主文 1 原告らの本訴請求に係る訴えのうち、平成8年4月17日の支出命令(金額は、4億9412万6000円)に係る訴え以外の部分を却下する。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用(参加費用を含む。)は、原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、東京都練馬区に対し、金8億3304万円及びこれに対する平成8年7月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、練馬区の住民である原告らが、「練馬区は、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を練馬区立春日町図書館(以下「春日町図書館」という。)として取得したが、その際、時価と比較して異常に高額の代金を支払っており、また、その取得手続にも瑕疵があったため、少なくとも適正な時価との差額である8億3304万円の損害を被っている。」などと主張して、練馬区長である被告に対し、地方自治法(平成14年法律第4号による改正前。以下、同じ。)242条の2第1項4号に基づき、練馬区に代位して損害賠償を求める事案である。 2 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、証拠上容易に認めることができる(証拠によって認めた事実は、認定事実の後に、認定の根拠となった証拠をかっこ書する。)。」1)原告らは、いずれも練馬区の住民である。 2)被告は、練馬区が春日町図書館を取得した当時から現在まで練馬区長の職にある者である。 3)東京都知事は、平成3年2月28日、練馬区αの再開発に関し、練馬区β及びγ地内につき、用途地域を変更する都市計画決定をし、練馬区は、同日、同各地内につき、高度地区、防火地域及び準防火地域並びに高度利用地区を変更する各都市計画決定をし、さらに、東京都知事は、同日、東京都市計画第一種市街地再開発事 する都市計画決定をし、練馬区は、同日、同各地内につき、高度地区、防火地域及び準防火地域並びに高度利用地区を変更する各都市計画決定をし、さらに、東京都知事は、同日、東京都市計画第一種市街地再開発事業として、権利者全員の同意を得て、都市再開発法110条1項の全員同意型の方式により、δ駅西地区第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という。)を行う旨の都市計画決定をした(甲2、甲15、乙14の1及び2、乙21、弁論の全趣旨)。 4)東京都知事は、平成5年1月、δ駅西地区市街地再開発組合(以下「本件組合」という。)の設立を認可し、本件組合が本件事業の施行主体となった。 5)東京都知事は、平成5年10月17日、本件事業につき、住宅部分を増やし、地下部分を減らして建築工事費を削減し、駐車場を別棟として機械式から自走式に変更することなどを主たる変更点とする事業計画変更を認可した(甲38)。 6)練馬区は、平成6年3月14日、本件事業の権利変換計画に同意し、本件組合との間で、練馬区が本件組合の参加組合員となり、①施設建築敷地に関する権利として4068.01平方メートルのうち共有持分割合100万分の25万6645(うち用途を図書館とする部分が100万分の23万9721、用途をレンタサイクル施設とする部分が100万分の1万6924)を取得し、施設建築物に関する権利として、図書館を用途とする1ないし2階の一部(床面積1729.56平方メートル)及びレンタサイクル施設を用途とする地下1階ないし1階の一部(床面積196.59平方メートル)の各所有権をそれぞれ取得すること、②練馬区が負担すべき参加組合員負担金の概算額は、合計27億3091万4000円とし、その内訳は、用途を図書館とする部分につき23億5860万1000円(うち、建物相当費が6億9756万1000円 ②練馬区が負担すべき参加組合員負担金の概算額は、合計27億3091万4000円とし、その内訳は、用途を図書館とする部分につき23億5860万1000円(うち、建物相当費が6億9756万1000円、土地相当費が16億6104万円)、用途をレンタサイクル施設とする部分につき3億7231万3000円(うち建物相当費が5928万9000円、土地相当費が1億1726万9000円)とすること、③本件組合は練馬区の取得する参加組合員床が確定した後に参加組合員負担金の額を練馬区と協議合意の上確定し、練馬区は参加組合員負担金を3回に分割して納付することを主たる内容とする参加組合員協定(以下「本件協定」という。)を締結した(本件協定の内容につき甲40)。 7)東京都知事は、平成6年3月22日、本件事業につき権利変換計画を認可し、同認可について関係権利者への通知がされ、これにより権利変換の処分がされ、練馬区は、本件事業により建設される地下2階地上19階建てのビルであるε(別紙物件目録の(一棟の建物の表示)記載の建物。以下「ε」という。)内に本件建物を用途を図書館として取得することとなった。 練馬区は、本件事業の事業地内に練馬区立ζ児童遊園を所有していたところ、練馬区は、同児童遊園敷地の地権者として本件組合の組合員となることもできたが、その方法によらず、同児童遊園部分については、その面積582.55平方メートルにつき6億9032万2000円の転出補償金を受け取り、地権者として組合員になることはなかった。同転出補償金を1平方メートル当たりに換算すると約118万5000円であった。 練馬区による春日町図書館の取得については、練馬区議会の議決は得ておらず、練馬区財産価格審議会条例に基づく審議も経ていない。 8)練馬区による本件建物の取得価格は、参加組合員負担金の 0円であった。 練馬区による春日町図書館の取得については、練馬区議会の議決は得ておらず、練馬区財産価格審議会条例に基づく審議も経ていない。 8)練馬区による本件建物の取得価格は、参加組合員負担金の確定により、権利変換による取得価額は23億5860万1000円となり、これに内装費等4億8028万9000円を加えると28億3889万円で、そのうち土地相当費は16億6104万円であった。εの敷地総面積は4068.01平方メートルであり、このうち練馬区の取得した敷地の共有持分の割合は23.9721パーセントであって、これを面積に換算すると975.19平方メートルとなり、1平方メートル当たりの単価を算出すると170万3299円となる。 また、εの専有部分の合計床面積は1万4832.34平方メートルであり、うち春日町図書館の専有部分の床面積は、1階及び2階部分を合わせて1729.56平方メートルで、その上記合計床面積に占める割合は12パーセント弱であった。 9)練馬区は、本件事業に係る参加組合員負担金等として、次のとおりの金員を支払った。 ア)参加組合員負担金の支払(ア) 平成6年4月15日、本件事業に係る平成5年度の参加組合員負担金として、13億7034万8000円の支出命令がされ、練馬区収入役(以下「収入役」という。)は、同月28日、本件組合に対し、同額の支出をした(甲44)。 (イ) 平成7年4月12日、本件事業に係る平成6年度の参加組合員負担金として、4億9412万7000円の支出命令がされ、収入役は、同月21日、本件組合に対し、同額を支出した(甲45)。 (ウ) 平成8年4月17日、本件事業に係る平成7年度の参加組合員負担金として、4億9412万6000円の支出命令がされ、収入役は、同月19日、本件組合に対し、同額を支出した(甲46)。 甲45)。 (ウ) 平成8年4月17日、本件事業に係る平成7年度の参加組合員負担金として、4億9412万6000円の支出命令がされ、収入役は、同月19日、本件組合に対し、同額を支出した(甲46)。 以上により、練馬区が本件組合に対して支払った参加組合員負担金は合計23億5860万1000円となった。 (エ) なお、上記各支出に関する支出命令の権限は、練馬区予算事務規則26条、練馬区事案決定規程3条、4条、別表22等により、練馬区都市整備部再開発第一課長(平成7年の組織変更により、再開発第一課長から再開発課長に名称変更)に委任されており(丙6、9、12の1、2)、上記各支出命令当時、再開発第一課長又は再開発課長の地位にあったA(以下「A」という。)が、支出命令をしたものである。 イ)その他の支払そのほか、練馬区は、本件組合に対し、春日町図書館の内装工事費として、①平成7年11月8日の支出命令に基づき同月6日に5000万円(甲47)、②平成8年6月5日の支出命令に基づき同月11日に3億9393万円(甲48)をそれぞれ支出し、さらに、③設計委託契約に基づく設計委託料として、平成6年4月19日の支出命令に基づき同年5月2日に2647万1000円(甲49)、④工事監理委託契約に基づく委託料として、平成8年6月6日の支出命令に基づき988万8000円をそれぞれ支出し(甲50)、春日町図書館取得に関して支出された費用の合計は28億3889万円となった。 