- 1 -令和3年5月13日判決言渡令和元年(行ウ)第103号運転免許取消処分取消請求事件 主文 1 大阪府公安委員会が平成31年1月16日付けで原告に対してした 運転免許を取り消す処分及び同日から4年間を運転免許を受けることができない期間として指定する処分をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 主文同旨第2 事案の概要原告は,平成30年12月6日,普通貨物自動車(バンタイプのダイハツ・ハイゼット。以下「原告車両」という。)を運転し,大阪府岸和田市内の丁字路交差点(以下「本件交差点」という。)における直線道路(南東方向から北西方向 に延びる道路。以下「本件直進路」という。)を直進進行していたところ,本件交差点で本件直進路に突き当たる道路(南西方向から北東方向に延び,北東方向で突き当たる道路。以下「本件突当り路」という。)を自転車(以下「被害自転車」という。)に乗って本件交差点に進入・左折した女子高校生(以下「被害者」という。)との間で,追い抜きざまに原告車両を被害自転車に接触させ,転倒し た被害者に全治約21日間を要する尾骨剥離骨折等の傷害を負わせるという交通事故(以下「本件事故」という。)を発生させた。 本件は,原告が,大阪府公安委員会から,本件事故について,原告に自動車の運転に関し道路交通法117条の罪に当たる行為(救護義務違反)があったとして,平成31年1月16日付けで免許(都道府県公安委員会の運転免許をいう。 以下同じ。)を取り消す処分及び免許を受けることができない期間を同日から4 - 2 -年間と指定す )があったとして,平成31年1月16日付けで免許(都道府県公安委員会の運転免許をいう。 以下同じ。)を取り消す処分及び免許を受けることができない期間を同日から4 - 2 -年間と指定する処分(以下「本件各処分」という。)を受けたところ,原告には本件事故により被害者に傷害結果が生じたことの認識がなかったため,原告に同条に当たる行為はなく,本件各処分は違法であるなどと主張して,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め (1) 運転者の義務等ア道路交通法72条1項前段は,交通事故があったときは,当該交通事故に係る車両の運転者は,直ちに車両の運転を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない旨定める。 イ道路交通法117条1項は,車両の運転者が,当該車両の交通による人の死傷があった場合において,上記アの定めに違反したときは,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨定め,同条2項は,同条1項の場合において,同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは,10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨定める。 (2) 免許の取消し令和2年法律第42号による改正前の道路交通法103条2項4号は,免許を受けた者が自動車等(自動車又は原動機付自転車をいう。)の運転に関し同法117条の違反行為(救護義務違反)をしたときに該当することとなったときは,その者がこれに該当することとなった時におけるその者の住所 地を管轄する都道府県公安委員会は,その者の免許を取り消すことができる旨定める。 (3) 欠格期間の指定に関する定めア道路交通法103条8項は,都道府県公安委員 その者の住所 地を管轄する都道府県公安委員会は,その者の免許を取り消すことができる旨定める。 (3) 欠格期間の指定に関する定めア道路交通法103条8項は,都道府県公安委員会は,同条2項各号のいずれかに該当することを理由として同項の規定により免許を取り消した ときは,道路交通法施行令で定める基準に従い,3年以上10年を超えな - 3 -い範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間(欠格期間)を指定するものとする旨定める。 イ道路交通法施行令38条7項1号ト及び別表第3の2は,上記アの基準として,特定違反行為(同施行令別表第2の2の表の上欄に掲げる行為をいう〔同施行令33条の2第2項1号〕。以下同じ。)をしたことを理由 として免許を取り消したときにおいて,前歴が1回である者については,当該特定違反行為に係る累積点数が35点から39点まで(同施行令別表第3の2の表の第1欄の「前歴が1回である者」に対応する同表の第8欄に掲げる点数)に該当した場合の欠格期間を4年とする旨定める。 (4) 違反行為に対する点数の定め等 道路交通法施行令別表第2の2,備考二の128(令和元年政令第109号による改正前のもの)は,特定違反行為の種別として救護義務違反を掲げた上,救護義務違反に付する基礎点数を35点とする。 2 前提事実次の事実は,当事者間に争いがないか,又は証拠(各項に関連する書証を掲 記する。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる。 (1) 原告原告(平成▲年生まれ。本件事故当時29歳)は,外壁工事等の外装業を個人で営む者である。(甲2,6,乙10)原告は,平成28年8月29日,大阪府公安委員会から,準中型 1) 原告原告(平成▲年生まれ。本件事故当時29歳)は,外壁工事等の外装業を個人で営む者である。(甲2,6,乙10)原告は,平成28年8月29日,大阪府公安委員会から,準中型自動車第 一種免許の免許証の交付を受けた。(甲1,乙1)原告は,平成31年1月16日時点(本件各処分の日)において,免許について取消歴等はなく,過去3年以内における停止処分等の回数は1回であった。(甲1)(2) 原告車両 原告車両は,バンタイプの軽四貨物自動車(普通貨物自動車。ダイハツ・ - 4 -ハイゼット)であり,5ドアタイプ(運転席側・助手席側に各ドア,運転席・助手席の後方に各スライドドア,後部正面にハッチバックドア〔以下「後部ドア」という。〕がある。)の車両である。また,原告車両の右側(運転席側)・左側(助手席側)の各ドアにはドアミラーが,フロントガラスの内側上部中央付近には,後部ドアのガラス越しに原告車両の後方の状況を見る ことができるルームミラーが設置されている。(乙2)原告は,平成30年12月6日当時,主に上記外装業のために原告車両を使用していた。(乙10,17)(3) 本件交差点(本件事故の現場)及びその付近の状況等ア本件交差点の状況等 (ア) 本件交差点の状況本件事故が発生した本件交差点は,南海電気鉄道株式会社の南海本線A駅から北西方向に約400mの市街地に位置し,その形状等の概要は,次のとおりである(詳細は別紙のとおりである。)。 すなわち,本件交差点は,本件直進路と本件突当り路が交差する丁字 路交差点であり(ただし,本件交差点から北東側に向けて伸びる狭い通路〔幅員約2.8m〕がある。),本件交差点では交通整理は行われ すなわち,本件交差点は,本件直進路と本件突当り路が交差する丁字 路交差点であり(ただし,本件交差点から北東側に向けて伸びる狭い通路〔幅員約2.8m〕がある。),本件交差点では交通整理は行われておらず,本件直進路及び本件突当り路はいずれもアスファルトにより舗装されている。 (イ) 各道路の幅員等 本件交差点付近における各道路の幅員等は,次のとおりである。 a 本件直進路の幅員等本件直進路の幅員は約3.6~3.7mである。本件直進路の南側の路側帯の幅員は約1.1mである。本件直進路と上記路側帯との間には外側線(以下「本件外側線」という。)が引かれている。 また,本件交差点の南東側には,横断歩道及び停止線(以下「本件 - 5 -横断歩道前停止線」という。)が設けられている。 b 本件突当り路の幅員等本件突当り路の幅員は約4.4mである。本件突当り路には,本件交差点の手前付近に一時停止規制がされており,本件交差点の手前付近に停止線(以下「本件突当り路停止線」という。)及び一時停止の 標識が設けられている。 イ本件交差点付近の建物等の状況本件交差点の西角(本件交差点に向かって本件突当り路の左側)には事務所建物(以下「本件事務所建物」という。)があり,本件交差点の南角(本件交差点に向かって本件突当り路の右側)には住宅がある。