- 1 -平成19年1月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(行ウ)第45号退去強制令書発付処分等取消請求事件口頭弁論終結日平成18年11月22日判決主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 名古屋入国管理局長が,原告に対して,平成17年7月21日にした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 名古屋入国管理局主任審査官が,原告に対して,平成17年7月21日にした退去強制令書発付処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,トルコ共和国の国籍を有する原告が,名古屋入国管理局(「名古屋入管」ともいう。)長により出入国管理及び難民認定法(「入管難民法」という。)49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を受け,名古屋入管主任審査官により退去強制令書の発付を受けたところ,原告と定住者の在留資格で在留するフィリピン人女性との婚姻関係等に照らして在留特別許可をすべきであるなどと主張して,上記裁決及び退去強制令書発付処分の各取消しを求める抗告訴訟である。 前提事実(争いのない事実及び各項掲記の証拠により認められる事実)( ) 当事者 ア原告は,1977年(昭和52年)6月5日生まれのトルコ国籍を有する外国人である(乙2号証)。 - 2 -イ被告は,処分行政庁である名古屋入管局長及び名古屋入管主任審査官の所属する行政主体である。 ウ名古屋入管局長は,入管難民法69条の2及び同法施行規則61条の2第10号により法務大臣から委任を受けて,同法49条1項の異議の申出が理由があるかどうかを裁決する権限を有する行政庁である。 名古屋入管主任審査官は,同法49条6項,51条により,退去強制令書 の2第10号により法務大臣から委任を受けて,同法49条1項の異議の申出が理由があるかどうかを裁決する権限を有する行政庁である。 名古屋入管主任審査官は,同法49条6項,51条により,退去強制令書を発付する権限を有する行政庁である。 ( ) 原告の入国及び不法残留 ア原告は,平成9年6月16日,関西空港支局入国審査官から,在留資格「短期滞在」,在留期間「90日」とする上陸許可を受けて本邦に上陸した(乙1号証)。 イ原告は,その後,在留期間の更新又は在留資格の変更を受けることなく,在留期限である同年9月14日を越えて本邦に不法残留した(乙1号証)。 ( ) 本件裁決,本件令書発付処分に至る経緯等 ア原告は,平成17年5月24日,入管難民法違反容疑により愛知県警察豊橋警察署員に現行犯逮捕された(乙1号証)。 イ原告は,同年6月14日,名古屋地方検察庁豊橋支部において起訴猶予処分を受け,同日,名古屋入管収容場に収容された(乙1号証)。 ウ名古屋入管入国警備官は,同日,原告に対し違反調査を行った(乙1号証)。 エ名古屋入管入国審査官は,同日及び同月22日,原告に対し審査をし,その結果,同日,原告が入管難民法24条4号ロ(不法残留)に該当する旨の認定を行い,原告に対してこれを通知したところ,原告は,同日,特別審理官による口頭審理を請求した(乙1号証,4号証,5号証)。 オ名古屋入管入国警備官は,同年7月4日及び同月5日,名古屋入管において,フィリピン国籍を有し,定住者の資格で在留する(1966年7A- 3 -月16日生。 との婚姻後の平成11年11月5日に姓を’に変更したBBが,同人との離婚後の平成17年6月20日に姓を’に復した。姓の変A更の前後を問わず,単に「」という。)から,原告についての事情聴取Aをした 平成11年11月5日に姓を’に変更したBBが,同人との離婚後の平成17年6月20日に姓を’に復した。姓の変A更の前後を問わず,単に「」という。)から,原告についての事情聴取Aをした(甲1号証の4及び6,2号証,乙1号証)。 カは,同年7月8日,豊橋市長に対し,原告との婚姻を届け出た(甲1A号証の1)。 キ名古屋入管特別審理官は,同月15日,原告について口頭審理を行い,その結果,上記入国審査官の認定に誤りはない旨判定し,原告に対してその旨通知したところ,原告は,同日,法務大臣に対し,異議の申出をした(乙1号証,9号証ないし11号証)。 ク法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入管局長は,同月21日,上記異議の申出に対し理由がない旨の裁決(本件裁決)をし,同日,名古屋入管主任審査官に同裁決を通知した(乙1号証,12号証,13号証)。 ケ上記通知を受けた名古屋入管主任審査官は,同日,原告に対して,本件裁決を告知するとともに,退去強制令書を発付し(本件令書発付処分),名古屋入管入国警備官は,同日,本件令書を執行した(乙1号証,14号証,15号証)。 ( ) 本訴提起及び執行停止 原告は,同年8月23日,本件裁決及び本件令書発付処分の各取消しを求める本件訴えを提起するとともに,本件令書発付処分の執行の停止を申し立て,当裁判所は,同年9月15日,本件令書の収容部分に関する上記申立てを却下し,送還部分については,本訴の第1審判決言渡しの日から1か月を経過した日まで執行を停止する旨の決定をした(当裁判所に顕著な事実)。 ( ) 本訴提起後の事情 は,同年11月18日,法務大臣から永住許可を受けた(甲14号証)。 A原告は,平成18年9月ころに仮放免され,その後の住所地は愛知県豊橋- 4 -市h町i番地j号室となっている(弁 後の事情 は,同年11月18日,法務大臣から永住許可を受けた(甲14号証)。 A原告は,平成18年9月ころに仮放免され,その後の住所地は愛知県豊橋- 4 -市h町i番地j号室となっている(弁論の全趣旨)。 主たる争点本件裁決にあたり在留特別許可をしなかったことが名古屋入管局長の裁量権の逸脱・濫用に当たるか否かについて,下記の諸点( ) 名古屋入管局長の裁量権の範囲及び性質 ( ) 原告とらの同居,相互扶助の状況等の事実誤認の有無 A( ) 国際人権規約ないし児童の権利条約との関係 ( ) 平等原則違反の有無 ( ) 比例原則違反の有無 主たる争点に関する当事者の主張( ) 名古屋入管局長の裁量権の範囲及び性質 (原告の主張)法務大臣がする入管難民法50条1項に関する処分ないし判断については,従来法務大臣の広範な裁量に服するものとされてきた。