平成14(ワ)1508等 雇用関係存在確認等請求事件(通称 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構解雇)

裁判年月日・裁判所
平成17年9月15日 東京地方裁判所
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判決文本文93,005 文字)

平成17年9月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(ワ)第1508号雇用関係存在確認等請求事件(以下「甲事件」という。)平成15年(ワ)第23939号雇用関係存在確認等請求事件(以下「乙事件」という。)平成15年(ワ)第28505号雇用関係存在確認等請求事件(以下「丙事件」という。)口頭弁論終結日平成17年3月7日判決当事者及び代理人別紙当事者等目録記載のとおり 主文 1 被告は,別紙認容金額一覧表の「氏名」欄記載の原告らに対し,同別紙の「認容金額」欄記載の各金員及びこれらに対する平成2年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告番号104A,同229B,同230C,同231D,同245Eの各請求,その余の原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は甲,乙,丙事件を通じこれを20分し,その1を被告の,その余を原告らの各負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求(1) 別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし46,48ないし115,117ないし265,267ないし279,281ないし285,288ないし290の各原告らと被告との間にそれぞれ雇用関係の存在することを確認する。 (2) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし115,118ないし138,140ないし265,267ないし279の各原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録1「請求金額」欄記載の各金員に1000万円を加えた金員及び平成2年5月から同14年1月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は,別紙当事者等目録記載の 14年1月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号117,139,281ないし285の各原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録2「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同15年9月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号288ないし290の各原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録3「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同15年10月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし115,118ないし138,140ないし265,267ないし279の各原告らに対し,平成14年2月以降毎月20日限り,同117,139,281ないし285の各原告らに対し,同15年10月以降毎月20日限り,同288ないし同290の各原告らに対し,同年12月以降毎月20日限り,それぞれ別紙未払賃金目録1ないし3「基本給」欄記載の金員を支払え。 (6) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号280-1ないし4の各原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録4「請求金額」欄記載の各金員に同目録「慰謝料相続分」欄記載の金員を加えた各金員及び平成2年5月から同6年6月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 記載の金員を加えた各金員及び平成2年5月から同6年6月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (7) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号286-1ないし3の各原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録5「請求総額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同4年11月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (8) 被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号287-1ないし3の各原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録5「請求総額」欄記載の各金員及び平成2年5月から平成10年7月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (9) 被告は,原告らに対し,それぞれ別紙謝罪文を交付するとともに,横1.5メートル,縦2メートルの用紙に同謝罪文を見やすく記載して,被告事業所入口の見やすい場所に1か月間掲示せよ。 (10) 被告は,原告番号1ないし46,48ないし115,117ないし138,140ないし228,281の各原告らについて北海道旅客鉄道株式会社に対し,同229ないし231の各原告らについて東日本旅客鉄道株式会社に対し,同139,232ないし265,267ないし279,282ないし285,288ないし290の各原告らについて九州旅客鉄道株式会社に対し,それぞれ別紙要請書を交付して原告らの採用を要請せよ。 2 予備的請求被告は,原告らに対し,別紙原告別損害賠償請求額一覧表の「総請求額」欄記載の各金員及びこれに対する平成2年4月1日 対し,それぞれ別紙要請書を交付して原告らの採用を要請せよ。 2 予備的請求被告は,原告らに対し,別紙原告別損害賠償請求額一覧表の「総請求額」欄記載の各金員及びこれに対する平成2年4月1日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 第2 事案の概要本件事案の概要は次のとおりである。 原告らはいずれも日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)に勤務し,国鉄労働組合(以下「国労」という。)に所属していた者及びその相続人である(以下,原告らと呼称する場合は,原則として,相続人については被相続人の趣旨であり,どちらの趣旨か疑義がある場合には,どちらを指すか明記することにする。)。原告らは,昭和62年4月1日,国鉄の分割・民営化の際,北海道旅客鉄道株式会社,東日本旅客鉄道株式会社,九州旅客鉄道株式会社(以下それぞれ「JR北海道」,「JR東日本」,「JR九州」といい,これらと東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。),西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。),四国旅客鉄道株式会社(以下「JR四国」という。),日本貨物鉄道株式会社(以下「JR貨物」という。)を併せて「JR」又は「JR各社」という。)に採用されず,日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号,以下「改革法」という。)15条により国鉄から移行した日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)の職員となり,日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(昭和61年法律第91号,以下「再就職促進法」という。)1条,日本国有鉄道清算事業団法(昭和61年法律第90号,以下「事業団法」という。)1条2項に規定する「再就職を必要とする者」(以下「事業団職員」という。)に指定された。原告らは,平成2年3月31日までに,再就職し 道清算事業団法(昭和61年法律第90号,以下「事業団法」という。)1条2項に規定する「再就職を必要とする者」(以下「事業団職員」という。)に指定された。原告らは,平成2年3月31日までに,再就職しなかった。そこで,事業団は,平成2年4月1日,再就職促進法附則2条による同法の失効に伴い,日本国有鉄道清算事業団就業規則(以下「事業団就業規則」という。)22条4号所定の「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」に当たるとして,原告らを同日付で解雇した(以下「本件解雇」という。)。 原告らは,主位的請求として,本件解雇は憲法27条,28条,29条3項に違反し無効であり,違法な解雇により損害を被ったなどと主張して,事業団を承継した被告に対し,(1)雇用関係存在確認,(2)雇用関係があることを前提に,平成2年5月以降の未払賃金(既に死亡した者については,その死亡時までの未払賃金)の支払,(3)違法な解雇等により被った損害回復として,慰謝料1000万円(相続人の場合は,各相続分)の支払,名誉回復のための謝罪文の交付及び掲示,JR北海道,JR東日本,JR九州に対する原告らの採用要請を求めた。 また,原告らは,前記主位的請求(1)(2)が認められなかった場合に備え,予備的請求として,不法行為に基づき,被告に対し,原告らがJRに採用され定年まで勤務した場合(既に死亡した者については,同人がJRに採用され,死亡時まで勤務した場合)に得られたであろう賃金相当額,退職金相当額,年金相当額(以下「賃金相当額等」という。)の損害賠償請求をするとともに,慰謝料を前記(3)の1000万円から2000万円に増額請求(ただし,原告番号230Cについては1000万円,Fの相続人を除くその余の相続人の場合は1000万円の各相続分)した。なお,原告らが,不法行 謝料を前記(3)の1000万円から2000万円に増額請求(ただし,原告番号230Cについては1000万円,Fの相続人を除くその余の相続人の場合は1000万円の各相続分)した。なお,原告らが,不法行為と主張する主な点は,原告らが事業団に配属された末,本件解雇されるに至ったのは,国鉄が国労を嫌悪し,国労組合員であった原告らを差別してJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載しないという不利益取扱いをするという違法な不当労働行為をしたからであるという点である。 1 争いのない事実等(証拠等により認定した事実は,当該証拠等を文中又は文末の括弧内に掲記した。)(1) 当事者等ア被告等(ア) 改革法は,国鉄による鉄道事業等の経営が破綻し,公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難になっている事態に対処するため,国鉄を分割・民営化することにするとしている。そして,改革法は,国鉄の分割・民営化の具体策として,国鉄が経営していた旅客鉄道事業を引き継ぐものとして旅客会社6社,貨物鉄道事業を引き継ぐものとして貨物会社1社を設立するものとし,前記JR各社は,昭和62年4月1日,それぞれ設立された。JR北海道は主として北海道において国鉄が経営していた旅客鉄道事業を,JR東日本は主として東北及び関東のそれを,JR九州は主として九州のそれを引き継ぐものとして設立された会社である。(改革法1条,6条,8条)(イ) 事業団は,昭和62年4月1日,事業団法に基づき成立したが,改革法に定める国鉄改革の実施に伴い,上記7社及び新幹線鉄道保有機構等4社(これら11法人を合わせて「承継法人」という。)による国鉄からの事業等の引継ぎ並びにその権利及び業務の承継等の後において,国 革法に定める国鉄改革の実施に伴い,上記7社及び新幹線鉄道保有機構等4社(これら11法人を合わせて「承継法人」という。)による国鉄からの事業等の引継ぎ並びにその権利及び業務の承継等の後において,国鉄長期債務その他の債務の償還,国鉄の土地その他の処分等を行うほか,臨時に事業団職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進を図るための業務を目的とし,国鉄は,同日,これに移行するものとされた(改革法15条,事業団法1条,同法附則2条)。 (ウ) 事業団は,平成10年10月22日解散し,事業団法47条,日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律(平成10年法律第136号)2条1項の規定により政府が承継する債務以外の事業団の一切の権利義務は,日本国有鉄道建設公団(以下「鉄建公団」という。)に承継された(同法附則2条1項)。鉄建公団は,独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成14年法律第180号)附則2条1項に基づき平成15年10月1日に解散し,その一切の権利義務は,国が承継する資産を除き,被告に承継された。(甲6,弁論の全趣旨)イ国鉄の労働組合について(ア) 国労は,昭和22年6月,国鉄職員により結成され,同62年4月1日以降はJR等承継法人,事業団の職員等で組織されている労働組合である(甲6,7,弁論の全趣旨)。 (イ) 国鉄時代の併存組合国鉄には,その職員等で組織する労働組合として国労のほか,昭和26年6月に結成された国鉄動力車労働組合(以下「動労」という。),同43年10月に結成された鉄道労働組合(以下「鉄労」という。),同46年4月に結成された全国鉄施設労働組合(以下「全施労」という。),同49年3月に結成された全国鉄動力車労働組合(以下「全動労」という。),同61年 成された鉄道労働組合(以下「鉄労」という。),同46年4月に結成された全国鉄施設労働組合(以下「全施労」という。),同49年3月に結成された全国鉄動力車労働組合(以下「全動労」という。),同61年4月に結成された真国鉄労働組合(以下「真国労」という。),同年12月に全施労,真国労等が統合して結成された日本鉄道労働組合(以下「日鉄労」という。)等があった。動労,鉄労,日鉄労等は,昭和62年2月,全日本鉄道労働組合総連合会(以下「鉄道労連」という。)を結成した。また,国労を脱退した組合員らが,昭和62年1月以降,各地区等を単位として鉄道産業労働組合を結成し(以下,北海道鉄道産業労働組合を「北海道鉄産労」といい,九州鉄道産業労働組合を「九州鉄産労」という。),これらの鉄道産業労働組合は,同年2月28日,全国組織として日本鉄道産業労働組合総連合(以下「鉄産労」という。)を結成した。(甲6,弁論の全趣旨)ウ原告ら(ア) 原告らは,昭和62年3月31日までは,国鉄の労働者であったものであり,いずれも国労に所属していた。 (イ) 原告番号1ないし46,47-0,同48ないし115,117ないし138,140ないし228,280-0,同281,286-0,同287-0の各原告(以下「JR北海道入社希望原告ら」という。)は,国鉄の分割・民営化に伴い,JR北海道への入社を希望したが採用されず,昭和62年4月1日以降,事業団の職員になった。なお,原告番号104Aは,第2希望であるJR東日本の採用内定通知を受けたがこれを辞退し,事業団の職員になった。 (ウ) 原告番号229ないし231の各原告(以下「JR東日本入社希望原告ら」という。)は,国鉄の分割・民営化に伴い,JR東日本への入社を希望したが採用されず,昭和62年4月1日 になった。 (ウ) 原告番号229ないし231の各原告(以下「JR東日本入社希望原告ら」という。)は,国鉄の分割・民営化に伴い,JR東日本への入社を希望したが採用されず,昭和62年4月1日以降,事業団の職員になった。 (エ) 原告番号139,232ないし265,267ないし279,282ないし285,288ないし290の各原告(以下「JR九州入社希望原告ら」という。)は,国鉄の分割・民営化に伴い,JR九州への入社を希望したが採用されず,昭和62年4月1日以降,事業団の職員になった。 (オ) 上記(イ)ないし(エ)の各原告は,事業団において,再就職促進法1条,事業団法1条2項に規定する「再就職を必要とする者」(事業団職員)に指定された。上記原告らは,平成2年3月31日までに,再就職先が決定しなかった。 (カ) 原告番号47-0Fは平成16年7月16日死亡し,妻子である同番号47-1ないし47-3の原告らがその地位を相続した。 原告番号280-0Gは平成6年7月3日死亡し,妻子である同番号280-1ないし280-4の原告らがその地位を相続した。 原告番号286-0Hは平成3年12月2日死亡し,妻子である同番号286-1ないし286-3の原告らがその地位を相続した。 原告番号287-0Iは平成10年8月19日死亡し,妻子である同番号287-1ないし287-3の原告らがその地位を相続した。(弁論の全趣旨)(2) 承継法人の職員採用手続ア改革法23条は,承継法人の職員採用手続について,①承継法人の設立委員は,国鉄を通じ,その職員に対し,それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して,職員の募集を行う(1項),②国鉄は,①によりその職員に対し労働条件及び採 て,①承継法人の設立委員は,国鉄を通じ,その職員に対し,それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して,職員の募集を行う(1項),②国鉄は,①によりその職員に対し労働条件及び採用の基準が提示されたときは,承継法人の職員となることに関する国鉄の職員の意思を確認し,承継法人別に,その職員となる意思を表示した者の中から当該承継法人に係る①の採用の基準に従い,その職員となるべき者を選定し,その名簿(以下「採用候補者名簿」という。)を作成して設立委員に提出する(2項),③採用候補者名簿に記載された国鉄の職員のうち,設立委員から採用する旨の通知を受けた者であって,昭和62年4月1日に国鉄の職員であるものは,承継法人の成立時(同日)において,当該承継法人の職員として採用される(3項),④承継法人の職員の採用について,当該承継法人の設立委員がした行為及び当該承継法人の設立委員に対してなされた行為は,それぞれ,当該承継法人がした行為及び当該承継法人に対してなされた行為とする(5項)旨規定している。 イ旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律附則2条は,運輸大臣は,JR各社ごとに設立委員を命じ,当該会社の設立に関しては発起人の職務を行わせる旨を(1項),設立委員は,同項及び改革法23条に定めるもののほか,当該会社が設立の時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行うことができる旨を(2項)をそれぞれ規定する。そして,運輸大臣は,昭和61年12月4日,JR各社の共通設立委員16人及び会社ごとに設立委員2ないし5人を任命した。(甲6,弁論の全趣旨)ウ JR各社合同の第1回設立委員会が,昭和61年12月11日開催され,国鉄改革のスケジュールを確認し,新会社の職員の労働条件について基本的な考え方及び各会 した。(甲6,弁論の全趣旨)ウ JR各社合同の第1回設立委員会が,昭和61年12月11日開催され,国鉄改革のスケジュールを確認し,新会社の職員の労働条件について基本的な考え方及び各会社共通の採用基準を決定し,同月19日,JR各社合同の第2回設立委員会において各社の労働条件の細部が決定され,各会社共通の採用基準とともに国鉄に提示された。 国鉄改革のスケジュールは,①設立委員は,昭和61年12月,JR各社の労働条件及び採用基準を決定し,国鉄に通知する,②これを受けて,国鉄は,同月から同62年1月までの間,職員の配属希望調査を行い,これを集計,分析,調整した上,同年2月,採用候補者名簿を作成して設立委員に提出する,③設立委員は,同月,職員を選考して採用者を決定する,④設立委員は,同年3月,JR各社での配属を決定して国鉄に内示し,国鉄はこれによって配転計画を策定して異動の発令を行うとされ,労働条件については,基本的に国鉄での労働条件を大幅に変更しないよう配慮するというものであった。 また,JR各社共通の採用基準(以下「本件採用基準」という。)は,概略,以下の内容であった。 ① 昭和61年度末において年齢満55歳未満であること。(医師を除く。)(以下「本件採用基準①)」という。)② 職務遂行に支障のない健康状態であること。 ③ 国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者であること。なお,勤務の状況については,職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を国鉄における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること。(以下「本件採用基準③)」という。)④ 「退職前提の休職」(日本国有鉄道就業規則62条(3)ア)が発令されていないこと。 ⑤ 既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること。(以下「本件採用基準③)」という。)④ 「退職前提の休職」(日本国有鉄道就業規則62条(3)ア)が発令されていないこと。 ⑤ 「退職を希望する職員である旨の認定」(緊急措置法4条1項)を受けていないこと。 ⑥ 国鉄において再就職の斡旋を受け,再就職先から昭和65年度(平成2年度)当初までの間に採用を予定する旨の通知を受けていないこと。(甲6,7,弁論の全趣旨)エ運輸大臣であった橋本龍太郎(以下「橋本運輸大臣」という。)は,昭和61年12月16日,改革法19条1項に基づき,閣議決定を経て,「日本国有鉄道の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画」(以下「本件基本計画」という。)を定め,別表1のとおり,国鉄職員のうち承継法人の職員となる者の総数を21万5000名(うちJR北海道の職員数を1万3000名,JR東日本の職員数を8万9540名,JR九州の職員数を1万5000名)と決定した(甲6,277,弁論の全趣旨)。 オ(ア) 国鉄は,昭和61年12月24日,本件採用基準に該当しないことが明白な者を除く職員約23万0400名に対し,承継法人の労働条件,採用基準を記載した書面及び承継法人の職員となる意思を表明する意思確認書の用紙を配布し,同62年1月7日正午までに提出するよう指示した。期限までに,国鉄職員のうち22万7600名が意思確認書を提出し,21万9340名が承継法人への就職を希望し,別表1のとおり,第2希望以下の複数の承継法人名を記載している者を含めた就職申込総数は延べ52万5720名であり,このうち,JR北海道への就職申込総数は延べ2万3710名,JR東日本への就職申込総数は延べ11万3550名,JR九州への就職申込総数は している者を含めた就職申込総数は延べ52万5720名であり,このうち,JR北海道への就職申込総数は延べ2万3710名,JR東日本への就職申込総数は延べ11万3550名,JR九州への就職申込総数は延べ2万9270名であった。(甲6,277,弁論の全趣旨)(イ) 原告番号104Aを除くJR北海道入社希望原告らは,いずれも意思確認書にJR北海道に就職を希望する旨記載して,意思確認書を提出した。原告番号104Aは,意思確認書に,第1希望JR北海道,第2希望JR東日本と記載して意思確認書を提出した。JR東日本入社希望原告らは,JR東日本に,JR九州入社希望原告らは,JR九州にそれぞれ就職を希望する旨記載して,意思確認書を提出した。(甲704,弁論の全趣旨)カ(ア) 国鉄は,昭和62年1月中旬ころまでに,本件採用基準③について,同58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者は明らかに承継法人の業務にふさわしくない者として,採用候補者名簿に記載しないとの方針を定めた(以下「国鉄による本件選定基準」という。)。そして,国鉄は,職員管理調書に基づき,JR各社の職員となるべき者の具体的な選定作業を行い,JR各社の採用候補者名簿を作成した。(甲6,310の1ないし5,同312の1及び2,弁論の全趣旨)(イ) 国鉄は,非違行為6か月以上の処分歴があるとして,原告番号229B,同231DについてJR東日本の採用候補者名簿に,同245EについてはJR九州の採用候補者名簿に記載しなかった。また,原告番号230Cは,昭和61年度末において年齢満55歳未満の要件を充たしていないことから,JR東日本の採用候補者名簿に記載しなかった。原告番号104Aについては,第2希望のJR東日本の採用候補者名簿に記載した。 は,昭和61年度末において年齢満55歳未満の要件を充たしていないことから,JR東日本の採用候補者名簿に記載しなかった。原告番号104Aについては,第2希望のJR東日本の採用候補者名簿に記載した。さらに,国鉄は,その余の原告らについて,入社を希望するJR北海道,JR九州の採用候補者名簿にそれぞれ記載しなかった。(弁論の全趣旨)キ国鉄は,昭和62年2月7日,JR各社の設立委員会に対し,それぞれ採用候補者名簿を提出した。JR各社の採用候補者名簿に記載された職員数は,別表1のとおり,基本計画の職員数を9414名下回る20万5586名(JR北海道は基本計画と同数の1万3000名,JR東日本は基本計画を5197名下回る8万4343名,JR九州は基本計画と同数の1万5000名)であった。(甲4,277,弁論の全趣旨)ク JR各社合同の第3回設立委員会が,昭和62年2月12日に開催され,国鉄から選定作業結果等の説明を受けた上,採用候補者名簿に記載された者全員を当該JR各社に採用することを決定した。これを受けて,JR各社の設立委員会は,昭和62年2月16日以降,採用することを決定した者(以下「採用予定者」という。)に対し,国鉄を通じて同月12日付で同年4月1日付で採用するとの通知書を交付した。採用予定者のうち,JR各社合計で4938名が採用を辞退した(以下,昭和62年4月1日での職員採用を「4月採用」という。)。(甲6,弁論の全趣旨)ケ前記カ(イ)のとおり,原告番号104Aを除く原告らは,いずれも入社を希望するJR北海道,JR東日本,JR九州各社の採用候補者名簿に記載されず,また,同Aは,第1希望であったJR北海道の採用候補者名簿には記載されず,第2希望であったJR東日本の採用候補者名簿に記載され,同社から採用通知を受けた ,JR九州各社の採用候補者名簿に記載されず,また,同Aは,第1希望であったJR北海道の採用候補者名簿には記載されず,第2希望であったJR東日本の採用候補者名簿に記載され,同社から採用通知を受けたがこれを辞退したため,いずれもJR北海道,JR東日本,JR九州に採用されなかった(甲88,弁論の全趣旨,以下「本件不採用」という。)。 (3) 本件解雇に至る経緯ア承継法人に採用されなかった原告ら国鉄職員は,昭和62年4月1日以降,事業団職員となり,再就職促進法に基づき,再就職促進対策が図られることとなった。