令和3(行ケ)3 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月16日 名古屋高等裁判所 棄却
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判決文本文17,895 文字)

- 1 -主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 第1事件令和3年10月31日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の愛知県第1区ないし第15区,岐阜県第1区ないし第5区及び三重県第1区ないし第4区における選挙を無効とする。 2 第2事件令和3年10月31日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の愛知県第8区,第9区,第12区及び三重県第3区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,令和3年10月31日に施行された衆議院議員総選挙のうち小選挙区選挙(以下「本件選挙」という。)について,愛知県第1区ないし第15区,岐阜県第1区ないし第5区及び三重県第1区ないし第4区の各選挙区の選挙人である第1事件原告ら並びに愛知県第8区,第9区,第12区及び三重県第3区の各選挙区の選挙人である第2事件原告ら(以下,第1事件原告ら及び第2事件原告らを併せて「原告ら」といい,前記選挙区を「本件各選挙区」という。)が,本件選挙の選挙区割りを定める公職選挙法13条1項,別表第1の規定は,憲法56条2項,1条,前文第1文前段の要求する人口比例選挙に違反し,憲法98条1項により無効であるから,これに基づき施行された本件各選挙区における本件選挙も無効であると主張して,公職 - 2 -選挙法204条に基づき本件各選挙区における本件選挙を無効とするよう求める事案である。 2 前提事実当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ⑴ 当事者原 選挙を無効とするよう求める事案である。 2 前提事実当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ⑴ 当事者原告らは,それぞれ,本件各選挙区の選挙人であり,各原告が選挙人となっている選挙区は,別紙当事者目録の各原告名下に記載のとおりである。 被告らは,それぞれ,本件各選挙区について,本件選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会である。 ⑵ 本件選挙本件選挙施行当時,衆議院議員の定数は465人とされ,そのうち289人が小選挙区選出議員,うち176人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),本件選挙(小選挙区選挙)については,全国に289の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項,別表第1。以下,後記の改正の前後を通じてこれら衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める規定を併せて「区割規定」という。),比例代表選出議員の選挙については,全国に11の選挙区を設け,各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条2項,別表第2)。衆議院議員総選挙(以下「総選挙」という。)においては,小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条,36条)。 ⑶ 衆議院議員にかかる公職選挙法等の改正及び最高裁判決の概要ア小選挙区比例代表並立制の導入 - 3 -平成6年に公職選挙法が一部改正されて(平成6年法律第2号等),小選挙区比例代表並立制が導入され,小選挙区については300の選挙区が定められた。 同時に,衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号。以下「区画審設置法」という。)が成立し,衆議 等),小選挙区比例代表並立制が導入され,小選挙区については300の選挙区が定められた。 同時に,衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号。以下「区画審設置法」という。)が成立し,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)が,選挙区の改定について調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされた。 平成24年法律第95号による改正前の区画審設置法(以下「平成24年改正前の区画審設置法」という。)3条1項は,小選挙区の改定案の作成について,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上にならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うことを定め,同条2項は,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当し(以下,このことを「1人別枠方式」という。),この1に,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めた(以下,この選挙区の区割りの基準を「旧区割基準」といい,この規定を「旧区割基準規定」という。)