平成23(ワ)10341 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年11月8日 大阪地方裁判所
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判決文本文36,583 文字)

平成24年11月8日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第10341号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年7月20日判決原告有限会社ケイ・ワイ・ティ同訴訟代理人弁護士三山峻司同井上周一同木村広行同松田誠司同訴訟代理人弁理士丸山敏之同補佐人弁理士久德高寛被告サンワサプライ株式会社同訴訟代理人弁護士平野和宏同訴訟代理人弁理士木村 厚 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)被告は,別紙製品目録記載1ないし3の各製品を販売し,輸入し又は販売の申出をしてはならない。 (2)被告は,前項の各製品を廃棄せよ。 (3)被告は,原告に対し,2278万円及びこれに対する平成23年8月25 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4)訴訟費用は被告の負担とする。 (5)仮執行宣言 2 被告主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記がない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,事務用木製机,会議用テーブル,木製書棚,間仕切,いす,ソファー,プラスチック並びに革製トレイ,シュレッダーの輸出入及 実(証拠等の掲記がない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,事務用木製机,会議用テーブル,木製書棚,間仕切,いす,ソファー,プラスチック並びに革製トレイ,シュレッダーの輸出入及び国内販売等を目的とする会社である。 被告は,コンピューター及びコンピューター附属機器の製造及び販売等を目的とする会社である。 (2)原告の有する特許権原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,各請求項に係る発明を併せて「本件各特許発明」という。また,本件特許に係る出願明細書を「本件明細書」という。)について,特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。 特許番号 3559501号発明の名称パソコン等の器具の盗難防止用連結具出願日平成12年5月12日登録日平成16年5月28日特許請求の範囲【請求項1】パソコン等の器具の本体ケーシングに開設された盗難防止用のスリットに 挿入される盗難防止用連結具であって,主プレートと補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,主プレートは,ベース板と,該ベース板の先端に突設した差込片と,該差込片の先端に側方へ向けて突設された抜止め片とを具え,補助プレートは,主プレートに対して,前記主プレートの差込片の突出設方向に沿ってスライド可能に係合したスライド板と,該スライド板を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設された回止め片とを具え,主プレートと補助プレートには,補助プレートを前進スライドさせ,差込片と回止め片とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されてい 片との重なりが外れるように突設された回止め片とを具え,主プレートと補助プレートには,補助プレートを前進スライドさせ,差込片と回止め片とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されていることを特徴とするパソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明1」という。)【請求項2】パソコン等の器具の本体ケーシングに開設された盗難防止用のスリットに挿入され,固定構造物への連結用ケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,主プレートと補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,主プレートは,ベース板と,該ベース板の先端に突設した差込片と,該差込片の先端に側方へ向けて突設された抜止め片とを具え,補助プレートは,主プレートに対して,前記主プレートの差込片の突出方向に沿ってスライド可能に係合したスライド板と,該スライド板を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設された回止め片とを具え,主プレートと補助プレートには,補助プレートを前進スライドさせ,差込片と回止め片とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されて おり,該係止部にケーブルを取り付け,又は錠を用いてケーブルを連結することを特徴とするパソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明2」という。)【請求項5】係止部は,差込片と回止め片とを重ねた状態のときに一致して貫通するようにベース板とスライド板に開設された孔であり,該孔に錠又はケーブルを通すことによって,主プレートと補助プレートとの相対的なスライドを妨げ は,差込片と回止め片とを重ねた状態のときに一致して貫通するようにベース板とスライド板に開設された孔であり,該孔に錠又はケーブルを通すことによって,主プレートと補助プレートとの相対的なスライドを妨げて固定される請求項1乃至請求項4の何れかに記載のパソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明5」という。)(3)構成要件の分説本件各特許発明は,以下のとおり分説することができる。 ア本件特許発明1A パソコン等の器具の本体ケーシングに開設された盗難防止用のスリットに挿入される盗難防止用連結具であって,B 主プレートと補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,C 主プレートは,ベース板と,該ベース板の先端に突設した差込片と,該差込片の先端に側方へ向けて突設された抜止め片とを具え,D 補助プレートは,主プレートに対して,前記主プレートの差込片の突出設方向に沿ってスライド可能に係合したスライド板と,該スライド板を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設された回止め片とを具え,E 主プレートと補助プレートには,補助プレートを前進スライドさせ, 差込片と回止め片とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されていることを特徴とするF パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 イ本件特許発明2G パソコン等の器具の本体ケーシングに開設された盗難防止用のスリットに挿入され,固定構造物への連結用ケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 主プレートと補助プレートとを,スリット の本体ケーシングに開設された盗難防止用のスリットに挿入され,固定構造物への連結用ケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 主プレートと補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,I 主プレートは,ベース板と,該ベース板の先端に突設した差込片と,該差込片の先端に側方へ向けて突設された抜止め片とを具え,J 補助プレートは,主プレートに対して,前記主プレートの差込片の突出方向に沿ってスライド可能に係合したスライド板と,該スライド板を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設された回止め片とを具え,K 主プレートと補助プレートには,補助プレートを前進スライドさせ,差込片と回止め片とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されており,該係止部にケーブルを取り付け,又は錠を用いてケーブルを連結することを特徴とするL パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 ウ本件特許発明5M 係止部は,差込片と回止め片とを重ねた状態のときに一致して貫通するようにベース板とスライド板に開設された孔であり,N 該孔に錠又はケーブルを通すことによって,主プレートと補助プレー トとの相対的なスライドを妨げて固定されるO 請求項1乃至請求項4の何れかに記載のパソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (4)本件特許に係る訂正請求原告は,特許無効審判(無効2011-800253)において,平成24年3月8日,以下の内容で本件特許に係る訂正請求(以下「本件訂正」といい,訂正後の発明を併せて「本件各訂正発明」という。)をした(甲13の1・2 審判(無効2011-800253)において,平成24年3月8日,以下の内容で本件特許に係る訂正請求(以下「本件訂正」といい,訂正後の発明を併せて「本件各訂正発明」という。)をした(甲13の1・2)。 ア本件特許発明1に係る訂正(訂正後の発明を「本件訂正発明1」という。)「差込片の突出設方向」とあるのを,「差込片の突出方向」と訂正する。 「差込片と重なり,」とあるのを,「差込片を挟んで重なり,」と訂正する。 「突設された回止め片」とあるのを「スライド板の先端に突設された一対の回止め片」と訂正する。 イ本件特許発明2に係る訂正(訂正後の発明を「本件訂正発明2」という。)「スライド板と,」とあるのを,「コ字状のスライド板と,」と訂正する。 「差込片と重なり,」とあるのを,「差込片を挟んで重なり,」と訂正する。 「突設された回止め片」とあるのを「スライド板の先端に突設された一対の回止め片」と訂正する。 ウ本件特許発明5に係る訂正(訂正後の発明を「本件訂正発明5」という。)「係止部は,」とあるのを,「スライド板はコ字状であって,主プレートがスライド可能に嵌まる凹部空間を形成し,係止部は,」と訂正する。 エ本件明細書の記載に係る訂正段落【0018】に「その儘。」とあるのを「その儘,」と訂正する。 (5)被告の行為被告は,遅くとも,平成20年6月ころから別紙製品目録記載1の製品(以 下「被告製品1」という。)を,平成22年1月ころから別紙製品目録記載2及び3の各製品(以下,それぞれ「被告製品2」及び「被告製品3」といい,これらを併せて「被告各製品」という。)を,それぞれ業として輸入し,販売している。 (6)被告各製品の構成被告各製品の構成は,別紙被告各製品 ,それぞれ「被告製品2」及び「被告製品3」といい,これらを併せて「被告各製品」という。)を,それぞれ業として輸入し,販売している。 (6)被告各製品の構成被告各製品の構成は,別紙被告各製品説明書記載のとおりである。 被告各製品の構成を,本件各特許発明の構成要件に対応して表現すると,次のとおりである(弁論の全趣旨)。 ア被告各製品の構成を,本件特許発明1の構成に対応して表現すると次のとおりである。 a パソコンの本体ケーシング(84’)に開設された盗難防止用のスリット(82')に挿入される盗難防止用連結具であって,b 主プレート(20’)と補助部材(40’)とを,後記差込片(24’)と後記突起部(44’)の重なりが生じている間,該スリット(82’)への挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができるように係合し且つ両プレート(20’)(40’)は分離不能に保持され,c 主プレート(20’)は,ベース板(22’)と,ベース板(22’)のうち前記盗難防止用連結具をスリットに挿入する際にスリット(82)に近くなる方の側に突設した差込片(24’)と,該差込片(24’)の先端に側方へ向けて突設された抜止め片(26’)とを具え,d 補助部材(40’)は,主プレート(20’)に対して,前記主プレート(20’)の差込片(24’)と補助部材(40’)に突設された突起部(44’)の重なりが生じている間,差込片(24’)の突出方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができるように係合した回動板(42’)と,該回動板(42’)を差込片(24’)の突出方向にスライドさせたときに,差込片(24’)と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片(24’)との重なりが外れるように突設された突起部(44’)とを具え, (42’)を差込片(24’)の突出方向にスライドさせたときに,差込片(24’)と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片(24’)との重なりが外れるように突設された突起部(44’)とを具え, e 主プレート(20’)と補助部材(40’)には,差込片(24’)と突起部(44’)の重なりが生じている間,補助部材(40’)を,スリット(82’)への挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向にずらし,差込片(24’)と突起部(44’)とを重ねた状態で,互いに対応一致する係止部(28’)(48’)が形成されているf パソコンの盗難防止用連結具。 イ被告各製品の構成を,本件特許発明2の構成に対応して表現すると次のとおりである。 g パソコン(80’)等の器具の本体ケーシング(84’)に開設された盗難防止用のスリット(82’)に挿入され,固定構造物(88’)への連結用ケーブル(72’)とパソコン(80’)等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,h 主プレート(20’)と補助部材(40’)とを,後記差込片(24’)と後記突起部(44’)の重なりが生じている間,該スリット(82’)への挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができるように係合し且つ両プレート(20’)(40’)は分離不能に保持され,i 主プレート(20’)は,ベース板(22’)と,ベース板(22’)のうち前記盗難防止用連結具をスリットに挿入する際にスリット(82)に近くなる方の側に突設した差込片(24’)と,該差込片(24’)の先端に側方へ向けて突設された抜止め片(26’)とを具え,j 補助部材(40’)は,主プレート(20’)に対して,前記主プレート(20’)の差込片(24’)と補助部材(40’)に突設された突 の先端に側方へ向けて突設された抜止め片(26’)とを具え,j 補助部材(40’)は,主プレート(20’)に対して,前記主プレート(20’)の差込片(24’)と補助部材(40’)に突設された突起部(44’)の重なりが生じている間,差込片(24’)の突出方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができるように係合した回動板(42’)と,該回動板(42’)を差込片(24’)の突出方向にスライドさせたときに,差込片(24’)と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片(24’)との重なりが外れるように突設された突起部(44’)とを具え, k 主プレート(20’)と補助部材(40’)には,差込片(24’)と突起部(44’)の重なりが生じている間,補助部材(40’)を,スリット(82’)への挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向にずらし,差込片(24’)と突起部(44’)とを重ねた状態で,互いに対応一致する係止部(28’)(48’)が形成されており,該係止部(28’)(48’)にケーブル(72’)を取り付け,又は錠(70’)を用いてケーブル(72’)を連結することを特徴とするl パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 ウ被告各製品の構成を,本件特許発明5の構成に対応して表現すると次のとおりである。 m 係止部(28’)(48’)は,差込片(24’)と突起部(44’)とを重ねた状態のときに一致して貫通するようにベース板(22’)と回動板(42’)に開設された孔(36’)(56’)であり,n 該孔(36’)(56’)に錠(70’)又はケーブル(72’)を通すことによって,主プレート(20’)と補助部材(40’)とは,スリット(82’)への挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向にずれることを妨げて固定 6’)に錠(70’)又はケーブル(72’)を通すことによって,主プレート(20’)と補助部材(40’)とは,スリット(82’)への挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向にずれることを妨げて固定されるo 前記構成a~f又は構成g~lを備えるパソコン等の器具の盗難防止用連結具。 2 原告の請求原告は,被告に対し,本件特許権に基づき,被告各製品の販売等の差止め及び廃棄を,不法行為に基づき,2278万円の損害賠償及びこれに対する平成23年8月25日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)被告各製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するかア構成要件Bの充足性 (争点1-1) イ構成要件Cの充足性 (争点1-2)ウ構成要件Dの充足性 (争点1-3)エ構成要件Eの充足性 (争点1-4)(2)被告各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するかア構成要件Hの充足性 (争点2-1)イ構成要件Iの充足性 (争点2-2)ウ構成要件Jの充足性 (争点2-3)エ構成要件Kの充足性 (争点2-4)(3)被告各製品が本件特許発明5の技術的範囲に属するか (争点3)(4)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるかア本件各特許発明は,出願日前の他の特許出願である国際公開公報WO01/71132(以下「乙8公報」という。)に記載された発明(以下「乙 特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるかア本件各特許発明は,出願日前の他の特許出願である国際公開公報WO01/71132(以下「乙8公報」という。)に記載された発明(以下「乙8発明」という。)と同一であるか(特許法29条の2) (争点4-1)イ本件各特許発明は,当業者が,出願前に頒布された特表平10-513516号公報(以下「乙13公報」という)に記載された発明(以下「乙13発明」という。)に基づいて容易に発明することができたものであるか(争点4-2)ウ本件特許には明確性要件違反があるか (争点4-3)エ本件特許にはサポート要件違反又は実施可能要件違反があるか(争点4-4)(5)訂正の再抗弁(本件訂正により,争点4-1及び4-2の無効理由が解消されるか。) (争点5)(6)本件各訂正発明は,当業者が,出願前に頒布された米国特許公報第6038891号(以下「乙15公報」という。)に記載された発明(以下「乙15発明」という。)に基づいて容易に発明することができたものであるか (争点6)(7)損害額 (争点7)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(構成要件Bの充足性)について【原告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Bを充足する。 (1)構成要件Bの意義ア 「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合」の意義(ア) 一般的意義一般に,「沿う」 以下のとおり,被告各製品は,構成要件Bを充足する。 (1)構成要件Bの意義ア 「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合」の意義(ア) 一般的意義一般に,「沿う」とは,「線条的なもの,また線条的に移動するものに,近い距離を保って離れずにいる」ことをいうから,「スリットへの挿入方向に沿って」とは,「スリットへの挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に」ということをいう。 また,一般に,「スライド」とは,「滑ること,滑らすこと,ずらすこと」などを意味するから,「スライド可能に係合」とは,ずらすことができるように係合されていることをいう。 さらに,「スライド可能に係合」という構成は,回止め片をスリットに押し込んで(挿入して),差込片と重ねるための構成であり,回止め片と差込片の重なりが生じている場面に限って技術的意義を有するものである。 そうすると,「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合」とは,「差込片と回止め片の重なりが生じている間,スリットへの挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができるように係合」することをいうものと解すべきである。 (イ) 当業者が適宜採用しうる構成を含むこと等 本件明細書において,「スライド可能」の具体的な構成については特に限定がないから,公知技術等,当業者が適宜採用しうるあらゆる構成が含まれるものである。 複数の部材を「スライド可能に係合」する手段として,複数の部材をピン等で係合する構成は,技術分野を問わない慣用手段の一つであり,自明な構成である。 本件明細書に記載された実施例は,補助プレートのピン孔に,主プレートの長孔を貫通したスプリングピンを嵌めるという構成を2組備えるものである。これを1組に 用手段の一つであり,自明な構成である。 本件明細書に記載された実施例は,補助プレートのピン孔に,主プレートの長孔を貫通したスプリングピンを嵌めるという構成を2組備えるものである。