平成30年4月20日判決言渡平成29年(行ウ)第129号返還額決定処分取消請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求A市福祉事務所長が平成28年3月31日付けで原告に対してした生活保護法63条に基づく返還額を1万8000円と定める旨の処分(保保護第3546号)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,A市において生活保護を受けていた原告が,A市福祉事務所長(以下「福祉事務所長」という。)から,住宅扶助につき,厚生労働大臣が定める保護基準が減額されたにもかかわらず従前と同額の給与を受けていたことにより平成27年10月~平成28年3月の6箇月分の合計1万8000円の過給 与(以下「本件過給与金」という。)があったとして,生活保護法(以下「法」という。)63条に基づいて同額の返還を命ずる旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分は違法である旨主張して,その取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め ⑴ 法の定めア法4条は,1項において,保護(法による保護をいう。以下同じ。法2条参照)について,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる旨を規定し,2項において,民法に定める扶養義務者の 扶養及び他の法律に定める扶助は,全てこの法律による保護に優先して行 われるものとする旨を規定する一方で,3項において,前2項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない旨を規定する。 イ法8条は,1項において,保護は,厚生労働大臣の定める基準(以下「保護基準」という。 おいて,前2項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない旨を規定する。 イ法8条は,1項において,保護は,厚生労働大臣の定める基準(以下「保護基準」という。)により測定した要保護者(現に保護を受けているといな いとにかかわらず,保護を必要とする状態にある者をいう。以下同じ。法6条2項参照)の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする旨を規定し,同条2項において,前記基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生 活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない旨を規定する。 ウ法19条4項は,保護を行うべき者(以下「保護の実施機関」という。)は,保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を,その管理に属する行政庁に限り,委任することができる旨を規定する(以下,保護の実施 機関及び同項に基づき保護の実施機関から保護の決定及び実施に関する事務の委任を受けた行政庁を併せて「保護の実施機関等」ともいう。)。 エ法63条は,被保護者(現に保護を受けている者をいう。以下同じ。法6条1項参照)が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用(以下「保護費」という。)を支弁し た都道府県又は市町村に対して,速やかに,その受けた保護金品(保護として給与し,又は貸与される金銭及び物品をいう。以下同じ。法6条3項参照)に相当する金額の範囲内において保護の実施機関等の定める額を返還しなければならない旨を規定する。 ⑵ 法8条1項の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保 護 法6条3項参照)に相当する金額の範囲内において保護の実施機関等の定める額を返還しなければならない旨を規定する。 ⑵ 法8条1項の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保 護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「告示」という。)の うち,住宅扶助に係る保護基準の定め住宅扶助に係る保護基準を定めた告示別表第3は,その1において,家賃,間代,地代等の額(月額)は1級地及び2級地の区分級地につき1万3000円以内を基準額とする旨を規定した上,その2において,家賃,間代,地代等の費用が前記基準額を超えるときは,都道府県又は地方自治法252条 の19第1項の指定都市若しくは252条の22第1項の中核市ごとに,厚生労働大臣が別に定める額の範囲内の額とする旨を規定する。なお,告示3項及び同別表第9は,原告の居住する大阪府A市は,1級地-1とする旨を規定する。 ⑶ 平成27年4月14日付け社援発0414第9号厚生労働省社会・援護局 長の大阪府知事宛て通知「生活保護法による保護の基準に基づき厚生労働大臣が別に定める住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の設定について(通知)」(以下「本件通知」という。)の内容(乙3,争いのない事実)ア住宅扶助の限度額本件通知の記1には,告示別表第3の2に基づき厚生労働大臣が別に定 める額(「住宅扶助(家賃・間代等)の限度額」。以下,単に「住宅扶助の限度額」という。)は,大阪府の1級地(A市を含む。)