平成15(ワ)1873 懲戒処分無効確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年5月26日 札幌地方裁判所
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判決文本文28,791 文字)

主文 1 原告Aの被告が同原告に対して平成15年4月25日になした降任処分及び減給処分の無効確認請求,同原告が被告の課長の地位にあることの確認請求並びに被告が同原告に対して平成15年9月9日になした減給処分の無効確認請求をいずれも却下する。 2 原告Bの被告が同原告に対して平成15年4月25日になした減給処分の無効確認請求及び被告が同原告に対して平成16年8月24日になした減給処分の無効確認請求をいずれも却下する。 3 被告は,原告Aに対し,35万9600円及び平成17年3月25日以降本判決が確定するまで毎月25日限り1万円を支払え。 4 被告は,原告Bに対し,7万9800円を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 7 この判決は,3項及び4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 申立 1 本案前の申立(被告)主文1項及び2項と同旨 2 原告の請求(1) 被告は,原告Aに対し,被告が同原告に対して平成15年4月25日になした降任処分及び減給処分が無効であることを確認する。 (2) 被告は,原告Bに対し,被告が同原告に対して平成15年4月25日になした減給処分が無効であることを確認する。 (3) 被告は,原告Aに対し,同原告が被告の課長の地位にあることを確認する。 (4) 被告は,原告Aに対し,被告が同原告に対して平成15年9月9日になした減給処分が無効であることを確認する。 (5) 被告は,原告Bに対し,被告が同原告に対して平成16年8月24日になした減給処分が無効であることを確認する。 (6) 被告は,原告Aに対し,135万9600円及び平成17年3月25日以降本判決 (5) 被告は,原告Bに対し,被告が同原告に対して平成16年8月24日になした減給処分が無効であることを確認する。 (6) 被告は,原告Aに対し,135万9600円及び平成17年3月25日以降本判決が確定するまで毎月25日限り1万円を支払え。 (7) 被告は,原告Bに対し,57万9800円を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告の職員である原告らにおいて,被告が平成15年4月25日になした原告Aに対する降任処分及び減給処分及び原告Bに対する減給処分(以下併せて「第1次処分」という。),被告が原告Aに対して平成15年9月9日になした減給処分(以下「第2次処分」という。),被告が原告Bに対して平成16年8月24日になした減給処分(以下「第3次処分」といい,以下上記各処分を併せて「本件各処分」という。)について,被告の行った本件各処分は処分事由が不存在ないし懲戒権の濫用であり無効であるとして,本件各処分の無効確認のほか,原告Aは,第1次処分につき処分前の課長の地位にあることの確認,減給3か月の賃金控除分9万7200円の支払,処分前の課長手当と処分後の係長手当の差額分として平成15年4月25日支給分から毎月25日限り1万円の支払,第2次処分につき減給1か月の賃金控除分3万2400円の支払及び慰謝料100万円の支払,原告Bは,第1次処分につき減給3か月の賃金控除分7万1400円の支払,第3次処分につき減給1か月の賃金控除分8400円の支払及び慰謝料50万円の支払を求めた事案である。 2 争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実(1) 当事者ア被告は,全国のC業に従事する労働者の国民健康保険に関する事務処理を目的として国民健康保険法17条に基づき昭和45年6月18日に設立認可された組合である全国C業国民健康 る事実(1) 当事者ア被告は,全国のC業に従事する労働者の国民健康保険に関する事務処理を目的として国民健康保険法17条に基づき昭和45年6月18日に設立認可された組合である全国C業国民健康保険組合の組合規約63条に定める支部である。被告は,昭和52年4月1日に設置され,現在事務所を肩書住所地に置き,支部長が代表者としてその業務を統括し,理事が業務を執行し,事務を処理するために事務局を設け,事務局長ほかの職員を雇用し,職員の任免は支部長が行う。 被告は,平成13年4月にDが支部長に就任し,平成14年4月に同支部長の知人のEが事務局長に就任し,被告事務局は,E局長の下に,課長の原告A,係長のFのほか,原告B,G,H,I,E局長の知人で嘱託のJの8名の職員の体制となった。被告事務局は,平成15年3月1日付けで機構改革を実施し,E局長の下,総務課,業務1課,業務2課を設け,Fを総務課及び業務1課の,原告Aを業務2課のそれぞれ課長とし,総務課の総務係・経理係にH,業務1課にG,業務2課に原告B,J,Iが所属することになった(なお,同月25日付けでGとJが配置交換された。)。 イ原告A(昭和a年b月c日生)は,昭和57年7月1日被告に採用され,主として業務関係を担当し,平成5年6月に業務係主任となり,平成13年10月に課長に昇格し,平成15年3月に業務2課の課長となった(甲9)。原告Aは,平成15年3月1日の機構改革までは,事務局長に次ぐ地位にある唯一の課長として,係長のほか一般職員を指揮すべき職務を掌理しており,同日以降は,業務2課の課長として,その所属職員を指揮すべき職務を掌理していた(乙32)。 ウ原告B(昭和d年e月f日生)は,平成3年6月1日に被告に採用され,主に健康保険の適用,給付,他機関との調整などの業務を行ってきた( して,その所属職員を指揮すべき職務を掌理していた(乙32)。 ウ原告B(昭和d年e月f日生)は,平成3年6月1日に被告に採用され,主に健康保険の適用,給付,他機関との調整などの業務を行ってきた(甲10)。 エ原告A,同B,Fらは,平成10年10月にK地域労働組合(以下「地域労組」という。)に加入する単組として被告の従業員をもってLユニオンを結成した。同ユニオンは,被告の職員のうちE局長とJを除く全職員をもって構成されていたが,FとHは,平成13年3月11日に同ユニオンを脱退し,Jを加えてM第二労働組合を新たに結成した(甲15)。同月12日以降は原告Aが同ユニオンの委員長,原告Bが書記長,Gが書記次長,Iが副委員長となった(甲16)。 なお,地域労組は,平成10年10月23日,被告との間で労働協約(甲11)を締結し,その労働協約は被告から平成15年10月23日をもって解約されるまでその効力が存続していた(甲12)。そして,同月24日,FやHらの上記第二組合はユニオンショップ協定の解約により解散した(甲17)。 (2) 原告らに対する本件各処分ア原告Aに対する第1次処分(甲1,3,4)被告は,平成15年4月25日,原告Aに対し,平成15年5月1日から3か月間基本給の10パーセント(1か月につき3万2400円で合計9万7200円)の減給をする懲戒処分とともに,課長職を免じ係長に降任する分限処分(それに伴い,課長手当2万円を減じ,係長手当1万円を給するとの給料辞令もなされた。)を行った。その理由は,「原告Aは,課長として職員を指揮すべき立場にありながら,平成14年7月ころより同15年3月ころまでの間,課員らが事務局各人に対し業務用に配置されているパソコンを用いて,就業時間内に職員服務規程(以下「規程」という。)に反し頻繁に私用のため にありながら,平成14年7月ころより同15年3月ころまでの間,課員らが事務局各人に対し業務用に配置されているパソコンを用いて,就業時間内に職員服務規程(以下「規程」という。)に反し頻繁に私用のためのメール交信を行っているのを知りながら,これを上司に報告せず,かつ,課員らに注意することなく容認し,のみならず自らも課員らとの間で頻繁に私用のための連絡,上司の職務上の命令に対する批判等を内容とするメール交信を行った。これらの行為は,規程27条(物品の私用禁止)及び同23条1項(職務専念義務)に違反し,かつ,課長の職務に必要な適格を欠くものである。よって,規程48条(2),同49条(1),(9),同条3により,平成15年5月1日から3か月間基本給10パーセントの減給処分とし,かつ,同規程44条(3)により,降任し,課長職を免じ係長に任ずることとする。」