平成27(ワ)2090 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年1月10日 京都地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-87583.txt

判決文本文27,081 文字)

- 1 -主文 被告は原告に対し,1382万0041円及びこれに対する平成27年7月28日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求の趣旨被告は原告に対し,4400万円及びこれに対する平成27年7月28日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 原告の妹であるAは禁治産宣告を受け,Aの父の妻(いわゆる後妻)であるBが後見人に選任された。 ,(),原告は家事審判官平成23年法律第52号による廃止前の家事審判法家庭裁判所調査官以下家裁調査官という及び裁判所書記官以下書(「」。)(「記官」という)がBに対する後見監督事務を怠ったため,BがAの財産から。 不当な支出をしてAが損害を受け,この損害賠償請求権を原告が相続したと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害金の内金4400万円及びこれに対する平成27年7月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる)。 当事者等アA昭和13年4月6日生はC昭和61年9月3日死亡とD昭(),()(和28年12月28日死亡)との間の子である。幼少時から心身の発育に遅滞がみられ,昭和63年5月1日から精神薄弱者施設「E学園(以下」- 2 -単に「施設」という)に入所していたが,平成元年6月12日に禁治産。 宣告を受けた(甲1の2,乙3,弁論の全趣旨。 )イ原告(昭和11年生)は,昭和18年にC及びDと養子 園(以下」- 2 -単に「施設」という)に入所していたが,平成元年6月12日に禁治産。 宣告を受けた(甲1の2,乙3,弁論の全趣旨。 )イ原告(昭和11年生)は,昭和18年にC及びDと養子縁組した,Aの兄(義兄)である。 ウBは,昭和29年にCと婚姻し,Aの監護に当たっていた。平成元年6月12日,京都家庭裁判所(以下「京都家裁」という)によりAの後見。 人に選任され,以後Aが死亡するまで後見人であった。 エFは,Bの妹であり,夫であるGの死亡後,Bを補助してAの財産管理を行っていた。 オGは,Fの夫であり,Bを補助してAの財産管理を行っていた。 Aの後見が開始するに至る経緯ア原告は,昭和63年12月5日,京都家裁に対し,Aに対する禁治産宣()()。 告及び後見人選任原告を選任されたい旨の審判を申し立てた乙2イ京都家裁は,平成元年6月12日,Aを禁治産者とする審判をし,BをAの後見人に選任した。この時点で,Cの遺産の処分による資産8936万9500円がAに帰属していた(乙3。この審判は,同月29日に確)定した。 なお,Aは障害福祉年金を受給しており,施設においてこれを管理していた。 京都家裁平成元年第2651号後見監督処分事件(以下「平成元年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Hは,平成元年10月31日,職権で,平成元年監督処分を立件した。 京都家裁調査官Iは,同年12月1日付け調査報告書で,Bの陳述要旨として,Aは家にいると使い捨てカメラ等に小遣いをたくさん使い,温泉が好きであること等,Gの陳述要旨として,Aは温泉が好きであり,連れて行く- 3 -ときには付添1人分の費用をその財産から出していること,Bの家にAの部屋を取っているので住居負担金を計上していること,施設への電話照会結果として,Bら ,Aは温泉が好きであり,連れて行く- 3 -ときには付添1人分の費用をその財産から出していること,Bの家にAの部屋を取っているので住居負担金を計上していること,施設への電話照会結果として,Bらはたびたび面会等に来るが原告は1度だけであり,原告がAを引き取りたいといったがAは行きたくないと言ったこと等を記載し「後見,人と被後見人との関係は特に以前と変わることはなく,面会,一時帰宅等で良好に続いていると思われる「財産管理については後見人の義弟である。」Gが実質的に行っており,非常に几帳面に収支が記帳されている。支出が比較的多いが,これは買い物や温泉を唯一の楽しみにしている被後見人の生活を考えれば仕方のないことであろう「住居負担金や面会費等の名目で実。」際にかかっていない費用も引いており,これを後見人が得ているわけで,実質的な後見費用となっているが,特に常識を超える額とも言えず,親族間の後見事務としては計算高いとも思われるが,そのことで後見人が快く後見人としての職務を果たすのであれば認めざるを得ないだろう(裁判官と協議済み。いずれにしろ,現在のところ,支出は預金金利でまかなわれており,)将来的な不安はない(住居負担金について「計算し直させ,1ヶ月6千。」)円とした「一応次回は2年後の平成3年11月頃としたい」などと報告。」。 した。 H審判官は,平成元年12月1日,平成元年監督処分を終了した(以上。 乙1,乙5の1。 )Gは,平成3年7月24日に死亡した。Bは,同年8月7日,Gの香典としてAの財産から10万円を支出した。 ⑸京都家裁平成3年第3241号後見監督処分事件(以下「平成3年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Jは,平成3年11月6日,平成3年監督処分を立件した。 京都家裁家裁調査官Kは,同年1 ⑸京都家裁平成3年第3241号後見監督処分事件(以下「平成3年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Jは,平成3年11月6日,平成3年監督処分を立件した。 京都家裁家裁調査官Kは,同年12月24日付け調査報告書で,Bの陳述- 4 -要旨として,Aは1年のうち合計2か月半程度B宅で生活すること,原告は面会に行かないことなどを,施設への電話照会結果として,BはAの面倒をよく見ており,AもBが来るのを楽しみにしていること,施設負担金は障害年金の3分の1程度であり,施設が管理しているA名義の預金がなくなることはないことなどを記載し,家裁調査官の所見として,Aからの手紙にもB,,への信頼感がみられること日常の支出は預金金利でまかなわれていること住居負担金の過剰分は戻し入れられたことなどを報告し,後見事務は適正に行われているが,預金額が大きいため,平成6年11月に後見監督立件が相当であるとした。 ,,。(,Jは平成3年12月26日平成3年監督処分を終了した以上乙1乙6)⑹Bは,平成6年5月,その長男名義で7人乗り乗用車を500万円で購入するに当たり,うち100万円をAの財産から支出した。 ⑺京都家裁平成6年第3256号後見監督処分事件(以下「平成6年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Lは,平成6年11月24日,平成6年監督処分を立件した。 京都家裁家裁調査官Mは,平成7年1月9日付け調査報告書で,Bの陳述として,Aは年5回ほどB宅に泊まり,夏と正月の滞在は1か月程度であること,BのほかFとその家族も同伴して旅行に行くこともあること,原告とAの接触はないこと及び⑹の乗用車の購入等について記載し,最近1年間の利子収入が147万4536円であること,平均支出月額概算は平成4年度が21万4000円,平成5年度 に行くこともあること,原告とAの接触はないこと及び⑹の乗用車の購入等について記載し,最近1年間の利子収入が147万4536円であること,平均支出月額概算は平成4年度が21万4000円,平成5年度が18万5000円,平成6年度が27万1000円であったことなどを報告し,上記支出は使いすぎの感を拭えないとしながら,被後見人の年齢を考えるとその財産が費消されることはないと推認され,遺産を多く残す必要はなく,従前の後見監督時の支出と大差がな- 5 -いなどとして,緊縮を求める必要はないとした上で,次回監督の時期は平成9年9月が適当とした。 