令和7年1月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第9115号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和6年11月18日判決 原告株式会社マーブル代表者代表取締役 訴訟代理人弁護士佐野晃子同藤村慎也 被告P1 被告P2 被告ら訴訟代理人弁護士三井良平 主文 1 被告らは、原告に対し、1万7160円並びに被告P1についてはこれに対する令和5年10月2日から、被告P2については同月1日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員(ただし、1万7160円及びこれに対する同 月2日から支払済みまで年3パーセントの割合による限度で連帯して)を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを1000分し、その1を被告らの、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告に対し、連帯して1171万9585円並びに被告P1についてはこれに対する令和5年10月2日から、被告P2については同月1日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員を(ただし、1171万9585円及びこれに対する同月2日から支払済みまで年3パーセントの割合による 限度で連帯して)支払え。 2 被告らは、別紙1「児童情報目録」記載1及び2の者並びにその法定代理人に対し、別紙2「営業秘密目録」記載の営業秘密を使用して、面会を求め、電話をし、郵便物を送付し、メールを送信するなどして、障害児向け支援塾の入塾契約の締結、その締結方の勧誘又はこれらに付随する営業行為をしてはならない。 目録」記載の営業秘密を使用して、面会を求め、電話をし、郵便物を送付し、メールを送信するなどして、障害児向け支援塾の入塾契約の締結、その締結方の勧誘又はこれらに付随する営業行為をしてはならない。 3 被告らは、被告ら宛訪問、電話、郵便、メール送信などの方法で連絡をしてくる別紙1「児童情報目録」記載1及び2の者並びにその法定代理人に対し、別紙2「営業秘密目録」記載の営業秘密を使用して、障害児向け支援塾の入塾契約の締結、その締結方の勧誘又はこれらに付随する営業行為をしてはならない。 4 被告らは、別紙2「営業秘密目録」記載の各情報が記載された文書を廃棄せよ。 5 被告らは、別紙2「営業秘密目録」記載の各情報が記載された電磁的記録を抹消せよ。 第2 事案の概要 1 本判決で用いる主な呼称(1) 「マーブル」ないし「マーブル○○校」:原告が設置する放課後等デイサービ ス(障害児に対し、学校の授業終了後に施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練や社会との交流の促進等のサービスを提供するものであり、児童福祉法6条の2の2第3項に定められているもの)を提供する施設(○○は、設置される地名)(2) 「ゆうがく」ないし「ゆうがく○○校」:原告が設置する障害者向け個別支援 塾(○○は設置される地名) (3) 「被告事業」:被告P1が設置した発達障害専門塾の運営に係る事業。名称は「INNOVATION」(4) 「本件就業規則」:原告の平成31年2月5日以降の就業規則(5) 「本件児童」:別紙1「児童情報目録」記載の各児童(6) 「本件情報」:本件児童に係る別紙2記載の情報 (7) 「本件競業禁止規定」:競業避止義務を定める本件就業規則73条の規定 2 原告の請求本件は、原告が、原告 」記載の各児童(6) 「本件情報」:本件児童に係る別紙2記載の情報 (7) 「本件競業禁止規定」:競業避止義務を定める本件就業規則73条の規定 2 原告の請求本件は、原告が、原告の元従業員であった被告らに対し、次の請求((1)から(5)は連帯請求)をする事案である。 (1) 原告及び被告ら間の雇用契約上又は信義則上の競業避止義務違反(債務不 履行又は共同不法行為)及び引継ぎ懈怠(債務不履行)に基づく損害賠償請求権1055万9269円(2) 被告らが、原告が制作・販売するテキストを廃棄し、又はその販売代金を領得した共同不法行為に基づく損害賠償請求権3万1900円(3) 被告らが、原告が購入した書籍を故意又は過失によって廃棄等をした共同 不法行為に基づく損害賠償請求権6万2999円(4) (1)ないし(3)の請求に係る弁護士費用相当の損害賠償請求権106万5417円(5) (1)ないし(4)の合計1171万9585円に対する、不法行為の日の後の日又は債務不履行に基づく損害賠償請求について履行を請求した日から支払 済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の請求(6) 被告らが、不正の利益を得る目的で営業秘密である本件情報を使用したことが不正競争(不正競争防止法2条1項7号)に当たるとする、同法3条1項に基づく差止請求及び同条2項に基づく廃棄請求 3 前提事実 (1) 当事者等 ア原告は、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業等を目的とする株式会社であり、マーブル及びゆうがくを開設している。 