平成13(ワ)12677 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年12月13日 東京地方裁判所
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判決文本文42,283 文字)

平成14年12月13日判決言渡平成13年(ワ)第12677号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,(1) 原告Aに対し,173万2803円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(2) 原告Bに対し,219万5465円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(3) 原告Cに対し,307万5804円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(4) 原告Dに対し,179万1034円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(5) 原告Eに対し,120万4616円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(6) 原告Fに対し,18万2052円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(7) 原告Gに対し,108万6508円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を(8) 原告Hに対し,89万8997円及びこれに対する平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告Aに対し526万2500円,原告Bに対し612万3735円,原告Cに対し741万8588円,原告Dに対し521万5306円,原告Eに対し349万4616円,原告Fに対し26万7052円,原告Gに対し594万0 万2500円,原告Bに対し612万3735円,原告Cに対し741万8588円,原告Dに対し521万5306円,原告Eに対し349万4616円,原告Fに対し26万7052円,原告Gに対し594万0022円,原告Hに対し443万8087円及びこれらに対するそれぞれ平成11年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,原告らが,被告の経営する割烹料亭において被告が調理したイシガキダイ料理を食したところ,これに含まれていたシガテラ毒素を原因とする食中毒に罹患して身体を侵害され,これによって損害を被ったと主張して,被告に対し,製造物責任(製造物責任法3条)又は瑕疵担保責任(民法634条2項)に基づき,診療費,休業損害,慰藉料等の損害賠償を求めた事案である。 2 前提となる事実(いずれも当事者間に争いがない。)(1) 被告は,千葉県勝浦市において個人で割烹料亭I(以下「I」という。)を経営するとともに,同店で調理に従事している者である。 (2) 原告Bと原告Dは,いずれも原告Aの子であり,原告Cは,原告Dの夫であり,原告Eと原告Fは,いずれも原告C,原告D夫妻の子である。また,原告Gと原告Hは,夫婦である。 (3) 原告らは,平成11年8月13日,Iを訪れ,被告が調理して提供したイシガキダイのアライ,兜の塩焼き等の料理(以下「本件料理」という。)を食したところ,その食材であったイシガキダイ(以下「本件イシガキダイ」という。)に含まれていたシガテラ毒素を原因とする食中毒(以下「本件食中毒」という。)に罹患し,下痢,嘔吐,発疹,皮膚掻痒症,鳥肌発作,痺れ,冷感亢進,体のだるさ等の症状を生じた。 (4) シガテラ毒素を原因とする食中毒は,シガトキシンとその関連毒によって起こるも 」という。)に罹患し,下痢,嘔吐,発疹,皮膚掻痒症,鳥肌発作,痺れ,冷感亢進,体のだるさ等の症状を生じた。 (4) シガテラ毒素を原因とする食中毒は,シガトキシンとその関連毒によって起こるもので,海藻の表面に付着棲息する鞭毛藻により生産される毒が食物連鎖により魚に蓄積毒化され,それをヒトが摂取することによって生じるものといわれている。その症状の特徴は,下痢,嘔吐・吐き気,手足や口周辺などの感覚異常(水や金属などの冷たい物を飲んだりこれらに触れたりすると電気ショックのような刺激を感じることで,「ドライアイスセンセーション(冷感亢進)」と呼ばれている。),運動失調,脱力感,倦怠感,関節痛,掻痒などがあげられる。 3 本件の争点(1) 製造物責任(製造物責任法3条)の成否アイシガキダイの調理が,製造物責任法(以下「法」という。)上の「加工」の概念に該当するかどうか(製造物該当性の有無)。 イ上記アが肯定される場合,法4条1号のいわゆる開発危険の抗弁が成立するかどうか(開発危険の抗弁の成否)。 (2) 瑕疵担保責任(民法634条2項)の成否被告が原告らに本件料理を提供したことをもって,両者の間に請負の要素を含む製作物供給契約が成立したものといえるか。 (3) 原告らの損害額 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)ア(製造物責任の成否 ― 製造物該当性の有無)についてア原告らの主張本件食中毒は,被告が本件イシガキダイを調理した本件料理を原告らに提供し,これを食させた結果発生したものであって,被告が業として「加工」し,原告らに食させた本件料理(製造物)がシガテラ毒素を含んでいたという「欠陥」を有していたため,原告らの身体又は財産が侵害されたといえるので,被告は,法3条に基づき,原告ら 被告が業として「加工」し,原告らに食させた本件料理(製造物)がシガテラ毒素を含んでいたという「欠陥」を有していたため,原告らの身体又は財産が侵害されたといえるので,被告は,法3条に基づき,原告らが被った損害を賠償すべき責任を負う。 (ア) 被告は,本件イシガキダイを仲卸業者から購入し,内臓を除去して冷蔵庫に保管し,身,腹す,兜,中骨に分けた後,アライ(白身魚の刺身を冷水で締めた料理)や兜等の塩焼きに調理して原告らに提供した。このような被告の調理行為は,食材に手を加え,料理としての新しい属性・価値を加えたものであって,法にいう「加工」に当たる。 (イ) 本件イシガキダイは,主にそのアラの部分(腹すや兜の部分)に毒性が存していたと考えられるが,被告は,そのように毒を有していた本件イシガキダイを自ら選択したばかりでなく,これを料理として提供することを回避したり,毒を有するアラの部分を除去したりすることができる立場にあった。被告は,危険な状態を制御し,あるいは除去することができたにもかかわらず,およそ飲食店で提供する料理として本件料理を提供した以上,本件イシガキダイの有していた危険な状態を高めたといわざるを得ない。 イ被告の主張本件は,法の予定する事案ではなく,法の適用はない。 (ア) 法は,危険責任及び報償責任の法理を基礎として,製造業者等に厳格な責任を負担させるものであるから,法の責任主体となり得るか否かは,法の立脚する法的根拠に従った解釈が必要である。法は,厳格な製造物責任を負担すべき「製造業者等」として,本来的には,消費者と比して圧倒的な力関係を有する工業的製造者を予定しており,被告のように個人が営む飲食店や調理師個人は,法が本来的に予定する責任主体ではない。また,本件のような稀有な食中毒事例において には,消費者と比して圧倒的な力関係を有する工業的製造者を予定しており,被告のように個人が営む飲食店や調理師個人は,法が本来的に予定する責任主体ではない。また,本件のような稀有な食中毒事例においてまで,法を適用し,原告らに生じた損害を被告に一方的に転嫁することは,損害の公平な分担という不法行為の基本原理からみて不合理であり,そのような結論は社会通念上も相当でない。 (イ) 法は,絶対責任,結果責任を認めるものではないから,製造物責任を課すためには,製造業者等が製品の欠陥に関与していることが最低限必要である。そして,製造物責任が上記のとおり危険責任の法理に立脚している以上,法における製造物責任を負担すべき者は,製品の危険性回避がその者の手に委ねられているといえるだけの地位にある者であり,その者が製品を製造・加工したことによって,新たな危険性が創出され,又はその危険性が高められたことが必要である。 したがって,製造物の原材料に欠陥の原因が含まれていた場合において製造業者が製造物責任を負うためには,製造業者がもともと存した危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与していながら,それを見逃し,回避,除去できなかったと認められることが必要であり,法にいう「加工」といえるためには,このように製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与したことが必要であると解すべきである。 本件イシガキダイに含まれていたシガテラ毒素は,被告の調理によって発生したものではなく,もともと含まれていたものである。そして,イシガキダイにシガテラ毒素が含まれているという事例は全国でも極めて稀であり,一般にその調理に当たってシガテラ毒素の含有を疑うべき事情も存在しないので,これによる食中毒が発生する蓋然性は著しく低かった。また,イシガキダイ 毒素が含まれているという事例は全国でも極めて稀であり,一般にその調理に当たってシガテラ毒素の含有を疑うべき事情も存在しないので,これによる食中毒が発生する蓋然性は著しく低かった。また,イシガキダイがシガテラ毒素を有しているか否かを識別する技術は本件当時も現在も存在しないし,通常の調理方法によってはシガテラ毒素を排除することはできず,その毒性が変化することすらない。 このように,本件食中毒は,加工の過程で危険が生じたのではなく,もともとの素材である本件イシガキダイが毒素を有していたのであり,しかも,被告がこれを認識して対策を講じることは不可能ないし事実上著しく困難であった。したがって,本件イシガキダイを調理した被告は,これに含まれていたシガテラ毒素を発見,除去できる程度に関与していた者ではなく,その危険性回避が被告の手に委ねられていたとはいえないから,被告の調理行為は,法にいう「加工」に該当しない。 