Lは,平成7年1月10日,平成6年監督処分を終了した(以上乙1,。 7)⑻Bは,平成6年監督処分の後,裁判所に知らせることなく,住宅負担金を1万5000円に増額し,Aの施設への送迎費用として1回片道3万円を支出し(うち1万円は自動車を運転したFの子への謝礼,平成9年2月26)日,B宅の便所水洗化費用のうち45万0110円を支出し,同年11月2日,Aの預金の預入れの手間賃としてFの子の妻に1万円を支出した。 ⑼京都家裁平成10年第1079号後見監督処分事件(以下「平成10年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Nは,平成10年3月23日,職権で平成10年監督処分を立件した。 京都家裁家裁調査官Oは,平成11年2月26日付け調査報告書(甲3)で,Bが財産管理を事実上Fに委ねていること,預金利息収入が平成7年約7万円,平成8年及び9年各約2万2000円であること,平成6年監督処分以降,Aの預金残高は約2000万円減少して5812万5656円であり(施設管理分310万6278円を除く。また,若干の現金がある,。)うち1097万5849円は記帳されていなかったこと,Aの平均支出月額は平成7年度約 00万円減少して5812万5656円であり(施設管理分310万6278円を除く。また,若干の現金がある,。)うち1097万5849円は記帳されていなかったこと,Aの平均支出月額は平成7年度約18万7000円,平成8年度約20万2000円,平成9年度約23万5000円,平成10年度約14万4000円であること,B及びFは上記未記帳分の使途を覚えていないなどとして説明しなかったことなどを報告し,また,住居負担金について「過去に支出を認めてきた経過があり,今後も支出させることはやむを得ないであろう。しかし,平成10年1月に,裁判所への連絡無く,月額1万円から1万5,000円に増額しており,問題が残る」と,⑻の送迎費用について「自動車の運転を依頼した。 - 6 -,()Fの長男に与えた謝礼1万円を含んでいるとのことでありガソリン軽油代金まで支出している場合もあるなど,被後見人の財産から支出することが適当でないと思われるものもある」と,⑻の手間賃について「適切さを欠。 く」と,また「被後見人が一時帰省した際に,こづかいとして5万円を与,,,えているが被後見人が行った買い物の費用も別途支出されていることからその必要性には疑問が残る」などと報告した。そして,近年の預金金利低。 下,預金元本の減少(なお,平成11年2月15日現在の現金・預金合計に施設管理分預金を合わせた額は6156万2921円である)から,預金。 ,,利息に頼ることは困難であるとして財産管理の杜撰さを是正するためにも一定の制限を加えるべきものとし,今後は財産管理状況を精査し,1,2年後の後見事務において適正な財産管理が行われるか否か見極め,不適当と認められる場合は後見人を解任すべきであり,審問期日においてBとFに使途不明金相当額の返還,Aに関する支出は施設管 精査し,1,2年後の後見事務において適正な財産管理が行われるか否か見極め,不適当と認められる場合は後見人を解任すべきであり,審問期日においてBとFに使途不明金相当額の返還,Aに関する支出は施設管理分を除き月額10万円(平成9年度の単身者標準生計費の全国平均値を考慮したもの)を限度とすることのほか,財産管理の方法,報告について一定の約束をさせた上で一旦監督を終了し,約3か月後に後見監督処分事件を立件して後見事務の状況を再確認し,処分の要否を検討すべき旨の意見を述べた。 B及びFは,平成11年4月8日の審問期日で,Nに対し,使途不明金のうち1000万円を同年5月31日までに補填する旨陳述し,Nは収支の説明のつかないその余の100万円を過去分の報酬として処理する旨告知した。B及びFは,上記補填を同月19日に履行した。 Nは,同月22日,平成10年監督処分を終了した(以上甲3,甲4,。 乙1,乙8)⑽京都家裁平成11年第1594号後見監督処分事件(以下「平成11年監督処分①」という)。 Nは,平成11年6月14日,職権で平成11年監督処分①を立件した。 - 7 -Oは,同年10月28日付け調査報告書で,⑼の使途不明金のうち1000万円が弁済されたこと,支出額が指示していた1か月10万円を超えているが,従前より費目も限定され,Aのために支出したものと認められたとして,支出が年間120万円を超えないように努力するよう求めるにとどめる旨報告し,平成10年監督処分時に指示した問題は全て解決したとして,次回の後見監督処分は,報酬請求に関する助言を主たる内容として,平成11年12月1日頃が適当とした。 Nは,その頃,平成11年監督処分①を終了した(以上甲4,乙1)。 ⑾京都家裁平成11年第3271号後見監督処分事件(以下「平成11年監督処分 内容として,平成11年12月1日頃が適当とした。 Nは,その頃,平成11年監督処分①を終了した(以上甲4,乙1)。 ⑾京都家裁平成11年第3271号後見監督処分事件(以下「平成11年監督処分②」という)。 ,,。 Nは平成11年12月17日職権で平成11年監督処分②を立件したOは,平成12年1月18日付け調査報告書で,平成11年10月から同年12月までの月平均支出額は約12万9000円でおおむね適切であると報告し,ただ,B宅の冷蔵庫やリモコン式蛍光灯の費用負担について疑問なしとは言い切れないが,許容範囲内にあるとした上で,使途不明金が明らかになった時点以降かなり詳細な監督を実施し,ほぼ軌道に乗ったものと思わ,,,れるとして次回立件時期は平成14年1月が適当との意見を述べ併せて平成13年1月には後見人報酬請求事件の添付資料により監督の要否を判断できるとした。 Nは,その頃,平成11年監督処分②を終了した(以上甲5,乙1)。 ⑿京都家裁平成12年第60号報酬付与審判申立事件Bは,平成12年1月17日,後見人報酬付与審判を申し立て,Nは,同月19日,平成11年6月分から同年12月分までの報酬として,Aの財産から30万円を付与する旨の審判をした(乙9,10。 )⒀平成12年4月,禁治産制度に代わり成年後見制度が施行された。 ⒁京都家裁平成13年第174号報酬付与審判申立事件- 8 -Bは,平成13年2月1日,後見人報酬付与審判を申し立て,Nは,同年3月12日,平成12年1月分から同年12月分までの報酬として,Aの財産から60万円を付与する旨の審判をした(乙20。 )⒂京都家裁平成14年第131号後見の事務に関する処分事件(以下「平成14年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Pは,平成14年1月21日,職 60万円を付与する旨の審判をした(乙20。 )⒂京都家裁平成14年第131号後見の事務に関する処分事件(以下「平成14年監督処分」という)。 京都家裁家事審判官Pは,平成14年1月21日,職権で平成14年監督処分を立件した。 京都家裁家裁調査官Qは,同年3月4日付け調査報告書(甲6)で,平成13年の月平均支出額が実質的に約13万2442円であるとした上で,Bが,住居費や,滞在費,旅行の際の同行者3人分の旅行代金等をAの財産から支出することについて「支出してよい旨裁判所のほうから言ってもらっ,たと主張する。おそらくは,後見人らが要求がましく言うので,調査官や裁,,判官が一定の基準を示したものと推測されるがその経緯はともかくとして裁判所が一旦容認した以上は,それを前提に考えなければならず,そうする,。」,と今なされている以上に支出を削減させるのは困難であるとしながら「蛇足ではあるが」として,Aの年齢と預金残高からみて,Aが90歳になるまで年間200万円を支出しても預金が残る計算になるし,高齢になれば支出は減少すると見込まれるから「健康でいるあいだは,少々贅沢をして,でも人生を楽しませてやりたいという後見人らの考えは,理に適っている」と述べ,後見事務遂行状況は概ね良好であり,後見人は今後も1年単位で報酬請求をする方針であるから,報酬請求時に問題が発覚すれば後見監督立件をすることとし,当面は監督不要と考える旨の意見を述べた。