イ被告P1は、令和元年10月1日に契約社員として原告に雇用され、令和3年4月1日以降、正社員として勤務し、令和4年8月30日に原告を退職した。なお、正社員採用時に原 びゆうがくを開設している。 イ被告P1は、令和元年10月1日に契約社員として原告に雇用され、令和3年4月1日以降、正社員として勤務し、令和4年8月30日に原告を退職した。なお、正社員採用時に原告と締結した雇用契約書(以下「本件雇用契 約書」という。)には、「服務規律については、甲の定める就業規則によるものとする。」(甲は原告の意)との記載があった(甲2の1)。 ウ被告P2は、令和2年4月1日に契約社員として原告に雇用され、令和3年4月1日以降、本件雇用契約書と同様の就業規則に関する記載がある雇用契約書(甲2の2)を締結した上で正社員として勤務し、令和4年8月20 日に原告を退職した。 (2) 本件就業規則の内容本件就業規則には、概要、次の定めがあった。 ア退職手続及び引継ぎ(45条)従業員が退職を希望するときは、退職希望日の3ヵ月前までに退職届を提 出し、退職日までその職務に従事しなければならない。なお、その他の従業員は、1ヵ月前までに退職届を提出し退職日までその職務に従事するものとする。その際、業務の引継ぎを会社が指定した者に対して完了しなければならない。 イ個人情報管理義務(67条) 従業員は、取引先、お客様その他の関係者及び会社の役員・従業員等の個人情報を、正当な理由なく開示したり、あらかじめ通知または公表している利用目的の範囲を超えて使用し、または、漏えいしてはならない。退職後も同様とする。 ウ業務機密の閲覧禁止(71条) 従業員は、経営上の各種データ等を閲覧するときは、必ず当法人の承認を 得るとともに、閲覧後は、責任をもって所定の場所に返還しなければならない。 エ業務機密の守秘義務(72条)従業員は、業務機密(ウにいう経営上の各種デー ときは、必ず当法人の承認を 得るとともに、閲覧後は、責任をもって所定の場所に返還しなければならない。 エ業務機密の守秘義務(72条)従業員は、業務機密(ウにいう経営上の各種データ等をいう)に該当する事項を外部の人に話し、書類を見せ、また談話中にその内容を漏らしてはな らず、当法人の不利益となる業務秘密等を他に漏らしたり、または自己の営利目的のために利用してはならない。退職後も同様とする。 オ競業避止義務(73条)従業員は、在職中はもとより、退職後も6ヵ月間、当法人の許可を得ることなく、当法人から半径2キロ以内の競業関係にある会社等に再就職し、ま たは6ヵ月間は競業する事業を自ら営んではならない。 (3) 被告らによる被告事業の開始被告らは、令和4年8月1日、共同して、発達障害の生徒を対象とする塾サービスとして、被告P1の住所地(堺市●●)において被告事業を始めた。なお、被告事業は、放課後等デイサービスとは異なり、成人が入塾することも可 能である。また、被告らは、同年7月22日、被告事業に関するウェブサイトを開設した。(甲1、乙1) 4 争点(1) 被告らが本件競業禁止規定による競業避止義務を負うか(争点1)(2) 被告らが本件競業禁止規定上の義務に違反したか(争点2) (3) 被告らが、社会通念上相当性を欠く態様で競業を行ったか(争点3・雇用契約における信義則上の義務違反又は不法行為に関する争点)(4) 被告らが、原告を退職するに際し引継ぎ義務を怠った債務不履行があるか(争点4)(5) 被告らが、テキストの販売代金を領得したり、テキストや原告所有の書籍 を廃棄したりしたか(争点5) (6) 本件情報が営業秘密であって、被告らがこれを不正に持ち出 争点4)(5) 被告らが、テキストの販売代金を領得したり、テキストや原告所有の書籍 を廃棄したりしたか(争点5) (6) 本件情報が営業秘密であって、被告らがこれを不正に持ち出し使用したか(争点6)(7) 原告の損害等(争点7)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告らが本件競業禁止規定による競業避止義務を負うか)について 【原告の主張】(1) 本件就業規則が周知されており、被告らは内容を承知していたことア原告は、前提事実記載のとおり本件就業規則を定めていた。 マーブル北野田校では、マネージャーが同就業規則の電子データを保有しており、従業員が希望すればいつでも閲覧することができる旨周知されてい た。 イ雇用契約書には、服務規律については就業規則の定めによることが明記されていることから、被告らは就業規則の存在を知っていた。被告P1は、マーブル北野田校においてスタッフの採用業務も担当していたから、新規採用される者に対し、本件雇用契約書と同様に、就業規則が存在することを前提 とした雇用契約書を提示し、説明するべき立場にあった。さらに、被告P1は、有給休暇の取得の申請の際、就業規則を確認している。 (2) 本件競業禁止規定の有効性ア本件競業禁止規定は、原告における知的財産やノウハウ、顧客、取引関係等を保護し、原告における事業の正当な利益を確保するとともに、過度に転 職の自由を制約しないようにするために定められたものであって、有効である。 競業避止義務を課すべき地理的範囲は競業行為者の業務範囲や異動の可能性も考慮されるべきところ、被告らは、本件雇用契約書上、「当社事業所内」が勤務地とされ、教室間で異動することが想定されていた。そのため、 マーブル北野 的範囲は競業行為者の業務範囲や異動の可能性も考慮されるべきところ、被告らは、本件雇用契約書上、「当社事業所内」が勤務地とされ、教室間で異動することが想定されていた。そのため、 マーブル北野田校以外の教室を起点としたとしても、被告らの転職の自由を 過度に制約するものではない。 イ被告P1の業務内容被告P1は、原告におけるゆうがく事業の責任者であり、ゆうがくなかもず校の開設にも関わっていた。また、被告P1が、マーブル北野田校で勤務してからも、保護者の要望や教室の都合等で、ゆうがくなかもず校を用いて児童の 指導に当たることもあった。そうすると、被告P1に対し、同校を起点として競業避止義務を課したとしても、従業員の予測可能性を害するものではない。 ウ被告らの待遇被告P1は、マーブル北野田校において事業所単位の会議の進行を担当するなど、統括的業務に携わっていたし、被告P2は、同校における発達支援管理 責任者に選任され、役職手当も支給されていた。被告らの給与は、同校の従業員中、最も高いものであった。 エ小括上記被告らの職責、待遇、業務内容等に鑑みれば、本件競業禁止規定によって、被告らは、ゆうがくなかもず校やマーブル府大前アカデミア校を起点とし た競業避止義務を負う。 【被告らの主張】(1) 原告における就業規則の周知状況ア被告らは、原告在席中、本件就業規則の内容を知らなかった。本件雇用契約書には「就業規則」との記載があるが、具体的な内容は言及されなかった し、マーブル北野田校には、印刷された就業規則が備え置かれていなかったことから、被告らは本件就業規則の内容を知らず、知る機会もなかった。マネージャーに申し出れば閲覧できると聞いたこともなかった。 イ被告P1は、マーブ は、印刷された就業規則が備え置かれていなかったことから、被告らは本件就業規則の内容を知らず、知る機会もなかった。マネージャーに申し出れば閲覧できると聞いたこともなかった。 イ被告P1は、マーブル北野田校の採用担当をしていたが、自身がそうされたのと同様、新規採用者に対し雇用契約書を交付したのみであって、採用担 当であったからといって事情が異なることはない。 (2) 本件競業禁止規定の効力ア本件競業禁止規定は、労働者の職業選択の自由を強く制約する競業避止義務を定めたものであり、その有効性は、労働者が被る不利益に鑑みれば限定的に解釈すべきであるが、同規定は、従業員の職種を問わず、「競業する事業」という曖昧な定め方で退職後の競業を禁止するものであり、不明確であ るか、過度に広範な定め方をしている。 イ半径2キロ以内との地理的範囲についても、現実の就業場所のみを起点にするのか、原告の全教室を起点とするのかが明らかではなく、全教室とするのであれば、原告が堺市内を中心に10教室を展開していることに鑑みれば、過度に広範である。 ウ被告らの待遇は、上記のような広範な競業避止義務を課すことを正当化するような代償措置に当たるものとはいえない。 エしたがって、本件競業禁止規定は、被告らの職業選択の自由を過度に制約するもので、公序良俗に反し無効であるか、少なくとも、被告らが退職時に勤務していたマーブル北野田校を起点として半径2キロ以内における競業 を禁止する限度でのみ有効なものである。 2 争点2(被告らが本件競業禁止規定上の義務に違反したか)について【原告の主張】(1) 原告の事業と被告事業が競合関係にあること原告は、障害児向けのデイサービスや個別支援塾を運営しているところ、各 施設に 禁止規定上の義務に違反したか)について【原告の主張】(1) 原告の事業と被告事業が競合関係にあること原告は、障害児向けのデイサービスや個別支援塾を運営しているところ、各 施設において行われるサービス内容は、私的な支援塾と異なるものではなく、また学校学習のみならず、社会生活に必要な生活サポート等も行っている。 被告事業は、成人も入塾できるものの、主として、発達障害のある児童に対する学習支援事業を行っており、事業の大部分において原告の事業と競合している。 したがって、原告の事業と被告事業は、競業関係にある。 (2) 被告らの義務違反行為被告らは、ゆうがくなかもず校及びマーブル府大前アカデミア校から半径2キロメートル以内において、被告事業を開設したものであるから、本件競合禁止規定上の義務に違反したものである。 【被告らの主張】 (1) 原告の事業と被告事業は競合しないこと被告事業は、発達障害又はその疑いのある児童を含む幅広い世代(成人を含む)に対し、社会生活に必要な生活サポート(日常生活一般における思考力の涵養、買物・料理・宿泊等の自立力向上など)を行う私塾であって、児童福祉法上の放課後等デイサービスではない。一方、原告が運営するマーブルは、主 として放課後等デイサービスであって、利用料の大部分が公費負担となるものであるから、全額自費負担の私塾である被告事業とは業態が異なる。