これらの支出の支出命令についてみると、練馬区予算事務規則3条、26条、練馬区事案決定規程3条、4条、練馬区立図書館処務規程2条、3条等により、①、②、④の支出命令については、仮称春日町図書館の開設及び運営計画の策定に関する事務を担当していた光が丘図書館長が、③の支出命令については、図書館の建設 練馬区立図書館処務規程2条、3条等により、①、②、④の支出命令については、仮称春日町図書館の開設及び運営計画の策定に関する事務を担当していた光が丘図書館長が、③の支出命令については、図書館の建設計画の調整に関する事務を担当していた石神井図書館長が、それぞれ支出命令の権限を委任されていた(丙6、7の1、2、丙9)。そして、①の支出命令は、光が丘図書館長(当時)であったBが、②、④の支出命令は、同図書館長(当時)であったCが、③の支出命令は、石神井図書館長(当時)であったDが、それぞれ、権限の委任に基づき、支出命令を行ったものである。 10) 本件建物については、平成8年7月4日に、練馬区を所有者として保存登記がされた(甲1)。 ll) 原告らは、練馬区監査委員に対し、平成9年1月28日、本件事業に関する被告の公金支出が違法であるとして、地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ、練馬区監査委員は、原告らに対し、同年3月28日、同監査請求には理由がない旨通知した。 第3 争点と争点に関する当事者双方の主張本件の争点は、①原告らの監査請求は、監査請求期間内に行われたものといえるかどうか、②被告による本件参加協定締結の適否、③本件建物取得のためにされた支出命令の適否、④上記支出命令に関する被告の指揮監督義務違反の有無及び故意過失の有無、⑤損害の有無の5点であり、これらの点に関する当事者双方の主張は次のとおりである。 1 監査請求期間について(争点①)1)原告らア)主位的主張練馬区による春日町図書館としての本件建物の取得は、本件協定の締結から始まり、それに基づく前記前提事実9)のとおりの支出を経て、同10)の保存登記に至る各行為からなっているのであるから、本件で問題となる財務会計行為は、それら一つ一つの行為ではなく、本件協定か 結から始まり、それに基づく前記前提事実9)のとおりの支出を経て、同10)の保存登記に至る各行為からなっているのであるから、本件で問題となる財務会計行為は、それら一つ一つの行為ではなく、本件協定から、各支出、保存登記という一連の行為が全体として「財産の取得」に該当するものと考えるべきである。したがって、監査請求期間は、その最後の日、すなわち本件建物につき保存登記がされた平成8年7月4日から進行するものと解すべきである。 イ)予備的主張1また、上記主張が認められず、本件協定の締結(支出負担行為)、支出命令、支出については、それがされたときから別々に監査請求期間が進行すると解するとしても、財務会計行為が秘密裡にされた場合ばかりではなく、「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合」には、住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしていれば、監査請求期間を徒過したことにつき「正当な理由」があるものと解すべきところ(最高裁判所第1小法廷平成14年9月12日判決、最高裁判所第3小法廷平成14年9月17日判決)、本件においては、本件協定の締結そのものは秘密裡にされたとはいえないものの、春日図書館の取得費が異常に高額であることは、平成8年12月2日の練馬区議会決算委員会において初めて指摘された事柄であって、それ以前には、本件協定の問題性が指摘されたことはなかったのであり、原告ら住民が相当な注意力をもって調査を尽くしたとしても、本件協定の違法性を知ることはできなかったものというべきであるから、原告らが、監査請求期間を徒過したことについては正当な はなかったのであり、原告ら住民が相当な注意力をもって調査を尽くしたとしても、本件協定の違法性を知ることはできなかったものというべきであるから、原告らが、監査請求期間を徒過したことについては正当な理由がある。そして、原告らは、練馬区議会決算委員会における上記指摘がされてから約2か月後である平成9年1月28日には、本件監査請求をしているのであるから、本件監査請求は適法というべきである。 ウ)予備的主張2仮に上記各主張が認められないとしても、平成8年4月17日にされた、本件事業に係る平成7年度の参加組合員負担金4億9412万6000円の支出命令(以下「平成7年度分支出命令」という。)については、それから1年内に本件監査請求がされている以上、監査請求前置の要件を満たしていることは明らかである。 2)被告ア)主位的主張について監査請求期間は、あくまでも個々の財務会計行為がされたときから別個に進行するものと解すべきであって、財務会計行為を一体と捉え、最後の財務会計行為がされた時から、監査請求期間が進行すると解するのは相当ではない。したがって、この点に関する原告らの主張は失当である。 イ)予備的主張1について練馬区においては、本件協定締結に先立ち、再開発特別委員会並びに文教委員会において、本件事業や本件協定について審議を行い、その賛成を得ている。特に、再開発特別委員会においては、平成2年から平成6年6月までの間に、各種の資料が提出され、それに基づく審議が行われており、その中では、本件協定を締結する予定であることや、その内容についても説明が行われ、それに基づく審議がされていた。また、春日町図書館の取得価額に関しては、平成5年9月の区議会において、同年第2回補正予算で、平成5年度の一般会計歳出予算として13億7034万8000円、平成6年度、 れに基づく審議がされていた。また、春日町図書館の取得価額に関しては、平成5年9月の区議会において、同年第2回補正予算で、平成5年度の一般会計歳出予算として13億7034万8000円、平成6年度、平成7年度の債務負担行為として9億8825万3000円の議決がされている。更に、本件協定が締結された後の平成6年10月3日及び11月22日に開催された再開発特別委員会においては、「δ駅西地区市街地再開発事業の現状と対応」と題する資料をもとに説明、審議がされており、その中で、εの延床面積や「公益施設(図書館)」の床面積が説明され、また、事業費の減額その他の事業計画の変更に関する経緯等も説明されている。そして、これらの審議経過やその際に用いられた資料は、本件協定の存在やその内容を知るのに十分なものであるといえる。 ところで、練馬区の再開発特別委員会の議事は一般に公開されており、しかも、同委員会の議事録(要点記録)は、委員会に提出された資料を含めて公開されているのであるから、住民としても、委員会の議事を傍聴し、あるいは、議事録等を見ることによって、本件協定の存在やその内容を知ることができたということができる。そうすると、原告らは、遅くとも、平成6年10月3日及び11月22日に再開発特別委員会が開催されたころには、本件協定の存在やその内容を知ることができたものというべきであるから、原告らの主張は失当である。 ウ)予備的主張2についてある財務会計行為の違法に関する監査請求の監査請求期間は、当該財務会計行為がされた時から進行するのが原則であるが、監査請求が、当該財務会計行為そのものの違法を理由として行われているのではなく、これに先行する財務会計行為が違法であることを理由としてされている場合には、その監査請求は、実質的には先行する財務会計行為の違法を追 該財務会計行為そのものの違法を理由として行われているのではなく、これに先行する財務会計行為が違法であることを理由としてされている場合には、その監査請求は、実質的には先行する財務会計行為の違法を追及するために行われているのに等しいのであるから、その監査請求期間も当該先行する財務会計行為がされたときから進行するものと解すべきである。 この観点から考えた場合、原告らは、予備的主張2においては、平成8年4月17日の支出命令を対象とすると主張してはいるものの、後記のとおり、その違法事由として、当該支出命令に先行する本件協定締結の違法を主張しているのにすぎないのであるから、その監査請求期間は、本件協定締結の日から進行するものと考えるべきである。したがって、監査請求の対象を平成8年4月17日の支出命令に限定したとしても、やはり監査請求期間を徒過しており、違法というべきである。 2 本件参加協定締結の適否(争点②)1)原告らア)高額な財産取得(ア) 地方公共団体が図書館などの公共施設を整備する際に場所の選定や支出金額などについて有する裁量は、全くの自由裁量ではなく、自ずから制約がある。ことに、「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、・・・最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」(地方自治法2条13項[ただし、平成11年法律第87号による改正前のもの。現行法の同条14項に当たる。])、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」(地方財政法4条1項)との規定からすれば、公共施設の取得価格については、基本的には時価又はそれ以下で取得すべきであり、時価より高額であれば、それを正当化する理由が必要である。 (イ) ところが、被告は、練馬区の最終的意思決定権者として、本件 公共施設の取得価格については、基本的には時価又はそれ以下で取得すべきであり、時価より高額であれば、それを正当化する理由が必要である。 (イ) ところが、被告は、練馬区の最終的意思決定権者として、本件建物取得につき、その土地相当費を、従前資産の評価基準日を権利変換認可日である平成6年3月22日ではなくいわゆるバブル絶頂期の平成2年1月10日とすることにより権利変換時の時価の143パーセントにあたる高額とし、また、本件建物につき各階の使用価値を示す指数である効用比率を意図的に高くし、本件組合自身の評価が記された権利変換計画書中の評価額の記載(これは、被告の主張するような誤記であるとは考えられない。)からいっても高額といえる価格で取得している。また、他に春日町図書館用地として先行して取得していた適当な土地があったにもかかわらず、これを無駄にし、本件事業の事業地内の道路を一旦低価格であるいは無償で手放し、練馬区が本件事業の事業地内に所有していたζ児童遊園についても、実際の土地の形状に反し不整形地として30パーセントもの減価をした本件組合の評価をそのまま鵜呑みにしているのに、本件建物の土地相当費については、取引上の注意義務として、時価を調査し、取得価格が適正か否かを調査する義務があるにもかかわらず、何らの調査もせず、時価に比し、極めて高額で本件建物を取得したのである。 さらに、練馬区の財政は厳しい状況にあり、行政改善あるいは行政改革計画が作成され、人員削減などの歳出削減計画が行われていた時期であり、本件建物を時価より高額で取得することを正当化する理由は何ら見当たらない。 (ウ) 以上によれば、被告は、本件協定を締結することにより、正当な理由がないにもかかわらず、本件建物を通常の取引価格と比べ、異常に高額で取得したものであって、本件協定の締結は、 何ら見当たらない。 (ウ) 以上によれば、被告は、本件協定を締結することにより、正当な理由がないにもかかわらず、本件建物を通常の取引価格と比べ、異常に高額で取得したものであって、本件協定の締結は、被告の裁量権を逸脱、濫用する違法な財務会計行為であったというべきである。 イ)意思決定手続の瑕疵(ア) 本件協定の締結は、地方自治法96条1項6号所定の「財産を交換し、出資の目的とし」た場合又は同項8号の「財産の取得」に当たり、議会の議決を要するにもかかわらず、区議会の議決はされていない。 被告は、「練馬区は、権利変換処分という行政処分によって保留床である本件建物を原始取得したのであり、これは、『財産を交換し、出資の目的』とする場合にも、『財産の取得』をする場合にも当たらないから、区議会の議決を要しない。」と主張するが、それは、形式的な議論というべきであり、実質的には、練馬区が負担金等という対価を支払って本件建物を取得しているのに変わりはないのであるから、地方自治法96条1項6号、8号所定の財産の取得等に当たるものというべきである。特に、本件事業のような全員同意型の都市再開発事業の場合には、通常の都市再開発事業の場合に適用される各種の規制が及ばないこととされており(都市再開発法110条)、権利変換計画の内容を自由に定めることが可能になっていることや(例えば、従前資産の評価基準に関する都市再開発法80条の規定も適用が排除されている。)、審査委員による審査も、各組合員が取得する財産が、その従前資産からみて適正なものであるかどうかという点にまでは及ばないものと解されることからすると、権利変換計画に基づく保留床の取得であるからといって、それが適正な対価による取得であることが保障されているとはいえないものである。以上の点に照らしてみると、少なくとも、 のと解されることからすると、権利変換計画に基づく保留床の取得であるからといって、それが適正な対価による取得であることが保障されているとはいえないものである。以上の点に照らしてみると、少なくとも、全員同意型の都市再開発事業に基づく保留床の取得については、それが適正な対価によるものであるかどうかを議会の審査に委ねる必要があるものというべきであり、この点からしても、議会の議決を要するものというべきなのである。 (イ)また、本件建物の取得は、財産価格審議会条例1条の「区有財産の取得」に当たり、財産価格審議会の議決を要するところ、同議決も経ていない。 (ウ)以上のような手続の瑕疵は、財務会計上の行為に関して違法があったと評価されるべきものである。 2)被告ア)高額な財産取得の主張について(ア) 原告らは、本件建物の取得価格が時価に照らして過大であった旨主張するが、当事者の自由な意思に基づいて決定される売買の価格と異なり、本件建物の取得価格は、本件組合の総会の議決を経た上、審査委員の過半数の同意を得た権利変換計画によって定められるもので、都市再開発法の定める手続において適法に決定されたものである上、本件事業は全員同意型の第一種市街地再開発事業であって、法が原則型の再開発事業について定める多くの制約を受けず、本件組合において自主的に決定できたものであるから、練馬区による本件建物の取得が売買契約ないしはこれと同視すべき原因に基づくものであることを前提とする原告の主張には理由がない。 (イ) 本件の権利変換計画書中の「施設建設敷地の価格の概算額は、31億7688万7000円である。」との記述は単純な誤記に基づくものであり、同金額は従前権利者が権利返還後に得る権利変換対象額を示すものであって、同誤記が実際に権利変換計画に影響を与えてはいない。 (ウ) 88万7000円である。」との記述は単純な誤記に基づくものであり、同金額は従前権利者が権利返還後に得る権利変換対象額を示すものであって、同誤記が実際に権利変換計画に影響を与えてはいない。 (ウ) 原告らは、被告が効用比率を恣意的に操作して本件建物の取得価格を高額にしたかのように主張するが、効用比率を含む本件事業の内容、就中、全員同意型の本件事業における権利変換計画を決定したのは、被告ではなく本件組合であり、原告の主張はこの点を混同するものであって、理由がない。 (エ) 原告らは、春日町図書館用地として先行取得していた土地との関係を問題とするが、図書館の位置の変更は行政裁量の範囲内であり、また、区道を一旦低価格であるいは無償で手放したとする点についても、区道については、実質的にみれば練馬区は何ら財産上の損害を被っていないし、かえって区道の維持管理費の負担を免れている。さらに、練馬区が本件事業の事業地内に所有していたζ児童遊園についても転出補償金を受け取ったことを問題とする点についても、練馬区が組合員として同児童遊園を権利変換してさらに必要な分を参加組合員として取得する方法よりも、転出補償金を受け取って新たに参加組合員として床を取得する方法の方が、練馬区の実質的負担が少なく、有利であったため、そのような手法を採用したものである。 以上のとおり、本件建物の取得価格が時価に比して高額にすぎる旨の原告らの主張にはいずれも理由がない。 イ)手続的瑕疵の主張について(ア) 本件建物の取得は、参加組合員として本件事業により建設される再開発ビルの床を取得する方法によりされたもので、これは、権利変換処分という行政処分によって原始取得するものであるから、売買契約その他私法上の行為によって承継取得するものではなく、地方自治法96条1項により議会の議決を要する 法によりされたもので、これは、権利変換処分という行政処分によって原始取得するものであるから、売買契約その他私法上の行為によって承継取得するものではなく、地方自治法96条1項により議会の議決を要する場合には当たらない。 原告らは、少なくとも全員同意型の都市再開発事業に関しては、権利変換計画の内容について法律の規制がほとんど及ばないことから、実質的には私法上の売買契約等と同視すべきものであり、議会の議決が必要であるという趣旨の主張もするが、全員同意型の場合であっても、本件建物の取得が行政処分に基づく原始取得であるという本質においては異なるところがないのであるから、その主張は失当というべきである。 (イ) また、上記のような性質を有する本件建物の取得は、練馬区財産価格審議会条例1条の「区有財産の取得」にも当たらないから、財産価格審議会の答申を得るべき場合には当たらないし、仮に諮問ないし答申が義務付けられていたとしても、諮問ないし答申を経ないでした行為が直ちに違法であるとはいえない。 3 平成7年度分支出の適否(争点③)1)原告ら平成7年度分支出命令は、本件協定に基づいてされたものであるが、本件協定は被告自身が締結したもので、本件協定には上記のような違法事由があったから、それをそのまま放置すれば、練馬区に多大な損害を与えることは明らかであり、被告としては、その違法事由を是正し、Aが違法な本件協定の内容どおりの支出命令をしてしまうことを阻止すべき義務を負っていた。すなわち、実質的問題である本件建物の取得価格が高すぎる点について本件組合に申入れをし、時価評価を示したり(そのためには練馬区自らが不動産鑑定士に依頼して鑑定評価を行うことも必要であったと思われる。)、あるいは土地の持分割合について変更を申し入れるなどして、取得価格を是正すべきであ 時価評価を示したり(そのためには練馬区自らが不動産鑑定士に依頼して鑑定評価を行うことも必要であったと思われる。)、あるいは土地の持分割合について変更を申し入れるなどして、取得価格を是正すべきであった。それにより、参加組合員としての負担金を低額にすれば、上記支出命令に係る支出は不要となったはずである。 