主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,594万4227円及びこれに対する平成24年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを12分し,その11を原告の負担とし,その余を被告らの負 担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,7067万1306円及びこれに対する平 成24年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告学校法人A1に雇用され,被告学校法人A1が設置,運営するB高等学校(以下「本件学校」という。)の常勤講師として勤務していた原告が,本件学校の当時の分室長であった被告A2から セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)を受け(以下,上記各行為を総称して「本件各行為」という。),これによって,うつ病などにり患したと主張して,被告A2に対し,不法行為に基づく損害賠償金7067万1306円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,被告学 校法人A1に対し,使用者責任に基づく損害賠償金7067万1306円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,連帯して支払うことを求める事案である。 1 前提事実(争いがないか,各項末尾に記載した証拠〔特記ない限り枝番を含む。 以下同じ。〕及び弁論の全趣旨等により認められる。) ⑴ 当事 帯して支払うことを求める事案である。 1 前提事実(争いがないか,各項末尾に記載した証拠〔特記ない限り枝番を含む。 以下同じ。〕及び弁論の全趣旨等により認められる。) ⑴ 当事者等ア原告等原告は,本件学校において,平成21年7月末日頃からスクールサポーター(学習指導援助等のボランティア)として,平成22年4月頃から非常勤講師として,それぞれ勤務していた。原告は,平成23年4月1日に,雇用 の期間を1年間と定め,本件学校の常勤講師として雇用された(以下「本件雇用契約」という。)。原告は,平成24年4月1日頃までには,本件雇用契約の更新を受けた。 また,原告の交際相手で,夫のCも,平成23年4月1日に,本件学校の常勤講師として雇用され,平成24年4月1日頃までには上記雇用の更新を 受けた。 (甲23,乙3,20,丙38,原告,被告A2,弁論の全趣旨)イ被告ら被告学校法人A1は,教育基本法及び学校教育法に従い,学校教育を行うことを目的として,本件学校などを設置,運営する学校法人である。 被告A2は,少なくとも平成25年頃まで,本件学校の分室長及び被告学校法人A1の学園本部の副校長にあったが,その後,被告学校法人A1の学園本部の教頭に降格され,平成30年12月31日,同月23日付けの退職願に基づき,被告学校法人A1を退職した。 (甲13,23,乙3,20,23,被告A2,弁論の全趣旨) ⑵ 原告の勤務状況ア原告は,被告A2及び本件学校の当時の教頭に対し,平成24年8月1日,翌日から休職することを申し出た。原告は,同月2日以降,有給休暇を消化した。 イ原告は,被告学校法人A1の理事長宛に,平成24年9月10日頃,休職 期間を同日から同年12月10日までとし, 翌日から休職することを申し出た。原告は,同月2日以降,有給休暇を消化した。 イ原告は,被告学校法人A1の理事長宛に,平成24年9月10日頃,休職 期間を同日から同年12月10日までとし,その理由を病気療養とする休職 願を作成し,診断書を添付して提出した。被告学校法人A1は,同年9月27日,原告に対し,休職期間を同年10月1日から同年12月10日までとして,休職を命じた。 ウ被告学校法人A1は,原告に対し,平成25年2月26日,被告学校法人A1と原告との間の雇用契約が同年3月31日に満了するが,雇用契約の更 新をしない旨の予告通知をした。その後,原告は,同日,被告学校法人A1との間の雇用契約の期間満了により,被告学校法人A1を退職した。 (甲7~10,23,乙3,20,弁論の全趣旨)⑶ 原告の平成23年以前の通院原告は,大学生及び大学院生であった時期にも,相当数の精神科を受診した。 (争いがない事実)⑷ 原告の症状固定及び後遺障害の認定原告は,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)上の障害補償給付の支給を申請した。原告は,平成29年10月31日に症状が固定し,後遺障害等級5級の1の2(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に 軽易な労務以外の労務に服することができないもの)(以下,第5級などの等級のみを表示するときは,労災保険法上の後遺障害等級である。)の後遺障害があると判断され,障害補償年金の支給決定を受けた。 (争いがない事実) 2 争点 ⑴ 本件各行為の有無及び違法性(原告の主張)ア被告A2は,原告に対し,平成24年4月6日から同年7月11日までの間に,下記のセクハラ行為(本件各行為に対応して,「本件行為」のようにいうことがある。) 及び違法性(原告の主張)ア被告A2は,原告に対し,平成24年4月6日から同年7月11日までの間に,下記のセクハラ行為(本件各行為に対応して,「本件行為」のようにいうことがある。) をした。 原告は,平成24年4月6日,教員の懇親会である「講師会」の二次会で,カラオケボックスに行った。同日午後9時30分頃,原告が同カラオケボックスのトイレの入り口で立っていた。すると,被告A2は,原告に対し,「がんばってください」などと言いながら,同人を抱きしめて,そのままキスをした。 原告は,平成24年4月6日午後10時頃,他の教員の飲み物を取ってと,被告A2が原告を追い掛けて,同カラオケルームを出てきた。そして,同カラオケルームの前で,「いい?」と言いながらディープキスをした。 被告A2は,平成24年4月13日午後3時頃,本件学校2階図書室に おいて,同人に仕事の話をしていた原告に対し,同人を抱きしめて,そのままキスをしようとした。これに対して,原告は,「隣の部屋に生徒がいるし,ダメです」と言って,被告A2を引きはがして避けようとした。すると,被告A2は,「そうやな,あかんな」などと笑いながら,引きはがされる際に,原告の胸を触った。 被告A2は,平成24年4月28日,原告とともにDラジオ局での仕事後に2人で食事に行った後,原告が通うサックス教室に原告を車で送った。 被告A2は,その別れ際に,車内で,原告にディープキスをした。これに対して,原告が「やめてください」と抵抗しようとしたが,被告A2は原告を離さず,原告の胸を揉んだ。 被告A2は,平成24年6月5日午後9時30分頃,本件学校の応接室において,仕事のことを話し合っていた原告に対し,原告を評価している,早いうちに専任講師 告を離さず,原告の胸を揉んだ。 被告A2は,平成24年6月5日午後9時30分頃,本件学校の応接室において,仕事のことを話し合っていた原告に対し,原告を評価している,早いうちに専任講師(教諭)にするつもりである,夏のボーナスも優遇して支給するつもりであるなどの旨を告げて,原告を抱きしめた。被告A2がキスをしようとしてきたため,原告は「ダメです」と言った。しかし, 被告A2は「少しくらいいいじゃないか」と述べて,原告に無理やりキス をした。 被告A2は,平成24年6月16日午後6時過ぎ頃,本件学校のダンスルーム内において,部活動の指導及び片付けなどで残業をしていた原告に対し,夏のボーナスの振込明細書を手渡すとともに,普通は夏のボーナスを出さないが,原告を評価しているため特別に支給した,「がんばってく ださいね」などの旨を述べながら,原告にディープキスをした。 原告は,平成24年7月11日,被告A2の指示を受けて,同人が運転する車で,滋賀県内などの関係先の挨拶周り及び視察に同行した。原告は,被告A2に対し,同日午後4時30分頃,関係先の挨拶周りを終えたので,本件学校に戻ろうと述べたが,被告A2は,本件学校に戻らず,車をラブ ホテルに乗り入れた。被告A2は,ドアを開けて,左手を掴んで原告を降車させた。原告は,「奥さんに悪いとは思わないんですか」,「こういうことはいけないことです」などの旨を被告A2に行って,必死で説得した。しかし,被告A2は,「1回だけ」,「秘密にしておくから」等と言って,原告の左手を掴んだまま,ホテルの部屋に連れ込んだ。入室後,下着の中に手 を入れて原告の胸を触り,キスをするなどした。原告は部屋から出ようとしたが,部屋のドアには鍵がかかっていたために開かず,混乱した。原告 だまま,ホテルの部屋に連れ込んだ。入室後,下着の中に手 を入れて原告の胸を触り,キスをするなどした。原告は部屋から出ようとしたが,部屋のドアには鍵がかかっていたために開かず,混乱した。