平成30年7月19日判決言渡平成29年(行コ)第283号所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成24年(行ウ)第185号) 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 本件訴えのうち,A税務署長が控訴人らに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の各更正処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)のうち各控訴人が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める部分を却下する。 3 A税務署長が控訴人Cに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 4 A税務署長が控訴人Dに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 5 A税務署長が控訴人Eに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して 19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年 9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 6 A税務署長が控訴人Fに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 7 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを10分し,その1を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 A税務署長が控訴人Cに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同控訴人が納付すべき税額1190万4100円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 3 A税務署長が控訴人Dに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万50 )を取り消す。 3 A税務署長が控訴人Dに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同控訴人が納付すべき税額238万0800円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消され た後のもの)を取り消す。 4 A税務署長が控訴人Eに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同控訴人が納付すべき税額238万0800円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 5 A税務署長が控訴人Fに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同控訴人が納付すべき税額238万0800円を超える部分並びにA税務署長が同控訴人に対して同日付けでした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも平成22年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,G株式会社(以下「G」という。)の代表取締役であった被相続人Bが,自身の有していた同社の株式のうち72万5000株(以下「本件株式」という。)を,平成19年8月 第2 事案の概要 1 本件は,G株式会社(以下「G」という。)の代表取締役であった被相続人Bが,自身の有していた同社の株式のうち72万5000株(以下「本件株式」という。)を,平成19年8月1日,有限会社H(以下「H」という。)に対して譲渡したこと(以下「本件株式譲渡」という。)につき,同年12月26日に死亡したBの相続人であり相続によりBの平成19年分の所得税の納付義務を承継した控訴人らが,本件株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額を譲渡対価と同じ1株当たり75円(原判決別紙1の配当還元方式により算定した価額に相当する金額)として,Bの上記所得税の申告をしたところ,A税務署長が,本件株式譲渡の譲渡対価はその時における本件株式の価額である1株当たり2990円(原判決別紙1の類似業種比準方式により算定した価額)の2分の1に 満たないから,本件株式譲渡は所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるとして,各控訴人に対し,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたため,控訴人らが,被控訴人を相手に,上記更正処分のうち修正申告又は先行する更正処分の金額を超える部分及び上記賦課決定処分(いずれも異議決定による一部取消し後のもの。以下同じ。)の各取消しを求める事案である(なお,上記異議決定では,類似業種比準方式により算定された価額は1株当たり2505円であるとされている。)。 原判決は,本件訴えのうち,A税務署長が控訴人らに対してしたBの平成19年分の所得税の各更正処分のうち各控訴人らが納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める部分を却下し,その余の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人らがこれを不服として控訴した。 2 関係法令等の定め,前提事実,被控訴人が主張する本件各更正処分等の根拠,争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は,原判決 の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人らがこれを不服として控訴した。 