。 また,選挙区の改定に関する勧告は,10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとされ(4条1項),区画審は,各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは,選挙区の改定に関する勧告ができるとされた(4条2項)。 平成12年に国勢調査が実施されたため,区画審は,その国勢調 - 4 -査の結果を基に選挙区の改定案を作成して勧告を行い,これを受けて,平成14年7月31日に公職選挙法の一部が改正された(平 12年に国勢調査が実施されたため,区画審は,その国勢調 - 4 -査の結果を基に選挙区の改定案を作成して勧告を行い,これを受けて,平成14年7月31日に公職選挙法の一部が改正された(平成14年法律第95号,以下,同改正後の選挙区割りを「平成14年改正選挙区割り」といい,これを定める平成14年改正後の公職選挙法の規定を「平成14年改正区割規定」という。)。 そして,平成14年改正選挙区割りの下で,平成17年及び平成21年に総選挙が施行された。 イ平成23年大法廷判決平成21年8月30日に施行された総選挙(以下「平成21年選挙」という。)は,選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人比)が1対2.304(以下,較差に関する数値は,全て概数である。)で,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった(乙2の1)。 平成21年選挙に関する最高裁判所平成23年3月23日大法廷判決(民集65巻2号755頁。以下「平成23年大法廷判決」という。)は,平成21年選挙時において,選挙区間の投票価値の較差が拡大したのは,各都道府県にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる1人別枠方式がその主要な要因であり,かつ,人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるとして,平成14年改正選挙区割りは,平成21年選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。 そして,同判決は,これらの状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,旧区割基準規定及び平成14年改正区割規定が憲法の規定に違反するものということはできないとしたものの,事柄の性質上必要と 状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,旧区割基準規定及び平成14年改正区割規定が憲法の規定に違反するものということはできないとしたものの,事柄の性質上必要とされる是正のための合 - 5 -理的期間内に,できるだけ速やかに1人別枠方式を廃止する等,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 ウ平成23年大法廷判決を受けた緊急是正平成24年の公職選挙法等改正平成23年大法廷判決を受けて,平成24年11月26日,選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律(平成24年法律第95号)が成立した(以下「平成24年改正」という。)。平成24年改正により,平成24年改正前の区画審設置法3条2項(1人別枠方式の規定)が削除され,同法3条1項の内容のみが区割基準となった。そして,附則にて,区画審が,選挙区の数がいわゆる0増5減となることを前提に,平成22年国勢調査の結果に基づき,選挙区間の人口較差が2倍未満となるよう選挙区割りの改定案を勧告することが定められた。 もっとも,平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散されたことから,平成24年12月16日に施行された総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は,平成14年改正選挙区割りの下で施行された。平成24年選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人比)は1対2.425であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は72選挙区であった(乙2の2)。 平成25年大法廷判決平成24年選挙に関する最高裁判所平成25年11月20日大法廷判決(民集67巻8号1503頁。以下「平成25年大法廷判決」という。) (乙2の2)。 平成25年大法廷判決平成24年選挙に関する最高裁判所平成25年11月20日大法廷判決(民集67巻8号1503頁。以下「平成25年大法廷判決」という。)も,平成24年選挙時において,平成14年改 - 6 -正選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,平成14年改正区割規定が憲法の規定に違反するものということはできないとした。 