平成18(ネ)487 損害賠償,地位確認等請求控訴,同附帯控訴事件(通称 昭和町嘱託職員再任用拒否)

裁判年月日・裁判所
平成18年5月25日 東京高等裁判所 その他 甲府地方裁判所 平成15(ワ)300
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判決文本文13,053 文字)

- 1 -H18. 5.25東京高等裁判所平成18年(ネ)第487号損害賠償,地位確認等請求控訴事件,平成18年(ネ)第1500号同附帯控訴事件事件番号:平成18年(ネ)第487号,平成18年(ネ)第1500号事件名:損害賠償,地位確認等請求裁判年月日:H18. 5.25裁判所名:東京高等裁判所部:第21民事部結果:原判決一部変更原審裁判所名:甲府地方裁判所原審事件番号:平成15年(ワ)第300号,平成16年(ワ)第22号判示事項の要旨: 普通地方公共団体の長が,議会,委員会において,当該普通地方公共団体の事務の執行に関し,故意又は過失により事実に反する説明をし,他人の名誉を毀損した行為は,国家賠償法上違法となる。 地方公共団体が地方公務員法3条3項3号所定の嘱託員で任用期間の定めのあるものの職に任用された者を合理的理由がない限り再任用するという運用を行っていた場合において,任命権者が再任用を希望していた当該嘱託員につき合理的理由がないのに差別的な取扱いを行って再任用をしなかったときには,当該行為は,上記嘱託員が有していた再任用について合理的理由なしに差別的な取扱いを受けないという人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。 主文 本件控訴及び本件各附帯控訴のうち弁護士費用相当額の損害賠償請- 2 -求に係る部分に基づき原判決中控訴人に関する部分を次のとおり変更する。 (1)控訴人は,各被控訴人に対し,それぞれ100万円及び内金90万円に対する平成16年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被控訴人らのその余の請求を棄却する。 その余の本件控訴及びその余の本件各附帯控訴を棄却する。 訴訟費用(控訴費用及び各附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審 の割合による金員を支払え。 (2)被控訴人らのその余の請求を棄却する。 その余の本件控訴及びその余の本件各附帯控訴を棄却する。 訴訟費用(控訴費用及び各附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審を通じてこれを5分し,その2を控訴人の負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。 この判決は,第1項の(1)に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 上記取消しに係る被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2附帯控訴の趣旨 原判決中控訴人に関する部分を次のとおり変更する。 被控訴人両名が控訴人の嘱託職員としての地位を有することを確認する。 控訴人は,各被控訴人に対し,それぞれ230万円及び内金200万円に対する平成16年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第3事案の概要 本件は,控訴人の町立温水プール(以下「温水プール」という。)において嘱託職員(期限付き嘱託員)として勤務していた被控訴人両名が,控訴人及びその町長であり原審において被告であったAに対し,Aが町長室,議会運営委員会(原判決にいう「議員運営委員会」とは後記のとおり議会- 3 -運営委員会を指す。)及び議員協議会(原判決にいう「町議会議員全員協議会」,「全員協議会」とは後記のとおり「議員協議会」を指す。)において被控訴人両名に対する誹謗中傷を内容とした発言を行ってその名誉を毀損するとともに,Aが町長としての権限を逸脱して教育委員会に働きかけて合理的な理由がないにもかかわらず被控訴人両名を嘱託職員として再任用しないこととする違法な行為を行ったとして,国家賠償法第1条第1項及び民法第709条に基づき,これにより被控訴人両名が受けた精神的苦痛等に対する慰謝料として,連 ず被控訴人両名を嘱託職員として再任用しないこととする違法な行為を行ったとして,国家賠償法第1条第1項及び民法第709条に基づき,これにより被控訴人両名が受けた精神的苦痛等に対する慰謝料として,連帯して各200万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払等を求めるとともに,控訴人に対し,被控訴人両名の嘱託職員としての地位の確認を求める事案である。 原審は,被控訴人らのAに対する請求を棄却し,控訴人に対する請求を一部認容した。これを不服とする控訴人が控訴を提起し,被控訴人らは附帯控訴を提起して地位確認を求めるとともに弁護士費用相当額の損害賠償請求を追加した。なお,被控訴人らは原判決中Aに関する部分については控訴を提起しなかったため,原判決中同部分は確定した。 