令和7(ネ)1098 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年8月26日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文22,088 文字)

- 1 - 主文 1 1審被告の本件控訴に基づき、原判決中1審被告の敗訴部分を取り消す。 2 上記部分につき1審原告の請求を棄却する。 3 1審原告の本件控訴を棄却する。 4 1審原告の当審における追加請求を棄却する。 5 訴訟費用は、第1、2審を通じて1審原告の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告⑴ 原判決を次の⑵、⑶のとおり変更する。 ⑵ 1審被告は、1審原告に対し、1100万円及びこれに対する令和5年8月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 ⑶ 1審被告は、1審被告のX(旧ツイッター)に投稿した原判決別紙投稿記事目録記載の投稿記事を1審被告のXから削除せよ。 ⑷ 1審被告は、別紙ブログ記事目録記載の各記事をインターネット上から削除せよ。 2 1審被告主文1、2項同旨第2 事案の概要(略語は、特に断りのない限り、原判決の例による。以下同じ。) 1 本件は、1審原告が、1審被告がインターネット上のニュースサイトに掲載した記事における記述(本件発言①及び本件発言②)、同人のテレビ番組における発言(本件発言③)、同人のシンポジウムにおける発言(本件発言④)及びインターネット上のソーシャルネットワーキングサービスであるXに1審被告が保有するアカウント上にされた投稿(本件発言⑤)により、1審原告の名誉が毀損されたと主張して、1審被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償金1100万円及びこれに対する令和5年8月1日(本件発言①ないし⑤のうち、最後の不法行為となる本- 2 -件発言⑤がされた日)から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求め、人格権に基づき、原判決別紙投稿記事目録記載の投稿記事(本件発言⑤)の削除を求める事案 後の不法行為となる本- 2 -件発言⑤がされた日)から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求め、人格権に基づき、原判決別紙投稿記事目録記載の投稿記事(本件発言⑤)の削除を求める事案である。 原審が、1審原告の請求を11万円及びこれに対する令和5年8月1日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を認める限度で認容し、その余を棄却したところ、1審原告及び1審被告が、それぞれの敗訴部分を不服として控訴した。1審原告は、当審において、訴えの追加的変更を行い、上記第1の1⑷のとおり、人格権に基づく別紙ブログ記事目録記載の各記事(本件発言①及び本件発言②)の削除請求を追加した。 2 前提事実、争点及び当事者の主張は、以下のとおり原判決の補正(当審における1審原告の主張も含む。)をし、後記3のとおり当審における追加請求に係る1審原告の主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁11行目の「その主張の一部を認める」を「その請求の一部を認容する」に改める。 ⑵ 原判決3頁24行目冒頭から4頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「 1審被告は、平成25年3月11日、別件訴訟の口頭弁論期日で実施された1審原告の本人尋問を傍聴し、同月13日、自身が主筆を務めるインターネット上のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」に、「“A裁判”原告が本人尋問で矛盾を露呈、裁判長も呆れ顔」との見出しのもと、その本文において、同月11日に東京地方裁判所で別件訴訟の口頭弁論期日があり、1審原告の本人尋問が行われたこと、傍聴券の抽選に多くの本件教団の信者が動員されていたこと、主尋問では内容に目新しいことはなく、反対尋問では1審原告の記憶の曖昧さや不正確さが露呈して、証言の信ぴょ 1審原告の本人尋問が行われたこと、傍聴券の抽選に多くの本件教団の信者が動員されていたこと、主尋問では内容に目新しいことはなく、反対尋問では1審原告の記憶の曖昧さや不正確さが露呈して、証言の信ぴょう性が低下した印象であり、主尋問・反対尋問を通して1審原告について「意図して嘘を吐いている部分も多々見受けられるが、本人や教団にとって都合の悪いことについては記憶を改変しているのでは」という印象を持ったこと- 3 -を指摘した後に、「“Aケース”は、脱会説得に応じず、逆に“氏族メシア”として家族を説き伏せるためにマンションに留まり、居直った末に果てにニート化してただの“引きこもり”となった男性信者が、役柄を“転換”し“拉致監禁に耐え切った英雄”として統一教会内でスターダムにのし上がったというだけの話だ。実際のところ、A氏は引っ込みが付かなくなっているのではないか。記憶の改変が起こる土壌は全て整っている。」(以下「本件発言①」という。)との記述がなされている記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。」⑶ 原判決7頁8行目末尾の次に改行して「 ウ 1審被告は、別訴高裁判決が確定しているにもかかわらず、また、原判決言渡し後の令和7年2月26日に、1審原告から、本件発言①のインターネット上のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」からの削除を求められたにもかかわらず、その削除をしていない。1審被告が現在も本件発言①を上記サイトに掲載していることが1審原告に対する不法行為を構成するのは明らかである。」を加える。 3 当審における追加請求に係る1審原告の主張本件発言①及び本件発言②は、いずれも1審原告の社会的評価を低下させるものである。 1審原告は、原判決言渡し後の令和7年2月26日、1審被告に対し、そのインターネット上からの削除を求めたものの、 本件発言①及び本件発言②は、いずれも1審原告の社会的評価を低下させるものである。 1審原告は、原判決言渡し後の令和7年2月26日、1審被告に対し、そのインターネット上からの削除を求めたものの、未だその削除がされていない。 