主文 原判決を破棄する。 被告人を禁錮6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 原審及び当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は,検察官見越正秋が提出した控訴趣意書(山口地方検察庁岩国支部検察官秋山実作成)に,これに対する答弁は,弁護人大名浩及び同久保豊年連名作成の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。 論旨は,要するに,原判決は,被告人車が中央線を越えて対向車線に進入した事実が合理的な疑いをいれない程度に証明されていないとして,被告人に対し無罪を言い渡したが,関係証拠を総合すれば,本件事故は,検察官が主張する被告人の過失によって引き起こされたものであることが優に認定できるから,原判決は,証拠の判断及びその取捨選択を誤って事実を誤認したもので,この誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかである,というのである。 そこで,検討する(なお,原審又は当審において取調べがなされた証拠については,証拠等関係カード記載の請求番号により,「原審検甲号」,「当審弁号」などと表示する。)。 1 本件の公訴事実は,「被告人は,平成10年7月27日午前4時10分ころ,業務として軽四輪貨物自動車を運転し,山口県玖珂郡a町b番地先道路をc町方面から岩国市方面に向かい時速約50キロメートルで進行するに当たり,進路前方が左に湾曲していたから,前方を注視し,進路を適正に保持して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,前方注視不十分のまま漫然前記速度で進行した過失により,自車を対向車線に進出させ,折から対向進行してきたA(当時64歳)運転の普通乗用自動 正に保持して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,前方注視不十分のまま漫然前記速度で進行した過失により,自車を対向車線に進出させ,折から対向進行してきたA(当時64歳)運転の普通乗用自動車の右前部に自車の前部を衝突させ,よって,同人に入院加療12日間を要する腹部打撲,右膝打撲等の傷害を,同A車両に同乗のB(当時61歳)に入院加療40日間を要する頭部打撲挫創,左膝挫創等の傷害を,同C(当時50歳)に入院加療51日間を要する左肋骨骨折等の傷害をそれぞれ負わせたものである。」,というものである。 2 原判決は,被告人車とA車が衝突した地点を特定ないし絞り込むことができず,衝突地点がA車走行車線であったことを認定するに足りる証拠はないから,結局,被告人車が中央線を越えて対向車線に進入した事実を認めることはできない,したがって,被告人に検察官主張の業務上の注意義務を怠った過失があったことについては,その証明がないといわざるを得ない,というのである。 3 関係証拠により認められる本件事故及び事故現場等の概要は,次のとおりである。 (1) 被告人運転の軽四輪貨物自動車とA運転の普通乗用自動車は,公訴事実記載の日時に同記載の道路上で衝突した。 本件事故現場は,最高速度が法定の60キロメートル毎時の国道であり,アスファルト舗装され,見通しが良く,c町方面から岩国市方面に向かって左に湾曲し,ほぼ平坦になっている。また,車道が黄色の中央線により片側1車線に区分され,追越しのための右側部分はみ出し禁止の区間とされており,それぞれの車線の幅員は,およそ3メートル程度であり,各車線の外側に外側線で区分された路側帯が設けられている。 (2) 本件事故当時,本件事故現場付近の天候は小雨がちょうど止むか止まないかというところであり,路面は湿っていた。 3メートル程度であり,各車線の外側に外側線で区分された路側帯が設けられている。 (2) 本件事故当時,本件事故現場付近の天候は小雨がちょうど止むか止まないかというところであり,路面は湿っていた。周囲はまだ暗く,A車及び被告人車とも前照灯を点灯していた。 (3) 衝突の態様は,被告人車がc町方面から岩国市方面に向かう車線を進行し,A車がその対向車線をc町方面に向けて進行していたところ,両車の各前部が衝突したというものである。