令和元年(わ)第120号判決被告人に対する住居侵入、殺人被告事件について、当裁判所は、検察官村岡崇央、同坂哉萌、同小河弘明及び同上ノ町秀作並びに主任弁護人永里桂太郎、弁護人菅野浩平及び同西選子各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人は無罪。 理由 第1 本件公訴事実及び争点訴因変更後の本件公訴事実は、「被告人は、令和元年6月13日頃から同月14日頃までの間に、金品窃取の目的で、鹿児島県奄美市a町b番c号A方に玄関引き戸から侵入し、その頃、同所において、A(当時87歳)に対し、殺意をもって、その右鎖骨上部等を刃物様のもので複数回突き刺すなどし、よって、その頃、同所において、同人を右鎖骨上部刺創に基づく出血性ショックにより死亡させて殺害した。」というものである。 本件の争点は、被告人が本件犯人であると認められるか否かである。 第2 本件犯人の行動について(以下、月日はすべて令和元年のそれを指す。また、括弧内に挙げた証拠は当該事実認定に用いた主要な証拠を示す。) 1 侵入経路及び方法⑴ 侵入経路被害者方検証に際し、同人方及びその周辺の状況確認を行ったB警察官の証言を含む関係各証拠(C証言、D証言、甲192)によれば、6月16日夜の遺体発見時ないしその後の検証時において、被害者方玄関は無施錠であったこと、1階のトイレ及び台所北側の各腰高窓並びに2階南側のベランダの掃き出し窓以外の窓は施錠されていたこと、前記トイレの腰高窓は格子が付いており、その間隔は12ないし15cm程度で人が通れるような間隔ではなかったこと、前記台所北側の腰高窓 はサッシの戸車が腐食のため膨張して動かず、通常の方法では開けることはできなかったこと、前記ベランダの掃き出し窓 し15cm程度で人が通れるような間隔ではなかったこと、前記台所北側の腰高窓 はサッシの戸車が腐食のため膨張して動かず、通常の方法では開けることはできなかったこと、前記ベランダの掃き出し窓は施錠されていなかったものの、屋根及びベランダ手すりに損壊、払拭等された痕跡は見当たらず、ベランダ床から足跡は出なかったこと、前記掃き出し窓の内側、外側や室内側の板間等からも痕跡は発見されなかったこと、被害者方の周囲に設置されたブロック塀には、手や足をかけた際にできるであろう痕跡等がなく、塀に沿ってその内側の庭にあった多数の植木にも、枝が折られた等の痕跡が見当たらず、庭の地面にも足跡が見当たらなかったこと、その他の窓周辺にも被害者の親族の指紋等が認められたほか、外部からの侵入の痕跡が見当たらなかったことなどが認められる。 以上によれば、本件犯人は、玄関以外の場所から被害者方に侵入したとは考え難く、玄関から侵入したと認定できる。 ⑵ 侵入方法ア証拠により認められる事実被害者方1階の居間兼寝室で発見された被害者の遺体は、肌着とパジャマのズボン等を着用した状態であったところ、被害者は人と会うことのある日中の時間帯にそのような服装でいることはなかった(D証言、E証言、F証言、甲192)。 被害者方の玄関はアルミサッシ製2枚引違戸であり、左右端にそれぞれ戸先鎌錠が、中央部で2枚の引き戸が重なり合う部分に召し合せ錠があって、外から見て右側の引き戸(以下「右側引き戸」という。)右端の戸先鎌錠は、内側からスライド部分を押し下げることによりフック状の部分が上がり、受座に入ることによって施錠される仕組みであるところ、外から見て左側の戸先鎌錠は施錠されており、被害者は、夜間、右側引き戸の戸先鎌錠を内側から施錠して玄関の戸締りをしていた(E証言、F証 が上がり、受座に入ることによって施錠される仕組みであるところ、外から見て左側の戸先鎌錠は施錠されており、被害者は、夜間、右側引き戸の戸先鎌錠を内側から施錠して玄関の戸締りをしていた(E証言、F証言、甲192、219)。他方で、Dが被害者の遺体を発見した際の右側引き戸の戸先鎌錠は、フック状の部分が中途半端に上がり、受座に掛からずに解錠した状態だった(D証言)。 被害者方の玄関は建付けが悪いため、右側引き戸の戸先鎌錠を内側から施錠 しようとすると、通常の力の入れ方ではスライド部分が一番下まで下がりきらず、フック状の部分の上がり方が中途半端になって、完全に上がらないものの一応受座に掛かった状態となり、中央の召し合せ錠が施錠できなくなる。このような状態である場合には、引き戸を揺すって戸先鎌錠を外して解錠する方法(以下、この方法を「揺すり外し」という。)により右側引き戸の戸先鎌錠を解錠することが可能であり、解錠した後は、フック状の部分が中途半端に上がったまま受座に掛からない状態となる(G証言、甲210、211)。 