平成13(わ)603 商法違反被告

裁判年月日・裁判所
平成14年9月26日 前橋地方裁判所
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判決文本文7,914 文字)

平成14年9月26日宣告裁判所書記官平成13年(わ)第603号,第650号,第680号,第769号商法違反被告事件判決 主文 被告人Aを懲役3年に,被告人Bを懲役2年6月に処する。 被告人Aに対し,未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 被告人Bに対し,この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人Aは,前橋市a町b丁目c番地のdに本店を置き,日刊新聞の発行等を目的とする株式会社C新聞社(以下「C新聞社」という。),同市e町f番地gに本店を置き,新聞,ラジオ,テレビ広告の代理業務等を目的とするD株式会社(以下「D」という。)及び同市h町i丁目j番地kに本店を置き,新聞,テレビ,ラジオ,雑誌の広告代理業務等を目的とするE株式会社(以下「E」という。)の各代表取締役社長として上記各社の業務全般を統括するとともに,株式会社F百貨店(以下「F百貨店」という。),株式会社G(以下「G」という。),株式会社F産業(以下「F産業」という。)等の各社(以下「Fグループ企業各社」という。)を実質的に経営していたもの,被告人Bは,C新聞社の専務取締役及びEの取締役として,両社の代表取締役社長を補佐していたものであり,第1 被告人Aは,C新聞社及びD(以下「両社」という。)が多額の債務を肩代わりし,あるいは連帯保証する場合(以下「肩代わり等」という。)には,いずれも取締役会の決議をもって決定すべき義務があるのみならず,肩代わり等をする債務者の経営及び財務の状態等を精査するとともに,肩代わり等して履行した債務を求償できる見込みが乏しい場合にはこれらの肩代わり等の行 もって決定すべき義務があるのみならず,肩代わり等をする債務者の経営及び財務の状態等を精査するとともに,肩代わり等して履行した債務を求償できる見込みが乏しい場合にはこれらの肩代わり等の行為を回避するなど,両社のため忠実に職務を遂行すべき各任務を有していたものであるが,G  の代表取締役社長であったHらと共謀の上,Gがリゾートマンション開発分譲の建築等請負業者であるI株式会社(以下「I」という。)に対して負担する債務の弁済が極めて困難となったので,両社が,同債務を肩代わり等することとし,G及び被告人Aらの利益を図る目的をもって,  上記各任務に背き,Gに対し求償できる見込みが極めて乏しいことを熟知しながら,両社の取締役会の決議を経ないで,平成8年11月29日ころ,上記番地所在のC新聞社において,Iに対するGの債務につき,振出人G,受取人及び第1裏書人D,第2裏書人C新聞社とする約束手形  123通(額面合計51億8502万1933円)をI社員に交付した上, 1 同年12月20日ころ,上記のC新聞社において,両社の取締役会の決議を経ないで,前記G  の債務のうち,上記の約束手形のうち120通(額面合計22億9117万2659円)分の債務について,「貸主I」,「借主D」,「連帯保証人C新聞社」などとする金銭消費貸借契約等を締結して,上記債務をDが肩代わりするとともに,C新聞社が連帯保証し, 2 平成9年2月下旬ころ,上記のC新聞社において,両社の取締役会の決議を経ないで,前記G  の債務のうち,上記の約束手形のうち3通(額面合計28億9384万9274円)分の債務について,Iに対し,両社がそれぞれ連帯保証をする旨約して,上記債務を両社がそれぞれ連帯保証し,よって,両社にそれぞれ合計51億8502 ち3通(額面合計28億9384万9274円)分の債務について,Iに対し,両社がそれぞれ連帯保証をする旨約して,上記債務を両社がそれぞれ連帯保証し,よって,両社にそれぞれ合計51億8502万1933円の債務を負担させ,もって両社にそれぞれ同額の財産上の損害を加えた。 第2 被告人両名は,いずれもC新聞社が多額の融資を行う場合には,取締役会の決議をもって決定すべき義務があるのみならず,融資先の経営及び財務の状態等を精査するとともに,返済の見込みが乏しい場合には融資を回避するか,あるいは十分な担保を徴するなどして融資金の回収に万全の措置を講ずるなど同社のため忠実に職務を遂行すべき任務を有していたものであるが,C新聞社の監査役であり実質的な経理部長でもあったJらと共謀の上,Fグループ企業各社及び被告人Aらの利益を図る目的をもって,前記任務に背き,Fグループ企業各社の財務内容が極度に悪化して返済能力がない上,担保余力のある資産がなく,業績を回復すべき新たな業務もないことから,Fグループ企業各社に融資を行えばその融資金の回収が極めて困難であることを熟知しながら,取締役会の決議を経ず,かつ担保を徴する等の融資金回収策を講ずることなく, 