争いのない事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり改め,3のとおり控訴人の当審における主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第2事案の概要」の2及び3並びに「第3争点に対する当事者の主張」の1から4まで(原判決3頁14行目から10頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(なお,前記のとおり,原判決にいう「議員運営委員会」とは議会運営委員会を指し,「全員協議会」とは「議員協議会」を指すが,原判決中のこれらの用語は訂正しないこととする。)。 (1)原判決中上記引用に係る部分のうちの各「被告ら」をいずれも「控訴人」と,各「被告A」をいずれも「A」とそれぞれ改める。 - 4 -(2)原判決5頁24行目から6頁2行目までを削除する。 (3)原判決6頁3行目の「イ」を「ア」に改め,同行目の「仮に,原告両名の主張が不適法でないとしても,」を削除する。 (4)原判決6頁9行目の「ウ」を「 5頁24行目から6頁2行目までを削除する。 (3)原判決6頁3行目の「イ」を「ア」に改め,同行目の「仮に,原告両名の主張が不適法でないとしても,」を削除する。 (4)原判決6頁9行目の「ウ」を「イ」に改める。 控訴人の当審における主張(1)平成15年3月20日の議会運営委員会及び同年4月11日の議員協議会におけるA及び各町議会議員との質疑応答を録音していたテープの反訳書(乙16,17)によれば,Aが被控訴人らの名誉を毀損するような発言をしていないことが明らかである。 (2)普通地方公共団体の長が議会,委員会において議員の質疑に対してする答弁は,議員の質疑等が地方自治における住民の意思形成の前提となるものであることに照らすと,議員の質疑等について最高裁平成6年(オ)第1287号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3850頁が判示しているところと同様に,仮に普通地方公共団体の長の答弁のうちに個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても,これによって当然に国家賠償法第1条第1項にいう違法な行為があったものとして地方公共団体の損害賠償責任が生ずるものではなく,同責任が肯定されるためには,普通地方公共団体の長が,その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し,あるいは,虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど,普通地方公共団体の長がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解すべきである。仮にそうでないとしても,普通地方公共団体の長が職務として議会等において議員の質疑等に応じて答弁するについては,正当業務行為とされる範囲が広いことは明らかである。Aは,町長としての職責を果たすために必要最小限度の答弁を行ったものである。 の長が職務として議会等において議員の質疑等に応じて答弁するについては,正当業務行為とされる範囲が広いことは明らかである。Aは,町長としての職責を果たすために必要最小限度の答弁を行ったものである。 - 5 -(3)原判決の真実性に関する事実認定には事実誤認がある。 (4)被控訴人らの本件辞令の発令の違法を理由とする損害賠償請求を認容した原判決は,最高裁平成6年(オ)第1287号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3850頁に反する判断をしている。 (5)被控訴人らは,自らの意思により嘱託職員としての再任用を断ったのであり,その他,原判決の判断は前提となる事実認定を誤って判断をしたものというべきである。 第4当裁判所の判断 被控訴人らの請求の当否について判断する前提となる事実関係については,次のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第4当裁判所の判断」の1(原判決10頁12行目から17頁7行目まで)に説示するとおりであるから,これを引用する。控訴人が当審において提出した証拠を考慮しても,原審の上記認定を左右するに足りない。 原判決11頁5行目から23行目までを次のとおり改める。 「(2)控訴人における嘱託職員等の任用等控訴人においては,昭和町職員定数条例(昭和42年昭和町条例第3号)により一般職の地方公務員(地方公務員法第4条にいう「職員」)の採用に関して定数に上限が設けられており,上記制限の下で正規任用に係る一般職の地方公務員だけでは賄いきれない事務量があるが,特別の習熟,知識,技術又は経験を必要としない代替的事務については,人件費等の増大を防ぐとともに,住民サービス向上等のために,地方公務員法第3条第3項第3号にいう嘱託員に相当する嘱託職員の職に任用し,また,同法第22条第2項所定の臨時的任用を行 的事務については,人件費等の増大を防ぐとともに,住民サービス向上等のために,地方公務員法第3条第3項第3号にいう嘱託員に相当する嘱託職員の職に任用し,また,同法第22条第2項所定の臨時的任用を行う運用がされていた。控訴人においては,上記の嘱託員を嘱託職員と呼び,臨時的に任用された者を臨時職員と呼んで,給与等の支給は「昭和町嘱託職員及び臨時職員等の給与及び旅- 6 -費に関する規則」(昭和63年6月28日規則第10号)に基づいて行っており,平成15年4月1日当時,控訴人全体で約170名,そのうち教育委員会において67名の嘱託職員及び臨時職員(以下両者を併せて「嘱託職員等」という。)