これを1組にするだけで,「主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成」に至る。 したがって,当業者が,複数の部材を「スライド可能に係合」する手段として,複数の部材を1点においてピンないしヒンジ等で係合する構成を採用することに,格別の困難はない。 (ウ) 後記被告の主張(1)ア(ウ)に対する反論原告は,平成16年3月15日付け意見書において,「スリットへの挿入方向を軸として相対的に回転可能な構成」について「相対的に回転可能な構成」と表現し,これと本件特許発明の構成が異なる旨述べたにすぎない。 「主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成」について,本件特許発明の技術的範囲から除外したものではない。 イ 「分離不能に保持」の意義「分離不能に保持」とは,主プレートと補助プレートを離脱不能にする構成を広く含むものであり,公知技術等,当業者が適宜採用しうるあらゆ る構成が含まれる。 主プレートと補助プレートを1つのピンで分離不能に係合する構成は,周知慣用手段である。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Bの充足ア被告各製品の「主プレート(20’)」及び「補助プレート(40’)」は,本件特許発明1の「主プレート(20)」及び「補助プレート(40)」に,それぞれ相当する。 イ被告各製品の主プレートと補助プレートは,「差込片と突起部の重なりが生じている間,該スリットへ 」は,本件特許発明1の「主プレート(20)」及び「補助プレート(40)」に,それぞれ相当する。 イ被告各製品の主プレートと補助プレートは,「差込片と突起部の重なりが生じている間,該スリットへの挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができるように係合」しており,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合するものである。 ウ被告各製品は,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成であり,「分離不能に保持」されたものである。 【被告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Bを充足しない。 (1)構成要件Bの意義ア 「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合」の意義(ア) いわゆる機能的クレームであること上記構成は,いわゆる機能的クレームであるから,本件明細書等に開示された具体的な構成に示されている技術的思想に基づいて技術的範囲を確定すべきである。本件明細書等に記載された実施例に限定されないとしても,本件明細書等の記載から当業者が容易に実施できる発明でなければ,技術的範囲には含まれない。 (イ) 本件明細書の記載等本件明細書には,実施例として,補助プレートが主プレートに対しス リットの挿入方向と終始平行な直線方向にスライドする構造の連結具が開示されているのみであり,それ以外にスライド可能に係合する具体的な解決手段・構成は開示されていない。 また,「沿って」という単語の一般的な意味からしても,挿入方向と終始平行な直線方向をいうものである。 主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成を採用するためには,両プレートの係合構造を本件明 線方向をいうものである。 主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成を採用するためには,両プレートの係合構造を本件明細書に記載された実施例と全く別の構造にしなければならず,当業者が容易に実施することができるものではない。 (ウ) 意識的除外原告は,平成15年12月12日付けで拒絶理由通知を受けたことから,平成16年3月15日付けで手続補正をし,構成要件Eに「補助プレートを前進スライドさせ」る構成を追加した。 原告は,同日付けで意見書を提出しており,同意見書には,「引用例2のロック手段(12)は,第1ストッパ部材(17)と第2ストッパ部材(18)が『相対的に回転可能』な構成であり,これらを一列にした状態で小孔(10)に挿入した後,キー(15)と連動する第1ストッパ部材(17)を90°回転させて,ロックを行う構成です。引用例2のロック手段(12)は,第1ストッパ部材(17)と第2ストッパ部材(18)を相対的に回転させる構成であるのに対し,本発明の盗難防止用連結具(10)は,主プレート(20)と補助プレート(40)がスライド可能である点が相違します。」という記載がある。 上記記載によれば,主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成は,除外されている。 イ 「分離不能に保持」の意義(ア) いわゆる機能的クレームであること「分離不能に保持」という構成も,いわゆる機能的クレームであるから,前記ア(ア)と同様に,本件明細書等に開示された具体的な構成に示されている技術的思想に基づいて技術的範囲を確定すべきである。 (イ) 本件明細書の記載等前記 いわゆる機能的クレームであるから,前記ア(ア)と同様に,本件明細書等に開示された具体的な構成に示されている技術的思想に基づいて技術的範囲を確定すべきである。 (イ) 本件明細書の記載等前記ア(イ)のとおり,主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成は,本件特許発明1の技術的範囲には含まれない。 (ウ) 手続補正の経過(意識的除外)原告は,平成16年3月15日付けで手続補正をし,「分離不能に保持」という構成を追加した。 原告は,同日付けで意見書を提出し,同意見書には,「この補正は,本件当初明細書等の【0021】や図2等に基づくものであり,新規事項の追加ではありません。」という記載がある。 そして,本件明細書の【0021】や図2等には,補助プレートが主プレートに対し直線方向にスライドする構造の連結具が開示されているだけであるから,「分離不能に保持」には,主プレートと補助プレートとの係合手段として,補助プレートが主プレートに対してピンを中心とした円の円弧方向に移動する構成は含まれない。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Bの非充足被告各製品は,主プレートと短辺方向の断面形状がコ字状の補助部材とを,ピンによって一端で枢止し,これにより,パソコンのスリットへ向けて,ピンを中心とした円の円弧方向に,前記補助部材が回転移動する構成のものである。 したがって,構成要件Bを充足するものではない。 2 争点1-2(構成要件Cの充足性)について【原告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Cを充足する。 (1)「ベース板の先端に突設した差込片」の意義「ベース板の先端」とは,ベース板のうち,連結具をス 充足性)について【原告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Cを充足する。 (1)「ベース板の先端に突設した差込片」の意義「ベース板の先端」とは,ベース板のうち,連結具をスリットに挿入する際にスリットに近くなる方の側をいうものである。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Cの充足ア被告各製品の「ベース板(22’)」は本件特許発明1の「ベース板(22)」に,被告各製品の「差込片(24’)」は本件特許発明1の「差込片(24)」に,被告各製品の「抜止め片(26’)」は本件特許発明1の「抜止め片(26)」に,それぞれ相当する。 イ被告各製品の差込片は,ベース板のうち被告各製品をスリットに挿入する際にスリットに近くなる方の側に突設されているから,構成要件Cを充足する。 【被告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Cを充足しない。 (1)「ベース板の先端に突設した差込片」の意義本件明細書の図2等には,差込片がベース板の短辺部に設けられているものが記載されており,他に「ベース板の先端」に関する記載はない。 したがって,「ベース板の先端に突設した差込片」という構成は,差込片がベース板の短辺部に設けられているものに限られる。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Cの非充足被告各製品の差込片は,ベース板の長辺部に突設されているから,構成要件Cを充足しない。 3 争点1-3(構成要件Dの充足性)について【原告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Dを充足する。 (1)「差込片の突出設方向に沿ってスライド可能」の意義構成要件B(前記1【原告の主張】(1))と同様に,上記構成は,「差込片と回止め片の重なりが生じている間,差込片の突出設方向と近い距離を保 )「差込片の突出設方向に沿ってスライド可能」の意義構成要件B(前記1【原告の主張】(1))と同様に,上記構成は,「差込片と回止め片の重なりが生じている間,差込片の突出設方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらすことができる」ことをいうものである。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Dの充足性被告各製品の「スライド板(42')」は本件特許発明1の「スライド板(42)」に,被告各製品の「回止め片(44')」は本件特許発明1の「回止め片(44)」に,それぞれ相当する。 したがって,前記1【原告の主張】(2)と同様に,構成要件Dを充足する。 【被告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Dを充足しない。 (1)「スライド」の意義構成要件B(前記1【被告の主張】(1))と同様に,構成要件Dにおける「スライド」の意義も,補助部材が主プレートの差込片の突出方向と終始平行な直線方向にスライドすることをいう。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Dの非充足前記1【被告の主張】(2)と同様に,被告各製品の補助部材は,ピンを中心とした円の円弧方向に回転移動するものであるから,構成要件Dを充足しない。 4 争点1-4(構成要件Eの充足性)について【原告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Eを充足する。 (1)「前進スライド」の意義主プレートと補助プレートは,「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合」しているから,「補助プレートを前進スライドさせ」とは,補助プレートを「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド」させることをいう。 よって,前記1【原告の主張】(1)と同様に,上記構成も,「差込片と回止め片の重なりが生じている間 とは,補助プレートを「スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド」させることをいう。 