主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,3790万3774円及びこれに対する平成21年12月9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,1895万1887円及びこれに対する平成21年12月9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,1895万1887円及びこれに対する平成21年12月9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,訴外Dの相続人である原告らが,被告に対し,Dが自転車に乗って坂道道路を下った際,その坂道道路を下りきった辺りの道路中央に設けられている鉄柱に衝突して死亡したとして,その道路の設置管理者である被告に対し,国家賠償法2条1項に基づいて,損害賠償を請求する事案である。 1 前提事実(争いがないか証拠により明らかである。)(1) 当事者等原告Aは,D(昭和35年7月24日生まれ)の妻であり,原告B(平成4年11月19日生まれ)は,Dの長女であり,原告C(平成6年12月19日生まれ)は,Dの長男である。 (2) Dの死亡Dは,平成21年12月9日,勤務先での仕事を終えて,忘年会に出席した後,自転車に乗って自宅へ向かい,午後10時55分ころ,福岡市a区bc丁目d-eにある幅員約1.76m,傾斜11.28%~11.39%の坂道道路(以下「本件坂道道路」という。)を自転車で下ったところ,坂道 を下りきって数m進んだ地点で転倒し(甲9,乙4),同月10日午後8時36分,急性硬膜下血腫により死亡した(甲1。以下,Dの上記転倒事故を「本件事故」という。)。 本件坂道道路の状 ,坂道 を下りきって数m進んだ地点で転倒し(甲9,乙4),同月10日午後8時36分,急性硬膜下血腫により死亡した(甲1。以下,Dの上記転倒事故を「本件事故」という。)。 本件坂道道路の状況は,別紙図面①のとおりであり,坂道を下りきった地点から15㎝の距離に高さ約0.7m,直径約0.12mの鉄柱(以下「本件鉄柱」という。)が立っており,本件鉄柱から本件坂道道路の側端までの距離は,0.83mないし0.81mである(乙4)。 2 争点(1) 被告の国家賠償法2条1項に基づく責任の有無(原告らの主張)ア本件鉄柱の形状は,直径約0.12m,高さ約0.7mの円柱型鉄柱であり,本件事故当時には蛍光塗料の塗布されたテープは巻き付けられておらず,本件坂道道路の上方から見ると,本件坂道道路先路上に敷かれているレンガの色に溶け込むような白色であった。 また,本件鉄柱は,幅員約1.74mの本件坂道道路の最下部(下側入口)の道路上中央に設置されており,本件坂道道路の最上部(上側入口)を含む他の部分については何も障害物が設置されていない。 本件坂道道路には街路灯等はなく,本件坂道道路の一側面を覆うような形で福岡都市高速道路が設置されていて,夜は一般の道路に比較して暗い状況にある。そのため,本件鉄柱は日中でも本件坂道道路の上方から視認し難く,夜になり暗くなるとさらに視認し難い。 以上のような本件鉄柱の設置場所,形状,色及び本件事故当時蛍光塗料の塗布されたテープが巻き付けられていなかったこと,本件坂道道路の明るさ等の状況に照らすと,Dのように本件坂道道路を初めて自転車で下りていく者にとって,本件鉄柱を早期に発見するのが困難なことは十分に予想されるのであって,とりわけ夜間に通行する者が本件鉄柱を発見するの が遅れて,衝突するおそれ 件坂道道路を初めて自転車で下りていく者にとって,本件鉄柱を早期に発見するのが困難なことは十分に予想されるのであって,とりわけ夜間に通行する者が本件鉄柱を発見するの が遅れて,衝突するおそれがある。 そして,本件事故後,本件鉄柱には直ぐに反射テープが巻き付けられ,夜間の衝突事故発生防止のための措置が講じられていること,車両の進入を防ぐ目的で設置された福岡市内の車止めについて,反射テープが巻き付けられるなどして通行者の注意を喚起する措置がされている事例もあることなどに照らせば,被告としては,本件事故に先立ち,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき,危険な本件鉄柱を撤去する等の危険防止の措置又は本件鉄柱に反射テープを巻き付けるなどして本件鉄柱の存在を事前に知らせる標識を設けるなどの通行者の注意を喚起する措置を講ずるべきであった。 