よって、1審原告は、1審被告に対し、人格権に基づき、本件発言①及び本件発言②を1審被告が主筆を務めるインターネット上のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」 から削除することを求める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、1審原告の請求(当審における追加請求も含む。)をいずれも棄却すべきと判断するものであり、その理由は、以下のとおり原判決を補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第3に記載のとおりである(当審における1審原告の主張に対する判断も含む。)から、これを引用する。 - 4 -⑴ 原判決9頁11行目冒頭から12頁13行目末尾までを次のとおり改める。 「 証拠(甲13の1、2、甲14の1ないし3、甲20の1、2、甲23、33の1、2、甲48、63、乙11、12、14、17ないし23)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。なお、下記⑵オ及びカの事実については、証拠(乙12、17ないし20)及び弁論の全趣旨により認定した。 ⑴ 1審原告の本件教団への入信等1審原告は、昭和38年▲月▲日生まれの男性であるが、昭和61年8月頃、本件教団の教えを学ぶようになり、その後、本件教団に入会し、その信者になった。 1審原告は、昭和62年当時、本件教団の施設で生活をしながら、同年4月からは会社に入社し就労していた。 ⑵ 家族等による脱会の説得等ア 1審原告の父であるBは、昭和62年10月、1審原告を呼び出し、新宿のホテルの客室に連れて行き、その後、数日間にわたり、同室において、1審原告の兄であるCと 。 ⑵ 家族等による脱会の説得等ア 1審原告の父であるBは、昭和62年10月、1審原告を呼び出し、新宿のホテルの客室に連れて行き、その後、数日間にわたり、同室において、1審原告の兄であるCと共に、1審原告に対し、本件教団から脱会するよう説得を試みた。その後、1審原告は、Bらと共に、a にあるマンションへと移動し、同所に約1か月間滞在したが、昭和62年11月下旬頃、本件教団からの脱会説得を手掛けている教会で行われていた日曜礼拝に参加している最中に、1審原告の母であるDにトイレに行く旨を告げてその場を離れ、そのまま、本件教団の施設へと戻った。 1審原告は、本件教団の施設へと戻った後、それまでの勤務先を退社し、本件教団の信徒組織において、専ら伝道活動や教育活動に従事するようになった。まもなく、家族とも連絡をとるようになり、平成5年頃には、西東京市のB宅を訪れて、同人と夕食を共にしたり、同人及び1審原告の妹であるEと旅行に出かけたりするようになった。 イ B、D、C、その妻であるF及びEは、Cの勤務先の代表者であるG及び本件教団からの脱会を手助けする活動を行っていた牧師のHらの協力を得て、1審原告に対し本件教団からの脱会の説得を行うことを計画し、Bは、平成7年9月11- 5 -日、同人宅で1審原告と食事した後、1審原告に対し、再度、同人が本件教団の信者であり続けることの是非について話し合いたいと告げ、D及びCが同乗するワゴン車に1審原告を乗せ、予め手配していた新潟市所在のマンション甲に連れて行った。 この頃当時、1審原告は、本件教団において、実践トレーニングの隊長と呼ばれる地位にあり、他の信者に対し、家族から信者であることについて反対を受けた際の対応の仕方などを指導しており、本件教団に反対する牧師から改宗の強制をされるような事態に 、実践トレーニングの隊長と呼ばれる地位にあり、他の信者に対し、家族から信者であることについて反対を受けた際の対応の仕方などを指導しており、本件教団に反対する牧師から改宗の強制をされるような事態になった場合は偽装脱会をして戻ってくるように指導していた者であったことから、この時も、Bらと真摯に話し合いを行う意思はなく、本件教団における教えに従い、Bらから求められるままに形式的には話し合いに応じて偽装脱会を行い、時期をみて、本件教団の施設に戻ることを企図していた。 1審原告は、平成7年9月12日から平成9年6月22日まで、マンション甲に滞在し、Bを中心とした家族との間で話し合いを行い、同マンションを訪れるHと面談を行うなどした。Hは、1審原告に対し、本件教団の教えについて検証を行うことを勧めるなどした。 1審原告は、平成7年12月頃、B、D、F及びEに対し、本件教団の教えが誤っていると考えるに至ったので本件教団を脱会する旨を告げ、本件教団宛ての脱会届を作成し、平成8年3月頃、Hの勧めに応じて、本件教団脱会に至る経緯に関する手記を作成した。 マンション甲では、当初、B、D、E及びFが1審原告と同居していたが、Fは平成8年1月にその実家に戻り、B及びDは同年3月にBの病気の治療のためにB宅に戻った。Eは、上記期間中常にマンション甲に滞在していた。 マンション甲は、電話機の設置がなく、室内の構造上、1審原告が、その居室から玄関に向かうためには、Bらが使用する部屋を通る必要があり、また、ベランダに面した部屋の窓は開かない状態となっていた。 その当時、1審原告の体格は、身長約182センチメートル、体重約70キログ- 6 -ラム前後であり、他方、Cの体格は、身長約173センチメートル、体重約63キログラム、Dの体格は、身長約148センチメートル 1審原告の体格は、身長約182センチメートル、体重約70キログ- 6 -ラム前後であり、他方、Cの体格は、身長約173センチメートル、体重約63キログラム、Dの体格は、身長約148センチメートル、体重約36キログラム、Eの体格は、身長約153センチメートル、体重約39キログラム、Fの体格は、身長約158センチメートル、体重約50キログラムであった。 ウ Bは、平成9年▲月▲日、死亡し、1審原告は、F及びEらとワゴン車に乗って、マンション甲を出発し、B宅を訪れ、Bの遺体と対面した。その後、Cは、1審原告に対し、新潟には戻らないと告げて、a 所在のマンション乙へと移動し、1審原告は、同日から同年12月まで、マンション乙に滞在した。 マンション乙では、C、F、E及びDも同居して生活しており、1審原告以外に誰かが必ず滞在している状態であった。室内の構造上、1審原告が、その居室から玄関に向かうためには、Cらが使用する部屋を通る必要があった。 エ 1審原告は、平成9年12月、Cから、場所を移動する旨を告げられ、車でa 所在のマンション丙に移動した。 1審原告は、平成9年12月から平成20年2月10日までマンション丙に滞在していたが、その間、D及びEが常に同居していた。その他にも、Cが平成13年1月から平成16年3月まで、Fが平成10年の春頃まで及び平成16年3月以降、マンション丙で生活していた。