というものである。 イ原告Bに対する第1次処分(甲2,5)被告は,平成15年4月25日,原告Bに対し,平成15年5月1日から3か月間基本給10パーセント(1か月につき2万3800円で合計7万1400円)の減給をする懲戒処分を行った。その理由は,「原告Bは,平成14年7月ころより同15年3月ころまでの間,事務局内各人に対し業務用に配置されているパソコンに許可なくヤフーのメッセンジャーをインストールしたうえ,他の職員に対しこれを利用した会話に参加するよう勧誘して職場内で徒に私語を楽しむための組織作りを行い,のみならず,チャットを利用して勤務時間中に外部の者との私的連絡や会話を行い,その時間が30分近くに及ぶことがあり,また,電子メールを使用して就業時間内に頻繁に職員間で私用のためのメール交信を行っていた。これらの行為は,規程27条(物品の私用禁止)及び同23条1項(職務専念義務)に違反する。よっ ぶことがあり,また,電子メールを使用して就業時間内に頻繁に職員間で私用のためのメール交信を行っていた。これらの行為は,規程27条(物品の私用禁止)及び同23条1項(職務専念義務)に違反する。よって,規程48条(2),同49条(1),(9),同条3により,平成15年5月1日から3か月間基本給10パーセントの減給処分とする。」というものである。 ウ原告Aに対する第2次処分(甲7,8)被告は,平成15年9月9日,原告Aに対し,平成15年10月1日から1か月間基本給の10パーセント(3万2400円)の減給をする懲戒処分を行った。その理由は,「原告Aは,平成15年6月3日,上司であるE局長の指示により,被告の会議室において,同局長,F総務・業務1課長とともに職員の配置転換に関する会議中,会議を開始して数分も経たないうちに『仕事が山積しているから』等と述べて,正当な理由なく,かつ,事務局長の許可を受けずに一方的に会議室を退出し,会議をボイコットした。この行為は,規程5条(法令及び上司の命令に従う義務)に抵触し,同48条1号及び2号の懲戒の理由にあたるものである。原告Aは,既に平成15年4月25日発令の懲戒処分によって戒慎中の身でありながら上記行為に及んでおり,反省の姿勢がなく,職員としてまた役職員として適格性を欠き,残念である。このような点を考慮して,規程49条1号及び2号により1か月間基本給10パーセントの減給処分とする。」というものである。 エ原告Bに対する第3次処分(甲25)被告は,平成16年8月24日,原告Bに対し,平成16年9月1日から1か月間基本給3.5パーセント(8400円)の減給をする懲戒処分を行った。その理由は,「原告Bは,①平成16年7月20日の就業時間内に職務専念義務に反して上司の承諾なく当支部事務室内において私 ら1か月間基本給3.5パーセント(8400円)の減給をする懲戒処分を行った。その理由は,「原告Bは,①平成16年7月20日の就業時間内に職務専念義務に反して上司の承諾なく当支部事務室内において私的文書をプリントアウトした,②同月14日から同月20日までの間,上司の承諾なく,当支部の業務用備品であるプリンターを用いて,私用のため多数回にわたり文書をプリントアウトし,同じく当支部の業務用備品であるファックスを用いて私用のため多数回にわたり文書を外部に送信した。この行為は,①につき規程23条1項ないし労働契約に基づく職務専念義務に違反し,②につき同27条2項に基づく私的利用禁止義務に違反し,同49条1項(1)により上記減給処分とする。」というものである。 (3) 原告らの処分に関連する被告の職員服務規程(甲6)第5条職員はその職務を遂行するに当たって,法令・規約及び規程に従い,かつ上司の職務上の命令に従い越権行為をしてはならない。 第14条職員の勤務時間は休日を除き,9時から17時までとする。 第15条職員の休憩時間は12時から13時まで及び15時から15時15分までとする。 第23条職員は執務時間中みだりに所定の勤務場所を離れてはならない。 2 職員は執務時間中に一時勤務場所を離れるときは,事務局長の許可を受けるとともに行先を明らかにしておかなければならない。 第27条事務局長は重要な書類,物品には非常持出の表示を明瞭にし搬出順序を明らかにしておかなければならない。 2 職員は物品を浪費し又は私用のため用いてはならない。 3 物品は職務上必要がある場合のほか,室外に持出してはならない。 第42条職員の分限及び懲戒については公正でなければならない。 2 職員はこの規程の定める理由による場合でなければ分限又は懲戒の処分を受けることがない 要がある場合のほか,室外に持出してはならない。 第42条職員の分限及び懲戒については公正でなければならない。 2 職員はこの規程の定める理由による場合でなければ分限又は懲戒の処分を受けることがない。 第43条分限の種類は次のとおりとする。 (1) 降任 (2) 免職 (3) 休職 (4) 降給第44条職員が次の各号の1に該当する場合はこれを降任し,又は免職することができる。 (1) 勤務成績がよくない場合(2) 心身の障害のため職務の遂行に支障があり,又はこれに堪えられない場合(3) 前2号に規定する場合のほか,その職務に必要な適格性を欠く場合(4) 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合第47条懲戒の種類は次のとおりとする。 (1) 戒告将来を戒める(2) 減給給料を減額し将来を戒める(3) 免職職員の職を免ずる第48条職員が次の各号の1に該当した場合は懲戒処分することができる。 (1) 規約又は規程に違反した場合(2) 職務上の業務に違反し,又は職務を怠った場合(3) 職員たるにふさわしくない非行のあった場合第49条職員が次の1に該当するときは,その情状の程度により戒告又は減給処分とする。 (1) この規程又は遵守すべき事項にそむいたとき(2) 正当の理由なしに上司の指示に服さないとき(3) 火気の取扱いを粗略にしたとき(4) 故意又は過失により支部に損害を与えたとき(5) 越権,専断の行為があったとき(6) 風紀,秩序を乱したとき(7) 出勤状態が悪く職務に不熱心なとき(8) 支部の機密を漏洩したとき(9) その他,前各号に準ずる不都合があったとき 2 戒告は,当該職員に対してその責任を指摘し,将 乱したとき(7) 出勤状態が悪く職務に不熱心なとき(8) 支部の機密を漏洩したとき(9) その他,前各号に準ずる不都合があったとき 2 戒告は,当該職員に対してその責任を指摘し,将来を戒めるものとする。 3 減給は,当該職員に対して戒告のうえ,その情状に応じて減給する。 4 減給は,労働基準法第91条に定める範囲内で行うものとする。 (4) 原告らの給与等被告の職員の給与は月給であり,毎月25日に支給される。 原告らは,本件各処分後も正常に就業していたところ,本件各処分のとおり減給分を控除された上で給与を支給された。 3 主たる争点及び当事者の主張(1) 確認の利益の有無(本件各処分無効確認請求及び地位確認請求)(被告の主張)ア原告らの本件各処分無効確認請求については,確認の利益を欠いているから不適法却下すべきである。一般に,現在の法律関係の確認ないし給付を求めることができ,そのことが紛争の解決に直接的・効果的である場合には,端的にその請求によるべきであって,単なる過去の法律関係の存否の確認を求めることは確認の利益がない。 イ原告Aの課長たる身分の存在確認請求についても,確認の利益を欠くから不適法却下されるべきである。原告Aの第1次処分当時,同原告は業務2課の課長であったが,その後の機構改革により現在はそのような課及び役職は存在せず,現在も原告Aが当時の課長たる地位にあることを確認しても,原告Aの法律的地位の危険・不安を除去する方法として有効適切であるとはいえないから,確認の利益がない。 (原告らの主張)確認の利益がないとの主張はいずれも争う。 (2) 原告A及び同Bに対する第1次処分の効力(被告の主張)原告Aに対する懲戒処分及び分限処分,原告Bに対する懲戒処分は,いずれも規程27条2項(物品の私用禁止) がないとの主張はいずれも争う。 (2) 原告A及び同Bに対する第1次処分の効力(被告の主張)原告Aに対する懲戒処分及び分限処分,原告Bに対する懲戒処分は,いずれも規程27条2項(物品の私用禁止)及び同23条1項(職務専念義務)に基づいた正当かつ合理的なものであり,懲戒権の濫用にも当たらず,有効である。 アまず,規程27条2項は,業務のための設備を私的な目的で使用して職場規律・企業秩序を乱す行為を禁止したものであり,パソコンの私的利用は同条項に該当する。