平成29(ネ)2765 放送受信料不当利得返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成30年3月22日 東京高等裁判所 棄却 水戸地方裁判所 平成28(ワ)615
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判決文本文10,994 文字)

- 1 - 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,1310円を支払え。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等(以下,略称は原判決のそれによる。) 1 事案の概要⑴ 当事者ア控訴人は,被控訴人との間で,ワンセグ放送(地上デジタル放送の各チャンネルの13セグメントに分割されている放送用帯域のうち,1セグメントを利用して行われる移動体機器向けの放送をいう。)対応の携帯電話機(本件携帯電話機)につき放送受信契約を締結した者である。 イ被控訴人は,放送法の規定によって設立された法人である。 ⑵ 放送受信契約の締結及び解約ア放送受信契約の締結控訴人は,平成28年7月14日,被控訴人との間で,ワンセグ放送対応の本件携帯電話機について,受信契約の種別を地上契約とする放送受信契約(本件受信契約)を締結した。 イ放送受信契約の解約控訴人は,平成28年8月1日付けで,被控訴人に対し,放送受信契約解約届を提出し,本件受信契約を解約した。 ⑶ 受信料の支払控訴人は,平成28年8月28日,被控訴人に対し,本件受信契約に基づ- 2 -き,受信料1310円を支払った。 ⑷ 放送法64条1項放送法64条1項本文(本件規定本文)は,「協会(被控訴人のこと)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定する。また,同項ただし書は,「ただし,放 規定本文)は,「協会(被控訴人のこと)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定する。また,同項ただし書は,「ただし,放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送・・・若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については,この限りでない。」と規定する(以下「本件規定ただし書」といい,本件規定本文と併せて「本件規定」という。)。 ⑸ 本件請求の内容,原審の判断及び本件控訴本件は,控訴人が,ワンセグ放送対応の携帯電話機を携帯する者には被控訴人と放送受信契約を締結すべき義務がないのに,被控訴人の業務委託先の担当者から,ワンセグ放送対応の本件携帯電話機を携帯する控訴人には放送受信契約を締結すべき義務があるという説明を受け,同義務があるものと誤信した結果,本件受信契約を締結したから,本件受信契約の締結に係る控訴人の意思表示は錯誤により無効であり,本件受信契約に基づいて支払った受信料1310円につき,被控訴人は悪意の受益者であると主張して,被控訴人に対し,不当利得返還請求権に基づき,利得金1310円及びこれに対する受信料支払日の翌日である平成28年8月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による民法704条前段の利息の支払を求めている事案である。 原審は,本件携帯電話機を携帯する控訴人が本件規定本文の「放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に当たると判断し,控訴人の請求を棄却した。これを不服とする控訴人が本件控訴をしたが,控訴審において,不服の範囲を,利得金1310円の返還を求める限度とする一方,本件携帯電話機が本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」に当た- 3 -り,また,本件受信 をしたが,控訴審において,不服の範囲を,利得金1310円の返還を求める限度とする一方,本件携帯電話機が本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」に当た- 3 -り,また,本件受信契約は受信設備の設置の日を偽ったものであるから,民法90条により無効である等という本件受信契約の無効事由を追加した。 2 前提事実,放送法64条1項,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の付加訂正)⑴ 原判決2頁3行目の「放送法16条によって」を「放送法の規定によって」と改め,同行の「特殊法人であって」の次に「(同法16条)」を加え,15行目の「放送契約の種別」を「受信契約の種別」と改める。 ⑵ 原判決3頁12行目の「以下「本件規定」という。」を「以下「本件規定本文」という。」と改め,同行末尾の次に,以下のとおり加える。 「また,同項ただし書は,「ただし,放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送・・・若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については,この限りでない。」と規定する(本件規定ただし書)。」⑶ 原判決3頁14行目から15行目にかけての「本件規定」を「本件規定本文」と改める。 ⑷ 原判決3頁21行目の「原告は,」を削り,23行目の「本件規定」を「本件規定本文」と改める。 ⑸ 原判決4頁3行目及び6行目の各「本件規定」を,いずれも「本件規定本文」と改め,8行目末尾の次で改行し,以下のとおり加える。 「 したがって,控訴人の本件受信契約の締結に係る意思表示に錯誤があるとはいえない。」(当審における控訴人の主張)⑴ 本件規定本 め,8行目末尾の次で改行し,以下のとおり加える。 「 したがって,控訴人の本件受信契約の締結に係る意思表示に錯誤があるとはいえない。」(当審における控訴人の主張)⑴ 本件規定本文の受信設備の「設置」の該当性昭和42年の放送法の改正により,ラジオ放送の受信につき放送受信契約- 4 -が不要となり,被控訴人の放送受信規約上も「受信設備設置場所(携帯使用のものはその保管場所)」のうち括弧書が削除されたから,本件規定本文の「設置」は「一定の場所に置いた時」をいい,「携帯」を含まないという解釈をすべきである。また,ワンセグ放送対応の携帯電話機は,ラジオと異なり,屋内,地下,山間部,ビル街などでテレビ電波を受信することができず,受信エリアも日本全体の10分の1もカバーされておらず,「あまねく日本全国において受信できる」状況にはないところ,被控訴人がこれを受信できるようにする使命を果たしていないのに,本件規定本文の「設置」に「携帯」を含めることはできない。さらに,携帯電話機が相当普及している中,平成21年の放送法の改正において,2条14号として「移動受信用地上基幹放送」という新たな定義が規定され,同号において「設置」と「携帯」が使い分けられたのに,平成22年の放送法の改正の際に,あえて本件規定本文の文言に「携帯」が加えられる改正がされなかったのは,多くの国会議員が,「携帯」して利用するワンセグ放送対応の携帯電話機につき放送受信契約の締結義務はないと判断したからにほかならない。そして,ワンセグ放送対応の携帯電話機は,テレビ視聴の補完的な役割しか担っていないから,テレビと同じ金額の受信料を支払うことは常識的にあり得ないのに,ワンセグ放送対応の携帯電話機の受信料が別に定められていないのは,多くの国会議員が,本件規定本 視聴の補完的な役割しか担っていないから,テレビと同じ金額の受信料を支払うことは常識的にあり得ないのに,ワンセグ放送対応の携帯電話機の受信料が別に定められていないのは,多くの国会議員が,本件規定本文の「設置」に「携帯」が含まれていないと考えていたからである。加えて,税金のような性格を持つ受信料の支払義務について,「設置」の解釈を幅広くすることは,課税要件明確主義の観点からも避けなければならない。 ⑵ 本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」の該当性控訴人は,テレビ放送の受信を目的としてワンセグ放送対応の携帯電話機を購入したわけではなく,本件携帯電話機でテレビ放送を見たこともなく,実際,自宅で,ワンセグ放送対応の携帯電話機でNHKのテレビ放送を受信- 5 -することはできない。ワンセグ放送対応の携帯電話機は,テレビ放送受信専用のテレビと全く異なり,放送の受信を目的とするか否かは主観的に判断すべきであるから,本件携帯電話機は,本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信機」に当たると解すべきであるし,控訴人が受信を目的としていなかった以上,本件受信契約は民法90条により無効である。 ⑶ 民法90条違反等控訴人は,本件携帯電話機を平成26年頃から所持していたところ,被控訴人から業務委託を受けた担当者は,そのことを知りながら,受信設備の設置の日を平成28年7月14日とする本件受信契約を締結したから,受信設備の設置の日を偽った本件受信契約は,その違反に罰金刑が定められた強行規定である放送法64条2項,3項に違反し,民法90条により無効である。 また,控訴人は,本件受信契約を締結する直前に本件携帯電話機を破壊し,本件受信契約の締結時に受信設備の設置者ではなかったから,本件受信契約は無 ,3項に違反し,民法90条により無効である。 また,控訴人は,本件受信契約を締結する直前に本件携帯電話機を破壊し,本件受信契約の締結時に受信設備の設置者ではなかったから,本件受信契約は無効である。 (当審における被控訴人の主張)⑴ 本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」の該当性本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」とは,電波監視用の受信設備,電気店の店頭に陳列された受信設備,公的機関の研究開発用の受信設備,受信評価を行うなどの電波監理用の受信設備等,放送の受信を目的としないことが客観的,外形的に明らかな場合をいうところ,現代の日本において相当数の者がワンセグ放送対応の携帯電話機を用いてテレビ放送を視聴しているという実態があるから,本件携帯電話機が放送の受信を目的としないことが客観的,外形的に明らかであるという事情は存在しない。 したがって,本件携帯電話機は,本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」に当たらない。 ⑵ 民法90条違反等- 6 -争う。 控訴人の民法90条違反等の主張は,控訴審の審理の最終段階でいきなり主張されたものであるから,信用することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の理由説示(原判決の「事実及び理由」第3)のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の付加訂正)⑴ 原判決4頁23行目の「主務省令で定める技術水準」を「主務省令で定める技術基準」と,5頁6行目の「本件規定」を「本件規定本文」と,それぞれ改める。 ⑵ 原判決5頁9行目及び10行目の各「本件規定」をいずれも「本件規定本文」と,1 技術水準」を「主務省令で定める技術基準」と,5頁6行目の「本件規定」を「本件規定本文」と,それぞれ改める。 ⑵ 原判決5頁9行目及び10行目の各「本件規定」をいずれも「本件規定本文」と,16行目及び18行目の各「聴取契約書」をいずれも「願書及び聴取契約書」と,それぞれ改める。 ⑶ 原判決6頁4行目の「,24」を削り,12行目ないし13行目の「当時の電波監理長官」から14行目の「A」までを「政府委員であるA」と改める。 ⑷ 原判決6頁23行目及び7頁10行目の各「本件規定」を,いずれも「本件規定本文」と改める。 ⑸ 原判決7頁14行目冒頭から8頁1行目末尾までを,以下のとおり改める。 「 放送法は,我が国における放送事業につき,「公共の福祉のために,あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする」(制定当時の放送法7条)公共放送事業者によるものと,それ以外の一般放送事業者(同法第3章)によるものとの二本立て体制を採ることとし,二本立て体制の一方を担う公共放送事業者として被控訴人を設立することとし,被控訴人を,民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営さ- 7 -れる事業体として性格付け,これに公共の福祉のための放送を行わせることとしたものである。放送法が,被控訴人につき,営利を目的として業務を行うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止し(20条4項,83条1項),事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは,被控訴人が公共的性格を有することをその財源の面から特徴付けるものである。すなわち,被控訴人の財源についての仕組みは,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配又は影響が被控訴人に及ぶことのないようにし,現実に被控訴人の ことをその財源の面から特徴付けるものである。すなわち,被控訴人の財源についての仕組みは,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配又は影響が被控訴人に及ぶことのないようにし,現実に被控訴人の放送を受信するか否かを問わず,受信設備を設置することにより被控訴人の放送を受信することのできる環境にある者に広く負担を求めることによって,被控訴人が上記の者ら全体により支えられる事業体であるべきことを示すものにほかならない(最高裁平成29年12月6日大法廷判決・裁判所時報1689号3頁)。そうすると,本件規定本文の「受信設備を設置した者」は,現実に被控訴人の放送を受信するか否かを問わず,被控訴人の放送を受信することのできる環境にある者を広く含み,受信設備の「設置」には,いわゆるポータブルテレビ,ワンセグ対応の携帯電話機等の移動用受信設備を「携帯」する場合を含むと解することが,上記の被控訴人の存立の意義及び事業運営の財源を受信料によって賄うこととしている趣旨に合致するというべきである。」⑹ 原判決9頁11行目冒頭から12行目末尾までを,以下のとおり改める。 「ウ被控訴人は,現在,移動受信用地上基幹放送を行っていない(弁論の全趣旨)。 ⑺ 原判決10頁6行目の「固定受信」から8行目の「規定である。」までを「その定義を定めるものにすぎない。」と,10行目の「(前提事実⑴イ)」を「(前記第2の2で引用した原判決の「事実及び理由」第2の1の前提事実⑴イ)」と,それぞれ改め,11行目の「本件規定は,」から12- 8 -行目ないし13行目の「定めたものであって,」までを,以下のとおり改める。 「本件規定は,被控訴人の事業運営の財源を,受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととし,受信設備を設置することにより被 目の「定めたものであって,」までを,以下のとおり改める。 「本件規定は,被控訴人の事業運営の財源を,受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととし,受信設備を設置することにより被控訴人の放送を受信することのできる環境にある者に広く負担を求めることを定めたものであって,」⑻ 原判決10頁15行目,21行目及び22行目の各「本件規定」を,いずれも「本件規定本文」と改め,24行目の「なお,」から26行目末尾までを削る。 (当審における控訴人の主張に対する判断)⑴ 本件規定本文の受信設備の「設置」の該当性ア控訴人は,昭和42年の放送法の改正により,ラジオ放送の受信につき放送受信契約が不要となった際,被控訴人の放送受信規約の「受信設備設置場所(携帯使用のものはその保管場所)」のうち括弧書が削除されたから,本件規定本文の「設置」は「一定の場所に置いた時」をいい,「携帯」を含まないという解釈をすべきであると主張する。 しかし,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の2⑶のとおり,昭和42年法律第94号による放送法32条1項ただし書の改正に際し,同項本文の「設置」の意義を変更する旨の議論は特段されておらず,昭和42年の放送受信規約の改定は,上記改正によりラジオ放送に限り受信することのできる受信設備を設置した者が受信契約の対象から除外されたことに伴い,当時の一般的なテレビ放送又はラジオ放送の受信状況を前提として,「携帯」という形で所持等をすることが念頭に置かれ,同規約に定められていたラジオ放送に関する部分が削除されたにとどまるものと考えられる。