イまた,本件鉄柱は,福岡市が定めた車止め(ボラード)設置基準(乙5,6)に照らし,①周辺環境との調和に配慮しつつ,歩道舗装等背景と区別がつきやすい色とし,夜間の視認性について,道路照明等との距離に配慮し,反射板や反射テープ等の設置により,反射性を持たせるものとする基準,②設置幅を1.0m(内のり)以上を確保するものとする基準に適合していない。 ウしたがって,本件事故当時,被告の本件鉄柱ないし本件坂道道路の設置ないし管理には,それが通常有すべき安全性を欠いていた瑕疵があったというべきである。 エそして,本件鉄柱には,随所に多数の擦過痕が認められ,本件事故の目撃者も実況見分が行われた際にDないしその自転車が本件鉄柱に衝突したと指示説明しているのであるから,Dないしその自転車が本件鉄柱に衝突したことは間違いない(自転車の破損状況等からすれば,ペダルを漕ぐDの右足と本件鉄柱が衝突ないし接触した可能性が最も高 柱に衝突したと指示説明しているのであるから,Dないしその自転車が本件鉄柱に衝突したことは間違いない(自転車の破損状況等からすれば,ペダルを漕ぐDの右足と本件鉄柱が衝突ないし接触した可能性が最も高いと思われる。)。 Dは,本件鉄柱ないし本件坂道道路の設置ないし管理に瑕疵があり,そのために,Dないしその自転車が本件鉄柱に衝突して転倒し,死亡に至ったものであるから,Dに生じた損害につき,被告は国家賠償法2条1項に 基づいてこれを賠償すべき責任を負う。 (被告の主張)ア国家賠償法2条1項について道路の設置又は管理の瑕疵の有無は,諸般の事情を総合考慮して個別具体的に判断すべきものであり,また,常に道路を完全無欠の状態にしておかなければ管理に瑕疵があるというものではなく,その整備すべき程度は,当該道路の位置,環境,交通状況等に応じ,一般の通行に支障を及ぼさない程度で足りるものであって,通行者の方で通常の注意をすれば容易に危険の発生を回避し得る程度の軽微な欠陥は,国家賠償法2条1項にいう道路の管理の瑕疵に該当せず,さらに,通行者が通常の通行方法ではない方法で通行した結果生じた事故については,道路管理者に責任はないというべきである。 イ本件鉄柱設置の経緯及び事故発生について本件鉄柱は,地元住民により,万一本件坂道道路を自転車走行(乗車)のまま下ったりすると,本件坂道道路下側入口から続く歩道の歩行者に衝突等の事故が発生するおそれがあるので,これを防止するために設置するよう要望されて,設置されたものである。 そして,本件鉄柱の設置後,本件事故発生まで,本件のような事故は一件も発生していない。 ウ本件鉄柱の回避は容易であることについて本件坂道道路は,急な坂道であって,その傾斜状態は一見して自転車走行(乗車)ができない 後,本件事故発生まで,本件のような事故は一件も発生していない。 ウ本件鉄柱の回避は容易であることについて本件坂道道路は,急な坂道であって,その傾斜状態は一見して自転車走行(乗車)ができないほどの危険性があることは明らかであり,そのような走行は通常想定されていないものである。 また,本件鉄柱は,上記イの理由のために設置されたものであり,視認しやすいようガードレールにも用いられる反射色の白色塗料が塗られており,しかも,本件坂道道路下側入口は,本件事故が発生した時間帯である 夜間でも付近街路灯により十分に明るく,少なくとも本件坂道道路の中段付近の平坦部から下側入口を見れば,夜間においても本件鉄柱を十分に視認することができる。 したがって,本件坂道道路は,一般かつ通常の通行に何ら支障を及ぼすものではなく,本件鉄柱は通行者の方で通常の注意をすれば容易に回避することができたものである。 エ本件事故の状況は,以下のとおりである。 (ア) Dは,本件坂道道路の自転車走行(乗車)が禁止されているにもかかわらず,本件坂道道路を自転車で時速約27㎞以上のスピードで下った。 (イ) Dは,本件鉄柱の左側を,本件鉄柱に接触することなく通過した。 (ウ) Dは,本件鉄柱を通過した辺りで,前方の車道に対する歩行者防護フェンス(白いガードパイプ)の存在に気付き,これとの衝突を避けるため,まずは後輪急ブレーキのみを掛け,減速して左方に曲がろうと考えた。 (エ) しかし,Dは,時速約27㎞以上のスピードを出していたため,後輪急ブレーキだけでは減速することができず,前方の車道に対する歩行者防護フェンス(白いガードパイプ)に衝突しそうになったため,前輪急ブレーキをも掛けた。 (オ) Dは,時速約27㎞以上のスピードを出していたにもかかわらず,急に ができず,前方の車道に対する歩行者防護フェンス(白いガードパイプ)に衝突しそうになったため,前輪急ブレーキをも掛けた。 (オ) Dは,時速約27㎞以上のスピードを出していたにもかかわらず,急に前後輪ブレーキを掛け左方に曲がろうとしたために進行方向への慣性力に逆らう形になりバランスを崩してしまったことが原因で転倒し,その結果,頭部を打って死亡した。 上記のような本件事故の状況からすれば,Dは本件鉄柱に衝突ないし接触して転倒したものではなく,自らの無謀かつ危険極まりない自転車の乗車走行と操作にその原因があることは明らかであって,本件事故の発生は本件鉄柱ないし本件坂道道路の設置ないし管理とは何ら関係がない。 オ以上のとおり,本件鉄柱ないし本件坂道道路の設置ないし管理に瑕疵はなかったものであり,また,本件事故の発生は本件鉄柱ないし本件坂道道路の設置ないし管理とは何ら関係のないものである。 (2) 損害額(原告らの主張)ア逸失利益Dは,本件事故当時49歳であり,年収463万8000円を得て,一家の支柱として原告らを扶養していたから,逸失利益は,就労可能年数を18年,新ホフマン係数を12.6032,生活費控除率を30%として算出した4091万7549円となる。 イ慰謝料Dは,一家の支柱であった者であり,その死亡による慰謝料は2800万円が相当である。 ウ弁護士費用上記の逸失利益及び慰謝料の合計額は6891万7549円となり,訴訟追行の弁護士費用はその1割の689万円が相当である。 エ相続上記ア~ウの合計は7580万7549円となるところ,原告Aはその2分の1である3790万3774円を,原告B及び原告Cは4分の1である1895万1887円を,それぞれ相続した。 (被告の主張)原告らの 計は7580万7549円となるところ,原告Aはその2分の1である3790万3774円を,原告B及び原告Cは4分の1である1895万1887円を,それぞれ相続した。 (被告の主張)原告らの主張は不知ないし争う。被告が負うべき損害額は一切ない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 国家賠償法2条1項の解釈国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有 すべき安全性を欠いていることをいい,この安全性を欠いているか否かについては,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断されるべきものであるが,その利用者が通常の用法に従った行動を取ることを前提としてその安全性の有無を判断すべきであり,通常の用法に即しない行動を取った場合でもなお安全性が確保されていなければならないものと解すべきではない。 (2) 本件坂道道路及び本件鉄柱,本件事故現場の状況についてア本件坂道道路の状況について本件坂道道路は,別紙図面②のとおり,松島方面から箱崎ふ頭に向かう高架式の車道の左端に設置されている歩道が,高架式の下部地面まで坂道で下るように設置されたものであり(本件坂道道路の最上部につき甲8の3の写真№005,甲9の写真①,②参照),別紙図面①のとおり,2段階の坂道となっており(中ほどに2.98mの平坦部がある。),上部の坂道の傾斜が11.28%,下部の坂道の傾斜が11.39%であり,道路の幅は1.76mである。 イ本件鉄柱の状況について本件鉄柱は,直径約0.12m,高さ約0.7mの円柱型鉄柱であり,白色の塗料で塗られており,本件事故当時,その円柱の上端の周囲には幅2.5㎝の反射テープ(黄色)が張られ,また,本件坂道道路に向けた面には,幅2. 径約0.12m,高さ約0.7mの円柱型鉄柱であり,白色の塗料で塗られており,本件事故当時,その円柱の上端の周囲には幅2.5㎝の反射テープ(黄色)が張られ,また,本件坂道道路に向けた面には,幅2.5㎝高さ13㎝の反射テープ(黄色)が張られていたが,その半分程度が剥がれ,あるいは剥がれかけた状態となっていた(乙7)。 本件鉄柱から本件坂道道路の側端までの距離は,0.83mないし0. 81mである(乙4)。 