エ緊急是正の具体的内容及びこれに関する最高裁の判断平成25年の公職選挙法等改正区画審は,平成25年3月,平成24年改正後の区画審設置法附則に基づき勧告を行い,同年6月28日,同勧告どおりに,都道府県の小選挙区選出議員の定数について,議員1人当たりの人口が少ない福井県,山梨県,徳島県,高知県及び佐賀県の5県につき各1人を削減(0増5減)するとともに,選挙区間の人口の較差が2倍未満となるよう,17都道府県の42選挙区について選挙区割りを改めることを内容とする公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律(平成25年法律第68号)が成立した(以下「平成25年改正」という。)。 平成25年改正により,選挙区間の人口比最大較差は,平成22年の国勢調査の結果に基づけば1対1.998となったが(乙3の1,乙4),平成26年12月14日に施行された総選挙(以下「平成26年選挙」という。)当日においては,選挙人比最大較差は1対2.129であり,選挙人が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙2の3)。 平成27年大法廷判決平成26年選挙につき,最高裁判所平成27年11月25日 り,選挙人が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙2の3)。 平成27年大法廷判決平成26年選挙につき,最高裁判所平成27年11月25日大法廷判決(民集69巻7号2035頁。以下「平成27年大法廷 - 7 -判決」という。)は,平成26年選挙時において,前記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について,旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず,投票価値の較差が生じた主な要因は,いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた当時の定数が配分されていることにあり,このような投票価値の較差が生じたことは,全体として平成24年改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして,平成25年改正法による改正後の選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。 そして,同判決は,同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については,漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量として許容されていると解されるとし,国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 オ選挙制度調査会の設置及び答申平成25年改正法の成立の前後を通じて,国会においては,今後の人口移動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直しについて,引き続き検討が続けられ,平成26年6月,衆議院議長の諮問機関として,有識者により構成される衆議院選挙制度に関する調査会(以下「選挙制度調査会」と 態とならないようにするための制度の見直しについて,引き続き検討が続けられ,平成26年6月,衆議院議長の諮問機関として,有識者により構成される衆議院選挙制度に関する調査会(以下「選挙制度調査会」という。)が設置され,①衆議院議員の選挙制度の在り方,②議員定数削減,③一票の較差是正について,調査,検討が重ねられた。 - 8 -そして,選挙制度調査会は,平成28年1月に,小選挙区選挙に関して,概略,以下の内容を答申した(乙10)。 小選挙区選挙の一票の較差是正については,小選挙区選挙における都道府県への議席配分方式について,選挙区間の1票の較差をできるだけ小さくすることができ,都道府県への配分議席の増減変動もできるだけ小さくすることができ,かつ,一定程度将来にわたっても有効に機能し得るという条件を満たす方式として,各都道府県への議席配分につき,各都道府県の人口を小選挙区基準除数で除し,それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにすることで,各都道府県の選挙区の数を定める方式(以下「アダムズ方式」という。)により行うことが望ましい。 また,小選挙区選出の衆議院議員の定数を6人削減すること,憲法上問題とされてきた1票の較差は,選挙区間の較差であり,これは区画審が作成する選挙区の改定案に基づく具体的な選挙区画によって左右されるが,次の選挙区の改定案作成時期までの10年間にわたり,較差2倍未満が維持されることが期待される。 そのため,国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果,較差2倍以上となる選挙区が生じたときは,選挙区の改定を10年毎に行う原則の例外として,区画審に対し,較差2倍以上の解消のための改定案の作成を義務づけるよう定めることが適当である。 カ選挙制度 較差2倍以上となる選挙区が生じたときは,選挙区の改定を10年毎に行う原則の例外として,区画審に対し,較差2倍以上の解消のための改定案の作成を義務づけるよう定めることが適当である。 カ選挙制度調査会の答申を踏まえた公職選挙法等の改正 平成28年の公職選挙法等改正選挙制度調査会の上記答申を受け,平成28年5月27日,区画審設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法 - 9 -律第49号)が成立し(以下「平成28年改正」といい,うち,改正後の区画審設置法を「新区画審設置法」という。),衆議院議員の定数を10人削減して465人(小選挙区選出議員の定数が289人,比例代表選出議員の定数が176人)とすることが定められた。 