判決平成14年3月22日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第1932号損害保険金請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,847万6000円及びこれに対する平成14年3月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,5分し,その4を原告の,その余を被告の各負担とする。 4 この判決は,1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成11年11月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要など 1 事案の概要(1) 本件の保険契約(当事者間に争いがない。)原告は,被告との間で平成11年8月31日,以下のとおりの内容を含む保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。 記ア保険金額 5000万円イ保険期間平成11年8月31日から平成12年3月31日までウ保険の対象真珠一式,製品,半製品,仕掛品エ支払時期保険契約者が保険金の請求手続をしたときから30日以内(動産総合保険契約約款25条1項,15条)なお,被告において,上記期間内に必要な調査を終えることができないときは,これを終えた後,遅滞なく支払う(同25条2項)。 (2) 本件は,原告が被告との本件保険契約の締結を前提として,海外の宝飾品関連のフェアーに参加するため持ち出した5000万円相当を超える真珠が盗まれたとして,同契約に基づいて5000万円の損害保険金の支払いとともに同金員に対する平成11年11月26日から支 海外の宝飾品関連のフェアーに参加するため持ち出した5000万円相当を超える真珠が盗まれたとして,同契約に基づいて5000万円の損害保険金の支払いとともに同金員に対する平成11年11月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。 2 前提事実(文章の末尾に証拠を挙げた部分は,証拠によって認定した事実,その余は,当事者間に争いのない事実)(1) 原告は,真珠の加工及び販売などを目的とする有限会社であり,他方,被告は,損害保険業などを目的とする株式会社である。 (2) 原告は,海外の宝飾品関連のフェアーに参加するため,別紙総合物品表記載の真珠,エメラルド及びブローチ(以下「本件物品」という。)を持って,平成11年9月10日,新東京国際空港(成田)から出国し,同年10月3日,関西空港に帰国した(甲2の1ないし14,原告代表者)。 (3) 原告は,平成11年10月26日,被告に対し,「海外の宝飾品関連のフェアーに参加するため持ち出した本件物品の一部を平成11年9月15日午後6時45分ころ,イタリアのベニス空港のルフトハンザ航空のチェックインカウンター前にて盗まれた。」として,本件保険契約に基づいて,5000万円の損害保険金を支払うよう請求した。しかし,被告は,その支払いを拒絶した。 3 主要な争点(1) 争点1原告は,海外の宝飾品関連のフェアーに参加するため持ち出した本件物品(ATAカルネのリストと同一〔甲2〕)の一部(別紙総合物品表記載の品目番号1~1805,2004~2253,3904~4903,9404~10703)を平成11年9月15日午後6時45分ころ,イタリアのベニス空港のルフトハンザ航空のチェックインカウンター前にて盗まれたか。 (2) 争点2 ,3904~4903,9404~10703)を平成11年9月15日午後6時45分ころ,イタリアのベニス空港のルフトハンザ航空のチェックインカウンター前にて盗まれたか。 (2) 争点2上記盗まれた真珠の価格は,5000万円を超えるか。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について,検討する。 (1) 証拠(甲2の1ないし14,5,7の1・2,12,13,乙2,原告代表者)によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成11年9月10日,ATAカルネ(以下「カルネ」という。)を使用して本件物品(真珠製品,真珠半製品,真珠仕掛品など)をヨーロッパでの宝飾品関連のフェアーに参加するため海外に持ち出し,同年10月3日,日本に帰国している。 原告が上記持出した物品は,オリエンタルパールからの委託品と原告所有に係る物品とであった。 イ(ア) カルネは,ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に基づき,職業用具,商品見本,展示会への出品物などの物品を外国へ一時的に持ち込む場合,外国での税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる通関のための書類(手帳)である。 (イ) カルネの重要な構成部分である総合物品表には,その対象物品とともにその対象物品の価額,その合計金額を記載することになっている。 (ウ) カルネを使用して我が国から持ち出した物品は,必ずカルネの有効期間内(発給日から最長1か年)に持ち帰らなければならない。仮に,持ち帰りがなされなかった場合には,輸入税が付加されたり,処罰を受ける可能性がある。 (エ) ところで,カルネを使用して外国に持ち込まれた(輸入)物品が,その外国から持ち出されたかどうかは,総合物品表の記載を前提として,カルネに組込まれている「輸出控え」,「 可能性がある。 (エ) ところで,カルネを使用して外国に持ち込まれた(輸入)物品が,その外国から持ち出されたかどうかは,総合物品表の記載を前提として,カルネに組込まれている「輸出控え」,「輸入控え」,「再輸出控え」,「再輸入控え」の各「総合物品表の品目番号」欄にそれぞれの税関で呈示され,かつ,記載された物品番号によって明らかとなる。 (オ) カルネを使用する者は,その使用に伴う義務履行の保証として,①カルネを使用する国の輸入税(使用国が2カ国以上の場合は,最も高い税率の国の輸入税)等を基準として社団法人国際商事仲裁協会が算定した金額(国,物品によって異なり,総価額の最低10%から最高100%)に相当する現金を支払うこと,②保証金額が①と同額である同協会所定の形式による期間32か月の銀行保証書を提出すること,③担保措置料を支払うことのいずれかをしなければならない。 上記担保措置料の額は,一時輸入又は保税輸送を行う国又は地域の数が3までの場合で,物品表の総額が2000万円以上5000万円未満の場合は,物品表総額の0.1%(但し,最低措置料は,4万円)となっている。 ウ原告が本件で使用したカルネには,別紙総合物品表が添付されていたところ,同表には,物品の個数として1万3828個,その合計金額として2000万円と記載されていた。 エ原告が本件で使用したカルネの1999年9月10日のフランクフルトでの「輸入控え」の「総合物品表の品目番号」欄には,1ないし13828との記載が,同年9月22日のフランクフルトでの「再輸出控え」の「総合物品表の品目番号」欄には,1806~2003,2254~3903,4904~9403,10704~13828との記載があり,その後の香港などでの「輸入控え」,「再輸出控え」の「総 出控え」の「総合物品表の品目番号」欄には,1806~2003,2254~3903,4904~9403,10704~13828との記載があり,その後の香港などでの「輸入控え」,「再輸出控え」の「総合物品表の品目番号」欄にも上記フランクフルトでの「再輸出控え」の「総合物品表の品目番号」欄と同様の記載がなされている。 オ原告代表者は,1999年9月15日,イタリア国家警察の国境警察事務所ヴェネツィア空港派出所マルコポーロ空港分署に本件訴訟で盗まれたと主張する同様の内容の被害届を出している。 (2) 上記(1)で認定した事実を踏まえて,争点1について判断する。 ア原告は,海外の宝飾品関連のフェアーに参加するため持ち出した本件物品の一部(別紙総合物品表記載の品目番号1~1805,2004~2253,3904~4903,9404~10703)を平成11年9月15日午後6時45分ころ,イタリアのベニス空港のルフトハンザ航空のチェックインカウンター前にて盗まれた旨主張する。 イ上記(1)のエで認定した本件で原告が使用したカルネでの記載内容,特に,フランクフルトでの「輸入控え」と「再輸出控え」との総合物品表の品目番号の記載(後者では,別紙総合物品表記載の品目番号1~1805,2004~2253,3904~4903,9404~10703が欠落していた),カルネでの同各記載の趣旨(上記(1)のイ(エ)),そして,原告が原告の上記主張内容に沿う被害届を被害を受けた当日にイタリア国家警察の国境警察事務所ベネツィア航空派出所マルコポーロ分署に届けていることを総合すると,原告が主張するとおり原告は,平成11年9月15日午後6時45分ころ,イタリアのベニス空港のルフトハンザ航空のチェックインカウンター前で,別紙総合物品表記載の品目番号1~ 届けていることを総合すると,原告が主張するとおり原告は,平成11年9月15日午後6時45分ころ,イタリアのベニス空港のルフトハンザ航空のチェックインカウンター前で,別紙総合物品表記載の品目番号1~1805,2004~2253,3904~4903,9404~10703の真珠を盗まれたことが推認されるところ,同認定を覆すに足りる証拠はない。 2 争点2について,検討する。 (1) 証拠(甲2の1ないし14,3,5,7の1・2,12,13,乙2,証人A,原告代表者)によれば,以下の事実が認められる。 アカルネを使用した物品の持ち出しは,その総額が2000万円に限定されることなく,それを超えることも可能であった。 イ原告と被告との平成4年以降の取引状況は,別紙取引状況一覧表記載のとおりである。 ウ原告は,被告の担当者であったAに対し,本件保険契約を含めて上記取引(動産総合保険契約)をした際,その保険金額を超える物品(真珠など)を海外に持ち出すことがある旨述べていた。 