原告は,高校の恩師に相談の電話をして,何とか穏便に逃げようとしたり,「一線をこえちゃだめです」などの旨を言い,被告A2を必死で説得した。しかし,被告A2は,同日午後5時頃に,原告の拒絶にもかかわらず,性交 渉に及んだ。 イ本件各行為は,被告A2の分室長という職務上の立場や影響力に依拠して,断れば常勤講師への転換が得られない又は交際相手であるCの契約を更新しない等の不利益を匂わせながら,意に反する性的接触を強要して,原告の性的自由ないし人格権を侵害したものである。 ウ以上によれば,本件行為が,原告の性的自由ないし人格権を侵害する不法行為に該当するといえる。 (被告A2の主張)ア本件各行為については,下記のとおり,認否をする。 本件行為 被告A2が原告とともに二次会のカラオケボックスに出掛けたことは認めるが,その余の事実は否認する。なお,原告が,上記二次会において,被告A2に抱きついてきたため,互いに抱き合ってキスをしたことがあった。 本件行為 否認する。 本件行為 否認する。 本件行為 被告A2が,平成24年4月28日,原告とともにDラジオ局での仕事 に行ったこと,その後,原告を誘って2人で食事に行き,食事後に原告が通うサックス教室に原告を車で送ったこと,原告が降車する前に,抱き合ってキスをしたことは認めるが,その余は否認ないし不知。 本件行為 否認する。 本件行為 否認する。 本件行為 被告A2は,原告ともに,平成24年7月11日の に,抱き合ってキスをしたことは認めるが,その余は否認ないし不知。 本件行為 否認する。 本件行為 否認する。 本件行為 被告A2は,原告ともに,平成24年7月11日の午後から,被告A2が運転する車で,京都市E区と滋賀県草津市に出張をした。出張の要件を 済ませた後,ラブホテル街の看板が見え,冗談半分に「疲れたね,休んで いこうか」などと原告に話したところ,原告は「そうですね,いいですよ」などと答えた。被告A2は,交際相手のCが待っていないか,少し遅くなってもいいかなどと聞いたところ,大丈夫などと答えるとともに,秘密にすることを約束した。降車後,原告は,被告A2の後ろから歩いてついてきて,嫌がる素振りや帰ろうとする言動も全くなく,ラブホテルに入った。 入室後,互いにシャワーを浴びたり,談笑したりするなどした。被告A2が,原告の意思を無視して姦淫,射精した事実はない。 イ本件行為被告A2と原告との間に性的な言動があったが,これらについては,いずれも原告の自由な意思決定による真意の承諾があったから,違法なものとは評価できない。 被告A2とラブホテルに入り,その様子を録音するのは,被告A2を陥れる行為である。 ウ以上によれば,本件各行為は,原告の性的自由ないし人格権を侵害する不法行為に該当しない。 (被告学校法人A1の主張) 本件各行為に関する被告A2の主張を,全て有利に援用する。 ⑵ 原告の症状及び本件各行為との因果関係(原告の主張)原告は,よって,不安障害となり,その後,本件行為,心的外傷後ストレス障害(PTSD)及び 解離性障害の症状に悩まされている。原告には,本件各行為を受ける前には,就労するために何らの支障がなかったうえに,本件各行為後に り,その後,本件行為,心的外傷後ストレス障害(PTSD)及び 解離性障害の症状に悩まされている。原告には,本件各行為を受ける前には,就労するために何らの支障がなかったうえに,本件各行為後に原告の診療を担当した医師の診療記録などを踏まえても,原告の現在の精神症状が,本件各行為によるものであることは,明らかである。 原告は,上記の疾病により,長期間の治療を強いられ,平成29年10月3 1日に症状が固定した後にも,後遺障害等級5級の1の2に相当する後遺障害 が残っている。 原告が,大学生及び大学院生の時代に,複数の精神科を受診したのは,治療のためではなく,カウンセリングを勉強するためである。 原告の既往症は,仮に,存在したとしても,解離性障害とPTSDのみであり,これは,本件各行為以前には,寛解していたから,既往症を理由に本件各 行為と原告の症状との条件関係が否定されることはなく,相当因果関係の範囲が限定されることもない。 原告が平成22年7月31日の交通事故により負傷し,損害賠償の問題の解決に時間を要したことも,F医師のカルテに多数の記載があるわけではないから,本件各行為と原告の症状との相当因果関係を制約するものではない。 損害の公平な分担という見地からは,原告は,被告A2の故意による権利侵害により大きな権利侵害を受けたのであるから,原告の成育歴や平成22年における交通事故を理由に,被告らの損害賠償義務を軽減するのは,相当ではない。 (被告A2の主張) 本件各行為に関する被告学校法人A1の主張を,全て有利に援用する。 (被告学校法人A1の主張)まず,F医師による,被告A2の本件各行為によるPTSDという診断には,疑義がある。 原告は,平成24年秋以後も,国内外を何回も旅行するなどして 全て有利に援用する。 (被告学校法人A1の主張)まず,F医師による,被告A2の本件各行為によるPTSDという診断には,疑義がある。 原告は,平成24年秋以後も,国内外を何回も旅行するなどしていたから, 稼働能力が失われたかどうかには疑問がある。労災保険等における等級の判断は,原告の幼少時の体験や上記旅行等に関する情報が提供されないまま行われたと考えられるから,正当であるとはいえない。 仮に,原告がPTSDや解離性障害にり患しているとしても,原告は,幼少期からの性的虐待や身体的,精神的虐待によるトラウマによって,解離性障害, 情緒不安定性障害,境界性人格障害などの精神的障害を有していた。そのため, 原告の複雑性PTSD及び解離性障害などの再発は,被告A2の本件各行為がなかったとしても発症していた可能性が高いから,本件各行為との間の因果関係があるとはいえない。 仮に,本件各行為と,原告が主張する後遺障害等級5級相当の症状との間に,因果関係があるとしても,これらの精神症状は,本件各行為に,原告の幼少期 からの性的虐待や身体的,精神的虐待によるトラウマなどによる精神疾患が寄与して発生したものである。本件各行為から,PTSDなどが発症し,第5級の1の2に相当する傷害が残ることが一般に生じるであろうとはいえないから,これらの症状によって生じた損害については,原告の生育歴や精神疾患などの特別の事情によって生じた損害といえる。そして,被告A2は,本件各行 為時に上記特別の事情を予見し得なかったから,原告のうつ病,PTSD及び解離性障害に関する損害については,相当因果関係のある損害とはいえず,これを賠償する責任を負わない。 仮に,被告A2の行為によるPTSDや解離性障害があるとしても,原告の後遺症については,後 及び解離性障害に関する損害については,相当因果関係のある損害とはいえず,これを賠償する責任を負わない。 仮に,被告A2の行為によるPTSDや解離性障害があるとしても,原告の後遺症については,後遺障害等級9級であるというのが相当である。 なお,原告は,平成22年7月31日に発生した交通事故により負傷し,これに関して,平成26年12月18日に訴えを提起したが,この訴訟は,事故後5年半以上を経過した平成28年3月2日に,和解により終局した。このような紛争の長期化も,原告の症状の増悪に寄与したと考えられる。 ⑶ 賠償すべき損害額 (原告の主張)ア弁護士費用を除く損害 医療費(189万4090円)原告は,医師の判断により,マインドブロックバスターやEMDR療法などの自費診療を受けていた。原告は,医療費の自己負担分として,平成 29年10月31日までに,少なくとも189万4090円を支出した。 休業損害(1557万8373円)原告は,本件各行為を受ける前に,被告学校法人A1の教員として,労働者災害補償保険に基づく障害補償年金で認定された給付日額8389円の基礎収入を得ていた。また,原告の勤務態度や成績に問題がなく,被告A2も原告の期間満了後の更新はもちろん,期限の定めのない専任講師 (教諭)とすることを明言していたことに照らすと,本件雇用契約が更新されることが前提となっていた。これらに加えて,原告が休業した平成24年10月1日から症状固定日(平成29年10月31日)までが1857日であったことを踏まえると,原告は,下記計算式のとおり,1557万8373円の休業損害を被った。 (計算式)基礎収入(8389円)×休業日数(1857日)=1557万8373円逸失利益( ことを踏まえると,原告は,下記計算式のとおり,1557万8373円の休業損害を被った。 (計算式)基礎収入(8389円)×休業日数(1857日)=1557万8373円逸失利益(4070万8393円)原告は,平成29年10月31日に,本件各行為により受けた精神疾患 の症状固定を診断され,平成30年2月28日には第5級の1の2(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)の労働災害後遺障害認定を受け,就労可能な37年間にわたり,労働能力が79パーセントにまで喪失した。 