また、原告が運営するゆうがくは、主として児童に対する学校学習指導を行うが、被告事業は、幅広い世代に対する生活サポートを行うものであり、利用者及び指導内容が異なる。 よって、原告の事業と被告事業は競合しない。 (2) 被告事業の拠点の位置関係は争わないが、被告らに義務違反行為があった する生活サポートを行うものであり、利用者及び指導内容が異なる。 よって、原告の事業と被告事業は競合しない。 (2) 被告事業の拠点の位置関係は争わないが、被告らに義務違反行為があったことは争う。 3 争点3(被告らが、社会通念上相当性を欠く態様で競業を行ったか)について【原告の主張】 被告らは、原告在職中の令和4年6月末頃から、児童の送迎や就業時間中に、被告事業の開業準備をしたり、原告を利用する児童やその保護者に被告事業への参加を勧誘をしたりするなど、原告における職務専念義務に違反する態様で競業行為を行っていた。また、被告P1は、保護者に勧誘する際、被告らが退職した後、マーブル北野田校がどうなるかはわからないなどと、保護者の不安を煽った。 さらに、被告らは、原告に対し、秘密裏に被告事業を開始し、原告代表者が、 被告P1に、被告P2も被告P1と共に退職するのかと尋ねた際、分からないなどと、明らかな虚偽の事実を述べていた。 そうすると、仮に、被告らが本件競業禁止規定による義務を負わなかったとしても、被告らの行為は、在職中の職務専念義務に違反し、殊更に保護者の不安を煽り、原告に秘密に、かつ、虚偽の事実を述べてまで被告事業の開業準備をして おり、その悪質性は著しく、社会通念上、相当性を欠くものであって、信義則上の雇用契約上の義務に違反するか、又は不法行為に当たるものである。 【被告の主張】被告らは、原告の生徒や保護者と挨拶をした際、一部の保護者に対し、令和4年7月末をもって退職予定と伝え、その際、退職後の予定について問われたとき に、被告事業を開業する予定との事実を告げるとともにそのチラシを交付した。 しかし、それ以上に、マーブル北野田校やゆうがくから被告事業へ転塾する と伝え、その際、退職後の予定について問われたとき に、被告事業を開業する予定との事実を告げるとともにそのチラシを交付した。 しかし、それ以上に、マーブル北野田校やゆうがくから被告事業へ転塾することを促したことはなく、あくまでも、挨拶の範疇にとどまることしか告げていない。 そもそも、マーブル北野田校又はゆうがくを退会して被告事業に転塾した児童は、マーブル北野田校のうちの7人とゆうがくの児童のみである。被告らは、こ れらの者に対し、転塾を促すような勧誘はしていないし、ゆうがくの児童は、被告事業では、2回の利用にとどまる。上記7人の児童も、もともと、マーブル北野田校を退会する予定であった者、被告らが退職した後の原告関係者による被告らへの言動に不信感を持ったことで転塾した者、令和5年1月末頃に被告P1に問合せがあったため指導したにとどまる者、通学先との関係を理由に、被告事業 が開業する前に原告の利用を終了した者が含まれる。 被告らは、原告が問題とするその余の児童について、原告の利用を終了した経緯を知らないし、これらの児童が被告事業を利用したこともない。 以上のとおり、被告らは、社会通念上相当性を欠く態様での競業行為を行っておらず、被告事業を利用した児童も、被告らが不相当な勧誘を行った結果ではな いから、信義則上の義務違反はなく、不法行為も成立しない。 4 争点4(被告らが、原告を退職するに際し引継ぎ義務を怠った債務不履行があるか)について【原告の主張】被告らは、本件就業規則により、退職時に必要な引継ぎを完了する義務を負っていたところ、被告P1は、原告代表者からの引継ぎの命令があったにもかかわ らず、マーブル北野田校の従業員に対し、令和4年7月末日に退職する、同年8月からは本部から な引継ぎを完了する義務を負っていたところ、被告P1は、原告代表者からの引継ぎの命令があったにもかかわ らず、マーブル北野田校の従業員に対し、令和4年7月末日に退職する、同年8月からは本部から人が派遣されるので業務の継続には問題がないと虚偽の説明をし、業務の引継ぎを行うことなく、特に被告P2は、児童発達支援管理責任者でありながら児童の支援計画書も作成することなく、同年7月末をもって、原告に出社しなくなった。また、被告P2は、マーブル北野田校において児童発達支 援管理責任者という重要な職責にありながら、原告に直接、退職の意向を示すことなく、同年7月末をもって出社しなくなり、児童の支援計画書も作成せず、業務の引継ぎを放棄した。 これは、雇用契約上の債務不履行に当たる。 【被告らの主張】 原告の主張を否認する。 被告らは、退職の意思を表明した際、引継ぎに関し、質問があれば対応する旨原告に伝えている。そして、被告P1は、令和4年7月中に、マーブル北野田校のパソコンに引継資料を保存して同校舎の従業員にその保存場所を説明し、同年8月までの児童の利用計画を確認し、同校舎内で共有し、同校舎の従業員に対し、 LINEで引き継ぐべき金銭やデータの所在等を伝えた。被告P2も、同年7月中に、同年8月に更新すべき児童の個別支援計画を全て作成して同校舎内に保管し、他の従業員に対し、児童への指導方針を伝達した。 