主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 広島東税務署長が,原告Aに対し,平成21年11月6日付けでした,平成18年分所得税の更正処分のうち,所得金額4699万9320円,納付すべき税額776万4700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 2 広島東税務署長が,原告Aに対し,平成21年11月6日付けでした,平成19年分所得税の更正処分のうち,所得金額4447万5130円,納付すべき税額770万4600円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 3 広島東税務署長が,原告Aに対し,平成21年11月6日付けでした,平成20年分所得税の更正処分のうち,所得金額3234万0968円,納付すべき税額318万3600円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 4 広島東税務署長が,原告Bに対し,平成21年11月6日付けでした,平成18年分所得税の更正処分のうち,所得金額1566万1593円,納付すべき税額281万8800円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 5 広島東税務署長が,原告Bに対し,平成21年11月6日付けでした,平成19年分所得税の更正処分のうち,所得金額1846万7507円,納付すべき税額396万7500円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 6 広島東税務署長が,原告Bに対し,平成21年11月6日付けでした,平成 20年分所得税の更正処分のうち,所得金額2037万2068円,納付すべき税額466万2200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 第2 事 1月6日付けでした,平成 20年分所得税の更正処分のうち,所得金額2037万2068円,納付すべき税額466万2200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 本件は,雇用する従業員を被保険者とする保険契約の保険料の一部(以下「本件各保険料」という。)を所得税法(以下「法」という。)37条1項に規定する費用(以下「必要経費」という。)として確定申告(平成18年分,平成19年分,平成20年分(平成18年ないし平成20年分を,以下「本件各年分」という。))をした原告らに対し,広島東税務署長が,これらを必要経費として認めず,平成21年11月6日付けで,本件各年分について更正処分(以下併せて「本件各更正処分」といい,このうち,原告Aに対するものを「本件A更正処分」,原告Bに対するものを「本件B更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,このうち,原告Aに対するものを「本件A賦課決定処分」,原告Bに対するものを「本件B賦課決定処分」というとともに,本件各賦課決定処分と本件各更正処分を併せて「本件各処分」という。)をしたことから,原告らが,被告に対し,上記第1の記載のとおり,本件各処分の取消しを求めた事案である。 1 関連法規の定め 事業所得とは,農業,漁業,製造業,卸売業,小売業,サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう(法27条1項)。 事業所得の金額は,その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする(法27条2項)。 その年分の不動産所得の金額,事業取得の金額又は雑収入の金額(・・・)の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の 事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする(法27条2項)。 その年分の不動産所得の金額,事業取得の金額又は雑収入の金額(・・・)の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接 に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(・・・)の額とする(法37条1項)。 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は,その者の不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上,必要経費に算入しない。 1 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの(法45条1項1号) 法45条1項1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は,次に掲げる経費以外の経費とする。 1 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費 2 前号に掲げるもののほか,青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち,取引の記録等に基づいて,不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことを明らかにされる部分の金額に相当する経費(所得税法施行令(以下「法施行令」という。)