判決 主文 1 原告が、被告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は、原告に対し、令和2年6月29日から令和4年3月31日までは、毎月21日限り52万4338円、毎年6月末日及び12月末日限り92万8297円(ただし、令和2年6月は93万8612円)、令和4年4月1日から本判決確定の日又は令和6年3月31日までのいずれか早い日までは、毎月21日限り24万円(ただし、毎年11月は27万8000円)、毎年6月末日限り24万円及び毎年12月末日限り43万2000円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで、年3分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告に対し、55万円及びこれに対する令和2年6月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は、これを3分し、その2を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 6 この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告は、原告に対し、令和2年6月29日以降、本判決確定の日まで、毎月20日限り52万4338円、毎年6月末日限り111万3181円及び毎年12月末日限り120万2747円並びにこれらに対する各支払期日から支払済みまで、年3分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和2年6月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、被告との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、被告の運営する大学で大学教授として勤務していた原告が、被告から懲戒解雇(以下「本件 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、被告との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、被告の運営する大学で大学教授として勤務していた原告が、被告から懲戒解雇(以下「本件懲戒解雇」という。)をされたことに関して、本件懲戒解雇は無効であり、不法行為(民法709条)にも当たるなどと主張して、被告に対し、①原告が雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②上記雇用契約に基づき、本件懲戒解雇をされた令和2年6月29日から本判決確定の日までの賃金として、毎月20日限り52万4338円、同賞与として、毎年6月末日限り111万3181円及び毎年12月末日限り120万2747円並びにこれらに対する各支払期日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払、③不法行為に基づき、慰謝料等合計550万円及びこれに対する不法行為の日である令和2年6月29日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲括弧記載の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ⑴ 当事者等ア被告は、学校教育を行うことを目的として、札幌市a 区において、A(以下、単に「A」という。)、B等の学校を設置、運営する学校法人である。 イ原告(昭和34年▲月▲日生まれ)は、Aにおいて、大学教授として勤務していた者である。 ウ訴外C(以下「C前学長」という。)は、令和2年3月31日に任期満了で退任するまで、Aの学長であった者である。 ⑵ 雇用契約原告は、平成19年4月1日、被告との間で、期間の定めのない雇用契約を 締結し、常勤の大学教授としてAのI学部J学科の講義を担当していた(甲1)。 ⑶ C前学長に ⑵ 雇用契約原告は、平成19年4月1日、被告との間で、期間の定めのない雇用契約を 締結し、常勤の大学教授としてAのI学部J学科の講義を担当していた(甲1)。 ⑶ C前学長による外部理事への書面交付ア C前学長は、令和2年1月16日、Aの外部理事である訴外D(以下「D外部理事」という。)を訪問し、①D外部理事宛ての「学長 C 教授会教員一同」名義の書面、②C前学長宛ての「教授会一同」名義の書面及び③その他「学長声明」と題するC前学長名義の書面等一式(乙5。以下、併せて「本件交付書面」という。)を手交し、原告は上記訪問に同行した。 イ上記①の書面には、理事長が、令和元年12月23日、外国人留学生に関するコンプライアンス違反の懸念について説明する会議資料をC前学長が理事会で配布したことについて、同資料は「怪文書」であって、これを配布することは被告に対する背任行為であるとして、これを理由にC前学長を再任しない決定をしたと通告した旨、教授会からも、上記コンプライアンス違反の現状を放置していたことは大学自体の存続に関わる深刻な事態であるなどの声が多数あがった旨、学長及び教授会として、Aの健全な体制の再構築に向けて、理事会の皆様の道理に基づいたお力添えをお願いする旨等が記載されていた。 ウ上記②の書面には、我々教員は、理事長が述べたC前学長の「背任行為」や「怪文書作成」は事実と異なり、C前学長の説明を正当なものであると理解し、その内容について共感し、我々教学のリーダーの態度として賛同するものである旨等が記載されていた。 ⑷ C前学長による記者会見C前学長は、令和2年3月31日、北海道庁内の道政記者クラブにおいて、Aの受け入れている外国人留学生が留学資格として求められている日本語能力を 記載されていた。 ⑷ C前学長による記者会見C前学長は、令和2年3月31日、北海道庁内の道政記者クラブにおいて、Aの受け入れている外国人留学生が留学資格として求められている日本語能力を満たしていないことに関する問題について、記者会見(以下「本件記者会見」という。)を行い、原告は本件記者会見の会場に同行した。 ⑸ 原告によるツイッターへの投稿 原告は、令和2年3月31日から同年6月2日までの間、ツイッターにおいて、アカウント名「E」、ユーザー名「F」で(乙4、16)、別紙3ツイート一覧(原告)記載の各投稿(以下「本件各投稿」という。)をした。 ⑹ 原告の教授会への出席状況平成27年4月1日から令和2年3月31日までの間、Aにおいて、教授会が65回開催されたところ、原告はそのうち8回出席した。 ⑺ 本件懲戒解雇被告は、令和2年6月29日、原告に対し、懲戒処分告知書を送付し、懲戒解雇の意思表示(本件懲戒解雇)をした(甲14)。 上記告知書記載の懲戒の事由となる事実は、次のとおりである。 ア令和2年3月31日、本件記者会見に同行したこと(以下「懲戒事由①」という。)イツイッターにおいて、複数回にわたってAの内部情報を漏洩したこと及び誹謗中傷の書込みをしたこと(以下「懲戒事由②」という。)ウ教授会の決議や権限に基づき作成されていない「教授会一同」名の文書や教授全員の総意に基づかない「教授会教員一同」名の文書について、これらの文書がその権限や総意に基づかない文書であることを認識しながら、C前学長がこれら文書を外部理事に手交する行為に同調し、その手交の場に立ち会ったこと(以下「懲戒事由③」という。)エ平成27年4月1日から令和2年3月31日までの期間において65回 がら、C前学長がこれら文書を外部理事に手交する行為に同調し、その手交の場に立ち会ったこと(以下「懲戒事由③」という。)エ平成27年4月1日から令和2年3月31日までの期間において65回開催された教授会に、8回しか出席しておらず、他の教授と比してその出席状況が著しく不芳であり、その状況につき正当な理由がないこと(以下「懲戒事由④」という。)⑻ 原告の給与及び賞与の額ア令和2年6月分の原告の給与は、以下のとおりであった(甲19)。 本棒 50万0700円 扶養手当 0円 地域手当 1万5021円 通勤課税分 4417円 通勤非課税分 4200円 支給合計額 52万4338円イ令和元年6月における原告の期末手当は、111万3181円であった(甲20の1)。 ウ令和元年12月における原告の期末手当は、120万2747円であった(甲20の2)。 ⑼ 被告における就業規則等ア被告における就業規則(以下「本件就業規則」という。)の定めは、別紙就業規則(抜粋)のとおりである(甲15)。 イ被告における給与規程(以下「本件給与規程」という。)の定めは、別紙給与規程(抜粋)のとおりである(甲54、乙77)。 ウ学校法人A特任教職員就業規程(以下「本件特任就業規程」という。)の定めは、別紙特任就業規程(抜粋)のとおりである(甲49)。 エ学校法人A特任教職員に関する給与内規(以下「本件特任給与内規」という。)の定めは、別紙特任給与内規(抜粋)のとおりである(甲50)。 第3 争点及びこれに対する当事者の主張 1 争点本件の争点は、①本件懲戒解雇の有効性、②定年後再雇用の成否、③原告 う。)の定めは、別紙特任給与内規(抜粋)のとおりである(甲50)。 第3 争点及びこれに対する当事者の主張 1 争点本件の争点は、①本件懲戒解雇の有効性、②定年後再雇用の成否、③原告の給与等の額並びに④本件懲戒解雇は不法行為に当たるか及び原告の損害額である。 2 争点①(本件懲戒解雇の有効性)について⑴ 懲戒事由①について(被告の主張)ア C前学長は、被告が、補助金を不正に獲得する目的をもって、被告が不正 な方法により外国人留学生に対する入試を行い、日本語能力を欠く外国人留学生を入学させたなどとして、本件記者会見を行った。しかし、このような本件記者会見の内容は、事実に反するものである。 C前学長は、敢えてこのような誤った認識を大衆に抱かせ、Aによる外国人留学生の受入れを阻止する流れを公然と作出するため、これに法令違反があるなどとして本件記者会見を行い、大衆的圧力をもって自らが考える大学運営方針を受け入れさせるための不当な手段として利用したものであり、これは極めて悪質である。 イ令和元年12月23日の教授会において、翌年度、C前学長は学長として再任されない方針が決定し、令和2年1月21日の理事会において、C前学長は学長として再任されなかった。 C前学長は、自らが学長に再任されなかったことに強い不満を抱いて、本件記者会見を行ったものであり、本件記者会見に公益的目的があったとはいえない。 ウ原告は、C前学長と目的意識を共通にして本件記者会見に同行し、C前学長が本件記者会見を行った目的を十分に認識していたといえる。 また、原告は、本件記者会見に積極的に協力・同行した。 原告が本件記者会見に同行したことは、本件記者会見の開催に影響を及ぼし、C前学長と相互に利用補充し合い、本件 識していたといえる。 また、原告は、本件記者会見に積極的に協力・同行した。 原告が本件記者会見に同行したことは、本件記者会見の開催に影響を及ぼし、C前学長と相互に利用補充し合い、本件記者会見の進行を促進させ、その効果を増強した。 オ本件記者会見により被告の名誉及び信用が毀損され、経営に重大な支障が生じたといえるから、原告が本件記者会見に同調し、これに同行したことは、本件就業規則26条2号、3号、同28条2号に抵触し、同33条3号、4号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)ア C前学長の行った本件記者会見の内容が、適切なものであることは明らか である。 イ本件記者会見の主体はC前学長であり、原告は、本件記者会見の会場にはいたものの、C前学長が正面の椅子に座っているのに対し、原告は後方の右脇に座っていたにすぎない。 また、原告は本件記者会見で発言しておらず、発言したとしても、一言か二言、大学の学科等大学組織について、記者らに説明したにすぎず、原告が主張や意見を述べたことはない。 ウしたがって、原告が本件記者会見に同行したことは、懲戒事由に当たらない。 ⑵ 懲戒事由②について(被告の主張)ア本件各投稿についての被告の主張は、別紙2ツイート一覧(被告)の各「問題の理由」欄に記載のとおりであるところ、本件各投稿は、被告の内部情報を漏洩し、また、被告を誹謗中傷し、被告の社会的評価を低下させるものである。 原告の投稿に関心を持つ者が本件各投稿を読めば、その趣旨や意味を容易に理解できるものである。原告は、実名で投稿を行っていないが、原告のユーザー名「F」のうち「G」とは、被告の運営するAの略称であるから、その投稿内容はAに関わるものであることが読み取れる。 イ に理解できるものである。原告は、実名で投稿を行っていないが、原告のユーザー名「F」のうち「G」とは、被告の運営するAの略称であるから、その投稿内容はAに関わるものであることが読み取れる。 イしたがって、原告が本件各投稿をしたことは、本件就業規則26条2号、3号、同28条3号に抵触し、同33条3号、4号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)本件各投稿についての原告の主張は、別紙3ツイート一覧(原告)に記載のとおりである。 