に1人世帯で床面積15㎡超の住居に居住する場合については,月額3万9000円と定められ,平成27年7月1日から適用することとされた旨が記載されている。 なお,前記のとおり定められる以前は,当該住居に居住する場合に関する 住宅扶助の限度額は,月額4万2000円 000円と定められ,平成27年7月1日から適用することとされた旨が記載されている。 なお,前記のとおり定められる以前は,当該住居に居住する場合に関する 住宅扶助の限度額は,月額4万2000円と定められていた。 イ経過措置本件通知の記3⑵アには,平成27年6月30日において現に住宅扶助を受けている世帯であって,同年7月1日において引き続き住宅扶助を受けるものが,前記アの住宅扶助の基準額の適用を受けた場合に,同年6月 まで適用されている住宅扶助の基準額(以下「旧基準額」という。)の適 用を受ける場合よりも,住宅扶助の給付額が減少するときは,引き続き,当該住居等に居住する場合であって,現在の生活状況等を考慮して,当該世帯に係る月額の家賃,間代等が,当該世帯に適用されている旧基準額を超えていない場合であって,当該世帯の住居等に係る建物の賃貸借契約等において,契約期間及び契約の更新に関する定めがある場合は,同年7月 1日以降に初めて到来する契約期間の満了日の属する月までの間は,引き続き旧基準額を適用して差し支えないものとされた旨(以下「本件経過措置」という。)が記載されている。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等 ア原告は,昭和40年▲月▲日生まれの女性(本件処分時50歳)であり,平成25年8月26日を保護の開始年月日として,A市において1人世帯として保護を受けている。(乙8,11)イ保護の実施機関等であるA市長は,法19条4項,A市福祉事務所長委 任規則(乙14)5条に基づき,福祉事務所長に対し,A市における保護の決定及び実施に関する事務(法63条の規定による保護費の返還に関するものを含む。)を委任して 9条4項,A市福祉事務所長委 任規則(乙14)5条に基づき,福祉事務所長に対し,A市における保護の決定及び実施に関する事務(法63条の規定による保護費の返還に関するものを含む。)を委任している。 ⑵ 本件処分の経緯等ア原告は,平成25年8月19日,肩書住所地の借家(床面積35㎡)に ついて,賃貸借の期間を同年9月2日~平成27年9月1日,家賃を月額4万2000円,共益費を月額6000円とする賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,平成25年9月2日,当該借家に入居した。これに伴い,原告は,同月以降,家賃について月額4万2000円の住宅扶助を受けることとなった。(乙1,9,10) イ福祉事務所長は,原告の住宅扶助に係る本件経過措置の期間が終了した 後(すなわち,平成27年7月1日以降に初めて到来する本件賃貸借契約に係る契約期間の満了日の属する月たる同年9月の翌月である同年10月以後)も,原告に対し,平成27年10月分~平成28年3月分の6箇月分の住宅扶助として,月額4万2000円を給与した。(甲2,3)ウ福祉事務所長は,平成28年3月29日付けで,原告に対し,同年4月 1日以降の住宅扶助を3万9000円に変更する旨の保護変更決定をした。 (甲4)エ福祉事務所長は,平成28年3月31日付けで,原告に対し,法63条に基づき,同条の適用期間を「平成27年10月1日から平成28年3月31日まで」,同条の適用理由を,平成27年10月1日付けで本件賃貸 借契約が更新されたことにより,住宅扶助を月額4万2000円から月額3万9000円に変更する予定であったが,変更漏れが判明し,前記の適用期間について合計1万8000円(各月3000円)の過給与(本件過給与金)が発生したためとして 宅扶助を月額4万2000円から月額3万9000円に変更する予定であったが,変更漏れが判明し,前記の適用期間について合計1万8000円(各月3000円)の過給与(本件過給与金)が発生したためとして,返還額を1万8000円と定める旨の本件処分をした。(甲5の1) (3) 本件訴えの提起に至る経緯ア原告は,平成28年5月25日,本件処分を不服として,大阪府知事に対し,平成26年法律第68号による改正前の行政不服審査法5条2項及び法64条に基づき,審査請求をした。(甲6)イ大阪府知事は,平成29年1月30日付けで,前記アの審査請求を棄却 する旨の裁決をした。(甲9)ウ原告は,平成29年7月25日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実) 3 争点(1) 原告が本件過給与金の給与を受けた事実が法63条にいう「急迫の場合等 において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するか否か (争点(1))(2) 本件処分が本件過給与金の返還を命じた点に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか否か(争点(2))(3) 本件過給与金の返還に係る説明義務違反により本件処分が違法となるか否か(争点(3)) 4 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(原告が本件過給与金の給与を受けた事実が法63条にいう「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するか否か)について(原告の主張の要旨) 法63条は,被保護者が,資産等の資力を有するにもかかわらず,保護の必要が急迫しているため,その資力を現実に活用することができない等の理由で保護を受けた後,その資力を現実に活用することができる状態になった場合の費用返還義務を定めた規定であって(最高裁昭和4 保護の必要が急迫しているため,その資力を現実に活用することができない等の理由で保護を受けた後,その資力を現実に活用することができる状態になった場合の費用返還義務を定めた規定であって(最高裁昭和42年(オ)1245号同46年6月29日第三小法廷判決・民集25巻4号650頁参照。