なお,本件鉄柱は,地元住民により,万一本件坂道道路を自転車走行(乗車)のまま下ったりすると,本件坂道道路下側入口から続く歩道の歩行者に衝突等の事故が発生するおそれがあるので,これを防止するために設置 するよう要望されて,設置されたものである(弁論の全趣旨)。 ウ本件事故現場の状況について事故現場は,別紙図面①,②のとおり,本件坂道道路を下りきった地点から15㎝の距離に本件鉄柱が立っており,そこから西方10.6mの付近に車道とを隔てるガードパイプが設置されている。 本件坂道道路の北側は高架道路の側壁となっており,上記ガードパイプの西方約5mの地点に街路灯があり,また,本件鉄柱の南方にも街路灯が設置されているが,本件鉄柱より東側には街路灯はない。 (3) 以上の事実関係を基に,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき設置ないし管理の瑕疵が存するか否かを検討する。 ア本件坂道道路は,上記のとおり高架式の歩道から続いている勾配のある歩道であって,自転車通行可の交通規制はされていない(乙8)。もっとも,普通自転車は,車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるときは,歩道を通行することができるところ(道路交通法63条の4第1項3号),証拠(甲8の3の写 当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるときは,歩道を通行することができるところ(道路交通法63条の4第1項3号),証拠(甲8の3の写真№005,甲9の写真①,②)によれば,高架式の車道は,片側2車線の道路であって自動車の交通量が多い場合には,自転車が同車道を走行することはかえって危険を伴うような状況にあるものと認められるから,自転車が高架式の歩道及び本件坂道道路を通行すること自体は,自転車の通行の安全を確保するためにやむを得ないものと認められる。しかしながら,自転車が歩道を走行する際には,徐行しなければならず,その進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは,一時停止しなければならないし,普通自転車通行指定部分が設けられており同部分を走行する場合であっても,歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行しなければならない(同法63条の4第2項)。なお,「徐行」とは,車両等が直ちに停止することができるような速度で進行す ることをいう(同法2条1項20号)。 そうすると,仮に本件坂道道路を自転車に乗って走行することが許されるとしても,歩行者の通行を妨げることのないように徐行しなければならないし,歩行者がいないことが明らかであって自転車で常に徐行することが現実的ではないような場合であっても,少なくとも歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行しなければならないことはいうまでもない。そして,本件坂道道路は,急傾斜の坂道であるから,仮に自転車に乗ったまま下りることが許されるとしても,十分にブレーキをかけて安全な速度と方法で進行しなければならないし,仮にブレーキをかけても安全な速度にならない場合には自転車から降りて徒歩で下りるべきことになる。 イ本件鉄柱ないし本件坂道道路につき設 ブレーキをかけて安全な速度と方法で進行しなければならないし,仮にブレーキをかけても安全な速度にならない場合には自転車から降りて徒歩で下りるべきことになる。 イ本件鉄柱ないし本件坂道道路につき設置ないし管理の瑕疵が存するか否かを検討するに当たっては,その利用者が自転車で通行する場合であっても,上記アのような通行方法を取ることを前提としてその安全性の有無を判断すべきである。 そして,上記のとおり,本件鉄柱より東側(上方側)には街路灯がないから,夜間に本件坂道道路の上方から下方を見た場合には,その距離によっては本件鉄柱を視認しにくい状況にあるが,本件鉄柱の夜間における視認状況を確認した写真(乙3)によれば,その写真が肉眼で見た場合よりもより鮮明に写る条件で撮影されている可能性があることを考慮しても,少なくとも15m手前では本件鉄柱の存在を確認することができるものと認められる。 本件鉄柱から本件坂道道路の側端までの距離は,0.83mないし0. 81mであるから(Dの自転車の幅は55㎝。