本件直進 路を北西方向に進行する車両と本件突当り路を進行する車両との相互の見通しは悪く,本件突当り路の先にある電信柱にはカーブミラーが設置されている。 本件交差点の南側には防犯カメラが設置されており,同防犯カメラに記録された画像(以下「本件防犯カメラ画像」という。)には本件交差点の 状 る電信柱にはカーブミラーが設置されている。 本件交差点の南側には防犯カメラが設置されており,同防犯カメラに記録された画像(以下「本件防犯カメラ画像」という。)には本件交差点の 状況が撮影されている。 本件交差点の北側には倉庫建物(以下「本件倉庫建物」という。)がある。 本件事故当時,B(以下「B」という。)は,仕事の昼休み頃で本件事務所建物付近におり,Cという男性(以下「C」という。)は,仕事の昼 休み頃で本件倉庫建物付近にいた。 (以上につき,甲7,乙5,6~9,22,27,28)(4) 本件事故時の原告の運転状況等ア本件事故直前原告は,平成30年12月6日午後0時過ぎ頃,大阪府岸和田市の外壁 工事現場での仕事を終え,原告車両の荷室部分に,外壁工事で使用するコ - 6 -ンプレッサー,インパクトドライバー,脚立等の工具類一式(以下「本件工具類」という。)を積載して帰宅することとし,途中でハンバーガー店に立ち寄ってハンバーガー等を購入し,これを食べながら原告車両を運転していた。(甲6,13,乙10,13,14)イ本件事故時 原告は,平成30年12月6日午後1時頃,本件直進路を南東方向から北西方向に向けて原告車両を時速約30㎞で運転し,本件交差点に進入したところ,折から被害自転車に乗っていた被害者が,一時停止することなく本件突当り路から本件交差点に進入・左折したことから,原告車両の左側面前部(左側ドアミラー等)を被害自転車(右ハンドル等)に接触させ, 被害者を被害自転車と共に転倒させるという交通事故(本件事故)を発生させた。なお,本件事故当時,雨が降り始めたところであり,路面は少しぬれた状態であった。(甲2,乙23)ウ本件事故 被害者を被害自転車と共に転倒させるという交通事故(本件事故)を発生させた。なお,本件事故当時,雨が降り始めたところであり,路面は少しぬれた状態であった。(甲2,乙23)ウ本件事故直後原告は,本件事故時に,「コン」という音を聞くなどしたことから,軽 くブレーキをかけるとともに,原告車両に設置されたルームミラーを見たところ,本件直進路上に被害者及び被害自転車が転倒している様子を認めた(なお,上記音の大きさについては,後記3のとおり当事者間に争いがある。)。原告は,原告車両の運転を停止して被害者を救護するなどせず,そのまま本件直進路を進行した。(甲2,6,11,13,乙10,15, 17,19,20)エ被害者の負傷被害者は,本件事故により,全治約21日を要する見込みの尾骨剥離骨折等の傷害を負った。(甲2,乙24,25,弁論の全趣旨)(5) 本件事故に係る刑事処分 原告は,平成▲年▲月▲日,過失運転致傷,道路交通法違反を罪名とする - 7 -被疑事実により逮捕され,その後,勾留され,同月28日,同罪名の公訴事実により大阪地方裁判所岸和田支部に起訴された。(甲4,10,弁論の全趣旨)大阪地方裁判所岸和田支部は,令和元年7月2日,原告につき,過失運転致傷により禁錮6月(執行猶予4年)の刑に処するとともに,救護・報告義 務違反の点については無罪とする判決(以下「本件刑事判決」という。)を言い渡した。本件刑事判決は,同月17日に確定した。(甲2,弁論の全趣旨)本件刑事判決のうち,救護・報告義務違反の点について無罪とする理由の要旨は,次のとおりである。 すなわち,①原告車両の損傷状況については,擦過痕以上のものを確認できない。②本件事故の 件刑事判決のうち,救護・報告義務違反の点について無罪とする理由の要旨は,次のとおりである。 すなわち,①原告車両の損傷状況については,擦過痕以上のものを確認できない。②本件事故の接触状況については,互いに向かい合った車両同士の衝突ではなく,同じ方向に向かう車両同士の接触であり,上記損傷が生ずる程度のものにすぎない。③聞こえたという衝突音については,上記損傷状況・接触状況に照らして,どの程度の大きさであったか判然としない。④Bは, 「ガチャンという大きな音でした。」などと証言するが,これを客観的に裏付けるものがあるわけではなく,むしろ上記損傷状況・接触状況と整合するかについて疑問がある。⑤原告は,「コン」という音や「ああ」という女性の声を聞いているが,「コン」という音は後部ドアが開いた音か積んでいた本件工具類の音であると思った,「ああ」という女性の声は被害者の声とは 思わなかったなどとする原告の供述が直ちに不自然とはいえない。⑥ブレーキを踏んだこと,女子高校生と自転車を見たこと,警察からひき逃げ事故で調査していると言われてその女子高校生のことを思い出したことについては,ブレーキを踏んだのは「コン」という音を聞いた時かもしれない,路上に倒れた女子高校生と自転車を見たが自分のせいであるとは思わなかったな どとする原告の供述が不自然とまではいえない(原告が思い出したという内 - 8 -容も具体的・明確なものではない。)。⑦上記損傷状況・接触状況に照らせば,検察官の指摘するそれ以外の事情の推認力はいずれも強いものではなく,それらの事情により検察官の主張する原告の交通事故の認識という事実を推認するには十分ではなく,原告の弁解供述を無視できない。⑧そして,上記各事情に加えて,原告には批判されるべき不良な運転 ではなく,それらの事情により検察官の主張する原告の交通事故の認識という事実を推認するには十分ではなく,原告の弁解供述を無視できない。⑧そして,上記各事情に加えて,原告には批判されるべき不良な運転態度が認められ,その ような運転態度によって一層注意散漫になっていたと考えられるから,本件事故後も,本件事故自体を確定的に認識していなかっただけでなく,本件事故に関する客観的状況を明確に認識していなかった合理的な疑いが十分に認められ,原告に重大な過失があったとはいえたとしても,原告が規範に直面していたと評価して原告に故意責任を認めることには合理的な疑いを否定で きない。 (6) 本件各処分等大阪府岸和田警察署長は,平成30年12月27日,原告に対し,原告の免許の効力を同日から平成31年1月4日まで仮停止する旨の処分をした。 大阪府公安委員会は,同月16日付けで,原告に対し,本件各処分をした。 (甲1,乙1)(7) 本件訴えの提起原告は,令和元年7月12日,本件訴えを提起した。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件における争点は,本件各処分の適法性であり,具体的には,原告が本件 事故を生じさせ被害者に傷害の結果を負わせたことに争いはないから,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについての認識を有していたか否かである。争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)(1) 原告は本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて確定的な 認識を有していたこと - 9 -次のア~ウの事情を総合すれば,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的な認識を有していたと推認することができる。これに反する原告 有していたこと - 9 -次のア~ウの事情を総合すれば,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的な認識を有していたと推認することができる。これに反する原告の供述・陳述部分は,信用することができない。 ア本件事故は,本件交差点において発生した出会い頭の交通事故である。 本件直進路を進行する原告車両の運転席から,本件交差点の本件突当り路 に設置された本件突当り路停止線の約1.4m南西側の地点まで視認可能な状況にあったのであるから,原告は,本件突当り路上を進行する被害自転車について,本件突当り路上の同地点から本件突当り路停止線の本件交差点方向へ約0.8m進んだ先の地点まで被害自転車を認識できる状況にあった(この間に被害自転車を認識すると被害自転車との接触を回避する ことが可能であった。)。