平成16(ワ)748 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年5月24日 広島地方裁判所
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判決文本文53,235 文字)

- 1 -平成16年(ワ)第748号損害賠償請求事件口頭弁論終結の日平成19年2月13日判決主文 被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県は,原告Aに対し,各自660万円及びこれに対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Mは,原告Aに対し,33万円及びこれに対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県は,原告Bに対し,各自6万3299円及びこれに対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県は,原告Cに対し,各自132万1662円及びこれに対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らの被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県に対するその余の請求並びに原告Aの被告Mに対するその余の請求をいずれも棄却する。 原告らの被告H,被告I,被告K,被告L及び被告Nに対する請求並びに原告B及び原告Cの被告Mに対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告Aに生じた費用は,これを2分し,その1を原告Aの負担とし,その余を被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告M,被告広島市及び被告広島県の連帯負担とし(ただし,被告Mはその余の被告らの20分の1の限度で連帯負担),原告Bに生じた費用は原告Bの負担とし,原告Cに生じた費用は,これを10分し,その9を原告Cの負担とし,その余を被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県の連帯負担とし,- 2 -被告D,被告E,被告F,被告G,被告J 生じた費用は,これを10分し,その9を原告Cの負担とし,その余を被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県の連帯負担とし,- 2 -被告D,被告E,被告F,被告G,被告J,被告広島市及び被告広島県に生じた費用は,それぞれ3分し,その2を原告らの連帯負担とし,その余を同被告らの連帯負担とし,被告Mに生じた費用は,これを20分し,その19を原告らの連帯負担とし,その余を同被告の負担とし,その余の被告らに生じた費用は原告らの連帯負担とする。 この判決は,第1ないし4項に限り,仮に執行することができる。 ただし,被告広島市及び被告広島県のいずれかが原告Aに対し金400万円の担保を供するときは,主文第1項による同被告らに対する仮執行を免れることができ,被告広島市及び被告広島県のいずれかが原告Bに対し金3万円の担保を供するときは,主文第3項による同被告らに対する仮執行を免れることができ,被告広島市及び被告広島県のいずれかが原告Cに対し金70万円の担保を供するときは,主文第4項による同被告らに対する仮執行を免れることができる。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告Aに対し,各自1100万円及び内1000万円に対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告Bに対し,各自567万7665円及び内550万円に対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告Cに対し,各自950万5540円及び内550万円に対する平成14年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要原告らは,被告D,被告G,被告J及び被告M(同被告らを合わせて,以下「被告生徒ら」という。)が,原告Aに対し,中学校に在学中,暴 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要原告らは,被告D,被告G,被告J及び被告M(同被告らを合わせて,以下「被告生徒ら」という。)が,原告Aに対し,中学校に在学中,暴行を加えるなどのいじめ行為を行い,原告Aに対して多大な精神的苦痛を与えるとともに統合失調症を発症させ,このため,原告Aの両親である原告B及び原告Cに対- 3 -しても多大な精神的苦痛を与えた,被告生徒らの同行為は不法行為を構成するとして,被告生徒ら及びその保護者であるその余の被告ら(被告市及び被告県を除く。)に対し,不法行為に基づく損害賠償金(一部)及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 また,原告らは,原告Aが所属していた中学校の教師等が上記いじめ行為を早期に発見し,かつ,適切な措置を講じてこれを防止する義務があったにもかかわらず,これを怠り,その結果,原告らに上記のような多大な精神的苦痛を与えた,この職務懈怠は国家賠償法1条の違法行為に当たるとして,被告市及び被告県に対し,被告市については同法1条,被告県について同法1条及び3条に基づき,損害賠償金(一部)及びこれに対する違法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 争いのない事実(1) 原告A及び被告生徒らは,平成12年4月,広島市立a中学校(以下「a中」という。)に入学し,平成15年3月,同校を卒業した者であり,原告Aは,1年生のときには被告Dと,2年生のときには被告Jと,3年生のときには被告Gと,それぞれ同じクラスに在籍していた。 (2) 原告B及び原告Cは,原告Aの両親である。 被告E及び被告Fは,被告Dの両親(以下,両名を には被告Dと,2年生のときには被告Jと,3年生のときには被告Gと,それぞれ同じクラスに在籍していた。 (2) 原告B及び原告Cは,原告Aの両親である。 被告E及び被告Fは,被告Dの両親(以下,両名を合わせて「被告D両親」という。)である。 被告H及び被告Iは,被告Gの両親(以下,両名を合わせて「被告G両親」という。)である。 被告K及び被告Lは,被告Jの両親(以下,両名を合わせて「被告J両親」という。)である。 被告Nは,被告Mの母である。なお,被告Mは,旧姓が「O」であったが,- 4 -母の離婚により母の姓「M」となった。 (以下,上記被告7名を合わせて「被告保護者ら」という。)。 (3) P教諭は,平成13年4月,a中に教諭として赴任し,原告Aの2年生及び3年生のクラス担任を務めていた者である。 Q教諭は,平成10年から平成15年まで,a中の教諭としてその職務に従事していた者である。 (4) 原告Aは,平成14年6月17日からは登校しないようになった(以下「本件不登校」という。)。 (5) 被告市は,広島市立の中学校の教師の違法行為によって生じた損害について,国家賠償法1条1項に基づき,賠償責任を負うものである。 被告県は,広島市立の中学校の教師の違法行為によって生じた損害について,国家賠償法3条1項の「公務員の俸給,給与その他の費用」を「負担する者」として,賠償責任を負うものである。 争点 (1) 被告生徒らの不法行為の成否(2) 被告保護者らの監督義務違反の成否(3) 教諭等の違法行為の成否(4) 被告生徒らのいじめ行為と原告Aの統合失調症との間の相当因果関係の存否(5) 原告らの損害 争点(1)(被告生徒らの不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア文房具損壊行為被告Jは,Rとともに,平成13年5月 調症との間の相当因果関係の存否(5) 原告らの損害 争点(1)(被告生徒らの不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア文房具損壊行為被告Jは,Rとともに,平成13年5月ころ,約1週間にわたり毎日のようにホームルームの時間や授業中,原告Aの文房具を取り上げ,毎日1本程度シャープペンシルを壊し,ボールペンも何本も壊し,消しゴムも毎- 5 -日窓の外に切り刻んで投げ捨てるなどの損壊行為を行った。被告Jは,原告Aが授業中に何度も「やめー,返せ。」と言っており,嫌がっていることを認識していたにもかかわらず,上記行為を行った。 また,被告Jは,原告Aが文房具を取り返そうとしたときに,原告Aの手にシャープペンシルの芯を刺して傷害を負わせた。 イ暴行行為(ア)首を絞める行為被告Dは,原告Aに対し,平成13年5月ころから平成14年6月ころにかけて,原告Aが登校した日はほぼ毎日,休み時間中,教室や廊下,校長室・職員室の外のテラス等で,拳法の技と称し,原告Aの後ろから手を回して腕を首の方に引っ張り,原告Aが意識を失いかける程に,首を絞めた。その際,原告Aは,抵抗し,「やめえや。」,「いい加減にせえや。」などと言って嫌がる態度を示した。ところが,被告Dは,このような原告Aの態度を見ていながら,「やめえやしか言えんのか。」などと言って,なおも上記の暴行を続けた。被告Dが腕を放し,原告Aが,「死にそうだった。」と言うと,被告Dは,「ざまあみろ。」と言った。 被告Dを除く被告生徒らは,被告Dの上記行為を止めようとしなかったばかりか,被告Dが原告Aに対し暴力を働く時に,被告Dに協力し,原告Aを羽交い締めにし,逃げられないようにしていた。また,被告J,被告G及び被告Mは,原告Aの首を絞める暴行を加えた。 被告Dが原告Aにゲームソフ 告Dが原告Aに対し暴力を働く時に,被告Dに協力し,原告Aを羽交い締めにし,逃げられないようにしていた。また,被告J,被告G及び被告Mは,原告Aの首を絞める暴行を加えた。 被告Dが原告Aにゲームソフトの代金を請求するようになった後は,被告生徒らは,原告Aが支払を断ると,4人で首を絞めたりした。原告Aが,首を絞められた際,「眼鏡がゆがむだろうが。」と言うと,被告Dは,「そんな安物の眼鏡ぐらいで。その眼鏡100円か。」などと言った。 - 6 -(イ)小石等を投げ付ける行為被告生徒らは,平成13年5月下旬ころから平成14年6月ころにかけて,原告Aが登校した日はほぼ毎日,休み時間中,原告Aを校庭に連れ出し,職員室の外にあるテラスで,一方的に原告Aを標的にして,小石や砂を投げ付けた。被告Jが,挑発するように原告Aに投げ付け,これに反抗した原告Aが投げ返すと,4人で原告Aに石を投げ付け,それでいじめが始まり,原告Aがこれを必死に避けようとすると,その姿を「きちがい踊りだ。」,「運動神経ゼロ,運動音痴」などと揶揄して,笑った。原告Aが「うるさい。」と言い返すと,被告生徒らは,「うるさいしか言うことないんか。」と言った。あるとき,小石を投げられたため,原告Aの眼鏡の右端の上の部分が欠けた。また,小石等を投げ付ける行為の後,連続で水かけ行為をされることもあった。 (ウ)水をかける行為被告生徒らは,平成13年5月下旬ころから平成14年6月ころにかけてたびたび,原告Aが登校した日はほぼ毎日,休み時間中,職員室の脇にある水飲み場で蛇口から出る水を原告Aに向けて手で払い飛ばすなどして水をかけた。水を飲もう,遊ぼうと言って連れ出して水を飲みに行くが,原告Aが飲むと後から体を押して,水が顔にばしゃっとかかるようにした。原告Aがこれに怒って水をかけ返したり て手で払い飛ばすなどして水をかけた。水を飲もう,遊ぼうと言って連れ出して水を飲みに行くが,原告Aが飲むと後から体を押して,水が顔にばしゃっとかかるようにした。原告Aがこれに怒って水をかけ返したりすると,何人もで水かけや石投げをした。冬にもした。水かけは1日当たり,10分休憩が4回,昼休憩が1回,放課後1回の計6回はあった。 (エ)蹴る行為被告D,被告J及び被告Gは,原告Aに対し,平成13年5月下旬ころから平成14年6月ころにかけて,原告Aが登校した日はほぼ毎日,一方的に腰部や臀部付近を蹴るなどの暴行を加えた。休憩時間になると,被告生徒らは,原告Aを取り囲み,教室の隅や掃除道具入れのある角に- 7 -追い詰め,被告Dが拳法の技を使った攻撃をした。同行為は,廊下や校長室及び職員室の各窓外のテラスでも行われた。当初は,原告Aも怒って蹴り返したりしたが,倍になって蹴り返されたので,反撃するのを止め,言葉での抵抗だけをするようにした。しかし,被告Dは,原告Aが「やめえや,ええかげんにせえや。」などと言っても,いっこうに止めようとせず,笑って蹴ってきた。その余の被告生徒らも,そのような被告Dに同調し,時々,嫌がる原告Aを蹴るなどした。 (オ)言葉の暴力被告生徒らは,日常的に,原告Aに対し,「きちがい」,「障害者」などと言い,また,原告Aが小銭やカードを拾うことから,「貧乏児」,「浮浪児」などと言った。 ウ万引きに端を発した恐喝等被告Dは,原告Aに対し,平成14年5月ころ,「友人が万引きをした。 お前は運動神経が悪いし,とろいので万引きしても捕まってしまうだろう。」,「自分も万引きするから,一緒にしよう。」などと言って,ゲームソフトを万引きするよう唆した。原告Aは,被告Dの誘いを断れば今後ひどい暴行を受けるのではないかという恐れと被告 まってしまうだろう。」,「自分も万引きするから,一緒にしよう。」などと言って,ゲームソフトを万引きするよう唆した。原告Aは,被告Dの誘いを断れば今後ひどい暴行を受けるのではないかという恐れと被告Dに度胸のあるところを見せようという気持ちから,下校途中に,被告Dとともに,a中の近くにあるゲームソフト販売店Sに入り,同店において,ゲームソフト「ジェットでGo2」1本を盗んだ。 さらに,数日後,原告Aは,被告Dから「一緒に万引きしよう。」と言われ,再びSにおいてゲームソフト「ザ・警察官」1本を万引きした。 被告Dは,原告Aに対し,平成14年5月13日,「Sにお前が万引きしたことをばらしてやったぞ。」,「お前の代わりにSにソフト代を払った。2本分合わせて1万4280円を払え。利息も付くぞ。」などと言って,ゲームソフト代金を支払うよう,執拗に求めた。原告Aがこれを拒む- 8 -と,被告生徒らは,原告Aを取り囲むようにして金を支払うよう迫ったり,原告Aの首を絞めたりした。 また,被告生徒らは,同日以降,昼休みや放課後に,3年4組の教室の黒板や図書室のホワイトボードに,原告Aの目の前で,「万引き少年A」,「きちがい」などと書き,原告Aがそれらの文字を消すそばから繰り返し書き,原告Aが動揺する姿を見て笑い,同年6月に原告Aが不登校になるまで,毎日のようにこのような嫌がらせを繰り返した。また,その後に実施された修学旅行の際,被告Dは,原告Aが泊まっている部屋に内線電話をかけ,原告Aに対し,「長崎県警の者ですが。」などと言って,動揺させた。さらに同年6月ころ,被告D及び被告Gは,下校途中,原告Aに対し,「警察にお前を引き渡すから,一緒に東照宮に行こう。」などと言って,原告Aを広島東照宮に連れて行き,同所において,被告Dが,「俺のマンションに警察が来 ,被告D及び被告Gは,下校途中,原告Aに対し,「警察にお前を引き渡すから,一緒に東照宮に行こう。」などと言って,原告Aを広島東照宮に連れて行き,同所において,被告Dが,「俺のマンションに警察が来ている。」などと言い,さらに原告Aをマンションの近くに連れて行き,マンションの窓を指して「あの,カーテンの部屋だ。 