よって,前記1【原告の主張】(1)と同様に,上記構成も,「差込片と回止め片の重なりが生じている間,補助プレートを,スリットへの挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらす」ことをいうものである。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Eの充足被告各製品の「係止部(28')(48')」は,本件特許発明1の「係止部(28)(48)」に相当する。 したがって,前記1【原告の主張】(2)と同様に,構成要件Eを充足する。 【被告の主張】以下のとおり,被告各製品は,構成要件Eを充足しない。 (1)「前進スライド」の意義構成要件B(前記1【被告の主張】(1))と同様に,構成要件Dにおける「スライド」の意義も,補助部材が主プレートの差込片の突出方向と終始平行な直線方向にスライドすることをいう。 (2)被告各製品の構成及び構成要件Eの非充足前記1【被告の主張】(2)と同様に,被告各製品の補助部材は,ピンを中心とした円の円弧方向に回転移動するものであるから,構成要件Eを充足しない。 5 争点2-1(構成要件Hの充足性)について【原告の主張】前記1【原告の主張】と同様である。 【被告の主張】前記1【被告の主張】と同様である。 6 争点2-2(構成要件Iの充足性)について【原告の主張】前記2【原告の主張】と同様である。 【被告の主張】前記2【被告の主張】と同様である。 7 争点2-3(構成要件Jの充足性)について【原告の主張】前記3【原告の主張】と同様である。 【被告の主張】前記3【被告の主張】と同様である。 8 争点2-4(構成要件Kの充足性)について 2-3(構成要件Jの充足性)について【原告の主張】前記3【原告の主張】と同様である。 【被告の主張】前記3【被告の主張】と同様である。 8 争点2-4(構成要件Kの充足性)について【原告の主張】前記4【原告の主張】と同様である。 【被告の主張】前記4【被告の主張】と同様である。 9 争点3(被告各製品が本件特許発明5の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】以下のとおり,被告各製品は,本件特許発明5の技術的範囲に属するものである。 (1)構成要件M及びNの充足被告各製品の「孔(36’)」は本件特許発明5の「孔(36)」に,被告各製品の「孔(56’)」は本件特許発明5の「孔(56’)」に,それぞれ相当する。 前記1【原告の主張】(1)及び前記5【原告の主張】と同様に,「スライド」 とは,「差込片と回止め片の重なりが生じている間,補助プレートを,スリットへの挿入方向と近い距離を保って離れずにいる方向に,ずらす」ことをいい,被告各製品は,この構成を充足するものである。 (2)構成要件Oの充足前記のとおり,被告各製品は,本件特許発明1及び2の技術的範囲に属するものである。 【被告の主張】以下のとおり,被告各製品は,本件特許発明5の技術的範囲に属するものではない。 (1)構成要件M及びNの非充足前記1【被告の主張】(1)及び前記5【被告の主張】と同様に,「スライド」とは,「主プレートの差込片の突出方向と終始平行な直線方向にスライドする」ことをいうところ,被告各製品は,補助部材が主プレートに対してピンを中心とした円弧方向に移動するものであるから,これらを充足しない。 (2)構成要件Oの非充足前記1ないし8のとおり,被告各製品は,本件特許発明1又 告各製品は,補助部材が主プレートに対してピンを中心とした円弧方向に移動するものであるから,これらを充足しない。 (2)構成要件Oの非充足前記1ないし8のとおり,被告各製品は,本件特許発明1又は2の技術的範囲に属するものではない。 争点4-1(本件各特許発明は,乙8発明と同一であるか)について【被告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,乙8発明と同一である。 (1)乙8発明乙8公報には,以下の発明が記載されている。 ア乙8-1発明A パソコン等の器具の外側壁に開設された盗難防止用のスロット内に挿入される盗難防止用連結具であって, B 主部材と補助部材とを,スロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両部材はリベットにより結合され,C 主部材は,第1部材と,第1部材の底辺から突設した差込片と,差込片の先端に側方に向けて突設された抜け止め片とを具え,D 補助部材は,主部材に対して,主部材の差込片の突出方向に沿ってスライド可能に係合した第2部材と,第2部材を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設されたピンとを具え,E 主部材と補助部材には,補助部材を前進スライドさせ,差込片とピンとを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に,2つの係止部が形成されているF パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 イ乙8-2発明G パソコン等の器具の外側壁に開設された盗難防止用のスロット内に挿入され,固定構造物への連結用のケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 主部材と補助部材とを,スロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且 内に挿入され,固定構造物への連結用のケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 主部材と補助部材とを,スロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両部材はリベットにより結合され,I 主部材は第1部材と,第1部材の底辺から突設した差込片と,差込片の先端に側方に向けて突設された抜け止め片とを具え,J 補助部材は,主部材に対して,主部材の差込片の突出方向に沿ってスライド可能に係合した第2部材と,第2部材を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設されたピンとを具え,K 主部材と補助部材には,補助部材を前進スライドさせ,差込片とピン とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に2つの係止部が形成されており,同係止部にケーブルを取り付けるL パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 ウ乙8-5発明M 2つの係止部は,差込片とピンとを重ねた状態のときに一致して貫通するように第1部材と第2部材に開設された2つの孔であり,N 同孔にケーブルを通すことによって,主部材と補助部材との相対的なスライドを妨げて固定されるO パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (2)乙8発明と本件各特許発明との対比ア乙8-1発明と本件特許発明1との対比乙8-1発明の構成と本件特許発明1の各構成要件は,いずれも共通であり,相違点はない。 イ乙8-2発明と本件特許発明2との対比乙8-2発明の構成と本件特許発明2の各構成要件は,いずれも共通であり,相違点はない。 ウ乙8-5発明と本件特許発明5との対比乙8-5発明の構成と本件特許発明5の各構成要件は,いずれも共通であり,相違点はない。 特許発明2の各構成要件は,いずれも共通であり,相違点はない。 ウ乙8-5発明と本件特許発明5との対比乙8-5発明の構成と本件特許発明5の各構成要件は,いずれも共通であり,相違点はない。 エ後記【原告の主張】に対する反論乙8公報の図1等には,L字状の第1部材と第2部材が記載されているものの,これらは好ましい実施形態の図示にすぎず,第1部材と第2部材の形状はL字状に限定されない。 また,L字状でも板状部材であり,「プレート」であることには変わりがない。 【原告の主張】本件特許発明1の構成要件B,本件特許発明2の構成要件H及び本件特許発明5の構成要件Nの「主プレート」と「補助プレート」は,「プレート」,すなわち基本形状が平板状である。 乙8発明の「主部材」と「補助部材」は,第1面と第2面とが直角に折曲された部材であるから,「プレート」に相当しない。 したがって,本件各特許発明は,乙8発明と同一のものではない。 11 争点4-2(本件各特許発明は,当業者が,乙13発明に基づいて容易に発明することができたものである)について【被告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,乙13発明に基づいて容易に発明することができたものである。 (1)乙13発明乙13公報には,以下の発明(乙13発明)が記載されている。 ア乙13-1発明A パソコン等の器具の壁に開設された盗難防止用のスロット内に挿入される盗難防止用連結具であって,B 固定心棒とロック心棒とを,スロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し,C 固定心棒は,本体部と,本体部の先端に突設した首部と,首部の先端に側方に向けて突設された頭部とを具え,D ロック心棒は,固定心棒に対 ットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し,C 固定心棒は,本体部と,本体部の先端に突設した首部と,首部の先端に側方に向けて突設された頭部とを具え,D ロック心棒は,固定心棒に対して,固定心棒の首部の突出方向に沿ってスライド可能に係合した本体部と,本体部を首部の突出方向にスライドさせたときに,首部と重なり,逆向きにスライドさせたときに,首部との重なりが外れるように突設されたロックピンとを具え, E 固定心棒とロック心棒には,ロック心棒を前進スライドさせ,首部とロックピンとを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されているF パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 イ乙13-2発明G パソコン等の器具の壁に開設された盗難防止用のスロット内に挿入され,固定構造物への連結用のケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 固定心棒とロック心棒とを,スロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合しI 固定心棒は,本体部と,本体部の先端に突設した首部と,首部の先端に側方に向けて突設された頭部とを具え,J ロック心棒は,固定心棒に対して,固定心棒の首部の突出方向に沿ってスライド可能に係合した本体部と,本体部を首部の突出方向にスライドさせたときに,首部と重なり,逆向きにスライドさせたときに,首部との重なりが外れるように突設されたロックピンとを具え,K 固定心棒とロック心棒には,ロック心棒を前進スライドさせ,首部とロックピンとを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されており,係止部にケーブルを取り付けるL パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 ウ乙13-5発明M 係止部は,首部とロックピンとを重ねた状態のときに一 応一致する位置に係止部が形成されており,係止部にケーブルを取り付けるL パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 ウ乙13-5発明M 係止部は,首部とロックピンとを重ねた状態のときに一致して貫通するように本体部と本体部に開設された孔であり,N 孔にケーブルを通すことによって,固定心棒とロック心棒との相対的なスライドを妨げて固定される O パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (2)周知慣用技術及び特表平10-508917号公報(以下「乙14公報」という。)