平成14(わ)418 危険運転致死傷,道路交通法違反,有印私文書偽造,同行使被告

裁判年月日・裁判所
平成14年11月8日 広島地方裁判所
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判決文本文5,056 文字)

主文 被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 押収してある報告票2通(平成14年押第104号の1及び2)及び交通事件原票2通(同号の3及び4)の各偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成10年2月7日,普通乗用自動車を運転中,座席ベルトを装着していなかったことから,広島市〇区〇〇町△番△△号所在のA警察署B交番で警察官の取調べを受けた際,運転免許を受けている実兄のCになりすまして,自己の無免許運転の刑事責任を免れようと考え,自己の氏名をCと名乗り, 1 同日午後4時2分ころ,上記B交番において,A警察署司法警察員Dに対し,免許証不携帯である旨申し向け,同司法警察員が免許証不携帯の違反事実について交通事件原票を作成するに際し,「私が,上記違反をしたことは相違ありません。」等と不動文字で記載されている交通事件原票(告知番号499582⑦)の供述書(甲)欄に,行使の目的をもって,ほしいままに,Cと冒書し,もって他人の署名を使用して,事実証明に関する私文書1通(平成14年押第104号の3)を偽造した上,即時同所において,同司法警察員に対し,これをあたかも真正に成立したもののように装って提出して行使した 2 同日午後4時3分ころ,上記B交番において,上記警察署司法警察員Eが,座席ベルト装着義務違反の違反事実について報告書を作成するに際し,前記同様の文言が不動文字で記載されている報告票(番号№091709)の自認書欄に,行使の目的をもって,ほしいままに,Cと冒書し,もって他人の署名を使用して,事実証明に関する私文書1通(平成14年押第104号の1)を偽造した上,即時同所において,同司法警察員に対し,これをあたかも 使の目的をもって,ほしいままに,Cと冒書し,もって他人の署名を使用して,事実証明に関する私文書1通(平成14年押第104号の1)を偽造した上,即時同所において,同司法警察員に対し,これをあたかも真正に成立したもののように装って提出して行使した第2 1 公安委員会の運転免許を受けないで,平成11年9月12日午後2時35分ころ,同市〇〇区〇〇△丁目△番△△号付近道路において,普通乗用自動車を運転した 2 前記1の無免許運転中,座席ベルトを装着していなかったことから,同区〇〇△丁目△番△△号所在のF警察署G交番内において警察官の取調べを受けた際,運転免許を受けている実兄のCになりすまして,自己の無免許運転の刑事責任を免れようと考え,自己の氏名をCと名乗り,(1) 同日午後2時50分ころ,上記G交番において,同警察署司法巡査Hに対し,免許証不携帯である旨申し向け,同司法巡査が免許証不携帯の違反事実について交通事件原票を作成するに際し,前記同様の文言が不動文字で記載されている交通事件原票(告知番号486549⑧)の供述書(甲)欄に,行使の目的をもって,ほしいままに,Cと冒書し,もって他人の署名を使用して,事実証明に関する私文書1通(平成14年押第104号の4)を偽造した上,即時同所において,同司法巡査に対し,これをあたかも真正に成立したもののように装って提出して行使した(2) 上記(1)の日時場所において,上記司法巡査が座席ベルト装着義務違反の違反事実について報告書を作成するに当たり,前記同様の文言が不動文字で記載されている報告票(番号№014139)の自認書欄に,行使の目的をもって,ほしいままに,Cと冒書し,もって他人の署名を使用して,事実証明に関する私文書1通(平成14年押第104号の2)を偽造した上,即時同所において,同 号№014139)の自認書欄に,行使の目的をもって,ほしいままに,Cと冒書し,もって他人の署名を使用して,事実証明に関する私文書1通(平成14年押第104号の2)を偽造した上,即時同所において,同司法巡査に対し,これをあたかも真正に成立したもののように装って提出して行使した第3 