また、手続的瑕疵については、事後的にでも手続を行うべきであった。それをせずに漫然と支出命令をしたことも違法である。 本件事業の参加組合員である新日本製鐵株式会社及び三井不動産株式会社は、平成8年3月、同各社が取得する保留床の取得価格に対応する参加組合員負担金の減額を要請し、本件組合は、同年9月11日に9.2パーセントの減額を承認し、練馬区もこれを承認しているところ、同各社の参加組合員負担金の減額がされたのは、それが3度目であるだけでなく、その時期が平成8年9月にされていることからしても、練馬区について、平成8年までに練馬区の参加組合員負担金の減額要求をしないのは権限不行使の違法がある。 2)被告ア)本件の場合、支出負担行為は本件協定であり、これは地方自治法により予算執行権を与えられた練馬区長たる被告により締結されたもので、適法有効な行為である。仮に、本件協定締結後の地価の騰貴や下落等の事情変更により本件協定所定の練馬区の参加組合員負担金の額が過大なものとなったとしても、その事実によって本件協定という契約自体が当然に違法化するものではない。この場合、被告が本件組合に対して参加組合員負担金の減額を申し入れるべき義務が仮にあったとしても、支出負担行為たる本件協定が実際に改定されない限り、これに基づく支出命令は適法であり、被告が同義務を負っていたかどうかは、平成7年度分支出命令自体の当否とは直接関係がない。したがって、被告が本件組合に対して上 為たる本件協定が実際に改定されない限り、これに基づく支出命令は適法であり、被告が同義務を負っていたかどうかは、平成7年度分支出命令自体の当否とは直接関係がない。したがって、被告が本件組合に対して上記見直しを申し入れることなく、その結果平成7年度分支出命令がされてしまったとしても、同支出命令が違法となる余地はない。 イ)原告らの主張が、被告において本件建物の取得価格の見直しを本件組合に申し入れないこと、すなわち「申入権」を有するにもかかわらずこれを行使しなかったことが怠る事実に当たるとの趣旨であるとすれば、「申入権」は、地方自治法が定める「財産」に該当しないから、被告が取得価格見直しの「申入権」を行使しなかったことが仮に違法であるとしても、それは財産の管理を怠る事実にそもそも該当しない。 ウ)本件協定第3条2項は、参加組合員負担金確定の通知までに著しい経済変動、天災地変、その他不可抗力により本件組合が事業計画に定める事業費に著しい変動があった場合は、参加組合員負担金の額及び事業計画の内容について、必要があれば、本件組合と練馬区が協議合意の上、見直すことができるものとする旨が定められているが、これに該当する事由は本件においては存在しないから、同条項を申入権の根拠とすることはできない。 エ)本件は、組合が施行する全員同意型の第一種市街地再開発事業であるが、再開発事業は、事業に係る支出(工事費、補償費、事務費、借入金利子等。以下「全事業費」という。)を支払うに足りるだけの事業に伴う収入(参加組合員負担金、補助金等)が確保されて初めて成立するものである。したがって、権利変換計画においては、権利変換対象額に全事業費を加算して得た合計額から補助金等を控除して事業原価を求めた上で各床価格が算出されている。しかも、本件の場合にはこの算出につき審査委員3 したがって、権利変換計画においては、権利変換対象額に全事業費を加算して得た合計額から補助金等を控除して事業原価を求めた上で各床価格が算出されている。しかも、本件の場合にはこの算出につき審査委員3名の同意がされている。権利変換計画はこのようにして評価・算定・確定される性質のものであるから、それは参加組合員について定められた負担金が支払われることが前提となっており、その支払がされなければ権利変換計画自体が実現できないものである。 本件において、上記のようにして定められた練馬区の参加組合員負担金について、練馬区としてその減額を求めることは現実には不可能であり、かつ、仮に何らかの理由によりそれが可能と考えられることがあったとしても、それは著しく不適当というべきである。練馬区は、地域の街づくりにおいて行政の責任主体として主導的地位にあり、再開発事業を主体的に推進すべき立場にあるから、権利変換計画自体が成り立たなくなるような申入れをすることは練馬区の立場と相容れない。 また、原告は、平成7年度分支出命令をする前に参加組合員負担金の減額を申し入れるべきであったと主張するもののようであるが、同支出命令に係る支払の時期のわずか1か月余り後である平成8年6月7日にεは竣工しており、この事実を無視して参加組合員負担金の見直しをすることができるはずはなく、もしも練馬区の負担金が減額されたならば、それによって直ちに事業費の不足をもたらすことになって、本件組合による支払が不可能となる事態を招くのである。したがって、平成7年度分支出命令に係る支払について、上記のような立場にある練馬区が参加組合員負担金の減額を求めること自体が不可能あるいは著しく不適切というべきであり、仮に練馬区が減額を求めたとしても、本件組合がそれに応じる可能性は客観的にみて考え難いということ 場にある練馬区が参加組合員負担金の減額を求めること自体が不可能あるいは著しく不適切というべきであり、仮に練馬区が減額を求めたとしても、本件組合がそれに応じる可能性は客観的にみて考え難いということができる。さらに、もし、練馬区が本件組合に対して参加組合員負担金の減額を求めることができないまま、あるいはそれを求めたとしても本件組合の同意を得ることができないまま、練馬区が一方的に参加組合員負担金を支払わなければ、上記のような立場にある練馬区自身が都市再開発法41条に基づいて滞納処分を受ける事態に発展することとなる。 よって、練馬区長である被告が本件組合に対して参加組合員負担金の減額を求めるべき法的作為義務はそもそもなかったというべきである。 オ)本件事業の参加組合員である新日本製鐵株式会社及び三井不動産株式会社と本件組合が締結した参加組合員契約書6条2項では、参加組合員負担金の額の減額条件の一つとして「都営12号線の練馬-新宿間の開業が平成6年度末より遅れた場合にまたは遅れることが明確になった場合」を定めており、このように具体的かつ明確な定めに基づいて、減額の影響額について本件組合が鑑定を依頼し、その鑑定結果を基にして、審査委員の意見書においても減額をしなくてはならないとの意見であったことから、練馬区としても同減額に同意し、減額がされたものである。これに対し、本件協定においてはこのような具体的かつ明確な定めはなかったのであり、上記各社に対する減額がされたからといって、練馬区についても減額をすべきことにはならない上、仮に、練馬区も減額要求をしたならば、本件事業そのものが立ち行かなくなることは明白だったのであり、このため、練馬区が本件組合に対して参加組合員負担金の減額を申し入れることができる客観的状況にはなかったものである。 4 故意過失の有 、本件事業そのものが立ち行かなくなることは明白だったのであり、このため、練馬区が本件組合に対して参加組合員負担金の減額を申し入れることができる客観的状況にはなかったものである。 4 故意過失の有無(争点④)について1)原告ら被告は、練馬区長であり、本件建物の取得に関し最終的決定権限を有していたものであって、本件建物取得により練馬区が損害を被ることを知っていたにもかかわらず、また、手続的にも違法であるのに、あえて裁量権を逸脱して本件協定を締結したものであるから、少なくとも、過失があることは明らかである。 また、平成7年度分支出命令については、Aに権限が委任されており、同人においてこれを行ったものであるものの、被告には、Aによる同支出命令が適法にされるよう適切に指揮監督権を行使すべき義務があったものである。そして、被告は、自ら本件協定の締結に関与したほか、本件事業遂行の責任者として、事業の進行状況についても熟知していたのであるから、違法な内容の本件協定について是正を求めないまま、しかも、議会の議決等の手続要件も満たさないままに支出命令がされることがないようAに対して指揮監督権を行使し、違法な支出命令がされることを阻止すべき義務があったものであり、このような指揮監督権の行使を怠った点には少なくとも過失があるものというべきである。 2)被告権利変換計画に基づく権利変換処分は、対象権利の評価とその変換計画の内容の公共性、妥当性に関して高度の専門性を有するものであるところ、本件において、被告は、第三者の鑑定に基づいて権利変換計画の内容が定められ、所定の手続を経てその認可も受けているところから、その内容は適正なものであると判断して本件協定を締結するに至ったものであるから、本件協定を締結することに違法はないと信じたことについて故意過失はない 所定の手続を経てその認可も受けているところから、その内容は適正なものであると判断して本件協定を締結するに至ったものであるから、本件協定を締結することに違法はないと信じたことについて故意過失はない。また、仮に本件協定を締結するに当たって議会の議決が必要であるというのが正しい法律解釈であったとしても、そのような解釈が正当なものであることが一義的に明白であるとはいえない上、権利変換処分に基づく保留床の取得については議会の議決が不要であると解されるような行政実例が存在し、被告は、この行政実例を信頼したものであるから、この点についても故意過失はない。 