96条1号,2号)。 次に掲げるようなものに係る所得は,一時所得に該当する(法基本通達34-1)(甲7)。 (4)法施行令第183条第2項に規定する生命保険契約等に基づく一時金(業務に関して受ける 。 次に掲げるようなものに係る所得は,一時所得に該当する(法基本通達34-1)(甲7)。 (4)法施行令第183条第2項に規定する生命保険契約等に基づく一時金(業務に関して受けるものを除く。)及び同184条第4項に規定する損害保険契約等に基づく満期返戻金等内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする(法人税法22条1項)。 法人が,自己を契約者とし,役員又は使用人(これらの親族を含む。)を 被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい,傷害特約等の特約が付されているものを含むが,9-3-6に定める定期付養老保険を含まない。以下9-3-7までにおいて同じ。)に加入してその保険料(法人税法施行令第135条の規定の適用があるものを除く。以下9-3-4において同じ。)を支払った場合には,その支払った保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く。)については,次に掲げる場合の区分に応じ,それぞれ次により取り扱うものとする(法人税法基本通達9-3-4)(甲5)。 (3)死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で,生存保険金の受取人が当該法人である場合その支払った保険料のうち,その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し,残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし,役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には,当該残額は,当該役員又は使用人に対する給与とする。 2 前提事実(末尾に証拠を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない。)原告Aは,広島県安芸郡a町bc丁目d番e号において眼科医院を経営し,原告Bは,同所において歯科医院を経営している する。 2 前提事実(末尾に証拠を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない。)原告Aは,広島県安芸郡a町bc丁目d番e号において眼科医院を経営し,原告Bは,同所において歯科医院を経営している者である(以下,原告らが営む医院を「本件医院」という。)。 原告らは,いずれも青色の申告書により提出することについて広島東税務署長の承認(法143条)を受けている者である。 原告Aは,本件各年分の各確定申告を別紙1の「確定申告」欄記載のとおりなした。 原告Bは,本件各年分の各確定申告を別紙2の「確定申告」欄記載のとおりなした。 広島東税務署長は,別紙1の「更正処分等」欄記載のとおり,本件A更正処分をなし,「過少申告加算税の額」欄記載の 金額の過少申告加算税賦課決定処分(本件A賦課決定処分)をなした(甲1の1ないし3,乙34)。 広島東税務署長は,別紙2の「更正処分等」欄記載のとおり,本件B更正処分をなし,「過少申告加算税の額」欄記載の金額の過少申告加算税賦課決定処分(本件B賦課決定処分)をなした(甲1の4ないし6,乙35)。 原告Aは,別紙1の「異議申立て」欄記載のとおり異議申立てをしたところ,「異議決定」欄記載のとおり異議棄却決定がなされたので,「審査請求」欄記載のとおり,本件A更正処分及び本件A賦課決定処分の取消しを求める審査請求をなし,「裁決」欄記載のとおり,棄却決定を受けた(甲2の1,3の1)。 原告Bは,別紙2の「異議申立て」欄記載のとおり,異議申立てをしたところ,「異議決定」欄記載のとおり異議棄却決定がなされたので,「審査請求」欄記載のとおり,本件B更正処分及び本件B賦課決定処分の取消しを求める審査請求をなし,「裁決」欄記載のとおりの棄却決定を受けた(甲2の2,3の2)。 本件各更正処分の なされたので,「審査請求」欄記載のとおり,本件B更正処分及び本件B賦課決定処分の取消しを求める審査請求をなし,「裁決」欄記載のとおりの棄却決定を受けた(甲2の2,3の2)。 本件各更正処分の理由は,本件各保険料を必要経費として認めなかったことにあるが,本件各保険料の発生原因,金額は次のとおりである。 原告Aは,H生命保険株式会社(以下「訴外会社」という。)との間で,別表1記載の各従業員(以下「本件各従業員」という。)を被保険者とする年金支払型特殊養老保険契約(以下併せて「本件各養老保険契約」という。)をそれぞれ締結(乙7,8の1ないし8の12)するとともに,別表1の順号1,2を除く各従業員を被保険者とするがん保険契約(以下併せて「本件各がん保険契約」といい,本件各養老保険契約と併せて「本件各保険契約」という。)を締結した(乙7,9の1ないし9の10)。 本件各養老保険の内容は,別表2記載のとおりであり,本件各がん保険契約の内容は,別表3記載のとおりである。 原告Aは,本件各保険契約に基づき,訴外会社に対して,別表4記載のとおり,保険料を支払った。 原告Aは,別紙3「原告ら主張の必要経費表」記載のとおり,本件各年分の確定申告において,「保険料支払額」欄記載の保険料支払額を,「積立部分」欄記載の金額(養老保険契約に係る全保険料から特別保険料を除いて算出した額の2分の1に相当する金額)と「必要経費算入部分」欄記載の金額(養老保険契約に係る全保険料から「積立部分」欄記載の金額を除いた額に相当する。)