平成20(行ウ)517 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年4月28日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文39,514 文字)

- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告に対し,11万5972円を支払え。 被告は,原告に対し,17万7704円を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,平成18年6月15日付け社会保険庁長官の裁定により,原告には障害基礎年金の受給権が平成15年9月20日に発生しており,平成15年8月分以降の国民年金保険料(以下「保険料」という。)については,国民年金法89条1号によりその納付義務が免除されているとして,同裁定後に,沼津社会保険事務所長に対し,原告が同裁定前に同法93条1項の規定により前納していた平成15年4月分から平成19年3月分までの保険料の法定免除及び還付の処理を求めたところ,沼津社会保険事務所長から,(a)上記受給権発生後に支払われた平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料は還付し,(b)上記受給権発生前に支払われた平成15年4月分から平成16「()」年3月分までの保険料は同法89条柱書所定の既に中略前納されたものとして還付しない処理を受けたことから,被告に対し,①この処理は,国民年金法89条に違反し,前納した被保険者を差別的に取り扱うもので不当であるなどとして,公法上の不当利得返還請求として,上記(b)のうち平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料10万5190円及びこれに係る遅延損害金相当額1万0782円の合計11万5972円の還付ないし支払を求める(請求の趣旨第1項)とともに,②原告の法定免除及び還付の処理手続を担当した沼津社会保険事務所の職員らが,その処理を怠慢によって遅延させ,原,,告に暴言を述べるなどの違法行為をしこれによって原告が精神的苦痛を受け- 2 -還付手続の遅延に び還付の処理手続を担当した沼津社会保険事務所の職員らが,その処理を怠慢によって遅延させ,原,,告に暴言を述べるなどの違法行為をしこれによって原告が精神的苦痛を受け- 2 -還付手続の遅延による損害を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,精神的損害15万円及び上記(a)の還付保険料に係る遅延損害金(15か月分)相当額2万7704円の合計17万7704円の賠償を求めている(請求の趣旨第2項)事案である。 関係法令の定め( )国民年金制度は,老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわ れることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とするものであり(国民年金法1条,その被)保険者は,①20歳以上60歳未満の日本国内に居住する者(次の②又は③に該当する者及び被用者年金各法に基づく老齢給付等の受給権者を除く。同法7条1項1号。以下「第一号被保険者」という,②被用者年金各法の。)(。 「」。),被保険者及び組合員又は加入員同項2号以下第二号被保険者という③第二号被保険者の配偶者のうち主として第二号被保険者の収入により生計を維持する20歳以上60歳未満の者(同項3号。以下「第三号被保険者」という)のいずれかである。 。 ( )国民年金の被保険者は,保険料を納付しなければならず(同法88条1 項,その納付義務は,被保険者期間の計算の基礎となる月(同法11条1)項)ごとに発生し,翌月末日までに納付しなければならないとされる(同法87条2項,91条)が,被保険者は,将来の一定期間の保険料を前納する(),,ことができ同法93条1項この場合において前納すべき保険料の額は前納に係る期間の各月の保険料の合計額から,その期間の各月の保険料の額を 被保険者は,将来の一定期間の保険料を前納する(),,ことができ同法93条1項この場合において前納すべき保険料の額は前納に係る期間の各月の保険料の合計額から,その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額を控除した金額とされる(同条2項,同法施行令8条1項。 )( )被保険者は,次のアないしウのいずれかに該当するに至ったときは,そ の該当するに至った日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属す- 3 -る月までの期間に係る保険料について,既に納付されたもの及び同法93条1項の規定により前納されたものを除き,納付することを要しない(同法89条柱書。 )ア障害基礎年金又は被用者年金各法に基づく障害を支給事由とする年金たる給付その他の障害を支給事由とする給付であって政令で定めるもの(障害基礎年金又は被用者年金各法による障害厚生年金・障害共済年金等)の受給権者(最後に厚生年金保険法47条2項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態(以下「障害状態」という)に該当しなくなった日。 から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害基礎年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る)その他の政令で定める。 者を除く)であるとき(国民年金法89条1号,同法施行令6条の5第。 2項各号。 )イ生活保護法による生活扶助その他の援助であって厚生労働省令で定めるもの(生活保護法による生活扶助,らい予防法の廃止に関する法律による援護)を受けるとき(国民年金法89条2号,同法施行規則74条。 )ウ上記ア及びイに掲げるもののほか,厚生労働省令で定める施設(国立及び国立以外のハンセン病療養所国立保養所などに入所していると る援護)を受けるとき(国民年金法89条2号,同法施行規則74条。 )ウ上記ア及びイに掲げるもののほか,厚生労働省令で定める施設(国立及び国立以外のハンセン病療養所国立保養所などに入所しているとき同,)(法89条3号,同法施行規則74条の2。 )( )第一号被保険者は,国民年金法89条各号のいずれかに該当するに至っ たときは保険料の免除理由及びそれに該当した年月日等を記載した届書国,(民年金保険料免除理由該当届)に,国民年金手帳を添えて,14日以内に社会保険事務所長に提出しなければらない(同法施行規則(ただし,平成19年厚生労働省令第95号による改正前のもの。以下同じ)75条。 。 )( )被保険者が国民年金法93条1項の規定により保険料を前納した後,前 納に係る期間の経過前において被保険者がその資格を喪失した場合又は第一号被保険者が第二号被保険者若しくは第三号被保険者となった場合において- 4 -は,その者の請求に基づき,前納した保険料のうち未経過期間に係るものを還付することとし(同法施行令9条1項,同法施行規則80条,その還付)額は,被保険者の資格を喪失した時又は第一号被保険者が第二号被保険者若しくは第三号被保険者となった時において,当該未経過期間につき保険料を前納するものとした場合におけるその前納すべき額に相当する金額とする(同法施行令9条2項。 ) 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)( )原告の受傷及び保険料の納付 ア原告は,平成▲年▲月▲日,静岡県沼津市α内の交差点において,自転車を運転中に乗用車と接触する交通事故に遭い,同事故により○等の傷害を負い,その結果,○,○の各障害(以下「本件障害」という)が残存。 した(乙1,2 月▲日,静岡県沼津市α内の交差点において,自転車を運転中に乗用車と接触する交通事故に遭い,同事故により○等の傷害を負い,その結果,○,○の各障害(以下「本件障害」という)が残存。 した(乙1,2,28)。 ,,イ原告は平成14年4月分から平成16年3月分までの保険料についてそれぞれ平成14年4月4日及び平成15年4月8日に各1年分の保険料を国民年金法93条1項の規定により前納していたが,平成16年ころ,社会保険庁に赴き,同庁運営部年金保険課年金審査専門官に保険料の納付の要否等について相談したところ,障害基礎年金の受給権の発生に係る裁定がされるまで,保険料の納付義務が発生することから,保険料を納付しないと不利益に取り扱われるおそれがあり,また,障害基礎年金の受給権発生日(初診日から起算して1年6月を経過した日(障害認定日)以降)に納付した保険料が還付されるとして,保険料を納付するよう勧められたことから,平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料についても,平成16年4月23日,平成17年4月8日,平成18年4月24日にそれぞれ各1年分の保険料を前納した(甲1,乙7,11の2)。 ( )原告の前納した保険料の一部の還付に至る経緯 - 5 -ア原告は,平成18年5月1日,社会保険庁長官に対し,本件障害が残存したことを理由に国民年金法による障害基礎年金の裁定請求をした乙,。(3,4)イ社会保険庁長官は,同年6月15日,原告に対し,本件障害が障害等級2級8号に該当する障害であり,その障害基礎年金の受給権発生日(障害認定日)を平成15年9月20日とするとともに,2年後に再審の必要があるとする有期認定をする旨の裁定をし(以下「本件裁定」という。),障害基礎年金の支給を開始した(乙4,20)。 ウ原告は,平 認定日)を平成15年9月20日とするとともに,2年後に再審の必要があるとする有期認定をする旨の裁定をし(以下「本件裁定」という。),障害基礎年金の支給を開始した(乙4,20)。 ウ原告は,平成18年7月4日,沼津市役所経由で,沼津社会保険事務所長に対し,国民年金保険料免除理由該当届を提出した(乙5)。 エ沼津社会保険事務所長は,平成19年8月9日,原告に対し,平成16年4月分以降の保険料が免除される旨の国民年金保険料免除理由該当通知書を送付した(乙6)。 オ社会保険庁長官は,平成19年8月13日,原告が前納した平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料が過誤納であるとして,これを還付する旨の決定を行い,原告に対し,国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書によりその旨を通知するとともに,還付請求をするよう通知した上で,平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料について還付請求を行う旨の記載のある国民年金保険料還付請求書の用紙を送付した。 (乙8,9)カ原告は,平成19年8月17日,社会保険庁長官に対し,上記オの国民年金保険料還付請求書の用紙を用いて還付請求をし,社会保険庁長官は,原告に対し,同月31日,上記オの決定に基づき,48万0210円の還付をした(乙9,10)。 ( )本件訴えの提起に至る経緯 ア原告は,平成19年9月14日,静岡社会保険事務局社会保険審査官に- 6 -対し,前記( )エの国民年金保険料免除理由該当通知について,毎月ごと に保険料を納付する被保険者や保険料を納付していない被保険者に比べて不利益を受けており,また,沼津社会保険事務所長の国民年金法89条の規定の解釈に不服があるとして,審査請求をしたが,同審査官は,同年11月9日,上記通知に係る決定が抗告訴訟の対象となる行政処分には 不利益を受けており,また,沼津社会保険事務所長の国民年金法89条の規定の解釈に不服があるとして,審査請求をしたが,同審査官は,同年11月9日,上記通知に係る決定が抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらず,また,国民年金法89条の規定に関する不満については立法政策の問題であって審査請求の対象とならないことを理由として,上記審査請求を却下する決定をし,同月12日,原告にこれを通知した(甲2,3,。 