また,上記のような事情を考慮すれば,本件料理がシガテラ毒素を有していたことについて,提供者である被告には帰責性がなく,法にいう「欠陥」とは有責性の基準としての客観化・抽象化された注意義務違反のことであるとの立場によれば,客観的・抽象的にも注意義務違反が認められない本件においては,本件料理にはこのような意味での「欠陥」はなかったということができる。 (2) 争点(1)イ(製造物責任の成否 ― 開発危険の抗弁の成否)についてア被告の主張被告が原告らに提供した本件料理に欠陥が存在していたとしても,当該製造物の欠陥は,いわゆる開発危険(法4条1号)に該当するものであるから,被告は免責され,製造物責任を負わない。 (ア) シガテラ中毒は,沖縄県を中心に多数例報告されているが,イシガキダイを食して同中毒を起こした例は同県でも過去 条1号)に該当するものであるから,被告は免責され,製造物責任を負わない。 (ア) シガテラ中毒は,沖縄県を中心に多数例報告されているが,イシガキダイを食して同中毒を起こした例は同県でも過去に僅かながら存在する程度であり,このような食中毒の事例が過去に千葉県勝浦市近辺で報告されたことはない。 また,シガテラ中毒を引き起こす代表的なシガテラ毒魚としてイシガキダイを挙げた文献は見当たらず,イシガキダイがシガテラ毒素を有している場合があるということは一般には全く認識されていない。シガテラ毒については,400種を超す魚種が毒化する可能性があるといわれており,同中毒を起こすのは代表的なシガテラ毒魚に限ったことではないが,同一魚種でも毒化するか否かは個体差,地域差が著しく,摂餌場所に左右されるので,代表的なシガテラ毒魚以外の魚で毒化したものを判別するのは不可能ないし事実上著しく困難であり,シガテラ毒魚は外見上の識別も不可能である。 このように,シガテラ中毒の予測は難しく,現在でも有効な予防対策は存しない。 以上の事実からすれば,本件食中毒の発生当時における科学技術の最高水準の知見をもってしても,千葉県勝浦市近辺において水揚げされた本件イシガキダイがシガテラ毒素を有していることを発見,認識することは不可能であった。 (イ) 被告は,調理方法,保管方法等において,一般的な中毒を予防するには十全の配慮をしており,調理手順等や衛生面への配慮については問題がなかった。また,被告が原告らに対して提供したのは大部分が加熱処理を施した料理であったが,シガテラ毒素は加熱しても全く効果のない毒素であり,中毒を避けるにはこれを食さないとするほかに方法はない。 そして,シガテラ中毒は食中毒のうちでも報告例が僅かしかなく,さらに,イシガキダイによる例は極めて稀 素は加熱しても全く効果のない毒素であり,中毒を避けるにはこれを食さないとするほかに方法はない。 そして,シガテラ中毒は食中毒のうちでも報告例が僅かしかなく,さらに,イシガキダイによる例は極めて稀である。このような場合にまで食中毒発生の予見可能性を肯定し,そのような食中毒についてまで飲食店に調査義務を課したのでは,飲食店は営業開始に当たりすべての入手可能な文献をもってあらゆる食中毒の可能性をしらみ潰しに調査した上で,対策を講じるか,対策が確実でなければその食材の使用自体を断念するかしなければ責任追及は免れないことになって妥当でない。本件のような事案においても開発危険の抗弁の成立が認められないとすると,世界のどこにも報告例のない食中毒が発生した場合でない限り,飲食店は,食中毒事件において過失が認められなくとも損害賠償債務を負うことになるが,これでは飲食店に対し余りに過大な負担を課すものであって,不合理である。 イ原告らの主張(ア) 法4条1号にいう「知見」とは,欠陥の有無を判断するに当たって影響を受ける程度に確立された知識のすべてをいい,特定の者の有するものではなく,客観的に社会に存在する知識の総体を指すものであって,入手可能な最高水準の科学,技術の水準が判断基準とされる。 そして,日本国内だけでもシガテラ中毒の事例が多数例報告されており,イシガキダイによる同中毒の事例についても過去に存在し,公表もされている(当該文献は,保健所等で一般に閲覧が可能であり,販売もされている。)ので,客観的に社会に存在する知識としては,イシガキダイによるシガテラ中毒の発生を予見することは十分に可能であった。 以上のとおり,入手可能な知識を前提とすれば,本件イシガキダイがシガテラ毒素を有していたことを予見することは十分に可能だったのであり イによるシガテラ中毒の発生を予見することは十分に可能であった。 以上のとおり,入手可能な知識を前提とすれば,本件イシガキダイがシガテラ毒素を有していたことを予見することは十分に可能だったのであり,開発危険の抗弁は認められない。 (イ) 本件のような場合に飲食店の法的責任を認めても,共済・保険制度という損害填補の手段を活用することによって危険に備えることが可能である(現に,被告も,社団法人J協会の食品営業賠償共済に加入していた。)から,妥当性を欠くことはない。 (3) 争点(2)(瑕疵担保責任の成否)についてア原告らの主張(ア) 原告らは,平成11年8月13日,Iを訪問したが,その際,被告から,本件料理を調理して提供してきた。