(甲6,弁論の全趣旨)イ事業団職員の再就職促進基本計画の決定等内閣は,昭和62年6月5日,再就職促進法14条に基づき,「日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進基本計画について」(以下「再就職促進基本計画」という。)を閣議決定した。再就職促進基本計画は,再就職促進法に基づき,3年以内にすべての事業団職員の再就職が達成されるように努めるものとし,かかる目標を達成するため,承継法人,事業団及び国等の講ずべき措置を定めていた。 事業団は,本社内に雇用対策本部を設置し,内閣の国鉄清算事業団職員雇用対策本部と連絡を取り合い,再就職促進基本計画を基礎として,同本部の指導を得ながら各年度ごとに「日本国有鉄道清算事業団職員再就職促進実施計画」(以下「再就職促進実施計画」という。)を策定した。事業団は,昭和62年度の再就職促進実施計画では,再就職促進基本計画に定める目標数の概ね3分の1の事業団職員を同63年度当初までの間に再就職できるように努めるとの目標を立て,同63年度の再就職促進実施計画では,再就職促進基本計画に定める目標数から同年度当初までの間に再就職等による減少分を控除した数の概ね2分の1の事業団職員を同 再就職できるように努めるとの目標を立て,同63年度の再就職促進実施計画では,再就職促進基本計画に定める目標数から同年度当初までの間に再就職等による減少分を控除した数の概ね2分の1の事業団職員を同64年度当初までの間に再就職できるように努めるとの目標を立て,平成元年度の再就職促進実施計画では,残りのすべての事業団職員が同2年4月1日までの間に再就職できるよう努めるとの目標を立てていた。また,事業団は,地方機関として雇用対策部(全国7地区),雇用対策支部(全国20地区)を設置し,それぞれに事業団職員が所属する雇用対策支所を置き,教育訓練所及び職業相談室を設置した。(甲42,43,乙5の1,同6,7の1ないし3,弁論の全趣旨)ウ内閣の国鉄清算事業団雇用対策本部は,平成元年11月21日付で,「今後の日本国有鉄道事業団職員の再就職対策の取組みについて」と題する文書により,今後の再就職対策についての見解を表明した。同文書には,再就職促進基本計画に従い各分野にわたりできる限り多くの再就職の機会を確保し,これらを個々の再就職先未定の事業団職員に示して決断を促すことが重要な課題であり,残された期間関係者の総力を結集して再就職先未定の事業団職員の再就職対策に取り組むものとし,JR東日本,JR東海,JR西日本,JR四国,JR貨物に対し,重ねて追加採用の実施を求めるとともに,その関連事業主,各省庁,地方公共団体,民間事業主に対し求人開拓を更に積極的に実施することを要請する一方,再就職先未定の事業団職員に対し,再就職対策が最終段階を迎えていることを十分に認識の上,意を新たに地域の雇用情勢等の実情に応じた適切な再就職活動を積極的に行うことを強く希望する旨表明されていた。(乙9,弁論の全趣旨)エ事業団は,平成2年3月9日,国労ほか各労働組合と 識の上,意を新たに地域の雇用情勢等の実情に応じた適切な再就職活動を積極的に行うことを強く希望する旨表明されていた。(乙9,弁論の全趣旨)エ事業団は,平成2年3月9日,国労ほか各労働組合と団体交渉を行い,事業団職員のうち再就職促進法失効時において事業団に在籍する者の取扱いについて,雇用対策の終了に伴い失職することを前提に,辞職しない者は,事業団就業規則22条4号により解雇する旨明らかにし,関係組合員に対し,更に再就職の努力を促すとともに,自ら辞職申請書を提出するよう求めた(乙10,弁論の全趣旨)。 オ原告らは,平成2年3月になっても,再就職が未定のままであった。事業団は,平成2年3月20日,原告らを含む再就職未定者1406名(北海道693名,本州・四国56名,九州657名)に対し,再就職が決まらずかつ辞職申請書を提出しないとして,解雇予告通知をし,同年4月1日,原告らを含む1047名を事業団就業規則22条4号に基づき解雇した(本件解雇)。(甲937,乙11ないし14,弁論の全趣旨)(4) 本訴提起原告らは,平成14年1月28日(甲事件),同15年10月20日(乙事件),同年12月12日(丙事件),それぞれ主位的請求に関し本件訴えを提起し,同16年4月19日予備的請求において訴えの追加的変更をした。 (5) 時効援用被告は,甲事件原告らに対し,平成14年11月21日の甲事件第2回口頭弁論期日において主位的請求のうち慰謝料請求について時効を援用するとの意思表示をし,また,被告は,原告らに対し,同16年5月31日の本件第15回口頭弁論期日において予備的請求について時効を援用するとの意思表示をした。 2 争点(1) 本件解雇は有効か(争点1)。 (2) 国鉄ないし事業団は,原告らに対し,不法 31日の本件第15回口頭弁論期日において予備的請求について時効を援用するとの意思表示をした。 2 争点(1) 本件解雇は有効か(争点1)。 (2) 国鉄ないし事業団は,原告らに対し,不法行為を行ったか(争点2)。 ア国鉄が,原告らをJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載せず,前記JR各社に採用させず,事業団に振り分けた行為イ国鉄の指示で,国鉄幹部ないし現場管理者が,昭和57年から同62年のJR不採用までの間にした行為(ア) 原告らに対し,国労所属を理由として,些細な事象での処分,余剰人員扱い,人材活用センター(以下「人活センター」という。)に配属するなどした行為(イ) 国労に所属していてはJRに採用されないと喧伝・脅迫し,事実上,組合脱退をJR採用の条件とした黄犬契約類似の行為(ウ) 前記(ア),(イ)の不利益取扱い,脅迫等をもって,国労の弱体化・変質を図り,原告らに脱退を工作し,原告らの団結権を侵害した行為ウ事業団の幹部ないし現場管理者が,原告らを劣悪な環境に押し込め,自学自習しかさせず,原告らの再就職を妨害した行為エ本件解雇オ事業団ないし被告が,原告らを地元JRに再就職させる法的義務を負っていながら,これを履行しないという継続的不作為(3) 仮に被告に不法行為責任がある場合,不法行為と相当因果関係のある損害賠償の範囲及び相当な損害回復方法(争点3)(4) 仮に原告らの被告に対する損害賠償請求等が認められる場合,同請求権等は時効消滅したか。また,被告が時効を援用することは,権利濫用に当たり許されないか。(争点4)第3 争点に対する当事者の主張の要旨 1 争点1(本件解雇の効力)について【被告】(1) 本件解雇の解雇事 か。また,被告が時効を援用することは,権利濫用に当たり許されないか。(争点4)第3 争点に対する当事者の主張の要旨 1 争点1(本件解雇の効力)について【被告】(1) 本件解雇の解雇事由昭和58年6月に設置された日本国有鉄道再建監理委員会(以下「再建監理委員会」という。)は,国鉄改革の主要事項は余剰人員対策であるとし,国鉄において相当数の余剰人員の活用,調整を図るとともに,国鉄の分割・民営化後に新たに設立されるJR各社では,健全な経営基盤を確保するため適正要員数を考慮した人員配置が必須であるとした。そして,再建監理委員会は,昭和60年7月26日,内閣に提出した最終答申において,JR各社において新規採用されない国鉄職員約6万1000名の余剰人員対策について,国鉄において速やかに希望退職募集,出向,一時休職等の対策を講ずるとともに,当時の労働市場の動向からみて一時に大量の再就職は困難であるとして,国鉄の分割・民営化後においても,3年を限度として旧国鉄(事業団)において雇用を継続し,再就職対策を講ずることを基本対策とした。これを受けて,内閣は,国鉄余剰人員雇用対策の基本方針として,事業団職員に対して雇用を継続し特別対策を講じる期間は,新経営形態移行後3年を限度とする旨明確にした。このような国鉄改革の経緯から,再就職促進法は平成2年4月1日までの3年間の時限立法として制定され,事業団の再就職促進事業は臨時のものと規定され(改革法15条,事業団法1条2項,26条3項),事業団職員の義務は,事業団の他の職員とは異なり,再就職のための教育訓練を受けるという特殊な内容に限定されていた(事業団就業規則3条2項,109条)。事業団は,再就職促進法が失効するまでの3年間,事業団職員の雇用先の確保を図ったが,原告らを含む1047名の事業 教育訓練を受けるという特殊な内容に限定されていた(事業団就業規則3条2項,109条)。事業団は,再就職促進法が失効するまでの3年間,事業団職員の雇用先の確保を図ったが,原告らを含む1047名の事業団職員は,再就職斡旋に応ずることなく,辞職届も提出しなかった。そこで,事業団は,平成2年3月20日,関係労働組合との労働協約に従って原告らを含む1047名に対し,解雇予告通知を行い,同年4月1日,事業団就業規則22条4号に基づき本件解雇を行ったのであって,本件解雇は有効である。 確かに,再就職促進法には,事業団職員の平成2年4月1日以降の処遇について明文の規定が存在しない。しかし,これは,事業団職員が3年の期間内に事業団の就職斡旋努力に対応し,再就職を実現させることが期待されていたからにほかならず,原告らのように事業団職員が地元JRへの採用に固執するなど,その意思により再就職斡旋に応じないまま3年間経過する事態を予定していなかったからであり,このような事態が事業団就業規則22条4号にいう「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」に該当することは当然のことである。原告ら事業団職員の地位は,専ら再就職の特別対策を受けるという目的の範囲内において存続していたものであるから,再就職促進法は同法が失効してもなおその地位を保有し続けるということを予定しておらず,平成2年4月2日以降は事業団職員の雇用継続を前提とした予算措置も講じられていない。 そして,原告らが所属する国労自身,事業団を3年間の限定付の「新たな首切り収容所」と位置付け,法律上,平成2年3月31日に雇用対策が打ち切られ,その後に賃金不払の問題が出てくるとして,再就職促進法の失効により事業団職員の雇用関係が終了することを認識していた。 (2) 原告らの主張に対する反論 平成2年3月31日に雇用対策が打ち切られ,その後に賃金不払の問題が出てくるとして,再就職促進法の失効により事業団職員の雇用関係が終了することを認識していた。 (2) 原告らの主張に対する反論ア再就職促進法等の解釈について原告らは,事業団は,再就職促進法失効後も,改革法,事業団法の規定により,事業団職員の再就職促進事業を続けなければならないのであり,再就職促進法失効を理由に事業団職員を解雇することは許されないと主張する。しかし,原告らの主張は,結局,原告らを含む事業団職員全員を再就職させない限り,時限立法である再就職促進法が存続することを前提とする主張であり,失当である。 また,原告らは,再就職促進法附則3条,4条を根拠に,同法失効後も原告ら事業団職員に対する再就職促進措置が予定されていたと主張する。しかし,再就職促進法附則4条は,同法24条1項所定の事業団の各業務のうち4ないし7号に限定して同法失効後の効力を規定するものであり,同法附則3条所定の失効日の属する事業年度にかかる実施計画の内容も,この範囲に属するものに限られる。そうだとすると,事業団は,再就職促進法失効後,再就職決定後の事業主に対する助成,事業団職員の再就職後の住宅斡旋等の業務を行うことはあるとしても,再就職未定者に対する再就職のための就業指導,斡旋等の特別対策にかかる業務を行うことまでは予定されていなかったというべきである。 さらに,原告らは,再就職促進法は,3年以内に事業団職員全員を再就職させるという国や事業団らの責務を定めたものにすぎないと主張する。しかし,再就職促進法の有効期間である3年経過後において,なお事業団職員が自らの意思で再就職斡旋等に応じない場合に,事業団の義務違反が問われる余地はない。ましてや,別途政令を制 すぎないと主張する。しかし,再就職促進法の有効期間である3年経過後において,なお事業団職員が自らの意思で再就職斡旋等に応じない場合に,事業団の義務違反が問われる余地はない。ましてや,別途政令を制定させて再就職促進法を2年間延長させなければならない義務などない。 なお,原告らは,事業団就業規則22条4号は,原告ら事業団職員への適用を予定していないと主張する。しかし,事業団就業規則は,事業団の全職員を対象とするものであり(同規則2条,事業団法17条),原告ら事業団職員を除外すべき理由はない。 イ原告らを地元JRに採用させる法的義務について原告らは,事業団には原告らを地元JRに採用させる法的義務が存在するとして,この義務を尽くさずに行われた本件解雇は無効であると主張する。しかしながら,国鉄の分割・民営化に伴い発足したJR各社の社員は,本件基本計画において定められた採用予定数の範囲内において,改革法23条所定の手続に従い新企業体の社員としてふさわしいとされた者が採用されたのである。 したがって,このような手続の結果JRの社員として採用されなかった原告らについて,事業団が地元JRに採用させる法的義務を負うことなどない。 また,原告らは,国鉄による採用差別が先行行為となって,信義則上,事業団の再就職促進義務は,採用差別された事業団職員らを地元JRに採用させる義務に転化したと主張する。しかしながら,国鉄が,改革法23条に基づくJR各社の社員の採用に関し,差別を行ったという前提自体誤りである。しかも,JR社員の採用は,JR各社の自由な意思により決定されるものであり,第三者である国鉄等が介入する余地はない。したがって,国鉄による採用差別の有無にかかわらず,事業団の再就職促進義務が地元JRに採用させる法的義務に転化す 各社の自由な意思により決定されるものであり,第三者である国鉄等が介入する余地はない。したがって,国鉄による採用差別の有無にかかわらず,事業団の再就職促進義務が地元JRに採用させる法的義務に転化することなどない。 さらに,原告らは,各地方労働委員会(以下「各地労委」という。)でJR各社の新規採用に関する不当労働行為が認定され救済命令が発令されたもとでは,JR各社にはそれぞれ就職を希望する事業団職員らを採用すべき義務があり,これに応じて事業団の再就職促進義務の内容も事業団職員らを希望する地元JRに採用させるというものになったと主張する。しかしながら,各地労委における救済命令は,いずれも取消訴訟において取り消され,その判断は,最高裁平成13年(行ヒ)第94号,同第96号,各平成15年12月22日第一小法廷判決(以下両判決を併せて「本件最判」という。)により確定したのであり,原告らの主張はその前提が既に失われている。 そもそも,原告らの再就職が3年間で実現しなかったのは,原告らが地元JRへの入社に固執し,それ以外の就職先への再就職斡旋を拒否し続けたことに原因がある。原告らは,数回にわたる本州JR各社による追加採用(広域採用)にも応ずることなく,3年間を徒過したのであって,その責任は専ら原告らにある。事業団は,雇用契約関係終了に向けての準備期間として設定された再就職促進法所定の3年間,原告らを含む事業団職員に対し,再就職活動の指導斡旋に尽力し,JR各社への追加採用を含む多くの再就職先を確保したのであるから,その義務違反を問われるいわれはない。他方,原告らは,再就職の機会を自ら放棄して,地元JRへの入社に固執したのであるから,事業団が再就職促進法失効により雇用契約関係終了に向けた準備期間が終了したとして行った本件解雇が無効と れはない。他方,原告らは,再就職の機会を自ら放棄して,地元JRへの入社に固執したのであるから,事業団が再就職促進法失効により雇用契約関係終了に向けた準備期間が終了したとして行った本件解雇が無効となることはない。 ウ解雇権濫用についてJR各社による国鉄の分割・民営化の際の職員採用は,改革法23条に基づく新規採用であり,原告らが当然にその社員たる身分を取得するものでなく,他方,原告らは,JR各社への不採用後3年間事業団職員としての身分を継続していたのであるから,JR各社への不採用を整理解雇と同一視することはできない。仮にJR各社による不採用を整理解雇と同視できるとしても,本件解雇は,いわゆる整理解雇の4要件(①人員削減の必要性,②人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性,③被解雇者の選定の妥当性,④手続の妥当性)を充足するものであって,合理的な理由を有し,社会通念上相当なものであるから,解雇権の濫用ということはできない。そうだとすると,JR各社への不採用後一連の措置としてなされた本件解雇が無効になることはない。 【原告ら】(1) 再就職促進法附則2条は違憲無効であること再就職促進法附則2条は,同法が平成2年4月1日限り失効する旨規定している。しかし,再就職促進法が規定する事業団の再就職促進義務は,国鉄労働者が,国鉄改革という公共のために,雇用及びこれに伴う賃金受給権など労働者として生活を営むために必要不可欠な「財産」を奪われることに対する国の責任として,「正当な補償」(憲法29条3項)を確保する趣旨で規定された重大な義務である。したがって,再就職促進法附則2条が3年の期限を定めるについては,国鉄の採用候補者名簿作成等に組合差別がないこと,事業団が3年間誠実に再就職措置を行うことが前提とされてい 定された重大な義務である。したがって,再就職促進法附則2条が3年の期限を定めるについては,国鉄の採用候補者名簿作成等に組合差別がないこと,事業団が3年間誠実に再就職措置を行うことが前提とされていたところ,いずれの前提も実現されていない(前提の欠落)。そうだとすると,再就職促進法附則2条は,同法を3年の期限とすることの前提を欠いており,憲法27条,28条,29条3項に違反し,無効である。 (2) 再就職促進法の失効による本件解雇は無効であることア仮に再就職促進法附則2条が有効であるとしても,同法14条3項は,国の策定する再就職促進基本計画は,移行日から3年以内にすべての事業団職員の再就職が達成されるような内容のものとして定められなければならないと規定し,国及び事業団側の義務として3年以内に事業団職員の再就職を達成しなければならないと定めている。このような再就職促進法の趣旨に照らすと,同法附則2条所定の失効日が到来したからといって,事業団職員の早期かつ円滑な再就職の実現が改革法の規定による国鉄改革を確実かつ円滑に実施する上で不可欠であるとの認識(同法2条)が変更されることはなく,再就職促進義務自体が3年でなくなることにはならない。再建監理委員会の最終答申,「日本国有鉄道事業団職員の再就職促進基本計画について」,「平成元年度日本国有鉄道事業団職員再就職促進実施計画」等においてもかかる趣旨が明記されていた。また,事業団理事長であった杉浦喬也は,昭和62年8月25日,国会において,事業団職員について3年間で完全に再就職させることを約束した。 イ再就職促進法は,同法附則2条により同法が失効した場合の事業団職員の地位に関する規定を設けておらず,同法自体,3年経過後に事業団職員を解雇することを予定していなかったといえる。再就職 た。 イ再就職促進法は,同法附則2条により同法が失効した場合の事業団職員の地位に関する規定を設けておらず,同法自体,3年経過後に事業団職員を解雇することを予定していなかったといえる。再就職促進法が同法附則2条により失効しても,事業団理事長が同法14条1項に基づいて原告らを再就職を必要とする者と指定した行為が失効するだけであり,これにより原告らの事業団における労働者としての地位が消滅することにはならない。事業団就業規則22条4号が規定する「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」とは,専ら事業団職員以外の職員への適用を予定した規定であり,再就職促進法失効による事業団職員の解雇を予定した規定ではない。したがって,事業団は,事業団就業規則22条4号に基づき,事業団職員である原告らを解雇することはできない。 ウ仮に事業団就業規則22条4号が原告ら事業団職員をも対象としていたとしても,原告らが再就職することができなかったのは,国鉄がJR北海道,JR東日本,JR九州の採用候補者名簿作成において組合差別を行ったこと,事業団が十分な就職斡旋をせず,各地労委の救済命令を前記JR各社に履行するよう働きかけなかったことに原因がある。そうだとすると,本件解雇は,「経営上やむを得ない」場合には当たらない。 また,事業団は,平成2年4月1日当時,1047名の未就職者を抱え,なお多くの業務を残していた。したがって,事業団は,再就職促進法附則2条の期限後も再就職特別措置を継続することができ,そうすべき義務があったのであるから,本件解雇には事業団就業規則22条4号所定の解雇理由はない。 被告は,原告らが地元JRへの入社に固執したため再就職することができなかったなどと主張する。しかし,国鉄ないしJRが原告らに対し採用差別と には事業団就業規則22条4号所定の解雇理由はない。 被告は,原告らが地元JRへの入社に固執したため再就職することができなかったなどと主張する。しかし,国鉄ないしJRが原告らに対し採用差別という不当労働行為,団結権侵害を行った以上,原告らが地元JRへの入社を求め,労働委員会の救済命令の履行を求めたのは当然のことである。また,原告らの勤労の権利は,国鉄改革のために犠牲となったのであるから,原告らに対しては,完全な補償がされなければならず,地元JR以外の再就職先としては,国鉄勤務当時と同程度の賃金,労働条件,そして国鉄時代の技能が生かせる職場でなければならなかったのである。原告らがこのような措置を求めたため3年以内に再就職できなかったとしても,原告らに責任はない。 エ再就職促進法は,立法段階において,3年間で事業団職員全員の再就職が果たせなかった場合には,例外的に再就職促進措置を延長することを予定していた。すなわち,再就職促進法附則4条は,例外的に再就職促進措置を延長するため,失効日以前に開始された同法24条1項に規定する事業団の業務については,同項の規定は,同法附則2条の規定にかかわらず,失効日後も,なおその効力を有すると規定している。ところで,再就職促進法失効当時,原告らを地元JRに採用せよとの各地労委命令が発令されており,その履行は憲法27条,28条,29条3項に基づき要請される特別の業務であり,事業団職員の再就職の援助等のために必要な業務(同法24条1項7号)に当たるから,同法附則4条により同法失効日以降も行うことができた。また,再就職促進法附則3条は,失効日の属する事業年度にかかる実施計画については,同法15条1項の規定に関わらず,作成することを要せず,この場合において,当該事業年度に係る同条2項各号に掲げる事項 また,再就職促進法附則3条は,失効日の属する事業年度にかかる実施計画については,同法15条1項の規定に関わらず,作成することを要せず,この場合において,当該事業年度に係る同条2項各号に掲げる事項については,当該事業年度の直前の事業年度に係る事業計画に定めるものとすると規定しており,平成2年度以降も事業団職員の円滑な再就職の促進に関する措置を実施することが予定されていたといえる。さらに,再就職促進法附則6条は,同法の失効にともない必要な経過措置は,政令で定めると規定しており,再就職促進事業の継続を予定していたといえる。この点,確かに,事業団については,平成2年4月2日以降,職員の雇用継続を前提とした予算措置が講じられていない。しかし,事業団法37条は,予算等の変更のあり得ることを当然の前提としており,事業団は,同条に基づき予算の変更手続を行うことができる。さらに,事業団には予備費,予算流用の規定があり(事業団の再就職促進業務に係る財務および会計等に関する命令13条14項),その認可前の予算外支出が禁じられているわけではない。事業団は,内閣に働きかけて政令を制定させ,原告ら事業団職員らを地元JRに採用させる業務を引き続き行う義務があったのに,これを怠りながら,本件解雇をすることは違法であり,本件解雇は無効というべきである。なお,再就職促進措置が延長されることが予定されていたことを裏付けるものとして,橋本運輸大臣,国鉄改革本部長代理であった三塚博が,昭和61年11月28日(国鉄改革関連法成立の日),国鉄総裁杉浦喬也,運輸省国鉄再建総括審議官林淳司ら立会の下,参議院議員対馬孝旦,同青木薪次との間で作成した「事業団職員の雇用について」と題する念書(甲18)が存在する。 オ事業団は,再就職促進法失効後も,国鉄の長期借入金及び鉄道債券に 司ら立会の下,参議院議員対馬孝旦,同青木薪次との間で作成した「事業団職員の雇用について」と題する念書(甲18)が存在する。 オ事業団は,再就職促進法失効後も,国鉄の長期借入金及び鉄道債券にかかる債務等の償還,資産の処分等相当量の業務を行うことが予定されていた(事業団法1条1項,26条)。これらの業務を行った事業団の本務職員は,事業団解散時に事業団の要請によりJRへの再就職を果たしているのであるから,事業団職員についても解雇をせずにこれらの業務を行わせつつ,地元JRへの再就職を実現させるべきであった。事業団は,憲法27条,28条,29条3項に基づき,原告らを地元JRに採用させる法的義務を負っており,かつ同義務を履行することが可能であったにもかかわらず,原告らを含む事業団職員を解雇した。 カ以上によれば,本件解雇は,憲法27条,28条,29条3項に違反し,無効である。 (3) 本件解雇は不当労働行為に当たり,無効であることア国鉄は,国労を嫌悪し,総裁以下国鉄当局幹部が組織的・計画的に不当労働行為を行い,昭和62年2月,原告らが積極的な国労組合員であることを唯一の理由として,JRの採用候補者名簿に記載しなかった。このため,原告らは,昭和62年4月1日,希望するJR北海道,JR東日本,JR九州に採用されず,事業団職員に指定され,3年間不安定な雇用形態に置かれ,平成2年4月1日解雇された。国鉄が,原告らを事業団職員に指定したのは,組合差別による振り分けの結果であり不当労働行為として無効である。したがって,原告らが事業団職員であることを前提にする本件解雇も無効である。 イ再就職促進法22条によれば,事業団は,事業主に対して事業団職員をその労働者として雇い入れるように積極的に要望する等,事業団職員の再就職の機会 であることを前提にする本件解雇も無効である。 イ再就職促進法22条によれば,事業団は,事業主に対して事業団職員をその労働者として雇い入れるように積極的に要望する等,事業団職員の再就職の機会の確保を図るために必要な措置を講ずるものと規定している。ところが,事業団は,雇用対策業務を担当する者の半数以上がJR各社からの出向者で,国鉄時代に国労攻撃を行っていた管理職であったことから,原告ら事業団職員に対し,再就職の機会の確保を図るために必要な措置,再就職の促進を図るための教育訓練,求人の開拓,職業指導,職業紹介等を行わなかった。 そればかりか,事業団は,再就職対策,JR追加採用に当たって,国労に所属していた原告らを他労組に所属していた職員と差別した上,本件解雇を行ったのであり,本件解雇は不当労働行為に当たり無効というべきである。 (4) 原告らを地元JRに採用させずにされた本件解雇は無効であること国鉄は,JR各社とともに原告らの採用差別という不当労働労働行為を行ったのであるから,これらの不当労働行為が先行行為となって,国鉄を承継した事業団は,原告らに対し,単に民間企業や公的部門の就職先を紹介しただけでは再就職促進義務を尽くしたとはいえない。事業団は,原状回復に相当するものとして,採用差別された事業団職員らを地元JRに採用させる法的義務を負っていた。また,事業団は,JR北海道及びJR九州の昭和62年6月採用(以下「6月採用」という。)においても,組合差別を助勢したのであり,原告らを地元JRに採用させる義務は更に重大となった。