.017を採用すべきであると認められる。したがって,鑑定書が幹線排水路及び空港川の暗渠部の粗度係数について,0.017を採用したことは適切であったというべきである。 イ流出係数について原告らは,尼崎市公共下水道のA分区の流出係数は0.54であるから,0. 5を採用した鑑定書は誤りであると主張する。 しかし,証拠(乙19,D)によれば,流出係数0.5とは,降り始めからの累積雨量が50ミリメートルでも300ミリメートルでも,その50パーセント(50ミリメートルでは25ミリメートル分,300ミリメートルでは150ミリメートル分)が流出するとの趣旨ではなく,降り始めからの1時間の累積雨量が一定量まではその半分(50ミリメートルなら25ミリメートル)が地中に浸透し,残り(25ミリメートル分)が流出するが,3時間で300ミリメートルの累積雨量となった場合には最初の1時間で25ミリメートルが地中に浸透し,275ミリメートル分が流出するとの趣旨と認められる。そうだとすると,流出係数0.5と0.54の差は,最初の1時間の流出量が,25ミリメートル分であるか27ミリメートル分であるかという相違であるところ,降り始めの1時間の時点では,まだ下水や排水路にも余裕があるため,上記2ミリメートル分程度の水量が増えたとしても,それも含めて下流の猪名川等に流出できるようにも思われるから,上記 う相違であるところ,降り始めの1時間の時点では,まだ下水や排水路にも余裕があるため,上記2ミリメートル分程度の水量が増えたとしても,それも含めて下流の猪名川等に流出できるようにも思われるから,上記2ミリメートル分の差が,鑑定書の氾濫水理解析の信用性を覆すほどの影響を与えるとは認められない。 ウ等価粗度について原告らは,鑑定書が,流出解析における等価粗度の選択について,鑑定書では何ら根拠が示されていないと主張する。しかし,証拠(乙19の2の9ないし11・4-24・25・48)によれば,鑑定書は,幹線排水路流域ではR8流域に山林がある以外ほとんどが市街地であることを考慮して市街地に対応する等価粗度0.05(R8流域は0.10)を採用し,空港川流域では水田,市街地,芝地,道路が混在していることを考慮して面積加重平均によって等価粗度を算出していることが認められるから,これを根拠がないとすることはできない。 エ降雨量について原告らは,鑑定書が,降雨量について,ある測定点の欠測を他の測定点のデータで補完したり,1時間値しかない測定点のデータを6等分して10分間雨量とするなどしており,仮説にすぎないと主張する。しかし,測定値がなかったり,不足している部分について合理的な方法で推測をすることは妥当な手法というべきであるところ,測定点の欠測を他の測定点のデータで補完したり,1時間値しかない測定点のデータを6等分して10分間雨量とすることは合理的な方法というべきであるから,そのことは,鑑定書の信用性を覆すに足りるものではない。 オ有効雨量について原告らは,鑑定書は,すべてのメッシュで地目にかかわらず50ミリメートルまで50パーセント(0.5)の有効雨量としている点について,常識的に考えて,空港内の芝地の地中浸透量は他の地域に比べてもっと 原告らは,鑑定書は,すべてのメッシュで地目にかかわらず50ミリメートルまで50パーセント(0.5)の有効雨量としている点について,常識的に考えて,空港内の芝地の地中浸透量は他の地域に比べてもっと大きいのではないかと思われると主張するが,それが常識とも認められないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 カ空港川の溢水について原告らは,B地区で空港川は溢水していなかったことを前提として,鑑定書では,B地区で空港川が溢水したという結果になっているから,鑑定書は,本件水害を再現していないと主張する点について,検討する。 (ア) 調査報告書等には,「空港排水路(判決注・空港川)の水位は川底から70%程度でそれほど高くなかったことが当初から把握されていた」「②(判決注・空港からの,空港排水路による猪名川への流出)の概略の流出量は,・・・空港排水路の大雨の時の水深が水路の70%程度と考えられるので,約30立方メートル/secになる。また,空港排水路の最大流下能力は約55立方メートル/secと考えられる。」