パソコンの利用による損耗ないし経済的価値の減少がないからといって同条項の適用を除外して解釈すべき理由はなく,パソコンを長期間私的に用いる行為はパソコンに何らかの損耗ないし経済的価値の減少をもたらすともいえる。 また,規程23条1項は,勤務時間中の職務専念義務を定めたものと解すべきであるから,勤務時間中に業務を離れて私的メールを交信する行為は同条項に該当する。 イ第1次処分は合理的で相当なものである。原告らが被告備品のパソコンを使ってメール交信やチャットを行った状況の一部は,別紙のとおりであり,その交信量が多く,時間の長いものもあり,その内容についても,上司や同僚に対する誹謗中傷,他の同僚にボイコットをそそのかすもの,個人的な連絡を内容とするもの,特に原告Bについては部外の親しい異性との私的な会話等であり,業務に関わるものとはいえない。そもそも被告事務室はさほど広くなく,各職員は机を接して業務に従事しているのであるから,業務上必要な連絡や情報交換は直接口頭ですることで十分可能であり,職員間のメール交信の必要はなく,私的メールの発信は,それを受信した他の職員を巻き込むことから,業務の能率を低下させ,業務の妨害となるのは明らかである。勤務時間中の私語は本来許されないものであるが,私的メ メール交信の必要はなく,私的メールの発信は,それを受信した他の職員を巻き込むことから,業務の能率を低下させ,業務の妨害となるのは明らかである。勤務時間中の私語は本来許されないものであるが,私的メールは,私語が業務の設備を使用せず,管理者からも支障が把握できるのに比べると,私語よりも悪質である。 原告Bについては,私的にインストールしたチャットソフトを利用して外部と交信したことで,被告の情報が外部に漏洩する危険性もあった。 原告Aについては,課長として所属職員の私的パソコン使用を注意するどころか自ら中心となって頻繁に勤務時間中に特定グループとの私的メール交信を繰り返していたのであって,課長としての職責を放棄しその適格性を欠くものといわざるを得ず,降任処分は相当である。 ウ第1次処分が不平等であるという点は争う。パソコンの目的外使用状況の調査は全ての職員につき平等に行われ,その結果,原告両名,I,G,F,Hについて私的メールの使用等の事実が認められた。そのうち,Iは勤務時間中にパソコンを私的メールに使用したものの比較的頻度が少なく,平成15年1月以降の使用が確認できなかったこと,Hはチャットソフトのインストールに関与したと思われるものの,自らパソコンを私的メールに使用したこと自体は確認できなかったこと,E局長は外部から就任してまもなくのことであるが事務局長として職員らに対する監督不十分があったことを理由として,いずれも口頭注意処分とし,Gは勤務時間中に頻繁にパソコンを私的メールに使用したが,その使用は部内にとどまり,一般職でもあること,Fは勤務時間中に私的メールに使用したものの使用頻度は格段に少ないが,係長として所属職員を指導監督すべき立場にあったことを理由として,いずれも戒告処分とした。これに対し,原告Aについては,その課長とし 勤務時間中に私的メールに使用したものの使用頻度は格段に少ないが,係長として所属職員を指導監督すべき立場にあったことを理由として,いずれも戒告処分とした。これに対し,原告Aについては,その課長としての立場,上記使用状況からして,また,原告Bについては,一般職であるものの,上記使用状況のほか,同原告のパソコンの交信情報が殆ど削除されており,上記以外にも頻繁な私的使用が推測されることからして,原告らに対する第1次処分がなされたのであって,合理的かつ公平な処分であり,その対象行為からすれば抑制的な内容である。 エ第1次処分は適正手続に則った処分である。業務用のパソコン内の情報はその利用者にとって必ずしも私的なものとはいえず,そのプライバシー権は大幅に制約されるところ,本件で被告が行ったメール等のチェックは,施設管理権の行使として社会通念上相当な範囲であり,原告らに対する人権侵害はない。また,被告は,第1次処分に際し,懲罰委員会を設置して原告らを含む懲戒対象者に弁明の機会を与えるための聴聞を実施し,また,原告らの所属する労働組合との数回にわたる団体交渉も行った。 オ労働基準法(以下「労基法」という。)91条との関係では,原告らに対する減給処分は,メールの私的利用につき受信者ごとに別個の懲戒対象行為と見なされるべきである。したがって,原告Aについては23名に対する私的利用があり,平均賃金の1日分の半分6463円の23倍の14万8649円まで,原告Bについては6名に対する私的利用があるから,平均賃金の1日分の半分4577円の6倍の2万7462円まで,減給が可能であるから,第1次処分は労基法91条に反しない。 カ第1次処分は,被告が労働組合の役員に特に重い処分をして組織活動を弱体化させる意図で行った不当労働行為であるとする点は争う。なお,労働協 給が可能であるから,第1次処分は労基法91条に反しない。 カ第1次処分は,被告が労働組合の役員に特に重い処分をして組織活動を弱体化させる意図で行った不当労働行為であるとする点は争う。なお,労働協約の存在は認めるが,それにより同処分が無効になるわけではない。 (原告らの主張)原告らに対する第1次処分は,その処分事由が存在せず,処分事由に当たるとしても懲戒権の濫用などの理由から,無効である。 ア処分の対象となった原告らのパソコン交信は,規程23条1項及び同27条2項に形式的に該当しない。規程23条1項が職務専念義務を定めたものと解するのは,明らかに文理を離れた解釈であり,服務規程の身分保障機能を失わせるし,仮に同条項が職務専念義務の趣旨としても,原告らの行為は職務専念義務に違反しない。また,規程27条2項は被告の物品を職員が私的に損耗ないし経済的価値を減少させることを禁じたものであり,パソコンの利用はそれに当たらない。 原告Bの処分対象となった「他の職員に対しこれを利用した会話に参加するよう勧誘し」た事実は誇張であり(他の職員とは原告A1人である。),「私語を楽しむための組織作り」の事実はない。 イ原告らのパソコン交信は,実質的に職場規律・企業秩序を乱すおそれがない。原告らのパソコン交信には,①パソコンに慣れることが奨励された,②業務が暇なときに短時間行っていただけで業務への支障がなかった,③交信内容も業務に関連するもので私的利用ではない,④私語についても注意されたことはなかったという職場の事情があり,パソコンの私的利用につき懲戒処分をするのであれば事前に注意・指導をすべきであるから,いきなり懲戒処分を課すのはその行為に比べて処分の内容が重すぎ(比例原則),合理性,相当性がない。 また,原告Aは,日常的に職員間で業務上の会 をするのであれば事前に注意・指導をすべきであるから,いきなり懲戒処分を課すのはその行為に比べて処分の内容が重すぎ(比例原則),合理性,相当性がない。 また,原告Aは,日常的に職員間で業務上の会話や通知がパソコン交信によって行われていたので,課長の立場から職員に対して改めてパソコンの私的利用の禁止を指示したり,注意を促したりする必要がなかったのであり,原告Aの指導監督責任を問うのであれば,それ以前にパソコンの取扱方針を明確にしておくべきであり,それをせずに原告Aに重い責任を課すのは不当である。 ウ第1次処分は,平等取扱いの原則に違反する。被告は,原告ら,G,Iという4名の職員のみを対象にパソコンの私的利用状況を調査しており,その調査方法は不公正かつ偏頗であり,それに基づく第1次処分の内容も他の職員の処分に比べて不公平である。また,パソコンの私的利用については従来は黙認されてきたのに,本件では事前に十分な注意・警告もなしに懲戒処分を課しており,不公平である。例えば,E局長は,パソコンでゴルフスコアをまとめたり,占いなどをしたり,被告の機器で年賀状印刷をしたりしていたし,Fも就業時間中にパソコンのインターネットで株価を調べたり,被告の機器で年賀状を作成したりしていたが,これらは黙認されてきた。 エ第1次処分は適正手続に反する。被告は,原告らのパソコンを本人の事前の承諾なしに無断で調査してプリントアウトしており,プライバシーの侵害である。また,被告は,第1次処分にあたって原告らに弁明の機会を与えていない。 オ第1次処分の減給処分はいずれも労基法91条に反する。同法91条によれば,減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないところ,「1回の額」とは1回の処分事案についてその減給額という意味であって,1回の処分事由ごとの意 基法91条に反する。