1 平成14年4月18日午前1時19分ころ,広島市〇〇区〇〇△丁目△番△△号先の道路(I交差点)において,信号機の表示する赤色灯火信号に従わないで,普通乗用自動車を運転して進行した 2 前記日時ころ,同区〇〇△丁目△番△号先の道路(J交差点)において,信号機の表示する赤色灯火信号に従わないで,上記普通乗用自動車を運転して進行した 3 同日午前1時20分ころ,同区〇〇△丁目△番△号先の道路(K交差点)において,信号機の表示する赤色灯火信号に従わないで,上記普通乗用自動車を運転して進行した 4 同日午前1時20分ころ,上記普通乗用自動車を運転し,同〇〇△丁目△番△号先の信号機により交通整理の行われている交差点(M交差点)を〇〇町方面から〇〇方面に向かい直進するに当たり,対面信号機が赤色灯火信号を表示しているのを同交差点の停止線の手前約111メートルの地点で認め,直ちに制動措置を講じれば同停止線の手前で停止することができたにもかかわらず,殊更にこれを無視し,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約60ないし70キロメートルの速度で同交差点に進入したことにより,折から左方道路から青色灯火信号に従って同交差点に進入してきたN運転の大型貨物自動車の右前部に自車左前部を衝突させ,よって,自車同乗者O(当時27歳)に全身打撲の傷害を負わせ,即時同所において同人を上記傷害により死亡するに至らしめ,同P(当時20歳)に約2か月間の入院加療を要する外傷性くも膜下出血,脳 突させ,よって,自車同乗者O(当時27歳)に全身打撲の傷害を負わせ,即時同所において同人を上記傷害により死亡するに至らしめ,同P(当時20歳)に約2か月間の入院加療を要する外傷性くも膜下出血,脳挫傷(びまん性軸索損傷)及び頭がい底骨折等の傷害を,同Q(当時21歳)に約2年4か月間の加療を要する症候性てんかんを伴う脳挫傷(びまん性軸索損傷)及び視野狭さく等の後遺症を伴う外傷性左眼視神経症等の傷害をそれぞれ負わせた 5 前記4記載の日時場所において,公安委員会の運転免許を受けないで,かつ,呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,上記普通乗用自動車を運転したものである。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)(省略)(量刑の理由)本件は,日ごろから無免許で自動車を運転していた被告人が,無免許運転の上,警察官の交通取り締まりを受けた際,無免許運転の発覚を免れようと考え,実兄になりすまして交通切符等に署名した事案2件(判示第1及び第2)及び飲酒の上,友人らを同乗させて無免許で自動車を運転中,交差点の赤信号を3つ連続で無視し,更にその次の交差点にも赤信号を無視して加速しながら進入し,交差道路から交差点に進入してきたトラックと衝突し,同乗者3名のうち1名を死亡させ,2名に重傷を負わせた事案(判示第3)である。 まず,無免許運転について見るに,被告人は,平成5年に自動車運転免許の取消処分を受けたが,その数か月後には無免許運転を開始し,その後も運転免許の再取得が十分可能であったにもかかわらず,運転免許を取得することなく,通勤や業務,私生活に便利であるという理由から,自動車を勤め先から借りたり,トラックや自家用車を購入して,日常的に無免許運転を繰り返していたものであり,その動機に酌量の余地はなく,ま することなく,通勤や業務,私生活に便利であるという理由から,自動車を勤め先から借りたり,トラックや自家用車を購入して,日常的に無免許運転を繰り返していたものであり,その動機に酌量の余地はなく,またその常習性も非常に顕著であって,犯情は極めて悪質である。また,有印私文書偽造及び同行使について見るに,被告人は,前述のとおり常習的に無免許運転を繰り返す中で,刑事処分を免れるため,住所や生年月日などの人定事項を熟知していた実兄になりすまして,交通取り締まりを切り抜けていたのであり,交通事件処理の適正を害したという結果はもとより,被告人の身に染みついた交通法規無視の思考態度は強い非難に値する。 