あそこから警察が見ている。」などと言い,原告Aを動揺させた。 エ教科書や文房具を隠匿する行為被告Dは,平成14年5月ころから,毎日のように,休み時間に原告Aの教室に来て,原告Aの教科書や文房具を隠した。そのために,原告Aは,教科書がないまま授業を受けたり,本来鉛筆等で記入しなければならない答案を,ボールペンで記入せざるを得なかった。 オ不登校をからかう行為原告Aは,被告生徒らのいじめ行為により,次第に登校するのが苦痛になり,平成13年秋ころから遅刻の回数が多くなり,3年生になってからは特に遅刻が増え,学校を休みがちになった。 被告生徒らは,平成14年5月から6月ころ,そのような原告Aに対し,休み時間に図書室で,不登校に関する本を見せ,「お前じゃないんか。」- 9 -などと言い,原告Aの不登校をからかった。 カ不登校後の行為(ア)訪問行為原告Aは,被告生徒らから継続的な暴行及び恐喝行為を受けた結果,平成14年6月17日から学校に登校できなくなった。被告Jを除く被告生徒らは,同月25日,原告宅を訪れ,「お前が来ないと俺らが学校で疑われる。学校に出てこい。」などと言った。 原告Aは,被告生徒らのいじめ行為により精神的ストレスが極限状態となって統合失調症を発症し,不登校になったのである。いじめ行為を行った被告生徒らがそのような状態にある原告Aの自宅を訪問することは,原告Aに対し,自宅にいてもいじめられるとの恐怖感を与えるもの となって統合失調症を発症し,不登校になったのである。いじめ行為を行った被告生徒らがそのような状態にある原告Aの自宅を訪問することは,原告Aに対し,自宅にいてもいじめられるとの恐怖感を与えるものであり,原告Aの不登校の原因となった統合失調症を悪化させる行為であることは明白であるから,上記行為は不法行為に当たる。 (イ)その他の嫌がらせ行為被告Jは,高校受験が終わった後である平成15年3月以降,原告Aの自宅を度々訪れるようになり,その際,原告Aに対し,「万引き少年と言ってやろうか。」などと言った。 また,被告Jと被告Gは,平成15年5月31日,大雨の中を一緒に図書館から帰る際,傘を持たない原告Aをそのまま歩かせ,被告Jは,ずぶ濡れになっている原告Aに対し,「雨の味はどうだ。」などと言った。 さらに,被告Jは,平成15年6月6日,福屋広島駅前店の屋上において,原告Aの靴を片方取り上げ,屋内に入る扉を閉めて閉じこめた。 被告生徒らが,原告Aが不登校になってからも,原告Aに対して,上記のようなさらなるいじめ行為を行うことは,原告Aの統合失調症を悪化させるものであり,不法行為に当たる。 - 10 -キ以上の被告生徒らの原告Aに対する行為は,友人同士のふざけ合いという限度を優に超えているものであり,いじめ行為として不法行為に当たる。 (2) 被告Dの主張ア被告Dが,原告Aの首を絞めたとの原告らの主張については,羽交い締めのような行為をしたという限度で認める。しかし,仲良しグループの中でふざけて行っていたものであり,原告Aは本気で嫌がって抵抗している様子ではなかった。その強さも,傍を通った教諭が軽く注意して通り過ぎていることからすれば,教諭が心配するような程度の強さではなかった。 イ小石を投げ付け,逃げる様子を「きちがい踊り」と言ったこと, 様子ではなかった。その強さも,傍を通った教諭が軽く注意して通り過ぎていることからすれば,教諭が心配するような程度の強さではなかった。 イ小石を投げ付け,逃げる様子を「きちがい踊り」と言ったこと,水をかけたこと,臀部付近を蹴ったこと,教科書や文房具を隠匿したことについては,これらの行為があったこと自体は認める。しかし,原告Aを一方的に攻撃していたのではなく,原告Aと被告生徒らがふざけ合って相互にこれらの行為を行っていたのであり,中学生の男子で友人関係にあれば,これらの行為は誰でも大なり小なりしていることである。「きちがい踊り」と言ったという原告らの主張も,原告Aが障害者の真似をして被告生徒らを笑わせることがよくあり,被告生徒らは,原告Aのこのようなしぐさを「きちがい踊り」と言って面白がっていただけである。 したがって,これらの行為は,いじめ行為とはいえず,不法行為には当たらない。 ウ被告Dが,原告Aに万引きを唆したこと,万引きの現場にいたとの主張は否認する。被告Dは,原告Aから「Sでゲームソフトを盗めるんでは。」と突然言われ,冗談で言っているのだろうと思い,「そうかもしれんね。」等と受け流したところ,後日,原告Aから,ゲームソフトを盗んだと知らされたのである。また,原告Aが2回目の万引きをしたときは,下校途中に一緒にSに入店したが,原告Aが一人で先に店を抜け出したため,追いかけたところ,原告Aから,またゲームソフトを盗んだと聞かさ- 11 -れたのである。 ゲームソフト代金を恐喝したとの点は,否認する。被告Dは,原告Aが盗んだ「ジェットでGo2」を借りて遊んでいたが,盗んだ物であることに気がとがめ,原告Aに無断でSに行き,友人が盗んだと言って,上記ソフト1本分の代金を支払った。したがって,被告Dが原告Aにゲームソフトの代金を請 でGo2」を借りて遊んでいたが,盗んだ物であることに気がとがめ,原告Aに無断でSに行き,友人が盗んだと言って,上記ソフト1本分の代金を支払った。したがって,被告Dが原告Aにゲームソフトの代金を請求したことには正当な理由があるし(ただし1本分しか請求していない。),威圧的に請求した事実はない。原告Aも,万引き行為を深刻に受け止めている様子はなかった。 被告生徒らが,原告Aの目の前で,教室の黒板や図書室のホワイトボードに「万引き少年」と書いたことについては,その行為をしたこと自体は認める。しかし,あくまでもふざけ合いという雰囲気で行われたものであり,原告Aも笑いながら「やめーやー。」,「ばれるだろうがー。」などと言いながら黒板の文字を消していたのであり,原告Aがそれを嫌がっていることは全くなかった。 エ不登校をからかう行為被告Dが原告Aの不登校をからかう行為をしたとの事実は否認する。 オ不登校後の事情について被告生徒らは,原告A宅を訪問した際に原告ら主張の発言をした事実はない。被告生徒らは,急に学校に来なくなった原告Aを心配して自宅を訪問したのであって,自分たちが不登校の原因だとは全く思っていなかった。 原告Aが被告生徒らの訪問を嫌がる素振りを見せたこともなかった。原告Aは,被告生徒らが企画した,平成14年の夏の花火大会や平成15年1月及び3月のサイクリングにも参加し楽しそうにしていた。 (3) 被告Jの主張ア被告Jが,Rとともに原告Aの文房具を故意に損壊したとの主張については,否認する。たしかに,被告Jは,原告Aと席が近かったため,ホー- 12 -ムルームの時間や授業中に,シャープペンシルや消しゴムを取り合ったり,消しゴムを小さく切って投げるなどしてふざけたり,その取り合いの最中にその文房具が壊れてしまうことがあった。しかし, - 12 -ムルームの時間や授業中に,シャープペンシルや消しゴムを取り合ったり,消しゴムを小さく切って投げるなどしてふざけたり,その取り合いの最中にその文房具が壊れてしまうことがあった。しかし,原告Aが被告Jの文房具を取り上げることもあったし,原告Aに対して一方的にいじめ行為をしているというようなものではなかった。 また,被告J及びRが,原告Aのシャープペンシルを取ったときに,取り返そうとする原告Aとの取り合いの最中で,シャープペンシルの先が原告Aの手に刺さり,怪我をさせてしまったことはあったが,偶然に刺さってしまったのであり,故意に刺したのではない。 イ原告Aの首を絞めたこと,臀部付近を蹴ったことについては,そのような行為をしたこと自体は認める。 しかし,被告生徒らと原告Aは,お互いにふざけてこづき合ったりプロレスを真似るような感じで遊んでいたのであり,原告Aのみを対象にして攻撃をしていたわけではない。遊びとしてお互いにふざけてやっていたこれらの動作を,原告Aに対する行為だけ取り出していじめ行為と評価するのは妥当ではない。 また,仮に上記行為のうち行き過ぎるところがあったとしても,被告Jは,原告Aとは話の合う仲の良い友達であり,休み時間中に原告Aと話をするだけで過ごしていたことも多かったし,中学3年生になってからはクラスも異なり,受験勉強もあって,あまり一緒に過ごす時間はなくなっていたから,平成13年5月ころから平成14年6月ころにかけてほぼ毎日,上記行為を行っていたということはない。 ウ原告Aに対して小石を投げ付けたこと,水をかけたことについても,そのような行為をしたこと自体は認めるが,お互いに投げ合ったり,かけ合ったりしたのであり,被告生徒らが原告Aに対して一方的に行ったのではない。 - 13 -エ被告Jが原告Aに対し とについても,そのような行為をしたこと自体は認めるが,お互いに投げ合ったり,かけ合ったりしたのであり,被告生徒らが原告Aに対して一方的に行ったのではない。 - 13 -エ被告Jが原告Aに対して「きちがい」,「障害者」と言ったことについては,否認する。また,仮にそのような事実が認められるとしても,原告・被告生徒らに限らず,同級生が互いに「きちがい」,「障害者」などと悪い言葉を言い合う状況はあったのであり,それも相手を傷つけるつもりで言うのではなく,廊下などでふざけ合ったりしているときに,冗談でお互いに言い合っているという程度のものであるから,これをいじめということはできない。 オ原告Aの目の前で教室の黒板や図書室のホワイトボードに「万引き少年」などと書いたことについては認める。しかし,あくまでからかっただけであり,責め立てたり,恐喝まがいの言動をしたことはない。また,当時,原告Aは,被告Jに対し,万引きを予告するようなことを言ったり,「これが万引きしたゲームだ。」等と自慢するように言っていた。したがって,原告Aが,万引きをしたことや被告生徒らからそのことを指摘されたことによって精神的に追いつめられていたとは到底考えられない。 カ被告Jが原告Aに不登校の本を見せたことは否認する。 キ高校受験が終了した平成15年3月以降,度々原告Aを訪問したこと,原告A宅の前で「万引き少年と言ってやろうか。」と言ったことは認めるが,原告ら主張のような嫌がらせ行為はしていない。雨の中を図書館から帰る際,原告Aに対し「雨の味はどうだ。」と言ったのは,傘に入るよう何度も促したにもかかわらず,原告Aがこれを拒んだためである。 同年6月6日ころ,福屋駅前店の屋上において,原告Aの靴を片方取って逃げ,屋内に通じるドアを閉めて扉を手で押さえたことは認めるが,鍵 よう何度も促したにもかかわらず,原告Aがこれを拒んだためである。 同年6月6日ころ,福屋駅前店の屋上において,原告Aの靴を片方取って逃げ,屋内に通じるドアを閉めて扉を手で押さえたことは認めるが,鍵をかけたり長時間閉じこめることはしていないし,単にふざけただけである。 (4) 被告Gの主張ア暴行等について- 14 -(ア)被告Gが原告Aに首絞め行為を行ったことはない。被告Dが原告Aの首を絞めて遊んでいるとき,原告Aの脇の下に両手を入れ羽交い締めにしたことはあるが,これは仲の良い男子生徒のふざけ行為の類であり,いじめ行為ではない。原告Aも言葉では「やめーやー。」などと言っていたが,本気で被告生徒らの行為を嫌がっている様子ではなかった。 (イ)小石を投げて遊んだり,水をかけて遊んだりしていたことは認めるが,常に原告Aを標的にしていたのではなく,原告Aを含めた他の被告生徒らが,被告Gに対し,小石を投げたり,水をかけたりしていたこともある。すなわち,これらは仲良しグループの一つの遊びの類型であり,嫌がることを執拗に繰り返すといういじめ行為とは全く異なるものであった。 (ウ)被告Gが原告Aの腰部や臀部を蹴ったことはない。 (エ)被告Gが原告Aに対し「きちがい」,「障害者」等の発言をしたことは否認する。 (オ)被告Gが教室の黒板や図書室のホワイトボードに原告Aの目の前で「万引き少年A」と書いたことは認める。しかし,被告Gの上記行為は,いつも仲良しグループ内でのふざけの一種として行っているにすぎず,原告Aもこれを嫌がっている様子はなかったのであるから,いじめ行為には当たらない。 (5) 被告Mの主張ア暴行等について被告Mが原告Aに対し,原告ら主張の暴行等をした事実はない。原告Aに小石を投げたり水をかけたりしたことはなく,その現場 あるから,いじめ行為には当たらない。 (5) 被告Mの主張ア暴行等について被告Mが原告Aに対し,原告ら主張の暴行等をした事実はない。原告Aに小石を投げたり水をかけたりしたことはなく,その現場を見たこともない。 原告らは,「昼休憩に被告Dと被告Mが,原告Aを連れ出しに来て首を絞めた。」旨主張するが,被告Mは,被告Dが原告Aの教室に行くのに数- 15 -回ついて行ったことがあるだけであり,自らは原告Aの首を絞めたりしていない。 被告D及び被告Jが,黒板等に「万引き少年A」等と書くのを見たことはあるが,被告M自身がこのような行為をした事実はない。不登校の本を見せる嫌がらせもしていない。 イ被告Mは,原告Aとは一度も同じクラスになったことがなく,平成14年4月に被告Dと同じクラスになったのをきっかけに原告Aとも知り合ったが,特に親しい間柄ではなかった。したがって,同月以前の事実は知らないし,原告Aが不登校になってからの事情も全く知らない。 争点(2)(被告保護者らの監督義務違反の成否)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張被告保護者らは,親権者として,子供の生活関係全般にわたって指導監督し,社会生活を営んでいく上の基本的規範の一つとして,他人の生命,身体に対し不法な侵害を加えることのないよう,子に対し,常日頃からこれに関する社会規範を理解させ,身に付けさせる教育を行い,その人格の成熟を図るべき義務を負うところ,被告保護者らは,以下のとおり,そのような義務を怠り,その結果,被告生徒らが,原告Aに対する暴行や恐喝行為に及んだものであり,独自に不法行為責任(709条)を負う。 ア被告D両親の責任被告Dは,中学1年生のころから粗暴な言動が多く,被告D両親は,中学1年時の担任であったT教員から,被告Dのいじめ行為(暴力を含む。)に 独自に不法行為責任(709条)を負う。 ア被告D両親の責任被告Dは,中学1年生のころから粗暴な言動が多く,被告D両親は,中学1年時の担任であったT教員から,被告Dのいじめ行為(暴力を含む。)について何度も注意を受けていたのであるから,被告Dの行状について実態を把握し,弱者に対するいじめや暴力行為等に及ぶことを十分に予見し得た。ところが,被告D両親は,被告Dに対して,いじめ行為が人間として許されない行為であることを認識させる正しい教育を怠ったばかりか,むしろ暴力を容認するような教育をしたのである。そして,その結- 16 -果,被告Dは,弱者をいじめる傾向を強め,原告Aに対するいじめ行為を行った。 イ被告J両親の責任被告J両親は,平成13年5月ころ,担任であったP教諭から,被告Jが原告Aの手にシャープペンシルの芯を刺して怪我をさせたことについて注意を受けていたのであるから,被告Jが原告Aに対しいじめ行為を行っていることを認識していた。ところが,被告J両親は,被告Jに対し,いじめ行為が人間として絶対に許されない行為であることを認識させる正しい教育を怠った。そのため,被告Jは,原告Aに対し本件各不法行為を行った。 また,被告Lは,平成15年2月19日に,原告Cから原告Aが精神病である旨を知らされていたが,被告Jに対し,正しい教育をしなかったため,被告Jは,原告Aに対し,原告Aの療養中も靴を取って屋上に閉じ込める等のいじめ行為を続け,原告Aの環境的ストレスを増大させた。 ウ被告G両親の責任被告G両親は,被告Gに対し,いじめ行為を防止する適切な教育をしなかった。