に記載された発明(以下「乙14発明」という。)ア周知慣用技術盗難防止用の連結具に限らず,分離を目的としていない別個独立の部品で構成された器具等において,取扱性の向上,分解防止,紛失防止等は,自明の課題である。この課題を解決するために,部品同士を結合し,分離不能に保持することは,器具等の構成を考える場合の通常の設計方法であり,周知慣用技術である。 2部材を「スライド可能」に係合しつつ,「分離不能に保持」する構成も,周知慣用技術である。 イ乙14発明(ア) 乙14発明が本件各特許発明及び乙13発明と同種の発明であること乙14公報に記載された発明(乙14発明)は,以下の点で,本件特許発明1及び乙13発明と共通のものである。 ① パソコン等の外壁の溝(スリット)に挿入される盗難防止用の連結具である。 ② ハウジングの開口とスピンドルの開口を一致させ,これらの開口にケーブルを通す構成である。 ③ T字形を構成するシャフト及び交差部材(差込片)とピン(回止片)を用いてロック状態を実現する構成である。 したがって,乙14発明は,本件特許発明1と乙13発明と,用途,使用態様及びロック機構の主要原理の点において共通する 及び交差部材(差込片)とピン(回止片)を用いてロック状態を実現する構成である。 したがって,乙14発明は,本件特許発明1と乙13発明と,用途,使用態様及びロック機構の主要原理の点において共通する同種の連結具である。 (イ) 乙14発明が主要な部材を分離不能に保持するものであること 乙14発明のハウジングとスピンドルとは,ピンにより分離不能に保持されている。 (3)乙13発明と本件各特許発明との対比本件特許発明1の構成要件B及び本件特許発明2の構成要件Hでは,「両プレートは分離不能に保持」されているのに対し,乙13-1発明の構成B及び乙13-2発明の構成Hでは,固定心棒とロック心棒が「分離不能に保持」されていない点において相違する。 本件特許発明5は,本件特許発明1及び2の従属項であるから,本件特許発明5と乙13-5発明との相違点も上記の点である。 乙13発明と本件各特許発明は,他の構成の点において共通である。 (4)容易想到性ア上記(3)の相違点に係る乙13発明の構成に,周知慣用技術を適用することは容易であること乙13発明の固定心棒とロック心棒は,互いに分離した別個独立の部品であるが,スロットへの挿入時には,両部品はスライド可能に係合され,一体として使用される。 したがって,スロットへ挿入しない不使用時にも,両部品が一体のもの,すなわち「分離不能に保持」されていれば,使用時に両部品を係合させる手間が省けて取扱いが容易になるとともに,一方の部品の紛失防止を図ることができるのは,容易に予測できる。また,固定心棒とロック心棒とを分離不能に保持することについて阻害要因もない。 そうすると,乙13発明において,固定心棒とロック心棒とを分離不能に保持することは,自明な課題を解決するために,周知慣 た,固定心棒とロック心棒とを分離不能に保持することについて阻害要因もない。 そうすると,乙13発明において,固定心棒とロック心棒とを分離不能に保持することは,自明な課題を解決するために,周知慣用技術を適用することによって,当業者が容易に想到することができたものである。 イ上記(3)の相違点に係る乙13発明の構成に,乙14発明の構成を適用 することは容易であること前記(2)アのとおり,分離を目的としていない別個独立の部品で構成された器具等において,取扱性の向上,分解防止,紛失防止等は,自明の課題である。 また,乙13発明と乙14発明は,用途,使用態様及びロック機構の主要原理が共通する同種の連結具である。 そうすると,当業者が,乙14発明において主要部材を分離不能に保持しているのと同様に,乙13発明において固定心棒とロック心棒とを分離不能に保持する構成とすることは,容易に想到することができたものである。 【原告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,乙13発明に基づいて容易に発明することができたものではない。 (1)課題が自明ではないこと等分離を目的としていない別個独立の部品で構成された器具等における取扱性の向上,分解防止,紛失防止等の課題は,自明のものではない。 仮に上記課題が自明であったとしても,一般的抽象的なものにすぎず,その解決手段は無限に存在しており,上記課題から補助プレートを主プレートから分離不能に保持する構成に想到するはずであるとはいえない。 (2)阻害要因があること乙13発明は,「固定心棒」と「ロック心棒」をスライド可能に係合するものであるところ,これらを分離不能に保持する際には,そのスライド作用を阻害することのないように創意工夫をこらす必要がある。 したがって,乙 は,「固定心棒」と「ロック心棒」をスライド可能に係合するものであるところ,これらを分離不能に保持する際には,そのスライド作用を阻害することのないように創意工夫をこらす必要がある。 したがって,乙13発明に基づいて,上記【被告の主張】(3)の構成(「分離不能に保持」)を採用するには,阻害要因がある。 そもそも乙13発明は,「スライド可能に係合」する手段として,複数の部材をピンなどで係合する手段を採用せず,既に別の手段を採用している。そして,当該構成は,プレートのスライドを案内する構成である。したがって,かかる係合手段を変更すること自体は,プレートのスライドを案内するという作用効果を失わせる結果になる点において,阻害事由がある。 (3)乙13発明に乙14発明を適用することはできないこと乙14発明は,スリットへの挿入方向を軸として,ハウジングに対しスピンドルを90度の角度範囲で正逆方向に回すことにより,ピンと交差部材の一致と不一致を切り替えて,抜け止め又は抜止め解除するものである。 したがって,ハウジングとスピンドルが相対的にスライドすることはない。 これに対し,乙13発明は,「固定心棒」と「ロック心棒」を相対的にスライドする構成のものであり,乙14発明のようにスリットへの挿入方向を軸として,一方が他方に対し90度の角度範囲で正逆方向に回すことができる構成ではない。 そうすると,乙14発明の「ハウジング」と「スピンドル」は,乙13発明の「固定心棒」と「ロック心棒」に相当するものではなく,両者は基本構造が相違しており,互いに転用し得る関係にはない。 したがって,乙14発明の「ハウジング」と「スピンドル」に関連する構成を,乙13発明の「固定心棒」と「ロック心棒」に関連する構成に適用することはできない。 12 争点 に転用し得る関係にはない。 したがって,乙14発明の「ハウジング」と「スピンドル」に関連する構成を,乙13発明の「固定心棒」と「ロック心棒」に関連する構成に適用することはできない。 12 争点4-3(本件特許には明確性要件違反があるか)について【被告の主張】本件各特許発明の構成要件のうち「スライド可能に係合」及び「分離不能に保持」の構成は,いずれも機能的な表現であり,本件明細書等には当該構成に係る具体的な解決手段・構成として実施例しか記載されておらず,外延が不明 確である。 したがって,本件特許は,特許請求の範囲の記載について,特許を受けようとする発明が明確なものではないから,明確性要件(特許法36条6項2号)に違反するものである。 【原告の主張】前記のとおり,本件各特許発明の構成要件のうち「スライド可能に係合」の構成は「ずらすことができるように係合されていること」を意味するものであり,その意義は明確である。「分離不能に保持」の構成についても,分離できないように保持されることを意味しているのは明確である。 したがって,本件特許は,明確性要件に違反するものではない。 13 争点4-4(本件特許にはサポート要件違反又は実施可能要件違反があるか)について【被告の主張】前記1【被告の主張】(1)のとおり,本件各特許発明の構成要件のうち「スライド可能に係合」及び「分離不能に保持」の構成は,いずれも機能的な表現であり,本件明細書等には当該構成に係る具体的な解決手段・構成として実施例しか記載されていない。 補助プレートが主プレートに対し回転移動することを可能にする構成については何ら記載がなく,回転運動することを示唆する記載もない。 したがって,本件各特許発明の技術的範囲 しか記載されていない。 補助プレートが主プレートに対し回転移動することを可能にする構成については何ら記載がなく,回転運動することを示唆する記載もない。 したがって,本件各特許発明の技術的範囲に補助プレートが主プレートに対し回転する構成も含まれるのであれば,特許請求の範囲の記載について,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないから,サポート要件(特許法36条6項1号)に違反する。 また,当業者が,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでもないから,実施可能要件(特許法36条4項1号)にも違反する。 【原告の主張】前記1【原告の主張】(1)のとおり,本件各特許発明の構成要件のうち「スライド可能に係合」及び「分離不能に保持」の構成は,いずれも当業者が適宜採用し得るあらゆる構成を含むことが明らかである。 また,複数の部材を「スライド可能に係合」又は「分離不能に保持」する手段として,複数の部材をピン等で係合する構成は技術分野を問わない慣用手段の一つであり,自明な構成である。 そうすると,特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明の記載の範囲を超えるものではないから,サポート要件に違反するものではない。 当業者は,本件明細書の記載に基づき,上記構成を適宜実施することができるから,実施可能要件にも違反するものではない。 14 争点5(訂正の再抗弁)について【原告の主張】以下のとおり,本件訂正により,前記10及び11の無効理由は解消されるから,本件特許権の行使は,何ら制約されるものではない。 (1)本件訂正が,特許請求の範囲を拡張等するものではないこと本件訂正は,特許請求の範囲を減縮又は誤記を訂正するものであって,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでは 約されるものではない。 (1)本件訂正が,特許請求の範囲を拡張等するものではないこと本件訂正は,特許請求の範囲を減縮又は誤記を訂正するものであって,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない(平成23年法律第63号による改正前の特許法134条の2第5項,同法126条4項)。 また,本件各訂正発明は,いずれも本件明細書に記載されている構成のものである。 (2)本件訂正により無効理由が解消すること本件各訂正発明は,一対の回止め片が差込片を挟んで重なり,安定した装着ができるものである。 