さらに、平成7年度分支出命令の段階においては、練馬区には、本件協定の内容の変更を求める法律上の根拠はなく、本件組合がこれに応じる可能性もなかったことや、既に本件事業が完成に近付いている段階において、根拠のない協定内容の変更要求や、負担金の減額要求等を行うことは、本件事業を主導してきた練馬区の立場として到底できない状況にあったことは、既に主張したとおりである。このような点に照らしてみれば、被告が、指揮監督権を行使して同支出命令を阻止することも到底不可能な状況にあったというべきであるから、権限不行使について故意過失があったとはいえないし、期待可能性もなかったものというべきである。 5 損害の有無(争点⑤)について1)原告ら本件建物取得のための参加組合員負担金のうち、土地相当費16億6104万円は、前記のとおり異常に高額であって、時価相場を公示価格を基準として算定すれば、適正価格は8億2800万円であり、練馬区は、被告の行為により、上記土地相当費との差額8億3304万円の損害を被った。 2)被告争う。 第3 争点に対する判断 1 監査請求期間について(争点①)1)原告らは、「本件建物の取得は、 練馬区は、被告の行為により、上記土地相当費との差額8億3304万円の損害を被った。 2)被告争う。 第3 争点に対する判断 1 監査請求期間について(争点①)1)原告らは、「本件建物の取得は、本件協定の締結から始まり、それに基づく前記前提事実9)のとおりの支出を経て、同10)の保存登記に至る各行為からなっており、これらは『財産の取得』として1個の財務会計行為を形成しているものというべきであるから、その監査請求期間は、その終了時である保存登記の時から進行するものと解すべきである。」と主張する。しかしながら、地方自治法242条1項、2項は、「公金の支出」、「契約の締結」をそれぞれ独立した財務会計行為として監査請求の対象とし、そのそれぞれについて独立して監査請求期間を進行させることを予定しているものと解されるのであるから(なお、保存登記は、それ自体は、財務会計行為には当たらず、これを怠ることが、場合によって「財産の管理」を怠る事実に該当することがあるのにすぎないものと解される。)、原告主張のように、支出負担行為、支出命令、支出を一体の財務会計行為として捉え、その終期から監査請求期間が進行すると解することは、上記のような法の趣旨を潜脱する結果をもたらすものであって、相当ではないものというべきである。 したがって、本件においては、あくまでも、支出負担行為である本件協定の締結と、支出命令のそれぞれについて、独立して監査請求期間が進行することを前提として、監査請求期間の制限を満たしているかどうかを判断すべきものである。 2)原告らは、「本件協定の締結そのものは秘密裡にされたとはいえないものの、春日図書館の取得費が異常に高額であることは、平成8年12月2日の練馬区議会決算委員会において初めて指摘された事柄であり、それ以前には、本件協定の問題性が指 ものは秘密裡にされたとはいえないものの、春日図書館の取得費が異常に高額であることは、平成8年12月2日の練馬区議会決算委員会において初めて指摘された事柄であり、それ以前には、本件協定の問題性が指摘されたことはなかったのであるから、原告ら住民が相当な注意力をもって調査を尽くしたとしても、本件協定の違法性を知ることはできなかったものというべきであるから、原告らが、監査請求期間を徒過したことについては正当な理由がある。」として、本件協定の締結についても、適法な監査請求を経たものというべきであると主張する。 ところで、監査請求は、財務会計行為が行われてから1年内に行わなければならないのが原則であるが、当該財務会計行為が秘密裡にされた場合や、「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合」には、当該普通地方公共団体の住民が、相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしていれば、監査請求期間を徒過したことにつき「正当な理由」があるものとして、当該監査請求は適法なものと解すべきである(最高裁判所第1小法廷平成14年9月12日判決、最高裁判所第3小法廷平成14年9月17日判決)。 この観点から検討すると、証拠(丙10-16、18-20)及び弁論の全趣旨によれば、ア)本件事業に関する計画策定作業や、その後の事業進捗状況については、「ねりま区報」においても説明がされており、具体例を幾つかみると、同紙平成2年11月11日号には本件事業計画案がまとまった旨や建物建築計画の概要等が、同紙平成3年3月11日号には本件事業は、組合方式で行うことが予定されており、平 されており、具体例を幾つかみると、同紙平成2年11月11日号には本件事業計画案がまとまった旨や建物建築計画の概要等が、同紙平成3年3月11日号には本件事業は、組合方式で行うことが予定されており、平成3年中に組合設立認可を得るべく手続が進められていることが、同紙平成5年1月21日号には再開発組合が設立され、再開発事業が第一歩を踏み出したことや、建築予定の建物には春日町図書館が配置されること等が、同紙平成6年6月21日号には再開発ビルの建築工事が着工されたことが記載されていること(以上につき丙16)、イ)本件事業の計画内容や、事業の進捗状況については、練馬区議会の都市再開発特別委員会、文教委員会においても随時報告がされており、具体例を幾つかみると、平成4年4月22日開催の練馬区議会都市再開発特別委員会においては、再開発第二担当課長から、練馬区が公益施設用(この時点では、春日町図書館の設置は決定されていない。)に取得する保留床の取得費用は24億4000万円程度になるとの見通しが説明され(丙15、別紙7)、同年11月24日開催の同委員会においては、再開発ビルに図書館やレンタサイクル施設を設置することが決定され、その取得費用は図書館が24億円、レンタサイクル施設が4億円であることが説明され、併せて、事業は、練馬区と三井不動産、新日鉄が参加する組合方式で遂行されることや、上記施設の取得費用は、参加組合員負担金という形式で支払われることも説明され(丙15、別紙14)、平成5年5月26日開催の同委員会においては、本件事業の事業計画変更についての概要が説明され、同委員会の了承を得(丙15、別紙16)、平成6年9月9日開催の同委員会においては、本件事業に係る事業計画認可や、事業計画変更認可に至る経緯、事業内容の概要、事業費等についての総括的な説明がさ れ、同委員会の了承を得(丙15、別紙16)、平成6年9月9日開催の同委員会においては、本件事業に係る事業計画認可や、事業計画変更認可に至る経緯、事業内容の概要、事業費等についての総括的な説明がされるとともに、同年6月8日に施設建築物工事が開始されたことが説明されていること(丙18)、ウ)参加組合員負担金の支出関係については、平成5年度練馬区一般会計補正予算議案(同年9月17日提出、同年10月1日可決)に基づき、平成5年度の参加組合員負担金13億7034万8000円の支出並びに平成6年度及び平成7年度に9億8825万3000円を限度として債務負担行為を行うことが議決され(丙14の1)、平成6年度予算議案(同年2月18日提出、同年3月18日可決)に基づき、平成6年度の参加組合員負担金4億9412万7000円の支出について予算議決がされ(丙14の2)、平成7年度予算議案(同年2月14日提出、同年3月14日可決)に基づき、平成7年度の参加組合員負担金4億9412万6000円の支出について予算議決がされ(丙14の3)、それぞれの支出については決算の認定もされているところ(丙14の4-6)、これらの議案書や決算書においては、平成7年度の予算議案を除き、いずれも(仮称)春日町図書館建設負担金等と明示の上、上記金額が記載されていたこと、エ)以上のうち、ア)の「ねりま区報」は、住民に配布されているのであるから、その内容は、一般住民が容易に入手し得る情報であるといえるし、イ)、ウ)記載の区議会やその委員会における審議の内容も、議事を傍聴し、あるいは議事録、議案書、決算書などを閲覧するなどの方法によって、一般住民においても入手し得る情報であったこと、以上の事実が認められる。これらによれば、本件協定の締結や、これに基づく支出は、それらが秘密裡にされたと 案書、決算書などを閲覧するなどの方法によって、一般住民においても入手し得る情報であったこと、以上の事実が認められる。これらによれば、本件協定の締結や、これに基づく支出は、それらが秘密裡にされたとはいえないことはもとより、「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合」にも当たらないというべきであるから、上記各行為に対する監査請求の監査請求期間は、原則どおり、それらの行為がされたときから進行するものと解すべきである。したがって、原告らの上記主張は失当であり、本件協定に対する監査請求については、監査請求期間を徒過したものであって不適法というほかはない。 3)他方、平成8年4月17日にされた、平成7年度分支出命令については、それから1年内に本件監査請求がされている以上、監査請求前置の要件を満たしていることは明らかである。 