平成13(ネ)2295 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年10月1日 東京高等裁判所
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判決文本文4,803 文字)

(原審・東京地方裁判所平成12年(ワ)第9849号損害賠償請求事件(原審言渡日平成13年3月26日)) 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,207万7680円及びこれに対する平成12年6月14日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 本件事案の概要 1 原判決の記載の引用控訴人の本訴請求の趣旨は上記第1の控訴の趣旨の2項のとおりであり,また、本件事案の概要,当事者間に争いのない事実等,当事者双方の主張及び争点は,次項以下に当事者双方の当審における主張を追加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の項の記載のとおりであるから,この記載を引用する。 すなわち,関東運輸局長は,運輸大臣から一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー業)の免許を受けてタクシー業を営んでいた控訴人に対し,道路運送法40条などに基づき,平成10年7月27日付けで,控訴人の乗務員であるAが平成9年12月12日に乗客であるBに対して法定の除外事由がないにもかかわらず運送の継続を拒絶したとして,タクシー1台を60日間使用停止にすることを命ずるなどの本件処分をした。本件は,Aに運送の継続を拒絶した事実がなく,また,仮に運送の継続を拒絶した事実があったとしても,それはBがAを威かくしたからされたのであって,法定の除外事由に該当するが,関東運輸局埼玉陸運支局の担当者らは,Bの執ような処分要求に畏怖し,これから逃れるため,あえて上記処分の上申を行った結果,違法な本件処分がされたものであるとして,国家賠償法1条1項に基づき,控訴人が,被控訴人に対し,本件処分により被ったとする損害の賠償 求に畏怖し,これから逃れるため,あえて上記処分の上申を行った結果,違法な本件処分がされたものであるとして,国家賠償法1条1項に基づき,控訴人が,被控訴人に対し,本件処分により被ったとする損害の賠償を求めている事件である。 これに対し,被控訴人は,Aは法定の除外事由がないにもかかわらずBに対し運送継続の拒絶をしたので,これを理由としてされた本件処分は適法であるとして,控訴人の請求を争っている。 2 控訴人の当審における追加主張Aは,乗客であるBを乗せて指示された場所に向けて本件タクシーを走行させたが,Bから威かくされて怖くなったため,途中で本件タクシーを停止させた。Bは,控訴人の無線室に電話をし,担当者に対し,「この運転手を締めてやる。」「責任者に連絡しろ。」などとすごい剣幕で怒鳴った。このやりとりを聞いていたAは,Bが酒に酔って凶暴性を有しており,これ以上運送を継続すると生命の危険にさらされる可能性があると考えた。したがって,Aが本件タクシーをBの乗車場所まで引き返させたのは,やむを得ないものであるから,この運送継続の拒絶には,法定の除外事由があったというべきである。 3 被控訴人の当審における追加主張関東運輸局長は,運輸大臣(現在は国土交通大臣)から道路運送法40条に基づく処分権限を委任されているので,乗客からの苦情申告などにより,タクシー運転手に同法13条に違反して運送継続を拒絶する事実が認められた場合には,事業用自動車の使用の停止若しくは事業の停止を命じ,又は免許を取り消すこととなる。関東運輸局管内では,平成10年度から平成12年度までの間に,39件の運送継続が拒否されたとの苦情申告がされ,そのうち運送継続を拒絶した事実が確認された11件のすべてについて事業用自動車の使用の停止の処分がされている。したがって,本件処分は,他の までの間に,39件の運送継続が拒否されたとの苦情申告がされ,そのうち運送継続を拒絶した事実が確認された11件のすべてについて事業用自動車の使用の停止の処分がされている。したがって,本件処分は,他の処分例との対比からしても適正なものである。 第3 当裁判所の判断 1 原判決の理由説示の引用当裁判所も,控訴人の本訴請求には理由がないものと判断する。 その理由は,次項に当裁判所の判断を補足するほかは,原判決が「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の項において説示するとおりであるから,この理由説示を引用する。 2 当裁判所の判断の補足(1) 前記引用に係る原判決の記載にある当事者間に争いのない事実等及び関係証拠(甲2ないし9,乙1ないし5,10ないし14)によれば,本件処分がされるに至った経緯について,次のとおりの事実が認められる。 ア Aは,平成9年12月12日,本件タクシーの運転業務に従事し,同日の午後11時ころ,JR東日本東北本線東大宮駅西口のタクシー乗り場(以下「本件タクシー乗り場」という。)において,乗客であるBを乗車させた。 イ Aは,Bの前に乗せた乗客の酒の匂いが車内に残っていたので,運転席側の窓を全開にしたまま,Bの指定する大宮市a町b丁目に向け本件タクシーを発進させた。Bは,上記の開いた窓から入る風に寒さを感じ,Aに対し,窓を閉めるよう求めたが,Aがこれに気付かない様子であったので,「おい,こら,閉めんかい。」と述べたが,Aが上記の窓を半分しか閉めなかったので,さらに,「おれの言うことが聞けないのか。」などと怒鳴った。すると,Aは,本件タクシーをJR東日本東北本線東大宮駅西口付近の道路脇(本件タクシー乗り場から約100m離れた場所)に停車させた上で,「お客さん,他のタクシーで行ってください。」と述べた。Bは 。