「空港から大量の雨水の流入があり,これが・・・空港排水路(空港川)へと流入した」として,B地区からの空港川への流入量について,毎秒18.30立方メートルの区間と毎秒5.81立方メートルの区間があった旨の記載がある。 上記空港川の水位が70パーセントで毎秒約30立方メートルとは,B地区から空港川に,毎秒18.30立方メートルと毎秒5.81立方メートルの合計毎秒約23立方メートルの水が流入する前の水量をいうものと解される(仮に,B地区からの上記流入後の水位をいうものだとすれば,それは到底信じがたい。)。そうだとすると,B地区からの流入後の流量は毎秒約53立方メートルとなり,空港川の最大流下能力が約55立方メートルだとすれば,ほぼ満水状態であ の水位をいうものだとすれば,それは到底信じがたい。)。そうだとすると,B地区からの流入後の流量は毎秒約53立方メートルとなり,空港川の最大流下能力が約55立方メートルだとすれば,ほぼ満水状態であるが,かろうじて溢水していないことになる。 しかし,証拠(C)によれば,上記水位が川底から70%とは,Cが,工業団地のIから聞いたことであるが,I自身も誰か他の人から聞いたものではないかということであること,その70%が,いつどの場所のことであるかは不明であり,C自身もピーク時の水深には対応していないということも考えられると思っていることが認められる。また,証拠(乙19)によれば,前記ア認定の粗度係数を採用して計算した場合の空港川の流下能力は,猪名川への出口に当たるB排水樋門で毎秒約37.1立方メートル,B地区付近で毎秒約45.6ないし約47.9立方メートルであることが認められる。そうだとすると,調査報告書等の数値には疑問ないし誤りがあり,ピーク時の水深が70パーセントをある程度超えていたとしたり,空港川の流下能力を訂正したりすれば,調査報告書等の他の数値をそのまま使用しても溢水が起こることになる。したがって,調査報告書等の他の数値が正しいかどうかは不明であるものの,少なくとも,調査報告書等の上記記載を根拠に,空港川が溢水していなかったと認めることはできない。 (イ) また,尼崎市の回答書(甲11)にも,「空港川の溢水はなく」との記載がある。しかし,上記回答書には,溢水がなかったとする根拠が記載されていない。そして,証拠(甲12,乙40)によれば,空港川の左岸は工場,右岸は水田が多いことが認められる。そうだとすると,民家もあまりない場所で,本件水害時のような深夜に,大雨の中,B地区からの溢水が大量に空港川に流れ込むという危険な情況の中で, 空港川の左岸は工場,右岸は水田が多いことが認められる。そうだとすると,民家もあまりない場所で,本件水害時のような深夜に,大雨の中,B地区からの溢水が大量に空港川に流れ込むという危険な情況の中で,空港川の最高水位の状況を正確に把握した者がいたかどうか自体が疑問であって,上記回答書の記載を直ちに採用することもできない。 (ウ) さらに,C証人は,空港川の付近の民家の玄関のフラワーポットが空港川の方向に流れていたことを根拠に,空港川が溢水していなかったと供述する。しかし,証拠(乙19,D)によれば,鑑定書においても,空港川の溢水は一部の区間であって,全体的に見れば,水はB地区から空港川の方向に流れたとの結果となっており,一時溢水した水が空港川に引いて行く際にフラワーポットも最終的に空港川方向に流れて行ったと考える余地もあることが認められる。したがって,上記フラワーポットが空港川の方向に流れていたとの点をもって,空港川が溢水していなかったことの証左とすることはできない。 (エ) 甲第18号証には,空港川右岸に居住するKが,自宅(有限会社望テック)に午前3時ころ浸水したところ,空港川は非常に水位が高かったが,溢れてはいなかったと述べた旨の記載がある。しかし,同証には,Eの供述として,空港川左岸甲では午前3時ころには水が少し引いたと思うとの記載もある。この記載に加えて,空港川右岸(K方ないし有限会社望テック)でも浸水していることを考慮すると,午前3時より前に,空港川左岸の浸水と左岸から空港川への流入量が最大となって空港川が溢水し,だからこそ右岸にある有限会社望テックが浸水したと解釈する余地もあるように思われるから,甲第18号証の記載をもって,空港川が溢水していなかったと認めることもできない。 (オ) 以上のとおり,空港川が溢水していなかった る有限会社望テックが浸水したと解釈する余地もあるように思われるから,甲第18号証の記載をもって,空港川が溢水していなかったと認めることもできない。 (オ) 以上のとおり,空港川が溢水していなかったと断定することはできず,むしろ,溢水していた可能性もかなり考えられるから,鑑定書において,空港川が溢水したとの結果となっていることをもって,鑑定書が不正確であるということはできない。 キ実績湛水深について鑑定書の氾濫水理解析の結果は,実際に本件水害の直後に残されていた水の痕跡から推測される実績湛水深(12か所)と比べて,A2地点,A4地点,B3地点においては,RUN1(7号スクリーン全閉の場合)で,それぞれ55.1センチメートル,43.1センチメートル,42.2センチメートル,RUN2で(7号スクリーン50パーセント閉鎖の場合),それぞれ71.4センチメートル,58.7センチメートル,45.6センチメートルの差があることが認められるので,検討する(なお,証拠(検甲1ないし3)によれば,本件水害時には,RUN3(7号スクリーン全開)の状態ではなかったことが認められるから,RUN3の結果が実績湛水深と異なるとしても,そのことは鑑定書の信用性を左右するものではないので,検討の必要を認めない。)。 (ア) A2地点及びA4地点について証拠(乙19,D)によれば,実績湛水深は,フェンスや木などに付着したごみや浮遊物などの痕跡から最大の水深を推定した数値であって,ごみや浮遊物が,波浪により高い位置に付着したり,自重や風などで低い位置に移動したりした可能性や,使用した計測機器の精度,計測者の習熟度によって,誤差が発生し,必ずしも正確に水位を表しているとは限らないこと,A1ないしA4地点は,いずれも空港の駐車場の中にあって,地盤(標高)はA3が最 性や,使用した計測機器の精度,計測者の習熟度によって,誤差が発生し,必ずしも正確に水位を表しているとは限らないこと,A1ないしA4地点は,いずれも空港の駐車場の中にあって,地盤(標高)はA3が最も高く15.3メートル,次いでA1が14.8メートル,A2が14.6メートル,A4が14.2メートルであること,実績湛水深を標高で表すと,A3が15.42ートル,A1が15.2メートル,A2が15.71メートル,A4が15.6メートルであることが認められる。そうだとすると,水は高所から低所に流れるため,同じ駐車場内では,A2やA4よりも,標高が高いA3やA1の方が標高で表したときの水位が高いはずであるのに,上記実績湛水深(標高値)は,A2やA4の方が約20ないし50センチメートルも高くなっていて,不自然であるから,A3及びA1か,A2及びA4か,いずれかの実績湛水深が誤っているものと認められる。仮にA2及びA4が誤りであるならば,鑑定書の氾濫水理解析の結果は,真実の水位とさほど違わないことになる。そして,いずれが誤りであるかを断定するに足りる的確な証拠はないから,結局のところ,A2地点及びA4地点における実績湛水深との違いをもって,直ちに鑑定書の氾濫水理解析に誤りがあるということもできない。 (イ) B3地点について証拠(乙19,34,43)によれば,B3地点の実績湛水深とされている数値(1.4メートル)は,空港の東から南東に巡らされた凸凹した高いコンクリート壁に残った痕跡から計測されたものであること,B3地点に近接するブラストフェンスにおいて測定された実績湛水深は,1.1メートルであったこと,地勢からみて,B3地点付近では上記コンクリート壁に沿って北東から南西方向に雨水が流れたこと,ブラストフェンスの周辺には水流を遮断するような構造物は された実績湛水深は,1.1メートルであったこと,地勢からみて,B3地点付近では上記コンクリート壁に沿って北東から南西方向に雨水が流れたこと,ブラストフェンスの周辺には水流を遮断するような構造物はないことが認められる。そうだとすると,B3地点からブラストフェンスの付近の水位は,もともと1.1メートル(RUN1とは約15.6センチメートルの差)であったが,B3地点での雨水の流れは,流下する進行方向のコンクリート壁に遮られてぶつかるとともに,側方の凸凹したコンクリート壁に遮られてぶつかるため,周囲に比べてせき上げられると同時に流速が抑えつけられることにより,部分的に水位が上昇して,コンクリート壁にぶつかる場所において局部的に1.4メートルとなったものと認められる。