以 下「最高裁昭和46年判決」という。),本件のように保護の実施機関等が誤って過給与をした場合は,同条にいう「急迫の場合等」に該当しない。 また,原告は,本件過給与金を全て家賃として支払っていたのであるから,「資力があるにもかかわらず,保護を受けた」ということはできない。 したがって,原告が本件過給与金の給与を受けた事実は,法63条にいう 「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当しないから,本件処分は違法である。 (被告の主張の要旨)法63条は,「急迫の場合等」に資力があるにもかかわらず保護を受けたときの保護費の返還について定めているところ,同条は,急迫した場合に限 らず,保護基準を超えて保護を受けたことが事後的に判明した場合を含め, 広く保護金品の過給与が生じた場合における保護費の返還について規定したものであって,このように解することは,保護の補足性の原則にかなうものである。 そして,原告は,平成27年10月~平成28年3月,保護基準により定められた最低限度の生活の需要を満たすに十分な程度を超える住宅扶助の給 与を受けていたのであるから,「資力があるにもかかわらず」保護を受けたというべきである。 したがって,原告が本件過給与金の給与を受けた事実は,法63条にいう「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当する。 (2) 争点(2)(本件処分が る。 したがって,原告が本件過給与金の給与を受けた事実は,法63条にいう「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当する。 (2) 争点(2)(本件処分が本件過給与金の返還を命じた点に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか否か)について(原告の主張の要旨)原告は,平成24年5月に広汎子宮全摘術を受けた際に,両尿管の損傷を受け,その後遺症として,毎日6,7回の自己導尿と月1度の定期検診を余 儀なくされ,就労が困難な状況にある。また,原告は,本件過給与金を全て家賃として支払っており,住宅扶助が減額された後も,従前の住居に引き続き居住して家賃と住宅扶助の差額3000円分を生活扶助から補填して支払う予定であったから,本件過給与金を返還する資力を有しない。そして,本件過給与金は,被告の過失により生じたものであって,その発生につき原告 に帰責性はない。 以上によれば,本件処分は,原告に対して今後給与される保護費から本件過給与金を返還することを強いるものであり,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法25条に反して違憲であって,裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある。 (被告の主張の要旨) 「最低限度の生活」にはおのずから一定の幅があり,支出の節約の努力等によって,生活扶助から貯蓄等に回すことの可能な金銭が生じ得るものである上,返還金の一括支払が困難である場合には,分割納付が認められるから,被保護者が健康で文化的な最低限度の生活を維持しながら,法63条に基づく返還金を捻出することは可能である。 また,被告の職員は,本件処分に先立ち,原告に対し,転居指導及び本件過給与金の返還について説明したところ,本件過給与金の返還により原告の自立が著しく困難となるよう 捻出することは可能である。 また,被告の職員は,本件処分に先立ち,原告に対し,転居指導及び本件過給与金の返還について説明したところ,本件過給与金の返還により原告の自立が著しく困難となるような事情はうかがわれなかった。そして,本件過給与金は1万8000円にとどまり,原告は,店員,事務等の中労働が可能な状況にあったから,本件過給与金全額の返還が困難な状況にあるとは認め られなかった。 したがって,本件過給与金全額を返還額とすることにより原告の自立を著しく阻害すると認めるべき事情はなく,本件処分は,憲法25条に違反せず,裁量権の範囲の逸脱又は濫用は認められない。 (3) 争点(3)(本件過給与金の返還に係る説明義務違反により本件処分が違法 となるか否か)について(原告の主張の要旨)法63条に基づく費用返還については,法78条の2のように返還額を保護費から徴収することを認める規定がないから,当該返還額を保護費から返還させるに当たっては,返還義務者に対し,保護費からの返還は強制でない ことを十分に説明する義務がある。しかしながら,被告の職員は,平成28年3月31日,原告に対し,前記の点について十分な説明を行わず,原告に返還金が保護費から差し引かれると誤認させ,平成29年9月14日には,原告に対して返還金の納付書を送付した。これらの被告の職員の行為は,保護費から返還金を差し引いて返還することが任意であることを十分に説明し たものとはいえず,生活扶助からの返還を強制するものであって,憲法25 条に違反し,本件処分は違法である。 (被告の主張の要旨)憲法25条は,原告の主張する説明義務につき何ら規定しておらず,被告の職員が,同条に基づき,説明義務を負うとはいえない。