被告Gは,本人尋問において,「言葉でひどいことを言っても,それはいじめではない。」,「被告生徒らの行為は単なる遊びの延長であって,いじめではない。」との認識であることを供述し な教育をしなかった。被告Gは,本人尋問において,「言葉でひどいことを言っても,それはいじめではない。」,「被告生徒らの行為は単なる遊びの延長であって,いじめではない。」との認識であることを供述しており,いじめに対する正しい認識が欠けている。この点からすれば,被告G両親の親としての監督義務違反があったことは明らかである。 エ被告Nの責任被告Mは,その本人尋問において,「被告生徒らの行為は単なる遊びの延長であって,いじめではない。」との認識であることを供述しており,いじめに対する正しい認識が欠けていた。この点からすれば,被告Nが,被告Mに対し,いじめ行為を防止する適切な教育をしなかったことは明ら- 17 -かであり,この点で親としての監督義務違反があった。 (2) 被告保護者らの主張ア被告D両親の主張被告D両親が,被告Dの言動について,担任教師から注意を受けていたという事実はない。 イ被告J両親の主張平成13年5月ころ,原告Aがシャープペンシルで怪我をした後,P教諭から被告J両親に電話があったことは認める。しかし,電話の内容は,被告Jに対し授業中にふざけることや鋭利なものでふざけることはやめるように注意して欲しいというものであり,原告Aの怪我の詳しい説明はされていないし,原告Aに対するいじめ行為があったとの注意も受けていない。 平成15年2月19日ころ,原告Cから被告J両親に電話があったことは認める。しかし,電話の内容は,訴外U,訴外Vを訴えることになりそうなので,被告Jに分かることがあれば証言して欲しいということが主題であり,原告Aの精神状態については「不安定」であるということを聞いたにすぎない。 ウ被告G両親及び被告Nの主張原告らの主張は,いずれも争う。 争点(3)(教諭等の違法行為の成否)に関する当事者の主張 告Aの精神状態については「不安定」であるということを聞いたにすぎない。 ウ被告G両親及び被告Nの主張原告らの主張は,いずれも争う。 争点(3)(教諭等の違法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張P教諭らa中の教員は,学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全の確保に配慮すべき義務を負い,特に,生徒の生命,身体,精神,財産等に大きな悪影響ないし危害が及ぶおそれがあるようなときには,そのような悪影響ないし危害の現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講じる義務を負っているというべきであり,- 18 -このような義務に違反した行為は,国家賠償法1条1項にいう違法行為に当たり,被告市は同法1条1項に基づき,被告県はP教諭らa中の教員の給与を負担するものとして同法3条1項に基づき,被害者に対し,損害賠償責任を負うというべきである。 本件では以下のような違法行為があったといえる。 アP教諭の違法行為(ア)上記3(1)アのとおり,被告J及びRは,平成13年5月ころから,原告Aに対し,文房具を損壊したり,手にシャープペンシルの芯を刺したりするいじめ行為をした。そして,P教諭は,原告Cからの訴えを受け,上記いじめの事実を把握していたのであるから,上記のころ,原告Aがいじめ行為の対象になっていることを認識し,又は認識し得たといえる。 したがって,P教諭は,上記の際,被告J及びRに対し,いじめは絶対に許されない行為であることを教示してこれを十分認識させ,その保護者の協力も得て指導すべきであった。また,P教諭は,原告Aが上記事件を訴えたことで,さらなるいじめの対象となったり,教師の気付かない所で陰湿ないじめが続く可能性を念頭に置き,原告Aらが卒業するまで,継続してこの点について十分な た。また,P教諭は,原告Aが上記事件を訴えたことで,さらなるいじめの対象となったり,教師の気付かない所で陰湿ないじめが続く可能性を念頭に置き,原告Aらが卒業するまで,継続してこの点について十分な注意を払い,折に触れて指導し,その指導を行う前提として,クラスメイトから聞取り調査を実施するなどして,いじめ行為の現状を十分に把握すべきであったといえる。 ところが,P教諭は,文房具を壊したり手にシャープペンシルの芯を刺したりした行為が明らかにいじめ行為であるにもかかわらず,そのような認識を全く抱くことなく,関係する生徒に対する指導,監督を怠り,その経過や原因に関する十分な調査をせず,そのためその後の継続的な指導監督をも怠ったのである。その結果,被告Dを中心とする被告生徒らによる原告Aに対するいじめ行為がエスカレートした。 - 19 -(イ)被告生徒らは,平成13年5月下旬ころから,教室,廊下,職員室若しくは校長室脇のテラス等の教師らから容易に目につく場所において,原告Aに対し,暴行を加える等のいじめ行為をしていた。また,3年生になってからは,被告Dが,毎日のように文房具や教科書を隠す嫌がらせ行為をし,原告Aは教科書がないまま授業を受けていたこともあった。 さらに,平成13年秋ころから,原告Aの遅刻が多くなり,平成14年5月実施の家庭訪問では,原告Bから,「原告Aの遅刻が多く,朝起きられない。学校で何か原因があれば教えてほしい。」旨依頼されていた。 上記の事実からすれば,P教諭は,上記各時期において,被告生徒らの暴行をいじめ行為と正しく認識し,被告生徒らから事情聴取をしたり,また,職員会議等に問題提起をして全校を挙げて原告Aに対するいじめに取り組むことを提案すべきであった。また,P教諭は,原告B,原告C及び被告保護者らに対し,学校での原告A 徒らから事情聴取をしたり,また,職員会議等に問題提起をして全校を挙げて原告Aに対するいじめに取り組むことを提案すべきであった。また,P教諭は,原告B,原告C及び被告保護者らに対し,学校での原告Aや被告生徒らの状況を報告し,その動静に注意を払うべきであった。 ところが,P教諭は,被告生徒らの暴行を単なる遊びやふざけ行為と捉え,被告Dの嫌がらせ行為を放置し,原告Aの学校での様子にも注意を払わなかったのであり,その結果,被告生徒らの原告Aに対するいじめ行為は,その後も継続して行われたのである。 (ウ)P教諭は,原告Aの欠席が継続して7日間となった平成14年6月25日ころには,原告Cから,原告Aが,「制服を着たら吐き気がする。」,「学校に行こうとすると腹痛がする。」,「朝,起きることができない。」などの事情で登校しないことを聞かされていた。したがって,P教諭は,原告Aの不登校の原因が学校にあるのではないかとの観点に立ってクラスメイトに対する聞き取り調査を実施すべきであったし,これを実施していたならば被告生徒らのいじめ行為の存在を確認し,これに対する適切な措置を講じることができたはずである。 - 20 -ところが,P教諭は,原告Aの不登校の原因が学校にあるのではないかとの認識を全く抱くことなく,そのためもちろんクラスメイトに対する聞き取り調査も実施しなかったのであり,このことは,原告Aの症状が早期に回復し,あるいは,統合失調症が寛解し不登校期間が相当程度短縮する機会を失わせる原因となった。 イQ教諭の違法行為Q教諭は,図書室の管理責任者であり,昼休みには図書室において,本の管理や生徒の監視を行っていたところ,平成14年5月ころ,被告生徒らが原告Aに不登校の本を見せ,原告Aがこの本を叩き落とした場面を目撃していた。 また,Q教諭は,被告 昼休みには図書室において,本の管理や生徒の監視を行っていたところ,平成14年5月ころ,被告生徒らが原告Aに不登校の本を見せ,原告Aがこの本を叩き落とした場面を目撃していた。 また,Q教諭は,被告生徒らが,平成14年5月ころから同年6月ころにかけて,図書室のホワイトボードに「万引き少年A」等と書く嫌がらせ行為を繰り返しているのを現認していたはずであり,現認してはいなかったとしても,これを容易に認識し得たはずである。 上記事実からすれば,Q教諭は,被告生徒らの行動に注意を払い,原告Aに対する上記嫌がらせ行為を制止し,以降もこれを防止する措置を講じるべきであった。 ところが,Q教諭は,上記義務を怠り,漫然と被告生徒らの行為を放置した。 ウ校長の違法行為校長は,学校の管理者として,強い指導性を発揮し,いじめが絶対に許されないことを生徒一人一人に周知徹底させる必要があることを十分理解し,教職員とこの点についての共通認識を得るための協議を行い,遅くとも原告Aが不登校となり,これを教育委員会に報告すべき時期になったころには,下記の措置を講じるべきであった。そして,これが実行されていたならば,被告生徒らの原告Aに対するいじめがより早期に明らかとなり,- 21 -原告Aの不登校が長期にわたることなく終了した可能性が高い。 (ア)休み時間の学校内の見回りを強化する。 (イ)被害生徒と加害生徒との関係修復に配慮しつつ,事情聴取を行う。 (ウ)他の生徒から事情聴取する。これにより,首絞め行為が継続的に行われていたことを把握し,これを前提に加害生徒に対し,いじめが時として重大な結果を招来するおそれがあることを認識させ,厳重に注意する。 (エ)学年集会,学級活動を通じて,全校生徒に周知徹底し,いじめを現認したり聞き知った生徒が教師にこれを報告し易くなる めが時として重大な結果を招来するおそれがあることを認識させ,厳重に注意する。 (エ)学年集会,学級活動を通じて,全校生徒に周知徹底し,いじめを現認したり聞き知った生徒が教師にこれを報告し易くなるような環境作りに努める。 (オ)双方の保護者に,いじめの状況や学校としての対応を連絡する。 (カ)指導効果を確認し,いじめが未だ継続している場合には,加害生徒の保護者と面談し,家庭内での指導を依頼する。 (キ)被害生徒の保護者に生徒からの事情聴取を依頼し,事実関係の把握に努める。 エ教育委員会職員の違法行為(ア)広島市教育委員会(以下「教育委員会」という。)事務局青少年育成部のW課長及び同部のX指導主事は,平成15年3月14日,原告B及び原告Cに対し,電話で,同月17日に予定されていた訴外V及びUの謝罪の会を延期することを求めた。このため,原告らは,上記2名の生徒と直接会って話す機会を失い,その機会があったならば,同人らから,被告生徒らのいじめ行為があったことを聞くことができたはずであるのに,それもできなくなった。 (イ)平成15年6月17日,体育の時間におけるいじめについての報告会が開催された。当時,W課長らは,元生徒会長のYから,原告Aが被告Dからいじめ行為を受けていたことを聞いて,これを知っていた。それにもかかわらず,W課長らは,詳細な調査をしなかったばかりか,「他- 22 -の生徒からの事情聴取をしようとしたが,これを拒否された。」旨報告した後,「V君,U君が謝罪の手紙を書いたのだから,もう直接会わなくても良いのではないか。」などと言って,真相解明を終了させようとした。同月19日になり,X指導主事が電話で,原告B及び原告Cに対し,「実は被告Dが原因であるとYが教えてくれた。」と伝えたことから,上記謝罪の会は取り止めとな どと言って,真相解明を終了させようとした。同月19日になり,X指導主事が電話で,原告B及び原告Cに対し,「実は被告Dが原因であるとYが教えてくれた。」と伝えたことから,上記謝罪の会は取り止めとなったのである。 (ウ)上記の教育委員会職員の行為は,結局,被告生徒らのいじめ行為の真相究明を遅らせ,原告らの精神的苦痛を長く継続させたばかりか,原告CがV及びUに謝罪しなければならない事態まで招来させ,多大な精神的苦痛を与えたのであり,これらの行為もまた国家賠償法上の違法行為に当たる。 (2) 被告市及び被告県の主張ア被告生徒らの行為について原告らの主張は,いずれも争う。 原告らがいじめ行為と主張する被告生徒らの行為は,いずれも友人間における遊びやふざけの延長にすぎず,不法行為には当たらない。 イP教諭の違法行為について(ア)戯れに文房具を取り上げたりすることは子供同士の間ではよくあることであるし,原告Aの手にシャープペンシルの芯が刺さったのも偶然であり,被告J及びRが故意にしたことではない。したがって,原告Aに対するいじめ行為はそもそも存在しなかった。 P教諭は,原告A,被告J及びRは同じ班で仲が良いと思っていた。 また,他の生徒から原告Aがいじめられているとの申立てもなかったのであるから,いじめとして認識し得なかった。 なお,P教諭は,シャープペンシルの芯が刺さった事件の後,被告J両親に対し,家庭で指導するよう連絡しており,適切な措置をとってい- 23 -る。 (イ)P教諭は,被告生徒らが石投げをしているところを目撃したことはなく,他の教師も見ていない。 水をかけあって遊ぶことは,被告生徒らだけでなく他の男子生徒も行っていた。P教諭ら教師は,少し行き過ぎであると感じたときは注意していた。首絞めについてもP教諭は目撃していない。Z 教師も見ていない。 水をかけあって遊ぶことは,被告生徒らだけでなく他の男子生徒も行っていた。P教諭ら教師は,少し行き過ぎであると感じたときは注意していた。首絞めについてもP教諭は目撃していない。Z教諭が1度見かけたことがあるが,友人同士でプロレスごっこをしているように見えた。 中学校2年生の男子生徒がプロレスごっこをして遊ぶことはよくあることであり,教師は,怪我をするような危険な行為であると判断したときには注意して止めさせている。Z教諭は,被告Dが原告Aの首に手をかけていたため,度が過ぎないようにという趣旨で「そのぐらいにしておけよ。」と声をかけた。 原告Aの万引き及び被告生徒らによる金銭請求については,学校外で行われたことであり,P教諭らa中の教師は,平成15年6月7日に広島市教育委員会の他の生徒に対する聞き取り調査によって明らかになるまで,上記事実を知らなかったし,また,知り得なかった。 P教諭は,被告Dが文房具等を隠したりしていたことは知らなかったし,他の生徒や原告Aからもそのような事実があるとの申立てはなかった。 (ウ)P教諭は,原告Aが不登校になった当初,原告Cが,登校時に腹痛が起こる等の事実のほかに「母親から離れようとして自立していこうと思っているのかもしれない。」旨述べていたこと,また,上記のとおり,原告Aがいじめを受けていることがうかがわれる事情もなかったことから,原告Aの不登校がいじめに起因するものであるとは考えなかった。 そして,その後も,原告Cから,原告Aが神経科を受診しており,家から出すと危険な状態である旨聞いていたため,原告Aの不登校は病気が- 24 -原因であると認識していた。したがって,他の生徒に対する聞き取り調査を実施する必要性も感じなかった。 (エ)以上のように,P教諭は,原告Aが被告生徒らからい め,原告Aの不登校は病気が- 24 -原因であると認識していた。したがって,他の生徒に対する聞き取り調査を実施する必要性も感じなかった。 (エ)以上のように,P教諭は,原告Aが被告生徒らからいじめられているという認識がなく,また,認識し得なかった。したがって,原告らが,P教諭が上記事実を認識し,又は認識し得たことを前提として主張する,被告生徒らへの指導義務や被告保護者らへの報告義務等を負うとはいえない。 ウQ教諭の違法行為についてa中の図書室は2部屋に仕切られており,図書室管理担当の教師は,図書室の入口側の部屋において,貸出手続きの指導をするとともに,生徒が騒ぐなどした場合には注意をしていた。ホワイトボードは奥の部屋に置かれていたが,Q教諭は,被告生徒らがこれに落書きをしているところを見たことはなく,落書きが残っていたこともなかった。