令和3年4月27日判決言渡令和2年(行ウ)第60号特別定額給付金の支給義務付け等請求事件 主文 1 本件訴えのうち次の部分をいずれも却下する。 (1) 原告に対する特別定額給付金の支給決定の義務付けを求める部分(2) 原告に対して特別定額給付金の支給決定をしないことが違法であることの確認を求める部分(3) 原告による特別定額給付金の支給申請に対し,大阪市長がした不支給決定の取消しを求める部分 (4) 原告が最高裁令和2年(行ツ)第121号,同年(行ヒ)第127号事件における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認を求める部分 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告大阪市関係次の(1)が主位的請求,(2)~(6)が記載順に順次第2次から第6次までの予備的請求((3)のア及びイは単純併合) (1) 被告大阪市は,原告に対し,特別定額給付金の支給決定をせよ(以下,この請求を「請求1」という。)。 (2) 被告大阪市が原告に対して特別定額給付金の支給決定をしないことは違法であることを確認する(以下,この請求を「請求2」という。)。 (3)ア原告が令和2年5月22日付けでした特別定額給付金の支給の申請に 対し,大阪市長がした不支給決定を取り消す(以下,この請求を「請求3 -1」という。)。 イ被告大阪市は,原告に対し,10万円を支払え(以下,この請求を「請求3-2」という。)。 (4) 原告が最高裁令和2年(行ツ)第121号,同年(行ヒ)第127号事件(以下「別件上告等事件」という。)における上告人兼申立人の地位を維持 (以下,この請求を「請求3-2」という。)。 (4) 原告が最高裁令和2年(行ツ)第121号,同年(行ヒ)第127号事件(以下「別件上告等事件」という。)における上告人兼申立人の地位を維持 しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることを確認する(以下,この請求を「請求4」という。)。 (5) 原告が別紙物件目録記載の住居を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることを確認する(以下,この請求を「請求5」という。)。 (6) 原告が,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(以下「ホームレス自立支援法」という。)にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることを確認する(以下,この請求を「請求6」という。)。 2 被告ら関係 被告らは,原告に対し,連帯して30万円を支払え(以下,この請求を「本件国賠請求」という。)。 第2 事案の概要被告大阪市は,内閣が「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定し,一律に1人当たり10万円の給付を行うこととしたこと(以下,この給付を 行う事業を「特別定額給付金給付事業」といい,同事業により給付される金銭を「特別定額給付金」という。)を受け,事業主体として特別定額給付金給付事業を実施したところ,その給付対象者を,原則として令和2年4月27日(以下「本件基準日」という。)において大阪市の住民基本台帳に記録されている者とした。 原告は,大阪市内の淀川水系淀川の河川区域内にある別紙物件目録記載の建物 (以下「本件建物」という。)に居住し,平成25年4月1日に住民基本台帳の 記録が職権で消除された後,いずれの市区町村(「市区町村」の「区」とは特別区をいう。以下同 物件目録記載の建物 (以下「本件建物」という。)に居住し,平成25年4月1日に住民基本台帳の 記録が職権で消除された後,いずれの市区町村(「市区町村」の「区」とは特別区をいう。以下同じ。)の住民基本台帳にも記録されていないが,被告大阪市に対し,特別定額給付金の支給の申請書を提出した。これに対し,被告大阪市は,原告に特別定額給付金を支給しないこととし,申請書を郵便で原告に返却した(以下,このようにして被告大阪市が給付しなかったことを「本件不支給決定」とい う。)。 本件は,原告が,被告大阪市に対し,主位的請求として,憲法29条3項,25条1項,27条等に基づき特別定額給付金を受給する権利を有するなどとして,いわゆる申請型の義務付けの訴えとして,特別定額給付金の支給決定の義務付けを求め(請求1),その予備的請求として,①不作為の違法確認の訴えとして,特 別定額給付金の支給の申請に対し,相当の期間内に特別定額給付金の支給決定をすべきであるにもかかわらず,これをしないことの違法確認(請求2),②本件不支給決定の取消し(請求3-1)及び特別定額給付金としての10万円の支払(請求3-2),③原告が別件上告等事件の上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認(請求4),④原告が本件建物を 生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認(請求5),⑤原告がホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認(請求6)を順次求めるほか,被告らに対し,特別定額給付金の給付対象者を本件基準日において住民基本台帳に記録されている者等と定めたこ と等について,国家賠償法1条1 できる地位にあることの確認(請求6)を順次求めるほか,被告らに対し,特別定額給付金の給付対象者を本件基準日において住民基本台帳に記録されている者等と定めたこ と等について,国家賠償法1条1項の適用上違法があるなどとして,損害賠償金30万円の連帯支払(本件国賠請求)を求める事案である。 1 前提事実当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実は,次のとおりである。 (1) 原告について ア原告(昭和▲年生まれ)は,日本国籍を有する者である。 イ原告は,平成25年3月頃,淀川水系淀川の河川区域内に所在する土地に建物を設置して居住するようになり,大阪市淀川区長に対し,その建物を設置した場所を住所として転入届を提出したが,不受理処分を受けた。 また,原告は,その当時,大阪市西成区内に住所があるものとして住民基 本台帳に記録されていたところ(以下,住民基本台帳に記録されることを「住民登録」ともいう。),同年4月1日,その記録が職権で消除された。 (甲3,4,弁論の全趣旨)ウ原告は,平成25年6月頃,上記イの建物付近に,新たに本件建物を設置し,以後,本件建物に居住している(甲3)。 エ原告は,上記イのとおり,住民基本台帳の記録が消除された後,いずれの市区町村においても住民登録がされていない(甲4,弁論の全趣旨)。 オ原告は,平成29年6月8日,大阪市淀川区長に対し,本件建物の所在地を住所とする転入届を提出したが,同月28日付けで不受理処分を受けた(甲6)。 カ原告は,平成29年12月,住民登録がされている国民に限って選挙権を認めている公職選挙法21条1項は憲法の規定等に反し無効であるなどと主張して,次回の衆議院議員総選挙等において投票をする カ原告は,平成29年12月,住民登録がされている国民に限って選挙権を認めている公職選挙法21条1項は憲法の規定等に反し無効であるなどと主張して,次回の衆議院議員総選挙等において投票をすることができる地位にあることの確認等を求める訴訟(大阪地方裁判所平成29年(行ウ)第237号)を提起したが敗訴し(訴えの一部却下及び請求棄却),その 控訴審(大阪高等裁判所令和元年(行コ)第117号)において控訴を棄却する判決がされ,同判決に対し上告及び上告受理の申立てをしたが(別件上告等事件),令和2年10月8日,最高裁判所において上告棄却及び上告不受理の決定がされた(甲8~11,乙23)。 (2) 内閣の当初の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策 内閣総理大臣(当時。以下同じ。)をもって充てられた新型インフルエン ザ等対策本部長は,令和2年4月7日,新型インフルエンザ等対策特別措置法32条に基づき,新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域を東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県,大阪府,兵庫県及び福岡県として新型インフルエンザ等緊急事態宣言を発出し,内閣は,同日,「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定した。上記経済対策においては,「生 活に困っている世帯や個人への支援」として,「感染症の影響を受け収入が減少し,事態収束も見通せずに日々の生活に困窮している方々に対し,迅速に,手厚い,思い切った支援の手を差し伸べる観点から,休業等により収入が減少し,生活に困っている世帯に対して…1世帯当たり30万円の給付を行う。」とされていた。(甲13,乙1) (3) 本件緊急経済対策新型インフルエンザ等対策本部長は,令和2年4月16日,新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域を全国に拡大した。そし 。」とされていた。(甲13,乙1) (3) 本件緊急経済対策新型インフルエンザ等対策本部長は,令和2年4月16日,新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域を全国に拡大した。そして,内閣は,令和2年4月20日,上記(2)の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を変更する閣議決定をした。ここで変更された「新型コロナウイルス感染症 緊急経済対策」(以下「本件緊急経済対策」という。)においては,「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の下,生活の維持に必要な場合を除き,外出を自粛し,人と人との接触を最大限削減する必要がある。医療現場をはじめとして全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち,人々が連帯して,一致団結し,見え ざる敵との闘いという国難を克服しなければならない。このため,感染症拡大防止に留意しつつ,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うこととし,一律に,一人当たり10万円の給付を行う。」こととされた。(甲14,乙2〔23頁,24頁〕)(4) 「特別定額給付金(仮称)事業の実施について」とする文書の発出 総務省が特別定額給付金給付事業を所管するところ,総務大臣は,令和2 年4月20日付けで,各都道府県知事及び各指定都市市長宛てに,「特別定額給付金(仮称)事業の実施について」とする文書(総行政第67号)を発出し,特別定額給付金給付事業の事前準備に着手することなどを要請した。 同文書には,特別定額給付金給付事業は,市区町村の実施する給付事業を対象とし,国が補助金(補助率10/10)を交付するという方式としている とし,地方公共団体の協力が必要である旨記載するほか,次の記載がある。 (甲16)ア事業の実施主体と経費負担(ア 対象とし,国が補助金(補助率10/10)を交付するという方式としている とし,地方公共団体の協力が必要である旨記載するほか,次の記載がある。 (甲16)ア事業の実施主体と経費負担(ア) 実施主体は市区町村(イ) 実施に要する経費(給付事業費及び事務費)について,国が補助(1 0/10)イ給付対象者本件基準日において住民基本台帳に記録されている者ウ給付額給付対象者1人につき10万円 エ受給権者住民基本台帳に記録されている者の属する世帯の世帯主(5) 本件補正予算内閣は,令和2年4月27日,特別定額給付金給付事業の助成に必要な経費(12兆8802億9283万円)を計上する令和2年度一般会計補正予 算(第1号)(以下「本件補正予算」という。)を国会に提出し,本件補正予算は,同月30日,国会の議決を経て成立した。なお,本件補正予算において,上記の「特別定額給付金給付事業の助成に必要な経費」は,「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の一環として,全国全ての人々に対して特別定額給付金を支給するため地方公共団体が行う特別定額給付金給付事業 に要する経費の補助等」と説明されていた。(乙4~7,弁論の全趣旨) (6) 本件補助金要綱の発出総務大臣は,令和2年4月30日付けで,各都道府県知事及び各指定都市市長宛てに,「特別定額給付金給付事業費補助金交付要綱について」とする書面(総行政第78号。以下「本件補助金要綱」という。)を発出した(乙8)。 本件補助金要綱には,この補助金は,市区町村を事業主体として,新型コロナウイルス感染拡大防止に留意しつつ,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うことを目的とする旨(2条),総務大臣は,申請・受給権者からの支給の申請 助金は,市区町村を事業主体として,新型コロナウイルス感染拡大防止に留意しつつ,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うことを目的とする旨(2条),総務大臣は,申請・受給権者からの支給の申請を受けて,市区町村が特別定額給付金を支給した場合において,市区町村が当該請求に応じて支払う金額について,補助金(補助率: 10分の10)を交付する旨(3条),特別定額給付金の給付対象者は,原則として,本件基準日において,市区町村の住民基本台帳に記録されている者とする旨(別紙の第1の1),給付額は,給付対象者1人につき10万円とする旨(別紙の第2)が記載されていた(乙8)。 (7) 本件実施要領の送付 総務省は,市区町村が事業主体として速やかに特別定額給付金の支給を開始できるようにするため,令和2年4月30日付けで,各都道府県特別定額給付金担当部長及び各指定都市特別定額給付金担当部長宛てに,特別定額給付金給付事業の基本的枠組み,申請受付準備から給付までの流れ,円滑な事業実施における留意点等について示した「特別定額給付金給付事業実施要領」 (以下「本件実施要領」という。)を送付した。 本件実施要領には,次の記載がある。 ア実施主体(本件実施要領第2)給付事業の実施主体は市区町村である。 イ給付対象者(本件実施要領第3) 特別定額給付金の給付対象者は,本件基準日において,住民基本台帳に 記録されている者(①本件基準日以前に,住民基本台帳法8条の規定に基づき住民票を消除されていた者で,本件基準日において,日本国内で生活していたが,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されておらず,かつ,本件基準日の翌日以後初めて住民基本台帳に記録されることとなったもの及び②本件基準日以前に出生した戸籍を有しない者で,本 で生活していたが,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されておらず,かつ,本件基準日の翌日以後初めて住民基本台帳に記録されることとなったもの及び②本件基準日以前に出生した戸籍を有しない者で,本件基準日に おいて,日本国内で生活していたが,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されておらず,かつ,住民基本台帳に記録されている者に準ずるものとして市区町村長が認めるものを含む。)であること(以下,給付対象者を本件基準日において住民基本台帳に記録されている者とする基準を「本件基準日給付基準」といい,本件基準日給付基準で認められる者に加 え,給付対象者を広げる上記①の基準を「本件拡大給付基準」という。)。 ウ給付額(本件実施要領第4)給付額は,給付対象者1人につき10万円であること。 エ申請受付開始日及び申請期限(本件実施要領第9)(ア) 申請受付開始日は,市区町村において,郵送申請方式及びオンライ ン申請方式それぞれについて設定することができること。 (イ) 申請期限は,当該市区町村における郵送申請方式の申請受付開始日から3か月以内とすること。 オ給付決定(本件実施要領第10)市区町村は,申請書を受理したときは,速やかに内容を確認の上,支給 を決定し,特別定額給付金を支給するものであること。 カホームレス等の取扱い(本件実施要領第5の4,第13の1)(ア) 居住が安定していないいわゆるホームレスの方や事実上ネットカフェに寝泊まりしている方(以下「ホームレス等」という。)であって,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されていない者について,本 件基準日の翌日以降,居住地の市区町村(以下「居住市区町村」という。) において住民基本台帳に記録されたときは,当該居住市区町村において申請 基本台帳にも記録されていない者について,本 件基準日の翌日以降,居住地の市区町村(以下「居住市区町村」という。) において住民基本台帳に記録されたときは,当該居住市区町村において申請・受給権者とすること。 (イ) ホームレス等のうち住民基本台帳に記録がある方は,当該住民票が所在する市区町村(以下「住民票所在市区町村」という。)から申請書を入手の上,申請することとなること。その際,記録の有無の確認につ いては,住民票所在市区町村であると考えられる市区町村に問い合わせるよう案内することが適当であること。 ホームレス等のうち本件基準日の翌日以降,居住市区町村において住民基本台帳に記録される場合,ホームレス等の住居については次のような方法も考えられること。 ① 自立支援センター等が生活の本拠たる住所として認定される場合があること。 ② ネットカフェの利用について長期契約を締結し,長期にわたって滞在する利用者の意思が明確にされ,かつ,店舗が利用者の住所として住民基本台帳に記録されていることについて店舗の管理者が同意して いるようなケースにおいては,生活の本拠たる住所として認定される場合もあること。 (以上のカのとおりの本件実施要領におけるホームレス等の取扱いを「本件ホームレス等取扱い」という。)キ DV等避難者の取扱い(本件実施要領第5の1,第7の3) (ア) 配偶者からの暴力を理由に避難し,配偶者と生計を別にしている者(婦人相談所一時保護所〔一時保護委託契約施設を含む。〕又は婦人保護施設の入所者の暴力被害が,当該入所者の親族等,当該入所者が属する世帯の者が加害者であって,当該親族と生計を別にしている入所者を含む。)(以下「DV等避難者」という。)及びその同伴者 であって,本件基準日に 力被害が,当該入所者の親族等,当該入所者が属する世帯の者が加害者であって,当該親族と生計を別にしている入所者を含む。)(以下「DV等避難者」という。)及びその同伴者 であって,本件基準日において居住地に住民票を移していない者が, 次に掲げる①から③までの要件のいずれかを満たしている旨を居住市区町村に申し出た場合,当該DV等避難者については,居住市区町村における申請・受給権者とすること。 ① その配偶者に対し,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「配偶者暴力防止法」という。)10条に基づ く保護命令(同条1項1号に基づく接近禁止命令又は同項2号に基づく退去命令)が出されていること。 ② 婦人相談所による「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」(婦人相談所以外の配偶者暴力対応機関〔行政機関や関係機関と連携してDV被害者支援を行っている民間支援団体も含む。〕 が発行した確認書を含む。また,親族からの暴力を理由に婦人相談所一時保護所又は婦人保護施設に入所している者に婦人相談所により発行される「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」と同様の内容が記載された証明書を含む。)が発行されていること。 ③ 本件基準日の翌日以降に住民票が居住市区町村へ移され,住民基 本台帳事務処理要領に基づく支援措置の対象となっていること。 (イ) 市区町村は,DV等避難者の申出(支給候補者)リスト及び被申出者(支給停止者)リストを作成し,随時更新すること。 ① 全国一律の原則的な事前申出期間(令和2年4月24日から同月30日まで)を設け,その期間中にから申出を受け付けること。 ② 市区町村間の連絡調整期間(令和2年5月1日から同月8日まで)においては,DV等避難者から申出を受けた居 年4月24日から同月30日まで)を設け,その期間中にから申出を受け付けること。 ② 市区町村間の連絡調整期間(令和2年5月1日から同月8日まで)においては,DV等避難者から申出を受けた居住市区町村は,「申出者(支給候補者)リスト」を居住市区町村が所在する都道府県から,住民票が所在する都道府県を経由し,住民票所在市区町村に送付すること。 ③ 住民票所在市区町村においては,当該リストを基に「申出者(支 給停止者等)リスト」を作成することで,配偶者等(世帯主)から当該DV等避難者に係る特別定額給付金の申請があった場合でも,当該配偶者等に特別定額給付金を支給しない取扱いとすること。 ④ 当該申出期間を経過した後の申出についても,随時,遅滞なく事前申出期間内の事務処理に準じた市区町村間の連絡調整を行い,申 出が住民票所在市区町村に到達した時点で,申出者分の特別定額給付金を申請した配偶者等に対し特別定額給付金の支給決定が行われていなければ,申出者分の特別定額給付金は居住市区町村から給付する取扱いとすること。 ⑤ 申出期間中の申出,申出期間を経過した後の申出のどちらの場合 も,当該申出者分の特別定額給付金が既に配偶者等に支給されていたとしても,当該申出者に対し特別定額給付金を支給する取扱いとすること。 ⑥ 配偶者等に対し支給した申出者分の特別定額給付金については,所定の申請書様式において,「世帯主以外の世帯員が,一定の事由 により,特別定額給付金を受給していることが判明した場合には,返還をしていただく」旨,申請者の同意をとることとし,重複して配偶者等に対し特別定額給付金を支給した場合は,当該事由に当たるものとなり,既に配偶者等に給付された特別定額給付金については返還を求める取扱いとすること。 ,申請者の同意をとることとし,重複して配偶者等に対し特別定額給付金を支給した場合は,当該事由に当たるものとなり,既に配偶者等に給付された特別定額給付金については返還を求める取扱いとすること。 (以下,本件実施要領におけるDV等避難者の取扱いを「本件DV等避難者取扱い」という。)(以上につき,乙10,弁論の全趣旨)(8) 被告大阪市における特別定額給付金事業の実施被告大阪市は,特別定額給付金事業を実施するに当たり,独自の内部規則を新たに策定せず,総務省から送付を受けた本件実施要領(上記(7))を内部 規則として用い,本件基準日である令和2年4月27日終了時点の住民基本 台帳における氏名・住所等を記載した給付対象者リストに基づき,同年5月22日から申請書の郵送を開始し,オンラインにおける申請については,同月11日から受付を開始した。また,被告大阪市は,特別定額給付金の申請期限を同年8月25日とした。(甲31,乙10,弁論の全趣旨)(9) 本件申請及び本件不支給決定 ア本件申請原告は,令和2年5月22日,大阪市役所に赴き,大阪市長宛ての特別定額給付金申請書を提出し,特別定額給付金の支給を申請した(以下,当該申請書を「本件申請書」といい,当該申請を「本件申請」という。)(甲23)。 イ本件不支給決定被告大阪市は,原告が本件基準日において,被告大阪市の住民基本台帳に記録されていなかったことから,原告に特別定額給付金を支給しないこととし,令和2年5月29日,本件申請書を原告の居所宛てに郵送して返却した(本件不支給決定)(甲31)。 (10) 総務省住所認定通知文書の発出総務省自治行政局住民制度課長は,令和2年6月17日付けで,各都道府県市区町村担当部長(市区町村担当 送して返却した(本件不支給決定)(甲31)。 (10) 総務省住所認定通知文書の発出総務省自治行政局住民制度課長は,令和2年6月17日付けで,各都道府県市区町村担当部長(市区町村担当課扱い)宛てに,ホームレス等に対する住所認定についての対応を整理したなどとする通知文書(以下「総務省住所認定通知文書」という。)を発出した。総務省住所認定通知文書には,次の 記載がある。(甲37の8)ア住民票の作成ホームレス等がいずれの市区町村にも住民票がないことを確認した場合は,緊急的な一時宿泊場所等であっても,当該宿泊場所等の管理者の同意があり,生活の本拠たる住所として市区町村長が認定することが適当であ ると判断したときは,住民票を作成すること。 イ生活の本拠となる場所上記アにおける生活の本拠となる場所については,自立支援センターやネットカフェに加え,旅館業法に基づく簡易宿所,生活保護法に基づく無料低額宿泊所,ホームレスの自立支援等に関する基本方針に基づく生活困窮者一時宿泊施設(シェルター),その他支援団体の施設等についても, その対象となること。 ウ上記イにおける生活の本拠としての住所認定については,本人に居住の意思があり,生活困窮者自立支援法に基づく自立支援や生活保護法による保護等の各種福祉制度の活用により,当該者に対する宿泊場所等の確保が行われ,かつ,生活の再建や自立を目指すための支援がされる場合には, 居住期間の長さにかかわらず,これを行うことが可能であると考えられること。 (11) 大阪市住所認定通知文書被告大阪市の市民局総務部住民情報担当課長は,総務省住所認定通知文書(上記(10))による通知を受け,令和2年7月7日付けで,被告大阪市の各 区の住民情報事務 11) 大阪市住所認定通知文書被告大阪市の市民局総務部住民情報担当課長は,総務省住所認定通知文書(上記(10))による通知を受け,令和2年7月7日付けで,被告大阪市の各 区の住民情報事務所管課長及び各出張所長宛てに,ホームレス等に対する住所認定の取扱いについての通知文書(以下「大阪市住所認定通知文書」という。)を発出した。大阪市住所認定通知文書には,次の記載がある。(甲37の3・4)ア取扱開始日 令和2年7月8日イ生活困窮者自立支援法に基づく自立支援施設生活困窮者自立支援法に基づく自立支援を行う次の施設については,本人の居住の意思及び住民登録に関する同意書による施設管理者の同意を確認することにより,居住期間の長さにかかわらず,住所認定を行うこと ができるものとする。 ・A・B・Cウ上記イ以外の施設での住所認定についてこれまでの住所認定の取扱いと変更はないが,一次的な契約に基づく宿 泊施設やネットカフェ等においては,居住の継続性を契約書及び当該宿泊場所等の管理者の同意を確認し住所認定を行う。 (12) 本件訴訟の提起原告は,令和2年5月22日,本件訴訟を提起した。 2 主たる争点 (1) 原告の訴えのうち,特別定額給付金の支給決定の義務付け請求(請求1),本件申請に対し特別定額給付金の支給決定をしないことの違法確認請求(請求2)及び本件不支給決定の取消請求(請求3-1)に係る部分は,特別定額給付金の支給・不支給の決定が抗告訴訟の対象となる「処分」,すなわち,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条2 項)であることを前提とするものであり,特別定額給付金の支給・不支給の決定が「処分」でなければ不適法となるところ,特別定額給 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条2 項)であることを前提とするものであり,特別定額給付金の支給・不支給の決定が「処分」でなければ不適法となるところ,特別定額給付金の支給・不支給の決定が「処分」であるか否か(争点1)が争われている。 (2) 原告の訴えのうち,原告が別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認請求 (請求4),原告が本件建物を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認請求(請求5)及び原告がホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認請求(請求6)に係る部分(以下「本件各確認請求に係る訴え」という。)について は,いずれも確認の利益がなければ不適法となるところ,本件各確認請求に 係る訴えについての確認の利益の有無(争点2)が争われている。 (3) 原告の各請求の当否について,いずれも本件実施要領における給付対象者の定め(以下「本件実施要領給付基準」という。)の違憲性等が問題となるところ,本件実施要領給付基準の違憲性等(争点3)が争われている。 3 主たる争点に関する当事者の主張 上記2の主たる争点に関する当事者の主張(各請求との関係での主張も含む。)は,次のとおりである。 (1) 争点1(特別定額給付金の支給・不支給の決定が「処分」であるか否か)について(原告の主張) ア処分性を有するための判断基準・要件過去の判例・裁判例が示した処分性を有するための判断基準・要件は,次のとおりである。 (ア) 行政事件訴訟法3条5項の「処分」は,公権力の主体たる国又は ア処分性を有するための判断基準・要件過去の判例・裁判例が示した処分性を有するための判断基準・要件は,次のとおりである。 (ア) 行政事件訴訟法3条5項の「処分」は,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形 成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものである。 (イ) 行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」とされるためには,その申請権が法令の明文によって規定されている場合だけでなく,法令の解釈上,その申請につき,申請をした者が行政庁から何らかの応答を受け得る利益を法律上保護されている場合をも含むと解すべきであ る。 (ウ) 行政庁による不支給決定が処分性を有するか否かは,その不支給決定の根拠・原因となる法令の目的,要件,手続,効果等を個別的に検討し,当該不支給決定につき行政庁の優越的な意思の発動として行わせ,私人に対してその結果を受忍すべき一般的拘束を課することとしている か否か,またこのような意思の発動を適法とするための要件を定めて行 政庁がこの要件の充足の有無を判断して行動すべきことを要求しているか否かを総合的に判断して決すべきものである。 (エ) 給付手続について定めた要綱に申請制度を採用している場合においては,支給・不支給の決定を私法上の申込みに対する承諾とみるか,行政処分としての決定とみるかは,単にその規定の仕方が規則,形式に かなっているかどうかで決することはできず,その制度の趣旨,目的を探求し,そこから,当該申請に対し,行政庁として応答すべきことが一般法理上義務付けられていると認められる場合においては,当該申請は,行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」となり,それに対する行政庁の応答は,処分性を 対し,行政庁として応答すべきことが一般法理上義務付けられていると認められる場合においては,当該申請は,行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」となり,それに対する行政庁の応答は,処分性を有することになる。 イ特別定額給付金給付事業が憲法29条3項に基づくこと特別定額給付金は,当初は経済的損失を負った特定の者を対象としていた給付金が,新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域を全国とする新型インフルエンザ等緊急事態宣言が発出され,内閣総理大臣が自粛の要請をした結果,国民が種々の憲法上の権利が制限されることになっ て,その対象者を拡大したものであるから,特別定額給付金給付事業は,憲法29条3項の要請を具体化したものと解すべきである。 新型インフルエンザ等緊急事態宣言の発出及び内閣総理大臣の自粛の要請により,特定の者が特定の財産権上の犠牲を強いられており,本来であれば,特別定額給付金は,それらの特定の財産権上の犠牲を強いられた者 に限定して支給されるべきであるが,内閣総理大臣が説明しているとおり,全ての国民に支給することによって,給付要件の審査を省き,もって早急に支給することにしたのである。そして,特別定額給付金は,憲法29条3項にいう補償の最低ラインのものと評価することができる。 ウ特別定額給付金給付事業が憲法25条2項を具体化した生活保護法又 は生活困窮者自立支援法を補完する制度であること 特別定額給付金給付事業は,生活保護法及び生活困窮者自立支援法を補完する制度と解することができる。 特別定額給付金は,新型コロナウイルスの影響によって就労又は店舗等の営業が困難となり,今後も同様の状況が続けば生活保護の受給要件を満たす者を救済するために支給されるのであるから,生活保護法に基 。 特別定額給付金は,新型コロナウイルスの影響によって就労又は店舗等の営業が困難となり,今後も同様の状況が続けば生活保護の受給要件を満たす者を救済するために支給されるのであるから,生活保護法に基づく扶 助に至る前段階で適用される生活困窮者自立支援法を補完するものと解すべきである。 エ本件実施要領における受給権の有無の判断(転入届の受理の当否の判断)は,公権力の主体として優越的地位に基づき行われること本件実施要領において,特別定額給付金の給付対象者は,原則として, 本件基準日に住民基本台帳に記録されている者とされているから,特別定額給付金の受給権を取得するためには転入届が受理されることが必要であるところ,その受理の当否の判断は,公権力の主体として優越的な地位に基づき行われる。 オ損害賠償請求訴訟では特別定額給付金の不支給決定による不利益は救 済されないから,当該不支給決定には処分性が認められなければならないこと特別定額給付金を最も必要とするのは貧困状態にある者であるところ,貧困状態にある者は,特別定額給付金を生活の維持に必要な食費等に支出することになり,特別定額給付金の不支給決定につき,事後的に損害賠償 請求訴訟を提起して救済を求めることは迂遠である。