次いで,判示第3の各事実について見るに,被告人は,無免許であるにもかかわらず,当初から,飲酒の目的で自動車を運転して飲食店に行き,水割り十数杯を飲んだ後,何らのちゅうちょもなく,友人やホステスらを同乗させて,当然のように自動車を運転し,赤信号の交差点を3つ連続で減速さえせず通過し,4つ目の交差点では,前方が2車線とも信号待ちで停止中の先行車でふさがっているのに,先行車が走り出す前に交差点を通過しようと考え,対向車線にはみ出した上,時速60ないし70キロメートルまで加速して交差点に進入するという確信犯的な無謀運転に出ているのであって,その危険極まりない行為は,常人の理解を超えたものであり,本件衝突事故は起こるべくして起きたものと言うべきものである。 そして,被告人がこのような無謀運転の末に引き起こした本件衝突事故により,同乗者3名のうち,被害者Oは即死し,同Pは,事故の際に頭部に受けた傷害により,事故後2週間ほどは意識不明の状態が続き,意識が回復した後も脳の機能などに重い後遺症が残っており,同Qも,てんかんや記銘力障害,矯正不能の大幅な視力低下や視野狭 ,事故の際に頭部に受けた傷害により,事故後2週間ほどは意識不明の状態が続き,意識が回復した後も脳の機能などに重い後遺症が残っており,同Qも,てんかんや記銘力障害,矯正不能の大幅な視力低下や視野狭さくという重い後遺症を伴う傷害を負わされたものであって,その結果は極めて悲惨と言うほかない。 被害者Oは,妻と1歳になったばかりの長男のために仕事に励み,ともに幸福な家庭を築こうとしていた矢先に,突然に命を落としたものであって,その無念さは察するに余りあり,また,愛する家族であり,頼るべき一家の柱であった同被害者を奪われた家族の憤りや悲嘆も非常に深い。 被害者Pは20歳,同Qは21歳の若さで,本件事故により日常生活に重大な支障を及ぼす後遺症を負わされ,今後不自由な生活から解放される見込みが全くつかないのであって,その肉体的,精神的苦痛は甚大であり,また,それをただ見守るしかない家族のやり場のない怒りや将来に対する不安も極めて強い。 しかも,被告人には被害弁償のための資力がない上,被告人は,無免許運転中の事故には保険金が支払われないと聞き,任意保険にも加入していなかったことから,自賠責保険による保険金によって被害の一部が填補される見込みがある以外には,被害回復の見込みは全く立っていない。 にもかかわらず,被告人は,積極的に慰謝の措置を執ろうとしないどころか,被害者の家族らから事情を尋ねられても,赤信号で交差点に進入したことなど,自己に不利な事情を隠し,捜査官に対しても当初は,判示第1及び第2の犯行の発覚を免れようとして,自動車の保有歴につき虚偽の弁解をするなど,反省の情が全く見られないのであって,被害者やその遺族,親族の被害感情が峻烈であるのも当然と言うべきである。 これらによれば,被告人の刑事責任は極めて重大と言うほかない。 そこで,危険 をするなど,反省の情が全く見られないのであって,被害者やその遺族,親族の被害感情が峻烈であるのも当然と言うべきである。 これらによれば,被告人の刑事責任は極めて重大と言うほかない。 そこで,危険運転致死傷の被害者は,被告人と一緒に飲酒し,被告人が酒気帯びの状態であることを知りながらその自動車に同乗していること,被告人は,危険運転致死罪の適用例として広く事件報道されるなど,ある程度の社会的制裁を受けていること,とび職として独立して会社を興し,従業員1名を使用する立場にあること,被告人の親族が被害弁償や被告人の今後の更生に助力する旨申し出ていることなど,被告人のために斟酌できる事情を最大限に考慮してもなお,被告人には主文程度の刑をもって臨むことが,その刑事責任を全うさせるために必要である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑-懲役10年,各偽造部分没収)平成14年11月8日広島地方裁判所刑事第一部裁判長裁判官山森茂生裁判官髙原章裁判官寺元義人

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