2 関係法令等の定め,前提事実,被控訴人が主張する本件各更正処分等の根拠,争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は,原判決「事実及び理由」欄の「第 2 事案の概要」の1から5まで(原判決4頁1行目から19頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,原判決と同じく,本件各更正処分のうち各控訴人が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める訴え部分は不適法であるから却下すべきであると判断するが,原判決と異なり,本件各更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びに本件各賦課決定処分は違法であるから取り消すべきであると判断する。その理由は,次のとおりである。 2 争点⑴(本件株式譲渡が所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるか)について⑴ 本件株式の所得税基本通達及び評価通達に定める方法による評価等につい てア所得税基本通達及び評価通達に定める評価方法の合理性について(ア) 所得税法33条1項が規定する譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものであるところ(最高裁昭和41年(行ツ)第102号同47年12月26日第三小法廷判決・民集26巻10号2083頁,最高裁昭和47年(行ツ)第4号同50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照),同法59条1項2号は,この譲渡所得課税の趣旨の下,譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額(所得税法施行令169 (行ツ)第4号同50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照),同法59条1項2号は,この譲渡所得課税の趣旨の下,譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額(所得税法施行令169条)による法人に対する資産の譲渡があった場合には,その譲渡した者の譲渡所得等の金額の計算については,その譲渡があった時に,その時における価額に相当する金額により,当該資産の譲渡があったものとみなす旨を定めている。そして,ここにいう「その時における価額」とは,当該譲渡の時における当該資産の客観的交換価値,すなわち不特定多数の独立当事者間の自由な取引において通常成立すると認められる価額(時価)を意味するものと解される。 そして,所得税基本通達59-6は,所得税法59条1項の適用に当たって,譲渡所得の基因となる資産が本件株式のように評価通達における取引相場のない株式に相当する株式であって売買実例のある株式等に該当しないもの(所得税基本通達23~35共-9の⑷ニの株式)である場合の「その時における価額」とは,原則として,同通達59-6の⑴から⑷までによることを条件に,評価通達の178から189-7までの例により算定した価額とする旨を定めており,これらの通達はいずれも公開されている。 所得税基本通達59-6がこのような取扱いを定めている趣旨は,取 引相場のない株式は通常売買実例等に乏しいことなどから,その客観的交換価値を的確に把握することが容易ではないため,その評価方法についての国税当局の内部的な取扱いを相続税等の課税対象となる財産の評価について定めた評価通達の例に原則として統一することで,回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理に資するとともに,公開された画一的な評価によることで,納税者間の公平を期し,また納税者の申告・納税の便宜を図る 評価通達の例に原則として統一することで,回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理に資するとともに,公開された画一的な評価によることで,納税者間の公平を期し,また納税者の申告・納税の便宜を図るという点にあると解される。 このような上記通達の趣旨に鑑みれば,取引相場のない株式について,所得税基本通達59-6が定める条件の下に適用される評価通達に定められた評価方法が,取引相場のない株式の譲渡に係る譲渡所得の収入金額の計算において当該株式のその譲渡の時における客観的交換価値を算定する方法として一般的な合理性を有するものであれば,その評価方法によってはその客観的交換価値を適正に算定することができない特別な事情がある場合でない限り,その評価方法によって算定された価額は,当該譲渡に係る取引相場のない株式についての所得税法59条1項にいう「その時における価額」として適正なものであると認めるのが相当である。 (イ) そこで,まず評価通達に定められた取引相場のない株式の評価方法の合理性について検討すると,評価通達178から189-7までは,取引相場のない株式の評価について,評価会社の規模に応じて場合分けし,大会社については,類似業種比準方式を原則的評価方法とすることを定める(同179,180)一方,「同族株主以外の株主等が取得した株式」については,例外的に配当還元方式によることを定める(同188,188-2)。 類似業種比準方式は,評価会社と事業の種類が類似する上場会社の株価に比準して株式の価額を求めるものであり,具体的には,株価構成要 素のうち基本的かつ直接的なもので計数化が可能な1株当たりの配当金額,年利益金額及び純資産価額の3要素につき,評価会社のそれらと,当該会社と事業内容が類似する業種目に属する上場会社のそれらの平均値とを比較 基本的かつ直接的なもので計数化が可能な1株当たりの配当金額,年利益金額及び純資産価額の3要素につき,評価会社のそれらと,当該会社と事業内容が類似する業種目に属する上場会社のそれらの平均値とを比較の上,上場会社の株価の平均値に比準して評価会社の1株当たりの価額を算定するというものである(乙9,15)。この方式を大会社の取引相場のない株式の原則的評価方法とした趣旨は,大会社が上場株式や気配相場等のある株式の発行会社に匹敵するような規模の会社であって,その株式が通常取引されるとすれば上場株式や気配相場等のある株式の取引価格に準じた価額が付されることが想定されることから,現実に流通市場において価格形成が行われている株式の価額に比準して評価することが合理的であることによるものと解される。 他方で,配当還元方式は,株式の価額をその株式に係る年配当金額を還元率10%で除して計算した元本に相当する配当還元価額によって評価するものである。