特別定額給付金給付事業の目的として「迅速かつ的確に家計への支援を行う」ことが明記されている以上,特別定額給付金の不支給決定については処分性が認められなければならない。 (被告大阪市の主張) ア給付行政における行政庁の行為と処分性について 行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められ 行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められるものをいう(最高裁昭和28年(オ)第1362号同30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁,最高裁昭和37年(オ)第296号 同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等)。 そして,行政庁が行った行為が処分性を有するというためには,そのように解し得る法令上の根拠が必要である。 とりわけ,非権力的な給付行政の分野においては,一般的に,処分性を与える立法政策が採用されているとはいい難く,給付申請者の申込みに対 する行政庁の承諾により成立する契約関係であるのが原則というべきであり,「法令」が特に補助金等の支給決定に処分性を与えたものと解される場合,例外的に,補助金等の支給・不支給の決定は処分性を有すると解される。 そして,法治主義の原則の要請から,上記「法令」とは,条例等法律に 準ずるものも含むが,行政庁が自らの内部規則として制定したものは,これが補助金等の交付決定に処分性を認めることを前提とした法律又は条例等の委任を受け,その法律又は条例等と一体として処分性を付与していると認められない限り,上記「法令」に含まれないと解すべきである。 イ被告大阪市における特別定額給付金の支給・不支給の決定は処分性を有 しないこと特別定額給付金の給付関係は,給付行政におけるものである。そして,本件実施要領は,条例等法律に準ずるものではなく,かつ,何らかの法律又は条例等の委任を受けて定められたものでもなく,被告大阪市における純然たる事務遂行上の内部規則にすぎず,「法令」に該当しない。 したがって 例等法律に準ずるものではなく,かつ,何らかの法律又は条例等の委任を受けて定められたものでもなく,被告大阪市における純然たる事務遂行上の内部規則にすぎず,「法令」に該当しない。 したがって,特別定額給付金の支給・不支給の決定は,法令上の根拠に 基づくものではなく,「法令」が特に補助金等の支給決定に処分性を与えたものと解される場合に該当せず,処分性を有するということはできない。 すなわち,被告大阪市における特別定額給付金の給付に係る権利義務関係は,贈与契約を原因として発生するものである。 ウまとめ(各請求との関係) (ア) 請求1の対象とする特別定額給付金の支給決定は,抗告訴訟の対象となる「処分」ではないから,その義務付けを求める訴えは,不適法である。 (イ) 請求2は,行政庁(被告大阪市)が法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分をすべきであるにもかかわらず,これをしない ことについての違法の確認を求めるものであり,その訴えは「不作為の違法確認の訴え」(行政事件訴訟法3条5項)であると解されるから,訴訟要件として,不作為の違法確認の対象となる行為が抗告訴訟の対象となる「処分」でなければ不適法となるところ,被告大阪市における特別定額給付金の支給・不支給の決定は処分性を有しない。したがって, 請求2の違法確認の対象とする本件申請に対する特別定額給付金の支給・不支給の決定は,抗告訴訟の対象となる「処分」ではないから,請求2に係る訴えは,不適法である。 (ウ) 請求3-1の取消しの対象となる本件不支給決定は,抗告訴訟の対象となる「処分」でないから,請求3-1に係る訴えは,不適法である。 (2) 争点2(本件各確認請求に係る訴えについての確認の利益の有無)について(原告の主張)原 決定は,抗告訴訟の対象となる「処分」でないから,請求3-1に係る訴えは,不適法である。 (2) 争点2(本件各確認請求に係る訴えについての確認の利益の有無)について(原告の主張)原告は,本件各確認請求に係る訴えについて,いずれも確認の利益を有する。 (被告大阪市の主張) 本件各確認請求に係る訴えは,いずれも原告が特別定額給付金を受給でき る地位にあることの確認を求める訴えであるところ,請求1に係る訴えの予備的請求に係る訴えであるから,被告大阪市の特別定額給付金の支給決定が処分性を欠くことを前提にするものと解される上,請求3-2(特別定額給付金としての10万円の支払請求)に係る訴えとは別個の訴えとされていることからすると,贈与契約の成立を前提としない法的地位の確認を求める訴 えであると解される。 そうであるとすると,被告大阪市における特別定額給付金の給付に係る権利義務関係は,飽くまで申込み(給付申請)と承諾(給付決定)により成立する贈与契約を原因として発生するものである以上,そのような契約が成立していないにもかかわらず,「特別定額給付金を受給できる地位」などとい う,契約が成立したのと同等の地位を認めるというのは背理であって,そのような地位は,贈与契約上の権利という具体的権利から離れた,抽象的で内容の不明確なものというほかない。 また,原告が確認を求める「特別定額給付金を受給できる地位」というのが特別定額給付金の給付の要件を満たしているという状態の確認を意味する というのであれば,それは単に給付の要件に該当する事実の存在を確認するにとどまり,具体的な権利関係の確認ではないから,確認の対象として不適切というべきであるし,そのような事実の存在が確認されたとしても別途贈与契約が締結されな 給付の要件に該当する事実の存在を確認するにとどまり,具体的な権利関係の確認ではないから,確認の対象として不適切というべきであるし,そのような事実の存在が確認されたとしても別途贈与契約が締結されない限り特別定額給付金の請求権は発生しないのであるから,紛争解決の方法としては迂遠であって不適切であるというべきである。 したがって,本件各確認請求に係る訴えは,いずれも確認の利益を欠き,不適法である。 (3) 争点3(本件実施要領給付基準の違憲性等)について(原告の主張)ア原告が特別定額給付金を受給する権利を有すること (ア) 憲法29条3項に基づき特別定額給付金を受給する権利が認めら れること内閣総理大臣は,令和2年4月16日,全ての都道府県を対象として新型インフルエンザ等緊急事態宣言を発出し,日本国内に居住する全ての国民に対し憲法22条1項が保障する経済的自由を自主的に制限するよう求め,同日,特別定額給付金を支給する旨表明したのであるから, 原告は,憲法29条3項に基づき,特別定額給付金を受給する権利を有する。 (イ) 憲法25条1項に基づき特別定額給付金を受給する権利が認められること内閣総理大臣は,特別定額給付金について,「収入が著しく減少し厳 しい状況にある御家庭に限って,1世帯当たり30万円を給付する措置を予定しておりましたが,国民の皆様から寄せられた様々な声,与野党の皆様の声も踏まえまして,更に給付対象を拡大することとした。」旨表明したのであるから,原告は,憲法25条1項に基づき,特別定額給付金を受給する権利を有する。 (ウ) 憲法27条1項に基づき特別定額給付金を受給する権利が認められること内閣総理大臣は,雇用を守るために特別定額給付金を支給する旨表明したので 定額給付金を受給する権利を有する。 (ウ) 憲法27条1項に基づき特別定額給付金を受給する権利が認められること内閣総理大臣は,雇用を守るために特別定額給付金を支給する旨表明したのであるから,原告は,憲法27条1項に基づき,特別定額給付金を受給する権利を有する。 イ本件実施要領給付基準には,憲法41条の趣旨を没却した裁量の逸脱があること内閣総理大臣は,特別定額給付金につき,全ての国民を対象に,一律に1人当たり10万円の給付を行うことを決断した旨表明した上で,内閣は,特別定額給付金給付事業の予算を含む本件補正予算を国会に提出し た。そして,内閣総理大臣は,国会において,「全ての人に給付漏れが生 じないよう,万全を期していただきたい。」旨の質問に対し,「全国全ての皆様を対象に,一律に1人当たり10万円の給付を行うこととしました。」(令和2年4月27日衆議院本会議)と答弁したほか,「住民基本台帳法の適用の対象となる方々のうち,住所が定まっておらず,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されていない方々や,家庭内暴力で住所 を実態どおりに登録できていない方々についても,一定の手続を経て給付金をお受け取りいただけるようになるものと承知をしております。」(令和2年4月27日衆議院本会議)などと答弁した。 このとき,ホームレス自立支援法に基づく施策を活用するだけではホームレス等に係る問題が直ちに解決しないことは自明であったから,内閣総 理大臣が述べた上記「一定の手続」が,ホームレス等の,本件基準日において住民登録がされていない者が,住民登録を可能とする住居に居住した場合に特別定額給付金を受給する手続を指すものとは解されず,住民登録がされないまま特別定額給付金を受給することができる手続を指すこと いて住民登録がされていない者が,住民登録を可能とする住居に居住した場合に特別定額給付金を受給する手続を指すものとは解されず,住民登録がされないまま特別定額給付金を受給することができる手続を指すことは明らかである。 また,総務省が令和2年4月20日以降に公表した本件補正予算についての概要には,「全国全ての人々」に特別定額給付金を支給する旨記載されていた。 そして,国会は,以上の内閣総理大臣の表明及び答弁並びに総務省の本件補正予算についての概要の記載を踏まえ,本件補正予算を可決した。 仮に,内閣総理大臣の表明及び答弁並びに総務省の本件補正予算についての概要の記載において,上記のとおりではなく,「日本国の最貧困層に位置する家賃等の支払が困難な国民を除外して特別定額給付金を支給する」旨としていれば,国会が本件補正予算を可決しなかったことは明らかである。 したがって,総務省の職員は,憲法41条の趣旨を没却しないよう,著 しく困難な事情がない限り,全国全ての人々に特別定額給付金を支給しなければならなかったのであり,本件実施要領給付基準には,憲法41条の趣旨を没却した裁量の逸脱がある。 ウ本件実施要領給付基準が憲法14条1項に違反すること(ア) 憲法14条1項適合性の審査基準 法令の規定の憲法14条1項の適合性について判示した最高裁判決(最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁,最高裁平成18年(行ツ)第135号同20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁〔以下「平成20年大法廷判決」という。〕,最高裁平成25年(オ)第1079号同27 年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁)は,①立法目的に正当性・合理性があるか,②立法目的 頁〔以下「平成20年大法廷判決」という。〕,最高裁平成25年(オ)第1079号同27 年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁)は,①立法目的に正当性・合理性があるか,②立法目的に正当性・合理性がある場合,その立法の規定がもたらす制限は過剰であるか否か,又はより制限的ではない方法で立法目的を達成することができるか,③同様の環境の者がいる場合,その者との間に不合理な差別的取扱いをするものと認められ るか否かを検討して,憲法14条1項の適合性を決する旨判示しており,本件実施要領給付基準の憲法14条1項の適合性についても,同様の基準で審査すべきである。特に,本件は,平成20年大法廷判決の事案と類似しており,同様の基準で審査すべきである。 (イ) 本件非住民登録者に対し,二重給付を防止する措置をとりながら特 別定額給付金を支給することは,可能かつ容易であること本件実施要領給付基準によれば,本件基準日以前に,住民基本台帳法8条の規定に基づき住民票を消除されていた者で,本件基準日において,日本国内で生活していたが,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されておらず,かつ,本件基準日の翌日以後も申請期限までに住民登録 ができない者(以下「本件非住民登録者」という。)は,特別定額給付 金を受給することができないことになるが,次のa~eの仕組みをとれば,総務省の職員1名とパソコン1台(下記aの本件情報集約センター設置のために必要なもの)を用意するだけで,二重に支給すること(以下「二重給付」という。)を防止しつつ,本件非住民登録者に対し,特別定額給付金を支給することが可能となる。 a 総務省は,本件非住民登録者が特別定額給付金の支給の申請をした場合,当該者についての情報を記録して集約しておき,各市 ,本件非住民登録者に対し,特別定額給付金を支給することが可能となる。 a 総務省は,本件非住民登録者が特別定額給付金の支給の申請をした場合,当該者についての情報を記録して集約しておき,各市区町村からの特別定額給付金の支給の申請の有無の照会に対応するためのセンター(以下「本件情報集約センター」という。)を設置する。 b 市区町村の職員は,本件非住民登録者が特別定額給付金の受給を希 望した場合,当該者の氏名,生年月日及び本籍地を確認し,住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)を利用して当該者の戸籍の附票を閲覧し,本件基準日以前に住民基本台帳の記録が消除されていたことを確認する。 ここで,仮に,市区町村の職員が住基ネットを利用して戸籍の附票 を閲覧することができないのであれば,当該者の戸籍を管理する市区町村の職員に電話をかけ,当該者の戸籍の附票の情報を照会し,本件基準日以前に住民基本台帳の記録が消除されていたことを確認する。 c 市区町村の職員は,上記bの確認ができれば,本件情報集約センターに対し,当該者の氏名,生年月日及び本籍地を伝え,当該者が特別 定額給付金の支給の申請をしたか否かを照会する。 d 本件情報集約センターは,上記cの照会に対し,特別定額給付金の支給の申請の有無を回答し,市区町村の職員は,当該者が特別定額給付金の支給の申請をしていないとの確認ができれば,当該者に特別定額給付金の支給の申請をさせ,本件情報集約センターに当該者が特別 定額給付金の支給の申請をしたことを伝える。 e 本件情報集約センターは,上記dの市区町村からの情報に基づき,当該者が特別定額給付金の支給の申請をしたことを記録する。 (ウ) 本件非住民登録者が住所を有することができない理由本 e 本件情報集約センターは,上記dの市区町村からの情報に基づき,当該者が特別定額給付金の支給の申請をしたことを記録する。 (ウ) 本件非住民登録者が住所を有することができない理由本件非住民登録者が本件基準日に住民登録がされていない唯一の理由は,貧困状態にあったことにある。特別定額給付金の給付対象を,本件 基準日給付基準を満たす者に限るとすれば,憲法14条1項等に違反することが自明であったからこそ,総務省は,本件実施要領において本件拡大給付基準を設けたのである。 (エ) 本件非住民登録者に対する特別定額給付金の支給手続を定めていない本件実施要領給付基準が憲法14条1項に違反すること a 本件における問題の本質は,「事態収束も見通せずに日々の生活に困窮している方々に対し,迅速に,手厚い,思い切った支援の手を差し伸べる観点から,休業等により収入が減少し,生活に困っている世帯に対して,生活維持のために必要な資金を迅速に交付する新しい給付金制度」の給付対象を拡大した特別定額給付金給付金事業において, 貧困であるために住民登録がされていない本件非住民登録者を給付対象としないことである。 本件非住民登録者が特別定額給付金を受給することは,幸福追求権の行使に重大な影響を与える。また,本件非住民登録者が特別定額給付金を受給できないことによって負う不利益は,生命が脅かされるお それである。このように,本件非住民登録者が特別定額給付金を受給することの重大性を考慮して合理的関連性を検討しなければならない。 b 本件実施要領給付基準が給付対象者を住民登録と連動させることとし,本件基準日を設けるなどしていること(本件実施要領3項)の目 的は,給付手続の事務負担を軽減し,二重給付を防止することにあり, 要領給付基準が給付対象者を住民登録と連動させることとし,本件基準日を設けるなどしていること(本件実施要領3項)の目 的は,給付手続の事務負担を軽減し,二重給付を防止することにあり, 合理性がある。 c もっとも,本件実施要領給付基準は,本件基準日に住民登録がされていない者に対し,本件基準日後に住民登録がされない限り,特別定額給付金を一切支給しないという制限を課しているところ,二重給付を防止し,事務負担を軽減しつつ,本件非住民登録者に特別定額給付 金を支給する制度を設けることは,上記(イ)のとおり可能かつ容易である。