エ原告は,イタリア国家警察の国境警察事務所ベネツィア空港派出所マルコポーロ空港分署に被害届を出した際,本件事故で盗まれた鞄には100万ドル相当の真珠が入っていた旨述べ(甲12),また,平成11年10月7日,同年11月1日,同月5日,被告の事故担当者と各面談した際,本件事故による被害について,原告分が8362万円相当(売却単価を基礎として)(甲3),オリエントパール分が8259万円相当(売却単価を基礎として)と述べている(乙2)。 オ原告が盗まれたもののリストと主張する別紙真珠リストと原告が本件で使用したカルネの総合物品表記載の物品との関係が必ずしも明らかでない。 (2) 上記認定した事実を踏まえて,争点2について判断する。 ア ののリストと主張する別紙真珠リストと原告が本件で使用したカルネの総合物品表記載の物品との関係が必ずしも明らかでない。 (2) 上記認定した事実を踏まえて,争点2について判断する。 ア原告は,別紙真珠リスト記載の真珠(その対象は,甲3の物品リストと同じ)が盗まれ,その盗まれた原価合計金額は,5853万4000円,少なくとも5000万円相当である旨主張する。 イ確かに,原告は,本件保険契約締結の際などに,被告の担当者に保険金額以上の真珠を海外に持ち出すことがある旨述べていたこと,そして,本件事故にあった直後のイタリアの警察で被害額として100万ドル相当の被害にあった旨述べている。 しかし,甲3(盗まれた真珠のリスト)における価格(AMOUNT)は,適正な売買価格を示したものか,原告の一方的な記載を元にしていることからすると,必ずしも明らかでないうえ,原告は,同価格を踏まえてその7割を原価としてその損害額を主張するが,その前提の販売価格に問題があり,しかも,その原価の算定の根拠が必ずしも明らかでない。 また,原告が本件で使用したカルネには,持ち出した物品の総額として2000万円との記載がなされていること,カルネの同金額記載は,カルネの重要な構成部分で正確に記載すべきことが要請されていること,そして,原告が盗まれたもののリストと主張する別紙真珠リストの対象と原告が本件で使用したカルネの総合物品表記載の物品との関係が必ずしも明らかでない。 以上のことからすると,原告が持ち出した物品の総額は,本件のカルネで記載された少なくとも2000万円を下ることはないが,それを超えて,どの程度までであったか,必ずしも明らかでなく,2000万円をどの程度まで超えるか,それを認めるに足りる証拠はない。 ウ原告 記載された少なくとも2000万円を下ることはないが,それを超えて,どの程度までであったか,必ずしも明らかでなく,2000万円をどの程度まで超えるか,それを認めるに足りる証拠はない。 ウ原告が持ち出した物品は,原告所有に係るものと原告がオリエントパールから借り入れたものがあったところ,本件証拠(甲2の1ないし14,乙2,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故で盗まれた別紙総合物品表記載の品目番号1~1805,2004~2253,3904~4903,9404~10703の真珠の価額は,少なくとも1695万2000円を下らないこと,その内,原告所有に係るものと原告がオリエントパールから借り入れたものとの価額は,ほぼ2分の1ずつであることが認められ,同認定を覆すに足りる証拠はない。 エ以上の認定した事実からすると,原告が本件事故で原告所有に係る物品で,盗まれたものの価額は,少なくとも847万6000円と推認され,同認定を覆すに足りる証拠はない。 3 次に,損害保険金の付帯請求の時期について,検討する。 本件においては,原告が本件事故により持ち出した物品が盗まれたか,盗まれたとしても,どの程度盗まれたのか,原告が本件保険契約に基づいて,損害保険金の請求をした際,必ずしも明らかでなく,したがって,被告において,その調査を必要としたことからすると,上記約款の25条1項にしたがって同請求があった日から30日以内に支払わなければならない場合とはいえない。 被告において,調査を経て,速やかに支払うべき場合で,本件訴訟で明らかになった際から,換言すると,本件判決の言渡日の翌日を始期として,その支払時期が到来するとするのが相当である。 4 そうすると,原告の本件請求は,847万6000円及びこれに対する平成14年3月23日 た際から,換言すると,本件判決の言渡日の翌日を始期として,その支払時期が到来するとするのが相当である。 4 そうすると,原告の本件請求は,847万6000円及びこれに対する平成14年3月23日から商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は,理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条を,仮執行宣言について同法259条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判官中村哲
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