また,新区画審設置法は,3条1項で,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと定め,同条2項で各都道府県の選挙区の数についてアダムズ方式を採用した(以下「新区割基準」という。)。 そして,選挙区の改定に関する区画審の勧告は,4条1項で,10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うことを定めるとともに,同条2項で,国勢調査から5年目に行われる簡易国勢調査の結果による選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは,簡易国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行う(ただし,各都道府県内の選挙区の数は変更しない(3条3項))ことを定めた。 加えて,平成28年改正では,アダムズ方式による選挙区の再配分が,平成32年(以下「令和2年」と表記する。)に実施さ う(ただし,各都道府県内の選挙区の数は変更しない(3条3項))ことを定めた。 加えて,平成28年改正では,アダムズ方式による選挙区の再配分が,平成32年(以下「令和2年」と表記する。)に実施される国勢調査の結果が公示された後となることを踏まえ,それまでの較差是正措置として,新区画審設置法に附則2条を設け,区画審は,小選挙区選出議員の定数を6人削減(6県で各1人)することを前提として,その余の都道府県については,各都道府県の選挙区数を変更せず,各都道府県内の区割りを改めることで, - 10 -平成27年簡易国勢調査の結果及び令和2年見込み人口を基に,選挙区間の較差が2倍以上とならないようにする選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うことを定めた。 区画審の勧告区画審は,平成29年4月,新区画審設置法附則2条に基づき小選挙区選出議員の選挙区の改定案について勧告を行ったが,その主な内容は,次のとおりである(乙14の1,2)。 平成27年簡易国勢調査の結果によれば,人口最少選挙区との較差が2倍以上となる選挙区が32選挙区あり,令和2年見込人口によれば,その選挙区は71選挙区となる見込みである。 そこで,選挙区間の人口較差が2倍未満となるようにし,かつ,次回の国勢調査が実施される令和2年見込人口に基づく選挙区間の人口較差も2倍未満となることを基本として,青森県,岩手県,三重県,奈良県,熊本県及び鹿児島県の6県につき選挙区数をそれぞれ1ずつ削減し,その余の都道府県の選挙区数は変更せず,13都道府県について,各都道府県内で区割りを改めることとし,計19都道府県の97選挙区について区割りを改める。勧告どおりに改定が実施されれば,選挙区間の最大較差は,平成27年簡易国勢調査の結果を基にすると1対1.9 各都道府県内で区割りを改めることとし,計19都道府県の97選挙区について区割りを改める。勧告どおりに改定が実施されれば,選挙区間の最大較差は,平成27年簡易国勢調査の結果を基にすると1対1.956となり,令和2年見込人口を基にすると1対1.999となる。なお,令和2年見込人口は,平成27年簡易国勢調査の人口に,上記の平成27年人口を平成22年国勢調査の人口で除して得た数を乗じて得た数であり,平成22年から平成27年までの間の人口移動(増減率)が,平成27年から令和2年までの間も同様に生じると仮定して算定されたものである。 - 11 -平成29年の公職選挙法等改正平成29年6月16日,区画審の上記勧告どおりに,6県について選挙区数を削減し,それ以外の都道府県は,19都道府県の97選挙区について選挙区割りを改めることを内容とする公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律(平成29年法律第58号(以下「平成29年改正」といい,平成29年改正後の公職選挙法の規定を「本件区割規定」といい,本件区割規定に基づく改定後の選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)が成立した。 キ平成30年大法廷判決平成29年10月22日,本件選挙区割りの下で,総選挙が施行された(以下「平成29年選挙」という。)。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人の最大較差は1対1.979であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となる選挙区は存在しなかった(乙2の4)。 平成29年選挙に関する最高裁判所平成30年12月19日大法廷判決(民集72巻6号1240頁。以下「平成30年大法廷判決」という。)は,平成29年選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状 2月19日大法廷判決(民集72巻6号1240頁。以下「平成30年大法廷判決」という。)は,平成29年選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示した。 ク本件選挙本件選挙は,本件選挙区割りの下で施行されたものであり,令和2年の国勢調査の結果によれば,選挙区間の人口比最大較差は1対2.096であり,人口が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となる選挙区は23選挙区であった(乙1の1の2)。