これに対し,乙8発明のピンは,差込片を挟む構成のものではなく,一対 のものでもないし,乙13発明のロックピンも,首部を挟む構成のものではなく,一対のものでもない。 また,本件各訂正発明では,スライド板の形状がコ字状であることにより,主プレートがコ字状断面に案内され,安定したスライドができるものである。 これに対し,乙8発明及び乙13発明には,これらの構成もない。 したがって,本件各訂正発明には,新規性・進歩性がある。 (3)被告各製品は,本件各訂正発明の技術的範囲に属するものである。 ア本件訂正による請求の範囲の限定本件訂正により,本件各特許発明にかかる請求の範囲は次のとおり限定された。 ① 訂正前の本件各特許発明では「スライド板(42)を差込片(24)の突出方向にスライドさせたときに」,回止め片(44)は差込片(24)と重なるものとされていた。訂正後各発明では,回止め片(44)(44)はスライド版(42)の先端に一対に突設されたものとされ,該一対の回止め片(44)(44)は,差込片(24)を挟んで重なるものと限定された(構成要件D’,J’)。 ② 訂正前の本件特許発明2及び同5のスライド板(42)の形状が 一対に突設されたものとされ,該一対の回止め片(44)(44)は,差込片(24)を挟んで重なるものと限定された(構成要件D’,J’)。 ② 訂正前の本件特許発明2及び同5のスライド板(42)の形状が「コ字状」に限定されていなかったのに対し,本件訂正発明2及び同5では,スライド板(42)の形状が「コ字状」に限定された(構成要件J’,M’)。 ③ 訂正前の本件特許発明5では,スライド板(42)の形状について,「主プレート(20)がスライド可能に嵌る凹部空間(59)を形成し」たものと限定されていなかったのに対し,本件訂正発明5ではこの限定がされた(構成要件M’)。 イ ①について①の限定は,「スライド板(42)を差込片(24)の突出方向にスライドさせたときに,差込片(24)を挟んで重なり,逆向きにスライドさせたときに,差 込片(24)との重なりが外れるようにスライド板(42)の先端に突設された一対の回止め片(44)(44)とを具え」るというものであるところ,被告各製品は「該回動板(42’)を差込片(24’)の突出方向にスライドさせたときに,差込片(24’)を挟んで重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片(24’)との重なりが外れるように回動板(42’)の先端に突設された一対の突起部(44’)(44’)とを具え」(構成d’,j’)ている。 ウ ②について②の限定は,スライド板(42)の形状を「コ字状」に限定するものであるところ,被告各製品の構成のうち,スライド板(42)に相当する回動板(42’)の形状は「コ字状」(構成j’,m’)である。 エ ③について③の限定は,スライド板(42)の形状が「主プレート(20)がスライド可能に嵌る凹部空間(59)を形成し」たものと限定するものであるところ,被告各製品のス j’,m’)である。 エ ③について③の限定は,スライド板(42)の形状が「主プレート(20)がスライド可能に嵌る凹部空間(59)を形成し」たものと限定するものであるところ,被告各製品のスライド板(42’)は,「主プレート(20’)がスライド可能に嵌る凹部空間(59’)を形成し」(構成m’)ている。 オ小括以上のとおりであるから,被告各製品は,本件各訂正発明の構成要件D’,J’,M’を充足し,その余の構成要件の充足は,前記1ないし9のとおりであり,被告各製品は,本件各訂正発明の技術的範囲に属する。 【被告の主張】以下のとおり,本件訂正によっても前記10及び11の無効理由は解消されない。 (1)回止め片を一対のものとすることについて器具等の構造物の設計において,構造体の単純化・簡素化,部品及び構造体の個数・寸法変更,周知形状への変形・加工等は,必要に応じて適宜用い られる周知慣用技術である。 乙8公報及び乙13公報には,ピンの個数を限定する記載はないし,本件特許の優先日前において,2本のピンを採用したセキュリティロックの構成は,公知であった。 したがって,乙8発明又は乙13発明に接した当業者がピンを一対のものとすることは,容易である。 (2)スライド板の形状をコ字状とすることについてスライド板の形状をどのようにするかは,当業者が必要に応じて適宜変更することが容易な設計事項にすぎない。 (3)本件各訂正発明の技術的範囲の属否前記1ないし9における【被告の主張】と同様の理由により,被告各製品は,本件各訂正発明の技術的範囲に属するとはいえない。 争点6(本件各訂正発明は,当業者が,乙15発明に基づいて容易に発明することができたものであるか)について【被 理由により,被告各製品は,本件各訂正発明の技術的範囲に属するとはいえない。 争点6(本件各訂正発明は,当業者が,乙15発明に基づいて容易に発明することができたものであるか)について【被告の主張】以下のとおり,本件各訂正発明は,当業者が,乙15発明に基づいて容易に発明することができたものである。 (1)乙15発明乙15公報には,以下の発明(乙15発明)が記載されている。 ア乙15-1発明A パソコン等の器具の外殻に開設されたセキュリティスロット内に挿入される盗難防止用連結具であって,B 挿入プレートとサドルとを,セキュリティスロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し,C 挿入プレートは,タブと,タブの先端に突設した中子と,中子の先端 に側方に向けて突設されたロック部材とを具え,D サドルは,挿入プレートに対して,挿入プレートの中子の突出方向に沿ってスライド可能に係合したサドル本体と,サドル本体を中子の突出方向にスライドさせたときに,中子を挟んで重なり,逆向きにスライドさせたときに,中子との重なりが外れるように中子の先端に突設された一対のピンとを具え,E 挿入プレートとサドルには,サドルを前進スライドさせ,中子とピンとを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に取付け機構が形成されているF パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 イ乙15-2発明G パソコン等の器具の外殻に開設されたセキュリティスロット内に挿入され,固定構造物への連結用ケーブルとパソコン等の器具とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 挿入プレートとサドルとを,セキュリティスロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し,I 挿入プレートは,タブと,タブの先端に突設 とを繋ぐ盗難防止用ケーブルの連結具であって,H 挿入プレートとサドルとを,セキュリティスロットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し,I 挿入プレートは,タブと,タブの先端に突設した中子と,中子の先端に側方に向けて突設されたロック部材とを具え,J サドルは,挿入プレートに対して,挿入プレートの中子の突出方向に沿ってスライド可能に係合したコ字状のサドル本体と,サドル本体を中子の突出方向にスライドさせたときに,中子を挟んで重なり,逆向きにスライドさせたときに,中子との重なりが外れるように中子の先端に突設された一対のピンとを具え,K 挿入プレートとサドルには,サドルを前進スライドさせ,中子とピンとを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に取付け機構が形成されて おり,取付け機構にケーブルを取り付け,又は南京錠を用いてケーブルを連結するL パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 ウ乙15-5発明M1 サドル本体は,コ字状であって,挿入プレートがスライド可能に嵌まる凹部空間を形成し,M2 取付機構は,中子とピンとを重ねた状態のときに一致して貫通するようにタブとサドル本体に開設された孔であり,N 孔にケーブルを通すことによって,挿入プレートとサドルとの相対的なスライドを妨げて固定されるO パソコン等の器具の盗難防止用連結具。 (2)周知慣用技術前記11【被告の主張】(2)と同様である。 (3)乙15発明と本件各特許発明との対比本件訂正発明1の構成要件B及び本件訂正発明2の構成要件Hでは,「両プレートは分離不能に保持」されているのに対し,乙15-1発明の構成B及び乙15-2発明の構成Hでは,固定心棒とロック心棒が「分離不能に保持」されていない点において相違する。 本 件Hでは,「両プレートは分離不能に保持」されているのに対し,乙15-1発明の構成B及び乙15-2発明の構成Hでは,固定心棒とロック心棒が「分離不能に保持」されていない点において相違する。 本件訂正発明5は,本件特許発明1及び2の従属項であるから,本件特許発明5と乙15-5発明との相違点も上記の点である。 乙15発明と本件各特許発明は,他の構成の点において共通である。 (4)容易想到性ア上記(3)の相違点に係る乙15発明の構成に周知慣用技術を適用することは,容易であること前記11【被告の主張】(2)及び(4)と同様に,乙15発明において, 挿入プレートとサドルとを分離不能に保持することは,自明な課題を解決するために,周知慣用技術を適用することによって当業者が容易に想到することができたものである。 イ上記(3)の相違点に係る乙15発明の構成に乙14発明の構成を適用することは,容易であること前記11【被告の主張】(2)及び(4)と同様に,分離を目的としていない別個独立の部品で構成された器具等において,取扱性の向上,分解防止,紛失防止等は,自明の課題である。 乙15発明と乙14発明は,用途,使用態様及びロック機構の主要原理が共通した同種の連結具である。 したがって,当業者が,乙14発明において主要部材を分離不能に保持しているのと同様に,乙15発明において挿入プレートとサドルとを分離不能に保持する構成とすることは,容易である。 【原告の主張】以下のとおり,本件各訂正発明は,当業者が,乙15発明に基づいて容易に発明することができたものではない。 (1)課題が自明ではないこと前記11【原告の主張】(1)と同じ。 (2)阻害要因があることそもそも,乙15発明は,「挿入プレート」 に基づいて容易に発明することができたものではない。 (1)課題が自明ではないこと前記11【原告の主張】(1)と同じ。 (2)阻害要因があることそもそも,乙15発明は,「挿入プレート」と「サドル」をスライド可能に係合したものではない。 これらを分離不能に保持する構成をとった場合には,スリットへの装着が不可能になるから,阻害要因がある。 (3)乙15発明に乙14発明を適用することはできないこと前記11【原告の主張】(3)のとおり,乙14発明において,スピンドル は,シャフトの軸方向に対して直交する面内で回転し,回転範囲をピンで規制する構成のものである。 したがって,乙15発明とは,スライド平面が異なり,スライドの規制範囲も異なるから,乙14発明の構成を乙15発明に適用することはできない。 16 争点7(損害額)について【原告の主張】被告各製品の総売上高からすれば,原告は,被告の行為により,少なくとも2278万円の損害を被った。 