以上の事実に照らせば,鑑定書の氾濫水理解析の結果が,B3地点の実績湛水深と異なることは,鑑定書の信用性を覆すに足りるものではない。 (ウ) 原告らは,その他の地点でも,鑑定書の氾濫水理解析の結果が実績湛水深と一致しないと主張する。しかし,証拠(乙19)によれば,その他の地点の相違は,RUN2でも,せいぜい10センチメートルか最大でも約20センチメートル強,RUN1ではもっと少ないことが認められ,実績湛水深が前示のとおり誤差を伴うことに照らせば,この程度の相違は,鑑定書の信用性を左右するに足りるものではない。 (エ) 以上のとおり,鑑定書の氾濫水理解析の結果は,実際に本件水害の直後に残されていた水の痕跡から推測される実績湛水深(12か所)とも特段矛盾せず,A2地点及びA4地点は不明ではあるものの,その余の点については概ね合致しているから,全体としては概ね整合性が認められるというべきである。 ク空港からB地区への越流開始時間のずれについて(ア) 証拠(甲1,甲18,甲(ヒ)8 るものの,その余の点については概ね合致しているから,全体としては概ね整合性が認められるというべきである。 ク空港からB地区への越流開始時間のずれについて(ア) 証拠(甲1,甲18,甲(ヒ)8の2)によれば,空港からB地区への越流が始まったのは,9月7日午前0時過ぎ,遅くとも午前0時半までの間であるものと認められるから,鑑定書のRUN1は,空港からの越流開始時刻について,実際の越流開始時刻とは,約1時間半から2時間程度の相違があるものというべきである。 一方,証拠(乙19)によれば,鑑定書のRUN2(7,8号スクリーンの河積阻害50パーセント),RUN3(7,8号スクリーン全開)では,上記越流開始時刻は9月7日午前0時から午前0時半までの間となっており,実際の越流開始時刻とほぼ符合していることが認められる。 (イ) 原告らは,鑑定書において,RUN3よりRUN1の方がB地区への越流時刻が遅くなるという結論になっていることが非常識であると主張する。しかし,本件集中豪雨を前提としてごく単純に考えれば,RUN3よりRUN1の方がB地区への越流時刻が遅くなる方ことは不自然ではないように思われる。すなわち,① 空港には,地表面(道路等)を流れて空港内に入ってきた水(a),空港内に降った雨水(b)が来ており,これらも幹線排水路に排水されなければならない。ところが,7,8号スクリーンが全開の場合には,幹線排水路(流下能力c)は満水状態(水量c)であるため,地表面(道路等)を流れて空港内に入ってきた水(a),空港内に降った雨水(b)は,幹線排水路に流れることができず,空港内に貯留し続ける。 ② 一方,7,8号スクリーンが全閉状態の場合には,幹線排水路を流れる水(c)は,早い段階で8号スクリーンから,次に7号スクリーンから両岸に溢水するが,仮に れることができず,空港内に貯留し続ける。 ② 一方,7,8号スクリーンが全閉状態の場合には,幹線排水路を流れる水(c)は,早い段階で8号スクリーンから,次に7号スクリーンから両岸に溢水するが,仮に,両岸に半分ずつ溢水するものとすると,右岸に溢水した水(0.5c)は空港内に流れ込むものの,左岸に溢水した水(0.5c)は,左岸(ロータリー印刷側)に貯留されて同所に浸水被害を与えるものの,空港側(B地区方面)には向かわない。そして,7,8号スクリーンが全閉状態の場合には,上流から来た水が各スクリーンで遮られるため,それより下流の幹線排水路には余裕(c)があり,地表面(道路等)を流れて空港内に入ってきた水(a),空港内に降った雨水(b)と,各スクリーンから溢水して空港内に流入した雨水(0.5c)は,空港内排水路を通じて幹線排水路へと排水されることになる。 ③ これを,前記4(1)イの単純な考えの数値に当てはめると,RUN3(7,8号スクリーン全開)の場合に,空港内に溜まり続ける水は(a+b)であるのに対し,RUN1(7,8号スクリーン全閉)の場合に,空港内に溜まり続ける水は(a+b+0.5c-c)となり,最初のうちは(幹線排水路が河積阻害と関係なく溢水してしまうまでは),空港内に溜まり続ける水はRUN1の方が0.5c(左岸に貯留した分)だけ少ないから,B地区への溢水も,RUN1の方が遅くなるのではないかと思われる。 ④ もとより,実際の水流の機序は,他の要因があるためもっと複雑なものであったであろうと思われるが,少なくとも,7号スクリーンから溢水した場合には,溢水により幹線排水路左岸に貯留されて幹線排水路にもB地区へも向かわない水があることを考えれば,RUN3よりRUN1の方がB地区への越流開始時刻が遅くなるという結論を非常識とすることはで 場合には,溢水により幹線排水路左岸に貯留されて幹線排水路にもB地区へも向かわない水があることを考えれば,RUN3よりRUN1の方がB地区への越流開始時刻が遅くなるという結論を非常識とすることはできないのである。 (ウ) 原告らは,RUN1について,空港からB地区への越流開始時刻が実際の越流開始時刻より遅れているから本件水害を再現していないと主張する。 しかし,本件集中豪雨の際,7,8号スクリーンが最初から全閉であった(完全に目詰まりしていた)とは考えられない。一番最初は全開であったところへ,ある時点で上流部で溢水したために上流からごみが流れてきて8号スクリーンや7号スクリーンが目詰まりし,これにより河積阻害を起こしてRUN2やRUN1の状態に近づいていったのであろうことは容易に推認される。 そうだとすると,本件集中豪雨の際の早い時期の状態は,RUN1とは異なり,むしろ,RUN2やRUN3の方に近かったと推測される。この点に関して,C証人は,7号スクリーンが詰まり始めたのは12時(午前0時)前後くらいではないかとも供述する。仮に,上記供述を前提とすれば,午前0時前後まではRUN3かRUN2以下の状態であったことになるから,B地区への越流開始時刻は,RUN3かRUN2における結果と実際の時刻との整合性を考慮すべきことになる。C証人は,上記供述の根拠を詳しく説明していないためにそれが正しいか否かは判断できないものの,以上の点を考慮すれば,RUN1のB地区への越流開始時刻が実際の越流開始時刻より遅れていることをもって,直ちに鑑定書の氾濫水理解析の信用性を否定することはできない。 (エ) 越流開始時刻に実際とのずれが違いが生じた原因について,被告は,本件集中豪雨では,強雨域の中心核の移動が極めて早いことから,計算値と実績湛水深との間に時 の信用性を否定することはできない。 (エ) 越流開始時刻に実際とのずれが違いが生じた原因について,被告は,本件集中豪雨では,強雨域の中心核の移動が極めて早いことから,計算値と実績湛水深との間に時間的ずれが生じたためであって,計算ではティーセン法によって各流域の面積雨量から算出しており,時間的なずれがあるからといって,計算値が直ちに否定されるものではないと主張するので,検討する。 ① 証拠(乙3ないし7,19,29,D)によれば,以下の事実が認められる。 鑑定書は,地点雨量である観測所雨量から流域の面積雨量を算定するためにティーセン法を採用しているところ,ティーセン法におけるティーセン分割とは,各雨量観測所を直線で結んで,この直線を垂直二等分線によって区切り,この垂直二等分線をつないでいって各雨量観測所の回りに多角形を作り,その多角形の面積と流域面積の比を重みとして,地点雨量を平均する作業である(乙29)。このように,ティーセン法は,各雨量観測所のある一定時間の雨量データをもとに各区域内の雨量を平均するという作業を伴うため,ある一定の幅を持った時間内の,ある範囲を持った地域における総雨量は,実際と一致するものの,そのうち特定の一時点のある一点における実際の雨量とは,どうしても時間的なずれを生じる。そして,本件集中豪雨においては,特に強雨域の中心地が1時間ごとに変わるなど移動が極めて早かったため(乙3ないし7),その1時間の中でどのように移動していたかを正確に把握して実際の細かい面積雨量データを把握するのが困難であった。 ② Dの考えでは,そのために,計算値と実績湛水深との間に相当程度の時間的ずれが生じ,これが,越流開始時刻のずれにつながったが,鑑定書では,各河川流域の面積雨量(ある一定の幅を持った時間内の,ある範囲を持った地域にお のために,計算値と実績湛水深との間に相当程度の時間的ずれが生じ,これが,越流開始時刻のずれにつながったが,鑑定書では,各河川流域の面積雨量(ある一定の幅を持った時間内の,ある範囲を持った地域における総雨量)は実際と一致し,かつ,最終的には実績湛水深のデータを無理なく再現しているから,上記時間的なずれがあるから鑑定書の氾濫水理解析が誤っていることにはならないというものであって,D証人はその旨供述する。