以上のとおり、被告らは、原告の業務に支障が生じないよう可能な限りの引継ぎを行っており、引継ぎ義務を履行した。 5 争点5(被告らが、テキストの販売代金を領得したり、テキストや原告所有の 書籍を廃棄したりしたか)について【原告の主張】(1) テキストについて原告は、マーブル北野田校 5 争点5(被告らが、テキストの販売代金を領得したり、テキストや原告所有の 書籍を廃棄したりしたか)について【原告の主張】(1) テキストについて原告は、マーブル北野田校及びゆうがくの児童のためにテキストを原価595円で40冊制作し、これを保護者に1000円で販売し、在庫はマーブル北 野田校で保管していたところ、被告らは、少なくとも20冊につき保護者が支払った販売代金を領得して原告に引き渡さず、また、その余の在庫を廃棄したり持ち出したりした。 原告は、これにより、20冊分のテキスト代2万円及び廃棄等によるテキスト原価相当の1万1900円の合計3万1900円の損害を被った。 (2) 書籍について原告は、マーブル北野田校及びゆうがくの児童のため、別紙3「書籍一覧表」のとおり、参考書等を購入していた。しかし、被告らは、原告在職中に、同別紙記載の冊子のうち、「有無」欄に「◯」が付されたもの以外の冊子を廃棄し、又は持ち出し、原告に、同別紙記載の合計6万2999円の損害を与えた。 【被告らの主張】否認し争う。 6 争点6(本件情報が営業秘密であって、被告らがこれを不正に持ち出し使用したか)について【原告の主張】 (1) 本件情報の秘密管理性原告は、雇用契約書上、本件情報のような顧客情報について退職後も含めた守秘義務を負わせ、就業規則67条においても、正当な理由なく開示したり、利用目的の範囲を超えて使用したりすることを禁止していた。また、原告は、このような本件情報について、原告が用意した鍵付きの書庫で保管し、持出し を禁止し、その旨、従業員に指示していた。さらに、放課後等デイサービスの 従業員又は管理者は、法令上、正当な理由なく、業務上知り得た障 て、原告が用意した鍵付きの書庫で保管し、持出し を禁止し、その旨、従業員に指示していた。さらに、放課後等デイサービスの 従業員又は管理者は、法令上、正当な理由なく、業務上知り得た障害児又はその家族の秘密を漏らしてはならないことが定められている。 よって、本件情報は営業秘密に該当するものとして管理されていた。 (2) 被告らによる使用等被告らは、最終の出勤日であった令和4年7月31日に、本件情報を持ち出 し、これを用いて原告を利用する児童又はその保護者に対し、被告事業へ転塾するよう働きかけるなど、不正の利益を得る目的で本件情報を持ち出し、使用した。 (3) 差止めの必要性被告らの、本件情報を使用した生徒の勧誘などにより、マーブル北野田校や ゆうがくの売上が減少しており、被告らの不正競争行為により、原告は営業上の利益を侵害され、又はそのおそれが生じている。 【被告らの主張】(1) 本件情報の秘密管理性を争う。 原告は、本件情報やこれに関連する書面の作成の有無や保管方法に加え、個 別支援計画書の保管場所、現金の保管場所等の日常的な業務体制すら把握しておらず、原告は、本件情報を秘密として管理していなかった。 (2) 被告らは、本件情報を使用していない。 被告らは、本件情報を持ち出していないし、これを被告事業のために使用もしていない。被告事業の塾に転塾した児童もいるが、これは、いずれも、自ら の意思によるものや、通学の便宜等を踏まえてのものであり、被告らが本件情報を使用して勧誘等をしたからではない。 7 争点7(原告の損害)について【原告の主張】(1) 利用児童の減少による損害(512万5604円) 被告らの行為により、前記2ないし4の【原告の主張】 等をしたからではない。 7 争点7(原告の損害)について【原告の主張】(1) 利用児童の減少による損害(512万5604円) 被告らの行為により、前記2ないし4の【原告の主張】のとおり原告を利用 していた児童がその利用を止めて被告事業を利用し始めたことから、柱書記載の減収が生じた(これら退塾した児童の令和4年5月から同年7月までの平均売上と、同年8月から6か月間の売上とを比較して算定)。 (2) 利用回数の減少(409万1968円)(1)と同様、被告らの行為により、原告を利用していた児童の間で不信感が 広がり、退塾に至らずとも利用回数が減り、柱書記載の減収が生じた(令和4年8月から令和5年1月までの合計売上減少額1066万6046円から、(1)(3)の合計522万3001円と、被告らの退職とは直接関係のない売上減少額135万1077円の合計657万4078円を控除したもの)。 (3) 支援計画書未作成による損害(9万7397円) 被告らが、一部の児童の支援計画書を作成することなく原告を退職したことにより、市町村から支払われる報酬額が減額されることとなった。これに相当する損害は柱書記載のとおりである。 (4) ゆうがくの売上減(24万4300円)原告は被告らの違法行為の対応に追われ、令和4年8月中、ゆうがくの授業 ができなくなった。そのため、同月の利用料等5万7100円の売上を失った。 