また,本件事故後,原告を立会人として行われた原告車両の運転席からの視認状況に関する実況見分の結果によれば,被害自転車と原告車両の接触時又はその直前において,原告車両の運転席から被害者を視認できることが確認されたのであって,原告自身,原告車両の左前部のピラーによって被害者が見えにくいと言いつつも,被害者を発 見することができたとする供述をしている。 そうすると,本件事故当時,原告車両の運転席から本件交差点における本件突当り路の視認性に問題はなく,被害自転車と原告車両の接触時,原告車両の運転席から被害自転車を運転する被害者の存在を認識することが可能であったのであり,原告においても,本件事故により被害者に傷害結 果が生じたことを現に認識していたはずである。 イ(ア) 本件事故の衝撃によって被害者は被害自転車と共に転倒し,原告車両の左側ドアミラーは内側に方向を変えている。また り被害者に傷害結 果が生じたことを現に認識していたはずである。 イ(ア) 本件事故の衝撃によって被害者は被害自転車と共に転倒し,原告車両の左側ドアミラーは内側に方向を変えている。また,原告車両と被害自転車との接触の衝撃音は,屋内にいた者が屋外に様子を見るために出てくるほどであった。これらの事情からすると,本件事故における接触 の衝撃及び音は大きいものであった。 - 10 -そして,本件防犯カメラ画像の中に,本件事故直後に原告車両のブレーキランプが点灯している様子が記録されている。 (イ) 加えて,原告は,捜査段階において,「私が持っているイメージで相手が転ける手前で,私の車の左側助手席窓か,左側スライドドアの窓等で,相手が通り過ぎていくようなイメージが少しあります。」などと 供述し,何かが原告車両に当たる「コン」という音や女性の声を聞いてルームミラー越しに転倒している被害者を確認した旨や,「相手の女子高生が,転けているので少しの怪我はしているのは分かったのですが,大きな怪我まではしていないだろうと自分勝手に思いました。」などと供述しているほか,当初事故を起こしていないと警察官に述べていた理 由について,「事故をしたことを認めると,刑務所に入らなければいけないと思ったからでした。…私が車を運転中に,私の車の後方で自転車の女子高生が転けたということがあったので,そのことを認めてしまうと刑務所に入らなければいけないようになると思い,自転車の女子高生が転けたことや,女性の声がしたことは言いませんでした。」などと供 述して,原告が本件事故を起こしたことを認める内容を供述している。 なお,原告は,本件交差点を通過した際も,接触時も被害自転車と被害者の存在を全く認識していなかったとし せんでした。」などと供 述して,原告が本件事故を起こしたことを認める内容を供述している。 なお,原告は,本件交差点を通過した際も,接触時も被害自転車と被害者の存在を全く認識していなかったとし,本件交差点を通過する際に原告が聞いた「コン」という音は原告車両に積み込まれた本件工具類がぶつかるなどした音か,原告車両の後部ドアが開いた際の音と考え,同様 に聞いた女性の声は,たまたま本件交差点付近において自ら転倒した女性が発したものと考えたなどと供述するが,被害自転車に接触したのは原告車両の前方左側付近であるから,「コン」という音が原告車両の後部(荷室部分等)から聞こえたとする供述は客観的状況と符合しないし,たまたま女性が転倒したという供述内容自体,そもそも不自然な内容で ある。 - 11 -(ウ) そうすると,本件事故時及びその後の状況,原告の供述からすると,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことを現に認識していたということができる。 ウさらに,本件交差点に進入した際の原告の運転状況は,本件交差点の見通しが悪いにもかかわらず,ハンバーガー等を食べながら,減速や安全確 認をしないなど,注意を払わないまま本件交差点に進入するというものである上,原告は,そのような状況で本件交差点を通過した際に「コン」という音や女性の声を聞き,その直後に被害者及び被害自転車が転倒している状況を見たというのである。このような状況は,通常,被害者の転倒・傷害が自らが運転する自動車による交通事故に起因するものと考えるはず であるから,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことを現に認識していたということができる。 なお,原告は,本件刑事判決において,未必的にも自己の運転に起因して被害者に であるから,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことを現に認識していたということができる。 なお,原告は,本件刑事判決において,未必的にも自己の運転に起因して被害者に傷害を負わせたとの認識があったとはいえないという事実認定の下に,救護・報告義務違反の点が無罪とされたことを理由に,本件にお いても,原告に被害者に傷害を負わせたとの認識がなかった旨主張するが,刑事処分と行政処分という目的や性格を異にする手続を混同する主張であって失当というべきであるし,この点を措くとしても,本件刑事判決は上記の点を看過している。 (2) 原告は本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて未必的な 認識を有していたこと仮に,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的な認識を有していなかったとしても,上記(1)ア~ウの事情を総合すると,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,少なくとも未必的な認識を有していたと推認することができる。これに反する原 告の供述・陳述部分は,信用することができない。 - 12 -(3) 救護義務違反の成立したがって,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的又は未必的な認識を有していたのであるから,原告に自動車の運転に関し道路交通法117条の罪に当たる行為(救護義務違反)を認めることができる。 (原告の主張)(1) 原告は本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて確定的な認識を有していなかったこと次のア~ウの事情を総合すれば,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的な認識を有していなかったと推認すること が いて確定的な認識を有していなかったこと次のア~ウの事情を総合すれば,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的な認識を有していなかったと推認すること ができる。これに沿う原告の供述・陳述部分は,信用することができる。 ア本件事故当時,原告車両は,時速約30㎞で走行していたのであって,原告の視野の中心は正面方向の前方領域に向けられていたから,本件事故当時,本件突当り路から本件交差点に進行する被害者及び被害自転車や,原告車両と接触する際の被害者及び被害自転車を視認することが現実に可 能であったとはいえない。この点は,原告を過失運転致傷で起訴をした検察官が,原告の過失の内容について,本件突当り路に対する注意義務違反ではなく徐行義務違反であると説明していることからも明らかである。 イ(ア) 本件事故における接触の態様は,同じ方向に向かう車両同士の接触として,擦過痕が生じる程度の衝撃しか生じなかったから,接触の際の 衝撃や音が大きなものであったとは認められない。なお,原告車両の左側ドアミラーが内側方向に倒れているが,自動車のドアミラーは一定以上の外力が加わると倒れるように設計されているから,原告車両の左側ドアミラーが内側方向に倒れたことをもって接触の衝撃が大きかったと推認することはできない。 また,本件事故を目撃したとする者(B,C)が,接触の際,「すご - 13 -い衝撃音が聞こえました」,「大きな音がした」などと述べているが,これらの衝撃音等に関する描写に沿う客観的な裏付けはなく(むしろ,各車両の損傷状況と整合するかについては疑問がある。),被害自転車が路上に倒れた音と混同した可能性があることなどからすると,これらの目撃供述の信用性は低く,これ に沿う客観的な裏付けはなく(むしろ,各車両の損傷状況と整合するかについては疑問がある。),被害自転車が路上に倒れた音と混同した可能性があることなどからすると,これらの目撃供述の信用性は低く,これらを過度に重視することはできない。 (イ) 加えて,原告は,本件交差点を通過した際も,また,原告車両と被害自転車が接触した時も,被害自転車及び被害者の存在を全く認識していない。原告は,本件事故当時,「コン」という音や女性の声を聞いたが,「コン」という音は原告車両に積み込まれた本件工具類がぶつかるなどした音か,原告車両の後部ドアが開いた際の音と考え,女性の声は, たまたま本件交差点付近において自ら転倒した女性が発したものと考えたのであり,原告がこれらを聞いていたからといって原告が本件事故により被害者に傷害の結果が生じたことを認識していたとは認められない。 なお,平成30年12月14日の警察官による事情聴取において,原 告が,原告車両と被害自転車が接触したことを認めたかのようにも読める供述調書が作成されているが,原告車両と被害自転車との接触部位の照合をしていないこの時点では,被害者が転倒していたことに言及しただけで,原告車両と被害自転車が接触したことを認めた趣旨で供述したものではなかった。 (ウ) そうすると,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことを認識していたとはいえない。 ウ原告は,上記イ(イ)のとおり,本件交差点を通過した際も,また,原告車両と被害自転車が接触した時も,被害自転車及び被害者の存在を全く認識していなかったし,転倒した被害者を見た際にもたまたま自ら転倒した ものと考えていた。 - 14 -加えて,本件刑事判決は,本件事故に関し 被害自転車及び被害者の存在を全く認識していなかったし,転倒した被害者を見た際にもたまたま自ら転倒した ものと考えていた。 - 14 -加えて,本件刑事判決は,本件事故に関し,原告には未必的にも被害者に傷害を負わせたとの認識がなかったことを認め,原告に救護義務違反は成立しないとする(一部)無罪判決であり,そのまま確定している。本件における被告の主張は,本件刑事判決における審理内容に照らし,新しいものはない。 (2) 原告は本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて未必的な認識を有していなかったことまた,上記(1)ア~ウの事情を総合すれば,原告に,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,未必的にも認識を有していなかったと推認することができる。これに沿う原告の供述・陳述部分は,信用することが できる。 (3) 救護義務違反の不成立したがって,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的にも未必的にも認識を有していなかったのであるから,原告に自動車の運転に関し道路交通法117条の罪に当たる行為(救護義務違反) を認めることはできない。 第3 当裁判所の判断 1 救護義務違反の成否(原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについての認識を有していたか否か)について(1) 判断枠組み 道路交通法72条1項前段は,運転者は,交通事故があったときは,直ちに車両の運転を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない旨規定するところ,運転者がこの救護等の措置を講じる義務を負うのは,救護等の措置の対象となるべき被害者の死傷の事実が発生し,しかも運転者がこの事実を未 険を防止する等必要な措置を講じなければならない旨規定するところ,運転者がこの救護等の措置を講じる義務を負うのは,救護等の措置の対象となるべき被害者の死傷の事実が発生し,しかも運転者がこの事実を未必的にしろ認識した場合に 限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(あ)第1690 - 15 -号同40年10月27日大法廷判決・刑集19巻7号773頁,最高裁昭和45年(あ)第2031号同47年3月28日第三小法廷判決・刑集26巻2号218頁参照)。 (2) 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認 めることができる。 ア本件事故及びその前後の状況等(ア) 原告は,平成30年12月6日午後0時過ぎ頃,大阪府岸和田市内の外壁工事現場での仕事を終え,原告車両の後部荷置きスペースに本件工具類を積載して帰宅することとし,原告車両に,コンプレッサー,集 じん機のほか,小さめの工具が入った箱を2つ,インパクトドライバーが入った箱を3つ積み込み,これらの箱の上に脚立を寝かせて置いた。 原告は,帰宅途中,ハンバーガー店に立ち寄ってハンバーガー等を購入し,帰宅するまでに運転しながらハンバーガー等を食べてしまおうと思い,ドライブ感覚で回り道をし,音楽を聴きながら,また,ハンバー ガー等を食べながら,原告車両を運転していた。なお,原告は,ごみを自宅に持ち帰りたくないとして,日頃,持ち帰りの食べ物を買った際には原告車両内で食べてごみを自宅近くのコンビニエンス・ストアに捨てていた。(前記前提事実(4)ア,甲6,11,乙10~12,原告本人)(イ) 原告は,平成30年12月6日午後1時頃,原告車両を時速約30 ㎞で運転し,本件直進路を北西方向 アに捨てていた。(前記前提事実(4)ア,甲6,11,乙10~12,原告本人)(イ) 原告は,平成30年12月6日午後1時頃,原告車両を時速約30 ㎞で運転し,本件直進路を北西方向に直進し,減速することなく本件交差点に進入した。その頃,被害自転車に乗っていた被害者は,本件突当り路から時速約14㎞で進行し,一時停止することなく本件交差点に進入・左折し,本件交差点付近において,本件直進路を直進進行してきた原告車両と接触した。原告は原告車両が被害自転車と接触する前に,急 ブレーキや進行方向の変更等をしなかった。 - 16 -原告は,原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において,被害自転車を運転する被害者の存在を認識していなかった。 原告車両と被害自転車との接触は,本件直進路上を直進して本件交差点を通過した原告車両が,本件突当り路から本件交差点を左折して本件直進路に進入した直後の状態であった被害自転車の進行方向の右側を通 行して被害自転車を追い抜く際に,本件外側線付近において生じたものであって,原告車両の左側面前部と被害自転車の前側面が接触した。これにより,被害自転車には,接触部位に擦過痕が残り,原告車両には,接触部位に擦過痕又は払拭痕(原告車両には本件事故による大きな凹みは見当たらない。)が残ったほか,原告車両の左側ドアミラーは内側に 倒れた。そして,被害者は,被害自転車と共に転倒した。 原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音は,大きなものではなかった。(以上につき,前記前提事実(4)イ,甲7,乙2,3,7,16,17,22,23,26,27,原告本人)(ウ) 原告は,原告車両を運転して本件交差点を通過した直後,「コン」 という音を聞き, き,前記前提事実(4)イ,甲7,乙2,3,7,16,17,22,23,26,27,原告本人)(ウ) 原告は,原告車両を運転して本件交差点を通過した直後,「コン」 という音を聞き,また,後方から発せられる女性の「ああ」という声を聞いたことから,軽くブレーキをかけるとともに,ルームミラーを見たところ,本件直進路上に転倒した被害者及び被害自転車や,人が2,3人集まっている様子が見えた。原告は,原告車両を停車させることなく,そのまま原告車両を運転して本件直進路を直進した。(前記前提事実(4) ウ,甲6,11,13,乙12,15,19,20,22,23,26,27,原告本人)本件倉庫建物付近にいたCは,本件事故を警察に通報した。(乙28,29)(エ) 原告は,上記(ウ)の後も原告車両の運転を継続し,回り道をしなが ら本件交差点から約2㎞進行したところで,原告車両の左側ドアミラー - 17 -が内側に倒れていることに気付き,原告車両内に乗車したまま左側ドアミラーの向きを補正するなどし,平成30年12月6日午後1時過ぎ頃,帰宅した。原告は,本件交差点を通過したときから帰宅するまで約5. 6㎞にわたって原告車両を運転したが,その間,原告車両から降車することはなかった。