上記①認定の事実に照らせば,上記D証人の考えは,一応の合理的な説明であって,これを一概に排斥することはできない。 (オ) 以上の事実を考慮すれば,鑑定書のRUN1が,空港からの越流開始時刻について,実際の越流開始時刻とは,約1時間半から2時間程度の相違があることは,鑑定書の信用性を覆すに足りるものではない。 ケ 6号スクリーンの河積阻害について鑑定書の氾濫水理解析は,6号スクリーンには河積阻害が生じていなかったことを前提としてされたものであるので,6号スクリーンの河積阻害について検討する。 (ア) 事実認定証拠(甲12,検甲1ないし3,乙19,37,38,54,検乙1,D)に前記第2の2(前提事実)を加えて総合すると,次の事実を認めることができる。 ① 6号スクリーンの設置状況7号スクリーンは,幹線排水路が開水路部分から滑走路下の暗渠部分へ入る境界に設置されており,6号スクリーンは,そこから幹線排水路が滑走路下の暗渠部分を経て再び開水路部分へ出た所に設置されている。7号スクリーンの方が上流にある。7号スクリーンから6号スクリーンに至る間は,幹線排水路の水は滑走路下の暗渠部分を流れている。 ② 7号スクリーンの河積阻害7号スクリーンは,縦数十センチメートル,横十数センチメートルの格子の目の形状であるが,本件集中豪雨の際,7号スクリ ,幹線排水路の水は滑走路下の暗渠部分を流れている。 ② 7号スクリーンの河積阻害7号スクリーンは,縦数十センチメートル,横十数センチメートルの格子の目の形状であるが,本件集中豪雨の際,7号スクリーンには,ドラム缶,板切れ,ビニール,草ないし藁,発泡スチロール等のごみがせき止められて目詰まりを起こし,河積阻害を生じていた。 ③ 6号スクリーン右岸フェンスの湾曲本件集中豪雨の後,6号スクリーン右岸のフェンスが外側に大きく湾曲する形で倒れていた。同フェンスにはつた等が絡まって目詰まりしていた。また,6号スクリーン付近では,空港には二重構造のフェンスが設置され,空港と空港外や幹線排水路を区切っている。 ④ 空港空港の周囲には,塀やフェンスが設置され,フェンスが二重構造になっていたり,フェンスの次に植え込みが設けられている箇所も多い。空港内には,150個以上の下水集水桝が設置されており,空港敷地内の雨水は,集水口からこれに続く集水桝を経由して下水道に流れ込み,幹線排水路又は空港川に排水される。 (イ) 河積阻害の有無について① 前認定の6号スクリーンの設置状況からみて,6号スクリーンには,上流から7号スクリーンを通過してきた雨水と,空港敷地内から集水口を通過して幹線排水路の暗渠部分に流れ込んだ雨水が流れることになる。 7号スクリーンを通過してきた雨水についてみれば,7号スクリーンがごみをせき止めていたため,これを通過して6号スクリーンに至ったごみは,さほど多くなかったと認められる。また,7号スクリーンと6号スクリーンは,ほぼ同じ構造であるから,7号スクリーンを通過できたごみは,ほとんどが6号スクリーンも通過したものと推認される。したがって,7号スクリーンを通過してきた雨水のごみにより,6号スクリーンが目詰まりを起こしたとは考えがた ら,7号スクリーンを通過できたごみは,ほとんどが6号スクリーンも通過したものと推認される。したがって,7号スクリーンを通過してきた雨水のごみにより,6号スクリーンが目詰まりを起こしたとは考えがたい。 空港敷地内から集水口を通過して幹線排水路の暗渠部分に流れ込んだ雨水についてみれば,空港の周囲には,塀やフェンスが設置され,フェンスが二重構造になっていたり,フェンスの次に植込みが設けられている箇所も多いから,空港外から流れ込んでこようとするごみは,多くはフェンスや植込みで堰き止められ,空港内に流入するごみの量は7号スクリーンに集まったほどの大きさや量ではなかったように思われる。また,ごみが航空機の離着陸の障碍になることを考慮すれば,空港内部にも,7号スクリーンに集まったほどの大きさや量のごみがあったとは思えない。そして,幹線排水路に流れ込むためにはまず集水口を通らなければならないから,6号スクリーンを目詰まりさせるような大きさ,量のごみが集水口を経て幹線排水路に流れ込んだとは認められない。 また,幹線排水路の滑走路下の暗渠部分の出口と,6号スクリーンの間には,若干の開水路部分があるけれども,そこと空港との間は,二重のフェンスで仕切られており,上記二重のフェンスを通過できたごみが,6号スクリーンを通過できないとも考えられない。 