しかし,地方入国管理局長は,法務大臣と異なり閣議にも出席せず,内閣の一員として国会に対して責任を負うわけでもないから,名古屋入管局長は,名古屋入管の管轄する地域における在留状況や過去の在留特別許可に関する取扱いには通暁はしていても,その時々の国内の政治・経済・社会等の諸事情,外交政策,当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮する特別な能力もなければ,政治的配慮をする資格もない。 また,実際には,国内の政治・経済・社会等の諸事情等が在留特別許可の許否に際して考慮されてきたわけではなく,時代ごとにおおむね画一的な判断がされてきた。入管難民法69条の2及び同法施行規則61条の2第10号により,在留特別許可の許否に関する法務大臣の権限を地方入国管理局長に委任するとしたのも,近時在留特別許可を受ける者が多数にのぼり,ごく特殊な事件を除き,その許否に関する 施行規則61条の2第10号により,在留特別許可の許否に関する法務大臣の権限を地方入国管理局長に委任するとしたのも,近時在留特別許可を受ける者が多数にのぼり,ごく特殊な事件を除き,その許否に関する判断が画一的に行われていた実態を率- 5 -直に認めたものにほかならない。 そうすると,名古屋入管局長の在留特別許可に関する権限行使について,入管難民法50条1項の文言からある程度の裁量が予定されているにせよ,自由裁量論で説明することはできない。すなわち,名古屋入管局長は,事実を正確に把握した上で,国際条約,国際的な準則,各種通達,先例,出入国管理基本計画等の示すところに従い,退去強制が著しく不当であるか否かを慎重に判断すべきであって,考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事実を考慮して処分の理由が判断された場合,又は,その判断に合理性がない場合には,裁量権の範囲を超え又はその濫用があったとして違法となる。 (被告の主張)ア法務大臣の在留特別許可の許否に関する裁量の範囲及び性質外国人の我が国への入国・在留は,憲法上当然に保障されたものではなく,国家の自由な裁量に任されており,このために我が国に適法に在留している外国人に申請権も付与されている在留期間更新の許否についてさえ,入管難民法上,更新事由の有無の判断は法務大臣の広範な裁量にゆだねられている。他方,在留特別許可は,入管難民法上,退去強制事由が認められ退去させられるべき外国人に恩恵的に与え得るものにすぎない上,在留特別許可の要件を定める入管難民法50条1項4号は,「特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」と規定するのみで,要件を何ら具体的に規定しておらず在留期間更新の要件と比べても極めて広範な要件裁量を認め,また同法50条1項柱書は,「在留を特別に許可することができる」と規 情があると認めるとき」と規定するのみで,要件を何ら具体的に規定しておらず在留期間更新の要件と比べても極めて広範な要件裁量を認め,また同法50条1項柱書は,「在留を特別に許可することができる」と規定しており,在留特別許可に関しては,許可するか否かという効果についても裁量が認められている。 さらに,同法24条列挙の退去強制事由に該当するということは,類型的にみて,我が国の社会に滞在することが好ましくない外国人であるから,在留特別許可の許否の判断に当たっては,当該外国人の在留を特別に許可- 6 -することが我が国の国益の保持に合致するか否かを検討・判断する必要があるところ,そのような検討・判断は,国内はもとより国際的にも広範な情報を収集し,その分析の上に立って,先例にとらわれず,時宜に応じて的確かつ慎重に行う必要があり,時には高度に政治的な判断を要求される場合もあり得る。 これらの事情に照らせば,法務大臣の在留特別許可の許否に関する裁量の範囲は,在留期間更新の許否に関する裁量の範囲よりも質的に格段に広範なものであることは明らかである。そして極めて例外的にその判断が違法との評価を受ける場合があり得るとしても,それは,法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由があったにもかかわらずこれが看過されたなど,在留特別許可の制度を認めた法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情が認められる場合に限られる。 イ名古屋入管局長の裁量の範囲及び性質この理は,法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入管局長にも妥当する。この点,原告は,名古屋入管局長は限定された地位にあり,その裁量の範囲は限定されるべき旨を主張する。 しかし,原告主張のように,名古屋入管局長が閣議に出席しないことから国内の政 管局長にも妥当する。この点,原告は,名古屋入管局長は限定された地位にあり,その裁量の範囲は限定されるべき旨を主張する。 しかし,原告主張のように,名古屋入管局長が閣議に出席しないことから国内の政治・経済・社会等の諸事情,外交政策,当該外国人の本国との外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮する特別な能力がなく,政治的配慮をする資格もないとするのは論理の飛躍があり,名古屋入管局長が管轄外の地域の事情に疎いという根拠もない。さらに,永住許可や難民認定の取消しなど委任の対象となっていない事項でも,国内の治安と善良の風俗の維持,保健・衛生の確保,労働市場の安定,国際的協調などの国益を考慮して,時宜に応じた的確な判断を行うことが必要であり,時に高度な政治的判断を要求される場合があることからしても,原告の主張は失当であ- 7 -り,名古屋入管局長の裁量の範囲を限定すべき根拠とはならない。 ( ) 原告とらの同居,相互扶助の状況等の事実誤認 A(原告の主張)ア原告ととが実質的な婚姻関係にあったことA原告は,平成13年2月ころから,と同居し,生計を一にし,実質的Aな夫婦として暮らしてきており,周囲の人間からもそのように認められていた。原告ととの婚姻届出が原告の身柄拘束後の平成17年7月までA遅れたのには合理的な理由があるから,この遅延をもって原告ととのA婚姻関係に実体がないとはいえない。なお,被告の指摘する点(の児童A扶養手当の受給,との婚姻を前提とした交際)については,以下のとおCり事実と相違しており,あるいはこれにより婚姻関係の実体が失われるとはいえない。 (ア) 原告ととの同居A原告とは,平成12年1月ころに知り合い,1年ほど交際した後,A平成13年2月ころから平成17年5月に原告が身柄を拘束されるま 姻関係の実体が失われるとはいえない。 (ア) 原告ととの同居A原告とは,平成12年1月ころに知り合い,1年ほど交際した後,A平成13年2月ころから平成17年5月に原告が身柄を拘束されるまでの間,同居し,実質的な夫婦として暮らしてきた。 