そうすると,上記部分の削除は,当時の放送法32条1項本文(現在の本件規定本文)の「設置」の意義が変更され,限定されたことを- 9 -直ちに意味す る部分が削除されたにとどまるものと考えられる。そうすると,上記部分の削除は,当時の放送法32条1項本文(現在の本件規定本文)の「設置」の意義が変更され,限定されたことを- 9 -直ちに意味するものではないといわざるを得ない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 イまた,控訴人は,ワンセグ放送対応の携帯電話機は,「あまねく日本全国において受信できる」状況になく,被控訴人がこれを受信できるようにする使命を果たしていないのに,本件規定本文の「設置」に「携帯」を含めることはできないと主張する。 しかし,ワンセグ放送対応の携帯電話機が未だワンセグ放送を「あまねく日本全国において受信できる」状況にないとしても,ワンセグ放送を受信することが可能な地域に居住する等し,ワンセグ放送対応の携帯電話機を所持することにより被控訴人のワンセグ放送を受信することのできる環境にある者についてまで,本件規定本文の「設置」の意義を限定することにより,本件規定本文を適用しないという解釈をすべき理由はない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ウさらに,控訴人は,携帯電話機が相当普及している中,平成21年改正において,2条14号として「移動受信用地上基幹放送」という新たな定義が規定され,同号において「設置」と「携帯」が使い分けられたのに,平成22年改正の際に,あえて本件規定本文の文言に「携帯」が加えられる改正がされなかったこと,及びワンセグ放送対応の携帯電話機の受信料が,テレビ放送の専用受信機と別に定められていないことは,多くの国会議員が,「携帯」して利用するワンセグ放送対応の携帯電話機につき放送受信契約の締結義務はないと判断したからにほかならないと主張する。 し 専用受信機と別に定められていないことは,多くの国会議員が,「携帯」して利用するワンセグ放送対応の携帯電話機につき放送受信契約の締結義務はないと判断したからにほかならないと主張する。 しかし,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の2⑵及び⑶並び前にあっては放送法32条1項本文。以下同じ。)の「設置」の意義については,「携帯」が含まれる趣旨で放送法が制定された後,放送法の他の規定に「設置」とは異なるものとして「携帯」の文言が使用されるようになった平成21年改- 10 -正及び平成22年改正の際を含め,意識的に議論がされることも,また,これを変更する旨の説明又は議論がされることもなかったのであり,控訴人が提出する証拠(甲10)をみても,衆議院予算委員会第二分科会において,質問者が,本件規定本文の「設置」に「携帯」の概念が含まれないという判決について,「ある意味非常にすっきりした判断ではないのかと感じている一人でございます。」という見解が表明されているだけである。 そうすると,平成21年改正及び平成22年改正において,多くの国会議員が「携帯」して利用するワンセグ放送対応の携帯電話機につき放送受信契約の締結義務はないと判断していたということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 エ加えて,控訴人は,税金のような性格を持つ受信料の支払義務について,「設置」の解釈を幅広くすることは,課税要件明確主義の観点からも避けなければならないと主張する。 しかし,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の1(ただし,訂正後のもの)のとおり,「設置」という文言は,法制上,「一定の場所に置くこと」以外の態様による管理,支配をする場合をも含む概念としても用いられており,このようなことは,一般的な 第3の1(ただし,訂正後のもの)のとおり,「設置」という文言は,法制上,「一定の場所に置くこと」以外の態様による管理,支配をする場合をも含む概念としても用いられており,このようなことは,一般的な国民にとっても理解することが可能であると考えられること,また,同第3の2(ただし,訂正後のもの)のとおり,本件規定本文にいう「設置」は,携帯型ラジオが一般的であった時代を含め,放送用私設無線電話規則,放送法の制定から本件規定が設けられるに至るまで,「携帯」を含む概念として取り扱われてきていることからすると,本件規定が,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,被控訴人からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,被控訴人がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって受信契約が成立するという効果を有するものであることを考慮しても,本件規定本文- 11 -の「設置」について,現実に被控訴人の放送を受信するか否かを問わず,被控訴人の放送を受信することのできる環境にある者を広く含み,上記「設置」に,いわゆるポータブルテレビ,ワンセグ対応の携帯電話機等の移動用受信設備を「携帯」している場合を含むものと解することが,明確性を欠くものであるということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」の該当性控訴人は,テレビ放送の受信を目的としてワンセグ放送対応の携帯電話機を購入したわけではなく,本件携帯電話機でテレビ放送を見たこともなく,実際,自宅で,ワンセグ放送対応の携帯電話機でNHKのテレビ放送を受信することはできないところ,ワンセグ放送対応の携帯電話機は,テレビ放送受信 ではなく,本件携帯電話機でテレビ放送を見たこともなく,実際,自宅で,ワンセグ放送対応の携帯電話機でNHKのテレビ放送を受信することはできないところ,ワンセグ放送対応の携帯電話機は,テレビ放送受信専用のテレビと全く異なり,放送の受信を目的とするか否かを主観的に判断すべきであるから,本件携帯電話機は,本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」に当たると解すべきであるし,控訴人が受信を目的としていなかった以上,本件受信契約は民法90条により無効であると主張する。 しかし,証拠(乙43)によれば,控訴人の肩書地の自宅は,ワンセグ放送の受信可能地域にあることが認められるのであり,控訴人の自宅において,ワンセグ放送対応の携帯電話機でNHKのワンセグ放送(テレビ放送)を受信することができない状況にあることをうかがわせる証拠はなく,そのような状況にあるとも考え難い。 また,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の3(ただし,訂正後のもの)のとおり,事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは,被控訴人が公共的性格を有することをその財源の面から特徴付けるものであり,被控訴人の財源についての仕組みは,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配又は影響が被控訴人に- 12 -及ぶことのないようにし,現実に被控訴人の放送を受信するか否かを問わず,受信設備を設置することにより被控訴人の放送を受信することのできる環境にある者に広く負担を求めることとしたものであるから,本件規定ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」に当たるか否かについても,当該受信設備を所持等する者の主観ではなく,放送を受信し,これを視聴しない目的であることが客観的,外形的に認められるか否かにより判断すべきで 送の受信を目的としない受信設備」に当たるか否かについても,当該受信設備を所持等する者の主観ではなく,放送を受信し,これを視聴しない目的であることが客観的,外形的に認められるか否かにより判断すべきであり,このことは,ワンセグ放送対応の携帯電話機であっても,異なるものではない。そうすると,控訴人がテレビ放送の受信を目的として本件携帯電話機を購入したわけではなく,実際に本件携帯電話機でテレビ放送を視聴したことがないとしても,それ故に本件携帯電話機が「放送の受信を目的としない受信設備」に当たるということはできない。 さらに,控訴人が受信を目的とせずに本件携帯電話機を所持していたとしても,そのことを理由に本件受信契約が民法90条により無効であるなどということもできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑶ 民法90条違反等控訴人は,本件携帯電話機を平成26年頃から所持していたのに,被控訴人から業務委託を受けた担当者は,そのことを知りながら,受信設備の設置の日を平成28年7月14日とする本件受信契約を締結したから,受信設備の設置の日を偽った本件受信契約は,その違反に罰金刑が定められた強行規定である放送法64条2項,3項に違反し,民法90条により無効であり,また,控訴人は,本件受信契約を締結する直前に本件携帯電話機を破壊し,本件受信契約の締結時に受信設備の設置者ではなかったから,本件受信契約は無効であると主張する。 しかし,被控訴人から業務委託を受けた担当者が,控訴人が本件携帯電話機を平成26年頃から所持していたことを知っていたことを認めるに足りる- 13 -証拠はなく,仮に同担当者がそのことを知りながら,本件受信契約上の受信設備の設置の日を,同担当者において当該受信設備の設 成26年頃から所持していたことを知っていたことを認めるに足りる- 13 -証拠はなく,仮に同担当者がそのことを知りながら,本件受信契約上の受信設備の設置の日を,同担当者において当該受信設備の設置の事実を確実に認識した日とし,その日をもって,本件受信契約の締結日としたとしても,直ちに放送法64条2項,3項の規定に違反するものであるとすることはできず,ましてや,本件受信契約が無効であるなどということはできない。また,控訴人が本件受信契約を締結する直前に本件携帯電話機を破壊したことを認めるに足りる証拠もないから,本件受信契約の締結当時,被控訴人が受信設備を設置した者でなかったとも認められない。 したがって,控訴人の上記主張はいずれも採用することができない。 2 よって,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却すべきであるところ,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官大段亨 裁判官西村英樹 裁判官松本真

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