が採用されていた。こうして,昭和町教育委員会生涯学習課温水プールにも一般職の地方公務員のほか嘱託職員等が配置されており,平成15年3月当時,昭和町教育委員会生涯学習課温水プールは,一般職の地方公務員1名,嘱託職員8名及び臨時職員1名によって構成されていた。 嘱託職員等の採用については,従来いわゆる縁故採用が行われていたが,平成12年6月ころからは公募を含む登録制度が取り入れられ,そのころから,任期ごとに6か月(特別職の場合は1年の場合もある。)の任用期間を明示した辞令を交付するという扱いを行うようになった。 昭和町教育委員会における嘱託職員等の採用においては,教育長が実質的な人事権を有し,教育委員会が辞令を交付することとなるが,実際上増員や異動といった職員配置の変更が必要な場合には,教育委員会として事前に申し入れをし,町長,総務課長と協議をする方法を採っていた。 控訴人において,従来,任用期間が長年にわたる嘱託職員について任用期間の更新をしないこととする措置を執ったことはなく,昭和町教育委員会でも同様であった。B教育長及びC所長が在任していた平成13 。 控訴人において,従来,任用期間が長年にわたる嘱託職員について任用期間の更新をしないこととする措置を執ったことはなく,昭和町教育委員会でも同様であった。B教育長及びC所長が在任していた平成13年から平成15年にかけて,昭和町教育委員会において,再任用を希望した嘱託職員等についてそれを認めず,再任用をしなかった例はなく,被控訴人両名が初めてであった。」 本件控訴のうち名誉毀損を理由とする国家賠償請求に係る部分について当裁判所も,前記引用に係る原判決の認定事実(前記訂正部分を含- 7 -む。)の下では,被控訴人らの名誉毀損を理由とする国家賠償請求は,各被控訴人につきそれぞれ30万円及びこれに対する平成16年2月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容すべきであるが,その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は,次のとおり訂正し,後記の4のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第4当裁判所の判断」の2の(1)及び(3)のア(原判決17頁9行目から21頁14行目まで,同31頁5行目から9行目まで)に説示するとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決18頁24行目から19頁1行目までを次のとおり改める。 「そして,議会運営委員会(乙第16号証によれば,原判決にいう「議員運営委員会」とは「議会運営委員会」を指すものと認められる。)には議長や控訴人の幹部職員だけでなく町議会の各委員会の代表者や一部の町議会議員も出席しており,また,議員協議会(乙第17号証によれば,原判決にいう「全員協議会」とは「議員協議会」を指すものと認められる。)には控訴人の幹部職員だけでなく町議会議員全員が出席していたのであって も出席しており,また,議員協議会(乙第17号証によれば,原判決にいう「全員協議会」とは「議員協議会」を指すものと認められる。)には控訴人の幹部職員だけでなく町議会議員全員が出席していたのであって,Aの上記発言が町議会議員の質問に対する町長としての答弁としてされたものであることからすると,Aの上記発言が,町長の公式答弁として出席者を通じて不特定多数の者に伝播することとなる蓋然性があったものということができる。」(2)原判決19頁8行目から10行目までを次のとおり改める。 「(イ)これに対し,控訴人は,Aが上記のとおり発言したのは町長として必要な答弁をしたものであり,町長としての正当な職務行為にほかならないとして,違法ではないと主張する。 普通地方公共団体の執行機関は,当該普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令,規則その他の規- 8 -程に基づく当該普通地方公共団体の事務を,自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負うのであり(地方自治法第138条の2),普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行するのであり(同法第148条),普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の長その他の執行機関の報告を請求して,当該普通地方公共団体の事務の管理,議決の執行及び出納を検査することができるのであって(同法第98条第1項),これらの規定が示すとおり,普通地方公共団体の長は誠実に当該普通地方公共団体の事務を執行しなければならず,その事務の執行が事実に基づいて適正にされているかどうかは議会による検査の対象となることに照らせば,普通地方公共団体の長が上記のとおり職務を執行するに当たって必要とされる普通地方公共団体の長自らの判断は事実に基づくものでなければならず,その るかどうかは議会による検査の対象となることに照らせば,普通地方公共団体の長が上記のとおり職務を執行するに当たって必要とされる普通地方公共団体の長自らの判断は事実に基づくものでなければならず,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によりその判断が全く事実の基礎を欠く場合には,そのような判断に基づく職務執行行為は違法となるというべきである。