この方式を「同族株主以外の株主等が取得した株式」の評価方法とした趣旨は,事業経営への影響の少ない同族株主の一部や従業員株主等の少数株主においては,会社支配力が小さく,単に配当を期待するにとどまるという実情があることから,評価手続の簡便性をも考慮して,この評価方法を相当としたものと解される。 そして,評価通達188は,原判決別紙1のとおり,株主の会社支配力を測る基準として,株主及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数に占める割合に着目し,これを基として配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」の範囲を具体的に定めている。すなわち,評価通達188は,取引相場のない株式の評価について配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当するかどうかを判定するに当 得した株式」の範囲を具体的に定めている。すなわち,評価通達188は,取引相場のない株式の評価について配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当するかどうかを判定するに当たり,同族株主の有無によって評価会社を2つに区分した上で(会社区分),同族株主のい る会社である場合には同⑴又は⑵の株式に該当するかどうかにより,同族株主のいない会社である場合には同⑶又は⑷の株式に該当するかどうかによって,それぞれ判定することとしている(株主区分の判定)。評価通達188の規定がこのような構造となっているのは,同族株主の有無や,株式の取得者の取得後の議決権割合等により,会社支配力の有無が異なり,当該株式の取得目的及び通常取引される場合の価額が異なり得ることから,同族株主の有無によって大きく会社を2つに区分した上で,各会社区分について株主の会社支配権を測る基準となる議決権割合を定め,これに基づき配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当するか否かの判定を行うこととしたものと解される。 以上の諸点に鑑みれば,評価通達178から188-2までに定めるこれらの評価方法は,取引相場のない株式につき株式取引の実情等を踏まえたものとして一般的な合理性を有するものと認められる。 (ウ) 次に,所得税基本通達59-6が上記の評価通達に定められた取引相場のない株式の評価方法を適用する際の条件として規定した内容の合理性について検討すると,そもそもそのような条件を設けたのは,評価通達が本来的には相続税や贈与税の課税価格の計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを定めたものであって,譲渡所得の収入金額の計算とは適用場面が異なるところ,譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益 の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを定めたものであって,譲渡所得の収入金額の計算とは適用場面が異なるところ,譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税するという趣旨を踏まえ,評価通達を譲渡所得の収入金額の計算の趣旨に則して用いることを可能にするためであると解され,このような考え自体は,合理性を有するものと認められる。 イ所得税基本通達59-6の⑴の条件下における評価通達188の議決権 割合の判定方法(争点①)について(ア) 本件では,所得税基本通達59-6の定める⑴から⑷までの条件のうち,⑴が妥当する範囲とその合理性の有無が問題となる。 すなわち,所得税基本通達59-6の⑴は,評価通達に定められた取引相場のない株式の評価方法を適用する際の条件として,「財産評価基本通達188の⑴に定める「同族株主」に該当するかどうかは,株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること。」と定めている。これは,評価通達188の⑴は,「同族株主」につき,課税時期における評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上等である場合におけるその株主及びその同族関係者としているところ,その文理解釈だけでは,30%以上等である場合が,株式譲渡前の議決権について述べているのか,譲渡後の議決権について述べているのかは必ずしも明らかではないため,譲渡所得に対する課税が,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税するという趣旨から,30%以上 ,譲渡所得に対する課税が,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税するという趣旨から,30%以上等という基準は,株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権割合により判定すべきことを定めたということができ,このこと自体の合理性は認めることができる。 ところが,被控訴人は,更に進んで,譲渡所得に対する課税の上記の趣旨から,評価通達188の⑵から⑷までに係る株主区分の判定についても,譲渡人の株式譲渡直前の議決権割合により判定する旨を主張している。評価通達188の⑵及び⑷には,「株式取得後」と,同⑵から⑷までには「取得した株式」との文言があり,その文理からすると,株式譲渡後の譲受人の議決権割合を述べていることが明らかであるから,被控訴人主張のように理解するためには,同⑵及び⑷の「株式取得後」と の文言を「株式譲渡前」と,同⑵から⑷までの「取得した株式」との文言を「譲渡した株式」と,それぞれ読み替えることを要し,所得税基本通達59-6の⑴は,そのような読み替えを定めたものと理解することが必要となる(所得税基本通達59-6が同基本通達の改正により定められた直後の平成13年当時,上記主張に沿う解説が示されている(乙103の10頁の「株主の態様による算定方式」の表参照)が,その後,上記のような読み替えを明確に示した解説等は,見当たらない。)。原判決も,この主張に沿う判断をしているものと解される(原判決22頁7行目から23頁14行目まで)。 (イ) しかし,租税法規の解釈は原則として文理解釈によるべきであり,みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されないと解されるところ,所得税基本通達及び評価通達は租税法規そのものではないものの,課税庁によ かし,租税法規の解釈は原則として文理解釈によるべきであり,みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されないと解されるところ,所得税基本通達及び評価通達は租税法規そのものではないものの,課税庁による租税法規の解釈適用の統一に極めて重要な役割を果たしており,一般にも公開されて納税者が具体的な取引等について検討する際の指針となっていることからすれば,課税に関する納税者の信頼及び予見可能性を確保する見地から,上記各通達の意味内容についてもその文理に忠実に解釈するのが相当であり,通達の文言を殊更に読み替えて異なる内容のものとして適用することは許されないというべきである。本件においては,本件株式が評価通達188の⑶の株式に該当するかどうかが争われているところ,上記のとおり,所得税基本通達59-6の⑴が,評価通達188の⑴に定める「同族株主」に該当するかどうかについて株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権の数により判定する旨を定める一方で,同⑵から⑷までについて何ら触れていないことからすれば,同⑶の「同族株主のいない会社」に当たるかどうかの判定(会社区分の判定)については,それが同⑴の「同族株主のいる会社」の対概念として定められていることに照らし,所得税基本通達59-6の⑴により株 式譲渡直前の議決権の数により行われるものと解されるとしても,「課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が,その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式」に該当するかどうかの判定(株主区分の判定)については,その文言どおり,株式の取得者の取得後の議決権割合により判定されるものと解するのが相当である。 (ウ) 被控訴人は,譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を 文言どおり,株式の取得者の取得後の議決権割合により判定されるものと解するのが相当である。 (ウ) 被控訴人は,譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税するという趣旨から,評価通達188の⑵から⑷までについて,譲渡人の株式譲渡直前の議決権割合により判定する旨を主張している。しかし,そのような解釈をするためには,上記のような「読み替え」が必要となるが,所得税基本通達59-6の⑴の文言は,評価通達188の⑴の「同族株主」について述べているのであるから,評価通達188の⑵から⑷までの「同族株主」以外の部分までが上記のように読み替えられて適用される旨を読み取ることは,一般の納税者にとっては困難である。 しかも,被控訴人の主張する譲渡所得に対する課税の趣旨から,上記「読み替え」を導き出すこと自体,所得税基本通達59-6の⑴があっても無理があるといわなければならない。すなわち,所得税法59条1項にいう「その時における価額」は,譲渡の時における資産の客観的交換価値で,不特定多数の独立当事者間の自由な取引において通常成立すると認められる価額(時価)を意味するのであり,譲渡人が会社支配権を有する多数の株式を保有する場合には,当該株式は議決権行使に係る経営的支配関係を前提とした経済的価値を有するものと評価され得る一方,当該株式が分割して譲渡され,譲受人が支配権を有しない少数の株式を保有するにとどまる場合には,当該株式は配当への期待に基づく経 済的価値を有するにすぎないものとして評価されることとなるから,その間の自由な取引において成立すると認められる価額は,譲渡人が譲渡前に有していた支配関係によって決定されるのか,譲渡 基づく経 済的価値を有するにすぎないものとして評価されることとなるから,その間の自由な取引において成立すると認められる価額は,譲渡人が譲渡前に有していた支配関係によって決定されるのか,譲渡後に譲受人が取得することになった支配関係のどちらかで決定されるのかは一概に決定することはできず,双方の会社支配の程度によって結論を異にする事柄であるというべきである。被控訴人の主張する譲渡所得課税の趣旨(所有者に帰属していた増加益を清算して課税する。)といっても,上記のように成立した価額を基準に,所有者の有していた増加益を判断して課税することになるのであるから,上記譲渡所得課税の趣旨に反するということまではできない。そのため,議決権割合の判定基準時を文理解釈で決定できない評価通達188の⑴について,上記譲渡所得課税の趣旨に基づく条件(所得税基本通達59-6⑴)を定めてその解釈を明確化することには,一定の合理性が認められるものの,株式取得後の議決権割合で判定する旨を定めていることが文理上明らかな評価通達188の⑵から⑷までについてまで,明文の定めもなく,上記譲渡所得課税の趣旨によって読み替えることは,所得税基本通達59-6の⑴があっても無理があるといわなければならない(なお,株式が分割して取引の対象となるという特性を有するものであることに鑑みると,会社支配権を有する多数の株式を保有する譲渡人が経営への影響力を廃する形で株式を分割して譲渡すること自体に問題があるということはできず,そのような分割譲渡について殊更に租税回避の意図を見出してこれを実質的に否認するような解釈を採ることは,私的自治の観点からも疑問があるものといわざるを得ない。)。 そうすると,評価通達188の⑵から⑷までについては,上記の自由な取引において成立すると認められる価額 否認するような解釈を採ることは,私的自治の観点からも疑問があるものといわざるを得ない。)。 そうすると,評価通達188の⑵から⑷までについては,上記の自由な取引において成立すると認められる価額について,譲渡人と譲受人の双方の会社支配の程度を考慮して規定された合理的な内容を有するもの として,これを読み替える明文の規定がない場合には,「同族株主のいない会社」の部分を除き,そのまま譲渡所得課税にも適用するのが相当である(所得税法基本通達59-6は,このことを定めたものとして合理性を有する。)。