平成28年6月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第10567号債務不存在確認請求事件(甲事件)平成27年(ワ)第10696号特許権移転登録手続請求事件(乙事件)平成27年(ワ)第28881号不当利得返還等請求事件(丙事件)口頭弁論終結日平成28年3月18日判決 (別紙特許権目録1記載1及び2の各特許権に係る特許原簿上の住所:愛知県豊川市諏訪四丁目295)甲事件原告,乙事件被告,丙事件被告大林精工株式会社(以下「原告大林精工」という。)甲事件原告,丙事件被告 A (以下「原告A」という。)甲事件原告,乙事件被告,丙事件被告B (以下「原告B」という。)上記3名訴訟代理人弁護士大野聖二同井上義隆同小林英了甲事件被告,乙事件原告,丙事件原告LGDisplay株式会社(以下「被告」という。)同訴訟代理人弁護士古田啓昌同岩瀬吉和同元芳哲郎 同訴訟復代理人弁護士崎地康文同山内真之 主文 1 原告大林精工の原告Bからの別紙特許出願目録1記載の各特許出願に係る発明に関する技術の取得行為及び同技術の特許出願による開示行為を 山内真之 主文 1 原告大林精工の原告Bからの別紙特許出願目録1記載の各特許出願に係る発明に関する技術の取得行為及び同技術の特許出願による開示行為を原因とする被告に対する不法行為に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 2 原告Aの原告Bからの別紙特許出願目録1記載の各特許出願に係る発明に関する技術の取得行為を原因とする被告に対する不法行為に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 3 原告Bの原告大林精工及び原告Aへの別紙特許出願目録1記載の各特許出願に係る発明に関する技術の開示行為及び別紙特許出願目録2記載の各特許出願に係る発明に関する技術の特許出願による開示行為を原因とする被告に対する不法行為に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 4 被告の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,甲事件,乙事件及び丙事件を通じ,被告の負担とする。 6 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件 主文第1項ないし第3項と同旨 2 乙事件(1) 原告大林精工は,被告に対し,別紙特許権目録1記載1,2及び4ないし6の各特許権の移転登録手続をせよ。 (2) 原告Bは,被告に対し,別紙特許権目録2及び同3記載の各特許権の移転登録手続をせよ。 3 丙事件(1)ア主位的請求原告大林精工,原告A及び原告Bは,被告に対し,連帯して5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ予備的請求(ア) 原告大林精工は,被告に対し,5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただ 13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ予備的請求(ア) 原告大林精工は,被告に対し,5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,うち1億5000万円及びこれに対する同年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員については原告Aと連帯して,うち3億5000万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員については原告Bと連帯して)を支払え。 (イ) 原告Aは,被告に対し,原告大林精工と連帯して1億5000万円及びこれに対する平成15年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (ウ) 原告Bは,被告に対し,原告大林精工と連帯して3億5000万円及びこれに対する平成15年12月13日日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告大林精工,原告A及び原告Bは,被告に対し,連帯して520万4014円及びこれに対する平成27年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求の概要等(1) 甲事件は,①原告大林精工,原告B及び原告大林精工の代表者である原告A(以下,3名を併せて単に「原告ら」という。)が,別紙特許出願目録1記載の各特許出願に係る各発明(以下,併せて「本件発明1」といい,個別の特許出願に係る発明〔複数の場合を含む。〕を,同目録の番号に対応した枝番号を付して「本件発明1-1」などという。)について,原告Bによる本件発明1の原告Aへの開示行為,原告A及び原告大林精工による本件発明1の取得行為並びに原告大林精工による本件発明1の特許出願行為は,いずれも被告に対する不正競争行為(不正競争防止法〔以下「不競法」という。〕2条1項7号,8号)又は一般不 原告大林精工による本件発明1の取得行為並びに原告大林精工による本件発明1の特許出願行為は,いずれも被告に対する不正競争行為(不正競争防止法〔以下「不競法」という。〕2条1項7号,8号)又は一般不法行為(民法709条。以下,不正競争行為による不法行為以外の不法行為の趣旨で用いる。)を構成することはないと主張して,被告に対する不法行為(以下,不正競争行為と一般不法行為を包含する趣旨で用いる。)に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求めるともに,②原告Bが,別紙特許出願目録2記載の各特許出願に係る各発明(以下,併せて「本件発明2」といい,個別の特許出願に係る発明〔複数の場合を含む。〕を,同目録の番号に対応した枝番号を付して「本件発明2-1」などという。)について,原告Bによる本件発明2の特許出願行為は,被告に対する不正競争行為(不競法2条1項7号)又は一般不法行為を構成することはないと主張して,被告に対する不法行為に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求めた事案である。 (2) 乙事件は,大韓民国(以下「韓国」という。)の法人であるエルジー電子株式会社(平成7年1月以前の商号は株式会社金星社。以下,商号変更の前後を問わず「LG電子」という。)からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告が,別紙特許権1記載の各特許権(以下,併せて「本件特許権1」といい,個別の特許権を,同目録の番号に対応した枝番号を付して「本件特許権1-1」などという。また,これらの特許権に係る特許を「本件特許1-1」などという。)は,いずれもLG電子がその従業員から特許を受ける権利の譲渡を受けた職務発明を原 告大林精工が冒認出願することにより取得したものであり,別紙特許権目録2記載の各特許権(以下,併せて「本件特許権2」という。)並びに別紙特許権目録3 許を受ける権利の譲渡を受けた職務発明を原 告大林精工が冒認出願することにより取得したものであり,別紙特許権目録2記載の各特許権(以下,併せて「本件特許権2」という。)並びに別紙特許権目録3記載の各特許権(以下,併せて「本件特許権3」といい,本件特許権1及び同2と併せて「本件各特許権」という。)は,LG電子の従業員であった原告Bが,特許を受ける権利をLG電子に譲渡した職務発明について自らを出願人として冒認出願することにより取得したものであると主張して,不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づき,原告大林精工に対し,本件特許権1-1,同1-2,同1-4ないし同1-6につき特許権移転登録手続を求め(なお,本件特許権1-3については,年金不納付により既に特許権が消滅していることから,請求の対象としていない。),また,原告Bに対し,本件特許権2及び同3につき特許権移転登録手続を求めた事案である。 (3) 丙事件は,被告が,原告らが共謀の上,原告大林精工においてLG電子の従業員による職務発明(本件発明1-1ないし同1-5。以下「本件ライセンス発明」という。)を冒認して特許出願し,これにより取得した本件特許権1-1ないし同1-5(以下「本件ライセンス特許権」という。)について株式会社日立ディスプレイズ(以下「日立ディスプレイズ」という。)に実施許諾し,同社からライセンス料として少なくとも5億円を受領したと主張し,①原告らは,これらの行為により法律上の原因なく5億円を悪意で利得し,LG電子からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告に同額の損失を与えているとして,不当利得返還請求権に基づき,原告らに対し,不当利得金5億円及びこれに対する不当利得の日(原告大林精工が日立ディスプレイズからライセンス料を受領した日)である平成15年6月13日 与えているとして,不当利得返還請求権に基づき,原告らに対し,不当利得金5億円及びこれに対する不当利得の日(原告大林精工が日立ディスプレイズからライセンス料を受領した日)である平成15年6月13日から支払済みまでの年5分の割合による法定利息の連帯支払(予備的に〔原告A及び原告Bの不当利得の額を原告大林精工から分配を受けた額と,原告A及び原告Bの不当利得の日を原告大林精工から分配を受けた日とみる場合〕,①原告大林精工に対し,不当利得金5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払〔ただし,下記②の金員の限 度で原告Aとの連帯支払,下記③の金員の限度で原告Bとの連帯支払〕,②原告Aに対し,不当利得金1億5000万円〔原告Aが原告大林精工から分配を受けた額〕及びこれに対する同年12月13日〔原告Aが原告大林精工から分配を受けた後の日〕から支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払〔原告大林精工との連帯支払〕,③原告Bに対し,不当利得金3億円5000万円及びこれに対する同日〔原告Bが原告大林精工から分配を受けた後の日〕が原告大林精工から分配を受けた額〕から支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払〔原告大林精工との連帯支払〕)を求めると共に,②原告らの行為はLG電子からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告に対する共同不法行為を構成し,これにより被告に少なくとも6億円の損害を与えたとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,原告らに対し,上記損害の一部として,損害賠償金520万4014円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年11月3日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 2 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及 びこれに対する不法行為後の日である平成27年11月3日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 2 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等。なお,日本国外の事実や外国語文書に係る日付については,西暦を用いて表示し,和暦を付記することがある。)(1) 当事者ア原告大林精工は,金型や自動車部品等の製造,販売を行う株式会社である。 イ原告Aは,原告大林精工の代表者である。 ウ原告Bは,平成3年4月から平成10年6月まで,技術顧問(従業員)としてLG電子に勤務していた者である。原告BとLG電子との間の雇用契約書には,「この雇用契約書による開発効果(Know-how及び期待なる開発の全権利)は甲(判決注:LG電子を指す。)の所有とし,乙(判決注:原告Bを指す。)は甲の要求に従って中間報告書及び結果報告書を提出する。」との定めがある(甲5)。なお,韓国法では,従業員等がした発明のうち,職務発明(使用者等の業務範囲に属し,その発明をするようになった行為が従業員等の現在又は過去の職務に 属する発明)以外の発明について,あらかじめ使用者等に特許を受ける権利又は特許権を承継させる旨の契約や勤務規定の条項は,無効にすることとされている(甲6)。 エ被告は,液晶ディスプレイパネルの開発,製造,販売を行う韓国の法人であり,平成10年12月31日,LG電子から同社のLCD関連の事業部門の譲渡を受けた。 (2) 原告大林精工及び原告Bによる特許出願ア原告大林精工は,別紙特許出願目録1の「出願日」欄に各記載の日に,本件発明1につき特許出願をして,同目録「備考」欄の「特許番号」及び「登録日」のとおり,それぞれ特許権の設定登録 よる特許出願ア原告大林精工は,別紙特許出願目録1の「出願日」欄に各記載の日に,本件発明1につき特許出願をして,同目録「備考」欄の「特許番号」及び「登録日」のとおり,それぞれ特許権の設定登録を受けた(別紙特許出願目録1記載1ないし6の各特許出願に基づく特許権は,それぞれ別紙特許権目録1記載1ないし6の特許権に対応している。)。 イ原告Bは,別紙特許出願目録2の「出願日」欄に各記載の日に,本件発明2につき特許出願をして,本件発明2-2及び同2-4について,同目録「備考」欄の「特許番号」及び「登録日」のとおり,それぞれ特許権の設定登録を受けた(別紙特許出願目録2記載2及び4の各特許出願に基づく特許権は,それぞれ別紙特許権目録2記載2及び4の特許権に対応している。)。 また,原告Bは,別紙特許権目録3の「出願日」欄に各記載の日に,特許出願をして,同目録「登録日」欄に各記載の日に,同目録「登録番号」欄に各記載のとおり,それぞれ特許権の設定登録を受けた(以下,本件特許権3に係る各特許発明を併せて「本件発明3」といい,個別の特許出願に係る発明〔複数の場合を含む。〕を,同目録の番号に対応した枝番号を付して「本件発明3-1」などという。また,本件発明1,同2及び同3を併せて単に「本件各発明」という。)。 なお,原告Bが本件発明2及び同3の各発明者であることについて,当事者間に争いはない。 (3) 本件ライセンス契約 原告大林精工は,平成15年6月13日,日立ディスプレイズとの間で,本件ライセンス特許権(本件特許権1-1ないし同1-5)を含む特許権群についてライセンス契約を締結し(以下「本件ライセンス契約」という。),同契約に基づき,日立ディスプレイズから少なくとも5億円を受領した。 (4) 米国での訴訟手続ア 1-5)を含む特許権群についてライセンス契約を締結し(以下「本件ライセンス契約」という。),同契約に基づき,日立ディスプレイズから少なくとも5億円を受領した。 (4) 米国での訴訟手続ア被告は,2003年(平成15年)12月30日,アメリカ合衆国コロンビア特別区連邦地方裁判所に対し,原告大林精工を相手方として,原告Bが,LG電子の営業秘密に属する発明を原告Aに不正に開示し,原告大林精工が同発明について特許出願したなどと主張し,原告大林精工が有する米国特許権が無効であること及び被告は同特許権を侵害していないこと,原告大林精工による同特許権に基づく警告行為等の差止め並びに弁護士費用その他の費用の支払等を求める訴訟(以下「米国旧訴訟」という。)を提起した。米国旧訴訟は,2004年(平成16年)9月9日,被告の申立てにより,再訴可能な訴え却下(dismisstheactionwithoutprejudice)により終局した(甲1,乙105)。 