そうだとすると,6号スクリーンには,問題となるような河積阻害は生じていなかったのではないかと思われるところである。 ② 原告らは,6号スクリーン右岸のフェンスが湾曲していたのは,6号スクリーンが目詰まりしていたためそこから溢水が生じており,フェンスに圧力をかけたためだと主張する。一方被告は,6号スクリーン右岸のフェンスが湾曲していたのは,7号スクリーンが引き上げられた際に,7号スクリーンにせき止められ ためそこから溢水が生じており,フェンスに圧力をかけたためだと主張する。一方被告は,6号スクリーン右岸のフェンスが湾曲していたのは,7号スクリーンが引き上げられた際に,7号スクリーンにせき止められていた大量のごみと雨水が6号スクリーンに一気に流れ込み,そこで6号スクリーンが目詰まりして溢水が生じ,フェンスに圧力をかけたためだと主張する。 この点については,どちらの説明も考えられるところであって,被告の主張も一概には否定しがたい。したがって,6号スクリーン右岸のフェンス湾曲の事実をもって,直ちに6号スクリーンに河積阻害が生じていたことの証左とすることはできない。 (ウ) 原告らは,空港内の集水口(集水桝)でごみがスクリーニングされるというのであれば,それでは,空港内の各集水口は流入阻害が起きていなかったのか,という問題が浮上する,空港内の排水施設(集水口等)が機能マヒに陥っていたと仮定して初めて,<ア>鑑定書の氾濫水理解析における空港川への雨水排水量が減少し,空港川が溢れるという計算結果が生じることもなく,<イ>空港からB地区へ溢水する雨水の量ももっと増加して調査報告書等による概算に近づくことになる,<ウ>RUN1におけるB地区への溢水時刻が2時間も遅れるという矛盾もなくなるから,空港の集水口は,ごみ詰まりによって十分に機能していなかったことが分かると主張する。 しかし,空港内の排水施設に,鑑定書の氾濫水理解析の信用性を覆すほどの機能マヒが生じていたと認めることはできず,原告らの主張は,採用することができない。その理由は,次のとおりである。 ① 証拠(乙38)によれば,河川を堰き止めてすべての水を遮断する位置にあって,幹線排水路を流れるごみがすべて押しつけられる状況にある7号スクリーンとは異なり,集水口は,地表に口を開けているだけで ① 証拠(乙38)によれば,河川を堰き止めてすべての水を遮断する位置にあって,幹線排水路を流れるごみがすべて押しつけられる状況にある7号スクリーンとは異なり,集水口は,地表に口を開けているだけであって雨水の主たる流れを遮断する位置にはなく,集水しきれない水(及び水と共に流れているごみ)は集水口に向かわずに更に地表を流れていくという構造であることが認められる。このような集水口が,簡単にごみにより目詰まりして機能マヒに陥いるとは考えにくい。 ② 証拠(検甲1ないし3,検乙1)によれば,7号スクリーンが目詰まりしたのは,ドラム缶,板切れ,ビニール,草ないし藁,発泡スチロール等のごみが多量に流れたためであるものと認められる。ところが,空港外から空港内に流入するごみの量は7号スクリーンに集まったほどの大きさや量ではなかったように思われること,空港内部にも,7号スクリーンに集まったほどの大きさや量のごみがあったとは思えないことは前示のとおりである。これに対して,空港内の集水桝(集水口)は150個以上あるから,その全体が簡単に機能マヒに陥っていたと推認することはできない。したがって,7号スクリーンの目詰まりから,直ちに空港内の集水口全体の目詰まりを推認することもできない。 ③ もし,空港内の集水口が目詰まりして機能マヒに陥っていたのであれば,B地区の下水の集水口も同様に目詰まりして機能マヒに陥らなければ辻褄が合わない。ところが,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,尼崎市の報告書(甲11)には,「鶴田雨水ポンプ場は正常に作動」との記載があり,B地区の下水は,大きな問題がなかったように思われるところである。 ④ 原告らの挙げる根拠については,<ア>空港川が溢水していなかったと断定することはできず,溢水していた可能性もかなり考えられるものであ の下水は,大きな問題がなかったように思われるところである。 ④ 原告らの挙げる根拠については,<ア>空港川が溢水していなかったと断定することはできず,溢水していた可能性もかなり考えられるものであるし,<イ>調査報告書等における空港からB地区への溢水量については,ほぼ最大流入量が3時間続いたという内容であって過大ではないかとの疑問があることは前示のとおりであるから,溢水量が調査報告書等の概算と一致するようであるならば,溢水量が過大に算出されていて事実と一致しないのではないかとの疑問が持たれるところであり,<ウ>鑑定書のRUN1におけるB地区への溢水時刻が遅れるのは不自然とはいえず,本件集中豪雨初期(ないし午前0時ころ)まではRUN1の状態ではなかったからである可能性もあるから,原告らの挙げる<ア>ないし<ウ>の点をもって,空港内の集水口の目詰まりを推認することもできない。 (エ) 以上のとおりであるから,鑑定書が,6号スクリーン及び空港の排水施設が機能していたことを前提としていることをもって,鑑定書の氾濫水理解析を誤りとすることはできない。 コ原告らは,一般的に,数理解析は,現場の観測,観察結果に適合するように係数を変えて,繰り返し計算を行い,現場における実際の状況と整合した結果が得られたときに初めて,現実の状況を最もよく再現したものと考えられるのに,鑑定書は,現場の状況をあまり調査することなく係数や前提となる事実を勝手に決めて計算されたものであるから再現性がないとか,鑑定書は,計算結果に反する目撃証言などを無視しようとするシミュレーション万能主義に基づいている等と主張する。しかし,原告の主張によっても,現場の観測,観察結果が何であるかとか,「目撃証言」が何であるかということが明確ではない。原告らは,調査報告書等に記載されたヒアリン 能主義に基づいている等と主張する。しかし,原告の主張によっても,現場の観測,観察結果が何であるかとか,「目撃証言」が何であるかということが明確ではない。原告らは,調査報告書等に記載されたヒアリングの結果のことを主張するのかもしれないが,それが客観的事実に適合しているか否かは,各証言・供述や客観的証拠を吟味した上で判断すべきものであって,ヒアリングの結果,すなわち誰かの供述に適合しなければ信頼できないというものではない。 サ以上のとおり,鑑定書の水理解析に,特段信用性を覆すような事情があるとすることはできない。 (5) 小括本件集中豪雨の際に7号スクリーンを引き上げなかったこと及びこれによる河積阻害と,原告らの損害との間の因果関係は,原告らに立証責任がある。そして,単純に考えると,7号スクリーンによる河積阻害と,B地区の浸水による原告らの損害との因果関係を推定することはできないから,やはり,原告らにおいて,上記因果関係を立証しなければならない。調査報告書等には,上記因果関係がある旨の記載があるけれども,①その理由は十分説明されておらず,調査報告書等の正確性等にも疑問があること,②調査報告書等と比べて信用性が劣るとは認められず,一概に排斥もしがたい鑑定書には,7号スクリーンの目詰まりによる影響は,B地区では水深に換算すると最大約8センチメートルであるとの記載があることに照らし,直ちにこれを採用することができないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,仮に,鑑定書の内容に若干の誤差があったとしても,本件水害の際にB地区に約8センチメートル±若干の誤差の範囲で水深の増加がもたらされたことによって,原告らに損害が発生したと認めることはできない。 5 結論以上の事実によれば,原告らの本訴請求は,その余について判断するまでもなく ートル±若干の誤差の範囲で水深の増加がもたらされたことによって,原告らに損害が発生したと認めることはできない。 5 結論以上の事実によれば,原告らの本訴請求は,その余について判断するまでもなく,理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用につき民事訴訟法61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第16民事部裁判長裁判官山田知司裁判官西村彩子 裁判官安藤範樹は転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官山田知司
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