イ検討被害者が殺害された時間帯は、被害者が通常肌着等を着用している夜間から早朝の時間帯であったと考えられるところ、被害者は、この時間帯は右側引き戸の戸先鎌錠を施錠していたものの、フック状の部分が中途半端に上がって受座に掛かって施錠された状態にとどまっていたから、本件犯人が右側引き戸を外側から揺すり外しにより解錠することが可能であり、現に、遺体発見時の戸先鎌錠の状態は、揺すり外しにより解錠した後の状態と同様の状態となっていた。 以上によれば、本件犯人は、揺すり外しにより右側引き戸を解錠したと認定できる。 ⑶ 以上の検討を踏まえれば、本件犯人は、揺すり外しにより被害者方玄関の右側引き戸を解錠し、玄関から被害者方に侵 以上によれば、本件犯人は、揺すり外しにより右側引き戸を解錠したと認定できる。 ⑶ 以上の検討を踏まえれば、本件犯人は、揺すり外しにより被害者方玄関の右側引き戸を解錠し、玄関から被害者方に侵入したと認定できる。 2 殺害の犯行状況被害者の遺体には、いずれも片刃器により形成されたと考えられる右鎖骨上部刺創、左側頸部刺創、3か所の左側頸部切創、左前腹部刺創及び防御創と思しき両手の切創等が認められた(H証言、甲193)。また、被害者の遺体が発見された居間兼寝室のベッド上には大きな血だまりがあり、居間兼寝室内のベッド付近の畳上などにも血痕が多数存在していた(甲192)。 以上によれば、本件犯人は、居間兼寝室のベッド付近で、被害者に接近し、抵抗する被害者の首付近や腹部を刃物で複数回突き刺したと認定できる。 3 犯行後の行動⑴ 関係証拠(甲192)によれば、被害者方1階の台所の床2か所、流し台のシンク西側側面数か所、水栓レバーハンドル1か所に被害者の血痕が付着していたほか、台所の床6か所にも血痕が付着していたこと、流し台のシンク、円形の排水口のほぼ全面及び排水口に設置されたバスケットの広範囲にルミノール反応が見られたことが認められる。 本件犯行により、被害者は大量の出血をしたものと認められ、本件犯人の身体、着衣及び使用した刃物にも被害者の血液が付着した可能性が高いところ、前記のとおり台所に残った血痕等は、本件犯人が付着した血液を洗い流すために流し台を使用した際に付着したものと考えるのが合理的である。 なお、弁護人は、前記の血痕等は、被害者が鼻血をシンクで洗い流したことや、料理の際に指を切るなどしたことにより付着した可能性を指摘する。しかし、鼻血や料理の際の負傷であれば、被害者が床に滴下した自らの血液を放置することは考 痕等は、被害者が鼻血をシンクで洗い流したことや、料理の際に指を切るなどしたことにより付着した可能性を指摘する。しかし、鼻血や料理の際の負傷であれば、被害者が床に滴下した自らの血液を放置することは考え難く、これを拭き取るのが自然である。また、流し台の排水口等に見られたルミノール反応は広範囲にわたっており、日常生活において生じた出血によるものとすれば不自然である。弁護人の指摘する可能性は考え難い。 ⑵ 以上の検討を踏まえれば、本件犯人は、犯行後、台所の流し台で被害者の血液を洗い流したと認定できる。 第3 検察官が主張する被告人の行動について 1 侵入経路及び方法が一致しているとの主張について⑴ 関係各証拠(I証言、甲218)によれば、右側引き戸の左側側面の地面から高さ約122cmの位置から、指先が玄関の内側に向いた方向で付着した指紋が4つ採取されたことが認められる(以下「引き戸の各指紋」という。)。検察官は、引き戸の各指紋が被告人のものであることを前提に、被告人が、犯行日時に近接した時期に、被害者方の玄関を揺すり外しの方法で解錠し、被害者方に侵入したと主張するので、これを検討する。 ⑵ 指紋鑑定の信用性等ア引き戸の各指紋について指紋鑑定を行った指紋鑑定官Jは、各指紋は、上から順に被告人の左手小指、左手中指、左手環指、左手中指の各指紋にそれぞれ一致する、また、各指紋は、各指の上側(親指側)の部分が付着したものであったと結論付ける。 イ Jによる引き戸の各指紋に係る指紋鑑定(以下「J鑑定1」という。)は、指紋が万人不同、終生不変であることを前提に、指紋から特徴点(端点又は分岐点)を選出し、特徴点の位置関係、各特徴点間のリレーション(特徴点と特徴点の間に介在する隆線の数)等を比較して相互に一致する特徴点を12点指摘で 生不変であることを前提に、指紋から特徴点(端点又は分岐点)を選出し、特徴点の位置関係、各特徴点間のリレーション(特徴点と特徴点の間に介在する隆線の数)等を比較して相互に一致する特徴点を12点指摘できるか否かを判断して異同識別を行うという確立した手法を用いたものであり、合理的である。 弁護人は、引き戸の各指紋につき、その特徴点は薄くなっていたり別の指紋と重なっていたりするため通常人には判別不可能であることのほか、4つの指紋のうち一番上に付着していた指紋については、これと一致するとされた被告人の左手小指の指紋と比較すると、特徴点としわの位置関係が異なることを指摘している。 