平成13年12月31日時点でBが後見人として管理する預金残高は,R1銀行R2支店分6115万1850円,S1銀行S2支店131万9574円であった。 ,,。(,Pは平成14年3月4日平成14年後見監督を終了した以上甲6乙1)- 9 -⒃京都家裁平成14年第608号報酬付与審判申 ,S1銀行S2支店131万9574円であった。 ,,。(,Pは平成14年3月4日平成14年後見監督を終了した以上甲6乙1)- 9 -⒃京都家裁平成14年第608号報酬付与審判申立事件Bは,平成14年3月12日,後見人報酬付与審判を申し立て,Pは,同月27日,平成13年1月分から同年12月分までの報酬として,Aの財産から60万円を付与する旨の審判をした(甲8。 )⒄Bは,上記⒃の報酬付与審判以後Aの死亡まで,報酬請求をしなかった。 また,家事審判官は,Bに係る後見監督処分事件を立件しなかった。 ⒅Bは,平成14年2月1日以後Aの死亡までの間に,後見人として管理する預金口座(T1銀行T2支店,U1銀行U2支店,S1銀行S2支店)から別紙記載のとおり預金を払い戻した。また,Bは,同月27日以降,後見人の職務として現金出納簿を作成しなかった。 ⒆Aは平成22年4月27日に死亡した。原告はAの唯一の相続人である。 同日時点でBが後見人として管理する預金口座の残高は,U1銀行U2支店の7万8137円及びS1銀行S2支店の9000円であり,そのほかに施設が管理するAの預金があった。 Bは,平成22年10月7日,後見等事務終了報告書(乙11)を京都家裁に提出し,家事審判官は,同月12日,本人死亡により後見事務は終了したと判断した(乙1。その後,Bは,Aの相続人である原告にAの財産等)の引継ぎをしなかった。 ⒇Bは平成24年4月8日に死亡した。FはBの唯一の相続人である。 原告は,BがAの後見人に在任中にAの財産を横領・隠匿し,これによる損害賠償債権を原告が,債務をFが相続したとして,平成24年,大津地方裁判所彦根支部にFに対する訴訟(同庁平成24年第174号資産引渡請求事件。以下,控訴審を含め「別件訴訟」という)を提起した 損害賠償債権を原告が,債務をFが相続したとして,平成24年,大津地方裁判所彦根支部にFに対する訴訟(同庁平成24年第174号資産引渡請求事件。以下,控訴審を含め「別件訴訟」という)を提起した。同裁判。)所は原告の請求を棄却したが(乙17,原告が控訴したところ(大阪高等)裁判所平成28年第1855号,同裁判所は,平成29年3月7日,B)によるAの財産の支出を2754万3375円の限度で違法と認め,Fに損- 10 -害賠償金2000万円と遅延損害金の支払を命ずる判決を言い渡し(甲15,この判決は確定した。 )原告は,平成27年6月24日に本件訴訟を提起した。 被告は,第13回弁論準備手続期日で,原告の請求のうち別件訴訟の手数料等に係る部分(下記3⑹(原告)エ)について消滅時効を援用した。 争点及びこれに関する当事者の主張⑴家事審判官,家裁調査官及び書記官(以下「家事審判官等」という)の。 後見監督に関する行為は,どのような場合に国家賠償法1条1項の適用上違法とされるか(原告)ア家事審判官は,禁治産制度及び後見制度の下での後見監督において,後見監督事件を職権で立件し,後見人に後見事務の報告や財産目録の提出を求め,後見事務や被後見人の財産状況を調査し,被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができ,後見人を解任する権限を有する。このような家事審判官の権限の行使は行政的機能に類似しており,争訟の裁判と同様に扱うことは相当ではない。また,家事審判官の後見監督権限の行使に大幅な裁量を認めることは,権限が適切に行使されないために生じた被害の救済の道を閉ざし,後見監督制度への国民の信頼を失わせる。 したがって,家事審判官の後見監督権限に関する裁量権の行使,不行使が合理性を欠く場合は,国家賠償法1 が適切に行使されないために生じた被害の救済の道を閉ざし,後見監督制度への国民の信頼を失わせる。 したがって,家事審判官の後見監督権限に関する裁量権の行使,不行使が合理性を欠く場合は,国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであ,,るから後見人が被後見人の財産から違法な支出を行ったにもかかわらず家事審判官が是正指導をせず,また「不正な行為,著しい不行跡その他,後見の任務に適しない事由がある(民法846条)として後見人を解任」しないことは,その裁量権の不行使が合理性を欠くというべきであって,国家賠償法上違法である。 - 11 -イ家裁調査官は,後見人による財産管理が適切か等を調査し,必要があれば後見人に是正を指導し,後見人の解任等を家事審判官に具申する義務を負う。 書記官は,後見人による財産管理の状況を把握し,家事審判官に意見を具申する義務を負う。 (なお,原告がいずれの時点で家裁調査官及び書記官の義務違反を主張するのかは曖昧であるが,⑵以下の各時点で主張するものと善解する)。 (被告)ア国家賠償法1条1項の違法は,個別の国民の権利ないし法益の侵害について,公権力の行使に当たる公務員が当該個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反することをいう。そして,裁判官がした争訟の裁判につき職務上の義務違反があるとして国家賠償法上の損害賠償責任が肯定されるためには,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする(最高裁昭和57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁(以下「昭和57年最判」という。 。))裁判官がした争訟の裁判についてこのように解すべき理由は,裁判官の独立の確保,裁判の有す 最高裁昭和57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁(以下「昭和57年最判」という。 。))裁判官がした争訟の裁判についてこのように解すべき理由は,裁判官の独立の確保,裁判の有する相対的性格及び裁判の終局性ないし自己完結性にあるが,これらは後見人の監督に係る家事審判官の職務行為にも妥当する。したがって,後見人の監督に係る家事審判官の職務行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは,家事審判官が違法若しくは不当な目的をもって権限を行使し,又は家事審判官の権限の行使の方法が甚だしく不当であるなど,家事審判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し,又は行使しなかったと認め得るような特別の事情がある場合に限られる。 - 12 -なお,後見人には包括的な代理権及び取消権が与えられ,広範な裁量権の下,後見事務の内容は基本的に後見人の判断に委ねられているから,後見人による被後見人の財産支出が善管注意義務違反として違法になるのは,その支出が必要性,相当性を明らかに欠き,後見人において裁量権を逸脱又は濫用した場合に限られると解すべきである。 イ家裁調査官及び書記官の職務上の義務に関する主張は争う。いずれも法的根拠がない。また,後見人の解任等は家事審判官の専権であり,家裁調査官又は書記官の行為ないし不作為と結果との因果関係は認められない。 ⑵平成6年監督処分の時点の家事審判官等の不作為(後見人に不正支出の返還等の指導をしなかったこと並びに後見人を解任せず又はその具申をしなかったこと。以下同様)の国家賠償法上の違法性(原告)GはAにとって義母の妹の夫にすぎないから,その死亡に対する香典10万円(平成3年8月7日。前提事実⑷)は多額にすぎる。乗用車の購入費用の一部(平成6年5月。前提事実⑹,住居負担金及び旅行付添費 )GはAにとって義母の妹の夫にすぎないから,その死亡に対する香典10万円(平成3年8月7日。前提事実⑷)は多額にすぎる。乗用車の購入費用の一部(平成6年5月。前提事実⑹,住居負担金及び旅行付添費用(前提)事実⑶,⑺)をAの財産から支出したことも,必要性・相当性に欠け,不当である。 