そして,上記の地方自治法第138条の2及び同法第98条第1項の趣旨に照らすと,普通地方公共団体の長は,議会,委員会において当該普通地方公共団体の事務の執行に関して誠実に説明すべき義務を負っていることはいうまでもなく,この説明をするに当たっては,事実に基づいてこれを行わなければならず,故意又は過失により事実に反する説明をした場合には,当該普通地方公共団体の事務の執行に関して説明責任を果たしたということはできないのみならず,そのような説明をすることは,普通地方公共団体の長の職務執行行為として違法となるといわざるを得ない。したがって,普通地方公共団体の長が,上記の説明の過程で- 9 -行った発言により他人の名誉を毀損するに至ったときは,当該行為が国家賠償法上違法となることも否定することができないものというべきである。 控訴人は,普通地方公共団体の長が議会,委員会において議員の質疑に対してする答弁は,議員の質疑等が地方自治における住民の意思形成の前提となるものであることに照らすと,議員の質疑等について最高裁平成6年(オ)第1287号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3850頁が判示しているところと同様に,仮に普通地方公共団体の長の答弁のうちに個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても,これによって当然に国家賠償法第1条第1項にいう違法な行為があったものとして当該普 るところと同様に,仮に普通地方公共団体の長の答弁のうちに個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても,これによって当然に国家賠償法第1条第1項にいう違法な行為があったものとして当該普通地方公共団体の損害賠償責任が生ずるものではなく,同責任が肯定されるためには,普通地方公共団体の長が,その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し,あるいは,虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど,普通地方公共団体の長がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解すべきであると主張する。 確かに,国会又は地方公共団体の議会における議員の質疑等は,多数決原理による統一的な国家意思ないし地方公共団体の意思の形成に密接に関連し,これに影響を及ぼすべきものであり,国民又は住民の間に存する多元的は意見及び諸々の利益を反映させるべく,あらゆる面から質疑等を尽くすことも国会議員又は地方公共団体の議会の議員の職務ないし使命に属するものであるから,質疑等においてどのような問題を取り上げ,どのような形でこれを行うかは,国会議員又は地方公共団体の議会の議員の政治的判- 10 -断を含む広範な裁量にゆだねられている事柄とみるべきであって,たとえ質疑等によって結果的に個別の国民又は住民の権利等が侵害されることになったとしても,直ちに当該国会議員又は地方公共団体の議会の議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえないと解すべきである(上記第三小法廷判決参照)。しかしながら,地方自治法第138条の2及び同法第98条第1項の趣旨からすると,普通地方公共団体の長は,議会,委員会において当該普通地方公共団体の事務の執行に関して誠実に説明すべき義務を負っているのであり,こ ,地方自治法第138条の2及び同法第98条第1項の趣旨からすると,普通地方公共団体の長は,議会,委員会において当該普通地方公共団体の事務の執行に関して誠実に説明すべき義務を負っているのであり,この説明をするに当たっては,事実に基づいてこれを行わなければならず,故意又は過失により事実に反する説明をした場合には,当該普通地方公共団体の事務の執行に関して説明責任を果たしたということはできないのみならず,そのような説明をすることは,普通地方公共団体の長の職務執行行為として違法となるといわざるを得ず,したがって,普通地方公共団体の長が上記の説明の過程で行った発言により他人の名誉を毀損するに至ったときは,これにより不法行為に基づく損害賠償責任が生ずることも否定することができないことは前記のとおりであり,このことは,上記第三小法廷判決が指摘するその質疑等について広範な裁量権を有する国会議員又は地方公共団体の議会の議員の場合と異なるといわざるを得ない。したがって,控訴人の前記主張は採用することができない。」(3)原判決19頁11行目の「確かに,」を「次に,」に改める。 (4)原判決21頁8行目から14行目までを削除する。 本件控訴のうち本件辞令の発令が違法であることを理由とする国家賠償請求に係る部分について(1)地方公共団体の嘱託員(地方公務員法第3条第3項第3号)で任用- 11 -期間の定めのあるものの職に任用された者は,任用期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない(最高裁平成4年(オ)第996号同6年7月14日第一小法廷判決・裁判集民事第172号819頁,判例タイムズ871号144頁参照)。もっとも,任命権者が,上記嘱託員に対して任用期 めることはできない(最高裁平成4年(オ)第996号同6年7月14日第一小法廷判決・裁判集民事第172号819頁,判例タイムズ871号144頁参照)。