しかし、Jが指紋鑑定官として21年もの経験を有することに加え、J鑑定1においては、指紋鑑定における一般的な手順である他の鑑定官による確認が行われていることからすれば、同鑑定は、十分な経験を有する専門家による判断として尊重すべきものであり、その結果の信頼性も相当な方法で担保されているものといえる。 また、現場指紋と対照指紋で特徴点としわの位置関係が異なるという点についても、指のしわの表れ方は採取のタイミングや力の加わり方などにより変わり得るものである旨のJの説明は合理的であり、弁護人の前記指摘はJ鑑定1の信用性を疑わせる事情とはいえない。 ウ以上によれば、J鑑定1は十分に信用でき、引き戸の各指紋は、上から順に被告人の左手小指、左手中指、左手環指、左手中指の指紋であり、各指紋は各指の上側(親指側)の部分の指紋であったと認められる。 エなお、J証人は、引き戸の各指紋は「割と濃い方」であるとし、そのことか ら「やや新しい指紋」であったといえる旨供述するが、他方で、指紋鑑定においては、付着した指紋の濃さなどから指紋の付着時期を具体的に特定することはできない旨供述し 方」であるとし、そのことか ら「やや新しい指紋」であったといえる旨供述するが、他方で、指紋鑑定においては、付着した指紋の濃さなどから指紋の付着時期を具体的に特定することはできない旨供述している。引き戸の各指紋の付着状況からは、その付着時期を判断することは困難というべきである。 検討前記⑵アないしウで認定した事実によれば、被告人が右側引き戸の左側側面の地面から高さ約122cmの部分を左手で少なくとも3回触れ、その際、その指には上向きの力が加わっていたことが認められる。加えて、関係各証拠(G証言、K証言)によれば、被告人が揺すり外しにより右側引き戸を解錠したとも考え得る。他方で、揺すり外しの方法で玄関引き戸を解錠した場合以外でこのように指紋が付着する可能性がないとはいえず、例えば、被告人が、本件犯人による犯行とは別の機会に被害者方への侵入を試みたような場合には、その下見又は下調べの際に玄関の施錠状況を確認するなどの目的で前記の態様で右側引き戸に触れたり、被害者方に侵入し又は立ち去る際に開閉等のため右側引き戸に触れたりすることが考えられ、その結果、被告人の指紋が前記の位置等で右側引き戸に付着した可能性も否定できない。 また、前記⑵エのとおり、引き戸の各指紋の付着状況からはその付着時期を判断することは困難であり、検察官が主張するようにこれが犯行日時に近接した時期に付着したものとはいえない。 以上の検討を踏まえれば、被告人が、いずれかの時期に被害者方玄関の右側引き戸の左側中央側面に複数回触れたことがあると認定できるにとどまり、それが犯行日時に近接した時期であるとはいえず、また、これによって被害者方の玄関を揺すり外しの方法で解錠したとまではいえない。 2 殺害の犯行状況と一致しているとの主張について検察官は、被告人は、 行日時に近接した時期であるとはいえず、また、これによって被害者方の玄関を揺すり外しの方法で解錠したとまではいえない。 2 殺害の犯行状況と一致しているとの主張について検察官は、被告人は、犯行日時に近接した時期に、居間兼寝室のベッド付近で被害者に接近し、被害者が着ている肌着に触れるなどしたと主張するので、これを検 討する。 ⑴ DNA型鑑定等の信用性と評価本件では、①被害者方の居間兼寝室のベッドに倒れていた被害者の遺体の下に敷かれたタオルケット(以下「本件タオルケット」という。)に付着していた毛髪(採取番号すと付され、その毛根部分に細胞片が付着したもの。以下「本件毛髪」という。)、②居間兼寝室のテーブル(以下「本件テーブル」という。)の天板部分のベッド側の側面から採取された血痕(採取番号36と付されたもの。以下「本件血痕」という。)及び③遺体発見時に被害者が着ていた肌着(以下「本件肌着」という。)の右後背部から採取された付着物(採取番号ケと付されたもの。以下「本件付着物」という。)についてDNA型鑑定等が行われた(甲200)。検察官の前記主張は、これらのDNA型鑑定等の結果に基づくものであるから、その信用性等につき検討する。 ア本件毛髪について本件毛髪についてDNA型鑑定(STR型検査によるもの。以下同じ。)を行った科捜研技術職員であるLは、型判定の行われた24座位のうち19座位について被告人のDNA型と一致し、この19座位につき検出された型の組合せの出現頻度は日本人約271.5兆人に1人と計算されると結論付ける。Lによる本件毛髪のDNA型鑑定は、確立した手法を用いて行われたものと認められ、その信用性を疑わせる事情は見当たらない。 弁護人は、同鑑定につき、2回行われたDNA型の検出のうちの1回では、1つ Lによる本件毛髪のDNA型鑑定は、確立した手法を用いて行われたものと認められ、その信用性を疑わせる事情は見当たらない。 