全国各地の各地労委は,昭和63年ころから,JR各社は事業団職員らを同62年4月1日から採用したものとして扱えとの救済命令を発令したところ,事業団は当時JR各社の全株式を保有していたのであるから,事業団職員ら 地労委は,昭和63年ころから,JR各社は事業団職員らを同62年4月1日から採用したものとして扱えとの救済命令を発令したところ,事業団は当時JR各社の全株式を保有していたのであるから,事業団職員らが就職を希望する地元JRに対し,採用を要請すべきであった。さらに,JR各社には,平成2年4月1日当時,欠員が出ており,旅客,貨物を併せると,事業団に残っていた職員全員を地元JRに採用させることが可能であった。このように,事業団は,憲法27条,28条,29条3項に基づき原告らを地元JRに採用させる法的義務を負っており,かつ同義務を履行することが可能であったにもかかわらず,原告らを含む事業団職員を解雇した。したがって,本件解雇は,憲法27条,28条,29条3項に違反し,無効である。 (5) 解雇権濫用であること国鉄の原告らに対する採用候補者名簿不記載は,国鉄とJR各社との実質的同一性を前提とすれば,実質的には期限付の整理解雇であったといえる。そうだとすると,本件解雇の効力を判断するに当たっては,採用候補者名簿作成時である昭和62年2月当時,いわゆる整理解雇の4要件を充たしていたかが問題となる。この点,国鉄は,原告らに対し,被解雇予定者選定というべき採用候補者名簿不記載の理由を明らかにせず,協議・説明義務を果たしていないこと,被解雇予定者選定の合理性もないことからして,採用候補者名簿不記載ひいては本件解雇は,整理解雇の要件を充たしておらず,解雇権濫用として無効である。 2 争点2(不法行為の有無)について(1) 国鉄が,原告らを希望するJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載せず,前記JR各社をして不採用とさせ,事業団に振り分けた行為(以下「本件不法行為①」という。)【原告ら】ア国鉄では,予想を上回る 北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載せず,前記JR各社をして不採用とさせ,事業団に振り分けた行為(以下「本件不法行為①」という。)【原告ら】ア国鉄では,予想を上回る退職者が出て昭和61年度末の職員数は約22万7000名となった。この職員数と再建監理委員会答申に掲げられた新事業体発足時の要員規模である21万5000名との差は1万2000名にすぎず,退職等の自然減により1年間で余裕を持って削減できる余剰数であった。しかも,採用候補者名簿記載者数は上記要員規模を9414名下回っていたのであり,JR北海道及びJR九州では要員数以上の採用をし,総数内で調整を行うべきであった。なぜなら,同じ国鉄職員でありながら,たまたま勤務希望地が本州・四国であったか,北海道・九州であったかによって,前者はほぼ全員採用となり,後者は高い率で不採用になるように振り分けてよい合理的理由も社会的相当性もないからである。 イ国鉄は,停職処分6か月以上の処分を受けた者又は停職2回以上の処分を受けた者を新会社であるJR各社の業務にふさわしくない者として,採用候補者名簿記載の選定基準とした。しかし,国鉄による本件選定基準は,職員の技術の優劣,実績等をみることなく,勤務上の規律の面だけを重視するものであること,当該労働処分(労働組合の組合員として組合の方針に従って活動したことを理由とする処分のこと,以下同じ。)の対象となった行為については既に国鉄において処分を受けており二重処分に当たることなどからして相当ではない。仮に本件選定基準が相当であるとしても,原告らのうちこの基準に該当し,採用候補者名簿に記載されない者は,原告番号229B,同番号231D及び同番号245Eの3名だけである。また,上記基準に該当しながらJR各社に採用された者もおり ても,原告らのうちこの基準に該当し,採用候補者名簿に記載されない者は,原告番号229B,同番号231D及び同番号245Eの3名だけである。また,上記基準に該当しながらJR各社に採用された者もおり,その運用は恣意的なものであった。 ウまた,本件採用基準①である昭和60年当時55歳未満との選定基準は,一方的に事実上55歳定年制を導入するものであり,その内容に合理性がない。 エ国鉄が,採用候補者名簿作成の際,原告ら国労組合員を所属組合を理由に差別したことは,①大量観察方式によれば各組合間の不採用率に顕著な差があること,②国労脱退者が従前に処分歴や国労の役員歴があるにもかかわらずJRに採用される一方,国労に残った者はいかに優秀であっても採用候補者名簿に記載されず不採用となったこと,③国鉄の分割・民営化当時の旧国鉄幹部の発言,現場管理者の国労脱退勧誘行為,④国労組織の顕著な組合員数の減少,⑤国鉄,JR北海道及びJR九州が不採用となった職員に対し不採用理由を開示していないことなどからして明らかである。 【被告】国鉄では,その抜本的改革が立法,行政各分野において,不可避な施策として進められるのに対応して,職場秩序の是正に努力するとともに,人員対策を推進し,各労働組合に対しても協力を要請した。これに対し,原告らが所属する国労は,国鉄の要請に対し,既得権益の侵害であるとして協力を拒否し,組織的な妨害を行った上,公共企業体等労働関係法(以下「公労法」という。)で禁止されていた違法な争議行為を行った。原告らは,国労の基本方針に従い,国鉄の経営施策等に対する反対運動,非協力,上司に対する反抗,就業規則違反行為等を行った。他方,動労,鉄労,全施労,真国労は,国鉄改革労働組合協議会(以下「改革労協」という。)を結成し,鉄道事業再生のた 経営施策等に対する反対運動,非協力,上司に対する反抗,就業規則違反行為等を行った。他方,動労,鉄労,全施労,真国労は,国鉄改革労働組合協議会(以下「改革労協」という。)を結成し,鉄道事業再生のための現実的方法として国鉄の分割・民営化を受け入れた。そして,動労,鉄労,全施労,真国労は,国鉄の分割・民営化の実施に向けて一致協力することとし,鉄道事業の健全な経営を安定させるため争議権の行使を自粛することなどについて,国鉄との間で第二次労使共同宣言を締結した。原告ら国労組合員が相対的に勤務成績が劣位と判断され,採用候補者名簿に記載されない者の比率が高くなったのは,以上のような国労組合員の勤務実態が反映された結果であって,組合所属による差別ではない。原告ら国労組合員は,一般の批判を無視し,意識改革は不要であるとして勤務態度を改めようとせず,旧来の既得権に固執し,企業人教育を拒絶,否定した。その結果,原告ら国労組合員は,国労の職場闘争主義と一線を画し,職場規律の確立に努め,その他の諸施策に協力して勤務に励んだ他労組所属の職員と対比して,総合評価において勤務成績が劣位であると評価され,新会社であるJR各社の業務への適合性が劣るものとして採用候補者名簿に記載されなかった。以上のとおり,原告ら国労組合員が,採用候補者名簿に記載されなかったのは,国鉄の人事裁量権の正当な行使の結果としてやむを得ないことであり,このような母集団の異なる事情を無視し,採用候補者名簿記載者の組合比率のみから組合差別ということは相当ではない。 (2) 国鉄が,昭和57年から本件不採用までの間に,原告らに対し行った行為(以下「本件不法行為②」という。)【原告ら】ア国鉄が,原告らに対し,国労組合員であることを理由に,些細な事象での処分,余剰人員扱い,人活センター 用までの間に,原告らに対し行った行為(以下「本件不法行為②」という。)【原告ら】ア国鉄が,原告らに対し,国労組合員であることを理由に,些細な事象での処分,余剰人員扱い,人活センターへの配属などした行為(ア) 不当処分国鉄は,原告らに対し,国労からの脱退を促すため,現場規律是正の名の下に,国鉄の分割・民営化に反対するワッペン,国労バッジ,赤いタオルに「団結国労」などと白抜きされたタオル等の使用を禁止し,立席呼名点呼を強要するなど,管理者が連日のように些細なことを指摘して職員管理台帳等に記載し,処分等を行った。 (イ) 広域異動と国労排除国鉄では,現場の職員は管理局毎に採用され,管理局管内での異動はあるものの,職員の希望がない限り,他の管理局管内に異動することはなかった。ところが,国鉄は,第1次労使共同宣言を締結し,国鉄の分割・民営化を受け入れていた動労ら所属の組合員に対し,雇用確保,余剰人員の平準化のため組合員の広域異動に応じるよう指導し,多数の広域異動者に異動先で多能化教育を受けさせることによって,それまで鉄道業務本務に就いていた国労組合員を押しのける形でいわゆる玉突き人事を行い,原告ら国労組合員を余剰人員扱いした。 (ウ) 人活センター配転国鉄は,原告ら国労組合員を集中的に人活センターに配転して本務からはずし,駅の清掃,ペンキ塗り,ガラス磨き,オレンジカードの販売,草刈り等を行わせるなどの嫌がらせをした。国鉄は,原告ら国労組合員を人活センターに配属することにより,新聞報道等とも相まって,このまま国労に所属していたのではJR各社に採用されないとの危機感を煽った。 (エ) 日本国有鉄道法29条4号には,国鉄職員の免職事由として,業務量の減少その他経営 ,新聞報道等とも相まって,このまま国労に所属していたのではJR各社に採用されないとの危機感を煽った。 (エ) 日本国有鉄道法29条4号には,国鉄職員の免職事由として,業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合が規定されていたところ,国鉄は,同規定を逆手にとり,雇用安定協約を締結している組合には同規定の発動はないが,同協約を締結していない国労の組合員に対しては同規定の発動があり得るとの見解を流布し,原告ら国労組合員の雇用不安を煽った。 イ国鉄は,原告らに対し,国労に所属していてはJRに採用されないと脅迫し,事実上,国労からの脱退を採用の条件とした黄犬契約類似の行為等(ア) 国鉄改革法案提出と国労脱退の威嚇国鉄は,昭和61年3月3日に国会に提出された改革法案上,採用候補者の選定及びその名簿の作成を行うという立場にあったところ,国鉄の分割・民営化時点で大量の人員が新会社であるJR各社から排除されることを最大のてことして,原告ら国労組合員に対し,国労に所属していてはJR各社に採用されないと脅迫し続けた。かかる脅迫行為は,国労組合員である原告らに対する不利益取扱いであるとともに,実質的にみて,国労の組合員でないことを承継法人の募集・採用の条件としたものということができ,国鉄が黄犬契約と同視しうる不当労働行為を承継法人設立委員と一体となって行ったといえる。 (イ) 職員管理調書の創設と国労差別国鉄は,昭和61年3月5日,いまだ改革法案が法律として成立していないにもかかわらず,国鉄の分割・民営化を既定方針とし,従前国鉄内で人事評価に用いていた職員管理台帳に加え,分割・民営化の際の採用候補者選定の資料にするため,各総局長,各鉄道管理局長ら宛に職員管理調書の作成を指示した。職員管理調 民営化を既定方針とし,従前国鉄内で人事評価に用いていた職員管理台帳に加え,分割・民営化の際の採用候補者選定の資料にするため,各総局長,各鉄道管理局長ら宛に職員管理調書の作成を指示した。職員管理調書は,国鉄の分割・民営化賛成に転じた動労所属の組合員に対する査定が不利益にならないよう,評定期間を動労が国鉄の分割・民営化賛成に転じた昭和58年4月以降の3年間に限定し,動労組合員の労働処分や職場規律問題が考慮されないよう配慮されていた。また,職員管理調書の評価事項は,抽象的項目が羅列されており,国労に所属し,国鉄の分割・民営化に反対して,ワッペンを着用したり,ストライキに参加したりしている以上,他組合所属の組合員より著しく低い評定を受けざるを得ない仕組みとなっていた。さらに,国鉄は,職員管理調書の評価事項に現状認識の項目を設け,仕事や技能による評価ではなく,国鉄の分割・民営化を認めるか否かを評価対象とし,これに反対する国労に所属していることがJR各社への採用上著しく不利益となるような体制を整えた。 国鉄は,数回にわたり職員管理調書の再評価を行い,導入時の評価が低くても国労を脱退すれば評価を高くするなどして原告ら国労組合員を差別するために利用した。 (ウ) 国労解体攻撃としての企業人教育とインフォーマル組織形成国鉄は,昭和61年4月3日,活力ある経営を通じて鉄道事業の未来を切り開いて行くため,職員に企業人としての考え方とその行動力を身につけさせると称して,1回あたり3日ないし4日間の日程で企業人教育を行い,全国で約5万5000名の職員をこれに参加させた。企業人教育においては,意識改革の名の下に国鉄の分割・民営化への協力が指導された。企業人教育の参加者らは,参加後,全国の各職場において,管理職の援助等を受けながらインフォー 職員をこれに参加させた。企業人教育においては,意識改革の名の下に国鉄の分割・民営化への協力が指導された。企業人教育の参加者らは,参加後,全国の各職場において,管理職の援助等を受けながらインフォーマル組織を形成した。インフォーマル組織は,後に国労を脱退する者の受皿となり,あるいは他労組を結成する温床となった。 ウ国鉄は,前記ア,イの行為(本件不法行為②)により,国労の弱体化・変質を図った上,原告らに対し国労からの脱退を迫り,原告らの団結権を侵害した。 エ憲法28条は,団結権等の保障を私法上の公の秩序(民法90条)として規定している。したがって,団結権等の保障に反する不当労働行為は,私法上の効果としては無効となり,不法行為としての違法性を備える。また,不当労働行為意思があれば,故意以上の認識があるといえる。よって,本件不法行為②は違法な不法行為というべきである。 【被告】本件不法行為②についての原告らの主張は,いずれも否認ないし争う。 (3) 事業団の幹部ないし現場管理者が,事業団において,原告らを劣悪な環境に押し込め,自学自習しかさせず,原告らの再就職を妨害した行為(以下「本件不法行為③」という。)【原告ら】ア事業団は,原告らをあえて遠方の雇用対策支所に配属したり,倉庫や廃屋のような建物に気積空間規制を無視して過剰に収容したりした。さらに,事業団は,国鉄時代に国労差別を行った管理者を雇用対策支所の管理者として配属し,原告らに対し,自学自習の名の下に再就職斡旋を放棄したり,役に立たない職業訓練等を行ったり,JRや公的部門希望者に対し資格取得を制限したりして,お座なりな就職指導・斡旋を行った上,就職指導・斡旋回数を捏造したり,水増しするなどの不法行為を行った。 イ事業団は,JRへの追加採用 り,JRや公的部門希望者に対し資格取得を制限したりして,お座なりな就職指導・斡旋を行った上,就職指導・斡旋回数を捏造したり,水増しするなどの不法行為を行った。 イ事業団は,JRへの追加採用において,国労を脱退した者を採用させたり,他労組所属の者を優先させたりするなどして,国鉄時代の国労差別を継続した。また,事業団は,事業団職員の再就職活動の際,職員管理調書を再就職先の企業に提出し,原告らの再就職を妨害した。 【被告】事業団は,昭和62年4月1日から平成2年4月1日までの間,原告ら事業団職員に対し,可能な限り,再就職の斡旋,面談等を行った。その就職指導は各人平均73.8回,就職斡旋は各人平均33.5回であった。特に本州JR各社による追加募集は,国の主導のもと4次にわたって行われ,広く再就職の機会が与えられた。この結果,当初1万8877名いた事業団職員は,本件解雇当時,1034名にまで減少した。ところが,原告らは,地元JRへの入社に固執したり,再就職先を地元企業に限定したりしたため,再就職することができなかったのであり,事業団には再就職促進法上の義務違反などない。 (4) 本件解雇(以下「本件不法行為④」ともいう。)【原告ら】本件解雇は,前記1【原告ら】主張のとおり無効であって,これを行った事業団及びその地位を承継した被告に不法行為責任が認められる。すなわち,事業団は,原告らを原職に復帰させることを命ずる各地労委命令が出されていたのであるから,広域採用に応じなかった原告らを安易に解雇するのではなく,地元JRへの採用,再就職促進法の期間延長,事業団の本務職員への暫定的配転等の措置を講ずるべき義務を負っていた。しかるに,本件解雇は,前記義務を懈怠してなされたものであり,労働者の家族的責任を解雇の理由に Rへの採用,再就職促進法の期間延長,事業団の本務職員への暫定的配転等の措置を講ずるべき義務を負っていた。しかるに,本件解雇は,前記義務を懈怠してなされたものであり,労働者の家族的責任を解雇の理由にすることを禁止するILO56号条約4条(a),8条にも違反する。さらに,原告らに対し原職復帰を命ずる各地労委命令が出されていたのであるから,労働契約上の職種及び勤務地の限定がされていたのと同様であると評価することができ,これを逸脱して配転命令類似の広域採用に応じないからといって本件解雇に及ぶことは違法である。 【被告】本件解雇は,前記1【被告】主張のとおり,正当なものであり,有効である。また,本件解雇は,事業団において再就職促進法が有効であった3年間に再就職することなく,平成2年4月1日,退職金の上乗せ支給の提案にもかかわらず,辞職を拒否した原告らを含む事業団職員1047名に対し,事業団就業規則22条4号に基づき,一律に行われたものであり,そこには組合差別に係る不当労働行為その他不法行為と評価される行為は何ら存在しない。 (5) 事業団ないし被告が,原告らを地元JRに再就職させる法的義務を負っていながら,これを履行しない継続的不作為(以下「本件不法行為⑤」という。)【原告ら】前記1【原告ら】(4)主張のとおり,事業団ないし被告は,国鉄の国労に対する支配介入と採用差別を先行行為として行いながら,原告らを地元JRに再就職させる義務を履行しておらず,これは継続的不作為による不法行為に当たる。 【被告】原告らの上記主張は,時効消滅の適用を潜脱しようとするものであり,結局は,事業団が平成2年4月1日にした本件解雇を問題とするものであって,継続的不作為による不法行為などということはできない。 3 争点3( 上記主張は,時効消滅の適用を潜脱しようとするものであり,結局は,事業団が平成2年4月1日にした本件解雇を問題とするものであって,継続的不作為による不法行為などということはできない。 3 争点3(本件不法行為による損害賠償の範囲,損害回復方法)について【原告ら】(1) 賃金相当額等原告らは,前記2(1),(3)の各【原告ら】主張のとおり,国鉄,事業団から本件不法行為①③を受けた。すなわち,原告らは,国鉄から国労所属の組合員であるがゆえにJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載されなかった結果,前記JR各社に採用されなかったという不利益を被った。また,原告らは,事業団においても十分な就職斡旋をされないために前記JR各社に採用されなかった。原告らは,国鉄から組合差別を受けることなくJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載されていれば,また,事業団で十分な就職斡旋をされていれば,前記JR各社に採用されていたはずである。そうだとすると,国鉄,事業団の地位を承継した被告は,原告らに対し,別紙原告別損害賠償請求額一覧表記載のとおり,原告らがJR北海道,JR東日本,JR九州に採用されていたら得られたであろう定年まで働いた場合の賃金相当額等の損害について賠償する義務がある。 (2) 慰謝料ア原告らは,慰謝料請求について,共通損害の包括一律請求をしている。すなわち,本件不法行為①ないし⑤の各不法行為は,国労解体・変質・排除の意思のもとに原告ら国労組合員に対して一貫して系統的にされてきた加害行為である。そして,その手段は,地域によって多少の差はあるものの,国鉄・事業団の方針として共通したものであり,原告らの受けた被害も,国労所属による不利益・迫害・差別による精神的損害という点で共通している。 る。そして,その手段は,地域によって多少の差はあるものの,国鉄・事業団の方針として共通したものであり,原告らの受けた被害も,国労所属による不利益・迫害・差別による精神的損害という点で共通している。 イすなわち,国鉄は,当時国鉄職員局関係者が提供した情報により作出された「ヤミ・カラキャンペーン」によって,国鉄労働者について,「職務不適格者」「イデオロギーに拘泥」との世間の偏見があった中,原告らに対し,希望する地元JRの採用候補者名簿への不記載及び不採用を通知した。そして,国鉄が原告らのJRへの不採用理由を明らかにしなかったことにより,原告らは職務不適格者であるとの印象を世間に与え,原告らの労働者としての社会的評価を著しく下落させた。さらに,事業団は,本件解雇により,原告らは再就職もできずに解雇された労働不適格者であるとの印象を世間に与え,原告らの労働者としての尊厳を決定的に傷つけた。 ウこれらの損害状況に照らせば,既に死亡した者(原告番号47-0Fを除く)及び原告番号230Cを除く原告らの慰謝料額は2000万円を下らず,既に死亡した者(原告番号280-0J,同286-0H,同287-0I)及び同230Cの各慰謝料額は1000万円を下らない。 (3) 謝罪文,採用要請本件不法行為①,④,⑤によって団結権,勤労の権利を侵害され続けている原告らの被害回復措置として,また,原告らの名誉を回復するため適当な処分として,被告は,憲法13条,民法723条に基づき,原告らに対し,別紙謝罪文の掲示・交付をし,また,被告は,地元JRに対し,別紙要請書を交付して原告らの採用を要請する義務が存在する。 【被告】本件不法行為による損害賠償の範囲,損害回復方法についての原告らの主張は,いずれも否認ないし争う。なお,原告らは し,別紙要請書を交付して原告らの採用を要請する義務が存在する。 【被告】本件不法行為による損害賠償の範囲,損害回復方法についての原告らの主張は,いずれも否認ないし争う。なお,原告らは,JR各社に採用された場合を仮定して賃金相当額等の支払請求をするが,原告らがJR北海道,JR東日本,JR九州に採用されるべき余地がないことが本件最判で確定している以上,原告らにその採用を前提とした損害が発生する余地はなく,原告らの主張は前提を欠き,失当である。 4 争点4(時効消滅及びその援用の可否)について【被告】(1) 時効消滅についてア本件不採用は昭和62年4月1日に行われ,本件解雇は平成2年4月1日に行われたところ,本件訴えは,原告らが加害者及び損害を知った時から既に3年以上を経過して提起されたものであることは,次のイないしエから明らかである。よって,原告らの本件不法行為①ないし⑤に基づく損害賠償請求権等は,いずれも被告の時効援用の意思表示により既に消滅している。 イ原告らは,JR設立委員から採用予定者に対し採用通知がされた昭和62年2月16日直後から,国労組合員が差別されたとの見解を有し,そのころから国鉄及びJR各社に対する損害賠償請求等の訴訟提起に係る検討を行っていた。そして,国労は,闘争方針を検討した結果,JR各社を被申立人とする労働委員会に対する救済申立てを先行させることとし,同救済申立事件において,国鉄による採用候補者名簿作成に係る不当労働行為の主張をしていた。 原告らは,このような国労の方針を理解し,自らこれに従うこととし,関係組合員として同事件に積極的に参画していたことなどからすれば,既に昭和62年2月ころから,原告らのJR不採用に関する国鉄の責任を認識していたといえる。 ウまた,原告 これに従うこととし,関係組合員として同事件に積極的に参画していたことなどからすれば,既に昭和62年2月ころから,原告らのJR不採用に関する国鉄の責任を認識していたといえる。 ウまた,原告らは,再就職促進法が同法附則2条に基づき失効する前から,最悪な事態に備えて,事業団とどのような闘いを進めていくかということも,国労組織全体で率直な討論を積み重ねていく必要があるとの認識を有していた。原告らは,本件解雇の際,事業団の責任を追及するとともに,今後も本件解雇の効力を争う旨表明していたのであるから,この時点において,既に本件解雇にかかる事業団の責任(「加害者」及びそれによる「損害」)を認識していたことは明らかである。 エさらに,①原告らは,本件解雇にかかる退職金及び解雇予告手当の受領に際し,事業団理事長に対し,本件解雇の撤回を要求し,解雇無効の仮処分命令,判決ないし和解等が確定したときには返還する旨通告していたこと,②原告らの中には,本件解雇の不当を訴えて,事業団雇用対策支所の占拠を行った者もいたこと,③原告らは,事業団が本件解雇後に宿舎を占有していた原告らに対して提訴した建物明渡等請求事件において,採用差別が国鉄の不当労働行為であることが明らかである以上,国鉄が移行した法人そのものである事業団にも同様に不当労働行為についての責任があることは明白であるなどと主張していたこと,④原告らは,藤井運輸大臣が平成10年5月28日労働委員会の不当労働行為救済命令が東京地方裁判所の判決(以下「本件地裁判決」という。)で取り消された直後の記者会見において,国鉄時代の不当労働行為責任を引き継ぐとされる事業団に対し提訴すべきと述べたことを認識していたこと,⑤国労及び本件解雇された組合員は,事業団が解散することになった平成10年10月,国鉄ない おいて,国鉄時代の不当労働行為責任を引き継ぐとされる事業団に対し提訴すべきと述べたことを認識していたこと,⑤国労及び本件解雇された組合員は,事業団が解散することになった平成10年10月,国鉄ないし事業団による一連の不当労働行為ないし不当解雇について損害賠償請求権を有しているとし,その権利義務を承継した鉄建公団に対し,これが承継されることを確認していたことなどからすれば,いずれの時点からみても本件提訴までに3年以上を経過しており,原告らの損害賠償請求権等は,被告の時効援用の意思表示により消滅している。 (2) 原告の主張に対してア損害及び加害者を知った時の意義原告らは,国鉄,事業団ないし被告の責任とJR各社の責任について,公共企業体等労働委員会(昭和62年4月1日名称変更,国営企業労働委員会,以下「公労委」又は「国労委」という。)の判断,各地労委ないし中央労働委員会(以下「中労委」という。)の判断,取消訴訟における判断がそれぞれ分かれていたところ,本件最判によりJR各社への責任追及ができないことが確定したのであるから,これ以前は法的救済を求める対象となる加害者を知ることができなかったなどと主張する。しかしながら,かかる原告らの主張は,地元JRへの採用を原状回復と定め,それ以外の救済を視野に入れなかったというだけであり,これに伴う不利益は,原告らが負担すべきである。なお,事業団は,国労委の審理においても,仮に国鉄の採用候補者名簿作成に違法があるとすれば,その責任は事業団に帰属することを当然の前提としており,採用候補者名簿作成の責任主体は国鉄ないしその法人格を承継した事業団であると陳述し,これは国労にも開示されていた。原告らは,国鉄がJR北海道,JR東日本,JR九州への各採用候補者名簿作成において国労差別を行った 簿作成の責任主体は国鉄ないしその法人格を承継した事業団であると陳述し,これは国労にも開示されていた。原告らは,国鉄がJR北海道,JR東日本,JR九州への各採用候補者名簿作成において国労差別を行ったと主張するところ,その判断の当否はともかく,このことは既に労働委員会において取り上げられ,救済命令に対する取消訴訟においても国労が主張していた事実であり,本件地裁判決後,藤井運輸大臣によって事業団に対する損害賠償請求訴訟の提起を示唆され,さらに,国労自らが事業団に対して損害賠償請求権を有することを通告していたのであるから,本件最判によって初めて加害者を知るに至ったということはできない。 イ継続的不作為による不法行為(本件不法行為⑤)の主張に対し原告らは,事業団ないし被告が,平成2年4月1日以降も原告らを地元JRに再就職させる義務を負っていながら,この義務を果たさないという継続的な不作為による不法行為を行っているなどと主張する。しかし,かかる原告らの主張は,時効消滅の適用を潜脱しようとするものであり,結局は,事業団が平成2年4月1日にした本件解雇を問題とするものであって,継続的不作為による不法行為などとはいえない。 