平成15年6月19日宣告平成15年(わ)第6号,第58号殺人,窃盗被告事件主文被告人を懲役15年に処する。 未決勾留日数中80日をその刑に算入する。 函館地方検察庁で保管中の金属製パイプ1本(平成15年領第15号の17)を没収する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,父A母Bの子として北海道山越郡a町内で出生し,高校を卒業後,同町内などで稼働していたものであるが,自動車運転免許を取得してからは,車両を次々と買い替え,その都度車両に改造を加えるなどしたため,月々の支払いが収入を上回るほどの多額のローンを抱えるようになり,不足分についてはBに負担してもらったり,平成10年に父親が死亡した際には,その死亡保険金をローンの返済等に充てるなどした。被告人は,このように金銭に窮する生活を送る中で,後記のとおり平成13年9月窃盗の犯行に及んだ。 被告人は,平成14年6月婚姻した後も,Bに小遣い銭を無心したり,同年7月にはBの留守中にB方から無断で持ち出したB名義のクレジットカードを利用して10万円を,同年8月にも同じクレジットカードで5万円をそれぞれ借り入れ風俗店で遊ぶなどして費消したり,当時使用していた車両のローンを払えなくなって,同車を売却する際,その残債務の一部をB及び義父に折半して弁済してもらうなど,依然としてBに金銭的に依存する状態が続いた。 被告人は,B名義のクレジットカードの無断使用,借入れをBに打ち明けたが,その後,Bから返済を繰り返し強く催促されるようになり,被告人は,Bが嫌みったらしく文句を言うなどとBを疎ましく思うとともに,催促の際のBの言葉から, Bが無断使用,借入れの事実を妻に告げるのではないかと疑い,もしそうなれば,前記のとおり義父にもローンの残債務を支払ってもらった経緯からしても,妻との離婚話が持ち上がる 催促の際のBの言葉から, Bが無断使用,借入れの事実を妻に告げるのではないかと疑い,もしそうなれば,前記のとおり義父にもローンの残債務を支払ってもらった経緯からしても,妻との離婚話が持ち上がるのではないかなどと恐れ,Bの口振りに我慢ならない,Bを殺せば妻に無断使用,借入れの事実を知らされる心配もなくなるなどと考え,同年12月上旬ころには,Bの殺害を決意するに至った。 そして,被告人はBの殺害方法に思いをめぐらしていたところ,同月20日ころ,勤務先のガソリンスタンドで,金属製パイプを見付け,L字形の接合管が端に付いていて握りやすかったことなどから,これを用いてBを殺害しようと考え,同月25日,金属製パイプとゴム手袋を携えて,B方に赴いたが,殺害の機会がなかったことから同日Bを殺害することをあきらめ,後日の殺害に備えて金属製パイプとゴム手袋をB方に置いて帰宅した。被告人は,翌26日も勤務終了後にB方に赴き,殺害の機会をうかがったものの,Bの隙を見付けることができず,この日も実行することなく帰宅した。 被告人は,翌27日午後8時30分ころ,B方に赴き,ゴム手袋を着用して金属製パイプを素振りするなどしながら,殺害の機会をうかがったが,実行に至ることなく一旦帰宅し,夕食を摂るなどしていたものの,Bの言葉などを思い返すうちに,やはり同日中にBを殺害するほかないと決意し,同日午後11時45分ころ,再びB方に赴いた。 (罪となるべき事実)被告人は,第1平成14年12月28日午前零時ころ,北海道山越郡a町b町c番地のdB方1階居間において,B(当時49歳)に対し,殺意をもって,所携の金属製パイプ(長さ約95センチメートル,重量約1.24キログラム,函館地方検察庁平成15年領第15号の17)で同女の頭部等を多数回強打し,よって,そのころ,同所にお )に対し,殺意をもって,所携の金属製パイプ(長さ約95センチメートル,重量約1.24キログラム,函館地方検察庁平成15年領第15号の17)で同女の頭部等を多数回強打し,よって,そのころ,同所において,同女を頭部挫裂創に基づく失血により死亡させて殺害し, 第2平成13年9月8日午後11時30分ころ,北海道山越郡e町字fg番地のh所在のC商事株式会社ie営業所休憩室において,同営業所所長Dほか1名管理に係る現金129万2796円在中のナイトバッグ1個(時価約1000円相当)を窃取したものである。