そして,そのような制度を設けるために生ずる不利益は,総務省職員及び各市区町村の職員の事務負担が増えるだけであるから,上記の目的は,より制限的ではない方法によっても実現することができるといえるのであって,上記の制限は,目的との関係で合理的関連性 がなく,過剰な制限であるとの評価を受ける。 d また,特別定額給付金の給付対象の核心は,「事態収束も見通せずに日々の生活に困窮している」者なのであるから,本件実施要領給付基準は,住民登録がされ特別定額給付金を受給できる者と比較して,貧困であるために住民登録がされない本件非住民登録者につき,不合 理な差別的取扱いをしている。 (オ) 代替手段の可能性を指摘して本件実施要領給付基準の憲法14条1項に違反することを否定することはできないこと平成20年大法廷判決は,国籍法3条1項の規定が憲法14条1項に違反することについて,簡易帰化という代替手段があっても,帰化が法 務大臣の裁量行為であるとして,それをもって合理的関連性を欠くものでないということはできない旨判示しており,この判示からして,生活保護等を受給することができる可能性があることを根拠とし が法 務大臣の裁量行為であるとして,それをもって合理的関連性を欠くものでないということはできない旨判示しており,この判示からして,生活保護等を受給することができる可能性があることを根拠として,本件実施要領給付基準の憲法14条1項の適合性を肯定することは失当である。 大阪市民は,令和2年8月22日頃の申請期限までに申請をする必要 があった。 そして,被告らは,本件基準日において住民登録がされない者が本件基準日後に住所を有することを可能とする措置として,①生活保護制度では,生活保護を決定した上で,居住又は施設において保護することになるが,当該施設で住民登録が可能であること,②生活困窮者自立支援 制度により,居住支援策や,住居確保給付金等の措置が講じられていること,③生活困窮者一時宿泊施設や自立支援センターに入居し,これらの施設で住民登録が可能であること,④総務省から市区町村に対し,支援団体とも連携したホームレスの手続への援助等の支援を依頼するとともに,ホームレスからの住民登録の相談に積極的に応ずるよう周知する などしたことを挙げる。 しかし,①生活保護の受給は容易にはできず,②住居確保給付金のため,被告大阪市の職員と相談するまでにも相当の期間を要するから,本件基準日から特別定額給付金の申請期限までの間に,上記相談をすることができないおそれがあるし,住居確保給付金は,敷金及び礼金は支給 されないため,住居確保給付金を得ることができても,住居を確保するための賃貸借契約を締結することはできない。また,③自立支援センターの定員は僅かであり,自立支援センターはいわゆる雑居であるにもかかわらず,新型コロナウイルスの感染対策が十分にとられていないから,自立支援センターに入居することは期待することができな 立支援センターの定員は僅かであり,自立支援センターはいわゆる雑居であるにもかかわらず,新型コロナウイルスの感染対策が十分にとられていないから,自立支援センターに入居することは期待することができない。 以上のとおり,被告らの上記主張による施策は,いずれも実効性を欠く。また,それらの施策においては行政庁の裁量が大きく,そのような施策がとられているからといって,本件非住民登録者が当然に住所を取得することにはならない。 これに関し,総務省は,令和2年6月17日付けで,総務省住所認定 通知文書を発出し,その中で,生活の本拠としての住所認定について, 「居住の期間の長さにかかわらず」これを行うことが可能であるとしているが,住所認定の要件を緩和させることは,住民基本台帳法に違反する。 (カ) 比較衡量論を適用しても憲法14条1項に違反すること本件非住民登録者は,貯蓄がなく,新型コロナウイルスの感染が拡大 する中で,食料を確保しなければならない状況にあるから,特別定額給付金を受給できないことは,生命の維持を危険にさらすという不利益を被ることになる。一方で,本件非住民登録者に対しても,二重給付を防止しつつ,特別定額給付金を支給することは可能かつ容易であるから,本件非住民登録者にも特別定額給付金を支給することにより発生する不 利益は,総務省及び市区町村の職員の事務負担に限られる。また,本件非住民登録者に特別定額給付金を支給しなければ,それらの者は,新型コロナウイルスの感染予防に資するマスク・消毒液等の購入よりも食料品の購入を優先させることになって感染の可能性が高まり,公共の不利益にもなる。 これらの利益・不利益について比較衡量すると,本件非住民登録者に特別定額給付金を支給しないことによる不利益は,支給 購入を優先させることになって感染の可能性が高まり,公共の不利益にもなる。 これらの利益・不利益について比較衡量すると,本件非住民登録者に特別定額給付金を支給しないことによる不利益は,支給することによって生ずる不利益を大きく上回っており,著しく均衡を欠くことからすると,比較衡量論を適用したとしても,本件非住民登録者に特別定額給付金を支給しないこととする本件実施要領給付基準は,憲法14条1項に 違反する。 (キ) 本件実施要領給付基準は,本件非住民登録者につき,DV等避難者と比較して,不合理な差別的取扱いをしていること総務省の職員は,本件実施要領給付基準において,DV等避難者に対する特別定額給付金の給付手続を定めているところ(本件DV等避難者 取扱い),その給付手続は煩雑である。また,DV等避難者に対する特 別定額給付金の支給は,二重給付がされることを前提にしている。 さらに,DV等避難者は,居住地において住民登録をしても,配偶者暴力防止法等により,DV等の加害者に住民票に係る情報を知られることはないから,本件基準日以前に居住市区町村において住民登録をすることによって,特別定額給付金を受給することができたのに,本件実施 要領給付基準は,そのような住民登録をしなかったDV等避難者のための給付手続(本件DV等避難者取扱い)を定めたことになる。仮に,本件実施要領給付基準が本件DV等避難者取扱いを定めていなかったとしても,憲法のいずれの規定にも違反することにはならないはずである。 また,本件DV等避難者取扱いによれば,DV等避難者に対する特別 定額給付金が世帯主と当該DV等避難者に対して二重に支給された場合,世帯主に返還を求めることとされているが,その場合でも,世帯主に対し,詐欺罪を問うことは困難 れば,DV等避難者に対する特別 定額給付金が世帯主と当該DV等避難者に対して二重に支給された場合,世帯主に返還を求めることとされているが,その場合でも,世帯主に対し,詐欺罪を問うことは困難であるのに対し,本件非住民登録者に対して二重給付がされた場合,当該者に対し,返還を求めることができるし,詐欺罪に問うことは容易である。 以上によれば,本件実施要領給付基準は,DV等避難者に対する給付手続と比較すると,本件非住民登録者につき,著しく不合理な差別的取扱いをしているといえる。 (ク) 被告らの憲法14条1項に関する主張は理由がないこと被告らは,本件実施要領給付基準は合理性を有するとし,経済的事実 関係の差異(住居を有するか否か)によって法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,憲法14条1項に違反しないとした上で,本件実施要領給付基準が合理性を有するから,本件実施要領給付基準は憲法14条1項に違反しない旨主張する。 しかし,本件実施要領給付基準の合理性と上記の区別の合理性とは異 なる見地から検討しなければならないことに照らせば,本件実施要領給 付基準が合理性を有するから上記の区別が合理性を有するとする被告の主張は,論理の飛躍がある。 (ケ) 小括以上の理由から,本件非住民登録者に対する特別定額給付金の支給手続を定めていない本件実施要領給付基準は,憲法14条1項に違反する。 エ本件実施要領給付基準が本件基準日に居住実態がないのに住民登録がされている者を給付対象者としながら,住民基本台帳法を遵守して本件基準日以前に住民登録がされなくなった者を給付対象者としないことは憲法31条及び信義則の法理に違反すること(ア) 本件ホームレス等取扱いは,ネットカフェの利用者は,当該 民基本台帳法を遵守して本件基準日以前に住民登録がされなくなった者を給付対象者としないことは憲法31条及び信義則の法理に違反すること(ア) 本件ホームレス等取扱いは,ネットカフェの利用者は,当該ネット カフェを生活の本拠たる住所として認定される場合もあるとしている。 しかし,ネットカフェに居住又は宿泊させることは,旅館業法に違反するから,その居住の形態が健全な社会通念に基礎付けられた住所としての定型性を具備していないことになり,ネットカフェの所在地を住所として認定することはできないはずである。 また,従来の裁判例は,憲法上の権利行使を可能とするために住所の認定の要件を緩和することは住民基本台帳法に違反する旨判示しており,特別定額給付金の受給を可能とするために住所の認定の要件を緩和することは許されない。 大阪高等裁判所平成19年1月23日判決・判時1976号34頁に よれば,現に住居として使用されている場所につき,立法府が住居として使用することを想定していない場合には,その居住の形態は,健全な社会通念に基礎付けられた住所としての定型性を欠くことになる。 そして,食品衛生法等によれば,ネットカフェの中に設置された仕切り内に居住し,もって同所の所在地を住所とすることを全く想定してい ないから,そのような場所を住所とすることは,住民基本台帳法に違反 することになる。 (イ) 総務省が総務省住所認定通知文書を発出し,被告大阪市は,総務省住所認定通知文書を受けて,令和2年7月7日から,従前の取扱いを変更し,生活困窮者一時宿泊施設(シェルター)の所在地を住所として認定し,シェルターの所在地を住所とする転入届を受理するに至った。 総務省及び被告大阪市は,従前の裁判例を無視し,恣意的に運用を変更してい 困窮者一時宿泊施設(シェルター)の所在地を住所として認定し,シェルターの所在地を住所とする転入届を受理するに至った。 総務省及び被告大阪市は,従前の裁判例を無視し,恣意的に運用を変更している。本件実施要領給付基準は,住民登録がされることを唯一の要件としているのに,その登録の基準は曖昧かつ不明瞭であるから,給付対象者を住民登録がされている者に限定し,住民登録がされていない本件非住民登録者に対する給付手続を定めていないことは,適正な行政 手続を受ける権利を保障した憲法31条に違反する。総務省が発出した総務省住所認定通知文書は住所認定の要件を緩和させることとしているが,これは住民基本台帳法に違反する。総務省の職員は,このような違法な通知文書を発出する一方で,本件非住民登録者が住所を有さない状態を継続しながら特別定額給付金の受給を可能とする手続を定めなけれ ばならないのに,それを怠り続けたのであるから,そのような手続を定めなかったことは,適正な行政手続を受ける権利を保障した憲法31条に違反する。 また,総務省及び被告大阪市は,上記のとおりの住所の認定についての運用を変更したことをホームレス等に周知することをしていない。そ して,本件非住民登録者のうち,大部分の者は,シェルターに数日間宿泊すれば特別定額給付金の受給が可能となることを申請期限内に知り得なかったのであるから,本件非住民登録者に住所を有さない状態で特別定額給付金の受給を可能とする手続を定めなかったことは,憲法31条に違反する。 (ウ) 住民基本台帳法の各規定(2条,3条1項~3項,34条1項~3 項)によれば,居住の実態がないのに住民登録がされている場合,当該記録は直ちに職権で消除されなければならないし,当該住民は,直ちに居住していな 各規定(2条,3条1項~3項,34条1項~3 項)によれば,居住の実態がないのに住民登録がされている場合,当該記録は直ちに職権で消除されなければならないし,当該住民は,直ちに居住していないことを告知しなければならない。ホームレス状態になった者が居住実態のない建造物に住民登録を継続することが住民基本台帳法に違反することは判例上確立しているから,「住民としての地位の変 更に関する届出を正確に行うように努めなければならず,虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない」との規定(同法3条3項)にあるとおり,そのような者が住所地に係る建造物に居住しなくなったことを各市区町村に届け出る義務を負っていることは明らかである。 そして,本件基準日において居住の実態がないのに住民登録がされている場合,当該住民登録は違法であり,違法な住民登録を利用した特別定額給付金の支給の申請は,違法の評価を受ける可能性が高い。 ところが,本件実施要領給付基準は,そのような違法な住民登録がされた者に対しても特別定額給付金を支給することとしている(この点に ついて,特別定額給付金を受給する権利が憲法上認められることからすると,それ自体は,憲法の趣旨には適合しているということができ,適法の評価を受けると解される。)。 一方で,本件実施要領給付基準は,住民基本台帳法を遵守することによって,住民登録がされなくなった者について,居住実態がない建造物 の所在地を住所として住民登録をすることを許したり,住民登録がされないまま特別定額給付金を支給したりするとはせず,本件拡大給付基準により,飽くまで,本件基準日以降に住民登録を可能とする住居を確保して同住居に居住しなければならないとしている。 (エ) 原告についてみると, 別定額給付金を支給したりするとはせず,本件拡大給付基準により,飽くまで,本件基準日以降に住民登録を可能とする住居を確保して同住居に居住しなければならないとしている。 (エ) 原告についてみると,原告は,受理されない可能性が高いことを認 識しながら,住民基本台帳法3条3項及び22条の規定を遵守し,当時 所在していた建物の所在地を住所として転入届を提出した結果,不受理処分を受けるとともに,住民基本台帳の記録が職権で抹消された。原告が住民基本台帳法の各規定に違反して転入届を提出しなければ,本件基準日においても住民登録がされていた可能性が高く,特別定額給付金を受給することができたはずである。 原告と同様に,家賃の支払が困難となるなどして賃借していた住居を退去したことを市区町村に告知する者は相当程度いるはずであるところ,そのような本件非住民登録者は,特別定額給付金を受給することができないことになる。 (オ) このように,本件実施要領給付基準は,住民基本台帳法に違反して 住民登録をしているホームレス等には特別定額給付金を支給することを許容しているのに,住民基本台帳法を遵守して本件基準日までに住民登録がされなくなった者については,特別定額給付金の申請期限までに住居を確保するなどして住民登録がされなければ特別定額給付金を支給しないとしているのであり,適正な行政手続を受ける権利を保障する憲法 31条に違反する。また,仮に,居住の実態がないのに住民登録がされていることを届け出ないことが違法でないとしても,居住の実態がなくなかったことを届け出ることは,住民基本台帳法3条3項の趣旨に適合するから,そのような者に特別定額給付金を支給しないことは,憲法31条に違反し,信義則の法理に違反する。 そして,原告は,住民 かったことを届け出ることは,住民基本台帳法3条3項の趣旨に適合するから,そのような者に特別定額給付金を支給しないことは,憲法31条に違反し,信義則の法理に違反する。 そして,原告は,住民基本台帳法を遵守した結果,住民登録がされなくなったのであるから,被告大阪市が,原告に対し,特別定額給付金を支給しないことには重大な信義則違反がある。 オまとめ(各請求について)(ア) 請求1について 以上によれば,本件実施要領給付基準は違憲・違法であり,本件申請 をした原告に対し,特別定額給付金を支給すべきであるから,被告大阪市は,原告に対し,特別定額給付金の支給決定をしなければならない。 (イ) 請求2について被告大阪市は,原告が提出した本件申請書を郵送して返却したが,これが本件申請に対する不支給処分でないとすれば,相当の期間内に何ら かの処分をすべきであるにもかかわらず,これをしないことになるから,不作為の違法確認の訴えとして,特別定額給付金の支給決定をしないことが違法であることの確認を求める。 (ウ) 請求3-1について本件不支給決定は,違憲・違法な本件実施要領給付基準に基づいてさ れた違法な処分であるから,取り消されるべきである(エ) 請求3-2について本件実施要領給付基準は違憲・違法であり,本件申請をした原告に対し,特別定額給付金は給付すべきであるから,被告大阪市は,原告に対し,特別定額給付金として10万円を支払わなければならない。 (オ) 請求4本件実施要領給付基準は違憲・違法であり,本件申請をした原告は,別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にある。 (カ) 請求5 本件実施要領給付基準は違憲・違法であり,本件 あり,本件申請をした原告は,別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にある。 (カ) 請求5 本件実施要領給付基準は違憲・違法であり,本件申請をした原告は,本件建物を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にある。 (キ) 請求6本件実施要領給付基準は違憲・違法であり,本件申請をした原告は, ホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳に記録され ない状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にある。 (ク) 本件国賠請求についてa 総務大臣及び総務省の職員の行為の違法性本件実施要領給付基準は違憲・違法であるところ,内閣総理大臣が全国全ての国民に特別定額給付金を支給する旨表明し,国会が特別定 額給付金給付事業の予算を含む本件補正予算を可決した以上,総務大臣及び総務省の職員は,全国全ての国民に対し,特別定額給付金が給付される手続を策定すべき注意義務を負っていた。そして,本件非住民登録者に対し,不正受給を防止しながら特別定額給付金を支給することを実現することは,可能かつ容易であった。 また,総務大臣及び総務省の職員は,ホームレス自立支援法の効力が平成24年に5年間,平成29年に10年間延長されたことから,ホームレス自立支援法に基づく自立支援センターのみによっては,ホームレス等の問題を解決することが著しく困難であることは自明のことであったし,ホームレス等が自立支援センターに入所することが困難 であることは,当該問題を所管する厚生労働省の職員から容易に確認することができたはずである。そうすると,総務大臣及び総務省の職員は,本件ホームレス等取扱いが重大な矛盾を抱えていることを認識し又は容易に認識す は,当該問題を所管する厚生労働省の職員から容易に確認することができたはずである。そうすると,総務大臣及び総務省の職員は,本件ホームレス等取扱いが重大な矛盾を抱えていることを認識し又は容易に認識することができたのに,通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然と本件実施要領給付基準を定め,もって憲法1 4条1項,31条に違反した状態を作出し,それを是正する措置をとらなかったのであるから,総務大臣及び総務省の職員がした本件実施要領の作成・発出行為及びそれによる違憲状態を放置した不作為は,国家賠償法の適用上違法の評価を受ける。 b 被告大阪市の職員の行為の違法性 被告大阪市の職員が本件実施要領を策定したのであれば,被告大阪 市の職員が違法な行為をし,被告大阪市が賠償責任を負うことになる。 c 損害原告は,本件実施要領の作成・発出行為及びそれによる違憲状態を放置した不作為により,特別定額給付金を受給することができず,重大な精神的苦痛を被った。この精神的損害を慰謝するためには,30 万円を下らない。 (被告らの主張)ア被告国には,特別定額給付金の給付対象者の定めについて広範な裁量が認められること特別定額給付金給付制度は,新型コロナウイルスの感染が拡大し,新型 インフルエンザ等緊急事態宣言の下において,緊急の経済対策として家計への支援を行うために,個別の根拠法令が存在しないいわゆる予算補助として設けられたものであり,特別定額給付金を受給することは,憲法上も法令上も権利として保障されたものとはいえない。 そして,新型インフルエンザ等対策特別措置法の目的は,新型インフル エンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し,並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることにある そして,新型インフルエンザ等対策特別措置法の目的は,新型インフル エンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し,並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることにあるところ(同法1条),同法に基づく緊急事態宣言の下,その目的を達成しつつ,新型コロナウイルス感染症による経済活動の急速な縮小という危機をしのぎ,次の段階である経済の力強い回復への基盤を築くため,財政・金融・税制 といったあらゆる政策手段を総動員する必要がある中で,具体的に実施する施策については,被告国(政府)が専門的かつ政策的な見地から判断すべき事項であり,その政策の一環として特別定額給付金のような一時金を国民に対して給付するか否か,給付するとした場合にその給付対象者や給付手続をどのように定めるかなどについては,被告国の広範な裁量に委ね られていたというべきである。 イ本件実施要領給付基準が合理的なものであること(ア) 本件実施要領給付基準が特別定額給付金の給付対象者について,本件基準日に住民登録がされている者を基本としている(本件基準日給付基準)のは,特別定額給付金の目的が「感染拡大に留意しつつ,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うこと」とされ,膨大な申請・ 給付件数が見込まれる中で,早期給付を実現するためには,給付対象者の要件を始めとする特別定額給付金給付事業の仕組みを簡素なものとし,事務負担の軽減も図る必要があり,他方で,二重給付を防止するために給付対象者の基準を明確にする必要があったためである。 また,住民基本台帳は「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う」 (住民基本台帳法1条)ためのものとされ,実際にも,住民基本台帳の制度は,各種の行政事務処理の基礎とされており,住民基本台帳の記録 た,住民基本台帳は「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う」 (住民基本台帳法1条)ためのものとされ,実際にも,住民基本台帳の制度は,各種の行政事務処理の基礎とされており,住民基本台帳の記録に基づき特別定額給付金を支給することは,的確な給付の観点からも,妥当なものといえる。 このように,住民基本台帳は,給付対象者を把握するために用いるも のとして適切であるといえることから,被告国が特別定額給付金の給付対象者を住民登録がされている者と定めたことには合理性がある。 (イ) 加えて,本件実施要領給付基準においては,本件基準日以前に住民基本台帳法8条の規定に基づき住民票を消除されていた者で,本件基準日において,日本国内で生活していたが,いずれの市区町村の住民基本 台帳にも記録されておらず,かつ,本件基準日の翌日以後初めて住民基本台帳に記録されることとなったものについても,給付対象者としている(本件拡大給付基準)(なお,本件基準日に住民登録がされていない者には,ホームレスのほか,転入日・転出日の関係上,いずれの市区町村においても住民登録がされていない者も該当する。)。 これにより,経済的理由等で,本件基準日時点において,住所を定め ることが困難な者であっても,住居確保に係る支援策等を活用して,本件基準日の翌日以後に新たに住居を定め,住民登録を回復した場合には,特別定額給付金を受給することを可能としている。 (ウ)a そもそも,資産や能力等全てを活用してもなお生活に困窮する者に対し,困窮の程度に応じて必要な保護を行い,健康で文化的な最低 限度の生活を保障し,その自立を助長する制度として,生活保護法に基づく生活保護制度が実施されている。生活保護制度では,生活保護を決定した上で,居住又は施設において保護し い,健康で文化的な最低 限度の生活を保障し,その自立を助長する制度として,生活保護法に基づく生活保護制度が実施されている。生活保護制度では,生活保護を決定した上で,居住又は施設において保護し,自立に向けた指導援助を実施することになるが,当該施設で住民登録が可能である。 b また,生活困窮者に対し,生活保護に至る前の段階で,自立相談支 援事業を中心に様々な支援を行うことにより,その自立の促進を図ることを目的として,生活困窮者自立支援法に基づき生活困窮者自立支援制度が実施されている。当該制度により,ホームレスを含む生活困窮者に対する入居から見守りまで一貫した居住支援策や,求職活動に取り組む生活困窮者に対する入居後の家賃を支援する住居確保給付金 等の措置が講じられてきている。 c 生活困窮者自立支援制度では,就労支援等を受けるに当たって,自治体が確保した生活困窮者一時宿泊施設や自立支援センターに入居することになるが,これらの施設では住民登録が可能である。 d さらに,総務省は,市区町村に対し,特別定額給付金給付事業の実 施に当たり,本件実施要領が定められた後において,支援団体とも連携したホームレスへの手続の援助や積極的な周知といった支援を依頼するとともに,ホームレスからの住民登録の相談に積極的に応ずるよう周知したほか,ホームレスからの特別定額給付金に関する相談,住民登録の確認や給付までの手続について,一括して相談を受け付け, 申請手続の支援を行うための,市区町村の担当部署間での連携したワ ンストップの相談窓口の設置等の効果的な取組について積極的に情報提供を行っている。また,厚生労働省も,市区町村のホームレス支援担当部局に対し,ホームレスの巡回相談時に特別定額給付金の周知を行うよう依頼するなど,ホ 窓口の設置等の効果的な取組について積極的に情報提供を行っている。また,厚生労働省も,市区町村のホームレス支援担当部局に対し,ホームレスの巡回相談時に特別定額給付金の周知を行うよう依頼するなど,ホームレスが特別定額給付金を受給できるよう,支援を行ってきた。 (エ) このように,本件基準日において住民登録がされていない者であっても,本件基準日の翌日以後に住民登録を回復することにより特別定額給付金を受給することが可能となることとしている上に,ホームレス等の住居喪失者に対する支援措置を講じるなどしていることをも踏まえれば,本件拡大給付基準は,本件基準日において住民基本台帳に記録され ているか否かによって生ずる区別を解消する方法として有効である。 以上によれば,本件実施要領給付基準は,特別定額給付金給付事業の目的に沿う合理的なものである。 ウ原告の主張は理由がないこと(ア) 内閣総理大臣の発言に基づく原告の主張は理由がないこと 原告は,内閣総理大臣の発言を殊更に強調して,本件実施要領給付基準が給付対象者について住民基本台帳の記録を基本としていることを批判する。 しかし,内閣総理大臣は,令和2年4月28日の衆議院予算委員会において,特別定額給付金の給付対象者について,「原則として,基準日 である4月27日時点の住民基本台帳に記録されている方々を対象に給付をするものであります。」と説明している。この説明を前提に,本件補正予算が国会で可決されたのであるから,原告の主張は理由がない。 内閣総理大臣は,住所を有さず,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されない状態を継続しながら特別定額給付金の受給を可能とする 手続を明言したものではないし,政府が,本件補正予算の審議に当たっ て,いずれの市区町村の の市区町村の住民基本台帳にも記録されない状態を継続しながら特別定額給付金の受給を可能とする 手続を明言したものではないし,政府が,本件補正予算の審議に当たっ て,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されていない状態のまま,特別定額給付金を受給できることを当然の前提として立法府が本件補正予算を可決したわけではないから,原告の上記主張は根拠を欠いている。 (イ) 憲法14条1項違反の原告の主張は理由がないことa 原告は,本件実施要領給付基準によると,本件非住民登録者が特別 定額給付金を受給することができず,住民登録がされた者との間に区別が生ずる点を捉えて,本件実施要領給付基準が憲法14条1項に違反する旨主張する。 しかし,住民登録がされているか否かによって当該市区町村から特別定額給付金を受給できるか否かの差異が生ずることは,人種,信条, 性別,社会的身分又は門地による別異的取扱いではない。また,憲法14条1項が定める法の下の平等は,合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何ら同項に違反するものではないと 解されるところ,既に述べたとおり,本件実施要領給付基準には合理性があるから,不合理な差別的取扱いにも当たらない。 したがって,本件実施要領給付基準は,憲法14条1項に違反せず,原告の主張は理由がない。 b 原告が主張する本件非住民登録者に対する給付方法はとり得ないこ と⒜ 原告は,本件非住民登録者に対し,二重給付を防止する措置をとりながら特別定額給付金を支給することは可能かつ容易であるとして,住民登録がされていない者から特別定額給付金の支給の申請 と⒜ 原告は,本件非住民登録者に対し,二重給付を防止する措置をとりながら特別定額給付金を支給することは可能かつ容易であるとして,住民登録がされていない者から特別定額給付金の支給の申請があった場合,市区町村職員が住基ネットを使用して当該者の戸籍の 附票を閲覧し,本件基準日以前に住民基本台帳の記録が消除されて いたことを確認することを含む手続を設けることができた旨主張する。 ⒝ しかし,住基ネットで保有している情報は,氏名,住所,生年月日及び性別の4情報に加え,個人番号,住民票コード及びこれらの変更情報である本人確認情報に限られているから(住民基本台帳法 30条の6第1項),住基ネットを使用して,戸籍の附票を閲覧することはできない。したがって,原告の上記主張は,前提を誤っている。 ⒞ また,原告が主張する給付方法を採用するためには,本件情報集約センターにおいて,市区町村から受け取った本件基準日以前に住 民票を消除された者についての戸籍の附票の情報を基に,その氏名及び本籍等の情報を記録するとともに,特別定額給付金を受給したことを記録し,その後の市区町村からの照会に対応するための仕組みを整備する必要がある。そして,本件基準日以前に住民票を消除された者から特別定額給付金の支給の申請を受けた市区町村は,本 件情報集約センターに対し,当該申請者の戸籍の附票の情報を通知して過去に特別定額給付金が支給されているか否かを照会する負担が生ずる。 さらに,特別定額給付金の支給について,本件基準日以前に住民票が消除されていた者に対し,本件基準日の翌日以降に住民登録が された場合に支給を行うこと(本件拡大給付基準)に加え,住民登録がされていない場合も支給を行うこととした場合,二重給付を防ぐためには, 除されていた者に対し,本件基準日の翌日以降に住民登録が された場合に支給を行うこと(本件拡大給付基準)に加え,住民登録がされていない場合も支給を行うこととした場合,二重給付を防ぐためには,本件基準日の翌日以降に住民登録を行った場合の全てについて,当該申請者に過去に特別定額給付金が支給された事実がないことを確認する必要があり,そのための方策としては,本件基 準日の翌日以降に住民登録を行った者から,特別定額給付金の申請 を受けた市区町村において,戸籍の附票の提出を求めて,その提出を受けた上で,本件情報集約センターに対し,その戸籍の附票を基に,当該申請者の氏名及び本籍等の情報を伝達し,過去に特別定額給付金が支給された事実がないことの確認を得ることが考えられる。これにより,当該市区町村及び国には,照会及び照会対応によ る事務負担が発生するのであって,課題が大きく,実施は困難である。 cDV等避難者と比較して著しく不合理な差別的取扱いをしているとの原告の主張は理由がないこと原告は,DV等避難者に対する特別定額給付金の給付手続は煩雑で あり,二重給付がされることを前提にしているとし,本件実施要領給付基準は,DV等避難者に対する給付手続と比較して,本件非住民登録者につき,著しく不合理な差別的取扱いをしているといえる旨主張する。 DV等避難者は,配偶者からの暴力等を理由に避難しているため, 住民票所在地において特別定額給付金を受給することができないことから,居住市区町村から特別定額給付金を受給する必要がある。そのため,DV等避難者は,居住市区町村に申出をし,同申出を受けた居住市区町村が同申出により得た情報を住民票所在市区町村に送付し,住民票所在市区町村が保有している本件基準日における住民基本台帳 そのため,DV等避難者は,居住市区町村に申出をし,同申出を受けた居住市区町村が同申出により得た情報を住民票所在市区町村に送付し,住民票所在市区町村が保有している本件基準日における住民基本台帳 の情報に基づき作成した給付対象者リストにより,当該DV等避難者が給付対象者であることを確認した上で,居住市区町村において給付対象者とされることになる。このように,当該DV等避難者に係る特別定額給付金を支給したか否かの情報は,住民票所在市区町村において管理されることにより,当該DV等避難者に対する特別定額給付金 の二重給付は大きな手間をかけることなく確実に防止することができ る。そして,住民票所在市区町村において,DV等避難者に係る特別定額給付金が既に当該DV等避難者の属する世帯の世帯主に対して支給されている場合であっても,当該世帯主に対し,DV等避難者に係る特別定額給付金の返還を求めることとしていることを踏まえても,二重給付を防止する措置がとられていないという原告の主張は理由が ない。 (ウ) 憲法31条違反の原告の主張は理由がないことa 原告は,ネットカフェに居住又は宿泊させることは旅館業法に違反するなどとして,ネットカフェの所在地を住所として認定することはできない旨主張する。 