室内の構造上、1審原告が、その居室から玄関に向かうためには、Dらが使用する部屋を通る必要があった。Cは、ベランダに面した部屋の窓に鍵の付いた錠を設置し、開閉ができない状態にしていた。 1審原告は、マンション丙に移動してまもなく、C、E、F及びDに対し、自らの脱会が偽装脱会であったことを告白した。その後、マンション丙には、GやHも繰り返し訪れ、1審原告 できない状態にしていた。 1審原告は、マンション丙に移動してまもなく、C、E、F及びDに対し、自らの脱会が偽装脱会であったことを告白した。その後、マンション丙には、GやHも繰り返し訪れ、1審原告に対し本件教団からの脱会の説得を試みたが、1審原告はこれに応じることはなく、かえって監禁されているとして抗議した。Gは、平成10年9月を過ぎると、1審原告の元を訪れなくなった。 オ Cは、マンション丙入居当初、その玄関のドアの内側ドアチェーンの部分を南京錠で施錠しており、その南京錠を解錠しなければ上記ドアを開けることができ- 7 -ない状態としていたが、その南京錠は、平成10年4月頃、Cによって取り外された。また、平成12年末から翌年2月頃までの間は、マンション丙の玄関と居室とを隔てる場所に設置されていた木戸のドアノブが施錠可能なものへと取り替えられていた。 カ Fは、平成10年9月頃、1審原告と本件教団に関する話をしている際に、同人が話から逃げ、E及びDを見下した発言を繰り返した上、こんなところに閉じ込めやがってなどと発言したことに立腹し、1審原告を叩き、そんなこと言っていないで、そんなだったら出て行けばいいじゃないと言って、同人を玄関の方に引っ張ったが、同人は動こうとしなかった。 C、E及びFは、平成10年9月頃以降、1審原告に対し、マンション丙から出て行きたければ出ていくように繰り返し告げるようになった。Fは、平成16年の1審原告の断食が終わった頃、同人が自分は閉じ込められていると述べたことから、同人に対し、マンション丙から出ていくように告げ、Eと二人で1審原告を玄関の方に引っ張ったが、1審原告は、マンション丙から出て行こうとしなかった。 マンション丙において、1審原告がEと二人きりでいる状況やDと二人きりでいる状況となることは数 げ、Eと二人で1審原告を玄関の方に引っ張ったが、1審原告は、マンション丙から出て行こうとしなかった。 マンション丙において、1審原告がEと二人きりでいる状況やDと二人きりでいる状況となることは数多くあったが、そのような状況となった場合にも、1審原告が自室を出ようとすることはなかった。 1審原告は、平成20年2月以降、捜査機関に対し、本件教団の教えによれば、家族は手を差し伸べる対象であり、本件教団の元信者であったC、E及びFは教祖を裏切っており天罰を受けることになるという思いから、家族を救いたい気持ちがあった旨を述べた。 キ 1審原告は、平成13年2月頃の約1か月の間、Cがマンション丙に在宅している時に限って、時折、自ら使用していた部屋の中で暴れたり、玄関の方に向かって行ったりしたが、その際には、Cらによって取り押さえられた。 ク 1審原告は、平成16年、平成17年、平成18年に、合計3回の断食を行った。D及びEは、日常的に、1審原告の食事を用意していたが、1審原告が断食- 8 -を終えた際には、1審原告の食事を普通食に戻すまでの間に時間を置き、その間は、重湯やスポーツ飲料等を摂取させるようにしたり、粥の濃さを徐々に調整したりするなどして、1審原告の体調を気遣っていた。 ケ 1審原告がマンション丙に滞在中、設備点検等の作業のため、業者が室内に立ち入ることがあったが、1審原告がそれらの業者に対して助けを求めることはなく、また、マンション丙のトイレのドアの鍵が壊れ、助けを求められて駆け付けたCの知人がトイレのドアをこじ開けて、中にいたCを救出したことがあったが、その際にも、1審原告はマンション丙から退出を試みようとする素振りを見せなかった。 C、F、E及びDは、平成19年頃以降、1審原告に家族と向き合う姿勢がみられないとして、一度 したことがあったが、その際にも、1審原告はマンション丙から退出を試みようとする素振りを見せなかった。 C、F、E及びDは、平成19年頃以降、1審原告に家族と向き合う姿勢がみられないとして、一度無理にでも外に出すことを検討するようになり、平成20年2月10日、1審原告に対し、約3時間の時間をかけて、本件教団には問題となる点があり、そのことで自分達がいかに1審原告のことを心配しているかを繰り返し伝えるとともに、自分自身で本件教団のことを検証するように求めたが、1審原告はCらが望むような姿勢を見せなかった。C、F、E及びDは、同日午後4時頃、1審原告に対し、マンション丙から出ていくよう求め、これに抵抗する1審原告を4人で玄関まで連れて行き、力尽くで1審原告をマンション丙の外に押し出した。 コ 1審原告は、Cらによってマンション丙の外に押し出された後、渋谷にある本件教団の本部教会に向かい、その日の夜に同所に到着した。 1審原告は、その翌日、病院を受診し、医師から全身筋力低下、栄養失調等の診断を受け、同日から同年3月31日まで、その病院において入院治療を受けた。 ⑶ 平成20年2月以降の1審原告の本件教団における活動(甲20の1、2、甲33の1、2)平成22年1月8日、本件教団信者による任意団体である「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」が発足し、1審原告は、その代表に就任した。 1審原告は、平成20年から平成25年までの間に、日本各地で拉致監禁・強制- 9 -改宗に抗議するための集会、デモ行進、街頭遊説活動を行った。平成22年8月には、「統一教会と信仰の自由」をテーマとして、日本外国特派員協会において記者会見を行った。平成21年以降、海外で行われるカンファレンスに出席し、拉致監禁・強制棄教の被害を訴えるなどの活動を行っている。 ⑷ 一教会と信仰の自由」をテーマとして、日本外国特派員協会において記者会見を行った。平成21年以降、海外で行われるカンファレンスに出席し、拉致監禁・強制棄教の被害を訴えるなどの活動を行っている。 ⑷ 刑事事件としての捜査及び検察審査会の議決(乙12)ア 1審原告は、平成20年、警視庁a 警察署の司法警察員に対し、D、C、F、E、G及びHを、それぞれ逮捕監禁致傷罪及び強要未遂罪により告訴した。 