平成13(ネ)3307 保証金返還請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年11月1日 東京高等裁判所
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判決文本文4,407 文字)

(原審・東京地方裁判所平成12年(ワ)第19549号保証金返還請求事件(原審言渡日平成13年5月30日)) 主文 1 一審被告の本件控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1) 一審被告は,一審原告に対し,70万5000円及びこれに対する平成12年9月8日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 (2) 一審原告のその余の請求を棄却する。 2 一審原告の本件控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを10分し,その9を一審原告の負担とし,その余を一審被告の負担とする。 4 この判決の1,(1)は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨(一審被告) 1 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 2 上記部分に係る一審原告の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,一審原告の負担とする。 (一審原告) 1 原判決を次のとおり変更する。 一審被告は,一審原告に対し,1062万8750円及びこれに対する平成12年9月8日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じ,一審被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,保証金を差し入れてビルの1室をその所有者から賃借していた一審原告が,同物件の所有権を競売により取得するとともに賃貸人たる地位を承継した一審被告に対し,保証金返還債務も承継したとして,保証金残額及びこれに対する催告の日の翌日以降の商事法定利率年6%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,保証金のうち敷金相当額として一審被告が引き継ぐべき金額は890万円であるとしたうえ,890万円から一審被告が引き継ぐ前に賃料に充当された金額合計302万5000円を控除し,この残額587万5000円について保証金契約に基 して一審被告が引き継ぐべき金額は890万円であるとしたうえ,890万円から一審被告が引き継ぐ前に賃料に充当された金額合計302万5000円を控除し,この残額587万5000円について保証金契約に基づく15%の償却をし,償却後の499万3750円から別件和解による210万円を控除し,残額289万3750円をもって,一審被告が一審原告に対して返還を要する保証金額とした。(8,900,000-3,025,000=5,875,000 5,875,000×0.85=4,993,750 4,993,750-2,100,000=2,893,750)一審原告と一審被告は,これを不服として,それぞれ控訴した。 2 前提となる事実次のとおり付加,訂正するほか,原判決2頁6行目から5頁7行目まで記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁9行目の次に改行して「一審原告は,C(注:Cは一審原告有限会社B代表者清算人である。)が昭和55年6月11日に設立したものであり,当初Cの住所地を本店所在地としていたが,昭和58年4月に本件建物に本店を移転した。なお,一審原告は,平成12年8月31日,社員総会の決議により解散している。(甲10)」を加える。 (2) 原判決2頁14行目の次に改行して「なお,本件建物については昭和54年11月12日付けでD工務店の所有権保存登記が経由されている。(甲1の1)」を加える。 (3) 原判決3頁8行目の「改定)」の次に「と」を加える。 (4) 原判決4頁1行目の「載され」の次から末尾までを「,2回目に定められた最低売却価額の前提となった評価人の評価(平成10年11月20日付け補充書及び平成11年1月29日の電話照会回答による。)において,保証金100万円が差し入れられていた3階事務所部分については保証金に対応する借 の前提となった評価人の評価(平成10年11月20日付け補充書及び平成11年1月29日の電話照会回答による。)において,保証金100万円が差し入れられていた3階事務所部分については保証金に対応する借家権減価額が75万円とされたのに対し,保証金1800万円が差し入れられていた1階店舗部分(本件建物)については保証金に対応する借家権減価額が320万0400円(26,670,000×0.6×0.2=3,200,400)とされた。(甲第1の1,7の2,乙1~4,6)」に改める。 (5) 原判決4頁10行目の「平成11年11月分」を「平成11年1月分」に改める。 3 当事者の主張次のとおり訂正するほか,原判決5頁8行目から6頁22行目まで記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決6頁19行目の「敷金部分は」から22行目までを「敷金部分は賃料月額25万円の10か月相当分の250万円である。したがって,一審被告が一審原告に返還すべき額は,250万円に15%の償却をし(2,500,000×0.85=2,125,000),更に別件和解による210万円を控除した残額2万5000円(2,125,000-2,100,000=25,000)に過ぎない。」