乙11の1・2)イ原告は,平成20年1月17日,上記アの決定を不服として,社会保険審査会に対し,再審査請求を行ったが,同審査会は,同年2月29日,法定期間経過後にされた再審査請求であることを理由として,上記再審査請求を却下する決定をした(甲3,乙12の1ないし3)。 ウ原告は,平成20年8月28日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 争点 ( )国民年金法89条柱書により法定免除の対象から除外される保険料の範 囲( )ア沼津社会保険事務所の職員らの原告に対する違法行為の有無 イ原告の損害の有無 争点に関する当事者の主張の要旨( )争点( )(国民年金法89条柱書により法定免除の対象から除外される保 険料の範囲)について(原告の主張の要旨)ア国民年金法89条柱書及び同条1号は,被保険者が障害基礎年金の受給権者となったときは,保険料について,受給権発生日の属する月の前月から納付することを要しないとして法定免除される旨を規定するとともに,- 7 -既に納付されたもの又は同法93条1項の規定により前納されたものを法定免除の範囲から除外しているが,この「前納されたもの」とは,前納された保険料で受給権発生日の属する月の前月までのものを意味すると解すべきである。 この解釈により,同法93条3項が,前納された保険料 定免除の範囲から除外しているが,この「前納されたもの」とは,前納された保険料で受給権発生日の属する月の前月までのものを意味すると解すべきである。 この解釈により,同法93条3項が,前納された保険料について,各月が経過した際にそれぞれその月の保険料が納付されたものとみなすと規定していることと矛盾なく説明することができるし,月ごとに納付する被保険者や保険料を納付していない被保険者に比べ,原告のように,○して稼動できず,収入もないにもかかわらず,指定された期日に保険料を前納した被保険者が,差別的な取扱いを受けて不平等な結果を招くことを避けることができる。 イ原告の障害基礎年金の受給権発生日は,平成15年9月20日であるから,上記アの解釈によれば,同年4月8日に同法93条の規定により前納した平成15年4月分から平成16年3月分までの保険料15万6770円のうち,受給権発生日の属する日の前月である平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料10万5190円(国民年金の保険料を前「納する場合の期間及び納付すべき額を定める件(昭和49年社会保険庁」告示10。甲4)別表第二参照)についても,保険料を納付することを要しないものとして法定免除されると解されるので,既に前納された同期間の保険料10万5190円は還付されるべきであるし,これを還付しないことによる遅延損害金1万0782円も支払われるべきである。 (被告の主張の要旨)ア国民年金制度は,社会保障制度の一環として,所得の喪失又は減少の危機に瀕する場合に,共同連帯の思想に基づいて,年金等の給付を行うことにより,国民が貧困に陥ることを防止し,国民生活の安定とその向上を図ることを目的とし(国民年金法1条,個々の国民による保険料の拠出に)- 8 -基づく社会保険方式を採用し,同法88条1 行うことにより,国民が貧困に陥ることを防止し,国民生活の安定とその向上を図ることを目的とし(国民年金法1条,個々の国民による保険料の拠出に)- 8 -基づく社会保険方式を採用し,同法88条1項は,国民年金の被保険者が原則として保険料を納付する義務を負担することを定めている。 他方,同法89条は,法定免除を定め,一定の場合に保険料の納付を要しないこととする。同条は,上記のとおり,国民年金制度が拠出型の年金制度を採用し,国民年金の被保険者が原則として保険料の納付義務を課されるという国民皆保険を採用し,拠出能力のない者も被保険者とすることにより,広く公的年金制度による所得保障を及ぼす一方,拠出能力がない場合には,①そのような場合ほど年金制度による保障が必要とされ,②ある時期において負担能力がなくても後に負担能力が生ずることもあるから,負担能力のない時期(免除期間)については例外的に保険料納付義務を負わせないこととした上で,免除期間についても国庫負担分に係る年金額を支給するという仕組みを導入したものである。 イこのように,国民年金法は,原則として被保険者には保険料の納付義務があり,法定免除を拠出能力がない場合における例外的な取扱いとしていることからすれば,法定免除該当事由発生前に既に前納された保険料については,法律上,法定免除該当事由発生日前の拠出能力の点について支障がないとみなされる時点で前納したものと認められ,拠出能力がない場合に該当しないため,納付義務を免除する必要がないといえ,また,保険料納付済期間(同法27条1号)として保険料が算定されるなど年金の給付額が減額されないことから,結果的に被保険者の意思に沿うことになる。 なお,被保険者の資格を喪失した場合には,前納した保険料についても還付の対象となるが(同法93条4項,同法施行 されるなど年金の給付額が減額されないことから,結果的に被保険者の意思に沿うことになる。 なお,被保険者の資格を喪失した場合には,前納した保険料についても還付の対象となるが(同法93条4項,同法施行令9条1項参照,被保)険者の資格喪失の場合には,被保険者の資格喪失期間について国民年金保険制度による保障がされないことから,前納された保険料であっても当然に還付されるものであって,その拠出能力の点に着目した制度ではなく,これと法定免除の場合とを同一に考える必要はない。 - 9 -ウさらに,同法89条柱書の「既に納付されたもの及び第九十三条第一項の規定により前納されたものを除き」との文言からすれば,同条各号所定の事由が発生した日の時点で,既に納付された保険料及び同法93条1項により前納された保険料については,その事由に該当する日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間の保険料であっても,同法89条による法定免除の対象期間に含まれないという制限を設けているものであることは,一見して明白であるし,他方,同条各号所定の事由が発生した日の時点で既に納付され又は前納された保険料について,法定免除の対象から除外される期間を限定的に解することも文言上できない。 エ以上のとおり,国民年金法89条柱書は,法定免除該当事由の発生日の時点で既に前納された保険料については,当該前納に係る対象期間のすべてについて法定免除の対象としない旨を定めているものであって,当該期間については,被保険者には原則どおり納付義務が発生し,保険料が納付されたものとみなされるべきであるから,原告が障害基礎年金の受給権発生日(平成15年9月20日)の時点で既に前納していた同年8月分から平成16年3月分までの期間の保険料についても,原告には納付義務が発生しており なされるべきであるから,原告が障害基礎年金の受給権発生日(平成15年9月20日)の時点で既に前納していた同年8月分から平成16年3月分までの期間の保険料についても,原告には納付義務が発生しており,法定免除の対象とならないので,還付の対象とならない。 オ上記のとおり,本件において,原告に対し還付すべき保険料は存在しないから,遅延損害金が発生する余地はない。 ()( )争点( )ア沼津社会保険事務所の職員らの原告に対する違法行為の有無 について(原告の主張の要旨)ア(ア)原告は,平成18年5月1日以前から,当時の沼津社会保険事務所総合相談室室長であったP1に対し,口頭で,保険料の免除及び還付について相談しており,障害基礎年金の裁定に係る通知を受けた後の同年- 10 -6月16日,P1に対し,口頭で,保険料の免除及び還付の処理を依頼していたものであって同年7月4日付け保険料法定免除理由該当届乙,(第5号証)は,P1が原告の依頼に基づいてその時期になりようやく沼津市役所の職員に依頼して作成させたものであるし,同日以降,月に2回の頻度で沼津社会保険事務所を訪れ,P1と面談し,還付手続の進捗状況等を尋ねたが,当時の法定免除及び還付に関する運用や国民年金保険料免除理由該当届及び還付請求書等の必要書類に関する説明は一切されず,還付手続を処理している最中である旨の説明をされていたのであり,結局,1年以上も,平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料の免除手続や還付手続が遅延したものであり,これは社会保険庁のシステムへの入力処理を怠っていた可能性が極めて高い。 なお,原告は,P1から乙第23号証のファックス文書の送付を受けていない。 (イ)また,原告は,平成19年3月ころ,保険料の前納通知の送付を受けたことから,同年4月 怠っていた可能性が極めて高い。 なお,原告は,P1から乙第23号証のファックス文書の送付を受けていない。 (イ)また,原告は,平成19年3月ころ,保険料の前納通知の送付を受けたことから,同年4月4日,沼津社会保険事務所を訪れ,同通知が送付された理由の説明を求めたところ,当時の同社会保険事務所国民年金保険料課課長であったP2から,沼津市役所の職員の誤記が原因である旨の虚偽の説明を受けた。 さらに,原告は,同月ころ,P2から,平成15年8月分から平成16年3月分までの国民年金保険料の還付を受けられない旨の説明を受けたことから,その理由の説明を求めたが,納得のできる説明を受けられず,また,不服申立ての方法に関する適切な説明がされなかったことから,平成16年4月分から平成19年3月分までの国民年金保険料の免除及び還付を求める時期が遅れた。 イ加えて,原告は,平成19年8月ころ,沼津社会保険事務所の年金相談センターで還付手続を受ける際,同社会保険事務所の職員の対応につき抗- 11 -議したところ,年金相談センターの職員(P3)から「次回の障害認定を取り消してやる」との暴言を述べられた。 。 (被告の主張の要旨)ア国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民等に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民等に損害を与えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものであり,具体的には,公務員の個々の国民に対する職務上の法的義務の有無及びその内容の確定と,その義務に係る義務違反の有無によって,当該公務員の行為の違法性が判断され,本件における各職員の行為等については,各職員において,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為を行ったと認め得るような事情がある場合に限り ,当該公務員の行為の違法性が判断され,本件における各職員の行為等については,各職員において,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為を行ったと認め得るような事情がある場合に限り,違法の評価を受けるものというべきである。 イ社会保険庁長官の原告に対する平成18年6月15日付け本件裁定は,2年の有期認定とされており,2年後に再審査において障害等級が減退する可能性のある裁定であるといえ,そうすると,原告には,将来に老齢基礎年金を受給する可能性が残っており,その受給額が減額されるおそれが存していたといえ,原告の前納していた平成19年3月分までの保険料については,平成11年3月24日付け社会保険庁運営部年金指導課課長補佐通知(乙18)による取扱いに従い,納付を優先させて法定免除及び還付の対象外とすることとし,他方,平成19年4月分からの保険料については,法定免除の対象とする旨の処理を行ったことには十分な合理的理由があったといえる。 