東京地方検察庁検察官検事は、平成21年12月9日、D、C、F、E、G及びHを被疑者とする「被疑者らは共謀の上、申立人(1審原告)を逮捕・監禁した上、強いて世界基督教統一神霊教会から脱会させようと企て、平成7年9月11日ころ、東京都西東京市内のB方において、申立人の両脇を抱えて身動きを封じて逮捕し、同所から屋外に連行してワゴン車に乗車させ、同月12日ころ、新潟県内のマンションの一室内に連行して同所から脱出を困難ならしめて平成9年12月末日ころまで監禁し、引き続き、そのころから平成20年2月10日ころまでの間、申立人を東京都杉並区内のマンション丙に監禁し、よって、申立人に全身筋力低下、栄養失調、貧血等の傷害を負わせるとともに、脅迫して棄教を強要したが、申立人が拒否したため、その目的を遂げなかった。」との上記告訴に係る被疑事実について、いずれの被疑者についても嫌疑不十分であるとして、公訴を提起しない処分をした。 1審原告は、上記各不起訴処分を不服として、検察審査会に対し、当該各不起訴処分の当否についての審査の申立てをしたが、東京第四検察審査会は、平成22年10月6日、上記各不起訴処分について、いずれも相当である旨の議決(本件議決)をした。 イ本件議決の議決書には、議決に際しての検討結果として、要旨、監禁の点について、①1審原告は手足を縛られていた 0月6日、上記各不起訴処分について、いずれも相当である旨の議決(本件議決)をした。 イ本件議決の議決書には、議決に際しての検討結果として、要旨、監禁の点について、①1審原告は手足を縛られていたわけではなく、行動は自由であったこと、3人の女性と比較して1審原告が体力的に圧倒的に勝っており、真実、脱出する意思があれば困難なことではないこと、女性らは食料品等の買い物等もあり、常時、- 10 -部屋にいるわけではないし、部屋にいても掃除、洗濯等もしなければならないことから、その隙を見て脱出することも困難とは思えない、②1審原告は、部屋に出入りしたエアコン取付業者、給湯管交換業者、配水管清掃業者、外壁工事等の多数の業者に対して助けを求めたり、その隙に脱出を試みたりしなかったのは、業者がCらと内通している可能性があると考えたというが、一度も行動していないことを考えると、真実そのように考えていたのか疑問である、③平成13年2月の行動を抗議行動というのであれば、何故この1か月間だけ行ったのか、どうしてCがいるときだけに行ったのか、より効率的な女性だけのときに行わなかったのか、皆が寝静まってから行わなかったのは何故かの疑問がある、等の指摘がされている。 ⑸ 別件訴訟の提起及び判決内容等(甲13の1、2、甲14)ア 1審原告は、平成23年1月31日、別件訴訟を提起した。別件訴訟は、1審原告が、C、F、E、G、H及び同人が牧師を務める教会がその傘下にある宗教法人を被告として、同人らが共謀して、1審原告を拉致、監禁し、同人に棄教を強要し、全身筋力低下等の傷害を負わせたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金2億0161万8527円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 イ東京地方裁判所は、平成26年1月28日、別件訴 を負わせたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金2億0161万8527円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 イ東京地方裁判所は、平成26年1月28日、別件訴訟の判決(別訴地裁判決)を言い渡した。その主文は、C、F及びE(以下「Cら三名」という。)に各483万9110円及び遅延損害金の支払を、Gに96万7822円及び遅延損害金の支払を各命じ、その余の1審原告の請求を棄却するものであった。別訴地裁判決は、Cら三名に対する請求に係る部分について、証拠及び弁論の全趣旨から概ね上記⑵と同じ事実(ただし、上記⑵オ及びカの事実を除く。)及びその他の事実を認定し、これらを基礎として、平成9年12月にマンション丙に移動した後まもなくして1審原告が偽装脱会の告白をするまでのCら三名の行為に違法性を認めることはできないが、同告白以降のCら三名の行為については、1審原告の「心身を不当に拘束したもの」として、不法行為を構成すると判示した。 - 11 -別訴地裁判決については、当事者双方が控訴した。 ウ東京高等裁判所は、平成26年11月13日、別件訴訟の控訴審判決(別訴高裁判決)を言い渡した。その主文は、Cら三名各自に2200万円及びこれに対する遅延損害金の支払を、Gに1100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を、Hに440万円及びこれに対する遅延損害金の支払を各命じ、その余の1審原告の請求を棄却するものへと、別訴地裁判決を変更するものであった。別訴高裁判決は、Cら三名に対する請求に係る部分について、別訴地裁判決の認定事実とほぼ同様の事実を基礎として、平成7年9月11日から平成20年2月10日までの間、Cら三名による1審原告に対する行動の自由の違法な制約が続き、不法行為が継続していたと判示した。 別訴高裁判決につ ほぼ同様の事実を基礎として、平成7年9月11日から平成20年2月10日までの間、Cら三名による1審原告に対する行動の自由の違法な制約が続き、不法行為が継続していたと判示した。 別訴高裁判決については、Cら三名、G及びHが上告及び上告受理申立てを行ったが、平成27年9月29日に最高裁判所による上告棄却及び上告不受理の決定がなされて、確定した。 ⑹ 1審被告によるインターネット記事の配信(乙11、23)1審被告は、平成22年7月から平成27年10月にかけて、インターネット上の「やや日刊カルト新聞」において、1審原告や別件訴訟に関する記事13本を配信した。1審被告は、別件訴訟の審理の全ての期日を傍聴し、上記⑷の検察審査会の議決に係る議決書を入手し、その他の取材をして、これらの記事を作成した。本件発言①が記述されている本件記事も、そのうちの1本である。これらの記事の中で、1審被告は、上記⑵の事実に関して1審原告がその家族から12年5か月にわたって監禁されたと主張している件を、「A事件」又は「Aケース」と呼んでいる。 ⑺ 「引きこもり」等の意味ア 「引きこもり」について、広辞苑第7版(甲23)は「自宅や自室に長期間とじこもり、他人や社会と接触しないで生活する状態」と定義しており、令和5年版厚生労働白書(乙14)は「様々な要因の結果として、就学や就労、交遊などの社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたっておおむね家庭内にとどまり- 12 -続けている状態を指す現象概念」と定義している。 イ 1審原告は、「氏族メシア」の意味について、「家庭連合の教理上の表現であり、一つの氏に属する家族の中で信者ではない家族に対し信仰を伝える(伝道する)ことにより、家族を救おうとする家庭連合の信者のことを指す。」