同法91条によれば,減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないところ,「1回の額」とは1回の処分事案についてその減給額という意味であって,1回の処分事由ごとの意味ではない。原告Aの平均賃金の1日分の半額は6463円であり,また,原告Bの平均賃金の1日分の半額は4577円であるから,上記減給処分は同法91条に違反する。 カ第1次処分は,労働組合の役員に対して特に重い処分を課し,その組織活動を弱体化させる意図で行ったものであり,労組法7条1号及び3号の不当労働行為にあたり,公序良俗に反して無効である。 また,原告らが加入している地域労組と被告とは労働協約を締結しているところ,第1次処分は,労働協約11条「労働条件の変更」に当たり,事前の協議を行っていないし,双方合意の上で決定されていないから,労働協約に反し,無効である。 (3) 原告Aに対する第2次処分の効力(被告の主張)第2次処分は,規程に則った正当かつ合理的なものであり,懲戒権の濫用にも当たらないから,有効である。 ア原告Aは,その上司であるE局長が招集した会議において,同局長が職員の配置替えの趣旨説明をしているのに最後まで聞かずに,合理的な反対理由も示さないまま感情的になって上司の指示に従わずに会議をボイコットしたのであり,これらの行為は規程5条の上司の命令に従う義務に抵触する行為である。 イ原告Aは,係長で勤務経歴も長く,他の職員を指導すべき立場にあること,また,第1次処分により降格・減給処分中であるのに反省の態度が見られないことからすると,原告Aの上記行為は悪質であり厳しい処分が相当であるから,第2次処分は不当不合理ではない。 ウ第2次処分が労基法91条に反するとの主張は争う。 (原告Aの主張)第2次処分は,その処分事由が不存在な 告Aの上記行為は悪質であり厳しい処分が相当であるから,第2次処分は不当不合理ではない。 ウ第2次処分が労基法91条に反するとの主張は争う。 (原告Aの主張)第2次処分は,その処分事由が不存在ないし懲戒権の濫用であるから,無効である。 ア原告Aが処分理由の「会議をボイコット」したことはない。原告AはIの配置換えについてE局長との話を終えたので,E局長に「仕事が山積しているから」と理由を述べて業務処理のため会議室を退席して事務室へ戻ったのであり,退席につき「正当な理由」は十分に存在し,局長の許可なく退席したことが直ちに「会議をボイコットした」ことにはならない。E局長は,もし会議が未了で原告Aが席に留まる必要があるのならば,その必要性を説明して席に留まるよう指示すればよいのに,E局長がそれを行った事実はなく,原告Aが会議室を退出するのを黙認したのであり,上司の職務上の命令がない以上,命令に違反する行為もない。 イ仮に,規程に根拠が求められるとしても,原告Aの行為に対する1か月間10パーセントの減給処分は余りにも重過ぎて不当であり,懲戒権の濫用に当たる。 ウ第2次処分当時,原告Aの平均賃金の1日分の半額は6323円であるから,減給1か月間10パーセント(3万2400円)の処分は労基法91条の規定に反する。 (4) 原告Bに対する第3次処分の効力(被告の主張)第3次処分は,規程に則った正当かつ合理的なものであり,懲戒権の濫用にも当たらないから,有効である。 ア原告Bが本件訴訟の準備として陳述書を作成する行為は,労働者個人の権利を守るための純粋に私的な行為であって,就業時間内に私的文書をプリントアウトしたのは規程23条1項ないし労働契約から当然発生する職務専念義務に違反し,また,私的文書をプリントアウトないし送信するため被告の備品 純粋に私的な行為であって,就業時間内に私的文書をプリントアウトしたのは規程23条1項ないし労働契約から当然発生する職務専念義務に違反し,また,私的文書をプリントアウトないし送信するため被告の備品であるプリンターやファックスを利用した行為は同27条2項(物品の私用禁止)に該当する。 イ原告Bは,被告の備品である事務機器を多数回,かつ5分~10分以上にわたって使用し続けていたのであって,職場規律・企業秩序を乱し,業務の停滞や妨害を引き起こす可能性があった。平成15年4月に規律・秩序の乱れが問題となり,本件訴訟が係属している状況下において,原告Bは同様の行為を繰り返していたのであり,反省の姿勢が見られないことから,重大な職場規律違反と評価するのが相当であり,1か月間3.5パーセントの減給処分を不当に重いとはいえない。 ウ第3次処分が他の事例に比し公平性を欠くという点は争う。 エ第3次処分が労基法91条に反するとの主張は争う。 オ第3次処分が労組法7条1号,3号に規定する不利益取扱ないし支配介入に該当するとの点は争う。 (原告Bの主張)第3次処分は,処分事由が存在せず,処分事由に当たるとしても懲戒権の濫用にあたるから,無効である。 アまず,規程23条1項は職務専念義務を定めたものではなく,その他職務専念義務を明記した規程はないから,職務専念義務違反という懲戒事由は存在しない。また,原告Bがプリンターやファックスを利用した行為は,職務に関して発生した不当処分の取消を求めた本件訴訟に関連する行為であるから,単なる私的行為ではなく「私用」には当たらない。 イ原告Bの上記行為は,その殆どが業務の支障を避けて昼の休憩時間に短時間利用し,文書の枚数・回数も多いとはいえず,実質的に職場規律・秩序を乱すおそれのあるものではないから,懲戒処分の合 たらない。 イ原告Bの上記行為は,その殆どが業務の支障を避けて昼の休憩時間に短時間利用し,文書の枚数・回数も多いとはいえず,実質的に職場規律・秩序を乱すおそれのあるものではないから,懲戒処分の合理性を欠き,処分対象となった行為の性質等と処分結果との均衡を甚だしく失するものでもあるから,懲戒権の濫用にあたる。 ウ過去の同種事例が不処分であったことに対比し,第3次処分は公平性を欠く。上記のとおり役職者であるE局長やFがパソコンなど事務機器を私的に利用した行為に比べると,原告Bの上記行為は軽微なものである。 エ第3次処分当時,原告Bの平均賃金の1日分の半額は4577円であるから,8400円の減給処分は労基法91条に反する。 オ第3次処分は,労働組合活動そのものである本件訴訟遂行行為を処分事由として重い処分を課したものであり,労働組合の正当な行為を理由に不利益扱いをしたのであるから,労組法7条1号の不当労働行為にあたる。また,被告は,原告らの所属する労働組合の弱体化を意図して労働協約を一方的に解約して本件処分をしたのであり,同法7条3号の支配介入の不当労働行為にあたる。 (5) 原告らの被った不利益ないし損害(原告Aの主張)ア第1次処分による不利益(ア) 減給 9万7200円(イ) 降任処分による手当の減額分平成15年4月から判決確定まで毎月25日限り1万円あて。 イ第2次処分による不利益(減給)  3万2400円ウ精神的損害原告Aは,第1次及び第2次処分により名誉・信用を毀損され甚だしい精神的苦痛を被ったことから,慰謝料として100万円が相当である。 エ合計  135万9600円及び平成17年3月から判決確定まで毎月25日限り1万円あて。 (原告Bの主張)ア第1次処分による不利益(減給 を被ったことから,慰謝料として100万円が相当である。 エ合計  135万9600円及び平成17年3月から判決確定まで毎月25日限り1万円あて。 (原告Bの主張)ア第1次処分による不利益(減給)  7万1400円イ第3次処分による不利益(減給) 8400円ウ精神的損害原告Bは,第1次及び第3次処分により名誉・信用を毀損され甚だしい精神的苦痛を被ったことから,慰謝料として50万円が相当である。 エ合計 57万9800円(被告の主張)原告らに対する本件各処分はいずれも正当なものであるから,それによって原告らが不利益を被ることはあり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(確認の利益)について(1) 本件各処分の無効確認請求について過去の法律行為の効力は,その行為を基礎に多数の第三者を巻き込んで複雑な法律関係を生じさせる等その効力を確認する実益がある場合でない限り,確認の利益はないというべきところ,原告らの本件各処分の無効確認請求はそのような場合ではなく,また,原告らは本件各処分の結果生じた金銭的不利益につきその支払を併せて請求していることからすると,本件各処分の無効確認請求は確認の利益を欠くものとして不適法というべきであって,いずれも訴え却下とするのが相当である。 (2) 原告Aの課長たる地位確認請求について原告が降任処分前の地位にあることの確認請求については,現在の法律関係の確認を求めるという形式ではあっても実際は過去の当該処分の効力が争点となっている上,被告と原告Aとの労働契約が存続しており,当該処分の付着しない労働契約上の地位は必ずしも明らかでなく,労働者に就労請求権が認められないことからしても,その確認請求は,特段の理由がない限り不適法と解するのが相当である。そして,上記争いのない 該処分の付着しない労働契約上の地位は必ずしも明らかでなく,労働者に就労請求権が認められないことからしても,その確認請求は,特段の理由がない限り不適法と解するのが相当である。そして,上記争いのない事実等,証拠(甲9,乙37)及び弁論の全趣旨によれば,第1次処分前の原告Aの地位は,総務課,業務1課,業務2課が設けられていたところの業務2課の課長であり,第1次処分により業務2課の課長はE局長が事務局取扱となり,その下で原告Aは係長として就業していたが,平成16年6月1日施行の機構改革により,現在は総務課のほか従前の業務1課と業務2課が業務課となり,業務課課長のFが総務課課長の事務取扱を兼務し,業務課の下に保険事業係,適用係,給付・求償係が設けられ,原告Aは給付・求償係の係長として就業していることが認められ,現在も原告Aが課長たる地位にあることを確認することは,原告Aの法律的地位の危険ないし不安を除去する方法として有効適切とはいい難く(被告は,本判決確定後速やかに第1次処分後の勤務状況等をも勘案して,原告Aに対し改めて辞令を発するべきである。),原告Aが降任処分による金銭的不利益につきその支払を併せて請求していることからすると,現在原告Aが課長の地位にあることの確認請求は,確認の利益を欠くものとして不適法というべきであり,訴え却下とすべきである。 2 争点(2)(原告らの第1次処分の効力)について(1) 上記争いのない事実等,証拠(甲1ないし5,9ないし14,18,21ないし24,29,32,乙1ないし30,33,37,38ないし48,証人E,同H,同F,原告A本人,同B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,同事実を覆すに足りる証拠はない。 ア被告事務局では,従前4台の共用パソコンを業務用に事務所に配置し,インターネット H,同F,原告A本人,同B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,同事実を覆すに足りる証拠はない。 ア被告事務局では,従前4台の共用パソコンを業務用に事務所に配置し,インターネットと接続していたが,平成14年5月末ころ,同事務所移転に伴い,業務上の必要から職員全員にパソコンが貸与され,各パソコンはインターネットに接続された。パソコン貸与の目的は,本来の業務に関する文書の作成,統計処理,表作成,調査,連絡等に使用することにあったが,被告は,パソコン使用にあたっての指針や取扱規則を定めることはなく,当初はパソコン操作に慣れる必要もあって,各職員は,職員間における職務上の連絡以外にも私的な内容のメール交信をしたほか,E局長は占いやゲームをしたり,Fも株価情報や芸能情報等をインターネットでアクセスしたりするなどのパソコンの私的利用をしており,これらのパソコンの私的利用状況に対し注意や警告がなされることはなかった。 また,被告事務局は,従来から私語が少なくない職場であり,上司からしばしば注意されることもあったところ,移転後の事務室は,約80平方メートルの広さの所に各職員がキャビネット付きの机を接して業務に従事している状況であり,業務上必要な連絡や情報交換は立ち上がるなどして直接口頭ですることが十分可能であったが,職員間における個人的な連絡事や他の同僚や上司に対する批判等のやり取りは,他の同僚や上司に知られずにするためパソコンによるメール交信が利用され,特に唯一の課長であった原告Aは,部下の職員から不平不満を相談されることが多く,私的なメール交信の頻度も多かった。また,原告Bは,私的なメール交信が高じて,同年10月10日,被告の許可なくヤフーのメッセンジャーというチャット機能を含んだソフトを業務用パソコンにインストールして会話 メール交信の頻度も多かった。また,原告Bは,私的なメール交信が高じて,同年10月10日,被告の許可なくヤフーのメッセンジャーというチャット機能を含んだソフトを業務用パソコンにインストールして会話(チャット)ができるようにし,原告Aにメールでその旨を知らせたほか,他の職員にもこれを利用するよう誘いかけ,Hの助けもあってE局長を除く各職員が同じくメッセンジャーを各自のパソコンにインストールした。 イ E局長は,平成14年4月に被告常任理事兼事務局長に就任したが,当初は従前経営していた会社やゴルフクラブの役員などの残務があり,D支部長の了解を得て被告の仕事とともにその残務を行っていたところ,E局長がしばしば勤務時間内にゴルフに出かけるなどしたことから,職員らは,E局長の融和的態度は好ましく思いつつも,その職務態度について疑問や苦情が出るようになった。そこで,同年9月ころ,D支部長は,E局長に対し,被告事務局に入って半年経ったことから,被告の職務に専念するよう指示し,それ以降,E局長は,D支部長や被告理事らの意向を受けつつ,事務局長として原告Aらに業務上の指示を出すようになるや,逆に従前からの業務の進め方に精通し慣れていた原告Aらに反発されるようになり,そのうちD支部長,E局長を含む理事らと原告Aら事務局職員が対立するような職場環境になった。 ウ D支部長,E局長らの意向の下,被告は,平成15年2月13日,従来の一課制を総務課,業務1課及び業務2課に分課し,それまで唯一の課長であった原告Aを業務2課の課長とし,新たに総務課及び業務1課の課長にFを係長から昇格させる事務局の機構改革を発表し,同年3月1日からその機構改革が実施された。原告Aは,実質格下げとなったことなどからこの機構改革に不満を抱き,職員らは,原告A,同Bらの業務2課職員とF及び から昇格させる事務局の機構改革を発表し,同年3月1日からその機構改革が実施された。原告Aは,実質格下げとなったことなどからこの機構改革に不満を抱き,職員らは,原告A,同Bらの業務2課職員とF及びHの総務課職員らに分裂する傾向が顕著となった。 そして,E局長は,同年2月ころ原告Aから3月の残業時間につき相談されてその必要性に疑問を感じていたところ,Fから,一部職員間で勤務時間中に頻繁に私的メールの交信がなされているとの申告があったことから,休日の同年3月1日土曜日に,原告両名,I,Gの各パソコン内の通信記録を確認するなどして実情調査を行った。その結果,各パソコン内の多くの送受信記録は既に削除されていたが,一部残存しているものがあり,それらのうち規程上問題があると思われたメールの交信内容をプリントアウトした。なお,その他の職員のパソコン内の調査についてE局長は,FとHには事前の了解を得て調査したと証言するが,何時いかなる調査を行ったかは明らかでなく,その調査結果も明らかでない。 エ原告両名らに対する上記調査結果は(乙25,30は後の調査で判明したものである。),概ね別紙(注:掲載省略)のとおりのほか,次のとおりであった。 (ア) 原告Aがほかの職員宛に送信した記録は,平成14年11月11日から平成15年2月25日までの間に合計11回であり,このうち休憩時間中の1回(乙21)を除き,全て勤務時間中の送信である。送信1回あたりの文字数は最大で約700字,21行の送信が1回ある(乙5)ほかは,1回の文字数が約20~200字である。その内容は,①出張所での事務指導の結果報告という形で,その内実はE局長に対する批判と同僚に同調を求めるもの(乙5,7),②職務関係及び労働組合の連絡(乙10),③職場の忘年会の開催について職員の意思を確認するもの 所での事務指導の結果報告という形で,その内実はE局長に対する批判と同僚に同調を求めるもの(乙5,7),②職務関係及び労働組合の連絡(乙10),③職場の忘年会の開催について職員の意思を確認するもの(乙12,13),④E局長が差し入れたシュークリームにつき「最低な人の持ってきた物は食べない。どうせ売れ残りでしょ。」と応答したもの(乙17),⑤東京本部の職員の容態に関するもの(乙19),⑥昼食打合せへの返答及びD支部長批判など(乙21,23),⑦勤務終了後の待合せなど(乙27,29)であり,①,③及び⑤は業務関連の私的メールであり,④,⑥,⑦は明らかな私的メールである。 (イ) また,平成14年8月8日から平成15年2月25日までの間に職員から原告A宛ての送信記録は合計17回で,原告Bからのものが4回,Iからのものが3回,Gからのものが10回であり,このうち5回は休憩時間ないし休息時間中に送信されたもの(乙2,4,20,22,26)であり,その余は勤務時間中のものである。送信一回当たりの文字数は,最も字数が多い1000字以内,32行のもの(乙1)が1回あるほか,その殆どは1回の送信で200字以内のものである。送信の内容は,職場の人間関係に関する私的メールが殆どである。 (ウ) 原告Bが発信したメールは,A課長宛ての4回(乙1~4)であり,そのうち2回は休憩時間に発信したものであるが,32行(乙1),25行(乙2)と長文のものがあり,その内容は,主に職場の人間関係について不満を述べたもの(乙1~3),メッセンジャーのインストールを知らせたもの(乙4)であり,いずれも私的なメールである。原告Bは,平成15年2月24日午後4時32分から同59分までチャットを利用して外部の男性と私的な会話を行い,同年3月18日午後2時8分から同32分まで同じくチ であり,いずれも私的なメールである。原告Bは,平成15年2月24日午後4時32分から同59分までチャットを利用して外部の男性と私的な会話を行い,同年3月18日午後2時8分から同32分まで同じくチャットを利用して同じ外部の男性からプリンターの誤作動の対処方法を聞くとともに同男性と私的な会話をしていた(乙25,30)。 オ原告Aは,平成15年3月1日施行の機構改革に不満があったほか,無断でパソコン内の通信記録を調査されたことから,地域労組に相談し,同月17日,地域労組執行委員長と連名でD支部長宛に抗議文を提出し,対決姿勢を示した。被告は,原告A,原告Bらのパソコンの私的利用及びその交信内容などから事態を重くみて,同月24日予め複数の理事から構成される懲罰委員会を設置して検討を重ね,同委員会において同年4月16日原告ら懲戒対象者に対して聴聞を実施した。被告は,これらの結果を踏まえた懲罰委員会の答申を受け,同月21日,地域労組に対し原告らの処分案(原告らの懲戒処分につき各基本給10パーセント4か月間の減給などとするもの)を示して団体交渉を行い,合意には至らなかったものの,同月25日第1次処分を発令した。その後,処分の対象となった原告ら,F,G,H,Iは,D支部長宛に職員間での私的メール交信について反省する旨の始末書を提出した。 (2) 原告Aの第1次処分についてア原告Aに対する処分の対象となった行為は,①課員が就業時間内に私的なメール交信を行っているのを知りながら,上司に報告せず,課員に注意しなかったこと,②自らも課員と私的なメール交信を行ったことであり,これらの行為が規程27条2項,同23条1項,同44条(3)に違反ないし該当するか,その処分は懲戒権の濫用に当たらないかを検討する。 イまず,規程23条1項は「職員は執務時間中みだりに ことであり,これらの行為が規程27条2項,同23条1項,同44条(3)に違反ないし該当するか,その処分は懲戒権の濫用に当たらないかを検討する。 イまず,規程23条1項は「職員は執務時間中みだりに所定の勤務場所を離れてはならない。」と定めているところ,被告は同条項が職務専念義務を定めたものであると主張するが,同条項は,その趣旨が職務専念義務にあるとしても,その文言上は執務時間中の離席を禁じたものに過ぎないから,この文言を離れて職務専念義務一般というように広く解釈して懲戒処分を課すことは,懲戒処分が労働者に対する制裁罰であり,罪刑法定主義の見地からも,規程42条2項が「この規程の定める理由による場合でなければ分限又は懲戒の処分を受けることがない。」と明確に定めている趣旨からも,許されないものというべきであって,執務時間内に私的なメール交信を行った行為を23条1項に違反するものということはできない。 ウ次に,規程27条2項は「職員は物品を私用のため用いてはならない。」と定めており,職場規律・企業秩序として公私混同を禁止したものと解されるところ,原告Aが行ったメール交信のうちその殆どは,上記認定事実のとおり私的なメール交信であり,被告の備品であるパソコンを私用のため用いたものであるから,同条項に違反することは明らかである。この点,原告Aは,全てのメール交信が職場の人間関係ないし職場環境に関する内容のものであるから私用ではない,私用に当たるとしても被告の職務遂行の妨げとなるものでないから同条項に該当しないと主張するが,原告Aのメール交信は特定の職員間によるものが多く,しかもその内容の殆どは他の同僚や上司に対する批判や誹謗,個人的な連絡等であって,私用でないとはいえず,また,その大半は勤務時間中に送受信されている上,相当長文のものもあるから 間によるものが多く,しかもその内容の殆どは他の同僚や上司に対する批判や誹謗,個人的な連絡等であって,私用でないとはいえず,また,その大半は勤務時間中に送受信されている上,相当長文のものもあるから,被告の職務遂行の妨げとなっており,職場規律・企業秩序を乱すおそれがあることは否定できないところであって,被告の上記主張は採用できない。 そこで,さらに原告Aに対する減給処分が懲戒権の濫用に当たるかについてみるに,原告Aの上記認定の私的メール交信は,約7か月間のうち28回に過ぎず(現実にはその他多数回の交信が窺えるが,それをもって不利益処分の根拠とすることはできない。),1回の所要時間も短時間のものであり,内容的にも業務関連のものが少なくないこと,被告事務局では,業務用パソコンの取扱規則等の定めがない上,各職員のパソコンの私的利用に対して注意や警告がなされたことはなく,E局長や管理職のFにおいても私的利用の実態があったこと,被告は第1次処分について全職員のパソコン内を調査して私的メール交信の回数の多寡に応じて処分の程度を決定したというが,被告が全職員から漏れなく保存記録を公平に全部提出させたのかどうかは明らかでない上,抜き打ち的に調査された職員と事前に告知されて調査された職員とでは保存記録の改変可能性に違いがあるほか,職員によって日頃から交信記録を保存しておくかどうかの個人差もあるのであって,被告の調査方法には公正性の点で問題が多く,被告がいう交信の回数の多寡は信頼性に乏しいこと,従前から原告Aが加入している地域労組と被告との間では労働協約(甲11)が締結され,その6項には「被告は,業務に支障のきたさない限りにおいて,組合に事務用品の使用,電話,複写機,ファックスの使用などを認める。」との定めがあり,第1次処分当時はその効力が存続していた 1)が締結され,その6項には「被告は,業務に支障のきたさない限りにおいて,組合に事務用品の使用,電話,複写機,ファックスの使用などを認める。」との定めがあり,第1次処分当時はその効力が存続していたこと,加えて,労基法91条は「減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。」と規定し,「1回の額」とは1回の処分事案についての減給額という意味であって,処分事由ごとに1回につきとの意味ではないと解するべきであるところ,原告Aの第1次処分当時の平均賃金の1日分は1万2927円であり,その半額は6463円であるから,合計9万7200円の減給処分は労基法91条に違反することにかんがみると,原告Aに対する第1次処分の減給処分は,懲戒処分としての合理性に乏しく,社会通念上重過ぎて相当性を欠くというべきであり,懲戒権の濫用として無効といわざるを得ない。 エさらに,規程44条(3)は,降任又は免職処分事由として,「前2号に規定する場合のほか,その職務に必要な適格性を欠く場合」と規定しており,「前2号」とは勤務成績不良の場合及び心身障害による職務遂行に支障がある場合であり,適格性の欠如もこれらと同程度の場合であることが予定されているところ,原告Aに対する第1次処分の対象となった私的メール交信及びそれに関して職員に注意をしなかったという行為は「前2号」と同程度の適格性の欠如を基礎付けるものとしては不十分というほかなく,規程44条(3)に該当するということはできない。