平成13(行コ)33 静岡空港設置許可処分取消請求控訴事件(原審・静岡地方裁判所平成8年(行ウ)第11号)

裁判年月日・裁判所
平成14年9月26日 東京高等裁判所 公物・公企業など
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判決文本文6,794 文字)

主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が静岡県知事の平成7年12月19日付け静岡空港設置許可申請(空整第60号)に対して航空法(昭和27年法律第231号)38条1項の規定に基づき平成8年7月26日空管第82号をもってした許可処分を取り消す。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の概要,前提となる事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次のとおり補正し,控訴人らの当審における追加主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決16頁8行目の「原告番号一番ないし六二番の原告ら」の次に「(控訴人番号1番ないし43番の控訴人らがこれに含まれる。)」を,17頁末行の「原告番号六三番ないし一〇五番の原告ら」の次に「(控訴人番号44番ないし62番の控訴人らがこれに含まれる。)」を,18頁4行目の「原告番号一〇六番ないし一一六番の原告ら」の次に「(控訴人番号63番ないし67番の控訴人らがこれに含まれる。)」をそれぞれ加える。 (2) 原判決33頁11行目末尾に次のとおり加える。 「なお,控訴人らの調査によれば,その後の用地取得状況は,滑走路・誘導路・着陸帯という本体部の基幹的部分においてすら92・2パーセントにとどまり,本体部全体では90パーセント程度,本件空港の供用につき本体部と同じ意義を有する障害切土部分を含めた空港事業区域全体では,せいぜい80パーセント程度と推定される。」(3) 原判決60頁2行目の次に「(三)」として,次のとおり加える。 「航空法施行規則79条1項4号は航空法39条1項1号を受けて,「陸上飛行場及び陸上ヘリポート 0パーセント程度と推定される。」(3) 原判決60頁2行目の次に「(三)」として,次のとおり加える。 「航空法施行規則79条1項4号は航空法39条1項1号を受けて,「陸上飛行場及び陸上ヘリポートにあっては,滑走路,誘導路及びエプロンがこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運行に十分耐えるだけの強度を有するものであること」と定めているところ,本件空港の本体部(着陸帯及びエプロン)の直下には,ほぼ東西にわたって東海道山陽新幹線のトンネルが存在し,トンネル内を時速200キロメートルを超す速度で列車が走行していることは公知の事実である。被控訴人は,上記のようなトンネル上に滑走路を設ける安全性については何ら審査していないのであって,本件許可処分は航空法39条1項1号に違反する。」(4) 原判決87頁5行目の「移転表面」を「転移表面」と改める。 2 控訴人らの当審における追加主張(1) 行政処分後に法令の規定が遡及効をもって改正されたような場合,裁判所は,改正法の規定に従って処分の適否を判断すべきである。 (2) 平成13年1月6日施行された中央省庁等改革基本法46条2号は,「国が個別に補助金等を交付する事業は,国の直轄事業に関連する事業,国家的な事業に関連する事業,先導的な施策に係る事業,短期間に集中的に施行する必要がある事業等特に必要があるものに限定」する旨規定しているところ,本件空港の設置が上記要件を満たしていないことは明らかである。 そして,同法4条6号は,「国民の視点に立ち,かつ,内外の社会経済情勢の変化を踏まえた客観的な政策評価機能を強化するとともに,評価の結果が政策に適切に反映されるようにすること」と定めているところ,これは政策の遡及的改正に関わるものであるから,同法46条2号に該当しない本件空港の設置を許可した 策評価機能を強化するとともに,評価の結果が政策に適切に反映されるようにすること」と定めているところ,これは政策の遡及的改正に関わるものであるから,同法46条2号に該当しない本件空港の設置を許可した処分(本件許可処分)は取り消されるべきである。 第3 判断 1 当裁判所も,本件許可処分は適法であるから,その取消しを求める控訴人らの請求は棄却すべきものと判断するが,その理由は,次のとおり付加し訂正するほか,原判決の理由説示(「事実及び理由」第三)と同一であるから,これを引用する。 (1) 原判決132頁1行目末尾に改行して,次のとおり加える。 「控訴人らは,その後の用地取得の進捗状況を指摘して(前記第2の1(2)の当審付加部分参照),五号要件の欠如(敷地取得の不確実性)を主張する。 本件空港のその後の用地取得率は,静岡県がインターネットで公表した数値によれば,平成12年8月31日現在で,本体部が95パーセント,周囲部を含めた全体で84パーセントとされ(甲42),控訴人らが主張する調査結果と一致しないが,証拠(甲48)及び弁論の全趣旨によれば,前記確約書(甲17)において同意を得るに至っていないとされた6世帯の地権者及び共有地権者は4世帯となり,その4世帯は,本件訴訟の原告ら(原告番号一番,四番,七番及び三五番の原告ら,すなわち控訴人番号1ないし3番及び21番の控訴人ら)であると推定されるところ,上記控訴人らの不同意の意思は変わらないと主張されているから,これらの地権者の有する用地の任意取得は困難であろう。