1 平成8年12月3日ころ,前記のC新聞社において,同社振出名義の小切手(額面1億円)を  Fグループ企業各社の代表取締役Hに交付し, 2 同月9日ころ,前記のC新聞社において,同社振出名義の小切手(額面1億8000万円)を前記Hに交付し, 3 同月10日ころ,前記のC新聞社において,同社振出名義の小切手(額面1億2000万円)  をF百貨店経理課長Kに交付し, 4 平成9年9月10日ころ,前橋市l町m丁目n番o号株式会社L銀行前橋支店(当時)のC新聞社名義の普 において,同社振出名義の小切手(額面1億2000万円)  をF百貨店経理課長Kに交付し, 4 平成9年9月10日ころ,前橋市l町m丁目n番o号株式会社L銀行前橋支店(当時)のC新聞社名義の普通預金口座から,同市P町q丁目r番地I信用金庫p町支店のF産業名義の普通預金口座に5000万円を振込送金し, 5 同年10月30日ころ,前記のC新聞社において,同社振出名義の小切手(額面5000万円)を同市l町s丁目t番株式会社J銀行前橋支店次長Kに交付して,Fグループ企業各社が被告人Bの使用名義で同銀行から借り入れた債務の弁済を肩代わりし, 6 同月31日ころ,上記J銀行前橋支店のC新聞社名義の普通預金口座から,同支店のG管理の被告人A名義の普通預金口座に1億6900万円を振込送金し,合計6億6900万円をFグループ企業各社に融資し,もってC新聞社に同額の財産上の損害を加えた。 第3 被告人両名は,いずれもEが多額の融資を行う場合には,取締役会の決議をもって決定すべき義務があるのみならず,融資先の経営及び財務の状態等を精査するとともに,返済の見込みが乏しい場合には融資を回避するか,あるいは十分な担保を徴するなどして融資金の回収に万全の措置を講ずるなど同社のため忠実に職務を遂行すべき任務を有していたものであるが,Eの取締役  Mらと共謀の上,Fグループ企業各社及び被告人Aらの利益を図る目的をもって,上記任務に背き,Fグループ企業各社の財務内容が極度に悪化して返済能力がない上,担保余力のある資産がなく,業績を回復すべき新たな業務もないことから,Fグループ企業各社に融資を行えばその融資金の回収が極めて困難であることを熟知しながら,取締役会の決議を経ず,かつ担保を徴する等の融資金回収策を講ずること 復すべき新たな業務もないことから,Fグループ企業各社に融資を行えばその融資金の回収が極めて困難であることを熟知しながら,取締役会の決議を経ず,かつ担保を徴する等の融資金回収策を講ずることなく, 1 平成9年2月14日,前記J銀行前橋支店において,同支店のE名義の普通預金口座から,前橋市u町v番地N信用金庫O支店のA名義の普通預金口座に3500万円を振込送金し, 2 同日,上記J銀行前橋支店において,同支店のE名義の普通預金口座から,同市x町y番地株式会社P銀行本店営業部の株式会社C新聞社名義の当座預金口座に1億円を振込送金して,Fグループ企業各社が株式会社C新聞社から借り入れた債務の弁済を肩代わりし 3 同月18日,同市z町甲丁目乙番丙号株式会社Q新聞舗において,Bが上記J銀行前橋支店の  E名義の普通預金口座から引き出した5000万円をRに交付して,Fグループ企業各社が同人からA義で借り入れた債務を肩代わりし, 4 同月20日,上記J銀行前橋支店において,同支店のE名義の普通預金口座から,前記I信用金庫p町支店のF産業名義の当座預金口座に1000万円を振込送金し,合計1億9500万円をFグループ企業各社に融資し,もってEに同額の財産上の損害を加えた。 (法令の適用)被告人Aについて該当罰条判示第1のうちDに関する行為,判示第1のうちC新聞社に関する行為及び判示第2の行為並びに,判示第3の行為につき,いずれも包括して刑法60条, 平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項刑種の選択判示第1のうちDに関する行為についての罪,判示第1のうちC新聞社に関する行為及び判示第2の行為に