ウ時効中断の主張に対し原告らは,JR北海道,JR東日本,JR九州に対する不当労働行為責任の追及は,共同不法行為者への責任追及と見なすことができ,時効の中断が認められるなどと主張する。しかしながら,原告らの前記JR各社に対する不当労働行為責任の追及は,被告とは法主体を異にする者に対する請求である。しかも,原告らの前記JR各社に対する責任追及は,労働委員会に対する不当労働行為の救済申立てとしてなされていたにすぎず,共同不法行為者への責任追及などとして時効中断の法的効果を認めうるものでないことは明らか 原告らの前記JR各社に対する責任追及は,労働委員会に対する不当労働行為の救済申立てとしてなされていたにすぎず,共同不法行為者への責任追及などとして時効中断の法的効果を認めうるものでないことは明らかである。 エ権利濫用の主張に対し(評価障害事実)事業団は,原告らを含む事業団職員に対し再就職斡旋を重ねたが,原告らは地元JRへの入社に拘泥して,これを拒否し続けた。この結果,原告らは,平成2年4月1日までに再就職先が決まらず,解雇されたのであり,かかる経緯に照らせば,事業団ないし被告に非はない。また,事業団ないし被告は,原告らの損害賠償請求権の行使に関し,何らこれを制限したことはない。昭和62年当時の国労本部書記長であった宮坂要は,当時事業団に対し損害賠償請求をすることが可能であったが,自らの判断によりそれを行わなかったことを自認している。 原告らの主張は,一貫して国鉄ないし事業団による組合差別を基礎としており,原告らは,その行為者たる国鉄ないし事業団に対し,本件不法行為①ないし④に基づき損害賠償請求等をすることに何ら制約はなかった。しかるに,原告らは,時効期間が経過するまでの間,損害賠償請求権等を行使しなかったのであるから,権利の上に眠る者といわざるを得ない。しかも,その間,事業団から鉄建公団,鉄建公団から被告へと権利義務が承継されるなど事情の変化が著しく,関係資料が散逸した結果,被告の立証に多大な制約,支障が生じている。これらの事実を総合すれば,被告が時効を援用することは権利濫用には当たらない。 さらに,JR各社に対し採用を求める訴訟の遂行と事業団に対する損害賠償請求訴訟とは両立しうるものであって,現に原告らと同様の立場にある国労組合員が,労働委員会に対しJRを被申立人とする救済申立てをし,その取消 R各社に対し採用を求める訴訟の遂行と事業団に対する損害賠償請求訴訟とは両立しうるものであって,現に原告らと同様の立場にある国労組合員が,労働委員会に対しJRを被申立人とする救済申立てをし,その取消訴訟を行う(大阪府地労委昭和63年11月28日命令,中労委平成5年12月24日命令,当庁同12年5月31日判決,東京高裁同13年12月26日判決)一方で,事業団に対し,採用候補者名簿の不記載にかかる不法行為について,事業団解雇後のJR西日本の賃金等相当額が損害であるとして,その支払請求をしている事案(大阪地裁平成8年4月22日判決・労働判例695号62頁,大阪高裁平成10年12月25日判決)が存在することに留意すべきである。 【原告ら】(1) 本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等の時効消滅について不法行為の時効消滅制度の趣旨からすれば,時効消滅の効果を受ける者は,①損害賠償請求権を現実に行使しうる場合に,②同請求権の行使が可能な程度に損害賠償義務者が誰か,③加害行為が不法行為であること,④それによる損害の発生を知っていることを要する。本件では,採用差別の責任を負うべき加害者が,JR各社か国鉄かについて,公的機関の判断も分かれ,原告ら一般人には到底判断することができなかった。したがって,原告らは,損害賠償請求等を行う状況にはなく,本件最判時にはじめて採用差別の違法性及び損害が確定したのである。したがって,採用差別による不法行為に基づく損害賠償請求等の時効の起算点は本件最判時とすべきであり,同不法行為に基づく損害賠償請求権等はいまだ時効により消滅していない。原告らの地元JRに採用されていたら得られたであろう賃金相当額等の損害賠償請求は,原告らが救済命令取消訴訟において地元JRへの採用を求めて補助参加してきたことと,法的にも だ時効により消滅していない。原告らの地元JRに採用されていたら得られたであろう賃金相当額等の損害賠償請求は,原告らが救済命令取消訴訟において地元JRへの採用を求めて補助参加してきたことと,法的にも原告らの要求の面でも両立せず,本件最判が出るまでは請求不可能であった。この点,被告は,各地労委において,採用候補者名簿作成に関する国鉄による不当労働行為が既に認定されていたのであるから,本件不法行為①に基づく損害賠償請求等の時効の起算点が本件最判時であるとの原告らの主張は誤りであると主張する。しかしながら,関連訴訟で違法行為について争いがある場合には,関連訴訟の判決確定時が不法行為を知った時とすべきである。JR各社は,前記採用差別事件において,①国労組合員の懲戒処分や行動が職員管理調書に反映されることは当然であること,②職員管理調書の評定項目は組合活動とは関係なく個々の職員の具体的行動から判断されるものであること,③企業人教育,人活センター配転等は,国労を差別する意図で行われたものではないこと,④インフォーマルグループは,国鉄当局とは無関係であると主張していた。したがって,前記採用差別事件の本件最判が出るまでは本件不法行為①が不法行為であることを知ったとはいえない。さらに,国労委は,国鉄はJR設立委員のいわば補助機関として,採用候補者名簿の作成及び提出を行なったということができるとして,国鉄の不当労働行為責任を否定し,採用差別の責任はJR各社のみが負うかの如き判断を示していた。このような国家機関の判断があった以上,原告らが不当労働行為のみならず,不法行為責任もまたJR各社が負うものと認識し,国鉄が責任主体だと認識しなかったことには合理的な理由があった。また,国家機関である労働委員会や東京高裁が平成14年10月24日に言い渡した全動労事件判 法行為責任もまたJR各社が負うものと認識し,国鉄が責任主体だと認識しなかったことには合理的な理由があった。また,国家機関である労働委員会や東京高裁が平成14年10月24日に言い渡した全動労事件判決(乙18)も,JRの使用者性を認めて特定救済の余地があるとの判断をしていた以上,不当労働行為事件の訴訟継続中は,一般的救済方法としての損害賠償請求等が意識されず,本件不法行為①について,原告らが国鉄の責任追及をしなかったことには,合理的な理由があるといえる。このように,被告に対する責任追及については,①国鉄改革法23条が使用者としての責任を曖昧にしたこと,②これに対して判断をした国家機関(国労委・地労委・中労委・地裁・高裁。そして本件最判でさえも3対2の僅差の判断である。)の判断自身も二転三転したことからすれば,これに起因する不利益を,不当労働行為の被害者である原告らの不利益のもとに解決することは利益衡量上も妥当ではない。したがって,本件不法行為①に基づく損害賠償請求等の時効の起算点は,本件最判がされた平成15年12月22日であるというべきである。なお,国労中央執行委員長高橋義則は,平成10年10月16日,事業団に対し,「申入書」と題する内容証明郵便を差し出しているが,これは国労本部の認識を示すものであって,原告らの認識を示すものではない。前記申入書は,継続中の不当労働行為訴訟の結果如何では事業団の責任を追及するという政治的宣言に過ぎず,これをもって原告らが損害を知っていたとはいえない。また,国労組合員であるd,eらは,国鉄に対し,採用候補者名簿不記載について,不法行為に基づく損害賠償請求(前記大阪地裁平成8年4月22日判決,大阪高裁平成10年12月25日判決)をしていた。しかし,d,eらは,原告らと同じ国労組合員であるといっても,原告ら 記載について,不法行為に基づく損害賠償請求(前記大阪地裁平成8年4月22日判決,大阪高裁平成10年12月25日判決)をしていた。しかし,d,eらは,原告らと同じ国労組合員であるといっても,原告らとは居住地,所属を異にしており,原告らはd,eらがこうした請求をしたことを知らなかったし,同訴訟では,国鉄の責任が否定されている。また,原告らの一部が,事業団との間の宿舎明渡請求訴訟において,国鉄による採用差別及び事業団による解雇の不当労働行為責任を主張していたとしても,事業団は採用差別に関する国鉄の法的責任を否定する主張をしていたのであり,関連訴訟で争われている間は不法行為を知っていたとはいえない。 (2) 本件不法行為⑤に基づく損害賠償請求権等の時効消滅について本件不法行為⑤は,事業団が国鉄の国労に対する支配介入と採用差別との先行行為により負う地元JRに対し原告らの再就職を要請する義務の不履行であり,同義務は平成2年4月1日以降も継続し,被告に承継された。したがって,被告の前記義務の不履行は継続的不作為による不法行為であって,これに基づく損害賠償請求権等の時効はいまだ進行していないというべきである。 (3) 本件不法行為①ないし④に基づく損害賠償請求権等の時効消滅についてア裁判上の請求による時効中断国労は,採用差別についての労働委員会に対する救済申立てにおいて,JR採用差別のみならず,それと一体をなすものとして採用差別に先立つ国鉄の原告らに対する不当労働行為(本件不法行為①②),採用差別の結果としての事業団での不当な待遇(本件不法行為③)によって原告らの権利が侵害されたことを主張し,中労委ないし取消訴訟においては,本件解雇(本件不法行為④)についても,その違法性を訴えてきた。したがって,本件不法行為①ない な待遇(本件不法行為③)によって原告らの権利が侵害されたことを主張し,中労委ないし取消訴訟においては,本件解雇(本件不法行為④)についても,その違法性を訴えてきた。したがって,本件不法行為①ないし④に基づく損害賠償請求権等の時効は,不当労働行為救済申立事件継続中は民法147条1号に規定する「請求」により中断していた。この点,不当労働行為救済申立てと不法行為訴訟は異なるが,特定救済という点で共通していること,ポストノーティスなどは民事的制裁としての法的性質を有していることなどからすれば,不当労働行為救済申立ては,民法147条1号の「請求」に当たる。また,原告らが救済申立てにおいて被申立人としたのはJR各社であるが,国鉄は,JR設立委員の示す本件採用基準に基づいて,採用候補者名簿を作成し,その過程で国労を攻撃し,分裂させる支配介入・不利益取扱いを行った。したがって,国鉄ないし被告とJR各社とは共同不法行為者の関係に立ち,JR各社に対する不当労働行為救済申立事件の係属中は,「請求」により時効は中断していたと解すべきである。 イ承認による時効中断自由民主党と自由党は,平成11年6月,国労本部に対し,「国労とJR各社の話し合い開始について」と題する文書を提示し,その中で「なお,本件については,別途,国労と鉄道公団(=旧国鉄)との間の裁判上の金銭和解も考えるところである」と記載しているところ,同文書作成については被告との間で相談があったものと推認され,同文書は被告の認識を示した文書ということができ,本件不法行為①ないし④に基づく損害賠償請求権等の時効は承認により中断している。 ウ権利濫用(評価根拠事実)(ア) 仮に,本件不法行為①ないし④に基づく損害賠償請求権等の時効消滅期間が経過していたとしても,本件におい 償請求権等の時効は承認により中断している。 ウ権利濫用(評価根拠事実)(ア) 仮に,本件不法行為①ないし④に基づく損害賠償請求権等の時効消滅期間が経過していたとしても,本件において被告が時効を援用することは,次の(イ)ないし(カ)の各事実に照らすと,権利濫用に当たり許されない。 (イ) 義務者による権利行使の阻害原告らは本訴に至るまで被告を相手として提訴しなかったが,これは,①国鉄当局が,改革法23条というJRの使用者責任を問うことを困難にする法律を意図的に立法させたこと,②国鉄ないし事業団は,原告らや国労が本件不採用の理由を尋ねても明らかにしなかったこと,③被告は,国の機構たる運輸省の所轄する特殊法人であるところ,同じく国の機構に属する国労委が,事業団に対して不当労働行為責任を問い得ないとの決定をしたこと,④事業団は,国労委において,実際の加害者である国鉄は実質上消滅しており,実際の加害者でない事業団に対し,謝罪文の交付等を請求する余地はないとして,義務の承継を否定していたこと,⑤事業団は,建物明渡等請求訴訟において,採用候補者名簿記載行為は,国鉄とその職員との労働関係に変動をもたらすものではなく,使用者としての地位でなされたものではないなどと主張していたことなど,被告による原告の権利行使阻害行為があったためである。 (ウ) 外的事情による権利行使不能a 法的判断の困難性4月採用は,採用候補者名簿の作成者と採用者とが分離されるなど特異な形態であって,採用差別があった場合の責任追及先として,JR各社と事業団のいずれにすべきかの法的判断には著しい困難が伴った。 b 原告らの損害賠償請求権行使の制約被告と同じ政府機関である国労委においては,事業 の責任追及先として,JR各社と事業団のいずれにすべきかの法的判断には著しい困難が伴った。 b 原告らの損害賠償請求権行使の制約被告と同じ政府機関である国労委においては,事業団に対する申立てが却下され,各地労委,中労委においては,JR各社の不当労働行為責任が認定されるという国家機関の二転三転した判断によって,原告らの損害賠償請求権の行使は事実上制約された。 c 原告らの個人的対応の困難性原告らはいずれも国労組合員であるが,組織に所属する者として,国労本部の方針に反して本件提訴を行うことは,国労大会において,採用差別についての行政訴訟を取り下げることを含む4党合意が決定されるまでは不可能であった。 (エ) 国労中央本部及び同各地方本部は,国鉄の国労への支配介入・不利益取扱い,採用候補者名簿作成に関する差別,事業団における不当な取扱い,本件解雇について,採用差別を中心とする一体の不当労働行為として,不当労働行為救済を申し立て,行政訴訟を遂行してきたのであり,原告らもこれに同調してきた。したがって,原告らは,権利の上に眠る者ではないし,証拠も散逸していない。 (オ) 国鉄は国営企業であり,それを承継した被告は政府関係法人であるところ,国及び国鉄が,国鉄再建の名の下に一定の割合で不採用者が出ることを認識しつつ全国一律に採用選考を強制し,原告らを不利益に取り扱うことについて正当な理由がないなどの状況下にあっては,被採用差別者の救済は全国民即ち国と被告の責務でなければならない。したがって,単に時間が経過したとの一事をもって,被告が損害賠償義務等を免れるとするのは著しく正義に反する。 (カ) 国鉄による原告らの採用差別は不当労働行為であり,事業団は,原告らに対しまともな再就職斡 時間が経過したとの一事をもって,被告が損害賠償義務等を免れるとするのは著しく正義に反する。 (カ) 国鉄による原告らの採用差別は不当労働行為であり,事業団は,原告らに対しまともな再就職斡旋をしなかったことからすれば,被告に非があることは明らかである。そして,力では比較にならぬ原・被告間の地位関係等を併せ考えると,権利の上に眠り権利行使を怠ったとして原告に責任を負わすことは,著しく公正の原則に反する。 (キ) 以上のとおり,被告が時効を援用して損害賠償義務等を免れることは,著しく正義・公平・条理等に反すると認めるべき特段の事情が存在する。他方,被告に消滅時効の援用権を行使させないことによって時効制度の目的に反するような事情は存在しないから,被告が本件不法行為①ないし⑤に基づく損害賠償請求権等に対し,時効を援用することは権利の濫用として許されない。 第4 争点に対する判断 1 争点1(本件解雇の効力),争点2(本件不法行為④,⑤の成否)について(1) 前記争いのない事実等(2)ケのとおり,原告番号104Aを除く原告らは,国鉄が昭和62年2月7日にJR設立委員に提出したJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載されなかったため,また,原告番号104Aは,第2希望であったJR東日本の採用候補者名簿に記載され採用通知を受けたがこれを辞退したため,国鉄職員の地位にとどまり,同年4月1日,国鉄が事業団に移行するのに伴ってその職員となり,事業団理事長により再就職を必要とする者と指定され,再就職を図ることとなった。ところで,再就職促進法は,3年間の時限立法とされ(再就職促進法附則2条),平成2年4月1日限りで失効したため,事業団は,前記争いのない事実等(3)オのとおり,事業団就業規則22条4号「業務量の減少その他経 再就職促進法は,3年間の時限立法とされ(再就職促進法附則2条),平成2年4月1日限りで失効したため,事業団は,前記争いのない事実等(3)オのとおり,事業団就業規則22条4号「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」に当たるとして,同日,原告らを解雇した(本件解雇)。原告らは,本件解雇は無効であると主張するので,まず,本件解雇の効力について判断することにする。 (2) 認定事実前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(証拠等を掲記しないものは当事者間に争いのない事実である。)。 ア国鉄の分割・民営化に至る経緯(ア) 第2次臨時行政調査会の答申等国鉄は,昭和39年度に欠損を生じて以来,経営は悪化の一途をたどり,同55年度までの間,数回にわたり,経営再建計画を実施したものの経営状態は改善されず,同57年度末には約18兆円の累積債務を抱えるに至った。 国鉄の膨大な赤字が昭和55年ころから大きな政治問題となり,同56年10月ころには国会の行財政改革に関する特別委員会において,国鉄内部のいわゆるヤミ手当,ヤミ休暇等が指摘されるなど職場規律の乱れが問題視され,マスコミも国鉄に対し相次いで厳しい批判をするようになった。このような状況の中,昭和56年3月16日発足した第2次臨時行政調査会(以下「臨調」という。)は,同57年7月30日,内閣に対し,①5年以内の国鉄の分割・民営化,②再建に取り組むための推進機関(国鉄再建監理委員会)の設置等の提言を含む答申をした。(甲6,乙27ないし29,58,59の1ないし4,同60の1ないし8,同94,弁論の全趣旨)(イ) 再建監理委員会の答申等a 再建監理委員会設置法が昭和58年5 含む答申をした。(甲6,乙27ないし29,58,59の1ないし4,同60の1ないし8,同94,弁論の全趣旨)(イ) 再建監理委員会の答申等a 再建監理委員会設置法が昭和58年5月13日に成立し,同法に基づき,同年6月10日,再建監理委員会が設置された(甲6,弁論の全趣旨)。 b 再建監理委員会は,昭和60年7月26日,内閣に対し,最終答申を提出した。最終答申は,国鉄経営の破綻原因は公社という制度の下で巨大組織による全国一元的な運営を行ってきたことにあり,現行制度における再建はもはや不可能であり,国鉄事業を再生させるためには昭和62年4月1日を期して分割・民営化を断行するしか道はないとの基本認識を示した。その上で,最終答申は,国鉄改革の具体的方法として,①国鉄の旅客鉄道部門を北海道,東日本,東海,西日本,四国,九州の6旅客鉄道会社に分割するとともに,新幹線は別主体が一括保有してこれを旅客鉄道会社に貸し付け,研究所等を独立させること,②昭和62年度における旅客鉄道事業を遂行するための適正要員規模を15万8000名とみて,これにバス事業,貨物部門,研究所等で必要な2万5000名を加えて,全体の適正要員規模を18万3000名と推計し,これに6旅客鉄道会社の適正要員の2割程度の約3万2000名を上乗せした21万5000名を新事業体発足時の要員規模とすること,③同年4月時点で見込まれる約9万3000名の余剰人員のうち,前記②の適正要員に上乗せした約3万2000名を除いた約6万1000名については,新事業体移行前に約2万名の希望退職を募集し,残りの約4万1000名を再就職のための対策を必要とする職員として国鉄の清算法人的組織の「旧国鉄」に所属させ,3年間で転職させることを答申した。 また,最終答申は,余 希望退職を募集し,残りの約4万1000名を再就職のための対策を必要とする職員として国鉄の清算法人的組織の「旧国鉄」に所属させ,3年間で転職させることを答申した。 また,最終答申は,余剰人員についての基本的な考え方について,「一つの方法として,その全員を新事業体に移籍することが考えられる。しかし,その場合には,新事業体は,適正要員規模を大幅に超える職員を擁し引き続き非効率な経営を行うこととなって,その健全経営の基盤が崩れることになりかねないので,このような方法はとることができない。」「また,他の一つの方法として,移行時までに余剰人員を解雇することにより移行後に余剰人員を持ち越さないこととすることが考えられる。しかし,現在の社会的な雇用慣行,特に公的部門の慣行から見て,国鉄事業の再建に当たって職員とその家族を路頭に迷わせることがあってはならないこと,さらには,国鉄事業の再建は国の大事業である上に余剰人員の規模が大きいため,これによる場合は社会的に深刻な問題を引き起こしかねないことから,このような方法もとることができない。したがって,当委員会は,余剰人員の問題を一括して一つの方法で解決するのではなく,移行前に希望退職募集等によりできるだけその数を減らし,移行時には旅客鉄道会社に経営の過重な負担とならない限度において余剰人員の一部を移籍し,その他は『旧国鉄』の所属とした上,一定の期間内に集中的に対策を講じて全員が再就職できるよう万全を期することが適切であると考える。」とし,移行後の「旧国鉄」における対策実施の必要性について,「特別対策対象者については,労働市場の動向からみて一時に大量の再就職が困難であることから,一定期間を限り,『旧国鉄』に雇用を継続することとする。そのことによって,移行時に直ちに国鉄から離れることに伴う特 策対象者については,労働市場の動向からみて一時に大量の再就職が困難であることから,一定期間を限り,『旧国鉄』に雇用を継続することとする。そのことによって,移行時に直ちに国鉄から離れることに伴う特別対策対象者の不安感を和らげることができるとともに,組織的かつ専門的な再就職のための取組みを期待できることとなる。なお,『旧国鉄』において雇用を継続し対策を講じる期間は,3年を限度とする。」としていた。さらに,最終答申は,旧国鉄は,特別対策対象者が雇用されている間に,早期かつ円滑な職業転換がなされるよう万全を期することとし,職業指導,教育訓練,求人開拓,就職斡旋,早期再就職を促進するための手当等の支給等の対策を計画的,有機的に行い,雇用の場確保のため,関連企業,公的部門のみならず広く一般産業界の協力を得る必要があるとしていた。(甲6,乙15,弁論の全趣旨)(ウ) 内閣は,昭和60年10月11日には再建監理委員会最終答申に沿った「国鉄改革のための基本的方針」を,同年12月13日には「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針」をそれぞれ閣議決定した。「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針」では,新経営形態移行後の対策として,内閣は,特別対策対象者の再就職援助のための基本的事項,関係者の果たすべき役割等に関する基本計画を策定すること,旧国鉄は,基本計画に沿い,特別対策対象者の再就職促進のための職業指導,教育訓練,求人開拓,再就職斡旋等に関する事項,特別対策対象者の再就職促進のための給付金の支給に関する事項,特別対策対象者の当面の就業場の確保に関する実施計画を毎年度策定すること,旧国鉄は,特別対策対象者の早期かつ円滑な職業転換を図るため,職業安定機関等の協力を得て,特別対策対象者に対する職業指導,教育訓練,求人開拓,再就職斡旋等を行うとともに,雇用対策の 度策定すること,旧国鉄は,特別対策対象者の早期かつ円滑な職業転換を図るため,職業安定機関等の協力を得て,特別対策対象者に対する職業指導,教育訓練,求人開拓,再就職斡旋等を行うとともに,雇用対策の諸制度における手当や奨励金の例を参考にして給付金が支給されるよう措置するものとすることなどが定められた上,特別対策対象者に対し雇用を継続し特別対策を講じる期間は,新経営形態移行後3年を限度とする旨定められていた。(甲6,乙16,弁論の全趣旨)イ国鉄改革関連8法等の成立(ア) 内閣は,昭和61年2月12日に緊急措置法の法案を,同年3月3日に①改革法,②鉄道会社法,③新幹線鉄道保有機構法,④事業団法,⑤再就職促進法の各法案を,同月18日に⑥鉄道事業法,⑦改革法等施行法,⑧地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律(以下,①ないし⑧を合わせて「国鉄改革関連8法」という。)の各法案を,それぞれ第104回国会に提出したものの,衆議院解散によりいったん廃案となった。その後,内閣は,昭和61年9月11日,第107回国会に上記各法案を再提出し,同法案は,いずれも同年11月28日に成立し,同年12月4日に公布された(甲6,弁論の全趣旨)。 (イ) 国会審議における答弁昭和61年11月20日,第107回参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会では次のような質疑がなされた(甲480)。 穐山篤 「それから最後に総理にお尋ねをしますが,総理も民間の団体に行ったり,いろんなところで国鉄の余剰人員の雇用問題について熱心に説かれています。結構な話だと思うんですが,3年後に,いわゆる就職先がなくて首になるということは絶対にないという保証をもらえるでしょうか,その点をお伺いしておきたいと 剰人員の雇用問題について熱心に説かれています。結構な話だと思うんですが,3年後に,いわゆる就職先がなくて首になるということは絶対にないという保証をもらえるでしょうか,その点をお伺いしておきたいと思います。」橋本運輸大臣 「全力を挙げて,全員が第2の職場を得られるように努力をいたします。」穐山篤 「いや,私の質問したのは,完全に実現をする,その意味では一人の失業者あるいは首切りもないでしょうな,それを保証してもらえますなと,そういうことの確認を求めたつもりなんです。」橋本運輸大臣 「既に6万1千の方々に職場を去っていただかなければならないという前提で,それこそ民間にもご協力をいただき,地方公共団体にもご協力をいただき,特殊法人等々,又国家公務員,その目標数を設定し求人をお願いしましたところ,その6万1千を遙かに超える求人をいただいておるところでありまして,私どもは十分に対応するつもりであります。」穐山篤 「総理の責任ある答弁を一つお伺いしましょう。」総理大臣中曽根康弘 「これだけの大改革をやっておるのでございますから,政府もそれ相応の責任を持っておるわけでございます。従って,たとえば健康の具合であるとかそのほかの欠格条件があるという場合はこれはやむを得ませんが,そうでない方に関しましては一人といえども心配をかけないような体制を作り上げる為に,政府も責任を持って全力を注ぐ決心でおります。」ウ国鉄改革関連8法の内容の概要について(ア) 改革法改革法は,国は国鉄が承継法人に事業等を引き継いだときは,国鉄を事業団に移行させ,承継法人に承継されない資産,債務等を処理するための業務等を行わせるほか,臨時に,その職員の再就職の促進を図るための業務を は,国は国鉄が承継法人に事業等を引き継いだときは,国鉄を事業団に移行させ,承継法人に承継されない資産,債務等を処理するための業務等を行わせるほか,臨時に,その職員の再就職の促進を図るための業務を行わせるものとし(同法15条),国鉄改革の実施に伴い一時に多数の国鉄職員が再就職を必要とすることになることにかんがみ,これらの者に関し,再就職の機会の確保及び再就職の援助等のための特別の措置を講ずるものと規定している(同法17条)。 (イ) 事業団法事業団法は,事業団は,国鉄長期債務等の償還,国鉄の資産の処分等のほか,臨時に,その職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進のために必要な業務を行うとし(同法1条,26条3項),この業務については,再就職促進法の定めるところにより行うものと規定している(同法7条)。 (ウ) 再就職促進法再就職促進法は,国鉄改革を確実かつ円滑に遂行するための施策の実施に伴い,一時に多数の再就職を必要とする職員が発生することにかんがみ,これらの者の早期かつ円滑な再就職の促進を図るため,同改革後に事業団職員となった者のうち再就職を必要とする者について再就職の機会の確保及び再就職の援助等に関する特別の措置を総合的かつ計画的に講じ,もってこれらの者の職業の安定に資することを目的とするとし(同法1条),国が定める再就職促進基本計画は,移行日から3年以内にすべての事業団職員の再就職が達成されるような内容のものとして定められなければならないとし(同法14条2項),他方,同法は平成2年4月1日限り失効する旨規定している(同法附則2条)。 エ国労の再就職促進法についての認識原告らが所属する国労は,再就職促進法が「3年間という時限立法」で「事業団を3年間の限定付きの新た 月1日限り失効する旨規定している(同法附則2条)。 エ国労の再就職促進法についての認識原告らが所属する国労は,再就職促進法が「3年間という時限立法」で「事業団を3年間の限定付きの新たな首切り『収容所』と位置づけ」,「法律上は,(昭和)65年3月31日で雇用対策を打ち切る,賃金不払いという問題も出てくる」として,同法の失効により事業団と事業団職員との間の雇用関係が終了するという認識を持っていた(甲918,証人宮坂【40,80,81頁】,弁論の全趣旨)。 オ本件不採用から本件解雇に至る経過(ア) 原告らは,希望する地元JRの各採用候補者名簿に記載されなかったため,昭和62年4月1日,地元JRに採用されず,同日,事業団職員となった(前記争いのない事実等(2)ケ)。 (イ) 内閣は,昭和62年6月5日,再就職促進法14条に基づき,再就職促進基本計画を閣議決定した。再就職促進基本計画は,事業団職員の再就職の目標数は,公的部門等における内定者1万1250名を含む1万8880名とし,関係者は諸施策を講ずることにより,昭和62年4月1日から3年内にすべての事業団職員の再就職が達成されるように務めるものとし,かかる目標を達成するため,承継法人,事業団及び国等の講ずべき措置を定めていた。 これを受けて,事業団は,本社内に雇用対策本部を設置し,内閣の国鉄清算事業団職員雇用対策本部と連絡を取り合い,再就職促進基本計画を基礎として,同本部の指導を得ながら各年度ごとに再就職促進実施計画を策定した。(前記争いのない事実等(3)イ)(ウ) 内閣の国鉄清算事業団雇用対策本部は,平成元年11月21日付で,今後の再就職対策についての見解を表明した。同見解では,国,地方公共団体等への採用,承継法人の追加採用,事業団による )(ウ) 内閣の国鉄清算事業団雇用対策本部は,平成元年11月21日付で,今後の再就職対策についての見解を表明した。同見解では,国,地方公共団体等への採用,承継法人の追加採用,事業団による職業指導,職業紹介等により,再就職先未定の事業団職員数は,昭和62年4月1日から平成元年11月1日までの間に5410名減少し,2218名となる一方,再就職促進法は同2年4月1日限り失効することとされており,これに伴い同日をもって再就職対策は終了することが表明されていた。また,同見解では,再就職対策が最終段階を迎え,再就職促進基本計画に従い各分野にわたりできる限り多くの再就職の機会を確保し,これらを個々の再就職先未定の事業団職員に示して決断を促すことが重要な課題となっていること,政府としても残された期間,関係者の総力を結集して再就職先未定の事業団職員の再就職対策に取り組むこと,JR東日本,JR東海,JR西日本,JR四国,JR貨物に対し,重ねて追加採用の実施を求めるとともに,その関連事業主,各省庁,地方公共団体,民間事業主に対し求人開拓を更に積極的に実施することを要請することが表明されていた。さらに,同見解では,再就職先未定の事業団職員に対し,再就職対策が最終段階を迎えていることを十分に認識の上,意を新たに地域の雇用情勢等の実情に応じた適切な再就職活動を積極的に行うことを強く希望することなどが表明されていた。(前記争いのない事実等(3)ウ,乙9,弁論の全趣旨)(エ) 原告らは,平成2年3月31日になっても,再就職が未定のままであった。そこで,事業団は,平成2年4月1日,原告らを含む1047名の事業団職員を,事業団就業規則22条4号に基づき解雇した。(前記争いのない事実等(3)オ)(3) 当裁判所の判断ア前記(2)で認定 事業団は,平成2年4月1日,原告らを含む1047名の事業団職員を,事業団就業規則22条4号に基づき解雇した。(前記争いのない事実等(3)オ)(3) 当裁判所の判断ア前記(2)で認定した事実によれば,①再建監理委員会は,最終答申において,国鉄事業再生のためには昭和62年4月1日に国鉄を分割・民営化するほかないとの基本認識を示し,国鉄職員のうち新事業体に承継されない約6万1000名を余剰人員とし,このうち新事業体移行前に希望退職を募る約2万名を除いた約4万1000名について再就職のための対策を必要とする職員として旧国鉄に所属させ,3年間で転職させるとの意見を表明していること,②また,再建監理委員会は,最終答申において,余剰人員についての考え方として,新事業体に全員を承継させることは,新事業体の健全経営の基盤を崩すおそれがあることからとり得ないこと,また,移行時に全員解雇することも考えられるが,解雇される職員及びその家族らの生活並びに社会的影響の大きさからしてとり得ないことを明らかにした上,余剰人員の問題を一時に解決するのではなく,移行前に希望退職募集等によりできるだけその数を減らし,移行時には新事業体に経営の過重な負担とならない限度で余剰人員の一部を移籍させ,その他は旧国鉄の所属とした上,一定の合理的な期間内に集中的に再就職対策を講ずることにより,段階的に余剰人員問題を解消するとの方針を明らかにしたこと,③内閣の閣議決定でも,事業団職員に対し雇用を継続し特別対策を講じる期間は,新経営形態移行後3年を限度とするとしたこと,④国鉄改革関連8法では,再建監理委員会最終答申ないし前記「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針」で示された考え方をもとに,事業団の余剰人員に対する再就職促進業務は「臨時」のものとしていること(改革法15条,事業 革関連8法では,再建監理委員会最終答申ないし前記「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針」で示された考え方をもとに,事業団の余剰人員に対する再就職促進業務は「臨時」のものとしていること(改革法15条,事業団法1条,26条3項),⑤原告らの所属する国労も再就職促進法は,3年間の時限立法で,同法の失効により事業団職員の雇用関係が終了するという認識を持っていたことが認められる。これらの認定事実によれば,再就職促進法は,3年の時限立法と解するのが相当である。 このように,国鉄によって承継法人の採用候補者に選定されず採用候補者名簿に記載されなかった者は,段階的な措置として,とりあえず国鉄の職員の地位にとどまり,国鉄が事業団に移行するのに伴ってその職員となり,国鉄との従前の雇用契約関係が存続するが,この措置は,事業団の職員となった者について再就職促進法により移行日から3年以内に再就職を図るものとしてその間に再就職の準備をさせることとしたものであり,雇用契約関係終了に向けての準備期間を置くことを目的としたものと解するのが相当である。 確かに,再就職促進法には,同法が失効した後の事業団職員の地位に関する明確な規定は存在しないが,上記国鉄改革の経緯や国鉄改革関連8法の立法経緯に照らしてみれば,再就職促進法失効後についても事業団と事業団職員との間の雇用契約関係の継続を予定していたと解することはできず,むしろ同法失効時には,事業団の再就職促進業務ひいては事業団と事業団職員との間の雇用関係も当然に終了することが予定されていたというべきである。そうだとすると,再就職促進法の失効が,「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」(事業団就業規則22条4号)に当たるとして事業団が原告らに対して行った本件解雇は,合理的な理由があり,有効である と,再就職促進法の失効が,「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」(事業団就業規則22条4号)に当たるとして事業団が原告らに対して行った本件解雇は,合理的な理由があり,有効であると解するのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 イ原告らの主張について(ア) 第1に,原告らは,事業団の事業団職員に対する再就職促進義務は憲法29条3項に基づくものである上,国鉄のJR各社の採用候補者名簿の作成,再就職促進措置に組合差別があったため原告らが再就職できなかった以上,3年の期限を定める再就職促進法附則2条は,憲法27条,28条,29条3項に違反し無効であると主張する。しかしながら,事業団の事業団職員に対する再就職促進業務は,改革法,事業団法,再就職促進法等により創設された業務であり,事業団が直接憲法29条3項によって事業団職員に対し再就職促進義務を負っていると解することはできない。また,国鉄のJR各社の採用候補者名簿の作成,再就職促進措置に組合差別があったか否かにより3年の期限を定める再就職促進法附則2条の合憲性が左右されると解することもできない。そもそも,再就職促進法が時限立法とされたのは,上記アのとおり,事業団と事業団職員との間の雇用契約関係終了に向けた準備期間を3年と定めたからであって,当時の雇用情勢等を勘案しても,再就職のための準備期間として3年間が合理性を欠く期間とはいえず,同法附則2条が違憲無効であるということはできない。よって,原告らの上記主張は理由がなく,採用することができない。 (イ) 第2に,原告らは,仮に再就職促進法附則2条が有効であり同法が失効したとしても,事業団の事業団職員に対する再就職促進義務は消滅せず,再就職促進措置を延長することが予定されていたのであるから, (イ) 第2に,原告らは,仮に再就職促進法附則2条が有効であり同法が失効したとしても,事業団の事業団職員に対する再就職促進義務は消滅せず,再就職促進措置を延長することが予定されていたのであるから,同法の失効を理由とする本件解雇は違法であると主張する。この点,確かに,再就職促進法14条3項は,国が策定する再就職促進基本計画は,移行日から3年以内にすべての事業団職員の再就職が達成されるような内容のものとして定められなければならないと規定していること,国鉄改革関連8法の立法過程における国会答弁で,内閣総理大臣であった中曽根康弘は,一人の失業者も出さないかとの質問に対し,一人といえども心配をかけないような体制を作り上げる為に,政府も責任を持って全力を注ぐ旨答弁していたこと,橋本運輸大臣,三塚博国鉄改革推進本部長代理が,国鉄総裁杉浦喬也,運輸省国鉄再建総括審議官林淳司ら立会の下,対馬孝且参議院議員,青木薪次参議院議員との間で取り交わした昭和61年11月28日付念書が存在し,同念書は,「清算事業団職員の雇用について」との表題の下,「清算事業団の職員については,三年以内に全員の再就職が図られるよう最大限努力する。再就職先が未定の者は,更に二年以内に再就職が図られるように努力する。」との内容であったこと(甲18)が認められる。しかしながら,総理大臣の国会答弁ないし上記念書が直ちに事業団と事業団職員との間の雇用関係に効力を及ぼすものであるとはいえず,また,再就職促進法が時限立法とされたのは,上記アのとおり,事業団と事業団職員との間の雇用契約関係終了に向けた準備期間として3年を合理的期間としたことによるものであり,再就職促進法14条3項の規定,国鉄改革関連8法の立法過程における総理大臣の国会答弁,上記念書の存在から事業団が再就職促進法が失効した場合 準備期間として3年を合理的期間としたことによるものであり,再就職促進法14条3項の規定,国鉄改革関連8法の立法過程における総理大臣の国会答弁,上記念書の存在から事業団が再就職促進法が失効した場合当然に再就職促進業務を継続すべき義務を負っていたと解することはできない。また,原告らは,事業団が事業団職員に対する再就職促進業務措置を延長すべき理由として,再就職促進法附則3条,4条の存在を挙げる。しかしながら,再就職促進法附則4条は,同法失効日以前に開始された事業団の業務のうち,同法24条1号ないし3号所定の事業団職員に対する教育訓練,求人開拓・職業指導,職業紹介事業を除外し,事業団職員を雇い入れる事業主に対する助成・援助,事業団職員に対する再就職後に必要となる住宅のあっせん等についてなお効力を有する旨定め,同法附則3条は失効日の属する事業年度にかかる実施計画の作成は不要であり,当該事業年度の実施計画は直前の事業年度にかかる実施計画に定める旨定めるのみであり,かかる規定をもって事業団が同法失効後も事業団職員に対する再就職促進措置を延長すべき義務を負っていたと解することはできない。さらに,事業団職員は,再就職を図るために事業団所属となったのであるから,再就職促進法失効後も事業団に再就職促進以外の業務が残っていたとしても,これにより事業団が同法失効時に再就職先未定であった事業団職員を継続して雇用しなければならない根拠とはならない。したがって,再就職促進法が失効したとしても,事業団の事業団職員に対する再就職促進義務は消滅せず,再就職促進措置を延長することが予定されていたことを前提に本件解雇が無効であるとする原告らの主張は,理由がなく採用することができない。 (ウ) 第3に,原告らは,本件解雇は国鉄ないし事業団の不当労働行為によるもので ことが予定されていたことを前提に本件解雇が無効であるとする原告らの主張は,理由がなく採用することができない。 (ウ) 第3に,原告らは,本件解雇は国鉄ないし事業団の不当労働行為によるものであり無効であると主張する。しかしながら,本件解雇は,前記アのとおり,再就職促進法が3年の期限を経過して失効し,事業団と事業団職員との間の雇用契約関係終了に向けた準備期間が終了したことから,事業団就業規則22条4号に基づき行われたものであって,仮に国鉄のJR各社の採用候補者名簿作成行為ないし事業団の事業団職員に対する再就職促進措置において,原告らが国労に所属することを理由とする不利益取扱い等の不当労働行為があった場合,再就職促進法失効後に損害賠償の成否が問題となる余地はあるとしても,これにより本件解雇が無効になる余地はないというべきである。よって,この点の原告らの主張も理由がないので採用することができない。 (エ) 第4に,原告らは,国鉄ないし事業団は,4月採用ないし6月採用において,JR各社とともに採用差別を行ったのであるから,これらの不当労働行為が先行行為となって,原告らを地元JRに採用させる義務を負っていたのであり,これを怠ったまました本件解雇は無効であると主張する。しかしながら,JR各社は,経済活動の一環として雇用契約締結の自由を有しており,自己の営業のために労働者を雇用するに当たり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができるというべきである。再就職促進法20条が,承継法人は,労働者を雇い入れる場合には,事業団職員を優先的に雇い入れるようにしなければならないと規定してはいるものの,格別事業団職員を地元JRに採用させるべきことまで ある。再就職促進法20条が,承継法人は,労働者を雇い入れる場合には,事業団職員を優先的に雇い入れるようにしなければならないと規定してはいるものの,格別事業団職員を地元JRに採用させるべきことまでは義務づけていない。JR各社に地元の事業団職員を採用すべき義務がない以上,その反面,事業団も,国鉄ないし事業団が,4月採用ないし6月採用において組合差別を行ったか否かにかかわらず,原告らに対し,地元JRに採用させる義務を負っていたと解することはできない。したがって,事業団の原告らを地元JRに採用させる義務を前提に本件解雇が無効であるとする原告らの主張も採用することができない。 (オ) 第5に,原告らは,国鉄のJR各社の採用候補者名簿への不記載は実質的にみて期限付の整理解雇といえるところ,いわゆる整理解雇の4要件を充たしておらず,採用候補者名簿不記載ひいては本件解雇は解雇権濫用として無効であると主張する。この点,確かに,原告らは国鉄による地元JRの採用候補者名簿への不記載により国鉄の職員のまま残留させる者として振り分けられ,国鉄が事業団に移行するのに伴って事業団職員となり,再就職促進法の失効に伴い解雇されたことは認められるが,前記アのとおり,本件解雇は,飽くまで再就職促進法が3年の期限を経過して失効し,事業団と事業団職員との間の雇用契約関係終了に向けた準備期間が終了したことから,事業団就業規則22条4号に基づき行われたものである。したがって,本件解雇と国鉄によるJR各社の採用候補者名簿作成を一体のものとみて整理解雇と解し,いわゆる整理解雇の法理に従って4要件を充たしているか否かを判断すべきであるとの原告らの主張は独自の主張であり,当裁判所としてはこれを採り得ない。よって,上記原告らの主張はその余の点を判断するまでもなく理由がないので 理に従って4要件を充たしているか否かを判断すべきであるとの原告らの主張は独自の主張であり,当裁判所としてはこれを採り得ない。よって,上記原告らの主張はその余の点を判断するまでもなく理由がないので,採用することができない。 (4) 小括ア以上によれば,本件解雇は,再就職促進法の失効に伴い,事業団就業規則22条4号に基づき行われたものであって,憲法,労働組合法,改革法,再就職促進法等に違反する点もなく有効である。 イそうだとすると,原告らの主位的請求のうち,原告ら(相続人を除く)と被告との間の雇用契約の存在確認を求める請求部分及び原告らと被告との間に雇用契約が存在することを前提とする平成2年5月以降の賃金支払請求部分はいずれもその余の点を判断するまでもなく理由がない。また,原告らの主位的請求ないし予備的請求のうち,本件解雇を違法とすることを前提とする本件不法行為④及び被告において原告らを地元JRに採用させる義務があることを前提とする本件不法行為⑤に基づく各損害賠償請求等も,前記(3)の判断に照らすと,その余の点を判断するまでもなく理由がないということになる。 2 争点2ないし4(本件不法行為①及びこれに基づく損害賠償請求権等の時効消滅の成否)について(1) 原告らの主張の概要原告らは,国鉄が,原告らを希望するJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載せず,前記JR各社をして不採用とさせ,事業団に振り分けた行為は,原告らが国労に所属していることを理由とする不当労働行為であり,違法な行為に当たり,被告は,これによって被った原告らの損害を賠償する義務等があると主張する(前記第3の2(1)【原告ら】の主張)。これに対し,被告は,不法行為の成立を争い,仮に,被告に不法行為責任があるとしても,時効を援 は,これによって被った原告らの損害を賠償する義務等があると主張する(前記第3の2(1)【原告ら】の主張)。これに対し,被告は,不法行為の成立を争い,仮に,被告に不法行為責任があるとしても,時効を援用する意思表示をしたことにより責任は消滅したと反論する(前記第3の2(1)【被告】の主張,第3の4【被告】の主張)。以上の点は,本件の核心の一つをなしているので,以下,検討することにする。 (2) 本件不法行為①に関する認定事実前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(証拠等を掲記しないものは当事者間に争いのない事実である。)。 ア国鉄改革に向けた諸施策とこれに対する国労の態度等(ア) 職場規律の総点検と規律の是正をめぐる対立a 国労は,昭和56年3月に発足した臨調の審議過程で高まってきた国鉄の分割・民営化の考え方に対し,公共交通としての国鉄と国鉄労働者の雇用と職場を守るという立場から,①運賃が利用者の負担増になること,②運賃収入の配分が複雑になること,③全国ネットのダイヤが崩壊すること,④事故対応が遅れること,⑤貨物の広域輸送が困難になること,⑥非採算線区の廃止につながること,⑦労働条件が低下すること,⑧9万2000名が職場を失うことになるなどを理由に一貫して反対した。国労は,昭和57年3月9日,国鉄の分割・民営化を危惧する動労,全施労及び全動労とともに国鉄再建問題4組合共闘会議を結成した。(甲6,901,証人宮坂要【1,3頁】,弁論の全趣旨)b 国鉄では,昭和57年初めころ,ブルートレインの検査係に対して実際に乗務していないにもかかわらず,乗務手当を支給していたいわゆるヤミ手当支給問題,組合員による現場管理職に対する突き上げな b 国鉄では,昭和57年初めころ,ブルートレインの検査係に対して実際に乗務していないにもかかわらず,乗務手当を支給していたいわゆるヤミ手当支給問題,組合員による現場管理職に対する突き上げなどが新聞等で報道されたこと,また,臨調,再建監理委員会などからの指摘があったことから,職場規律の乱れが問題とされ,その是正をめぐり労使間で意見が対立するようになった。運輸大臣は,昭和57年3月4日,国鉄に対し,再建のためには労使関係を健全化し,職場規律の確立を図ることが必須の条件であるとして,ヤミ手当,悪慣行全般について実態調査を行うことなどを内容とするいわゆる総点検を実施し,調査結果に基づき厳正な措置を講ずるよう指示した。これを受けて,国鉄は,昭和57年3月5日,全国の各機関の長に対し,いわゆるヤミ協定,勤務時間中の組合活動,リボン・ワッペンの着用,呼名点呼,安全帽の着用,突発休,現場協議制度の運用実態等約60項目にわたる職場規律の総点検を同月末日までに実施するよう指示した。国鉄では,これ以降,昭和60年9月までの間に,毎年2回,合計8回にわたり,職場規律の総点検が実施された。その結果,ヤミ手当等の慣行は徐々に廃止されたが,ワッペンの着用禁止については,国労及び全動労が国鉄の分割・民営化に反対する運動の中で着用闘争を続けた。国鉄は,臨調答申等を受けて,各組合に対し,議員兼職制度の禁止,無料乗車証制度の変更等を提示し,また,就業時間中の洗身入浴等これまでの労使間の慣行及び協定を大幅に変更した。このため,これに反対する国労と国鉄との間に対立が生じた。(甲6,149,151,152,乙30,31,32及び33の各1,2,同34の1ないし9,同35,36,56,57,61の1ないし8,弁論の全趣旨)c 国鉄は,昭和43年,国労等の組 。(甲6,149,151,152,乙30,31,32及び33の各1,2,同34の1ないし9,同35,36,56,57,61の1ないし8,弁論の全趣旨)c 国鉄は,昭和43年,国労等の組合との間で現場協議に関する協約(以下「現場協議協約」という。)を締結し,職場における諸問題を現場労使間で協議していた。国鉄は,昭和57年7月19日,国労,全動労,動労,鉄労及び全施労に対し,職場規律の総点検の結果,現場協議制は開催時間が長時間にわたるなど多くの問題点があるとして,協議対象の明確化,開催回数,時間等の制限を内容とする現場協議協約の改定案を提示し,同年11月30日までの間に交渉がまとまらなければ同協約を破棄すると通告した。動労,鉄労及び全施労は,昭和57年11月30日,前記改定案を受け入れて国鉄との間で改定協約を締結したが,国労及び全動労は,改定案に反対し,その後も妥結に至らず,同年12月1日以降,現場協議協約は失効した。(甲6,乙63の1及び2,弁論の全趣旨)(イ) 余剰人員調整策をめぐる対立及び雇用安定協約の破棄国鉄は,昭和59年2月のダイヤ改正に伴う貨物輸送部門の合理化等により,約2万4500名の余剰人員が生じたとして,同年6月5日,①退職制度の見直し,②休職制度の改定・拡充,③派遣制度の拡充等余剰人員調整策を発表し,同年7月10日,その詳細を各組合に提示した。これに対し,国労は,上記余剰人員調整策は,出向(派遣)と休職の二者択一を迫るもので雇用不安を増大させ,事実上の首切りにつながるとして反対した。これに対し,国鉄は,国労に対し,昭和59年10月9日までの間に上記余剰人員調整策について妥結しなければ,同46年3月2日に締結した雇用の安定等に関する協約(機械化,近代化及び合理化等の実施に当たっては,① し,国鉄は,国労に対し,昭和59年10月9日までの間に上記余剰人員調整策について妥結しなければ,同46年3月2日に締結した雇用の安定等に関する協約(機械化,近代化及び合理化等の実施に当たっては,①雇用の安定を確保するとともに,労働条件の維持改善を図ること,②本人の意に反する免職及び降職は行わないこと,③必要な転換教育等を行うことを内容とするもの,以下「雇用安定協約」という。)を破棄する旨通告していたが,結局妥結に至らず,同59年10月11日,同60年1月11日をもって同協約を破棄する旨通告した。国鉄及び国労は,昭和60年4月9日,公労委の仲裁裁定に基づき,職員の派遣の取扱いに関する協定,特別退職に関する協定を締結するとともに,雇用安定協約の有効期間を同年11月30日までとする覚書を交わした。ところが,国労組合員は,国鉄が派遣,休職等を事実上強要しているとして,全国各地で「やめない,休まない,出向かない」と記載された機関誌を掲示する等の運動(以下「3ない運動」という。)を展開した。国鉄は,国労に対し,昭和60年5月25日,「3ない運動」の指導を中止するよう申し入れ,さらに,同年10月24日付文書により,「3ない運動」の中止を指導せず,前記余剰人員調整策に非協力的な態度をとり続けるなら,雇用安定協約を再締結しない旨申し入れた。国労は,昭和60年11月19日からの拡大中央委員会において,前記職員の派遣の取扱いに関する協定による派遣等のための募集行為を妨げないこと,本人の自由な意思表示を妨げないことなどを決定した。国鉄は,昭和60年11月30日,国労に対し,「3ない運動」の中止が地方組織に徹底していることが確認できないとして,雇用安定協約の継続締結を拒否する旨通告し,同年12月1日以降,同協約は失効した。なお,国鉄は,動労,鉄労,全施労と 労に対し,「3ない運動」の中止が地方組織に徹底していることが確認できないとして,雇用安定協約の継続締結を拒否する旨通告し,同年12月1日以降,同協約は失効した。なお,国鉄は,動労,鉄労,全施労との間では,昭和60年12月1日以降も雇用安定協約を継続締結した。(甲6,乙45ないし51,53,弁論の全趣旨)(ウ) 進路希望アンケート調査の実施国鉄は,昭和60年12月11日,同61年度の転職希望者を把握するため,全職員を対象に国の機関及び地方自治体等への転職希望に関する進路希望アンケート調査を実施すると発表した。国労は,前記アンケートの調査項目に新事業体に対する進路希望が含まれていたことなどから,昭和60年12月13日,調査には組織的に対処し,同月17日までアンケートに対する回答はしない旨の闘争指令を発し,さらに,同月25日,アンケート用紙への回答は組合員個人が記入することとするが,記事欄に「私は分割・民営に反対です。引き続き国鉄で働くことを希望します。」と記載する旨の闘争指令を発し,多くの国労組合員はこれに従った。