したがって,平成6年監督処分の時点で,家事審判官がBの解任や是正指導をしなかったこと並びに家裁調査官及び書記官がBの解任等を具申せず,家裁調査官が是正指導をしなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (被告)争う。 Gに対する香典,乗用車購入費用の負担,住居負担金及び旅行付添費用の支出は,いずれも必要性,相当性を欠くとはいえず,後見人の裁量権の逸脱・濫用はない。Aは旅行を趣味としており,旅行や帰省等のため大型乗用車- 13 -を購入することは理由があり,また,旅行の際は介護が必要であった。 ⑶平成10年監督処分又は平成11年監督処分①の時点の家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性(原告)平成10年監督処分における調査により,約1100万円の使途不明金並びに住居負担金の無断増額,Aの送迎費用,預金の預入れの手間賃及びAの過大な小遣い等の不相当・過剰な支出が判明し,過剰支出傾向は是正されていなかった。また,上記使途不明金の存在は,横領等の不正行為を推認させる。 したがって,平成10年監督処分における調査報告書の作成日である平成11年2月26日又は平成11年監督処分①における調査報告書の作成日である同年10月28日の時点で,家裁調査官がBの解任等の後見監督処分を具申しなかったこと及び家事審判官がBを解任せず家裁調査官及び書記官がその具申をしなかったこと及び家事審判官等が使途不明金以外の点について是正指導をしなかったことは,国家賠償法 任等の後見監督処分を具申しなかったこと及び家事審判官がBを解任せず家裁調査官及び書記官がその具申をしなかったこと及び家事審判官等が使途不明金以外の点について是正指導をしなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (被告)争う。 10年監督処分の調査において判明した使途不明金は,横領等の不正によるものとまでは認められなかった。そして,Bは,うち1000万円を平成11年5月31日までに填補することを約し,これを履行した(甲3,4,乙8。また,Aは小遣いの減額に強く反対しており,Bはその意思を尊重)したのであるし,小遣いの支出状況を踏まえてもAの生存中にその財産が尽きる見通しはなかったから,これを改めさせなかったことに問題はない。また,Aは,心身喪失と心身耗弱との境界点にあって自分の意見を述べることができ,後見人の選任及び解任に当たってAの意向を無視することはできなかったが,Aは,原告を嫌い,原告宅へ引き取られることを拒絶する一方,- 14 -Bのことは信頼しており,少なくとも1年の約4分の1はB宅に滞在するなど,Bによる協力援助が必要であった。そして,B又は原告以外にAの身上監護を委ねられる者はなかった。これらの事情を考慮すると,原告主張の時点で家事審判官がBを解任しなかったことをもって,家事審判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し又は行使しなかったと認め得るような特別の事情があるとはいえない。 ⑷平成11年監督処分①以降平成14年1月1日までの家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性(原告)平成10年監督処分で指摘された使途不明金の発生や手間賃等の支出に加え,Bは,施設がBないしFに交付した「帰宅小遣い」を金銭出納帳に正しく記載せず,かつ,これとは別に買い物費用を支出した。また,Bは,高齢 年監督処分で指摘された使途不明金の発生や手間賃等の支出に加え,Bは,施設がBないしFに交付した「帰宅小遣い」を金銭出納帳に正しく記載せず,かつ,これとは別に買い物費用を支出した。また,Bは,高齢(平成14年時点で84歳)で自ら金銭を管理することができず,G又はF(Gの死亡後)が金銭管理を行っており,家事審判官もこのことを把握していた。 したがって,遅くとも平成14年1月1日の時点で,家事審判官がBの解任や是正指導をしなかったこと並びに家裁調査官及び書記官がBの解任等を具申せず,家裁調査官が是正指導をしなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (被告)争う。 上記期間においても,Aの生活状況,AとBとの関係などにそれまでと変化はみられず,また,Bは平成11年5月31日までに使途不明金のうち1000万円を返還し,Bによる身上監護及び財産管理について問題が指摘されることもなかったのであり,平成11年監督処分②の時点では,財産管理はほぼ軌道に乗ったといえる(甲5。したがって,家事審判官が上記期間)- 15 -にBを解任しなかったことについて,その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し又は行使しなかったと認め得るような特別の事情があるとはいえない。 ⑸平成14年1月1日以降の家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性(原告)アBが平成6年監督処分から平成10年監督処分までの4年間に使途不明金を発生させ,他にも財産の不適切な処理があったこと,Aの預金口座からの出金額(平成14年から15年頃は年間180万円から300万円)がその後増加していることに照らし,家事審判官は,後見監督権限に内在する当然の職務上の義務として,Bに対する後見監督処分を1,2年ごとに立件すべきであった。また,平成14年以降多額の使途不明金が )がその後増加していることに照らし,家事審判官は,後見監督権限に内在する当然の職務上の義務として,Bに対する後見監督処分を1,2年ごとに立件すべきであった。また,平成14年以降多額の使途不明金が発生していたから,遅くとも平成17年末には,後見監督処分に付すべきであった。 家裁調査官及び書記官は,遅くとも平成15年末,平成17年末,平成19年末,平成21年末には,後見監督処分に付すよう家事審判官に具申すべきであった。8年間後見監督に付さずに事件を放置したことは,重過失というべきである。 ,,,そして後見監督の立件があれば使途不明の多額の引出行為を発見しBを解任することができた。 イ家事審判官の行為の国家賠償法上の違法性について,被告の主張する基準によるとしても,本件では,家事審判官の権限の行使の方法が甚だしく不当であり,家事審判官がその付与された権限の趣旨に背いて行使をしなかったという特別な事情がある。すなわち,家事審判官は,Bが多額の使途不明金を出し,かつ家裁の指導になかなか従わなかったのに,平成14年以降Aが死亡するまでの8年間後見監督処分に付さず,かつ,後見終了時も後見監督処分に付さず,財産目録や収支計算書も提出させなかったの- 16 -であるから,後見監督義務を甚だしく懈怠したというべきであり,これは上記特別な事情に当たる。 (被告)ア家事審判官が後見監督事件を立件しなかったことが,違法若しくは不当な目的をもって権限を行使し,又は家事審判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し,又は行使しなかったと認め得るような特別の事情があったとして国家賠償法上違法と評価されるべき理由はない。家事審判官が1,2年ごとに後見監督事件を立件しなければならない法的義務を認めるべき根拠はない。 なお,家庭裁判所が後見 るような特別の事情があったとして国家賠償法上違法と評価されるべき理由はない。家事審判官が1,2年ごとに後見監督事件を立件しなければならない法的義務を認めるべき根拠はない。 なお,家庭裁判所が後見監督人を選任することができるのは,必要があ,,ると認めるときに限られるところ平成14年監督処分の終了時において総体的にみて,後見事務遂行状況は概ね良好であったことが認められ,後()。 見監督人を選任する必要があったとは認められない民法849条参照イ家裁調査官及び書記官が,家事審判官に対して,Bを解任するよう意見を具申する法的義務又は後見監督事件を立件するよう意見を具申する法的義務はない。 ⑹損害額(原告)ア平成6年監督処分における不作為による損害6004万5216円平成6年監督処分において家事審判官又は家裁調査官がBに返還を指導していれば,Gの香典10万円及び自動車負担金107万0459円を返還させることができた。 