としている。 本件教団が発行した 「家庭連合の教理上の表現であり、一つの氏に属する家族の中で信者ではない家族に対し信仰を伝える(伝道する)ことにより、家族を救おうとする家庭連合の信者のことを指す。」としている。 本件教団が発行した書籍である「祝福と氏族メシヤ」(平成2年初版)には、「皆さんは氏族を救うために、どんなに困難でも生涯迫害されても逃げてはいけません。 それを歓迎し続け、正面で受けます。正面から困難なサタンの行為を歓迎しなさい。 それが先生のとった道なのです。」との記載がある(甲48)。」⑵ 原判決14頁4行目冒頭から17頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「 ア社会的評価の低下認定事実⑺アによれば、「引きこもり」は評価的要素を多分に含む表現ではあるが、現在の社会においてその一般的な意味につきある程度の共通認識があるものと解され、それが状態を指す現象概念であることからすると、特定の人物が引きこもりであるとの表現は、証拠等によってその存否を決することが可能なものということができる。そして、引きこもりの概念が状態を指す現象概念であり、そのような状態に至る原因には様々なものが考えられるとしても、そのような状態の中核が社会的参加の回避であることを踏まえると、一般的に人は、引きこもりの状態にあると摘示された人物に対して社会性の乏しい人物又は精神面に多少の問題を抱えている人物であるとの消極的印象を抱くことが多いものと解されるから、特定の人物が引きこもりであるとの表現は、同人の社会的評価を低下させうるものといえる。以上を踏まえた上で、一般の読者が、本件記事における本件発言①の前後の記述をも読み、さらに、それまでに配信された1審被告による1審原告に関するその他のインターネット記事を読むなどして、別件訴訟の存在及びその概要についてある程度の知識を有する者であることを前提 前後の記述をも読み、さらに、それまでに配信された1審被告による1審原告に関するその他のインターネット記事を読むなどして、別件訴訟の存在及びその概要についてある程度の知識を有する者であることを前提とした上で(認定事実⑹等に照らせば、そのような前提を置いても不当とはいえない。)、その普通の注意と読み方を基準として、本件発言①の意味内容を解釈すると、本件発言①は、別件訴訟で争われている事実- 13 -に関して、1審原告が、その家族による本件教団からの脱会説得に応じず、逆に家族を説得するために家族とマンションで暮らしているうちに、ただの引きこもりとなったが、その後、拉致監禁に耐えきった英雄として本件教団内でスターの地位に就いたとの事実を摘示し、これに一定の意見ないし論評(なお、この論評部分については、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものであるとは認められない。)を加えたものと認められ、その事実の摘示のうち、1審原告がただの引きこもりとなったとの摘示部分は、これを読んだ者に1審原告が社会性の乏しい人物或いは精神面に問題を抱えている人物であるという印象を抱かせるものであり(なお、その他の部分については、1審原告がただの引きこもりとなったとの事実と併せて摘示されることにより、同事実により1審原告の社会的評価が低下する程度に影響を与えうるものであるが、それ自体単独で1審原告の社会的評価を低下させるような内容のものではない。したがって、真実性の抗弁等の証明の対象にもならない。)、同人の社会的評価を低下させるものと認められる。 なお、別件訴訟の審理における1審原告の具体的な主張内容が、1審原告がただの引きこもりとなったとの上記摘示部分と矛盾するものであり、かつ、そのことを読者が認識している場合であれば、確かに、当該読者は1審原告が 訴訟の審理における1審原告の具体的な主張内容が、1審原告がただの引きこもりとなったとの上記摘示部分と矛盾するものであり、かつ、そのことを読者が認識している場合であれば、確かに、当該読者は1審原告が理由のない訴訟を提起する人物或いは民事訴訟において事実と異なる主張をする人物であるとの印象をも抱くことになりうるものと解されるが、本件では上記のとおりある程度一般の読者の範囲を限定することができるとしても、一般の読者においては、別件訴訟で1審原告が主張している監禁被害の内容の詳細を把握しているものではないから、別件訴訟で1審原告が主張する監禁被害について本件記事が記載するところも、上記摘示部分に係る引きこもりも、いずれも時期、場所、態様等が具体的に特定されているものではないことと相まって、そのような二つを突き合わせてみても、これらが矛盾するという認識が一般の読者に生じることは考え難く、上記摘示部分について、1審原告が理由のない訴訟を提起する人物或いは民事訴訟において事実と異なる主張をする人物であるとの印象を一般の読者が抱くことになるものとはおよそ- 14 -考えられない。ましてや、1審原告が主張するように、同人について、ペテン師、偽善者、嘘つきなどという具体的な印象を抱くものとは認められない。この点、1審原告は、本件発言①について、1審原告が、①被害者を装うペテン師で、②本件教団の操り人形に成り下がり、良心に反して「記憶を改変」し、③12年超の「監禁に耐えきった英雄」を気取る偽善者で、④虚偽のプロパガンダを世間に訴える嘘つきである、と誹謗・中傷して、1審原告の社会的評価を低下させるものであると主張するが、上記の①ないし④は、結局のところ、関係する事実を直接体験又は認識している1審原告の立場から本件発言①を読んだ時に抱いた印象をいうものにす 、1審原告の社会的評価を低下させるものであると主張するが、上記の①ないし④は、結局のところ、関係する事実を直接体験又は認識している1審原告の立場から本件発言①を読んだ時に抱いた印象をいうものにすぎず、一般の読者の範囲を上記のとおりある程度限定して考えてみても、事実の特定性の乏しいわずか6行の本件発言①の表現から一般の読者がそのような印象を抱くものとはおよそ考えられないから、1審原告の上記主張は採用できない。 イ公共性及び公益目的性1審原告の社会的な立場及び活動状況は、前提事実⑴ア、認定事実⑶のとおりであること、別件訴訟は、本件教団の信者が自分の家族等に棄教を強要されながら監禁されたなどと主張して同人らに損害賠償金の支払を求めた事件であるところ(認定事実⑸)、その審理内容や審理経過は、社会における正当な関心事といえるものであること、本件記事配信当時は別件訴訟が東京地方裁判所において係属中であったところ、本件記事は、1審被告が別件訴訟の審理を傍聴し、その他の取材をして、その内容を記事にしたものであること(認定事実⑹)を踏まえると、本件発言①が記述されている本件記事の配信については、公共の利害に関する事実に係るものであり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあるものであったと認められる。 