また,入口側の部屋からは,奥の部屋の様子は把握しにくく,被告生徒らがQ教諭の目を盗んで落書きをしていたのであれば,それを発見することは難しい。当時,原告Aと被告生徒らは,週に二,三回程度,一緒に図書室に来ており,Q教諭は,仲良しグループであると思っていたので,原告A及び被告生徒らの行為に特に注意を払う必要性を感じていなかった。したがって,Q教諭は,原告Aに対するいじめ行為を認識しておらず,また,認識し得なかった。 エ校長の違法行為についていずれの主張も争う。 校長が生徒会長のYから被告Dのせいではないかということを聞いたのは平成15年2月ごろのことである。 オ教育委員会職員の違法行為についていずれの主張も争う。 V及びUの謝罪の会を延期したからと言って,なぜそれがために原告ら- 25 -が同人らから被告Dのいじめがあったことを聞くことができなかったというのか全く不可解である。 争点(4 主張も争う。 V及びUの謝罪の会を延期したからと言って,なぜそれがために原告ら- 25 -が同人らから被告Dのいじめがあったことを聞くことができなかったというのか全く不可解である。 争点(4)(被告生徒らのいじめ行為と原告Aの統合失調症との間の相当因果関係の存否)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張被告生徒らのいじめ行為により,原告Aは,平成14年6月17日から不登校となり,同年7月7日ころからは,妄想に悩まされるようになり,同月8日,広島市民病院神経科を受診し,統合失調症の疑いありと診断され,現在も投薬を受けている。 これらのことからすれば,被告生徒らのいじめ行為と原告Aの統合失調症との間には相当因果関係があることは明らかである。 (2) 被告らの主張原告らの主張は争う。仮に,被告生徒らが原告らが主張するようないじめ行為を行った事実があるとしても,同行為と原告Aの統合失調症との間には相当因果関係がない。 争点(5)(原告らの損害)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア原告A(ア)慰謝料1000万円原告Aは,被告生徒らから受けたいじめ行為により,上記のような精神障害を発症し,また,P教諭らa中の教師が被告生徒らの上記いじめ行為に対して適切な処置をとらず事実を隠蔽しようとしたことによっても,精神的苦痛を被った。これらの精神的苦痛を慰謝するための金額は,1000万円を下らない。 (イ)弁護士費用100万円原告Aは,本件訴訟の追行を原告代理人に委任した。その費用のうち- 26 -損害として被告らに負担させるべき金額は,100万円が相当である。 (ウ)損害合計額は,1100万円となる。 イ原告B(ア)治療費17万7665円原告Bは,原告Aが統合失調症を発病した後,同人の治療費として,合計17万7 金額は,100万円が相当である。 (ウ)損害合計額は,1100万円となる。 イ原告B(ア)治療費17万7665円原告Bは,原告Aが統合失調症を発病した後,同人の治療費として,合計17万7665円を支払った。 (イ)慰謝料500万円原告Bは,原告Aが被告生徒らのいじめにより精神障害を発症したこと,及びa中の教師が事実を隠蔽しようとしたことにより,精神的苦痛を被った。これらの精神的苦痛を慰謝するための金額は,500万円を下らない。 (ウ)弁護士費用50万円原告Bは,本件訴訟の追行を原告代理人に委任した。その費用のうち損害として被告らに負担させるべき金額は,50万円が相当である。 (エ)損害合計額は,567万7665円となる。 ウ原告C(ア)逸失利益400万5540円原告Cは,広島市の臨時保育士として1日8時間稼働し,1か月平均18万2070円の収入を得ていたところ,原告Aが精神障害を発症したため,平成14年7月1日から同月12日までの間,4時間しか勤務できず,同月13日以降は稼働できなくなった。したがって,少なくとも平成14年7月1日から平成16年4月30日まで22か月間の賃金相当額である400万5540円が逸失利益としての損害となる。 (イ)慰謝料500万円被告Cは,原告Aが被告生徒らのいじめにより精神障害を発症したこと,及びa中の教師が事実を隠蔽しようとしたことにより,精神的苦痛- 27 -を被った。これらの精神的苦痛を慰謝するための金額は,500万円を下らない。 (ウ)弁護士費用50万円原告Cは,本件訴訟の追行を原告代理人に委任した。その費用のうち損害として被告らに負担させるべき金額は,50万円が相当である。 (エ)損害合計額は,950万5540円となる。 (2) 被告らの主張原告らの主張は 訴訟の追行を原告代理人に委任した。その費用のうち損害として被告らに負担させるべき金額は,50万円が相当である。 (エ)損害合計額は,950万5540円となる。 (2) 被告らの主張原告らの主張は,いずれも争う。 第3当裁判所の判断 上記争いのない事実に証拠(文中に記載)(書証は枝番を含む。)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 1年生ア原告Aは,平成12年4月,a中に入学し,クラス分けにより1年2組となった。担任はT教諭であった。原告Aは,入学してすぐ被告Dから話し掛けられ,これを機に親しくつきあうようになったが,他にも同様の友達が数名いたので,被告Dとだけつきあうという関係ではなかった(甲15,原告A本人,被告D本人)。 また,原告Aは,被告Jとは中学1年では別のクラスだったが,b小学校時代からの友人であった(甲15,乙ハ1,原告A本人,被告J本人)。 イ被告Dには,下記のような問題行動があった。 (ア)同級生の甲に対し,同人の顔がピーナッツに似ているという理由で,同人が嫌がっているにもかかわらず,「ピー」と呼んでいた。被告Dは,平成12年4月初めころ,英語の授業中,アルファベットの発音を練習する際,Pの部分で,ことさらに大きな声で「ピー」と発音し,そのために甲を泣かせてしまい,T教諭から注意を受けた(甲15,原告A本人,被告D本人)。 - 28 -(イ)1学期,乙を蹴るなどして,T教諭に注意された(甲15,37,原告A本人)。 (ウ)同年秋ころ,休み時間中,丙のノートの表紙に「死ね」と書き,T教諭から注意を受けた(甲15,原告A本人,被告D本人)。 (エ)同年秋ころ,合唱祭の練習に使うキーボードの乾電池を抜き取り,これを捨てたことで,T教諭から叱られ,クラスメイト全員の前で謝罪した(甲15 ら注意を受けた(甲15,原告A本人,被告D本人)。 (エ)同年秋ころ,合唱祭の練習に使うキーボードの乾電池を抜き取り,これを捨てたことで,T教諭から叱られ,クラスメイト全員の前で謝罪した(甲15,原告A及び被告D各本人)。 ウT教諭は,これらの事件が起こるたびに,被告D両親に対し,学校に呼び出すなどして事件の状況を説明し,被告D両親からも被告Dに直接注意して欲しい旨話していた(甲15,37,原告A本人)(この点,被告Fは,T教諭から何の注意も受けていない旨供述している。しかし,上記のような事件が起こった場合,その旨を両親に報告するのが自然であること,T教諭が,被告D両親に対し,事件の状況を報告し,注意を促したことを原告両親や教育委員会に述べていること(甲37)からすれば,上記の事実が認定できるので,これとは反対趣旨の被告Fの上記供述は信用できない。)。 (2) 2年生ア原告Aは,平成13年4月,中学2年生になり,クラス分けにより被告Jと同じ2年3組となった。担任はP教諭であった。被告Dと被告Gは2年2組,被告Mは2年4組となった。 被告Mと被告Gは中学1年のころから放送部であり,被告Dは中学2年になってから放送部に入り直したため,被告M,被告G及び被告Dは中学2年から同じ放送部であり,放課後などは親しく一緒に行動することが多かった(甲15,原告A本人)。 被告Dは,原告Aと別のクラスになっても,放課後や休憩時間に,原告Aのいる2年3組の教室に頻繁に行っていた(甲15,原告A本人,被告- 29 -D本人)。 イ文房具の損壊(甲15,43,乙ハ1,2,証人P,原告A,被告J及び被告L各本人)被告Jは,平成13年5月ころ,授業中やホームルームの時間中,Rと共に,原告Aの消しゴム,ボールペン,シャープペンシルなどの文房具を奪う行 3,乙ハ1,2,証人P,原告A,被告J及び被告L各本人)被告Jは,平成13年5月ころ,授業中やホームルームの時間中,Rと共に,原告Aの消しゴム,ボールペン,シャープペンシルなどの文房具を奪う行為を繰り返していた。また,被告Jが奪った原告Aの文房具をRに渡して,Rがそれを損壊することもあった。 原告Aは,被告J及びRに対し,上記行為を止めるように言い,さらに,Rの席まで歩いて取り返そうとしたりしていたが,P教諭をはじめ,a中の当時2年生担当の教諭らの多くは,これに気付かず,また,気付いても何の注意もしなかった。 原告Aは,平成13年5月ころ,被告J及びRがまたしても原告Aのシャープペンシルを取ろうとしたので,取らせまいとして妨害しようとしたところ,その拍子にシャープペンシルの芯が原告Aの手のひらに刺さり,芯が折れて,手のひらに芯が残ってしまった。周りの生徒が保健室に行くように勧めたので,原告Aは保健室に行った。 その日の夜,原告Cが原告Aの手のひらにシャープペンシルが刺さった痕に気付いたため,原告Aは,原告Cに対し,被告J及びRの上記文房具損壊行為やシャープペンシルの芯が手のひらに刺さった経緯について話した。原告Cは,翌日,P教諭のもとを訪れ,被告J及びRが壊した文房具を見せながら,被告J及びRの上記行為を伝えた。P教諭は,その日の放課後,原告A,被告J及びRを呼び出し,事情を聴取したところ,被告Jは,最終的に,原告Aの手のひらにシャープペンシルを刺してしまったのは自分であることを認めた。 P教諭は,被告J及びRに対し,今後,授業中にふざけることや鋭利なものでふざけることはやめるように注意するとともに,被告J両親やRの- 30 -両親に対して電話し,両親からも注意をして欲しい旨話した。 ウ首を絞める,蹴る等の暴行(甲15,乙イ1, ことや鋭利なものでふざけることはやめるように注意するとともに,被告J両親やRの- 30 -両親に対して電話し,両親からも注意をして欲しい旨話した。 ウ首を絞める,蹴る等の暴行(甲15,乙イ1,乙ハ1,乙ニ1,乙ホ62,原告A,被告D,被告J及び被告G各本人)被告Dは,平成13年5月ころから,授業の合間の休憩時間中,頻繁に原告Aのいる2年3組の教室を訪ねては,原告Aを連れ出し,同教室前の廊下や職員室の外のテラスで,原告Aの横の方から腕全体を原告Aの首に絡ませて,自分の身体の方へ引っ張って絞めたり,原告Aの臀部を蹴るなどの暴行を行った。被告Dは,首を絞められている原告Aを見て,「こいつ目がいっちゃってる。」などと言っていた。 被告Dは,被告Jや被告Gに対しても同様の首絞め行為をしたことがあるが,その回数は数回程度であり,専ら原告Aに対して行っていた。 被告J及び被告Gは,被告Dが原告Aに対して首絞め行為をしようとする際,原告Aを取り囲んだり羽交い締めにするなどして原告Aが逃げられないようにして,被告Dが首絞め行為を行うのに協力していた。また,被告J及び被告Gも,被告Dと比べれば回数は少ないものの,原告Aに対し,首絞め行為を行っていた。 原告Aは,被告Dの上記暴行に対し,1回だけ抵抗して蹴り返したことがあったが,逆に被告Dに強く蹴り返されたことから,それ以後は,「やめえや。」などと言って拒絶の意思は表明していたものの,激しく抵抗はしなかった。被告Dは,原告Aが「やめえや。」などと言っても,上記暴行をすぐに止めることはなかった。 被告Dらの上記暴行は,中学2年生の間,休憩時間のたびに執拗に行われた。一度,階段の踊り場で,被告Jが,「奇襲攻撃」と言いながら,原告Aの首に飛びかかって,原告Aの首を絞めた際,その場を偶然通りかかったZ教諭が, 行は,中学2年生の間,休憩時間のたびに執拗に行われた。一度,階段の踊り場で,被告Jが,「奇襲攻撃」と言いながら,原告Aの首に飛びかかって,原告Aの首を絞めた際,その場を偶然通りかかったZ教諭が,「あぶないじゃろうが。」と被告Jを注意することがあった。しかし,被告Dらは,上記暴行行為をa中の教師には分からないよう- 31 -に隠れて行っていたということはなく,教師が横を歩いたりしていても構わずに上記暴行を行っていた。 エ小石等を投げ付ける行為(甲15,乙イ1,乙ハ1,乙ニ1,乙ホ62,原告A,被告D,被告J及び被告G各本人)被告D,被告J及び被告Gは,平成13年5月下旬ころから,休憩時間中,頻繁に原告Aのいる2年3組の教室を訪れ,原告Aを外に連れ出し,職員室の外のテラスにおいて,原告Aに対し,約2,3センチメートルの大きさの小石を投げ付ける行為をしていた。原告Aが被告Jや被告Gに対して,小石を投げ付けることもあったが,基本的には,被告D,被告J及び被告Gが一方的に原告Aに石を投げ付けていた。被告D,被告J及び被告Gの同行為は,中学2年生の間,断続的に行われた。 原告Aは,被告Dが原告Aを連れ出そうと2年3組の教室を訪れた際,寝たふりをして連れて行かれないようにしたことがあるが,被告Dに無理矢理起こされて,教室の外に連れて行かれ,同じように小石等を投げ付けられた。 また,被告Jが,原告Aが小石をよける様子を見て,「きちがい踊り」と言ったのをきっかけに,被告D,被告J及び被告Gは,小石をよけようとする原告に対し,「きちがい踊り」と言ってからかっていた。被告Dは,その他にも,事あるごとに原告Aを「障害児」「浮浪児」などと呼んでいた。 オ水をかける行為(甲15,乙イ1,乙ハ1,乙ニ1,乙ホ62,原告A,被告D,被告J及び被告G各本人) っていた。被告Dは,その他にも,事あるごとに原告Aを「障害児」「浮浪児」などと呼んでいた。 オ水をかける行為(甲15,乙イ1,乙ハ1,乙ニ1,乙ホ62,原告A,被告D,被告J及び被告G各本人)被告D,被告J及び被告Gは,平成13年5月下旬ころから,休憩時間中,頻繁に原告Aのいる2年3組の教室を訪れ,原告Aを外に連れ出し,野球部のグラウンドに面したコンクリートの上にある水飲み場や1年生と2年生の校舎の間にある手洗い場などで,原告Aが水を飲もうとしたとき- 32 -に,後ろから原告Aの身体を押す,水を手ですくって原告Aにかける,蛇口を指で押さえて原告Aに向かって水を飛ばすなどの行為を行っていた。 カ原告Aは,中学1年生のときは遅刻が1年間を通じて2回と少なかったが,中学2年生のときは1年間を通じて14回と,遅刻が多くなっていった(甲29,30)。 (3) 3年生ア原告Aは,平成14年4月,中学3年生になり,クラス分けにより被告Gと同じ3年4組になった。担任は,中学2年の時と同様,P教諭であった。被告Jは3年3組,被告Dと被告Mは3年2組になった。 イ教科書や文房具を隠匿する行為(甲15,34,原告A及び被告D各本人)被告Dは,平成14年4月から5月ころ,頻繁に,休憩時間中に原告Aのいる教室を訪ねては,原告Aの教科書や文房具を無断で持ち出し,これを隠匿していた。原告Aは,そのたびに,隠された物を被告Dのいる3年2組の教室にまで行って探さざるを得なかった。休憩時間中に探すことができないときは,教科書や文房具がないまま授業を受けなければならないこともあった。当時の生徒会長であったYは,上記行為を行っていた被告Dに対し,「やめてやれ。」と言ったが,被告Dがこれに従ってやめることはなかった。 ウ不登校をからかう行為(甲15,原告A らないこともあった。当時の生徒会長であったYは,上記行為を行っていた被告Dに対し,「やめてやれ。」と言ったが,被告Dがこれに従ってやめることはなかった。 ウ不登校をからかう行為(甲15,原告A,被告J及び被告G各本人)原告Aは,中学3年生になってから,学校を休んだり,遅刻することが多くなった。 