すると,Aは,本件タクシーをJR東日本東北本線東大宮駅西口付近の道路脇(本件タクシー乗り場から約100m離れた場所)に停車させた上で,「お客さん,他のタクシーで行ってください。」と述べた。Bは,これに憤慨し,「名前はなんていうんだ。」,「本社に電話する。」などと述べて,控訴人の無線室に携帯電話をかけて担当者にさんざん苦情を述べた後,Aに対し,別のタクシーで行くからと述べて本件タクシー乗り場に戻るよう指示した。 ウ Aは,本件タクシーを本件タクシー乗り場に引き返させ,本件タクシーのドアを開扉した。ところが,Bは,降車しようとはせず,Aに対し文句を述べ始めた。Aは,この応対をしていたが,後続車が来たので,本件タクシーを移動させようと考え,本件タクシーの開扉中のドアを閉めて発進させたところ,外に出されていたBの左足がドアに挟まれて,内出血などの怪我を負わせることとなった。 エ Aは,Bに対し謝罪し,控訴人の大宮営業所長Cなどが,平成9年12月17日ころから平成10年2月16日ころにかけて,Bが求める休業損害,慰謝料などの支払について示談交渉を始めたが,控訴人が約20万円の金額を提示したのに対し,Bは,陸運支局に行政処分の申入れをするなどと述べて,執拗に120万円以上の支払を要求したので,結局示談交渉は不成立に終わった。このBの要求は,診断書に記載された傷害の程度に照らすと過大な金額の支払を求めるものであった。 オ Bは,上記示談交渉をするかたわら,平成10年1月28日,関東運輸局埼玉陸運支局に対し,匿名でタクシーの乗車中に運送継続を拒否され,それが原因で怪我をしたとの苦情申告をし,同年2月20日,同支局に赴いて上記と同様の苦情を述べ,さらに,同年3月から4月にかけて,再三同陸運支局に電話をして控訴人の処分を求めた。同陸運支局では,Bから が原因で怪我をしたとの苦情申告をし,同年2月20日,同支局に赴いて上記と同様の苦情を述べ,さらに,同年3月から4月にかけて,再三同陸運支局に電話をして控訴人の処分を求めた。同陸運支局では,Bからの事情聴取のほか控訴人の大宮営業所長C及びAからも事情を聴取し,Aの行為は法定の除外事由がないにもかかわらず運送継続を拒絶したことに当たるとして,関東運輸局長に対し,行政処分の上申をし,これを受けて,関東運輸局長は,平成10年7月27日付けで,控訴人に対し本件処分をした。 カ関東運輸局管内では,平成10年度から平成12年度までの間に,39件の運送継続拒絶の苦情申告がされ,そのうち運送の継続を拒絶した事実が確認された11件のすべてについて事業用自動車の使用の停止の処分がされた。 (2) 上記の事実関係に基づき,Aが法定の除外事由がないのに運送継続の拒絶をしたか否かを判断する。 タクシー乗務員であるAは,運送の途中であるにもかかわらず,本件タクシーを停止させた上で,乗客であるBに対し,「お客さん,他のタクシーで行ってください。」と述べたのであり,その結果,Bに本件タクシーによる運送を断念させ,本件タクシー乗り場まで引き返したのであるから,タクシー乗務員であるAが,乗客であるBに対して,上記運送の継続を拒絶したことは明らかである。 この点について,控訴人は,乗客であるBがタクシー乗務員であるAを威かくしたので,運送の継続を拒絶したことについて法定の除外事由が存すると主張する。 しかし,冬季の深夜に運転席側の窓を全開にしてタクシーを走行させることは,適切な接客行為とはいえないというべきであるから,乗客であるBが,再三窓を閉めるよう求めてもこれに応じないAに対し,「おい,こら,閉めんかい。」などと述べた上で,「おれの言うことが聞けないのか。」などと怒鳴 客行為とはいえないというべきであるから,乗客であるBが,再三窓を閉めるよう求めてもこれに応じないAに対し,「おい,こら,閉めんかい。」などと述べた上で,「おれの言うことが聞けないのか。」などと怒鳴って,強い口調で窓を閉めるよう求めたことは,理解できないことではなく,また,窓を閉めること以上の要求をしたことはうかがわれないのであるから,Aが窓を閉めるなどの適切な接客行為をすれば,上記の紛争も解決されたものと推認される。そうすると,乗客から上記のようなことを述べられただけで,運送の継続自体までも拒絶できるとするのは相当とはいえず,したがって,Bの上記言動が法定の除外事由となる威かく行為に該当するとまで認めることはできない。また,関東運輸局管内で平成10年度から平成12年度までの間に苦情申告がされたもののうち,運送の継続を拒絶した事実が確認されたもののすべてが,事業用自動車の使用の停止の処分がされていることからすれば,他の事例と比較しても,本件処分が不公正にされたものと認めることはできない。 なお,上記のとおり,Bが,控訴人との間の示談交渉において,不当に多額の金員を要求するばかりか,陸運支局に本件処分の申入れをするなどと述べ,また,関東運輸局埼玉陸運支局に対し再三にわたって本件処分をするよう求めたとの事実が認められるが,本件処分の理由及び内容からして,本件処分がこのようなBの執ような要求がなければされなかったものとは認められないのである。 (3) 以上によれば,本件処分には違法な点は認められないから,本件処分が違法であることを理由とする控訴人の本訴請求には,理由がない。 第4 結論よって,控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり,その取消しを求める控訴人の本件控訴には理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東 求には,理由がない。 第4 結論よって,控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり,その取消しを求める控訴人の本件控訴には理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官近藤崇晴裁判官宇田川基裁判官加藤正男

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