とに区別した上,原告ら主張の按分割合により原告Bと按分して算出した支払保険料(各年の「必要経費算入部分」とがん保険欄の「保険料支払額」を合算して,原告Aと原告Bの事業に従事している同従業員に係る人件費の割合(平成18年分 の按分割合により原告Bと按分して算出した支払保険料(各年の「必要経費算入部分」とがん保険欄の「保険料支払額」を合算して,原告Aと原告Bの事業に従事している同従業員に係る人件費の割合(平成18年分は90%及び10%,平成19年分は77%及び23%,平成20年分は78%及び22%)を乗じて算出した金額)を福利厚生費として必要経費に算入した(甲1の1ないし1の3)。 原告Bも,原告Aと同様に,本件各年分の確定申告において,別紙3「原告ら主張の必要経費表」記載のとおり,「保険料支払額」欄記載の保険料支払額を,「積立部分」欄記載の金額と「必要経費算入部分」欄記載の金額とに区別して,原告Aと原告ら主張の按分割合により按分して算出した支払保険料を,福利厚生費として必要経費に算入した(甲1の4ないし1の6)。 イ本件各更正処分及び本件各賦課決定処分における事業所得の金額等に係る被告の主張は,別表7-1,7-2,8及び9記載のとおりであり,本件各保険料を必要経費として算入しない点を除き,原告らと争いはない。 3 争点及びこれに対する当事者の主張 本件各保険料は,必要経費に該当するか。 ア支出の目的をもって該当性を判断することができるか。 (被告の主張)本件各保険料が必要経費に該当するかどうかについては,その支出が福利厚生目的であることを原告ら自身が根拠として主張しているところである。したがって,福利厚生目的であったか否かを検討する必要がある。また,その判断に当たっては,関係者の主観的判断のみによるのではなく,客観的一般的にされるべきであり,具体的には,支出するに至った経緯,当該支出の性質,趣旨及び目的等の諸般の事情を総合的に考慮し,社会通念に照らして実質的に行う必要がある。 (原告らの主張) 客観的一般的にされるべきであり,具体的には,支出するに至った経緯,当該支出の性質,趣旨及び目的等の諸般の事情を総合的に考慮し,社会通念に照らして実質的に行う必要がある。 (原告らの主張)主観的とは,人の心理的性質に依存していることであり,当事者の意図や目的がその代表例である。この点,被告も客観的基準により判断すべきことを主張している。ところが,被告は,法令解釈は客観的基準によらなければならないとしながらも,必要経費の解釈に当たり,本件各保険契約の締結が福利厚生目的であったかどうかという主観的判断を解釈の基準に用いている点で論理的誤りを犯している。 イ支出の目的は,従業員の福利厚生か。 (原告らの主張)以下のとおり客観的基準に基づき判断すれば,本件各保険料は福利厚生目的といえる。 本件各養老保険契約の死亡保険金の受取人は,従業員の指定した従業員の遺族である(乙12)。 本件各養老保険契約の被保険者は従業員全員である。 本件医院の従業員に原告らの家族や親族はいない。 本件各保険契約の被保険者に対して,訴外会社の社員である証人C(以 下「証人C」という。)を招いて説明会を開催した上,書面を配布した(甲12,13)。 本件医院の従業員は本件各保険契約に係る契約書に自ら署名押印した(乙30)。 本件各保険契約の解約返戻金は事業所得として確定申告され,被告からそれに対する異論は現在までない。 原告らは青色申告事業者である。 (被告の主張)以下の事情を総合的に考慮すれば,本件各保険契約は福利厚生を目的としたものとは認められない。 本件各 い。 原告らは青色申告事業者である。 (被告の主張)以下の事情を総合的に考慮すれば,本件各保険契約は福利厚生を目的としたものとは認められない。 本件各養老保険契約が,従業員の退職金又は死亡弔慰金の補充・拡充を目的として締結されたものであれば,解約返戻金等は,そのまま従業員に対する退職金として支払われるはずである。しかし,本件医院の平成18年12月21日施行の退職金規程(以下「本件退職金規程」という。)に定められた退職金の算定方法は,本件各養老保険契約に基づき支払われる解約返戻金等の額に準じたものになっていない(本件退職金規程に基づく各従業員の退職金の要支給額と解約返戻金ないし満期返戻金の額を対比したところ,別表5のとおり,解約返戻金の額は退職金の要支給額の1.9倍以上の金額となる。)(乙1)。 退職従業員を被保険者とする本件各養老保険契約の解約返戻金が現実にも退職金に充てられていない。 本件各がん保険契約に基づき支払われる保険金は,全て原告らの管理支配下に入り,原告らが自由に処分できたのであって,従業員に給付される保証はなかった(本件各がん保険契約に基づき支払われることとなる保険金の受取人は,いずれも原告Aである。)。また,本件医院の従業員に係る雇用契約書(以下「本件雇用契約書」という。)には,本件 各がん保険契約の保険金等の使途等は定められておらず(乙2),本件医院においては福利厚生規程も定められていなかった(甲3の1,3の2)。 退職従業員に係る本件各保険契約が,合理的な理由もなく退職後長期間継続されていた。 本件各保険契約は全従業員に等しく利益を給付するものではない(本件各がん保険契約の被保険者となっていない従業員がいるほか,本 各保険契約が,合理的な理由もなく退職後長期間継続されていた。 本件各保険契約は全従業員に等しく利益を給付するものではない(本件各がん保険契約の被保険者となっていない従業員がいるほか,本件各養老保険契約においては,保険に加入した年によって,別表2のとおり,満期保険金の額が異なっている。)。 