そして,沼津社会保険事務所においては,平成19年4月に原告からの指摘を受けたことを契機として,原告の保険料免除期間について再調査を行い,平成18年9月29日付け社会保険庁運営部年金保険課長通知(乙19の2)に基づく取扱いの変更がされたことを踏まえ,受給権発生日の- 12 -時点で既に前納されていた平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料についても,法定免除の対象となる旨の修正をし,原告に同期間分の保険料を還付している。 上記の取扱いの変更は,有期認定の場合における老齢基礎年金の年金額について,従前は法定免除により不利益が生じないような取扱いをしていたところ,本来的には還付し得るものであることから還付することとし,還付によって生じ得る不利益については,個々人の自己責任にゆだねることとし 従前は法定免除により不利益が生じないような取扱いをしていたところ,本来的には還付し得るものであることから還付することとし,還付によって生じ得る不利益については,個々人の自己責任にゆだねることとしたものであって,従前の取扱いによっても原告に不利益が生じていたとはいえない。 ウ他方,原告については,平成18年5月1日の時点においては,障害基礎年金の受給権が発生しているか否かが明らかではなかったのであって,国民年金保険料免除理由該当届又は国民年金保険料還付請求書が提出されておらず,また,平成19年8月17日に原告名義の国民年金保険料還付請求書が提出されていることからすれば,原告が同日以前に還付請求を行っていたとするのは誤りである。 また,平成18年9月29日以前に国民年金保険料免除理由該当届が提出されていた被保険者については,同日付け通知による取扱い変更後の運用が必ずしも被保険者にとって有利になるものではなく,むしろ,将来,障害基礎年金が受給されない場合に老齢基礎年金の受給額が減少する不利益が生ずるリスクを被保険者の選択・責任とするものであるから,同日以後に改めて国民年金保険料免除理由該当届が提出された場合や被保険者から何らかの問合せ等がされた場合を除き,同日付け通知による取扱い変更後の運用に従った還付はあえて積極的には行われていなかったのであり,原告は平成19年4月4日より前に法定免除に関する問い合わせ等をしていなかったのであるから,その保険料について還付を行う必要はない。 そして,沼津社会保険事務所の国民年金保険料課のP2は,原告が平成- 13 -19年4月4日に前納した保険料の還付に関する問い合わせをしたことから,原告に対し,原告の平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料は還付できるが,平成15年8月分から平成16年3月 13 -19年4月4日に前納した保険料の還付に関する問い合わせをしたことから,原告に対し,原告の平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料は還付できるが,平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料は還付できない旨説明したところ,原告は,平成19年4月11日,還付されない保険料があることを不服として,平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料が還付されることも許さないとし,P2も,還付手続を進行させると国民年金法上の消滅時効(同法102条4項)による不利益が生ずるおそれがあり,また,原告と沼津社会保険事務所との間の関係が悪化することを懸念して,原告に対する還付手続を進めることを見合わせた。 このような経緯から,沼津社会保険事務所の職員らとしては,原告が国民年金保険料還付請求書を提出した平成19年8月17日までの間,原告に対する還付手続に着手できなかったものであり,その提出後速やかに処理をして,同月31日に原告に対し上記還付請求に係る還付をしたものであり,その対応が違法であるということはできない。 ( )争点( )イ(原告の損害の有無)について (原告の主張の要旨)原告は,P1に対し,原告への保険料の還付を求めていたが,十分な説明を受けられず,約15か月間にわたり数十回も沼津社会保険事務所へ出向かされ,同社会保険事務所において長時間待たされた後に門前払いをされるような対応を受けるなど,多大な肉体的・精神的苦痛を被り,また,同社会保険事務所の職員から暴言を受けたことにより精神的苦痛を被ったものであり,その損害としては,未還付保険料の遅延損害金相当額2万7704円と慰謝料15万円との合計である17万7704円を下らない。 (被告の主張の要旨)原告の主張は争う。 - 14 -なお,還付をするには,会計法令に定め ,未還付保険料の遅延損害金相当額2万7704円と慰謝料15万円との合計である17万7704円を下らない。 (被告の主張の要旨)原告の主張は争う。 - 14 -なお,還付をするには,会計法令に定められた手続を経る必要があり,還付請求と同時に還付をすることは事実上不可能であるから,国民年金の保険料還付請求権の履行期については,還付を行うために必要な事務手続を合理的に完了する時期までは到来しないと解すべきである。本件では,上記のとおり,原告の還付請求の14日後に還付しているのであるから,上記事務手続を合理的に完了する時期までに還付が行われたというべきであり,遅延損害金が発生する余地はない。 第3争点に対する判断 争点( )(国民年金法89条柱書により法定免除の対象から除外される保険 料の範囲)について( )国民年金法89条柱書の「既に納付されたもの及び第九十三条第一項の 規定により前納されたもの」の範囲ア国民年金制度は,老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的とし(国民年金法1条,被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行う保険方式を)制度の基本とするものであり(同法87条,年金給付に要する費用に充)てる保険料について,政府がこれを徴収することとされ(同条1項,そ)の納付義務は,第一次的に被保険者が負担することとされる(同法88条1項。国民年金の被保険者は,原則として日本国内に住所を有する20)歳以上60歳未満の者とされ(同法7条1項,通常の稼働年齢層に限定)されているものの,①保険料の拠出能力が低いとされている者こそ年金による所得保障を必要としていること,②保険料の拠出能力は変動するものであり,年金という長期保険制度においては,被保険者期間の一時点 されているものの,①保険料の拠出能力が低いとされている者こそ年金による所得保障を必要としていること,②保険料の拠出能力は変動するものであり,年金という長期保険制度においては,被保険者期間の一時点における保険料の拠出能力の有無から制度の対象外とすることは,国民年金制度の意義に反するほか,事務処理上も煩雑に過ぎるといえることから,保険料の拠出能力の有無を要件とせず,上記要件を充たす者すべてを国民年- 15 -金の被保険者になるものとし,さらに,等しく保険料を拠出する義務を課するものとしている(同法87条3項参照。 )このように,国民年金法においては,原則として,一定の年齢層の者を被保険者とし,所得の多寡又は所得活動上の差異にかかわりなく,等しく一定の保険料を拠出すべきものとする一方で,一定の要件を備える場合,すなわち,拠出能力がなく,又は保険料を納付させる意味がないと認められる場合には,保険料の納付義務を免れさせ,その納付を要しないものとする制度として,(Ⅰ)法定の要件に該当すれば別段の手続を経ることなく保険料の納付義務を免れる法定免除の制度(同法89条)及び(Ⅱ)申請に基づき都道府県知事の決定によって保険料の納付義務を免れる申請免除制度(同法90条ないし90条の3)がそれぞれ設けられている。 イ国民年金保険制度における被保険者のうち,保険料の拠出能力がないことが客観的に明らかな者及び将来に老齢基礎年金を受給する必要がないことが客観的に明らかな者については,その保険料の納付を免れさせるべきことが客観的に明らかであるから,国民年金法は,上記の客観的事由に該当することをもって,以後の保険料の納付義務が発生しないこととし,具,,体的には①保険料の拠出能力がないことが客観的に明らかな場合として(a)生活保護法による生活扶助又はらい予 の客観的事由に該当することをもって,以後の保険料の納付義務が発生しないこととし,具,,体的には①保険料の拠出能力がないことが客観的に明らかな場合として(a)生活保護法による生活扶助又はらい予防法の廃止に関する法律による援護を受けるとき国民年金法89条2号同法施行規則74条及び(b)(,)国立及び国立以外のハンセン病療養所,国立保養所又はその他厚生労働大臣が指定する施設に入所したとき(同法89条3号,同法施行規則74条の2)を,②老齢基礎年金を受給する必要がないことが客観的に明らかな場合として,障害基礎年金又は被用者年金各法に基づく障害を支給事由とする年金たる給付その他の障害を支給事由とする給付であって政令で定めるもの(被用者年金各法による障害厚生年金又は障害共済年金等)の受給権者(最後に障害状態(厚生年金保険法47条2項に規定する障害等級に- 16 -該当する程度の障害の状態)に該当しなくなった日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害基礎年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る)その他の政令で定める者を除く)であると。 。 き(国民年金法89条1号,同法施行令6条の5第2項各号)を,それぞれ法定免除事由として定め,上記①又は②の事由に該当する場合には,当然に,保険料の納付義務が発生せず,その納付を要しないこととしていると解される。 ウ上記ア及びイにおける我が国の国民年金制度の目的・性格及び法定免除制度の趣旨を前提として,同法89条柱書が法定免除の対象となる保険料について「既に納付されたもの及び第九十三条第一項の規定により前納されたものを除き」との限定を付している範囲を検討するに,法定免除の効力が,上記イのとおり,同法89条各号の定める法定免除事由の発生により何らの手続を経ることなく当然に発 三条第一項の規定により前納されたものを除き」との限定を付している範囲を検討するに,法定免除の効力が,上記イのとおり,同法89条各号の定める法定免除事由の発生により何らの手続を経ることなく当然に発生するものであって,当該事由の発生日の属する月の前月から当該事由に該当しなくなる月までの期間に係る保険料の納付義務を発生させないこととするものであることからすれば,法定免除事由に該当するに至った日を基準として,その前後に納付され又は前納された保険料について当該日と納付又は前納の日との前後によって別個に取り扱うことには合理性があるというべきであり,また,同法89条柱書の文理(被保険者(中略)が次の各号のいずれかに該当するに至「つたときは(中略)期間に係る保険料は,既に納付されたもの及び第九,十三条第一項の規定により前納されたものを除き,納付することを要しない)からすれば,法定免除事由に該当するに至った日より前に納付さ。」れ又は前納された保険料については,当該保険料の保険期間による限定を加えることなく,一体のものとして法定免除の対象から除外されるものと解するのが相当であるというべきである。 