また、ゆうがく利用児童の退塾により、同児童に係る売上一年分(18万7200円)相当の損害を被った。 (5) 無形損害(100万円)被告らの行為によって利用者やその保護者に生じた原告の指導に対する不 安感や不信感による損害(無形損害)を金銭評価するならば、100万円を下回らな た。 (5) 無形損害(100万円)被告らの行為によって利用者やその保護者に生じた原告の指導に対する不 安感や不信感による損害(無形損害)を金銭評価するならば、100万円を下回らない。 (6) テキスト代等の横領、テキストや書籍の廃棄等による損害(争点5参照)(7) 弁護士費用(106万5417円)被告らに対し、(1)ないし(6)の損害(合計1065万4168円)の賠償を 求めるために必要かつ相当な弁護士費用は上記のとおりである。 (8) よって原告は、被告らに対し、上記(1)ないし(7)の合計1171万9585円の損害賠償金の連帯支払を求める。 【被告らの主張】争う。 なお、【原告の主張】(2)については、被告らが退職する以前から、マーブル北 野田校では、学校の補習や課外活動の兼ね合いなど、児童側の事情により、令和4年8月以降、利用児童が減少することが想定されていた。したがって、同月以降の売上減少は、被告らの退職等とは何ら関係がない。また、相当額の経費が控除されるべきである。 仮に、被告らの債務不履行又は共同不法行為によって原告に何らかの損害が発 生したとしても、原告自身による不十分な管理体制や従業員との信頼関係の構築を怠ったことによって生じたものであるから、大幅な過失相殺がされるべきである。 第4 判断 1 争点1(被告らが本件競業禁止規定による競業避止義務を負うか)及び2(被 告らが本件競業禁止規定上の義務に違反したか)について(1) 証拠(後掲のもののほか、全体につき甲26、乙6、7、被告P1本人、被告P2本人)及び弁論の全趣旨によれば、争点1に関し、次の事実を認めることができる。 ア原告は、大阪市●●●、堺市、高石市等において、児童発達支 ほか、全体につき甲26、乙6、7、被告P1本人、被告P2本人)及び弁論の全趣旨によれば、争点1に関し、次の事実を認めることができる。 ア原告は、大阪市●●●、堺市、高石市等において、児童発達支援事業所を 3か所、放課後等デイサービス(マーブル)を9か所程度(うち2か所は児童発達支援事業所と併置)設置して、児童発達支援、放課後等デイサービスを提供していた(乙3)。 令和2年6月に、発達・学習障害を持つ児童等向けの個別支援塾としてゆうがくを堺市●●●●●●に設置し、令和3年1月にマーブル北野田校にも 教室を併設した。 イ被告P1は、令和元年10月に原告に契約社員として採用されてマーブル堺東校に勤務し、令和2年4月には正社員として採用された。同被告は、学習指導塾の業態を考案し、原告において上記のとおりゆうがくの総括責任者として採用されるに至った。 被告P2は、令和2年4月に原告に契約社員として採用されマーブル堺東 校に勤務し、この際に被告P1と面識を得た。 被告らは、前記アのマーブル北野田校の開設の際には開業準備に従事し、開設後は被告P1は支援スタッフ(校舎の運営)、被告P2は児童発達支援管理責任者として同校で勤務することとなった。児童発達支援管理責任者は、放課後等デイサービスに配置が必須のものであり、利用者(児童・生徒)の 個別支援計画書を作成し、支援の管理をその任務とするものである。 ウ原告における被告P1の給料は、基本給23万2000円、固定時間外手当2万円、処遇改善手当6000円であり、被告P2の給料は、基本給20万円、役職手当3万円(その後段階的に5万円まで増額)であった(甲2の1、2)。また、被告らは、その雇用期間中、管理職になることもなかった。 エゆうがく あり、被告P2の給料は、基本給20万円、役職手当3万円(その後段階的に5万円まで増額)であった(甲2の1、2)。また、被告らは、その雇用期間中、管理職になることもなかった。 エゆうがくの事業は、当初5拠点が想定されていたが、実際には、上記の2拠点の設置にとどまり、両校における事業規模もごく小さいもので、令和3年1月以降の被告P1の業務の大半は、マーブル北野田校に関するものであった。一方、ゆうがくの業務は、主としてアルバイトによって賄われ、被告P1は、必要に応じて随時、ゆうがくの業務にも関与する程度であった。(甲 7ないし11(枝番があるものはこれを含む))オ被告P1は、令和4年6月頃、被告P2とともに被告事業を立ち上げることを考え、同年7月11日に、原告代表者と面談して7月末での業務終了を前提とした退職の意向を伝え、少なくとも同被告はこれが了承されたものと理解した。しかし、その後同被告の上司であるP3氏と面談した際にはこれ が伝わっておらず、後に電話で会話した際には退職の点すらあいまいにされ そうになったことから、同月31日、退職代行業者に依頼して改めて退職の手続を取った。 被告P2は、直接原告に退職の意思表示をしたものではなく、被告P1と同時期に退職代行業者を依頼して退職の意思表示をして、7月31日限りの勤務とし以後有給休暇を申請し、同年8月20日付けで原告を退職した(乙 2)。 (2) 本件競業禁止規定(退職後に関するもの。