原告は,来日後,愛知県豊橋市a町b番地のcd号(「a町の部屋」という。)に住み,他方,は,平成13年2月ころから平成15A年7月まで,同市e町f番地g号室(「e町の部屋」という。)に住み,平成15年7月に同市h町i番地j号室(「h町の部屋」という。)に転居した。このように,原告はの部屋に住み着かなかったが,これAは,原告が頻繁にの部屋を訪れることで,が受給していた児童扶AA養手当の支給に悪影響を及ぼし,市営住宅であるh町の部屋から退去を迫られ,あるいは,家賃を値上げされることによりの生活が害されAることになるのではないかと心配していたことに理由がある。また,e町の部屋は「1K」であり,とその子(1998年(平成10年)AD- 8 -6月17日生)及び(1999年(平成11年)8月10日生)の3E人でも手狭であったため,原告がe町の部屋に住み着くことはできなかったことも理由の一つである。 は,夕方仕事を終えた後,a町の部屋に赴き,掃除や夕食の準備をAし,原告と一緒に夕食を食べ,原告の伯父や弟がa町の部屋に泊まっていたときでも月の半分くらいは,原告の伯父や弟がいないときには必ず,a町の部屋に泊まっており,こうした原告との生活実態にかんがみAると,原告は,平成13年2月ころから現在までと同居しているとAみるべきである。 (イ) 生計その他生活の一体性については,うなぎ加工工場での就労による賃金及び母子手当,児童扶養手A当合わせて月13万5000円か 年2月ころから現在までと同居しているとAみるべきである。 (イ) 生計その他生活の一体性については,うなぎ加工工場での就労による賃金及び母子手当,児童扶養手A当合わせて月13万5000円から15万5000円程度の収入があったが,家賃,共益費,駐車場及び電気代等の固定的な費用は少なくない。 そのため,原告は,の求めに応じて1万円,2万円と支払い,必要にA応じた援助をしていた。 また,は,年何回かフィリピンへ里帰りすることが不可欠であり,A原告と一緒に暮らしはじめてから10回以上フィリピンへ里帰りしているが,原告は,その際の旅費及びフィリピンのの家族に持っていくAお金をすべて負担してきた。そのほか,原告の援助があったからこそ,の子の及びをフィリピンから呼び寄せることができた。 ADE原告は,らを家族と考えていることから,らのための支出についAAて細かく気にかけることがなく,特に計算したことはないが,原告の自動車修理業の売上げから材料費等の経費,固定的な生活費を控除した残りはほとんどらの生活のために使っていた。 Aそして,原告は,たまの休みには,たちと一緒に出かけたり,夏にAは海に行ったり,バーベキューをしたりして過ごしていた。 - 9 -(ウ) 周囲の人間からの認識原告は,かつての勤務先のホウエイリサイクルの同僚や他の日本人やトルコ人の友達にも,を妻として紹介しており,原告の周りの人間でAを原告の妻でないと思っている人間はいない。 A(エ) 原告ととの婚姻手続の遅延についてA原告との婚姻届出が平成17年7月8日まで遅れたのは以下のよAうな合理的な理由によるものであり,婚姻手続の遅延は原告らの婚姻意思及び婚姻実体の有無に影響を及ぼすものではない。 a法律・制度の誤解原告及びは, が平成17年7月8日まで遅れたのは以下のよAうな合理的な理由によるものであり,婚姻手続の遅延は原告らの婚姻意思及び婚姻実体の有無に影響を及ぼすものではない。 a法律・制度の誤解原告及びは,がフィリピンの法律上容易に再婚することがでAAきないと思いこんでいた。また,の在留資格は,との離婚後はABAA「日本人の配偶者等」から「定住者」となったが,原告とは,が永住者の資格を取得するか帰化するのでなければ,二人が婚姻しても原告に在留特別許可が得られる可能性はないと信じていた。そこで,少なくともが永住者の資格を取ってから婚姻届を提出するのでなAければ,結局,原告は日本に正規に滞在することができないと考えていた。また,不法滞在の身でありながら,と娘たちを守っていかなAければならない原告としては,うかつに動いて強制送還されることを最もおそれていた。そして,原告は,入国管理官署に問い合わせると,住所や氏名を明らかにしなければならず,原告についての退去強制手続が始まると考えていたため,そのような問い合わせをすることもままならなかった。 原告が,平成16年10月ころ,人づてにが定住者の資格でも,A在留特別許可を得ることができそうだと知り,との婚姻手続を開始Aした。 bトルコ政府・フィリピン政府の対応の遅れ- 10 -原告は,平成16年10月,との婚姻届を出すことを決意し,在A日トルコ大使館に有効期限の切れていた旅券の延長を申請した。ところが,原告が不法滞在であること,トルコにおける兵役義務を果たしていないこと等を理由に延長を拒絶された。婚姻届を持っていって婚姻目的であることを説明しても受け入れられず,交渉の末,同年11月29日,旅券の延長の手続が完了した。 原告は,平成16年10月ころより,トルコの と等を理由に延長を拒絶された。婚姻届を持っていって婚姻目的であることを説明しても受け入れられず,交渉の末,同年11月29日,旅券の延長の手続が完了した。 原告は,平成16年10月ころより,トルコの両親に依頼して必要書類を取り寄せ,婚姻要件具備証明書を取得することができたが,その余の書類がそろわず,結局一度目の婚姻要件具備証明書は3か月の有効期限を徒過してしまった。そのため,再度婚姻要件具備証明書を取り直した。婚姻要件具備証明書を速やかに出してもらえなかったのは,本人がトルコに在住していないこと及び兵役の義務を果たしていないことが主な原因であった。 がフィリピン政府から必要書類を入手するのにも時間がかかり,A結局,の婚姻要件具備証明書が発行されたのは平成17年7月5日Aになってからのことであった。 (オ)の児童扶養手当の受給等についてAABA被告は,がとの離婚後,児童扶養手当を受給していたこと,が提出した児童扶養手当現況届に事実婚の事実が記載されていないことをもって,原告ととが実質的に夫婦として暮らしてきたとはいえなAいと主張する。 しかし,児童扶養手当はにとって生活のために必要な糧であったAことから,原告は,と娘たちを守るために,との間で婚姻が成立し,AAかつ自分が日本に在留できることが明らかになるまでは,との生活をA官庁との関係で明らかにする意思がなかった。 したがって,原告とには「両者が実質的に婚姻の関係にあるこA- 11 -と」を届け出ない合理的な理由があり,が児童扶養手当を受けていたAこと,あるいは,児童扶養手当現況届に事実婚の事実が記載されていないことが,両者の実質的婚姻関係を否定することにはならない。 (カ) 原告ととの関係についてC原告とCとは,真実婚姻することを前 こと,あるいは,児童扶養手当現況届に事実婚の事実が記載されていないことが,両者の実質的婚姻関係を否定することにはならない。 (カ) 原告ととの関係についてC原告とCとは,真実婚姻することを前提として交際した事実は存在しないし,ましてや肉体関係など存在しない。ただ,原告は,Cと婚姻届を提出するような形をとって,旅券の有効期間の延長を進めた事実はある。これは,の在留資格の変更がなかなか進まず,追いつめられた原A告が,Cから「在留資格の取得に協力したい。あとで本当の彼女と結婚すればいい。」との申出を受け入れてしまったためである。したがって,Cにも偽装結婚という自覚があったことは明らかである。 しかし,原告は途中で愚かなことだと気づき,また,Cのいうことがいつも違っており,Cを信用できなかったこともあって,Cとの婚姻手続はやめ,Cとも連絡をしないこととした。 以上の次第で,原告がCと婚姻届を提出することを前提として旅券の有効期間を延長しようとした一事をもって,原告ととの間の同居のA事実及び実質的な夫婦としての関係が否定されるものではない。 イ原告について在留特別許可をすべきその他の事情(ア) 原告の素行等原告は,日本に在留した8年間,何ら犯罪的行為は行っておらず,8年間同じ住所に居住し続け,近隣の者にも何ら迷惑をかけたことがない。 原告には,不法残留以外には,何ら日本の法律に違反するような行為,態度は認められない。 なお,被告は,長期にわたる不法在留や不法就労事実は,在留特別許可の許否の判断において,消極的要素として評価されるべきものと主張する。しかし,適法な在留資格を持たない外国人が長期間平穏かつ公然- 12 -と我が国に在留し,その間に素行に問題なく既に善良な一市民として生活の基盤を築いていることが,当該外国人に在留特別 主張する。しかし,適法な在留資格を持たない外国人が長期間平穏かつ公然- 12 -と我が国に在留し,その間に素行に問題なく既に善良な一市民として生活の基盤を築いていることが,当該外国人に在留特別許可を与える方向に考慮すべき第一の事由であることは既に実務上確立した基準であり,被告の主張は妥当ではない。 (イ) 原告の退去強制による子らの学習継続・養育の著しい困難の子である及びは,共に日本国籍を有し,いずれも就学年齢ADEに達している。 及びはいずれも日本国内で養育され,成長してきDEており,日本語以外の言語で教育を受けることはおよそ不可能である。 また,,及びの家計は,事実上原告に支えられている部分が大きADEく,原告がトルコへ送還されることにより,及びの養育や学習のDEADための経済的支援が断たれるから,らが今後日本に残るとしても,及びの養育,学習は経済的に極めて困難となる。 E仮に,らが原告とともにトルコに移ると,及びが日本語以外でADEの言語で教育を受けることは不可能である上に,原告は兵役を課せられ,家族に対して経済的援助をすることはできないから,及びの学習DE継続はおよそ不可能な状態となる。 (ウ) 退去強制後,原告がトルコの兵役制度との関係で不利に扱われること原告は,トルコ本国では15か月間の兵役を課せられることになっているが,兵役の義務を果たしていない。原告がこのような状態で帰国すると,直ちに兵役を課せられるのはもちろん,その処遇も懲罰的に極めて不利なものになる。そして,兵役中は,本人が従軍して生活するための賃金が与えられるのみで,家族に対して経済的援助を行うことは不可能である。 他方,原告が日本において在留資格を得た場合には,一定の金員をトルコ政府に支払うこ ,兵役中は,本人が従軍して生活するための賃金が与えられるのみで,家族に対して経済的援助を行うことは不可能である。 他方,原告が日本において在留資格を得た場合には,一定の金員をトルコ政府に支払うことと引き替えに兵役を30日程度に減縮する措置を受けられるので,原告にとって退去強制が実行されるか否かは,トルコ- 13 -本国の兵役との関係でも雲泥の差がある。 (被告の主張)ア原告ととが実質的な婚姻関係にあったとは認められないことA原告はと長期間にわたって実質的な婚姻関係にあったと主張するが,A両名は特段の理由もなく同居をしておらず,また生計も同一ではなく,周囲の人間からも原告とが夫婦であるとは認識されていなかった。そしAて,は原告と事実婚関係にないことを前提として児童扶養手当を受領しAていた上,原告はと平成16年4月以降交際し,同年10月には婚姻C手続まで進めていたこともあわせ考えると,原告ととが実質的な婚姻A関係にあったとは認められない。 (ア) 原告ととの同居の事実がないことAたとえ原告とが交際していたことが事実であるとしても,原告は,A入管難民法違反容疑で逮捕されるまでに,と同居した事実はなかった。 A事実上の夫婦でありながら,特別な事情から同居ができないのであれば,その原因について共通認識を有しているはずであるが,原告ととのA間ではこの点についての共通認識がない。したがって,原告とは同A居していなかったというべきであり,すなわち,両名間に夫婦としての実体はなかった。 (イ) 生計の同一性がないこと原告からに対して,定額の生活費が渡されていたわけではなく,A基本的に生活費は別々であったほか,は平成14年3月から平成17A年3月までの間,児童扶養手当を受給していたことにかんがみ いこと原告からに対して,定額の生活費が渡されていたわけではなく,A基本的に生活費は別々であったほか,は平成14年3月から平成17A年3月までの間,児童扶養手当を受給していたことにかんがみると,原告ととが家族として生計を同一にし,相互扶助の関係にあったとはA認められない。 (ウ) 周囲の関係者らの認識A原告の親しい知人であるFは,原告が逮捕されるまで,原告から- 14 -を紹介されたことも,という恋人がおり婚姻するつもりがあるなどとA聞かされたことも全くない。それどころか,原告は,Fに対し,は彼A女ではないと説明した。結局,原告ととが,周囲の関係者から,特A別な関係であると認識されていた形跡は全くなく,それは,両名の間に夫婦としての実体がなかったことを示している。 (エ) 原告ととの婚姻手続の遅延について合理的な理由がないことA原告及びが,婚姻を届け出たのは,原告が入管難民法違反容疑でA現行犯逮捕され,名古屋入管に収容された後の平成17年7月8日である。仮に同人らが真に婚姻関係にあったのに婚姻手続が遅延したのであれば,それについて合理的理由があるはずであるが,原告が主張する理由は下記のとおり不合理である。したがって,原告が逮捕された後に至って,在留特別許可を受けることを目的として婚姻手続の準備を始めたとみるのが自然である。 