また,本件選挙当日における選挙区間の選挙人の最大較差は1対2.079 - 12 -であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となる選挙区は29選挙区であった(乙1の2)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の主たる争点は,本件選挙当時において,本件選挙区割りを定める本件区割規定の合憲性であり,争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 ⑴ 原告らの主張ア憲法は,1条で「主権の存する日本国民」と定め,前文第1文前段で「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,」「ここに主権が国民に存することを宣言し」と定めていることから,正当に選挙された国会議員は,国会において,主権を有する国民を代表する。そして,国会議員は,主権を有する国民を代表して,全出席議員の過半数で両議院の議事を決することから(56条2項),国会議員は,全出席議員の過半数で按分される主権を有する国民から選出されていることが必要であり,すなわち,主権を有する国民の過半数が国会議員の過半数を選出することが決定的に重要であり,人口比例選挙で選出された国会議員でなければ,正当に選挙された国会における代表者とはいえない。本件選 であり,すなわち,主権を有する国民の過半数が国会議員の過半数を選出することが決定的に重要であり,人口比例選挙で選出された国会議員でなければ,正当に選挙された国会における代表者とはいえない。本件選挙で選出される議員1人当たりの選挙人人数は,鳥取県第1区を1とした場合,東京都第10区は2.066であり,人口比例原則(統治論)の要求に反する本件選挙は違憲であり,憲法98条1項により無効である。 イ憲法は,できる限り人口に比例する選挙を要求しているのであり,投票価値は1対1が要請される。したがって,1票の投票価値の平等からの乖離が合理的であることの立証責任は,国にある。 ウ 1人別枠方式については,過去の最高裁大法廷判決において,憲 - 13 -法の投票価値の平等の要求に反する状態であると判断されている。 本件選挙において,11都県は,1人別枠方式によって配分される議員定数が維持されており,当該都県の定数は,新区画基準(アダムズ方式)により見直した場合の定数と異なるものであるので,平成27年大法廷判決の判示により,違憲状態であることは明らかである。にもかかわらず,判例変更をした旨の記述も,真に説得力をもつ判例変更の理由の記述もなく,本件選挙区割りを違憲状態ではないとした平成30年大法廷判決は,不当に判例変更をしたものである。 また,本件選挙の違法判断の基準時は,本件選挙投票日であるから,本件選挙区割りにまだ反映されていない法律(新区画審設置法3条1項,2項)は,本件選挙の投票日時点の本件選挙区割りが違憲か否かを判断するにあたって,考慮要素とはなり得ない。 したがって,本件選挙において,各都道府県に配分された議員定数の一部に,違憲状態の1人別枠方式によって配分された議員定数が残る以上,本件選挙区割りは,全体とし にあたって,考慮要素とはなり得ない。 したがって,本件選挙において,各都道府県に配分された議員定数の一部に,違憲状態の1人別枠方式によって配分された議員定数が残る以上,本件選挙区割りは,全体として違憲状態である。 エそもそも,本件選挙区割りには,1人別枠方式が残存しているのに,アダムズ方式による再配分(新区画審設置法3条2項)を令和2年の国勢調査の結果が公示されてから1年以内に区画審が勧告を行うとして,選挙区割りの改正を延期したことは,立法裁量として簡単に片づけられるべきではない。 選挙区割りが違憲状態であっても,それが相当期間継続して,不平等状態を是正するのに必要な合理的期間を経過したと判断される場合に,初めてその選挙区割りが違憲となる旨の判例法理がある。 しかし,選挙区割りの検討さえ続けていれば,暫定的措置の実施と抜本的改革の先送りを繰り返すことで,違憲と評価されないことと - 14 -なり,選挙区間の較差是正が実現され得なくなるので,制度の仕組み自体の見直しがなされなければ,是正に向けた国会の裁量権を越えるものと解すべきである。 したがって,上記の合理的期間の判例法理自体が,憲法に反するものであり,仮に,同主張が立たないとしても,本件選挙日の時点で,合理的期間は既に徒過していると解されるので,本件選挙区における本件選挙は無効である。 オ本件選挙を違憲無効としなければ,違憲の議員定数配分規定によって選挙人の基本的権利である選挙権が制約されるという不利益や弊害が生じる。これに対し,本件選挙(小選挙区選出議員289人)を違憲無効としても,比例代表選挙により選出された議員(176人)が存在するので,衆議院の定足数を満たし,衆議院は国会活動を有効に行うことができるので,選挙区から選出された議員が存在しなくなる )を違憲無効としても,比例代表選挙により選出された議員(176人)が存在するので,衆議院の定足数を満たし,衆議院は国会活動を有効に行うことができるので,選挙区から選出された議員が存在しなくなる等の社会的混乱や不都合は生じない。 よって,本件選挙につき,事情判決の法理を適用する余地はなく,違憲無効判決を下すべきである。 ⑵ 被告らの主張ア憲法は,投票価値の平等を要求しているが,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきである。そして,具体的な選挙区割りや,その前提となる区割規定を定めるに当たっては,投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつも,当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや,当該較差を生じさせる要因等も含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮する必要があり,国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,投票価値の平等の要請に反するため, - 15 -国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めて憲法に違反することになる。 イ本件区割規定が成立するまでの平成24年以降の公職選挙法等の法改正は,まず,1人別枠方式の規定を廃止した上で,人口比例による議席配分の見直しを定期的に実施する仕組みを確立させる内容のものである。また,平成28年改正では,4年後の令和2年見込人口を基準としても,選挙区間の最大較差が2倍未満になるようにする選挙区割りの改定を行う措置が講じられ,平成29年改正によってその措置も実現されるに至った。これらの各法改正は,違憲状態を指摘した平成23年,平成25年及び平成27年の各大法廷判決が,繰り返 する選挙区割りの改定を行う措置が講じられ,平成29年改正によってその措置も実現されるに至った。これらの各法改正は,違憲状態を指摘した平成23年,平成25年及び平成27年の各大法廷判決が,繰り返し国会に求めてきた立法的措置の内容に正に適合するものと言える。 平成29年選挙に係る平成30年大法廷判決も,本件区割規定につき,平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿うものであり,国会の裁量権の行使として合理性を有するものと評価した上で,平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した違憲状態は本件区割規定の成立によって解消された旨を判示している。 したがって,本件区割規定は,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において,投票価値の平等の要請を調和的に実現した立法的措置と評価することができ,本件区割規定は国会の合理的な裁量の範囲を超えるものではない。 ウ令和2年国勢調査の結果によれば,本件選挙当日には選挙区間の人口の最大較差は2倍を僅かに超えたが,その要因は,令和2年見込人口を算出した際に想定したところと異なる人口移動が起きたこ - 16 -とによるものである。つまり,違憲状態と指摘した各大法廷判決が問題視してきた1人別枠方式のような選挙制度自体に起因する構造的な問題が要因で,2倍を超える較差が生じたわけではない。 人口移動によりある程度の較差の変動が生じることは,当然にあり得ることであるが,そのような場合に備えて,10年又は5年単位で選挙区割りの改定を行い,是正するという選挙制度が整備されている。しかも,令和4年6月25日までに,令和2年の国勢調査の結果により,アダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提に,国勢調査人口による選挙区間の人 の改定を行い,是正するという選挙制度が整備されている。しかも,令和4年6月25日までに,令和2年の国勢調査の結果により,アダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提に,国勢調査人口による選挙区間の人口の最大較差が2倍以上とならないような選挙区割りの改定の勧告がされることが法律上予定されており,アダムズ方式に基づいて都道府県別に定数配分をすれば,都道府県間の人口の最大較差は1.697倍まで下がることが見込まれており,人口較差の問題は,確実に解消されることになる。 このような選挙制度がある以上,本件選挙区割りにおいて較差が2倍を超える選挙区が一部に存在するとしても,本件選挙区割りが違憲状態に至っているということはできない。 エ仮に,本件選挙区割りが違憲状態にあったと評価する余地があるとしても,合憲判断がなされた平成30年大法廷判決後に初めて行われた総選挙であり,国会において違憲状態と認識すべき契機が存在したとはいえないし,現行の選挙制度が整備されているので,憲法上要求される合理的期間内にその是正をしなかったということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実によれば,衆議院議員の小選挙区の選挙区について,平成12年国勢調査の結果を受けて,平成14年改正選挙区割りが成立 - 17 -した以後,改正の経緯は,概略,次のようになる。 ⑴ 平成25年改正まで平成21年選挙につき,平成23年大法廷判決は,旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び平成14年改正区割規定に従った選挙区割りは,平成21年選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。 平成23年大法廷判決を受け,1人別枠方式の規定は平成24年改正で削除され,平成25年改正では,5県につきそれぞ 21年選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。 平成23年大法廷判決を受け,1人別枠方式の規定は平成24年改正で削除され,平成25年改正では,5県につきそれぞれ選挙区数を1ずつ削減し,平成22年国勢調査の結果による人口を基とした選挙区間の人口比最大較差が2倍未満となるよう,17都道府県内の選挙区割りが改められた。