もっとも,任命権者が,上記嘱託員に対して任用期間満了後も任用を続けることを確約し又は保障するなど,任用期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,当該嘱託員は,上記のような権利ないし法的利益を取得するものではないとはいえ,そのような誤った期待を抱いたことによる損害につき国家賠償法に基づく賠償を請求することができると解する余地があるというべきである(上記第一小法廷判決参照)。このように,任用期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることができない場合であっても,任命権者が自らの言動によって当該嘱託員に任用期間満了後も任用が継続されるとの誤った期待を持たせるような特別の事情がある場合には,この期待を裏切る行為が国家賠償法上違法となると解する余地があることにかんがみれば,当該地方公共団体において上記嘱託員を再任用しないことについて合理的理由がない限り再任用するという運用が行われていた場合には,上記嘱託員は,任用期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできないとはいえ,少なくとも,合理的理由なしに再任用について差別的な取扱いを受けないという人格的利益を有していたものと見るべき特別の事情があるということができる。したがって,上記の運用が行われていた場合において,任命権者が再任用を希望していた当該嘱託員につき合理的理由- 12 -がないのに差別的な取扱いを行って再 べき特別の事情があるということができる。したがって,上記の運用が行われていた場合において,任命権者が再任用を希望していた当該嘱託員につき合理的理由- 12 -がないのに差別的な取扱いを行って再任用をしなかったときには,当該行為は,当該嘱託員の上記のような人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となると解するのが相当である。そして,当該地方公共団体において,上記嘱託員の職を維持すべき客観的な必要性があり,かつ,従来再任用を希望した嘱託員については特段の事情がない限りその者を再任用するという運用が行われていたという場合にあっては,当該地方公共団体においては上記嘱託員を再任用しないことについて合理的理由がない限り再任用するという運用が行われていたものということができるから,任命権者が上記嘱託員を再任用しないこととするについては合理的な理由を必要とするのであり,合理的な理由がないにもかかわらず,任命権者が再任用を希望していた当該嘱託員につき差別的な取扱いを行って再任用をしなかったときには,当該嘱託員の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 (2)これを本件についてみるに,前記争いのない事実に前記引用に係る原判決の認定事実及び証拠(原審における証人B,同C)を併せて考えれば,平成15年3月当時,昭和町教育委員会生涯学習課温水プールは一般職の地方公務員が1名,嘱託職員8名及び臨時職員1名によって構成されていたこと,控訴人においては,昭和町職員定数条例(昭和42年昭和町条例第3号)により正規職員の採用に関して定数に上限が設けられており,上記制限の下で正規任用に係る一般職の地方公務員だけでは賄いきれない事務量があるが,特別の習熟,知識,技術又は経験を必要としない代替的事務については嘱託職員等を採用 して定数に上限が設けられており,上記制限の下で正規任用に係る一般職の地方公務員だけでは賄いきれない事務量があるが,特別の習熟,知識,技術又は経験を必要としない代替的事務については嘱託職員等を採用する運用が行われていたこと,控訴人において,従来,任用期間が長年にわたる嘱託職員等について任用期間の更新をしないこととする措置を執ったことはなく,昭和町教育委員会でも同様であったこと,B教育長及びC所長が在任していた平成13年から平成15年にかけて,昭和町教育委員会において,- 13 -再任用を希望した嘱託職員等についてそれを認めず,再任用をしなかった例はなく,被控訴人両名が初めてであったこと,A町長は,平成15年4月1日以降被控訴人らを再任用しない方針を固めていたが,同年3月18日に至るまでB教育長に事前にその方針を告げたことはなく,B教育長はA町長の上記の方針を知らなかったこと,B教育長は,A町長が被控訴人らに対して再任用しない旨を告げた後,同年7月までに限って再任用するという案を考え,A町長にその旨説明してその案の了承を得たこと,本件辞令の発令当時,昭和町教育委員会生涯学習課温水プールにおいて嘱託職員の人数を減少させなければならない客観的な必要性が生じていたわけではなく,被控訴人らを再任用しないことにつき合理的な理由が存在していたことを認めるに足りる証拠はないこと,以上のとおり認めることができる。