主文 被告人Aを懲役3年8月に,同Bを懲役2年8月に,同Cを懲役2年2月に処する。 被告人3名に対し,未決勾留日数中60日をそれぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人3名は,共謀の上,融資名下に金員を詐取しようと企て,平成11年4月20日ころから同月22日ころまでの間,前後2回にわたり,東京都中央区ab丁目c番d号所在のD銀行E支店において,当時の同支店融資担当者Fらに対し,被告人Aの父母が経営する有限会社Gが単に印刷業者に対する仲介を業としているのみで,平成10年8月期の売上高も約2255万円にすぎないのに,同社が印刷機を保有して印刷業を営んでいて平成10年8月期の売上高が約2億1029万円にも上る旨虚構の事実を申し向けて同社の事業実態を偽るとともに,同社において今後H保険相互会社及びI保険相互会社から,一事業年度において合計約1600万円の営業利益を継続的に計上し得る印刷業務の受注が確定していて,同業務を行うために新たに輪転機を購入する必要がある旨偽り,かつ返済の意思及び能力もないのにこれあるように装い,「輪転機購入資金と運転資金とで,5000万円の融資をお願いします。返済については,輪転機の設備を整え,HやIから定期的に受注する雑誌印刷の仕事がありますし,設備が整えば他の仕事の受注も可能ですから,返済資金を得て,確実に返すことができると思います。」などと虚構の事実を申し向けて,5000万円の事業資金融資の実行方を申し込み,前記Fらをしてその旨誤信させ,同人らから,当時の同支店支店長Jにその旨を報告させ,同人を同様に誤信させて融資実行を決定させ,よって,同年5月20日,前記D銀行E支店に設けられていた被告人Aが支配可能であった有限会社G名義の当座預金口座に,同支店から融資金として5000万円を振込入金させ, 誤信させて融資実行を決定させ,よって,同年5月20日,前記D銀行E支店に設けられていた被告人Aが支配可能であった有限会社G名義の当座預金口座に,同支店から融資金として5000万円を振込入金させ,もって,人を欺いて財物を交付させたものである。 (量刑理由)本件は,被告人3名が共謀して,信用保証協会の信用保証制度を悪用して,銀行から融資金名下に5000万円を詐取した事案である。 被告人らは,被告人Aの両親が経営する会社を融資先とし,改ざんした確定申告書や虚偽の事業計画書,見積書を銀行に提出するなどし,銀行をして,会社に返済能力があるなどを誤信させて信用保証協会の無担保保証の限度額である5000万円の融資の実行をさせたのであり,犯行態様はまことに計画的かつ巧妙で悪質である。そして,被告人3名は,いずれも金銭欲しさに本件犯行に加わったもので,その動機に酌量の余地はない。被害金額は5000万円と極めて高額である上,既に返済あるいは被害弁償されたのは被害金額の1割強にすぎない。また,中小企業等に対する融資の円滑化を意図した信用保証協会の制度の適正,健全な運用を害した点も軽視できず,生じた結果は重大である。 個別の事情をみると,被告人Aは,国会議員の口利きにより信用保証協会の保証を受けた上で,金融機関から事業資金等の融資を受けられ,さらに,2500万円の手数料を支払えば5000万円の融資が受けられる旨の話をBらから聞き,高齢の両親が経営し,印刷業者の仲介を行っているのみで経常利益がマイナスであった会社を融資先に利用しようとし,被告人Bらの指示に従って虚偽の事業計画を作成するなどしたもので,融資の当事者として本件の中心的な役割を果たしている。また,融資された5000万円の内被告人ら以外に渡ったと証拠から認められるところの手数料等を引いた約3 て虚偽の事業計画を作成するなどしたもので,融資の当事者として本件の中心的な役割を果たしている。また,融資された5000万円の内被告人ら以外に渡ったと証拠から認められるところの手数料等を引いた約3000万円が被告人らに分配されていると窺えるところ,被告人Aの供述を前提としてもその手元及びGの口座には約1800万円が残り,自ら車を購入するなどして約1000万円を費消しているのであるから,本件で得た利得は最も大きい。しかるに,被告人Aは,公判廷において,5000万円の融資が受けられるとは思っていなかったとかH等からの受注が入れば返済できると思っていたなどと弁解し,証拠より認められる融資金の費消状況や受注の可能性に照らせば,自己の責任の軽減を図るとしか見て取れない供述をしている。 被告人Bは,国会議員の口利きで信用保証協会の保証付きの融資が受けられるとの話を聞き,融資を望んでいた被告人Aを紹介され,手数料50パーセントを支払う約束でその仲介をしようとし,被告人Aに返済意思や能力がないことを十分認識しながら,融資に必要な申請書や書類の書き方を具体的に指示するなどして本件に加担したもので,本件融資の当事者ではないものの,本件に積極的に加担し,本件での指導的な役割を果たしている。そして,被告人Bが得た利益は,その供述によっても少なくとも400万円を超えており高額である。しかるに,被告人Bは,融資の仲介をしたに過ぎないかのような供述をし,自己の責任の軽減を図ると取れる弁解をしている。 被告人Cは,被告人Aに被告人Bを引き合わせる仲介等した上,被告人Aから本件融資への協力を依頼されて,被告人Aに返済の意思も能力もないことを承知しながら,連帯保証人に成りすまして銀行に同行し,契約書に署名押印したり,虚偽の見積書を作成するなど,本件で不可欠な役割を果 本件融資への協力を依頼されて,被告人Aに返済の意思も能力もないことを承知しながら,連帯保証人に成りすまして銀行に同行し,契約書に署名押印したり,虚偽の見積書を作成するなど,本件で不可欠な役割を果たし,少なくとも250万円を自己の利益として享受している。 以上によれば,被告人3名の刑事責任は重く,合計約600万円が被害弁償等されていること,被告人Aについては,本件犯行自体は認め,反省の弁を述べていること,前科がなく,実兄が公判廷に出廷していること,被告人Bについては,本件犯行を認め,それなりに反省の態度を示していること,銀行との間で和解が成立し,義兄の協力でその履行の一部として300万円を既に支払っていること,前科前歴がなく,義兄が公判廷に出廷していること,被告人Cについては,本件犯行を認めて反省していること,銀行との間で和解が成立し,その履行の一部として200万円を既に支払っていること,前科前歴がなく,妻が公判廷に出廷していることなどの事情を考慮しても,主文のとおり判断するのが相当とした。 平成13年10月30日東京地方裁判所刑事第4部裁判官野口佳子
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