また,被告の職員は,原告に 本件処分は違法である。 (被告の主張の要旨)憲法25条は,原告の主張する説明義務につき何ら規定しておらず,被告の職員が,同条に基づき,説明義務を負うとはいえない。また,被告の職員は,原告に対し,本件処分によって発生する返還金支払債務について,任意 の納付を促したにすぎず,納付がない場合に滞納処分が行われるかのような誤った情報を提供した事実はないから,説明義務違反はない。したがって,本件処分が同条に違反するとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告は,平成24年5月10日,B病院において,子宮頚癌のため,広汎子宮全摘手術を受け,当該手術後に,両尿管損傷,両尿管狭窄症及び両水腎症との診断を受けた。(甲15,乙11) (2) 原告は,平成25年8月27日,福祉事務所長から,同月26日を保護開始年月日とする保護開始決定を受けた。(乙8)(3) 原告は,平成25年9月2日,賃貸借の期間を同日~平成27年9月1日,家賃を月額4万2000円,共益費を月額6000円とする本件賃貸借契約に基づき,肩書住所地の借家(床面積35㎡)に入居し,これに伴い,保護 変更決定を受けて,家賃について月額4万2000円の住宅扶助を受けることとなった。(乙1,9,10)(4) 被告の職員は,平成27年6月12日頃,原告に対し,保護基準の改定により,同年7月1日から,1人世帯で床面積15㎡超の住居に居住する場合,住宅扶助の限度額は3万9000円に減額され,経過措置として,現在の家 賃・間代等が,現行の住宅扶助の限度額を超えていない場合で,賃貸借契約 等において契約期間及び契約の更新に関する定めがあるときは,同日 9000円に減額され,経過措置として,現在の家 賃・間代等が,現行の住宅扶助の限度額を超えていない場合で,賃貸借契約 等において契約期間及び契約の更新に関する定めがあるときは,同日以降に初めて到来する賃貸借契約の期間の満了日の属する月までの間は現行の住宅扶助額が認定される旨を通知した。(乙4~6)(5) 原告は,平成27年6月23日,C病院において,両尿管損傷等について,回腸導管造設術,尿管膀胱吻合術等の手術を受けた。(乙11) (6) 福祉事務所長は,平成27年10月14日,C病院に対し,同月1日以降の原告に係る医療の要否について意見を求めたところ,同病院院長は,両尿管損傷,両尿管狭窄症及び両水腎症について,手術後,自己導尿管理を行い,経過観察中であって入院外診療を要すると認め,稼働能力について,店員,事務及び付添等の中労働が可能であると回答した。(乙11) (7) 福祉事務所長は,原告の住宅扶助に係る本件経過措置の期間が終了した後も,原告に対し,平成27年10月分~平成28年3月分の6箇月分の住宅扶助として,月額4万2000円を給与した。原告は,給与を受けた住宅扶助を家賃として支払った。(甲2,3,弁論の全趣旨)(8) 原告は,平成27年12月21日,福祉事務所長に対して自らの収入を申 告したところ,原告には,稼働収入,年金等による収入,仕送りによる収入及びその他の収入はいずれもなかった。(乙12)(9) 被告の職員は,平成28年3月23日,原告に対し,電話により,住宅扶助の過給与があり,同年4月1日から住宅扶助を月額3万9000円に変更し,本件過給与金について返還してもらう必要がある旨を説明し,原告に対 して,現在の住居の家賃が住宅扶助の限度額より高額となることから転居を促し 4月1日から住宅扶助を月額3万9000円に変更し,本件過給与金について返還してもらう必要がある旨を説明し,原告に対 して,現在の住居の家賃が住宅扶助の限度額より高額となることから転居を促した。これに対し,原告は,C病院での手術後,定期通院しており,体調が回復していないため,すぐに転居することは困難である旨を回答した。(乙2)(10) 原告は,平成28年3月24日,被告の職員に対し,電話により,本件 過給与金の返還について,住宅扶助を6箇月分も遡って返還するのはおかし いとして,大阪府に確認を取ったところ,福祉事務所に聞いてくれと言われた旨を連絡した。(乙2)(11) 被告の職員は,平成28年3月28日,原告に対し,電話により,本件過給与金について返還の必要がある旨を説明したところ,原告から,返還を了解し,本件過給与金を分割で返済したい旨の回答があったため,本件処分 の通知書を交付する際に分割納付の相談に乗る旨を伝えた。(乙2)(12) 福祉事務所長は,平成28年3月29日付けで,原告に対し,同年4月1日以降の住宅扶助を3万9000円に変更する旨の保護変更決定をした。 (甲4)(13) 福祉事務所長は,平成28年3月31日付けで,原告に対し,法63条 に基づき,同条の適用期間を「平成27年10月1日から平成28年3月31日まで」,同条の適用理由を,平成27年10月1日付けで本件賃貸借契約が更新されたことにより,住宅扶助を月額4万2000円から月額3万9000円に変更する予定であったが,変更漏れが判明し,前記の適用期間について合計1万8000円(各月3000円)の過給与(本件過給与金)が 発生したためとして,返還額を1万8000円と定める旨の本件処分をした。 被告の職員は,同日,原告の自 ,前記の適用期間について合計1万8000円(各月3000円)の過給与(本件過給与金)が 発生したためとして,返還額を1万8000円と定める旨の本件処分をした。 被告の職員は,同日,原告の自宅を訪問し,原告に対し,本件処分の通知書及び「生活保護法第63条による返還金分割申請書」を交付した。これに対し,原告は,弁護士と電話で相談した上で,本件過給与金を返還することは納得できないので,申請書を書きたくない旨を述べた。