これに対し,控訴人は,被控訴人らを再任用しなかったことについて合理的理由があったとして縷々主張するが,その主張を裏付ける事実を認め難く,いずれも採用することができないことについては,原判決24頁4行目から29頁8行目までに説示するとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決24頁4行目の「エ組織的な運用について」を「ア控訴人にお 採用することができないことについては,原判決24頁4行目から29頁8行目までに説示するとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決24頁4行目の「エ組織的な運用について」を「ア控訴人における嘱託職員の再任用に関する基準の有無ないし運用の実情について」と,同頁19行目から21行目までを「以上によれば,控訴人において任用期間が長年にわたる嘱託職員等については一定の採用年数経過後は再任用しないこととするなどの基準を設けていたり,そのような運用を行っていたりしたものと認めることはできない。」と,同頁22行目の「オ」を「イ」とそれぞれ改め,同28頁1行目の「利用したり」の次に「,被控訴人矢口が住民に選挙の個票を依頼したりした」を加え,同30頁2行目の「カ」を「ウ」と改める。)。 上記認定事実によれば,控訴人の嘱託職員である被控訴人らは,本件- 14 -辞令の発令当時,再任用されることについて権利ないし法的利益を有していたわけではないが,合理的理由がないのに再任用について差別的な取扱いを受けないという人格的利益を有していたものというべきであるから,任命権者が合理的理由がないのに再任用について差別的な取扱いを行った場合は,再任を希望していたにもかかわらず再任されなかった嘱託職員の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 そして,上記人格的利益は,地方公共団体の嘱託職員が,本来権利ないし法的利益を有していたわけではない再任用について,合理的理由のない差別的な取扱いを受けないという観点から法的保護に値することが肯定されるものであること,Aの名誉毀損行為による損害については別途控訴人に対して賠償請求がされて認容されること,その他本件辞令の交付に至る経緯について認められる前記引用に係る原判決の認定事実に 肯定されるものであること,Aの名誉毀損行為による損害については別途控訴人に対して賠償請求がされて認容されること,その他本件辞令の交付に至る経緯について認められる前記引用に係る原判決の認定事実に顕れた一切の事情を総合勘案すると,上記人格的利益が侵害されたことにより各被控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては,各被控訴人につきそれぞれ60万円をもって相当とするというべきである。 控訴人の当審における主張に対する判断控訴人は,種々の理由を掲げて原審の認定を争い,被控訴人らの請求を一部認容した原審の判断を非難するが,いずれも理由がなく採用することができないことは,前記のとおりである。控訴人の上記主張は失当である。 本件各附帯控訴のうち弁護士費用相当額の国家賠償請求に係る部分について上記1及び2のとおり,控訴人は,Aの違法行為により各被控訴人に対し,それぞれ合計90万円の無形の損害を与えたものというべきところ,上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としては各被控訴人につきそれぞれ10万円が相当である。 - 15 -被控訴人らは,上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としては各被控訴人につきそれぞれ60万円をもって相当とすると主張するが,採用することはできない。 本件各附帯控訴のうち地位確認請求に係る部分について前記引用に係る原判決の認定事実によれば,被控訴人らの控訴人の嘱託職員としての任用期間は平成15年3月31日をもって満了しており,その後被控訴人らが控訴人の嘱託職員として任用されたことを認めるに足りる証拠はないから,被控訴人らの地位確認請求は理由がなく,これを棄却すべきである。 したがって,被控訴人らの地位確認請求を棄却した原判決は相当であり,本件各附帯控訴のうち地位確認請求に係る部分は棄却すべきである。 被控訴人らの地位確認請求は理由がなく,これを棄却すべきである。 したがって,被控訴人らの地位確認請求を棄却した原判決は相当であり,本件各附帯控訴のうち地位確認請求に係る部分は棄却すべきである。 なお,被控訴人らは,本件口頭弁論終結後,「弁論再開の申立て」と題する書面を提出し,本件各附帯控訴のうち地位確認請求に係る部分に関し,本件口頭弁論終結後に言い渡された東京地方裁判所平成16年(ワ)第5713号同18年3月24日判決を参考資料として提出した上,同判決を論拠として更に主張立証を行う必要があるとし,このことを理由に口頭弁論の再開を求めているが,当裁判所は,上記東京地裁判決を十分検討した上で,同判決は前記第一小法廷判決が説示した判例法理とは異なる見解に基づいてされたものであり,被控訴人らの地位確認請求について更に審理を行う必要はないと判断し,したがって,口頭弁論を再開しなかった次第である。 第5 結論 よって,本件控訴は一部理由があるがその余は理由がなく,また,本件各附帯控訴のうち弁護士費用相当額の損害賠償請求を追加した部分も一部理由があるがその余は理由がないから,原判決中控訴人に対する損害賠償請求に係る部分を上記判断と抵触する限度において変更することとし,他- 16 -方,本件各附帯控訴のうち地位確認請求に係る部分は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部裁判長裁判官浜野惺裁判官高世三郎裁判官長久保尚善は,転任のため署名押印することができない。 裁判長裁判官浜野惺

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