甲9),上記アのような通行方法を取ることを前提とした場合,15m手前で本件鉄柱を発見して,本件鉄柱の右側ないし左側を安全に通り抜けることは,十分可能であるものと認められる。 したがって,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき設置ないし管理の瑕疵が存するとは認められない。 ウなお,原告らは,本件鉄柱が車止め(ボラード)設置基準(乙5,6)を満たしていないと主張するが,同基準は,車止め(ボラード)を設置する際の技術的な基準(平成12年12月1日より適用)を定めたものであり,本件鉄柱は上記設置基準が適用される前に設置されたものである上(弁論の全趣旨),上記アのような通行方法を取ることを前提とした場合に,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき安全性を欠くとは めたものであり,本件鉄柱は上記設置基準が適用される前に設置されたものである上(弁論の全趣旨),上記アのような通行方法を取ることを前提とした場合に,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき安全性を欠くとは認められないから,車止め(ボラード)設置基準に関する原告らの主張を考慮しても,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき設置ないし管理の瑕疵が存するとは認められない。 (4) さらに,本件鉄柱の存在と本件事故との因果関係について検討する。 ア本件事故の態様について,以下の事実が認められる。 (ア) 実況見分調書(甲9)によれば,本件鉄柱付近からDの転倒位置までスリップ痕が残されており,その長さは概ね5m程度であると認められるから,Dは,本件事故当時,自転車に乗ってかなりのスピードで下っていたものと認められる。 また,歩道は,降雨により所々湿潤の状態であったとのことであるから(甲9),本件事故当時は,雨が降っていたか,あるいはそれ以前の雨により,少なくとも路面が湿潤の状態にあったものと認められる。 (イ) しかも,そのスリップ痕を本件事故現場で再現した再現写真(乙10)によれば,Dは,本件鉄柱の左側を通り抜けており,本件鉄柱の位置で進行方向が大きく変わってはいないから,仮に,実況見分調書(甲9)で目撃者が本件鉄柱に衝突したと指示説明するように,Dが本件鉄柱に当たったとしても,その衝撃はそれほど大きなものではなかったものと認められる(Dの自転車を見ても,本件鉄柱に衝突したことを示す明確 な損傷部位は見当たらない。甲9,10)。 (ウ) Dは,スリップ痕の終端付近で,右側に横倒しになった自転車の付近で倒れていたものであるから(甲9),本件鉄柱の左側を通り抜けた後に,急ブレーキをかけて速度を落とした後に,バランスを崩して横倒しになって転倒し ップ痕の終端付近で,右側に横倒しになった自転車の付近で倒れていたものであるから(甲9),本件鉄柱の左側を通り抜けた後に,急ブレーキをかけて速度を落とした後に,バランスを崩して横倒しになって転倒し,路面に頭部を打ち付けたものと認められる。 (エ) なお,Dは,本件事故当日は,忘年会の帰りであり,調査報告書(甲11)によれば,日本酒1合くらいを飲んだとのことであるが,その忘年会の際の飲酒により,運動能力,注意力,判断力等が一定程度低下していた可能性も否定できない。 イ本件事故の以上の状況からすれば,Dが上記(3)アのような安全な速度と方法で進行していたとは認め難いし,また,Dは,本件鉄柱の存在自体は認識してその側方を通り抜けており,しかも,その転倒状況もほぼ速度が落ちた状況で右側に横倒しになったというものであって,自転車の操作誤り等により通常起こり得る転倒態様である。 したがって,本件事故について,Dが上記(3)アのような安全な速度と方法で進行していなかったことが主たる要因であると認められるものの,本件鉄柱の存在がどのように起因したものかは必ずしも明らかではない。 (5) そうすると,本件鉄柱ないし本件坂道道路につき設置ないし管理の瑕疵が存するとは認めることはできず,また,本件鉄柱の存在と本件事故との因果関係が存すると認めることも困難である。 2 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部 裁判官前田郁勝 郁勝
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