昭和42(あ)47 暴力行為等処罰に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
昭和48年3月22日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各上告を棄却する。          理    由  弁護人石島泰、同斉藤一好、同田口康雅の上告趣意第一点は、原判決は憲法二三 条の解釈を誤つている旨主張する。しかしながら

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主文 本件各上告を棄却する。 理由 弁護人石島泰、同斉藤一好、同田口康雅の上告趣意第一点は、原判決は憲法二三条の解釈を誤つている旨主張する。しかしながら、憲法二三条は学問の自由を保障するところ、原判決は、学生の集会と憲法二三条の関係については、大学の許可した学生集会であつても、真に学問的研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をする場合には、大学の有する特別の自由と自治は享有しない旨の判断を示すにすぎないものであつて、所論のうち、原判決の右判断が憲法二三条に違反すると主張する点は、被告人Aの関係においては、最高裁判所の差戻判決(昭和三一年(あ)第二九七三号同三八年五月二二日大法廷判決・刑集一七巻四号三七〇頁)の破棄理由とした法律上の判断(裁判官横田喜三郎外五名のいわゆる多数意見および各補足意見の一致する点をいう。以下同じ。)に従つてした原判決の判断を非難するものであり、適法な上告理由とならず、また、被告人Bの関係においては、憲法二三条を原判決のように解釈すべきことは、前記大法廷判決の明らかにするところであるから、所論は理由がない。その余の所論は、原判決の判断していない事項、または、判決の結論に影響のない原判決の判断について憲法違反を主張するものであつて、適法な上告理由とならない。 同第二点は、原判決は、憲法二三条の「学問の自由」の解釈にあたつて、警察官が警備情報収集活動のため、本件以前から継続的に学内集会に立ち入つていた事実を切り離して、形式論理的抽象的に判断した結果、同条の解釈を誤つたと主張する。 しかしながら、原判決は、前記大法廷判決の趣旨に従つて、本件C大劇団Dの演劇発表会(以下本件集会という。)は、真に学問的な研究または発表のためのものでなく、 した結果、同条の解釈を誤つたと主張する。 しかしながら、原判決は、前記大法廷判決の趣旨に従つて、本件C大劇団Dの演劇発表会(以下本件集会という。)は、真に学問的な研究または発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をしたものであり、かつ半公開的な- 1 -ものであつたということを理由に、大学における学問の自由を享受しえないものである旨の判断をしているのであるから、憲法二三条の学問の自由の解釈にあたつて、所論の主張するような警察の活動を考慮する必要は認められず、したがつて、論旨はその前提を欠き、適法な上告理由とならない。 同第三点は、原判決は、憲法二三条の「学問の自由」の解釈にあたつて、本件集会への警察官の立入りの当否を考慮しなかつたため、同条の解釈を誤つたと主張する。しかし、原判決は、前記のとおり、本件集会は、憲法二三条の学問の自由を享受しえない性格のものであつたと判断しているのであるから、同条の解釈にあたつて、警察官の立入りの当否を考慮する必要は認められず、したがつて所論はその前提を欠き、適法な上告理由とならない。 同第四点のうち、憲法二三条違反を主張する点は、本件集会が実社会の政治的社会的活動にあたらないという原判決の認定しない事実を前提とするものであつて、適法な上告理由とならない。その余の論旨は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 同第五点は、単なる法令違反の主張であつて、同条の上告理由にあたらない。 