令和3(う)75 大麻取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月24日 広島高等裁判所 棄却 広島地方裁判所 令和3(わ)320
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判決文本文3,390 文字)

1令和4年2月24日宣告 広島高等裁判所令和3年(う)第75号 大麻取締法違反被告事件原審 広島地方裁判所 令和3年(わ)第320号主 文本件控訴を棄却する。 理 由1 本件控訴の趣意は,弁護人原田龍明作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。控訴理由は法令適用の誤り及び量刑不当である。 2 本件は,原判決が「罪となるべき事実」において認定したとおり,被告人が,令和2年2月頃から令和3年6月3日までの間,当時の被告人方において大麻草153本を育成して大麻を栽培し(原判示第1),同日,同所において大麻である植物片約365.081g及び大麻である粘稠物約0.580gを所持した(原判示第2)という事案であり,原判決は,原判示第1の事実に大麻取締法24条1項を,同第2の事実に同法24条の2第1項を適用するなどし,被告人を懲役3年(4年間執行猶予)に処した。 なお,原審においては,大麻取締法の合憲性は争点とされず,原審弁護人は執行猶予付判決を求めていた。 3 法令適用の誤りの主張について論旨は,大麻取締法は違憲・無効である(法令違憲),仮に大麻取締法が憲法違反ではなくとも,原判決は,大麻の有害性や有用性を改めて正しく再評価することなく,従前の裁判例と同様に罰則規定を適用して量刑判断をした点において適用違憲であるといい,原判決に法令適用の誤りがある旨をいう。 そこで,記録を調査して検討する。 ⑴ 法令違憲の主張について所論は,大麻草が使用者に幸福感等をもたらすほか,人は大麻の使用によって思考を深めて自己の思想を発展させて自己実現することができる,被告人に 2とって大麻吸引は神への祈 主張について所論は,大麻草が使用者に幸福感等をもたらすほか,人は大麻の使用によって思考を深めて自己の思想を発展させて自己実現することができる,被告人に 2とって大麻吸引は神への祈りであるから大麻草の栽培も宗教的行為の一環であるなどとして,大麻の所持は表現の自由にも資する幸福追求権及び信教の自由として,大麻の栽培は信教の自由として,それぞれ保障されるとし,大麻の有害性はたばこやアルコールに比して高いとはいえない一方,医療用大麻や産業用大麻の存在を考慮すれば大麻の有用性は高度であるとして,大麻の規制自体,既にその立法事実を失っており許されない,仮に許されるとしても,罰金刑を設けず懲役刑のみを法定刑として定めた大麻取締法24条1項及び同条の2第1項の規定(以下,これらをまとめて「本件各罰条」という。)は必要最小限の規制といえず違憲無効であるなどと主張する。 そこで検討すると,大麻取締法による大麻の所持・栽培の規制の目的は,大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止することにあり,大麻の有害性をその立法事実としている。この点,最近の国内外における専門家による研究結果等を踏まえても,大麻に精神依存性があり,長期間の濫用によって記憶や認知に障害を及ぼし,精神障害を発症するなどの健康被害をもたらす危険性があると指摘されていること(厚生労働省・「大麻等の薬物対策のあり方検討会とりまとめ」〔令和3年6月25日公表〕3頁等参照)などからしても,上記の立法事実が失われていないことは明らかである。この結論は,所論の指摘を踏まえても左右されない。 また,所論は,諸外国においては,大麻を他の薬物に比して特別緩やかに規制する立法ないし運用がされているところ,日本における大麻規制も同様の方法で立法目的を達成することが十分に可能である上,本件 また,所論は,諸外国においては,大麻を他の薬物に比して特別緩やかに規制する立法ないし運用がされているところ,日本における大麻規制も同様の方法で立法目的を達成することが十分に可能である上,本件各罰条の法定刑は懲役刑のみであることから,大麻取締法による大麻の所持・栽培の規制は必要最小限を超えているともいうが,諸外国との比較においても本件各罰条の法定刑が罪刑の均衡を失するほどに重いとは解されないし,これらの罰則の規定にもかかわらず,近年,大麻事犯の検挙人員が増加傾向にあること(前掲2頁参照)などからして到底採用できない。 