しかし,そうであるからといって,前記認定説示の事情を総合すれば,運輸大臣が五号要件を充足すると判断したことに裁量権を逸脱濫用した違法があるということはできない。」(2) 原判決141頁3行目の次に「(四)」として,次のとおり加える。 「証拠 の事情を総合すれば,運輸大臣が五号要件を充足すると判断したことに裁量権を逸脱濫用した違法があるということはできない。」(2) 原判決141頁3行目の次に「(四)」として,次のとおり加える。 「証拠(甲30,40の1,甲41,乙15,原審証人a)によれば,①静岡県は,本件空港の位置が決定された直後から,本件空港予定地の直下にある東海道山陽新幹線αトンネルの防護対策の重要性を認識し,昭和63年からJR東海をはじめとする関係者との間で上記防護対策について検討を行ってきたこと,②平成7年度には学識経験者を交えた東海道山陽新幹線αトンネル防護工検討会が発足し,平成11年2月には,東海道山陽新幹線αトンネル防護工施工技術委員会が防護工の材料や構造等について詳細な検討を行ってきたこと,③上記トンネルの本体工事はJR東海が施工したので,その安全性を保つための防護工事も技術的ノウハウのあるJR東海が施工することになったこと,④本件空港の本体部(着陸帯及びエプロン)の安全性に支障のないよう施工することについては,静岡県とJR東海との間で話合いが行われ,被控訴人はその報告を受けていたことが認められ,上記認定事実によれば,被控訴人は本件許可処分に当たり,本件空港の滑走路の直下に新幹線のトンネルがあることを踏まえ,本件空港の安全性について審査したものと認められる。」(3) 原判決144頁2行目末尾に次のとおり加える。 「そして,航空法39条2項所定の公聴会において意見を述べる機会を与えなければならない利害関係を有する者とは,飛行場の区域又は制限表面等内の土地又は建物について所有権,地上権,永小作権,地役権,採石権,質権,抵当権,使用貸借又は賃貸借による権利その他土地又は建物に関する権利を有する者及び飛行場の区域又は制限表面等内に鉱業権,温泉を利用する権利,漁業 ついて所有権,地上権,永小作権,地役権,採石権,質権,抵当権,使用貸借又は賃貸借による権利その他土地又は建物に関する権利を有する者及び飛行場の区域又は制限表面等内に鉱業権,温泉を利用する権利,漁業権,入漁権又は流水,海水その他の水を利用する権利を有する者(航空法施行規則80条2号,3号)と定められており,控訴人らが主張するような自然権及び環境権に関する利益を考慮すべきことをうかがわせる規定は存在しない。」(4) 原判決155頁末行の「あたって」から次頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「当たり,下流河川の流下能力を確保するため,河床のしゅんせつ等の河川改修工事を実施し,また,11箇所に調整池を設けることにより,流水を貯水して土砂を沈降させ下流河川の流下能力にあわせて放流する等の治水対策を計画し,その際の治水安全度は,超過確率降雨量と既往最大雨量を算定し,より大きな数値となる既往最大雨量を上記調整池の容量基準に採用した。さらに,農業用水の水質への影響は,上記調整池の規模からすると,濁水中の土粒子の9割以上が除去される結果,浮遊物質量として望ましいとされる1リットル当たり100ミリグラム以下の基準値(農林省公害研究会策定の農業用水水質基準)になることが予測された。」(5) 原判決161頁1行目末尾に次のとおり加える。 「すなわち,控訴人らが主張する自然権・環境権として保護されるべき利益が二号要件にいう「他人の利益」に含まれると解することができないことは,前記説示のとおりである。 ところで,前記のとおり,本件許可処分後に制定・施行された環境影響評価法(平成9年法律第81号。平成11年6月12日施行)は,対象事業に係る免許等を行う者は,当該免許等の審査に際し,当該対象事業につき,環境の保全について適正な配慮がなされるものであるかどうかを審 価法(平成9年法律第81号。平成11年6月12日施行)は,対象事業に係る免許等を行う者は,当該免許等の審査に際し,当該対象事業につき,環境の保全について適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならないものとし(33条1項),前者の審査基準(免許等の基準)に該当しても,後者の審査に基づき当該免許等を拒否する処分を行い,又は当該免許等に必要な条件を付することができる旨規定し(同条2項1号),当該免許等の審査と併せて環境の保全に関する審査を行うべきものとしている。したがって,控訴人らが主張する自然権・環境権として保護されるべき利益が二号要件にいう「他人の利益」に含まれないとしても,環境影響評価法によれば,そのような利益の保護については,対象事業に係る免許等の審査に際し,環境の保全について適正な配慮がなされるものかどうかの観点から審査されるべきことになる。 本件許可処分時に環境影響評価法は施行されていなかったが,ほぼ同旨の内容が行政指導により実施されていた。すなわち,前記認定のとおり(前提となる事実1(八)参照),静岡県は,本件空港設置事業が昭和59年8月28日付け閣議決定(「環境影響評価の実施について」)により定められた「環境影響評価実施要綱」による「対象事業」に該当することから,運輸省実施要領及び静岡県環境影響評価要綱に基づいて環境影響評価を実施し,平成6年7月,静岡空港整備事業に係る環境影響評価準備書(甲11)を作成し(運輸省実施要領第3の1),地元住民等に対する公告・縦覧及び説明会の開催を経た上で,環境影響評価書を作成し(運輸省実施要領第3の4),これを公告・縦覧に供した上で,運輸大臣に送付した(運輸省実施要領第4の1)。