被告は、「上記支出命令に対する監査請求は、それ自体の違法を追及するためではなく、原因行為である本件協定の違法を追及する手段として行われているものであって、実質的にみれば、本件協定に対する監査請求を行っているのに等しいから、その監査請求期間は、本件協定の締結時から進行するものと解すべきである。」という趣旨の主張をする。しかしながら、支出命令は、それ自体が財務会計行為として監査請求の対象となり得るものなのであり、そうである以上、その監査請求期間は、当該支出命令がされたときから進行するのは当然の事柄である。被告の主張は、支出命令の違法事由として何を主張することができるのかという問題(この点については、後に検討する。)と、監査請求期間の問題とを混同するものであって、失当である。 4)以上によれば、本件において適法に監査請求を 違法事由として何を主張することができるのかという問題(この点については、後に検討する。)と、監査請求期間の問題とを混同するものであって、失当である。 4)以上によれば、本件において適法に監査請求を経たといえるのは、平成8年4月17日にされた平成7年度の参加組合員負担金4億9412万6000円の支出命令(平成7年度分支出命令)に限られることとなるから、原告らの本件請求に係る訴えは、上記の支出命令を対象とする限度では適法というべきであるが、その余の部分は不適法として却下すべきものである。そこで、以下においては、上記の支出命令の適否の点に絞って検討を加えることとする(なお、第2、2、9)、イ)に記載のとおり、本件監査請求から1年以内にされた支出命令としては、上記のほか、平成8年6月5日にされた春日町図書館の改装工事費3億9393万円についての支出命令、及び同月6日にされた同図書館工事管理委託料988万8000円についての支出命令が存在するが、原告らは、予備的主張2の対象を上記の参加組合員負担金に関する支出命令に限定する旨を明言していることからすれば、上記2件の支出命令は、判断の対象にはなっていないものというべきである。)。 2 本件協定締結の適否について(争点②)前項において説示したとおり、本件協定の締結については、既に監査請求期間を徒過しており、それ自体を監査請求の対象とすることはできないのであるから、この点に関する原告らの主張は、その前提を欠き失当というべきである。 3 平成7年度分支出命令の適否について(争点③)そこで、次に平成7年度分支出命令の適否について検討する。 1)平成7年度分支出命令の適否を判断するための基本的な考え方原告らは、平成7年度分支出命令の違法事由として、①本件協定に基づく参加負担金は違法に高額なものであったか 命令の適否について検討する。 1)平成7年度分支出命令の適否を判断するための基本的な考え方原告らは、平成7年度分支出命令の違法事由として、①本件協定に基づく参加負担金は違法に高額なものであったから、これを是正すべく努力すべきであったのに、この努力義務を怠っている、②本件協定は、議会の議決等に基づいていないという点において違法であるから、このような違法な協定に基づく支出も違法であるという趣旨の主張をしているのに対し、被告は、「原告らは、同支出命令そのものの違法を主張しているのではなく、その原因行為である本件協定の違法を主張しているのにすぎないところ、このような事由は、同支出命令の違法事由たり得ない。」という趣旨の主張をしているので、まず、同支出命令の違法事由に関する基本的な考え方を検討しておくと、次のとおりである。 地方自治法242条の2の規定に基づく住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである(最高裁昭和53年3月30日第1小法廷判決・民集32巻2号485頁参照)。そして、同法242条の2第1項4号の規定に基づく代位請求に係る当該職員に対する損害賠償請求訴訟は、このような住民訴訟の一類型として、財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し、職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならない。したがって、当該職員の財務会計上の行為をとらえて上記の規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、同原因行為を前提としてされた当該職員の行 、当該職員の財務会計上の行為をとらえて上記の規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、同原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である(最高裁平成4年12月15日第3小法廷判決・民集46巻9号2753頁)。 そして、当該職員の行為の違法性は、当該職員が財務会計上の行為を行うに当たって負っている職務上の行為義務ないし行為規範についての違反の有無により定まり、その行為義務ないし行為規範の内容は、当該職員が財務会計上の行為をするに当たり、当該地方公共団体に対し、原因行為との関係でいかなることをすべき財務会計上の行為義務を負担しているかという観点から判断されるべきであって、先行する原因行為が契約であり、後行の財務会計行為が支出命令(地方自治法232条の4第1項)である場合には、原因行為も財務会計行為としての性質を有する支出負担行為(同法232条の3)であり、支出負担行為たる契約が違法かつ無効であれば、支出命令を担当する当該職員としては、職務上負担する財務会計法規上の義務として、無効な契約に基づく金銭の支出をしてはならないという義務を負っているということができ、当該契約に基づく支出命令をしてはならないこととなる。これに対し、原因行為たる契約が違法ではあっても私法上無効とはいえない場合には、地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行する義務を負うのであるから、同債務の履行として行われる行為自体はこれを違法ということはできず(最高裁昭和62年5月19日第3小法廷判決・民集41巻4号687頁参照)、支出命令を担当する当該職員は、契約の違法を知り又は知り得べきときはこれを是正するため 為自体はこれを違法ということはできず(最高裁昭和62年5月19日第3小法廷判決・民集41巻4号687頁参照)、支出命令を担当する当該職員は、契約の違法を知り又は知り得べきときはこれを是正するための適宜の措置を執る義務を負うということはできるが、その是正ができないものであれば支出命令を違法とすべき理由はないというほかない。 そこで、以下においては、以上の基本的な考え方を踏まえ、原告らの前記主張①、②の当否について検討を加えることとする。 2)契約内容の是正義務違反に関する主張についてア)本件においては、平成7年度分支出命令に先行する原因行為として本件協定があるところ、本件協定は、練馬区と本件組合との間で締結された私法上の契約としての性質を有するものと考えられ、財務会計法規上は支出負担行為に当たるものである。したがって、本件協定が違法のみならず私法上無効である場合には、支出命令権者である被告は本件協定に基づく支出命令をしてはならないこととなり、この点は、原告らの前記主張②との関係で問題となる。しかしながら、原告らは、仮に本件協定が私法上有効であるとしても、協定の内容の是正を求めることなく支出命令をした場合には、当該支出命令は違法になるとの主張もしているので(原告らの前記主張①)、まず、この点について判断することとする。 ところで、本件協定が私法上は有効であることを前提とすると、仮に本件協定に違法事由があったとしても、練馬区は、本件協定に従って本件組合に対し参加組合員負担金を支払う義務があることとなるから、支出命令権者であるAは、本件協定の違法事由を知り又は知り得べきときはこれを是正するため適宜の措置を執る義務を負うが、その是正ができないものであれば、平成7年度分支出命令をせざるを得ない立場にあったものであり、このような場合にまで平成7年 由を知り又は知り得べきときはこれを是正するため適宜の措置を執る義務を負うが、その是正ができないものであれば、平成7年度分支出命令をせざるを得ない立場にあったものであり、このような場合にまで平成7年度分支出命令をしたことについての責任を問うことはできないものと解すべきであり、このことは、Aの指揮監督権者である被告についても同様であると解される。 イ)そこで、本件協定に違法事由がある場合の是正の可能性について検討するに、本件協定は、練馬区と本件組合との間で締結されたものであって、被告が同締結につき練馬区を代表する立場にあっても、被告ないしは練馬区の一存によりこれを変更することができないことはいうまでもない。 