(甲6,乙36,40,弁論の全趣旨)(エ) 労使共同宣言の調印拒否国鉄は,昭和61年1月13日,各労働組合に対し,①労使は安全輸送のため諸法規を遵守すること,②リボン・ワッペンの不着用,氏名札の着用等定められた服装を整えること,③必要な合理化は労使が一致協力して積極的に推進し,新しい事業運営の体制を確立すること,④余剰人員対策について,出向制度,退職勧奨等を積極的に推進することなどを内容とするいわゆる第1次労使共同宣言の締結を提案したところ,動労,鉄労及び全施労は,同日これに同意して同宣言に調印したが,国労は,同月16日,「労使共同宣言案に対する態度」を発表し,同提案は労働組合・ するいわゆる第1次労使共同宣言の締結を提案したところ,動労,鉄労及び全施労は,同日これに同意して同宣言に調印したが,国労は,同月16日,「労使共同宣言案に対する態度」を発表し,同提案は労働組合・ストライキ権を否認し,労働組合に事実上分割・民営化の容認を求めるものであるとして,調印を拒否した。(甲6,149,168,弁論の全趣旨)(オ) 広域異動の実施国鉄は,昭和61年3月4日,各労働組合に対し,今後国鉄改革により生ずる余剰人員の雇用の場が地域的に偏在するため,雇用の場に見合った職員配置を行う必要があるとして,北海道から約2500名の職員を東京,名古屋地区を中心に,九州から約900名の職員を大阪地区を中心にそれぞれ広域異動させたいと提案した。動労,鉄労及び全施労は,昭和61年3月14日,上記広域異動を了解し,これを受けて,国鉄は,昭和61年3月20日から広域異動の募集を開始し,同年5月1日,北海道及び九州の職員346名に対し,東京,大阪等への広域異動を行った。さらに,国鉄は,昭和61年8月11日,各労働組合に対し,北海道及び九州地域から3400名を目標とする2回目の広域異動を行いたいと提案し,動労,鉄労及び全施労の了解の下,同月20日から募集を開始した。これに対し,国労は,広域異動に関し団体交渉を開催するよう求め,広域異動の実施に抗議して,ワッペン着用闘争を実施した。結局,国鉄は,昭和61年12月までの間に,合計3818名(国労組合員653名,動労組合員1791名,鉄労組合員561名,全施労組合員69名等)の広域異動を行った。(甲6,乙41の1及び2,同52,弁論の全趣旨)(カ) 職員管理調書の作成国鉄は,従来から鉄道管理局地方機関ごとに当該機関に所属する職員の勤務実態等について,個人ご 行った。(甲6,乙41の1及び2,同52,弁論の全趣旨)(カ) 職員管理調書の作成国鉄は,従来から鉄道管理局地方機関ごとに当該機関に所属する職員の勤務実態等について,個人ごとの管理台帳を作成し,点呼時において返事をしないこと,安全帽及び氏名札の不着用,ワッペンの着用,突発休等に対する指導状況を記録し,勤務成績に反映させるとともに,個人指導を行うなどして職場規律の是正を図っていた。国鉄は,昭和61年3月5日,各鉄道管理局長等に対し,職場規律総点検の集大成として,職員個人の意識・意欲の実態把握を全国統一的に行い,今後の職員管理に活用するため,職員管理台帳に加え,職員管理調書を作成するよう指示した。職員管理調書の調査対象者は,昭和61年4月2日当時の管理職及び退職前提休職者を除く一般職員約25万名とされ,調査対象期間は,同58年4月1日から同61年3月31日までの間とされた。職員管理調書の調査項目は,基本事項,特記事項,評定事項に区分されていた。このうち特記事項には,一般処分及び労働処分の種類毎の回数,時期,昇級等に関する項目があり,処分については,発令日ベースではなく,通告日ベースで記入すること,労働処分については,昭和58年7月2日処分通知を行った「58・3闘争」から記入することなどが特記されていた。また,評定事項には,①業務知識,技能等,②職場の秩序を乱す行為(点呼妨害,体操不参加,管理者への暴言等を含む。)の有無,③リボン・ワッペン,氏名札,安全帽,あご紐,ネクタイ等について,指導された服装をしているか,指導されたらそれに従うか否か,④勤務時間中の組合活動の有無,⑤国鉄の厳しい現場を認識し,業務に取り組んでいるかなどの項目があった。さらに,国鉄は,昭和61年10月16日,ブロック別総務部長会議において,職 らそれに従うか否か,④勤務時間中の組合活動の有無,⑤国鉄の厳しい現場を認識し,業務に取り組んでいるかなどの項目があった。さらに,国鉄は,昭和61年10月16日,ブロック別総務部長会議において,職員管理調書の内容を充実させるため,同月1日までの内容を盛り込むこととするなどデータを最新のものとし,これにより見直した職員管理調書を同月末までに作成するよう指示した。(甲6,310の1ないし5,同312の1及び2,弁論の全趣旨)(キ) 希望退職者の募集国鉄は,昭和61年6月30日から,緊急措置法に基づき,2万名を目標に希望退職者の募集を開始したところ,最終的に3万9092名が応募し,同62年3月末日までに応募者全員が退職した(甲10,弁論の全趣旨)。 (ク) 企業人教育国鉄は,昭和61年4月,職員に企業人としての自覚と行動力を身につけさせることを目的として,7万人の職員を対象に,同月以降約5か月間にわたり,1回あたり3,4日の日程で順次,企業人教育を行ったが,国労は,国鉄の企業人教育の施策に反対した(甲6,弁論の全趣旨)。 (ケ) 人活センターの設置国鉄は,昭和61年6月24日,余剰人員を集中的に配置して有効活用を図るため,同年7月から新たに全国統一的に人活センターを設置する旨発表し,同月1日,全国1010か所に人活センターを設置した。人活センターへの職員の配置は,日常の勤務成績等を総合的に判断し,所属長がその権限と責任において適材適所の考え方で行うものとされた。人活センターに担務指定された職員は,ペンキ塗り,構内のごみ拾い,ポイント掃除,ガラス磨き,草刈り等が命じられた。人活センターは,昭和61年11月1日当時,全国1547か所に設置され,一般職員1万8882名,管理職員2188 た職員は,ペンキ塗り,構内のごみ拾い,ポイント掃除,ガラス磨き,草刈り等が命じられた。人活センターは,昭和61年11月1日当時,全国1547か所に設置され,一般職員1万8882名,管理職員2188名の合計2万1070名が担務指定されていたところ,その約80%は国労組合員であった(なお,当時の国労の組織率は約50%であった。)。国鉄は,昭和62年3月上旬に実施した人事異動において,人活センターへの担務指定を解き,同時に同センターを廃止した。(甲6,149,152,209,210,901,証人宮坂要【1頁】,弁論の全趣旨)イ国労以外の各労働組合の国鉄改革に対する対応等(ア) 動労は,昭和61年7月8日から開催された第42回定期全国大会において,①国鉄改革に向け国鉄の分割・民営化を進める政府案に修正を求めていくこと,②国鉄の新事業体移行という節目の中で労働組合運動強化のために一企業一組合の結成を目指すことなどの方針を決定した(甲6,弁論の全趣旨)。 (イ) 動労,鉄労,全施労及び真国労は,昭和61年7月16日,改革労協を結成し,改革労協は,同月30日,国鉄とともに国鉄改革労使協議会を設置した。改革労協と国鉄は,昭和61年8月27日,今後の鉄道事業のあり方について,①鉄道事業のあるべき方向として,民営・分割による国鉄改革を基本とするほかないこと,②改革労協は鉄道事業の健全な経営が定着するまでは争議権の行使を自粛すること,③企業人としての自覚を有し,向上心と意欲にあふれる望ましい職員像へ向けて労使が指導を徹底することなどを内容とする「今後の鉄道事業のあり方についての合意事項(第2次労使共同宣言)」に調印した。これに対し,国労は,昭和61年8月27日,国鉄改革,再建の必要性を十分認識しているが,同時にその過程で職員の雇 容とする「今後の鉄道事業のあり方についての合意事項(第2次労使共同宣言)」に調印した。これに対し,国労は,昭和61年8月27日,国鉄改革,再建の必要性を十分認識しているが,同時にその過程で職員の雇用を完全に確保することが最大の使命であると考えているとの見解を発表し,第2次労使共同宣言の調印に応じなかった。(甲6,149,弁論の全趣旨)(ウ) 国鉄は,いわゆるスト権スト(昭和50年秋,国労,動労等が公労法において禁止されていたストライキ権を付与することを求めて行ったストライキ)に関し,国労及び動労に対し,総額約202億円の支払を求める損害賠償請求訴訟を提起していた。国鉄は,昭和61年9月3日,動労が第2次労使共同宣言でストライキ等違反行為を行わないと宣言し,新会社移行後においてもスト権行使は自粛することを明言したこと,国鉄の諸施策に積極的に協力し,分割・民営化による国鉄改革に賛成し,これに一致協力して尽力する旨約束したことを理由に,動労に対するスト権ストの訴えを取り下げた。(甲10,弁論の全趣旨)ウ国労組合員の組合活動に関する懲戒処分国労は,昭和57年ころから,一貫して国鉄の分割・民営化に反対し,同58年5月13日に国鉄再建監理委員会設置法案反対等を掲げて29分間のストライキ(以下「5・13スト」という。)を,同59年8月10日に3項目の余剰人員調整策,特に同年9月1日からの依願休職募集開始提案の撤回,分割・民営化反対を掲げて2時間のストライキ(以下「8・10スト」という。)を,同60年3月19日に年金法改悪反対を掲げて29分間のストライキ(以下「3・19スト」という。)を,同年8月5日に再建監理委員会答申に抗議し,分割・民営化阻止を掲げて1時間のストライキ(以下「8・5スト」という。)をそれぞれ実施した。 掲げて29分間のストライキ(以下「3・19スト」という。)を,同年8月5日に再建監理委員会答申に抗議し,分割・民営化阻止を掲げて1時間のストライキ(以下「8・5スト」という。)をそれぞれ実施した。また,国労は,国鉄の提案した余剰人員調整策,広域異動等に反対して,断続的に順法闘争,ワッペン着用闘争を行い,昭和61年後半からは主に就業時間中に国労バッジの着用を続けた。これに対し,国鉄は,国労組合員に対し,①昭和59年8月4日,5・13スト及び同年7月6日,7日に行われた順法闘争に参加したことを理由に停職3名を含む約2600名の処分を,②同年9月8日,前記①の順法闘争に参加したことを理由に公労法違反による解雇1名を含む約1680名の処分を,③同年11月24日,8・10ストに参加したことを理由に停職16名を含む約2万3300名の処分を,④同60年10月5日,3・19スト及び8・5スト等に参加したことを理由に停職14名を含む約6万4130名の処分をした。また,国鉄は,国労組合員に対し,ワッペン着用闘争を行ったことなどを理由に,昭和60年9月13日から同月19日までの間,約5万9200名に対し戒告,訓告ないし厳重注意処分を,同61年5月30日,約2万9000名に対し戒告ないし訓告処分をした。なお,動労がストライキ等の闘争を実施したのは,昭和57年12月までであり,職員管理調書の調査対象期間である同58年4月以降,動労の指令による組合活動で処分通告を受けた動労組合員はいなかった。(甲6,乙37,38の1ないし3,同64,65,66の1ないし7,同67の1ないし4,同68の1ないし5,同69の1ないし4,同901,証人宮坂要【1頁】,弁論の全趣旨)エ国鉄の分割・民営化に対する国労の態度(ア) 国労は,昭和61年7月22日,定期大会 ないし4,同68の1ないし5,同69の1ないし4,同901,証人宮坂要【1頁】,弁論の全趣旨)エ国鉄の分割・民営化に対する国労の態度(ア) 国労は,昭和61年7月22日,定期大会(千葉大会)において,雇用の確保と組織維持のため,現実的に大胆な対応を行うとの執行部提案が出されたが,これに対する修正案が提出されるなど意見が対立し,執行部提案は可決されなかった。また,国労は,昭和61年9月30日,中央闘争委員会において,労使共同宣言締結の意思を明らかにした緊急方針が決定されたが,同方針は,同年10月9日から開催された臨時大会(修善寺大会)で否決され,分割・民営化は9万人の首切りを意味し,労使共同宣言は,労組自身が当局とともに選別・差別・合理化を推進することだとして,従来どおり分割・民営化反対の立場を維持することが決定された。この結果,国労においては,山崎俊一中央執行委員長ら執行部が総退陣し,新執行部(六本木敏中央執行委員長)が選出された。(甲6,弁論の全趣旨)(イ) 国労の組合員数は,昭和61年5月当時約16万名(組織率約68.3%)であったが,同年7月ころから,毎月1万名以上の組合員が組合から脱退した。 そして,修善寺大会で旧執行部が総退陣した後,旧執行部を支持する組合員が国労から大量に脱退し,同62年1月以降,各地域で鉄道産業労働組合を結成し,同年2月28日,鉄産労を結成した。(甲7,901,943,証人宮坂要【1頁】,弁論の全趣旨)(ウ) 各労働組合の昭和61年7月から同62年4月までの組織状況は,別表2記載のとおりである。(甲10,弁論の全趣旨)オ国鉄役員,管理職らの主な言動(ア) 国鉄の杉浦総裁は,昭和60年8月,鉄労の定期大会に出席し,国鉄改革の諸施策への協力に感謝する旨の挨 載のとおりである。(甲10,弁論の全趣旨)オ国鉄役員,管理職らの主な言動(ア) 国鉄の杉浦総裁は,昭和60年8月,鉄労の定期大会に出席し,国鉄改革の諸施策への協力に感謝する旨の挨拶を行い,さらに,同61年7月,鉄労及び動労の定期大会に出席し,同様の挨拶を行った。(甲6,弁論の全趣旨)(イ) 国鉄職員局次長であった葛西敬之(以下「葛西職員局次長」という。)は,昭和61年5月21日,動労東京地方本部の会議において,「・・・私はこれから,山崎(注・国労山崎元委員長)の腹をブンなぐってやろうと思っています。みんなを不幸にし,道連れにされないようにやっていかなければならないと思うんでありますが,不当労働行為をやれば法律で禁止されていますので,私は不当労働行為をやらないという時点で,つまり,やらないということは,うまくやるということでありまして,・・・」などと述べた。(甲302,弁論の全趣旨)(ウ) 国鉄車両局機械課長であった岡田圭司は,昭和61年5月,各機関区所長に宛てて,当局側の考え方を理解して行動し,新事業体と運命共同体的意識を持つことができ,まじめに働く意志のある職員を日常の生産活動を通じて作ることが必要であり,このような職員のみが新事業体に明るい未来を約束すること,イデオロギーの強い職員や話をしても最初から理解しようとしない職員,意識転換に望みを託し得ない職員等は,あきらめて結構であり,良い職員をますます良くすること,中間帯で迷っている職員をこちら側に引きずり込むこと,良い子,悪い子に職場を二分化することが大切であるなどと記載された書簡を送った(甲304,弁論の全趣旨)。 (エ) 葛西職員局次長は,昭和61年11月30日付「公企労レポート」において,国鉄改革関連8法が成立したのを受け,今後は 大切であるなどと記載された書簡を送った(甲304,弁論の全趣旨)。 (エ) 葛西職員局次長は,昭和61年11月30日付「公企労レポート」において,国鉄改革関連8法が成立したのを受け,今後は承継法人にふさわしい人選をすることが最大の任務となるとした上で,国鉄改革に協力してきた労働組合の組合員は,出向,広域異動,教育等の改革のための諸施策に協力し,努力と犠牲を払っており,このことは個人個人の成績として蓄積されているため,承継法人に移る人は,そういう人の中から多く生まれる可能性があり,かなり得をしたといえるが,国鉄の再建を妨害した労働組合に所属している者は,一日も早く,自らの意識改革を行い,先に行っている人に追いついてほしい旨を発言したインタビュー記事を寄稿した(甲475,弁論の全趣旨)。 カ JR各社の職員採用手続,本件不採用の経過(ア) 改革法23条は,JR各社の職員採用手続について,次のとおり規定している。すなわち,①JR各社の設立委員は,国鉄を通じ,その職員に対し,それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して,職員の募集を行う(23条1項),②国鉄は,①によりその職員に対し労働条件及び採用の基準が提示されたときは,JR各社の職員となることに関する国鉄の職員の意思を確認し,JR各社別に,その職員となる意思を表示した者の中から当該JRに係る①の採用の基準に従い,その職員となるべき者を選定し,その採用候補者名簿を作成して設立委員に提出する(同条2項),③採用候補者名簿に記載された国鉄の職員のうち,設立委員から採用する旨の通知を受けた者であって,昭和62年4月1日に国鉄の職員であるものは,JR各社の成立の時(同日)において,当該JR各社の職員として採用される(同条3項),④JR各社の職員の採用に 員から採用する旨の通知を受けた者であって,昭和62年4月1日に国鉄の職員であるものは,JR各社の成立の時(同日)において,当該JR各社の職員として採用される(同条3項),④JR各社の職員の採用について,当該JR各社の設立委員がした行為及び当該JR各社の設立委員に対してなされた行為は,それぞれ,当該JR各社がした行為及び当該JR各社に対してなされた行為とする(同条5項)としている。(前記争いのない事実等(2)ア)(イ) 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律附則2条は,運輸大臣は,JR各社ごとに設立委員を命じ,当該会社の設立に関しては発起人の職務を行わせる旨を(1項),設立委員は,同項及び改革法23条に定めるもののほか,当該会社が設立の時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行うことができる旨を(2項)をそれぞれ規定する。そして,運輸大臣は,昭和61年12月4日,JR各社の共通設立委員16人及び会社ごとに設立委員2ないし5人を任命した。(前記争いのない事実等(2)イ)(ウ) JR各社合同の第1回設立委員会が,昭和61年12月11日開催され,国鉄改革のスケジュールを確認し,新会社の職員の労働条件について基本的な考え方及び各会社共通の採用基準を決定し,同月19日,JR各社合同の第2回設立委員会において各社の労働条件の細部が決定され,各会社共通の採用基準とともに国鉄に提示された。 国鉄改革のスケジュールは,①設立委員は,昭和61年12月,JR各社の労働条件及び採用基準を決定し,国鉄に通知する,②これを受けて,国鉄は,同月から同62年1月までの間,職員の配属希望調査を行い,これを集計,分析,調整した上,同年2月,採用候補者名簿を作成して設立委員に提出する,③設立委員は,同月,職員を選 ,②これを受けて,国鉄は,同月から同62年1月までの間,職員の配属希望調査を行い,これを集計,分析,調整した上,同年2月,採用候補者名簿を作成して設立委員に提出する,③設立委員は,同月,職員を選考して採用者を決定する,④設立委員は,同年3月,JR各社での配属を決定して国鉄に内示し,国鉄はこれによって配転計画を策定して異動の発令を行うとされ,労働条件については,基本的に国鉄での労働条件を大幅に変更しないよう配慮するというものであった。 また,JR各社共通の採用基準(本件採用基準)のうち,本件に関係する基準は,次の2点である(②,④ないし⑥の採用基準の記載は省略する)。 ① 昭和61年度末において年齢満55歳未満であること。(医師を除く。)(本件採用基準①)③ 国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者であること。なお,勤務の状況については,職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を国鉄における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること。(本件採用基準③)なお,JR北海道の採用基準には,本件採用基準のほか,国鉄本社及び本社附属機関に所属する職員並びに全国的な運用を行っている職員からの採用のほか,同社が事業を運営する地域内の業務を担当する地方機関に所属する職員からの採用を優先的に考慮するものとすることが採用基準として付加された。また,JR東日本及びJR九州の採用基準には,本件採用基準及び上記JR北海道と同様の採用基準のほか,広域異動の募集に応じて既に転勤した職員及び北海道又は九州内の地方機関に所属する職員からの採用については,特段の配慮をするものとすることが採用基準として付加された。(争いのない事実等(2)ウ,甲6,7,弁論の全趣旨)(エ) 員及び北海道又は九州内の地方機関に所属する職員からの採用については,特段の配慮をするものとすることが採用基準として付加された。(争いのない事実等(2)ウ,甲6,7,弁論の全趣旨)(エ) 橋本運輸大臣は,昭和61年12月16日,改革法19条1項に基づき,閣議決定を経て,本件基本計画を定め,別表1のとおり,国鉄職員のうち承継法人の職員となる者の総数を21万5000名(うちJR北海道の職員数を1万3000名,JR東日本の職員数を8万9540名,JR九州の職員数を1万5000名)と決定した(前記争いのない事実等(2)エ)。 (オ) 国鉄は,昭和61年12月24日,本件採用基準に該当しないことが明白な者を除く職員約23万0400名に対し,承継法人の労働条件,採用基準を記載した書面及び承継法人の職員となる意思を表明する意思確認書の用紙を配布し,同62年1月7日正午までに提出するよう指示した。同意思確認書は,国鉄総裁宛となっており,「私は,次の承継法人の職員となる意思を表明します。」,「この意思確認書は,希望順位欄に記入した承継法人に対する就職申込書を兼ねます。」などと記載され,第5希望までの承継法人名を記載する欄が設けられており,記入要領と題する書面には,「第6希望以下もある場合には,第5希望の下の欄に(中略)記入してください。」と記載されていた。そして,期限までに国鉄職員のうち22万7600名が意思確認書を提出し,21万9340名が承継法人への就職を希望し,別表1のとおり,第2希望以下の複数の承継法人名を記載している者を含めた就職申込総数は延べ52万5720名であった。このうち,JR北海道への就職申込総数は延べ2万3710名,JR東日本への就職申込総数は延べ11万3550名,JR九州への就職申込総数は延べ2万9270名であった 総数は延べ52万5720名であった。このうち,JR北海道への就職申込総数は延べ2万3710名,JR東日本への就職申込総数は延べ11万3550名,JR九州への就職申込総数は延べ2万9270名であった。 原告番号104Aを除くJR北海道入社希望原告らは,いずれも意思確認書にJR北海道に就職を希望する旨記載して,意思確認書を提出した。原告番号104Aは,意思確認書に,第1希望JR北海道,第2希望JR東日本と記載して意思確認書を提出した。JR東日本入社希望原告らは,JR東日本に,JR九州入社希望原告らは,JR九州に就職を希望する旨記載して,意思確認書を提出した。(前記争いのない事実等(2)オ,甲6,277,弁論の全趣旨)(カ) 国鉄は,意思確認書の集計結果を昭和62年1月20日ころまとめたが,これによれば,本州,四国は定員割れになることが予測され,北海道,九州でも,改革労協の職員だけでは定員割れとなることが予測された。そこで,改革労協は,昭和62年1月23日ころ,国鉄に対し,「新事業体への雇用確定などを巡る緊急申し入れについて」という文書等で次のような申入れをした。 a 現在,希望退職に応じた職員が3万人を超えるほどに増大しており,21万5000人の要員体制を確保するためには,一部では,国鉄改革に敵対している者までも新事業体に移行させざるを得ない状況が生み出されている。これは,第2次労使共同宣言にもとることであり,同時に新事業体の経営基盤を根本から揺り動かしかねない事態である。 b このような事態に対して,改革労協としては,21万5000人の要員枠そのものの是非を含めて,正直者が馬鹿を見ない対処方を要求して,緊急に中央・地方で国鉄当局に申し入れることにする。(乙20,弁論の全趣旨)(キ) 国鉄 労協としては,21万5000人の要員枠そのものの是非を含めて,正直者が馬鹿を見ない対処方を要求して,緊急に中央・地方で国鉄当局に申し入れることにする。(乙20,弁論の全趣旨)(キ) 国鉄は,昭和62年1月中旬ころまでに,JR設立委員会から提示された本件採用基準③をさらに具体化し,同58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者は明らかに承継法人の業務にふさわしくない者として,採用候補者名簿に記載しないとの方針を定めた(国鉄による本件選定基準)。そして,国鉄は,職員管理調書に基づき,JR各社の職員となるべき者の具体的な選定作業を行い,採用候補者名簿を作成することにした。(争いのない事実等(2)カ(ア))(ク) 国鉄は,国鉄による本件選定基準に従い,非違行為6か月以上の処分歴があるとして,原告番号229B,同231DについてはJR東日本の採用候補者名簿に,同245EについてはJR九州の採用候補者名簿にそれぞれ記載しなかった。また,原告番号230Cは,本件採用基準①である昭和61年度末において年齢満55歳未満の要件を充たしていないことから,JR東日本の採用候補者名簿に記載しなかった。原告番号104Aについては,第2希望のJR東日本の採用候補者名簿に記載した。さらに,国鉄は,その余の原告らについて,職員管理調書に基づき,希望するJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかった。(前記争いのない事実等(2)カ(イ),弁論の全趣旨)(ケ) 国鉄は,昭和62年2月7日,JR各社の設立委員会に対し,それぞれ採用候補者名簿を提出した。国鉄は,採用候補者名簿を提出する際,「新会社の職員となるべき者の選定結果について」と題する書面を添付した。同書面は,承継法人別就職申込数及び採用候補者 会に対し,それぞれ採用候補者名簿を提出した。国鉄は,採用候補者名簿を提出する際,「新会社の職員となるべき者の選定結果について」と題する書面を添付した。同書面は,承継法人別就職申込数及び採用候補者名簿記載数等に加えて,「新会社の職員となるべき者の選定にあたっての考え方」として,在職中の勤務の状況からみて,明らかに新会社の業務にふさわしくないと判断される者については,名簿記載数が基本計画に示された数を下回る場合においても同名簿に記載しなかったこと,派遣経験者,直営売店経験者,復職前提休職者など多方面の分野を経験した者については,最大限,同名簿に記載したこと,JR東日本,JR東海,JR西日本,JR四国及びJR貨物においては,希望退職及び公的部門の一括選抜の進展もあり,名簿記載者数が基本計画で示された数を下回る結果となったが,いずれの会社でも業務の円滑な運営を行っていくために必要な要員は確保されていることなどが記載されていた。JR各社の採用候補者名簿に記載された職員数は,別表1のとおり,基本計画の職員数を9414名下回る20万5586名(JR北海道は基本計画と同数の1万3000名,JR東日本は基本計画を5197名下回る8万4343名,JR九州は基本計画と同数の1万5000名)であった。 (前記争いのない事実等(2)キ,甲4,277,弁論の全趣旨)(コ) JR各社合同の第3回設立委員会が,昭和62年2月12日に開催され,国鉄から「新会社の職員となるべき者の選定にあたっての考え方」及び選定作業結果の説明を受けた上,採用候補者名簿に記載された者全員を当該JR各社に採用することを決定した。これを受けて,JR各社の設立委員会は,昭和62年2月16日以降,採用することを決定した者(採用予定者)に対し,国鉄を通じて同月12日付採用通知を交付した 員を当該JR各社に採用することを決定した。これを受けて,JR各社の設立委員会は,昭和62年2月16日以降,採用することを決定した者(採用予定者)に対し,国鉄を通じて同月12日付採用通知を交付した。採用通知を受けた者のうち採用を辞退した者は,JR各社合計4938名であったが,原告番号104Aも,後記(サ)のとおり,第2希望のJR東日本から採用通知を受けたが,採用を辞退した。