本件各保険契約に係る保険料は不必要に高額である(本件医院の正規雇用の従業員に対する給料及び賞与の支給額に占める本件各保険契約に係る保険料の額の割合を計算すると,平成18年分は別表6-1のとおり40.3%,平成19年分は別表6-2のとおり39.2%,平成20年分は別表6-3のとおり35.3%にも上っている。)。 原告Aは本件各保険契約を全て解約した。 原告Aは,平成21年7月31日に本件各保険契約を全て解約しているが,仮に,真実福利厚生目的であれば,解約する理由はない。 原告Aの供述からも,本件各保険契約は福利厚生を目的として締結したものとは認められない(乙29,32,38)。 広島東税務署長が同署職員に実施させた原告らの本件各年分の所得税の税務調査(以下「本件調査」という。)に対する原告Aの供述は,真の目的として,将来において事業継続が困難となった場合等に備えとして,本件各保険契約の解約返戻金を利用して資金繰りに充てること,それと同時に,本件各保険契約に係る多額の保険料を必要経費に計上することであったと開陳したものとなっている。 (原告らの反論) 養老保険契約の支払保険料の2分の1及びがん保険契約の支払保険料については,法人税の場合には,損金の額に算入することが認められている(甲4,5,8,15)。また,所得税(個人事業者)については,養老保険に加入し 支払保険料の2分の1及びがん保険契約の支払保険料については,法人税の場合には,損金の額に算入することが認められている(甲4,5,8,15)。また,所得税(個人事業者)については,養老保険に加入してその保険料を支払っている場合に,支払保険料の2分の1を必要経費に算入することを前提として,満期保険金等については事業所得とされるとの回答(甲6)や文献(甲11)がある。なぜ,個人の場合に,法人と同様に認められないのか,さらに,個人についても認められる場合があるにもかかわらず,原告らについてだけ認められないのか不明である。 約に基づく支払われる解約返戻金等の額に準じたものになっていないとの主張に対し)原告らは,養老保険の保険料が積立保険料部分と危険保険料部分から成り立っていることから,危険保険料部分について必要経費として申告したのであって,積立保険料部分に関係する満期保険金の額及び解約返戻金の額は本件とは無関係である。したがって,本件退職金規程が本件各養老保険契約に準じているかどうかはそもそも問題とならない。 約返戻金が退職金に充てられていないとの主張に対し)解約返戻金の話は積立保険料部分の議論であるから,無関係である。もっとも,原告らは,解約返戻金を退職金の原資として充当することを予定していた。しかし,手持ちの資金で賄うことができた。 本件各保険契約が,合理的な理由もなく退職後長期間継続されているとの主張に対し)原告らは,被保険者の退職後,遅滞なく訴外会社の担当者であった証人Cに連絡を入れている。証人Cにおいて,保険料は1年分前払いであるため時期をみて有利な時期に解約し たものと考えられる。 症のためがん保険の審査を通過しなかった従業員を除き全員加入にさせている。加入の機会を与えたことで全従業員に等しく利益を給付する ため時期をみて有利な時期に解約し たものと考えられる。 症のためがん保険の審査を通過しなかった従業員を除き全員加入にさせている。加入の機会を与えたことで全従業員に等しく利益を給付すること,すなわち,普遍的加入の要件を満たす。被告は病歴のある従業員を加入させなくても合理的な理由ありとして普遍的加入の要件を満たすとしてきた。 本件各保険料が不必要に高額との主張に対し)不必要に高額とはいえない。高額とみなされる金額について規程はない。 Aが解約したとの主張に対し)原告Aは,違法な保険であるなら継続することは希望しないとの思いから解除したに過ぎない。また,事後の事項を事実認定の判断要素に持ち込む点でも妥当ではない。 Aが本件調査において目的を開陳したとの主張に対し)被告がこの要件を判断要素とすることは,租税法規の解釈に目的や意図たる主観的要素を持ち込むこととなり妥当ではない。 (被告の再反論) 原告らの主張に沿っていえば,積立保険料部分であるのか危険保険料部分であるのか等を検討する前提として,本件各保険料が事業の遂行上通常必要な費用として支出されたものであるか否かを検討する必要があるのであり,その検討に当たっては,本件各保険料(ないしは本件各保険契約)の要素である満期保険金の額や解約返戻金の額(さらには積立保険料部分)を無視することはできない。 個人は,専ら利潤追求のための事業活動を目的として消費生活をもたない法人と異なり,生産活動(所得稼得行為)の主体であると同時に消費経済の主体であり,その支出には所得稼得に関連した「必要経費」の性質を持つものがある一方で消費支出がある。そこで法人税法は法人の 所得が「益金」から「損金」を控除して計算される旨を定めれば足りる(法人税法22条1項)のに対して,法で た「必要経費」の性質を持つものがある一方で消費支出がある。そこで法人税法は法人の 所得が「益金」から「損金」を控除して計算される旨を定めれば足りる(法人税法22条1項)のに対して,法では個人の所得の計算について「収入金額」から「必要経費」を控除する一方で,法45条1項1号の「家事費」(及び「家事関連費」)は「必要経費」に算入しない旨を明らかにしているのである。 このことからすれば,法においては,個人事業者が支出した全ての費用が「必要経費」となるわけではなく,事業所得等の所得稼得行為に関連した費用のみが「必要経費」となり,これが法人税法における損金に対応するものということができるから,ある支出が「必要経費」に該当しなければ,法人税法における損金に関する取扱い等を準用する余地はない。