(甲12,乙2) (14) 原告は,平成28年3月当時,膀胱の洗浄等のため月1回定期通院し,自己導尿を毎日6,7回行う必要があり,また,同月以降も,保護として,生活扶助,住宅扶助及び医療扶助を受ける見込みであった。(甲4,14,15,乙11,弁論の全趣旨)(15) A市長は,平成29年9月14日付けで,原告に対し,本件処分に係る 返還金の納付書及び「返還金の納付について」と題する書面を送付し,本件 過給与金を同月27日までに納付し,やむを得ず一括納付できない場合は,同日までに分割納付等の納付相談をすることを求める旨を通知した。(甲13の1~3) 2 争点(1)(原告が本件過給与金の給与を受けた事実が法63条にいう「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するか 否か)について(1) 法63条にいう「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」の意義について法63条は,被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護費を支弁した都道府県又は市町村に対して, 速やかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関等の定める額を返還しなければならない旨を規定する。 そこで,「急迫 は,保護費を支弁した都道府県又は市町村に対して, 速やかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関等の定める額を返還しなければならない旨を規定する。 そこで,「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」の意義について検討すると,法は,(ア)保護の補足性の原則に立脚して,保護の要件について,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産, 能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ(4条1項),また,民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,全てこの法律による保護に優先して行われるものとする(同条2項)とともに,(イ)保護の程度について,保護は,①厚生労働大臣の定める基準(保護基準)により測定した要保護者の需要を基とし, そのうち,②その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする(8条1項)一方で,(ウ)保護の補足性の原則は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない(4条3項)としている。このような法が予定している保護の補足性の原則,保護の程度等に鑑みると,(a)被保護者が,資力があるにもかかわらず急迫の事 由があってこれを利用することができないために一時的に保護を受けた場合 (前記(ウ)参照)や,(b)被保護者が,最低限度の生活の需要を満たすに十分な資産等を有しこれを利用し得るにもかかわらず保護を受けた場合(前記(ア)参照)には,法63条所定の「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当すると解されるし,例えば,(c)保護の実施機関等が,当該被保護者の需要の測定に用いるべき保護基準を誤った結果, 当該需 「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当すると解されるし,例えば,(c)保護の実施機関等が,当該被保護者の需要の測定に用いるべき保護基準を誤った結果, 当該需要を過大に測定し,当該被保護者に対し,本来用いるべき保護基準によればするべきであった保護費の支弁の程度を超過した保護費の支弁をした場合(前記(イ)①参照)についても,当該被保護者は,当該超過に係る保護費の支弁に対応して受けた保護金品の限度では,本来は支弁されるべきでなかった保護費の支弁がされ,これに対応する保護金品を受けたことにより,「資 力がある」と評価され得るから,同条所定の「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当し,当該超過に係る保護金品に相当する金額の範囲内において同条に基づく返還命令の対象となり得るものと解するのが相当である。 (2) 本件に関する検討 前記(1)に説示したとおりの法63条に係る解釈を前提に検討すると,保護の実施機関等たる福祉事務所長は,原告の住宅扶助に係る本件経過措置の期間が終了した平成27年10月(前記前提事実⑵イ)以後は,本来,原告の需要の測定に当たり,保護基準たる住宅扶助の限度額として月額3万9000円(大阪府の1級地(A市を含む。)に1人世帯で床面積15㎡超の住居 に居住する場合についてのものであって,本件賃貸借契約に対応する額)を用いた上,原告に対し,月額3万9000円以下の住宅扶助を給与(支弁)すべきであったにもかかわらず,誤って,平成28年3月分までの住宅扶助として月額4万2000円の給与(支弁)を継続し(前記前提事実⑵イ,前記認定事実⑺),その結果,原告は,本来給与(支弁)されるべきではなかっ た合計1万8000円((4 万2000 円- 扶助として月額4万2000円の給与(支弁)を継続し(前記前提事実⑵イ,前記認定事実⑺),その結果,原告は,本来給与(支弁)されるべきではなかっ た合計1万8000円((4 万2000 円-3 万9000 円)×6 箇月〔平成27 年10 月~平成28 年3 月〕=1 万8000 円。