衝突後,A車はc町方面に向かう車線の左寄りに停止し,被告人車は同車線上に横転して運転席側(右側部分)を下にした形で停止した。なお,路上にスリップ痕は付いていなかった。 被告人車は,長さ3.29メートル,幅1.39メートル,高さ1.91メートル,車両重量は820キログラムの乗車定員が2名又は4名の軽四輪貨物自動車であり,本件事故当時,運転していた被告人以外に同乗者はいなかった。A車は,長さ4.69メートル,幅1.69メートル,高さ1.38メートル,車両重量1520キログラムの乗車定員が5名の普通乗用自動車であり,本件事故当時,運転席にA,助手席にB,後部座席に横たわってCがそれぞれ乗車していた。 (4) 本件事故の結果,A,B及びCは,公訴事実記載のとおりの各傷害を負い,被告人も,右膝開放性脱臼骨折,左大腿骨顆上骨折,右上腕骨近位端骨折の傷害を負い,約7か月間の入院治療を受けた。 4 本件の争点は,衝突地点がA車走行車線上か否かということであるから,この点について検討する。 (1) 関係証拠によれば,次の事実が認められる。 ① 衝突後,両車が停止した位置は,本件事故当日の午前4時40分から午前5時30分まで行われた実況見分の結果を記載した実況見分調書(原審検甲2号)に添付されている交通事故現場見取図(原判決 る。 ① 衝突後,両車が停止した位置は,本件事故当日の午前4時40分から午前5時30分まで行われた実況見分の結果を記載した実況見分調書(原審検甲2号)に添付されている交通事故現場見取図(原判決末尾添付の別紙図面1)のとおりであり,被告人車及びA車双方とも,A車走行車線上に停止した。 ② 本件現場には,両車の前照灯,方向指示器等の破片であるガラス片,プラスチック片が多数散乱しており,そのほとんどが事故後停止したA車の前方路上,左側の路側帯及び同車の右側直近のA車走行車線の路上にあった。 ③ A車の破損状況は,<ア>フロントバンパが,全体的に左方にずれている上,右側部に押し込みが生じ,エンジンルーム部に大きく食い込んでおり,ナンバープレート左端付近に局所的な凹損がある,<イ>右フロントフェンダ部に座屈が生じ,右前輪部が大きく後退しており,右フロントピラー部まで変形が波及している,<ウ>ボンネットに屈曲が生じている。 被告人車の破損状況は,<ア>前面中央左寄り部分が大きく凹損しており,その部分を中心にして前面が三角形状に凹損している,<イ>前面中央のナンバープレート上方に矩形状の衝突痕が生成されている,<ウ>右フロントピラー部が後退し,右ドア部が圧縮され,ドアパネル部が座屈している。 A車及び被告人車の破損状況からすると,A車の右前角付近と被告人車の前面中央左寄り部分が衝突したもので,衝突角度は160度前後と認められる。 (2) 本件事故に関する関係者の供述のうち,A及びBの原審公判廷における各供述は,原判決(13ないし14頁)に記載のとおりであり,いずれも被告人車が中央線を越えて走ってきて,A車と衝突した旨供述している。 これに対し,被告人は,次のとおり供述している。 ① 捜査段階における供述本件事 )に記載のとおりであり,いずれも被告人車が中央線を越えて走ってきて,A車と衝突した旨供述している。 これに対し,被告人は,次のとおり供述している。 ① 捜査段階における供述本件事故当日の午前零時ころから午前2時ころまで山口県大島郡d町のeで釣りをした後,車を運転して大竹市内の自宅に向け帰ろうとして,本件道路を時速約50キロメートルで進行しながら事故現場付近に至った,そのとき,大型の保冷車のような車が先行していたが,カーブの手前で追いつき,少し減速したので,私の車の速度は時速約40キロメートルであった,保冷車はカーブを過ぎてから速度を上げた,その後,急に,私の車の左前から黄色いライトが見えると同時に,車の前部に何かが当たった衝撃を受けた,気が付くと,横転した自分の車の運転席の中にいて,車から出られなくなっていた,事故直前のA車の動きについては分からない,本件事故の原因は,A車が中央線を越えて対向車線に入ったことにあり,Aは,対向車線を走行しているとき,私の車のライトを見て,A車走行車線に戻ろうとしてハンドルを左に切ったのではないかと思う,だから,私の車の前の中央からやや左にA車の右角が衝突したのだと思う。 ② 原審公判廷における供述本件道路を時速約50キロメートルで進行しながら事故現場付近に至った,そのとき,大型保冷車が,私の車と同程度の時速50キロメートルくらいで先行しており,同車との車間距離は,当初約40ないし50メートルであったが,同車が事故現場の左カーブに差しかかって速度を落としたため,カーブの直前では約20ないし25メートルくらいになった,そのため,私も時速40キロメートルくらいに減速した,保冷車が前記カーブを曲がった後加速したため,車間距離は再度40ないし50メートルくらいに開いた,そのとき,私 0ないし25メートルくらいになった,そのため,私も時速40キロメートルくらいに減速した,保冷車が前記カーブを曲がった後加速したため,車間距離は再度40ないし50メートルくらいに開いた,そのとき,私の車のフロントガラスの右側から黄色い光が見えた後に突然ライトが見え,次の瞬間A車と衝突した。 ③ 当審公判廷における供述本件事故前の私の車の速度は時速40キロメートルくらいであった,衝突後,私の車とA車は,二,三秒間くらい接触していた,その後,私の車は,右方向に回転した,本件事故の前日にも,交通事故があって,路上に油が落ちたため,その部分に砂を撒いたということを後日聞いた,本件事故の原因は,A車が,保冷車とすれ違った後,中央線を越えて,私の車の走行車線に入ったことにあると思う。 (3) A及びBの各供述は,大筋で符合している上,前記3に記載した本件事故現場付近の道路状況や前記4(1)の①ないし③の各事実ともそごを来すことがないものであって,信用できる。 他方,前同(2)の被告人の各供述によれば,衝突直前の段階で被告人車の約40ないし50メートル前方を大型保冷車が走行していたというのであるから,これを前提とするならば,A車は,同車とすれ違った後,対向車線にはみ出して走行し,次いで,左に急ハンドルを切って自車の走行車線に戻ろうとしたときに被告人車と衝突したということにならざるを得ないが,A車がそのような走行をしたというのは余りにも不自然であるし,物理的にも到底考えにくい。また,被告人は,衝突直前に対向車の黄色い光がどちらの側から見えたかにつき,捜査段階では左からと供述していたのに,原審公判廷では,供述を変遷させた理由を説明することなく,右からと供述を変えている。結局のところ,被告人の本件衝突状況に関する供述は,事故現場等の客観的 つき,捜査段階では左からと供述していたのに,原審公判廷では,供述を変遷させた理由を説明することなく,右からと供述を変えている。結局のところ,被告人の本件衝突状況に関する供述は,事故現場等の客観的状況に明らかに反しており,信用することができない。 (4) D作成の鑑定書(当審検2号)及び当審公判廷における同人の供述によれば,同人は,被告人車及びA車の変形状態等を考察し,実効衝突速度,衝突時の相対速度を算定した上,コンピューターシミュレーションにより衝突地点を判断し,衝突時の速度については,A車及び被告人車とも時速40ないし50キロメートル程度(両車の相対速度は時速90キロメートル程度)と,衝突地点については,中央線からA車走行車線内に約1ないし1.5メートル入った地点であると結論付けているところ,この判断は,前提とした事実や推論の過程等に誤りや矛盾がみられない上,前記4(1)の①ないし③の各事実とも符合しており,十分信用できるものというべきである。 (5) なお,E作成の鑑定書(原審弁10号)及び原審公判廷における同人の供述(以下,この両者を併せて「E鑑定等」という。)では,被告人車の走行車線側に進入したA車が,自車走行車線側に戻ろうとしていた時に,被告人車の走行していた車線上で衝突した可能性が高い,とされている。 しかしながら,E鑑定等には,次のような疑問点や納得し難い点が多々あり,到底信用できない。そして,この判断は,当審において取調べをしたE作成の意見書2通(当審弁2号,4号)を併せて検討しても,変わるものではない。 ① コンピューターシミュレーションを行って衝突地点等を判断しているが,その際における設定条件についての記載がなく,特に,両車の速度や摩擦係数をどのように設定したのか明らかでない。そして,原審弁12号証によれ ューターシミュレーションを行って衝突地点等を判断しているが,その際における設定条件についての記載がなく,特に,両車の速度や摩擦係数をどのように設定したのか明らかでない。