本件各保険料は必要経費に該当せず,家事費に該当することとなるから,原告らが主張する法人税の取扱いは,本件において準用する余地はない。 また,個人事業主が支出した保険料について必要経費と認められる場合はあるが,それは,あくまでも個人事業者が支出した費用のうち事業の遂行上通常必要な費用として支出されたものでなければ,法37条1項に該当するか否かを検討する余地はない(原告らの主張に沿っていえば,積立保険料部分であるのか危険保険料部分であるのか等について検討する余地はない。)。 本件各養老保険契約に係る保険料が,法45条1項1号及び法施行令96条所定の必要経費とされない家事上の経費に関連する経費(以下「家事関連費」という。)(法45条1項1号)に該当するか(特に,「明らかに区分することができる」(法施行令96条1号)か,又は「必要であったことが明らかにされる部分」(法施行令96条2号)に該当するか。)。(被告の予備的主張) 1項1号)に該当するか(特に,「明らかに区分することができる」(法施行令96条1号)か,又は「必要であったことが明らかにされる部分」(法施行令96条2号)に該当するか。)。(被告の予備的主張)(原告らの主張) 原告らが必要経費として算出したのは危険保険料部分であり,これは従業員やその遺族の保障のために使用されたのであるから,原告らの消費支出となる部分は存在しない。 また,本件各養老保険契約に係る保険料について,危険保険料部分及び積立保険料部分を一体として考察したとしても,積立保険料部分についても事業所得として申告の対象となっており,必要経費であることは明らかである。 (被告の主張)仮に,本件各養老保険契約に係る保険料に福利厚生費としての性質が皆無ではなく,必要経費であると観念する余地があるとしても,全体として事業の遂行上通常必要な費用のみで構成されているとまでは認めることはできず,本件各養老保険契約に係る保険料は,少なくとも必要経費の要素とそれ以外の経費の要素が混在している家事関連費であるといえる。 すなわち,本件各養老保険契約は,契約書等において,積立保険料部分に係る保険料と危険保険料部分に係る保険料を区分して示しておらず,もとより,積立保険料部分のみを保険の対象とする契約をすることはできない。 そうすると,本件各養老契約保険契約は,積立保険料部分と危険保険料部分を不可分一体とする保険契約であり,実質的に自己資金を留保しつつ,その保険料を必要経費に算入するという原告らの本件各養老保険契約締結の意図,目的を実現するためには,危険保険料部分をも含む本件各養老保険契約に係る保険料の全部の支払を必要とするものである。 このような本件各養老保険契約の性質等に照らせば,その保険料の必要経費性や必要経費と 的を実現するためには,危険保険料部分をも含む本件各養老保険契約に係る保険料の全部の支払を必要とするものである。 このような本件各養老保険契約の性質等に照らせば,その保険料の必要経費性や必要経費とされる家事関連費か否かを判断するに当たっても,本件各養老保険契約に係る保険料のうち危険保険料部分のみを取り出して判断するのは誤りであり,本件各養老保険契約に係る保険料全体を不可分一体として判断すべきであって,同保険料は,全体として必要経費の要素とそれ以外の経費の要素が混在しているというべきである。まずこの点において,法施行 令96条1号の「業務の遂行上必要な経費」の部分の金額について「客観的に明らか」に区分されているとも,同条2号の取引の記録等に基づいて,「業務の遂行上直接必要な経費」の部分の金額が「客観的に明らか」にされているともいえない。 また,原告らが本件各年分の事業所得の金額の計算において福利厚生費として必要経費に算入した本件各保険料の額は,本件各保険契約に係る保険料から本件各養老保険契約に係る主契約保険料の2分の1を控除した残額を原告Aと原告Bとで人件費割合を用いて按分して算出されているところ,平成18年分においては,10%の人件費割合を用いて,原告Bの福利厚生費の額を算出しているが,この10%という人件費割合は,いかなる根拠に基づいて算出された数値なのか判然としない。また,平成19年分及び平成20年分においては,人件費割合を本件医院の総人件費における各診療所ごとの人件費の割合で算出しているが,平成18年分の人件費割合とは異なる人件費割合を用いるようになった理由が判然としない。 このように,原告らが本件各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入した本件各保険料は,その額の算出に全く合理性が認められず,そのような合理 人件費割合を用いるようになった理由が判然としない。 このように,原告らが本件各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入した本件各保険料は,その額の算出に全く合理性が認められず,そのような合理性のない額を前提としている以上,この点においても,法施行令96条1号の「業務の遂行上必要な経費」の部分の金額について「客観的に明らか」に区分されているとも,同条2号の取引の記録等に基づいて,「業務の遂行上直接必要な経費」の部分の金額が「客観的に明らか」にされているともいえない。 本件各更正処分は信義則違反又は禁反言に該当するか。 (原告らの主張)租税分野においても信義則は適用される。本件では,被告は,国税タックスアンサーにより,個人事業主が従業員を被保険者として養老保険契約を締結した場合に2分の1を必要経費に算入することができる旨を記載し,かつ 満期保険金及び解約返戻金は事業所得となる旨示してきた(甲6)。また,国税不服審判所において,10年満期で従業員を被保険者とする養老保険契約の損金算入要件を詳細に示した(甲4)。