イ被告は,2011年(平成23年)10月6日,アメリカ合衆国コロンビア特別区連邦地方裁判所に対し,原告らを相手方として,原告らがLG電子の営業秘密を不正に取得し,開示したなどと主張し,不法行為による損害賠償,受領金の移転,本件ライセンス契約を無効とする宣言,不当利得の返還等を請求する訴訟(以下「米国新訴訟」という。)を提起した。同裁判所は,消滅時効を理由として被告の請求を棄却する旨の判決をした。被告は,同判決を不服として控訴を提起したが,連邦巡回区控訴裁判所は,2015年(平成27年)9月15日,原判決を維持する旨の決定をした(甲1,乙163,164,弁論の全趣旨)。 (5) 韓国での訴訟手続と日本での執行判決請求訴訟手続ア被告は,2006年(平成18年)10月頃,韓国ソ 15日,原判決を維持する旨の決定をした(甲1,乙163,164,弁論の全趣旨)。 (5) 韓国での訴訟手続と日本での執行判決請求訴訟手続ア被告は,2006年(平成18年)10月頃,韓国ソウル中央地方法院に対し,原告大林精工及び原告Bを相手方として,被告と原告大林精工及び原告Bとの間に合意書による特許権又は特許を受ける権利を無償で移転する旨の契約が成立し たとして,本件特許権1及び同2を含む日本における特許権又は特許出願のほか,韓国,米国,中国及び台湾における特許権又は特許出願について特許権移転登録手続又は出願人名義変更申告手続を求める訴訟を提起した(なお,被告は,当初,原告らに対して損害賠償も求めていたが,2007年〔平成19年〕7月9日に同請求をいずれも取り下げた。)。韓国ソウル中央地方法院は,2007年(平成19年)8月23日,韓国以外の国における特許権及び特許出願に係る被告の訴えについては国際裁判管轄を欠くことを理由に全て却下し,韓国の特許権に関する特許権移転登録請求については錯誤による契約の取消しを理由に棄却する旨の判決をした。 被告が同判決を不服として控訴したところ,韓国ソウル高等法院は,2009年(平成21年)1月21日,第一審判決を取り消し,被告の請求を全て認容する旨の判決をした。 原告大林精工及び原告Bは,同判決を不服として上告したが,韓国大法院は,2011年(平成23年)4月28日,同上告をいずれも棄却する旨の判決をし,ソウル高等法院の控訴審判決が確定した(以下,上記一連の訴訟手続を「韓国訴訟手続」といい,確定した控訴審判決を「韓国判決」という。)。 なお,ソウル中央地方法院司法補佐官は,2015年(平成27年)6月16日,韓国判決により原告大林精工及び原告Bが被告に対して支払義務を負う訴訟 いい,確定した控訴審判決を「韓国判決」という。)。 なお,ソウル中央地方法院司法補佐官は,2015年(平成27年)6月16日,韓国判決により原告大林精工及び原告Bが被告に対して支払義務を負う訴訟費用の額を,各2667万0575ウォンと確定する決定をした。 (以上につき,甲7,9,10,24,乙153)イ被告は,平成23年,名古屋地方裁判所豊橋支部に対し,原告大林精工を相手方として,韓国判決のうち本件特許権1の特許権移転登録手続を命ずる部分及び訴訟費用を原告大林精工の負担とする部分について,原告大林精工に対して強制執行することの許可を求める執行判決請求訴訟を提起したが(同庁平成23年(ワ)第561号),同裁判所は,民訴法118条1号(外国裁判所の裁判権)の要件を満たさないとして被告の請求を棄却する旨の判決をした。被告が同判決を不服として名古屋高等裁判所に控訴した(同庁平成24年(ネ)第1289号)ところ,同 裁判所は,平成25年5月17日,同控訴に基づき,同判決を一部取り消して,韓国判決中の「訴訟費用は被告らの負担とする。」との部分のうち,韓国の特許権2件に係る部分の費用の限度で,被告が原告大林精工に強制執行することを許可し,その余の控訴を棄却する旨の控訴審判決をした。被告は,同判決を不服として,最高裁判所に上告受理申立てをしたが,最高裁判所は,同申立て不受理とする旨の決定をし,名古屋高等裁判所の控訴審判決が確定した。 被告は,平成23年,水戸地方裁判所下妻支部に対し,原告Bを相手方として,韓国判決のうち本件特許権2に係る特許出願について出願人名義変更申告手続を命ずる部分及び訴訟費用を原告Bの負担とする部分について,原告Bに対して強制執行することの許可を求める執行判決請求訴訟を提起したが(同庁平成23年(ワ)第 る特許出願について出願人名義変更申告手続を命ずる部分及び訴訟費用を原告Bの負担とする部分について,原告Bに対して強制執行することの許可を求める執行判決請求訴訟を提起したが(同庁平成23年(ワ)第206号),同裁判所は,民訴法118条1号(外国裁判所の裁判権)の要件を満たさないとして被告の請求を棄却する旨の判決をした。被告は,同判決を不服として,東京高等裁判所に控訴したが(同庁平成24年(ネ)第7779号),同裁判所は,平成25年3月19日,同控訴を棄却する旨の判決をした。被告は,同判決を不服として,最高裁判所に上告受理申立てをしたが,同判決に対する最高裁判所の上告不受理決定により,水戸地方裁判所下妻支部の第一審判決が確定した。 (以上につき,甲27,62,63,乙17,18)(6) 原告大林精工による特許権侵害訴訟の提起等ア原告大林精工は,平成25年,東京地方裁判所に対し,株式会社東芝を相手方として,同社による液晶テレビの製造,販売等が,原告大林精工の保有する本件特許権1-1の侵害を構成するとして,損害賠償金1億円及び遅延損害金の支払を求める特許権侵害訴訟を提起した(同庁平成25年(ワ)第10151号)。被告は,株式会社東芝の補助参加人として,同訴訟に参加した。同裁判所は,平成26年12月15日,本件特許権1-1に係る発明(本件発明1-1)の発明者は原告Aではなく,本件特許1-1は,同特許に係る発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたという無効理由を有するとして,原告大林精工 の請求を棄却する旨の判決をした。原告大林精工は,同判決を不服として知的財産高等裁判所に控訴したが(同庁平成27年(ネ)第10024号),同裁判所は,平成27年10月29日,同控訴を棄却する旨の判決をした(乙85,15 判決をした。原告大林精工は,同判決を不服として知的財産高等裁判所に控訴したが(同庁平成27年(ネ)第10024号),同裁判所は,平成27年10月29日,同控訴を棄却する旨の判決をした(乙85,159。 以下,上記一連の訴訟手続を「東芝訴訟」という。)。 イ原告大林精工は,平成25年,東京地方裁判所に対し,AppleJapan合同会社を相手方として,同社によるタブレット型コンピュータの製造,販売等が,原告大林精工の保有する本件特許権1-2の侵害を構成するとして,損害賠償金1億円及び遅延損害金の支払を求める特許権侵害訴訟を提起した(同庁平成25年(ワ)第14849号)。被告は,AppleJapan合同会社の補助参加人として,同訴訟に参加した。同裁判所は,平成27年4月24日,本件特許権1-2に係る発明(本件発明1-2)の発明者は原告Aではなく,本件特許1-2は,同特許に係る発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたという無効理由を有するとして,原告大林精工の請求を棄却する旨の判決をした。原告大林精工は,同判決を不服として知的財産高等裁判所に控訴したが(同庁平成27年(ネ)第10075号),同裁判所は,平成27年11月30日,同控訴を棄却する旨の判決をした(乙151,160。以下,上記一連の訴訟手続を「アップル訴訟」という。)。 ウ被告は,平成26年,東京地方裁判所に対し,原告大林精工及び原告Bを相手方として,被告と原告大林精工との間で,原告大林精工が被告に対して本件特許権1-1,同1-2,同1-4ないし同1-6を含む合計12件の特許権について特許権移転登録を約する契約が締結された,被告と原告Bとの間で本件特許権2及び同3について特許権移転登録を約する契約が締結されたなどと主張して,同契約に基づき,特許権 含む合計12件の特許権について特許権移転登録を約する契約が締結された,被告と原告Bとの間で本件特許権2及び同3について特許権移転登録を約する契約が締結されたなどと主張して,同契約に基づき,特許権移転登録を求める訴訟を提起した(同庁平成26年(ワ)第8174号)。同裁判所は,平成27年12月25日,被告の大林精工に対する請求を棄却し,被告の原告Bに対する請求を認容する判決をした。原告B及び被告は,同判決を不服として知的財産高等裁判所に控訴したが,現在,控訴審が係属中である (以下,上記一連の訴訟手続を「移転登録請求訴訟」という。)。 (7) 本件訴訟の提起原告らは,平成24年4月11日,甲事件を提起した。平成25年3月13日の第1回口頭弁論期日において原告らが2012年4月11日付け訴状と併せて陳述した同年5月15日付け訴状の訂正申立書における請求の趣旨は,前記第1の1に記載のほか,第4項として「別紙契約目録記載のライセンス契約(判決注:本件ライセンス契約を指す。)が有効であることを確認する。」,第5項として「原告大林精工の被告に対する別紙契約目録記載のライセンス契約により受領した金員の不当利得返還請求権が存在しないことを確認する。」というものであったところ,被告は,同期日において平成25年3月6日付け答弁書を陳述することにより,本案前の答弁として,訴えの却下を求めた上で,上記各請求に対して棄却を求める答弁(予備的答弁)をした(なお,被告は,平成27年12月16日の第17回弁論準備手続期日において,同月4日付け第13準備書面を陳述することにより,上記本案前の答弁を撤回した。)。 被告は,甲事件に対する反訴として,平成27年4月17日に乙事件を,同年10月14日に丙事件を,それぞれ提起した。 (8) 消滅時効の援 陳述することにより,上記本案前の答弁を撤回した。)。 被告は,甲事件に対する反訴として,平成27年4月17日に乙事件を,同年10月14日に丙事件を,それぞれ提起した。 (8) 消滅時効の援用原告らは,平成27年2月10日の第12回弁論準備手続期日において2015年2月10日付け原告準備書面(9)を陳述することにより,被告に対し,被告の原告らに対する不法行為による損害賠償請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をした(なお,原告らは,被告による丙事件の提起を受けて,平成27年11月10日の第16回弁論準備手続期日において2015年11月10日付け反訴答弁書を陳述することにより,改めて消滅時効を援用した。)。 原告A及び原告Bは,平成28年2月16日の第18回弁論準備手続期日において2016年2月16日付け原告準備書面(12)を陳述することにより,被告に対し,被告の原告A及び被告Bに対する不当利得返還請求権について消滅時効を援 用する旨の意思表示をした。 3 争点(1) 丙事件のうち,不法行為による損害賠償請求に係る訴えは適法か(争点1)(2) 本件各発明は,LG電子の従業員が職務上発明したものであるか(争点2)(3) 本件各発明は,LG電子又は被告の営業秘密に属するものであったか(争点3)(4) 原告らの行為が被告に対する不法行為を構成するか(争点4)(5) 原告らの不法行為により被告が受けた損害の額(争点5)(6) 不法行為による損害賠償請求権について消滅時効が成立するか(争点6)(7) 原告らは,法律上の原因なく,日立ディスプレイズからのライセンス料相当額等を悪意で利得し,これにより被告に損失を与えているか(争点7)(8) 原告A及び原告Bに関して,ライセンス料相当 (7) 原告らは,法律上の原因なく,日立ディスプレイズからのライセンス料相当額等を悪意で利得し,これにより被告に損失を与えているか(争点7)(8) 原告A及び原告Bに関して,ライセンス料相当額等の不当利得返還請求権について消滅時効が成立するか(争点8)(9) 本件各特許権について,不当利得返還請求権又は不当利得の法理による特許権移転登録手続請求権が認められるか(争点9) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(丙事件のうち,不法行為による損害賠償請求に係る訴えは適法か)について【被告の主張】ア反訴の要件を満たしていること丙事件のうち不法行為による損害賠償請求に係る訴えは,被告に属する発明を原告らが冒認出願等した不法行為による損害の賠償を求めるものであるから,原告らによる特許出願行為等による被告に対する損害賠償債務が存在しないことの確認を求める甲事件と関連する請求に係るものであり,他の裁判所の専属管轄に服するということもない。また,甲事件の審理において被告が主張している事実関係を請求原因事実として主張するものであるから,著しく訴訟手続を遅滞させることとなる ものではない。 この点,原告らは,上記損害賠償請求が実質的には訴訟費用の支払を求める請求であるとした上で,外国の訴訟費用に係る部分については民事執行法24条1項により東京地方裁判所には管轄がなく,日本の訴訟費用に係る部分については民訴法71条1項により裁判所書記官による訴訟費用確定手続によるべきであるなどと主張するが,同請求は,あくまで不法行為による損害賠償請求であって,他の裁判所の専属管轄に属するとはいえないし,裁判所書記官による訴訟費用確定手続に服するものでもない。 したがって,丙事件のうち不法行為による損害賠償請求に係る 法行為による損害賠償請求であって,他の裁判所の専属管轄に属するとはいえないし,裁判所書記官による訴訟費用確定手続に服するものでもない。 したがって,丙事件のうち不法行為による損害賠償請求に係る訴えは,甲事件の反訴として適法である。 イ訴えの利益が認められること原告らは,韓国訴訟手続の訴訟費用のうち一部について,被告が原告大林精工に強制執行することを許可する名古屋高等裁判所の判決が確定していることを理由に,丙事件のうちのうち不法行為による損害賠償請求に係る訴えは,同判決と重複する請求に係る部分を含んでおり,訴えの利益を欠くと主張するが,同判決では,原告大林精工が負担すべき訴訟費用の額が確定されておらず,強制執行が可能かも判然としないことからして,なお訴えの利益は肯定されるべきである。 【原告らの主張】ア反訴の要件を満たさないこと(ア) 甲事件の反訴として提起された丙事件のうち,不法行為による損害賠償請求に係る訴えにおいて,被告は,原告大林精工が日立ディスプレイズから受領したライセンス料相当額や,外国や日本での訴訟に要した費用を損害として主張しているが,甲事件は,原告らがLG電子又は被告の営業秘密に属する技術を取得又は開示したことが被告に対する不正競争行為又は一般不法行為を構成するものでないとして,不法行為による損害賠償債務の不存在を求めるものであって,本件ライセンス契約や他の訴訟を原因とする損害賠償債務とは債務の発生原因が異なるから,丙事 件における請求のうち不法行為による損害賠償請求は,甲事件の請求と関連する請求ではなく,当該損害賠償請求に係る訴えは,反訴の要件を欠き,不適法である(民訴法146条1項柱書)。 (イ) 丙事件における不法行為による損害賠償請求に係る訴えのうち,外国での訴訟費用 する請求ではなく,当該損害賠償請求に係る訴えは,反訴の要件を欠き,不適法である(民訴法146条1項柱書)。 (イ) 丙事件における不法行為による損害賠償請求に係る訴えのうち,外国での訴訟費用を損害として請求する部分は,実質的に,外国の裁判所で確定される訴訟費用の支払を求めるものであるから,民事執行法24条1項により,丙事件被告ら(原告ら)の普通裁判籍の専属管轄に属し,東京地方裁判所には管轄がなく,反訴の要件を欠く不適法な訴えである(民訴法146条1項1号)。なお,日本での他の訴訟についての訴訟費用は,裁判所書記官による訴訟費用確定手続においてその額が定められるべきものであり(民訴法71条1項),訴訟によってその額を確定すべきものではないので,仮に同費用に係る請求がされる場合には,訴えの併合の要件を欠くことにもなるというべきである(民訴法136条)。 (ウ) また,丙事件のうち,不法行為による損害賠償請求に係る訴えは,その請求原因の審理が甲事件で行われていたことはなく,今後,各国の準拠法による審理や損害額の審理に更なる時間を要することとなるのであるから,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものであり,やはり反訴の要件を欠く不適法な訴えである(民訴法146条1項2号)。 イ訴えの利益を欠くこと又は信義則違反であること丙事件における不法行為による損害賠償請求に係る訴えのうち,韓国訴訟手続に要した訴訟費用を損害として請求する部分は,実質的に,韓国の裁判所で確定された訴訟費用の支払を求めるものであるところ,韓国訴訟手続の訴訟費用のうち一部については,被告が原告大林精工に強制執行をすることを許可する旨の名古屋高等裁判所判決が確定しているのであるから,同判決と重複する請求部分については,訴えの利益を欠くというべきであるし,同名古屋 部については,被告が原告大林精工に強制執行をすることを許可する旨の名古屋高等裁判所判決が確定しているのであるから,同判決と重複する請求部分については,訴えの利益を欠くというべきであるし,同名古屋高等裁判所判決や水戸地方裁判所下妻支部判決によって,強制執行をすることが許可されなかった部分については,これら執行判決請求訴訟事件の不当な蒸し返しであるから,信義則上許されない訴 えとして却下されるべきである。 (2) 争点2(本件各発明は,LG電子の従業員が職務上発明したものか)について【被告の主張】ア総論本件各発明は,次項以下で主張するとおり,いずれも,LG電子の従業員であったC(以下「C」という。),原告B又はその他のLG電子の従業員が職務上発明したものであるところ,C,原告Bその他のLG電子の従業員は,いずれも,LG電子との契約により「開発効果(Know-How及び期待なる開発の全権利)」をLG電子に移転することをあらかじめ合意していたのであるから(甲5),本件各発明についての特許を受ける権利は,いずれもLG電子が承継取得しており,被告は,LG電子からLCD関連の事業部門の譲渡を受けたことにより,上記特許を受ける権利を承継したというべきである。 原告Aは,本件発明1を完成させる能力を有していなかったし,本件訴訟において本件発明1に至った経緯について何ら具体的に立証しないので,本件発明1の発明者が原告Aであることはあり得ない。 原告らは,本件発明2及び同3は,原告Bの職務とは関係なくされたものであるとか,これらの発明のうち,本件発明2-1以外は,原告BがLG電子を退職した後に完成させたものであるなどと主張するが,原告Bは,LG電子の「技術顧問」として,全体技術分野のアドバイスをその業務としており,現 れらの発明のうち,本件発明2-1以外は,原告BがLG電子を退職した後に完成させたものであるなどと主張するが,原告Bは,LG電子の「技術顧問」として,全体技術分野のアドバイスをその業務としており,現に,IPS液晶技術を含む多数の技術報告書をLG電子に提出しているのであるから,本件各発明は,LG電子における原告Bの職務に関してされたことが明らかであるし,本件特許権2に係る特許出願は,いずれも原告BがLG電子を退職して程なくされたものであることなどからすれば,本件発明2は,いずれも原告BがLG電子に在職している時期に完成させたものと推認でき,また,本件特許権2に係る特許出願の分割出願に基づく本件特許権3に係る本件発明3も,原告BがLG電子に在職している時期 に完成させたものと推認できるのであって,原告らの主張は失当である。 イ本件発明1-1について本件発明1-1は,「画素電極(液晶駆動電極)と共通電極という2種類の画素電極を用い,これらを『く』の字型に屈曲させることにより,画素電極に電圧が加えられた際に,単位画素内の液晶分子を,左回転と,右回転の2方向に回転させる作用を有する構成」(以下「第1の構成」という。),「映像信号配線を屈曲させると共に,色フィルター及びブラックマスクも映像信号配線と同一の角度で屈曲させる構成」(以下「第2の構成」という。)及び「画素電極を構成する共通電極の一部が映像信号配線を両側から挟み込むように配置されている構成」(以下「第3の構成」という。)を特徴とするものである(乙4の1)。ここで,第1の構成は,Cが,LG電子の職務に関して着想し,完成させた発明そのものである(以下,この発明を「C第1発明」という。)。第2の構成及び第3の構成は,いずれも,LG電子において,Cの隣席で,LCDの品質向上,製 Cが,LG電子の職務に関して着想し,完成させた発明そのものである(以下,この発明を「C第1発明」という。)。第2の構成及び第3の構成は,いずれも,LG電子において,Cの隣席で,LCDの品質向上,製造プロセスの改良等の業務に従事し,LCD及びその製造に関する知見を蓄積していた原告Bが,C第1発明を知得した結果,着想したものである(乙24)。 よって,本件発明1-1は,LG電子の従業員であったC及び原告Bが,LG電子の職務に際してした職務発明である。 ウ本件発明1-2について本件発明1-2は,「共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置される構成」(以下「オーバーラップ構成」という。)を特徴とするものである。ここで,オーバーラップ構成は,Cが,LG電子の職務に関して着想し,完成させた発明そのものであり(以下,この発明を「C第2発明」という。),LG電子の職務に際してした職務発明である。本件発明1-2のうちその余の部分は,C第2発明を知得した原告Bが付加したものである。 よって,本件発明1-2は,LG電子の従業員であったC及び原告Bが,LG電 子の職務に際してした職務発明である。 エ本件発明1-3について本件発明1-3は,第1の構成及び第2の構成のほか,「液晶駆動電極と共通電極との電極間距離が1画素内で2種類以上の組合せからなる構成」を特徴とするものであるが,同構成は,原告BがLG電子の従業員として職務上作成した報告書(乙24)に記載されている。 よって,本件発明1-3は,C第1発明に接した原告Bが,LG電子在籍時に職務上知り得たLG電子の技術情報を付加して原告Aに開示したものと推認でき,LG電子の従 告書(乙24)に記載されている。 よって,本件発明1-3は,C第1発明に接した原告Bが,LG電子在籍時に職務上知り得たLG電子の技術情報を付加して原告Aに開示したものと推認でき,LG電子の従業員であったC及び原告Bが,LG電子の職務に際してした職務発明である。 オ本件発明1-4について本件発明1-4は,第1の構成及び第2の構成のほか,「横電解方式液晶ディスプレイにおいて,アルミニウム系の合金が走査信号配線を被覆しており,映像信号配線との交差部のアルミニウム系合金の表面にアルミニウム酸化物層が形成されている構成」及び「走査信号配線を銅で形成するとの構成」を特徴とするものであるが,後二者の構成は,いずれもLG電子が特許出願していた発明に係る技術情報である(乙70及び71)。 よって,本件発明1-4は,原告Bが,C第1発明に,職務上知り得たLG電子の発明又は技術情報を付加して原告Aに開示したものと推認でき,LG電子の従業員であったC及び原告Bが,LG電子の職務に際してした職務発明である。 カ本件発明1-5について本件発明1-5は,第1の構成のほか,「電極傾斜部分を設ける構成」を特徴とするものであるが,同構成は,CがLG電子の従業員として職務上作成した報告書(乙72)に記載された技術情報である。 よって,本件発明1-5は,C第1発明に接した原告Bが,LG電子在籍時に職務上知り得たLG電子の技術情報を付加して原告Aに開示したものと推認でき,L G電子の従業員であったC及び原告Bが,LG電子の職務に際してした職務発明である。 キ本件発明1-6について本件発明1-6は,第1の構成及び第2の構成に,①共通電極を固定した従来の駆動方式における,映像信号配線に印加される映像信号電圧の最大振幅及び走査線 明である。 キ本件発明1-6について本件発明1-6は,第1の構成及び第2の構成に,①共通電極を固定した従来の駆動方式における,映像信号配線に印加される映像信号電圧の最大振幅及び走査線に印加される電圧の最大振幅,②駆動電圧の増大により,走査線と映像信号配線のショートが実際に多発しやすくなること,③映像信号配線の信号電圧が大きくなると,共通電極でシールドする効果も弱くなり,垂直クロストークも発生しやすくなること,④映像信号配線の信号電圧が大きくなると,カラーフィルター基板の裏面側に全面に形成されている透明電極と画素電極間に印加される電界も大きくなり,可動性イオンが液晶層に移動しやすくなって,実際に,残像などの問題が発生してしまうこと,という知見を組み合わせたものであるが,これらの知見は,いずれも原告BがLG電子在籍時に職務上知り得た知見である(甲14,乙8,48,50)。 よって,本件発明1-6は,C第1発明に接した原告Bが,LG電子在籍時に職務上知り得たLG電子の技術情報を付加して原告Aに開示したものと推認でき,LG電子の従業員であったC及び原告Bが,LG電子の職務に際してした職務発明である。 ク本件発明2及び同3について原告らは,本件発明2及び同3の発明者が原告Bであることを争っていないところ,これらの発明は,いずれもLG電子の業務範囲に属し,かつ,LG電子における原告Bの職務に属する発明であるから,原告BによるLG電子の職務発明である。 【原告らの主張】ア本件発明1は,原告Aが完成させたものであり,原告Aは本件発明1について特許を受ける権利をLG電子又は被告に譲渡したことはない。 イ本件発明2及び同3は,原告Bが完成させたものであるが,LG電子の従業 員として職務上した発明ではない は本件発明1について特許を受ける権利をLG電子又は被告に譲渡したことはない。 イ本件発明2及び同3は,原告Bが完成させたものであるが,LG電子の従業 員として職務上した発明ではないし(原告Bは,LG電子から,研究開発に携わることを禁止されており,LG電子も,原告Bが発明を完成させることなど期待していなかった。なお,被告は,韓国訴訟手続において,本件各発明が原告BのLG電子における職務発明ではないことを自認していた〔甲7,9〕。),本件発明2及び同3のうち,本件発明2-1以外は,原告BがLG電子を退職した後に完成させたものであるから,本件発明2及び同3が,職務発明として,その特許を受ける権利が原告BからLG電子に譲渡されたということはない。 ウ被告は,本件発明1-1等に含まれる「第1の構成」や,本件発明1-2に含まれる「オーバーラップ構成」が,それぞれC第1発明,C第2発明に相当すると主張する。 しかし,C第1発明は,特開平7-134301号公報(甲7の添付資料4。 以下「日立公報」という。)において開示されていた公知の構成であったし,C第2発明は,既に公表されていた論文(甲14の添付資料1)に実質的に記載されているか,特開平7-36058号公報(甲32)及び特開平7-306417号公報(甲34)に開示されている公知の構成を組み合わせたにすぎないものであるから,Cがこれらの発明者であることを前提とする主張は失当である。なお,原告Bは,確かにLG電子においてCと同一の部署において勤務した時期があるが,LG電子から研究開発に携わることを禁止されていたこともあり,Cの発明に接したことはない。 したがって,本件発明1は,LG電子の従業員がした発明を原告Bが知得し,これを原告Aに開示したというものではなく,原告Aが,LG わることを禁止されていたこともあり,Cの発明に接したことはない。 したがって,本件発明1は,LG電子の従業員がした発明を原告Bが知得し,これを原告Aに開示したというものではなく,原告Aが,LG電子の従業員の開発成果とは別に発明したものである。 (3) 争点3(本件各発明は,LG電子又は被告の営業秘密に属するものであったか)について【被告の主張】ア総論 本件各発明は,争点2について主張したとおり,C,原告Bその他のLG電子の従業員によりされた職務発明である。LG電子及び被告は,液晶ディスプレイの製造開発等を行うメーカーであるから,原則として,社内での研究開発,技術的検討その他の液晶関連技術に関する情報を外部に公開することはない。したがって,これらの情報は,非公知性を有し,かつ,事業活動に有用な技術上の情報である。また,LG電子及び被告は,これらの技術情報に関し,契約により従業員に機密保持義務を課していたほか,研究施設の立入り,技術情報の保管共に厳重な措置を執っていたのであるから,秘密として管理されていたということもできる。したがって,本件各発明に関連するLG電子又は被告の技術情報は,原告大林精工又は原告Bによる日本での各特許出願がされた当時,いずれもLG電子又は同社からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告の営業秘密(不競法2条6項)であった。 具体的には,本件各発明に関連する次の技術情報が,LG電子又は被告の営業秘密に該当する。 イ本件発明1-1について本件発明1-1を構成するC第1発明(第1の構成)が,LG電子又は被告の営業秘密に該当する。また,原告BがLG電子の職務上発明した第2の構成及び第3の構成も,LG電子又は被告の営業秘密に当たる。 ウ本件発明1-2について本件発明 構成)が,LG電子又は被告の営業秘密に該当する。また,原告BがLG電子の職務上発明した第2の構成及び第3の構成も,LG電子又は被告の営業秘密に当たる。 ウ本件発明1-2について本件発明1-2の構成するC第2発明(オーバーラップ構成)が,LG電子又は被告の営業秘密に該当する。 エ本件発明1-3について本件発明1-3のうち●(省略)●との構成は,原告Bが作成した報告書(乙24)に記載されているLG電子又は被告の営業秘密である。 オ本件発明1-4について本件発明1-4のうち「横電解方式液晶ディスプレイにおいて,アルミニウム系の合金が走査信号配線を被覆しており,映像信号配線との交差部のアルミニウム系 合金の表面にアルミニウム酸化物層が形成されている構成」及び「走査信号配線を銅で形成するとの構成」は,いずれもLG電子の技術として特許出願しており(乙70,71),LG電子又は被告の営業秘密である。 カ本件発明1-5について本件発明1-5のうち●(省略)●は,Cが作成した報告書(乙72)に記載されているLG電子又は被告の営業秘密である。 キ本件発明1-6について本件発明1-6のうち,①共通電極を固定した従来の駆動方式における,映像信号配線に印加される映像信号電圧の最大振幅及び走査線に印加される電圧の最大振幅,②駆動電圧の増大により,走査線と映像信号配線のショートが実際に多発しやすくなること,③映像信号配線の信号電圧が大きくなると,共通電極でシールドする効果も弱くなり,垂直クロストークも発生しやすくなること,④映像信号配線の信号電圧が大きくなると,カラーフィルター基板の裏面側に全面に形成されている透明電極と画素電極間に印加される電界も大きくなり,可動性イオンが液晶層に移動しやすくなって,実 なること,④映像信号配線の信号電圧が大きくなると,カラーフィルター基板の裏面側に全面に形成されている透明電極と画素電極間に印加される電界も大きくなり,可動性イオンが液晶層に移動しやすくなって,実際に,残像などの問題が発生してしまうこと,という4つの知見は,いずれもLG電子又は被告の営業秘密である(甲14,乙8,48,50)。 ク本件発明2-1について本件発明2-1に関し,原告Bは,●(省略)●を検討していたところ,これらの技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙74)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 ケ本件発明2-2について本件発明2-2を構成する静電気対策要保護回路及びハーフ・トーン・マスク構成は,原告Bが作成した報告書(乙56)やCが作成した報告書(乙57)に記載されているLG電子又は被告の営業秘密である。 