そこで,原告らは,自分たちから注文した料理ではなかったが,これを受け入れて食し,その代金を支払った。 (イ) 上記(ア)のところからすれば,原告らと被告との間には,請負と売買の双方の性質を併せ持つ製作物供給契約が成立したといえる。そして,本件の場合,その製作(調理)の側面で目的物に瑕疵があったといえるので,請負契約の瑕疵担保責任に関する規定(民法634条2項)の適用があり,被告は,これに基づいて,原告らの被った損害を賠償すべき責任を負う。 イ被告の主張(ア) 本件料理は,被告から提供したものであったが,売り物として原告らに出したコース料理とは別に,本件イシガキダイのアラの部分を調理して,サービスとして原告らに提供したものであった。通常,イシガキダイのアラの部分は料理として客に出す性質のものではないので,被告は,本件料理について料金の支払を受けるつもりはなかったし,原告らが支払った料金に本件料理の分は含まれていない。 したがって,本件料理は,贈与の意思で原告らに て客に出す性質のものではないので,被告は,本件料理について料金の支払を受けるつもりはなかったし,原告らが支払った料金に本件料理の分は含まれていない。 したがって,本件料理は,贈与の意思で原告らに提供されたものであったところ,被告は,本件料理にシガテラ毒素という瑕疵が存することを認識していなかったので,これについて担保責任(民法551条)を負わない。 (イ) 仮に,上記(ア)の点が認められないとしても,原告らの主張するとおり,本件料理は原告らの注文によらずに調理されたものであって,この点に請負の要素はない。原告らと被告との間の法律関係は,単純な売買契約である(被告が自ら調理して完成させた本件料理を原告らに提供した行為がその申込み,原告らがこれを受け入れて食した行為がこれに対する承諾を構成する。)から,本件には,原告らの主張する瑕疵担保責任の規定は適用されない。 (4) 争点(3)(原告らの損害額)についてア原告らの主張本件食中毒により,原告らは,それぞれ以下の損害(診療費,薬剤費,通院交通費,休業損害,慰藉料,裁判関係費用)を被った。 (ア) 原告A 526万2500円a 診療費 12万1740円原告Aは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 薬剤費 1万4990円原告Aは,上記aの期間中,本件食中毒の治療のため,上記金額の薬剤費を要した。 c 通院交通費 2万5770円原告Aは,上記aの通院のため,上記金額の交通費を要した。 d 休業損害 150万円原告Aは,本件食中毒の発生当時,有限会社K社に勤めており,月60万円の給与を得ていた 770円原告Aは,上記aの通院のため,上記金額の交通費を要した。 d 休業損害 150万円原告Aは,本件食中毒の発生当時,有限会社K社に勤めており,月60万円の給与を得ていたが,本件食中毒による症状のため,その発症から少なくとも平成11年10月末日までの2か月半の間全く就業できず,その間の給与150万円を受けられなかった。 e 慰藉料 300万円原告Aは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,相当期間の治療,通院を要する状況にあるので,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 f 裁判関係費用 60万円上記aないしeの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (イ) 原告B 612万3735円a 診療費 23万4675円原告Bは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月14日から平成13年6月11日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 薬剤費 17万3760円原告Bは,上記aの期間中,本件食中毒の治療のため,上記金額の薬剤費を要した。 c 通院交通費 1万5300円原告Bは,上記aの通院のため,上記金額の交通費を要した。 d 休業損害 200万円原告Bは,本件食中毒の発生当時,Lの名称で金融業を営んでおり,月80万円の給与を得ていたが,本件食中毒による症状のため,その発症から少なくとも平成11年10月末日までの2か月半の間全く就業できず,その間の給与200万円を受けられなかった。 e 慰藉料 300万円原告Bは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされ 成11年10月末日までの2か月半の間全く就業できず,その間の給与200万円を受けられなかった。 e 慰藉料 300万円原告Bは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,相当期間の治療,通院を要する状況にあるので,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 f 裁判関係費用 70万円上記aないしeの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (ウ) 原告C 741万8588円a 診療費 84万6194円原告Cは,本件食中毒の治療のため通院及び入院し,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 薬剤費 1万4514円原告Cは,上記aの期間中,本件食中毒の治療のため,上記金額の薬剤費を要した。 