被告D,被告J及び被告Gは,平成14年4月又は5月ころ,原告Aとともに図書室に行ったとき,数回にわたり,原告Aに対し,不登校に関する本を見せ,笑いながら「お前じゃないんか。」と言い,原告Aが不登校になりかかっているのをからかった。 - 33 -原告Aが,怒ってその本を床に叩き落としたところ,それを見ていたQ教諭は,原告Aのみを注意し,被告Dらの言動については注意しなかった。 エ万引きに端を発した恐喝行為等(甲15,17,乙イ1,乙ハ1,原告A,被告D,被告J,被告G及び被告M各本人)被告Dは,平成14年5月ころ,原告Aに対し,ゲーム機を万引きした生徒がいることを伝え,原告Aについて,運動神経が悪いし,とろいので万引きしても捕まってしまうから万引きはできないだろうなどと侮辱し,一方で,万引きを煽るような発言をし,その数日後,「自分も万引きするから,先に『ジェットでGO2』(ソフトのタイトル名)を盗ってきてくれ。」などと言って,万引きを誘った。原告Aは,この誘いに乗り,その日の放課後,被告Dとともにゲーム店(S)に行き,同ゲームソフトを万引きした。次の日,被告Dは,自己のコントローラー持参(原告Aのそれでは遊戯ができなかったため)で原告A宅を訪ね,上記ソフトで遊び,その数日後,同ソフトを,原告Aから借りて,そのまま所持,使用を続けた。 さらに,原告Aは,被告Dに誘われ,ゲームソフト「ザ・警察官」を万引きした。 ところが,被告Dは,平成14年 上記ソフトで遊び,その数日後,同ソフトを,原告Aから借りて,そのまま所持,使用を続けた。 さらに,原告Aは,被告Dに誘われ,ゲームソフト「ザ・警察官」を万引きした。 ところが,被告Dは,平成14年5月13日ころ,原告Aに対し,「Sに行って店員に原告Aが万引きしたことを知らせた。その代金を代わりに払った。」旨伝え,その立替金の支払を求めるようになった。原告Aが支払を拒むと,原告Aに対し首絞め行為をしたり,原告Aの目の前で,教室の黒板や,図書室のホワイトボードに,原告Aが万引き少年である旨を書いた。 被告Jや被告Gも,原告Aから同人が万引きしたことを聞き,被告Dとともに,図書室のホワイトボード等に,原告Aが万引き少年である旨を書いたり,原告Aに対し,「万引き少年」と言ってはやし立てたりした。また,被告Dは,休憩時間のたびに原告Aの教室に行って,万引きのことを- 34 -責め,代金の支払を求めたりし,被告Dが原告Aの首を絞めるなどした。 被告Mは,被告Dと同じクラスとなったことから,被告Dと行動を共にするようになり,平成14年5月から6月17日ころまでの間,被告Dの上記の首絞め行為の際,原告Aを逃がさないようにして羽交い締めにしたりして,これに加勢した。 (上記の点について,被告Dは,「自分は1回目の万引きを事前に知っていたことはないし,その時に店に行ったこともない。原告Aがゲームソフトを盗れるのではないかと言ったのを聞いたことはある。」旨供述し,万引きを誘ったことを否認する供述をしている。しかし,上記の認定にある被告Dの学校での生活ぶりと原告Aのそれに照らすと,原告Aが,自ら進んで万引きを実行することを決意し,実行したとは考え難く,上記認定にあるような被告Dの誘いや煽り行為を受け,原告Aがやや歪んだ対抗心やプライドから,万引きを実行し のそれに照らすと,原告Aが,自ら進んで万引きを実行することを決意し,実行したとは考え難く,上記認定にあるような被告Dの誘いや煽り行為を受け,原告Aがやや歪んだ対抗心やプライドから,万引きを実行したとみるのが自然である。また,被告Mは,検察庁での取調べの際,被告Dが原告Aに万引きするソフトをリクエストしていた旨供述しており,この供述にある被告Dの行動は,被告Dの供述にある同人の行動と整合しない。また,被告Dは,「ジェットでGO2」の代金を支払ったので,その支払を原告Aに求めた旨供述する。しかし,中学生が,友人が万引きしたゲームソフトを使用しているからと言って,万引きした店を訪ね,友人が万引きしたことを告げてその代金を支払うことは,それ自体不自然であり,まして,上記のとおり被告Dが万引きを誘ったのであれば,自らが疑いをかけられるおそれがあるから,なおさら不自然である。以上の点を総合勘案すると,この点に関する被告Dの供述は全体として信用できない。)オ不登校及びその後の状況(甲15,43,原告A本人)(ア)平成14年6月14日(金曜日),原告Aが登校したところ,被告Dは,ゲームソフトの代金を支払うよう要求し,支払わなければ警察に告- 35 -げる,利子がどんどん増えていくなどと言い,原告Aがこれを断ると,原告Aの首を絞めるなどし,被告J,被告G及び被告Mもこれに加勢した。上記の首絞め行為の際,原告Aの眼鏡が歪み,ネジが折れた。原告Aは弁償を求めたが,被告Dは,「そんな安物の眼鏡くらいで。その眼鏡100円か。」などと言った。 (イ)同月17日,原告Aは同日以降,登校しなくなった。 (ウ)同月24日,被告Dは,被告G,被告Mほか1名とともに,原告A宅を訪ね,「お前が来ないと俺らが疑われる。学校に出て来い。」と言い,「俺らのせいじゃ 7日,原告Aは同日以降,登校しなくなった。 (ウ)同月24日,被告Dは,被告G,被告Mほか1名とともに,原告A宅を訪ね,「お前が来ないと俺らが疑われる。学校に出て来い。」と言い,「俺らのせいじゃないよね。」などと言って何度も確認したりした。原告Cが帰宅すると,被告Dは,原告Aが休みすぎだと言うなどして,その場を取り繕い,すぐに帰った。 (エ)同年7月4日,5日,原告Aは,期末テストで登校したが,同5日,被告Mと同室で試験を受け,休憩時間には,被告Dが覗きに来た。原告Aは,まばたきがひどくなったのを感じた。 (オ)同月7日,原告Aは,ショベルカーの男が自分を殺しに来るという妄想を覚えるようになり,家から出られなくなった。原告Cが,同月8日,広島市民病院の医師から浅田病院の医師を紹介され,また薬剤の処方を受け,原告Aはこれを服用した。しかし,同月12日,家の中のそこらじゅうに敵が潜んでいるというような妄想に襲われ,翌13日,そのことを原告Cに話した。そこで,原告Cは,勤務(臨時保育士)を辞めた。 同月16日,浅田病院の受診日であったが,原告Aは,妄想がひどく,病院に行くことを拒否したため,原告Cが病院を訪ね,医師から薬剤の処方を受けた。これの服用により,不眠状態は解消し,妄想も減少した。 (カ)夏休みに入り,被告Dが8月の終わりに花火大会をするので来るようにと誘い,その後原告A宅を訪ねた。原告Aは,被告Dから万引きをしたことを親に言われないかと不安になり,花火大会に参加した。 - 36 -(キ)夏休みが明けて,原告Aは,登校したが,その2日目,被告生徒ら(被告Mを除く。)が揃っているのを見て,現実感を失い,幻を見ているような異常な感覚に襲われ,登校するのを止めた。 それ以降,原告Aは,登校せず家にいて原告Cに自分がいかに虚しいかを 目,被告生徒ら(被告Mを除く。)が揃っているのを見て,現実感を失い,幻を見ているような異常な感覚に襲われ,登校するのを止めた。 それ以降,原告Aは,登校せず家にいて原告Cに自分がいかに虚しいかを語り,これを続けるうち精神科医の診察を受ける気持にもなり,平成14年11月6日,浅田病院を受診した。その後,親にa中の生徒がひどいこと,見て見ぬ振りの教師が多いこと等を話すようにもなったが,被告生徒らのことを話すことはしなかった。 (ク)年が明けて平成15年となり,被告Dが電話でサイクリングに誘ってきた。原告Aは,「行けるかどうか分からん。」などと言って,曖昧な返事をしたところ,被告Dが何度か電話をかけてきたので,万引きのことを親に言われるのを心配し,結局参加することとした。そして,同年2月1日,サイクリングに行ったが,その際,被告Dは,「学校に出て来い。卒業式だけでも出て来い。」,「ゲームソフトの代金はもう払わなくてもいい。」,「俺らはもう高校に行くんで,お前をいじめているような暇はない。」などと言った。原告Aはその後まばたきがひどくなり,しばらく自然な表情ができなくなった。 (ケ)被告Jは,平成15年3月7日,原告A宅を訪ね,「万引き少年と言ってやろうか。」などと言ったりし,その後ほぼ毎日のように同宅を訪ね,テレビゲームをし,同月25日には,被告Gとともに来て,原告Aを外に連れ出し,遠くから小石を投げ付けたりした。 (4) 卒業後ア平成15年4月になっても,被告Jは,原告A宅をたびたび訪ねるようになり,同宅のあるマンションの前で,「Aは万引きをしましたー」などと大声で言って原告Aが嫌がるのを楽しんだりし,同年5月下旬ころには,被告Gと来て,原告Aにボールをぶつけるなどした。このようなことから,- 37 -原告Aは再度不眠状態とな きをしましたー」などと大声で言って原告Aが嫌がるのを楽しんだりし,同年5月下旬ころには,被告Gと来て,原告Aにボールをぶつけるなどした。このようなことから,- 37 -原告Aは再度不眠状態となっていった。 イ平成15年5月31日,原告Aは,原告Cとともに,c区区民文化センターの図書館に行っていたところ,被告Jと被告Gが原告Bから行き先を聞いて訪ねて来て,家でテレビゲームをやろうと誘った。原告Aは,万引きの弱みを握られていることから嫌々ながらこれを承諾し,原告Cと車で帰ったならば馬鹿にされると思い,雨の中を濡れたままで歩いたところ,被告Jが「雨の味はどうだ。」などと言ったので,振り向いて被告Jを蹴った。その後,これを見ていた原告Cから,友達同士とは思えないと言われたものの,原告Aは,被告生徒らいじめについて話すことはできなかった。 ウその後,原告Aは,被告Jが下校する時間帯には家を留守にし,会わないようにしていたが,平成15年6月6日,被告Jが来てデパートに行った。被告Jは,デパートのエスカレーターに乗っている際,「Cに頼るA。」などと繰り返し言った。これに立腹した原告Aが,「エスカレーターから突き落とすぞ。」などと言い返したところ,被告Jは,同デパート屋上で,原告Aの片方の靴を取り,これを手に持って高く上げて逃げ,これを追いかける原告Aを振り切り,屋上から出て入口の扉を閉めて押さえ付け,原告Aが出られないようにした。原告Aが扉を叩いたので,その音を聞きつけた警備員が来て,被告Jも手を離した。その後原告Aは,自転車で自宅に帰った。被告Jもその後を自転車でついてきて,到着後,蛾のとまっている赤レンガの壁に原告Aを押し付けるなどしてげらげら笑い,これに怒った原告Aは「やめいや」などと大声で叫び,被告Jの自転車を蹴るなどした。後日 Jもその後を自転車でついてきて,到着後,蛾のとまっている赤レンガの壁に原告Aを押し付けるなどしてげらげら笑い,これに怒った原告Aは「やめいや」などと大声で叫び,被告Jの自転車を蹴るなどした。後日,原告B及び原告Cは,被告J宅を訪ね,被告J両親に被告Jの嫌がらせを伝え,止めるよう要求した。 (5) 原告Aの受診状況等(甲21の2,甲22の2,甲43,乙イ2ないし8)- 38 -アこばたけ小児科,広島市民病院原告Aは,平成14年6月25日,こばたけ小児科を受診した。診断の結果,心因反応を含め総合的診断が必要ということになり,広島市民病院小児科の丁医師を紹介された。 原告Aは,同月26日,広島市民病院小児科を受診し,丁医師の外来診察日ではなかったため,戊医師の診察を受けた。診断の結果,鬱状態と診断され,EEG(脳波検査),神経画像などの検査の後に,適切な児童精神~心身的ケアを考慮することとなった。 広島市民病院の己医師は,同年7月10日,原告Cに問診を行った。それによれば,原告Aは,同年6月17日から全く学校に行かず,無理に起こそうとすると「ショベルカーの男が殺しに来る。」「自分はロケットの乗務員だ。」などと訳の分からないこと言い,しばらくするとケロッとして「あれはおかしかった。」と言うなどといったことを繰り返し,時に興奮して物を投げたりすることがあるとのことであった。己医師は,上記問診の結果,原告Aを精神病の初期段階であると診断し,浅田病院の受診を勧めた。 イ浅田病院原告Cは,平成14年7月16日,浅田病院を受診し,原告Aの状態について問診を受けた。浅田病院の庚医師は,上記問診の結果,原告Aを統合失調症の疑いがあると診断し,治療を開始した。 原告A本人は,同年11月6日,浅田病院を受診し,統合失調症と確定診断された。しかし,原 て問診を受けた。浅田病院の庚医師は,上記問診の結果,原告Aを統合失調症の疑いがあると診断し,治療を開始した。 原告A本人は,同年11月6日,浅田病院を受診し,統合失調症と確定診断された。しかし,原告B及び原告Cは,同日,上記診断の結果を知らされておらず,その後,同病院での診療を受けていたが,平成15年2月20日,a中に提出するための診断書の作成を受け(乙イ4の46頁),統合失調症であることを知らされた。なお,同診断書には,「対人緊張,迫害不安,易疲労感等を主症状とするもの」と記載されている。 - 39 -ウ広大病院原告B及び原告Cは,庚医師の上記診断に驚き,セカンドオピニオンとしての診断を求め,平成15年2月26日,原告Aを広大病院精神科神経科(担当医は辛医師)に受診させ,同年3月11日にも受診させたものの,その診察態度に不信感を抱き,受診を止めた。同日,原告らは,「調子は悪くなっている。外に出るとしんどいです。顔がひきつるような感じ,こわばるような感じがある。」旨を述べた。 エ木村神経科内科クリニック原告B及び原告Cは,平成15年3月15日,原告Aを木村神経科内科クリニックに受診させた。原告Aは,同年4月23日まで,同クリニックに通院した。 オ袋町クリニック原告Aは,平成15年5月15日,袋町クリニックを受診し,統合失調症との診断を受け,通院精神療法による治療を受けることとなった。原告Aは,同クリニックにおける同月29日の診察において,「中学の時の友人が午後3時から午後6時ころまでの間に来て,引きこもりの漫画を見せて笑ったり,よく腹が立つことを言ってくる。」旨を述べた。また,同月13日の診察において,原告Aは,同年5月29日から6月5日まで不眠が続いた旨を述べている(この間は,被告Jが原告A宅を頻繁に訪ねていた時期であ く腹が立つことを言ってくる。」旨を述べた。また,同月13日の診察において,原告Aは,同年5月29日から6月5日まで不眠が続いた旨を述べている(この間は,被告Jが原告A宅を頻繁に訪ねていた時期である。)。そして,原告Aは,原告Cに対し,同月19日,被告生徒ら(ただし,当時は被告Mを除く4名として)からいじめを受けていた旨初めて話した。 原告Cは,同月26日,一人で袋町クリニックを受診し,袋町クリニックの壬医師に対し,それまで体育でのいじめが原告Aの不登校の原因と思っていたが,実は,被告生徒らからいじめられていたこと,4人の子からほぼ毎日,首を絞められたり,石を投げられたり,水をかけられたり,逃- 40 -げる姿を笑われたりしたことを話した。 原告Aは,同月27日,袋町クリニックを受診し,壬医師に対し,被告生徒らからいじめられていた旨を話して気分が楽になったと話した。 原告Aは,平成16年3月11日の診察において,壬医師に対し,自分をいじめていた子供達が夢に出てくる,卒業アルバムを見ると嫌な気分になってしまい,アルバムを殴ってしまう,いじめた生徒や見て見ぬふりをしていた生徒に対して嫌な気持ちがあると話した。 カ庚医師の意見(ア)統合失調症は,一つの原因に帰すことができず,多様な要因によって発病すると考えられているが,素因や最早期の養育環境が大きく影響する。また,統合失調症は,元々病的素因を持っている者が,思春期の内的,外的な環境の変化が刺激になって発病することが多い。 