家事審判官が平成6年監督処分で同年12月31日にBを解任していれば,爾後の不当支出は生じなかった。 平成6年10月8日時点でBが後見人として管理する預金は7902万4647円であり,これとは別に,施設がAの財産(少なくとも70- 17 -0万円)を管理していたが,これらはその後Bによって出金された。また,これとは別に,水洗費用負担金45万0110円(平成9年2月26日。前提事実⑻)も損害として計上すべきである。 これに対し,Aに必要な支出(施設生活の経費を除く)は,月10。 万円程度,後見人報酬が月5万円であるから,Bは,Aの死亡時までに6004万5216円を不当に支出したことになる。 (10万+107万0459)+(7902万4647+700万)+45万0110-(15万×184か月=平成7年1月から平成2 は,Aの死亡時までに6004万5216円を不当に支出したことになる。 (10万+107万0459)+(7902万4647+700万)+45万0110-(15万×184か月=平成7年1月から平成22年4月)=6004万5216イ平成11年監督処分①における報告(同年10月28日)時点の不作為による損害5632万7396円家事審判官が,平成11年10月28日にBを解任していれば,爾後の不当支出は生じなかった。 同日時点のAの預金残高は6879万1530円であり,また,アのとおり,施設が管理していた財産が少なくとも700万円あったが,これらはその後Bによって出金された。 これに対し,Aに必要な支出及び後見人報酬はアのとおり月15万円であり,これらとAの葬儀費用56万4134円以外のものが不当支出であるから,Bは,Aの死亡時までに5632万7396円を不当に支出したことになる。 (6879万1530+700万)-(15万円×126か月=平成11年11月から平成22年4月)-56万4134=5632万739 ウ平成14年1月1日時点の不作為による損害5602万4492円(予備的に4754万3375円又は2754万3375円)家事審判官が,平成14年1月1日にBを解任していれば,爾後の不当- 18 -支出は生じなかった。 同日以降のBによるAの預金(U1銀行U2支店定期預金,S1銀行S2支店,T1銀行T2支店定期預金,U1銀行U2支店普通預金,U1銀行U2支店定期預金)からの出金額中使途不明金は合計6373万8628円であり,これに加え,アのとおり,施設が管理していた財産が少なくとも700万円あった。これらの合計は7073万8628円である。 これに対し,Aに必要な支出及び後見人報酬はアのとおり月15万円,平成14年1月 え,アのとおり,施設が管理していた財産が少なくとも700万円あった。これらの合計は7073万8628円である。 これに対し,Aに必要な支出及び後見人報酬はアのとおり月15万円,平成14年1月から平成22年4月までの100か月で1500万円であり,これらとAの葬儀費用56万4134円以外のものは不当支出であるから,BはAの死亡時までに5517万4494円を不当に支出したことになる(原告の主張は変遷しているが,最終の主張(準備。 書面⒅第5・3,準備書面⑸第2)による)。 少なくとも,平成14年1月1日以降のBの出金額合計6254万3375円(別件判決の認定額。甲15)から必要な支出及び後見人報酬得合計1500万円を控除した4754万3375円が損害である。 少なくとも,前提事実の控訴審判決で認容された2754万3375円は損害として認められるべきである(甲15。 )エ弁護士費用等(なお,についての訴えの変更が著しく訴訟手続を遅滞させるとは認められないので,却下しない)。 本件訴訟の弁護士費用300万円別件訴訟(前提事実)費用233万6000円第1審手数料20万円,控訴審手数料12万円,弁護士会照会費用1万6000円,弁護士費用200万円以上(うち着手金94万5000円を既払い)別件訴訟追行,債権回収等による精神的損害200万円- 19 -(被告)損害はすべて争う。 なお,後見人の解任及び選任を行うか否か及び後見監督事件を立件するか否かの判断はいずれも家事審判官の専権に属するから,家裁調査官及び書記官が意見具申をしなかったことと原告が主張する損害との間に因果関係はない。 また,別件訴訟の弁護士費用,訴訟提起手数料,弁護士会照会費用は原,,告固有の損害であるし後見事件が終了した後に発生したものであるから家 かったことと原告が主張する損害との間に因果関係はない。 また,別件訴訟の弁護士費用,訴訟提起手数料,弁護士会照会費用は原,,告固有の損害であるし後見事件が終了した後に発生したものであるから家事審判官等の違法行為との間に相当因果関係はない。 ⑺除斥期間(被告)平成6年監督処分において家事審判官が損害の回復是正指導を行わず,その損害を回復できなかったことによりAに損害賠償請求権が発生していたとしても,平成6年12月31日から20年の除斥期間が満了した。 (原告)平成6年12月31日までの後見人の行為による損害は,後見人の不当支出から10年が経過し,不当利得返還請求権が時効により消滅した時に発生した。 ⑻消滅時効(被告)ア平成6年監督処分において家事審判官が損害の回復是正指導を行わず,その損害を回復できなかったことによりAに損害賠償請求権が発生したとしても,平成6年監督処分が終了した平成6年12月31日から原告が本件訴訟を提起した平成27年6月24日までに20年が経過したから,当該損害賠償請求権は消滅した(国家賠償法4条,民法724条後段。後)見人の不当支出から10年が経過してから損害が発生する旨の原告の主張- 20 -は理由がない。 イ別件訴訟の弁護士費用が発生したのは平成25年11月であるから,平成28年11月末日の経過をもって消滅時効が完成した。別件訴訟の第一審における手数料は,その提訴時(平成24年7月18日)に発生したから,平成27年7月18日の経過をもって消滅時効が完成した。被告は,これらについて消滅時効を援用した(前提事実。 )(原告)平成6年12月31日までの後見人の行為による損害は,後見人の不当支出から10年が経過した時に発生したと解すべきである。 第3当裁判所の判断 家事審判官の行為につ た(前提事実。 )(原告)平成6年12月31日までの後見人の行為による損害は,後見人の不当支出から10年が経過した時に発生したと解すべきである。 第3当裁判所の判断 家事審判官の行為について国家賠償法上の違法性の基準⑴裁判官がした争訟の裁判につき国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償が肯定されるためには,上記裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在するだけでは足りず,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とするものと解される(最高裁昭和57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁。 )他方,裁判長の行う法廷警察権の行使については,それが法廷警察権の目的,範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情のない限り,国家賠償法1条1項の規定にいう違法な公権力の行使ということはできないものと解される(最高裁平成元年3月8日大法廷判決・民集43巻2号89頁参照。 )⑵家庭裁判所による成年後見人の後見事務の監督の目的は,家庭裁判所が成年後見人の行う事務が適正にされているか否かを監督することにより,成年後見人の不相当な後見事務を早期に発見し,後見事務を適正なものへと是正- 21 -し,適正な財産管理及び身上監護を実現することにある。