そこで,障害補償給付における基礎収入日額8448円を前提に,上記 37年間の中間利息をライプニッツ方式によって控除して(対応するライプニッツ係数は16.7113)後遺障害逸失利益を算定すると,以下の計算のとおり4070万8393円となる。 (計算式)基礎収入(8448円×365=308万3520円)×労働能力喪失 率(0.79)×労働能力喪失期間の年数に対応する中間利息の控除に関 するライプニッツ係数(16.7113)≒4070万8393円 通院慰謝料(166万円)原告は,本件各行為によって,平成24年8月1日から平成29年10月31日まで通院していた。症状固定日(平成29年10月31日)までの実通院日数を14日に1回程度とするのを前提に,本件各行為によって, 原告の人格を踏みにじられ,被告学校法人A1を休職せざるを得なくなり,雇用期間満了により退職することになったことなどを踏まえると,原告は耐え難い精神的苦痛を受けたといえる。これに対する慰謝料としては166万円が相当である。 後遺障害慰謝料(3300万円) ることになったことなどを踏まえると,原告は耐え難い精神的苦痛を受けたといえる。これに対する慰謝料としては166万円が相当である。 後遺障害慰謝料(3300万円) 原告は,本件各行為によって,第5級の1の2(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)の等級の労働災害後遺障害認定や1級10号の等級の国民年金法に基づく障害基礎年金の後遺障害認定を受けるほどの後遺障害を負った。 これに加えて,本件各行為が準強制性交罪などにも該当し得る故意犯であ ること,症状固定後も多大な出費を強いられていることなどを踏まえると,原告が後遺障害により受けた精神的苦痛を慰謝するために必要な額は,3300万円を下回らない。 小計(9284万0856円) の合計は,9284万0856円である。 イ過失相殺原告の既往歴等の心因的要因が損害の発生又は拡大に寄与していたとしても,上記心因的要因は教職の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないから,被告らの賠償すべき額を決定するに当たり,これをしんしゃくすることはできないというべきである。 また,仮に上記原告の心因的要因が労働者として通常想定される範囲を外 れるものであったとしても,権力関係を背景に原告の意思に反する性的接触及び性交渉を強要し,原告の人格権を踏みにじる違法行為を行った被告A2及び被告学校法人A1に対して,上記原告の心因的要因をしんしゃくして賠償額を決定するべきではない。 ウ損益相殺 労災保険法に基づく休業補償給付(840万2833円)原告は,平成24年8月2日から症状固定日である平成29年10月31日までの間の労災保険法に基 決定するべきではない。 ウ損益相殺 労災保険法に基づく休業補償給付(840万2833円)原告は,平成24年8月2日から症状固定日である平成29年10月31日までの間の労災保険法に基づく休業補償給付として,平成25年12月から平成29年2月28日までの間の差額調整分として返金した金額を控除すると,合計で840万2833円を受給していた。 なお,労災保険法に基づく休業特別支給金は,損益相殺すべきではない。 労災保険法に基づく障害補償年金(186万6340円)原告は,症状固定日の翌日である平成29年11月1日から口頭弁論終結日である平成31年3月13日までの間,労災保険法に基づく障害補償年金として186万6340円を受給した。 なお,労災保険法に基づく障害特別支給金は,損益相殺すべきではない。 国民年金障害基礎年金(439万4645円)原告は,平成27年7月23日付けで,国民年金法上の障害基礎年金2級16号の後遺障害に該当する旨の決定を受け,平成29年3月には,障害等級1級10号に変更された。 原告が口頭弁論終結日である平成31年3月13日までの間に確定的に受給した障害基礎年金の合計金額は,439万4645円である。 私立学校教職員共済障害共済年金(1393万0396円)原告は,私立学校教職員共済(以下「私学共済」という。)に加入していた。私学共済は,平成27年6月29日付けで,原告に2級16号の後遺 障害認定をし,平成29年2月28日付けで障害等級を1級10号に変更 した。原告が口頭弁論終結日である平成31年3月13日までの間に受給した障害共済年金額に,労災保険法に基づく給付金との調整により年金から差し引かれて返還された過払額を控除すると,合計で1393万039 原告が口頭弁論終結日である平成31年3月13日までの間に受給した障害共済年金額に,労災保険法に基づく給付金との調整により年金から差し引かれて返還された過払額を控除すると,合計で1393万0396円となる。 小計(2859万4214円) 損益相殺後の額び逸失利益の範囲においてのみ控除される。本件においては,損益相殺の対象となる損害額が,損益相殺額を上回る。 したがって,弁護士費用を除く損害は,損益相殺後には,弁護士費用を除く損害9284万0856円から損益相殺額2859万4214円を差し引いた,6424万6642円となる。 エ弁護士費用(642万4664円)損益相殺後の損害額,本件の難易度等に応じた弁護士費用としては,64 2万4664円が相当である。 オ合計(請求額)(7067万1306円)前記ウの損益相殺後の額6424万6642円に前記エの弁護士費用642万4664円を加算すると,合計で7067万1306円となる。 (被告A2の主張) 後記被告学校法人A1の主張を有利に援用する。 (被告学校法人A1の主張)ア弁護士費用を除く損害いずれも否認ないし争う。 医療費について,仮に,被告A2の行為による治療の必要が認められると しても,それによる損害は,原告が主張する損害のせいぜい1割である。 休業損害について,常勤職員としての雇用期間は1年であり,更新するかどうかは毎年判断される。被告A2に更新や期限の定めがない教諭とする権限はない。原告が,平成24年10月1日以後継続雇用され,給与所得を得ていたということは,あり得ない。 後遺障害による逸失利益について,仮に,原告がPTSD等により労働能 力を喪失するとしても 限はない。原告が,平成24年10月1日以後継続雇用され,給与所得を得ていたということは,あり得ない。 後遺障害による逸失利益について,仮に,原告がPTSD等により労働能 力を喪失するとしても,PTSDは,適切な治療による回復可能性が高い疾患であるから,その期間は,症状固定時から3年間が相当である。仮に,原告が長期間就労できないとしても,原告の父親の性暴力等,さまざまな原因があるから,被告A2の行為によるとはいえない。仮に,被告A2の行為による後遺障害があるとしても,原告が主張する労働能力喪失率79%(第5 級)は,過大であるほか,本件各行為以外の原因によるところも大きいから,それにより被告らが賠償すべき損害は,逸失利益の1割にとどまる。 通院慰謝料は,幼少期からの性的虐待の治療であるから,被告A2の行為により損害が発生したとはいえず,仮に,被告A2の行為が関係するとしても,それによる損害は,1割が限度である。 後遺障害慰謝料については,原告が主張する後遺障害等級及びその額が過大である。仮に,被告A2の行為による後遺障害が認められるとしても,それは,9級の程度というのが相当である。 イ損益相殺認める。ただし,原告が口頭弁論終結時までに受領した又は受領する給付, 年金などは,全て損益相殺されるべきである。 また,労災保険法上の給付については,労災保険と損害賠償の調整規定に基づき,前払一時金の限度額について,履行猶予を主張する。 ウ過失相殺現在の原告の症状の発生又は拡大は,幼少期からの性的虐待などを原因と する複雑性PTSDなどが寄与したものである。また,原告の対応は,被告 A2に承諾があると誤信させるようなものであった。これらの事情を踏まえて,損害の公平な分担の見地から,9割程度 する複雑性PTSDなどが寄与したものである。また,原告の対応は,被告 A2に承諾があると誤信させるようなものであった。これらの事情を踏まえて,損害の公平な分担の見地から,9割程度の過失相殺がなされるべきである。 エ弁護士費用争う。 ⑷ 被告学校法人A1の免責事由の有無(被告学校法人A1の主張)被告学校法人A1の理事長は,本件学校の開校以来,被告A2を含む管理職の地位のある者に対し,何度も,被告学校法人A1と交流のある通信制高等学校で起きたセクハラ事件を伝えるなどして,セクハラ問題について強い危機感 を持つように注意した。また,被告学校法人A1の理事長は,2か月に1回の頻度で,本件学校に赴き,本件学校の職員に対し,口頭でセクハラ防止のために指導,監督をしていた。この口頭での指導,監督と同内容のものが,平成24年9月に作成したセクハラに対する文書(丙25)である。さらに,被告学校法人A1は,セクハラ行為をした教職員に対し,厳しい懲戒処分で臨んでい る。なお,被告学校法人A1は,本件について,懲戒処分を行っていないが,これは,被告A2を含む多数の教職員から事情聴取を行った結果,被告A2の原告に対するセクハラ行為がなかったとの結論に至ったからである。 