いじめは,発病一要因として何らかの影響を与えることがあり得るが,元来の素因がなく,いじめのみが原因で統合失調症が発病することは考えにくい。いじめによって一過性の精神病状態(統合失調症様の反応)を来すことがあるが,それもよほど激しいいじめでない限り,発病には患者側の素 因がなく,いじめのみが原因で統合失調症が発病することは考えにくい。いじめによって一過性の精神病状態(統合失調症様の反応)を来すことがあるが,それもよほど激しいいじめでない限り,発病には患者側の素因的過敏性の存在が関与していることが多い。 (イ)原告Aは,乳児期に「神経質な赤ん坊で,ミルクの飲みが細く,ちょっとした物音でよく目を覚まし,よく泣く子であった。」ということであり,これは素因的な心的過敏性を示唆するものである。また,幼稚園でも,皆と遊ぶことを好まず,ひとり遊びを好んだという。中学1年生のころより「他人から暗いと言われてから,表情を作ろうとするようになり,集団の中にいることが苦しくなった。」ということであり,他者との基本的な信頼感の形成が脆弱であることがうかがわれる。 時間的な関係からすると,平成14年5月から6月にかけてのいじめの直後から不登校となっており,かつ,精神病的な症状もその後発来し- 41 -ているので,症状の発現そのものといじめの事実が時間的な関連性,すなわち誘因となったということは言えると考えられる。ただ,上記のとおり,素因的なものがいくつか指摘できるので,原告Aの統合失調症の原因として,いじめを直接かつ主要な原因とすることは無理があるように考えられる。 キ壬医師の意見(ア)現在最も広く認められている脆弱性-ストレスモデルに基づき,説明する。統合失調症は,神経学的基盤に基づく脆弱性をもつ人に発症するとみなされている。発症は,このような脆弱性と環境的ストレス要因との相互作用の産物とみなされている。原告Aの場合,いじめが環境的ストレス要因の一つとなった可能性はあり得る。 (イ)平成14年5月から6月の間のいじめと原告Aの統合失調症との間に因果関係があるかという質問については,その間に直接的な因果関係があ じめが環境的ストレス要因の一つとなった可能性はあり得る。 (イ)平成14年5月から6月の間のいじめと原告Aの統合失調症との間に因果関係があるかという質問については,その間に直接的な因果関係があるとはいえない。この場合,直接の因果関係とは,例えばインフルエンザウイルスとインフルエンザウイルス肺炎との間のような因果関係を指す。上記の環境的ストレス要因のひとつという意味での関係は推定可能である。 (6) 統合失調症に関する一般的な医学的知見(乙ホ74)アストレスモデル統合失調症は,何らかの脳の生理学的・生化学的機能や構造上の異常があり,そのためにストレスとなる出来事に対して十分対応できるだけの脳の強さを備えられなくなって発病すると一般的には考えられている。そして,上記の脳の脆弱性としては,遺伝的なもの,出生前のウイルス感染,早期の頭部外傷,出生時の産科的異常などが想定されている。このような脆弱性を基盤とし,ストレス状況で発病,再発するという考え方を代表するのが統合失調症の脆弱性-ストレスモデルである。統合失調症は脆弱性- 42 -の高い人ではわずかなストレスで発症するが,脆弱性が低い人でも強いストレスにさらされると発症する。生物学的アプローチをとる研究者は,多くの統合失調症患者は脆弱性の高い方に位置すると考えている。また,脆弱性の低い人に見られる症状は,統合失調症の中核群というよりも,反応性の要素の強い,より周辺群に位置すると考える傾向がある。 イ統合失調症発症の原因についての考え方あるいは研究としては,下記のものがある。 (ア)社会原因説統合失調症発症の社会階層を統計的に調査した結果,その患者の出生時から,その家族が貧困層に属するものが多い。この研究者らは,何らかの環境的要因が統合失調症患者の脆弱性を生み出すのではないかと 原因説統合失調症発症の社会階層を統計的に調査した結果,その患者の出生時から,その家族が貧困層に属するものが多い。この研究者らは,何らかの環境的要因が統合失調症患者の脆弱性を生み出すのではないかと考察し,一例として,都市貧困地域の密集地帯においてはウイルス感染が起こりやすいのではないか,妊娠中のウイルス感染により中枢神経に何らかの障害が残り発達過程で機能障害が生じてくるのではないかと考察している。 (イ)ライフイベント研究統合失調症発症が,受験,就職,結婚などのライフイベントをきっかけにしていることが臨床上よく認められる。ある統計では,発症前3か月間で患者の79パーセントが,直前で55パーセントが1件以上のライフイベントを経験していた。内容的には女性で結婚や恋愛に関するものが多かった。ある研究報告では,イベントの程度として,「明瞭に脅威的」,「中等度に脅威的」,「軽度に脅威的」,「脅威的でない」という4段階に分け,比較対照群を設ける手法を用いており,その統計結果では,うつ病は発症の2か月前から急激にライフイベントが増加しているが,統合失調症と躁病では6か月前から持続的にライフイベントが増加し,発症前の急激な増加は見られなかった。 - 43 -(ウ)家族の感情表出研究家族が患者に向ける感情は様々であるが,その中である種の感情が患者の再発を促すことが判明し,治療に応用されている。家族を高EE家族(再発を誘発する感情要素が強い家族)と低EE家族に分類し,治療経過を観察し,経過の悪い高EE家族への介入をして予後の改善に資するという一連の研究がなされている。評価は面接による感情表出によって行い,批判的言辞が6以上出た場合,敵意が一つでもコメントとして出た場合,「情緒的巻き込まれ過ぎ」を,家族の過保護,自己犠牲的な行動,面接中の態度 究がなされている。評価は面接による感情表出によって行い,批判的言辞が6以上出た場合,敵意が一つでもコメントとして出た場合,「情緒的巻き込まれ過ぎ」を,家族の過保護,自己犠牲的な行動,面接中の態度をもとに5段階で評価し,3点以上の場合をいずれも高EE家族とする。しかし,この種の研究は文化的影響を受けやすく,特に「情緒的巻き込まれ過ぎ」を西洋的基準で判断することが妥当なのかとの疑問もある。 争点(1)(被告生徒らの不法行為の成否)について中学生くらいの子供間においてなされる,からかい,言葉によるおどし,嘲笑・悪口,仲間はずれ等の有形力の行使を伴わない行為は,それ自体直ちに不法行為に当たるとはいえず,叩く・殴る・蹴るなどの暴行行為であっても,その態様や程度によっては必ずしも不法行為に当たるとはいえない場合もあり得るが,これらの行為を特定の生徒に対し長期にわたって執拗に繰り返して実行し,被害生徒に肉体的・精神的苦痛を与えた場合には,当該行為は,被害生徒の身体的自由,人格権を不法に侵害するものとして,不法行為に当たる。 そこで,上記の点を本件について以下判断する。 (1) 被告Dについてア暴行行為,小石を投げ付ける行為,水をかける行為(ア)上記1の(2)のウないしオのとおり,被告Dは,被告J,被告G及び被告Mと共に,原告Aに対し,平成13年5月下旬ころから平成14年6- 44 -月までの間,首絞め行為や蹴る行為などの暴行行為,小石を投げ付ける行為及び水をかける行為を行っていたことが認められる(ただし,被告Mについては,平成14年4月から同年6月までの間に限る。)。 被告Dは,上記認定の行為を,その中心となって,複数人で,専ら原告Aに対して一方的に,しかも,平成13年5月下旬ころから原告Aが不登校になる平成14年6月16日までという 年6月までの間に限る。)。 被告Dは,上記認定の行為を,その中心となって,複数人で,専ら原告Aに対して一方的に,しかも,平成13年5月下旬ころから原告Aが不登校になる平成14年6月16日までという長期間にわたり,授業と授業の間の休憩時間において日常的に執拗に実行したのである。また,その行為態様も,首絞め行為については失神などの危険が伴う,小石を投げ付ける行為については失明の危険があるなど,身体への危険性があり得るものであり,原告Aがこれらの行為に対して「やめえや。」などと拒否する意思を表明していたにもかかわらずその訴えを無視して行なわれており,首絞め行為について見れば,被告生徒らは,原告Aが逃げようとしたにもかかわらず,取り囲んだり,羽交い締めにしたりして,逃げられないようにした上で行うなど,被害者である原告Aの意思を完全に無視し,その人格を著しく損なうものであったといえる。 したがって,被告Dの上記行為は不法行為に当たる。 (イ)被告Dの主張について被告Dは,上記行為は,仲良しグループの中でふざけて行っていたものにすぎず,原告Aも本気で嫌がって抵抗していなかったのであるから,不法行為としてのいじめ行為に当たらないと主張し,被告Dもこれに沿う供述をしている。 しかし,上記1の(2)のウで認定したとおり,被告Dの暴行行為に対して原告Aがやり返したのは1回だけであり,そのほかの場合には被告Dが原告Aに対して一方的に首絞め行為等の暴行行為を加えていたこと,休憩時間中に繰り返し実行していること,被告Dが首を絞められている原告Aに対し「こいつ目がいっちゃってるよ。」と言っており,首を絞- 45 -める強さも相当強いものであったことが推認されること(原告Aも同旨の供述をしている。),嫌がる原告Aを取り囲んだり,羽交い締めにしたりして逃げら っちゃってるよ。」と言っており,首を絞- 45 -める強さも相当強いものであったことが推認されること(原告Aも同旨の供述をしている。),嫌がる原告Aを取り囲んだり,羽交い締めにしたりして逃げられないようにした上で,首絞め行為を行うなど複数人によって原告Aの意思を無視して実行したものであることからすれば,上記行為が,ふざけ合いの範囲を超えた不法行為であることは明らかである。 また,上記暴行行為は,その行為態様からして,本気で止めて欲しいと思うのが通常であり,だからこそ,原告Aも本気で「やめえや。」と言っていたと考えるのが自然である。原告Aが強く抵抗しなかったのは,上記認定のとおり,一度抵抗して蹴り返した際,逆に被告Dにやり返されたことがあるために,激しく抵抗しても無駄であると考えたためである。 そもそも,被告生徒らは,原告Aが上記行為を受けてどのように感じるかについて全く念頭にないまま,これを実行していたのであり(このことは被告生徒らの各供述から明らかである。),このことからすれば,「本気で嫌がってはいなかったように見えた。」というのは加害者である被告生徒らの言い訳にすぎず,これをもって被害者である原告Aが本気で嫌がっていなかったなどと認定することは到底できるものではない。 したがって,被告Dの上記主張は採用できない。 イ教科書や文房具を隠匿する行為(ア)上記1の(3)のイで認定のとおり,被告Dは,中学3年生の4月から5月ころ,頻繁に原告Aの教科書や文房具を勝手に持ち出し,隠匿するなどの嫌がらせを行っていたことが認められるところ,原告Aは,被告Dの上記行為によって,教科書や文房具がない状態で授業を受けなければならなかったこともあるなど,学生にとって大きな不利益と精神的苦痛を被ったこと,これらの行為は,一方的に,かつ執拗に行なわ は,被告Dの上記行為によって,教科書や文房具がない状態で授業を受けなければならなかったこともあるなど,学生にとって大きな不利益と精神的苦痛を被ったこと,これらの行為は,一方的に,かつ執拗に行なわれてい- 46 -たことからすれば,上記行為は,上記アの行為と相俟って,ふざけ合いの範囲を超えた不法行為に当たるというべきである。 (イ)被告Dの主張について被告Dは,上記行為は,原告Aとふざけ合って,相互にこれらの行為を行っていたと主張する。 しかし,原告Aが被告Dの教科書や文房具を勝手に持ち出したり,隠匿したことを認めるに足りる証拠はなく,また,上記認定の暴行等の経過に照らすと,原告Aが上記隠匿等の行為に及んだとは考えられないから,被告Dの上記主張は採用できない。 ウ不登校をからかう行為(ア)上記1の(3)のウのとおり,被告Dは,被告J及び被告Gとともに,原告Aに対し,中学3年生の4月から5月ころ数回に渡り,図書室において,不登校の本を見せながら,「お前じゃないんか。」と言い,当時学校を休んだり,遅刻しがちであった原告Aをからかったことが認められる。 このような行為は,ただでさえこれまでの暴行等のいじめ行為により精神的苦痛を受けて不登校ぎみになっていた原告Aに対し,その心情を踏みにじり,さらなる精神的苦痛を与えるものであり,上記アの行為と相俟って,不法行為に当たるというべきである。 (イ)被告Dの主張について被告Dは,上記行為を行っていない旨主張し,これに沿う被告D本人の供述もある。 しかし,原告Aは,被告Dが上記行為を行った旨供述しているほか,被告Jも,不登校の本を被告Dに見せたところ,被告Dが原告Aに見せに行った旨供述していることからすれば,被告D本人の上記供述は信用- 47 -できないから,被告Dの上記主張は採用で しているほか,被告Jも,不登校の本を被告Dに見せたところ,被告Dが原告Aに見せに行った旨供述していることからすれば,被告D本人の上記供述は信用- 47 -できないから,被告Dの上記主張は採用できない。 エ万引きに端を発した恐喝行為(ア)上記1の(3)のエのとおり,被告Dは,平成14年5月ころ,原告Aが万引きしたゲームソフトの代金を立て替えて支払ったと言い,原告Aに対し,その代金を請求し,原告Aが支払を断ると,首絞め行為をしたり,教室の黒板や図書室のホワイトボードに「万引き少年」と書く,警察にばらすなどと脅すなどの嫌がらせ行為をしたことが認められるところ,これは恐喝行為に当たり,上記アの行為と相俟って,不法行為に当たるというべきである。 (イ)被告Dの主張について被告Dは,原告Aが万引きしたゲームソフトの代金を立替払したことは事実であるから,その代金を原告Aに対し請求することは正当な理由があり,また威圧的に請求したこともないから,恐喝行為に当たらないと主張し,これに沿う被告D本人の供述がある。 しかし,前示のとおり,他人が万引きしたゲームソフトを借りておきながら,本人に無断で店に代金を支払うというのは,不自然な行動であることからすれば,ゲームソフトの代金を立替払したとの被告Dの供述をたやすく信用することはできず,他に,被告DがSに立替払したことを認めるに足りる証拠はない。また,首絞め行為がふざけ合いの範囲を超えたものであることは上記のとおりであるし,頻繁に黒板等に「万引き少年」と書いたり,警察官にばらすなどと脅すことも,原告Aを精神的に追い詰めるもので,恐喝行為に当たる。 したがって,被告Dの上記主張もまた採用できない。 (2) 被告Jについてア文房具損壊行為- 48 -(ア)上記1の(2)のイで認定したとおり,被 神的に追い詰めるもので,恐喝行為に当たる。 したがって,被告Dの上記主張もまた採用できない。 (2) 被告Jについてア文房具損壊行為- 48 -(ア)上記1の(2)のイで認定したとおり,被告Jは,平成13年5月ころ,Rとともに,原告Aの文房具を奪っては損壊することを繰り返し行っていたことが認められる。これは器物損壊行為に当たるとともに,被告J及びRが複数になって,執拗に嫌がらせ行為を行ったものであるから,後記イの行為と相俟って,不法行為に当たるというべきである。 原告らは,被告Jが故意に原告Aの手のひらにシャープペンシルを刺したのであり,これも不法行為に当たる旨主張し,これに沿う原告Aの供述(甲15)があるが,被告Jが故意に上記行為に及ぶまでの動機をうかがわせる事実は認められないこと,被告Jが原告Aのシャープペンシルを取ろうとした際,取られないように抵抗した原告Aの手のひらにたまたま刺さってしまったと考えるのが自然であることからすれば,原告Aの上記供述はにわかに信用できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (イ)被告Jの主張について被告Jは,原告Aの文房具を故意に壊したことはないと主張し,これに沿う被告Jの供述がある。 