家事審判官は,この目的を達成するために,必要に応じて,いつでも,成年後見人に対し,①後見事務の報告や財産目録の提出を求め,又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができ(民法863条1項,②被後見人の財)産の管理その他後見の事務について必要な処分を命じることができ(同法8 や財産目録の提出を求め,又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができ(民法863条1項,②被後見人の財)産の管理その他後見の事務について必要な処分を命じることができ(同法863条2項,③後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適)()しない事由があるときは成年後見人を解任することができる同法846条等の監督権限がある。 このような家事審判官による後見事務の監督は,成年後見の解任の審判や家裁調査官に対する調査命令の発令等裁判の形式でされるもののほか,質問権の行使のような事実行為もあり,いずれも,独立した判断を行う職責のある裁判官たる家事審判官の職務行為として行われるものであるが,争訟の裁判(権利又は法律関係の存否について,関係当事者間に争いがある場合に,当事者の一方の申立てに基づいて,裁判所又は裁判官が双方当事者を手続に関与させた上で,公権力をもってその争いを裁断する作用ないし手続をいうものと解される)とは異なり,対立当事者や権利又は法律関係の存否の争。 いを前提とせず,職権で開始され,その違法の是正は必ずしも上訴又は再審によるべきことが予定されているわけではなく,むしろ,後見的な立場から行う行政作用に類するものということができる。そうすると,家事審判官の職務行為に法規範に違背する瑕疵が存在した場合,直ちに国家賠償法上の違法を問うべきではなく,それが成年後見人の監督の目的,範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情のない限り,国家賠償法1条1項にいう違法な公権力の行使ということはできないものと解するのが相当である(上記最高裁平成元年3月8日判決参照。 )禁治産者制度における家事審判官の監督権限も成年後見におけるのと同様と考えられるから,その職務行為の国家賠償法上の違法性に きないものと解するのが相当である(上記最高裁平成元年3月8日判決参照。 )禁治産者制度における家事審判官の監督権限も成年後見におけるのと同様と考えられるから,その職務行為の国家賠償法上の違法性についても同様に- 22 -解すべきである。 ⑶後見人による被後見人の財産管理には,善良な管理者の注意義務が課せられる(成年後見制度においては民法869条,644条)が,その権限行使には裁量権が認められ,その逸脱濫用がない限り,違法ということはできないと解される。 また,後見人による被後見人の財産管理は被後見人の利益のために行われるべきものであって,その他の者(推定相続人等)の利益を積極的に考慮する必要はないと解される。したがって,被後見人の生存中に財産を消尽して被後見人が困窮したり後見事務に支障を生ずるようなことは避けなければならないが,被後見人の死後に財産を残す必要も認められないのであり,このような範囲にとどまる限り,被後見人の意思に基づき,かつ,その福祉に適う支出であれば,必要な支出とまではいえないものであったり,標準的な家計における支出を上回るものであったとしても,そのことから当然に財産管理が違法・不当であるということはできない(同法858条参照。 ) 平成6年監督処分の時点の家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性平成6年監督処分の時点で,Bに,後見人として不正支出があったと認めるに足りる証拠はなく,家事審判官等において返還の指導や後見人解任ないしその具申の義務が生じたということはできない。そうすると,家事審判官の職務行為について,後見人の監督の目的,範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるとはいえないし,家裁調査官及び書記官についても職務上の義務違反は認められない。 ⑴Bは,Gの葬儀に当 後見人の監督の目的,範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるとはいえないし,家裁調査官及び書記官についても職務上の義務違反は認められない。 ⑴Bは,Gの葬儀に当たってAの財産から香典10万円を支出したが(前提),,事実⑷香典の要否及び金額は被後見人と死者との身分関係や交際の状況被後見人の財産状況等を参酌して後見人が裁量的に判断すべきものと解される。GはAの義母の妹の夫であるが,Aの後見事務に関しBを補助していたこと(前提事実⑴オ,⑶,後見開始時のAの資産(預金)が約9000万)- 23 -,(,,円であり日常の支出は預金金利でまかなわれていたこと前提事実⑵⑶⑸。施設入所費用は障害年金で十分まかなわれていた。同⑸)に照らし,上記支出が裁量の範囲を逸脱したとまでは認められず,家事審判官において,Bに返還を指導する義務が生じたということはできず,解任すべき理由があったということもできない(そもそも,10万円の香典の支出の当否を理由に,後見人の解任を検討することは考え難い。 。)⑵Bは,Bの長男名義の自動車の購入費用の5分の1をAの財産から支出したが(前提事実⑹,この自動車はBがAとの面会に行く際及びAの趣味で)ある旅行の際にも使用されており,BやFもAの監護のために旅行に同行する必要があったと認められるから(前提事実⑶,⑺,大型乗用自動車の購)入の必要性も一応認められ,上記支出が必要性・相当性に欠け,返還を指導する必要があったとまではいえないし,Bを解任すべき理由があったということもできない。 ⑶Bが,その自宅にAが滞在するための部屋を取ってあるとして,Aの財産から「住居負担金」を支出したこと(前提事実⑶,⑸)も,現にAが年2か月半程度B宅に滞在しており,そのために部屋を用 できない。 ⑶Bが,その自宅にAが滞在するための部屋を取ってあるとして,Aの財産から「住居負担金」を支出したこと(前提事実⑶,⑸)も,現にAが年2か月半程度B宅に滞在しており,そのために部屋を用意したということが不自然とはいえないし,その額も裁判所の指導により当面1か月6000円とされ,この指導以前の過大支出分は返還されたこと(前提事実⑸)に照らし,不相当ということはできないし,これをもってBを解任すべき理由があったということもできない。 ⑷Aが旅行(温泉)を好んでいたことは前提事実⑶により認められ,成年被後見人であるAが単独で旅行することは困難であったと認められるから,1人程度の旅行付添費用を認めることが不当とはいえないし,これをもってBを解任すべき理由があったということもできない。 平成10年監督処分又は平成11年監督処分①の時点の家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性- 24 -⑴平成10年監督処分における調査で,未記帳の預金引出し(使途不明金)が約1100万円あること,BがAの財産から支出する住居負担金を裁判所の許可なく増額し,Fの子及びその妻に対し,Aの施設への送迎費用及び預金の預入れ等の手間賃をAの財産から支出して支払い,また,AがB方に帰省した際に小遣いとして5万円を与えたことなどが判明し,調査官はこれOらを問題がある等と判断したこと,Bが,審問期日でNに対し,上記使途不明金のうち1000万円を補填する旨陳述したことは,前提事実⑻,⑼のとおりである。 家事審判官の後見人に対する監督(解任を含む)に当たっては,後見人。 の財産管理行為における義務違反の有無・程度や従前の後見監督に対する後見人の対応,改善の見通し,さらに,後見人による身上監護の状況,後見人と被後見人との関係や被後見人の意向,他の適任者の 後見人。 の財産管理行為における義務違反の有無・程度や従前の後見監督に対する後見人の対応,改善の見通し,さらに,後見人による身上監護の状況,後見人と被後見人との関係や被後見人の意向,他の適任者の有無その他の事情を考慮する必要があると解されるが,上記調査の結果についてみると,使途不明金は多額であるが,Bがその大部分を補填するという意思を示しており(現にその後履行された,他にも問題のある後見事務処理はあったが,その。)金額は大きくなく,他方で,Aの身上監護の面で特段問題はなく,BとAの関係は良好であり,B以外に後見人の適任者があったとはいえないことなど(前提事実⑼。