したがって,被告学校法人A1は,被告A2の選任,監督について相当の注意をしたから,原告に対する使用者責任を負わない。 (原告の主張)被告学校法人A1の主張する指導,監督の事実については不知である。 なお,仮に事実であったとしても,「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)に定める措置を講じていないから,被告学校法人A 1が被告A2の選任, 職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)に定める措置を講じていないから,被告学校法人A 1が被告A2の選任,監督に相当の注意をしたとはいえない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実に加えて,各項末尾等に記載した証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ⑴ 原告の成育歴 原告は,昭和62年2月20日に生まれたが,母が統合失調症にり患していたことから,祖父母のもとで育てられ,大学に入学するまで,祖父母との3人世帯で暮らしてきた。原告の母は,原告が小学校に通い始めるころから,入院し,別に暮らしていた。原告の父が,原告を,入院中の母に会わせようとして病院に連れて行ったが,原告は,暗い部屋で怖い思いをした。 原告は,父親から,性的暴行を受けたことがあった。 原告は,中学3年生のころ,親族が入信する宗教の関係者に,無理にホテルに連れていかれたことがあった。 原告は,高校時代には,リストカットをしたことがあり,抗うつ剤としてリタリンを処方されていた。 (甲24,乙2,3,9,10,13,原告)⑵ 原告の大学入学後本件行為までの受診歴原告は,少なくとも,次のとおり受診した。原告は,大学に入学してから間がない時期に,リストカットをしたことがあったほか,不安,朝起きられない,過眠気味,記憶ができない,時々パニックになる,常に気持ちが悪いなどの症 状があった。G1の受診日数及び期間が,ある程度あるが,原告は,大学院の修士論文作成等で多忙のため,平成22年11月初旬を最後に,通院をやめ,平成24年5月10日まで,精神科を受診しなかった。原告は,前記⑴のような成育歴や不快な出来事の る程度あるが,原告は,大学院の修士論文作成等で多忙のため,平成22年11月初旬を最後に,通院をやめ,平成24年5月10日まで,精神科を受診しなかった。原告は,前記⑴のような成育歴や不快な出来事の記憶の少なくとも一部を,各医師に説明した。原告は,少なくともG1においては,成育歴や不快な出来事の記憶を,かなり詳細 に説明した。 初診日医療機関通院日数診断又は期間平成19年5月 G2 約6か月適応障害情緒不安定型パーソナリティ障害 平成20年1月25日 G3 2 境界型人格障害同年7月9日 G4 1 なし同年12月2日 G5 1 非定型うつ病不安障害平成22年1月13日 G6 4 パニック障害 うつ状態同年6月14日 G1 12 情緒不安定性パーソナリティ障害(乙3,7ないし13,原告)⑶ 原告の勤務状況 原告は,平成23年4月から,被告学校法人A1において,アスペルガー症候群や自閉症の生徒を担当したり,約25名の1年生のクラス担任ともなった。 原告は,同年5月には,学校心理士試験に合格した。また,吹奏楽のクラブ活動の顧問としても,精力的に活動した。 もっとも,原告は,対外的 症の生徒を担当したり,約25名の1年生のクラス担任ともなった。 原告は,同年5月には,学校心理士試験に合格した。また,吹奏楽のクラブ活動の顧問としても,精力的に活動した。 もっとも,原告は,対外的な折衝において苦情を言われたり,生徒から,急 に怒り出すと言われたりしたことがある。被告A2は,このことを知っていた。 (甲11,23,乙3[183頁から206頁],20,原告,被告A2)⑷ 原告による被害申告の状況等ア原告は,原告が在学していた高校の教諭であるH教諭及び大学のI教授に対し,平成24年5月10日,本件学校の校長からセクハラを受け,昨日か ら学校に出勤できなくなっている,怖くて,悔しくてどうしようもない気持 ちになっている,学校をやめたいが,部活の顧問や担任の業務があって辞められないのもあり,どうすればよいと思うかなどの旨が記載されたメールをそれぞれに送信した。メールに記載されたセクハラの内容は,3年前のボランティアで行っていたときから,飲み会の席で膝に座らせようとしたり,原告の膝とかを触ってきたり,冗談で出張に行く車内でホテルに行こうとか言 われたりしたこと,直近には,懇親会後のカラオケの廊下でキスをされて,それからエスカレートしていること,ゴールデンウィーク前は,出張帰りの別れ際に,車内で思いきりキスをされて,それから胸を揉まれることなどであった。 (甲2,23,原告) イ原告は,平成24年6月12日,J法律事務所に所属するK弁護士に対し,勤務先(本件学校)の分室長である被告A2から,本件行為を受けているので,被告A2の行為をやめさせたい旨などを相談した。この相談に対し,K弁護士は,原告に,証拠の確保のために記録をつける,相手方である被告A2と二人にならないようにする,転職先 本件行為を受けているので,被告A2の行為をやめさせたい旨などを相談した。この相談に対し,K弁護士は,原告に,証拠の確保のために記録をつける,相手方である被告A2と二人にならないようにする,転職先を探すなどのアドバ イスをした。 (甲23,29,原告)ウ原告は,被告A2とともに,平成24年7月11日午後4時41分頃,滋賀県内にあるラブホテルに入室した。原告は,上記ホテルに入室後,ICレコーダーで,被告A2との会話を録音した。また,被告A2がシャワーを浴 びている間に,原告は,電話をして,「先生,だめだ。先生,どうしたらいい。 シャワー浴びてる。え,とりあえず,逃げたら逃げます。」などの旨を話した。 (甲4,乙6,16)エ原告は,L警察本部に対し,平成24年7月12日頃,同月11日に原告が勤務する学校の校長と二人で滋賀県草津市に出張に出掛けたところ,同校 長に無理やり,滋賀県大津市内のホテルに車を乗り入れられ,同日午後4時 50分頃,同ホテル内の居室内で姦淫された旨の相談をした。L警察本部は,同日,原告の体内から採取した資料を鑑定したが,精液が検出されなかったため,DNA型鑑定を行わなかった。 (甲23,30,原告)オ原告は,平成24年7月17日,犯罪被害者相談をした。原告は,上記相 談の際に,被告A2から,同年4月にあった懇親会の後に無理やりキスをされ,そういった行為がずっと続いていた,同年7月11日,被告A2と滋賀県に出張することになった際に,車内で強姦された,強姦については,警察に相談中で,本日(同月17日),警察の事情聴取に行く旨の被害を申告した。 (甲5,23,30,原告)⑸ 本件各行為後の原告の通院状況等ア原告は,平成24年5月10日,不安, 談中で,本日(同月17日),警察の事情聴取に行く旨の被害を申告した。 (甲5,23,30,原告)⑸ 本件各行為後の原告の通院状況等ア原告は,平成24年5月10日,不安,困惑,頭痛,腹痛,のどの詰まり感,集中困難及び不眠などの症状を主訴として,Mメンタルクリニック(以下「駅前クリニック」という。)を受診した。原告は,同月16日,同月31 日,同年6月7日及び同年8月9日にも,駅前クリニックを受診した。 原告を診療していた駅前クリニックのN医師は,同月14日,原告が不安障害にり患していると診断した。 (甲3,23,乙1,原告)イ原告は,平成24年8月29日,実感がない,恐怖感が続く,寝られない 及び気分が落ち込むなどの症状を主訴として,Oクリニックの院長を務めるF医師の診療を受けた。 原告がF医師を選んだのは,原告が,解離やフラッシュバックがひどかったと感じ,トラウマ処理治療の主力であるEMDRを希望し,その学会の名簿からF医師の名を知ったことによる。原告は,F医師の診察を受ける以前 から,解離,PTSD及びEMDRに関する知識を有していた。 原告は,初診時,被告A2によるセクハラを訴え,「その時のことを笑いながら話していることがある。」とも訴えた。原告には,頻繁に解離症状があり,「変にやる気が出てきてしまって,テンションが上がってしまった。」という時もあった。 F医師は,平成24年9月5日,平成24年4月以降の被告A2からのセ クハラにより,原告がうつ病にり患している旨の診断をした。 また,F医師のカルテ(乙2)には,治療の初期には明確な記載がないが,原告には,F医師の治療の中で,たびたび,性的な感触が現れており,抑うつ気分,意欲低下,不眠,過眠, 患している旨の診断をした。 また,F医師のカルテ(乙2)には,治療の初期には明確な記載がないが,原告には,F医師の治療の中で,たびたび,性的な感触が現れており,抑うつ気分,意欲低下,不眠,過眠,拒食行動の異常があるが,活動性が高まり多数の買い物をしたり,過覚醒も認められた。 F医師は,平成26年9月2日,マインドブロックバスターを開始した。 