しかし,原告Aは,被告Jがシャープペンシルやボールペンを分解して壊したり,マジックの芯を潰したり,消しゴムを切り刻んで窓から投げたりした旨の具体性のある供述をしており(甲15,原告A本人),証人Pも,原告Cから提出を受けた壊れた文房具について,故意に壊されたものであり,過失により壊れたような状態ではなかった旨証言していることからすれば,被告Jの上記供述はにわかに信用できないから,被告Jの上記主張は採用できない。 イ暴行行為,小石を投げ付ける行為,水をかける行 ,過失により壊れたような状態ではなかった旨証言していることからすれば,被告Jの上記供述はにわかに信用できないから,被告Jの上記主張は採用できない。 イ暴行行為,小石を投げ付ける行為,水をかける行為(ア)上記1の(2)のウないしオで認定したとおり,被告Jは,被告Gや被告- 49 -Mと共に,被告Dが原告Aの首を絞めようとする際,原告Aを取り囲んだり,羽交い締めにしたこと,被告J自身も,原告Aに対し首絞め行為をしたこと,被告D及び被告Gとともに,原告Aに対し,小石を投げ付ける行為や水をかける行為をしたことが認められる。 被告Jの上記行為は,被告Dについての同様の行為(羽交い締めの行為も共同暴行行為として,これに含まれる。)について上記2の(1)のアの(ア)において判示したと同旨の理由から,不法行為に当たるといえる。 (イ)被告Jの主張について被告Jは,上記首絞め行為,小石を投げ付ける行為及び水をかける行為は,いずれもお互いにふざけて行っていたものにすぎないから,不法行為に当たらないと主張するが,これらの行為がふざけ合いの範囲を超えたものであり,不法行為に当たることは,上記2の(1)のアで判示したとおりであるから,被告Jの主張は採用できない。 ウ不登校をからかう行為(ア)上記1の(3)のウで認定したとおり,被告Jは,被告D及び被告Gとともに,図書室において,原告Aに不登校の本を見せながら,「お前じゃないんか。」とからかったことが認められるところ,同行為は,上記2の(1)のウのに判示した同様の理由から,上記イの行為と相俟って,不法行為に当たるというべきである。 (イ)被告Jの主張について被告Jは,上記行為をしていない旨の供述をするが,原告Aは,「被告Dらと図書室に行った時,被告Dが不登校を扱った本を見せて,笑いながら『お 為に当たるというべきである。 (イ)被告Jの主張について被告Jは,上記行為をしていない旨の供述をするが,原告Aは,「被告Dらと図書室に行った時,被告Dが不登校を扱った本を見せて,笑いながら『おまえじゃないんか。』と言い,一緒にいた被告Jや被告Gも一緒に笑った。」旨の具体性のある供述をしており,被告J自身,被告Dに不登校の本を渡したこと,被告Dが,その本を原告Aに見せに行っ- 50 -たことを供述し,被告Gも,被告Jや被告Dらとともに,不登校の本を原告Aに見せたことを供述していること,それまでの首絞め等のいじめ行為の経過等に照らすと,原告Aの上記供述は信用でき,被告Jの上記供述はたやすく信用できない。 エ万引きに端を発した嫌がらせ行為(ア)上記1の(3)のエで認定したとおり,被告Jは,被告D及び被告Gとともに,原告Aの目の前で,教室の黒板や図書室のホワイトボードに「万引き少年」と頻繁に書くなどの嫌がらせ行為をしたことが認められるところ,これがいじめ行為に当たり,不法行為を構成するものであることは,上記2の(1)のエで述べたとおりである。 (イ)被告Jの主張について被告Jは,上記行為はあくまでからかっただけにすぎないし,また,原告Aはむしろ万引きをしたことを自慢していたのであるから,これによって精神的に追い詰められたとは考えられないと主張し,被告Jもそのように供述する。 しかし,被告Jは,被告Dが原告Aに対し万引きしたゲームソフトの代金を支払い,その立替金の支払を求めていたことを知っており,原告Aが支払わない場合に,被告Dが原告Aの首を絞めたり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの嫌がらせをしていたことを認識していたのであるから,被告Dとともに,首絞め行為に協力したり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの行為も,恐喝行為に加 の首を絞めたり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの嫌がらせをしていたことを認識していたのであるから,被告Dとともに,首絞め行為に協力したり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの行為も,恐喝行為に加担するものであり,上記イの行為と相俟って,不法行為に当たるというべきである。したがって,被告Jの上記主張は採用できない。 オ平成15年3月以降の行為上記1に認定の被告Jがした,平成15年3月7日以降の原告A宅への- 51 -訪問や「万引き少年と言ってやろうか。」などと言った行為,それ以降の訪問の行為,卒業後の平成15年4月になってした「Aは万引きをしましたー」などと大声で言った行為,平成15年5月31日の区民センターへの訪問と「雨の味はどうだ。」などと言った行為,平成15年6月6日のデパートに行った際に原告Aをからかった行為は,いずれも,それまでのいじめ行為の延長と評価されるべきものであり,これらは全体として不法行為に当たる。 (3) 被告Gについてア暴行行為,小石を投げ付ける行為,水をかける行為(ア)上記1の(2)のウないしオで認定したとおり,被告Gは,被告Jや被告Mとともに,被告Dが原告Aの首を絞めようとする際,原告Aを取り囲んだり,羽交い締めにしたこと,被告G自身も,原告Aに対し首絞め行為をしたこと,被告D及び被告Jとともに,原告Aに対し,小石を投げ付ける行為や水をかける行為をしたことが認められる。 被告Gの上記行為は,被告Dについての同様の行為(羽交い締めの行為も共同暴行行為として,これに含まれる。)について上記2の(1)のアの(ア)において判示したと同旨の理由から,不法行為に当たるといえる。 (イ)被告Gの主張について被告Gは,上記行為はいずれもお互いにふざけて行っていたものにすぎないから,いじめ行為に当たらないと主 (ア)において判示したと同旨の理由から,不法行為に当たるといえる。 (イ)被告Gの主張について被告Gは,上記行為はいずれもお互いにふざけて行っていたものにすぎないから,いじめ行為に当たらないと主張するが,これらの行為がふざけ合いの範囲を超えたもので,不法行為に当たることは,上記2の(1)のアに判示したとおりであるから,被告Gの上記主張は採用できない。 イ不登校をからかう行為上記1の(3)のウで認定したとおり,被告Gは,被告D及び被告Jとともに,図書室において,原告Aに不登校の本を見せながら,「お前じゃない- 52 -んか。」とからかったことが認められるところ,これが不法行為に当たることは,上記2の(1)のウに判示したとおりである。 ウ万引きに端を発した嫌がらせ行為(ア)上記1の(3)のエで認定したとおり,被告Gは,被告D及び被告Jとともに,原告Aの目の前で,教室の黒板や図書室のホワイトボードに「万引き少年」と頻繁に書くなどの嫌がらせ行為をしたことが認められるところ,これが不法行為に当たることは,上記2の(1)のエに判示したとおりである。 (イ)被告Gの主張について被告Gは,上記行為は仲良しグループ内でのふざけの一種として行っただけにすぎないし,原告Aもこれを嫌がっている様子はなかったのであるから,これによって精神的に追い詰められたとは考えられないと主張し,被告Gもそのように供述する。 しかし,被告Gは,被告Dが原告Aに対し万引きしたゲームソフトの代金を支払い,その立替金の支払を求めていたことを知っており,原告Aが支払わない場合に,被告Dが原告Aの首を絞めたり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの嫌がらせをしていたことを認識していたのであるから,被告Dとともに,首絞め行為に協力したり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの行 に,被告Dが原告Aの首を絞めたり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの嫌がらせをしていたことを認識していたのであるから,被告Dとともに,首絞め行為に協力したり,黒板等に「万引き少年」と書くなどの行為は,恐喝行為に加担するものとして不法行為に当たるといえる。したがって,被告Gの上記主張は採用できない。 (4) 被告Mについてア暴行行為(ア)上記1の(2)のウないしオで認定したとおり,被告Mは,被告Gや被告Jとともに,被告Dが原告Aの首を絞めようとする際,原告Aを取り囲- 53 -んだり,羽交い締めにしたことが認められる。 被告Mの上記行為は,被告Dについての同様の行為(取り囲んだり,羽交い締めにした行為も共同暴行行為として,これに含まれる。)について上記2の(1)のアの(ア)において判示したと同旨の理由から,不法行為に当たるといえる。 (イ)被告Mの主張について被告Mは,被告Dが原告Aの教室に行くのについていったことがある程度であり,自ら首絞め行為を行ったことはなく,これに加担するような行為をしたことはない旨主張し,これに沿う被告Mの供述もある。 しかし,被告M自身,被告Dが原告Aに拳法の技をかけたり,両手で原告Aの首を押さえたりしているとき,二人を囲んではやし立てたり,原告Aが逃げないように,取り囲んだり,羽交い締めにしていた旨の客観的な事実についてこれを認める供述をしているのである。そして,被告Dの上記行為自体が悪質ないじめ行為であり,これらが複数の者により執拗に繰り返されたこと等の点からすれば,これを現認しているにもかかわらず,制止するどころか,それを囲んではやし立てた行為は,それのみでも,違法ないじめ行為に加担した不法行為に当たるというべきである。したがって,被告Mの上記主張は採用できない。 争点(2)(被告保 ず,制止するどころか,それを囲んではやし立てた行為は,それのみでも,違法ないじめ行為に加担した不法行為に当たるというべきである。したがって,被告Mの上記主張は採用できない。 争点(2)(被告保護者らの監督義務違反の成否)について上記2に判示の被告生徒らの原告Aに対する不法行為(以下「本件各不法行為」という。)について,被告保護者らもまた不法行為責任を負うというためには,被告保護者らが,被告生徒らが本件各不法行為のような違法ないじめ行為を行うことを予見することが可能であり,かつ,それにもかかわらず親権者としてなすべき教育,監督を怠ったこと,この教育,監督をしていたなら本件各不法行為を防止してこれによる原告らの損害の発生を回避する可能性が高か- 54 -ったことを要する。 上記の点について以下判断する。 (1) 被告D両親について被告Dは,上記1(1)イに認定の問題行動があったのであり,その行為の内容は同級生への陰湿で悪質な嫌がらせ,蹴るなどの暴行,器物の損壊というものであったこと,クラス担当のT教諭は,これら問題行動について被告D本人に注意,指導を行い,被告D両親にもこれらの問題行動を逐次知らせて家庭内での指導監督を促したことが認められる。この事実からすれば,被告D両親は,遅くとも平成12年秋ころには,被告Dが他者への共感性に乏しく,同級生への嫌がらせや暴行等を内容とする違法ないじめ行為に及ぶことを予見することが可能であったといえる。したがって,被告D両親は,その時から,折に触れて,被告Dに対し,いじめ行為がその被害者に多大な精神的苦痛を与えるもので決してしてはならない行為であることをたびたび言い聞かせるとともに,担任教師等と連絡を密に取って被告Dの学校内での生活ぶりを聴取し,問題行動とみられる行為があればこれを制止すべく説得す を与えるもので決してしてはならない行為であることをたびたび言い聞かせるとともに,担任教師等と連絡を密に取って被告Dの学校内での生活ぶりを聴取し,問題行動とみられる行為があればこれを制止すべく説得するなどの措置を講じる義務を負っていたというべきである。ところが,被告Fは,その本人尋問において,「当時T教諭から何の注意も受けていない。」旨の供述をしており,このような供述態度にかんがみれば,被告D両親は,平成12年5月ころから同年秋ころにかけて,T教諭から上記の問題行動があったことについての連絡を受けても,これを深刻に受け止めず,被告Dが他者への共感性の乏しい未熟な人格で本件各不法行為のような違法ないじめ行為に及ぶ危険性があることを理解せず,上記のような教育・監督の措置を講じることなく漫然と過ごしていたものと推認される。したがって,この点で被告D両親には,子である被告Dに対する教育,監督義務の違反,懈怠があったといえる。そして,被告D両親が,T教諭からの連絡を深刻に受け止め,日頃から被告Dの生活ぶりに注意し上記のような措置を講じていたなら- 55 -ば,これが被告Dが本件各不法行為のようないじめ行為に及ぶことを抑止し,その結果,被告Dが本件各不法行為に及ばなかった可能性は高いというべきである。とすれば,被告D両親は,本件各不法行為によって発生した原告らの損害について賠償責任を負うといえる。 (2) 被告J両親について上記1の(2)のイのとおり,被告J両親は,P教諭から,被告Jが原告Aと文房具を取り合っている最中に,原告Aの手のひらにシャープペンシルを突き刺してしまったことの説明を受け,今後,そのようなことがないように両親からも注意するように言われたことが認められる。 しかし,当時のP教諭の認識はふざけ合いから起こったことであるというも シルを突き刺してしまったことの説明を受け,今後,そのようなことがないように両親からも注意するように言われたことが認められる。 しかし,当時のP教諭の認識はふざけ合いから起こったことであるというものであったことから,被告J両親は,そのような事件としてしか聞いておらず,被告Jが原告Aをいじめているとの報告までは受けなかった。また,被告Jと原告Aとは小学校時代からの友人であり,被告J両親も親としてそのように認識していたことが推認される。これらの事実からすれば,上記認定の出来事があったことを考慮しても,被告J両親が,被告Jが違法ないじめ行為を行うことを予見することが可能であったとまではいえないし,他にこれを肯定するに足りる事実は証拠上認められない。 原告らは,「被告Lは,P教諭から被告Jにいじめをしないよう注意するように言われたことがある。」と主張し,それをうかがわせる証拠(「2003年6月7日J家玄関での会話」と題する書面甲8)もある。しかし,同証拠は,原告Cが,被告J宅を訪ね,玄関において立ち話をした内容を反訳した書面であり,これにある被告Lの供述は,宣誓の上での発言ではないし,また,原告Cの発言に相づちを打つという形にすぎないのであるから,被告Lの上記供述をたやすく信用することはできない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (3) 被告G両親,被告Nについて- 56 -被告G両親及び被告Nが,被告G及び被告Mが違法ないじめ行為を行うことを予見することが可能であったことを肯認するに足りる証拠はない。 