コ本件発明2-3について 本件発明2-3に関し,原告Bは,●(省略)●を検討していたところ,これらの技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙75)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 サ本件発明2-4について本件発明2-4を構成するスリット上のマスクを使用したハーフ・トーン・マスク構成は,原告BがLG電子における主たる業務としていたのであるから(乙25),LG電子又は被告の営業秘密に当たる。 シ本件発明2-5について本件発明2-5に関し,原告Bは,液晶の注入に関し●(省略)●との検討を行っており,これらの技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙76)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 ス本件発明2-6について本件発明2-6に関し,原告Bは,●(省略)●について検討していたところ,この技術情報は原告Bが作成した出願稟議書 に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 ス本件発明2-6について本件発明2-6に関し,原告Bは,●(省略)●について検討していたところ,この技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙77)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 セ本件発明2-7について本件発明2-7に関し,原告Bは,●(省略)●について検討していたところ,この技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙78)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 ソ本件発明2-8について本件発明2-8に関し,原告Bは,●(省略)●について検討していたところ,この技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙79ないし81)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 タ本件発明2-9について本件発明2-9に関し,原告Bは,●(省略)●について検討していたところ,この技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙82)に記載されたLG電子又は 被告の営業秘密である。 チ本件発明2-10について本件発明2-10に関し,原告Bは,●(省略)●との記載の技術報告書(乙23)を作成しており,この技術情報はLG電子又は被告の営業秘密である。 ツ本件発明2-11について本件発明2-11に関し,原告Bは,●(省略)●について検討していたところ,この技術情報は原告Bが作成した出願稟議書(乙83,84)に記載されたLG電子又は被告の営業秘密である。 テ本件発明3について本件発明3-1及び同3-2は,本件発明2-2に係る特許出願から分割出願された発明であり,本件発明3-3は,本件発明2-4に係る特許出願から分割出願された発明であるから,本件発明2-2及び同2-4を構成する技術がLG電子又は被告の営業秘密である以上, 出願から分割出願された発明であり,本件発明3-3は,本件発明2-4に係る特許出願から分割出願された発明であるから,本件発明2-2及び同2-4を構成する技術がLG電子又は被告の営業秘密である以上,本件発明3に係る技術もLG電子又は被告の営業秘密であったというべきである。 【原告らの主張】ア総論被告は,本件各発明が,これらに係る特許出願日時点において,LG電子又は被告の営業秘密であった旨主張するが,次に述べるとおり,本件各発明は,有用性又は非公知性を欠くものであり,営業秘密には当たらない。 イ本件発明1-1について本件発明1-1のうち,「第1の構成」は,日立広報に開示されていた構成であり,「第3の構成」は,特開平7-159786号(甲59)に開示されていた構成であるから,いずれも公知性を欠くものであった。 ウ本件発明1-2について本件発明1-2のうち,「オーバーラップ構成」は,既に公表されていた論文(甲14の添付資料1)に実質的に記載されているか,特開平7-36058号公 報(甲32)及び特開平7-306417号公報(甲34)に開示されている公知の構成を組み合わせたにすぎないものであるから,非公知性を欠くものであった。 エ本件発明1-3ないし同1-6について本件発明1-3ないし同1-6について,これらに含まれる「第1の構成」が公知であったことは前記イで主張したとおりであるし,「第1の構成」に付加された技術情報と主張するものも,既に公開されていた公開特許公報や論文等に記載された公知の情報であるか,LG電子又は被告の技術情報に属するか判然としないものであるから,本件発明1-3ないし同1-6がLG電子又は被告の営業秘密に属するということはできない。 オ本件発明2-1についてLG か,LG電子又は被告の技術情報に属するか判然としないものであるから,本件発明1-3ないし同1-6がLG電子又は被告の営業秘密に属するということはできない。 オ本件発明2-1についてLG電子は,本件発明2-1について,韓国で特許出願を行っており,1995年(平成7年)11月24日には,同出願に係る明細書は閲覧可能な状態となっていたものである(甲53,54)。したがって,本件発明2-1に係る日本での特許出願日(平成9年11月12日)時点において,本件発明2-1は非公知性を欠いていたというべきである。 カ本件発明2-2について本件発明2-2に含まれる構成のうち,静電気対策用保護回路については,1995年(平成7年)頃には既にLG電子の製品に採用され,市販されており(甲25),ハーフ・トーン・マスク構成については,特開平10-163174号公報(甲25の添付資料2)や,LG電子が自ら出願した特開平10-62818号公報(甲28)及び特開平5-61180号公報(甲40)などで開示されていたのであるから,本件発明2-2は非公知性を欠くものであった。 キ本件発明2-3について本件発明2-3のうち,液晶パネルの製造過程で露光装置を用いること,露光装置における光線の種類,照射角度などの検討情報は,漠然とした知見であって,有用性を欠くというべきである。また,同情報は,LG電子による韓国での特許出願 の結果,1998年(平成10年)6月5日には公開されており(甲39),本件発明2-3に係る日本での特許出願日(平成11年3月9日)には非公知性を欠くものであった。 ク本件発明2-4について本件発明2-4に含まれるスリット上のハーフ・トーン・マスク構成については,前記キのとおり,本件発明2-4に係る日本での特許 日)には非公知性を欠くものであった。 ク本件発明2-4について本件発明2-4に含まれるスリット上のハーフ・トーン・マスク構成については,前記キのとおり,本件発明2-4に係る日本での特許出願日(平成11年4月22日)当時,非公知性を欠くものであった。 ケ本件発明2-5について本件発明2-5のうち,「高温注入のためCellにHeaterを付着」させる構成及び「CellとHeaterとの間に熱弾性体(ex.シリコンゴム)を形成し,Cellが熱に均一に伝達することができるようにする」構成は,いずれもLG電子による韓国での特許出願の結果,1998年(平成10年)11月16日には公開されており(甲41),本件発明2-5に係る日本での特許出願日(平成11年5月27日)には非公知性を欠くものであった。 コ本件発明2-6について被告が営業秘密と主張する,前後する複数の走査線に重なり合う走査信号波形を印加する検査方法は,LG電子による韓国での特許出願の結果,1996年(平成8年)7月20日には公開されており(甲42),本件発明2-6に係る日本での特許出願日(平成11年6月22日)には非公知性を欠くものであった。 サ本件発明2-7について被告が営業秘密と主張する,液晶注入工程において,液晶注入室で加熱又は加圧が始まった時に液晶トレイを冷却する方法は,LG電子による韓国での特許出願の結果,1998年(平成10年)6月5日には公開されており(甲43),本件発明2-7に係る日本での特許出願日(平成11年7月22日)には非公知性を欠くものであった。 シ本件発明2-8について 被告が営業秘密と主張する,透過光量を多段階に変調させたホトマスクを用いる方法等は,前記キのとおり,本件発明2-8に係る日本での特許 くものであった。 シ本件発明2-8について 被告が営業秘密と主張する,透過光量を多段階に変調させたホトマスクを用いる方法等は,前記キのとおり,本件発明2-8に係る日本での特許出願日(平成12年1月19日)当時,非公知性を欠くものであったし,「プラズマエッチング処理」及び「プラズマアッシング処理」は,液晶表示装置の分野における公知技術であった(甲44,45)。 ス本件発明2-9について被告が営業秘密と主張する,液晶表示装置のバックライトにおいて,液晶パネル側と反対側の面に凹凸加工する方法は,LG電子による韓国での実用新案出願の結果,1996年(平成8年)11月21日には公開されており(甲46),本件発明2-9に係る日本での特許出願日(平成12年2月15日)当時,非公知性を欠くものであった。 セ本件発明2-10について被告が営業秘密と主張する,「IPSモードはノーマリーブラックモードなので,ビーズの周辺に液晶配向不良の領域が発生すればその領域から光が漏れてしまいます。」との知見は,漠然とした知見にすぎず有用性は認められないし,これが記載された技術報告書(乙23)には,展示会で同知見を獲得した旨が記載されているから,非公知性も認められない。 ソ本件発明2-11について被告が営業秘密と主張する,アクティブマトリックス基板とカラーフィルター基板とを貼り合わせる際に,大気圧で合着した後,紫外線効果タイプのシール剤を用いる方法が記載された出願稟議書(乙83,84)は,原告BがLG電子を退職した後に作成されたものであり,誰でもアクセスが可能であったというべきであるから,非公知性は認められない。 (4) 争点4(原告らの行為が被告に対する不法行為を構成するか)について【被告の主張】ア れたものであり,誰でもアクセスが可能であったというべきであるから,非公知性は認められない。 (4) 争点4(原告らの行為が被告に対する不法行為を構成するか)について【被告の主張】ア不正競争行為 前記(2)及び(3)の【被告の主張】のとおり,本件各発明はいずれもLG電子の従業員であった原告B及びCがした職務発明であり,これらの者とLG電子との契約により,本件各発明についての特許を受ける権利はLG電子に譲渡されていた。また,本件各発明は,いずれもLG電子又は被告の営業秘密である。 原告Bは,LG電子又は被告の営業秘密である本件発明1を,不正の利益を得る目的をもって原告Aに開示したものであり,同行為は不競法2条1項7号の不正競争行為に該当する。また,原告Aは,原告Bにより上記開示行為が不正開示行為であることを知りながらLG電子又は被告の営業秘密である本件発明1を取得したものであり,同行為は不競法2条1項8号の不正競争行為に該当する。さらに,原告大林精工の代表者である原告Aは,上記のとおり取得したLG電子又は被告の営業秘密である本件発明1について,原告大林精工を出願人として特許出願して開示したものであり,同行為は不競法2条1項8号の不正競争行為に該当する。 原告Bは,LG電子又は被告の営業秘密である本件発明2及び同3を,不正の利益を得る目的を持って特許出願して開示したものであり,同行為は不競法2条1項7号の不正競争行為に該当する。 これらの互いに関連共同する行為によって,LG電子又は被告は営業上の利益を侵害されたから,原告らは,被告が受けた損害を連帯して賠償する責任を負う(不競法4条)。 イ一般不法行為前記(2)の【被告の主張】のとおり,本件発明1-1ないし同1-5は,いずれもLG電子の従業員 から,原告らは,被告が受けた損害を連帯して賠償する責任を負う(不競法4条)。 イ一般不法行為前記(2)の【被告の主張】のとおり,本件発明1-1ないし同1-5は,いずれもLG電子の従業員であった原告B及びCがした職務発明であり,これらの者とLG電子との契約により,上記各発明についての特許を受ける権利はLG電子に譲渡されていた。 ところが,原告Bは,上記各発明に係る技術情報を原告Aに開示し,原告Aは,原告大林精工の代表者として,原告大林精工を出願人とする特許出願をして,本件ライセンス特許権(本件特許権1-1ないし同1-5)を取得し,日立ディスプレ イズとの間で本件ライセンス契約を締結した。これらの行為により,LG電子又は同社からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告は,本件発明1-1ないし同1-5についてライセンス料を取得し又はノウハウとして秘匿することができなくなった。原告らによる上記行為は,被告に対する一般不法行為に該当するとともに,互いに関連共同する行為であるから,共同不法行為を構成するというべきであり,原告らは,LG電子又は被告が受けた損害を連帯して賠償する責任を負う(民法715条)。 【原告らの主張】ア不正競争行為について前記(2)及び(3)の【原告らの主張】のとおり,本件発明1は原告Aが,本件発明2及び同3は原告Bが発明したものであり,その特許を受ける権利をLG電子又は被告に譲渡してはいないし,本件各発明がLG電子又は被告の営業秘密に属するということもないから,原告らの行為について不正競争行為は成立しない。 イ一般不法行為について前記(2)の【原告らの主張】のとおり,本件発明1-1ないし同1-5は,いずれも原告Aが発明したものであり,LG電子又は被告が特許を受ける権利を有して 成立しない。 イ一般不法行為について前記(2)の【原告らの主張】のとおり,本件発明1-1ないし同1-5は,いずれも原告Aが発明したものであり,LG電子又は被告が特許を受ける権利を有していたものではないから,原告大林精工による特許出願がLG電子又は被告に対する一般不法行為を構成することはない。 (5) 争点5(原告らの不法行為により被告が受けた損害の額)について【被告の主張】原告らによる不正競争行為又は一般不法行為によって,LG電子又は被告は,本件各発明について特許出願するかノウハウとして秘匿するかの選択の機会を奪われ,また,営業上の利益を実現する機会を失った。LG電子又は被告が受けた損害としては,次のものをあげることができ,その合計額は6億円を下ることはない。 ア本件ライセンス契約によるライセンス料相当額(5億円)イ被告が原告らにした一連の訴訟(米国旧訴訟,韓国訴訟手続,アップル訴訟, 東芝訴訟,移転登録請求訴訟及び本件訴訟)において被告が負担した費用(うち,韓国訴訟手続に要した費用として,合計520万4014円〔5334万1151ウォンを平成27年10月5日現在の為替相場で日本円に換算した額〕)【原告らの主張】前記(2)及び(3)の【原告らの主張】のとおり,本件各発明についてLG電子又は被告は特許を受ける権利を有していたものではないし,本件各発明がLG電子又は被告の営業秘密に当たるということもないから,被告に損害は発生していないというべきである。 なお,仮に本件発明1-1ないし同1-5についてLG電子又は被告が特許を受ける権利を有していたとしても,LG電子又は被告は,C第1発明やC第2発明につき日本国内で特許出願しないことを自ら選択したのであるから,原告らの行為がなければLG についてLG電子又は被告が特許を受ける権利を有していたとしても,LG電子又は被告は,C第1発明やC第2発明につき日本国内で特許出願しないことを自ら選択したのであるから,原告らの行為がなければLG電子又は被告がライセンス料を得ることができたという関係にはなく,LG電子又は被告にライセンス料相当額の損害が発生しているとはいえない。 また,韓国訴訟手続における訴訟費用を損害として請求する部分については,同訴訟費用の負担の裁判について日本における執行判決を求めた訴訟の確定判決(水戸地方裁判所下妻支部判決,名古屋高等裁判所判決)の既判力に抵触しているから,仮に同請求部分に係る訴えが適法であったとしても(争点1参照),同請求は棄却されるべきである。 (6) 争点6(不法行為による損害賠償請求権について消滅時効が成立するか)について【原告らの主張】仮に,原告らの行為が不正競争行為や一般不法行為を構成し,かつ,被告に何らかの損害が生じているとしても,被告は,遅くとも2004年(平成16年)3月23日には,原告らによる本件各発明の開示行為等を認識したところ(甲30),同時点から3年の経過により,被告の原告らに対する損害賠償請求権は,時効により消滅したというべきである。 【被告の主張】ア時機に後れた攻撃防御方法原告らによる消滅時効の援用は,時期に後れた攻撃防御方法であるから,民訴法157条1項により却下されるべきである。 イ信義則違反又は権利濫用原告らは,合意書(甲3)に署名し,被告をして,原告らが責任を認めたものと期待させておきながら,合意書に記載された義務を履行しないなど,不当な態度をとっていたこと,被告は原告らに対して執るべき法的手段を尽くしてきたことなどからして,原告らによる消滅時効の援用は たものと期待させておきながら,合意書に記載された義務を履行しないなど,不当な態度をとっていたこと,被告は原告らに対して執るべき法的手段を尽くしてきたことなどからして,原告らによる消滅時効の援用は,信義則に反し,又は権利の濫用として許されない。 ウ消滅時効の起算日被告が,原告らの不正競争行為又は不法行為による損害を具体的に認識したのは,韓国訴訟手続において,原告大林精工及び原告Bが上告理由補充書(乙124)を提出し,これを被告が受領した2009年(平成21年)8月11日であるから,消滅時効の起算日は早くとも同日になるというべきである。 エ時効の中断(ア) 被告は,2011年(平成23年)10月6日,原告らによる営業秘密の不正取得行為,不正開示行為を原因とする損害賠償等を請求する米国新訴訟を提起したから,裁判上の請求により,時効は中断したというべきである(民法147条1号)。 (イ) 被告は,原告らが提起した債務不存在確認の訴えである本件訴訟において,請求の棄却を求める答弁をしたから,裁判上の請求により,時効は中断したというべきである(民法147条1号)。 (ウ) 被告は,2006年(平成18年)に,韓国において特許権又は出願人の地位の移転を求める訴訟を韓国で提起したから,裁判上の請求により,時効は中断したというべきである(民法147条1号)。 (エ) 原告大林精工の代表者である原告Aと,原告Bは,いずれも被告との間で,本件各特許権を含む権利の移転登録手続を約する合意書(甲2)に署名したのであるから,損害賠償債務を承認したものとして,時効は中断した(民法147条3号)。 (7) 争点7(原告らは,法律上の原因なく,日立ディスプレイズからのライセンス料相当額等を悪意で利得し,これにより被告に損 害賠償債務を承認したものとして,時効は中断した(民法147条3号)。 (7) 争点7(原告らは,法律上の原因なく,日立ディスプレイズからのライセンス料相当額等を悪意で利得し,これにより被告に損失を与えているか)について【被告の主張】ア前記(2)のとおり,本件ライセンス発明(本件発明1-1ないし同1-5)は,LG電子の従業員であった原告B及びCの職務発明であり,その特許を受ける権利はLG電子又は被告が有していたところ,原告大林精工は,これらの発明について特許出願(冒認出願)をして,本件特許権1-1ないし同1-5(本件ライセンス特許権)を取得し,日立ディスプレイズとの間で本件ライセンス契約を締結して,平成15年6月13日までに5億円のライセンス料を受領した。なお,原告A及び原告Bは,遅くとも同年12月13日までに,原告大林精工から,上記5億円のライセンス料の分配を受けた(原告Aについて1億5000万円,原告Bについて3億5000万円)。 LG電子又は被告は,原告Bの隠蔽行為によって,当時,本件ライセンス発明を認識できず,このために日本での特許出願ができなかったのであり,特許出願しないことを自ら選択したものではない(現に,LG電子及び被告は,液晶表示装置について日本で多数の特許出願をしているところである。)。したがって,LG電子又は被告は,原告大林精工が本件ライセンス発明につき日本で特許出願したことにより,同発明について日本で特許出願し又はノウハウとして秘匿することにより営業上の利益を受ける機会を失うという「損失」を受けた。なお,公平に反する財産的価値の移動を調整するという不当利得法理の目的からすれば,LG電子又は被告が本件ライセンス発明について特許出願をしたかや,これを欲したかを問うことなく,「損失」が肯定されるべきで 公平に反する財産的価値の移動を調整するという不当利得法理の目的からすれば,LG電子又は被告が本件ライセンス発明について特許出願をしたかや,これを欲したかを問うことなく,「損失」が肯定されるべきであるし,原告Bが本件ライセンス発明を原告Aに 開示することがなければ,LG電子又は被告は,これらの発明について特許出願して第三者からライセンス料を得られたことが普通であると認められ,なお「損失」が肯定されるべきである。 他方,原告らは,LG電子又は被告に属すべき本件ライセンス発明につき特許出願して本件ライセンス特許権を取得し,これらを用いて5億円のライセンス料を受領するという「利得」を得ている。これらLG電子又は被告の損失と原告らとの利得との間には因果関係があり,原告らの利得には法律上の原因がなく,かつ,原告らは利得に法律上の原因がないことにつき悪意であった。 イ被告は,原告らが共謀して上記冒認出願並びにライセンス料の取得及び分配を行っていることから,原告らに対し,5億円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまでの年5分の割合による法定利息の連帯支払を求めるものであるが,仮に,原告A及び原告Bに対して,5億円及びこれに対する上記法定利息の全額の支払を求めることができない場合には,原告A及び原告Bがそれぞれ分配を受けたライセンス料の額(原告Aについて1億5000万円,原告Bについて3億5000万円)及びこれに対する分配を受けた後の日から支払済みまでの法定利息の限りにおいて,原告大林精工と連帯して支払うことを求める。 【原告らの主張】ア本件ライセンス発明は,いずれも原告Aが完成させた発明であるから,原告大林精工による特許出願が冒認出願に当たるということはない。 この点を措くとしても,LG電子又は被告は,本件 らの主張】ア本件ライセンス発明は,いずれも原告Aが完成させた発明であるから,原告大林精工による特許出願が冒認出願に当たるということはない。 この点を措くとしても,LG電子又は被告は,本件発明1を構成すると自ら主張するC第1発明につき,韓国及び米国で特許出願しながら,日本では出願しておらず,日本では特許を受けないことを自ら選択したものであり,韓国及び米国での特許出願が公開されたために発明の営業秘密性も喪失している(そもそも,リバースエンジニアリングが可能なこれらの発明に経済的価値は認められない。)。被告は,仮にLG電子又は被告が本件ライセンス発明につき特許出願していれば第三者からライセンス料を収受できたとの事実関係を立証していない。これらのことからすれ ば,原告大林精工がライセンス料を収受した事実は,LG電子又は被告の「損失」を何ら導かないのであり,被告による不当利得返還請求には理由がない。 イ被告は,原告A及び原告Bが,ライセンス料の分配を受けたなどとして,原告大林精工と連帯して5億円全額について不当利得返還義務を負うなどと主張するが,そもそも,原告Aも原告Bも,ライセンス料の分配を受けていないし(同人らが代表者となっている原告大林精工及び三国電子有限会社が受領しているにとどまる。),現実に得た利得の額を超えて不当利得返還義務を負うとすることは,不当利得制度が予定するところではないというべきである。 (8) 争点8(原告A及び原告Bに関して,ライセンス料相当額等の不当利得返還請求権について消滅時効が成立するか)について【原告らの主張】上記(7)の【原告らの主張】のとおり,原告A及び原告Bは,原告大林精工からライセンス料の分配を受けたものではないが,仮に,原告大林精工によるライセンス料の受領が原告A て【原告らの主張】上記(7)の【原告らの主張】のとおり,原告A及び原告Bは,原告大林精工からライセンス料の分配を受けたものではないが,仮に,原告大林精工によるライセンス料の受領が原告Aの受領と,三国電子有限会社によるライセンス料の受領が原告Bによる受領と解釈されるのであれば,原告A及び原告Bは,同受領が平成15年12月13日までにされたとの分配時期に関する被告の主張を認める。 そうすると,被告らは,原告A及び原告Bに対して,同日から不当利得返還請求権を行使できることとなるところ,同日から10年の経過により,被告の原告A及び原告Bに対する不当利得返還請求権は時効により消滅したというべきである。 【被告の主張】ア消滅時効の起算日被告が,原告大林精工が日立ディスプレイズからライセンス料を受領した事実を認識したのは,韓国訴訟手続において,原告大林精工及び原告Bが上告理由補充書(乙124)を提出し,これを被告が受領した2009年(平成21年)8月11日である(さらには,原告大林精工がライセンス料を原告A及び原告Bに分配したことを認識したのは,平成26年3月26日である。)から,消滅時効の起算日は 早くとも平成21年8月11日になるというべきである。 イ時効の中断(ア) 被告は,2011年(平成23年)10月6日,原告らを相手方として,不当利得の返還等を求める米国新訴訟を提起したから,裁判上の請求により,時効は中断したというべきである(民法147条1号)。 (イ) 米国新訴訟が裁判上の請求に当たらないとしても,米国新訴訟の提起及び維持は,裁判上の催告に当たり,同催告は,米国新訴訟が終局した2015年(平成27年)9月15日まで継続していたというべきであるから,同日から6か月以内にされた丙事件の提 ても,米国新訴訟の提起及び維持は,裁判上の催告に当たり,同催告は,米国新訴訟が終局した2015年(平成27年)9月15日まで継続していたというべきであるから,同日から6か月以内にされた丙事件の提起によって,裁判上の請求により,時効は中断したというべきである(民法153条,147条1号)。 (ウ) 被告は,甲事件について平成25年3月6日に答弁書を提出し,原告らの請求を棄却するよう求めた。同日時点の原告らの請求は,原告らの不法行為による損害賠償債務がないことの確認及び原告大林精工の不当利得返還債務がないことの確認を求めるものであり,原告A及び原告Bの不当利得返還債務とは,発生原因事実を同じくしている。よって,上記棄却の答弁及び甲事件の維持は,裁判上の催告に当たり,同催告は丙事件の提起時まで継続していたというべきであるから,裁判上の請求により,時効は中断したというべきである(民法153条,147条1号)。 (9) 争点9(本件各特許権について,不当利得返還請求権又は不当利得の法理による特許権移転登録手続請求権が認められるか)について【被告の主張】前記(2)の【被告の主張】のとおり,本件各発明は,LG電子の従業員である原告B及びCによる職務発明であり,その特許を受ける権利はLG電子又は被告に承継された。それにもかかわらず,原告大林精工は,本件発明1について特許出願して,本件特許権1-1,同1-2,同1-4ないし同1-6の登録を受け,原告Bは,本件発明2及び同2について特許出願して,本件特許権2-2,同2-4,同3-1ないし同3-3の登録を受けている。他方で,LG電子又は被告は,これら の特許権の登録を受ける機会を失う損失を受けている。なお,LG電子又は被告の「損失」を認めるために,被告が特許出願し又は特許を欲してい 登録を受けている。他方で,LG電子又は被告は,これら の特許権の登録を受ける機会を失う損失を受けている。なお,LG電子又は被告の「損失」を認めるために,被告が特許出願し又は特許を欲していた事実を要するものではない。 本件各特許権は,いずれも平成24年4月1日より前にされた特許出願に係るものであるので,現行特許法(平成23年法律63号による改正後のもの。)74条に基づき特許権移転登録を求めることはできないものの,本件のように,特許を受ける権利を有しない者(無権利者)が特許出願をして特許権の登録を受けた場合には,真に特許を受ける権利を有していた者(真の権利者)は,不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づき,無権利者に対して,当該特許権につき権利者へ直接特許権移転登録手続をすることを求めることができるというべきである。 この点について,生ゴミ処理装置に係る最高裁平成9年(オ)第1918号同13年6月12日第三小法廷判決・民集55巻4号793頁(以下「平成13年最判」という。)は,真の権利者が特許出願を行ったところ,無権利者が特許を受ける権利の譲渡を受けたとして出願人の名義が変更された事例において,真の権利者による特許権移転登録手続を認めた事例である。しかしながら,平成13年最判が真の権利者による移転登録手続請求を認めた実質的な考慮要素(①原告大林精工及び原告Bの冒認出願によりLG電子又は被告が財産的権利である特許を受ける権利を失っている一方,原告大林精工及び原告Bは法律上の原因なく特許権を得ていること,②LG電子又は被告の特許を受ける権利と本件各特許権とは連続性を有していると評価できること,③被告はもはや特許出願により特許を受け得ないこと,④損害賠償請求による救済では不十分であること,⑤原告らが移転義務を認める旨の合意書 ける権利と本件各特許権とは連続性を有していると評価できること,③被告はもはや特許出願により特許を受け得ないこと,④損害賠償請求による救済では不十分であること,⑤原告らが移転義務を認める旨の合意書に署名していたことから特許を受ける権利の確認訴訟を提起する機会が失われたこと,⑥移転登録を認めるのが最も簡明な救済手段であること,⑦専ら権利の帰属を審理するのであれば特許庁審査官による1次的判断を要しないこと,⑧原告らがした寄与については金銭償還で対応できること)は,本件にも妥当するのであるから,本件各特許権について,被告への移転登録手続が認められるべきである。 【原告らの主張】既に主張したとおり,本件各発明についての特許を受ける権利がLG電子又は被告に帰属したことはないし,仮に帰属していたとしても,LG電子又は被告は本件各発明につき特許出願せず,特許を取得しないことを自ら選択したのであるから,本件各特許権について原告大林精工又は原告Bが登録を受けていた事実をもって,LG電子又は被告に「損失」があるとはいえない。 また,平成13年最判は,真の権利者が特許出願していたところ,特許を受ける権利の持分が譲渡された旨の偽造の譲渡証書とともに出願人名義変更届が提出された事案について,同事実をもって「損失」「利得」及び「因果関係」を認め,特許権移転登録手続を認めたものにすぎず,本件のように真の権利者と主張する者が特許出願すらしていない事案において,特許権移転登録手続を求める請求は,主張自体失当である(東京地裁平成14年7月17日判決・判時1799号155頁〔ブラジャー事件〕,東京地裁平成19年7月26日判決〔粉体移送装置事件〕,大阪地裁平成22年11月18日判決)。 第3 当裁判所の判断 1 不法行為による損害賠償請求の成否(争 99号155頁〔ブラジャー事件〕,東京地裁平成19年7月26日判決〔粉体移送装置事件〕,大阪地裁平成22年11月18日判決)。 第3 当裁判所の判断 1 不法行為による損害賠償請求の成否(争点1ないし6)について(1) 争点1(丙事件のうち,不法行為による損害賠償を求める請求に係る訴えは適法か)についてア反訴の要件について丙事件は,甲事件の反訴として提起されたものであるところ,甲事件には,原告らが,本件各発明につき,原告Bが原告Aないし原告大林精工に開示した行為や,原告大林精工又は原告Bが特許出願した行為について,被告に対して不法行為による損害賠償債務を負わないことの確認を求める訴えが含まれていたものと認められる。