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法199条に,判示第2の所為は同法235条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役15年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中80日をその刑に算入することとし,函館地方検察庁で保管中の金属製パイプ1本(平成15年領第15号の17)は,判示第1の犯行の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用については刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の事情)本件は,被告人が,実母を撲殺した殺人(判示第1の事実)及び元の勤務先から売上金を窃取した窃盗(判示第2の事実)の事案である。 判示第1の殺人の事案についてみると,被告人は,平成14年12月上旬ころにはBの殺害を決意し,凶器として使う金属製パイプを準備し,犯行の数日前からB方に赴き殺害の機会をうかがっていたのであって,本件は確定的殺意に基づく計画的犯行である。被告人は, 14年12月上旬ころにはBの殺害を決意し,凶器として使う金属製パイプを準備し,犯行の数日前からB方に赴き殺害の機会をうかがっていたのであって,本件は確定的殺意に基づく計画的犯行である。被告人は,Bの不意を突くため,帰る振りをしてBに「そろそろ帰るわ。」と声を掛け,被告人を見送るため立ち上がろうとして正座した状態から腰を浮かせて両膝をつき無防備な体勢になったBの背後から,殺傷能力の十分認められる判示金属製パイプをBの後頭部目がけてバットスイングをするように力まかせに振って後頭部に命中させ,その衝撃により床に倒れ,両手で後頭部を庇いながら, 「痛い,痛い。E,止めて。」と哀願するBを一顧だにせず,Bが右耳部や右側頭部から血を流して動かなくなるまで,多数回にわたって執ようにBの頭部を殴打し続けたのであって,その態様は凶悪かつ凄惨極まりない。 被告人の凶行によって,人1人の生命が奪われており,その結果が極めて重大であることはもとよりいうまでもないが,本件殺人においては,被害者であるBは,被告人の実母であり,被告人を産み育て,夫が死亡した後も,一人息子である被告人に対し,ローンの支払いの肩代わりをするなど経済的な援助も含め,十分な愛情をもって接してきたことがうかがわれるのであって,本件の経緯に照らしBには全く落ち度は認められず,被告人の犯行は,いわば恩を仇で返すようなものである。 Bにとってみれば,愛情を注いで養育してきたわが子に殺害されるとは予想だにしない事態であり,必死に攻撃をやめるよう懇願したにもかかわらず,被告人に多数回にわたり金属製パイプで頭部を殴打されて無惨にも命を奪われたBの無念さ,哀しみは筆舌に尽くし難い。本件殺人は余りに非情なものといわざるを得ない。 被告人は,長期間にわたりBに対し多大な経済的負担を掛けてきた上,B名義のクレ 部を殴打されて無惨にも命を奪われたBの無念さ,哀しみは筆舌に尽くし難い。本件殺人は余りに非情なものといわざるを得ない。 被告人は,長期間にわたりBに対し多大な経済的負担を掛けてきた上,B名義のクレジットカードを無断で使用し,借入れをするに至ったのであるから,Bが,被告人に対し,その経済観念の欠如をたしなめ,無断で借入れをした金員の返済を求めたのは至極当然であるのに,被告人は,被告人自身の問題性,Bの愛情の深さに思いを致すことなく,Bに反感を覚え,あるいは,疎ましく思い,更には,無断使用,借入れの事実を妻に告げられると離婚話が持ち上がるのではないかなどと恐れて本件殺人に及んだものであって,その動機は,余りに短絡的で身勝手極まりないものといわざるを得ず,酌量の余地は全くない。 また,本件殺人が地域社会に与えた影響も無視できない。 判示第2の窃盗の事案は,被告人の経済観念のなさに由来するものであって,前記殺人の事案と背景を同じくする犯行と評せざるを得ず,元の勤務先の内情に通じていることを悪用しており,被害金額も多額である。この窃盗を軽くみることは許されない。 以上の諸事情に照らせば,本件の犯情は極めて悪く,被告人の刑事責任は重大である。 他方,被告人は本件各事実を認め,被告人なりの反省の言葉を述べていること,Bの弟でもある被告人の叔父が窃盗の被害弁償を行うとともに,社会復帰後,被告人を自宅に受け入れ監督する旨当公判廷において誓約していること,前科前歴がないこと,被告人は25歳と若年であること,その他被告人のために酌むべき事情が認められる。 そこで,これら諸般の事情を総合考慮して,主文の刑を量定した。 (求刑懲役18年,金属製パイプの没収)平成15年6月19日函館地方裁判所刑事部裁判長裁判官園原敏彦裁判官伊藤聡裁判官野 これら諸般の事情を総合考慮して,主文の刑を量定した。 (求刑懲役18年,金属製パイプの没収)平成15年6月19日函館地方裁判所刑事部裁判長裁判官園原敏彦裁判官伊藤聡裁判官野村武範
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