平成25年改正による選挙区割りの下で実施された平成26年選挙(選挙当日の選挙区の選挙人最大較差は1対2.129。較差2倍以上の選挙区は13。)につき,平成27年大法廷判決は,上記選挙区割りは,違憲状態にあると判示した。 ⑵ 平成28年改正及び平成29年改正平成28年1月の選挙制度調査会の答申を受け,平成28年改正が成立し,小選挙区の各都道府県の選挙区の数についてアダムズ方式が採用され,令和2年国勢調査の結果による選挙区改定までの較差是正措置として,平成27年簡易国勢調査の結果に基づき,区画審が選挙区改定案の作成及び勧告を行うことが定められた。 平成29年の区画審の勧告により,平成29年改正が成立し,6県(平成25年改正で削減対象となった5県とは別の県である。)につき選挙区数をそれぞれ1ずつ削減し,その余の都道府県の選挙区数は変更せず,13都道府県内で区割りを改めた。この改正による区割りが本件選挙区割りである。 - 18 -⑶ 本件選挙区割りの下で,平成29年選挙と本件選挙が施行された。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人の最大較差は1対1.979であったが,本件選挙当日における同最大較差は1対2.079であった。 2 本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの合憲性について⑴ 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているもの 選挙当日における同最大較差は1対2.079であった。 2 本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの合憲性について⑴ 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(憲法43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画等を基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況等の諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって,このような選挙制度の合憲性 - 19 -は,これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がこのような選挙制度の仕組み - 19 -は,これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである。 以上は,衆議院議員の選挙に関する平成30年大法廷判決等累次の最高裁判所大法廷判決の趣旨とするところである。原告らは,憲法56条2項,1条,前文第1文前段を根拠として,憲法は人口比例選挙を要求している等と主張しているが,原告らの主張のうち,上記解釈に反する部分は採用することができない。 ⑵ 本件選挙当時の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの合憲性について判断する。 ア本件区割規定に基づく本件選挙区割りの選挙区間の選挙人較差は,平成29年選挙当日においては,最大較差が2倍以上となる選挙区は存在しなかった。 しかし,令和2年国勢調査の結果に基づけば,選挙区間の人口比最大較差は,鳥取県第2区と東京都第22区との間の1対2.096であり,人口が最少の選挙区との較差が2倍以上となった選挙区は23選挙区であった。また,本件選挙当日における選挙区間の選挙人の最大較差は,鳥取県第1区と東京都第13区との間の1対2.079であり,選挙人数が最少の選挙区との較差が2倍以上となった選挙区は29選挙区であった。 定数配分及び選挙区割りを決定するに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最 - 20 -も重要かつ基本的な基準とすることが求められていることに照らすと,29選 りを決定するに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最 - 20 -も重要かつ基本的な基準とすることが求められていることに照らすと,29選挙区で選挙区間の選挙人の最大較差が2倍以上となっていることは,国会の裁量権の行使として合理性を有するとはいえず,国会の裁量権の限界を超えるものというべきである。 イこの点,被告らは,本件選挙における選挙区間の選挙人較差はわずかに2倍を超えたにとどまるし,その主な要因は,令和2年見込人口を算出した際に想定したところと異なる人口移動が起きたことによるものであり,選挙制度の構造的な問題によるものではないうえ,10年又は5年単位で選挙区割りの改定を行い,是正する制度が整備されているから,本件選挙区割りは合憲である旨主張する。 確かに,平成27年以後,東京都,千葉県,神奈川県,埼玉県及び福岡県の5都県に,想定していた増加率を超える割合で人口が流入した一方,青森県等の33県からは想定以上の減少率を超える割合で人口が流出しており(乙23の2・8頁),想定外の人口移動が影響した可能性は否定できない。 しかしながら,将来の人口移動を正確に予測することは困難であるから,平成28年の時点において算定する令和2年見込人口は予測にすぎず,実際には若干の誤差が生じるであろうことは想定できたといえる。