(甲11,乙8,12,14) 原告は,帰宅するまでの間,上記(ア)のとおり,原告車両を運転しながらハンバーガー等を食べるなどしていたが,結局,ハンバーガー等の一部については食べきることができず,原告車両内にこれらの食べ残しとその入れ物等を残したまま降車した。(乙10~12)(オ) 原告は,帰宅後,自宅2階の自室で寝ていたが,その後,原告の姉 からの電話によって警察が自宅を訪ねてきていたことを知 残しとその入れ物等を残したまま降車した。(乙10~12)(オ) 原告は,帰宅後,自宅2階の自室で寝ていたが,その後,原告の姉 からの電話によって警察が自宅を訪ねてきていたことを知ったが,その時には自宅の外に警察官の姿は見当たらなかった。原告は,連絡がほしいという内容の警察が残した書置きが自宅の郵便受けにあることに気付き,警察に連絡をした。原告は,警察からの求めに応じ,原告車両を運転して大阪府岸和田警察署に出頭した。(甲6,乙10,11) イ本件交差点付近の本件直進路の状況と原告の利用状況等本件交差点が所在する本件直進路は,原告の生活圏内にあって,原告は,本件事故当時,週に4,5回の頻度で本件直進路を自動車で通行していた。 原告は,本件事故当時,本件直進路を本件交差点から北西方向に約200m進行した先に所在する交差点(D支店が所在する交差点)等は自動車, バイク,自転車等に気を付けて運転をするが,本件直進路のその他の交差点は走行してくる車両等が少なく,特段気を付けるべき交差点であると認識していなかった。(甲6,乙8,11,原告本人)本件交差点付近の本件直進路は,平たんであって特段の段差はなかった。 (乙6,8,9,22,原告本人) ウ本件交差点の見通し状況等 - 18 -平成30年12月21日,原告を立会人として,本件交差点における,本件直進路の本件交差点南東方向からの本件突当り路及び本件交差点の見通し状況を明らかにするため,実況見分が行われた。原告が原告車両の運転席に座った状態を想定し,原告車両の前方から117㎝,原告車両の左端から105㎝,地上高145㎝の位置から,本件突当り路(北西側か ら1.5mの直線上)上を本件交差点から遠ざか が原告車両の運転席に座った状態を想定し,原告車両の前方から117㎝,原告車両の左端から105㎝,地上高145㎝の位置から,本件突当り路(北西側か ら1.5mの直線上)上を本件交差点から遠ざかる方向となる南西方向に向けて自転車を移動させたときにどの地点まで自転車を見ることができるか,その見通し状況について確認した結果は,次のとおりであった。(乙6,弁論の全趣旨)(ア) 原告車両の左前角が本件横断歩道前停止線の手前約10.6mの距 離となる地点(本件外側線から約0.4mの距離となる地点)からは,目視によるとき,南西方向に移動する自転車(本件交差点に最も近い部分)が,本件突当り路停止線から本件交差点方向に約0.9mの地点まで見え,カーブミラーによるとき,南西方向に移動する自転車(本件交差点に最も近い部分)が,本件突当り路停止線から南西方向に約5.7 mの地点まで見えた。 (イ) 原告車両の左前角が本件横断歩道前停止線から本件交差点方向に約3.6mの距離となる地点(原告が何かが当たった音を聞いた地点であると指示説明をした地点から,南東方向に12mの距離となる地点〔なお,本件事故当時の原告車両が時速約30㎞であったから,これを前提 とした停止距離約11.3mを考慮したもの〕であり,本件外側線から約0.4mの距離となる地点)からは,目視によるとき,南西方向に移動する自転車(本件交差点に最も近い部分)が,本件突当り路停止線の南西方向に約1.4mの地点まで見え,カーブミラーによるとき,南西方向に移動する自転車(本件交差点に最も近い部分)が,本件突当り路 停止線から南西方向に約4.1mの地点まで見えた。 - 19 -エ原告車両からの左前方の視認状況等平成30年12月21日 本件交差点に最も近い部分)が,本件突当り路 停止線から南西方向に約4.1mの地点まで見えた。 - 19 -エ原告車両からの左前方の視認状況等平成30年12月21日,原告を立会人として,原告の原告車両運転時の見通し状況,関係車両の損傷位置及び接触状況の再現に基づいた接触時の原告からの見通し状況を明らかにするため,実況見分が行われた。原告車両及び被害自転車の損傷を照合した結果をもとに,被害自転車に被害者 役の警察官を乗車させた状態で本件事故の接触状況を再現し,原告を原告車両の運転席に乗車させ,その見通し状況を確認した。これによれば,原告車両の左前,運転席から左側ドアミラー越しに見える部分付近に所在する被害者役の警察官について,原告は,同警察官がいるのが見え,前を見たままでも同警察官がいることが分かると説明した。また,原告を原告車 両の運転席に乗車させ,ルームミラーに映る原告車両の後方の状況について,警察官が原告車両の後方において原告車両から徐々に離れていき,ルームミラーに同警察官の足元が見える地点を原告に指示させたところ,原告は,原告車両の後端から約6.0mの地点まで見えると説明した。(乙3) (3) 事実認定の補足説明ア原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音について(ア) 被告は,原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音は大きなものであった旨主張する。そして,①Bは,本件事務所建物付近にいたとき,車の左と自転車が当たった際に「ガシャン」と機械音がしたとし,この 音は,自転車と車が当たる音であり,金属と金属が当たる音と,地面に自転車が倒れる音は違うから,聞き間違いはないとし,自転車が倒れた音は思い出せないと供述し(甲7),②本件倉庫建物付近にいたCは 音は,自転車と車が当たる音であり,金属と金属が当たる音と,地面に自転車が倒れる音は違うから,聞き間違いはないとし,自転車が倒れた音は思い出せないと供述し(甲7),②本件倉庫建物付近にいたCは,警察官からの電話による事情聴取において,原告車両と被害者が運転する被害自転車が接触する本件事故を見たとし,その時「ドンッ」という 大きな音がしたとし,本件事務所建物内にいた従業員もその音を聞いて - 20 -出てきたなどと供述しており(乙28),これらの供述は,被告の上記主張に沿うものといえる。そこで,上記各供述の信用性について,以下検討する。 (イ) まず,①Bの上記供述について検討すると,上記認定事実ア(イ)のとおり,本件事故は,原告車両が進行方向を同じくする被害自転車の右 側を追い越す際に,原告車両の左側面前部が被害自転車の前側面と接触したものであり,被害自転車及び原告車両に残された各痕跡も擦過痕又は払拭痕であることに加え,原告車両と被害自転車のそれぞれの進行速度,原告車両と被害自転車との接触部位等に照らせば,被害自転車と原告車両が接触したことそれ自体によって大きな機械音や,金属と金属が 当たる音が生じたとは考え難い。他方,前記前提事実(3)のとおり,本件直進路はアスファルトにより舗装されていたのであるから,被害自転車が転倒した時に,被害自転車のフレームと道路とが接触し,これらが接触する音が生じたことが推認されるところ,上記(ア)のとおり,Bは,自転車が倒れた音は思い出せないと供述していることも考え合わせる と,Bが,これらの接触音を自転車と自動車とが接触する音であると知覚又は記憶した上で,上記のとおり「ガシャン」という機械音や金属と金属がぶつかる音であったと供述した可能性が高いということができ と,Bが,これらの接触音を自転車と自動車とが接触する音であると知覚又は記憶した上で,上記のとおり「ガシャン」という機械音や金属と金属がぶつかる音であったと供述した可能性が高いということができる。 (ウ) 次に,②Cの上記供述について検討すると,Cは,捜査官からの電 話による事情聴取に応じて上記(ア)のとおり述べたにすぎず,忙しいことを理由として参考人としての事情聴取に応じていないことからすると,上記(ア)の供述をもって本件事故に関する認識の詳細を述べたものとは考え難く,上記(ア)の供述も被害自転車と原告車両の接触による音と被害自転車の転倒による音の相違を意識して語られたものかも判然と しないというべきである。 - 21 -(エ) そうすると,上記両名の供述のうち,原告車両と被害自転車との接触による衝撃や音が大きかったという部分は,採用することができない。 