ウ真実性又は真実相当性認定事実⑵イないしケによれば、1審原告は、同人の本件教団からの脱会を意図した家族らによりそれまでの生活環境から離脱させられて、平成7年9月11日から平成20年2月10日までの約12年5か月の間、2回居所が替わり合計3つのマンションで生活していたが、その間、一人で外出することはなく、同居する家族- 15 -及び1審原告の居住するマンションを訪れる者以外の人との接触がなかったこと、平成10年9月頃以降、家族からマンション丙を で生活していたが、その間、一人で外出することはなく、同居する家族- 15 -及び1審原告の居住するマンションを訪れる者以外の人との接触がなかったこと、平成10年9月頃以降、家族からマンション丙を出ていくように再三促されても出ていこうとせず、最終的には平成20年2月10日に家族により力尽くで居住するマンションの外に押し出される形で、初めて外出するに至ったことが認められる。 引きこもりの一般的な意味について一般的には認定事実⑺アのように考えられていることを踏まえて、これらの事実をみれば、本件発言①における、1審原告がただの引きこもりになったとの事実の摘示については、その重要な部分について真実であることの証明があったと認められ、仮にそうでなくとも、認定事実⑵の事実はいずれもCら三名の本人尋問の結果を含む別件訴訟の証拠に基づいて認定できるものであるところ、1審被告は、別件訴訟の審理の全ての期日の傍聴をするなどの方法で1審原告を継続的に取材していた者であったことをも踏まえると、少なくとも、本件記事作成当時、1審被告において当該部分を真実と信ずるのについて相当な理由があったものと認められる。 以下、この点について敷衍する。 認定事実⑺アにおける引きこもりのいずれの定義においても、そのような状態に至った原因についての限定はされておらず、引きこもりといえるか否かは、基本的には、そのような状態に至った原因が何であるかによって左右されるものではない。 もっとも、人が、他人の違法な監禁行為によって、その居住場所から外出することができず、社会と接触することができないでいるような場合には、それはもはや上記各定義にいう「とじこもり」でもなければ、「社会的参加の回避」でもないことは明らかであるから、人が自らの意思とは無関係に専ら外的な要因によって外出できず社会と でいるような場合には、それはもはや上記各定義にいう「とじこもり」でもなければ、「社会的参加の回避」でもないことは明らかであるから、人が自らの意思とは無関係に専ら外的な要因によって外出できず社会との接触がない状態となっている場合であれば、それを引きこもりということはできないものと解される。 そこで検討するに、1審原告の家族等による脱会説得に係る認定事実⑵イないしケの一連の事実をみると、平成7年9月11日から平成20年2月10日までに1審原告の家族が1審原告に行った行為については、その手段等を踏まえると社会通- 16 -念上違法との評価を免れない部分があることは否定できないものの、平成10年9月頃以降は、むしろ家族の方から1審原告に外出を促すことを繰り返していたのに1審原告がこれを拒む態度を続けており、最終的に家族が力尽くで1審原告をマンション丙の外に押し出したというのであるから、同月頃以降は1審原告が自らの意思で社会と接触しない状態になっていったことがうかがえるものであるし、さらに、同月頃以前のことを含めてみても、そもそも1審原告は特に心身に故障を抱えていたこともうかがえない成人男子(平成7年9月当時31歳)であり、一般にはある程度の強さの物理的強制又は心理的強制が働くのでなければその自由意思が抑圧されることはない者と解されるところ、滞在したマンションではいずれもベランダに面した部屋の窓が開かない状態とされていたものの、マンション丙の玄関に南京錠が取り付けられていた期間(約5か月)と玄関と居室とを隔てる場所に設置されていた木戸のドアノブが施錠可能なものに替えられていた期間(数か月)を除けば、いずれのマンションにおいてもその玄関及びその付近に1審原告が外出することを妨げる物理的な措置が講じられていたとは認められず、また、1審原告以外に 錠可能なものに替えられていた期間(数か月)を除けば、いずれのマンションにおいてもその玄関及びその付近に1審原告が外出することを妨げる物理的な措置が講じられていたとは認められず、また、1審原告以外に家族の誰かが常時同じマンションに滞在しており、かつ、1審原告の使用していた部屋が家族のいる部屋を通らないと玄関に行けない場所に位置していたのだとしても、1審原告が、同人に比して体格が著しく劣る女性一人と二人だけ、或いは、そのような女性二人と三人だけであった時間は非常に多く存在していたと認められることから、これを全体としてみると、概ね1審原告が外出しようとすれば容易にできるような客観的状況にあったと認められること、そして、認定事実⑵キについても、1審原告が、一時期に限って、しかも、女性だけが在宅している機会ではなく、Cが在宅する機会に限って、自室で暴れたり玄関の方に向かって行ったりしていたというものにすぎないから、かかる事実をもって1審原告が家族と住むマンションからの外出を真に試みていたものとは認められないこと、さらに、以前の1審原告とその家族との人間関係に問題はうかがわれず(認定事実⑵ア参照)、そもそも1審原告の家族としては親きょうだいの情愛に基づいて本件教団からの脱会を1審原告- 17 -に働きかけていたものとうかがわれるのであって、1審原告にとっては価値観の押し付けであり、これを苦痛に感じていたのだとしても、少なくとも1審原告がそのような家族に対して恐怖の感情を抱いていたものとはおよそ考えられないこと、また、外出しないことについて家族等からマインドコントロール等の心理的強制を受けていたというような事情もうかがえないことに照らせば、1審原告が平成7年9月11日から平成20年2月10日までの長期間にわたって外出しないでいたことが同人の積極 ンドコントロール等の心理的強制を受けていたというような事情もうかがえないことに照らせば、1審原告が平成7年9月11日から平成20年2月10日までの長期間にわたって外出しないでいたことが同人の積極的な意欲に基づくものであるかは別論としても、少なくともこれが同人の意思と無関係になされていたものとは到底認めることができない。