弁護人は、同鑑定につき、2回行われたDNA型の検出のうちの1回では、1つの座位(SE33型)において、そのエレクトロフェログラムに被告人のDNA型とは異なる型と対応する位置にピークが見られ、同ピークはスタター(DNA型鑑定におけるPCR増幅の過程で生成する、本来のDNA型よりも1反復配列分短い又は長いDNA型を示す副産物)によるピークとは考え難いことを指摘した上で、同鑑定に用いられた資料には本来2人のDNAが含まれていたものの、資料に含まれるDNAが少量であったことから多数のアレルドロップアウト(DNA型鑑定に おいて、鑑定資料から本来検出されるべき型が検出されない現象)が生じたため、このような結果が生じたと見るのが妥当であり、1人のDNAであることを前提とした計算は無意味である旨主張する。しかし、他の座位の型判定の結果やその基となったエレクトロフェログラムを見ても、他の全ての座位において2人のDNAが含まれることを示すピークはなく、そのような多数のアレルドロップアウトが生じた可能性はうかがえない。他方で、Lは、DNA型鑑定においては、スタターによるピーク以外にも本来の型とは異なる位置にピークが見られる現象が生じる場合があると説明しており、前記SE33型の座位で見られたピークもこのような現象によるものとして説明することが可能である。結局、弁護人の主張は前提を欠くものであり採用できない。 信用できる本件毛髪のDNA型鑑定の結果によれば、本件毛髪の19座位につき検出された型の組合せの出現頻度は日本人約271.5兆人に1人と認められ、これは世界の全人口よりはるかに大きい値であるから、本件毛髪は被告人の毛髪であ 型鑑定の結果によれば、本件毛髪の19座位につき検出された型の組合せの出現頻度は日本人約271.5兆人に1人と認められ、これは世界の全人口よりはるかに大きい値であるから、本件毛髪は被告人の毛髪であると認定できる。 イ本件血痕について関係各証拠(L証言、甲200)によれば、本件血痕のDNA型鑑定の結果として、本件血痕には2人以上のDNA型が混合していると考えられるところ、そのY-STR型は、型判定の行われた16座位全てにつき被告人のDNA型と一致したことなどが認められる。検察官は、これをもって被告人と被害者のDNAが含まれていても矛盾しない旨主張する。 Y-STR型は、男性のみが持つY染色体上のDNAの反復配列を検査するという性質上、直系の男性の先祖が共通であれば基本的に一致するものであるし、各DNA型の出現頻度なども証拠上明らかではない。 以上によれば、本件血痕のDNA型鑑定による人物の異同識別に関する証明力は限定的であって、検察官の前記主張はその証明力の評価において同旨であり、本件血痕には被告人のDNAが含まれていた可能性があるといえるにとどまる。 ウ本件付着物について関係各証拠(M証言、甲200)によれば、本件付着物についてDNA型鑑定を行った結果として、本件付着物には複数人のDNA型が混合しており、型判定の行われた24座位のうち、不詳と型判定された座位を除く22座位全てにおいて、被告人のDNA型と被害者のDNA型がいずれも含まれていたことが認められる。 一般社団法人N代表理事であるOは、本件付着物に含まれる混合DNA型に関する尤度比(ある仮説と別の仮説のどちらがどの程度もっともらしいかにつき、比を取って算出した値)の計算を行った結果、本件付着物に含まれる混合DNA型について、2人のDNA型が混合したも DNA型に関する尤度比(ある仮説と別の仮説のどちらがどの程度もっともらしいかにつき、比を取って算出した値)の計算を行った結果、本件付着物に含まれる混合DNA型について、2人のDNA型が混合したものであり、この混合DNA型が被告人ともう1人の人物のDNA型から成っているとの仮説は被告人以外の2人のDNA型から成っているとの仮説と比較して約5612億倍もっともらしい(前者の確率が後者の確率の約5612億倍である)旨結論付ける。 集団遺伝学、ゲノム進化学、分子進化学等の専門家であるO証人による尤度比の計算は、その過程等に明らかに不合理な点は見当たらず、その評価も世界各国において従前から安定的に運用されてきた方法により行われたものと認められるから、統計としての信頼性を保証するための検定がなされていないとの弁護人の指摘を踏まえても、十分信用できる。 また、弁護人は、本件付着物のDNA型鑑定につき、2回行われたDNA型の検出のうちの1回では、1つの座位(D8S1179型)において、被告人のDNA型(11、14型)と被害者のDNA型(10、14型)のいずれとも異なるDNA型(13型)が検出されているから、同付着物から検出された混合DNA型は3人以上の混合である可能性があり、そうするとO証人の尤度比計算はその前提が誤っていることになる旨主張する。