a原告ととが婚姻手続の準備を開始したのは,平成16年10月Aころではなく,原告の逮捕後であること原告は,平成16年10月ころ,が定住者の在留資格のままでも,A同女と婚姻すれば在留特別許可を得ることができそうだと知り,同月ころからとの婚姻手続に必要な書類を取り寄せるなどしたが,トAルコ政府・フィリピン政府の対応の遅れから,実際に婚姻届ができたのは逮捕後になってし ば在留特別許可を得ることができそうだと知り,同月ころからとの婚姻手続に必要な書類を取り寄せるなどしたが,トAルコ政府・フィリピン政府の対応の遅れから,実際に婚姻届ができたのは逮捕後になってしまった旨を主張する。しかし,原告がとのA婚姻手続に必要な書類の収集等を始めたのは,平成17年5月24日に原告が逮捕された後のことであり,原告の主張とは矛盾する。 b待婚期間について原告は,原告ももフィリピン法上,が再婚することは容易でAAはないと思っていた旨を主張する。しかし,原告本人は,が離婚しAた後半年くらいすれば婚姻できると思っていたと供述しており,がA- 15 -と離婚したのは平成13年1月25日であるから,原告が逮捕されBるまで,との婚姻手続の準備をしなかったことの理由にはなり得なAい。 cの在留資格についてA原告は,が永住者の在留資格を許可された後で婚姻しないと原告Aの在留特別許可が付与される可能性がないと誤解しており,入国管理官署に相談に行かなかったのは,原告の実名等を明らかにすれば,原告自身が捕まったり,の在留手続にも支障をきたすことをおそれたAためと主張する。 しかし,入国管理官署での相談で実名を明らかにする必要は必ずしもないし,信頼のおける日本人の知人・友人に代わりに相談に行ってもらうなどの方法をとることも可能である。原告の場合,身近にFらのように適当な人物がいたのに,そのような人物に入国管理官署への相談を頼むこともなく,何ら婚姻手続について積極的な行動を進めようとしなかったのは,原告とが実質的な婚姻関係になかったことAのあらわれである。 また,原告は,平成16年10月ころには,が定住者であっても,A同人と婚姻すれば,在留特別許可を受けられる可能性があることを知ったの とが実質的な婚姻関係になかったことAのあらわれである。 また,原告は,平成16年10月ころには,が定住者であっても,A同人と婚姻すれば,在留特別許可を受けられる可能性があることを知ったのに,そのころとの婚姻手続を進めるべく行動をとったことAもない。 以上のとおり,の在留資格が定住者であったことは,との婚姻AA手続の準備が原告の逮捕より前から開始されなかったことの合理的な理由とはなり得ない。 dトルコ政府・フィリピン政府の対応の遅れについて原告は,書類の交付等について,トルコ政府・フィリピン政府の対応の遅れがあり,婚姻手続が遅くなったなどと主張している。しかし,- 16 -トルコ本国で身分事項証明書を取得するには通常1週間もあれば十分であり,その他,必要書類の取得に長期間を要したという事実はない。 したがって,トルコ政府・フィリピン政府の対応の遅れが原因で,婚姻手続が遅延した旨の原告の主張には理由がない。 (オ) 児童扶養手当児童扶養手当は,当該児童の母が事実婚の状態にあるときには支給されない(児童扶養手当法3条3項,4条2項7号)ところ,は,平成A14年3月から平成17年3月までの間,児童扶養手当を受給しているから,同人が行政機関を欺いて児童扶養手当を詐取していたのでないのなら,少なくとも同期間については,原告ととは事実婚の状態になAかったというべきである。 また,は,平成16年8月4日付けの児童扶養手当現況届には,事A実上の婚姻関係にない旨記載し,平成17年8月5日付けの児童扶養手当資格喪失届には,受給資格がなくなった理由として「事実婚」と記載しており,これらの点からも,平成13年2月以降,原告とが事実A婚の状態にあったとする原告の主張は失当である。 (カ) 原告とCが平成16年4月以降交際 資格がなくなった理由として「事実婚」と記載しており,これらの点からも,平成13年2月以降,原告とが事実A婚の状態にあったとする原告の主張は失当である。 (カ) 原告とCが平成16年4月以降交際し,同年10月には婚姻手続まで進めていたこと本訴係属後の名古屋入管の調査により,原告は,平成16年4月以降,殊に同年6月ころから,日本人女性との交際を開始し,複数回の肉C体関係を持ち,同年10月ころから同人との婚姻手続の準備を始め,婚姻要件具備証明書を申請してこれを受領した上,婚姻届まで作成していたことが判明した。 このような事実に照らすと,原告とが実質的な婚姻関係にあったAとは到底認められず,そもそも両名の交際自体がどの程度のものであったかすら疑わしいし,原告がとの婚姻手続を開始したのは原告が逮A- 17 -捕された後であることが強く推認されるところである。 イ原告の在留特別許可に関するその他の事情(ア) 原告の素行等原告は,本邦入国後2年が経過したころ以降継続的に無免許運転を行っていたことを自認しており,日本に在留した8年間何ら犯罪的行為を行っていなかったとはいえない。また,原告の長期にわたる不法残留及び不法就労等の事実は,在留特別許可の許否の判断の上で,消極的要素として評価されるべきである。 そして,不法残留中に本邦に生活基盤等を築いたとしても,それは,不法在留の継続という違法状態の上に構築されたものにすぎず,それが長期間継続されたからといって,直ちに法的保護を受け得る筋合いのものではない。 (イ) 原告の退去強制と子らの学習及び養育及びは,フィリピンでの生活期間が長く,同人らと原告との間DEに親子と同視できるような関係があったとは認められない。また,原告の収容中のの収入が月19万円であることに照らすと,原 習及び養育及びは,フィリピンでの生活期間が長く,同人らと原告との間DEに親子と同視できるような関係があったとは認められない。また,原告の収容中のの収入が月19万円であることに照らすと,原告がトルAコに帰国したとしても,児童扶養手当の受給により,,及びの生ADE活や養育が極めて困難になることはない。 そして,及びは,未だ可塑性に富む年代であり,しかも出生後DEかなりの期間をフィリピンのの両親の元で過ごしているから,原告Aの退去強制により及びの学習継続・養育が困難になるとの原告のDE主張は前提を欠いている。 (ウ) トルコの兵役との関係仮に,原告が退去強制された場合には直ちに徴兵に応じなければならないとしても,兵役義務が課されている国においてそれに応じることは,当該国の国民の義務であり,当該国の国民にとって著しく不当であると- 18 -は認められない。そして,仮に,らが原告とともにトルコに移ったとAしても,原告が徴兵に応じている間,原告の家族等の援助を受けるなどして生活することも可能である。 ( ) 国際人権規約ないし児童の権利条約との関係 (原告の主張)原告,,及びは,家族として同居し,かつ相互扶助の関係にあったADEところ,本件裁決に伴う退去強制によって,・の養育,学習のための経DE済的支援が断たれ,同人らの教育・成長の環境は著しく害されることになる。 仮に,被告が主張するように,在留特別許可に係る法務大臣等の裁量が極めて広いものであることを前提にしても,なお,法務大臣等は国際人権条約(市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約),児童の権利に関する条約(児童の権利条約))の精神やその趣旨を重要な要素として考慮しなければならない。 原告,,及びは,B規約 は国際人権条約(市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約),児童の権利に関する条約(児童の権利条約))の精神やその趣旨を重要な要素として考慮しなければならない。 原告,,及びは,B規約17条及び23条1項によって保護されるADEべき家族に該当する。 そして,本件裁決は,原告ら家族に対する恣意的な干渉に当たるからB規約17条1項に違反するとともに,児童の最善の利益に反するから,児童の権利条約3条1項に違反する。 (被告の主張)原告は,原告の妻であるの子である及びの学習継続等を不可能とADEする本件裁決は,児童の権利条約,B規約などに違反する旨主張する。 しかし,上述のとおり,原告が及びその子らと本邦において家族としAて同居し,相互扶助の関係にあったとは認められず,原告の主張はその前提を欠く。 また,外国人を自国に受け入れるか否か及び受け入れる場合にいかなる条件を付すかは,国際慣習法上,当該国家が自由に決することができるのが原- 19 -則であるところ,B規約及び児童の権利条約においても,このような国際慣習法上の原則を排斥する規定は存在しない。むしろ,児童の権利条約は,締約国が父母の一方若しくは双方又は児童に対し,抑留,拘禁,追放,退去強制等の措置を取り得ることを認めている。したがって,B規約あるいは児童の権利条約に違反したかどうかは,直ちに在留特別許可の違法性を基礎づけるものではない。 ( ) 平等原則違反の有無 (原告の主張)原告は本邦で定住者と婚姻し,配偶者の連れ子2名を養育しているから,在留特別許可を認めた裁判例や法務省入国管理局が公表している「在留特別許可された事例」などの同種事案と比較しても,原告につき在留特別許可が認められない積極的な理由は存在しない。したがって,本件裁決は,平等原則 を認めた裁判例や法務省入国管理局が公表している「在留特別許可された事例」などの同種事案と比較しても,原告につき在留特別許可が認められない積極的な理由は存在しない。したがって,本件裁決は,平等原則(憲法14条,B規約26条)に違反したものとして違法である。 (被告の主張)原告指摘の事案と本件が同種であるかどうかはさておき,裁量処分については著しい差別となる場合に平等原則違反の問題となるものである上に,在留特別許可を付与するか否かの判断は,在留期間の更新の場合の法務大臣等の裁量よりも更に格段に広範なものであることなどに照らすと,在留特別許可をしなかった法務大臣等の裁決が平等原則に違反するとか,社会通念上著しく妥当でないという理由で違法と評価されるものではない。 ( ) 比例原則違反の有無 (原告の主張)原告が退去強制されることにより,及びは,日本において教育を受DEけ成長する機会を奪われる可能性が極めて高い。他方,原告は8年間,入管難民法以外の法令に反することなく,平穏かつ安定した生活を営んできたのであり,原告を本邦に在留させることによって失われる我が国の公益などお- 20 -よそ考え難い。 本件裁決は,警察比例の原則に照らし,名古屋入管局長の裁量権を逸脱した違法なものである。 (被告の主張)原告がと婚姻関係にあることや,及びを扶養していた事実は認めADEられないから,原告の主張は前提を欠く。 また,退去強制手続を通じて在留資格のない外国人を退去させることにより達せられる公益は,出入国の公正な管理を図ることであるのに対し,外国人には引き続き在留を求める権利は何ら保障されていないのであるから,退去させられることによって当該外国人が被る不利益があったとしても,何ら権利自由の侵害と評価されるものではない。したがって, ,外国人には引き続き在留を求める権利は何ら保障されていないのであるから,退去させられることによって当該外国人が被る不利益があったとしても,何ら権利自由の侵害と評価されるものではない。したがって,退去強制につき比例原則違反が問題となる余地はない。 第3当裁判所の判断 本件裁決の違法性の有無について( ) 名古屋入管局長の裁量権の範囲及び性質 ア法務大臣の在留特別許可の許否に関する裁量の範囲及び性質この点について,上記のとおり争いがあるので判断するに,国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約等がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを自由に決することができるものとされており,我が国の憲法上も,外国人は,我が国に入国する自由や在留の権利(引き続き本邦に在留することを要求する権利)を保障されているわけではないと解される。 それゆえ,我が国に適法に在留している外国人の申請に係る在留期間更新の許否について,その更新事由の有無の判断は法務大臣の広範な裁量にゆだねられていると解されている(最高裁判所昭和53年10月4日大法- 21 -廷判決・民集32巻7号1223ページ参照)ところ,在留特別許可は,入管難民法上の退去強制事由があるため退去させられるべき外国人に対し,特別に許可を与えることができる制度であって,当該外国人には申請権も認められていないのであるから,このような在留特別許可についての法務大臣の裁量権の範囲,性質はより広範で恩恵的なものというべきである。 すなわち,入管難民法24条各号所定の退去強制事由は,我が国の出入国管理行政に悪影響を及ぼす危険性のある者や反社会性の強い者など我が国の社会秩序維持等の観点から好ましくない外国人の類型を列挙 ある。 すなわち,入管難民法24条各号所定の退去強制事由は,我が国の出入国管理行政に悪影響を及ぼす危険性のある者や反社会性の強い者など我が国の社会秩序維持等の観点から好ましくない外国人の類型を列挙したものであり,このような退去強制事由が認められる外国人につき,なお我が国での在留を認めるためには,在留を希望する理由,家族状況,生活状況,素行,内外の諸情勢,人道的配慮の必要性,更には我が国における不法滞在者に与える影響等諸般の事情を総合的に勘案する必要があるから,このような諸般の事情を総合的に検討してなされる在留特別許可の許否の判断は,法務大臣の広範な裁量にゆだねられていると解するのが相当である。 