そして、D及びCら三名の行為が監禁致傷罪等にあたるとして1審原告が行った刑事告訴については、検察官により嫌疑不十分を理由とする不起訴処分がされており、その後、検察審査会において同処分を相当とする議決がされているところ、認定事実⑷イの検察審査会がその議決書において指摘する疑問はいずれももっともなものであるが、これらの疑問を解消するに足りる説明ないし資料も存しない。以上の検討によれば、本件における1審原告については、引きこもりを否定すべき上記の場合であったとは認められない。 エ以上のとおりであるから、1審被告は、同人が本件発言①を含む本件記事を配信した行為及びこれを削除せずにインターネット上に掲載したままにしている行為について、1審原告に対する不法行為責任を負わない。また、上記イ、ウにおいて本件発言①の公共性、公益目的性及び真実性について検討したところによれば、本件発言①の表現により1審原告の名誉が違法に侵害されているとは認められないから、1審原告の本件発言①の削除請求も理由がない。」⑶ 原判決17頁19行目の「事実摘示の有無及び摘示された事実」を「社会的評価の低下」に、23行目の「記載されており」から26行目末尾までを次のとおりにそれぞれ改める。 「記載されている。一般の読者が、本件発言②の前後の記述をも読み、さらに、それまでに配信された1審被告による1審原告及び別件訴訟に関するその他のイン- 18 -ターネッ おりにそれぞれ改める。 「記載されている。一般の読者が、本件発言②の前後の記述をも読み、さらに、それまでに配信された1審被告による1審原告及び別件訴訟に関するその他のイン- 18 -ターネット記事を読むなどして、別件訴訟の存在及びその概要についてある程度の知識を有する者であることを前提とした上で、その普通の注意と読み方を基準として、本件発言②の意味内容を解釈すると、本件発言②は、1審原告が12年間引きこもり生活を続けた結果、民事裁判で2000万円を得たとの事実を摘示したものと認められ、その事実の摘示は、これを読んだ者に1審原告が社会性の乏しい人物或いは精神面に問題を抱えている人物であるとの印象、さらには、1審原告について何か不当に民事裁判に勝訴し多額の賠償金を得た人物であるとの印象(もっとも、かなり漠然とした印象にすぎない。)を抱かせるものであり、同人の社会的評価を低下させるものと認められる。」⑷ 原判決18頁4行目の「であり、」から20頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「であるところ、一般の視聴者が、そのテレビ番組内で本件発言③以前になされたアナウンサーやコメンテーターの発言内容(甲1の1、2)を視聴し、本件発言③の発言中に画面上に表示されていた、別件訴訟及び別訴高裁判決の概要等を説明するフリップ(甲71)を見ていることを前提とした上で、その普通の注意と視聴の仕方を基準として、本件発言③の「この原告自体も、もうほぼ引きこもり状態の中」から始まる部分(それ以前の部分は1審原告の社会的評価の低下とは関係がないものと認められる。)の意味内容を解釈すると、当該部分は、別件訴訟で争われた事実に関して、1審原告は、いつでも出て行けるような状態であったにもかかわらず、自分より体格が劣るような母親と二人きりの時であっても出て行かず、 の意味内容を解釈すると、当該部分は、別件訴訟で争われた事実に関して、1審原告は、いつでも出て行けるような状態であったにもかかわらず、自分より体格が劣るような母親と二人きりの時であっても出て行かず、外形的にはほぼ引きこもりの状態であったとの事実を摘示し、これに関連して別件訴訟の裁判についての意見ないし論評(その内容をみれば、これが1審原告の社会的評価の低下とは関係がないものであることは明らかである。)を加えたものと認められ、上記事実の摘示は、「ほぼ引きこもり状態」との文言を用いることで、これを視聴した者に1審原告が社会性の乏しい人物或いは精神面に問題を抱えている人物であるとの印象、さらには、実際には監禁されていないにもかかわらず民事裁判に- 19 -おいて監禁されたと主張していた人物であるとの印象(もっとも、漠然とした印象にすぎない。)を抱かせるものであり、同人の社会的評価を低下させるものと認められる。 イ公共性及び公益目的性1審原告の社会的な立場及び活動状況は、前提事実⑴ア、認定事実⑶のとおりであること、別件訴訟は、本件教団の信者が自分の家族等に棄教を強要されながら監禁されたなどと主張して同人らに損害賠償金の支払を求めた事件であるところ(認定事実⑸)、その審理内容や審理経過は、社会における正当な関心事といえるものであること、1審被告は、別件訴訟の審理を傍聴し、その他の取材をして、その内容を記事にしており、本件発言②が記述されている記事もそのうちの一つであること(認定事実⑹)、本件発言③については、本件教団をめぐる様々な社会問題を議論するテレビ番組における発言であること(甲1の1、2)を踏まえると、1審被告による本件発言②を含む記事の配信及びテレビ番組における本件発言③の発言はいずれも、公共の利害に関する事実に係るものであり、 するテレビ番組における発言であること(甲1の1、2)を踏まえると、1審被告による本件発言②を含む記事の配信及びテレビ番組における本件発言③の発言はいずれも、公共の利害に関する事実に係るものであり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあるものであったと認められる。 ウ真実性又は真実相当性認定事実⑵、⑸及び1審原告の引きこもりに係る真実性等に関して上記⑵で検討したところを踏まえれば、本件発言②における、1審原告が12年間引きこもり生活を続けた結果、民事裁判で2000万円を得たとの事実の摘示及び本件発言③における、別件訴訟で争われた事実に関して、1審原告は、いつでも出て行けるような状態であったにもかかわらず、自分より体格が劣るような母親と二人きりの時であっても出て行かず、外形的にはほぼ引きこもりの状態であったとの事実の摘示についてはいずれも、その重要な部分について真実であることの証明があったと認められ、仮にそうでなくとも、認定事実⑵の事実はいずれもCら三名の本人尋問の結果を含む別件訴訟の証拠に基づいて認定できるものであるところ、1審被告は、別件訴訟の審理の全ての期日の傍聴をするなどの方法で1審原告を継続的に取材して- 20 -いた者であったことをも踏まえると、少なくとも、上記各発言当時、1審被告において当該部分を真実と信ずるのについて相当な理由があったものと認められる。 エ以上のとおりであるから、1審被告は、同人が本件発言②を含む本件記事を配信した行為及び同人がテレビ番組において本件発言③の発言をした行為について、1審原告に対する不法行為責任を負わない。