仮に,所得税基本通達59-6の⑴の適用範囲について,評価通達188の⑵から⑷までについてまで被控訴人が主張するような解釈をとろうとするのであれば,上記に説示したような通達の重要性及び機能に照らし,その旨を通達上明確にしておくべきであって,通達の改正等を経ることなく解釈によりその実質的内容を変更することは,通達の定めを信頼して取引等について判断をした納税者に不測の不利益を与えるものであり,相当でないというべきである。 (エ) 以上によれば,本件株式が評価通達188の⑶の株式に該当するかどうかについて,「課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が,その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式」に該当するかどうかの判定(株主区分の判定)については,その文言どおり,株式の取得者の取得後の議決権割合により判定されるものと解するのが相当である。 なお,評価通達188の⑶について以上のように解すると,会社区分と株主区分の各判定の基準となる時期が異なることとなり,一文で定められている株式の要件に関して異なる判断基準が混在することになるが,会社区分の判定と株主区分の判定は論理的に関連するものでは 会社区分と株主区分の各判定の基準となる時期が異なることとなり,一文で定められている株式の要件に関して異なる判断基準が混在することになるが,会社区分の判定と株主区分の判定は論理的に関連するものではなく,前者について株式譲渡直前の議決権割合によって判定するからといって,後者についても当然に同じ基準によらなければならないという必然性があるとはいえない。 以上によれば,被控訴人の前記主張は採用することができない。 ウ本件株式の評価について前記引用に係る原判決記載の前提事実⑴ア及び⑶のとおり,Gの株式は, 評価通達における「取引相場のない株式」に当たり,かつ,同社には,本件株式譲渡の直前において,議決権総数の30%以上の議決権を有する株主及びその同族関係者は存在しなかったから,同社は「同族株主のいない会社」に当たる。そして,同⑶のとおり,Hの本件株式取得後の議決権割合は7.88%であり,Hには同族関係者がおらず,その議決権割合はGの議決権総数の15%未満にとどまる。したがって,本件株式は,評価通達188の⑶の株式に該当するから,所得税基本通達59-6,評価通達188-2に従い,配当還元方式によって評価すべきこととなる。 証拠(甲6,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,Gの直前期末以前2年間における配当金額の合計額の2分の1に相当する金額は6900万円であり,直前期末における発行済株式数は920万株であるから,同社の株式に係る年配当金額(評価通達183の⑴に定める「1株当たりの配当金額」)は7.5円となる。そして,本件株式の1株当たりの資本金等の額は50円であると認められるから,本件株式の1株当たりの評価額は,7. 5円÷10%×50円÷50円=75円であると認められる。 そして,本件全証拠によっても,配当還元方式 の1株当たりの資本金等の額は50円であると認められるから,本件株式の1株当たりの評価額は,7. 5円÷10%×50円÷50円=75円であると認められる。 そして,本件全証拠によっても,配当還元方式によっては本件株式の客観的交換価値を適正に算定することができない特別な事情があるとは認められないから,配当還元方式による本件株式の1株当たりの評価額は,本件株式譲渡の時点における本件株式の客観的交換価値として適正なものであると認められる。そうすると,本件株式譲渡における譲渡価格はこれと同額であるから,本件株式譲渡は,争点②について判断するまでもなく,所得税法59条1項2号の低額譲渡には当たらないというべきである(Bが,Hに対し強い権限を有し,また,本件株式の譲渡が相続税負担の軽減させることを目的して行われたとしても,1株当たり75円という譲渡価額が,前記のとおり合理性が認められる所得税基本通達59-6,評価通達188の⑶,188-2に従って算定された価額と一致する以上,純然 たる第三者間で種々の経済性を考慮して算定された価額とは異なるということはできず,ほかに同事実を認めるに足る証拠はない。)。 ⑵ 以上のとおりであるから,本件株式譲渡は所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たらないにもかかわらず,これに当たるとしてされた本件各更正処分等は違法である。 3 争点⑵(本件各更正処分等により控訴人Dらがそれぞれ納付すべき税額についての被控訴人の主張変更の当否)について次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の2(原判決30頁7行目から33頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決31頁13行目の「また,」から21行目末尾までを「ただし,過少申告加算税については,納税義 断」の2(原判決30頁7行目から33頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決31頁13行目の「また,」から21行目末尾までを「ただし,過少申告加算税については,納税義務違反があった当時既にBが死亡していたことから,控訴人らに対し本件各賦課決定処分がされている。」と改める。 ⑵ 原判決32頁5行目,6行目,9行目の「等」を削除する。 ⑶ 原判決32頁7行目の「及びこれに係る過少申告加算税の額」及び8行目の「及び過少申告加算税」を削除する。 ⑷ 原判決32頁20行目から22行目を「また,争点⑵に関する控訴人らの主張のうち,本件各賦課決定処分の適法性に関する部分は,争点⑴に対する判断の結果,本件各賦課決定処分は違法であるから取り消すべきこととなり,判断の必要がない。」と改める。 4 結論よって,本件各更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円及び申告納税額5048万5600円を超える部分並びに本件各賦課決定処分は違法であるから取り消し,本件各更正処分のうち各控訴人が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める訴え部分は不適法であるから却下することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部 裁判長裁判官 裁判官 裁判官
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