本件過給与金)の住宅扶助の過給与を受けたということができるから,「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するというべきである。 (3) 原告の主張に対する判断ア原告は,最高裁昭和46年判決によれば,法63条は,被保護者が,資 産等の資力を有するにもかかわらず,保護の必要が急迫しているため,その資力を現実に活用することができない等の理由で保護を受けた後,その資力を現実に活用することができる状態になった場合の費用返還義務を定めた規定であって,本件のように保護の実施機関等が誤って過給与をした場合は,法63条にいう「急迫の場合等」に該当しない旨主張する。 しかしながら,最高裁昭和46年判決は,交通事故の被害者が,当該事故による受傷後,法4条3項に基づき医療扶助を受けたところ,法63条により,当該医療扶助に係る費用返還義務を負うこととなったとして,加害者に対する損害賠償請求訴訟において,当該費用に相当する金額を損害として主張した事案につき,要保護者が,資産等の資力を有するにもかか わらず,急迫した事由があるため,その資力を現実に活用することができないなどの理由で法4条3項により保護を受け,その後,資力を現実に活用することができる状態になった場合に,法63条により費用返還義務が課せられる旨を判示したものにすぎないのであって,保護の実施機関等が,当該被保護者の需要の測定に用いるべき保護基準を誤っ を現実に活用することができる状態になった場合に,法63条により費用返還義務が課せられる旨を判示したものにすぎないのであって,保護の実施機関等が,当該被保護者の需要の測定に用いるべき保護基準を誤った結果,当該需要 を過大に測定し,当該被保護者に対し,本来用いるべき保護基準によればするべきであった保護費の支弁の程度を超過した保護費の支弁をした場合については,同条所定の「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当しない旨を判示するものではないと解される。そうすると,同判決をもって,前記(1)の説示は左右されないものとい うべきである。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 イ原告は,本件過給与金を全て家賃として支払っていたのであるから,「資力があるにもかかわらず,保護を受けた」ということはできない旨主張する。 しかしながら,法は,保護の程度について,厚生労働大臣が定める基準 (保護基準)により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うこととしている(8条1項)ことに鑑みると,法は,要保護者につき,住宅扶助に係る保護基準を上回る家賃を内容とする賃貸借契約に基づき住宅に居住しているという事情が存する場合であっても,保護基準を上回る家賃 を住宅扶助として支弁することを許容していないことは明らかである。このような法の仕組みに照らすと,住宅扶助に係る保護基準を上回る家賃を現実に支払ったという事情が存する場合についても,前記⑴において説示したとおり,保護の実施機関等が,当該被保護者の需要の測定に用いるべき保護基準を誤った結果,当該需要を過大に測定し,当該被保護者に対し, 本来用いるべき保護 場合についても,前記⑴において説示したとおり,保護の実施機関等が,当該被保護者の需要の測定に用いるべき保護基準を誤った結果,当該需要を過大に測定し,当該被保護者に対し, 本来用いるべき保護基準によればするべきであった保護費の支弁の程度を超過した保護費の支弁をしたときには,法63条所定の「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するものというべきである。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,原告が本件過給与金の給与を受けた事実は法63条にいう「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたとき」に該当するというべきである。 3 争点(2)(本件処分が本件過給与金の返還を命じた点に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか否か)について (1) 判断枠組みについて 法63条は,被保護者は,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,都道府県等に対して「その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額」を返還しなければならない旨を規定するところ,被保護者が返還すべき額については,その受けた保護金品に相当する金額を上限とし,保護の実施機関が定めるものとする 一方で,その算定方法を具体的に規定していない。これは,被保護者に本来受ける必要がなかった給付済みの保護費の全額を返還させることを原則としつつ,法が,生活に困窮する国民の最低限度の生活を保障し,その自立を助長することを目的としていること(1条)に鑑み,保護費全額を返還させることにより,最低限度の生活の保障の趣旨に実質的に反し,又はその自立を 阻害することとなるおそれがある場合には,全額を返還させずに給付済みの保護費の範囲 (1条)に鑑み,保護費全額を返還させることにより,最低限度の生活の保障の趣旨に実質的に反し,又はその自立を 阻害することとなるおそれがある場合には,全額を返還させずに給付済みの保護費の範囲内において返還額を定めることができるものとした趣旨と解される。 