本件各投稿の内容は、被告の秘密や秘匿すべき事項ということはできず、情報漏洩に当たらない。 また、本件各投稿がされた原告のアカウント名およびユーザー名は原告の実名ではなく、被告やA等の名称の記載もない。その上、本件各投稿の日時、内容は区々であり、主体や客体の記載もない。 したがって、一般の読者の注意をもっても、本件各投稿が、具体的にいかなる事実について述べているかを判別することはできず、被告に関する事実の摘示に当たらないから、被告の社会的評価を低下させ、また、被告の内部情報を漏洩するものとはいえない。 したがって、原告が本件各投稿をしたことは、懲戒事由に当たらない。 ⑶ 懲戒事由③について(被告の主張)ア C前学長が、令和2年1月16日にD外部理事を訪問したのは、同月21日に実施される被告理事会において、自らが学長に再任されるべきことを働きかけることにあり、実際には教授会による内容確認等を経ていないにもかかわらず、「教授会一同」や「教授会教員一同」を作成名義とする本件交付書面をD外部理事に手交することにより、本件交付書面の内容があたかも教授会の総意であるかのようにD外部理事を誤信させ、その翻意を促すために行われたものであって、学内政治的な多数派工作を目的とするもの 書面をD外部理事に手交することにより、本件交付書面の内容があたかも教授会の総意であるかのようにD外部理事を誤信させ、その翻意を促すために行われたものであって、学内政治的な多数派工作を目的とするものである。 イこのようなC前学長の行動に同行することは、教員の行動として不適切であり、また、本件交付書面の内容が事実に反するものであったことも踏まえると、原告が本件交付書面の交付に同行したことは、本件就業規則26条2号、3号、同28条2号に抵触し、同33条3号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)ア本件交付書面は、その内容において適正である。 また、本件交付書面に「教授会一同」や「教授会教員一同」との記載があるとしても、D外部理事において、教授会の全員がC前学長に賛同しているなどと誤信するようなものではない。 イそもそも、本件交付書面に上記記載をしたのは原告ではなくC前学長であり、原告は、本件交付書面に上記記載があることや、C前学長が本件交付書面を交付するためにD外部理事を訪問することを認識していてなかった。 ウしたがって、原告がD外部理事への訪問に同行したことは、懲戒事由には当たらない。 ⑷ 懲戒事由④について(被告の主張)ア原告は、平成27年4月1日から令和2年3月31日までの期間に65回開催された教授会に8回しか出席しなかったところ、教授会は学内における重要事項の協議を行う場であり、教授会への出席は教授の義務である。原告は、教授会への欠席について、正当な理由を報告していないばかりか、教授会が形骸化しているという認識を理由に頻繁に欠席している。 イしたがって、上記教授会への欠席は、本件就業規則26条2号、3号に抵触し、同33条2号、3号の懲戒事由に該当する いばかりか、教授会が形骸化しているという認識を理由に頻繁に欠席している。 イしたがって、上記教授会への欠席は、本件就業規則26条2号、3号に抵触し、同33条2号、3号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)原告は、平成28年頃、リウマチ性多発筋痛症にり患し、被告の産業医から診断書を受け、それを所属長である学部長・学科長らに提出して、教授会への出席が難しいことを説明し、欠席することがあることについて同意を得ていた。 また、原告は、かつて、新任教員の採用を巡って他の教員との間で軋轢があり、それがストレス原因となっていること、そのストレス原因のために学科会議に参加していないことを、学部長・学科長は認識し、了承していた。 さらに、原告が教授会を欠席していた期間における人事考課表において、原告は極めて高い評価を得ていることからしても、原告の教授会への欠席は被告内部で問題となっていなかったといえる。 したがって、原告の教授会への欠席は、懲戒事由には当たらない。 ⑸ 解雇の相当性について (原告の主張)上記のとおり、本件懲戒解雇は、懲戒事由が存在しないものである。 加えて、本件懲戒解雇は、専ら、原告が、本件記者会見に同行したこと(懲戒事由①)、本件交付書面の交付の場に立ち会ったこと(懲戒事由③)を理由としているが、これらの行為はそもそも適法であるから、本件懲戒解雇は、報復の一環として行われた不当なものであって、相当性を欠き、解雇権を濫用したものである。 (被告の主張)本件記者会見は、監督官庁による実態調査等を待たず、記者会見という手法を用いて自己の主張や見解を表明するものであるのみならず、学内での意見の対立を学外に広める結果を招来するものであ 主張)本件記者会見は、監督官庁による実態調査等を待たず、記者会見という手法を用いて自己の主張や見解を表明するものであるのみならず、学内での意見の対立を学外に広める結果を招来するものである。原告がこれに同調、同行した本件記者会見は合理性や正当性を欠くというべきである。 原告との雇用関係を解消しなければ、その後も原告が被告に同様の混乱を生じさせるおそれが強かった。 したがって、本件懲戒解雇は社会通念上相当であり、解雇権の濫用には当たらない。 3 争点②(定年後再雇用の成否)について(被告の主張)⑴ 仮に本件懲戒解雇が無効であるとしても、原告は、令和4年▲月に満63歳に達しており、同年3月31日をもって定年となっている(本件就業規則10条1項本文)。 ⑵ 本件就業規則10条1項ただし書による再雇用についても、本件就業規則12条に定める解雇理由が認められる場合には、被用者が希望したとしても再雇用は認められない。 前記2(被告の主張)のとおり、原告には、懲戒事由が存在し、そのいずれもが、本件就業規則12条3号に該当する。また、懲戒事由④については、同 条1号にも該当する。 したがって、原告は再雇用の対象ではなく、被告が原告を再雇用しないことには、客観的合理的理由及び社会通念上の相当性がある。 (原告の主張)本件就業規則10条1項ただし書によれば、本人が希望する場合には、定年後再雇用される。前記2(原告の主張)のとおり、本件懲戒解雇は無効であるところ、原告は、定年に達した後も、雇用契約の継続を希望している。 また、被告においては、平成29年3月14日発行の学園報「教員の定年及び定年後の雇用について」により、原則として満65歳に達した日の属する年度の終わり に達した後も、雇用契約の継続を希望している。 