【被告の主張】否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断被告各製品は,少なくとも,本件特許発明1の構成要件B,D及びE並びに本件特許発明2の構成要件H,J及びKを充足しないから,本件各特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。 以下,詳述する。 1 争点1-1(構成要件Bの充足性)(1) 本件特許発明1の技術的範囲の解釈ア本件特許発明1の構成要件Bの意義前提事実(3)のとおり,本件特許発明1の構成要件Bは,「主プレートと補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,」というものである。 「挿入」とは,一般に,「さし入れること,さしこむこと」を意味し 補助プレートとを,スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し且つ両プレートは分離不能に保持され,」というものである。 「挿入」とは,一般に,「さし入れること,さしこむこと」を意味し,「沿う」とは,一般に,「線状的なもの,または線状的に移動するものに,近い距離を保って離れずにいること」を意味する。 そうすると,上記各構成要件のうち「スリットへの挿入方向に沿って相 対的にスライド可能」とは,「スリットへさし入れる方向に,互いにスライドすることが可能」であることをいうものと解される。 また,「挿入方向」,すなわち「さし入れる方向」ないし「方向」という単語の意義からすれば,移動(スライド)の態様は,パソコン等の本体ケーシングに開設されたスリットに挿入される差込片(主プレートを構成するベース板の先端に突設されたもの:構成要件C)の形状に沿った方向(差込片の形状が直線であれば,その直線に沿った方向となり,差込片の形状が曲線であれば,その曲線に沿った方向となる。)を指すと解される。 イ被告各製品の構成被告各製品の構成は,前提事実(6)のとおりである。 ウ被告各製品との対比補助部材は,コの字状に折り曲げられているものの,薄い平たい板からできており,本件特許発明1の補助プレートに相当すると解される。 一方,前記イによると,次のことが認められる。 (ア) 被告各製品は,ピンによって主プレート(20’)と補助部材(40’)とが1つのピンによって一端を枢結し,分離不能に保持されている。 (イ) また,主プレートと補助部材は,上記ピンを中心に,回動自在に結合し,主プレートと補助部材(いずれも板状のもの)の接する面に沿って,相対的にスライドする。 (ウ) そして,そのスライドの方向は,主プレート(2 レートと補助部材は,上記ピンを中心に,回動自在に結合し,主プレートと補助部材(いずれも板状のもの)の接する面に沿って,相対的にスライドする。 (ウ) そして,そのスライドの方向は,主プレート(20’)を構成するベース板(22’)に突設された差込片(24’)と補助部材(40’)に突設された突起部(44’)が重なった状態から,上記ピンを中心として,円を描くように回動し,上記の重なりが外れる状態の間を相対的にスライドする。 (エ) 以上によると,主プレートと補助部材は,相対的にスライドするものの,ピンを中心に回動する方向でスライドするのであって,差込片の形 状に沿った方向にスライドするとはいえない。 (2) 原告の主張について原告は,本件各特許発明の構成要件のうち,主プレートと補助プレートをスライドさせる構成について,公知技術等,当業者が適宜採用しうるあらゆる構成が含まれるとした上,被告各製品の構成(主プレートと補助部材とを,ピンによって一端を枢結し,回動自在に結合する構成)もこれに含まれる旨主張する。 確かに,主プレートの差込片と補助部材の突起部が重なり合う状態で,差込片,突起部及びその周辺のプレートだけを見ると,主プレートと補助部材は,差込片が差し込まれる方向(差込片の形状に沿った方向)に相対的にスライドしているということも可能である。 そこで,本件明細書の【発明の詳細な説明】の記載に加え,本件特許発明1に係る特許請求の範囲の記載が,機能的構成をもって記載されていることを踏まえながら,検討する。 (3) 本件明細書の【発明の詳細な説明】の記載の検討ア本件明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある(甲2)。 「【発明の属する技術分野】本発明は,ノート型パソコン等の器具を盗難から護るためのケ 細書の【発明の詳細な説明】の記載の検討ア本件明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある(甲2)。 「【発明の属する技術分野】本発明は,ノート型パソコン等の器具を盗難から護るためのケーブルを連結する連結具に関するものである。 【0002】【従来の技術】ノート型パソコンの店頭や陳列台などからの盗難を防止するために,ノート型パソコン(80)の本体ケーシング(84)には,矩形のスリット(82)が開設されている。このスリット(82)に,ケーブル(72)が連結可能な連結具(10)を挿入し,ケーブル(72)を柱などの固定構造物に掛けておくことにより,パソ コン(80)の持ち出しを防止できる(図1参照)。 その種連結具(90)として,特開平11-148262号公報には,図9に示すように,先端に掛止部(91)が形成された掛金具(92)と,該掛金具(92)に対し着脱可能に嵌まり合う扁平な卵形のカバー(93)からなる連結具(90)を開示している。上記連結具(90)は,パソコン側のスリット(82)に掛金具側の掛止部(91)を挿入して掛金具(92)を90度捻った後,掛止部(91)の回止めとして,掛金具(92)を覆うようにカバー(93)に突設している規制片(94)(94)をスリット(82)に挿入するものである。 カバー(93)と掛金具(92)を貫通して開設されたコード連通孔(95)(95)にワイヤを掛け回すことによってカバー(93)と掛金具(92)とは一体化され,掛止部(91)をスリット(82)から抜くことはできないため,このワイヤの端部を固定構造物に繋ぐことによって,パソコン(80)の持ち出しは防止される。 【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,掛金具(92)の掛止部(91)をスリット(82)に ヤの端部を固定構造物に繋ぐことによって,パソコン(80)の持ち出しは防止される。 【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,掛金具(92)の掛止部(91)をスリット(82)に挿入した後,掛金具(92)から手を離すと,掛金具(92)がスリット(82)に吊り下がったり,スリット(82)から脱落することがあり,カバー(93)を装着できない。このため,掛金具(92)を片手で押さえたままで,他方の手でカバー(93)を挿入する必要があった。しかしながら,掛金具(92),カバー(93)は共に小型であり,また,スリット(82)は,図1に示すように,ノート型パソコン(80)の下面に近い側部に形成されているから,両手で連結具(90)を取り付ける操作は困難であり,作業性が悪い問題があった。」「【0005】本発明の目的は,片手で簡単に取付けできるノート型パソコン等の器具の盗難防止用のケーブル連結具を提供することである。」 「【0007】【作用及び効果】本発明の主プレート(20)と補助プレート(40)は,スライド可能に係合して構成されているから,片手で連結具(10)を掴んで,主プレート(20)の抜止め片(26)をスリット(82)に挿入して90度回転させ,そのまま,補助プレート(40)の回止め片(44)を差込片(24)と重なるようにスリット(82)に押し込むだけで,連結具(10)をスリット(82)に取付けでき,作業性が良好である。 連結具(10)をスリット(82)に取り付けた後,係止部(28)(48)に錠(70)などを通し,主プレート(20)と補助プレート(40)が相対的にスライドしないように固定すると共に,ケーブル(72)等を連結すればよい。」「【0009】【発明の実施の形態】図1は,本発明の連結 通し,主プレート(20)と補助プレート(40)が相対的にスライドしないように固定すると共に,ケーブル(72)等を連結すればよい。」「【0009】【発明の実施の形態】図1は,本発明の連結具(10)を用いて,ノート型パソコン(80)と固定構造物(88)とをケーブル(72)によって連結した状態を示す説明図,図2は,本発明の連結具(10)の分解斜視図,図3及び図4は,連結具(10)の平面図,図5は,図4の断面図,図6乃至図8は,連結具(10)をパソコン(80)のスリット(82)に装着する手順を示している。 ノート型パソコン(80)の本体ケーシング(84)に開設されているスリット(82)は,長辺が約7mm,短辺が約3mm,ケーシング(84)の厚さは約3mmであり,後述する連結具(10)の先端の抜止め片(26),差込片(24)及び回止め片(44)は,夫々スリット(82)の形状に合わせた大きさに形成される。(略)【0010】図2乃至図5に示すように,本発明の連結具(10)は,主プレート(20)と補助プレート(40)とをスライド可能に係合して構成される。 主プレート(20)は,金属材料や樹脂材料から形成され,図3(a)に示すよう に,ベース板(22)と,該ベース板(22)の先端に突設された差込片(24)と,差込片(24)の先端に両側方へ向けて突出した抜止め片(26)とを具える。 ベース板(22)は,矩形の板体であって,後述する補助プレート(40)とスライド可能に係合するための一対の長孔(38)(38)がスリット(82)への挿入方向と平行な向きに開設されている。長孔(38)(38)は,本体ケーシング(84)の厚さとほぼ同じ長さを有しており,後述するとおり,補助プレート(40)のピン孔(58)(58)に嵌められたスプリ 入方向と平行な向きに開設されている。長孔(38)(38)は,本体ケーシング(84)の厚さとほぼ同じ長さを有しており,後述するとおり,補助プレート(40)のピン孔(58)(58)に嵌められたスプリングピン(60)(60)がスライド可能に嵌まっている。 また,ベース板(22)には,補助プレート(40)を主プレート(20)に対して固定するための係止用孔(36)が開設されている。」「【0014】補助プレート(40)は,図2,図3(b)及び図5(a)(b)に示すように,コ字状に折り曲げられ,間に主プレート(20)が嵌まる凹部空間を形成しているスライド板(42)と,スライド板(42)の上下先端から夫々突設された回止め片(44)とから構成される。 スライド板(42)の凹部空間(59)には,前記主プレート(20)のベース板(22)がスライド可能に嵌められており,凹部空間(59)の深さは,主プレート(20)を凹部空間(59)中に最も後退させたときに,ベース板(22)の先端がスライド板(42)の先端と揃う深さよりも少し深く形成されている。 スライド板(42)には,主プレート(20)の長孔(38)(38)との対応位置に夫々ピン孔(58)(58)(58)(58)が開設されており,対向するピン孔(58)(58)には,長孔(38)(38)を貫通してスプリングピン(60)が嵌められている。ピン孔(58)は,スライド板(42)の先端と主プレート(20)のベース板(22)が揃っているとき,つまり,主プレート(20)が後退した状態で,長孔(38)(38)の先端と向かい合う位置に開設される。」 【図2】本発明の連結具の分解斜視図である。 【図4】(a)及び(b)は,主プレートに対して補助プレートをスライドさせた状態を示す平面図である。 合う位置に開設される。」 