なお,乙14,乙16によれば,上記各監督処分の時点で弁護士等の専門家後見人の選任は一般的でなかったと認められ,親族又はそれに準ずる者を後見人として活用することには相当な理由があったということができる)に照らすと,使途不明金の補填を約束させる等した上で,Bを。 ,,解任せず後見人の職務を継続させるというNの判断に後見人の監督の目的範囲を著しく逸脱し,又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるとはいえない。 ⑵平成11年監督処分①における調査では,⑴の使途不明金の補填が実行され,支出額は指示された額を超えるものの,費目も限定され,Aのために支- 25 -出されたと認められる等として,⑴の調査における問題点は解決したとされたのであり(前提事実⑽,平成10年監督処分時点のNの判断に上記特段)の事情が認められない以上,平成11年監督処分①の時点でも同様ということができる。 ⑶よって,平成10年監督処分及び平成11年監督処分①のいずれの時点でも,家事審判官の判断に国家賠償法上の違法は認められない。 また,家事審判官の判断に国家賠償法上の違法が認められないのであ きる。 ⑶よって,平成10年監督処分及び平成11年監督処分①のいずれの時点でも,家事審判官の判断に国家賠償法上の違法は認められない。 また,家事審判官の判断に国家賠償法上の違法が認められないのであるから,家裁調査官及び書記官にこれと異なる意見具申等をすべき職務上の義務があったということはできず,やはり国家賠償法上の違法は認められない。 平成11年監督処分①以降平成14年1月1日までの家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性⑴平成10年監督処分の調査で問題とされた使途不明金やその他の支出が,家事審判官等の判断における国家賠償法上の違法性の根拠とならないことは上記3のとおりである。そして,平成11年監督処分②の時点でも,支出額はおおむね適切であり,後見事務がほぼ軌道に乗ったものと評価されたこと(前提事実⑾)に照らすと,この時点でBを解任すべきであったということはできない。 Bが,BないしFに交付された「帰宅小遣い」を金銭出納帳に正しく記載しなかったとしても,金額的に大きなものであったとは認められず,Aの財産管理への影響は小さかったと解されるし,Aへの小遣いの支出も,Aの財産全体からみて過大なものであったとは認められず,むしろ乙5の1,乙7によれば,Aが小遣いを要求していたことがうかがえるのであって,Aの福祉に反するものとも認められないから,Bに対しこれらを返還させる等の指導をする必要があったとまではいうことはできず,まして,後見人解任の理由に当たるということはできない。 なお,Bは高齢で,G又はF(Gの死亡後)が金銭管理を行っており,家- 26 -事審判官もこのことを把握していたが(前提事実⑶,⑼,後見人が金銭管)理について事実上補助者を用いることが直ちに違法であるとはいえず,BとG及びFとの関係に照らすと,G及びFによる金 - 26 -事審判官もこのことを把握していたが(前提事実⑶,⑼,後見人が金銭管)理について事実上補助者を用いることが直ちに違法であるとはいえず,BとG及びFとの関係に照らすと,G及びFによる金銭管理をBによる管理と同視することも可能ということができる上,身上監護の観点からは,従前からAの面倒を看,Aとの関係も良好なBを後見人とすることは合理的であったと解される。 そうすると,Bを解任せず後見人の職務を継続させるという家事審判官の判断に,その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し,又は行使しなかったと認め得るような特別の事情があるとはいえない。 ⑵平成11年監督処分①以降平成14年1月1日までの間に,Bの後見業務遂行に特段の問題が生じたとは認められない。 ,,⑶よって平成11年監督処分①以降平成14年1月1日までの間について家事審判官の判断に国家賠償法上の違法は認められない。 また,家事審判官の判断に国家賠償法上の違法が認められないのであるから,家裁調査官及び書記官にこれと異なる意見具申等をすべき職務上の義務があったということはできず,やはり国家賠償法上違法は認められない。 平成14年1月1日以降の家事審判官等の不作為の国家賠償法上の違法性⑴京都家裁家事審判官は,平成14年3月27日にBに対する報酬付与審判をした後,Aの死亡まで後見監督処分事件を立件しなかった。その間,Bが報酬請求をすることもなく家事審判官としてはBによる後見事務遂行現,,(金出納を含む)の内容を知る契機はなかった。 。 最終の後見監督処分事件である平成14年監督処分において,Qは,後見事務遂行状況は概ね良好であるという認識の下,Bは1年単位で報酬請求をする方針であるから,その際問題が発覚すれば後見監督立件をすれば足りる旨の意見を述べ,Pも 平成14年監督処分において,Qは,後見事務遂行状況は概ね良好であるという認識の下,Bは1年単位で報酬請求をする方針であるから,その際問題が発覚すれば後見監督立件をすれば足りる旨の意見を述べ,Pも,これと同じ見解の下,監督処分を終えたと認められる。しかし,Bはその後報酬請求をしなかったから,その後担当した家事審- 27 -判官としては,Q及びPの想定に反し,後見監督処分を立件するか否かを判。 ,断する材料となる情報が得られない状態が継続していたことになるそして上記2から4に認定のとおり,それまでのBの後見事務遂行については,後に大部分を補填したとはいえ,約1100万円の使途不明金の発生という大きな問題があったこと,他にも,金額はさして大きいものではないが,住居負担金や送迎費用,預金預入れの手間賃などの不適切な支出が散見され,特に住居負担金は,過大であるという裁判所の指導により一旦減額しながら再度無断で増額しており,Bが裁判所の指導を十分に理解し誠実に履行しようとしているか疑問の余地があったこと,そもそも,家裁調査官は,当初からBによる各種支出が過大にわたる傾向があると認識しつつ,後見事務の円滑な進行のためこれをやむを得ないものとみていたこと(前提事実⑶)などに照らし,平成14年後見監督終了時点の後見事務遂行状況は概ね良好であるとQが判断していたことが不適切とはいえないとしても,家庭裁判所の監督がなくとも同様の状況が長期間継続すると信ずべき根拠には乏しかったといわざるを得ない。 そして,遅くとも平成10年後見監督の時点では,預金金利が低下して,預金利息でAの支出を賄うことが困難になっていたから(前提事実⑼,後)見人たるBとしては,Aの余命を勘案しつつ,Aの生前にその財産を消尽して後見事務に支障を来す等のないよう,慎重に財産管理を て,預金利息でAの支出を賄うことが困難になっていたから(前提事実⑼,後)見人たるBとしては,Aの余命を勘案しつつ,Aの生前にその財産を消尽して後見事務に支障を来す等のないよう,慎重に財産管理をすることが求められていたというべきである(なお,平成14年後見監督において,Pは,Bに対し,Aの財産からの支出を月額10万円程度に抑えるように指導したのに対し,Bは,その後も平均月額13万円程度を支出したことが認められるが,Qの報告では,Aが90歳になるまで年間200万円(月額16万60),00円余を支出しても預金が残る計算になるとされていることに照らすと上記程度の支出が直ちに不当かは疑問もある。 。)そうすると,平成14年後見監督以後に本件後見事件を担当した家事審判- 28 -官は,適時にBによる後見事務遂行状況を確認し,これに基づき適切な措置を取るべき職務上の注意義務を負っていたというべきである。他方,平成14年後見監督の終了時点では,1年ごとの報酬請求が予想されており,その際財産管理を含む後見事務遂行状況を確認できることが前提とされていたと解されるから,その後ある程度の期間,家事審判官が積極的に後見監督事件を立件しなかったとしてもやむを得ないというべきであるが,後見事務遂行状況の報告も報酬請求もないまま長期間が経過すれば,そのこと自体,後見事務処理として不適切であるか,少なくとも不適切な事象があったことを推認させる事実であるというべきである。