(前記争いのない事実等(2)ク)(サ) 原告番号104Aを除く原告らは,いずれも入社を希望するJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載されず,また,同Aは,第1希望であったJR北海道の採用候補者名簿には記載されず,第2希望であったJR東日本の採用候補者名簿に記載され,同社から採用通知を受けたがこれを辞退したため,いずれもJR北海道,JR東日本,JR九州に採用されなかった(前記争いのない事実等(2)ケ)。 キ 4月採用の各組合の採用状況(ア) 4月採用における採用予定者数,採用率,不採用者数及び不採用率の所属組合別内訳は,北海道地区は別表3記載のとおりであり,九州地区は別表4記載のとおりである。これによれば,4月採用における北海道地区の所属組合別の職員の採用率は,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた鉄道労連が99.4%,北海道鉄産労が79.1%であったのに対し,これに反対していた国労は48.0%,同じく全動労は28.1%であった。また,JR北海道に限ってみれば,鉄道労連の採用率が89.4%,北海道鉄産労が72.1%であったのに対し,国労は37.5%,全動労は20. 8%であった。他方,4月採用における九州地区の所属組合別の職員の採用率は,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた九州鉄産労が8 %であったのに対し,国労は37.5%,全動労は20. 8%であった。他方,4月採用における九州地区の所属組合別の職員の採用率は,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた九州鉄産労が84.4%,鉄労が100%,動労が99.9%であったのに対し,これに反対していた国労は43.1%,同じく全動労は32%であった。このように4月採用においては,北海道,九州いずれの地区においても国鉄の分割・民営化に賛成していた組合に所属していた者とこれに反対していた組合に所属していた者との間で採用率に顕著な差がみられる。(甲6,151,276,277,279,907,証人宮坂要【29頁】,弁論の全趣旨)(イ) 各地区における採用状況a 札幌地区札幌地区においては,国労の在籍専従者であった7名のうち,北海道鉄産労に移った5名は,戒告,減給等の労働処分を受けながら,4月採用において,JR北海道に採用されたが,国労に残った2名は,上記5名よりも労働処分歴は軽かったにもかかわらず,不採用となった(甲154,168,弁論の全趣旨)。 b 門司地区門司地区においては,国労役員のうち,九州鉄産労に移った者は,労働処分歴がある者であっても概ね4月採用ないし6月採用でJR九州に採用されたが,国労に残った者は概ね不採用となった(甲165,208,265ないし267,331ないし342,弁論の全趣旨)。 (ウ) 原告らの個別事情a 原告番号229B原告番号229Bは,昭和58年8月1日付で,同年3月から7月までの間,塩釜港駅において再三にわたり管理者の指示に従わず,また,業務妨害等により職場規律を乱したことが職員として著しく不都合であったとして,停職12か月の処分通告を受けた 付で,同年3月から7月までの間,塩釜港駅において再三にわたり管理者の指示に従わず,また,業務妨害等により職場規律を乱したことが職員として著しく不都合であったとして,停職12か月の処分通告を受けた(なお,懲戒の基準に関する協約に基づく弁明弁護手続が行われた結果,命令発令日は同年11月24日となった。)。前記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない。 (甲29,829の1及び2,弁論の全趣旨)b 原告番号231D原告番号231Dは,昭和58年9月2日付で,同年6月23日の業務命令拒否,点呼時における管理者に対する暴言及び脅迫,青年部抗議行動の組織責任を理由に,停職6か月の処分を受けた。前記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない。(甲831の1,弁論の全趣旨)c 原告番号245E原告番号245Eは,昭和59年8月1日付で,同58年6月1日,2日,3日,同年9月27日,29日,同年10月14日に鳥栖保線区において職員として著しく不都合な行為があったことを理由に,停職6か月の処分を受けた。 前記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない。(甲141,142,845の1,原告E【1頁】,弁論の全趣旨)d 原告番号230C原告番号230Cは,昭和61年12月当時,57歳であった(甲830,弁論の全趣旨)。 e それ以外の原告ら原告B,同D,同Eを除く原告らは,昭和58年4月から同61年12月までの間,停職6か月以上又は停職2回分以上の処分を受けていない(弁論の全趣旨)。 (3) 本件不法行為①の成否に関する当裁判所の判断ア改革法23条は,承継法人の職員の採用手続について,設立委員が,国鉄を通じ,労働条件及び採用基準を を受けていない(弁論の全趣旨)。 (3) 本件不法行為①の成否に関する当裁判所の判断ア改革法23条は,承継法人の職員の採用手続について,設立委員が,国鉄を通じ,労働条件及び採用基準を提示して職員の募集を行い(1項),これを受けて,国鉄が,職員の意思を確認し,採用の基準に従い採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成を行い(2項),設立委員が,採用候補者名簿に記載された者の中から職員として採用すべき者を決定し,採用する旨を通知する(3項)と規定している。そうだとすると,国鉄は,設立委員が提示した採用基準に反しない限り,その職員のうち採用候補者名簿に記載する者の選定について一定の裁量が認められていたといえる。もっとも,使用者は,労働者が労働組合の組合員であること,労働組合の正当な行為をしたことなどを理由にその労働者に対して不利益な取扱いをすることは許されない(労働組合法7条1項)から,裁量行為に藉口して,主として,原告らが国労組合員であったこと,国労の指示に従い正当な組合活動をしたことを嫌悪し,同不記載を行ったとすれば,同行為は不利益取扱い禁止に反する違法な行為であり,不法行為に当たるというべきである。 イこの点,まず,設立委員が国鉄に提示した本件採用基準自体は,①昭和61年度末において年齢満55歳未満であること(本件採用基準①),②国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者であること,なお,勤務の状況については,職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を国鉄における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること(本件採用基準③)を含め,組合差別を目的としたもの又はこれを容認したものであるとは認められず,前記国鉄改革に至る経緯に照らして,いずれも合理的なものであったと認めるのが相当で つ公正に判断すること(本件採用基準③)を含め,組合差別を目的としたもの又はこれを容認したものであるとは認められず,前記国鉄改革に至る経緯に照らして,いずれも合理的なものであったと認めるのが相当である。 ところで,国鉄は,本件採用基準③について,国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者との基準を具体化し,昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者は明らかに承継法人の業務にふさわしくない者として採用候補者名簿に記載しないこととしたところ,前記(2)ウのとおり,動労がストライキ等の闘争を実施したのは,昭和57年12月までであり,同58年4月以降,同組合の指令による組合活動で処分通告を受けた動労組合員はいなかったことに照らしてみると,かかる選定基準自体,国鉄の分割・民営化に賛成する組合の組合員を有利に取り扱おうとする意図がうかがえないではない。しかし,その基準自体は明確なものであり,同基準を適正かつ公平に適用する限りではなお合理性を有すると解するのが相当である。そうだとすると,国鉄において,設立委員の示した本件採用基準に従い,昭和61年度末において年齢満55歳以上の者及び昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者を採用候補者名簿に記載しないことは,前記停職処分が取り消された等の特段の事情がない限り,適法なものというべきである。 ウ以上の基準に照らし,本件をみてみるに,前記(2)キ(ウ)のaないしdで認定したとおり,原告番号229B,同231D,同245Eは,いずれも昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分を受け,当該処分は取り消されていないことが認められ,本件全証拠を検討するも,特段の事情を認めるに足 29B,同231D,同245Eは,いずれも昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分を受け,当該処分は取り消されていないことが認められ,本件全証拠を検討するも,特段の事情を認めるに足りる証拠は見当たらない。また,原告番号230Cは,昭和61年12月当時既に57歳であったことが認められる。そうだとすると,これら原告4名(B,D,E,C)を採用候補者名簿に記載しなかった国鉄の行為は相当であったというべきであり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 また,原告番号104Aは,第1希望としてJR北海道,第2希望としてJR東日本と記載していたところ,このような場合,原告AとすればJR東日本に就職することはやむ得ないという意思を表示していたと解するのが相当であり,これに応じ,JR北海道の定員枠等の関係から第2希望のJR東日本の採用候補者名簿に記載した国鉄の行為をもって違法とまで評価することは困難であり,また,原告Aにも法的保護に値するほどの損害が発生しているとまでいうことは困難であるというべきである。 以上によれば,本件不法行為①については,原告番号229B,同230C,同231D,同245E,同104A(以下,原告Bら5名を合わせて「原告Bら5名」という。)の各請求は,その余の点を判断するまでもなく理由がないというべきである。 エ問題は,国鉄が,原告Bら5名を除く原告らをJR北海道,JR九州の採用候補者名簿に記載しなかった点である。すなわち,原告番号Bら5名を除く原告らは,いずれも昭和61年12月時点では年齢は55歳未満であり,昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けていないところ,これらの原告らをJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかった国鉄の行 55歳未満であり,昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けていないところ,これらの原告らをJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかった国鉄の行為は適法であったか,それとも違法であったかを検討しなければならない。この点に関し,原告らは,いずれも国労の組合員であったところ,国鉄はこのことを嫌悪して,選定基準を恣意的に運用し,JR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかったのであり,かかる行為は不当労働行為であり違法であると主張し,被告はこれを否定するので,以下,この点について判断することにする。 (ア) 前記イのとおり,本件採用基準及び国鉄による本件選定基準は,一応合理的なものと認められるところ,4月採用における北海道地区の所属組合別の職員の採用率は,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた鉄道労連が99.4%,北海道鉄産労が79.1%であったのに対し,これに反対していた国労は48.0%,同じく全動労は28.1%であった。また,4月採用における九州地区の所属組合別の職員の採用率は,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた九州鉄産労が84.4%,鉄労が100%,動労が99.9%であったのに対し,これに反対していた国労は43.1%,同じく全動労は32%であった。このように4月採用においては,北海道,九州いずれの地区においても国鉄の分割・民営化に賛成していた組合に所属していた者とこれに反対していた組合に所属していた者との間で採用率に顕著な差がみられる。(前記(2)キ(ア))(イ) 同一の企業体の労働者からなる複数の集団につき,能力,勤労意欲,勤務態度等の評価において上記(ア)のような著しい格差を肯定し得るほどの質的な差異は認められないのが通 (2)キ(ア))(イ) 同一の企業体の労働者からなる複数の集団につき,能力,勤労意欲,勤務態度等の評価において上記(ア)のような著しい格差を肯定し得るほどの質的な差異は認められないのが通常であるから,このような組合間における著しい格差の根拠となる特段の事情が証明されない場合には,上記のような著しい格差があることは,使用者による労働組合法7条1号の「不利益取扱い」の存在を推認させるものと解するのが相当である。 また,職員管理調書の評定期間内に国労の方針に従い組合活動を行っていてその後国労を脱退した者で昭和62年1月以降組織された北海道,九州鉄産労(前記(2)エ(イ))の組合員と国労の組合員との間においても,上記(ア)のように採用率に顕著な格差が認められる。これら北海道,九州鉄産労に所属する者が国労を脱退した日から採用候補者名簿がJR北海道,JR九州の各設立委員会に提出された昭和62年2月7日までの間は,僅か1か月に満たない期間であり,このような短期間のうちに,北海道,九州鉄産労所属の組合員が職員管理調書の評価にも反映するような実績を挙げ,そのことによってこれほどまでに組合間格差(国労と北海道,九州鉄産労との間)が生じたものとは考え難い(ちなみに,前記(2)キ(イ)で認定したとおり,札幌地区,門司地区では,国労を脱退し北海道,九州鉄産労に加入した元役員らが,処分歴があるにもかかわらず,JR北海道,九州に採用されている。)。 (ウ) そして,国労は,前記(2)アで認定したとおり,一貫して国鉄の分割・民営化に反対し,職場規律総点検の実施後も,国鉄の分割・民営化に反対するワッペンの着用等の運動を継続するととともに,議員兼職制度の禁止,無料乗車証制度の変更,就業時間中の洗身入浴等の慣行の変更等について,ことごとく国 規律総点検の実施後も,国鉄の分割・民営化に反対するワッペンの着用等の運動を継続するととともに,議員兼職制度の禁止,無料乗車証制度の変更,就業時間中の洗身入浴等の慣行の変更等について,ことごとく国鉄の施策に反発した上,余剰人員対策,進路希望アンケート調査,広域異動についてもこれを阻止する運動を展開し,さらに,昭和58年5月から同60年8月までの間に,順法闘争や公労法等により禁止されていたストライキを行った。これに対し,国鉄は,国労との間の雇用安定協約を破棄したり,ストライキや順法闘争に参加したことを理由に国労組合員を大量に処分したりした上,多数の国労組合員を人活センターに配置するなどした。その一方で,国鉄は,国鉄の分割・民営化に賛成していた鉄労,動労らとの間では,雇用安定協約を継続し,2次にわたり労使共同宣言に調印し,総額約202億円の支払を求めるいわゆるスト権ストの損害賠償請求訴訟を国労に対しては維持しながら,動労に対しては取り下げるなどした。このように,国鉄は,国鉄の分割・民営化に賛成する組合との友好関係を深める一方で,これに反対する国労とは敵対関係を露わにしていたのであり,国労ないしその所属組合員を嫌悪するような状況にあった。この点,特に,人活センターでは,ペンキ塗り,構内のごみ拾い,ポイント清掃,ガラス磨き,草刈り等の雑務が命じられていたところ,昭和61年11月1日当時,同センター職員のうち約80%を国労組合員が占めていたというのであり,このこと自体,国鉄が国労組合員に対して不利益取扱いをしていたことをうかがわせるものである。実際,国労の組合員数は,昭和61年7月以降,毎月1万人以上激減していった。 (エ) さらに,前記(2)オで認定したとおり,国鉄は,総裁自ら鉄労及び動労の定期大会に出席し,国鉄改革の諸施策への協力 国労の組合員数は,昭和61年7月以降,毎月1万人以上激減していった。 (エ) さらに,前記(2)オで認定したとおり,国鉄は,総裁自ら鉄労及び動労の定期大会に出席し,国鉄改革の諸施策への協力に謝意を表する一方,幹部や管理職が,公の場で露骨に国労ないし国鉄の分割・民営化に反対する組合に所属していては不利益な取扱いを受けるとの見解を表明していた。 (オ) 以上(ア)ないし(エ)で判示したとおり,国労組合員と国鉄の分割・民営化に賛成した組合の組合員との間の採用率に顕著な差があること,国鉄と国鉄の分割・民営化に一貫して反対し,国鉄改革の諸施策について非協力的態度をとった国労との対立関係が激化し,国労組合員は処分を受けたり,人活センターに配置されたりする一方,国鉄は分割・民営化に賛成する組合とは友好関係を保っていたこと,国鉄の幹部ないし管理職が国労に所属していては不利益取扱いを受ける旨公言していたこと,国労の元役員で処分歴があっても,国鉄の分割・民営化に賛成の北海道,九州鉄産労に加入すれば採用される場合があったことが認められる本件にあっては,国鉄が,原告Bら5名を除く原告らをJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかったのは,主として,これら原告らが,国労に所属していることないし国労の指示に従って組合活動を行っていることを嫌悪して,国労組合員に対する能力,勤労意欲,勤務態度等の評価を恣意的に低く行い,不利益に取り扱ったことによるものであると強く推認することができる。 (カ) これに対し,被告は,国労組合員は,改革を進めようとする国鉄の諸施策に対し,反対運動,非協力,上司に対する反抗,就業規則違反等の非違行為等正当な組合活動とは程遠い行為を繰り返し,さらには公労法で禁止されていたストライキを行うなどしていたのであって する国鉄の諸施策に対し,反対運動,非協力,上司に対する反抗,就業規則違反等の非違行為等正当な組合活動とは程遠い行為を繰り返し,さらには公労法で禁止されていたストライキを行うなどしていたのであって,このような勤務の実態が反映された勤務成績に基づいて作成されたJRの採用候補者名簿において,原告ら国労組合員が相対的に勤務成績が劣位と判断され,結果的にJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載されない者の比率が高くなったとしても,それは組合差別によるものではないと主張する。 この点,国鉄は,JR北海道及びJR九州については,入社希望者数が基本計画に示された要員数を大きく上回ったことから,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者を除外したほか国鉄在職中の勤務状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者か否かとの基準(本件基準③)に立ち返って,採用候補者名簿に記載するか否かの選定を行ったこと,かかる基準に関し,前記(2)ア(カ)で認定したとおり,国鉄は,職員管理調書に基づき職員の国鉄在職中の勤務状況を把握したこと,職員管理調書は,昭和58年4月1日から同61年10月1日までの間を調査対象期間とし,その特記事項として,一般処分及び労働処分の種類毎の回数,時期,昇給等に関する項目を設け,また,評定事項として,業務知識,技能等のほか,①職場の秩序を乱す行為(点呼妨害,体操不参加,管理者への暴言等を含む。)の有無,②リボン・ワッペン,氏名札,安全帽,あご紐,ネクタイ等について,指導された服装をしているか,指導されたらそれに従うか否か,③勤務時間中の組合活動の有無,④国鉄の厳しい現場を認識し,業務に取り組んでいるかなどの項目を設けていたことが認められる。 このように,入社希望者数が基本計画に示された要員 に従うか否か,③勤務時間中の組合活動の有無,④国鉄の厳しい現場を認識し,業務に取り組んでいるかなどの項目を設けていたことが認められる。 このように,入社希望者数が基本計画に示された要員数を大きく上回ったJR北海道及びJR九州について(なお,本件証拠上,基本計画に定められた要員数を不相当とすべき事由は見当たらない。),国鉄が,職員の国鉄在職中の勤務状況を考慮して,前記JR各社の各採用候補者名簿に記載するか否かの選定を行ったこと自体には一応の合理性があるというべきであるところ,前記アで認定したとおり,国労は,一貫して国鉄の分割・民営化に反対し,違法なストライキを含む種々の運動を展開していたものであり,かかる方針に従った個々の国労組合員が正当な組合活動を逸脱する行為をした場合,勤務成績の評定に影響があったとしても,これを不当ということはできないのは確かである。 しかしながら,前記勤務成績の評定に当たって考慮の対象となるのは,飽くまで個々の採用希望者の具体的行動であって,採用希望者の所属する労働組合の属性でないことはいうまでもなく,原告Bら5名を除く原告らの個別具体的な勤務態度等に係る評価を問題としなければならないが,本件においては,本件全証拠を検討するも,原告Bら5名を除く原告らそれぞれについて,職員管理調書上いかなる評価を受けていたかなどが明らかでなく,評価が合理的であったか否かは不明というほかない。そもそも,上記職員管理調書の評定事項には,国鉄の厳しい現場を認識し,業務に取り組んでいるかとの項目が設けられ,国鉄の分割・民営化に賛成するか否かという思想自体が評価されていたことさえうかがわれる。 そうだとすると,一般的に言って正当な組合活動を逸脱する行為をした者が評定上不利益を受けることが相当なことだとしても,原告Bら5名 成するか否かという思想自体が評価されていたことさえうかがわれる。 そうだとすると,一般的に言って正当な組合活動を逸脱する行為をした者が評定上不利益を受けることが相当なことだとしても,原告Bら5名を除く原告らそれぞれについて,かかる事情を個別具体的に認めるに足りる証拠がないというべきであり,仮にそれが認められるとしても,それがどのように評価されたかが明らかでない以上,国鉄が本件採用基準の適用において,国鉄の分割・民営化に反対していた原告Bら5名を除く原告ら国労の組合員に対し,国労に所属していることないし国労の指示に従った組合活動を嫌悪して,勤務評定を恣意的に低く行い,不利益に取り扱ったとの上記(オ)の推認を覆すだけの事情はないというべきであって,この点の上記被告の主張は採用することができない。 オ小括以上によれば,原告Bら5名に関する本件不法行為①の請求は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。しかし,原告Bら5名を除く原告らについては,国鉄がJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかったのは,同原告らが,主として,国労に所属していることないし国労の指示に従って組合活動を行っていることを理由として,採用基準を恣意的に適用し,勤務成績を低位に位置付けたこと(以下「本件加害行為」という。)によるものと認められ,不法行為と評価するのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 (4) 本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等の時効消滅の成否ア被告は,本件不採用は昭和62年4月1日に行われたところ,本件訴えは,原告らが加害者及び損害を知った時から既に3年以上を経過して提起されたものであることは明らかであるとして,原告Bら5名を除く原告らのJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載にか 本件訴えは,原告らが加害者及び損害を知った時から既に3年以上を経過して提起されたものであることは明らかであるとして,原告Bら5名を除く原告らのJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載にかかる不法行為①に基づく損害賠償請求権等は被告の時効援用により既に時効消滅していると主張する。そこで,以下,この点について判断することにする。 イ認定事実前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(証拠等を掲記しないものは当事者間に争いのない事実である。)。 (ア) 本件不採用等に関する公的機関の判断a 国労委国労及び国労門司地方本部らは,昭和62年3月18日,国労委に対し,国鉄を被申立人として,国鉄が改革法23条に基づいて,JR北海道,JR西日本,JR九州及びJR貨物の各採用候補者名簿を作成するに当たり,同社の職員となる旨希望した国労組合員を名簿に記載せず,同社の設立委員が国労所属の組合員に対し採用通知を発しないという事態を生じさせたことは不当労働行為にあたるとして,①改めて採用候補者名簿を作成して設立委員に提出すること,②陳謝文を交付・掲示することを求める救済申立てをした(なお,国労らは,昭和62年7月15日,前記①の申立てを取り下げた。)。国労委は,昭和63年9月20日,承継法人の職員となる者の決定及び採用通知は,その設立委員が改革法所定の職務権限に基づき,基本計画ないし採用基準に則り,その判断と責任において行ったものであり,国鉄は,設立委員のいわば補助機関として,それ自体としては国鉄における労働関係に何ら変動を生じさせることがない前記JR各社の採用候補者名簿を作成し提出したものであり,労働組合法上の責任の帰属主体となること 設立委員のいわば補助機関として,それ自体としては国鉄における労働関係に何ら変動を生じさせることがない前記JR各社の採用候補者名簿を作成し提出したものであり,労働組合法上の責任の帰属主体となることはなく,被申立人適格を有しないと判断して,前記申立てを却下するとの決定をした。(甲446,弁論の全趣旨)b 労働委員会の救済命令及びその取消訴訟(a) 国労及びその各地方本部は,所属組合員がJR各社に採用されなかったのは不当労働行為に当たると主張して,各地労委(北海道,熊本,福岡,鹿児島,宮崎,佐賀,長崎,大分,神奈川,東京,宮城,福島,静岡)に対し,JR各社を被申立人として救済命令申立てをした(甲6ないし12,276ないし290)。このうち,北海道地労委は,平成元年1月12日,JR北海道及びJR貨物に対し,救済申立対象者について,昭和62年4月1日からの採用取扱い,JR北海道及びJR貨物に採用されていたならば得たであろう賃金相当額と事業団から実際に支払われた賃金額との差額の支払等を命じる救済命令を発した。JR北海道及びJR貨物は,前記初審命令を不服として再審査を申し立てたところ,中労委は,平成5年12月15日,4月採用及び6月採用に関し,不利益取扱いを受けた組合員の具体的な特定はできないが救済申立対象者の少なくとも一部の者について不当労働行為の成立が認められると判断した上で,前記初審命令を変更して,救済申立対象者のうち同2年4月2日に事業団から離職を余儀なくされた者であってJR北海道及びJR貨物に採用を申し出たものについての職員採用に関する選考やり直し,選考やり直しの結果採用すべきものと判定した者についての採用取扱い及び同日以降の賃金相当額の60%に相当する額の支払等を命じ,その余の救済申立てを棄却する旨の命令 ての職員採用に関する選考やり直し,選考やり直しの結果採用すべきものと判定した者についての採用取扱い及び同日以降の賃金相当額の60%に相当する額の支払等を命じ,その余の救済申立てを棄却する旨の命令を発した(甲6)。