しかし,ネットカフェについて,仮に,ある者が長期に滞在していたとしても,その営業が旅館業法にいう旅館業に該当するか否かについては,宿泊料を受けているか,寝具を使用して人を宿泊させる施設の利用による営業を行っているかなどを個別具体的に検討する必要があり,必ずしも旅館業法にいう旅館業に該当するものではない。ネッ トカフェが住民基本台帳法の「住所」に該当するとしても,常に旅館業法に違反するものではない。 そして,ネットカフ 討する必要があり,必ずしも旅館業法にいう旅館業に該当するものではない。ネッ トカフェが住民基本台帳法の「住所」に該当するとしても,常に旅館業法に違反するものではない。 そして,ネットカフェについては,長期の滞在を認めるかどうかなど形態は様々であり,また,個々人の生活実態や家族とのつながり等も異なることから,個別具体的な事案に即して,生活の本拠となるか どうかを市区村長が総合的に判断するものであり,ネットカフェという名称の施設であったとしても,事案によっては,①長期契約が締結され,長期にわたって滞在する意思が明確にされており,かつ,②店舗の管理者が住民登録に同意している場合には,一次的な施設の利用ではなく,生活の本拠たる住所と認められる場合があると考えられる。 b 原告は,居住の実態がないのに住民登録がされている場合,当該記 録は直ちに職権で消除されなければならないし,当該住民は,直ちに居住していないことを告知しなければならない旨主張する。 しかし,いわゆるホームレスであっても,自立支援センターに入居し,同所で住民登録をすることができ,一定の条件の下で住所を得て住民登録をすることができる。また,住民基本台帳法は,3条3項に おいて,「住民は,常に,住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うように努めなければならず,虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない。」と規定し,4章(21条の4以下)及び4章の3(30条の45以下)において,住民としての地位の変更に関する届出について規定するが,いずれの章 にも,新たな住所が定まらない状態の者がすべき届出については規定されていないから,以前の住所地から退出してホームレス状態になった者が,住民基本台帳法上の義務として, て規定するが,いずれの章 にも,新たな住所が定まらない状態の者がすべき届出については規定されていないから,以前の住所地から退出してホームレス状態になった者が,住民基本台帳法上の義務として,以前の住所地に居住していないことを当該市区町村に届出を行うべき義務を負うとはいえない。 エまとめ(各請求について) (ア) 本件実施要領給付基準は合憲・適法であり,原告の請求はいずれも理由がない。 (イ) また,請求3-2(原告に対する特別定額給付金としての10万円の給付請求)については,特別定額給付金の給付に係る権利義務関係は贈与契約を原因として発生するものであるところ,原告と被告大阪市と の間には,特別定額給付金の支給に係る贈与契約は成立していないから,原告の請求3-2は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告大阪市による原告に対する特別定額給付金の支給・不支給の決定が抗告訴訟の対象となる「処分」に当たるか否か)について (1) 抗告訴訟の対象となる「処分」 抗告訴訟の対象となる「処分」とは,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条2項)であるところ,行政庁の法令に基づく行為の全てを意味するのではなく,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最 高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 (2) 特別定額給付金の支給・不支給の決定についてこれを本件についてみると,前記前提事実(3)~(8)のとおり,内閣において特別定額給付金給付事業の実施を含む本件緊急経済対策が閣議決定され, (2) 特別定額給付金の支給・不支給の決定についてこれを本件についてみると,前記前提事実(3)~(8)のとおり,内閣において特別定額給付金給付事業の実施を含む本件緊急経済対策が閣議決定され, 特別定額給付金給付事業の助成に必要な経費を計上することを内容とする本件補正予算が成立したことを受け,総務省は,各市区町村を事業主体として特別定額給付金給付事業を実施することとし,本件補助金要綱を定め,国が実質的に経費を負担するものとした上で,各市区町村に対し,事業主体として速やかに特別定額給付金の支給を開始できるようにするため,本件実施要 領を作成して送付し,被告大阪市は,総務省が作成した本件実施要領をそのまま内部規則として用い,本件実施要領に従って特別定額給付金給付事業を実施したものである。 本件実施要領は,被告大阪市が事業主体として特別定額給付金給付事業を実施するに当たって用いた内部規則であって,法律又は条例に該当するもの ではなく,普通地方公共団体の長が制定する規則(地方自治法15条1項)にも該当しない。そして,被告大阪市が,総務省から送付を受けた本件実施要領を内部規則とするに当たって,委任を受け,又は根拠とした法令は見当たらない。 したがって,本件実施要領における特別定額給付金の支給・不支給の決定 が,国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが「法律上」認 められているものということはできず,抗告訴訟の対象となる「処分」には当たらないというべきである。 (3) 原告の主張についてこれに対する原告の主張について,以下検討する。 ア特別定額給付金給付事業が憲法29条3項に基づく旨の主張について 原告は,特別定額給付金は,新型インフルエンザ等緊急事態宣言が発出され,内閣総理 対する原告の主張について,以下検討する。 ア特別定額給付金給付事業が憲法29条3項に基づく旨の主張について 原告は,特別定額給付金は,新型インフルエンザ等緊急事態宣言が発出され,内閣総理大臣が自粛の要請をした結果,国民が種々の憲法上の権利が制限されることになって,その対象者を拡大したものであるから,特別定額給付金給付事業は,憲法29条3項の要請を具体化したものと解すべきであり,本来であれば,特別定額給付金は,それらの特定の財産権上の 犠牲を強いられた者に限定して支給されるべきであるが,全ての国民に支給することによって,給付要件の審査を省き,もって早急に給付することにしたのであって,憲法29条3項にいう補償の最低ラインのものと評価することができる旨主張する。 しかし,特別定額給付金給付事業が実施された背景として,新型インフ ルエンザ等緊急事態宣言が発出されたことや,内閣総理大臣が自粛の要請をしたことがあったとしても,それらは,特定の者を対象としたものではない。また,特別定額給付金給付事業は,給付対象者の収入の減少等の有無にかかわらず,一律に1人当たり10万円を支給するものであるから,特定の者に特別の犠牲を強いるものに対する補償として給付金が支給さ れるものとみることはできないのであって,憲法29条3項の要請を具体化したものと解することはできないというべきである。 そして,以上に述べたところに照らすと,特別定額給付金給付事業が,特定の犠牲を強いられた者に限定して給付金を支給すべきところを,早急に支給するために,その給付対象者を広げたものであるとか,特別の犠牲 に対する最低限の補償をするものとして憲法29条3項の要請を具体化 したものであるなどと解することはできない。 したがって,原告の上記主 給付対象者を広げたものであるとか,特別の犠牲 に対する最低限の補償をするものとして憲法29条3項の要請を具体化 したものであるなどと解することはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ特別定額給付金給付事業が憲法25条2項を具体化した生活保護法又は生活困窮者自立支援法を補完する制度である旨の主張について原告は,特別定額給付金給付事業は,生活保護法及び生活困窮者自立支 援法を補完する制度と解することができる旨主張する。 そこで検討すると,まず,生活保護法は,国民の困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とし(同法1条),保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持の ために活用することを要件として行われる(同法4条)などとしていることからすると,飽くまで生活に困窮する者に対する保護を行うための法律であるといえる。次に,生活困窮者自立支援法は,生活困窮者自立相談支援事業の実施,生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生活困窮者(「現に経済的に困窮し,最低限度の生活を維持することができなくなるおそれ のある者」をいう。同法3条1項参照)に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ることを目的としており(同法1条),同法が規定する措置等の内容をみても,飽くまで生活困窮者を対象とする措置等を行うための法律であるといえる。 他方,特別定額給付金給付事業は,生活に困窮しているか否かにかかわ らず,一律に1人当たり10万円の支給をするものである。 そうすると,特別定額給付金の給付対象者は,生活保護法又は生活困窮者自立支援法が保護又は 給付事業は,生活に困窮しているか否かにかかわ らず,一律に1人当たり10万円の支給をするものである。 そうすると,特別定額給付金の給付対象者は,生活保護法又は生活困窮者自立支援法が保護又は措置等を行うとしている対象者とその範囲が大きく異なっており,上記の各法律がそのような給付事業を実施することを予定しているとはおよそ考え難いのであって,特別定額給付金給付事業が, 上記の各法律を補完する制度とみて,それらの法律に根拠を有するものと みることはできないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ本件実施要領における受給権の有無の判断(転入届の受理の当否の判断)は,公権力の主体として優越的地位に基づき行われる旨の主張について原告は,本件実施要領において,特別定額給付金の給付対象者は,原則 として,本件基準日に住民基本台帳に記録されている者とされているから,特別定額給付金の受給権を取得するためには転入届が受理されることが必要であるところ,その受理の当否の判断が,公権力の主体として優越的な地位に基づき行われる旨主張する。 しかし,転入届の受理が公権力の主体として優越的な地位に基づき行わ れることや,特別定額給付金の支給を受けるためには転入届の受理が必要であるからといって,それとは別個の行為である特別定額給付金の支給・不支給の決定が公権力の主体として優越的な地位に基づき行われるということはできない。 そして,原告のその余の主張に照らしても,特別定額給付金の支給・不 支給の決定が抗告訴訟の対象となる「処分」に当たると解することはできない。 (4) 小括以上によれば,特別定額給付金の支給・不支給の決定は抗告訴訟の対象となる「処分」には当たらない。 したがっ が抗告訴訟の対象となる「処分」に当たると解することはできない。 (4) 小括以上によれば,特別定額給付金の支給・不支給の決定は抗告訴訟の対象となる「処分」には当たらない。 したがって,原告の訴えのうち,特別定額給付金の支給決定の義務付け請求(請求1),本件申請に対し特別定額給付金の支給決定をしないことの違法確認請求(請求2)及び本件不支給決定の取消請求(請求3-1)に係る部分は,それぞれの請求の対象が抗告訴訟の対象となる「処分」には当たらないというべきであるから,不適法であり,却下を免れない。 2 争点2(本件各確認請求に係る訴えについての確認の利益の有無)について (1) 特別定額給付金の給付関係本件実施要領は,被告大阪市が用いた内部規則であり,何らかの法令に基づくものではない。そこで,被告大阪市が,内部規則としての本件実施要領に従って行う特別定額給付金の支給に関する法律関係は,一般民事法上の権利義務関係として解釈するほかないところ,特別定額給付金の具体的な給付 請求権は,申込みと承諾により成立する贈与契約を原因として発生するものと解するのが相当である。そうすると,特別定額給付金の支給の申請がされた場合において,被告大阪市による承諾(支給決定)がされない限り,贈与契約は成立せず,具体的な給付請求権も発生しないことになる。 ところで,特別定額給付金のような給付金の支給は,行政目的を実現する ために行われるものであって,公益的な性格を有しているから,純然たる私法上の契約とは異なり,契約自由の原則について一定の制約が課されるものというべきである。本件についてみれば,被告大阪市は,本件実施要領を内部規則として用い,特別定額給付金給付事業を実施することとした以上,申請者を平等に取り扱わなければ ついて一定の制約が課されるものというべきである。本件についてみれば,被告大阪市は,本件実施要領を内部規則として用い,特別定額給付金給付事業を実施することとした以上,申請者を平等に取り扱わなければならないという要請が働き,給付対象者とさ れる申請者に対しては,一律に支給決定をし,特別定額給付金を支給すべき義務を負うものと解すべきである。 (2) 本件各確認請求に係る訴えについての確認の利益の有無上記(1)で述べたとおり,特別定額給付金の支給に関する法律関係は一般民事法上の権利義務関係として解釈され,特別定額給付金の具体的な給付請求 権は贈与契約を原因として発生するものと解されるから,申請に対する支給決定がされない限り,給付請求権は発生しないこととなり,申請者が給付対象者に該当したとしても,被告大阪市に対し,給付請求権を主張することはできないことになる。一方で,特別定額給付金の給付関係については,上記(1)のとおり,被告大阪市において契約自由の原則に一定の制約が課されてい るところ,申請者において支給決定を受けるべきであるのに支給決定がされ ないとの立場に立たされることがあり得る。 そのような場合,申請者が,特別定額給付金の受給できる地位があることの確認訴訟を提起し,その可否について裁判所の公権的判断を求めることは,特別定額給付金の支給の要否をめぐる問題を解決するための適切な手段であるといえる一方,他により適切な解決手段も存在しないといえるから,この ような確認訴訟については,確認の利益を肯定することができるものと解される。 (3) 被告大阪市の主張についてこれに対し,被告大阪市は,①特別定額給付金の支給に係る権利義務関係は,飽くまで申込みと承諾により成立する贈与契約を原因として発生するの のと解される。 (3) 被告大阪市の主張についてこれに対し,被告大阪市は,①特別定額給付金の支給に係る権利義務関係は,飽くまで申込みと承諾により成立する贈与契約を原因として発生するの が前提である以上,そのような契約が成立していないにもかかわらず,「特別定額給付金を受給できる地位」などという,契約が成立したのと同等の地位を認めるというのは背理であって,そのような地位は,贈与契約上の権利という具体的権利から離れた,抽象的で内容の不明確なものというほかない,②原告が確認を求める「特別定額給付金を受給できる地位」というのが特別 定額給付金の支給の要件を満たしているという状態の確認を意味するというのであれば,それは単に給付要件に該当する事実の存在を確認するにとどまり,具体的な権利関係の確認ではないから,確認の対象として不適切というべきであるし,そのような事実の存在が確認されたとしても別途贈与契約が締結されない限り特別定額給付金の請求権は発生しないのであるから,紛争 解決の方法としては迂遠であって不適切である旨主張する。 しかしながら,上記①の主張については,特別定額給付金を受給できる地位が確認されれば,被告大阪市において,特別定額給付金の申請(贈与契約の申込み)に対し,支給決定(承諾の申込み)をする義務があることが公権的に確認されることになるという意味があり,内容は具体的で明確であると いうべきである。 また,上記②の主張については,既に述べたとおり,他により適切な解決手段が存在しないといえることを踏まえると,紛争解決の方法として不適切であるなどとはいえない。 したがって,被告大阪市の上記主張は採用することができない。 (4) 本件各確認請求に係る訴えにおける確認の利益の有無について 本件 と,紛争解決の方法として不適切であるなどとはいえない。 したがって,被告大阪市の上記主張は採用することができない。 (4) 本件各確認請求に係る訴えにおける確認の利益の有無について 本件各確認請求に係る訴えは,いずれも原告が特別定額給付金を受給できる地位の確認を求める訴えである。そして,原告は,本件実施要領は違憲・違法であり,被告大阪市は原告を特別定額給付金の給付対象者として取り扱う義務が生ずるから,特別定額給付金を受給できる地位にあると主張して,その確認を求めているものと解される。 