そして,原審弁12号証によれば,被告人車及びA車の摩擦係数として0.3を採用したというのであるが,同値は氷雪上の係数と同じであり,本件事故時の摩擦係数としてこの数値を用いることに合理性がないばかりか,このような特殊な数値を採用したのであれば,当初の鑑定書中で当然に注記すべきであるのにこれがなされていないことからも,鑑定書全体の信用性を著しく損なうものである。また,Dの供述及び同人作成の意見書(当審検5号)によれば,E鑑定等の結論を導き出すためには,被告人車の速度を時速0キロメートルあるいは10キロメートルと設定しなければならないと認められるが,被告人車の速度をそのように設定するのは,関係証拠に照らし,明らかに誤りである。 ② 両車の衝突後の移動方向に関するシミュレーションの結果を考察している部分において,被告人車がA車走行車線に進入した場合と,A車が被告人車走行車線に進入した場合とで,前者では道路に対してA車が平行で被告人車が斜めであり,後者では被告人車が平行でA車が斜めであることを除くと,それ以外は同一条件であるのに(原審公判廷における証人Eの供述),衝突後の両車の動きそれ自体に差異が生じる理由につき,明確で納得のいく説明がなされていない。また,Eは,ハンドル操作は勘定していない,ハンドルはまっすぐに向いていたことを前提にしているとも供述しているが,被告人の供述による事故態様からすると,A車は左にハンドルが切られていなければおかしいということになるから,ハンドルがまっすぐに向いていたことを前提にしたのでは,正しい結論が得られないというべきである。 ③ 衝突地点 様からすると,A車は左にハンドルが切られていなければおかしいということになるから,ハンドルがまっすぐに向いていたことを前提にしたのでは,正しい結論が得られないというべきである。 ③ 衝突地点が被告人車走行車線内であるにもかかわらず,両車の前照灯等の破損部品片の多くがA車走行車線及びその左側の路側帯に散乱していることの理由として,Eは,<ア>衝突した部位の破損部品片をずっと挟んでA車の進行方向に持っていった可能性が極めて高い,A車が被告人車を押している間に両車の食いついた部分が離れていくから,それに連れて部品片がパラパラと落ちていくことになる,<イ>衝突したときの部品片は,被告人車と比べて車両総重量が重く,速度も速いA車の進行方向へ押されたというか投げ出されたということがある,と供述している。 しかしながら,<ア>Aは,被告人車は衝突した瞬間に横転したと思うと,被告人も,衝突した瞬間,自分の車は右後方に飛んだような感じでしたとそれぞれ供述し(原審公判廷),D作成の鑑定書では,両車は,衝突後すぐ離れたと判断されていることからすると,Eの前記供述は信用できない(なお,両車が衝突後二,三秒間接触していたという被告人の当審公判廷における前記供述は,信用できない。)。<イ>車両総重量が,A車は1685キログラム程度(車両重量に乗員3名分の体重55×3キログラムを加えたもの),被告人車は905キログラム程度(車両重量に積荷30キログラム及び乗員1名分の体重55キログラムを加えたもの),速度が,A車は時速50キロメートルくらい,被告人車が時速40キロメートルくらいと認められるところ,<ア>で指摘した事実をも併せ考慮すると,速度及び重量の差がこの程度であった場合にも,E指摘の現象が生じるのか,疑問なしとしない。 したがって,E鑑定 キロメートルくらいと認められるところ,<ア>で指摘した事実をも併せ考慮すると,速度及び重量の差がこの程度であった場合にも,E指摘の現象が生じるのか,疑問なしとしない。 したがって,E鑑定等は,にわかに信用できないものであって,前記認定判断を左右するものではない。 (6) そうすると,被告人車とA車は,A車走行車線で衝突したと認められ,また,関係証拠によれば,被告人車が中央線を越えてA車走行車線に進入したことについては,被告人に公訴事実記載の注意義務を怠った過失があると認められる。 