そして,丙事件のうち不法行為による損害賠償を求める訴えは,被告が,本件発明につき原告大林精工又は原告Bが特許出願した行為等について,原告らに不法行為による損害賠償債務が発生すると主張して,原告らに対し,損害賠償金の支払 を求める訴えであるから,同請求は,本訴である甲事件に関連する請求であり,反訴の要件を満たすといえる(民訴法146条1項柱書)。 原告らは,丙事件のうち不法行為による損害賠償請求に係る訴えは,東京地方裁判所に管轄がないとか,著しく訴訟手続を遅滞させるなどと主張し,反訴の要件を満たさないと主張するが,同請求は,原告大林精工又は原告Bによる日本での特許出願をもって不法行為を構成すべき主たる事実として主張する不法行為に関する訴えであるから,日本国特許庁の所在地(特許出願をした地)である東京都千代田区を管轄する東京地方裁判所が管轄権を有するというべきであるし(民訴法5条9号),当裁判所は,平成27年10月14日に丙事件に係る反訴状が提出されてから約5か月後の平成28年3月18日に本件 千代田区を管轄する東京地方裁判所が管轄権を有するというべきであるし(民訴法5条9号),当裁判所は,平成27年10月14日に丙事件に係る反訴状が提出されてから約5か月後の平成28年3月18日に本件の口頭弁論を終結するに至っているから,丙事件の提起が著しく訴訟手続を遅滞させるということもない。 イ訴えの利益の有無及び信義則違反の成否について原告らは,丙事件における不法行為による損害賠償請求に係る訴えのうち,韓国訴訟手続に要した訴訟費用を損害として請求する部分は,名古屋高等裁判所の確定判決により認容された部分については訴えの利益を欠き,同判決や水戸地方裁判所下妻支部判決によって,強制執行をすることが許可されなかった部分については,執行判決請求訴訟事件の不当な蒸し返しであるから信義則違反により,いずれも不適法となると主張する。 確かに,一般に,日本での訴訟手続に要した訴訟費用については,訴訟費用額の負担の裁判(民訴法61条以下)及び訴訟費用額の確定手続(同法71条)が用意されており,同手続の結果確定した債務名義により強制執行することもできるのであるから(民事執行法22条4号の2),訴訟費用について重ねて給付の訴えを提起する利益を欠くことが多いものと考えられる。また,前記前提事実によれば,韓国訴訟手続の訴訟費用については,韓国判決において訴訟費用額の負担の裁判がされ,ソウル中央地方法院司法補佐官による訴訟費用額の確定決定もされているところ,訴訟費用額の負担を定める判決も外国裁判所の判決であることに変わりはない から,一般に,外国判決の執行を求める訴えを提起することにより,その強制執行を求めることができるといえる(民事執行法24条,22条6号)。 しかしながら,外国判決の執行を求める訴えが認められるには,民訴法118条 判決の執行を求める訴えを提起することにより,その強制執行を求めることができるといえる(民事執行法24条,22条6号)。 しかしながら,外国判決の執行を求める訴えが認められるには,民訴法118条各号に定める要件を満たす必要があり,日本における訴訟費用額の負担の裁判と異なり,直ちに日本国内における執行力を有するものではない(現に,民訴法118条1号の要件を欠くことを理由に,確定した名古屋高等裁判所判決は韓国判決の大部分について,水戸地方裁判所下妻支部判決は韓国判決の全てについて,強制執行を認めていない。)。また,前記名古屋高等裁判所判決(甲62)は,その主文において,「控訴人(判決注:被告を指す。)と被控訴人(判決注:原告大林精工を指す。)及びBとの間の大韓民国ソウル高等法院2007ナ96470号事件について,同裁判所が平成21年1月21日に言い渡した原判決別紙記載の判決に基づき,同判決注の『訴訟費用は被告らの負担とする。』との部分のうち,本判決別紙2目録順番1及び2の特許に係る部分の費用の限度で,控訴人が被控訴人に対し強制執行することを許可する。」と記載するにとどまり,被告が具体的にどの限度で原告大林精工に対して強制執行することができるかは判然としないというほかない。 かかる状況にあっては,韓国訴訟手続の訴訟費用に属する費用であっても,原告らの不法行為と相当因果関係がある損害である場合には(この点は,本案の問題である。),これを請求する給付の訴えを提起する必要性は認められるというべきであり,韓国訴訟手続の訴訟費用の一部について強制執行することを認める日本の裁判所の確定判決の存在をもって,直ちに訴えの利益を欠くということはできない。 また,外国判決の執行を求める訴えの審理においては,当該外国判決の裁判の当否については審理の対象とな とを認める日本の裁判所の確定判決の存在をもって,直ちに訴えの利益を欠くということはできない。 また,外国判決の執行を求める訴えの審理においては,当該外国判決の裁判の当否については審理の対象とならず(民事執行法24条2項),被告が原告らの不法行為により訴訟費用相当額の損害を受けたかどうかは審理の対象となっていないのであるから,丙事件の提起が執行判決請求訴訟事件の不当な蒸し返しに当たるということはできない。 ウ争点1の小括 以上によれば,丙事件のうち不法行為による損害賠償請求に係る訴えは,反訴の要件を満たし,訴えの利益を認めることができるほか,信義則に反する違法な訴えということはできず,甲事件の反訴として適法な訴えと認められる。 (2) 争点6(不法行為による損害賠償請求権について消滅時効が成立するか)についてア事案に鑑み,消滅時効の成否について先に検討する。なお,原告らによる消滅時効の援用が時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきものであるとは認められない。また,被告は,原告らによる不法行為を原因付ける事実関係として,原告大林精工又は原告Bによる日本での特許出願を主要な事実として主張していることからすれば,同請求権の判断において適用すべき法は,日本法であると認められる(法の適用に関する通則法〔平成18年法律第78号〕附則3条4項,平成18年法律第78号による廃止前の法例〔明治31年法律第10号〕11条)。 イ各項目末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告は,2003年(平成15年)1月13日,原告大林精工から,被告が製造,販売等する液晶ディスプレイが,原告大林精工の保有する本件特許権1-1及び対応する外国特許権を侵害する旨の警告を受け,同年2月12日には,原 年(平成15年)1月13日,原告大林精工から,被告が製造,販売等する液晶ディスプレイが,原告大林精工の保有する本件特許権1-1及び対応する外国特許権を侵害する旨の警告を受け,同年2月12日には,原告大林精工が日立製作所との間でライセンス契約を締結した旨が記載された警告状を受領した(甲30,65)。 (イ) 被告は,原告大林精工及び同社が保有する特許権について調査したところ,原告大林精工が液晶表示装置に関する事業を行っていないこと,本件特許権1-1に係る特許出願手続において,原告Bが審査官との面談に出席していたことなどを覚知し,これらの事実などから,被告は,原告大林精工が保有する本件特許権1-1ほか,複数の特許出願に係る発明は,いずれも原告Bを含むLG電子の従業員が同社に在職中にした職務発明であり,同社からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告に帰属すべき発明について,被告に無断で特許出願されたものと考えるに至り,平成15年10月28日,原告大林精工に対し,本件特許権1-1ないし同1 -5に係る特許権又は特許を受ける権利並びに平成10年6月末までにされた全ての液晶表示装置に係る特許出願に関する特許を受ける権利を被告に譲渡するよう求めた(甲17,30,乙6)。 (ウ) 更に,被告は,原告大林精工だけでなく,原告Bも,同人名義又は同人の父あるいは三国電子有限会社名義にて,被告に帰属すべき発明を特許出願している旨覚知した。そこで,被告は,2004年(平成16年)3月23日,被告に帰属すべき発明に係るものと考えられる特許権又は特許出願をリストアップし,これらに係る特許権又は出願人としての地位を被告に移転すること,同合意書の締結前にされた実施権設定,譲渡又は担保の設定は無効であることを確認することなどを内容とする合意書の案を作成 リストアップし,これらに係る特許権又は出願人としての地位を被告に移転すること,同合意書の締結前にされた実施権設定,譲渡又は担保の設定は無効であることを確認することなどを内容とする合意書の案を作成し,これを原告大林精工及び原告Bに宛てて送付した。同合意書案には,本件発明1及び同2に係る特許権又は特許出願が全て列挙されていた(甲2,30)。 ウ以上の事実関係からすれば,被告は,遅くとも平成16年3月23日の時点において,本件発明1及び同2について,本来被告に帰属すべき発明であるのに,原告大林精工又は原告Bが,自らを出願人として日本において特許出願し,これらの出願の内容が公開されていること,また,原告大林精工が第三者との間でライセンス契約を締結してライセンス料を受領していることを具体的に認識したというべきである。そうすると,原告大林精工及び原告Bによる特許出願や,これに先立つ原告Aによる本件発明1の取得行為等を原因とする不法行為について,被告が「損害及び加害者を知った時」(民法724条)は,同日(平成16年3月23日)というべきである(なお,本件特許権3に係る特許出願との関係でも,これらの出願が本件特許権2-2又は同2-4に係る特許出願の分割出願であることからすれば,平成16年3月23日が消滅時効の起算日になるというべきである。)。 この点について,被告は,被告が原告らの不法行為による損害を認識したのは,韓国訴訟手続における上告理由補充書を受領した2009年(平成21年)8月11日であると主張するが,「損害を知った時」とは,必ずしも損害の具体的な金額 を認識することを要するものではなく,対象となる行為が不法行為に該当すること及びこれについて賠償すべき損害が生じていることをもって足りると解されるところ,上記認定に係る事実関 体的な金額 を認識することを要するものではなく,対象となる行為が不法行為に該当すること及びこれについて賠償すべき損害が生じていることをもって足りると解されるところ,上記認定に係る事実関係によれば,被告は,被告に属すべきと認識していた発明が特許出願され,かつ,その一部について第三者との間でライセンス契約が締結されていることを認識し,平成16年3月23日には,対象となる発明を列挙した上で,特許権又は特許を受ける権利の移転を求め,また,既に設定された実施権等は無効とすることなどを内容とする合意書案を作成して原告らに送付しているのであるから,遅くとも同日には「損害及び加害者を知った」というほかはない。 そうすると,平成16年3月23日の3年後である平成19年3月23日の経過をもって,同損害賠償請求権につき消滅時効が完成しているところ,原告らは,前記前提事実のとおり,平成27年2月10日,同消滅時効を援用したから,被告の原告らに対する損害賠償請求権は,もはやこれを肯定することができない。 エ被告は,平成23年にされた米国新訴訟の提起や,平成25年にされた甲事件請求に対する棄却の答弁が裁判上の請求に当たり,時効が中断したと主張するが,既に認定したところによれば,これらは時効完成後の事由であって,時効を中断させるものではない。 被告は,平成18年に韓国で提起した訴訟が裁判上の請求に当たり,時効が中断したとも主張するが,前記前提事実によれば,被告は,当初こそ韓国訴訟手続において損害賠償を請求していたものの,後に同請求を取り下げているのであるから,この点のみをもっても,韓国での訴訟の提起をもって,裁判上の請求として時効が中断したということはできない。 被告は,原告A及び原告Bが合意書(甲2)に署名したことをもって,原告らが損害 るから,この点のみをもっても,韓国での訴訟の提起をもって,裁判上の請求として時効が中断したということはできない。 被告は,原告A及び原告Bが合意書(甲2)に署名したことをもって,原告らが損害賠償債務を承認したとして時効が中断したと主張するが,同合意書には,原告らが被告に対して損害賠償義務を負うことはおろか,原告らが被告に属するべき技術を無断で出願したことなども記載されていないのであるから,合意書への署名をもって原告らが損害賠償債務を承認したものと解することは困難である。 オなお,被告は,原告らによる消滅時効の援用が信義則に反するとか,権利の濫用であるなどとも主張するが,被告は,現に,米国や韓国において,原告らに対して訴訟を提起していたのであって,日本において原告らに対する損害賠償請求訴訟を提起することが格別困難であったなどの事情はうかがわれず,まして,被告が日本において原告らに損害賠償請求訴訟を提起することを原告らが積極的に妨げた等の事情があるとはいえないから,原告らによる消滅時効の援用が信義則に反するとか,権利の濫用に当たるということはできない。 カ争点6の小括以上によれば,仮に,原告らの行為が不正競争行為又は一般不法行為に当たるとしても,同行為を原因とする被告の原告らに対する損害賠償請求権は,時効により消滅したものと認められる。 (3) 争点5(原告らの不法行為により被告が受けた損害の額)について上記(2)のとおり,被告の損害賠償請求権は時効により消滅したというべきであるから,その余の争点について検討するまでもなく,被告による損害賠償請求には理由がないが,更に付言するに,被告は,原告らによる不正競争行為又は一般不法行為によって6億円を下ることのない損害を受けたと主張するところ,このうち,本件 するまでもなく,被告による損害賠償請求には理由がないが,更に付言するに,被告は,原告らによる不正競争行為又は一般不法行為によって6億円を下ることのない損害を受けたと主張するところ,このうち,本件ライセンス契約によるライセンス料相当額(5億円)については,後記2において詳述するとおり,LG電子又は被告は,本件ライセンス発明につき日本で特許出願をしなかったのであるから,原告らの行為がなければ,被告において本件ライセンス発明について5億円のライセンス料を得ることができたという関係にはなく上記ライセンス料相当額は,被告の主張する原告らの不正競争行為又は一般不法行為と相当因果関係のある損害とは認められないし,前記前提事実によれば,韓国訴訟手続は,被告が,被告と原告大林精工及び原告Bとの間に契約が成立したと主張してその履行を求める訴訟を提起したものであるから,その訴訟費用に相当する520万4014円が,被告の主張する原告らの不正競争行為又は一般不法行為と相当因果関係のある損害とも認め難い。また,その余の損害については,これを認め るに足りる証拠は,何ら提出されていない。 したがって,被告による損害賠償請求は,この点においても理由がないというべきである。 (4) 不法行為による損害賠償請求についてのまとめ以上によれば,本件各発明の職務発明該当性及び営業秘密該当性について判断するまでもなく,被告は,原告らに対し,原告らの不正競争行為又は一般不法行為を原因とする損害賠償請求権を有するものではないから,甲事件のうち,原告らが不正競争行為により被告に対して損害賠償債務を負わないことの確認を求める請求にはいずれも理由があり(主文1項ないし3項),丙事件のうち,原告らに対して不法行為を原因とする損害賠償を求める請求には理由がない。 り被告に対して損害賠償債務を負わないことの確認を求める請求にはいずれも理由があり(主文1項ないし3項),丙事件のうち,原告らに対して不法行為を原因とする損害賠償を求める請求には理由がない。 2 不当利得によるライセンス料等相当額の返還請求の成否(争点7及び8)について(1) 次に,原告大林精工が,本件ライセンス発明(本件発明1-1ないし同1-5)について自己を特許権者として特許出願して特許権の登録を受けた上,日立ディスプレイズとの間で本件ライセンス契約を締結して5億円を受領した事実を原因とする,被告の原告らに対する5億円及び利息の不当利得返還請求について検討する。