- 1 -平成18年6月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(ワ)第3954号損害賠償請求事件口頭弁論終結の日平成18年4月17日判決主文 被告は,原告に対し,281万6779円及びこれに対する平成17年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを4分し,その3を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,379万3484円及びこれに対する平成17年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,別紙原告商標目録記載(1),(2)の各商標権(以下,同目録(1)の商標を「本件商標1」,同目録(2)の商標を「本件商標2」といい,これらを併せて「本件各商標」という。)を有する原告が,本件商標2に酷似した標章を付したスパークプラグを,本件商標1及び本件商標2に酷似した標章を付した包装箱に梱包して販売した被告に対して,商標法38条2項,民法709条に基づいて損害賠償を求めた事案である。 争いのない事実等(証拠を掲記した部分のほかは当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,内燃機関用スパークプラグの製造,販売等を主な目的とする株式会社である。 - 2 -イ被告は,国産車及び外国車部品・用品の販売及び輸出入を主な事業目的とする株式会社である。 (2) 原告の商標権原告は,次のア,イの商標権を有している(甲1号証ないし4号証。以下,書証については枝番を含む。)。 ア登録番号第1042589号出願年月日昭和46年5月10日登録年月日昭和48年11月12日商品及び役務の区分 を有している(甲1号証ないし4号証。以下,書証については枝番を含む。)。 ア登録番号第1042589号出願年月日昭和46年5月10日登録年月日昭和48年11月12日商品及び役務の区分第7類指定商品内燃機関用点火栓登録商標別紙原告商標目録(1) のとおりイ登録番号第0253441号出願年月日昭和8年10月18日登録年月日昭和9年5月8日商品及び役務の区分第7類指定商品自動車用点火栓,自動二輪車用点火栓,航空機用点火栓登録商標別紙原告商標目録(2) のとおり(3) 被告の侵害行為ア被告は,別紙被告標章目録(2) 記載の標章(以下「被告標章2」という。)を付した別紙被告商品目録記載の3種類のスパークプラグ(以下,それぞれ「被告プラグ1」,「被告プラグ2」,「被告プラグ3」といい,これらを併せて「本件模倣品」ともいう。なお,原告及び被告は,その主張において「模造品」との文言を用いるが,「模倣品」とするのが相当である。)を,別紙被告標章目録(1) 記載の標章(以下「被告標章1」という。)及び被告標章2を付した被告の包装箱に梱包して,平成16年10月下旬から同年12月初旬にかけて,関東地方,新潟県及び福島県の自動- 3 -車部品取扱業者に販売した。 イ被告プラグ1ないし3は,本件商標1の指定商品である「内燃機関用点火栓」に,また,本件商標2の指定商品である「自動車用点火栓,自動二輪車用点火栓,航空機用点火栓」にそれぞれ含まれる。 ウ被告標章1は,本件商標1と同一であり,被告標章2は,本件商標2と同一である。 (4) 原告の損害ア被告プラグ1ないし3は,原告製のスパークプラグの悪質な模倣品であり,原告製のものに比べ,著しく性能が劣り,使用中にエンジン損傷等の不具合を引き起こす事態が被告販売直後か 。 (4) 原告の損害ア被告プラグ1ないし3は,原告製のスパークプラグの悪質な模倣品であり,原告製のものに比べ,著しく性能が劣り,使用中にエンジン損傷等の不具合を引き起こす事態が被告販売直後から相次いで報告され,原告は,急きょ原因究明と回収等の対応措置を取ることとなった。 イ原告及び被告は,被告が販売した被告プラグ1ないし3の回収廃棄に努力し,概ね回収がなされたが,回収未了のプラグがある。 争点 (1) 被告は,被告プラグ1ないし3を販売して原告の商標権を侵害したことについて,過失がなかったか。 (2) 損害の発生及び額 当事者の主張(1) 争点(1) (商標権侵害行為について過失がなかったか)について〔被告の主張〕ア被告は,被告プラグ1ないし3をアメリカのICM社から輸入し,国内において販売したが,模倣品であるとの認識はなく,そのことを認識せずに販売したことについて過失はない。その根拠は以下のとおりである。 (ア) 被告が輸入したのは,被告と長年取引のあるアメリカのカリフォルニア州に本社を置くICM社からであるが,被告がこれまで同社から輸入した商品で純正品でないものは全くなかった。 - 4 -(イ) 原告の正規品は,輸出価格が低廉であることから,国内において原告の販売代理店等を通じて調達するより,アメリカに輸出された商品を再度輸入した方が調達コストが安くなり,被告がこのような方法で原告の製品を再輸入しようとすることは経済的合理性に適うものであり,商取引上何の問題もない。 (ウ) 被告は,平成16年6月,アメリカのカリフォルニア州に本社を置くCANYONENTERPRISES社から,原告の正規品であるスパークプラグを購入したが,その際の購入価格が,ICM社からの購入価格とほぼ同額であり,価格面から模倣品であることを ア州に本社を置くCANYONENTERPRISES社から,原告の正規品であるスパークプラグを購入したが,その際の購入価格が,ICM社からの購入価格とほぼ同額であり,価格面から模倣品であることを疑うべき事情はなかった。 (エ) 被告プラグ1ないし3の箱は,本物をスキャンしたものと思われ,デザインの違いは分からない状態のものであり,被告プラグ1ないし3は,それを購入した部品商及び自動車整備工場関係者も,またこれらをエンジンに取り付けた自動車整備士免許資格保有者らも,誰1人としてそれが模倣品であることに気づかないほど精巧なものであった。 (オ) 被告プラグ1ないし3は,単価が安く,不良品であることが判明した場合,以後販売できなくなるものであるから,このようにリスクの大きい模倣品を製造流通させる者が現れるとは一般に考えにくい。 (カ) 被告は,海外の約30の商社から自動車部品を輸入しており,そのうちの主要仕入先である9社に限定しても,平成17年度において延べ3万2924種類もの部品を輸入しており,在庫部品は5万種類にも及んでいる。 被告が輸入した自動車部品は,仕入先からの輸入量が多い場合は,貨物船で運ばれたコンテナによってそのまま被告の倉庫に陸送され,少ない場合でも,多くの部品が梱包された巨大な段ボール箱によって運ばれる。 - 5 -被告は,これら輸入された部品について,少なくとも伝票と外観によって確認するが,個々の部品すべてについて仔細に検査し,あるいは性能や仕様をチェックすることはしない。被告においては,そのような検査をすること自体不可能である。 被告のような輸入業者において,模倣品であることを発見することが不可能であるにもかかわらず,損害賠償責任を負うべきであるとの主張は,およそ,商取引の実情を無視した非常識な見解であり,かかる見 ある。 被告のような輸入業者において,模倣品であることを発見することが不可能であるにもかかわらず,損害賠償責任を負うべきであるとの主張は,およそ,商取引の実情を無視した非常識な見解であり,かかる見解が容認されるならば,少なくとも自動車部品については正規代理店からの仕入販売しかできないということになり,独占禁止法に抵触するような事態を招来させることになりかねない。 イ原告の主張に対し,次のとおり反論する。 (ア) 本件は,第三者が同一商標あるいは類似商標を使用したのと異なり,被告が原告(あるいはフランスの現地法人)の真正品であると認識して被告プラグ1ないし3を輸入したという事案であって,原告以外の第三者が被告プラグ1ないし3及びその包装箱に印刷された商標を使用することができる権利を有すること,あるいは,原告の商標権を侵害するものではないことを誤信したものではないから,商標法39条によって準用される特許法103条の過失の推定が適用される余地のない事案である。 (イ) 原告は,真正品と被告プラグ1ないし3との間には6点の差異がある旨指摘するが,いずれも後付けでそれを検証するために,真正品と精密に比較対照した場合の差異について論じているだけで,「たやすく発見し得た」という論証はなされていないし,本件模倣品と真正品との差異として指摘する外観等が,原告の(外注先も含めて)すべての工場における生産品と完全に同一のものであるのかどうか不明であり,また,スパークプラグの機能や原告の商標それ自体には影響を及ぼさない部分の- 6 -指摘もあるから,これをもって「模倣品」であると判断することは困難である。 (ウ) 原告は,真正品が並行輸入として許されるためには尽くすべき3つの要件が求められるとし,被告がいずれの点についても全く調査しなかった旨主張する て「模倣品」であると判断することは困難である。 (ウ) 原告は,真正品が並行輸入として許されるためには尽くすべき3つの要件が求められるとし,被告がいずれの点についても全く調査しなかった旨主張するが,被告は,ICM社に対して,原告製のスパークプラグを注文したのであって,輸入前の段階で輸入される商品が真正品であるかどうかということについては調査のしようがないのである。そして,輸入された商品が真正品でなければ,被告が故意過失の有無にかかわらず,直ちに原告に対して損害賠償責任を負うものでないことも明らかである。 〔原告の主張〕ア被告には,商標法39条,特許法103条に基づいて過失が推定され,以下のとおり,それが覆ることはない。 (ア) 商標法39条は,特許法103条を準用して,侵害者の過失を推定しているところ,これは,商標権の内容については商標公報・商標登録原簿等によって公示されており,しかも,商標権又は専用使用権の侵害は業としてこれを行う者の行為のみが該当することを考慮したからにほかならない。したがって,過失の推定が覆滅される場合は極めて稀であって,被告が主張するような事情は,過失の推定を覆滅するに足るものではない。 (イ) 被告は,自動車部品の販売,輸出入を長年にわたって手がけており,模倣品が近年とみに増大している自動車部品の取引にかかわる者として,自動車部品には模倣品が多いことを十分に認識していたのであるから,知的財産権の調査とそれらの権利を侵害しないようにすべき高度の注意義務を負担している。 (ウ) 被告は,真正品を並行輸入した経験がありながら,並行輸入が許され- 7 -るために必要とされる注意義務,すなわち,①輸入した製品が果たして真正品であるか否か,②外国商標権者と内国商標権者とが同一であるか,③並行輸入商品と内国拡布商 りながら,並行輸入が許され- 7 -るために必要とされる注意義務,すなわち,①輸入した製品が果たして真正品であるか否か,②外国商標権者と内国商標権者とが同一であるか,③並行輸入商品と内国拡布商品とが同一であるかについて,何ら調査していない。 (エ) 真正品と本件模倣品の違いa端子部分(先端の金属部分)が真正品は茶色であるのに本件模倣品は黒色である。 b本件模倣品はガスケットと呼ばれる部分が厚く脱落しやすい。 c本件模倣品の包装箱の紙質は多少厚く,印刷していない裏の部分がピンクがかった色合いで光沢がありつややかな手触りである。 d本件模倣品は絶縁体と金具の締め付け部分に粉末がなく,カシメ部分からの気密漏洩が著しい。 e本件模倣品は,絶縁体部分に付された商標ロゴマークが真正品に比べて文字が細く,記載位置が不揃いで,また金具の六角部分に付されたロットナンバーの刻印が真正品に比べて大きく,書体も異なる。さらに,金具の胴部のプラグ品番刻印の間隔が真正品に比べて広い。 f本件模倣品は,金具のカシメ部分については真正品に比べその膨らみが少なく,若しくは膨らみがない。 (オ) まとめ被告は,中国を中心としてスパークプラグの模倣が顕著であり,自動車部品の模倣品が全世界的に流通していることを十分に認識していたところ,自動車部品を取り扱う専門業者としてはかかる模倣品の存在には十分注意すべきであった上,輸出元が商標権を有しているかといった事実を調査すべきであった。そして,本件模倣品は真正品と明らかに異なる特徴を有しており,これはわずかな注意を払えば容易に発見し得るものであるから,輸入販売に当たって,それが真正品であるか否かを原告- 8 -に問い合わせるという一挙手一投足の労を惜しまなければ,極めて容易に商標権を侵害しているということを認識し に発見し得るものであるから,輸入販売に当たって,それが真正品であるか否かを原告- 8 -に問い合わせるという一挙手一投足の労を惜しまなければ,極めて容易に商標権を侵害しているということを認識し得たのであるから,被告が無過失であるということはあり得ない。 イ被告の主張に対し,次のとおり反論する。 (ア) 被告は,海外から多くの自動車部品を購入しており,個々の部品について検査することは不可能であると主張するが,輸入業者としては少なくともサンプル検査等を行い真正品か否かにつき性能・品質を十分に確かめるなどの調査義務を尽くす必要がある。 (イ) 仮に部品数が多く,検査に一定の時間と労力を要するとしても,それは輸入業者の主観的な事情にすぎず,注意義務の軽減を正当化する理由とはなり得ない。 被告は「梱包されているのに性能検査などできない」旨主張するが,全量検査でなくとも少なくともサンプル検査は十分に可能であるし,費用・労力ともに極めて些少で済むことは明らかであって,被告はこうした検査を全く行っていない点で過失がある。 (ウ) そもそも商標はコピーが極めてたやすく,現在の高度な複写技術をもってすれば,外観からは本物と見分けがつかない模倣品を作り出すことは容易であるから,被告が主張するように,外観からは真正品であるか否かの判断が難しいことを理由に過失の推定の覆滅を認めることがあれば,商標権侵害物件が野放しとなってしまい妥当でない。 (2) 争点(2) (損害の発生及び額)について〔原告の主張〕ア被告の利益額による損害の推定(商標法38条2項)被告の仕入価格は,被告プラグ1が1.51ドル(1ドル110円で166.1円)であり,被告プラグ2及び3が1.2ドル(1ドル110円で132円)であった。そして,販売価格は,被告プラグ1が250円,- 入価格は,被告プラグ1が1.51ドル(1ドル110円で166.1円)であり,被告プラグ2及び3が1.2ドル(1ドル110円で132円)であった。そして,販売価格は,被告プラグ1が250円,- 9 -被告プラグ2及び3が185円であった。また,販売個数は,被告プラグ1が1800個,被告プラグ2及び3が計8600個であった。 被告プラグ1の粗利額は15万1020円{(250円-166.1円)×1800個},被告プラグ2及び3の粗利額は45万5800円{(185円-132円)×8600個}となり,これらの合計は60万6820円となる。 そして,被告の利益率は粗利額の80パーセントを下らないから,その利益額は少なくとも48万5456円を下らず,この額が原告が受けた損害額と推定される(商標法38条2項)。 イその他の損害(商標法38条4項)原告は,被告の商標権侵害行為によって,少なくとも以下のような費用が生じ,これと同額の損害を被った。 (ア) クレーム受付費用本件模倣品が出回った後,小売業者らから次々とクレームが寄せられたため,これに原告の担当者が対応したが,そのための人件費,ガソリン代,高速道路通行料として,合計24万3010円を要した。 (イ) 社内クレーム検査費用本件模倣品の性能や仕様を調査するために,原告社内で担当者が調査し,他社プラグ調査報告書(甲26号証の1ないし3)をまとめたが,そのために少なくとも5時間,人件費として2万1500円を要した。 (ウ) 被告との打ち合わせのための訪問費用本件模倣品の対応のため,原告担当者が,東京の被告本社に合計5回赴いたが,そのために,人件費,交通費及び駐車場代として13万6130円を要した。 (エ) サービスインフォメーション費用原告は,取引先向けに模倣品に対する注意を促すサービスインフォ 本社に合計5回赴いたが,そのために,人件費,交通費及び駐車場代として13万6130円を要した。 (エ) サービスインフォメーション費用原告は,取引先向けに模倣品に対する注意を促すサービスインフォメ- 10 -ーションを作成したが,そのために20万3858円を要した。 (オ) 部品商,修理工場への訪問費用原告の各営業所又は出張所の担当者が,模倣品を扱った部品商や修理工場へ足を運んで,本件模倣品の対応を行ったが,そのための人件費,ガソリン代及び高速道路通行料として106万8780円を要した。 (カ) 新聞広告記事費用(毎日新聞)本件模倣品が出回っていることをユーザーらに知らせるために,毎日新聞への広告掲載費用として79万5000円(税抜き価格。税込みでは83万4750円)を要した。 ウ弁護士費用80万円エアないしウの合計は379万3484円である。 〔被告の主張〕ア原告の主張アのうち,被告の仕入額及び販売価格については認め,販売個数については否認し,被告の利益率については争う。販売個数は,被告プラグ1が991個,被告プラグ2及び3が合計5165個である。 