したがって,法63条に基づく返還額の決定に当たっては,被保護者の資産や収入の状況,保護金品を受領した経緯及びその使用状況,被保護者の健 康状態や生活実態等の諸事情に照らした判断を要するから,返還額の決定については,被保護者の資産の状況等につき調査等をする権限(法28条,29条)を有する保護の実施機関の合理的な裁量に委ねられているというべきであり,保護の実施機関が給付済みの保護費の範囲内でした返還額の決定が違法となるのは,その返還額の判断の基礎とされた重要な事実に誤認がある こと等により当該判断が事実の基礎を欠き,又は事実に対する評価が合理性を欠くこと等により当該判断が前記の法の目的及び社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限られるものと解するのが相当である。 そして,法19条4項に基づき保護の実施機関から保護の決定及び実施に 関する事務について権限の委任を受けた行政庁による返還額の決定が違法と なるのも,前記の場合に限られるものと解される。 (2) 本件に関する検討前記(1)の判断枠組みに照らして検討すると,原告は,平成28年3月当時,特段の資産を有さず,同月以降も,保護として,生活扶助,住宅扶助及び医療扶助を受ける見込みであったほか,稼働収入,年金等や仕送りによる収入 を得ていなかったものの(前記認定事実(8),(14),弁論の全趣旨),本件処分において定められた返還額は1万8000円にとどまり,原告が同額を一括で返 か,稼働収入,年金等や仕送りによる収入 を得ていなかったものの(前記認定事実(8),(14),弁論の全趣旨),本件処分において定められた返還額は1万8000円にとどまり,原告が同額を一括で返還できない場合には分割納付(地方自治法施行令171条の6参照)をすることも可能であった(前記認定事実(11),(13))ということができる。 そうすると,原告の資産や収入の状況及び生活実態に関する前記の事情を考 慮した上で,本件処分における返還額を減額しない旨の判断をしたとしても,事実に対する評価が合理性を欠くということはできない。 確かに,本件過給与金は,福祉事務所長が本件経過措置が終了した時点で保護変更決定をしなかったことにより生じていた上,原告は,本件過給与金を家賃の支払に充てており(前記認定事実(7)),本件過給与金を浪費してい たとはいえない。しかしながら,他方で,原告は,平成27年7月1日から住宅扶助の限度額は3万9000円に減額され,経過措置として賃貸借契約の期間満了までは現行の住宅扶助額が認定される旨の通知を受けており(前記認定事実(4)),経過措置の終了後に住宅扶助が減額されない場合は,本件過給与金が生じることを認識し得たものということができる。そうすると, 原告が保護金品を受領した経緯及びその使用状況に関する前記の事情を考慮した上で,本件処分における返還額を減額しない旨の判断をしたとしても,事実に対する評価が合理性を欠くということはできない。 そして,原告は,C病院における手術後,月1回定期通院し,自己導尿を毎日行う必要があり(前記認定事実(1),(5),(14)),転居指導に対し,体 調が回復していない旨を回答したものの(前記認定事実(9)),稼働能力につ いて,店員,事務及び付添等の中 行う必要があり(前記認定事実(1),(5),(14)),転居指導に対し,体 調が回復していない旨を回答したものの(前記認定事実(9)),稼働能力につ いて,店員,事務及び付添等の中労働が可能であるとの診断を受けており(前記認定事実(6)),将来的に稼働することも可能な健康状態にあったものということができる。そうすると,原告の健康状態に関する前記の事情を考慮した上で,本件処分における返還額を減額しない旨の判断をしたとしても,事実に対する評価が合理性を欠くということはできない。 以上に検討したとおりの原告の資産や収入の状況,保護金品を受領した経緯及びその使用状況,原告の健康状態や生活実態等の諸事情を総合考慮すると,福祉事務所長が本件過給与金を返還額とする旨の本件処分をしたことについて,返還額の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により当該判断が事実の基礎を欠き,又は事実に対する評価が合理性を欠くこと等 により当該判断が前記1(1)に説示した法の目的及び社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものと認めることはできない。 (3) 原告の主張に対する判断原告は,①平成24年5月に広汎子宮全摘術を受けた際に,両尿管の損傷を受け,その後遺症として,毎日5,6回の自己導尿と月1度の定期検診を 余儀なくされ,就労が困難な状況にあること,②(ア)本件過給与金を全て家賃として支払っており,(イ)住宅扶助が減額された後も,従前の住居に引き続き居住して家賃と住宅扶助の差額3000円分を生活扶助から補填して支払う予定であったから,本件過給与金を返還する資力を有しないこと,③本件過給与金は,被告の過失により生じたものであって,その発生につき原告に帰 責性はないことに照らせば,本件処分は,原告に対して今後給与 あったから,本件過給与金を返還する資力を有しないこと,③本件過給与金は,被告の過失により生じたものであって,その発生につき原告に帰 責性はないことに照らせば,本件処分は,原告に対して今後給与される保護費から本件過給与金を返還することを強いるものであり,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法25条に反して違憲であって,裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある旨主張する。 