これは,「男の人が怖い」などという潜在意識に存在する心のブロックを一つ一つ外していくというもので,保険適用外である。F医師は,平成27年3月13日に,原告がPTSDにり患しているという意見書(甲18)を作成し,同年6月16日から,EMDRを開始したが,しばらくして中止した。 なお,原告は,F医師の診察の中で,成育歴や大学入学以前の不快な出来事の記憶についても,頻繁に述べたほか,診察の直近における原告の父母や祖父母との関係も,かなり多く述べた。 (甲6,18,23,24,28,乙2,丙38,原告)ウ PTSDについては,米国精神医学会のDSM-Ⅴないし世界保健機構の ICD-10が,ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような,例外的に著しく脅威的な,あるいは破局的な性質をもった,ストレスの多い出来事あるいは状況にさらされた後,通常6か月以内に,フラッシュバック,夢などによるストレス因となった出来事の再体験,ストレス因と関連した刺激の回避及び精神的(反応の)麻痺,心理的な感受性と覚醒の亢進等の症状を示 すかどうかにより判断されるとの基準を示している。なお,トラウマとなり 得る出来事の体験から6か月以上を経過して症状が発現した場合を遅延性と呼ぶ見解もある。 EMDRは,トラウマとなっている体験の記憶をターゲットとしてその記憶を処理する治療アプロ り 得る出来事の体験から6か月以上を経過して症状が発現した場合を遅延性と呼ぶ見解もある。 EMDRは,トラウマとなっている体験の記憶をターゲットとしてその記憶を処理する治療アプローチであり,訴訟を抱えている患者には施行しないというのが,日本EMDR学会での原則である。原告は,EMDRを強く希 望してその施行を受けた。 (甲24,28,乙2,丙7,12~14,18~22,38,原告)エ解離について,正常な心的装置が,周辺で生じる出来事や自分の言動に関してある程度覚えており,自分の名前や職業,家族構成といった社会的な自己定義を忘れることはなく,また,それらが一貫してただ一人の自分に帰属 している,と確信に基づいて自己の同一性を保持しているのに対し,解離では,この記憶や同一性がさまざまな範囲で損傷を受け,この損傷は,強い心理的ストレスから心的装置を守るべく,ダメージを受けた部分を装置全体から切り離した結果とされる。ICD-10及びDCRは,おおむね,解離性障害として,記憶・同一性の喪失(解離)や運動・感覚のコントロールの喪 失(転換)が存在し,心理的ストレスとの関連を有しており,それを説明するような身体疾患がない,という診断基準を設けている。 (甲23,24,乙2,丙31)オ原告は,大学院修士課程2年目であった平成22年7月31日,Cが運転するバイクの後部に同乗中,上記バイクがタクシーと衝突し,原告が路上に 投げ出されるという交通事故にあった。原告は,当初,Cの自賠責保険の期間が経過していたことから,人身事故の扱いにして自賠責保険の関係が明るみに出ると,Cの教員としての地位に悪影響があるのではないかと考え,夜間の救急外来には行かなかった。しかし,原告は,ほどなく医師の診察を受 ていたことから,人身事故の扱いにして自賠責保険の関係が明るみに出ると,Cの教員としての地位に悪影響があるのではないかと考え,夜間の救急外来には行かなかった。しかし,原告は,ほどなく医師の診察を受けた。損害賠償の交渉が難航し,原告は,平成26年12月18日,上記交 通事故についてP地方裁判所に損害賠償を求める訴えを提起した。F医師は, 平成27年3月16日,平成22年7月31日に発生した交通事故の調停が決裂し,裁判が長期化したことがストレスとなり,原告のうつ病の症状増悪がみられる旨の診断をして,その旨の診断書を作成し,これは,裁判所に提出された。上記訴訟については,平成28年3月2日に,被告らが既払金を除き50万円を支払うという和解が成立した。 (丙35ないし39,原告)カ F医師は,平成28年2月17日に,原告がうつ病にり患し,PTSD様症状についても治療を継続している旨の診断をし,その旨の診断書を,労働基準監督署に提出した。F医師は,平成29年2月16日及び平成30年2月15日に,原告がうつ病にり患している旨の,各診断をし,その旨の診断 書を,国民年金の担当部署に提出した。原告は,平成30年1月ころまで,F医師の診察を受けていた。 (甲15,33,34,原告)キ原告は,平成30年1月11日から,東京都内にあるRクリニックのQ医師の診察を受けている。同医師は,平成31年2月19日,原告には精神障 害を認め,身の回りのこともほとんどできないため,常時の援助が必要であり,うつ病,PTSD(解離症状を伴う)(ICD-10コードF32,F42)と診断した。 (甲32,67,原告)⑹ 原告の旅行等 原告は,本件各行為の後,相当数の旅行をした。その回数は,少なくとも,平成27年に を伴う)(ICD-10コードF32,F42)と診断した。 (甲32,67,原告)⑹ 原告の旅行等 原告は,本件各行為の後,相当数の旅行をした。その回数は,少なくとも,平成27年には,年10回を超えた。国内旅行では,1泊2日程度の短いものもあったが,1週間超えることもあった。原告は,複数回,ニューヨークに行ったほか,平成29年8月中旬から同年9月初旬には,ロサンゼルスやサンフランシスコにも行き,平成30年8月中旬から同年9月初旬にもロサンゼルス, アリゾナ州及びニューヨークに行った。海外を含め,1人で旅行することも, Cと旅行することもあった。 原告は,平成29年8月には,個人的なものではあるが,海外の芸能人が来日する際のファンイベントを主催した。 (乙17,19,22,原告) 2 争点⑴(本件各行為の有無及び違法性) ⑴ 本件各行為の有無ア本件行為 たと主張し,証拠(甲23,原告)には,これに沿う部分がある。被告らは,被告A2に抱きついて きたために,原告の同意のもとに,抱き合ってキスをしたと主張する。証拠(乙20,被告A2)には,被告らの上記主張に沿う部分がある。 前記認定事実⑷ア及びイ並びに争いのない事実によれば,被告A2が,本件行為が認められるうえに,原告が,平成24年5月10日に,恩師に対し本件行為 のように対処すべきか相談していること及び原告が同月以降,ほぼ一貫して,められる。これらの事実に加えて,本件全証拠を精査しても,原告が本件各行為について虚偽の供述をする動機がうかがわれないうえに,原告と被告A2との間では,職場以外でのやり取りがほぼなく,本件各行為の当時,親密 な関係であったとうかがわせる事情がないこと及び原告の供述内容に,格別不自 をする動機がうかがわれないうえに,原告と被告A2との間では,職場以外でのやり取りがほぼなく,本件各行為の当時,親密 な関係であったとうかがわせる事情がないこと及び原告の供述内容に,格別不自然,不合理な点が見受けられないことを踏まえると,原告の供述や陳述書の記載が事実と異なるとは考え難い。 これに対して,被告らは,原告が駅前クリニック及びOクリニックの診療において,やっぱり自分が悪かったと思う,誤解させた,陳述書を読んでも, 結局自分がわるいんじゃんと思っているなどの旨を担当医に話しているこ と及び平成24年7月11日以前に交際していたCには本件各行為の話をしていないことなどから,上記原告の供述が信用できない旨をも主張する。 確かに,証拠(甲24,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,被告らが主張する事実が認められる。しかしながら,証拠(甲26,28)によれば,性的被害を受けた場合,逃げたり直接的な抵抗をしたりできるのは被害者のご く一部で,身体的・心理的まひ状態に陥るなどする被害者が多いこと,性的被害を受けている被害者が,笑っていたり全くの無表情で抵抗をしていないように見えたりする場合があることが認められる。このような事実からすれば,原告が,自責の念に駆られたり,その他合理的でない行動を執ったとしても,不自然であるとはいえない。また,性的な被害を受けた場合,羞恥心 等から,交際相手や夫に対してであっても被害を申告できないことは,格別不自然とまではいえない。被害者の態度が,加害者からみて同意を表すようにみえても,実はそうでないということが,十分あり得る。そうすると,被告らの主張は,上記原告の供述の信用性に疑義を生じさせるほどのものとはいえないから,採用することができない。 以上によれば,上記証拠( はそうでないということが,十分あり得る。そうすると,被告らの主張は,上記原告の供述の信用性に疑義を生じさせるほどのものとはいえないから,採用することができない。 以上によれば,上記証拠(甲23,原告)中原告の主張に沿う部分は,信用でき,上記証拠(乙20,被告A2)中被告らの主張に沿う部分は,採用できない。原告が主張するとおり,本件行為が行われたと認められ,原告がたとは認められない。 イ本件行為 原告本人は,原告)には,これに沿う部分がある。 