これらの公的見解を信頼し,一般に販売されている保険契約を締結したところ,原告らに限って更正処分がなされたものである。原告らに何ら帰責事由はない。 (被告の主張)原告らが問題としているタックスアンサー記載の質疑応答事例(甲6)は,その内容からも理解できるとおり,質疑の対象となる支払保険料が必要経費であることを当然の前提とするものであり,質疑の対象となる支払保険料に係る保険契約と同種の保険契約であるからといって,必ず危険保険料部分を必要経費として取り扱うとするものではない。 現に,当該質疑応答事例の回答は,その注記において,この質疑事例は,「一般的な回答」をしたものであり,納税者の行う具体 って,必ず危険保険料部分を必要経費として取り扱うとするものではない。 現に,当該質疑応答事例の回答は,その注記において,この質疑事例は,「一般的な回答」をしたものであり,納税者の行う具体的な取引等に適用する場合においては,この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあると記載しており,本件各保険料が必要経費に該当するか否かという個別の課税関係を判断するに当たり,同質疑応答事例がそのまま妥当するものではないことは明らかである。 第3 争点に対する判断 事業者である個人が行った支出が,必要経費として控除され得るためには,当該支出の必要性を判断しなければならない。そして,その必要性の判断にあたって,その支出の「目的」を考慮せざるを得ないことは明らかであるし,原告ら自身においても,本件各保険料は,「福利厚生のため」の支出であるから必要経費に当たると主張しているのであり,その意味で「目的」を考慮しているものと解される。 もっとも,この目的を判断するについては,関係者の主観的判断だけではな く,客観的に判断されなければならないと解される(これに反する原告らの主張は採用することはできない。)。 関係各証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ア本件各養老保険契約の死亡保険金及び高度障害保険金の受取人は従業員又はその指定した親族であったが,本件各養老保険契約の満期保険金及び本件がん保険契約の保険金及び給付金の受取人は,別表2,3のとおり,原告Aであった(乙14の1ないし14の10)。 イ本件各養老保険契約は,原告らの正規雇用の従業員の全員を対象としていたが,本件各がん保険契約は,原告らの正規雇用の従業員のうち,病歴等の理由により一部の従業員は除外され,D及びEは被保険者とな イ本件各養老保険契約は,原告らの正規雇用の従業員の全員を対象としていたが,本件各がん保険契約は,原告らの正規雇用の従業員のうち,病歴等の理由により一部の従業員は除外され,D及びEは被保険者となってはいなかった(原告A)。 ウ原告Aは,本件各保険契約を締結するに際し,訴外会社の社員である証人Cを招いて従業員に対する説明会を開催し,退職金の資金確保のため,福利厚生目的で保険加入をしていただくことになった旨記載した書面を交付して,その旨,説明し,各従業員に対して,自署押印させた(原告A,証人C,甲12,13,24,29,乙8の1ないし8の12,乙9の1ないし9の10)。 エ本件各養老保険のパンフレットには,従業員を被保険者として契約する内容の生命保険プラン設計上の注意点として,保険金額は,従業員の退職金規程の範囲内で設定することとの記載があるが,本件退職金規程には,本件各養老保険契約に係る保険金や解約返戻金を退職金にどのように反映させるのかという記載がなかった。また,本件退職金規程に基づく各従業員の退職金の要支給額と,本件各契約の解約返戻金又は満期返戻金の額を対比すると,後者の額は,別表5のとおり,退職金の要支給額の1.9倍以上であった。さらに,上記パンフレットには,同様に,注意点として, 保険期間は定年時に合わせることとの記載があるが,本件医院においては従業員の定年の年齢の定めがなかった(乙1,10,12の1ないし12の12,乙27の1,2,乙28,37)。 オ原告Aは,本件各保険契約を締結するに際し,訴外会社に対し,退職金又は弔慰金に関する基準(訴外会社が作成した退職金規程の例)を参考に,それを最低基準とし,それを上回る補償基準の整備に努めるとの申し入れをしたが,その後も本件医院において上記補償基 社に対し,退職金又は弔慰金に関する基準(訴外会社が作成した退職金規程の例)を参考に,それを最低基準とし,それを上回る補償基準の整備に努めるとの申し入れをしたが,その後も本件医院において上記補償基準は整備されなかった(甲14の1ないし14の5,乙1)。 カ本件各養老保険契約については,その締結時期により,別表2のとおり,満期保険金の額が異なっていた。 キ本件医院の正規従業員のうち,D及びEは,本件各がん保険契約の被保険者となることができなかったところ,これらの者に対して,本件各がん保険契約の被保険者となったのと同様の効果をもたらす福利厚生に関する措置は整備されていなかった。 ク本件各保険契約において被保険者となった従業員のうち,Fは平成19年6月24日,本件医院を退職し,同月15日,60万円の退職金の支給を受け,Gは,平成20年12月29日,同医院を退職し,平成21年1月15日,32万円の退職金の支給を受けた(乙3,4,5,6,30)。 上記の各退職金支給時点には,本件各保険契約のうち上記F及び上記Gを被保険者とする契約は解約されていなかったため,解約返戻金等が上記の各退職金の原資に充てられることはなかった。 ケ訴外会社は,平成21年5月7日付けで,本件各保険契約のうち従業員F及びGを被保険者とする契約の解約手続を行い,同月11日,原告Aの普通預金口座に解約返戻金合計472万2570円を振り込んだ(乙7,10,18の1)。