また、被告においては、平成29年3月14日発行の学園報「教員の定年及び定年後の雇用について」により、原則として満65歳に達した日の属する年度の終わりまで雇用が継続されることを通知しており、原告には、満65歳に達した日の属する年度の末日まで雇用が継続すると期待することについて、合理的な理由がある。 したがって、原告は、少なくとも満65歳に達した日の属する年度の末日まで、被告との間で、雇用契約上の権利を有する地位にある。 4 争点③(原告の給与等の額)について(原告の主張)⑴ 原告の平成30年度の所得は総額839万0478円であり、令和2年6月の給与の支払総額は52万4338円であるから、同年7月以降の給与についても同額の賃金となる。 ⑵ 原告は、毎年6月と12月に賞与の支給を受けていたところ、令和元年6月の賞与は111万3181円、同年12月の賞与は120万2747円であるから、同額の賞与を受ける権利がある。 ⑶ 本件特任就業規程及び本件特任給与内規によれば、定年後再雇用された教職員については、給料月額24万円、25万円、26万円の3区分とされ、期末手当は、6月に給料月額の1.0か月分、12月に給料月額の1.8か月分を支給することとなっている。また、寒冷地手当については、11月1日の基準 日に在勤するものに対し、支給するとされている。 (被告の主張)争う。 5 争点④(本件懲戒解雇は不法行為に当たるか及び原告の損害額)について(原告の主張)⑴ 原告は、被告から不当な理由で懲戒解雇されたことにより、令和2年6月29日からAの教授の地位を奪われ、講義をすることができなくなり、原告の講義を受講していた学生に対するアフターフォローとし ⑴ 原告は、被告から不当な理由で懲戒解雇されたことにより、令和2年6月29日からAの教授の地位を奪われ、講義をすることができなくなり、原告の講義を受講していた学生に対するアフターフォローとしての私的な講義をすることもできなかった。 さらに、本件懲戒解雇により、原告は、Aの研究室や図書館の利用を禁止され、大学教授として研究を継続することを実質的に妨害されるなど、憲法23条の学問の自由を実質的に侵害された。 ⑵ よって、本件懲戒解雇は違法であって、不法行為を構成し、これにより原告は多大な精神的苦痛を受けた。 その損害額は500万円を下らない。これに弁護士費用50万円を併せた合計550万円が原告の損害額である。 (被告の主張)争う。 本件懲戒解雇は有効であり、不法行為には当たらない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 令和元年5月15日及び同月22日開催の被告内部の会議において、授業を受講できる日本語能力レベルが著しく欠如している外国人留学生が相当数存在しているという声が、授業を担当している教員からあがっていること、最低限の語学能力を持たない生徒の入学が喫緊の課題であること等について、Aの K学部から報告がされた(甲4の1、2)。 ⑵ C前学長は、同年7月18日、被告の理事会において、「本学における留学生の現状と認識について(教学側見解)」と題する書面を提出した。同書面には、外国人留学生の約4割(28名/73名)は、日本語能力について、文部科学省及び出入国在留管理庁が求める日本語能力レベル(N2)に達していないこと、文部科学省へ報告するAの定員充足率には、このような留学生が含まれるため、監督官庁から補助金等 日本語能力について、文部科学省及び出入国在留管理庁が求める日本語能力レベル(N2)に達していないこと、文部科学省へ報告するAの定員充足率には、このような留学生が含まれるため、監督官庁から補助金等の不正受給と見られないか懸念があること等の指摘がされていた。(甲7の1)⑶ C前学長は、同年8月7日、被告の理事会において、「教学側見解について(前回理事会の確認)」と題する書面を提出した。同書面には、①文部科学省及び法務省はN2を前提として、外国人留学生受入れの最終判断と責任は各大学にあるとしているところ、N2を前提としない被告の現状は外部コンプライアンス上重大な問題と考えられること、②Aには、A外国人留学生規程4条の入学資格(日本語能力試験受験者は、N2以上が基準とされている。)に該当しない留学生も在籍しており、これは内部コンプライアンス違反となる旨の指摘がある(甲7の2)。 ⑷ 令和元年12月23日、教授会において、C前学長が学長として再任されない旨の被告の方針が示された(乙5)。 ⑸ C前学長は、令和2年1月16日、D外部理事を訪問し、本件交付書面を手交し、原告は上記訪問に同行した。 本件交付書面には、前記⑷の事実、教授会からも、外国人留学生に関するコンプライアンス違反の現状を放置していたことは大学自体の存続に関わる深刻な事態であるなどの声が多数あがった旨、学長及び教授会として、Aの健全な体制の再構築に向けて、理事会の皆様の道理に基づいたお力添えをお願いする旨、教員一同は、C前学長の説明を正当なものであると理解し、その内容について共感し、教学のリーダーの態度として賛同する旨等が記載されていた。 ⑹ 被告の理事会は、同年3月26日、前記⑵のとおり、C前学長が、理事会に「本学における留学生の現状と認識について( 共感し、教学のリーダーの態度として賛同する旨等が記載されていた。 ⑹ 被告の理事会は、同年3月26日、前記⑵のとおり、C前学長が、理事会に「本学における留学生の現状と認識について(教学側見解)」と題する書面を提出し、本件大学の留学生受入れは補助金の不正受給であるなどと主張し、理事会を著しく混乱させ、予定した議案の審議を不能にしたなどとの理由で、C前学長に対する退職慰労金の支給を見送ることを決定した(甲8)。 ⑺ C前学長は、同月31日、北海道庁内の道政記者クラブにおいて、Aの受け入れている外国人留学生の日本語能力に関する問題について、本件記者会見を行い、原告は、本件記者会見の会場に同行した。本件記者会見では、C前学長が記者らに囲まれる形で正面の椅子に座り、原告はC前学長の右後方に座っていた。(乙64、65、67、証人C前学長〔13頁〕、原告本人〔3頁〕)⑻ C前学長は、被告の学長として再任されず、同日に任期満了で被告の学長を退任した。 ⑼ 同日以降、本件記者会見を受けて、複数の報道機関が、Aが外国人留学生の日本語能力を十分に確認せず入学させた疑いがある、C前学長は、被告が留学生の質より数を重視し、日本語能力レベルN2相当に満たない留学生を入学させたと述べたなどと報道した(甲9、乙7〔いずれも枝番省略〕)。 ⑽ 原告は、同日から同年6月2日までの間、ツイッターにおいて、アカウント名「E」、ユーザー名「F」で、別紙3ツイート一覧(原告)記載の各投稿(本件各投稿)をした。 ⑾ 被告は、同月29日、原告に対し、本件懲戒解雇をした。 2 争点①(本件懲戒解雇の有効性)について⑴ 懲戒事由①及び懲戒事由③についてア被告は、懲戒事由①について、本件記者会見は、C前学長が被告の学長として 告に対し、本件懲戒解雇をした。 2 争点①(本件懲戒解雇の有効性)について⑴ 懲戒事由①及び懲戒事由③についてア被告は、懲戒事由①について、本件記者会見は、C前学長が被告の学長として再任されなかったことに対する不満から行ったものであり、公益的な目的ではない上、被告における外国人留学生受入れについての誤った認識を大衆に与え、被告の名誉及び信用を毀損するものであるといえるところ、原告 もこれらのことを認識して、積極的に本件記者会見に同行したといえ、このことは本件就業規則26条2号、3号、同28条2号に抵触し、同33条3号、4号の懲戒事由に該当する旨主張する。 また、被告は、懲戒事由③について、C前学長がD外部理事を訪問したのは、事実と異なる内容の本件交付書面を交付して、自身が再任されるべきことを働きかけるという、学内政治的な多数派工作を目的とするものであり、原告もこれらのことを認識して上記訪問に同行したといえ、本件就業規則26条2号、3号、同28条2号に抵触し、同33条3号の懲戒事由に該当する旨主張する。 イしかし、前提事実⑶、⑷及び認定事実によれば、本件記者会見及び本件交付書面の各内容はいずれもAの受け入れた外国人留学生の日本語能力レベルの問題についてのものであったところ、D外部理事に対する本件交付書面の交付及び本件記者会見の実施を含め、学内及び学外において上記問題について意見を述べるなどして訴えていたのは、専らC前学長であったと認められる。 また、C前学長は、D外部理事への訪問に当たって、原告その他これに付き添った教授らに上記問題の補足説明等についてサポートしてもらえると考えていたことがうかがわれ(証人C前学長〔31頁〕)、原告の同行がC前学長による上記訪問につき精神的に寄与した側面はあり得るも 付き添った教授らに上記問題の補足説明等についてサポートしてもらえると考えていたことがうかがわれ(証人C前学長〔31頁〕)、原告の同行がC前学長による上記訪問につき精神的に寄与した側面はあり得るものの、証拠(証人C前学長〔14頁〕、証人H(以下「証人H」という。)〔28~30頁〕、原告本人〔9頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件交付書面のうちD外部理事宛ての「学長 C 教授会教員一同」名義の部分(前提事実⑶ア①)を作成したのはC前学長であることが認められ、原告が、本件交付書面の作成に関与したことや、上記訪問の前に、本件交付書面の内容を明確に認識していたことはうかがわれず、その他原告が上記訪問につき積極的に協力し、これを助長するような行為をしたこともうかがわれない。 さらに、令和2年3月31日、本件記者会見が北海道庁内の道政記者クラブにおいて実施され、同日以降、複数の報道機関がこれについて報道したこと(認定事実⑺、⑼)を踏まえれば、同日当時、本件記者会見は社会的耳目を集めていたといえ、原告の同行がC前学長による本件記者会見の実施につき精神的に寄与した側面はあり得るものの、認定事実⑺、証拠(原告本人〔3、4頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件記者会見では、C前学長が記者らに囲まれる形で正面の椅子に座って発言し、原告はC前学長の右後方に座っていたにすぎず、原告が主体的に意見等を述べたことはなかったことが認められ、原告が本件記者会見に積極的に協力し、これを助長するような行為をしたともいえない。 そうすると、仮に本件交付書面や本件記者会見の各内容に一部事実と異なる内容が含まれていたとしても、D外部理事への訪問及び本件記者会見はいずれも専ら当時学長であったC前学長が主体的に行ったものであり、原告の同行による精神的な寄与が 件記者会見の各内容に一部事実と異なる内容が含まれていたとしても、D外部理事への訪問及び本件記者会見はいずれも専ら当時学長であったC前学長が主体的に行ったものであり、原告の同行による精神的な寄与があるとしても、重要なものとはいえず、原告の同行によって、被告の名誉及び信用の毀損及び学内政治的な多数派工作が、具体的に助長促進されたこと等を認めるに足る証拠はない。 以上を踏まえれば、C前学長によるD外部理事への訪問及び本件記者会見に原告が同行したことが、本件就業規則26条2号、3号、同28条2号に抵触し、同33条3号、4号の懲戒事由に該当するとは認められない。 ⑵ 懲戒事由②についてア被告は、本件各投稿は、被告の社会的評価を低下させ、また、被告の内部情報を漏洩するものであり、原告が本件各投稿をしたことは、本件就業規則26条2号、3号、同28条3号に抵触し、同33条3号、4号の懲戒事由に該当する旨主張する。 イ特定の投稿が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものである(最高裁昭 和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁、最高裁平成22年(受)第1529号同24年3月23日第二小法廷判決・裁判集民事240号149頁参照)。 これを踏まえて検討すると、本件各投稿に表示される投稿者は、「E」、「F」である(乙4、16)ところ、これらは原告の本名ではなく、また、これと関連性があるものでもないから、一般の読者の注意と読み方をもっても、本件各投稿が原告によるものであることを認識することは困難である。 また、被告は、上記「G」という表記から、本件各投稿が被告に関するものであることを認識できる旨主張すると の注意と読み方をもっても、本件各投稿が原告によるものであることを認識することは困難である。 また、被告は、上記「G」という表記から、本件各投稿が被告に関するものであることを認識できる旨主張するところ、本件各投稿には、本件記者会見に関する報道の投稿(別紙3ツイート一覧(原告)のうち、令和2年3月31日の投稿)や、「大学」、「留学生」等の単語を使用した複数の投稿が含まれることを踏まえれば、これらを手がかりに本件各投稿がAに関するものであると想起させる可能性はある。しかし、「G」がAのみを指し示すものであることをうかがわせる事情はなく、「F」のうち「E」と「G」がそれぞれ独立した意味を有するのか直ちに明らかでない上、本件各投稿には、主体等が不明確なもの、表現が婉曲的又は抽象的なもの等が複数含まれており、「G」及び本件記者会見に関する報道の投稿とその他の投稿との関連性も明らかであるとはいえない。 