3⑵ 適用違憲の主張についてこの点に関する所論は,必ずしも明確ではないが,その趣旨は,①諸外国における大麻合法化の状況,②麻薬に関する単一条約における規制スケジュールの変更をはじめとする昨今の大麻規制を取り巻く国際情勢及び③いわゆるCBD製品が,テトラヒドロカンナビノールを含有していない限り簡単に購入可能であるなどの日本国内での大麻製品の取扱い等に鑑みれば,現在は,大麻取締法制定当時に比して大麻所持等に対する規範意識を形成することが格段に困難な状況にあることは明らかであるから,従来の裁判例と同様の量刑判断を行った点において,原判決は本件各罰条を憲法に違反する形で適用したと主張するものとも解される。 しかしながら,①については,医療用大麻の合法化は比較的多くの国で見られるものの,嗜好用大麻の合法化を行っている国がごく少数にとどまることは所論も認めるところであるし,②については,飽くまで医療用大麻の活用状況を踏まえての変更にとどまり,大麻が依然として条約上最も厳格な規制の対象とされていることに変わりはない。③については,所論も認めるとおり,日本国内で適法に流通するのは,大麻取締法上,「大麻」に該 況を踏まえての変更にとどまり,大麻が依然として条約上最も厳格な規制の対象とされていることに変わりはない。③については,所論も認めるとおり,日本国内で適法に流通するのは,大麻取締法上,「大麻」に該当しない,大麻草の成熟した茎又は種子の各製品(前者の樹脂を除く。)と認められるもの(大麻取締法1条)に限られていることに変わりはないのであって,この状況をもって,大麻取締法の規制が緩和されたなどということはできない。 したがって,原判決が本件各罰条を憲法に違反する形で適用したとの主張はそもそもその前提を欠くというべきである。なお,原判決の量刑が近時の裁判例の量刑傾向に照らしても相当として是認できるのは,後述のとおりである。 その余の指摘も含め,所論は到底採用できない。 ⑶ 論旨は理由がない。 4 量刑不当の主張について⑴ 論旨は,被告人を懲役3年(4年間執行猶予)に処した原判決の量刑が重過 4ぎて不当であるというのである。 そこで,記録を調査して検討する。 ⑵ 本件は,2のとおりの事案であるところ,原判決は,「量刑の理由」において,以下のとおり説示する。 栽培した量はこの種の事案として大量といえる。各犯行動機にさして酌むべき事情はない。そこで,同種前科があるが,約20年前のものであること,本件犯行を認めていること(もっとも,真摯な反省は認められない。)などを考慮して懲役3年(4年間執行猶予)の刑を定めた。 以上の原判決の挙げる量刑事情及びその評価に格別不当な点はない。そして,本件大麻の栽培規模や所持量等に加えて,被告人は,約20年前とはいえ,大麻の栽培,所持による前科も有している上,大麻に関する豊富な知識を有しており,本件各犯行の違法性を十分に認識した上で犯行に及んでいたことが記録上明らかであ に加えて,被告人は,約20年前とはいえ,大麻の栽培,所持による前科も有している上,大麻に関する豊富な知識を有しており,本件各犯行の違法性を十分に認識した上で犯行に及んでいたことが記録上明らかであることなどの事情に照らせば,原判決の量刑は,近時の裁判例の量刑傾向に照らしても相当といえ,これが重過ぎて不当とはいえない。所論は,3で触れたとおりの主張をして原判決の量刑不当をいうが,これが採用できないことは既に述べたとおりである。 5 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 令和4年2月25日広島高等裁判所第1部 裁判長裁判官 伊 名 波 宏 仁 裁判官 富 張 真 紀 5 裁判官 廣 瀬 裕 亮

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