原告は,被告の利益額が少なくとも48万5456円を下らないと主張するが,後記のとおり,被告は,被告プラグが模倣品であると判明した後,これらのほとんどすべてを回収して被告の出捐をもって原告の正規品と取り替えており,被告は何ら利益を得ていないし,被告が販売したものとほぼ同数の原告正規品が取替えによって販売されており,原告に損害も発生していない。 仮に,正規品に取り替えられたものについても商標法38条2項に基づく損害賠償が認められるならば,被侵害者にいわば利益の二重取りをさせることになってしまうが,同項がこのようなことまでも認める趣旨でないことは明白である。 イ(ア) クレーム受 商標法38条2項に基づく損害賠償が認められるならば,被侵害者にいわば利益の二重取りをさせることになってしまうが,同項がこのようなことまでも認める趣旨でないことは明白である。 イ(ア) クレーム受付費用- 11 -小売業者から原告にクレームが次々と寄せられたこと及びそれに要した費用額は知らない。 具体的にどのようなクレームがあり,それに対してどのような対応をする必要があったのかが不明であるので,被告の行為との因果関係の有無が不明である。 (イ) 社内クレーム検査費用クレーム検査に要した時間については知らない。 模倣品であることが既に判明しているものについて,その性能や仕様を調査する必要はなく,当該検査は原告側の事情に基づいて行われたものであるから,被告がその費用を負担すべき理由はない。 (ウ) 被告との打ち合わせのための訪問費用原告担当者の人件費,交通費,訪問時間についてはいずれも知らない。 そもそも,原告担当者が被告を訪問しなければならない必要性はなく,かかる費用について被告が負担すべき理由は全くない。 (エ) サービスインフォメーション費用原告主張の作成費用は知らない。いついかなる必要に基づいて作成したか不明であり,被告が負担すべき義務を負うものではない。 (オ) 部品商,修理工場への訪問費用原告主張の費用額は知らない。いかなる必要に基づき訪問したのか不明であり,被告の行為との因果関係の有無も不明である。 (カ) 新聞広告記事費用(毎日新聞)本件模倣品が出回っていることを毎日新聞の広告によりユーザーに知らせる必要はなく,したがって,その費用について被告が負担すべき理由は全くない。 第3争点に対する判断 争点(1) (商標権侵害行為について過失がなかったか)について- 12 -(1) 前記第2の1(3) のとおり,被告標章1 用について被告が負担すべき理由は全くない。 第3争点に対する判断 争点(1) (商標権侵害行為について過失がなかったか)について- 12 -(1) 前記第2の1(3) のとおり,被告標章1と本件商標1,被告標章2と本件商標2はそれぞれ同一であって,被告は,被告標章2を付した本件模倣品を,被告標章1及び被告標章2を付した包装箱に梱包して販売したものであるから,被告の本件模倣品の販売行為は,原告の本件商標1及び本件商標2に係る各商標権を侵害するものであり,被告は商標法39条,特許法103条により,その侵害の行為について過失があったものと推定されることになる。 この過失推定規定は,商標権の侵害態様や過失を基礎付ける事実の範囲について何ら限定を加えていないので,被告が原告(あるいはフランスの現地法人)の真正品であると認識して被告プラグ1ないし3を輸入したという場合であっても,過失の推定が働くことに変わりはない。 (2) 被告は,本件模倣品をアメリカのICM社から輸入して国内において販売したが,模倣品であるとの認識はなく,認識せずに販売したことに過失はない旨主張するので,検討する。 ア並行輸入は,当該商品の国内と海外での価格差を利用して,同種・同品質の商品を正規代理店より安価に輸入しこれを販売することが可能となり,輸入業者にとって利益があるが,その反面,模倣品・偽造品を輸入する危険を伴い,並行輸入業者がたとえ真正品を発注して輸入したとしても,誤って模倣品・偽造品を輸入してしまう可能性が内在するものであるから,輸入業者が並行輸入をするに際しては,模倣品・偽造品を輸入し販売することのないよう,仕入先の信用状況を十分に調査するとともに,自ら当該商品が模倣品・偽造品でないかどうかを厳重に検査すべき注意義務を負うというべきである。 