そうすると、一般の読者の普通の注意と読み方を基準にすれば、本件各投稿が、被告やAに関する事実を摘示するものであるとは認められず、被告の社会的評価を低下させたとはいえない。 なお、仮に本件記者会見の内容に一部事実と異なる内容が含まれていた場合、原告が令和2年3月31日に本件記者会見に関する報道の投稿をしたことで、その内容を拡散させ、被告の社会的評価を低下させたといい得る余地はある。しかし、認定事実⑼のとおり、本件記者会見の内容は、同日以降、複数の報道機関で報道されたこと、前記⑴のとおり、かかる報道の対象とな った本件記者会見を主体的に行ったのは専らC前学長であり、これに対する原告の寄与はC前学長に対する精神的なものにとどまることを踏まえれば、上記投稿によって被告の社会的評価が低下したとはいえない。 ウ内部 見を主体的に行ったのは専らC前学長であり、これに対する原告の寄与はC前学長に対する精神的なものにとどまることを踏まえれば、上記投稿によって被告の社会的評価が低下したとはいえない。 ウ内部情報の漏洩についても、仮に、本件各投稿が被告やAに関するものであると解する読者がいたとしても、本件各投稿の内容が被告において公表することを禁じられていたものであると認めるに足りる証拠はない。 エ以上を踏まえれば、原告が本件各投稿をしたことが、本件就業規則26条2号、3号、同28条3号に抵触し、同33条3号、4号の懲戒事由に該当するとは認められない。 ⑶ 懲戒事由④についてア被告は、原告が、平成27年4月1日から令和2年3月31日までの間に合計65回開催された教授会について、8回しか出席しておらず、その余を欠席したことには正当な理由がなく、このことは、本件就業規則26条2号、3号に抵触し、同33条2号、3号の懲戒事由に該当する旨主張する。 イ後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 原告は、平成30年9月25日、以前から教授会が上の意思の下達だけが目的となっていて、教学部門の意思決定機関としての意義が希薄だったが、さらに一層形骸化が進んだこともあって、ずっと教授会に出席していない旨の意見を表明した(乙76)。 原告は、平成30年12月27日、ストレスチェック後の医師による面接指導において、医師に対し、人事の件等について筋が通っていないことに関してストレスを感じている旨述べたこと(ストレスチェック後の面接指導結果報告書〔甲17の1枚目〕)、AのI学部長等から、上記面接指導に先立って、上記医師に対し、原告のストレスの原因となり得る職場での人間関係に関する情報として、原告は、過去に新任教員の採用について他 結果報告書〔甲17の1枚目〕)、AのI学部長等から、上記面接指導に先立って、上記医師に対し、原告のストレスの原因となり得る職場での人間関係に関する情報として、原告は、過去に新任教員の採用について他の教員と考え方にずれが生じたことが原因でトラブルになったと理解さ れていること、職場のストレスと関連する可能性がある情報として、原告は、上記のトラブルに関連して、学科会議や学科の行事(授業、学生指導を除く。)には参加していないことが提供されていたこと(ストレスチェック後の面接指導医師への情報提供書〔甲17の2枚目〕)、時期は明らかでないものの、上記各書面(甲17)は、被告に提出されていたこと(証人H〔30頁〕)が認められる。 原告は、当時、リウマチ性多発痛症で通院しており、被告もこれを認識していたと認められる(甲16、17、証人H〔30頁〕)。 被告における人事考課では、評価基準は5段階であって、そのうち「5」は特に優れていることを、「4」は標準より優れていることをそれぞれ意味するところ、原告に係る令和元年10月11日付け人事考課表では、第二次評定者及び最終評定者の総合評価はいずれも4.7であり、同表に教授会への欠席に関する記載は見当たらず、その他本件懲戒解雇がされるまでに原告が教授会への欠席について被告から注意、指導、処分等を受けたことはうかがわれない(甲58、原告本人〔11、12頁〕)。 ウ上記イによれば、原告の教授会への欠席は、その一部について、健康上の理由に基づくものであると認められるし、一部に正当な理由のない欠席があったとしても、人事考課等において従前問題とされてこなかったこと等を考慮すると、本件就業規則26条2号、3号に抵触する程度に至ったとは認められない。 ⑷ 小括以上によれば、本件懲戒解雇は懲 たとしても、人事考課等において従前問題とされてこなかったこと等を考慮すると、本件就業規則26条2号、3号に抵触する程度に至ったとは認められない。 ⑷ 小括以上によれば、本件懲戒解雇は懲戒事由を欠くものである。 また、既述のとおり、懲戒事由①及び懲戒事由③について、原告の同行による寄与の程度は限定的であるといえること、懲戒事由②について、本件各投稿の内容は、不明確、婉曲的又は抽象的なもの等が複数含まれており、Aとの関連性が必ずしも明らかでないこと、懲戒事由④について、少なくとも原告の教 授会への欠席の一部には正当な理由があり、原告の人事考課の内容、原告が、被告から、教授会への欠席を理由として、注意、指導、処分等を受けたことはうかがわれないこと等に照らせば、本件懲戒解雇は相当性も欠くというべきである。 よって、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、無効である。 3 争点②(定年後再雇用の成否)について⑴ 本件就業規則10条1項本文は、大学教員は満63歳に達した日の属する年度の終わりをもって定年とする旨を定め、同項ただし書は、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、本件特任就業規程により、退職日の翌日から1年ごとの雇用契約を更新することにより満65歳まで継続雇用する旨を定めている。 これに加え、証拠(甲48)によれば、被告の理事長は、平成29年3月14日発行の学園報において、教員の定年及び定年後の雇用について、満68歳まで雇用されるのが原則ではなく、例外であり、原則は、満65歳に達した日の属する年度の終わりまでであり、これを周知徹底する旨を述べたことが認められることを踏まえれば、被告においては、本件就業規則10条1項ただし書の要件を はなく、例外であり、原則は、満65歳に達した日の属する年度の終わりまでであり、これを周知徹底する旨を述べたことが認められることを踏まえれば、被告においては、本件就業規則10条1項ただし書の要件を満たす者は、満65歳に達する日の属する年度の終わりまでは、原則として再雇用されるというべきである。 