本件協定においては、第3条2項において、本件協定締結後、参加組合員負担金確定の通知の日までに著しい経済変動、天災地変、その他不可抗力により本件組合が事業計画に定める事業費に著しい変動があった場合は、参加組合員負担金の額及び事業計画の内容について、必要があれば、本件組合と練馬区が協議合意の上、見直すことができるものとする旨が定められており、練馬区の参加組合員負担金の額を見直すことができる場合を天災地変等の不可抗力の場合に限定しており、本件ではこれに当たるような事情が生じていたことは認められない(上記条項中の「著しい経済変動」は「天災地変」と並んで不可抗力の一例としてあげられていることからすれば、いわゆるバブル経済の崩壊による一般的な地価の下落傾向が上記「著しい経済変動」に当たるものとは解されない上、上記条項は本件協定締結後の事情の変更について規定するものであるところ、本件協定が締結されたのは平成6年3月14日であって、既にバブル経済崩壊後相当の期間を経過した後であることは公知の事実であるから、本件において、本件協定締結後に「著しい経済変 定するものであるところ、本件協定が締結されたのは平成6年3月14日であって、既にバブル経済崩壊後相当の期間を経過した後であることは公知の事実であるから、本件において、本件協定締結後に「著しい経済変動」があったものとは認められないことは明らかである。)。 なお、本件協定第6条3項には、同条1項に定める参加組合員負担金の納付時期及び納付額について、やむを得ず変更の必要が生じた場合は、本件組合と練馬区が協議合意の上その変更を行うものとする旨が定められているが、これは、その文言上明らかなように、同条1項により本件協定別表のとおり3回に分割して支払うこととされた練馬区の参加組合員負担金につき、その納付時期及び納付額を変更する場合のことを規定したものと解され、したがって、同条3項は、本件協定第2条により概算額が定められ、同第3条によりその確定方法が定められている参加組合員負担金の総額自体の変更について規定するものとは解されず、同総額の範囲内で、その分割支払の時期及びその時期に対応する各分割支払金額の変更をする場合の手続を定めたものと解すべきであるから、本件協定第6条3項に基づき練馬区の参加組合員負担金の減額を申し入れることはできない。 したがって、本件においては、仮に原告らが主張するように、本件建物の土地相当費が高額にすぎるものであったとしても、練馬区には、本件協定に基づき、自らの参加組合員負担金の額を減額するよう申し入れる権利を有していたものとは認められず、被告が練馬区を代表して本件組合に対し参加組合員負担金の減額を申し入れるとしても、それは、契約上の権利の行使ではなく、本件協定の内容を一部変更する新たな合意の申込みにすぎず、本件組合がこれに応ずる義務があるものではない。 ウ)また、本件事業は全員同意型の第一種市街地再開発事業であり、権利変換 の権利の行使ではなく、本件協定の内容を一部変更する新たな合意の申込みにすぎず、本件組合がこれに応ずる義務があるものではない。 ウ)また、本件事業は全員同意型の第一種市街地再開発事業であり、権利変換計画を変更するとすれば、全員の同意が必要となる点で、練馬区の参加組合員負担金の減額を申し入れたとしても、その実現が容易ではないことが予想されるだけでなく、全員同意型の方式においては、都市再開発法の定める権利変換計画の基準規定の多くの適用が排除され(同法110条1項)、特に、従後資産と従前資産との間に著しい差額が生じないように定めなければならないという等価の原則を定めた同法77条2項や宅地棟の価額の算定基準及び評価時点について定めた同法80条、施設建築敷地の価額等の概算額の算定基準を定めた同法81条の規定の適用が排除されており、適用されるのは、同法82条の公共施設用地の帰属の基準のほか、同法74条の「権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物及び施設建築敷地の合理的利用を図るように定めなければならない」(同条1項)、「権利変換計画は、関係権利者間の利害の公平に充分の考慮を払って定めなければならない。」(同条2項)という抽象的な基準だけであり、この点で、全員同意型の方式を採る場合には、権利変換計画の内容につき客観的な基準よりも関係者の同意に重点が置かれていると考えられる。 しかも、証拠(甲42、乙21、24,25の1、証人A)及び弁論の全趣旨によれば、関係権利者の従前の土地・建物価額の評価は、本件組合の依頼により不動産鑑定士による鑑定がされ、それに基づいて従前資産の評価がされ、同評価につき関係権利者全員の同意を得て行われ、これを基に権利変換計画が作成され、都市再開発法43条に基づき審査委員3名の同意 より不動産鑑定士による鑑定がされ、それに基づいて従前資産の評価がされ、同評価につき関係権利者全員の同意を得て行われ、これを基に権利変換計画が作成され、都市再開発法43条に基づき審査委員3名の同意がされたものであり、その中で本件建物の取得価格が決定されたものであることが認められるところ、そもそも市街地再開発事業は、全事業費を支払うに足りるだけの事業に伴う参加組合員負担金等の収入が確保されるときに初めて成立するものであって、本件の権利変換計画も練馬区が支払を約した参加組合員負担金を不可欠の前提としているのであり、その支払がされず、他にそれを填補する途が得られなければ、権利変換計画自体の実現が困難となるものである上、練馬区は、地域の街づくりにおいて主導的地位にあり、本件事業の基礎をなす権利変換計画自体が成り立たなくなるような行為は行い難い立場にあるものと認められる。 さらに、前掲証拠によれば、本件においては、平成7年度支出命令についての減額を申し入れるべき義務の有無が問題となっているところ、同支出命令に係る支払のされた平成8年4月19日の1か月半ほど後である同年6月7日にεは竣工していることも認められる。 したがって、練馬区がその参加組合員負担金を本件組合に対して支払うことが本件事業全体の権利変換計画の中で占めていた重要性にかんがみれば、実際上、被告が平成7年度分支出命令をするか否かの検討に当たって、練馬区の参加組合員負担金の見直しを求めることを期待するのは困難であり、また、仮に被告がその申入れをしたとしても、本件事業自体の実現を考えた場合、本件組合が練馬区の参加組合員負担金を減額することについて同意をした可能性は皆無であったものと認められる。 加えて、前記法令の定め及び前提事実によれば、練馬区の参加組合員負担金の概算額を定めた本件 件組合が練馬区の参加組合員負担金を減額することについて同意をした可能性は皆無であったものと認められる。 加えて、前記法令の定め及び前提事実によれば、練馬区の参加組合員負担金の概算額を定めた本件協定締結後、その内容を含む権利変換計画が東京都知事により認可され、同認可が関係権利者に通知されることにより、行政処分として公定力を有するものと解される権利変換の処分がされていることが認められ、したがって、概算額とはいえ、本件事業につき練馬区が本件建物の取得に対応して参加組合員負担金として支払うべきおおよその金額については、行政処分たる権利変換の処分により支払義務が確定されていて、同処分が取り消されたり当初から無効である旨の主張立証はない。 これらの事実からすれば、仮に、客観的には本件建物の取得価格が時価に比して高額なものであったとしても、被告において練馬区の参加組合員負担金の減額の申入れを本件組合に対してすべき義務が生じていたものとは認め難く、むしろ、仮にそのような申入れをしていたとしても、本件組合及び関係権利者においてそれが受け入れられる可能性は皆無であったと認められるから、平成7年度分支出命令に関する指揮監督権者としての被告の立場において、同申入れをしないまま平成7年度分支出命令がされることを許してしまったとしても、これが被告の財務会計法規上の行為義務に違反したものとして直ちに違法となるとは認められない。 なお、証拠(甲43、乙25の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば、本件事業の参加組合員である新日本製鐵株式会社及び三井不動産株式会社については、平成8年9月26日に、同各社の参加組合員負担金が減額されたことが認められるが、同各社と本件組合が締結した参加組合員契約書6条2項においては、参加組合員負担金の額の減額条件の一つとして「都営12 、平成8年9月26日に、同各社の参加組合員負担金が減額されたことが認められるが、同各社と本件組合が締結した参加組合員契約書6条2項においては、参加組合員負担金の額の減額条件の一つとして「都営12号線の練馬-新宿間の開業が平成6年度末より遅れた場合にまたは遅れることが明確になった場合」との定めがあり、実際にその開業が遅れたことから、この定めに基づいて、本件組合が減額につき鑑定を依頼し、その鑑定結果を基にして、審査委員の意見書においても減額をしなくてはならないとの意見が表明されたことから、練馬区としても本件組合に対して同減額に同意し、減額要求額8億1899万7000円のうち、減額しても事業の成立が可能であると判断された5億2387万6000円の減額がされたことが認められる。 これに対し、本件協定においてはこのような具体的かつ明確な定めはなく、本件協定において練馬区の参加組合員負担金の額を見直すべき事由が生じたものとは認められないことは前記イ)のとおりであって、上記各社の場合のように当初から参加組合員負担金の額の見直しをすべき事態が具体的に想定されていた場合とは前提が異なるから、上記各社についての参加組合員負担金の減額がされた事実は、何ら前記判断を左右するものではない。 