在職中の競業については、争点3において判断する。)についてア前提事実記載の通り、本件競業禁止規定は、在職中及び退職後6か月間、原告の許可なくして、「当法人から半径2キロ以内」の競業行為の自営を禁 ずるものである。この点、前記認定によると、原告の事業所 前提事実記載の通り、本件競業禁止規定は、在職中及び退職後6か月間、原告の許可なくして、「当法人から半径2キロ以内」の競業行為の自営を禁 ずるものである。この点、前記認定によると、原告の事業所は、福祉事業部のみ(他の事業に関するものについては不明である。)でも本店所在地のほか約10か所に及ぶものであり、「当法人から半径2キロ以内」とは、このすべての事業所を基点として半径2キロメートル以内の場所での開業を禁ずるものと解せざるを得ない(原告の主張もそのように解される。)。 しかし、原告のような業態からすると、従業員が現に関与した事業所であれば、これを基点として一定期間一定の距離内で退職後の競業を禁ずる合理性はあるといえるが、およそ関係のない事業所も含まれる本件競業禁止規定は、過度に職業選択の自由を抑制するものであって、公序良俗に反し無効というべきである(そして、そのような規定の抑止的効果からすると、限定解 釈をしてその範囲で有効と解すべきものともいえない。)。 イこの点を措いても、原告の事業のうちマーブルに関するものは、基本的に地方自治体(市町村)が費用負担し、利用者の費用負担は所得に応じた限度(多くは月額数千円程度)に限られるのに対し(甲7等)、被告事業は全額利用者が費用負担するものであって事業構造が全く異なり、せいぜい原告の事 業のうち、事業規模が各段に小さいゆうがくに関するもののみが、被告事業 と競業関係にあると評価されるにすぎない。この点に加え、前記認定に係る被告らの待遇や地位は、このように広範に競業を禁止することを正当化するほどの代償措置が講じられていたとはいえないこと、被告らのゆうがくへの関与の実態も考慮すると、本件競業禁止規定が被告らに適用されるとも解されない。 (3) 小 競業を禁止することを正当化するほどの代償措置が講じられていたとはいえないこと、被告らのゆうがくへの関与の実態も考慮すると、本件競業禁止規定が被告らに適用されるとも解されない。 (3) 小括以上によると、被告事業が原告のゆうがくの事業と競業関係にあるとしても、被告らが本件競業禁止規定にいう義務を負うことはない。 この点に係る原告の主張は、理由がない。 2 争点3(被告らが、社会通念上相当性を欠く態様で競業を行ったか)について (1) 前記1のとおり、原告の事業のうちゆうがくに関する事業と被告事業は競業関係にあるところ、被告らは、前提事実記載のとおり、原告在職中に被告事業のウェブサイトを開設する等の準備行為を行い、有給休暇期間中に被告事業の開始に至っていることから、少なくとも雇用契約において信義則上負う競業避止義務(その範囲は、原告の各事業の関連性も考慮すると、少なくとも在職 中にあっては原告が現に事業を行う範囲に及ぶと解される。)には違反したものというべきである。 (2) 原告は、(1)のほか、被告らが原告についての保護者の不安を煽ったとか、被告らが原告に対し退職に関し虚偽の説明をしたとかといったことが不法行為にも当たると主張するが、これを認めるに足りる証拠がないか又は失当であ る。 (3) 以上の次第で争点3に関する原告の主張は、一部理由がある。 3 争点4(被告らが、原告を退職するに際し引継ぎ義務を怠った債務不履行があるか)について(1) 本件就業規則45条の趣旨について 本件就業規則45条は、退職の際に業務の引継ぎを会社が指定した者に対し て完了しなければならない旨定めるところ、本来、従業員の退職(労働契約の解約)は2週間の予告期間をおけばいつでもこれをするこ 業規則45条は、退職の際に業務の引継ぎを会社が指定した者に対し て完了しなければならない旨定めるところ、本来、従業員の退職(労働契約の解約)は2週間の予告期間をおけばいつでもこれをすることができる(民法627条1項)ことや、具体的な引継ぎの内容は当該労働者の職務の内容や解約申入れ当時の状況等に応じて定まるものであって、一義的な内容にはなり得ないことも考慮すると、退職者の当時の職務に応じた合理的な引継ぎをすること を求める訓示的規定と解される。 (2) 被告らの引継ぎの状況証拠(乙8、10、11、被告P1本人、被告P2本人)によると、被告P1は、令和4年7月頃には、マーブル北野田校の従業員に対し同月末で勤務を終えて退職する旨の意向を告げ、最終勤務日頃には、LINEを通じ、職場の 鍵を預けた場所や引き継ぐべき金銭の場所やデータの保存場所を告げ、3日分の児童の送迎表を送信したこと、被告P2も、退職の意向をマーブル北野田校の従業員に伝達した上、児童発達支援管理責任者の任務である個別支援計画の作成につき、更新が必要なものを更新し、保護者の確認を受けるなどの引継ぎ業務を行ったこと、被告らはともに原告の要請に応じた引継ぎ事務を行う意向 を原告に伝えていたことが認められるところ、これらの引継ぎは、被告らの当時の職務に照らし十分に合理的なものとうかがわれる。 (3) 原告の主張について原告は、被告P1の引継ぎでは不十分である、被告P2は、退職代行サービスを利用して、突如、退職を申し出たものであり、引継ぎ業務それ自体を放棄 した等と主張するが、前判示に照らし採用できないし、そもそも退職の意思表示の方法は引継ぎ義務の履行とは無関係である。 (4) 小括以上の次第で、原告の争点4に関する主張は、理由が 棄 した等と主張するが、前判示に照らし採用できないし、そもそも退職の意思表示の方法は引継ぎ義務の履行とは無関係である。 (4) 小括以上の次第で、原告の争点4に関する主張は、理由がない。 4 争点5(被告らが、テキストの販売代金を領得したり、テキストや原告所有の 書籍を廃棄したりしたか)について 証拠(乙10、11、被告P1本人、被告P2本人)及び弁論の全趣旨によると、原告は、被告らに対し、窃盗の被疑事実で被害申告をしており、これを受けた警察官は、被告事業の拠点を捜索し、物品等を押収し、原告に対し、盗品の有無の確認を求めたが、原告に対し、還付されたものはなかったことが認められるほか、令和6年6月20日時点で被告事業の拠点に存する書籍(乙9)が、原告 が購入したもの(甲21)とは合致しないことが認められる。被告P1が、退職時に、何らかの金銭を引き継いでいたこと(乙8)に鑑みれば、被告らが、原告のいう横領や書籍の持ち出し、廃棄をしたとは認められない。 原告の主張は、理由がない。 5 争点6(本件情報が営業秘密であって、被告らがこれを不正に持ち出し使用し たか)について本件情報が営業秘密(不正競争防止法2条6項)に当たるかどうかはともかく、本件において、被告らが本件情報を持ち出したことを認めるに足りる証拠はない。 原告は、被告らの最終出勤日の時点で、本件情報が見当たらなかったことや、原告を利用した児童の一部が被告事業に通塾したこと等を指摘するが、本件情報 が見当たらなかったと認めるに足りる証拠はないし(むしろ、真実そうであるなら原告の管理不十分というほかない。)、マーブル北野田校を利用した児童の一部が被告事業に通塾したことは、被告らが当該児童と面識があることからすると本 めるに足りる証拠はないし(むしろ、真実そうであるなら原告の管理不十分というほかない。)、マーブル北野田校を利用した児童の一部が被告事業に通塾したことは、被告らが当該児童と面識があることからすると本件情報の持出しに関わらず生じ得ることであって、本件情報の持出しや利用を推認させることにはならない。 以上の次第で、争点6に関する原告の主張は理由がない。 6 争点7(原告の損害)について上記2のとおり、被告らには、原告との雇用契約が終了するまでの間、被告事業に従事したことにつき雇用契約上の義務違反行為があったというべきである。 しかし、その態様は、被告事業に係るウェブサイトの公開開始と、原告からの退 職を原告を利用する児童の保護者の一部に説明し、ちらしを渡すといった態様に とどまるものであって、前記認定に係る原告の事業と被告事業の競業の内容・程度は、ゆうがくのものに限られる。 そして、証拠上、ゆうがくに通学していた別紙1「児童情報目録」記載2の児童番号1の児童が被告事業を利用した回数が、被告らが主張する回数を超えていたものとは認められないこと、利用者の選択の自由等も考慮すると、被告らの在 職中の競業行為によって、原告には、同競業行為を行っていた令和4年8月分のゆうがくの売上減少高のうち、同児童に係る1万5600円(甲11)及び原告が被告らに対し同額を請求するために必要かつ相当な弁護士費用1560円の合計1万7160円に限り、損害が生じたものと認められる。 なお、原告が被告らの退職によってマーブル北野田校、ゆうがく北野田校の運 営に支障を来したことも損害が発生した原因であると主張するが、それは原告自身の態勢整備の不備に由来するものであるともいえる。一方、被告らは、ゆうがくの運営上必要となる 、ゆうがく北野田校の運 営に支障を来したことも損害が発生した原因であると主張するが、それは原告自身の態勢整備の不備に由来するものであるともいえる。一方、被告らは、ゆうがくの運営上必要となる経費を控除すべきであると主張する。しかし、上記のとおり、ゆうがくは、主としてアルバイトの講師が、児童に対し、個別支援を行っていたというものであり、運営上必要となる経費は、専ら、人件費や賃料等、固定 費に属するものであったと認められ、ほかにこれを覆す主張及び証拠はない。 そうすると、被告らの上記義務違反によって原告には1万7160円の損害が生じたものと認められ、この限度で原告の主張は理由があり、その余は理由がない。 第5 結論 以上によると、原告の請求は、主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 島田美喜子 裁判官 西尾太一 (別紙1)児童情報目録 1 マーブル北野田校の通学児童児童番号児童名 主文 ゆうがくの通学児童児童番号児童名 理由 (別紙2)営業秘密目録 事実 別紙1児童情報目録記載1及び2の各児童の氏名、生年月日、住所及び学校名、各児童の法定代理人の氏名、住所及び電話番号 争点 書籍一覧表
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