しかし、検出された13型は、14型より1反復配列分短いDNA型である上、エレクトロフェログラムで認められるそのピークも14型のピークに比して相当低いことも考慮すると、スタターの可能性が高い。また、本件付着物のDNA型鑑定においては、2座位につき不詳と型判定されている ものの、これらを除く22座位において検出されたDNA型の個数はいずれも4個以下であり、不詳と型判定された2座位についても、エレク NA型鑑定においては、2座位につき不詳と型判定されている ものの、これらを除く22座位において検出されたDNA型の個数はいずれも4個以下であり、不詳と型判定された2座位についても、エレクトロフェログラムにおいてこれらの座位に対応する位置に5個以上のDNA型のピークは認められない(甲200・別紙3-1及び3-2)。O証人は、混合DNA型の関与人数を確定する過程において、多数の混合DNAの組合せから2人混合あるいは3人混合の各場合の最大アレル数(全座位におけるDNA型の個数の最大値)や最小アレル数(同最小値)を観察した研究論文に依拠しており、これによれば、混合DNA型が3人の混合である場合には最大アレル数が4となる確率は0.01%とされていることに照らすと(同証人の証人尋問調書3頁、同調書添付のプレゼン資料スライド17参照)、本件付着物に含まれる混合DNA型は2人の混合であることを前提としたO証人の尤度比計算に誤りがあるとはいえない。 以上によれば、O証人が結論付けるとおり、本件付着物の混合DNA型が被告人ともう1人の人物のDNA型から成っているとの仮説は被告人以外の2人のDNA型から成っているとの仮説と比較して約5612億倍もっともらしい(前者の確率が後者の確率の約5612億倍である)といえるから、本件付着物に被告人のDNA型が含まれていることを合理的な疑いを超えて認定することができる。 ⑵ 各資料への被告人のDNAの混入の可能性について弁護人は、本件毛髪、本件血痕及び本件付着物の各資料につき、捜査の過程で被告人のDNAが捜査官の過失により混入した可能性、又は捜査官が故意に被告人のDNAを混入させた可能性を主張するので、これらについて検討する。 ア過失による混入の可能性前記各資料が採取された証拠物(本件タオルケット、 過失により混入した可能性、又は捜査官が故意に被告人のDNAを混入させた可能性を主張するので、これらについて検討する。 ア過失による混入の可能性前記各資料が採取された証拠物(本件タオルケット、本件テーブル及び本件肌着)の押収、前記各資料の採取等の捜査の過程について見ると、これらの捜査に関与した警察官及び立会人の証言等によれば、警察官らは、証拠物や資料に外部から異物が混入することによる汚染を防止するために必要な装備、資器材等を使用して作業に当たっていたものと認められる。また、警察官が被告人と初めて接触したと認め られる6月28日の時点では、本件タオルケット、本件テーブル及び本件肌着は既に押収され、封印措置が施されていた。このような事実関係を踏まえると、被告人の毛髪、組織片等が捜査官を介して各資料に混入することは考えられず、捜査の過程で前記各資料に被告人のDNAが捜査官の過失により混入した可能性は想定し難い。 なお、弁護人は、本件肌着に被告人のDNAが付着し得る具体的場面として、被害者の遺体の検視の際や、遺体から脱がせた本件肌着を封印した際が考えられる旨指摘する。しかし、弁護人が指摘するような、納体袋の外側や検視を担当したP警察官の着衣等から本件肌着に被告人のDNAが付着する可能性は、遺体の搬出、運搬や検視に際して終始汚染防止シートが用いられていたことや、P警察官は被害者方において室内の物などに何度も触れるような鑑識作業等を主として行っていたわけではないことなどに照らし、想定し難い。また、本件肌着の封印の際には通常用いられるべき汚染防止シートではなくコピー用紙が挟み込まれているが、梱包された新品のコピー用紙に被告人のDNAが付着していたとはおよそ考えられず、コピー用紙を介しての混入の可能性も想定し難い。 イ故意による混 染防止シートではなくコピー用紙が挟み込まれているが、梱包された新品のコピー用紙に被告人のDNAが付着していたとはおよそ考えられず、コピー用紙を介しての混入の可能性も想定し難い。 イ故意による混入の可能性各資料に故意に被告人のDNAを混入する場合は、混入が発覚することを避けるため、被告人のDNA型が検出された場合の各証拠の関係性を矛盾なく説明できることが必要になると考えられるが、証拠関係が未だ流動的な捜査段階において、このような各証拠の関係性を総合的に把握し、見通しをつけた上で混入を行うことは、極めて困難と考えられる。また、前記のとおり、警察官が被告人と初めて接触したと認められるのは6月28日であるところ、その時点までには本件血痕の採取や本件肌着からの1回目の付着物の採取などが遂げられていたことなどの捜査の経過に照らしても、故意に被告人のDNAを混入させることは想定し難い。