しかしながら,前記①,②(ア)及び③の点については,原告が保護金品たる 本件過給与金を受領した経緯及び本件過給与金の使用状況並びに原告の健康 状態に関する事情に照らしても,本件処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められないことは前記(2)に説示したとおりであって,原告が主張する事情をもって,本件処分が憲法25条に反するということはできない。 また,前記②(イ)の点については,本件処分において定められた返還額は1万8000円にとどまり,分割納付をすることが可能であったことに加え, 原告は,将来的に稼働することも可能な健康状態にあり(前記(2)),住宅扶助の限度額内の家賃の住居に転居することも可能であったこと(なお,転居に伴う引越費用や敷金は,保護の対象となりうるものである。)に照らせば,原告が従前の住居に引き続き居住して家賃と住宅扶助の差額3000円分を生活扶助から補填する予定であったとしても,このような事情があることを もって,本件処分について,返還額の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により当該判断が事実の基礎を欠き,又は事実に対する評価が合理性を欠くとはいえず,本件処分が憲法25条に反するということもできない。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,本件 ,又は事実に対する評価が合理性を欠くとはいえず,本件処分が憲法25条に反するということもできない。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,本件処分が本件過給与金の返還を命じた点に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできない。 4 争点(3)(本件過給与金の返還に係る説明義務違反により本件処分が違法となるか否か)について(1) 原告は,被告の職員は,法63条に基づく返還額を保護費から返還させる に当たっては,返還義務者に対し,保護費からの返還は強制でないことを十分に説明する義務を負うところ,①平成28年3月31日,原告に対し,前記義務を怠って十分な説明を行わず,原告に返還金が保護費から差し引かれると誤認させ,②平成29年9月14日に,原告に対して返還金の納付書を送付しており,保護費から返還金を差し引いて返還することが任意であるこ とを十分に説明したものとはいえず,生活扶助からの返還を強制するもので あって,憲法25条に違反し,本件処分は違法である旨主張する。 (2) そこで,前記(1)①の点について検討すると,被告の職員は,平成28年3月28日,原告から,本件過給与金を分割で返済したい旨の回答があったため,本件処分の通知書を交付する際に分割納付の相談に乗る旨を伝え(前記認定事実(11)),同月31日,原告の自宅を訪問し,原告に対し,本件処 分の通知書及び「生活保護法第63条による返還金分割申請書」を交付したところ,原告は,弁護士と電話で相談した上で,本件過給与金を返還することは納得できないので,申請書を書きたくない旨を述べている(前記認定事実(13))。このような事実によれば,被告の職員は,原告に対し,本件処分により返還すべき額について分割返納 過給与金を返還することは納得できないので,申請書を書きたくない旨を述べている(前記認定事実(13))。このような事実によれば,被告の職員は,原告に対し,本件処分により返還すべき額について分割返納をすることができる旨を説明したにす ぎないものと認められ,特定の日時までに納付がなければ,原告の意思にかかわらず,当該費用が保護費から差し引かれるなどとの説明をした事実を認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。そうすると,被告の職員が,原告に対し,当該費用が保護費から差し引かれると誤認させるような説明をしたとは認められず,被告の職員の説明が憲法25条に違反するものというこ とはできない。 次に,前記(1)②の点について検討すると,A市長は,平成29年9月14日付けで,原告に対し,本件処分に係る返還金の納付書及び「返還金の納付について」と題する書面を送付し,本件過給与金を同月27日までに納付し,やむを得ず一括納付できない場合は,同日までに分割納付等の納付相談をす ることを求める旨を通知している(前記認定事実(15))。しかしながら,当該通知の送付は,処分後に生じた事情であって,このような事情をもって本件処分が違法となるとは解されないし,そもそも,当該通知は,前記のとおり,一括納付できない場合に分割納付等の納付相談をすることを求めるものにすぎないから,返還を強制するものということはできない。 (3) 以上によれば,本件過給与金の返還に係る説明義務違反により本件処分が 違法となるということはできない。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 主文 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官黒田吉人 裁判官山崎雄大は,差し支えにつき,署名押印することができない。 裁判長裁判官三輪方大
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