c 通院交通費 3万4680円原告Cは,上記aの通院及び入退院(仮退院を含む。)の際の交通費並びに入院中に見舞い等に訪れた家族の交通費として,自家用車使用料,タクシー料金,駐車料金等,上記金額を要した。 d 休業損害 62万3200円原告Cは,本件食中毒の発生当時,株式会社M器械に勤めており,上記aの入通院のため,平成13年8月25日から同年9月7日までの間に10日,同月29日から同年10月20日までの間に15日の合計25日分の有給休暇を費消した。原告Cの当時の年収は615万7350円,年間勤務日数は多く見積もっても247日であったから,勤務1日当たりの収入は2万4928円であり,この金額に上記有給休暇取得日数25日を乗じた62万3200円が,原告Cの休業損害として認められるべき 間勤務日数は多く見積もっても247日であったから,勤務1日当たりの収入は2万4928円であり,この金額に上記有給休暇取得日数25日を乗じた62万3200円が,原告Cの休業損害として認められるべきである。 e 慰藉料 500万円原告Cは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,平成11年8月14日から同月15日まで,同月26日から同月29日まで,同年9月29日から同年10月20日までの合計28日入院し,なお相当期間の治療,通院を要する状況にあるほか,本来なら就業不可能な時期もかなり無理をしてできる限り就業したにもかかわらず,それでも相当日数欠勤ないし早退せざるを得なかったことから,今後の昇給や昇格に影響が出るのは必至であり,実際に上司などからその旨指摘されている。そうした種々の点に伴う苦痛,不安,恐怖,不利益等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 f 裁判関係費用 90万円上記aないしeの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (エ) 原告D 521万5306円a 診療費 21万9306円原告Dは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 通院交通費 2万1000円原告Dは,上記aの通院のため,上記金額の交通費を要した。 c 休業損害 137万5000円原告Dは,本件食中毒の発生当時,K社に勤めており,月55万円の給与を得ていたが,本件食中毒による症状のため,その発症から少なくとも平成11年10月末日までの2か月半の間全く就業できず,その間の給与137万5000円を受けられなかった 勤めており,月55万円の給与を得ていたが,本件食中毒による症状のため,その発症から少なくとも平成11年10月末日までの2か月半の間全く就業できず,その間の給与137万5000円を受けられなかった。 d 慰藉料 300万円原告Dは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,相当期間の治療,通院を要する状況にあるので,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 e 裁判関係費用 60万円上記aないしdの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (オ) 原告E 349万4616円a 診療費 9万4616円原告Eは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 慰藉料 300万円原告Eは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,相当期間の治療,通院を要する状況にあるので,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 c 裁判関係費用 40万円上記a及びbの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (カ) 原告F 26万7052円a 診療費 1万7052円原告Fは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月14日から同月31日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 慰藉料 20万円原告Fは,本件食中毒により症状に苦しみ,平成11年8月14日から同月31日まで通院治療したが,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料 療費を要した。 