以上によれば、捜査官が故意に被告人のDNAを混入させた可能性は考え難い。 ⑶ 本件犯行とは別の機会に被告人が被告人由来の資料を残した可能性 前記⑴及び⑵で検討したところによると、混入によることなく、本件毛髪が本件タオルケットに付着したこと、本件血痕が本件テーブルに付着したこと、本件肌着に被告人のDNAが付着したことが認められるところ、検察官はこれらの事実から、被告人が本件犯行日時に近接した時期にベッド付近で被害者に接近し、本件肌着に触れた旨主張するので、以下、検討する。 ア本件犯行より前に資料を残した可能性関係各証拠(D証言、E証言)によれば、被害者は、日中、在宅中や近くのスーパーへの買い物等の長時間にわたらない外出の際には、玄関を施錠していないこともあったものと認められる。そして、関係証拠(甲197)から認められる当時の被告人方と被害 害者は、日中、在宅中や近くのスーパーへの買い物等の長時間にわたらない外出の際には、玄関を施錠していないこともあったものと認められる。そして、関係証拠(甲197)から認められる当時の被告人方と被害者方との距離(約104m)、被告人の立ち回り先と想定される範囲と被害者の日常の行動などに照らすと、被告人は、被害者方の施錠状況や被害者が留守にするタイミングなどを把握し得たものといえ、経済的な窮状から、本件犯行より前に、金品を手に入れる目的で無施錠の玄関から被害者方に立ち入ったというのは十分あり得る。 そして、被告人が金品目的で被害者方に立ち入ったとすれば、一見して主たる生活の場として使用されており、財産的価値のある物が多く存在すると考えられる居間兼寝室を中心に被害者方の内部を物色するなどした際に、被告人由来の毛髪、組織片等を残した可能性があるといえる(なお、平成20年以降、被害者から被害届が管轄の警察署に提出されたことはないものと認められるが(甲194)、被害者が立入りや物色の被害に気付かないことも考えられるから、被害届の提出がないことは前記のような立入り、物色の可能性を排除するものではない。)。 以上に加え、遺体発見時にはベッド上に財布なども置かれており、以前から同様の状況であったとみられることからすると、ベッド上に敷かれていた本件タオルケットから採取された本件毛髪も、本件犯行より前に被害者方に侵入した被告人が居間兼寝室内でベッドやその周辺を物色するなどした際に残されたものである可能性を否定することはできない。 本件テーブルから採取された本件血痕については、前記のとおり、それに被告人のDNAが含まれていた可能性があるという限度で証明力を有するにすぎないから、そもそも被告人由来の資料とは断定し難い。また、被告人のDNAが含 採取された本件血痕については、前記のとおり、それに被告人のDNAが含まれていた可能性があるという限度で証明力を有するにすぎないから、そもそも被告人由来の資料とは断定し難い。また、被告人のDNAが含まれていたとしても、本件犯行より前に被害者方に侵入した被告人が居間兼寝室を物色するなどした際に、汗等の体液や組織片等を本件テーブルに付着させていた可能性を否定することはできない。 本件付着物につき検討するに、関係各証拠によっても、人体由来の組織片等が衣類間や衣類とその他の場所との間で移転する可能性は否定されていない(却って、本件の捜査の過程においても、警察官は押収した証拠物を汚染防止シートで包んだり、本件肌着を畳む際に汚染防止シート等を挟んだりするなど、組織片等の移転の可能性を前提とする取扱いがなされていたものといえる。)。日常的な経験に照らしても、衣類の素材、組織片等の種類、形状等にもよるものの、組織片等が衣類間あるいは衣類とその他の場所との間で移転することがあり得ないこととはいい難い。また、本件付着物は本件肌着の右後背部から採取されたものであるが、被害者の遺体発見時にこの位置に付着していたとも限らない。すなわち、被害者の遺体は、本件肌着等を身に着けたまま納体袋に入れられて搬出・運搬され、その後に検視作業が実施されているから、これらの過程で、本件肌着のいずれかの部位に付着した被告人由来の組織片等が右後背部に移動した可能性が否定できないし、本件肌着については検視の後も押収手続や2回の微物採取に際しての開封・封入を繰り返しており、肌着の表裏を変えた際や、封入に際して畳まれた際などにその内部で被告人由来の組織片が移動した可能性も否定できない。 以上によれば、本件付着物については、必ずしも検察官が主張するように被告人が本件肌着に直接触れた えた際や、封入に際して畳まれた際などにその内部で被告人由来の組織片が移動した可能性も否定できない。 以上によれば、本件付着物については、必ずしも検察官が主張するように被告人が本件肌着に直接触れたことを示すものとは認められない。