そして,Bによる従前の後見事務遂行状況のほか,Aの年齢(平成14年監督処分終了時点で63歳,Aの財)産状況(6247万1424円。前提事実⒂,従前の後見監督処分が平成)元年,平成3年,平成6年,平成10年,平成11年(2回)及び平成14年にされたこと等に照らせば,2,3年に1回程度は の財)産状況(6247万1424円。前提事実⒂,従前の後見監督処分が平成)元年,平成3年,平成6年,平成10年,平成11年(2回)及び平成14年にされたこと等に照らせば,2,3年に1回程度は後見監督処分をすべきものと解される。そうすると,家事審判官が後見監督事務について有する裁量権を考慮しても,遅くとも平成14年3月27日の報酬付与審判から5年を経過した平成19年3月27日の時点で,Bに対し,後見監督事件を立件するなどして,後見事務遂行状況を把握すべき職務上の義務を履行しなかったことには,成年後見人の監督の目的,範囲を著しく逸脱したというべき特段の事情が認められ,国家賠償法1条1項にいう違法な公権力の行使があったというべきである。 他方,Bに対する後見人報酬付与審判がいずれも違法でないことは,上記認定の経緯から明らかである。 ⑵家裁調査官には後見監督処分立件の権限はないから,立件がなかったことについて職務上の注意義務違反を認める余地はない。また,原告は,家裁調査官には家事審判官に対する意見具申の義務がある旨主張するが,家事審判官が後見監督処分を立件するか否かはその専権にかかるから,仮に家裁調査- 29 -官に原告主張の義務があり,かつ,その懈怠があったとしても,原告主張の損害との間の相当因果関係は認められない。 同様に,書記官にも後見監督処分立件の権限はなく,したがって,この点の職務上の注意義務違反はあり得ないし,仮に書記官に意見具申の義務及びその懈怠があったとしても,それと原告主張の損害との間の相当因果関係は認められない。 損害額⑴上記5⑴のとおり,家事審判官が平成19年3月27日以降後見監督事件を立件しなかったことは国家賠償法1条1項の適用上違法である。そして,後見監督処分を立件すれば,家裁調査官による調査等を経 害額⑴上記5⑴のとおり,家事審判官が平成19年3月27日以降後見監督事件を立件しなかったことは国家賠償法1条1項の適用上違法である。そして,後見監督処分を立件すれば,家裁調査官による調査等を経て,Bによる後見監督の状況が明らかになり,これに基づいて家事審判官又は家裁調査官が後見人に指導を加えたり,家事審判官がBを解任するなどして,爾後の不適切な支出を防止することができると解されるが,それだけでなく,立件自体により,後見人が家事審判官の監督(解任その他の責任追及を含む)を意識。 して,不適切な財産の支出を抑制するのが通常であり,このような効果も制度の予定するところと考えられる。そうすると,上記国家賠償法上の違法行為と相当因果関係のある支出行為は,同年3月27日以降のものとするのが相当である。 これに対し,家事審判官が後見監督事件を立件し,さらには調査の上家事審判官ないし家裁調査官が指導を加えたり後見人を解任したりしたとしても,それにより直ちに,立件以前の支出による損害が回復し得たということはできず,同日以前の損害との相当因果関係は認めることができない。平成10年監督処分で指摘された使途不明金の相当部分が補填されたことをもって,その後も同様の対応が見込まれるとまでいうことはできない。 ⑵Bが平成14年1月1日以降に後見人預金口座(普通預金)から出金し,使途が明らかにされていないものの状況は別紙のとおりであり(争いがな- 30 -い,後見人預金口座(定期預金)から出金したのはウのとおりである(甲。)15,弁論の全趣旨。うち平成19年3月27日以降のものは以下のとお)り合計1911万8000円である。 アT1銀行T2支店(普通預金)874万円イU1銀行U2支店(普通預金)527万8000円ウU1銀行U2支店(定期預金 27日以降のものは以下のとお)り合計1911万8000円である。 アT1銀行T2支店(普通預金)874万円イU1銀行U2支店(普通預金)527万8000円ウU1銀行U2支店(定期預金)500万円エS1銀行S2支店(普通預金)10万円また,施設が管理していたAの預金残高は,平成22年6月10日時点で,(,)。 516万6175円でありBはこれも受領した甲15弁論の全趣旨⑶上記⑵の出金の具体的使途の主張立証はない。他方,Bが後見人として現にAの身上監護に当たっており,Aが自らの意思で旅行や買い物などをしており,それに相当の費用を要し,また,B及びその家族にも一定の負担をかけていたこと等,平成14年後見監督までのAの生活及びこれに対する後見事務(財産管理)の状況に照らし,上記⑵の出金が直ちに不適切な支出であったということもできない。 そして,平成14年監督処分時点でBの年齢が63歳であり,その時点の後見人管理預金が6247万1424円(前提事実⒂。なお,このほかに施設管理の預金があった)であったこと,Aは障害年金を受給していて,施。 設での生活に要する費用はそれで賄えていたこと,平成6年監督処分から平成14年監督処分までにおいて把握されたBによる平均支出月額が10万円を少し超える額(ただし,使途不明金発生後,月額10万円に抑制するよう)(,,,指導された後の額から27万1000円であること前提事実⑺⑼⑾⒂,平成13年分の後見人報酬として60万円(月額5万円)が認めら))れたこと(前提事実⒃)などによれば,その後加齢により活動性が低下するなど旅行等の支出の減少が想定し得たこと,財産管理における後見人の裁量があることを考慮しても,上記出金中月額30万円に相当する額を超える部- 31 - などによれば,その後加齢により活動性が低下するなど旅行等の支出の減少が想定し得たこと,財産管理における後見人の裁量があることを考慮しても,上記出金中月額30万円に相当する額を超える部- 31 -分をAのための支出と認めることはできない。 そうすると,A死亡時(平成22年4月27日)までのAのための支出を1110万円(平成19年3月27日から平成22年4月27日までの3年1か月)として損害から控除し,また,Aの葬儀費用56万4134円(甲13)は,必要な支出であるから,やはり損害から控除すべきである。これらの合計は1166万4134円である。 したがって,Aに生じた損害として,⑵の出金合計2428万4175円から1166万4134円を控除した1262万0041円を認めるべきである。 ⑷本件訴訟に係る弁護士費用として120万円が相当と認める。 ⑸B及びFがAの財産を減少させたことがAに対する不法行為に当たるとすると,これに関するBの行為と家事審判官の不法行為とは共同不法行為に当たる。しかし,原告がBの行為に関する損害賠償請求訴訟と家事審判官等の行為に関する損害賠償請求訴訟を別々に提起し,各別に訴訟関係費用を支出することによって生ずる損害がいずれも共同不法行為によって通常生じる損害に当たるということはできず,本件で認めることのできる訴訟費用は本件訴訟に関するものに限られると解するのが相当である。 また,原告は,Aに生じた損害を相続した者にすぎず,固有の精神的損害の生じる余地はない。また,財産権の侵害による精神的苦痛は,財産的損害の塡補により慰謝されると解されるから,別途慰謝料を認める必要はない。 ⑹原告は,前提事実⒆のとおり,Aの損害賠償請求権を相続した。 結論 以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があり,その余は理由がないか されると解されるから,別途慰謝料を認める必要はない。 ⑹原告は,前提事実⒆のとおり,Aの損害賠償請求権を相続した。 結論 以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があり,その余は理由がないから,主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第3民事部- 32 -裁判長裁判官久保田浩史裁判官力元慶雄裁判官上田千愛

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る