そして,このように解することについては,①法定免除事由に該当する- 17 -に至った日より前に納付され又は前納された保険料は,同法89条各号の定める法定免除事由に該当するか否かが客観的には不確定な時点において拠出されたものであって,その時点においては,当該被保険者につき保険料の納付義務を免れさせるべき客観的事由の存否が未確定の状態にあったということができ,このような被保険者については,法定免除制度による優遇的な措置を講ずべき必要性自体も減殺されているということができ,また,②被保険者が納付し又は前納した保険料は,当該被保険者期間に有,,効に納 このような被保険者については,法定免除制度による優遇的な措置を講ずべき必要性自体も減殺されているということができ,また,②被保険者が納付し又は前納した保険料は,当該被保険者期間に有,,効に納付されたものとして当該被保険者の老齢基礎年金の算定において保険料納付済期間の月数(同法27条1号)として考慮され,将来に老齢基礎年金の受給を選択する場合には,法定免除の対象期間として処理される場合に比べ,保険料の算定において有利な取扱いを受けられるのであるから,法定免除の対象として取り扱われないことが一概に被保険者にとって不利益になるものということはできず,さらに,③同法89条柱書により法定免除の対象から除外される保険料の納付又は前納の範囲を,その納付又は前納がされた日と法定免除事由に該当するに至った日との前後によって区分することは,法定免除の対象となる保険料であるか否かを明確に区別することができることから,その事務処理上の便宜にも適うといえ,これらの事情によれば,法定免除制度の趣旨等及び根拠法規の文理に沿って導かれる上記の解釈は,その実質においても一定の合理性を有するものということができる。 ,,,エまた国民年金法における障害基礎年金は被保険者が障害者となって日常生活に支障を来したり,日常生活に著しい制限が加えられたりして所得が減少した場合に,その生活の安定が損なわれることを防止することを目的とする給付であり,同法89条1号が,被保険者が,障害基礎年金の受給権者について,その受給権を得た日の属する月の前月以降の保険料の納付義務を免れることとするのは,障害基礎年金の受給権が認められるよ- 18 -うな重い障害を持つ者については,その後の稼動能力の回復がほとんど期待できず,他方,その所得保障については,一般に老齢基礎年金に比べて被 とするのは,障害基礎年金の受給権が認められるよ- 18 -うな重い障害を持つ者については,その後の稼動能力の回復がほとんど期待できず,他方,その所得保障については,一般に老齢基礎年金に比べて被保険者に有利な障害基礎年金の給付が受けられることから,将来の老齢基礎年金の受給に向けて保険料を納付させる意味が減殺されることが客観的に明らかになることによるものと解されるところ,同号の法定免除についてみても,①被保険者が障害基礎年金の受給権発生日より前に納付し又は前納した保険料については,将来に老齢基礎年金を受給する必要がないことが客観的に明らかであるとはいえない時点において支払われた保険料であるといえ,その時点では保険料を納付させる意味がないことが客観的に確定しておらず,また,②障害基礎年金と老齢基礎年金とが併給されることがなく,一般には前者の方が障害者に有利であることを考慮しても,将来に老齢基礎年金の受給権を取得した場合に,同年金の受給を選択してその給付を受ける可能性が全くなくなるとはいえない以上,法定免除の対象として取り扱われることが一概に被保険者にとって不利益になるものということはできないし,さらに,③事務処理上の便宜の点についても,他の法定免除事由の場合と障害基礎年金の受給権発生の場合とで法定免除の対象となる保険料の範囲に係る取扱いを異にする煩雑さを回避できる利点があることからすれば,上記ウにおいて述べた解釈については,法定免除事由が障害基礎年金の受給権発生である場合(国民年金法89条1号)についても妥当するものとして,障害基礎年金の受給権発生日より前に納付され又は前納された保険料については,当該保険料の保険期間による限定を加えることなく,一体のものとして法定免除の対象から除外されるものと解するのが相当であるというべきである。 権発生日より前に納付され又は前納された保険料については,当該保険料の保険期間による限定を加えることなく,一体のものとして法定免除の対象から除外されるものと解するのが相当であるというべきである。 オ(ア)この点について,原告は,<A>国民年金法93条3項は,同条1項により前納された保険料については,前納に係る期間が経過した際に,それぞれその月の保険料が納付されたものとみなす旨規定しており,そ- 19 -うすると,既に同法93条1項により前納された保険料として,同法89条によって法定免除の対象から除外される保険料の範囲は,原告の障,,害基礎年金の受給権発生日の時点で期間を経過している部分すなわち,,同日の前月分より前の保険料に限定されると解すべきであることまた<B>原告の障害基礎年金の受給権発生日より前に前納した保険料が法定免除の対象から除外されるとすれば,誠実に受給権発生日より前に一定期間分の保険料を前納した被保険者が,月ごとに納付する被保険者又は未納者に比べて不利益な取扱いを受けることになり,差別的な結果を招くことになる旨主張する。 (イ)まず,原告の上記<A>の主張について検討するに,国民年金法93条1項の規定により前納された保険料は,あらかじめ将来の保険期間に係る保険料を納付するものであるとともに,預り金としての性質も併せ持つものであると解されることから,保険料の納付については,前納された保険料に係る各月が経過することによって生ずる納付義務につい,()てそれぞれ納付されたものとみなされることとされている同条3項ところ,仮に,法定免除の対象から除外される保険料が同条3項の規定により納付されたとみなされるものに限定されるのであれば,同法89条柱書において「納付されたもの」に加えて「第九十三条第一項の規定により ろ,仮に,法定免除の対象から除外される保険料が同条3項の規定により納付されたとみなされるものに限定されるのであれば,同法89条柱書において「納付されたもの」に加えて「第九十三条第一項の規定により前納されたもの」を規定する必要はないところ,あえて「納付されたもの」に加えて「第九十三条第一項の規定により前納されたもの」が規定されており,しかも,この前納された保険料から,法定免除事由に該当するに至った日の属する月の前月以降の期間に係る保険料を除外する規定は存しないことからすれば,法定免除事由に該当するに至った日(障害基礎年金の受給権発生日)より前に前納された保険料のうち,その日の属する月の前月以降の期間に係る保険料が法定免除の対象から除外される範囲に含まれないと解することはできないといわざるを得な- 20 -い。また,前納された保険料の法的性質については,あらかじめ将来の保険料を納付する性質と預り金としての性質とを併せ持つものと解されることからすれば,前納された保険料のうち,保険期間が経過していない部分と既に保険期間が経過している部分とを必ずしも別個に取り扱わなければならないものではなく,法定免除の対象に含まれるか否かは,専ら同法89条柱書の解釈にゆだねられているということができるから,前記ウ及びエで述べた同条柱書の解釈が,同法93条3項の規定と抵触するということもできないのであって,上記<A>の主張は理由がない。 (ウ)次に,原告の上記<B>の主張について検討するに,国民年金法93条1項の前納制度は,国民年金の被保険者の収入状況が多様であることに配慮して,その納付方法を毎月ごとに納付する方法のほか,事前に一定期間をまとめて納付する方法を認め,被保険者の便宜に資する趣旨で設けられたものであると解されるところ,同法89条柱書において ることに配慮して,その納付方法を毎月ごとに納付する方法のほか,事前に一定期間をまとめて納付する方法を認め,被保険者の便宜に資する趣旨で設けられたものであると解されるところ,同法89条柱書において,法定免除事由に該当するに至った日より前に納付され又は前納された保険料が保険料の期間の区別なく一体のものとして法定免除の対象から除外されるとしても,前記ウ及びエのとおり,①法定免除事由に該当する前の時点においては,当該被保険者につき法定免除による優遇措置を講じる必要性が減殺されており,また,②被保険者が納付し又は前納した保険料は,法定免除の対象から除外されるとしても,将来に老齢基礎年金の受給を選択する場合には保険料の算定において有利な取扱いを受けられるという点で,一概に不利益を受けるものとはいえず,さらに,③国民年金の管理に係る事務処理上の便宜に資するといった点も考慮すれば,保険料を前納する場合と月ごとに納付する場合とで取扱いを異にすること自体が直ちに不合理な取扱いであるということはできないし,未納の場合には,誠実に前納した被保険者と異なり,将来に老齢基礎年金- 21 -の受給を選択したとしても本来受けるべき保険給付額を受けることができないことも考慮すれば,被保険者のうち保険料を前納した者と月ごとに納付する者又は未納者との間で保険料の取扱いを異にする結果となるとしても,そのことをもって直ちに不合理に差別的な取扱いであるということはできず,上記<B>の主張は理由がない。 ( )上記( )の検討を前提として,原告の平成15年8月分から平成16年3 月分までの保険料が法定免除の対象となるか否かについてみるに,前記前提事実によれば,①社会保険庁長官は,平成18年6月15日,原告の本件傷病による障害の程度について,障害等級2級8号に該当す 月分までの保険料が法定免除の対象となるか否かについてみるに,前記前提事実によれば,①社会保険庁長官は,平成18年6月15日,原告の本件傷病による障害の程度について,障害等級2級8号に該当する障害であり,その受給権発生日は平成15年9月20日であり,2年の有期認定とする旨の裁定をしたこと(前記前提事実( )イ,②原告は,平成15年4月8日, )平成15年4月分から平成16年3月分までの期間の保険料について,同法93条1項の規定による前納をしたこと(同( )イ)がそれぞれ認められる ことからすれば,原告の平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料は,いずれも原告の障害基礎年金の受給権発生日である平成15年9月20日より前に既に同項の規定により前納された保険料であると認められ,同法89条柱書に規定する「既に(中略)第九十三条第一項の規定により前納されたもの」に該当するものといえる。 そうすると,上記( )で述べた国民年金法89条柱書の解釈によれば,原 告の平成15年8月分から平成16年3月分までの期間の保険料については,同法89条による法定免除の対象から除外されているものというべきで,,あり各月の経過によって各月の納付義務が逐次有効に発生するのであって上記期間の各月が経過した際に逐次納付されたものとみなされるのであるから(同法93条3項,いずれの期間の保険料についても既に有効に発生し)た納付義務に基づく納付による弁済の効果が生じたものということができ,他に,原告が前納した上記期間の保険料について,その納付による弁済の効- 22 -果が失われ,被告においてこれを原告に還付すべき義務の存在をうかがわせる特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料の還付 - 22 -果が失われ,被告においてこれを原告に還付すべき義務の存在をうかがわせる特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料の還付を求める請求は理由がないといわざるを得ない。 ( )そして,上記( )のとおり,被告において原告の前納した平成15年8月 分から平成16年3月分までの保険料を還付すべき義務の存在を認めることはできないのであるから,上記期間の保険料について遅延損害金の支払義務が発生する余地はなく,その余の点について検討するまでもなく,原告の上記期間の保険料に係る遅延損害金相当額の支払を求める請求は理由がないといわざるを得ない。 