被告人が被害者方の内部を物色するなどした際にベッド等の家具やその他の場所に組織片等を付着させ、その後これに被害者の着用していた本件肌着(右後背部に限られない。)が触れるなどした際に移転したという可能性を否定することは困難である。 なお、弁護人は、被害者が外部から出入りできる被害者方倉庫内で洗濯物を干していたことから、被告人が同倉庫内に干されていた肌着に触れた可能性もある旨指摘する。しかし、被告人が金品目的で被害者方に侵入しようとしたとすれば、屋外に干されていた肌着に触れるというのはその目的に沿わず、そのような可能性は想定し難い。 以上によれば、本件毛髪及び本件付着物については、本件犯行より前に被害者方に立ち入った被告人が居間兼寝室を中心に被害者方を物色するなどした際に残されたものである可能性を排斥できず、本件血痕についても、仮に被告人のDNAが含まれていたとしても、本件犯行より前に被害者方に立ち入った被告人が残した体液や組織片等に由来するものである可能性を排斥できない。 イ本件犯行の後に資料を残した可能性関係各証拠(D証言、甲191)によれば、被害者の遺体発見時、被害者方の居間兼寝室の照明及びテレビはついた状態であり、テレビの音量は、少なくともDが玄関引き戸を開けて被害者方に立ち入った際には聞こえる程度であった。 したがって、本件犯行の後に被告人が被害者方に立ち入ったとすると、玄関引き戸を開けた際には、少なくともテレビの音は聞こえていたことになる(居間兼寝室の照明については、被告人が こえる程度であった。 したがって、本件犯行の後に被告人が被害者方に立ち入ったとすると、玄関引き戸を開けた際には、少なくともテレビの音は聞こえていたことになる(居間兼寝室の照明については、被告人が立ち入った後に室内の様子を確認するために点けてそのまま立ち去った可能性が否定できないものの、テレビをつけることは考え難い。)。 このような状況では、通常家人が在宅中であると判断して立ち去るのが自然であり、そのまま居間兼寝室等を物色することは想定し難い。また、仮に、テレビの音が聞こえているにもかかわらず立ち去らずに居間兼寝室に入ったとしても、ベッド上に倒れている被害者を発見し、安否確認のためにその体に触ったなどという弁護人の指摘は、金品目的で立ち入った者の行動としては不合理なものというべきである。 以上によれば、本件犯行の後に被告人が被害者方に立ち入った可能性は考え難い。 ⑷ 小括以上の検討によれば、被告人が本件犯行の後に被害者方に立ち入った可能性は否 定されるが、被告人が本件犯行より前に被害者方に立ち入り、その際に本件毛髪、本件血痕に含まれていた被告人のDNA及び本件付着物を残した可能性は排斥できない。また、被告人が被害者方に立ち入った時期については、本件付着物につき被告人が本件肌着に直接触れたことを示すものとは認められない以上、具体的に特定することは困難であり、少なくとも検察官が主張するように犯行日時に近接した時期と断定することはできない。 そうすると、検察官が主張するように、被告人が、犯行日時に近接した時期に、居間兼寝室のベッド付近で被害者に接近し、被害者が着ている肌着に触れるなどしたという事実を認定するには、合理的な疑いが残る。 3 犯行後の行動と一致しているとの主張について関係各証拠(Q証言、甲218)によれば、被 で被害者に接近し、被害者が着ている肌着に触れるなどしたという事実を認定するには、合理的な疑いが残る。 3 犯行後の行動と一致しているとの主張について関係各証拠(Q証言、甲218)によれば、被害者方1階の台所に設置された冷蔵庫の表面から指紋が採取されたことが認められ(以下「冷蔵庫の指紋」という。)、同指紋について指紋鑑定を行ったJは、同指紋は被告人の右手母指の指紋であると結論付ける。 Jによる冷蔵庫の指紋に係る指紋鑑定(以下「J鑑定2」という。)も、J鑑定1と同じ手法により行われたものであり、J鑑定1と同様の理由で信用できる。なお、弁護人は、冷蔵庫の指紋と被告人の右手母指の指紋では特徴点の位置関係が異なる点を指摘し、J鑑定2は信用できない旨主張する。しかし、指紋のある指先は柔らかく、力の入れ具合により特徴点同士の位置関係が変わるとするJの説明は合理的であり、弁護人の指摘によってもJ鑑定2の信用性は揺らがない。 したがって、前記冷蔵庫には、被告人の右手母指の指紋が付着していたと認定できる。 以上によれば、被告人は被害者方の台所に立ち入ったことがあり、その際に冷蔵庫に触れたものと認められる。しかし、指紋の付着状況からはその付着時期、すなわち被告人が台所に立ち入った時期を特定することができないことは、引き戸の各指紋について述べたのと同様である。 