【図2】本発明の連結具の分解斜視図である。 【図4】(a)及び(b)は,主プレートに対して補助プレートをスライドさせた状態を示す平面図である。 【図9】従来の連結具の装着工程を示す斜視図である。 イ小括前記アのとおり,本件明細書には,主プレートと補助プレートのスライドに関する構成について,従来技術及び実施例のいずれにおいても,差込片をスリットへ挿入する方向(ないし差込片の突出方向)に向かって,直線的に互いに前後移動(スライド)する構成のものしか開示されていない。 このことからも,前記(1)のとおり,解釈すべきであると考える。 (4) 機能的クレームの解釈仮に,上記原告の主張を前提としても,本件各特許発明の「スライド可能に係合」ないし「分離不能に保持」という記載は,機能的,抽象的なものであるから,当該機能ないし作用効果を果たしうる構成であれば,全てその技術的範囲に含まれるとすると,明細書に開示されていない技術思想(課題解決原理)に属する構成までもが,本件各特許発明の技術的範囲に含まれることになりかねない。 したがって,上記のような,いわゆる機能的クレームについては,【特許請求の範囲】や【発明の詳細な説明】の記載に開示された具体的な構成に示されている技術思想(課題解決原理)に基づいて,技術的範囲を確定すべきものと解される。また,明細書に開示された内容から,当業者が容易に実施しうる構成であれば,その技術的範囲に属するものといえるが,実施することができないものであれば,技術思想(課題解決原理)を異にするものして,その技術的範囲には属さないものというべきである。 そこで検討すると,以下のとおり,被告各製品の構成については,当業者が,技術 ができないものであれば,技術思想(課題解決原理)を異にするものして,その技術的範囲には属さないものというべきである。 そこで検討すると,以下のとおり,被告各製品の構成については,当業者が,技術常識等を参酌することにより,本件明細書の記載に基づき,容易に実施することができるものであったとは認めることができない。 ア公知技術ではないこと原告は,2つの部材をピンによって枢結し,回動させる構成が公知技術 である旨主張する。 しかしながら,原告が公知技術として提出するのは,クレセントおよびそのクレセントを備えた戸(甲22),サイドガラスロック装置(甲23),スライド式ウィンドの開閉装置(甲24),自動車のスライド窓ロック装置(甲25),荷物掛けを有する扉の掛け金具(甲26),ライター(甲28),鼻輪(甲29),折畳み式携帯電話機(甲30の1),無線機(甲30の2),脱落防止付きバッジ(甲31)であり,本件各特許発明とは,明らかに技術分野を異にするものである。 イ当業者が容易に実施することができるものではないこと等原告は,当業者が,複数の部材を「スライド可能に係合」する手段として,複数の部材を1点でピンないしヒンジ等で係合する構成を採用することに格別の困難はない旨主張する。 しかしながら,被告各製品の構成では,補助部材が円弧方向にスライドする場合,突起部も円弧方向に移動するから,突起部は,スリットの周りの壁にぶつかるか,スリット内に挿入できたとしても,すぐにスリットの内壁にぶつかり,スリットに挿入することができない。 そこで,被告各製品では,ピンと突起部との距離を離した上,突起部の外側縁部を円弧状とすることで,突起部をスリット内に挿入するようにしている。 以下,ピンと突起部の距離が短い場合と長い場 い。 そこで,被告各製品では,ピンと突起部との距離を離した上,突起部の外側縁部を円弧状とすることで,突起部をスリット内に挿入するようにしている。 以下,ピンと突起部の距離が短い場合と長い場合及び突起部の外側縁部が円弧状でない場合の図を示す(赤点線は,突起部のスライドする軌跡である。)。 上記のとおり,被告各製品の構成(主プレートと補助部材とを,ピンによって一端を枢結し,回動自在に結合する構成)では,突起部とピンとの距離を離したり,突起部の形状を工夫したりしなければ,主プレートと補助部材とをスライド可能にすることはできないものである。 被告各製品の構成を採用した場合に生じる上記課題は,本件各特許発明には存在しないものであるところ,上記課題が自明ないし公知のものであるとはいえないし,その解決手段として,上記被告各製品の構成を当業者が容易に採用しうるものであるとする主張立証はない。 これらのことからすれば,被告各製品の構成は,当業者が,技術常識ないし公知技術等を参酌することにより,本件明細書に基づいて容易に実施突起部とピンとの距離が長い場合突起部とピンとの距離が短い場合突起部の外側縁部が円弧状でない場合 することができるものであるとは認めることができない。 また,前記(3)で検討したところからすると,本件各特許発明が開示する技術思想(課題解決原理)は,一方のプレートにスライド方向に延びた長孔を開設し,他方のプレートにピンを固定し,当該ピンが当該長孔にスライド可能に嵌められることにより「スライド可能に係合」し,かつ「分離不能に保持」するものである。 そうすると,上記被告各製品の構成は,「スライド可能に係合」及び「分離不能に保持」という機能を実現するため,本件明細書等で開示され 「スライド可能に係合」し,かつ「分離不能に保持」するものである。 そうすると,上記被告各製品の構成は,「スライド可能に係合」及び「分離不能に保持」という機能を実現するため,本件明細書等で開示された技術思想とは原理的に異なる構成を採用したものというべきである。 結局のところ,被告各製品の構成と本件各特許発明とは,「スライド可能に係合」及び「分離不能に保持」という構成の点において,異なる技術思想(課題解決原理)によるものであると解される。 2 争点1-3(構成要件Dの充足性)について前提事実(3)のとおり,本件特許発明1の構成要件Dは,「補助プレートは,主プレートに対して,前記主プレートの差込片の突出方向(判決注:構成要件Dでは「突出設方向」)に沿ってスライド可能に係合したスライド板と,該スライド板を差込片の突出方向にスライドさせたときに,差込片と重なり,逆向きにスライドさせたときに,差込片との重なりが外れるように突設された回止め片とを具え,」というものである。 これによれば,① スライド板は,差込片の突出方向にスライドすること及び② 逆向きにスライドすることも可能なものであることが認められる。また,「方向に沿ってスライド可能」というのは,上記①及び②の相反する方向への移動(スライド)が可能であることを表現したものと解される。 前記1と同様に,「突出方向にスライド」というのも,「突出方向」ないし「方向」という単語の意義からすれば,移動(スライド)の態様は,差込片の形状 に沿った方向にスライドすることを指すと解される。 前記1で述べたとおり,被告各製品の主プレートと補助部材のスライド方向は,差込片の形状に沿ったものとは言い難い。 したがって,被告各製品は,構成要件Dを充足するとは認められない。 れる。 前記1で述べたとおり,被告各製品の主プレートと補助部材のスライド方向は,差込片の形状に沿ったものとは言い難い。 したがって,被告各製品は,構成要件Dを充足するとは認められない。 3 争点1-4(構成要件Eの充足性)について前提事実(3)のとおり,本件特許発明1の構成要件Eは,「主プレートと補助プレートには,補助プレートを前進スライドさせ,差込片と回止め片とを重ねた状態で,互いに対応一致する位置に係止部が形成されていることを特徴とする」というものである。 「前進」とは,一般に「前に進むこと」をいい,その対義語は,「後退」である。このことに加え,前記1で検討したところも併せると,本件特許発明1の「主プレートと補助プレート」は,差込片をスリットへさし入れる方向ないし差込片の突出方向に向かって,前後に移動するものであり,直線的な移動を前提としたものであると解される。 前記1で述べたところによると,被告各製品の主プレートと補助部材のスライド方向は,直線的な前後への移動を予定したものとはいえない。 したがって,被告各製品は,構成要件Eを充足するとは認められない。 4 争点1に関するまとめ以上によれば,本件特許発明1(構成要件B,D及びE)において,主プレートと補助プレートは,差込片の形状に沿った方向に向かって,互いに移動(スライド)する構成のものである。 これに対し,前記1のとおり,被告各製品は,主プレートと補助部材とを,ピンによって一端を枢結し,回動自在に結合する構成のものであるが,差込片の形状は長方形(プレートの幅を考慮すると直方体)であるから,上記各構成要件を充足しない。そもそも,本件各特許発明の上記各構成要件等において開 示された構成と被告各製品の構成は,技術思想(課題解決原理)を異に 幅を考慮すると直方体)であるから,上記各構成要件を充足しない。そもそも,本件各特許発明の上記各構成要件等において開 示された構成と被告各製品の構成は,技術思想(課題解決原理)を異にするものである。 したがって,被告各製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属するものとはいえない。 5 争点2(被告各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか)について前記1ないし4と同様の理由により,被告各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するとは認めることができない。 6 争点3(被告各製品が本件特許発明5の技術的範囲に属するか)について前記4及び5のとおり,被告各製品は,本件特許発明1及び2の技術的範囲に属するとはいえないところ,本件特許発明5は,本件特許発明1及び2の従属項であるから,これについても,その技術的範囲に属するとはいえない。 7 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件各請求にはいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康 裁判官西田昌吾 (別紙)製品目録被告が販売する以下の製品名及び型番の各盗難防止用連結具 1 製品名:e セキュリティ(型番:SLE-13P) 2 製品名:南京錠タイプパソコンセキュリティワイヤーロック(型番:SL-57) 3 製品名:ダイヤル錠タイプパソコンセキュリティワイヤーロック(型番:SL-58) (別紙)被告各製品説明書被告各 キュリティワイヤーロック(型番:SL-57) 3 製品名:ダイヤル錠タイプパソコンセキュリティワイヤーロック(型番:SL-58) (別紙)被告各製品説明書被告各製品は,いずれも後記1の各図面記載の構成を有する。 なお,図6は被告製品2の使用方法,図7は被告製品3の使用方法を示す。 1 図面の説明図1 連結具の分解斜視図図2 補助部材を主プレートから離れる方向にずらした状態の平面図図3 スリットに差込片を挿入した状態の拡大断面図図4 主プレートをパソコンの本体ケーシングのスリットに挿入して90 度回転させ,補助部材を主プレートと重なる方向にずらして一致させた状態の正面図図5 図4のA-A線拡大断面図図6 連結具に南京錠及びケーブルを繋いだ状態の正面図図7 連結具にダイヤル錠及びケーブルを繋いだ状態の正面図 2 符号の説明20’ 主プレート22’ ベース板24’ 差込片26’ 抜止め片28' 係止部36’ 孔40’ 補助部材42’ スライド板 44' 回止め片48’ 係止部56’ 孔70’ 錠72’ ケーブル

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