イとりわけ 模倣品・偽造品を輸入し販売することのないよう,仕入先の信用状況を十分に調査するとともに,自ら当該商品が模倣品・偽造品でないかどうかを厳重に検査すべき注意義務を負うというべきである。 イとりわけ,スパークプラグ等の自動車部品の流通状況については,次の点を指摘できる。 特許庁の「主要業種の特性に対応した海外模倣品対策の在り方に関する調査(平成17年3月)」と題する報告書(甲10号証),社団法人日本- 13 -自動車工業会の「特集自動車と知的財産日中二輪車産業界知的財産権プロジェクト」,「模倣車の輸出市場への影響」と題する報告記事(甲11号証,13号証),日経テレコン21の「巧妙化する中国の知的財産権侵害名義や法人格変え再犯/低い有罪率」と題する記事(甲12号証),によれば,近年,中国において,欧米や日本の製品・ブランドを模倣する行為が横行しており,自動車部品の製造販売行為においてはこうした行為が顕著であることが認められる。 平成14年4月に発足した「国際知的財産保護フォーラム」には,被告が会員である日本自動車部品協会もメンバーとして参加しているところ,同フォーラムのミッションが平成14年12月に中国を訪問した際に作成された報告書では,スパークプラグの模倣の事案が報告され(甲17号証,18号証),また,中国製の模倣品が中国の周辺だけでなく,南北アメリカ,オーストラリア,欧州,アフリカまでほぼ全世界で流通していることを指摘している(甲19号証)。 被告は,日本自動車部品協会(JAPA)の正会員であるが(甲14号証),同協会の機関誌「自動車優良部品」の2005年9月号では,「中国では純正部品として売られているうちの7割がイミテーションだと言われています。」などと中国における模倣品問題が取り上げられ(甲15号証),同協会の平成16年 優良部品」の2005年9月号では,「中国では純正部品として売られているうちの7割がイミテーションだと言われています。」などと中国における模倣品問題が取り上げられ(甲15号証),同協会の平成16年度定時総会では,事業計画案の1つとして,模倣品対策の継続的強化が審議されている(甲16号証)。 また,被告は,平成16年3月に千葉県幕張メッセで開催された自動車部品を中心とする展示会「国際オートアフターマーケットEXPO2004」に出展者として参加していたが,同展示会では,アジア地域における知的財産権侵害問題に関する講演が行われている(甲20号証)。 以上のとおりの事情に照らせば,国産車及び外国車部品・用品の販売・輸出入業者である被告は,スパークプラグを含む自動車部品について,模- 14 -倣品が世界的に流通していた事実を認識していたと認めるのが相当である。 ウさらに,真正品と本件模倣品には,原告主張のとおりの相違点が存在するが(甲9号証),このうち,少なくとも①端子部分(先端の金属部分)の色,②ガスケットと呼ばれる部分の厚さ,脱落しやすさ,③金具の六角部分に付されたロットナンバーの刻印及び金具の胴部のプラグ品番刻印については,両者を比較対照すればその違いが容易に認識でき,模倣品ではないかとの疑念を持つことが十分可能であったと解される。 エ上記のとおり,輸入業者が並行輸入する際には,少なくとも当該商品が真正品であるか否かを確認すべき注意義務があるというべきであるところ,本件においては,上記のとおり,被告がスパークプラグを含む自動車部品の模倣品が世界的に流通していることを認識していたことや,被告はICM社と継続的に取引があったものの,本件のスパークプラグの輸入は今回が初めてであったことに照らしてみれば,被告プラグ1ないし3の輸入に際して,真 的に流通していることを認識していたことや,被告はICM社と継続的に取引があったものの,本件のスパークプラグの輸入は今回が初めてであったことに照らしてみれば,被告プラグ1ないし3の輸入に際して,真正品か否かについて,その確認を厳重に行うべきであったといわなければならない。 そして,真正品との比較対照検査をすれば,模倣品であることは十分認識できたことは上記のとおりであるところ,被告は被告プラグ1ないし3の輸入に際し真正品か否かの確認を行っていなかったと認められるから,被告が本件商標権侵害行為について無過失であるとはいえないことが明らかというべきである。 