エ)以上によれば、練馬区が、本件組合に対し、本件協定の内容を変更して参加組合員負担金の減額を求める法律上の根拠はなかったし、任意の交渉を通じてその実現を図ろうとすることも困難であったといわざるを得ないのであるから、参加組合員負担金額の減額を求めることのないまま本件支出命令をしたことが違法であったということはできず、したがって、被告に指揮監督義務違反があったということもできないのであって、原告らの前記①の主張は失当であるといわざるを得ない。 3)議会の議決の必要性に関する主 とが違法であったということはできず、したがって、被告に指揮監督義務違反があったということもできないのであって、原告らの前記①の主張は失当であるといわざるを得ない。 3)議会の議決の必要性に関する主張についてア)原告らは、本件協定の締結は、地方自治法96条1項6号の「財産を交換し、又は出資の目的」とする場合、又は同項8号の「財産の取得」に当たるものとして議会の議決を要すると主張するのに対し、被告は、「本件建物の取得は、参加組合員として本件事業により建設される再開発ビルの床を取得する方法によりされたもので、これは、権利変換処分という行政処分によって原始取得するものであるから、売買契約その他私法上の行為によって承継取得するものではなく、地方自治法96条1項により議会の議決を要する場合には当たらない。」と主張するところ、仮に本件協定の締結については、議会の議決が必要であるとすれば、その議決を欠いた契約は私法上無効というべきこととなるので、この点について判断する。 本件協定は、形式的に見れば、「財産を交換し、又は出資の目的」とする場合には当たるものではないし、また、本件建物は、権利変換処分という行政処分によって練馬区が原始的に取得するものであり、本件協定の効果として直ちに財産取得の効果が生じるものでもないのであるから、「財産の取得」にも当たらないものといわざるを得ない。しかしながら、2)、ウ)においても指摘したとおり、本件事業のような全員同意型の第一種市街地再開発事業の場合には、権利変換計画の内容について、法律上の規制がほとんど働かず、参加組合員の合意によって決定されると言っても差し支えない状況にあるのであるから、練馬区が本件協定を締結した場合には、協定に定められた内容に従って保留床を取得する一方、参加組合員負担金の支払義務を負うことが、ほぼ によって決定されると言っても差し支えない状況にあるのであるから、練馬区が本件協定を締結した場合には、協定に定められた内容に従って保留床を取得する一方、参加組合員負担金の支払義務を負うことが、ほぼ必然的な成り行きとなるものである。そして、このことからすると、本件協定を締結するということは、実質的にみれば、一定の対価(参加組合員負担金)を支払って保留床を取得する旨の合意をすることを意味するものといえるのであり、このような実質に着目し、かつ、地方自治法96条1項8号が、重要な財産の取得や処分といった普通地方公共団体の財政に影響を及ぼす可能性がある事項の決定は、執行機関の判断のみに委ねることなく、議会における審議を通じてその当否を判断する機会を与える必要があるとの観点から規定されたものであると解されることをも考慮すると、本件協定は、同号所定の「財産の取得」又はこれに準ずるものとして議会の議決を要するものと解すべきである。 もっとも、証拠(乙9、10)によれば、土地改良法54条の2第5項に基づく土地の取得(いわゆる創設換地の取得)については、議会の議決を要しないとの行政実例が存在し(乙10)、また、「自治実務セミナー」という名称の雑誌や、地方公共団体公有財産管理事務質疑応答集という名称の書籍において、都市再開発法21条の参加組合員として建築物を取得する場合にも、議会の議決を要しないとの見解が示された例があること(乙9、20)が認められる。しかしながら、創設換地の取得の場合には、換地計画の内容に関する法令上の規制がそのまま適用されることとされており、法令上の規制の適用がほとんど排除され、参加組合員の合意によってほぼ権利変換計画の内容が決定される本件協定とは、その実質を大きく異にするのであるから、これを直ちに本件協定に適用することはできないものと 令上の規制の適用がほとんど排除され、参加組合員の合意によってほぼ権利変換計画の内容が決定される本件協定とは、その実質を大きく異にするのであるから、これを直ちに本件協定に適用することはできないものというべきであるし、また、上記各書籍に掲載された論稿は、それがどの程度権威のあるものとして扱われるべきであるかには疑問があるのみならず、その内容も、全員同意型の場合とそれ以外の場合とを区別した検討がされているものでもなく、そのまま本件協定に適用し得るものということはできないものというべきである(その上、自治実務セミナー掲載の論稿においては、参加組合員としての建築物の取得の「実質をみれば、100パーセント疑問なしというわけではないが」との留保が付されていることにも留意すべきである。)。したがって、上記の行政実例等は、上に示した結論を左右するものではない。 イ)以上のように、本件協定は議会の議決を欠いている点で私法上無効というべきであるから、本来ならば、これに基づく支出命令もまた違法無効なものというべきである。 もっとも、本件協定の上記無効事由は、その態様からみて、本人から十分な授権を受けないでされた無権代理行為と同質のものであるところ、無権代理行為については本人が追認することによって有効なものとなるのであり、本人が無権代理行為の存在を知りつつ無効を主張せず、かえってその行為を是認する態度を採っている場合には、少なくとも本人は、その無効を主張し得なくなるものと解すべきである。 これを本件協定についてみると、前記1、2)、ウ)のとおり、本件建物取得の対価とみるべき参加組合員負担金の支出については、平成5年度の補正予算議案において仮称春日町図書館建設負担金と明示の上で平成5年度分の支出並びに平成6年度及び平成7年度における債務負担行為が議決されたの とみるべき参加組合員負担金の支出については、平成5年度の補正予算議案において仮称春日町図書館建設負担金と明示の上で平成5年度分の支出並びに平成6年度及び平成7年度における債務負担行為が議決されたのを初めてとして、各年度ごとに予算として議決され、しかも各年度の決算においても、費目を明示した上で認定がされているのである。このように平成7年度分支出命令をすべき時点までには、既に2回の分割払がされており、そのいずれもが議会の議決を経た予算に基づいていて、決算についても議会の認定を受けているのである以上、議会としても本件協定の存在を認識しつつ、これを是認していたと認めるのが相当であり、平成7年度分支出命令もまた、議会が議決した同年度予算に基づくものであることからすると、本件協定については、もはや練馬区の側からはその無効を主張し得ない状態にあったと認めるのが相当である。そうである以上、平成7年度分の参加組合員負担金の支出も私法上やむを得ないものであって、これについての支出命令も有効なものといわざるを得ない。 ウ)なお、原告らは、「本件協定は、練馬区財産価格審議会条例1条の『区有財産の取得』にも当たるから、同審議会に諮問し、その答申を得るべきであったにもかかわらず、これらの手続を経ていない点でも手続的違法がある。」とも主張するところ、上記の検討結果に照らしてみれば、本件協定は、上記条例所定の「区有財産の取得」にも当たるものと解するのが相当であると認められる。もっとも、同条例において求められているのは、あくまでも諮問手続にすぎないのであるから、これを経なかったことにより直ちに本件協定の締結が違法となるのかどうかは疑問であるのみならず、少なくとも、それを経ないまま締結された本件協定が、私法上無効になることはないものというべきである。 4)以上のまとめ たことにより直ちに本件協定の締結が違法となるのかどうかは疑問であるのみならず、少なくとも、それを経ないまま締結された本件協定が、私法上無効になることはないものというべきである。 4)以上のまとめ以上によれば、参加組合員負担金額の減額を求めないまま平成7年度分支出命令が行われた点には違法があるとはいえないし、本件協定は、議会の議決を経ていないという点において違法無効であるが、平成7年度分支出命令が行われた時点においては、もはや練馬区の側からその無効を主張し得なくなっていたというべきであるから、同支出命令自体は適法なものというべきこととなる。 4 以上の次第で、平成7年度分支出命令が適法なものである以上、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの本訴請求のうち、同支出命令の違法を理由とする部分は理由がないこととなる。 第4 結論よって、原告らの本訴請求に係る訴えのうち、平成8年4月17日の支出命令(金額は、4億9412万6000円)に係る訴え以外の部分は、適法な監査請求を欠き、不適法であるから却下し、その余の請求は、理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、66条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官鶴岡稔彦裁判官加藤晴子
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