証拠(甲29)によれば,原告が,K弁護士に対し,平成24年6月12日,同年4月13日に,「仕事上のトラブルについて話したあと,またハグをされ,キスをされそうになるが,この時ダメですと言って,さける。」などの 旨を話していたことが認められる。この事実は,原告の主張に整合するとい える。また,本件全証拠によっても,原告の供述と相反する客観的な事情は,認められない。上記原告の主張に沿う証拠は,信用できるから,これにより,本件行為が行われたと認められる。 ウ本件行為 原告は,が,原告はこれに同意していないと主張し, 証拠(甲23,原告)には,これに沿う部分がある。被告らは,車から降りる際,被告A2がしなだれかかってきたので,キスをしたが,これは,原告の同意に基づくと主張し,証拠(乙20)には,これに沿う部分がある。 争いのない事実,証拠(甲23,29,乙3,20)及び弁論の全趣旨によれば,原告が,被告A2とともに,平成24年4月28日午後3時頃,ラ ジオ番組の収録のために,Dラジオ局に行き,ラジオ番組の収録をしたこと,被告A2が,同番組の収録後,原告を食事に誘い,二人で食事をしたこと,被告A2が,食事後に,車で原告を用事先に送っ ,ラ ジオ番組の収録のために,Dラジオ局に行き,ラジオ番組の収録をしたこと,被告A2が,同番組の収録後,原告を食事に誘い,二人で食事をしたこと,被告A2が,食事後に,車で原告を用事先に送ったこと,車内で原告と被告がキスをしたこと,原告が,K弁護士に対し,同年6月12日,被告A2から,同年4月28日に,二人でラジオの後に食事に行こうと言われてラジオ 局に行き,その後食事をした後,同日午後8時頃に,車内で,別れ際にキスをされ,胸も触られるなどの旨を話していたことが認められる。これらの事実は,上記原告の主張に沿う証拠に整合するといえるほか,前記アと同様の理由から,その信用性が認められ,上記証拠(乙20)中被告らの主張に沿う部分は,採用できない。原告が主張するとおり,本件行為が行われたと 認められ,原告がこれに同意したとは認められない。 エ本件行為 原告,原告)には,これに沿う部分がある。 証拠(甲29)及び弁論の全趣旨によれば,原告が,K弁護士に対し,同 年6月12日,被告A2から,同月5日午前9時30分頃,被告A2と二人 で,ある生徒について話した後,夏のボーナスを支給する件と言われた後,ハグをされた,その後,原告がダメですと言ったが,被告A2から,「少しくらいいいじゃないか」と言われ,キスをされた旨報告した事実が認められる。 この事実は,原告の主張に整合するから,上記証拠(甲23,原告)中原告の主張に沿う部分は,信用できるといえる。 したがって,原告が主張するとおり,本件行為が行われたと認められる。 オ本件行為 原告,原告)には,これに沿う部分がある。被告らは,これを否認し,証拠(乙20)には,これに沿う部分がある。 するとおり,本件行為が行われたと認められる。 オ本件行為 原告,原告)には,これに沿う部分がある。被告らは,これを否認し,証拠(乙20)には,これに沿う部分がある。 前記アないしエで説示した理由を踏まえると,原告が弁護士に相談した事実などは,原告の主張に整合するといえるから,上記証拠(甲23,原告)中原告の主張に沿う部分は,信用でき,上記証拠中(乙20)被告らの主張に沿う部分は,採用できない。 したがって,原告が主張するとおり,本件行為が行われたと認められる。 カ本件行為 ,同意していないと主張し,証拠(甲23,32,原告)には,これに沿う部分がある。被告は,や体外での射精などはしておらず,ホテルでの行為には原告の同意があると主張し,証拠(乙20,被告A2)には,これに沿う部分がある。 前記認定事実⑷イないしオ,証拠(乙6,乙16)及び弁論の全趣旨によれば,原告が,平成24年6月12日,K弁護士から,被告A2からのセクハラの相談について,証拠の確保のために記録をつけるなどのアドバイスを受けたこと,原告が,同年7月11日午後4時41分頃に,被告A2とともに,ラブホテルに入室したこと,原告が同日生理中であったこと,原告がI Cレコーダーで被告A2との会話を録音していたこと,被告A2がシャワー を浴びている間に電話を掛けて「どうしたらいい。逃げたら逃げます。」などと話していたこと,原告が,被告A2に対し,先生のためを思って断っておきますから,道徳的にもよくない,一線を越えちゃだめです,入れちゃだめですよ,先生,入ってます,などの旨を話したこと,被告A2が,原告との会話で,血が出てる?,生殺し言われたら,ちょっと,と っておきますから,道徳的にもよくない,一線を越えちゃだめです,入れちゃだめですよ,先生,入ってます,などの旨を話したこと,被告A2が,原告との会話で,血が出てる?,生殺し言われたら,ちょっと,とりあえずするわな, 生理終わりかけ,そんな奥まで入れてないよ,出しちゃった,ごめんねなどの旨を話したこと,原告が,同月12日頃に,同月11日午後4時50分頃に,滋賀県内のホテルに車を乗り入れられ,ホテルの居室内で姦淫された旨相談するとともに,捜査のために体内から資料を採取させたこと,原告が,同月17日に,犯罪被害者相談をし,同年4月頃から懇親会で無理やりキス をされるなどが続き,同年7月11日に出張に行った際に,車内で強姦され,警察に相談中であることを伝えたことが認められる。さらに,前記アで認めた被害者のとり得る反応をも考慮すれば,上記証拠(甲23,32,原告)中原告の主張に沿う部分には,誇張したと思われる部分もあるが,少なくとも供述の核となる,という部分については,上記各事 実と整合しているから,信用でき,証拠(乙20,被告A2)中被告らの主張に沿う部分は,上記各事実と相いれないから,採用できない。 被告らは,当時の会話状況,内容に加えて,労働基準監督署での供述において,家族に相談したか否かの部分に変遷がみられることなどから,本件行為が,原告が意図的に仕組んだものであるなどとも主張して,原告供述の 信用性を争う。しかしながら,当時の会話状況によっても,被告A2が原告と性的接触をしようと積極的になっているが,一方で,原告が被告A2に働き掛けたなどの事情は,一切認められない。また,原告が被告らを陥れたというのであれば,原告が,精神科を受診したり,弁護士を含むさまざまな箇所に相談するなどの手間をかけた上,生 で,原告が被告A2に働き掛けたなどの事情は,一切認められない。また,原告が被告らを陥れたというのであれば,原告が,精神科を受診したり,弁護士を含むさまざまな箇所に相談するなどの手間をかけた上,生理中に性交渉を求めたことになるが, そのような手間をかける動機を認めるに足りる証拠は見当たらず,そもそも, それ自体不合理な主張である。被告らの主張する点が原告の供述の信用性を減殺するものとは到底いえない。 したがって,原告が主張するとおり,たと認められ,原告がこれに同意したとは認められない。 ⑵ 本件各行為の違法性 これまで認めた事実(前提事実を含む。以下同じ。)によれば,本件各行為は,いずれも,本件学校の分室長の立場にあった被告A2と,雇用後1年少々の常勤講師であった原告の,立場の違いなどにより,原告が強く拒絶できない状況で,被告A2が,この状況に乗じて,原告の意に反して行ったものといえる。 これが原告の性的自由を侵害することは,明白であり,本件各行為は,原告に 対する不法行為を構成するといえる。 3 争点⑵(原告の症状及び本件各行為との因果関係)⑴ 本件各行為とうつ病や不安障害との間の相当因果関係原告は,原告がうつ病にり患し,本件各行為との間に相当因果関係がある旨主張する。証拠(乙2・243頁)には,これに沿う部分がある。また,F医 師の平成29年11月17日付け意見書(甲28)は,原告の症状について,現在ではPTSD及び解離性障害と診断するというが,この意見書は,適応障害,うつ病等についても,原告の症状のうち一つの局面をとらえたもので,PTSD及び解離性障害に包括されるものと述べるから,原告の上記主張を否定するとはいえない。 これに対して,被告らは,まず,原告の既往症を指 も,原告の症状のうち一つの局面をとらえたもので,PTSD及び解離性障害に包括されるものと述べるから,原告の上記主張を否定するとはいえない。 これに対して,被告らは,まず,原告の既往症を指摘し,原告の症状と被告A2の行為との事実的因果関係を争う。 確かに,前記認定事実⑴及び⑵のとおり,原告には,幼少時に父親から性暴力を受けたなど,不快な出来事の記憶があり,精神科での通院治療を必要とするような症状があった。これらの病状が,原告のうつ病などの発生に寄与した 可能性は否定できない。原告は,これらのカルテの診断について,治療目的で 受診したのではなく,カウンセリングの勉強のため受診したという趣旨の主張をするが,G1では12回の診察を受けるなど,複数回の診察を受けて診断を受けたものもあるから,実際にかなり深刻な症状があったと認めるのが相当であり,原告の上記主張は,採用できない。しかしながら,前記認定事実⑵のとおり,原告が,本件各行為のかなり前である平成22年11月初旬から,本件 平成24年5月10日に駅前クリニックを受診するまで,約1年半も,精神科の受診歴がない。