上記各保険契約の解約は,Fについては,退職から約1年10か月後,Gについては,退職から約4か月後であった(乙16の 1,2,乙17の1,2)。 コ原告Aは,平成21年7月31日付けで,訴外会社に対し,本件各保険契約のうち存続していた全ての契約の解約を請求した。訴外会社は,同年8月4 16の 1,2,乙17の1,2)。 コ原告Aは,平成21年7月31日付けで,訴外会社に対し,本件各保険契約のうち存続していた全ての契約の解約を請求した。訴外会社は,同年8月4日付けで解約手続を行い,同月6日,原告Aの普通預金口座に,解約返戻金1730万4250円を振り込んだ(乙7,10,18の2,19,20)。 サ原告Aは,上記ケ及びコの解約返戻金を事業所得の計算上収入金額に算入して申告したが,現時点において,税務署から,申告内容が誤っている旨の指摘はされていない(甲29)。 のとおり,①本件各養老保険契約の満期保険金及び本件がん保険契約の保険金及び給付金の受取人が従業員ではなく原告Aであり,原告Aが受領した金員を従業員に支払うという制度が存在しないこと(原告らは,本件各契約の締結に当たって開催した説明会により,従業員との間で本件各基本契約に基づく保険金や解約返戻金を退職金等に充当する旨の合意が成立したと主張するが,従業員に対する支給の確実性が担保されているというには足りない。),②本件各がん保険契約に加入していない従業員に対し,代替手段が整備されていないこと(原告Aは,当該従業員に対して加入できない旨を説明したから十分であると供述するが,従業員に対する福利厚生手段としては,上記のような説明のみでは従業員間の公平性が確保されない。),③本件医院は,保険金額を退職金規程に基づく退職金支給予定額の範囲内としたり,保険期間を被保険者の定年と合わせたりするなどの,従業員の福利厚生プランを設計する際の注意点として本件各養老保険のパンフレットに記載されている事項を遵守していないこと,④本件各保険契約の解約返戻金又は満期返戻金は,退職金規程に基づく支給予定の退職金の額を超え,1.9倍以上となっていること して本件各養老保険のパンフレットに記載されている事項を遵守していないこと,④本件各保険契約の解約返戻金又は満期返戻金は,退職金規程に基づく支給予定の退職金の額を超え,1.9倍以上となっていること,⑤原告Aは,本件各保険契約を締結するに際し,訴外会社に対して退職金又は弔慰金に関する基準の整備に努めるという内容の 書面を差し入れているが,その内容を履行していないこと,⑥従業員の中で満期保険金の額が異なる者がいるところ,その理由は本件各保険契約の締結時期であり,その他,職種や年齢等,従業員としての福利厚生の内容に差異を設ける合理的な理由は認められないこと,⑦従業員への退職金の支給に際し,本件各保険契約が解約されていないばかりか,当該従業員の退職後も当該従業員を被保険者とする本件各保険契約が継続されていること(原告Aは,上記の本件各保険契約を継続していた理由について,Fは復職予定であったからである,また,証人Cが原告Aにとって有利な時期に解約を行ったからであると主張するが,いずれにしろ,このような上記各契約の継続が,従業員の福利厚生目的では説明できないことには変わりがない。)といった事情があるところ,これらの事情は,原告Aにおいて,本件各保険契約が従業員の福利厚生のためといえるだけの必要な整備をとっておらず,かつ,現実にも,福利厚生のために利用していないことを明らかにしているものといわざるをえない。 したがって,その他,原告ら主張の事実や,福利厚生目的であったとの供述(原告A)の存在を考慮しても,本件各保険契約が福利厚生目的とは認められない。 原告らは,法人税法基本通達9―3-4(甲5)や法人税の場合におけるがん保険の保険料の取扱い(甲8,15),個人事業主が支払った保険料のうち福利厚生費として必要経費として 認められない。 原告らは,法人税法基本通達9―3-4(甲5)や法人税の場合におけるがん保険の保険料の取扱い(甲8,15),個人事業主が支払った保険料のうち福利厚生費として必要経費として算入した扱い(甲6)を根拠に,原告らの申告内容が適正であると主張する。 しかしながら,原告らが根拠する上記取扱いは,いずれも,当該出費が従業員の福利厚生目的であること,すなわち必要経費としての性質を有することが認められた場合の扱いである。本件においては,Aが,本件各がん保険契約に基づく給付についても,全従業員の福利厚生を実現するために必要な制度の整備を怠っている上,当該保険契約を従業員の 退職後においても解約していないために,福利厚生目的であるとは認められないから,原告らの主張する扱いの前提を欠くものである。 なお,原告らは,本件各養老保険契約の保険料の支払いについて,積立保険料部分と危険保険料部分とを区別すべきと主張するが,必要経費としての性質の有無を判断するにあたり,支払った保険料のどの部分が積立保険料に該当するかを区別することができないため,上記原告らの主張も採用できない。 上記2のとおりであり,予備的主張については判断の必要がないが,なお検討する。 仮に,本件各養老保険契約に係る保険料のうち,従業員の福利厚生に資する一部について福利厚生目的が否定できないとした場合であっても,本件各養老保険料を必要経費に算入しつつ,多額の解約返戻金等を見込んで締結されたものということができるのであって,必要経費の要素とそれ以外の経費(家事費)の要素が混在しているというべきであり,家事関連費に当たるということができる。 そして,家事関連費となる本件各養老保険契約の保険料のうち,福利厚生目的を有する部分を必要経費に算入するには 家事費)の要素が混在しているというべきであり,家事関連費に当たるということができる。 