なお,運輸省実施要領によれば,運輸大臣は,評価書の送付を受けたときは,これを速やかに環境庁長官に 省実施要領第3の4),これを公告・縦覧に供した上で,運輸大臣に送付した(運輸省実施要領第4の1)。なお,運輸省実施要領によれば,運輸大臣は,評価書の送付を受けたときは,これを速やかに環境庁長官に送付するものとされていた(第4の1)。また,運輸大臣は,環境庁長官に評価書が送付された対象事業のうち,規模が大きく,その実施により環境に及ぼす影響について特に配慮する必要があると認められる事項があるときは,環境庁長官の意見を求めるものとされ,環境庁長官の意見が述べられた場合には,免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて,その意見に配意して免許等の審査を行うものとされていた(第4の2二)が,証拠(甲41)及び弁論の全趣旨によれば,本件空港設置事業につき環境庁長官の意見は求められていない。 控訴人らは,本件空港の設置に伴って地形が改変されることとなる区域には,貴重種であるスズカカンアオイ,シロバナクサナギオゴケ,ナギラン等の植物及びオオタカ等の動物が存在するところ,本件空港の設置はこれらの動植物の成育・生息環境を破壊するものであると主張し,前記準備書(甲11)においても,上記植物等の成育箇所の一部が地形改変により消失するものとされているところであるが,上記準備書は,①空港事業区域(約530ヘクタール)のうち,空港の建設により約280ヘクタールが消失するが,消失する面積とほぼ同じ面積(約250ヘクタール)を緩衝緑地として保全し,これらの植物を緩衝緑地内の良好な生育環境に移植するなどする,②動物の生息密度の高い保全区域を創出するため,緩衝緑地等を利用し,草原や自然林・二次林の育成,水辺環境の整備,里山の谷津田環境の再現等に努める,③オオタカについては,生息状況や繁殖状況等の調査を継続し,必要に応じて保全対策を検討するなどを環境保全対策として掲げ ,草原や自然林・二次林の育成,水辺環境の整備,里山の谷津田環境の再現等に努める,③オオタカについては,生息状況や繁殖状況等の調査を継続し,必要に応じて保全対策を検討するなどを環境保全対策として掲げている。 運輸省実施要領第4の2一は,対象事業の免許等を行う者は,免許等に際し,当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて,評価書の記載につき,当該対象事業の実施において公害の防止及び自然環境の保全について適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査し,その結果につき配慮するものとすると規定しているが,その趣旨は,評価書の記載に基づき,自然環境の保全につき適正な対策が講じられるかどうかを審査し,かつ,その対策の結果についても配慮していくとすることにあるものと解される。上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,運輸大臣は,静岡県が送付した評価書の記載に基づき,本件空港整備事業の実施において講ずるものとされている上記のような対策を是認して本件許可処分をしたものと推認されるが,上記審査事項の性質・内容に照らせば,その判断が本件許可処分につき運輸大臣に委ねられた裁量権の範囲を逸脱濫用したものということはできない。」 2 控訴人らの当審における追加主張について控訴人らは,特定の行政処分がされた後に法令の規定が遡及効をもって改正された場合,裁判所は改正法の規定に従って当該行政処分の適否を判断すべきであり,中央省庁等改革基本法4条6号は政策の遡及的改正に関わるものであるから,同法46条2号に該当しない本件空港の設置を許可した処分(本件許可処分)は取り消されるべき旨主張する。 ところで,中央省庁等改革基本法46条は,「政府は,次に掲げる方針に従い,公共事業の見直しを行う」ものとし,同条2号は,「国が個別に補助金等を交付する事業」は特に必要があるもの(例 き旨主張する。 ところで,中央省庁等改革基本法46条は,「政府は,次に掲げる方針に従い,公共事業の見直しを行う」ものとし,同条2号は,「国が個別に補助金等を交付する事業」は特に必要があるもの(例示は省略)に限定する旨規定し,また,同法4条は,「政府は,次に掲げる基本方針に基づき,中央省庁等改革を行う」ものとし,同6号は,「国民的視点に立ち,かつ,内外の社会経済情勢の変化を踏まえた客観的な政策評価機能を強化するとともに,評価の結果が政策に適切に反映されるようにすること」を掲げている。 控訴人らは,上記規定により本件許可処分の根拠とされた規定が遡及的に改正されたと主張するもののようであるが,到底理解することのできない主張というほかなく,上記主張はその前提を欠く。上記主張の趣旨は,本件空港の設置が現在では見直しを必要とする事業であることをいわんとするものと解されるが,仮に本件空港の設置が見直しを必要とする事業であるとしても,そのことにより,本件許可処分がさかのぼって違法となるものではない。 3 以上のとおりであるから,原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部裁判長裁判官大内俊身裁判官佐藤武彦裁判官小川浩

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