これに対し,JR北海道,JR貨物及び国労が,前記中労委命令の取消しを求めて救済命令取消訴訟を提起したところ,本件地裁判決は,国鉄が前記JR各社の採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をしたという場合には,国鉄ないし事業団が労働組合法7条の使用者としての責任を負うべきであり,設立委員ないし承継法人である前記JR各社が使用者としての責任を負うものではないとして,同命令を取り消し,本件高裁判決,本件最判においても同様の判断がされた。(甲4,6,7,17,445の2)(b) また,九州ないし本州の各JRに対する救済命令申立ても,前記北海道地労委に対する申立てと同様に,地労委ないし中労委では救済命令が出されたが,その取消訴訟において同救済命令は取り消された(甲5ないし12,277ないし290,445の1,弁論の全趣旨)。 (イ) 本訴提起原告らは,平成14年1月28日(甲事件),同15年10月20日(乙事件),同年12月12日(丙事件),それぞれ主位的請求について本件訴えを提起し,同16年4月19日予備的請求について追加的訴えの変更をした(前記争いのない事実等(4))。 (ウ) 時効援用被告は,甲事件原告らに対し,平成14年11月21日の甲事件第2回口頭弁論期日において主位的請求のうち慰謝料請求について時効を援用するとの意思表示をし,また,被告は,原告らに対し,同16年5月31日の本件第15回口頭弁論期日において予備的請求について時効を援用するとの意思表示をし 主位的請求のうち慰謝料請求について時効を援用するとの意思表示をし,また,被告は,原告らに対し,同16年5月31日の本件第15回口頭弁論期日において予備的請求について時効を援用するとの意思表示をした(争いのない事実等(5))。なお,原告らの主位的請求のうち慰謝料請求は,予備的請求の慰謝料請求と内容的に重なるものであるから,上記被告の予備的請求についての時効援用の意思表示は,乙事件及び丙事件原告の主位的請求のうち慰謝料請求に対する時効援用の意思表示を含むものと解される。 ウ当裁判所の判断(ア) 時効の起算点について民法724条は,不法行為による損害賠償請求権の時効消滅は,被害者が「損害及び加害者を知った時」から進行する旨規定するが,この「損害及び加害者を知った時」とは,被害者において,加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり(最二小判昭和48年11月16日民集27巻10号1374頁参照),同条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解するのが相当である(最三小平成14年1月29日民集56巻1号218頁参照)。 これを本件についてみると,前記のとおり,国労は原告らを含む国労組合員が,国労に所属していることないし国労の指示に従って組合活動を行ったことを理由としてJRの採用候補者名簿に記載されず,JRに採用されなかったことが不当労働行為に当たると主張して,採用候補者名簿に記載されなかった者をJRに採用されたものと扱えとの救済命令申立てをし,全国各地の各地労委において救済が命じられ,中労委においても,選考のやり直しと,その結果に基づく採用取扱い等が命じられた。その後,JR各社による救済命 に採用されたものと扱えとの救済命令申立てをし,全国各地の各地労委において救済が命じられ,中労委においても,選考のやり直しと,その結果に基づく採用取扱い等が命じられた。その後,JR各社による救済命令取消訴訟において,JR各社が労働組合法7条の「使用者」に当たらないとの理由で同救済命令が取り消され,控訴審及び上告審において同様の判断がされ,JR各社の採用候補者名簿に記載されなかった者は,それが不当労働行為に当たるか否かにかかわらず,JR各社への採用を求めることができないことが確定するに至ったのである。この点,JR各社が労働組合法7条の「使用者」に当たるか否かについては,本件最判においても意見が分かれ,承継法人の職員の採用については,国鉄に設立委員の補助的なものとして権限を付与したものと解し,JRの設立委員ひいては承継法人が労働組合法7条の使用者としての責任を負うとの少数意見が付されている。 これらの状況に照らしてみると,本件最判に至るまでは,JRの採用候補者名簿に記載されなかった国労組合員について,JRに採用したものと扱えなどとする救済命令が是認される可能性が多分にあったものであり,これが是認された際には,昭和62年4月1日以降,JRにおける労働者としての地位が確認され,同日以降の賃金請求権が発生することになったのであるから,かかる訴訟が係属する間は,原告らが,国鉄のJRの採用候補者名簿への不記載によりJRに採用される余地がなくなったということを現実に知ることはできず,それに伴う損害の発生を知ることもできなかったといわざるを得ず,したがってまた,かかる損害について,被告を相手方として賠償を求める余地もなかったと言わざるを得ない。そうだとすると,原告Bら5名を除く原告らは,本件最判により,被告を相手方として,JR北海道,JR したがってまた,かかる損害について,被告を相手方として賠償を求める余地もなかったと言わざるを得ない。そうだとすると,原告Bら5名を除く原告らは,本件最判により,被告を相手方として,JR北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載により前記JR各社に採用される余地がなくなったことに伴う損害についての賠償を請求することが可能なことを現実に知ったと解するのが相当であり,本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等については,本件最判時が時効消滅の起算点であるというべきである。なお,原告Bら5名を除く原告らは,本件最判以前に本件訴訟を提起しているものの,①これは上告審において同原告らをJR各社に採用されたものと扱えとの救済命令が是認されなかった場合を想定したいわば予備的な訴え提起であり,救済命令が是認された場合には,JRの採用候補者名簿への不記載に関する損害賠償請求は認めることができなかったのであり,②また,本件最判が出る前の原告らの被告に対する損害賠償請求は,本件解雇が違法であることを理由とするもの(本件不法行為④)であり,本件不法行為①による損害賠償請求を明確にしたのは本件最判が出た後の予備的請求の中であることに照らすと,これにより原告らが本件最判以前に被告に対する損害賠償請求が可能な程度に加害者及び損害を知ったと解することはできない。 (イ) 被告の主張について被告は,原告Bら5名を除く原告らはJR各社への採用通知がされた昭和62年2月16日ころからJR不採用に関する国鉄ないし事業団に対する責任追及について検討していたこと,本件解雇後に事業団が宿舎を占有していた原告らに提訴した建物明渡等請求事件等においても採用差別が国鉄の不当労働行為であるとの主張をしていたこと,事業団は採用候補者名簿作成の責任主体は国鉄ないし事業団 件解雇後に事業団が宿舎を占有していた原告らに提訴した建物明渡等請求事件等においても採用差別が国鉄の不当労働行為であるとの主張をしていたこと,事業団は採用候補者名簿作成の責任主体は国鉄ないし事業団にある旨国労に表明していたことからして,本件最判によって初めて加害者及び損害を知るに至ったということはできない旨主張する。 確かに,証拠(乙110の1及び2,同112の2,同113,115ないし120の各1,2)及び弁論の全趣旨によれば,国労は本件不採用について国鉄ないし事業団に対する責任追及を検討していたこと,国労は事業団解散の際,国労組合員が国鉄及び事業団による一連の不当労働行為及び不当解雇によって被った損害賠償請求権を有するとの内容証明郵便を送付していたこと,事業団の原告らに対する建物明渡等請求事件等において国鉄ないし事業団の不当労働行為責任について言及していたこと,本件地裁判決後,藤井運輸大臣が事業団に対し提訴すべきとの見解を表明していたこと,国労組合員でJRに採用されなかった者の中にも,過去に,被告に対して,事業団解雇後のJR西日本の賃金相当額に係る損害賠償請求を提起している者がいることが認められる。しかし,原告Bら5名を除く原告らが他の国労組合員の行動等まで知悉していたと認めるに足りる証拠は存在せず,前記認定事実から直ちに同原告らが被告に対する損害賠償請求が可能な程度に加害者及び損害を知ったと解することはできず,この点の被告の主張は採用することができない。 (ウ) 小括以上によれば,原告Bら5名を除く原告らの被告に対するJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載についての損害賠償請求権等(本件不法行為①)は,時効を援用することが権利濫用に当たるか否かを判断するまでもなく,時効が成立していな らの被告に対するJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載についての損害賠償請求権等(本件不法行為①)は,時効を援用することが権利濫用に当たるか否かを判断するまでもなく,時効が成立していないと解するのが相当である。よって,被告の本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等に対する時効の主張は採用することができない。 なお,付言するに,被告の本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等に対する時効の援用は信義則に反し,権利の濫用として許されないものと解するのが相当であり,被告の時効の主張は,この点からも理由がない。すなわち,民法724条の短期消滅時効の趣旨は,損害賠償請求を受けるかどうかが不明である結果,極めて不安定な立場に置かれる加害者の法的地位を安定させ,加害者を保護することにあると解される(最三小判昭和49年12月17日民集28巻10号2059頁参照)ところ,それは飽くまで不法行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しながら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位の安定を図ろうとしているものにすぎず,それ以上に加害者を保護しようという趣旨と解することはできない(最三小判平成14年1月29日民集56巻1号218頁参照)。そうだとすると,被害者において適時の権利行使又は時効中断措置を講ずることが不可能若しくは著しく困難にさせる客観的事情が認められるような場合には,加害者の消滅時効の援用は信義則に反し,権利の濫用に当たるというべきである。これを本件についてみると,原告Bら5名を除く原告らは,本件訴え提起に至るまで,国労の方針に従い,国労の労働委員会に対する救済申立てによりJR北海道,JR九州への採用を求めていたのであり(証人宮坂要【69頁】,弁論の全趣旨),これが認められれば,被告に対し,採用候補者名簿不記載について損害 ,国労の労働委員会に対する救済申立てによりJR北海道,JR九州への採用を求めていたのであり(証人宮坂要【69頁】,弁論の全趣旨),これが認められれば,被告に対し,採用候補者名簿不記載について損害賠償請求等を行う必要がなかったのであるから,このような選択は,国鉄の分割・民営化により,鉄道にかかわる職場を奪われた同原告らにとって,やむを得なかったということができる(証人宮坂要【76頁】参照)。このような事情に照らしてみれば,原告Bら5名を除く原告らは,本件訴え提起に至るまで,被告に対し,採用候補者名簿不記載について損害賠償請求等をすること又は時効中断措置を講ずることが著しく困難な状況に置かれていたとみることができる。そうだとすると,被告が本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等について消滅時効を援用することは,信義則に反し,権利の濫用に当たると解するのが相当である。 3 争点2ないし4(本件不法行為②③及びこれらに基づく損害賠償請求権の時効消滅の成否)について(1) 本件不法行為②についてア原告らは,本件不法行為②として,国鉄が,原告らに対し,国労所属を理由に些細な事象で処分を行ったこと,余剰人員扱い,人活センターへ配属したことなどが不法行為に当たるとして損害賠償請求をしている。 イ仮に,国鉄が,原告らに対し,上記不法行為を行ったのだとしても,かかる不法行為は,弁論の全趣旨によれば,本件不法行為①とは異なり,これが行われた時点で,損害及び加害者が国鉄であることは明らかであり,国鉄ないしこれを承継した事業団に対し直ちに請求することが可能であったものと認められ,これを妨げるような事情は認められない。そうだとすると,本件不法行為②については,原告らが「損害及び加害者」を知った時から3年が経過していることは明らかである。 ことが可能であったものと認められ,これを妨げるような事情は認められない。そうだとすると,本件不法行為②については,原告らが「損害及び加害者」を知った時から3年が経過していることは明らかである。 ウこの点に関し,原告らは,本件不法行為②も本件不採用と一体をなすものとして,労働委員会に対する救済申立てにおいて主張しており,同申立事件継続中は時効が中断していたと主張する。 しかしながら,前記2(3)イ(ア)bで認定したとおり,国労の労働委員会に対する救済申立ては,JRの採用候補者名簿に記載されなかった者についてJRへの採用命令を求めるものであって,上記国鉄ないし事業団の不当労働行為を救済対象とするものではないこと,そもそも,不当労働行為救済制度は,労働委員会による行政的救済であって,これを民法147条1項所定の「請求」と同視することはできないことに照らすと,労働委員会に対する救済申立てをもって時効が中断したと解することはできない。よって,この点の原告らの主張は理由がなく,採用することができない。 エまた,原告らは,自由民主党と自由党が,平成11年6月,国労本部に対し提示した「国労とJR各社との話し合いの開始について」と題する文書中に,「なお,本件については,別途,国労と鉄建公団(=旧国鉄)との間の裁判上の金銭和解も考えるところである」との記載があること(甲13)をもって,被告が原告らの損害賠償請求を承認した旨主張する。 しかしながら,上記文書の主体,内容からして,およそこれにより被告が原告らの損害賠償請求を承認したと解することは困難である。よって,この点の原告らの主張も採用することができない。 オさらに,本件不法行為②についてみれば,本件全証拠を検討するも,原告らの被告に対する損害賠償請求権の行使又 と解することは困難である。よって,この点の原告らの主張も採用することができない。 オさらに,本件不法行為②についてみれば,本件全証拠を検討するも,原告らの被告に対する損害賠償請求権の行使又は時効中断措置を講ずることが不可能若しくは著しく困難にさせる客観的事情は認められず,被告の消滅時効の援用が信義則に反し,権利の濫用に当たると解することはできない。 カ小括以上によれば,原告らの被告に対する本件不法行為②に基づく損害賠償請求権は,その存否について判断するまでもなく,被告の時効援用の意思表示により時効消滅したというべきであり,原告らの請求は理由がない。 (2) 本件不法行為③についてア原告らは,本件不法行為③として,事業団が原告らの再就職を妨害したことが不法行為に当たるとして損害賠償請求をしている。 イ仮に,事業団が,原告らに対し,上記不法行為を行ったのだとしても,かかる不法行為については,弁論の全趣旨によれば,本件不法行為①とは異なり,原告らは,原告らのJR各社への責任追及如何にかかわらず,少なくとも本件解雇時までには,これによる損害及び加害者が事業団であるということを知ったというべきである。そうだとすると,本件不法行為③については,原告らが「加害者及び損害」を知った時から3年が経過していることは明らかである。 ウこの点に関し,原告らは,本件不法行為③についても,本件不採用と一体をなすものとして,労働委員会に対する救済申立てにおいて主張しており,同申立事件継続中は時効が中断した,また,自由民主党と自由党が,平成11年6月,国労本部に対し提示した文書をもって,被告が原告らの損害賠償請求を承認した旨主張する。 しかし,上記(1)ウエで判断したのと同様の理由で,原告の主張は理由がなく と自由党が,平成11年6月,国労本部に対し提示した文書をもって,被告が原告らの損害賠償請求を承認した旨主張する。 しかし,上記(1)ウエで判断したのと同様の理由で,原告の主張は理由がなく,これを採用することができない。 エまた,本件不法行為③についても,本件全証拠を検討するも,原告らの事業団に対する損害賠償請求権の行使又は時効中断措置を講ずることが不可能若しくは著しく困難にさせる客観的事情は認められず,被告の消滅時効の援用が信義則に反し,権利の濫用に当たると解することはできない。 オ小括以上によれば,原告らの被告に対する本件不法行為③に基づく損害賠償請求権は,その存否について判断するまでもなく,被告の時効援用により時効消滅したというべきであり,原告らの請求は理由がない。 4 争点3(本件不法行為①と相当因果関係のある損害賠償の範囲,損害回復方法)について(1) 賃金相当額等の請求についてア原告Bら5名を除く原告らは,国鉄から組合差別を受けることなくJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載されていれば,前記JR各社に採用されていたはずであるとして,別紙原告別損害賠償請求額一覧表記載のとおり,これら原告らが前記JR各社に採用されていたら得られたであろう定年まで働いた場合の賃金相当額等の支払を請求する。 イしかし,仮に,原告Bら5名を除く原告ら全員について,勤務評定を恣意的に低く行い不利益に取り扱うという不当労働行為(本件加害行為)が行われなかったと仮定しても,同原告ら全員が希望する地元JRであるJR北海道,JR九州に採用されたはずであるとの証明はいまだされていないというべきである。 (ア) すなわち,原告Bら5名を除く原告らは,いずれもJR北海道又はJR九州への入社を希 JRであるJR北海道,JR九州に採用されたはずであるとの証明はいまだされていないというべきである。 (ア) すなわち,原告Bら5名を除く原告らは,いずれもJR北海道又はJR九州への入社を希望していたものであるが,両社においては,入社希望者が基本計画に定められた要員数を大きく上回っており,同原告ら全員の国鉄在職中の勤務成績について正当な評価が行われたとしても,同原告ら全員が,入社希望者全体の中で上位に位置し前記JR各社の採用候補者名簿に記載されるべきであったと認めるに足る証拠はない。このことは,前記2(2)キのとおり,国鉄の分割・民営化に賛成していた労働組合所属の職員全員が前記JR各社の採用候補者名簿に記載されたわけではなく,前記2(2)アのとおり,国労が一貫して国鉄の分割・民営化に反対し,違法なストライキを含む種々の運動を展開していたことにからも明らかである。 (イ) しかも,JR各社は経済活動の一環として雇用契約締結の自由を有しており,自己の営業のために労働者を雇用するに当たり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができる以上,採用候補者名簿に記載されることが,直ちにJRに採用されることを意味するものではない。 ウそうだとすると,結局,原告Bら5名を除く原告らは,本件不法行為①によって,JR北海道,JR九州に採用された場合の地位そのものを喪失したとの損害を被ったと解することはできない。同原告らが本件加害行為によって被った損害は,国鉄がJRの採用候補者名簿作成に当たって,国鉄ひいてはJR設立委員から正当な評価を受ける機会を喪失したために被った損害の範囲で,それぞれ理由があるにとどまるといわざるを得ない。 エ 害は,国鉄がJRの採用候補者名簿作成に当たって,国鉄ひいてはJR設立委員から正当な評価を受ける機会を喪失したために被った損害の範囲で,それぞれ理由があるにとどまるといわざるを得ない。 エよって,原告Bら5名を除く原告らがJR北海道,JR九州に採用されたであろうことを前提とする賃金相当額等の請求は,いずれも理由がない。 (2) 慰謝料請求についてア証拠(甲601の1及び2,同602ないし607,608及び609の各1,2,同610,611の1及び2,同612,613の1及び2,同614,615の1及び2,同616の1ないし3,同617の1及び2,同618,619,620及び621の各1,2,同622ないし624,625ないし627の各1,2,同628ないし632,632の2,同633の1及び2,同634,635及び636の各1,2,同637,638の1及び2,同639ないし641,642及び643の各1,2,同644ないし647,648及び649の各1,2,同650,651の1及び2,同652,653及び654の各1,2,同655,656及び657の各1,2,658,659及び660の各1,2,同661,662の1及び2,同663ないし665,666の1及び2,同667,668,668の2,同669及び670の各1,2,同671,672,673ないし677の各1,2,同678,679の1ないし3,同680ないし682の各1,2,同683,684の1及び2,同685,686の1及び2,同687,688及び699の各1,2,同690,691,692及び693の各1,2,同694,695ないし702の各1,2,同703,705の1及び2,同706,707ないし714の各1,2,同715,717ないし719,720の1及び2, 0,691,692及び693の各1,2,同694,695ないし702の各1,2,同703,705の1及び2,同706,707ないし714の各1,2,同715,717ないし719,720の1及び2,同721,721の2,同722ないし754,754の2,同755ないし769,769の2,同770ないし773,773の2,同774の1及び2,同775,776,777の1及び2,同778ないし783,784及び785の各1,2,同786,787,788の1及び2,同789,790及び791の各1,2,同792ないし794,795の1及び2,同796ないし802,803及び804の各1,2,同805,806の1及び2,同807,808,808の2,同809ないし821,822の1ないし3,同823,824の1ないし3,同825ないし828,828の2,同832ないし836,836の2ないし22,同837の1及び2,同838ないし843,843の2及び3,同844,846,847,848の1ないし4,同849ないし858,859の1,同860,860の2,同861の1及び2,同862,862の2,同863ないし865,867ないし870,871の1及び2,同872ないし878,879,879の2ないし5,同880,881及び882の各1,2,同883,883の2,同884の1及び2,同885ないし887,888の1及び2,同889,890の1及び2,原告K,同L,同M,同N,同O,同P,同Q,同R,同S,同T,同U,同V,同W,同X,同Y,同Z,同a,同b,同c)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bら5名を除く原告らは,国鉄がJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿を作成するに際し,国鉄から違法に不利益取扱いを受けたことで,正当な評価を受けるという期待 ,同c)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bら5名を除く原告らは,国鉄がJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿を作成するに際し,国鉄から違法に不利益取扱いを受けたことで,正当な評価を受けるという期待権(正当な評価の結果,前記JR各社の採用候補者名簿に記載される可能性があったとの期待,更には前記JR各社に採用される可能性があったとの期待も含む。)を,それぞれ侵害されたこと,また,国労に加入していることによりかかる差別を受け,精神的損害を被ったことが認められる。これらの損害額は,本件違法行為の態様,被害の重大性等を総合考慮すれば,1人当たり500万円(相続人については500万円の各相続分)と認定するのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 イ以上によれば,原告番号1ないし46,48ないし103,105ないし115,117ないし228,232ないし244,246ないし265,267ないし279,281ないし285,288ないし290の原告らの請求は,慰謝料各500万円及びこれに対する本件不法行為①の後である平成2年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合での支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。また,原告番号47,280,286,287の各1の原告らは慰謝料各250万円,同47,286,287の各2,3の原告らは慰謝料各125万円,同280の2の原告は慰謝料83万3334円,同280の3及び4の原告らは慰謝料各83万3333円及びこれらの金員に対しそれぞれ平成2年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 (3) 謝罪文,採用要請について原告Bら5名を除く原告らは,本件不法行為①について,損害賠償を求めるほか,これに による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 (3) 謝罪文,採用要請について原告Bら5名を除く原告らは,本件不法行為①について,損害賠償を求めるほか,これにより名誉を侵害ないし毀損されたとして,被告に対し,謝罪文の交付・掲示及びJR北海道,JR九州に対する同原告らの採用要請を求める。しかし,これら原告らの名誉の回復は,上記金銭による損害賠償を命ずることにより図られるものと認めるのが相当であり,被告に対し,金銭賠償に加え,謝罪文の交付・掲示及びJR北海道,JR九州に対する同原告らの採用要請まで命じなければ同原告らの損害が回復できないとの証明はいまだされていないというべきであって,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。よって,この点に関する同原告らの主張は採用することができない。 第5 結論以上の検討結果によれば,原告Bら5名の各請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし,原告Bら5名を除く原告らの各請求は,主文第1項の限度で理由があるのでその限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第36部裁判長裁判官難波孝一裁判官知野明裁判官増永謙一郎は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官難波孝一

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