本件全証拠によっても,平成22年11月初旬から駅前クリニックの初診時平成24年5月10日までの間に,明らかな器質的原因,精神症状及び他覚的所見が,いずれも認められない。また,本件各行為は,望まない身体的接触や性交渉という内容に照らし,原告にとって大 きな心理的な負担であったと推認できる。そうすると,上記証拠中原告の主張に沿う部分は,いずれも信用することができるから,少なくとも,本件各行為と原告の不安障害,うつ病及び適応障害との間には,事実的因果関係があるといえる。 また,これらに加えて,前記2で認定した本件各行為の態様などをも踏まえ ると, るから,少なくとも,本件各行為と原告の不安障害,うつ病及び適応障害との間には,事実的因果関係があるといえる。 また,これらに加えて,前記2で認定した本件各行為の態様などをも踏まえ ると,本件各行為によって,うつ病,不安障害及び適応障害が通常生ずべきものと考えるのが相当といえる。 したがって,本件各行為とうつ病,不安障害及び適応障害との間には相当因果関係があるといえる。 ⑵ 本件各行為と心的外傷後ストレス障害(PTSD)及び解離性障害との間の 相当因果関係ア原告は,本件各行為によりPTSD及び解離性障害にり患したと主張し,証拠(甲18,28,67)には,これに沿う部分がある。被告らは,これを争い,原告がF医師の診察を受けていた時期の経過をみても,父親の性暴力等,被告らとは関係がないところでのストレスが大きく,仮にPTSDに 該当するとしても,被告A2の行為によるものではないと主張する。 イまず,原告がPTSDにり患しているといえるかどうかにつき,前記認定事実⑸カのとおり,F医師は,労災保険の関係では,原告の症状を「PTSD様の症状」と言い,診断名としてもPTSDとは記載していない。また,F医師のカルテ(甲24,乙2)には,少なくとも本件行為から半年後までの間には,フラッシュバックの明確な記載がない。 しかし,被告らの主張は,PTSDの要件該当性について,必ずしも強く争う趣旨とは解されない。証拠(甲28)によれば,F医師が診察した期間全体についてみれば,校長からの性交渉の場面が治療の中でたびたび現れること,過覚醒症状があること,部屋の中にそのとき着ていた服があると思うだけで耐えられないため捨てるなどの行為(ストレスの原因と関連した刺激 の回避と考えられる。)が が治療の中でたびたび現れること,過覚醒症状があること,部屋の中にそのとき着ていた服があると思うだけで耐えられないため捨てるなどの行為(ストレスの原因と関連した刺激 の回避と考えられる。)が認められ,また,PTSDの要件に該当する現象が遅れてみられるものを遅延性という見解もあることなどを考慮すると,原告がPTSDにり患していることが認められるというべきである。 なお,原告が解離性障害にり患していることは,証拠(甲24,28,乙2)及び弁論の全趣旨により認められ,この認定を左右し得る証拠はない。 ウ本件各行為と原告の症状との間の事実的因果関係については,前記⑴のとおり,既往症があるとしても,本件各行為の前に通院していない期間が約1年半あること,その間に特段の症状などが認められないこと,本件各行為の性質に照らし,認めるのが相当である。 エ被告らは,相当因果関係についても強く争う。 確かに,原告の症状は,父親の性暴力等の成育歴が関与したもので,就労が困難になるのは,特別の事情による損害ということができる。 しかし,被告A2は,原告が生徒の前で突然大声をあげるなどの行為をす,原告が実際に働いた期間のおおむね最後の時期であることからすると,少なくとも本件行為 被告A2は,本人尋問において,原告がた くさんの既往症を有していたことは夢にも思わなかったと供述しているが,上記のような状況からすれば,原告には精神的に不安定なところがあることは認識していたといえるから,原告が,望まない性交渉を含むセクハラにより強く傷つき,本件のような症状に至ることについての,予見可能性はあったと判断するのが相当である。 したがって,本件各行為と原告の症状との間には, ,望まない性交渉を含むセクハラにより強く傷つき,本件のような症状に至ることについての,予見可能性はあったと判断するのが相当である。 したがって,本件各行為と原告の症状との間には,相当因果関係があると認められる。 なお,素因を理由とする賠償の範囲の制限は,因果関係の判断としては相当でない。 ⑶ 原告の後遺障害の程度 原告は,現在働くことができず,第5級の1の2に該当する後遺障害があると主張し,証拠(甲23,31,32,35,67,原告)には,平成30年において,横になって,家事などは全然できないなど,原告の主張に沿う部分がある。被告らは,仮に,被告A2の行為と原告の症状との間に相当因果関係があるとしても,その程度は,第9級であると主張する。 確かに,原告は,現に働いていないほか,F医師は,意見書(甲28)において,原告を長期間診察したうえで,働くことはできないとの認識を示している。Q医師も,同意見である。 しかし,前記認定事実⑹のとおり,原告は,本件各行為が行われた平成24年夏以後も,国内外を複数回旅行するなどしており,中には,アメリカ合衆国 も含めた一人旅もあり,また,沖縄県から東京に行ったりしたものもある。平成29年8月には,個人的なものとはいえ,海外の芸能人の来日に合わせ,ファンイベントを主催した。 このような事実が,労災保険等の等級認定やQ医師の診察にあたって考慮されたことを認めるに足りる証拠はない。また,F医師は,原告が旅行したこと は知っていたと認められるが,カルテに書かれた以上に,その詳細を知ってい たと認め得る証拠はない。 これらの事実等からすると,原告が述べるところやF医師及びQ医師の診断や意見にも相当の ていたと認められるが,カルテに書かれた以上に,その詳細を知ってい たと認め得る証拠はない。 これらの事実等からすると,原告が述べるところやF医師及びQ医師の診断や意見にも相当の信用性はあるが,原告には,大学院卒の高い知的能力のほか,さまざまな能力があり,現在,労働が困難であるとしても,全くできないわけではなく,少なくとも服することができる労務が相当な程度に制限されるもの (第9級の7の2)に該当する状況にあると認めるのが相当である。 4 争点⑶(賠償すべき損害額)⑴ 弁護士費用を除く損害ア各損害項目の額医療費 証拠(甲18ないし20,24,43)によれば,原告はOクリニックに対し,マインドブロックバスター及びEMDR療法などの診療費として,平成26年9月2日から平成29年2月8日までに合計189万4090円を支払ったことが認められる。 しかし,前記認定事実⑸オのとおり,原告は,平成22年7月31日に 発生した交通事故の損害賠償の問題解決が長引き,F医師から,そのことをうつ病の症状増悪の原因と指摘された。原告の治療が,平成24年から平成28年ころまでの間に延びたのは,上記の交通事故も寄与していると認められる。本件各行為によって生じた治療費に関する損害のうち本件各行為と相当因果関係があるのは,本件訴えで主張されているものについて は,半額の94万7045円とするのが相当である。原告は,F医師のカルテに交通事故に関する記事が多くみられるわけではないことを指摘して,交通事故の寄与を否定する主張をするが,F医師の診断書(丙37)の記載と対比すれば,採用できない。 休業損害 原告は,本件各行為によって平成24年10月1日以降無給の休職とな ったが,原告の勤務態 る主張をするが,F医師の診断書(丙37)の記載と対比すれば,採用できない。 休業損害 原告は,本件各行為によって平成24年10月1日以降無給の休職とな ったが,原告の勤務態度や成績には何の問題もなく,被告A2が原告の常勤教員の期間満了後の更新だけでなく,期限の定めのない専任講師(教諭)とすることも明言していたから,本件各行為がなければ,被告学校法人A1において継続的に雇用されて,給与所得を得ていた旨を主張する。被告らは,これを争う。 前記前提事実⑴アによれば,原告が,平成24年4月に,本件雇用契約の更新を受けたことが認められる。また,前記認定事実⑶のとおり,原告は,望ましくない行動がありながらも,対応が難しい生徒もいる中,多数の業務を熱心に遂行していたことが認められる。原告の年齢,社会経験を考えれば,欠点があるとしても,それにはやむを得ない部分があり,改善 が見込まれると考えられる。これらを踏まえると,原告の勤務状況に大きな問題があったとまではいえず,被告学校法人A1が,平成25年4月,本件雇用契約を更新しなかったのは,本件各行為を原因とする適応障害などの療養のための休職を原因としてされたと推認するのが相当であるとともに,本件各行為がなければ,少なくとも平成25年4月については本 件雇用契約の更新がされた蓋然性が高いといえる。そして,証拠(乙3)によれば,原告の平成24年7月から同年9月までの間の基本給は,25万円(この3か月間は92日であるから,1日あたりでは8152円となる。)