争点( )ア(沼津社会保険事務所の職員らの原告に対する違法行為の有無) について( )国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員 が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから,公務員による公権力の行使に係る行為に同項にいう違法があるというためには,公務員が,当該行為によって損害を被ったと主張する者に対して負う職務上の法的義務に違反したと認められることが必要であると解される(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,同平成18年(受)第263号同20年4月15日第三小法廷判決・民集62巻5号1005頁参照。 )( )そこで,以下,上記( )を前提として,沼津社会保険事務所において原告 との対応を担当したP1,P2又は他の同社会保険事務所の職員(以下,併せて「沼津社会保険事務所の職員ら」という)の各行為に上記( )の違法。 があ として,沼津社会保険事務所において原告 との対応を担当したP1,P2又は他の同社会保険事務所の職員(以下,併せて「沼津社会保険事務所の職員ら」という)の各行為に上記( )の違法。 があるか否かについて検討するに,その検討の基礎となる事実として,前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ- 23 -る。 ア社会保険庁においては,平成11年3月24日付け都道府県民生主管部(局,国民年金主管課(部)長あて社会保険庁運営部年金指導課課長補)佐通知「障害基礎年金受給権者にかかる国民年金保険料の取り扱いについて(乙18。以下「平成11年通知」という)を発出し,障害基礎年」。 金の受給権が遡及して発生した受給権者の国民年金の保険料について,従前の取扱いについて,障害の程度が減退(軽快)しない場合においてのみ受給権発生時に遡って還付できるという特例的な取扱いを行ってきたとした上で,今後も同取扱いを引き続き実施し,障害の程度が減退しない場合にのみ受給権発生時に遡って還付することとし,障害の程度が減退する可能性がないことが確定していない場合には還付の処理手続を行わないこととする取扱いを実施するものとし,同通知により,都道府県を通じて社会保険事務所及び市町村に対する同取扱いの周知・指導が行われていた乙。 (18,弁論の全趣旨)イ沼津社会保険事務所においては,平成18年当時,同社会保険事務所総合相談室が1階総合受付の隣に年金相談センターを設け,主に利用者の年金請求など,年金の支給に関する相談を行い,具体的には,保険の支給を受けようとする者に,請求書の記載内容やその方法,必要書類等の相談に応じて,その説明をするほか,各請求の受付をする事務を担当していた。 なお,同社会保険事務所においては,総合相談室とは ,保険の支給を受けようとする者に,請求書の記載内容やその方法,必要書類等の相談に応じて,その説明をするほか,各請求の受付をする事務を担当していた。 なお,同社会保険事務所においては,総合相談室とは別の部署である年金給付課が,請求書が受け付けられられた後の審査や入力処理等を担当していたほか,年金相談センターが繁忙な場合には来訪者の相談の事務も担当していた。 原告は,平成18年4月17日,沼津社会保険事務所を訪れ,上記年金,,相談コーナーにおいて障害基礎年金の請求方法等について質問をしたが当初,対応した職員との間で十分に意思の疎通ができなかったことから,- 24 -当時の同社会保険事務所の総合相談室室長であったP1及び他の職員の2名で原告との対応をすることとなった。P1らは,原告が,障害基礎年金を受給するための手続を執ることを希望しており,右手に障害があるために請求書等を作成することができないことを問題としているものと解し,原告名義の国民年金障害基礎年金裁定請求書及び国民年金病歴状況等申立書を代筆してその作成を代行するとともに,裁定請求をするための必要書類である診断書等(国民年金法施行規則31条2項各号参照)を持参するよう伝えた。 原告は,同年5月1日,同年2月10日に作成された診断書を持参して同社会保険事務所の年金相談センターを訪れ,その障害の状態を示すレン,。 トゲンフィルムを追完することとして障害基礎年金の裁定請求を行った(以上につき,甲1,乙2,3,20ないし22,28)ウ社会保険庁長官は,同年6月15日,原告の障害の程度について,障害等級2級8号に該当するとし,その障害認定日を平成15年9月20日とし,2年の有期認定とする旨の本件裁定をした。本件裁定の通知を受けた原告は,平成18年6月16日又は19日,沼津社会保険 いて,障害等級2級8号に該当するとし,その障害認定日を平成15年9月20日とし,2年の有期認定とする旨の本件裁定をした。本件裁定の通知を受けた原告は,平成18年6月16日又は19日,沼津社会保険事務所の年金相談センターを訪れ,対応したP1に対し,上記障害基礎年金に係る本件裁定の内容について,2年後に再審が必要となる理由についての説明を求めるとともに,国民年金の保険料の免除を受ける手続について相談をした。 (甲1,乙5,20,21,24)エ原告は,同月19日,静岡社会保険事務局に電話をし,同社会保険事務局年金課職員に対し,①上記ウの本件裁定について,(a)原告の障害の一部(○の部分)のみが回復した場合に,その障害がいかなる障害等級に該当するかという事項,(b)障害基礎年金診断書の記載事項,(c)公立学校共済組合への加入記録の入手方法に関する説明を求めるとともに,②退職共済年金・障害基礎年金・老齢基礎年金の65歳以降の受取方法と今後の- 25 -保険料の納付の要否について説明を求めた(乙21,27)。 同社会保険事務局年金課の職員は,同月20日,上記①の質問事項については,原告に対し,同日午後4時ころ,上記①(a)ないし(c)に関する回答を記載した「連絡事項」と題する書面(乙27の3枚目)を,○の障害に関する障害等級の認定方法に関する文献の一部の写し(同4ないし8枚目)及び平成7年2月9日付けP4理事長外作成の「関節可動域表示ならびに測定法(平成7年2月改訂) (同9ないし11枚目)を添付資料と」して併せてファックス送信し,回答した(乙21,24,27)。 同社会保険事務局年金課の職員は,原告に上記送信をした日である平成18年6月20日,P1に電話をし,原告から電話で説明を求められたこと,同年金課の回答として上記ファックス文書 21,24,27)。 同社会保険事務局年金課の職員は,原告に上記送信をした日である平成18年6月20日,P1に電話をし,原告から電話で説明を求められたこと,同年金課の回答として上記ファックス文書を原告に送信したことを報告し,併せて,上記②の質問事項については,回答案を示した上で,沼津社会保険事務所から原告にこれをファックス送信するよう指示し,P1に対し,同回答案をファックス送信するとともに(乙27の1,2枚目,)同回答案の電子データを電子メールで送信した(乙21,24,27)。 上記回答案(乙27の2枚目)には,<ア>原告は,65歳以降,老齢基礎年金と退職共済年金とを併せた年金か,障害基礎年金と退職共済年金とを併せた年金のいずれかを選択して受給することができること,<イ>原告は,60歳までの保険料の納付を続けても保険料支払期間が40年に満たないところ,障害等級2級に該当する障害者の受ける障害基礎年金の金額は,40年間保険料を納付した老齢基礎年金の金額と同額であるから,障害基礎年金と退職共済年金の合計額の方が,老齢基礎年金と退職共済年金の合計額よりも多額になること,<ウ>上記<イ>の理由から,(a)原告が65歳以降も引き続き障害基礎年金を受給することができる場合には,国民年金の保険料の納付を継続する利益はないが,(b)原告の症状が改善するなどして65歳以降に障害基礎年金を受給することができない場合には,- 26 -老齢基礎年金を受給することになるため,国民年金の保険料の納付を継続した方がよいと考えられること,<エ>原告においては,上記<ア>ないし<ウ>の事情を踏まえた上,平成19年4月以降の保険料について,法定免除の処理手続をするか又は納付を継続するかを選択する必要があることの説明が記載されていた(乙27)。 オP1は,上 ア>ないし<ウ>の事情を踏まえた上,平成19年4月以降の保険料について,法定免除の処理手続をするか又は納付を継続するかを選択する必要があることの説明が記載されていた(乙27)。 オP1は,上記回答案を受信した日である平成18年6月20日当時,同月15日付けの原告の障害基礎年金に係る本件裁定が2年の有期認定とされており,平成11年通知の取扱いに従えば,原告が保険料を前納している平成19年3月分までの保険料については,直ちに法定免除の対象となるものではなく,平成19年4月分以降の保険料のみが法定免除の対象となり,前納された保険料が還付されることはないと考えていたことから,上記エの回答案と同内容の回答書を原告に送付することにより,原告に前納している平成19年3月分までの保険料が還付されないことが伝わると,,考え上記エの回答案と同内容の回答書にファックス送付状を付した上で平成18年6月20日午後5時ころ,原告にこれをファックス送信した。 (乙21,23,24)カ原告の法定免除の処理手続を担当した沼津社会保険事務所の職員は,平成18年6月ころ,原告の上記ウの本件裁定では2年後に再審が必要とされていたことから,その障害の程度が減退しない場合であるか否かが不確定な段階であると判断し,平成11年通知にのっとった取扱いによれば,原告は平成19年3月分までの保険料を前納していたことから,平成19年4月分以降の保険料のみが法定免除の対象となるものと考えていた。そして,同職員は,原告からの同人の障害により申請書類を記載することができない旨の相談内容及びそれまでの経過を考慮すると,原告の法定免除の処理手続に係る必要書類を代筆してその作成を代行し,法定免除の処理手続を進めるのが相当であると考え,沼津市役所の職員に記載事項を指示- 27 -して原 それまでの経過を考慮すると,原告の法定免除の処理手続に係る必要書類を代筆してその作成を代行し,法定免除の処理手続を進めるのが相当であると考え,沼津市役所の職員に記載事項を指示- 27 -して原告の国民年金保険料免除理由該当届の作成を代行させることとし,その際「該当年月日」欄の記載について,当初は,平成19年4月1日,からとするよう指示したものの,その後,同欄には障害基礎年金の受給権発生日を記載すべきことに気付き,同欄の記載を平成15年9月20日に訂正するよう指示し,沼津市役所の職員をして,その旨の国民年金保険料免除理由該当届(乙5)の作成を代行させ,平成18年7月5日,沼津市役所から沼津社会保険事務所に提出させた(甲1,乙5,21,22)。 沼津社会保険事務所においては,国民年金に係る情報を電子データとして管理・運用していたことから,国民年金保険料免除理由該当届が提出された場合には,その記載事項の確認をした後に当該届出事項を電子データとして入力処理する作業が必要であり,入力処理がされると,法定免除の期間が自動的に確認され,1か月以内にその結果を国民年金保険料免除理由該当通知書により届出人に通知する態勢がとられ,その際には,同通知書は原本自体を送付する関係から写しを保管しない処理をしていたが,平成11年通知による取扱いに従った処理を行うため,届出日前に保険料が納付され又は前納された期間については自動的には法定免除の対象とされないように設定されていた。このため,原告の国民年金保険料免除理由該当届(乙5)についても,上記処理と同様の処理がされたことから,原告が前納した平成19年3月分までの保険料は自動的には法定免除の対象とされず,同年4月分以降の保険料を法定免除の対象とする処理がされ,平成18年7月末ころ,原告にその旨の国民年金保 れたことから,原告が前納した平成19年3月分までの保険料は自動的には法定免除の対象とされず,同年4月分以降の保険料を法定免除の対象とする処理がされ,平成18年7月末ころ,原告にその旨の国民年金保険料免除理由該当通知書が送付された(甲1,乙5,6,21,22,弁論の全趣旨)。 (なお,原告は,同年7月末ころに同通知書が送付された記憶はないとするが,上記の一般的な処理の取扱いに照らし,殊更にその通例と異なり同通知書の送付がされなかったとは認め難い)。 キ沼津社会保険事務所においては,平成18年当時,国民年金保険料課が- 28 -被保険者に対する保険料の還付事務を担当していた。同課の職員は,原告の上記カの国民年金保険料免除理由該当届について,上記カのとおり,平成11年通知による取扱いに従い,原告が前納した平成19年3月分までの保険料については,直ちに法定免除の対象となるものではないものとして処理されたことを踏まえ,還付の対象となる保険料はないものとして,還付の処理手続を行わなかった(乙21ないし23)。 ク社会保険庁においては,平成18年9月29日付け三重社会保険事務局長あて社会保険庁運営部年金保険課長通知「国民年金保険料の還付に係る事務の取扱いについて(回答(庁保険発第0929001号。乙19)」の2。以下「平成18年通知」という)を発出し,障害基礎年金に係る。 裁定がされ,その受給権が遡って発生した場合には,当該受給権発生日以降に納付された保険料(同日の属する月の前月以降の保険料に限る)を。 還付することとし,併せて,障害の程度が軽快する可能性がある被保険者については,保険料の還付に際し,将来に老齢基礎年金を受ける上で不利益な取扱いを受けるおそれがある旨を説明し,その上で当該被保険者が還付対象となる期間に係る保険料を納 が軽快する可能性がある被保険者については,保険料の還付に際し,将来に老齢基礎年金を受ける上で不利益な取扱いを受けるおそれがある旨を説明し,その上で当該被保険者が還付対象となる期間に係る保険料を納付済みとすることを希望する場合には追納制度により対応する旨の取扱いに変更することとし,同通知により,同取扱いに従って還付手続を実施するよう,都道府県を通じて社会保険事務所及び市町村に対する同取扱いの周知・指導が行われるようになった。 そして,平成18年通知の発出に伴い,平成18年通知の発出後に国民年金保険料免除理由該当届が提出された場合のみならず,平成18年通知の発出以前に同届が提出されていた事案であっても,平成18年通知の発出後に改めて還付手続の実施を求められた場合には,平成18年通知による取扱いに従って還付手続を実施する取扱いが採られるようになった(乙。 19の1・2,同22)ケ原告は,平成19年3月ころ,沼津社会保険事務所から,同年4月分か- 29 -ら平成20年3月分までの保険料の前納を勧奨する内容の葉書が郵送されたことから,原告の保険料の法定免除の届出に対応した処理及び還付手続がされていないものと考え,平成19年4月4日,沼津社会保険事務所の国民年金保険料課を訪れ,同課長のP2と面談し,同葉書が郵送されてきた経緯の説明を求めるとともに,従前に原告が納付していた保険料が還付されないことへの不満を告げた(乙22)。 P2は,同日,平成18年通知に従った取扱いによれば,原告の平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料については,還付の対象となると考え,原告に対し,同期間分の保険料については,平成18年通知による取扱いの変更により還付できることとなった旨を伝えるとともに,平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料について 対象となると考え,原告に対し,同期間分の保険料については,平成18年通知による取扱いの変更により還付できることとなった旨を伝えるとともに,平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料については,同通知による取扱いの変更後も,そもそも法定免除の対象とならず,還付することができない旨説明した。これに対し,原告は,同日,P2に対し,①平成18年4月以降の沼津社会保険事務所の職員らの対応に不備があること,②平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料が法定免除の対象とならない理由が納得できないことを理由に,平成18年4月以降の経過を示す文書及び上記期間の保険料が法定免除の対象とならない理由について上級の行政機関の意見書をそれぞれ提出するよう求めた。また,原告は,平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料の還付を受けてしまうと,平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料の還付を認めるよう争うことができなくなると考え,平成19年4月11日,P2に対し,平成16年4月分から平成19年3月分までの還付請求手続をしない旨告げた(乙22)。 P2は,同年4月13日,原告に対し「原因についての確認」と題す,る書面(甲1)を交付し,同書面により,①P1の原告に対する保険料の還付についての説明内容の法的根拠,②国民年金保険料免除理由該当届を- 30 -沼津市役所の職員が作成し提出した経緯,③原告の前納した保険料が国民年金保険料免除理由該当届の提出後に自動的に還付の対象とならなかった理由,④平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料の還付を受けられない理由につき社会保険庁に照会中であることをそれぞれ報告し,その上で,平成19年4月下旬ないし5月ころ,改めて平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料の還付手続を進めること 還付を受けられない理由につき社会保険庁に照会中であることをそれぞれ報告し,その上で,平成19年4月下旬ないし5月ころ,改めて平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料の還付手続を進めることについて原告の理解を求めたが,原告は,この要請を断った(甲1,乙22)。 コP2は,原告と沼津社会保険事務所の職員らとの間の上記経緯に照らすと,仮に,原告に無断で法定免除及び還付の処理手続を進行させ,国民年金保険料免除理由該当通知書や国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書とともに,国民年金保険料還付請求書の用紙を原告に送付してその請求を促す手続を執ると,原告の還付請求権について消滅時効が進行し成立してしまう危険があるし,また,原告の反発を招いて紛争を惹起するおそれがあると考え,上記手続を執ることなく,原告が平成16年4月分から平成19年3月分の保険料の還付を受けることについて理解を示すのを待つこととした(乙21,22)。 サ沼津社会保険事務所長は,原告が,平成19年8月3日,年金相談センターを訪れ,上記期間の保険料の還付手続を進めることに同意した旨の報告を受けたことから,原告に上記期間の保険料の還付をするため,上記期間の保険料について法定免除の処理を進め,原告に対し,同月9日,国民年金保険料免除理由該当通知書(乙6)によって,原告の平成16年4月分以降の保険料について免除する旨の通知をし,平成19年8月13日,国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書(乙8)によって,平成16年4月分から平成19年3月分までの期間の前納された保険料が過誤納となり還付対象期間に当たるとして,上記36か月分の過誤納額48万0210(,,円の全額が還付される旨を通知するとともになおこの通知については- 31 -前記カの通例の取扱いと異なり,それまでの 還付対象期間に当たるとして,上記36か月分の過誤納額48万0210(,,円の全額が還付される旨を通知するとともになおこの通知については- 31 -前記カの通例の取扱いと異なり,それまでの原告との折衝の経緯等を踏まえ,事後の紛争に備え,通知書の写しを保管する処理がされた,上記。)期間の保険料の還付を求める旨の国民年金保険料還付請求書の用紙を送付して,還付請求をするよう通知し,これを受けて,原告は,平成19年8月17日,上記還付請求書の用紙に所要の事項を記載して,還付請求をした(乙6,8ないし10,22,弁論の全趣旨)。 シ社会保険庁長官は,同月31日,上記コの原告からの上記期間の保険料の還付請求に基づき,上記36か月分の過誤納額48万0210円を原告の指定する銀行口座への振込送金により支払った(乙10)。 ス社会保険庁長官は,平成20年9月18日,再度,原告の障害の程度を障害等級2級8号,2年の有期認定とする裁定をし,同年11月21日,その障害の程度について,永久認定とする旨の改定をした(乙29の1。 ・2)( )上記( )の認定事実を前提として,以下,沼津社会保険事務所の職員らの 各行為に上記( )の違法があるか否かについて検討する。 アまず,平成18年4月ないし同年8月ころの沼津社会保険事務所の職員らの行為が違法といえるか否かについて検討するに,上記( )の認定事実 によれば,①P1は,平成18年4月18日,沼津社会保険事務所の年金相談コーナーにおいて,原告の障害基礎年金の裁定請求手続について相談,,を受けたことからその申請書等を代筆してその作成を代行するとともに必要書類の準備等を指示し,その結果,原告は,同年5月1日には,障害基礎年金の裁定請求に至り,同年6月15日付けで障害基礎年金の受給 を受けたことからその申請書等を代筆してその作成を代行するとともに必要書類の準備等を指示し,その結果,原告は,同年5月1日には,障害基礎年金の裁定請求に至り,同年6月15日付けで障害基礎年金の受給権に係る本件裁定を受けたこと(前記( )ウ,また,②P1は,平成18 )年6月16日又は同月19日,原告から上記裁定の内容の説明要求及び保険料の免除手続等についての相談を受けた際には,原告の障害は軽快する可能性がないことが確定していなかったため,平成11年通知による取扱- 32 -いを踏まえ,平成18年6月20日,平成19年4月分以降の保険料について,法定免除の届出をするか又は保険料の納付を継続するかを判断する必要がある旨のファックス文書を送付することにより,上記相談に対して一応の回答をしていること(同ウないしオ,さらに,③沼津社会保険事)務所の職員は,平成18年7月4日,原告の国民年金保険料免除理由該当(),届乙5を沼津市役所の職員に代筆させてその作成及び届出を代行させこれにより,(a)沼津社会保険事務所長において,同年7月末ころ,原告の平成19年4月分以降の保険料について法定免除とする処理を行い(同カ,(b)沼津社会保険事務所の国民年金保険料課の職員において,原告)の国民年金保険料免除理由該当届について,平成11年通知による取扱いに従い,還付される保険料がないものとして,還付の処理手続を行わなかったこと(同キ)が認められる。 このような一連の経過からみれば,P1を含む沼津社会保険事務所の職員らは,原告から,平成18年4月18日以降,障害基礎年金の裁定請求手続について相談された際には,その請求書等の書類を代筆してその作成を代行したり,必要書類の準備を指示するなど対応し,また,原告の障害基礎年金に係る本件裁定がされた平成1 降,障害基礎年金の裁定請求手続について相談された際には,その請求書等の書類を代筆してその作成を代行したり,必要書類の準備を指示するなど対応し,また,原告の障害基礎年金に係る本件裁定がされた平成18年6月15日以降,その障害認定の方法等に係る説明等の対応をし,さらに,同年7月4日には,原告の国民年金保険料免除理由該当届の作成を沼津市役所の職員に代行させることにより,原告に係る法定免除の届出に対応した処理を進め,同月末まで,,にはその処理手続を了したものということができこれらの対応において沼津社会保険事務所の職員らの懈怠等によって上記各手続が遅延したことを認めるに足りる証拠はない。 