なお,この点についても,被告は,不当利得を原因付ける事実関係として,原告大林精工による日本での特許出願を主要な事実として主張していることから,同請求権の判断において適用すべき法は,日本法であると認められる(法の適用に関する通則法附則3条4項,法例11条)。 (2)ア被告は,原告大林精工が本件ライセンス発明につき日本で特許出願をして本件ライセンス特許権を取得したことにより,LG電子又は被告が同発明について日本で特許出願し又はノウハウとして秘匿することにより営業上の利益を受ける機会を失うという「損失」を受けたものと主張し,原告大林精工が受けたライセンス料相当額を不当利得として返還するよう求めている。 イそこで検討するに,被告が主張する本件ライセンス発明の各構成及びそれら の特許を受ける権利を被告が承継したとする理由は,次のとおりである。 (ア) 本件発明1-1について,被告は,「画素電極(液晶駆動電極)と共通電極という2種類の画素電極を用い,これらを『く』の字型に屈曲させることにより,画素電極に電圧が加えられた際に,単位画素内の液晶分子を,左回転と, 1について,被告は,「画素電極(液晶駆動電極)と共通電極という2種類の画素電極を用い,これらを『く』の字型に屈曲させることにより,画素電極に電圧が加えられた際に,単位画素内の液晶分子を,左回転と,右回転の2方向に回転させる作用を有する構成」(第1の構成),「映像信号配線を屈曲させると共に,色フィルター及びブラックマスクも映像信号配線と同一の角度で屈曲させる構成」(第2の構成)及び「画素電極を構成する共通電極の一部が映像信号配線を両側から挟み込むように配置されている構成」(第3の構成)からなる発明と主張し,このうち第1の構成は,LG電子の従業員であるCが1996年(平成8年)3月頃にした職務発明であってLG電子が出願人となり同年6月22日に韓国で特許出願し,その後米国でも特許出願した発明(C第1発明)に相当し,第2の構成及び第3の構成は,C第1発明を知得した原告Bが,LG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加した構成であるとして(被告は,当初,第1の構成のみが本件発明1-1の特徴的部分であり,その余の構成は発明の付随的部分と主張していたが〔被告第4準備書面19頁以下〕,現在も同主張を維持しているかは必ずしも判然としない。),本件発明1-1が全体としてLG電子の職務発明に当たると主張する。 (イ) 本件発明1-2について,被告は,「共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置される構成」(オーバーラップ構成)を含むものと主張し,オーバーラップ構成は,LG電子の従業員であるCが,1996年(平成8年)5月から6月頃にした職務発明であってLG電子が出願となり1997年(平成9年)12月に韓国で特許出願した発明(C第2発明)に相当し,そ プ構成は,LG電子の従業員であるCが,1996年(平成8年)5月から6月頃にした職務発明であってLG電子が出願となり1997年(平成9年)12月に韓国で特許出願した発明(C第2発明)に相当し,その余の構成は,C第2発明を知得した原告Bが,LG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加した構成であるとして,本件発明1-2が全体としてLG電子の職務発明に当たると主張する。 (ウ) 本件発明1-3について,被告は,「第1の構成」と「第2の構成」のほか,「液晶駆動電極と共通電極との電極間距離が1画素内で2種類以上の組合せからなる構成」を含むものと主張し,このうち「第1の構成」はC第1発明に相当し,「第2の構成」は原告BがLG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加したものであり,「液晶駆動電極と共通電極との電極間距離が1画素内で2種類以上の組合せからなる構成」は,原告Bが1997年(平成9年)1月30日にLG電子での職務上作成した「5MASK-ZIGZAG-IPS開発」と題する報告書(乙24)に記載されているとおり,原告BがLG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加した構成であり,その余の構成もC第1発明を知得した原告Bが,LG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加した構成であるとして,本件発明1-3が全体としてLG電子の職務発明に当たると主張する。 (エ) 本件発明1-4について,被告は,「第1の構成」と「第2の構成」のほか,①「横電解方式液晶ディスプレイにおいて,アルミニウム系の合金が走査信号配線を被覆しており,映像信号配線との交差部のアルミニウム系合金の表面にアルミニウム酸化物層が形成されている構成」及び②「走査信号配線を銅で形成するとの構成」を含むものと主張し,このうち「第1の構成」はC第1発明に相当し,「 号配線との交差部のアルミニウム系合金の表面にアルミニウム酸化物層が形成されている構成」及び②「走査信号配線を銅で形成するとの構成」を含むものと主張し,このうち「第1の構成」はC第1発明に相当し,「第2の構成」は原告BがLG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加したものであり,上記①の構成は,LG電子が1994年(平成6年)12月20日に韓国でした特許出願に係る特許公報(乙70)に記載されているLG電子の技術情報であり,上記②の構成は,LG電子が1997年(平成9年)10月24日に韓国でした特許出願に係る特許公報(乙71)に記載されているLG電子の技術情報であり,その余の構成もC第1発明を知得した原告Bが,LG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加した構成であるとして,本件発明1-4が全体としてLG電子の職務発明に当たると主張する。 (オ) 本件発明1-5について,被告は,「第1の構成」と「第2の構成」のほか,「電極傾斜部分を設ける構成」を含むものと主張し,このうち「第1の構成」はC 第1発明に相当し,「第2の構成」は原告BがLG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加したものであり,「電極傾斜部分を設ける構成」は,Cが1997年(平成9年)1月28日にLG電子の職務上作成した特許出願稟議書(乙72)に記載されているとおり,Cがした職務発明であり,その余の構成もC第1発明を知得した原告Bが,LG電子での職務上知得し又は開発した技術を付加した構成であるとして,本件発明1-5全体がLG電子の職務発明に当たると主張する。 (カ) 以上のとおり,本件ライセンス発明の構成についての被告の主張は,いずれも,本件ライセンス発明には,LG電子の従業員であるCが1996年(平成8年)3月頃に発明したというC第1発明,又は,同人が カ) 以上のとおり,本件ライセンス発明の構成についての被告の主張は,いずれも,本件ライセンス発明には,LG電子の従業員であるCが1996年(平成8年)3月頃に発明したというC第1発明,又は,同人が同年5月から6月頃に発明したというC第2発明が含まれているというものである。 ウ次に,被告が主張するC第1発明とC第2発明の内容は,次のとおりである。 (ア) C第1発明について,被告は,「画素電極を『く』の字に屈曲させる発明」であって,その具体的内容は,C作成に係る1996年〔平成8年〕3月13日付け「IPS関係Idea」と題する報告書簡(甲14号証の添付資料5)に記載され,その後LG電子社内での稟議(同添付資料6)を経て,同年6月22日に韓国で特許出願され,同出願を優先権主張の基礎として1997年(平成9年)6月20日に米国で特許出願され,韓国及び米国でいずれも特許登録されたもの(同添付資料7)と主張する。 (イ) C第2発明について,被告は,「共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置される構成」であって,その具体的内容は,C作成に係る1997年(平成9年)1月付けの複数の稟議書(乙26,72,90,91)に記載され,LG電子社内での稟議を経て,同年7月12日に韓国で特許出願され,その後特許登録されたもの(乙25)と主張する。 (ウ) 原告らが主張する,1996年(平成8年)当時にはC第1発明及びC第2発明がいずれも公知であったとの主張をひとまず措いて,上記被告主張に係るC第 1発明,C第2発明と,本件ライセンス特許権に係る願書に添付された明細書及び図面(乙4の1,乙19の1ないし4参照)とを対照すると,本件発明1 主張をひとまず措いて,上記被告主張に係るC第 1発明,C第2発明と,本件ライセンス特許権に係る願書に添付された明細書及び図面(乙4の1,乙19の1ないし4参照)とを対照すると,本件発明1-1,同1-3ないし同1-5には,被告がC第1発明と主張する構成が含まれており,本件発明1-2には,被告がC第2発明と主張する構成が含まれているものと認められる。 エ(ア) ところで,LG電子は,C第1発明について1996年(平成8年)6月22日に,C第2発明について1997年(平成9年)7月12日に,いずれも韓国で特許出願し,C第1発明については上記韓国での特許出願を優先権主張の基礎として米国でも特許出願しているが,日本においては,C第1発明,C第2発明とも,上記韓国での特許出願を優先権主張の基礎とする特許出願を行っておらず,これを行うことができなかったとする合理的な理由もうかがわれない。そうすると,C第1発明及びC第2発明とも,上記韓国における特許出願が公開されることにより新規性を失うに至るのであるから(特許法29条1項3号),LG電子及び同社からLCD関連の事業部門の譲渡を受けた被告は,自らの行為により,日本においてC第1発明及びC第2発明を実施する権利を専有しないことを選択したものと評価せざるを得ない(日本において特許を受けないことを選択したということのほかに,ノウハウとして秘匿しないことをも選択したものといわざるを得ない。)。したがって,原告Bが本件ライセンス発明を原告Aに開示し,また原告大林精工によって特許出願されることがなければ,LG電子又は被告において,本件ライセンス発明について特許出願して特許を受け,第三者からライセンス料を得られたであろう,すなわち,LG電子又は被告がライセンス料相当額の「損失」を受けたものと認めるこ G電子又は被告において,本件ライセンス発明について特許出願して特許を受け,第三者からライセンス料を得られたであろう,すなわち,LG電子又は被告がライセンス料相当額の「損失」を受けたものと認めることは困難というほかはない。 (イ) なお,本件ライセンス発明とC第1発明,C第2発明とは完全に同一ではなく,C第1発明又はC第2発明に構成が付加されている部分があるが,そもそもこれら付加された構成が本件ライセンス発明の特徴的部分に係るものかという点を措くとしても,これらの構成は,いずれも原告B作成に係る報告書(乙8,24), C作成に係る特許出願稟議書(乙72)又はLG電子の出願に係る特許(乙70,71)に開示されている技術に係るものであるから,LG電子は,遅くとも1997年(平成9年)にはこれらの構成を認識していたと認められるところ,C第1発明及びC第2発明について日本で特許出願しなかったのと同様に,これらの構成を付加した発明について日本で特許出願していないのであるし(なお,被告は,原告Bの隠蔽行為によって,本件ライセンス発明を認識できなかったというのであるが,そもそも「原告Bの隠蔽行為」としていかなる行為を主張しているのか判然としない上に,仮に,原告大林精工の名義を用いて特許出願した行為を「隠蔽行為」と主張するものと善解したとしても,LG電子は,C第1発明及びC第2発明について韓国で特許出願しており,かつ,上記のとおり付加的構成についても種々の報告書類があったのであるから,原告大林精工の名義で特許出願した行為のために,本件ライセンス発明を認識できないことになるとは認め難い。),本件ライセンス発明を構成することが明らかなC第1発明及びC第2発明について日本で特許出願しておらず,韓国での特許出願が公開される状況において,これらの付 明を認識できないことになるとは認め難い。),本件ライセンス発明を構成することが明らかなC第1発明及びC第2発明について日本で特許出願しておらず,韓国での特許出願が公開される状況において,これらの付加された構成が存在するために,特に被告が第三者からライセンス料を得られたであろうと認めることは困難であり,やはりLG電子又は被告がライセンス料相当額の「損失」を受けたものとは認められない。 (ウ) 被告は,公平に反する財産的価値の移動を調整するという不当利得法理の目的からすれば,「その事実なかりせば財産の増加することが普通なり」と認められる場合には,なお「損失」の発生を観念してよく,本件では,LG電子又は被告が本件ライセンス発明について特許出願をしたかや特許を欲したかを問うことなく,原告Bが本件ライセンス発明を原告Aに開示することがなければ,LG電子又は被告は,これらの発明について特許出願して第三者からライセンス料を得られたことが普通であるから,「損失」が認められると主張するが,上記に認定説示したところによれば,「原告Bが本件ライセンス発明を原告Aに開示することがなければ,LG電子又は被告は,これらの発明について特許出願して第三者からライセンス料 を得られたことが普通である」と認めることはできないから,被告の主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,原告大林精工が日立ディスプレイズからライセンス料を収受したことが「利得」に当たる余地があるとしても,LG電子又は被告に同ライセンス料相当額の「損失」があったとは認められないから,丙事件のうち,被告が原告らに対して不当利得返還請求権に基づき不当利得金5億円及びこれに対する法定利息の連帯支払を求める請求には理由がない(予備的請求についても同様である。)。 3 本件各特許 ,丙事件のうち,被告が原告らに対して不当利得返還請求権に基づき不当利得金5億円及びこれに対する法定利息の連帯支払を求める請求には理由がない(予備的請求についても同様である。)。 3 本件各特許権について,不当利得返還請求権又は不当利得の法理による特許権移転登録手続請求権が認められるか(争点9)について(1) 最後に,被告が,不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づくとして,原告大林精工に対して本件特許権1の,原告Bに対して本件特許権2及び同3の各特許権移転登録手続を求める請求について検討する。なお,この点についても,被告は,不当利得を原因付ける事実関係として,原告大林精工又は原告Bによる日本での特許出願を主要な事実として主張していることから,同請求権の判断において適用すべき法は,日本法であると認められる(法の適用に関する通則法附則3条4項,法例11条)。 (2) 本件各特許権は,いずれも平成24年4月1日より前にされた特許出願に係るものであるから,現行特許法(平成23年法律第63号による改正後のもの。)74条は適用されず,同条項に基づく特許権移転登録手続を求めることはできない(平成23年法律第63号附則2条9項,平成23年政令第369号)。もっとも,被告は,現行特許法74条がなくとも,不当利得返還請求権又は不当利得の法理により,被告は,原告大林精工及び原告Bに対して,特許権移転登録手続を求めることができる旨主張する。 ア平成23年法律第63号により現行特許法74条が創設される前の特許法(以下「旧法」という。)の下では,産業上利用することができる発明をした者(以下「発明者」という。)が特許を受けることができるものとし(29条1項 柱書き),冒認出願がされた場合にはこれを拒絶理由とするほか(49条7号),冒認 利用することができる発明をした者(以下「発明者」という。)