であったが,同年6月には賞与が支給されたこと,労災保険法上の療養補償給付における給付基礎日額は8389円であることが認められる から,休業損害については,日額8389円の収入を失ったものとして,次のとおり 6月には賞与が支給されたこと,労災保険法上の療養補償給付における給付基礎日額は8389円であることが認められる から,休業損害については,日額8389円の収入を失ったものとして,次のとおり計算するのが相当である。 (計算式)基礎収入(日額8389円)×事故発生日から症状固定日までの休業日数(平成24年10月1日から平成26年3月31日までの期間の合計5 47日)=458万8783円 逸失利益証拠(甲28)によれば,症状固定後ではあっても,原告の症状に対する有効な治療はあると認められる。このこと及び弁論の全趣旨によれば,原告の労働能力喪失期間は,症状固定後10年,労働能力喪失率は,第9級相当の35%と認めるのが相当である。 原告の逸失利益は,次のとおり認めることができる。年間の収入は,障害補償給付の給付基礎日額を365倍した額である。 基礎収入(8448円×365)×労働能力喪失率(0.35)×労働能力喪失期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数(7.7217)=833万3505円(小数点以下切り捨て) 通院慰謝料本件各行為は,約3か月の期間にわたって,複数回行われ,態様についても,原告の意に反して,キスをしたり,胸を触ったりするだけにとどまらず,性交にまで及んだもので,原告の性的自由及び人格権を著しく侵害している。また,原告は,本件各行為によって,うつ病などにり患し,平 成24年5月16日以降,通院治療を受けているだけでなく,同年10月1日以降には休職して,結果的には,退職により被告学校法人A1での雇用機会を失っている。以上の事情に加えて,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,本件各行為による原告の精神的苦痛に対する通院慰謝料として 以降には休職して,結果的には,退職により被告学校法人A1での雇用機会を失っている。以上の事情に加えて,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,本件各行為による原告の精神的苦痛に対する通院慰謝料としては,166万円が相当である。 後遺障害慰謝料これまで認めた事実によれば,原告は,症状固定後も第9級相当の後遺障害が残り,さまざまな症状に苦しめられているといえる。そして,それは,被告A2の行為により意に反して人格権を侵害された結果であるから,精神的損害も極めて大きいといえる。 他方,これまで認めたとおり,原告の症状については,必ずしも原告の 主張どおりに認定できない部分も残る。 以上のことを考慮すれば,後遺障害慰謝料としては,640万円が相当である。 弁護士費用を除く損害の合計前記ないしの合計は,2192万9333円である。 イ損益相殺(国民年金障害基礎年金) 国民年金障害基礎年金争いのない事実及び証拠(甲50ないし54)によれば,原告は,国民年金,国民年金障害基礎年金として,平成25年12月から平成31年2月分までとして,439万4645円を受給したことが認められる。 日本私立学校振興,共済事業団障害共済年金争いのない事実及び証拠(甲56ないし65)によれば,原告は,日本私立学校振興,共済事業団障害共済年金として,平成25年12月から平成31年2月分までとして,傷病手当金の決定取消し及び過払金の返還分を控除しても,1393万0396円を受給したことが認められる。 損益相殺後の弁護士費用を除く損害額 休業損害(458万8783円)及び後遺障害逸失利益(83 分を控除しても,1393万0396円を受給したことが認められる。 損益相殺後の弁護士費用を除く損害額 休業損害(458万8783円)及び後遺障害逸失利益(833万3505円)(合計1292万2288円)の範囲で損益相殺されると解される。 そうすると,損益相殺後の弁護士費用を除く損害は,休業損害及び後遺 症逸失利益がすべて損益相殺される結果,治療費,通院慰謝料及び後遺障害慰謝料の合計900万7045円である。 ウ過失相殺・訴因減額被告らは,本件各行為に関して,被告A2の歓心を買おうとするなどの原告の言動があったとして,過失相殺をすべきであると主張する。しかしなが ら,被告らが主張するような言動を認めるに足りる証拠がないうえに,被告 らの主張する原告の言動などが,損害額を大きく減じる事情であるとはいえない。 もっとも,前記認定のとおり,原告には,父親の性暴力など幼少期のトラウマや解離障害などがある。そして,その内容及び原告の平成22年までの通院歴からすると,上記幼少期のトラウマ等は,原告の精神症状を悪化させ た極めて重大な要因となっていると推認できる。 このような事実関係からすると,原告に現在生じている損害のかなりの部分は,原告の素因によると認められ,これによる損害を被告らに負担させるのは,相当でない。したがって,被告が賠償すべき弁護士費用を除く損害としては,過失相殺の規定(民法722条2項)の類推適用により,本件で請 求されている損害については,4割を減ずるのが相当である。 そうすると,過失相殺を踏まえた損害額は,540万4227円となる。 900万7045円×(1-0.4)=540万4227円エ損益相殺(労災保険法による給付 割を減ずるのが相当である。 そうすると,過失相殺を踏まえた損害額は,540万4227円となる。 900万7045円×(1-0.4)=540万4227円エ損益相殺(労災保険法による給付)休業補償給付 争いのない事実及び証拠(甲14,35,36,47ないし49)によれば,原告は,本件各行為に関する労働者災害補償保険の休業補償給付について,平成24年8月2日から平成29年10月31日までの期間分として,差額調整分を控除しても,840万2833円を受領したことが認められる。 労災保険法による障害補償年金等争いのない事実及び証拠(甲35,36)によれば,原告は,労働災害補償保険に基づき障害補償年金として,平成29年10月31日を支給事由発生年月日として,少なくとも,平成31年3月13日までに,186万6340円を受給したことが認められる。 損益相殺後の額 過失相殺前の損害において,休業損害及び後遺障害逸失利益の範囲では,すべて損益相殺されているから,労災保険法上の休業補償給付及び傷害補償給付による損益相殺はできないものというのが相当である。 そうすると,労災保険法上の給付を考慮しても,弁護士費用を除く損害として賠償されるべき額は,540万4227円となる。 ⑵ 弁護士費用本件事案の内容,その難易の程度等に照らせば,本件傷害事件と相当因果関係のある弁護士費用は,54万円が相当といえる。 ⑶ 合計前記⑴及び⑵によれば,本件各行為によって原告に生じた損害として賠償さ れるべき額は,次のとおり,594万4227円となる。 540万4227円+54万円=594万4227円 5 争点⑷(被告学校法人A1の免責事由の有無)被告学校法人A1は,本件学 賠償さ れるべき額は,次のとおり,594万4227円となる。 540万4227円+54万円=594万4227円 5 争点⑷(被告学校法人A1の免責事由の有無)被告学校法人A1は,本件学校の開校以来,管理職に対し,セクハラ問題について強い危機感を持つように注意し,また,被告学校法人A1の理事長は,2か 月に1回の頻度で,本件学校に赴き,本件学校の職員に対し,口頭でセクハラ防止のために指導,監督をしていたから,民法715条所定の免責事由がある旨主張する。証拠(乙20,被告A2)には,上記主張に沿う部分がある。 しかしながら,仮に,被告学校法人A1が主張するような措置が執られていたとしても,証拠(原告,被告A2)によれば,被告学校法人A1の京都校には, セクハラの相談窓口がなかったことが認められ,このような状況下で,本件各行為の当時,性的被害に関してしばしばみられる被害者の対応(前記2⑴ア)など,セクハラが発生する背景に対して,どれほどの理解があったのか,実効的な指導がされていたのか,疑問というほかない。被告学校法人A1が事業の監督について相当の注意をしたなどということはできない。 したがって,被告学校法人A1の主張は,採用できない。 第4 結論以上によれば,原告の被告らに対する請求は,いずれも主文1項の限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。仮執行宣言は主文のとおりとするのが相当であり,仮執行免脱宣言は,相当でない。 京都地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官久留島 群 一 裁判官秦 卓義 裁判官渡邉裕美は,転補につき,署名押印することができ 第2民事部 裁判長裁判官久留島群一 裁判官秦卓義 裁判官渡邉裕美は,転補につき,署名押印することができない。
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