確かに,原告Aの上記行為は,管理職でありながら職場規律・企業秩序を乱すものであり,私的メール交信の頻度のほか上司に対する不穏当な批判や侮蔑的表現は課長としての適格性に疑問を生じさせるものではあるが,上記のとおり,被告事務局ではパソコンの取扱規則等がなく,職員のパソコンの私的利用に対 ール交信の頻度のほか上司に対する不穏当な批判や侮蔑的表現は課長としての適格性に疑問を生じさせるものではあるが,上記のとおり,被告事務局ではパソコンの取扱規則等がなく,職員のパソコンの私的利用に対し何ら注意や警告がなされなかったことからすると,私的メール交信の事案のみをもって降任処分を課するのは重すぎる処分というべきである。したがって,原告Aに対する第1次処分の降任処分は,その根拠を欠くものであるから,規程42条2項(分限・懲戒の原則)により無効というべきである。 仮に,原告Aの降任処分が規程44条(3)に該当するとしても,第1次処分の当時は上記のとおり労働協約が締結されており,その11項には「東支部は組合員の解雇及び労働条件(職種の変更・賃金の改定・降格・昇給など)を変更する場合は,事前に組合と協議し双方合意の上で決定する。」との定めがあったところ,原告Aの課長から係長への降任については組合と被告との合意の上で決定されていないから,原告Aに対する降任処分は労働協約の定めに反するとして,ないし重要な手続不遵守による権利濫用として無効となると解される。 オ以上によれば,原告Aに対する第1次処分は無効というべきである。 (3) 原告Bの第1次処分についてア原告Bに対する処分の対象となった行為は,①パソコンに許可なくヤフーのメッセンジャーをインストールし,他の職員にこれを利用した会話に参加するように勧誘して職場内で私語を楽しむための組織作りをしたこと,②チャットを利用して勤務時間中に外部の者と私的連絡や会話を行ったこと,③パソコンを使用して就業時間中に職員間で私的なメール交信を行ったことであるところ,①のうち「職場内で私語を楽しむための組織作りをした」との表現はやや誇張されているが,その余の事実,②及び③の各事実は上記認定事実のと て就業時間中に職員間で私的なメール交信を行ったことであるところ,①のうち「職場内で私語を楽しむための組織作りをした」との表現はやや誇張されているが,その余の事実,②及び③の各事実は上記認定事実のとおり認められるところ,これらの行為が規程23条1項,同27条2項に違反するか,その処分が懲戒権の濫用に当たるかを検討する。 イまず,被告は,規程23条1項を職務専念義務を規定したものと主張するが,上記のとおり同条項が職務専念義務を規定したものとして懲戒処分をすることは許されない。 ウ原告Bの上記行為はいずれも業務用パソコンを私的に利用した行為であり,他の職員にチャットの利用を誘ったことのほか就業時間内の外部者とのチャット交信などその行為は悪質であり,職場規律・企業秩序の点からも軽視できないものであるから,規程27条2項(物品の私用禁止)に該当するというべきである。 しかしながら,原告Bに対する第1次処分は,私的メールやチャットの頻度が多いとはいえないこと(この点,被告は,原告Bが交信記録を削除したとして多数回の私的利用があったと推測するが,懲戒処分は一種の刑罰であるから,証拠に基づかないで単なる推測・憶測に基づく処分は許されるべきではない。),原告Aに対する処分と同様に,当時の被告事務局では,パソコンの取扱規則等が定められておらず,パソコンの私的使用に対し注意や警告がなされたこともなかったこと,上記のとおり交信記録の調査方法には公正性に疑問があること,原告Bの平均賃金の1日分の半額は4577円であるから,7万1400円の減給処分は労基法91条に違反すること,原告Bが一般職であることなどの諸事情を考慮すると,原告Bの上記行為に対する減給処分は,懲戒処分としての合理性に乏しく,社会通念上重過ぎて不当というべきであって,懲戒権の濫用として無 違反すること,原告Bが一般職であることなどの諸事情を考慮すると,原告Bの上記行為に対する減給処分は,懲戒処分としての合理性に乏しく,社会通念上重過ぎて不当というべきであって,懲戒権の濫用として無効である。 エ以上によれば,原告Bに対する第1次処分は無効というべきである。 (4) なお,原告らは,被告の第1次処分は労働組合の役員に対して特に重い処分を課してその組織活動を弱体化させる意図で行ったものであるから,労組法7条1号及び3号の不当労働行為にあたると主張するが,同主張を認めるに足りる的確な証拠はなく,同主張は採用できない。 3 争点(3)(原告Aに対する第2次処分の効力)について(1) 上記争いのない事実等,証拠(甲8,9,18,32,乙34,35,37,44,45,証人E,同F,同H,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,E局長は,平成15年6月から業務2課のIを業務1課へ配置換えする人事異動を発令することにし,同月3日午前9時すぎころ,その事情を説明して協力を求める趣旨で,業務1課課長のFと業務2課係長の原告Aに対し事務室に隣接する会議室に集まるよう指示したこと,E局長は,Fが電話中であったため一人で会議室に入ってきた原告Aに対し,業務2課の担当業務である加入・変更・喪失・脱退等に伴う月別業務処理件数表を示しながら,年々組合員の減少により業務2課の事務処理件数が減少していること,業務2課の業務が例年6月以降減少すること,「健康を守る」保健事業の活性化による給付抑制という平成15年度の重点目標の一環としてバナナ通信を年2回発行するなど業務1課の業務増加が予測されることなどの事情を説明した上,6月から業務2課のIを業務1課へ配置換えする旨を告げたこと,これに対し,原告Aは,激しく反発し,「局長は,数字だけ見て仕事の内容を判断しない 1課の業務増加が予測されることなどの事情を説明した上,6月から業務2課のIを業務1課へ配置換えする旨を告げたこと,これに対し,原告Aは,激しく反発し,「局長は,数字だけ見て仕事の内容を判断しないでください。」などとE局長と大声で言い合い,後から入ってきたFに対し同調を求めるも,Fがそれに応じなかったなどから,Iの配転は支部の既定方針である以上,話を続けても仕方がないと考え,E局長に対し,仕事があって忙しいので退席する旨述べて会議室を出て行ったこと,E局長は,原告Aが会議室を出ていくのを止めることはせず,原告Aを追うように事務室に出てきて,「Iの配転は業務命令であり,可及的速やかに実行するように。異動については事務局長の専権である。」などと発言したのに対し,原告Aは,「局長は1年しかいないのに,業務の何が分かるんですか。」「組合を通して下さい。何故勝手に決めるんですか。民主的にやって下さい。」「あなたは経営者ではありません。」などと興奮した様子で発言し,他の職員に対し「あなたたちも何か言ったらどうですか。」などと述べたことが認められ,同事実を覆すに足りる証拠はない。 (2) 以上の事実を前提に,原告Aの上記行為がE局長が指示した会議をボイコットしたものとして規程5条の「職務を遂行するに当たって,上司の職務上の命令に従い越権行為をしてはならない。」との定めに抵触するかどうかを検討するに,上記認定事実によれば,原告Aは会議室から退室するにあたりE局長の明確な了解は得ていないものの,一応の理由を述べて退席する旨断って会議室を出ており,その際,E局長は原告Aに対し会議室に留まるようにとの指示はしていないのであって,E局長において会議の予定であるIの配置換えの説明をほぼ済ませていたことからすると,原告AがE局長に反発して話し合いを拒絶する形で会 原告Aに対し会議室に留まるようにとの指示はしていないのであって,E局長において会議の予定であるIの配置換えの説明をほぼ済ませていたことからすると,原告AがE局長に反発して話し合いを拒絶する形で会議室を出て行ったからといって,それをもって「会議をボイコット」したとまでは評することができず,規程5条の定めに反するということはできない。原告Aは,E局長から設定された話し合いの場においてIの配置換えにつき反対の意見を述べたのであり,その発言内容や態度には管理職としての適格性に疑いを生じさせるものがあるとしても,Iの配置換えの実行を現実に阻止するような行動に出たわけではないから,原告Aの上記行為が上司の職務上の命令に反したものとは認められない。そうすると,原告Aに対する第2次処分は,処分の対象となった行為が規程5条の定めに該当しないから,規程に基づかない処分として無効であるというべきである。 (3) 仮に,原告Aの上記行為が規程5条に該当するとしても,原告Aの上記行為によりIの配転という業務命令の遂行につき障害が生じたといった事情は窺えず,原告が第1次処分の執行中であったとしても,原告Aの行為に対する基本給1か月間10%(3万2400円)の減給処分は重過ぎるというべきであり,また,原告Aの平均賃金が1日分1万2646円であり,その半額が6323円であることから,同処分は労基法91条にも違反するものであることをも考慮すると,懲戒権の濫用に当たるというべきであって,無効といわざるを得ない。 (4) 以上によれば,原告Aに対する第2次処分は無効である。 4 争点(4)(原告Bに対する第3次処分の効力)について(1) 上記争いのない事実等,証拠(甲10,21,25,27,30,31,乙49ないし51,証人E,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bは 点(4)(原告Bに対する第3次処分の効力)について(1) 上記争いのない事実等,証拠(甲10,21,25,27,30,31,乙49ないし51,証人E,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bは,平成16年7月14日12時14分から同26分ころまでの間及び同日13時18分ころ,被告事務室に備え付けられた業務用のプリンターを使用し,本件訴訟の証拠として提出予定の陳述書(甲10)の草稿12頁等をプリントアウトしたこと,原告Bは,同月16日8時42分から4分06秒間にわたり,被告事務室に備え付けられた業務用のファックスを使用し,上記陳述書等14枚を本件原告ら訴訟代理人弁護士の法律事務所へ送信し,また,同日12時06分から同16分ころまでの間,上記プリンターを使用し,上記陳述書の草稿12枚を原告A,I,Gの3名に渡すために合計36枚をプリントアウトし,さらに,同日12時08分から3分59秒間にわたり,上記ファックスを使用し,上記陳述書等13枚を上記法律事務所へ送付したこと,原告Bは,同月20日9時44分から同49分ころまでの間,上記プリンターを使用し,上記陳述書の完成原稿12頁をプリントアウトしたこと,その後,被告は,原告Bの上記プリンター及びファックスの私的利用が規程27条2項等に反するとして,同年8月3日懲戒委員会にて原告Bから事情聴取をするとともに同人の弁明を聞き,同人からさらに弁明書(甲27)の提出を受けた上で,同月24日原告Bに対して基本給1か月3.5パーセント(8400円)の減給処分を課したことが認められ,同事実を覆すに足りる証拠はない。 (2) 原告Bに対する第3次処分の事由は,①就業時間内に上記陳述書原稿をプリントアウトした行為が職務専念義務に違反する,②備品のプリンター及びファックスで上記陳述書原稿をプリントアウトし,又は 。 (2) 原告Bに対する第3次処分の事由は,①就業時間内に上記陳述書原稿をプリントアウトした行為が職務専念義務に違反する,②備品のプリンター及びファックスで上記陳述書原稿をプリントアウトし,又は送信した行為が物品の私用禁止にあたるというものである。 まず,被告は,①の職務専念義務の根拠として規程23条1項ないし労働契約を挙げるが,上記のとおりそれをもって懲戒処分をすることはできない。 次に,②に関し,上記認定事実によれば,原告Bは,被告備品のプリンターで3回にわたり合計約60枚の上記陳述書原稿をプリントアウトし,被告備品のファックスで2回にわたって合計27枚の同原稿を外部に送信したのであるが,上記陳述書原稿は被告の業務に関する文書ではなく,あくまで私的な文書であり,同文書を被告の備品であるプリンターやファックスを利用してプリントアウトしたり送信したりすることは備品の私用に当たるのであって,原告Bが私用している間は他の職員が業務のため使用することができない状態にあったのであるから,公私混同として職場規律・企業秩序に反するものであり,原告Bの上記行為が規程27条2項(物品の私用禁止)に該当することは否定しがたい。この点,原告Bは,②の行為は被告の懲戒処分の無効を争っている本件訴訟の証拠書類の作成・送付にあたり被告の備品を利用したものであり,職務関連行為であるから私的利用に当たらないと主張するけれども,本件訴訟の遂行はあくまで原告Bの個人的な行為であり,被告の業務と関連するものということができないから,原告Bの主張は採用できない。 そこで,原告Bに対する第3次処分が懲戒権の濫用に当たらないかにつき検討するに,原告Bの上記私的利用の殆どが勤務時間外の使用であり,その使用時間は短く,使用枚数及び使用回数も少ないこと,本件訴訟は原告Bの個人 告Bに対する第3次処分が懲戒権の濫用に当たらないかにつき検討するに,原告Bの上記私的利用の殆どが勤務時間外の使用であり,その使用時間は短く,使用枚数及び使用回数も少ないこと,本件訴訟は原告Bの個人的な行為ではあるが,原告Bが所属する労働組合にとっては労働組合活動といった側面があり,従前の労働協約では,被告は組合に対し業務に支障を来さない限り事務機器の利用を認める取扱いをしており,同解約後でも被告の承諾があれば事務機器の利用が認められる余地があったこと(原告B本人),さらには,原告Bの平均賃金の1日分の半額は4577円であるところ,第3次処分の減給処分の額は8400円であるから,労基法91条に違反することなどに照らすと,原告Bが第1次処分において同じく物品の私的利用で懲戒処分を課されていたことを考慮しても,原告Bの上記行為に対し第3次処分の減給処分を課すことは,懲戒処分としての合理性を欠き,社会通念上重過ぎて不当というべきであり,懲戒権の濫用として無効である。 5 争点(5)(原告らの被った不利益ないし損害)について(1) 原告らは,上記争いのない事実等のとおり,本件各処分後も正常に就業し,本件各処分のとおり減給分を控除された上で給与を受け取っていたのであるから,本件各処分が無効である以上,被告は,原告らに対し減給分の支払をすべきである。また,原告らは,本件各処分により名誉・信用を毀損され甚だしい精神的苦痛を被ったとして,被告に対し慰謝料の支払を求めているところ,被告が行った本件各処分は結論的には無効と判断されるものではあったが,これらの処分は事実上及び法律上の根拠を明らかに欠いたものとまではいえないばかりか,本件各処分によって被告らが被った不利益は本件各処分が無効と判断され,経済的不利益の救済がなされることによって,一応の回復がはか は事実上及び法律上の根拠を明らかに欠いたものとまではいえないばかりか,本件各処分によって被告らが被った不利益は本件各処分が無効と判断され,経済的不利益の救済がなされることによって,一応の回復がはかられたとみることができ,被告が原告らに対しそれを超えて更に慰謝料の支払をなすべき特段の事情は窺えないことから,原告らの慰謝料請求は認めることができない。そこで,原告らの不利益ないし損害は,上記争いのない事実等及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりと認められる。 (2) 原告Aについてア第1次処分による不利益(ア) 減給基本給10パーセントの3か月分3万2400円×3か月=9万7200円(イ) 降任処分による手当の減額分平成15年4月25日支給分の給料から課長手当2万円(月額)が減じられ係長手当1万円(月額)を支給されたことから,減額分1万円につき,平成15年4月から同17年2月までの23か月分の合計23万円,さらに,平成17年3月25日以降判決確定まで毎月25日限り1万円あて。 イ第2次処分による不利益(減給)基本給10パーセントの1か月分  3万2400円ウ慰謝料 0円エ合計 35万9600円及び平成17年3月25日以降判決確定まで毎月25日限り1万円あて。 (3) 原告Bについてア第1次処分による不利益(減給) 基本給10パーセントの3か月分2万3800円×3か月=7万1400円イ第3次処分による不利益(減給)基本給3.5パーセントの1か月分 8400円ウ慰謝料 0円エ合計  7万9800円 6 結論以上によれば,原告Aの請求は35万9600円及び平成17年3月25日以降判決確定まで毎月25日限り1万円あての支払を求める限りで,原告Bの請求は 0円エ合計  7万9800円 6 結論以上によれば,原告Aの請求は35万9600円及び平成17年3月25日以降判決確定まで毎月25日限り1万円あての支払を求める限りで,原告Bの請求は7万9800円の支払を求める限りでそれぞれ理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部裁判官鈴木秀行

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