また,1人別枠方式の規定が廃止された平成24年改正以後は,11県につき選挙区数を削減したものの,その余の都道府県については選挙区数を維持し,各都道府県内の区割りを改めることで較差の是正を図ったことによる限界があった影響も無視できない。さらに,選挙区間の選挙人較差を今後是正するための制度が整備されていることは,本件選挙時の較差の合憲性の判断に直接影響するもので ことで較差の是正を図ったことによる限界があった影響も無視できない。さらに,選挙区間の選挙人較差を今後是正するための制度が整備されていることは,本件選挙時の較差の合憲性の判断に直接影響するものではない。 そうすると,本件選挙時に,多数の選挙区間において2倍を超え - 21 -る較差が生じた要因として,やむを得ない事情があったとはいえず,被告らの前記主張は採用することができない。 ウまた,被告らは,本件区割規定は,平成29年選挙に関する平成30年大法廷判決が合憲と評価した規定であると主張する。 しかし,平成29年選挙時における選挙区間の較差(選挙人比)は,最大でも1.979であり,いずれの選挙区においても較差は2倍未満であった。これに対し,本件選挙当時は,選挙区間の較差(選挙人比)が2倍以上となる選挙区が29も生じている。 そうすると,本件区割規定について,平成29年選挙当時には合憲と評価できるものであったが,その後の投票価値の較差の拡大等を踏まえれば,本件選挙当時には異なる評価が可能であり,被告らの上記主張は採用することができない。 エその他,被告らは,人口比例に重きを置きすぎると,地方の声を国政に反映しにくくなる等の意見が地方公共団体等から寄せられていたこと,政策的考慮要素を総合的に考慮する必要があること等をるる主張する。 しかしながら,小選挙区選出議員は,いずれの選挙区から選出されたかを問わず,全国民を代表して国政に関与することが要請されているのであり,相対的に人口の少ない地域に対する配慮はそのような活動の中で全国的な視野から法律の制定等に当たって考慮されるべき事柄であって,地域性に係る問題のために,ことさらにある都道府県の選挙人と他の都道府県の選挙人との間の投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性 で全国的な視野から法律の制定等に当たって考慮されるべき事柄であって,地域性に係る問題のために,ことさらにある都道府県の選挙人と他の都道府県の選挙人との間の投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるといえないことは,平成23年大法廷判決が判示するところであり,被告らの主張は採用することができない。 オ以上のとおりであるので,本件選挙当時の投票価値の較差の状 - 22 -況や,その要因となっていた事情等を総合的に考慮すると,本件区割規定及び本件選挙区割りは,本件選挙時において,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったと言わざるを得ない。 ⑶ もっとも,衆議院議員の選挙における投票価値の較差の問題については,選挙区割規定及び選挙区割りが,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている場合であっても,国会がそのことを認識し得た時期から,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえる場合に初めて,当該選挙区割規定及び選挙区割りが憲法の規定に違反するものと解される。 以上は,平成27年大法廷判決を含む累次の最高裁判所大法廷判決の趣旨とするところであって,原告らの主張のうち,上記解釈に反する部分は採用できない。 ⑷ そこで,本件選挙時において,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かについて検討する。 平成30年大法廷判決が,平成29年選挙当時の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りを合憲と評価している。その後,令和3年6月に,令和2年国勢調査の結果(速報値)による計算結果が公表され,令和3年11月に確定値が公表されたことにより,衆議院議員の小選挙区間の人口較差が2倍を超える選挙区が多数存在することが判明したものである。 したがって, 国会が本 値)による計算結果が公表され,令和3年11月に確定値が公表されたことにより,衆議院議員の小選挙区間の人口較差が2倍を超える選挙区が多数存在することが判明したものである。 したがって, 国会が本件区割規定及び本件選挙区割りが,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていることを認識し得た時期から,本件選挙日(令和3年10月31日)までに是正をすることは事実上不可能であるというべきであるから,本件において,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったとはいえない。 ⑸ そうすると,本件選挙時において,本件区割規定及び本件選挙区割 - 23 -りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,本件区割規定や本件選挙区割りが憲法の規定に違反するものということはできない。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官永野圧彦 裁判官前田郁勝 裁判官真田尚美

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