第4 被告人の検索履歴 1 関係各証拠(R証言、甲196)によれば、被告人が、本件犯行につき警察が報道発表するより前の6月16日午後10時19分から同月17日午前8時57分にかけて、「奄美事件」「奄美事故」などと時間を空けてインターネットで複数回検索していること、6月28日、別件強盗未遂被疑事件の証拠品として警察官にスニーカーを任意提出した後、「別の事件の証拠を見つける」 「奄美事件」「奄美事故」などと時間を空けてインターネットで複数回検索していること、6月28日、別件強盗未遂被疑事件の証拠品として警察官にスニーカーを任意提出した後、「別の事件の証拠を見つける」などと検索したことが認められる。検察官は、これらの事実につき、被告人が本件犯人であれば自然な行動であると主張する。 2 しかし、当時の被告人方は、被害者方から約104mの場所に所在していたのだから、被告人が、被害者方付近に警察車両が出動した状況を知り得る状況にあり、単にその事情を知りたいとの興味から「奄美事件」などと検索したということも十分に考えられる。また、被告人は、本件犯行に関して事情聴取を受けたにもかかわらず、別件強盗未遂被疑事件の証拠としてスニーカーを任意提出したのだから、そのことを受けて「別の事件の証拠品を見つける」などと検索したのも自然なことといえる。 3 したがって、被告人が前記のような検索を行ったという事実は、被告人が本件犯人でなくとも十分に考えられるものといえ、それ自体として被告人が本件犯人であることを推認させる力は乏しい。 第5 被告人の経済状況関係各証拠(S証言、T証言、甲195)によれば、当時、被告人は、経済的に困窮していたことが認められる。 しかし、そのこと自体は、被告人が金品を得ることを目的とした犯罪に及ぶ動機がないとはいえないことを示すものにとどまり、被告人が本件犯人であることを推認させるものではない。 第6 総合評価前記第2の検討によれば、本件犯人は、揺すり外しにより被害者方玄関の右側引 き戸を解錠して侵入し、居間兼寝室のベッド付近で肌着姿の被害者に接近し、抵抗する被害者の首付近や腹部を刃物で複数回突き刺し、犯行後、被害者方1階台所の流し台で被害者の血液を洗い流したと認められる。 戸を解錠して侵入し、居間兼寝室のベッド付近で肌着姿の被害者に接近し、抵抗する被害者の首付近や腹部を刃物で複数回突き刺し、犯行後、被害者方1階台所の流し台で被害者の血液を洗い流したと認められる。 これに対して、前記第3の検討によれば、被告人は、いずれかの時期に被害者方玄関の右側引き戸の左側中央側面に複数回触れたことがあり、また、現に被害者方に立ち入って、台所の冷蔵庫に触れたことがあると認められるが、犯行日時に近接した時期に、居間兼寝室のベッド付近で被害者に接近し、被害者が着ている肌着に触れるなどしたという事実を認定することはできず、本件犯行より前(その時期は具体的に特定できない。)に被害者方に立ち入って居間兼寝室を中心に被害者方の内部を物色するなどした際に本件毛髪、本件血痕に含まれていた被告人のDNA及び本件付着物を残した可能性も否定できない。 以上を前提とすると、証拠から認められる本件犯人の行動と被告人の行動は、検察官が主張するように被告人が犯人でなければ合理的に説明できないほどに重なり合っているものとはいえない。既に指摘しているとおり、経済的に困窮していた被告人が、本件犯行より前に、金品を得る目的で被害者方に侵入しようと考え、その下見又は下調べの際に、あるいは現に侵入し又は立ち去る際に、被害者方玄関の右側引き戸に複数回触れた可能性は否定できず、更に居間兼寝室を中心に被害者方の内部を物色するなどした際に、本件毛髪、本件血痕に含まれていた被告人のDNA及び本件付着物を残し、その機会に台所の冷蔵庫に触れた可能性も否定できない。 また、検察官が指摘する被告人の検索履歴及び経済状況は、いずれも被告人が本件犯人でなくても説明の付く事情といえる。結局、本件においては、証拠上認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明すること する被告人の検索履歴及び経済状況は、いずれも被告人が本件犯人でなくても説明の付く事情といえる。結局、本件においては、証拠上認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているということはできないというべきである。 第7 結論以上によれば、証拠上、被告人が本件犯人であるとの事実を認定するには、合理 的な疑いが残る。そうすると、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑訴法336条により、被告人に対して無罪の言渡しをする。 (求刑懲役20年)令和4年12月2日鹿児島地方裁判所刑事部 裁判長裁判官中田幹人 裁判官冨田環志 裁判官赤坂誠悟
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