同第六点のうち、憲法三九条違反を主張する点は、被告人Aに対する旧第一、二審判決および被告人Bに対する旧第一審判決は、それぞれ上級審によつて全部破棄されているのであり、したがつて、差戻後の第一審が審判の対象とした各起訴状記載の行為は、いまだ無罪とされたものでも、また刑 審判決および被告人Bに対する旧第一審判決は、それぞれ上級審によつて全部破棄されているのであり、したがつて、差戻後の第一審が審判の対象とした各起訴状記載の行為は、いまだ無罪とされたものでも、また刑事上の責任を問われたものでもないのであるから、所論はその前提を欠き、その余は、実質はすべて単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由とならない。 同第七点は、憲法違反を主張するが、実質はすべて単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由とならない。 同第八点は、憲法三七条違反を主張する点もあるが、実質はすべて単なる法令違- 2 -反の主張であつて、適法な上告理由とならない。 同第九点ないし第一一点は、いずれも単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 同第一二点、第一三点は、いずれも事実誤認の主張であつて、同条の上告理由にあたらない。 よつて、刑訴法四〇八条により、主文のとおり判決する。 この判決は、被告人Aに関する部分につき、裁判官岸盛一の反対意見があるほか、全裁判官の一致した意見によるものである。 裁判官岸盛一の反対意見は、次のとおりである。 私は、上告趣意第六点のうち、原判決が、被告人Aに関する公訴事実(二)、すなわち、同被告人の本冨士警察署巡査Dに対する暴行の事実について審判したことは、憲法三九条に違反するものであると指摘する点は、理由があると考えるものである。 そこで、右の論点に関する本件の経過を摘記すると次のとおりである。 被告人Aに対しては、右の公訴事実(二)のほか、公訴事実(一)として、同被告人の同署巡査Fに対する暴行の事実が併合罪の関係にあるものとして起訴されたところ、第一次第一審は、F巡査に対する暴行のうち、その一部についてだけ構成要件該当性を認めたが、その他の事実はすべて犯罪の証明 の同署巡査Fに対する暴行の事実が併合罪の関係にあるものとして起訴されたところ、第一次第一審は、F巡査に対する暴行のうち、その一部についてだけ構成要件該当性を認めたが、その他の事実はすべて犯罪の証明がないとしたうえ、右の構成要件該当性を認めた事実についても、違法性阻却事由を認めて、同被告人に対して公訴事実(一)(二)の全部について無罪の判決をした。この判決に対して、検察官から、事実誤認および法令違反を理由として控訴申立がなされたが、第一次控訴審は検察官の控訴を棄却し、これに対して検察官は、右判決全部を不服として上告の申立をしたのであるが、上告趣意書では憲法違反および法令違反の主張があつただけで、事実誤認についてはなんらの主張もされなかつた。第一次上告審は、- 3 -憲法違反の論旨を理由ありとして、原判決および第一審判決を破棄し本件を第一審に差し戻したのであるが、その破棄理由として、憲法二三条の学問の自由の保障と大学自治の原則との関係についての憲法判断を示し、原判決には憲法の解釈についての誤があることを指摘しただけであつた(ただ、石坂裁判官の補足意見には、原判決には事実誤認の疑もあるということが指摘されている。)。差戻後の第一審は、被告人Aに対する公訴事実(一)(二)の全部が審理の対象となると解したうえ、右の全部について有罪と認め併合罪として処断したが、控訴審もこれを支持して同被告人からの控訴申立を棄却し、この判決に対して同被告人から本件上告の申立がなされたのである。 以上の経過からして、差戻後の第一、二審が、被告人Aについての公訴事実(二)をも審理の対象と解したことが正当であつたかどうかが問題となつているのである。 多数意見は、被告人Aに対する差戻前の第一、二審の判決は、第一次上告審によつて全部破棄されたのであるから、公訴事実(二) をも審理の対象と解したことが正当であつたかどうかが問題となつているのである。 多数意見は、被告人Aに対する差戻前の第一、二審の判決は、第一次上告審によつて全部破棄されたのであるから、公訴事実(二)の事実も、いまだ有罪無罪のいずれとも確定していないという。