オ被告は,ICM社に対して原告製のスパークプラグを注文してこれを輸入したのであって,こうした輸入品が模倣品であることを発見することは,その輸入数量が多いこと等からおよそ不可能である旨主張するが,輸入数量が多いとしても,初回輸入品については必ず検査を行うとか,輸入継続中の商品についても随時抜き取り検査をするなどの方法があり得るのであって,その検査,確認が現実問題としても不可能であるなどとは認められ- 15 -ない。 並行輸入は国内外の価格差を利用し,そのメリットを得るために行われるが,並行輸入に伴うリスクを回避するための費用も考慮に入れた上,その取引条件や取引の採否等を決めるべきことは当然であって,被告の主張は,これらの考慮を度外視して利益の獲得のみを主張するものにほかならず,到底採用することができない。 争点(2) (損害の発生及び額)について(1) 被告の利益額による損害の推定(商標法38条2項)ア被告プラグ1ないし3の仕入れ,販売,回収状況は次のとおりである(乙1号証。仕入単価,販売単価は当事者間に争いがない。)。 (ア) 被告プラグ1については,ICM社から1800個を単 38条2項)ア被告プラグ1ないし3の仕入れ,販売,回収状況は次のとおりである(乙1号証。仕入単価,販売単価は当事者間に争いがない。)。 (ア) 被告プラグ1については,ICM社から1800個を単価1.51ドルで仕入れ,このうち991個を単価250円で販売したが,後に956個を回収し,35個が未回収となっている。 (イ) 被告プラグ2については,ICM社から4000個を単価1.2ドルで仕入れ,このうち2753個を単価185円で販売したが,後に2674個を回収し,79個が未回収となっている。 (ウ) 被告プラグ3については,ICM社から4600個を単価1.2ドルで仕入れ,このうち2412個を単価185円で販売したが,後に2340個を回収し,72個が未回収となっている。 イ原告は,商標法38条2項に基づいて,被告が販売した個数に被告が得たであろう利益を乗じた額が損害額と推定されると主張するが,被告は,上記のとおり,被告プラグ1ないし3が模倣品と判明した後に,それらの大半を回収し,その際に被告の負担で正規品との交換を行ったこと(弁論の全趣旨)を考慮すると,正規品と交換した数量部分については,被告が利益を得たとはいえず,また,原告も同数の正規品の販売によって得べかりし利益を得ているといえるから,正規品と交換した数量部分は損害の算- 16 -定から除くべきであると解される。 ウそうすると,被告が被告プラグ1ないし3の販売によって得た粗利益は,本件模倣品を販売し未回収になっている個数を基礎として,1ドル110円で換算すると,次のとおりとなる。 (ア) 被告プラグ1については,仕入単価が166.1円(1.51ドル×110円),販売単価250円との差額(1個当たりの粗利)が83. 9円であり,これに未回収個数35個を乗ずると,2936円となる。 ( 被告プラグ1については,仕入単価が166.1円(1.51ドル×110円),販売単価250円との差額(1個当たりの粗利)が83. 9円であり,これに未回収個数35個を乗ずると,2936円となる。 (イ) 被告プラグ2については,仕入単価が132円(1.2ドル×110円),販売単価185円との差額(1個当たりの粗利)が53円であり,これに未回収個数79個を乗ずると,4187円となる。 (ウ) 被告プラグ3については,仕入単価及び販売単価が被告プラグ2と同じなので,上記(イ)と同様に1個当たりの粗利が53円となり,これに未回収個数72個を乗ずると,3816円となる。 以上のとおり,(ア)ないし(ウ)の粗利益の合計は,1万0939円となる。 エ原告は,被告が得た利益は粗利益の80パーセントを下らないと主張するのに対し,被告はこれを争うと主張するにとどまり,利益率に関する具体的な主張・立証をしない。 したがって,被告の得た利益は上記粗利益合計の80パーセントに当たる8751円と認めるのが相当であって,原告は同額の損害を被ったと推認すべきであり,これを覆すに足りる証拠はない。 (2) その他の損害(商標法38条4項)ア(ア) クレーム受付費用本件模倣品は,カシメが甘く気密性が悪いため,燃焼ガスが漏洩し,プラグが異常加熱し異常燃焼を起こすものであり,エンジン損傷を引き起こしたケースもあった(甲9号証,26号証の1ないし3)。 