そこで,上記(2)で述べたところによれば,原告が特別定額給付金を受給できる地位の確認を求めることについて,確認の利益を有するというべきところ,本件訴えのうち,請求4に係る部分(原告が別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認請求に係る部分)については,前記前提事実(1)カのとおり,令和 2年10月8日に別件上告等事件に係る上告棄却及び上告不受理の決定がされており,原告は,別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を既に失っているから,そのような確認請求をする利益を有しているとはいえず,上記部分は不適法である。 したがって,本件訴えのうち,請求4に係る部分(原告が別件上告等事件 の上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位の確認請求)は不適法であるが,請求5(原告が本件建物を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位の確認請求)及び請求6(原告がホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地位の確認請 求)に係る部分は適法である。 び請求6(原告がホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地位の確認請 求)に係る部分は適法である。 3 争点3(本件実施要領給付基準の違憲性等)について(1) 本件実施要領給付基準が憲法14条1項に反するといえるか否かア判断枠組み(ア) 本件実施要領給付基準によれば,特別定額給付金の給付対象者は,本件基準日において,住民登録がされている者(本件基準日給付基準) のほか,本件基準日以前に,住民基本台帳法8条の規定に基づき住民票を消除されていた者で,本件基準日において,日本国内で生活していたが,いずれの市区町村の住民基本台帳にも記録されておらず,かつ,本件基準日の翌日以後初めて住民登録がされることとなった者(本件拡大給付基準)が含まれることになるが,原告のように,本件基準日以前に, 住民票を消除されていた者で,本件基準日後も給付申請期限までに住民登録がされなかった者(本件非住民登録者)については,特別定額給付金の給付対象者とはされず,特別定額給付金を受給することができない。 そして,原告は,本件実施要領給付基準は,本件非住民登録者につき,住民登録がされており,特別定額給付金の給付対象となる者と比較して, 不合理な差別的取扱いをしており,憲法14条1項に違反する旨主張するので,以下検討する。 (イ) 憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨であると解される(最高裁昭和37年(オ)第1472号同3 9年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号2 であると解される(最高裁昭和37年(オ)第1472号同3 9年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁参照)。そして,この理は,行政機関による事実上の取扱いであっても異なるものではないというべきであり,特別定額給付金給付事業のような法律に基づかない給付事業における取扱いにおいても,同様に当 てはまるというべきである。 ところで,内閣は,「一律に,1人当たり10万円の給付を行う」ことを内容とする本件緊急経済対策を閣議決定し,「全国全ての人々に対して特別定額給付金を給付するため…要する経費の補助等」として特別定額給付金給付事業の助成に必要な経費を計上する本件補正予算が成立し,これらを受け,総務省は,特別定額給付金交付事業を具体的に実施する ため,実施主体を市区町村とし,実施に要する経費は国が補助するものとした上で,市区町村が内部規則として用いることができる本件実施要領を作成し,被告大阪市においても,本件実施要領をそのまま内部規則として用い,特別定額給付金給付金事業を実施したものである(前記前提事実(3)~(8))。 このようにしてみると,特別定額給付金給付事業は,本件緊急経済対策が閣議決定されてからは,「全国民に10万円を給付するもの」とされており,そのようなものとして予算も確保されていたのであるから,特別定額給付金給付事業を具体化するに当たっては,何らかの政策上の必要を考慮して,給付対象者の範囲を検討する必要はなかったものといえ る。そこで,特別定額給付金給付事業を所管する総務省においては,特別定額給付金給付事業を具体的に実施するため,「全国民に10万円を給付するもの」として仕組みを設けることが求 ったものといえ る。そこで,特別定額給付金給付事業を所管する総務省においては,特別定額給付金給付事業を具体的に実施するため,「全国民に10万円を給付するもの」として仕組みを設けることが求められていたというべきである。 (ウ) もっとも,特別定額給付金給付事業を実施するための仕組みを設け, 実際に支給を行うに当たっては,「全国民に10万円を給付するもの」ということを文字通り完全な形で行うことが困難となる事態が想定される。 すなわち,特別定額給付金給付事業を実施するための仕組みを設けるためには,一定の枠組みを設定しなければならず,例えば,給付対象者を単に「全国民」と定めることはできないから,仕組みを設けた結果とし て,支給することができない者が例外的に生ずること自体は避け難い面 がある。そして,特別定額給付金給付事業を具体的に実施するためには,必然的に膨大な事務作業が生ずることとなり,また,特別定額給付金給付事業の目的が「感染拡大に留意しつつ,簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うこと」(本件緊急経済対策)とされていたから,迅速に給付を実現する要請があり,公平な給付ということも考慮されてし かるべきところ,特別定額給付金給付事業を具体化する仕組みを設けるに当たり,仕組み自体を簡素なものとして事務負担の軽減を図ることや,二重給付を防止するという観点を考慮に入れることは当然に許されるというべきである。そして,そのような点を考慮した上で設けられた仕組みの下で,受給できない者が例外的に生じたとしても,そのことをもっ て,直ちに差別的な取扱いであるから憲法14条1項に違反するものであるということはできず,それが合理的な理由に基づくやむを得ないものということができれば,事柄の性質に即応した合理的な根 もっ て,直ちに差別的な取扱いであるから憲法14条1項に違反するものであるということはできず,それが合理的な理由に基づくやむを得ないものということができれば,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものとして,憲法14条1項が禁止する差別的取扱いには当たらないと解される。 イ本件非住民登録者が給付対象者とされていないことが合理的な理由に基づくやむを得ないものであるか否かについて上記アの見解に立って,本件非住民登録者が給付対象者とされていないことが合理的な理由に基づくやむを得ないものであるか否かについて,以下検討する。 (ア) 本件基準日給付基準について本件実施要領が,本件基準日給付基準を設け,原則として本件基準日に住民登録されている者を給付対象者としたのは,特別定額給付金給付事業が,膨大な申請・給付件数が見込まれる中で,その仕組みを簡素なものとして,事務負担の軽減を図り,迅速に給付を実現する必要があり, 他方で,二重給付を防止するために給付対象者の基準を明確にする必要 があったためであると解される。住民基本台帳は,「住民に関する事務の処理の基礎とする…ため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行う」(住民基本台帳法1条)ものとされ,住民基本台帳法が「国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的」(同法1条)とし,住民基本台帳における記録を正確に行うために各種規定(同法2条,3条1項, 3項等)を定めていることからすると,住民基本台帳の記録を用いて給付対象者を定め,特別定額給付金を支給することは,仕組みを簡素なものとして事務負担の軽減を図ることができ,住民基本台帳の制度趣旨にも沿うものである。また,特別定額給付金給付事業の事業主体が各市区町村とされており,住民が市区町村を 支給することは,仕組みを簡素なものとして事務負担の軽減を図ることができ,住民基本台帳の制度趣旨にも沿うものである。また,特別定額給付金給付事業の事業主体が各市区町村とされており,住民が市区町村をまたいで住所を変更することがあ り得ることから,二重給付を防止するためには基準日を設けておく必要がある。このように,本件基準日に住民登録がされている者を給付対象とした本件基準日給付基準は,仕組みを簡素なものとして,事務負担の軽減を図り,迅速に給付を実現するという要請に応えつつ,二重給付を防止することができるものであり,それ自体,合理的なものであるとい うことができる。 (イ) 本件拡大給付基準についてa 上記(ア)で説示したとおり,本件基準日給付基準は,それ自体合理的なものであるが,特別定額給付金の給付対象者を定めるものとして,本件基準日給付基準だけがとられているとすれば,本件基準日に住民 登録がされていない者が全て給付対象から除かれることになるから,それらの者に対しても支給ができるよう仕組みを考える必要がある。 そして,そのような者に対する支給を実現するためのものとして,本件拡大給付基準が設けられたものと解され,本件基準日に住民登録がされていない者であっても,本件基準日の翌日以後初めて住民登録が されることとなった場合,給付対象とすることとし,申請期限までに 新たに住民登録がされれば,特別定額給付金を受給することができることになる。 このような本件拡大給付基準は,住民基本台帳の記録を用いながら,本件基準日の翌日以後初めて住民登録がされることとなった者を給付対象とすることで,二重給付を防止することもできるのであって,事 務負担の軽減を図り,二重給付を防止しながら,給付対象者の範囲を拡大することがで 日以後初めて住民登録がされることとなった者を給付対象とすることで,二重給付を防止することもできるのであって,事 務負担の軽減を図り,二重給付を防止しながら,給付対象者の範囲を拡大することができるものであって,それ自体合理的なものということができる。 b そして,本件基準日に住民登録がされていない者のうち,住居を確保している者(主に本件基準日前後に住居を移転した者が想定される。) については,本件基準日後に容易に住民登録を行うことができるから,本件拡大給付基準により,特別定額給付金を受給することができることになるといえる。 c もっとも,住居を確保していないために住民票を消除されていたままになっているホームレス等が,本件拡大給付基準によって新たに住 民登録を得るためには,申請期限までに,生活の本拠として認定される住所(住居)を確保しなければならないことになる。 d ここで,ホームレス等に対する支援制度についてみると,ホームレス自立支援法は,ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標を掲げ(同法3条1項各号),被告国は,総合的な施策を策定し,及びこれ を実施するものとし(同法5条),地方公共団体は,当該地方公共団体におけるホームレスに関する問題の実情に応じた施策を策定し,及びこれを実施するもの(同法6条)としている。また,生活困窮者自立支援法は,就労の状況,心身の状況,地域社会との関係性その他の事情により,現に経済的に困窮し,最低限度の生活を維持することがで きなくなるおそれのある一定の者に対し,生活困窮者住居確保給付金 を支給する制度を規定し(同法3条3項),市等は,適切に生活困窮者住居確保給付金の支給を行う責務を有するもの(同法4条1項)としている。そして,大阪府においては,自立支援事業実 確保給付金 を支給する制度を規定し(同法3条3項),市等は,適切に生活困窮者住居確保給付金の支給を行う責務を有するもの(同法4条1項)としている。そして,大阪府においては,自立支援事業実施要綱を設け,ホームレス等のうち,就労意欲のある者等に対して,自立支援センターに一定期間入所させ,その者の就労による自立の促進を図る事業を 実施しており(甲19の1),また,被告大阪市においては,住居確保給付金の制度を設け,住宅を喪失した者も含め,常用就職に向けた意欲があり,求職活動等を誠実に実施する者に対し,家賃相当分の住居確保給付金を支給するとの支援策を用意している(甲21,22)。 また,利用し得る資産,能力等全てを活用してもなお生活に困窮す る者に対し,困窮の程度に応じて必要な保護を行い,健康で文化的な生活水準を維持することができる最低限度の生活を保障し,その自立を助長する制度として,生活保護法に基づく生活保護制度が実施されており(生活保護法1条,3条,4条1項),生活保護制度を利用することで,住居を確保し,住民登録が可能となるものと認められる。 そこで,ホームレス等は,上記のとおりの支援制度を利用することなどによって,生活の本拠と認定される住所(住居)を確保し,申請期限までに新たに住民登録を受けることができれば,特別定額給付金を受給することができる。 e この点について,原告は,生活保護の受給は容易にはできず,住居 確保給付金のため,被告大阪市の職員と相談するまでにも相当の期間を要するから,本件基準日後,特別定額給付金の申請期限までの間に,上記相談をすることができないおそれがあるし,住居確保給付金は,敷金及び礼金は支給されないため,住居確保給付金を得ることができても,住居を確保するための賃貸借契約を締 額給付金の申請期限までの間に,上記相談をすることができないおそれがあるし,住居確保給付金は,敷金及び礼金は支給されないため,住居確保給付金を得ることができても,住居を確保するための賃貸借契約を締結することはできない, また,自立支援センターの定員は僅かであり,自立支援センターはい わゆる雑居であるにもかかわらず,新型コロナウイルスの感染対策が十分にとられていないから,自立支援センターに入居することは期待することができない旨主張する。 しかし,それらの支援制度によって,ホームレス等の全ての人が住居を確保することができるとはいえないとしても,そのような支援制 度が存在しており,それらが全く機能していないと認められるような証拠は見当たらないのであるから,ホームレス等がそれらの支援制度を用いて住居を確保することができる一定程度の可能性はあったということができる。 (ウ) 本件非住民登録者に対し,二重給付を防止する措置をとりながら特 別定額給付金を支給することは可能かつ容易である旨の原告の主張についてa ところで,原告は,本件基準日に住民登録がされておらず,申請期限までに住居を確保できず,住民登録を行うことができなかった者(本件非住民登録者)に対しても,二重給付を防止する措置をとりながら 特別定額給付金を支給することは,前記第2の3(3)(原告の主張)ウ(イ)a~eの主張のとおり提案する仕組みをとれば可能かつ容易である旨主張するので,以下検討する(なお,原告が提案する仕組みは,各市区町村において,住基ネットを用いて戸籍の附票を閲覧することができることをも前提として主張しているところ,戸籍の附票につい ての情報は,住基ネットで保有している情報には当たらず〔住民基本台帳法30条の6第1項〕,住基 を用いて戸籍の附票を閲覧することができることをも前提として主張しているところ,戸籍の附票につい ての情報は,住基ネットで保有している情報には当たらず〔住民基本台帳法30条の6第1項〕,住基ネットを用いて戸籍の附票を閲覧することはできないと解されるから,その前提は用いず,各市区町村が本籍地の市区町村に当該申請者の情報を照会することを前提とする。)。 b 原告が提案する仕組みによれば,本件基準日に住民登録がされてい なかった者が特別定額給付金の支給の申請をしたことの情報を本件情 報集約センターに集約することになるから,市区町村は,本件情報集約センターに照会することで,当該者が過去に特別定額給付金の支給の申請をしたかどうかを確認することができ,原告が提案する仕組みに基づいて二重に申請しようとした場合,市区町村は,それが二重の申請であることを把握でき,二重給付を防止することができることに なる。 もっとも,本件基準日において住民登録がされていなかった者が,原告が提案する仕組みに基づき特別定額給付金を受給した上で,申請期限までに住民登録を行い,本件拡大給付基準を満たす者として特別定額給付金の支給の申請をした場合,それが二重の申請であるか否か を把握することはできないから,このような場合は,二重給付を防止することができない。 そして,このような二重給付を防止するためには,本件基準日の翌日以降に住民登録を行った場合の全てについて,当該申請者が過去に,原告が提案する仕組みの下で特別定額給付金が支給された事実がない ことを確認する必要があり,そのための方策としては,本件拡大給付基準を満たす者として特別定額給付金の申請を受けた市区町村において,当該申請者に対し,戸籍の附票の提出を求めるなどして得た当該申請者 ことを確認する必要があり,そのための方策としては,本件拡大給付基準を満たす者として特別定額給付金の申請を受けた市区町村において,当該申請者に対し,戸籍の附票の提出を求めるなどして得た当該申請者の氏名及び本籍等の情報を本件情報集約センターに伝達し,過去に特別定額給付金が支給された事実がないことの確認をとるといっ た仕組みをも設ける必要が生ずる。