この見解は、判決の内容は、宣告された判決主文に凝結されているのであるから、第一次上告審の判決主文が、同被告人に関する差戻前の第一、二審判決を破棄して第一審に差し戻すという以上は、差戻後の審理の対象は、起訴の当初にもどつて公訴事実(一)(二)の全部におよぶものであるという理解にたつものと思われる。たしかに、判決が宣告されたからには、告知された主文の表示どおりの判決がなされたものとしなければならない。そして、もし、主文とその理由とのあいだにくいちがいがあつても理由を参酌してみだりに主文を変更して解釈することは許さるべきではない。このことは、法的安定性ならびに刑事手続の形式的確実性の要求するところであつて、多数意見の見解も理由のないことではない。 しかし、私は、法的安定性や形式的確実性の要請も、被告人の本質的利益の前に- 4 -は譲歩しなければならない場合があると考える。本件の場合、被告人Aについて、前記のように、第一次控訴審の判決に対して、検祭官は、部分を限らないで全部上告の申立をしたにもかかわらず、犯罪の証明なしとして無罪とされた公訴事実(二)については、上告趣意書においてなんら適法な上告理由の主張をせず、また、刑訴法四一一条三号にあたるとして上告審の職権発動を求めることもしなかつた。そうすると、右の部分については、上告趣意書提出期間内に上告趣意書を提出しなかつた場合と同様の法的効果(刑訴法三八六条一項一号、四一四条)を認めるべきであつて、公訴事実(二)については、犯罪の証明がないこ ると、右の部分については、上告趣意書提出期間内に上告趣意書を提出しなかつた場合と同様の法的効果(刑訴法三八六条一項一号、四一四条)を認めるべきであつて、公訴事実(二)については、犯罪の証明がないことを理由に無罪とした第一次第一審の判決を支持した第一次控訴審の判決部分は、上告趣意書提出期間の経過とともに実質的には確定したものといわざるをえない。したがつて、第一次上告審は、その判決主文において、公訴事実(二)に関する部分の検察官の上告を棄却する旨を明示すべきであつたのである(最高裁昭和三八年(あ)第九七四号同四三年一二月四日大法廷判決刑集二二巻一三号一四二五頁参照。)。私は、このような第一次上告審の判決主文の一部脱落という形式的瑕疵のために、すでに実質的に無罪が確定している公訴事実(二)について、被告人Aに対し重ねて刑事上の責任を問うべきではないと考える。けだし、あらためて説くまでもなく、刑事判決の既判力の効果は、ひとり判決における具体的な法的安定性のためばかりでなく、ひとたび確定判決をうけた被告人個人の利益の保護のためにも認められなければならないからである。 ところで、上級審によつて原判決が破棄されて差し戻された場合の上級審の判断の拘束力は、原判決破棄の直接の理由となつた判断事項以外に及ぶものではないと解すべきであるところ、本件において、第一次上告審が原判決を破棄した理由は、被告人Aに対する公訴事実(一)についての原審の判断には、憲法二三条に関する解釈の誤があるとするだけで、同公訴事実(二)についてはなんらの判断が示され- 5 -ていないことは、その判文上一見極めて明白であつて、差戻後の第一、二審は、右公訴事実(二)に関する限り、第一次上告審の判断に拘束されるいわれはないのであるから、すべからく免訴の裁判をすべきであつたのである。し とは、その判文上一見極めて明白であつて、差戻後の第一、二審は、右公訴事実(二)に関する限り、第一次上告審の判断に拘束されるいわれはないのであるから、すべからく免訴の裁判をすべきであつたのである。しかるに、差戻後の第一審が、右事実につき重ねて審判し、原審がこれを是認したことは、刑訴法三三七条一号に違反するばかりでなく、憲法三九条前段にも違反するものであり、当審としては、原判決中被告人Aに関する部分を全部破棄したうえ、同被告人に対する公訴事実(二)については免訴の裁判をするとともに、公訴事実(一)についてあらためて刑を量定すべきであると考えるものである。 昭和四八年三月二二日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官下田武三裁判官大隅健一郎裁判官藤林益三裁判官岸盛一裁判官岸上康夫- 6 -

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