が特許を受けることができるものとし(29条1項 柱書き),冒認出願がされた場合にはこれを拒絶理由とするほか(49条7号),冒認出願を先願としないこと(39条6項〔現行特許法では廃止〕),新規性喪失の例外規定を設けること(30条2項〔現行特許法30条1項〕)により,冒認出願がされても発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者(以下「発明者等」という。)が特許権者となり得る余地を残している(なお,特許庁審査官は,必要があると認めるときは,審査手続を中止することができる〔54条1項〕)。他方,冒認出願に対して特許権の設定登録がされた場合には,当該特許は無効理由を有するものとするが(123条1項6号),発明者等が,特許権について移転及び移転登録請求を求めることができる旨の規定はない。また,旧法の下では,仮に,発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続を認めたとしても,現行特許法74条2項が定める特許権の帰属に関する遡及効の根拠となるべき規定は存在せず(移転登録手続がされたからといって,冒認出願者に対する特許査定ないし特許権の設定登録という行政処分が取り消され,発明者等にこれと同一の行政処分がされた旨みなすことができるわけではないから,特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとの無効理由が解消されることは,あり得ない。),このことは,とりもなおさず,旧法が発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続を求めることを想定していなかったことの証左である。 以上にみた旧法の構造からして,旧法は,冒認出願による特許権の設定登録がされた場合に,当然には,発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続を求める権利を認めているものではないと解 である。 以上にみた旧法の構造からして,旧法は,冒認出願による特許権の設定登録がされた場合に,当然には,発明者等から冒認出願者への特許権の移転登録手続を求める権利を認めているものではないと解される(東京地裁平成14年7月17日判決・判時1799号155頁参照)。 しかるところ,前記2(2)エにおいて認定説示したとおり,LG電子は,本件特許権1に係る各発明に含まれると主張するC第1発明及びC第2発明について,いずれも韓国で特許出願しながら,同出願を優先権主張の基礎とする日本での特許出願は行っていないのであって,これらを行うことができなかった合理的な理由もう かがわれないし,本件特許権2及び同3に係る発明についても,LG電子及び被告は,日本において特許出願をしておらず,これらを行うことができなかった合理的な理由もうかがわれない。したがって,仮に,原告大林精工及び原告Bによる本件各特許権に係る特許出願が冒認出願と認められるとしても,旧法下において,被告が,原告大林精工及び原告Bに対して,当然に本件各特許権につき移転登録請求権を有しているものとは認め難いといわざるを得ない。 イ被告は,不当利得返還請求権又は不当利得の法理に基づいて,本件各特許権につき特許権移転登録手続を求めることができると主張するが,LG電子又は被告が本件各特許権に係る特許出願をしていないことからすれば,「原告大林精工又は原告Bによる特許出願行為によって,LG電子又は被告が,本件各特許権に係る発明の特許を受ける権利を失った」とか,「原告大林精工又は原告Bが特許出願していなければ,LG電子又は被告は本件各特許権を得ることができた」ということがそもそもできないのであって,LG電子又は被告が,本件各特許権に対応した「損失」を受けたものと評価することは困難であ 願していなければ,LG電子又は被告は本件各特許権を得ることができた」ということがそもそもできないのであって,LG電子又は被告が,本件各特許権に対応した「損失」を受けたものと評価することは困難である。 ウ被告は,生ゴミ処理装置に係る平成13年最判が挙げた実質的な考慮要素が本件でも妥当すると主張するところ,平成13年最判は,特許を受ける権利の共有者である上告人が他の共有者と共同してした特許出願につき,被上告人が上告人から特許を受ける権利の持分を承継した旨の譲渡証書を添付して特許出願人上告人を被上告人に変更する出願人名義変更届を特許庁長官に提出したことにより,被上告人を共有者とする特許権の設定の登録がされた場合において,被上告人が上告人の承諾を得ずに上記譲渡証書を作成した無権利者であって,特許権の設定の登録に先立って上告人が被上告人に対し特許を受ける権利の持分を有することの確認を求める訴訟を提起しており,上記特許を受ける権利と当該特許権とが同一の発明に係るものであるなど判示の事情の下においては,上告人は,被上告人に対し,当該特許権の被上告人の持分につき移転登録手続を求めることができる旨を判示したものである。 しかるところ,平成13年最判の事案においては,被上告人が偽造した譲渡証書を添付して出願人名義変更届を特許庁長官に提出した行為により,上告人が現に有していた当該特許出願についての特許を受ける権利(特許出願の出願人としての地位)を喪失したものであり,平成13年最判もこの点を捉えて「上告人は,被上告人の行為によって,財産的利益である特許を受ける権利の持分を失った」と判示しているところである。これに対し,本件では,LG電子又は被告は,本件各特許権に係る各発明について特許出願していなかったのであるから,原告大林精工又は原告 ある特許を受ける権利の持分を失った」と判示しているところである。これに対し,本件では,LG電子又は被告は,本件各特許権に係る各発明について特許出願していなかったのであるから,原告大林精工又は原告Bの出願行為により被告が,本件各特許権に係る特許の特許出願についての特許を受ける権利を失ったということはできない(旧法のもとでは,先願主義との関係で,冒認出願は特許出願でないとみなされていたのであるから〔39条6項〕,仮に原告大林精工又は原告Bによる特許出願が冒認出願であったとしても,これによって被告の特許を受ける権利が直ちに失われたことになるものではない。)。さらにいえば,本件特許権1については,前記のとおり,被告は,自ら本件特許権1に係る発明に含まれるというC第1発明及びC第2発明について,韓国で特許出願しており,同出願を優先権主張の基礎として日本で出願しないのであれば,韓国での特許出願が公開されることにより,同発明については新規性が失われ,日本では特許を受け得なくなることを当然に認識していたはずであるが,それにもかかわらず,日本では特許出願しないことを選択したのであるから,被告は,自らの行為によりC第1発明及びC第2発明について日本で特許を受ける権利を失うに至ったというほかはない。したがって,平成13年最判は,本件とは事案を異にするのであって,被告による特許権移転登録手続請求を理由付けるものとはならないというべきである。 また,平成13年最判の事案においては,上告人は,特許権の設定の登録に先立ち,被上告人に対して特許を受ける権利の持分を有することの確認を求める訴訟を提起していたのであり,この点を捉えて,平成13年最判は,「この訴訟の係属中に特許権の設定の登録をされたことをもって,この確認請求を不適法とし,さらに, 本件特許 ことの確認を求める訴訟を提起していたのであり,この点を捉えて,平成13年最判は,「この訴訟の係属中に特許権の設定の登録をされたことをもって,この確認請求を不適法とし,さらに, 本件特許権の移転登録手続請求への訴えの変更も認めないとすることは,上告人の保護に欠けるのみならず,訴訟経済にも反する」と判示しているところである。これに対し,本件では,特に本件特許権2及び同3に関し,被告は,原告らによる冒認出願の可能性を2003年(平成15年)に覚知し,2004年(平成16年)3月23日には,被告に帰属すべきものと考えられる特許権又は特許出願をリストアップした合意書案を作成するに至っているのであるから,日本において特許を受ける権利を有することの確認を求める訴えを提起することが可能であったのに,これを提起することなく,みすみす本件特許権2及び同3の設定登録(本件特許権2について平成21年,同3について平成24年)を許しているのである。被告は,原告らが移転義務を認める旨の合意書に署名していたことから特許を受ける権利の確認訴訟を提起する機会が失われたとも主張するが,少なくとも被告が韓国において原告らを相手方として訴えを提起した2006年(平成18年)10月頃には,原告大林精工及び原告Bが合意書に従って本件各特許権等の移転登録手続に応じる意思がないことを認識し得たのであるから,被告が,日本の特許出願に関する訴えについて国際裁判管轄を有することが明らかな日本の裁判所に,自らが特許を受ける権利を有することの確認を求める訴えを提起することができなかったとはいえない。この点においても,平成13年最判は,本件とは事案を異にするものであり,被告による特許権移転登録手続請求を理由付けるものとはならないというべきである。 (3) 以上の次第であるから, いえない。この点においても,平成13年最判は,本件とは事案を異にするものであり,被告による特許権移転登録手続請求を理由付けるものとはならないというべきである。 (3) 以上の次第であるから,不当利得返還請求権又は不当利得の法理により,原告大林精工及び原告Bに対して,本件各特許権の移転登録手続を求める被告の請求は,いずれも理由がないというべきである。 4 結論以上によれば,甲事件における原告らの請求はいずれも理由があり,乙事件及び丙事件における被告の請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 笹本哲朗 裁判官 天野研司 (別紙)特許出願目録 1 No発明の名称出願日(出願番号)公開日(公開番号)備考 液晶表示装置平成8年4月16日(特願平8-158741)平成9年12月2日(特開平9-311334)出願人:大林精工株式会社発明者:A特許番号:特許第3194127号登録日:平成13年6月1日 液晶表示装置平成8年6月14日(特願平8-214896)平成10年1月6日(特開平10-3092)出願人:大林精工株式会社発明者:A特許番号:特許第3486859号登録日:平成15年10月31日 液晶表示装置平成8年8月19日(特願平8-272792)平成10年3月6日(特開平10-62802 者:A特許番号:特許第3486859号登録日:平成15年10月31日 液晶表示装置平成8年8月19日(特願平8-272792)平成10年3月6日(特開平10-62802)出願人:大林精工株式会社発明者:A特許番号:特許第3567183号登録日:平成16年6月25日 液晶表示装置と製造方法平成9年4月25日(特願平9-155647)平成10年11月13日(特開平10-301150)出願人:大林精工株式会社発明者:A特許番号:特許第3774855号登録日:平成18年3月3日 液晶表示装置平成9年10月21日(特願平9-339281)平成11年5月11日(特開平11-125835)出願人:大林精工株式会社発明者:A特許番号:特許第3831863号登録日:平成18年7月28日 液晶表示装置とその駆動方法平成13年4月7日(特願2001-157925)平成14年10月18日(特開2002-303888)出願人:大林精工株式会社発明者:A特許番号:特許第3774858号登録日:平成18年3月3日 (別紙)特許出願目録 2 No発明の名称出願日(出願番号)公開日(公開番号)備考 プラズマ装置平成9年11月12日(特願平9-363082)平成11年5月28日(特開平11-144892)出願人:B発明者:B 液晶表示装置とその製造方法平成10年8月17日(特願平10-283194)平成12年3月3日(特開2000-66240)出願人:B発明者:B特許番号:特許第4264675号 置とその製造方法平成10年8月17日(特願平10-283194)平成12年3月3日(特開2000-66240)出願人:B発明者:B特許番号:特許第4264675号登録日:平成21年2月27日 大型基板用露光装置平成11年3月9日(特願平11-115306)平成12年9月22日(特開2000-258916)出願人:B発明者:B 液晶表示装置とその製造方法平成11年4月22日(特願平11-164223)平成12年11月2日(特開2000-305113)出願人:B発明者:B特許番号:特許第4292350号登録日:平成21年4月17日 液晶パネルの製造方法とその製造装置平成11年5月27日(特願平11-197914)平成12年12月8日(特開2000-338508)出願人:B発明者:B アクティブマトリックス基板の検査方法平成11年6月22日(特願平11-224336)平成13年1月12日(特開2001-4970)出願人:B発明者:B 液晶注入器と注入口封止装置平成11年7月22日(特願平11-253394)平成13年2月9日(特開2001-33797)出願人:B発明者:B 液晶表示装置の製造方法と製造装置平成12年1月19日(特願2000-64180)平成13年7月27日(特開2001-201756)出願人:B発明者:B 液晶表示素子の製造方法とバックライト平成12年2月16日(特願2000-100116)平成13年8月24日(特開2001-228477)出願人:B発明者:B B 液晶表示素子の製造方法とバックライト平成12年2月16日(特願2000-100116)平成13年8月24日(特開2001-228477)出願人:B発明者:B スペーサービーズの位置ぎめ方法と液晶表示装置平成12年3月7日(特願2000-121821)平成13年9月14日(特開2001-249342)出願人:B発明者:B 液晶パネルの製造装置平成12年3月23日(特願2000-139232)平成13年10月5日(特開2001-272683)出願人:B発明者:B (別紙)特許権目録 1 出願番号出願日登録番号登録日発明の名称特許権者 特願平8-158741平成8年4月16日第3194127号平成13年6月1日液晶表示装置大林精工株式会社 特願平8-214896平成8年6月14日第3486859号平成15年10月31日液晶表示装置同上 特願平8-272792平成8年8月19日第3567183号平成16年6月25日液晶表示装置同上 特願平9-155647平成9年4月25日第3774855号平成18年3月3日液晶表示装置と製造方法同上 特願平9-339281平成9年10月21日第3831863号平成18年7月28日液晶表示装置同上 特願2001-157925平成13年4月7日第3774858号平成18年3月3日液晶表示装置とその駆動方法同上 (別紙)特許 置同上 特願2001-157925平成13年4月7日第3774858号平成18年3月3日液晶表示装置とその駆動方法同上 (別紙)特許権目録 2 出願番号出願日登録番号登録日発明の名称特許権者(※ 特許目録2の「1」は欠番とする。) 特願平10-283194平成10年8月17日第4264675号平成21年2月27日液晶表示装置とその製造方法B(※ 特許目録2の「3」は欠番とする。) 特願平11-164223平成11年4月22日第4292350号平成21年4月17日液晶表示装置とその製造方法同上 (別紙)特許権目録 3 出願番号出願日登録番号登録日発明の名称特許権者 特願2008-316237(特願平10-283194の分割出願)平成20年10月31日第5019299号平成24年6月22日低コスト液晶装置を製造するためのホトマスク構造B 特願2008-316238(特願平10-283194の分割出願)平成20年10月31日第4936257号平成24年3月2日液晶表示装置とその製造方法同上 特願2008-336151(特願平11-164223の分割出願)平成20年12月7日第5004101号平成24年6月1日高性能表示装置とその製造方法同上 示装置とその製造方法同上
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