このため,原告は,本件模倣品が出回り,小売業者らからクレームが- 17 -次々と寄せられたので,担当者がそのクレームに対応したが,そのために人件費(23万2200円),ガソリン代(1760円)及び高速道路通行料(9050円)の合計24万3010円を要したことが認められる(甲21号証ないし23号証,弁論の全趣旨)。 (イ) 社内 ために人件費(23万2200円),ガソリン代(1760円)及び高速道路通行料(9050円)の合計24万3010円を要したことが認められる(甲21号証ないし23号証,弁論の全趣旨)。 (イ) 社内クレーム検査費用原告は,本件模倣品の性能や仕様を調査するために,担当者が調査し「他社プラグ調査報告書」(甲26号証の1ないし3)をまとめたが,そのために人件費2万1500円を要したことが認められる(甲23号証,25号証,弁論の全趣旨)。 (ウ) 被告との打ち合わせのための訪問費用原告の担当者らは,本件模倣品の対策のため,東京の被告本社に合計5回赴いたが,そのために,人件費(9万2450円),駐車場代(3400円)及び新幹線代(4万0280円)の合計13万6130円を要したことが認められる(甲21号証,23号証,27号証ないし32号証,弁論の全趣旨)。 (エ) サービスインフォメーション費用原告は,取引先に対して,本件模倣品に対する注意を促すため,サービスインフォメーション(甲9号証)を作成したが,そのために20万3858円を要したことが認められる(甲33号証,弁論の全趣旨)。 (オ) 部品商,修理工場への訪問費用原告は,本件模倣品の対応のため,東京,仙台,埼玉,宇都宮,新潟及び静岡の各営業所又は出張所の担当者が,模倣品を扱った部品商や修理工場に赴いたが,そのために,人件費(103万4150円),ガソリン代(1万0780円)及び高速道路通行料(2万3850円)の合計106万8780円を要したことが認められる(甲21号証,23号証,34号証の1ないし6,弁論の全趣旨)。 - 18 -(カ) 新聞広告記事費用原告は,本件模倣品が出回っており,これがエンジン損傷等の不具合を引き起こす可能性があることを平成17年1月18日の毎日新聞に掲載してユ 6,弁論の全趣旨)。 - 18 -(カ) 新聞広告記事費用原告は,本件模倣品が出回っており,これがエンジン損傷等の不具合を引き起こす可能性があることを平成17年1月18日の毎日新聞に掲載してユーザーに知らせる措置を取ったが(甲8号証),そのために83万4750円(消費税込み)を要したことが認められる(甲35号証,弁論の全趣旨)。 イ原告は「NGK」ブランドでスパークプラグを製造,販売し,同ブランドによる信用を築き上げてきたものであり,原告の商標権を侵害する本件模倣品が出回り,しかもその模倣品が粗悪品であってエンジン損傷等のトラブルを引き起こすものであったのであるから,原告が上記アの各対応措置を取ったのは相当かつやむを得ないものというべきであり,上記費用合計250万8028円は,いずれも被告の本件商標権侵害行為と相当因果関係のある損害と認めるべきである。 (3) 弁護士費用上述したとおりの損害賠償認容額,その他の諸事情いっさいを考慮すると,本件の弁護士費用については30万円の限度で相当因果関係ある損害と認める。 (4) 上記(1)ないし(3)の合計は,281万6779円である。 よって,原告の請求は,被告に対し,商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償として281万6779円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年10月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部- 19 -中村直文裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官別紙省略 項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部- 19 -中村直文裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官別紙省略
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