そして,このような仕組みを設けることに伴い増加する事務負担は,相応に大きいものと考えられる。 c そうすると,原告が提案する仕組みをもって,二重給付を防止する措置をとりながら,本件非住民登録者に対し,特別定額給付金を支給することが容易であるとまではいい難い。 また,本件拡大給付基準を設けないこととして,原告が提案する仕 組みを採用することにすれば,一応二重給付を防止することはできると考えられるが,そのような場合,本件基準日に住民登録がされていない者は,全て原告が提案する仕組みの下でしか受給できないことになり,本件拡大給付基準によれば可能となる住民基本台帳を利用した簡素な仕組みの下で迅速に支給を受けることができないことになる。 (エ) 検討上記(ア)~(ウ)で説示したとおり,特別定額給付金給付事業を実施するための「全国民に10万円を給付する」仕組みとして,本件基準日給付基準と本件拡大給付基準を採用するものとした本件実施要領給付基準は,事務負担の軽減を図り,迅速に給付を実現しつつ,二重給付を防止 する要請を満たすものとして,合理的なものであるということができる。 もっとも,本件基準日において住民登録がされていなかった者のうち,申請期限までに住居を確保することができないホームレス等(本件非住民登録者)については,本件拡大給付基準によっても給付対象とすること もっとも,本件基準日において住民登録がされていなかった者のうち,申請期限までに住居を確保することができないホームレス等(本件非住民登録者)については,本件拡大給付基準によっても給付対象とすることができず,そのような者が一定数生ずることを否定することはできな い。しかし,特別定額給付金給付事業を具体化する仕組みを設けるに当たっては,専門的・技術的な知見を要し,その限りでは一定の裁量が認められるところ,事務負担の軽減を図り,迅速な給付を実現することや,同時に二重給付を防止することという要請に応えながら,それらの者を網羅的に給付対象とする仕組みを設けることは必ずしも容易ではないと いうことができる。 また,本件で差別的取扱いが問題となる特別定額給付金の額は10万円と相応に大きく,そのような給付金の受給の可否の問題を軽視することはできない。しかし,本件非住民登録者は,ホームレス等に対する支援制度を利用するなどして,申請期限までに住居を確保し,特別定額給 付金を受給できる一定程度の可能性はあったということができる。 これらの事情を総合的に考慮すれば,本件非住民登録者が給付対象者とされていないことは,合理的な理由に基づくやむを得ないものと評価すべきであって,憲法14条1項が禁止する差別的取扱いには当たらないというべきである。 ウしたがって,原告の上記主張は採用することができない。 (2) 本件実施要領給付基準は,本件非住民登録者につき,DV等避難者と比較して,不合理な差別的取扱いをしているといえるか否かア原告は,本件DV等避難者取扱いについて,その給付手続は煩雑で,二重給付がされることを前提にしており,DV等避難者は,本件基準日以前に居住市区町村において住民登録をすることによって特別定額給付金を受 告は,本件DV等避難者取扱いについて,その給付手続は煩雑で,二重給付がされることを前提にしており,DV等避難者は,本件基準日以前に居住市区町村において住民登録をすることによって特別定額給付金を受 給することができたのに,DV等避難者のための手続を定めているとし,本件非住民登録者について,その給付手続を定めてないことは,DV等避難者と比較して不合理な差別的取扱いであるとし,憲法14条1項に違反する旨主張する。 イそこで検討すると,本件DV等避難者取扱いにおける給付手続は,前記 前提事実(7)キ(イ)のとおりであり,当該DV等避難者の住民票所在市区町村は,「申出者(支給停止者等)リスト」を作成して管理することになるから,当該リスト作成前にその配偶者等(世帯主)にDV等避難者に係る特別定額給付金が支給されていない限り,二重給付を防止することができることになっている。そして,「申出者(支給停止者等)リスト」作成前に, 既にDV等避難者に係る特別定額給付金が配偶者等に支給されている場合であっても,当該配偶者等に対し,DV等避難者に係る特別定額給付金の返還を求めることとし,申請の際に同意をとることとして,その返還する根拠も用意していることからすると,二重給付を防止する措置がとられていないとはいえない。 また,DV等避難者と本件非住民登録者の置かれている状況は異なるこ と,本件DV等避難者取扱いが二重給付を防止するためにとっている給付手続は上記のとおりであるところ,本件非住民登録者に対し,二重給付を防止しつつ支給する手続を設けることが容易ではないことは,上記(1)イ(ウ)で説示したとおりである。 そうすると,本件非住民登録者について,その給付手続を定めていない からといって,DV等避難者と比較 給する手続を設けることが容易ではないことは,上記(1)イ(ウ)で説示したとおりである。 そうすると,本件非住民登録者について,その給付手続を定めていない からといって,DV等避難者と比較して不合理な差別的取扱いをしているとして憲法14条1項に違反するとはいえない。 ウしたがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 本件実施要領給付基準が憲法31条又は信義則の法理に違反し,違法と評価されるか否か ア原告は,前記第2の3(3)(原告の主張)エにおいて,本件基準日に居住実態がないのに住民登録がされている者を給付対象者としながら,住民基本台帳法を遵守して本件基準日以前に住民登録がされなくなった者を給付対象者としないことなどをもって,本件実施要領給付基準が憲法31条に違反する,又は信義則の法理に違反する旨主張する。 イそこで検討すると,憲法31条は,「何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない。」として,法定の手続の保障について定めるところ,行政手続についても,同条による保障が及ぶと解すべき場合があるというべきである(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集 46巻5号437頁参照)。 しかし,本件で問題となっているのは,特別定額給付金を受給できるか否かであって,本件実施要領給付基準により,原告が有する何らかの権利・自由が侵害されるという関係にはない。このような関係において,憲法31条の定める適正手続の保障が及ぶとは解されない。 また,原告は,信義則の法理にも違反する旨主張するところ,その意味 内容や法律上の根拠は必ずしも明らかではないが,本件基準日に居住実態がないのに住民登録がされている は解されない。 また,原告は,信義則の法理にも違反する旨主張するところ,その意味 内容や法律上の根拠は必ずしも明らかではないが,本件基準日に居住実態がないのに住民登録がされている者を給付対象者としながら,住民基本台帳法を遵守して本件基準日以前に住民登録がされなくなった者(本件非住民登録者)を給付対象者としないことは著しく不合理であると主張するものとも解される。しかし,上記(1)イで説示したとおり,本件非住民登録者 が給付対象者とされていないのは,合理的な理由に基づくやむを得ないものと評価されることからすると,本件基準日に居住実態がないのに住民登録がされている者を給付対象としているからといって,本件非住民登録者を給付対象としていないことが著しく不合理であるということはできない。 ウしたがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 特別定額給付金を受給する権利を有する旨の原告の主張についてア原告は,憲法29条3項,25条1項,27条1項に基づき,特別定額給付金を受給する権利を有する旨主張するところ,原告が特別定額給付金を受給する権利を有するにもかかわらず,本件実施要領給付基準が原告を 給付対象としていないことが違法である旨の主張とも解される。 イそこで検討すると,原告の主張は,内閣総理大臣が新型インフルエンザ等緊急事態宣言を発出したことや,特別定額給付金の趣旨等について表明したことから,特別定額給付金給付金の趣旨・目的を導き出し,それが憲法29条3項,25条1項,27条1項が保障する権利と関連することを 理由に,直ちにそれらの権利を有すると主張しているものと解される。しかし,特別定額給付金の趣旨・目的に照らせば,これらから直ちに具体的な特別定額給付金を受給する権利を導き出 と関連することを 理由に,直ちにそれらの権利を有すると主張しているものと解される。しかし,特別定額給付金の趣旨・目的に照らせば,これらから直ちに具体的な特別定額給付金を受給する権利を導き出すことはできないというべきである。 ウしたがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 本件実施要領給付基準には,憲法41条の趣旨を没却した裁量の逸脱が ある旨の原告の主張についてア原告は,国会が全ての国民に特別定額給付金を支給するものとして本件補正予算を可決したのであるから,総務省の職員は,著しく困難な事情がない限り,全ての国民に特別定額給付金を支給しなければならなかったとして,本件実施要領給付基準が憲法41条の趣旨を没却した裁量の逸脱が ある旨主張する。 イそこで検討すると,国会が可決した本件補正予算において,特別定額給付金給付事業の助成に必要な経費が計上されており,その説明として,「全国全ての人々に対して特別定額給付金を支給するために地方公共団体が行う特別定額給付金給付事業に要する経費の補助等」と説明がされていた(前 記前提事実(5))。もっとも,上記(1)ア(ウ)で説示したとおり,特別定額給付金給付事業を具体的に実施するための仕組みを設けた結果,支給することができない者が例外的に生ずることは想定されるところ,国会が本件補正予算を可決するに当たっても,当然そのような想定を前提にしていたものと認められる。そして,証拠(乙5)によれば,内閣総理大臣は,令 和2年4月28日の衆議院予算委員会において,特別定額給付金の給付対象者につき,「原則として,基準日である4月27日時点の住民基本台帳に記録されている方々を対象に給付をするものであります。」と答弁していることが認められ,そのような答 おいて,特別定額給付金の給付対象者につき,「原則として,基準日である4月27日時点の住民基本台帳に記録されている方々を対象に給付をするものであります。」と答弁していることが認められ,そのような答弁も踏まえて,国会において本件補正予算が可決されていることからすると,本件実施要領給付基準が憲法41 条の趣旨を没却しているなどということはできない。 ウしたがって,原告の上記主張は採用することができない。 (6) まとめ以上によれば,本件実施要領給付基準に違憲性等は認められないというべきである。 4 各請求について (1) 請求1,請求2,請求3-1,請求4上記1,2で説示したとおり,原告の訴えのうち,特別定額給付金の支給決定の義務付け請求(請求1),本件申請に対し特別定額給付金の支給決定をしないことの違法確認請求(請求2),本件不支給決定の取消請求(請求3-1)及び原告が別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を維持し ながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認請求(請求4)に係る部分は,不適法であり,却下を免れない。 (2) 請求3-2特別定額給付金の支給に関する法律関係は一般民事法上の権利義務関係として解釈され,特別定額給付金の具体的な給付請求権は贈与契約を原因と して発生するものと解されるところ,原告と被告大阪市との間には,特別定額給付金の支給に係る贈与契約は成立していないから,被告大阪市に対する特別定額給付金としての10万円の支払請求(請求3-2)は,理由がない。 (3) 請求5,請求6原告が本件建物を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金 を受給できる地位にあることの確認請求(請求5),原告がホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳 求5,請求6原告が本件建物を生活の本拠とした状態を維持しながら特別定額給付金 を受給できる地位にあることの確認請求(請求5),原告がホームレス自立支援法にいうホームレスとして住民基本台帳に記録されない状態を継続しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認請求(請求6)は,本件実施要領給付基準に違憲性等は認められず,原告が求める地位を認めることはできないから,いずれも理由がない。 (4) 本件国賠請求本件国賠請求は,本件実施要領給付基準に違憲性等は認められず,被告らの職員につき国家賠償法上の違法行為がないから,理由がない。 第4 原告の求釈明に関する申立て,文書提出命令の申立て事件について 1 原告の求釈明に関する申立てについて (1) 原告の申立ての内容 ア令和3年2月19日付け釈明に関する申立書(1)原告は,民事訴訟法149条3項に基づき,裁判長が,概要,被告らに対し,①ネットカフェの営業の態様が旅館業法に違反していたとしても,当該ネットカフェに住民登録することが適法である旨主張するのか,それともネットカフェの営業の態様が旅館業法に違反している場合,当該ネッ トカフェに住民登録することは違法である旨主張するのか,②当該ネットカフェの営業の態様が旅館業法に違反している場合に当該ネットカフェに住民登録することが違法であるという趣旨であれば,旅館業法に適合するネットカフェの営業の態様,旅館業法に違反するネットカフェの営業の態様は具体的にどのような営業の態様を指すのか,について発問すること を求めている。 イ令和3年2月19日付け釈明に関する申立書(2)原告は,民事訴訟法149条3項に基づき,裁判長が,概要,被告らに対し,原告が提案する仕組みにつき「膨大な事務負担が と を求めている。 イ令和3年2月19日付け釈明に関する申立書(2)原告は,民事訴訟法149条3項に基づき,裁判長が,概要,被告らに対し,原告が提案する仕組みにつき「膨大な事務負担が発生する可能性がある」旨の事実は,本件実施要領の憲法適合性に係る被告の主張について どのような影響を与えるのか,について発問することを求めている。 ウ令和3年2月19日付け釈明に関する申立書(3)原告は,民事訴訟法149条3項に基づき,裁判長が,概要,原告に対し,従前の原告の主張に足りない点があれば,その点について発問することを求めている。 (2) 当裁判所は,上記ア,イについては,既に説示したところによれば,被告に対し,その旨の発問をしたとして,その応答がどのようなものであっても,本件実施要領給付基準の違憲性等に関する本件の結論を左右するものではないと考え,また,上記ウについては,当該発問をする必要性がないと考える(民事訴訟法149条,150条参照)。 2 文書提出命令の申立て事件(大阪地方裁判所令和3年(行ク)第20号事件) 原告は,「総務省の職員には,国家賠償法1条1項の過失が認められる事実」を証明すべき事実として,被告らが,総務省が特別定額給付金の支給について,本件基準日の翌日以降に住民登録がされない場合であっても,戸籍の情報を用いて支給することの可否を検討したことがあると主張したことから,その「検討」をするに際し,作成された文書(PC上のファイル,会議録,メモ,備忘 録,その他関連する電子メールをも含む。)について,文書提出命令の申立てをする。 しかし,本件においては,本件実施要領給付基準に違憲性等が認められないと判断され,国家賠償法上の違法行為がないことが明らかであるから,総務省の職 も含む。)について,文書提出命令の申立てをする。 しかし,本件においては,本件実施要領給付基準に違憲性等が認められないと判断され,国家賠償法上の違法行為がないことが明らかであるから,総務省の職員に上記の過失があるか否かの検討のために原告が提出を求める証拠を取 り調べる必要はないものと認められる。 したがって,原告の文書提出命令の申立ては,理由がないからこれを却下することとする。 第5 結論以上の次第で,本件訴えのうち,原告に対する特別定額給付金の支給決定の義 務付けを求める部分,原告に対し特別定額給付金の支給決定をしないことが違法であることの確認を求める部分,原告による特別定額給付金の支給申請に対し,大阪市長がした不支給決定の取消しを求める部分及び原告が別件上告等事件における上告人兼申立人の地位を維持しながら特別定額給付金を受給できる地位にあることの確認を求める部分は,いずれも不適法であるからこれらを却下し,原告 のその余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地 修 裁判官宮端謙一は,転補のため,裁判官渡邊直樹は,退官のため,いずれも署名押印することができない。 裁判長裁判官山地 修
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