イ権限の委任と裁量権の範囲原告は,地方入国管理局長たる名古屋入管局長は法務大臣とは異なって限定された権限を有する地位にあるものにすぎないから,在留特別許可に関する裁量権の範囲は限定的に解されるべきである旨を主張するが,地方入国管理局長は,法務省の所轄事務のうち,外国人の入国及び出国の管理に関する事項,本邦における外国人の在留に関する事項,難民の認定に関する事項その他の法務省設置法に定められた地方入国管理局の所管事務を統括する権限を有する者であり,近年の入国管理局における業務量の増加にかんがみ,事務処理の合理化を図るため,出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成13年法律第136号)及び同法施行規則により法務大臣は上記判定に対する異議の申出に関する裁決,在留特別許可に関する権限等を地方入国管理局長に委任することができることとされたも- 22 -のであるところ,上記改正法に,地方入国管理局長について裁量権の範囲を限定する立法趣旨が含まれているとは解されない。また,地方入国管理局長は,法務大臣の指揮監督に服する立場にある行政庁として 2 -のであるところ,上記改正法に,地方入国管理局長について裁量権の範囲を限定する立法趣旨が含まれているとは解されない。また,地方入国管理局長は,法務大臣の指揮監督に服する立場にある行政庁として,その所管事務に関係する内外の諸情勢等を含む諸事情につき,上記裁量権行使の前提となるべき情報や知見に欠けるところがあるとは解されないから,その裁量権行使の範囲を法務大臣とは別異に解すべき必要はないと解される。 よって,原告の上記の主張は採用できない。 ( ) 原告とらの同居,相互扶助の状況等の事実関係 A上記「前提事実」欄記載の諸事実と各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると下記アないしカの事実が認められる。 ア原告との交際経緯等Aは,昭和63年9月に在留資格興行,在留期間6月とする上陸許可をA受けて本邦に上陸し,それ以来在留期間の更新許可を継続して受けてきた。 は,平成10年1月8日,勤務先で知り合ったと結婚し,同人とのAB間に,(1998年(平成10年)6月17日生)及び(1999年DE(平成11年)8月10日生)をもうけたが,平成11年ころと別居Bし,e町の部屋に転居した。 原告は,平成12年1月ころ,が勤務する飲食店で同人と知り合い,Aしばらくして同人と交際するようになった。 は,平成13年1月25日,及びの親権者をとしてと離婚ADEABし,平成14年9月ころには,定住者の在留資格を得た。(甲2号証,9号証,10号証,12号証,13号証,乙7号証)イ原告との居住状況A原告は,と知り合った前後を通じてa町の部屋を賃借して住み,は,AA平成11年ころからe町の部屋を賃借し,平成15年7月ころからは,h町の部屋を借りて引っ越し,そこに居住してきた。原告とは,互いのA- 合った前後を通じてa町の部屋を賃借して住み,は,AA平成11年ころからe町の部屋を賃借し,平成15年7月ころからは,h町の部屋を借りて引っ越し,そこに居住してきた。原告とは,互いのA- 23 -住居を行き来し,一緒に食事をしたり,泊まったりすることもあったが,常時起居を共にした経過があるとは認められない(甲9号証,10号証)。 ウ生計の一体性の有無原告は,来日した当初は豊建設やホウエイリサイクル等で働き,平成17年1月からは自分で自動車修理業を営むようになり,一方,は,鰻のA加工工場等で勤務して収入を得,両者はそれぞれの収入で生計を立てていた。もっとも,原告が,の生活費が不足したときや,親子のフィリピAAンへの渡航費用が必要なときに,これらを援助することはあったが,両者が生計を一にする状態にあったとは認められない(甲9号証,10号証,証人)。 Aまた,は,平成14年2月7日,豊橋市長に対し,及びについてADEの児童扶養手当を申請し,平成14年3月分から児童扶養手当の給付を受け,平成16年8月4日には,が事実上の婚姻関係にない旨を記載したA児童扶養手当現況届を提出した。なお,は,平成17年8月5日,同年A3月31日に事実婚により受給資格がなくなったとして児童扶養手当資格喪失届を提出したが,それは原告が本件裁決及び本件令書発付処分を受けた後のことである(乙19号証)。 エ周囲の関係者らの認識原告は,勤務先のホウエイリサイクルで知り合い,家族ぐるみの付き合いをしてきたFに対しても,上記のとおり逮捕されるに至るまで,自分に妻や彼女がいると話したことはなく,Fが原告の仕事場でを見かけてA原告の彼女ではないかと尋ねた際もこれを否定していた(証人F)。 オ原告とCが婚姻届を作成した経緯等 捕されるに至るまで,自分に妻や彼女がいると話したことはなく,Fが原告の仕事場でを見かけてA原告の彼女ではないかと尋ねた際もこれを否定していた(証人F)。 オ原告とCが婚姻届を作成した経緯等原告は,平成16年4月,Fとの花見の席で,同人の妻Gの友人であると知り合った。 は,原告に対して好意を持ち,Gから原告の連絡先をCC聞き出して,同年5月,原告をデートに誘い出した。原告とCはデートを- 24 -重ねるうちに肉体関係を持つようになり,同年9月ころには婚姻することになった。 原告は,Cとの婚姻手続のため,トルコに住む原告の家族に連絡を取り,原告の身分事項証明書を取り寄せ,これを在日トルコ大使館に提出するなどして,同年10月6日ころ婚姻要件具備証明書を取得した。また,原告とCは,婚姻届用紙に必要事項を記載してこれに署名した上,上記F夫妻に依頼して証人欄に署名をしてもらい,婚姻届を作成した。 しかし,Cは,原告が同居を渋ったことなどから不信感を抱くようになり,そのころ別に見合い話があったことから,同年11月末から12月ころ,原告に対し,独身でないと入れない職場の寮に入ることにしたと嘘をついて,原告との婚姻を取り止めた。(乙20号証ないし22号証,証人C)カ原告ととの婚姻届の経緯A原告が上記のとおり平成17年5月24日に逮捕された後,は,原告Aの弟(同人は,平成16年6月ころ在留特別許可を受け「日本人の配偶者等」の在留資格で在留中であった。)らと協力して,原告との婚姻手続を進めることになった。 は,原告の弟に依頼して,トルコ本国から原告の身分事項証明書(平A成17年5月27日付)を取り寄せ,在日トルコ大使館に同証明書等を提出し,原告の婚姻要件具備証明書(平成17年6月3日付)を入手し,また,同月20日,在大阪・神戸 国から原告の身分事項証明書(平A成17年5月27日付)を取り寄せ,在日トルコ大使館に同証明書等を提出し,原告の婚姻要件具備証明書(平成17年6月3日付)を入手し,また,同月20日,在大阪・神戸のフィリピン総領事館で改姓手続を行った上,婚姻要件具備証明書(同年7月5日付)を入手した。