また,他に被告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 イ原告が原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において被害自転 車を運転する被害者の存在を認識していたか否かについて(ア) 被告は,原告が原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において被害自転車を運転する被害者の存在を認識していた旨主張する。そして,原告は,捜査段階において,本件事故時の状況について,被害者が転倒する手前で原告車両の左側助手席窓か,左側スライドドアの窓等 において被害者が通り過ぎていくようなイメージが少しあった旨供述しており(乙12),この供述部分は,被告の上記主張に沿うものといえる。そこで,捜査段階における原告の上記供述部分の信用性について,以下検討する。 (イ) 本件 イメージが少しあった旨供述しており(乙12),この供述部分は,被告の上記主張に沿うものといえる。そこで,捜査段階における原告の上記供述部分の信用性について,以下検討する。 (イ) 本件直進路の本件交差点南東方向から本件突当り路付近の見通し状 況や原告車両の運転席からの見通し状況は,上記認定事実ウ,エのとおりであると認められるものの,これらは,いずれも本件事故後に行われた実況見分の結果にすぎないから,これを踏まえた原告による指示説明等の内容を考慮しても,原告車両と被害自転車が接触した時点又はその直前において,原告が被害自転車を運転する被害者の存在を認識してい たことを直接裏付けるものであるとか,捜査段階における原告の上記供述部分の信用性を基礎付けるものであるなどということはできない(なお,原告車両と被害自転車との接触時,被害者は原告車両の運転者の視点から左前に位置し,左側ドアミラー等により運転席から見えにくい状況であった〔上記認定事実エ〕。)。 また,捜査段階における原告の上記供述部分は,平成30年12月1 - 22 -4日の警察官調書の一部であるが,その供述自体,「イメージ」などとして語られた具体性の乏しいものであるし,原告は,同日以降,原告車両と被害自転車が接触した時点及びその直前において,原告が被害者の存在を認識していたという趣旨の供述はしておらず,むしろ,おおむね一貫して,被害自転車を運転していた被害者が本件交差点に進入した際 に自分で転倒したと思っていたなどと供述しているところである(甲6,11,13,乙13,15,17,19,20,原告本人。なお,被告が指摘する,捜査段階における原告の上記供述部分は,平成30年12月6日に警察からの要請を受けて大阪府岸和田警察署に出頭し る(甲6,11,13,乙13,15,17,19,20,原告本人。なお,被告が指摘する,捜査段階における原告の上記供述部分は,平成30年12月6日に警察からの要請を受けて大阪府岸和田警察署に出頭し,「ひき逃げ事故」の被疑者として事情聴取を受けていることを認識した後のも のとして,「ひき逃げ事故」の当事者であることを認めることをためらった理由を語ったものと理解することができ,原告が本件事故における接触時又はその直前において被害者又は被害自転車について認識を有していたことを前提にこの点に関する認識を供述することをためらったものとは解されず,原告の上記供述は,原告が,本件事故当時に被害者又 は被害自転車を認識していたことを認めるものであるということはできない。)。そして,上記認定事実ア(イ)のとおり,原告は,本件交差点を進行した際,原告車両と被害自転車が接触した時点及びその直前において,急ブレーキや進行方向の変更等の接触回避措置を講じていないのであって,原告のこのような運転状況は,原告が,原告車両と被害自転 車との接触時又はその直前において,被害自転車を運転する被害者の存在を認識していなかったことと整合する。 (ウ) そうすると,捜査段階における原告の上記供述部分は,採用することができない。また,他に被告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (4) 検討 - 23 -上記判断枠組みを前提に,上記認定事実の下で,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについての認識を有していたか否かについて,以下検討する。 ア原告の供述・陳述の要旨この点に関する原告の供述・陳述の要旨は,次のとおりである。 に傷害結果が生じたことについての認識を有していたか否かについて,以下検討する。 ア原告の供述・陳述の要旨この点に関する原告の供述・陳述の要旨は,次のとおりである。 (ア) 原告は,平成30年12月6日午後1時頃,原告車両を運転して本件交差点を通過する際,「コン」という音と「ああ」という声を聞いた。 原告は,「コン」という音について,以前原告車両の後部ドアが開いたときの音に似ていたことから,後部ドアが開いた音ではないかと思い,ルームミラーを見たが,後部ドアが開いた様子はなかった。その際,原 告は,後部ドアのガラス越しに女子高校生と自転車が倒れているのを見たが,段差か何かで転倒したものと思い,原告車両が原因となってその女子高校生が転倒したとは考えなかった。原告は,原告車両が女子高校生又は自転車とぶつかったという認識はなかったし,原告車両に衝撃を感じなかった。 (イ) 原告は,警察の取調べの当初,女子高校生が転倒していたのを見たことを話さなかった。その理由は,被疑者として警察の取調べを受けるのは初めてであり,警察官に強めに圧力をかけられたと感じ,上記事実を話すと状況的に事故を起こしたことを認めざるを得なくなると感じたからである。原告は,自らの性格として,説明が下手で,口下手な方で あると認識している。 イ原告の供述・陳述部分の信用性そこで,原告の上記供述・陳述部分の信用性について検討する。 (ア) 原告車両の損傷状況原告車両には,本件事故により,接触部位に擦過痕又は払拭痕が残っ たが,大きな凹みは見当たらない(上記認定事実ア(イ))。このような - 24 -原告車両の損傷状況に照らせば,本件事故の程度が比較的軽微であった により,接触部位に擦過痕又は払拭痕が残っ たが,大きな凹みは見当たらない(上記認定事実ア(イ))。このような - 24 -原告車両の損傷状況に照らせば,本件事故の程度が比較的軽微であったことが推認される。このことは,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分の信用性を基礎付ける事情ということができる。 (イ) 原告車両と被害自転車との接触状況 原告車両と被害自転車との接触は,本件直進路上を直進して本件交差点を通過した原告車両が,本件突当り路から本件交差点を左折して本件直進路に進入した直後の状態であった被害自転車の進行方向の右側を通行して被害自転車を追い抜く際に,本件外側線付近において生じたものであって,原告車両の左側面前部と被害自転車の前側面が接触したもの であり,接触時,被害者は原告車両の運転者の視点から左前に位置し,左側ドアミラー等により運転席から見えにくい状況であった(上記認定事実ア(イ),エ)。すなわち,本件事故の接触状況については,互いに向かい合い,又は別方向から進行した車両同士の衝突ではなく,同じ方向に向かう車両同士の(原告車両が被害自転車を追い抜く際の),原告 車両の運転席からは見えにくい位置にいる被害者との接触であった。このことは,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分の信用性を基礎付ける事情ということができる。 (ウ) 原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音 原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音は,大きなものではなかった(上記認定事実ア(イ),上記(3)ア)。このことは,原告が本件事故により被害者に 自転車との接触の衝撃及び音 原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音は,大きなものではなかった(上記認定事実ア(イ),上記(3)ア)。このことは,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分の信用性を基礎付ける事情ということができる。 (エ) 原告が原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において被害 - 25 -自転車を運転する被害者の存在を認識していなかったこと原告は,原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において,被害自転車を運転する被害者の存在を認識していなかった(上記認定事実ア(イ),上記(3)イ)。このことは,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述 ・陳述部分の信用性を基礎付ける事情ということができる。 (オ) 原告の運転状況原告は,本件事故当時,音楽を聴きながら,また,ハンバーガー等を食べながら,原告車両を運転していた(上記認定事実ア(ア))。この点については,原告も自認するとおり,不良な運転態度というべきであっ て,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識しなかったことについての過失を基礎付けるものであるが,故意との関係では,そのような不良な運転態度によって原告は一層注意散漫になっていたと考えられるから,上記のような原告の運転状況は,(その行為自体の当否はともかくとして)原告が本件事故により被害者に傷害結果 が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分の信用性を基礎付ける事情ということができる。 すなわち,前記前提事実(3)のとおり,本件直 害者に傷害結果 が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分の信用性を基礎付ける事情ということができる。 すなわち,前記前提事実(3)のとおり,本件直進路は,市街地に所在する幅員約3.6~3.7mの狭い道路であって,本件交差点は,その形状及び見通しの悪さに照らし,交通事故が発生する危険性をはらんだ交 差点であるということができる。そして,上記認定事実イのとおり,原告は,本件交差点の近隣に居住し,週に4,5回の頻度で本件直進路を通行していたのであって,本件直進路及び本件交差点のこのような形状について十分に認識していたのであるが,本件交差点について,走行する車両が少なく,特段の注意を払うべき場所(交差点)として認識して いなかった。そして,上記認定事実ア(ア),(イ),イのとおり,原告は, - 26 -日頃から食べ物を食べながら原告車両を運転することがあり(乙10,20),平成30年12月6日も,ドライブ感覚の回り道として,ハンバーガー等を食べながら原告車両を運転して本件直進路を進行し,本件交差点を進行するに当たっても特段の原則や安全確認等をしていなかった(上記(3)イのとおり,原告は,原告車両と被害自転車との接触の時点 において被害自転車を運転する被害者の存在を認識していなかったが,このこと自体,上記認定事実ウの見通し状況に照らし,原告が本件交差点に進入するに当たり,本件突当り路の安全確認をしていないか,又はこれをしていたとしても極めて不十分な状態であったことを示しているということができる。)。そうすると,原告は,本件事故の当時,原告 車両を運転して本件交差点を進行するに当たり,本件交差点や原告の運転態度に内在する交通事故の危険性について適切に理解しないまま,漫 うことができる。)。そうすると,原告は,本件事故の当時,原告 車両を運転して本件交差点を進行するに当たり,本件交差点や原告の運転態度に内在する交通事故の危険性について適切に理解しないまま,漫然と原告車両を運転していたものと認められる。このように,原告は,本件事故当時,原告車両を運転して本件交差点を進行するに当たり,自身の運転に内在する交通事故の危険性を適切に理解,認識しておらず, 上記(3)イのとおり,被害自転車と原告車両が接触した時又はその直前において,被害自転車を運転する被害者の存在を認識していなかった上に,原告車両と転倒した被害者及び被害自転車との間に約6.0mの距離があったこと(上記認定事実エ参照)からすると,本件交差点を通過した際に「コン」という音や女性の声を聞き,その直後に本件直進路上に被 害者及び被害自転車が転倒しているなどの光景を見たとしても,これらの事情が自身の運転に内在する交通事故の危険性に起因することについて,直ちに思い至らなかった可能性があることも否定し難いところである。そして,原告自身,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識がなかった旨主張していることに照らせば,被告が主張す る上記事情を考慮したとしても,本件事故の直後において,原告におい - 27 -て,被害者及び被害自転車が転倒している状況が自ら運転する車によって生じた事故によるものであるとの確定的な認識,又はその未必的な認識を有していたと認めるに足りず,原告はそのような認識を有することなく原告車両を運転して本件交差点付近を離れた(上記認定事実ア(ウ)参照)ものと認められる。 (カ) 音や声を聞いてからの原告の行動・判断等上記ア(ア)のような音や声を聞いてからの原告の行動・判断 差点付近を離れた(上記認定事実ア(ウ)参照)ものと認められる。 (カ) 音や声を聞いてからの原告の行動・判断等上記ア(ア)のような音や声を聞いてからの原告の行動・判断については免許を有する運転者の通常の注意を基準にすると軽率のそしりを免れないとの見方や,上記ア(イ)のような取調べ当初の原告の対応については自己に不利益な事実(真実は本件事故により被害者に傷害結果が生じ たことについて認識していたという事実)を殊更に隠すための狡猾な態度であると捉える見方もあり得なくもないが,既に述べたような事情や上記ア(イ)のような事情に照らすと,(免許を有する運転者の通常の注意を基準としたあるべき姿は別として)原告が上記のような行動・判断をとったこと自体が現実にあり得ないものであるなどとはいえず,また, 原告において上記のような対応をとった動機が上記ア(イ)のようなものであったということも十分あり得るものということができる(真実は本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識していたという事実を殊更に隠すための態度であったなどと断定することはできない。むしろ,上記認定事実アのとおり,本件事故後の原告の行動からは, 本件事故の発覚を免れるための工作をしたなどの不自然な状況はうかがわれない。)。 すなわち,原告は,「コン」という音については,原告車両の後部に積載された本件工具類がぶつかる音か,原告車両の後部ドアが開いた際の音と考え,ブレーキを踏んだのもこれらを気にかけたからである旨供 述・陳述するところ,上記認定事実ア(イ),上記(3)イで認定・説示した - 28 -とおり,原告が原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において被害自転車を運転する被害者の存在を認識してい 述・陳述するところ,上記認定事実ア(イ),上記(3)イで認定・説示した - 28 -とおり,原告が原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において被害自転車を運転する被害者の存在を認識していたとは認められないことに加え,原告車両に本件工具類が積まれた状況等に照らせば,このような供述も直ちに不自然であるということはできない。なお,被告は,原告が,「コン」という音が原告車両の後部(原告車両の荷室部分付近) から聞こえたと供述する点について,原告車両の前方左側付近が被害自転車と接触しているにもかかわらず,原告車両の後方から音が生じたとする点が接触の客観的状況と符合しない旨主張するが,上記のとおり接触時の衝撃や接触音が大きかったとは認められない上,被害自転車と原告車両に残された接触の痕跡は擦過痕又は払拭痕であること,原告は音 楽を聴きながら運転していたことに照らせば,原告が聞いた「コン」という音が,上記擦過痕等が生じた部位とは異なる部位において発生したと考えたとしても不自然ではないというべきである。 