また、上記イ、ウにおいて本件発言②の公共性、公益目的性及び真実性について検討したところによれば、本件発言②の表現により1審原告の名誉が違法に侵害されているとは認められないから、1審 責任を負わない。また、上記イ、ウにおいて本件発言②の公共性、公益目的性及び真実性について検討したところによれば、本件発言②の表現により1審原告の名誉が違法に侵害されているとは認められないから、1審原告の本件発言②の削除請求も理由がない。」⑸ 原判決20頁26行目冒頭から21頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「 ⑸ 1審原告は、別訴高裁判決によって否定された事実は、これをもって本件各発言の真実性の証明として使えないことは明らかであるとした上で、1審被告は、本件各発言は、確定判決である別訴高裁判決に反した事実を公然と摘示して1審原告の名誉を毀損するものであるから、1審被告の真実性ないし真実相当性の主張は、新規性のある証拠をもって行われるべきであり、そうでなければ、1審被告は別訴高裁判決に経験則ないし採証法則に反する明白な違法があることを論証しなければならないなどと主張する。 しかしながら、民事訴訟は争訟当事者間の相対的紛争解決を図るためのものであり、原則として、その事件における手続保障を与えられた当事者のみが裁判所の判断に拘束されるものであるところ、1審被告は別件訴訟の当事者ではなく、その他その訴訟手続に関与していた者でもないから、1審被告の本件訴訟における訴訟活動が別件訴訟における当事者の訴訟活動及び別訴高裁判決の判断内容(なかんずく認定事実)に拘束されるべき理由はない。また、自由心証主義(民訴法247条)によれば、裁判所が、どの証拠からどのような事実を認定するか、認定した事実をどのように評価するかについて、過去に行われた裁判の事実認定又はその評価に拘束されることはないのであり、それは証拠が過去に行われた裁判のそれと事実上共通するような場合であっても変わるものではない。すなわち、本件訴訟において、- 21 -別訴高裁判決で 定又はその評価に拘束されることはないのであり、それは証拠が過去に行われた裁判のそれと事実上共通するような場合であっても変わるものではない。すなわち、本件訴訟において、- 21 -別訴高裁判決で認定されていない事実を1審被告が主張すること、さらに、裁判所がその事実を認定すること、別訴高裁判決で認定されている事実を1審被告が否定すること、さらに、裁判所がその事実を認定しないこと、いずれについても訴訟法上の制約がないことは明らかである。そして、別訴高裁判決では認定されることのなかった認定事実⑵オ及びカの認定に係る主な証拠は、別件訴訟の審理で実施された尋問におけるCら三名の各供述(乙17ないし19)であるところ、これらの供述は、相互にその信用性を補完するだけでなく、その内容は別訴高裁判決においても同様の認定がされている認定事実⑵アないしエ及びキないしコの事実経過(1審原告とその家族との間の従前からの人間関係、その体格差、1審原告が当初から偽装脱会を意図しており、途中偽装脱会を告白したことがあったこと、1審原告が滞在していた場所の施錠等の状況、最後に1審原告がその滞在するマンションから外に出た時の状況等に関する事実)と併せてみても何ら不自然な内容のものではなく、これと矛盾することとなる客観的証拠も見当たらないことから、十分に信用できるというべきである。また、別訴高裁判決がCら三名の供述をもとにして認定事実⑵オ及びカと同様の事実を認定することをしなかったことについて、その理由が同判決において明示されていないこと(なお、1審原告は、別訴高裁判決によって否定された事実は本件各発言の真実性の証明として使えないなどというが、そもそも別訴高裁判決は認定事実⑵オ及びカの事実のほとんどについてその存在を否定する事実認定をしているものではない。)を踏まえても 定された事実は本件各発言の真実性の証明として使えないなどというが、そもそも別訴高裁判決は認定事実⑵オ及びカの事実のほとんどについてその存在を否定する事実認定をしているものではない。)を踏まえても、本件訴訟において認定事実⑵オ及びカを認定することが経験則違反に当たるものなどでないことは明らかである(なお、そうであるからといって、別訴高裁判決の事実認定等が経験則に反しているなどといえないことも、民訴法247条に照らして当然のことである。また、認定事実⑵オ及びカの事実を前提としても、1審原告に対するCら三名の行為に違法性がなかったということになるものとは解されない。)。 以上のとおりであるから、1審原告の上記主張は、失当であって、採用できない。」 2 当審における1審原告のその余の主張も、実質的に原審における主張を繰り- 22 -返すもの、その前提を欠くもの又は独自の見解に基づくものであるなど、前記1の認定判断を左右するものに足るものとは認められない。 3 以上によれば、原審における1審原告の請求はいずれも理由がなく、これを一部認容した原判決は相当でないから、1審被告の控訴に基づき、1審被告の敗訴部分を取り消した上で、その部分について1審原告の請求を棄却し、1審原告の控訴は理由がないから、これを棄却し、当審における1審原告の追加請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部 裁判長裁判官佐 々 木宗啓 裁判官大寄久 裁判官吉川健治(別紙)ブログ記事目録被控訴人(一審被告)の発言を記載した、平成25年3月13日及び平成27年10月15日における『やや日刊カルト新聞』の各 裁判官吉川健治(別紙)ブログ記事目録被控訴人(一審被告)の発言を記載した、平成25年3月13日及び平成27年10月15日における『やや日刊カルト新聞』の各記事 1 平成25年3月13日の記事“Aケース”は、脱会説得に応じず、逆に“氏族メシア”として家族を説き伏せるためにマンションに留まり、居直った末に果てにニート化してただの“引きこもり”となった男性信者が、役柄を“転換”し“拉致監禁に耐え切った英雄”として統一教会内でスターダムにのし上がったというだけの話だ。実際のところ、A氏は引っ込み付かなくなっているのではないか。記憶の改変が起こる土壌は全て整っている。 2 平成27年10月15日の記事信者内では有名人のA氏も本紙主筆が声を掛けると手を挙げて応答。 12年間に及ぶ引きこもり生活の末、裁判で2000万円をGETしたA•拉致監禁強制改宗被害者の会会長本紙主筆の呼び掛けに快く応じる-23-

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