そして,原告とは,証人欄に上記F夫妻の署名をしてもらって婚姻届を作成し,同月8A日,豊橋市長に対し,において上記婚姻届を提出した。(甲1号証の1,A1号証の2,1号証の5,1号証の6,乙5号証,8号証)キ原告の身分事項証明書に関する供述等の信用性について- 25 -(ア) 原告は,上記のとおり平成16年10月6日に在日トルコ大使館から発行された婚姻要件具備証明書に添付された原告の身分事項証明書は,Cとの婚姻の話が持ち上がるより前の同年6月ころに,との婚姻手続Aのためにトルコの両親に取り寄せを依頼したものであると供述する。 しかし,原告のこの供述は,原告が在日トルコ大使館に上記婚姻要件具備証明書の申請をした際,その申請書にCと婚姻する旨を明記したこと(原告本人,第1回)と矛盾しており,また,トルコの両親に身分事項証明書を依頼した時期が,上記婚姻要件具備証明書の発行手続がなされた時より3か月以上も前の平成16年6月ころであることを裏付けるべき客観的な証拠もない上,このような手続に3か月以上の長期間を要するものともうかがわれず,原告逮捕後に行われた原告ととの婚姻A手続における2度目の身分事項証明書及び婚姻要件具備証明書の取得に要した期間はいずれも短いものであるから,原告が,1度目の身分事項証明書を依頼した時期が原告主張のように早い時期であったとは解されず,それは,婚姻要件具備証明書が発行された平成16年10月に近い時期で,Cとの婚姻の話が いものであるから,原告が,1度目の身分事項証明書を依頼した時期が原告主張のように早い時期であったとは解されず,それは,婚姻要件具備証明書が発行された平成16年10月に近い時期で,Cとの婚姻の話が持ち上がった後のことと考えるのが自然であり,それはCとの婚姻のためのものであったと推認することができる。 したがって,原告の上記供述は採用できない。 (イ) また,原告は,Cとの婚姻手続を進めたことについて,原告とCとは交際をした事実もなく,ましてや肉体関係を結んだことはなく,互いに偽装結婚の手続であることを認識していた旨を主張し,原告本人はそれに沿う供述をしているが,証人Cは,原告の上記の主張内容を否定し,上記オの認定事実に沿う内容の証言をしており,同人が原告との関係について格別虚偽を述べなければならない動機や事情があるともうかがわれず,原告とCの婚姻届用紙の証人欄に署名したFも,証人の依頼を受けた際に原告とCとの間に不審な点はなかった旨証言しているから,こ- 26 -れらに照らせば,上記原告本人の供述は採用することができない。 (ウ) 原告は,原告ととが周囲からも夫婦として扱われていたと主張し,Aそれに沿う供述をするが,原告申請証人で,原告と親しい関係にあった証人Fも,原告が逮捕されるまでの間に,を原告の妻ないし交際相手Aと認識してはいなかった旨を証言しているから,原告本人の上記供述を採用することはできない。 ( ) 原告とに事実上の婚姻関係の実体があったかどうか。 A上記( ) に認定したとおり,原告とは,同居と評価できるほどの交際 A関係を形成していたとは認め難く,両者の生計もそれぞれ別個に営まれており,周囲の関係者らが原告とを事実上の夫婦であると認識していた状況Aも認められず,原告がとの婚姻手続を進めたのは 際 A関係を形成していたとは認め難く,両者の生計もそれぞれ別個に営まれており,周囲の関係者らが原告とを事実上の夫婦であると認識していた状況Aも認められず,原告がとの婚姻手続を進めたのは,原告が逮捕された後Aのことであり,しかも,原告は,平成16年6月ころから同年11月ころまではCと交際し,同年10月ころには同人と婚姻することにして婚姻届まで作成していた経過が認められるのであって,これらの諸事情に照らしてみれば,原告が入管難民法違反の容疑で逮捕されるより以前に,原告とが事A実上の婚姻関係を形成していたとか,婚姻の約束をする状態にあったとは認められない。 ( )及びの養育関係等並びに原告の本国における兵役の問題等 DE上述したとおり,原告とが事実上の婚姻関係を形成していた事実は認Aめられないから,の子である及びと原告が家族同様の関係にあったADEとも認められず,したがって,原告が退去強制されることにより,の子でAある及びの学習継続・養育が直ちに困難になるとは解されない。 DEまた,原告の本国であるトルコにおいては徴兵制が採用されており,原告が退去強制によりトルコに送還されると兵役に服すべきことになるとも予想されるところ,原告が徴兵年齢に達した後も徴兵に応じなかったことが,トルコにおける原告の兵役の内容に影響を及ぼすことがあるか否かは必ずしも- 27 -明らかではないが,仮にそのようなことがあり得るとしても,それが直ちに国際人権規約等に違反するものとは解されず,そのような事情を在留特別許可に当たって考慮しなければ違法となるものとは認められない。 ( ) その余の原告の主張 原告は,本件裁決は,B規約17条1項,児童の権利条約3条1項,平等原則及び警察比例の原則に違反するとも主張する 当たって考慮しなければ違法となるものとは認められない。 ( ) その余の原告の主張 原告は,本件裁決は,B規約17条1項,児童の権利条約3条1項,平等原則及び警察比例の原則に違反するとも主張するが,これらの主張は,原告ととの間に事実上の婚姻関係の実体があり,原告がの子である及びAADを事実上扶養していることを前提とするものであって,上述したとおり,Eそのような事実は認められないから,原告の上記各主張は採用できない。 ( ) 小括 そうすると,原告の日本での生活態度が,不法残留及び無免許運転という原告が自認している違法行為のほかには格別の問題がなかったとしても,名古屋入管局長が,退去強制事由のある原告の在留について,これを特別に認めるべき事情が認められないとして本件裁決をしたとしても,それが裁量権を逸脱・濫用したものとはいえず,したがって,本件裁決が違法であるとは認められない。 本件令書発付処分の違法性の有無以上のとおり本件裁決が適法である以上,その通知を受けた名古屋入管主任審査官が,入管難民法49条6項,51条により行った本件令書発付処分に違法があるとは認められない。 結論 よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部- 28 -中村直文裁判長裁判官前田郁勝裁判官尾河吉久裁判官
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