に改める。 第3 当裁判所の判断 1 一審被告が引き継いだ返還債務の額本件賃貸借契約は,本件建物についてD工務店の所有権保存登記が経由される前の昭和54年10月29日に,期間3年(昭和54年11月16日から昭和57年11月15日まで),目的書籍店使用,賃借人Cとして締結されたものであるが(甲9の1),その後2回賃借人をCとして更新され(甲9の2,3),3回目の更新時に賃借人が一審原告に変更され(甲9の4),更に2回賃借人を一審原告として更新されたものであり(甲5,9の5),本件建物の新築時から平成12年8月 をCとして更新され(甲9の2,3),3回目の更新時に賃借人が一審原告に変更され(甲9の4),更に2回賃借人を一審原告として更新されたものであり(甲5,9の5),本件建物の新築時から平成12年8月10日までの間,約21年にわたって継続していたものである。 本件賃貸借契約においては,本件保証金を延滞賃料や損害賠償金など本件賃貸借契約に基づき賃借人が賃貸人に負担する金銭債務の弁済に充当することができる旨に定められていること,他に敷金名目の金銭の差し入れはされていないこと,本件保証金の返還時期が賃貸借契約終了時とされていること,本件保証金の返還額について償却が定められていること等からすると,本件保証金に敷金としての性質を有する部分があることは否定できない。 しかしながら,1800万円という金額は,昭和54年当時の賃料月額25万円の72か月分,その後の賃料最高月額32万円の約56か月分に相当しており,その全体が賃貸人の賃借人に対する債権の担保のためであったというには高額に過ぎ,本件保証金のうちのかなりの部分は消費貸借の目的とされたものというべきである。 そして,平成11年1月11日にD工務店と一審原告の間で後記充当合意が成立する前の段階において現実に12か月分の賃料滞納が生じていたこと,その額は減額合意後の賃料月額25万円によれば合計300万円であり,減額前の賃料月額30万円によれば合計360万円になること,一審被告は,本件建物について保証金に対応する借家権減価額として320万0400円が控除されて決定された最低売却価額に基づき本件建物を取得していること,賃料が当初の月額25万から25万7000円,27万円,29万円,32万円に増額された後30万円,25万円に減額されていること等を総合考慮すると,本件保証金のうち敷金の性質を有する部分の額は, こと,賃料が当初の月額25万から25万7000円,27万円,29万円,32万円に増額された後30万円,25万円に減額されていること等を総合考慮すると,本件保証金のうち敷金の性質を有する部分の額は,本件賃貸借契約が平成6年12月20日付契約書(甲2)によって更新された時点での賃料月額30万円の11か月分に相当する330万円と解するのが相当である。 なお,D工務店と一審原告は,平成11年1月11日に本件保証金のうちの890万円までを賃料に充当する旨合意し,これに基づき本件保証金のうちの合計302万5000円を賃料に充当しているのであるが,この合意当時,既に競売手続が進んでおり,やがてD工務店が本件建物の所有者でなくなることが予想されていたうえ,本件保証金のうちの消費貸借を目的とする部分についてD工務店にこれを返還する資力があるとは考え難い状況にあったことからすると,この充当合意によって本件保証金のうちの消費貸借を目的とする部分につき一審原告がD工務店から債権の回収を図ったことが窺えるのであり,したがって,この充当合意における890万円という額は,本件保証金のうちの敷金の性質を有する部分の額を決定するための指標とはなり得ず,また,この充当合意に基づき一審原告によって回収された302万5000円は,契約書(甲5)の文言上は敷金の扱いをしているようには見えるが,実質的には債権の回収であって,本件保証金のうちの敷金の性質を有する部分には含まれないというべきである。 以上によれば,一審被告は,本件建物の所有権を競売によって取得したことにより賃貸人の地位を承継し,本件保証金のうち敷金の性質を有する330万円についての返還債務を前賃貸人から引き継いだというべきである。 2 一審被告が一審原告に対して返還すべき額前記1の330万円について本件保証金契約 継し,本件保証金のうち敷金の性質を有する330万円についての返還債務を前賃貸人から引き継いだというべきである。 2 一審被告が一審原告に対して返還すべき額前記1の330万円について本件保証金契約に基づき15%の償却をすると280万5000円となる。(3,300,000×0.85=2,805,000)そして,一審原告と一審被告は別件和解によりこのうちの210万円を一審被告が賃貸人になった後の未払賃料210万円と相殺しているから,本件において一審被告が一審原告に返還すべき額は280万5000円から210万円を控除した残額70万5000円となる。(2,805,000-2,100,000=705,000)したがって,一審原告の一審被告に対する本件請求は,70万5000円及びこれに対する平成12年9月8日から支払済みまで年6%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 3 結論よって,これと一部異なる原判決を一審被告の本件控訴に基づき変更し,一審原告の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部裁判長裁判官奥山興悦裁判官杉山正己裁判官山崎まさよ

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