よる改正前の商法486条1項刑種の選択判示第1のうちDに関する行為についての罪,判示第1のうちC新聞社に関する行為及び判示第2の行為についての罪並びに判示第3の罪につき,いずれも懲役刑を選択併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(最も犯情の重い判示第1のうちC新聞社に関する行為及び判示第2の行為についての罪の刑に法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条被告人Bについて該当罰条判示第2及び第3の各行為につき,いずれも包括して刑法60条,平成9年法律第107号による改正前の商法486条1項刑種の選択判示第2及び第3の各罪につき,いずれも懲役刑を選択併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の刑に法定の加重)刑の執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)本件は,群馬県下を主要な営業地盤とするC新聞社,その子会社であるD及びEの代表取締役であった被告人A及びC新聞社の専務取締役及びEの取締役であった被告人Bが,上記各社の取締役としての任務に違反して,被告人Aが実質的な経営者であったFグループ各社が債務の返済等に窮したことから,Dにおいてその債務の引受けを行ったり,C新聞社等においてその連帯保証を行ったり,C新聞社等からFグループ各社に対し不正な融資を行うなどして,C新聞社等に多額の損失を加えた特別背任の事案である。 被告人Aの判示第1の各犯行は,Fグループ各社に属するGが平成4年ころ開始したリゾートマンション「S」の分譲事業の売れ行き不振により,Gにおいて同事業に関してIに対して負担していた請負代金等の債務の 被告人Aの判示第1の各犯行は,Fグループ各社に属するGが平成4年ころ開始したリゾートマンション「S」の分譲事業の売れ行き不振により,Gにおいて同事業に関してIに対して負担していた請負代金等の債務の返済に窮するようになったところ,被告人AはGの同債務を連帯保証していたほか,同被告人はGをはじめとするFグループ各社の実質的な経営者でもあったことから,Gが経済的に破綻すると,Fグループ各社及び被告人A自身も経済的に破綻してしまうことをおそれ,Gに対して求償できる見込みもないのに,C新聞社及びDの取締役会の議決を経ることなく,DにおいてGの上記債務の一部である22億円余を引き受け,C新聞社において同債務を連帯保証するとともに,Gの上記債務の残部28億円余をC新聞社及びDにおいて連帯保証し,振出人G名義の約束手形合計123通(額面合計51億円余)にC新聞社等において裏書したものである。 また,被告人両名の判示第2及び第3の各犯行は,その当時,Fグループ各社がその運営資金に窮したところ,被告人Aは,Fグループ各社の実質的な経営者であり,Fグループ各社の債務を連帯保証するなどしていたことから,Fグループ各社の経営が破綻すると被告人A自身も経済的に破綻することになることをおそれ,被告人Bは被告人Aが経済的に破綻すると同被告人の父でありC新聞社の元社長であったTから受けた恩義に報いることができず,被告人B自身の地位もあやうくなることをおそれて,被告人両名が共謀の上で,C新聞社又はEにおいて,当時のJ銀行又はL銀行から金員を借り入れるなどして,Fグループ各社に対し,その運営資金に供するため合計10回にわたり合計8億6400万円を融資したものである。 被告人Aの本件各犯行は,同被告人がC新聞社の株式の過半数を有する株主であるとともに同社等の代表取締役の地 し,その運営資金に供するため合計10回にわたり合計8億6400万円を融資したものである。 被告人Aの本件各犯行は,同被告人がC新聞社の株式の過半数を有する株主であるとともに同社等の代表取締役の地位にあった上,その父であるTがC新聞社の経営に大きな功績をあげたことなどから,同被告人がC新聞社等の経営に大きな支配力を有していたことを利用して,同被告人の経済的な利益及び社会的な地位を守るために,群馬県の有力地方紙であり社会の公器としての側面も有するC新聞を発行しているC新聞社等の利益を犠牲にしたもので,その利欲的かつ自己中心的な犯行の動機に酌量の余地はない。 なお被告人Aの弁護人は,本件各犯行において,被告人Aには個人的な経済的利得を得る意図がなく,そのことは,同人が本件各犯行により経済的利益を全く得ておらず,逆に現在では破産宣告を受けている状況などから証明されるなどと主張する。 しかし,関係証拠によれば,本件各犯行当時,被告人Aは,Fグループ各社の実質的な経営者であって,かつGのIに対する債務等の連帯保証人であったことは明らかであり,Fグループが経済的に破綻することを避けなければ,被告人Aみずからも経済的に破綻するのであるから,被告人Aに,みずからの利益を図る意図があったことは明白であって,弁護人の主張には理由がない。 また,被告人Bの上記各犯行も,被告人Aの経済的な利益等を守ることによりみずからの地位を守ろうとするもので,その自己中心的な犯行の動機に酌量の余地は乏しい。 さらに,被告人らの本件各犯行は,GをはじめとするFグループ各社から返済等を受ける見込みもないのに,C新聞社等においてGの多額の債務の一部を引き受けたり,その残部を連帯保証したり,多数回にわたり反復して,Fグループ各社の運営資金として不正な融資を行ったもので,そ 返済等を受ける見込みもないのに,C新聞社等においてGの多額の債務の一部を引き受けたり,その残部を連帯保証したり,多数回にわたり反復して,Fグループ各社の運営資金として不正な融資を行ったもので,その犯行の態様は悪質である。 