そして、原告は、本件訴訟係属中である令和4年▲月に満63歳に達し(前提事実⑴イ)、同年3月31日をもって定年に達したと認められるところ、原告は、本件訴訟において、上記定年後は再雇用による雇用契約の継続を希望していたと認められ(弁論の全趣旨)、既述のとおり、原告に解雇事由があるとは認められず、その他退職事由もうかがわれないから、上記再雇用の要件を満たすものと認められる。 以上に鑑みれば、原告において、定年による雇用契約の終了後も満65歳ま で雇用が継続されるものと期待することに合理的な理由があると認められ、原告の人事考課の内容(前記2⑶)等を踏まえれば、原告を再雇用しないことにつきやむを得ない特段の事情もうかがわれないから、再雇用をすることなく定年により原告の雇用が終了したものとすることは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできない(最高裁平成23年(受)第1107号同24年11月29日第一小法廷判決・裁判集民事242号51頁参照)。 ⑵ したがって、原告は、令和4年4月1日以降は、被告との間で定年後に再雇用された教職員としての労働契約上の地位にあると認められる。 そして、その労働条件は、本件就業規則、本件特任就業規程及び本件特任給与内規の定めに従うことになるものと解される。 4 争点③(原告の給与等の額)について⑴ 定年までの原告の給与(令和2年6月29日~令和4年3月31日まで) 本件特任就業規程及び本件特任給与内規の定めに従うことになるものと解される。 4 争点③(原告の給与等の額)について⑴ 定年までの原告の給与(令和2年6月29日~令和4年3月31日まで)前提事実⑻アによれば、原告は、被告に対し、定年に達するまで、給与として、1か月当たり合計52万4338円の支払を受ける権利がある。 また、期末手当については、本件給与規程別表8及び別表8-2で具体的な算出方法が定められており、人事考課の結果を踏まえて支給率が決定されるところ、原告については令和2年度以降人事考課が行われていないものの、同別表8-2人事考課結果に伴う期末手当支給率のうちEランク(標準支給率に乗ずる数値は0.8)の限度では、期末手当につき具体的な権利性があるというべきである。 したがって、原告の令和2年6月29日以降定年に達するまでの期間に支払を受けることができる期末手当の額は、本件給与規程別表8及び別表8-2によれば、次の計算式のとおりであると認められる。 (計算式〔1円未満切り捨て〕)ア令和2年6月の期末手当 (500,700+15,021)×227.5/100×0.8=93万8612円イ令和2年12月以降の期末手当(500,700+15,021)×225/100×0.8=92万8297円⑵ 再雇用後の原告の給与(令和4年4月1日以降)ア再雇用された教員の給与は、給料、通勤手当、期末手当、寒冷地手当である(本件特任給与内規2条)。 給料については、月額24万円、25万円、26万円の3区分である(本件特任給与内規3条1項)ところ、原告は少なくとも月額24万円の限度で支払を受ける権利を有すると認められる。 通勤手当については、実 料については、月額24万円、25万円、26万円の3区分である(本件特任給与内規3条1項)ところ、原告は少なくとも月額24万円の限度で支払を受ける権利を有すると認められる。 通勤手当については、実費支給であり(本件特任給与内規5条)、通勤しない限り、原告はこの支払を受ける権利を有するとは認められない。 寒冷地手当については、原告は、扶養親族のない世帯主である(甲18)から、3万8000円の支払を受ける権利を有すると認められる(本件特任給与内規7条)。なお、寒冷地手当の支給日は、毎年11月である(本件給与規程別表9)。 そうすると、再雇用後の原告は、被告から給与として月額24万円(11月に限っては27万8000円)の支払を受ける権利を有する。 イまた、期末手当については、6月分は給料月額の1.0か月分、12月分はその1.8か月分である(本件特任給与内規6条)から、原告は、6月に24万円、12月に43万2000円の支払を受ける権利を有する。 ⑶ 小括よって、原告は、①令和2年6月29日から令和4年3月31日までは、給与として月額52万4338円、期末手当として毎年6月末日及び12月末日限り92万8297円(ただし、令和2年6月は93万8612円)の支払を、 ②令和4年4月1日以降は、給与として月額24万円(ただし、毎年11月は27万8000円)、期末手当として毎年6月末日限り24万円、12月末日限り43万2000円の支払を、それぞれ受ける権利を有する。 5 争点④(本件懲戒解雇が不法行為となるか否か及び原告の損害額)について認定事実によれば、遅くとも令和2年3月31日当時、Aの受け入れた外国人留学生の日本語能力レベルの問題について、C前学長と被告との間に顕著な対立があり、この対立 及び原告の損害額)について認定事実によれば、遅くとも令和2年3月31日当時、Aの受け入れた外国人留学生の日本語能力レベルの問題について、C前学長と被告との間に顕著な対立があり、この対立を背景に、被告は、C前学長に対し、学長として再任しないことの決定や退職慰労金の見送り等の措置をしたと認められる。他方、前述のとおり、原告は、C前学長によるD外部理事の訪問及び本件記者会見に同行したにすぎず、本件各投稿も、被告に対する反対意見等を暗に示すものとはいえるものの、具体的な事実を摘示するものとまではいえず、このような原告の行為の影響力は、当時学長であったC前学長による本件交付書面の交付や本件記者会見の実施と比較すれば、極めて微弱であるといえる。また、教授会への欠席は、従前、問題とされていなかった。しかし、被告が、本件懲戒解雇をするか否かを決める際に、この点を慎重に検討した形跡はうかがわれない。そうすると、被告は、対立していたC前学長が主体的に行った本件交付書面の交付や本件記者会見の実施を殊更重視して、同行したにすぎない原告に対して本件懲戒解雇をしたものといわざるを得ない。このことに照らせば、本件懲戒解雇は不法行為に当たるというべきである。 そして、原告が、本件懲戒解雇により、その意思に反して大学教授としての講義を行う機会を失ったこと等を考慮すれば、本件懲戒解雇により原告が一定程度の精神的苦痛を被ったことが認められる。他方で、原告が被告との間で雇用契約上の権利を有する地位にあることが確認され、本件懲戒解雇後の賃金が支払われることにより、原告の精神的苦痛も相当程度慰謝されるものと認められる。 