イところで,原告に係る法定免除及び還付の処理手続を担当した沼津社会保険事務所の職員らは,平成18年4月から7月ころまで,平成11年通知による取扱いに従った処理をしていたといえるところ,前記( )クのと - 33 -おり,社会保険庁においては,平成18年9月29日,平成18年通知を発出し,障害基礎年金の受給権発生日以後に納付され又は前納された保険料を還付する旨の取扱いにその取扱いを変更しており,このことからすれば,そもそも,平成11年通知による取扱いに従った上記各行為の適否について検討する必要があるので,以下においてこれを検討する。 国民年金法及びその関係法令においては,障害基礎年金に係る裁定によって過去の時点に遡及してその受給権が発生する場合のように,保険料の法定免除事由が遡及して発生する場合については,他の法定免除事由が発生した場合との区別がされておらず,特に,障害基礎年金の受給権発生日がその裁定の日以前に遡及する性質にあることからすれば,前記1のとおり国民年金法89条柱書の明文の規定により法定免除及び還付の対象から一律に除外されることが法文上 ,特に,障害基礎年金の受給権発生日がその裁定の日以前に遡及する性質にあることからすれば,前記1のとおり国民年金法89条柱書の明文の規定により法定免除及び還付の対象から一律に除外されることが法文上明らかにされていると解される当該受給権発生日より前に納付され又は前納された保険料と異なり,当該受給権発生日からその裁定までの間に納付され又は前納された保険料については,裁定の効果によって,遡及的に法定免除の対象となり納付することを要しないものとなる(なお,保険料の性質上,還付を受けずに納付された状態を維持すること又は還付を受けた後に追納することは,いずれも可能であると解される)ことを前提とした上で,裁定後の取扱いとして,どのよう。 な場合にどのような手続によって還付の処理が行われるのかという事項について,実務上は当然に問題となるところであるが,法令上これを定めた明文の規定はなく,前記第2の1( )のとおり,同法施行令9条1項及び 同法施行規則80条において,前納した被保険者が被保険者資格を失った場合に還付をするとのみ定められていることからすれば,国民年金法及びその関係法令において,障害基礎年金の受給権が裁定により遡って発生する場合に,その遡及する期間中に納付され又は前納された保険料に関し,どのような場合にどのような手続によって還付の処理が行われるのかにつ- 34 -いては,実務の運用にゆだねられているものと解さざるを得ない。 そして,平成11年通知による取扱いは,障害の程度が減退する可能性がある場合には,受給権発生日から裁定日までに納付され又は前納された保険料について,仮に,当然に還付手続を実施するとすれば,将来に障害の程度が減退し,老齢基礎年金の給付を受ける必要が生じた場合に,受給できる年金額が少なくなる不利益を被る結果となることから 納された保険料について,仮に,当然に還付手続を実施するとすれば,将来に障害の程度が減退し,老齢基礎年金の給付を受ける必要が生じた場合に,受給できる年金額が少なくなる不利益を被る結果となることから,そのような不利益の発生を未然に防ぐため,被保険者を保護する後見的な見地から,障害の程度が減退する可能性がなく被保険者に不利益が発生しないことが確実な場合に限定して還付の処理手続を行い,それ以外の場合には還付の処理手続を行わない取扱いを採っていたものと解され,このような取扱いには,前記1( )の国民年金法の制度趣旨に則した一定の合理性があると いえる。また,平成18年通知による取扱いは,受給権発生日から裁定日までに納付され又は前納された保険料について,障害の程度が減退する可能性の有無を問わず,当然に還付の処理手続を行うとした上で,被保険者に対し還付を受けた場合の将来の不利益のリスクを説明し,被保険者が当該保険料を納付済みとすることを希望する場合には,追納制度を利用することにより,実質的には当該保険料を還付の対象から除外するのと同様の処理を例外的に認めたものと解され,このような取扱いにも,前記1( ) の国民年金法の制度趣旨に則した一定の合理性があるといえる。そして,そのような将来の不利益の回避をより重視して,障害の程度が減退しない場合に限り還付の処理手続を行うとの限定を加えていた平成11年通知による取扱いと,当面の保険料の還付を受ける利益の享受をより重視して,そのような限定を加えず当然に還付の処理手続を行うとした上で,将来の不利益の回避については被保険者の自己責任による追納の処理にゆだねた平成18年通知による取扱いとは,それぞれ国民年金法及び関係法令に基づく実務の運用の中で採り得る選択肢として許容され得る取扱いというこ- 35 - ては被保険者の自己責任による追納の処理にゆだねた平成18年通知による取扱いとは,それぞれ国民年金法及び関係法令に基づく実務の運用の中で採り得る選択肢として許容され得る取扱いというこ- 35 -とができ,保護から自己決定への政策的な転換に基づく平成18年通知による上記取扱い変更がされる前の時期において,平成11年通知による取扱いに従った事務処理がされていたことについては,その事務処理に係る行為をもって,国家賠償法上の違法があると評価することはできない。 そして,平成11年通知による取扱いに従った処理がされる場合に,受給権発生日から裁定日までに納付され又は前納されて還付の処理手続が行われていない保険料については,還付がされずに納付された状態が維持されているとみるべきところ,保険料の法定免除及び還付に係る各手続は,法定免除の効果にかんがみ,法定免除の処理が進行すれば当該保険料が自動的に過誤納金と認定されて被保険者への還付の処理手続も開始されるという密接に関連した一連の手続の関係にあることを考慮すれば,平成11,,年通知による取扱いに従い障害の程度が減退する可能性が残存する間は還付されない保険料が納付された状態を維持しておくこととするため,当該保険料の法定免除の処理を進行させず,当面は裁定日以降の保険料のみを対象として法定免除の処理を進めるという運用は,被保険者の保護のた,,,めの後見的な観点に基づく対応であり他方このような運用によっても被保険者は,上記の観点から当該保険料が還付されない以上,法定免除の処理のみが早期に実施されないことにより具体的な不利益を受けるものではないことからすれば,平成11年通知による取扱いに従い,還付の処理手続が行われていない保険料について,その法定免除の処理を進行させなかったことをもって,国家賠償法 より具体的な不利益を受けるものではないことからすれば,平成11年通知による取扱いに従い,還付の処理手続が行われていない保険料について,その法定免除の処理を進行させなかったことをもって,国家賠償法上の違法があると評価することはできない。 したがって,沼津社会保険事務所長又は同社会保険事務所の職員らが,平成18年4月から同年7月ころまでの間,原告の法定免除及び還付の処理手続に当たり,平成11年通知による取扱いに従った処理をしていたことについて,そのことをもって国家賠償法1条1項にいう違法があると評- 36 -価されるものではないと解するのが相当である。 ウ他方,平成19年4月以降の沼津社会保険事務所の職員らの行為につい,,,,てみるに前記( )の認定事実によれば①P2は平成19年4月4日 原告から,平成19年4月分以降の保険料について前納を勧奨する内容の葉書が郵送された理由及び保険料の還付を受けられない理由について不満を述べられたことから,(a)平成18年通知により変更された還付手続の取扱いによれば,原告の平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料を還付できることを伝えるとともに,(b)原告の平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料は還付の対象とならないことを伝えたこと,②原告は,上記(a)の期間の保険料の還付を受けると,上記(b)の期間の保険料について還付の可否を争えなくなると考え,上記(a)の期間の保険料の還付手続を進めることを拒絶していたこと,③P2は,原告の上記①の要求に対し書面で回答をした上で,改めて上記(a)の期間の保険料の還付を受けるよう勧めたが,原告から拒絶されたため,仮に原告に無断,,で還付手続を進めると原告の還付請求権に係る消滅時効の進行が開始し原告の反発を招いて紛争を惹起する 上記(a)の期間の保険料の還付を受けるよう勧めたが,原告から拒絶されたため,仮に原告に無断,,で還付手続を進めると原告の還付請求権に係る消滅時効の進行が開始し原告の反発を招いて紛争を惹起するおそれがあると考え,原告の同意を得るまで還付手続を進行させることを見合わせていたことが認められるところ,上記①ないし③の事実経過によれば,P2は,上記のような原告による還付手続の拒絶に対し,従前の同社会保険事務所と原告との折衝等の経過にかんがみ,原告の利益及び原告との関係に配慮して,法定免除及び還付の処理手続を原告に無断で進行することを自制し,原告が理解を示して同意するまで還付手続の進行を留保していたものということができる。このことに加え,平成18年通知の発出前に提出された原告の平成18年7,,月4日付け国民年金保険料免除理由該当届については同月末ころまでに沼津社会保険事務所長によって,平成11年通知の取扱いに従い,既に平成19年4月分以降の保険料を法定免除の対象とする処理がされていたも- 37 -のであって(前記( )カ,その時点においては,沼津社会保険事務所に ),,おいて当該届出に対する法定免除の処理は終了していたといえるところ前記イのとおり,法定免除手続と還付手続とは密接に関連した一連の手続であるといえるので,仮に上記(a)の期間の保険料について更に法定免除の処理を進めると(国民年金法施行規則75条ただし書。なお,同条ただし書は,平成19年厚生労働省令第95号による改正で新設され,その改正規則は同年7月6日から施行されているので,同条ただし書により職権で法定免除の手続を進められるのは,同日以降に限定される,改めて。)法定免除理由該当通知書が送付されることとなるほか,還付手続も進行を開始し,国民年金保険料過誤納額還 で,同条ただし書により職権で法定免除の手続を進められるのは,同日以降に限定される,改めて。)法定免除理由該当通知書が送付されることとなるほか,還付手続も進行を開始し,国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書及び還付請求書の用紙が原告に送付されることとなり(前記( )サ参照,これらの書類が当時 )の原告に送付されることは,原告の反発を招き同人との関係を更に悪化させて紛争を惹起するおそれがあったということができ,他方,原告は当時上記(a)の期間の保険料の還付を拒否していたのであるから,法定免除の処理のみを早期に進行させないことにより具体的な不利益を受けるものではないといえ,むしろ法定免除及び還付の処理手続が進行すると,原告の還付請求権の消滅時効の進行が開始するなどの不利益を被るおそれがあったといえることも併せ考慮すれば,原告が上記(a)の期間の保険料の還付を受けることに同意するまでの間,当該期間の保険料について法定免除及び還付の処理手続を進めることを留保したP2の行為をもって,国家賠償法上の違法があるということはできない。 ( )アこれに対し,原告は,平成18年5月1日に障害基礎年金の裁定請求 をする以前から,P1に対し,保険料の法定免除及び還付の処理手続について相談をし,あたかも同裁定請求の時点において既に還付請求をしていたかのような主張をする。 