また,原告は,女性の声を聞きその後に転倒した被害者及び被害自転車を見たことについて,女性の声は,原告車両とは関係なくたまたま転 倒した被害者のものと考えた旨供述・陳述するところ,この点も,上記と同様に,被害自転車と原告車両の接触時又はその直前において,原告が,被害者又は被害自転車を認識していたと認めることができないことに加え,原告車両と転倒した被害者及び被害自転車との間に約6.0mの距離があったこと(上記認定事実エ参照)からすると,原告の上記供 述・陳述部分が直ちに不自然であるということはできない。 (キ) 以上の事情を総合考慮すれば,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認 照)からすると,原告の上記供 述・陳述部分が直ちに不自然であるということはできない。 (キ) 以上の事情を総合考慮すれば,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分については,十分に信用することができる。 ウ被告の主張について これに対し,被告は,前記第2の3(被告の主張)のとおり,原告が, - 29 -原告車両を運転して本件交差点を進行するに当たり,原告車両と被害自転車が衝突して被害者が転倒して傷害を負ったことについて,確定的に認識し,又は仮にそうでないとしても未必的に認識していたのであって,これに反する原告の上記供述・陳述部分は信用することができない旨主張する。そこで,以下検討する。 (ア) 本件突当り路の視認性について被告は,原告が本件直進路の本件交差点南東方向から本件交差点に進入するに当たり,本件突当り路の視認性に問題はなかったから,原告車両の運転席から被害自転車(被害者)を認識することが可能であったし,原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において,被害者及び被 害自転車が位置していたとされる方向の視認性は否定されず,原告は被害者を発見することができた旨主張する。 しかし,原告が,原告車両と被害自転車が接触した時点又はその直前において,被害自転車を運転する被害者の存在を認識していなかったことは上記認定事実ア(イ),上記(3)イで認定・説示したとおりである。し たがって,被告の上記主張は,採用することができない。 (イ) 原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音について被告は,①原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音は大きなものであり,原告は, 上記主張は,採用することができない。 (イ) 原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音について被告は,①原告車両と被害自転車との接触の衝撃及び音は大きなものであり,原告は,「コン」という音や女性の声を聞き,原告車両のブレーキをかけている上,その直後に被害者及び被害自転車が転倒した状況 を見ていたのであるから,被害者にけがを負わせたという認識があったといえる,②捜査段階において,原告が,原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において被害者の存在を認識していたことを認めていた旨主張し,原告においても,平成30年12月14日の警察官の取調べにおいても,被害者の存在を認識していたことを前提とする供述をし ていた旨(乙12)指摘する。 - 30 -a 上記①(原告が「コン」という音及び女性の声を聞き,ブレーキをかけていること,被害者等の転倒状況を見たこと)の点について原告車両と被害自転車との接触の衝撃や音は大きなものであったと認めることはできないことは,上記認定事実ア(イ),上記(3)アで認定・説示したとおりである。 また,原告が「コン」という音や女性の声を聞いたことに関する原告の供述・陳述部分の信用性については,上記イで説示したとおりである。 そうすると,上記①の事情によっても,原告の上記供述・陳述部分の信用性は否定されず,また,原告において本件事故により被害者に けがを負わせたという認識があったと認めるに足りない。 b 上記②(原告が被害者の存在を認識していたとする供述等)について原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において,原告が被害者の存在を認識していたことを認める旨の原告の供述を採用す 記②(原告が被害者の存在を認識していたとする供述等)について原告車両と被害自転車との接触時又はその直前において,原告が被害者の存在を認識していたことを認める旨の原告の供述を採用するこ とができず,原告が被害自転車を運転する被害者の存在を認識していたと認めることができないことは,上記認定事実ア(イ),上記(3)イで認定・説示したとおりである。 c そして,被告が主張する上記①,②の事情を併せて考慮したとしても,上記a,bに説示したところによれば,原告の上記供述・陳述部 分の信用性は否定されず,また,原告において本件事故により被害者に受傷結果が生じたことについての認識を有していたと認めるに足りない。 (ウ) 原告の運転状況について被告は,本件交差点に進入した際の原告の運転状況は,本件交差点の 見通しが悪いにもかかわらず,ハンバーガー等を食べながら,安全確認 - 31 -や減速をせず,注意を払わないまま本件交差点に進入するものであり,そのような状況で本件交差点を通過した際に「コン」という音や女性の声を聞き,その直後に被害者及び被害自転車が転倒している状況を見たというのであれば,自ら運転する車によって生じた事故の可能性を考えるのが普通である旨主張する。 しかし,被告の上記主張は理由がないことは,上記イで説示したとおりである。 (エ) 小括したがって,本件事故時又はその直前において,原告から被害者を視認することは客観的に可能な状況にあったこと,原告が本件事故時に「コ ン」という音や「ああ」という女性の声を聞き,軽くブレーキをかけたこと,ルームミラーで本件直進路上に被害者及び被害自転車が転倒して人が集まっている様子を見たことが認められ が本件事故時に「コ ン」という音や「ああ」という女性の声を聞き,軽くブレーキをかけたこと,ルームミラーで本件直進路上に被害者及び被害自転車が転倒して人が集まっている様子を見たことが認められるが,これらの事実によっては,原告の上記供述・陳述部分の信用性を否定することはできず,また,原告が,原告車両と被害自転車が接触して被害者が転倒して傷害を 負ったことについて,確定的又は未必的に認識していたと認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 エ結論したがって,原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて認識を有していなかった旨の原告の上記供述・陳述部分については, 十分に信用することができる。そして,原告の上記供述・陳述によれば,原告は,本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて,確定的にも未必的にも認識を有していたとは認められない(なお,前記前提事実(5)のとおり,本件刑事判決においても,救護・報告義務違反の点について無罪とされており,本件刑事判決は既に確定しているところである。)。 (5) 小括 - 32 -以上によれば,原告が,原告車両を運転して本件交差点を進行するに当たり,原告車両と被害自転車が接触して被害者が転倒して傷害を負ったことについて,確定的又は未必的に認識していたと認めることはできず,救護等の措置を講じる義務を負っていたということはできないから,原告に道路交通法117条の罪に当たる行為(救護義務違反)があると認めることはできな い。 2 本件各処分について上記1によれば,原告に道路交通法117条の罪に当たる行為(救護義務違反)はなく,原告にこれがあることを理由として本件各処分をすることはできない。 い。 主文 本件各処分について上記1によれば,原告に道路交通法117条の罪に当たる行為(救護義務違反)はなく,原告にこれがあることを理由として本件各処分をすることはできない。したがって,大阪府公安委員会が原告に対してした本件各処分は,いずれも違法であり,取消しを免れない。 理由 よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官新宮智之 裁判官山田慎悟
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