以上を踏まえれば、本件懲戒解雇による慰謝料として50万円を認めるのが相当であり、これに弁護士費用5万円を加えた合計55万円の損害が認められる 精神的苦痛も相当程度慰謝されるものと認められる。 以上を踏まえれば、本件懲戒解雇による慰謝料として50万円を認めるのが相当であり、これに弁護士費用5万円を加えた合計55万円の損害が認められる。 第5 結論以上によれば、原告の請求は、主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこの限度で認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却することとし、仮執行の宣言につき同法259条1項を適用して、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官中野郎 裁判官永田大貴 裁判官田中大地(別紙1ないし3は掲載省略) 別紙就業規則第2条(教職員の定義) 1 この規則において、「教職員」とは、定められた手続きを経て採用された学長・教授・准教授・講師・助教及び幼稚園長・幼稚園教諭・養護教諭並びに事務職員・技術職員・用務職員をいう。 第10条(定年) 1 大学教員は満63歳、その他の教職員は満60歳に達した日の属する年度の終わりをもって定年とする。 ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、学校法人A特任教職員就業規程により、退職日の翌日から1年ごとの雇用契約を更新することにより満65歳まで継続雇用する。 2 前項により満65歳まで継続雇用した大学教員については、学園が必要と認めた場合、学校法人A特任教職員就業規程により満68歳まで再雇用することがある。 3 学園が特に必要と認めた場合は、本条第1項但書及び第2項に定める教職員の上限年齢を超えて雇用契約を更新し再雇用することがある。 第12条(解雇)教職員が次の各号の1に該当する場 ある。 3 学園が特に必要と認めた場合は、本条第1項但書及び第2項に定める教職員の上限年齢を超えて雇用契約を更新し再雇用することがある。 第12条(解雇)教職員が次の各号の1に該当する場合は、理事長の選択により30日前に予告するか、又は30日分の平均賃金を支給し解雇する。 ⑴ 勤務成績が著しく不良な場合⑶ 前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合第26条(遵守事項)教職員は、服務にあたって、次の事項を守らなければならない。 ⑵ 学園の名誉を重んじ、教職員としての品位を保つこと。 ⑶ 勤務規程及び関係規則及び上司の職務上の指示に忠実に従うこと。 第28条(禁止事項) 教職員は次の各号の1に該当する行為をしてはならない。 ⑵ 職務上の権限を超えてこれを濫用する行為⑶ 職務上知り得た秘密をもらし、又は学園の不利益となるおそれのある事実を他に告げること第33条(懲戒)教職員が次の各号の1に該当する場合は、懲戒処分に付し譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職又は懲戒解雇にする。 ⑵ 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合⑶ 第4章(第26条、第28条等をいう。)に定める服務規律に違反した場合⑷ 教職員としての品位を失い、学園の名誉をけがす非行のあった場合第34条(懲戒の種類及び方法)⑹ 懲戒解雇は予告期間を設けないで、即時解雇する。この場合、退職手当は支給しない。 第35条(表彰及び懲戒の決定) 1 表彰及び懲戒の決定は、予め学園内に設けられた「賞罰委員会」の審議を経て理事長がこれを行う。 以上 別紙給与規程第5条(給料の支給方法) 1 給料の計算期間は月の1日から末日までとし、その給料の支給日は 設けられた「賞罰委員会」の審議を経て理事長がこれを行う。 以上 別紙給与規程第5条(給料の支給方法) 1 給料の計算期間は月の1日から末日までとし、その給料の支給日は毎月21日とする。ただし、その日が休日にあたるときは、その前日とする。 第12条(期末手当) 1 期末手当は、6月1日、12月1日のそれぞれの基準日に在勤する教職員に対して支給する。支給日はそれぞれ基準日から起算して1ヶ月以内とする。 3 期末手当の額は、それぞれ基準日現在において、教職員が受けるべき給料及び扶養手当、地域手当の額を基礎とし、別表8による額とする。 4 期末手当は、学校法人A教職員人事考課規程第7条の規定により増減することがある。増減の範囲は、別表8-2のとおりとする。 別表8及び別表8-2別紙1(別表8期末手当支給基準表及び別表8-2人事考課結果に伴う期末手当支給率)記載のとおり。 以上 別紙特任就業規程第2条(特任教職員の定義)特任教職員とは、「本件就業規則」第2条に規定された教職員で、次の各号に該当するものをいう。 ⑴ 学校法人A(以下「学園」という。)及び学園以外の職場において定年又は定年に準じ退職した後、雇用された教職員第7条(給与)特任教職員の給与及び諸手当は、別に定める基準に基づき、本人の経験、年齢等を勘案し個別に決定する。 以上 別紙特任給与内規第2条(給料及び手当の種類)前条の特任教職員に支給する給料及び手当は、次のとおりとする。 給料、通勤手当、期末手当、寒冷地手当第3条(給料の額)給料の額は、それぞれ次の通りとする。 1 本件就業規程第2条第1号に規定する大学の職員(1号特任教員)給料月額 240千円、25 料、通勤手当、期末手当、寒冷地手当第3条(給料の額)給料の額は、それぞれ次の通りとする。 1 本件就業規程第2条第1号に規定する大学の職員(1号特任教員)給料月額 240千円、250千円、260千円の3区分とする。 第5条(通勤手当の額)通勤手当として、定期券の実費額を支給する。 第6条(期末手当の額)期末手当は、6月1日及び12月1日の基準日に在勤する者に対し、それぞれ、6月に給料月額の1.0ヶ月分、12月に1.8ヶ月分、年間合計2.8ヶ月分相当額を支給する。 第7条(寒冷地手当の額)11月1日の基準日に在勤する者に対し、以下の区分で支給する。但し、支給後、翌年2月末日までに退職した場合は、「本件給与規程別表9④」に定める金額を返納しなければならない。 扶養親族のある世帯主 65,000円扶養親族のない世帯主 38,000円その他 22,000円以上
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