そして,家事関連費となる本件各養老保険契約の保険料のうち,福利厚生目的を有する部分を必要経費に算入するには,当該部分(事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分)がどの部分であるかを明らかに区分することができる必要がある(法45条1項1号,法施行令96条1号)。 しかし,原告Aが支払った上記保険料のうちどの部分が積み立てられ,どの部分が掛け捨てとなるのかを区別することはできないから,福利厚生目的である部分を明らかに区分することは不可能である。 この点,原告らは,法人税基本通達9-3-4(甲5)や個人事業主の場合 の回答例(甲6)を本件にも準用又は適用できるとし,本件各養老保険の保険料額の2分の1は危険保険料の支払であるから,常に,福利厚生目的となると主張する。しかし,個人は法人と異なり,生産活動だけでなく消費経済の主体となって,「必要経費」の性質を持たない消費支出を行うことが想定されるから,法及び法施行令は,家事費及び家事関連費のうち,所得を生ずべき業務のために必要な経費として明らかに区分することができる部分以外は必要経費に算入しない旨を規定しているのであって,家事関連費の必要経費算入の可否を判断する場面において,消費経済の主体となることが想定できない法人に関する法人税の扱いを当然に準用することはできない。また,個人事業主の場合の回答例(甲6)も例を示したものに過ぎず,法の解釈の根拠となるものではないし,上記回答例は,そもそも支払保険料全体が福利厚生目的であり必要経費であることが前提となるものであって,本件とは前提が異なるものである。 したがって,本件各養老保険契約における保険料の2分の1が,業務の遂行上必要な部分であるとして 全体が福利厚生目的であり必要経費であることが前提となるものであって,本件とは前提が異なるものである。 したがって,本件各養老保険契約における保険料の2分の1が,業務の遂行上必要な部分であるとして「明らかに区分することができる」ということはできないから,必要経費に算入することはできない。 4 争点について「租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,右法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして,右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動した ところ,のちに右表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなけ2年10月30日第三小法廷判決・集民152号93頁参照)。 本件において,原告らが信頼したという表示は,①国税庁ホームページに掲載された質疑事例で,所得税においても保険料の2分の1を必要経費として算入することができるとしたものが存在すること(甲6),及び,② 件において,原告らが信頼したという表示は,①国税庁ホームページに掲載された質疑事例で,所得税においても保険料の2分の1を必要経費として算入することができるとしたものが存在すること(甲6),及び,②国税不服審判所において,法人税の場合の養老保険契約の損金算入要件を示した審判例が存在すること(甲4)である。 まず,①については,上記3のとおり,支払保険料全体が従業員の福利厚生を目的とする場合であることが当然の前提であり,そうではない場合にも必ず危険保険料部分を必要経費として認めるものとまでは読み取れない上,証拠(甲6)によれば,この質疑事例は,注記において,照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり,具体的な取引等に適用する場合においては回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることが明記されているのであるから,本件各更正処分が,原告らの信頼した表示に反するものとはいえない。 また,②についても,原告らが主張する国税不服審判所の審判例は,法人税に関するものであって,同様に,本件各更正処分が,原告らの信頼した表示に反するものとはいえない。 以上より,本件各更正処分は,原告らが信頼したと主張する表示に反するものではないから,信義則違反であるという原告らの主張は採用できない。 5 結論以上のとおり,原告らの主張はいずれも理由がなく,本件各保険料を本件各年分における原告らの事業所得の計算上必要経費に算入することはできない。 原告らは,上記を前提に本件各年分における原告らの所得税額を計算すると別表7-1及び7-2のとおりとなること,及び過少申告加算税の額は別表8及び9のとおりとなることについては争わない。 上記の金額は,本件各更正処分における所得税額や,本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額となるから,これ と,及び過少申告加算税の額は別表8及び9のとおりとなることについては争わない。 上記の金額は,本件各更正処分における所得税額や,本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額となるから,これらの処分はいずれも適法である。 よって,本件各処分の取消しを求める原告らの請求は,いずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西洋 裁判官榎本康浩 裁判官内藤陽子
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