しかも,被告人らは,本件各犯行の結果,C新聞社等に合計約51億円余の債務を負担させるとともに,約8億円余の不正融資を行わせるなどして,合計約60億円余の経済的損害を被らせたものであるが,本件各犯行当時のC新聞社の経常利益が数億円程度に過ぎないというC新聞社等の経営規模等を併せ考えれば,本件各犯行がC新聞社等の経営に対して与えた影響は大きく,本件各犯行の結果は極めて重大である。すなわち,C新聞社の発行するC新聞は,群馬県の有力地方紙であり社会の公器というべきものであって,公正な報道がなされるためには財政的な安定が不可欠であるのに,その発行主体であるC新聞社においてその代表取締役により利欲的な動機に基づく本件の各犯行が行われたことや本件各犯行によりC新聞社の経済的基盤が不安定となったことによって,同県民の信頼が失墜したもので,その社会的な影響も大きいものがある。 なお,被告人Aの弁護人は,被告人Aの判示第1の各犯行によりC新聞社及びDが負担すべき債務の存在については,Iを原告とし,C新聞社等を被告とする民事訴訟において争われていることなどから,本件各犯行による損害額は合計8億6400万円にとどまる旨主張する。 しかしながら,そもそも本件のような特別背任罪においては,財産上の実害を発生させた場合だけでなく,経済的見地において被害者の財産状態を評価し,被告人の行為によって被害者の財産的価値が減少すると評価されれば,財産上の損害を加えたものと解するのが相当である。そして,被告人Aの判示第1の各行為は,C新聞社及びDに判 被害者の財産状態を評価し,被告人の行為によって被害者の財産的価値が減少すると評価されれば,財産上の損害を加えたものと解するのが相当である。そして,被告人Aの判示第1の各行為は,C新聞社及びDに判示第1の実害を被らせる危険のある行為であることは明らかであり,そうである以上,被告人Aの判示第1の各行為によりC新聞社等に対して判示第1の金額相当の損害を加えたものと認めるのが相当であって,現在,民事訴訟で争われていることは情状として考慮すべき事情であるから,弁護人の主張には理由がない。 以上のとおりの,本件各犯行の動機,態様,結果,社会的影響等を併せ考えると,被告人両名の刑事責任は重い。 他方,被告人両名は,いずれも公判廷において事実関係を素直に認め反省していること,被告人両名が本件各犯行に及んだ背景には,Iをはじめとする,Fグループ各社の取引先などからの強い働きかけがあったことが認められる。 被告人Aは,C新聞社に対して,みずからの有するC新聞社の株式に質権を設定し,その後,同質権は約7億5000万円で実行されているほか,その父親の退職金約2億3000万円がC新聞社に返納されており,それらの限度で損害の填補がなされたといえること,C新聞社等の代表取締役として長年その地位にあったが,本件による責任を取る意味で取締役を辞任し,C新聞社等から退職金の支払も受けていないこと,本件後,本件に関連する債務等により破産宣告を受けたこと,本件により既に約170日間身柄を拘束されたこと,これまで地域経済の発展のために功績があったことなどの酌むべき事情も認められる。 また,被告人Bの本件各犯行に対する関与は従属的である上,関わったとして起訴された各犯行による被害額は本件各犯行全部の被害額の約7分の1であって,被告人Aの関わった犯行の被害額に比して著しく少 。 また,被告人Bの本件各犯行に対する関与は従属的である上,関わったとして起訴された各犯行による被害額は本件各犯行全部の被害額の約7分の1であって,被告人Aの関わった犯行の被害額に比して著しく少ないこと,C新聞社に対し,その自宅建物に極度額約5000万円の根抵当権を設定したほか,各被害会社に対し役員報酬等約1億円を返上しており,その限度で被害の填補がなされたといえること,重度の肝硬変等により健康を損なっていること,本件により既に約90日間身柄拘束されていることなどの酌むべき事情も認められる。 そこで,以上の事情を総合考慮して,被告人両名にはそれぞれ主文の刑を科し,被告人Bについてはその刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 (求刑被告人Aにつき懲役5年,被告人Bにつき懲役3年)(公判出席検察官猪俣尚人私選弁護人堀克巳〔主任〕,同髙川佳子,同山田竜顕〔以上,被告人A関係〕,同高橋盾生〔被告人B関係〕)平成14年9月26日前橋地方裁判所刑事部裁判長裁判官長谷川憲一裁判官吉井隆平裁判官丹下将克

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