原告らは,被告Gや被告Mが,本人尋問において,いじめに対する正しい認識が欠けていることを思わせる供述をしたことを理由に,被告G両親や被告Nの監督義務違反を主張するが,これらの事実のみで,被告G両親や被告Nが,被告Gや被告Mが違 尋問において,いじめに対する正しい認識が欠けていることを思わせる供述をしたことを理由に,被告G両親や被告Nの監督義務違反を主張するが,これらの事実のみで,被告G両親や被告Nが,被告Gや被告Mが違法ないじめ行為を行うことを予見することが可能であったとはいえないから,原告らの上記主張は採用できない。 争点(3)(教師等の違法行為の成否)について(1) 公立中学校の教師は,学校内において,生徒の心身に対しいじめ等の違法な侵害が加えられないよう適切な配慮をする注意義務,すなわち,日頃から生徒の動静を観察し,暴力行為やいじめ等がないかを注意深く見極め,その存在がうかがわれる場合には,関係生徒や保護者らから事情聴取するなどしてその実態を調査し,表面的な判定で一過性のものと決めつけずに,実態に応じた適切な防止措置を講じる義務を負うものと解せられ,この義務に違反する行為は国家賠償法1条1項の違法行為に該当し,当該学校を管理する地方公共団体は,同条項に基づき,損害賠償責任を負う。また,当該学校の教師の給与を負担する地方公共団体も,同法3条1項に基づき,損害賠償責任を負う。 上記の点を以下本件について判断する。 (2) 上記1に認定のとおり,本件各不法行為は,中学2年生の5月ころから,中学3年生の6月ころまで継続的に行われており,しかも教室前の廊下,職員室の外のテラス等,教師の目の届き得る場所で行われていたこと,被告生徒らは,本件各不法行為を教師の目を盗んで行っていたわけではなく,教師が横を通っても首絞め行為等を行っていたこと(現にZ教諭は,被告生徒らの上記行為を現認し,注意している。)からすれば,当時の担任であったP教諭をはじめ,他のa中の教師らは,遅くとも中学2年時の夏休みが始まる- 57 -前の平成13年7月ころには,被告生徒ら(被告Mを除 記行為を現認し,注意している。)からすれば,当時の担任であったP教諭をはじめ,他のa中の教師らは,遅くとも中学2年時の夏休みが始まる- 57 -前の平成13年7月ころには,被告生徒ら(被告Mを除く。)の原告Aに対する本件各不法行為を認識していたか,少なくともこれを認識することが可能であったといえる。 また,P教諭は,平成13年5月ころ,被告Jが原告Aの手のひらにシャープペンシルを刺してしまった事件を原告Cから聞き,被告J及びRが原告Aの文房具を奪って損壊していたことを認識したことが認められるところ,このような文房具の損壊は,いじめの存在を疑わせるに足りる十分な端緒であったといえる。 さらに,原告Aは,中学2年生になってから,遅刻が多くなったこと,P教諭は保護者面談の際,原告Bから,原告Aの遅刻が増えた原因について,学校で何かあったのか,注意して見て欲しい旨告げられていたこと(証人P)が認められる。このように,生徒に遅刻が急に増えた場合,教師としてはその生徒に何か起きたと考えるべきであり,いじめもその原因の一つとして考えるべきであったといえる。 以上の点を総合すると,a中の教師,少なくとも担任であったP教諭は,遅くとも平成13年7月ころには,被告生徒ら(被告Mを除く。)が原告Aに対して本件各不法行為(ただし,同月ころまでになされていたいじめ行為)を行っていることを認識し得たといえる。とすれば,P教諭は,遅くとも同月ころには,被告生徒ら(被告Mを除く。)や原告Aのほか他の同級生から事情を聴取して,事実関係を調査し,被告生徒ら(被告Mを除く。)に厳しく指導したり,その保護者らに連絡して教育・監督を促すなどの適切な防止措置を講じるべきであった。 ところが,P教諭は,被告生徒らと原告Aが友達の関係にあると思い,しかも友達の関係の場合はいじめ 厳しく指導したり,その保護者らに連絡して教育・監督を促すなどの適切な防止措置を講じるべきであった。 ところが,P教諭は,被告生徒らと原告Aが友達の関係にあると思い,しかも友達の関係の場合はいじめ行為は存在しないものと思い込み,被告生徒らのした本件各不法行為をじゃれ合い程度のものと捉え,そこに暴力行為や嫌がらせ行為などのいじめが存在しないかを注意深く観察することなく,漫- 58 -然と事態を傍観していたのである。そのため,P教諭が,教員同士や,教員と生徒,教員と保護者との間で報告や連絡,相談などをしたり,被告生徒らやその保護者に対していじめ行為をしないように注意したり,原告Aから個別に事情を聴いたりするなどの指導監督を行うことはなかったのであり,この点で,P教諭は,上記の中学校教師としてなすべき義務を怠った過失があり,この不作為は,国家賠償法1条1項にいう違法行為に当たるというべきである。そして,P教諭が,上記の措置を講じていたならば,本件各不法行為は遅くとも平成13年7月ころには学校や保護者らに発覚し,そのため,被告生徒らがそれ以降の本件各不法行為に及ばなかった可能性は高いものと推認される。 そうすると,被告市は,国家賠償法1条1項に基づき,本件各不法行為による原告らの損害について賠償責任を負うといえる。 また,被告県は,P教諭の給与を負担するものとして,国家賠償法3条1項に基づき,同じく本件各不法行為による原告らの損害について賠償責任を負うといえる。 (3) 被告市及び被告県は,P教諭は,文房具を奪ったり,損壊することについては子供同士の戯れ程度のことと認識していたし,首絞め行為や小石を投げ付ける行為等については目撃しておらず,したがって,P教諭には,適切ないじめ防止措置を講じる義務はなかったと主張する。そして,P教諭も,原告 の戯れ程度のことと認識していたし,首絞め行為や小石を投げ付ける行為等については目撃しておらず,したがって,P教諭には,適切ないじめ防止措置を講じる義務はなかったと主張する。そして,P教諭も,原告Aと被告生徒らが追いかけっこしたり,じゃれ合っているのを見たことはあるが,それがじゃれ合いの範疇を超えたいじめ行為とは思っていなかったし,その他いじめ行為を目撃したことはない旨供述する。 しかし,上記のとおり,ある生徒がある生徒の文房具を奪ってこれを損壊するというのはいじめの存在を疑わせるには十分な出来事であり,P教諭は,被告J及びRの文房具損壊行為を認識しておきながら,いじめの存在を全く疑うことなく,これを子供同士の戯れ程度のことと認識し,その後の原告A- 59 -の動向に何ら注意を払わなかったのであり,このことは,P教諭のいじめ問題に対する配慮の足りなさを露呈したものといえる。また,P教諭は,原告Aと被告生徒らがじゃれ合っているところは見ていた旨供述しているところ,被告生徒らは,休憩時間中頻繁に,原告Aに対して首絞め行為等の暴行を加えていたことからすれば,そのじゃれ合っている状況というのはまさしく首絞め行為等のいじめ行為であったことが推認される。とすれば,その状況を見ながらそれをじゃれ合い程度のものであり,およそいじめとは認識せず漫然と放置すること自体が,学校教師としての義務を怠ったものといえる。 したがって,上記のような教師の姿勢について何ら疑問を抱かない被告市や被告県にも大きな問題があり,被告市及び被告県の上記主張は到底採用できない。 争点(4)(被告生徒らのいじめ行為と原告Aの統合失調症との間の相当因果関係の存否)について(1) 事実的因果関係の存否上記認定の庚医師及び壬医師の各意見並びに一般的な医学的知見を総合すると,一般 点(4)(被告生徒らのいじめ行為と原告Aの統合失調症との間の相当因果関係の存否)について(1) 事実的因果関係の存否上記認定の庚医師及び壬医師の各意見並びに一般的な医学的知見を総合すると,一般に,統合失調症は,何らかの脳の生理学的・生化学的機能や構造上の異常があり,そのためにストレスとなる出来事に対して十分対応できるだけの脳の強さを備えられなくなって発病するものであり,本件各不法行為のような長期間にわたるいじめ行為もまた,統合失調症発症の誘因となるものといえる。 そして,上記の点に加えて本件における事実経過,すなわち,原告Aは,長期間にわたり被告生徒らからの本件各不法行為のいじめを受け,平成14年5月ころからは,万引きしたことを繰り返し揶揄され,学校の黒板に原告Aが万引きしたことを書かれたり,立替金を支払うよう要求され,支払わないと警察に言うと脅されたりし,とうとう平成14年6月17日から登校しなくなり,その後,「ショベルカーの男が殺しに来る。」等と言って幻覚症- 60 -状が現れ,その約1週間後にこばたけ小児科を受診したところ,精神疾患を疑われ,広島市民病院,浅田病院等を受診した結果,同年11月6日に統合失調症と診断されたこと,平成15年3月ころから,被告Jが原告A宅をたびたび訪ねるようになり,原告Aの症状は悪化していること,原告Aは同年6月26日の袋町クリニックでの治療において,被告生徒らからのいじめを初めて告白し,その後気分が良くなったと述べたこと等を併せ考慮すると,本件各不法行為と原告Aの統合失調症の発症との間には事実的因果関係のあることが認められる。したがって,前示の被告D両親の教育・監督義務違反及びP教諭の違法行為と上記統合失調症の発症との間の事実的因果関係の存在もまた認められる。 (2) 相当因果関係の存否本件 のあることが認められる。したがって,前示の被告D両親の教育・監督義務違反及びP教諭の違法行為と上記統合失調症の発症との間の事実的因果関係の存在もまた認められる。 (2) 相当因果関係の存否本件各不法行為が長期間にわたり執拗にほぼ毎日何回も行われたものであり,その内容も原告Aの自尊心を大きく傷つけ,あるいは,不安感を煽り,多大な精神的打撃を与えるものであったこと,このようないじめ行為による精神的打撃に基づくストレスは精神疾患発症の誘因となり,時には自殺という結果を招来するものであること(以上の点は前記認定の事実から肯認される。),そして,このような情報は新聞等によって社会一般に報道されていること(この点は公知の事実である。)の点を総合勘案すると,一般人からみて,本件各不法行為による原告Aの統合失調症の発症は予見可能な結果というべきである。したがって,本件各不法行為(ただし,被告Mの行為は除く。),前示の被告D両親の教育・監督義務違反及びP教諭の違法行為と上記統合失調症の発症との間には相当因果関係があるといえる。 しかし,本件各不法行為のうち被告Mの行為は,平成14年5月ころから同年6月17日ころまでにかけて,被告Dがする首絞め等の暴行に加担するものにとどまっていたことからすれば,同行為と上記統合失調症の発症との間に相当因果関係があるとはいえない。 - 61 -(3) 素因による減額上記の因果関係の存在は認められるけれども,上記認定の統合失調症発症に関する医学的知見,特に統合失調症が脳の器質的な脆弱性を基盤とするものであることにかんがみれば,原告Aの統合失調症の発症は,原告Aの身体的素因や家庭環境等の本件各不法行為とは別の事情もその原因となったものと推認され,その比重はかなり大きいものといえる。したがって,損害の負担につき公平の理 ,原告Aの統合失調症の発症は,原告Aの身体的素因や家庭環境等の本件各不法行為とは別の事情もその原因となったものと推認され,その比重はかなり大きいものといえる。したがって,損害の負担につき公平の理念から,統合失調症発症による損害については,その7割を減額するのが相当である。 争点(5)(原告らの損害)について(1) 原告Aの損害慰謝料本件各不法行為の内容に照らし,これによって被った原告Aの精神的苦痛に対する慰謝料は,300万円と認めるのが相当である。ただし,被告Mの不法行為は,前示のとおりのものにとどまるから,これによる精神的苦痛に対する慰謝料は30万円と認めるのが相当である。 また,原告Aが統合失調症発症によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は,その精神疾患の重大性,治癒の困難性等を考慮すると,1000万円と認めるのが相当である。したがって,賠償義務者の責任額は,その7割を減じた300万円となる。 (2) 原告Bの損害ア治療費原告Bは,原告Aが統合失調症に罹患したため,同人を浅田病院,広島大学病院,木村神経科内科クリニック,袋町クリニックに通院させ,同人の治療費として合計17万7665円を支払ったことが認められる(甲39ないし42)。したがって,この損害についての賠償義務者の責任額は,その7割を減じた5万3299円となる。 - 62 -イ慰謝料原告Bが原告Aの親として本件各不法行為や統合失調症の発症により,自らも精神的苦痛を被ったことは認められるけれども,それが生命を害された場合にも比肩すべき苦痛であるとまではいえないから,これに対する慰謝料を求めることはできない。 (3) 原告Cの損害ア逸失利益上記1の事実経過,証拠(甲43)及び弁論の全趣旨によれば,原告Cは,広島市の臨時保育士として1日8時間稼働し,1か月 これに対する慰謝料を求めることはできない。 (3) 原告Cの損害ア逸失利益上記1の事実経過,証拠(甲43)及び弁論の全趣旨によれば,原告Cは,広島市の臨時保育士として1日8時間稼働し,1か月平均18万2070円の収入を得ていたこと,しかし,原告Aに統合失調症が発症し,その診療への付添や介助のため,平成14年7月1日から同月12日までの間,4時間しか勤務できず,同月13日から平成16年4月30日まで稼働できなかったことが認められる。したがって,原告Cは,少なくとも22か月間の上記収入額すなわち400万5540円の利益を失ったのであり,これもまた本件各不法行為による損害と認められる。しかし,これは,統合失調症発症による損害であるから,この損害についての賠償義務者の責任額は,その7割を減じた120万1662円となる。 イ慰謝料原告Cの慰謝料請求は,原告Bの慰謝料について判示したと同様の理由から,認められない。 (4) 弁護士費用本件事案の性質,審理経過等を考慮すると,本件事件と相当因果関係のある原告らの弁護士費用は,次のとおりとするのが相当である。 ア原告A60万円ただし,被告Mの関係では3万円イ原告B1万円- 63 -ウ原告C12万円 結論 よって,原告Aの被告生徒ら(被告Mを除く。),被告D両親,被告市及び被告県に対する請求は,損害金660万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がなく,被告Mに対する請求は,損害金33万円(同額の限度で上記660万円と各自支払関係にあるもの)及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害 告Mに対する請求は,損害金33万円(同額の限度で上記660万円と各自支払関係にあるもの)及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,その余の被告らに対する請求はいずれも理由がない。 原告Bの被告生徒ら(被告Mを除く。),被告D両親,被告市及び被告県に対する請求は,損害金6万3299円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がなく,その余の被告らに対する請求はいずれも理由がない。 原告Cの被告生徒ら(被告Mを除く。),被告D両親,被告市及び被告県に対する請求は,損害金132万1662円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がなく,その余の被告らに対する請求はいずれも理由がない。 広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官能勢顯男- 64 -裁判官早田久子裁判官數間薫

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