しかしながら,原告に障害基礎年金の受給権が発生するか否かは,社会- 38 -(),保険庁長官の裁定を経る必要があること国民年金法16条からすれば仮に原告がP1に対し裁定請求の相談の際に保険料の法定免除及び還付についても相談していたとしても,いまだ社会保険庁長官の障害基礎年金の裁定がされていない時点においては,その相談をもって原告が社会保険庁長官に対し還付請求を行っていたと 際に保険料の法定免除及び還付についても相談していたとしても,いまだ社会保険庁長官の障害基礎年金の裁定がされていない時点においては,その相談をもって原告が社会保険庁長官に対し還付請求を行っていたと認めることはできないし,また,そのような相談をしていたことをもって,P1において原告のために裁定後に還付請求の手続を代行するなどの職務上の法的義務が発生すると解することもできない。 イまた,原告は,平成18年6月16日にはP1に対し保険料の法定免除及び還付の処理手続をするよう口頭で依頼し,その後も1月に2回程度の頻度で沼津社会保険事務所を訪れ,その進行状況を尋ねていたが,P1からは,還付手続を処理中である旨の説明がされたのみで,平成11年通知による取扱い及び平成18年通知による取扱いの変更並びに国民年金保険料免除理由該当届及び還付請求書等といった必要書類に関する説明も受けられなかった旨主張する。 しかしながら,原告が,平成18年7月以降,沼津社会保険事務所を訪れて頻繁にP1と面談をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,また,前記( )オのとおり,P1は,平成18年6月19日及び20 日当時,平成11年通知による取扱いに従うと原告に還付される保険料はないと考え,その旨のファックス文書を原告に送信していたのであるし,沼津社会保険事務所の職員らにおいても,平成18年通知の発出前に同年7月4日付けでされた原告の国民年金保険料免除理由該当届について,平成11年通知による取扱いに従い,平成19年4月以降の保険料のみが法定免除の対象になり,還付される保険料はないことを前提として処理していたのであって,沼津社会保険事務所の職員らが原告に対し前納された全期間の保険料が還付されることを前提とした説明をしていたとは考え難- 39 -い。また,前記 保険料はないことを前提として処理していたのであって,沼津社会保険事務所の職員らが原告に対し前納された全期間の保険料が還付されることを前提とした説明をしていたとは考え難- 39 -い。また,前記( )イ及びキのとおり,沼津社会保険事務所においては, 総合相談室ではなく,国民年金保険料課が保険料の還付手続の事務を処理していたのであるから,総合相談室室長のP1が原告に対し相当期間にわたり還付手続の進捗状況を説明していたとの主張の内容自体が不自然であ,,,るといわざるを得ずこれらの事情を総合すれば原告の主張するように原告がP1に対し平成18年7月以降に毎月2回程度の頻度で還付手続について相談をし,P1から還付手続の処理中である旨説明がされていたと認めることはできない。 そして,前記( )カのとおり,沼津社会保険事務所の国民年金保険料課 においては,平成18年当時,平成18年通知の発出前に原告の国民年金保険料免除理由該当届(乙5)の提出がされたことに基づいて,平成11年通知に従って還付の対象となる保険料がないことを前提とした事務処理がされ,その後,前記( )ケのとおり,上記国民年金保険料課において, 平成19年4月に原告と面談をした際,平成18年通知による取扱いによれば,原告の前納した平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料の還付を受けられる旨を原告に対し説明し,その還付を受けることを勧めた上で,原告がこれを拒絶したことから,原告の利益及び原告との関係,,に配慮して原告の同意が得られるまで還付手続を留保していたのであり平成18年通知が発出された後,原告が保険料の還付について不満を述べた際には,遅滞なく平成18年通知による取扱いに基づく説明がされ,還付手続を進めるか否かは原告の選択にゆだねられていたものと認められる 18年通知が発出された後,原告が保険料の還付について不満を述べた際には,遅滞なく平成18年通知による取扱いに基づく説明がされ,還付手続を進めるか否かは原告の選択にゆだねられていたものと認められるのであるから,上記の事実経過の下で,還付手続を進めることに原告が同意する前の時点において,P1又は他の沼津社会保険事務所の職員から,原告に対し,国民年金保険料免除理由該当届及び還付請求書といった申請書類などの還付に至る具体的な手続に関する説明がされなかったとしても,そのことが違法と評価されるものではないというべきである。 - 40 -なお,原告は,原告の国民年金保険料免除理由該当届(乙5)の該当年月日欄の記載に誤りがあり,この記載を訂正したのが平成19年4月4日以降であったため,原告に係る法定免除及び還付の処理手続が同年8月9日に国民年金保険料免除理由該当通知書(乙6)がされるまで遅延していた旨主張する。 しかしながら,平成18年7月4日付け国民年金保険料免除理由該当届(乙5)は,原告が障害基礎年金の受給権を取得したことを前提としており,かつ,その証書記号番号等を明らかにし,備考欄には平成15年9月20日という障害認定日の記載もされているのであって,このような客観的な記載によれば,原告の障害基礎年金の受給権発生日が平成15年9月20日であることは,仮に同届書の該当年月日欄の記載が平成19年4月1日のままであったとしても把握できるのであって,上記誤記が原因で原告に対する法定免除及び還付の処理手続が遅延したとの原告の主張は採用できない。 ウさらに,原告は,平成19年4月4日,P2から,①沼津社会保険事務所の職員の誤記が原因であった旨の虚偽の説明を受け,②平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料の還付を受けられない理由について十分な説 告は,平成19年4月4日,P2から,①沼津社会保険事務所の職員の誤記が原因であった旨の虚偽の説明を受け,②平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料の還付を受けられない理由について十分な説明を受けられず,③還付が認められる保険料の還付を受けても還付が認められない保険料について不服申立て(審査請求)で争うことができる旨の説明もされなかったため,還付請求をする時期が遅れた旨主張する。 しかしながら,前記( )ケのとおり,P2は,平成19年4月当時,平 成18年通知による取扱いを踏まえ,原告に対し,平成16年4月分から平成19年3月分までの保険料について還付を受けられること及び平成15年8月分から平成16年3月分までの保険料については法定免除の対象から除外されるので還付を受けられない旨を説明し,原告が回答を求めた- 41 -事項について回答する「原因についての確認」と題する書面(甲1)を交付して更なる説明をした上で,改めて原告に対し還付を受けられる期間の保険料の還付を受けるよう勧めていたことが認められ,前記1のとおり,これは,国民年金法89条柱書の解釈として制度の趣旨等及び規定の文理に沿って妥当な内容を説明して還付金の受領を勧奨したものといえるから,①P2が還付がされる理由又はこれがされない理由として,殊更に国民年金保険料免除理由該当届の記載の誤りといった無関係の事項の説明をするとは考え難く,同人が原告にそのような説明をしたと認めることはできず,また,②国民年金法89条柱書の解釈について,P2の上記内容の説明によって,前記1( )オのとおり見解を異にする原告の納得が得られ なかったとしても,それは見解の相違に基づくものといわざるを得ず,そのことについてP2に職務上の法的義務の違反があったということはできないし,③平成16年 とおり見解を異にする原告の納得が得られ なかったとしても,それは見解の相違に基づくものといわざるを得ず,そのことについてP2に職務上の法的義務の違反があったということはできないし,③平成16年4月分以降の保険料の還付を受けてしまうとそれ以前の期間の保険料の還付の可否を争えなくなるというのは,原告の当時の見解に基づくものであって,このような誤解がP2の説明によって惹起されたものとうかがわせる証拠はなく,上記のとおり,P2は原告に対し国民年金法89条柱書の解釈として制度の趣旨等及び規定の文理に沿って妥当な内容を説明して還付金の受領を勧奨し,原告は自らの当時の見解に基づきこれを拒絶していたもので,従前の折衝等の経過に照らし,見解の相違がある中での職員の説明で原告の納得を得ることは期待し難い状況にあったと推認される以上,当該期間の保険料の還付に係る争訟方法に関する説明内容についてP2に職務上の法的義務の違反があったとはいうことはできない。 エなお,原告は,前記( )スのとおり,平成20年9月18日に障害の程 ,,度について永久認定とする旨の改定を受けているがそれ以前においては2年の有期認定とする旨の裁定しか受けておらず,障害の程度が減退する- 42 -可能性の有無は客観的に明らかではなかったと認められるので,上記改定の存在は,前記( )及び上記アないしウの判断を左右するに足りるもので はない。 オ加えて,原告は,沼津社会保険事務所の年金相談センターで還付手続をする際,年金相談センターの担当職員から,次回の障害認定の際に原告の障害基礎年金に係る裁定を取り消す旨の暴言を述べられた旨主張するが,同社会保険事務所の職員からそのような内容の発言がされたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記( )スのとおり,原告は,同社会保 礎年金に係る裁定を取り消す旨の暴言を述べられた旨主張するが,同社会保険事務所の職員からそのような内容の発言がされたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記( )スのとおり,原告は,同社会保 険事務所において,平成20年9月18日に,再度,障害基礎年金の受給資格を有する旨の裁定を受け,同年11月21日には,障害の状態を障害等級2級8号に該当するものと永久認定する旨の改定を受けていることも考慮すれば,沼津社会保険事務所職員によって原告が主張するような内容の発言がされたとは認められない。 ( )したがって,沼津社会保険事務所の職員らの原告の保険料に関する原告 に対する説明又は当該保険料に係る諸手続に関する行為に国家賠償法1条1項にいう違法があるということはできず,その余の点(争点( )イ(原告の 損害)について判断するまでもなく,原告が被告に対し同項に基づき損害)賠償を求める請求は理由がないといわざるを得ない。 なお,原告は,本件の口頭弁論終結後,平成21年3月27日付け準備書面及び同月30日受付「追記」と題する書面を提出し,また,平成19年4月10日ころに沼津社会保険事務所の職員から受領した書面,平成21年3月16日付けで沼津市役所の職員が作成した陳述書及び平成20年10月14日付けで沼津社会保険事務所の職員が作成した書面を提出したが,これらの書面を勘案しても,前記1及び2の認定・判断が左右されるものとは認められない。 第4 結論 よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費- 43 -用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官岩井伸晃裁判官三輪方大裁判官小島清二は,転補につき署名押印すること ,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官岩井伸晃裁判官三輪方大裁判官小島清二は,転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官岩井伸晃

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