5 以上の次第であるから,被告人車とA車が衝突した地点を特定ないし絞り込むことができず,被告人に検察官主張の業務上の注意義務を怠った過失があったことについては,その証明がないといわざるを得ないとして,A外2名に対する業務上過失傷害の事実を認定しなかった原判決は,事実を誤認したものというべきであり,この事実誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,破棄を免れない。 論旨は理由がある。 よって,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書に従って,当裁判所において,本件被告事件について更に判決する。 (罪となるべき事実)「c町方面から岩国市方面に向かい時速約50キロメートルで進行するに当たり,」とあるのを「c町方面から岩国市方面に向かい時速約40キロメートルで進行するに当たり,」と改めるほかは,前記公訴事実と同一である。 (証拠の標目)原審第8回公判調書中の被告人の供述部分被告人の検察官に対する供述調書(原審検乙3号)原審第3回公判調書中の証人B及び同Aの各供述部分B(原審検甲16号)及びA(原審検甲17号)の検察官に対する各供述調書の同意部分Cの司法警察員に対する供述調書の同意部分(原審 3号)原審第3回公判調書中の証人B及び同Aの各供述部分B(原審検甲16号)及びA(原審検甲17号)の検察官に対する各供述調書の同意部分Cの司法警察員に対する供述調書の同意部分(原審検甲15号)実況見分調書4通(原審検甲2号,6号ないし8号)及び写真撮影報告書2通(原審検甲3号,5号)診断書3通(原審検甲9号,11号,13号)捜査関係事項照会回答書4通(原審検甲4号,10号,12号,14号)D作成の鑑定書(当審検2号)当審第2回公判調書中の証人Dの供述部分証人Dの当審公判廷における供述(法令の適用)被告人の判示所為は各被害者ごとに平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段に該当するが,これは1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により犯情の最も重いCに対する業務上過失傷害罪の刑で処断することとし,所定刑中禁錮刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を禁錮6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,原審及び当審における訴訟費用については,刑訴法181条1項本文により被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,早朝,軽四輪貨物自動車を運転して山口県玖珂郡内の国道を進行するに当たり,前方を注視し,進路を適正に保持して進行すべき注意義務を怠り,漫然時速約40キロメートルで進行した過失により,自車を対向車線上に進出させ,折から対向進行してきた普通乗用自動車の前部に衝突させ,同車の運転者及び同乗者2名に傷害を負わせた,という事案である。本件事故は,自動車運転者としての基本的な注意義務を怠った被告人の一方的な過失に基づくものである。そして,被害者3名に重傷を負わせたという結果も 者及び同乗者2名に傷害を負わせた,という事案である。本件事故は,自動車運転者としての基本的な注意義務を怠った被告人の一方的な過失に基づくものである。そして,被害者3名に重傷を負わせたという結果も決して軽くはない。それにもかかわらず,被告人は,本件事故の原因はA車が中央線を越えて自車走行車線内に入ってきたことにあると供述し,自己の過失を争っていることもあって,治療費以外の損害賠償はなされていない。したがって,本件の犯情はよくなく,被告人の刑事責任は軽視することができない。 しかしながら,被告人自身,本件事故により重傷を負い,その後遺障害のため現在も体調が優れないこと,前科がなく,これまで通常の社会生活を送ってきたことなど被告人のために斟酌すべき事情も認められる。 そこで,以上の諸事情を総合的に考慮して,被告人に対し,主文の刑を科した上,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年9月26日広島高等裁判所第一部裁判長裁判官久保眞人裁判官菊地健治裁判官芦高源
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