b 慰藉料 20万円原告Fは,本件食中毒により症状に苦しみ,平成11年8月14日から同月31日まで通院治療したが,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 c 裁判関係費用 5万円上記a及びbの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (キ) 原告G 594万0022円a 診療費 7万2516円原告Gは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 通院交通費 2万3736円原告Gは,上記aの通院のため,上記金額の交通費を要した。 c 休業損害 214万3770円原告Gは,本件食中毒の発生当時,訴外株式会社Nホームの代表取締役を務め,従業員を指揮監督するにとどまらず,自らも建築現場に赴いて監督,作業等もしていたものであるが,本件食中毒による症状のため,本来なら,少なくとも平成11年10月末日までは全く就業できず,その後も,平成12年8月中旬ころまでは,特に屋外の現場での作業などに携わるには,手足の痛みに拍車をかけたりするため極めて困難であったにもかかわらず,Nホームを取りまとめる立場上,その休業が同社の業績に著しい影響を及ぼすことから,気力を振り絞り,そうした手足の痛みや前記症状からくる集中力の低下などにも耐え,かなり無理をして現場での作業も含めできる限り従来どおりに就業し続けたにとどまらず,処理能力の低下により後倒しとなった仕事を処理すべく,むしろ従来より余計に業務に時間を費やしていた。 以上の点に鑑みると,原告Gは,本件食中毒を原因として従来より過 おりに就業し続けたにとどまらず,処理能力の低下により後倒しとなった仕事を処理すべく,むしろ従来より余計に業務に時間を費やしていた。 以上の点に鑑みると,原告Gは,本件食中毒を原因として従来より過剰な労働をする結果となっていたのであるから,その対価相当分は損害として評価されるべきであって,その額は,賃金センサスの男子労働者学歴計の51歳の年収額714万5900円を基礎とし(なお,原告Gの役員報酬は1500万円以上支給されていた。),少なくとも1年間はその30パーセント分相当は過剰に労働していたものとして計算すると,214万3770円となる。 また,仮に上記金額が休業損害として認められないとしても,その分は慰藉料の算定について評価されるべきであり,原告Gは,これを後記dの金額に上乗せして請求する。 d 慰藉料 300万円原告Gは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,相当期間の治療,通院を要する状況にあるので,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 e 裁判関係費用 70万円上記aないしdの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 (ク) 原告H 443万8087円a 診療費 11万8997円原告Hは,本件食中毒の治療のため通院し,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間に,上記金額の診療費を要した。 b 休業損害 81万9090円原告Hは,本件食中毒による症状のため,その発症から少なくとも平成11年10月末日までは,料理,掃除,洗濯等の家事を全くできないような状況であった。 原告Hは主婦であるので,賃金センサスの女子労働者学歴計の47 本件食中毒による症状のため,その発症から少なくとも平成11年10月末日までは,料理,掃除,洗濯等の家事を全くできないような状況であった。 原告Hは主婦であるので,賃金センサスの女子労働者学歴計の47歳の年収額373万7100円を基礎とし,平成11年8月13日から同年10月31日までの80日間,労働能力を喪失していたものとして計算すると,原告Hの休業損害額は81万9090円である。 c 慰藉料 300万円原告Hは,本件食中毒により継続して症状に苦しみ,悩まされており,相当期間の治療,通院を要する状況にあるので,これらに伴う苦痛,不安,恐怖等に対する慰藉料としては,上記金額を下らない。 d 裁判関係費用 50万円上記aないしcの合計額を請求する本件訴訟においては,弁護士費用等,少なくとも上記金額の費用を要する。 イ被告の主張損害額についての原告らの主張はいずれも争う。 (ア) 診療費,薬剤費及び通院交通費について原告Fが平成11年8月14日から同月31日まで通院治療したことは認める。 その余の原告らは,一様に本件食中毒の発生から約2年間にわたって通院治療を継続している旨主張するけれども,シガテラ中毒については,一般に致命率は低く,多くの場合2,3日で回復するとの指摘もあり,その治癒には長くても数か月を要するとされているのみであるから,個人差はあるとしても,本件食中毒により2年間もの長期にわたる治療を要することは,何人においても想定困難である。 したがって,原告らの費やした診療費,薬剤費及び通院交通費の全額が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にある損害とはいえない。 (イ) 休業損害についてa 原告Aについて原告Aが,本件食中毒の発生当時,K社に勤めており,月60万円の 通費の全額が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にある損害とはいえない。 (イ) 休業損害についてa 原告Aについて原告Aが,本件食中毒の発生当時,K社に勤めており,月60万円の給与を得ていたことは認めるが,同原告が同社において実働していたか否かは疑わしい。 原告AがK社の総務部長であり,同社の代表者が原告Aの親族であることからすれば,休業損害証明書の信用性は乏しく,2か月半にわたって全く就業できなかったとする原告Aの主張は疑わしいし,また,当該休業が本件食中毒に起因するとは考えられず,その損害が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にあるとはいえない。 b 原告Bについて原告Bが,本件食中毒の発生当時,Lの名称で金融業を営んでおり,月80万円の給与を得ていたことは認める。 原告Bは個人事業主であるから,休業損害証明書の信用性は乏しく,2か月半にわたって全く就業できなかったとする原告Bの主張は疑わしいし,また,当該休業が本件食中毒に起因するとは考えられず,その損害が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にあるとはいえない。 c 原告Cについて原告Cが,本件食中毒の発生当時,M器械に勤めていたこと,平成13年8月25日から同年9月7日までの間及び同月29日から同年10月20日までの間に合計25日分の有給休暇を取得したことは認める。 当該有給休暇の使用が本件食中毒に起因するとは考えられず,これによる損害が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にあるとはいえない。 d 原告Dについて原告Dは,本件食中毒の発生当時,K社に勤めており,月55万円の給与を得ていたことは認めるが,同原告が同社において実働していたか否かは疑わしい。 原告Dの勤務先は,母親である原告Aが総務部長を務める会社であり,代表者も親族で 時,K社に勤めており,月55万円の給与を得ていたことは認めるが,同原告が同社において実働していたか否かは疑わしい。 原告Dの勤務先は,母親である原告Aが総務部長を務める会社であり,代表者も親族であるから,休業損害証明書の信用性は乏しく,2か月半にわたって全く就業できなかったとする原告Dの主張は疑わしいし,また,当該休業が本件食中毒に起因するとは考えられず,その損害が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にあるとはいえない。 e 原告Gについて原告Gが,本件食中毒の発生当時,Nホームの代表取締役を務め,従業員を指揮監督するにとどまらず,自らも建築現場に赴いて監督,作業等もしていたことは認める。 原告Gは,平成11年10月末日までは全く就業できず,その後平成12年8月中旬ころまでは従来より余計に業務に時間を費やしたとして休業損害の主張をするが,その信用性は疑わしいし,同原告の主張するような方法で損害額を算定する根拠も不明である。仮に,原告Gが平成11年10月末日まで休業し,その後平成12年8月中旬ころまで超過労働を行っていたとしても,これらが本件食中毒に起因するものであるとは考えられず,これを理由とする損害が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にあるとはいえない。 f 原告Hについて平成11年10月末日まで家事を全くできない状況であったとする原告Hの主張は疑わしいし,仮にそのとおりであったとしても,それらが本件食中毒に起因するものであるとは考えられず,これを理由とする損害が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にあるとはいえない。 (ウ) 慰藉料について原告らの主張する慰藉料額の算定根拠は不明である。 仮に,原告らが精神的損害を被ったとしても,当該損害額の算定に当たっては,損害の公平な分担の観点から,当事者双方の事 (ウ) 慰藉料について原告らの主張する慰藉料額の算定根拠は不明である。 仮に,原告らが精神的損害を被ったとしても,当該損害額の算定に当たっては,損害の公平な分担の観点から,当事者双方の事情を斟酌すべきであって,本件が極めて稀有な食中毒事例であり,被告はもちろん,何人においても予見し得ないものであったこと,その中毒症状について未だ有効な治療方法は開発されていない現状にあること,被告は個人経営の飲食店主にすぎないこと等の諸事情が考慮されるべきである。 (エ) 裁判関係費用について原告らの主張する金額の算定根拠は明らかでない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)ア(製造物責任の成否 ― 製造物該当性の有無)について(1) 製造物責任は,平成6年6月22日に成立し,平成7年7月1日から施行された法により創設された法的責任であり,製造物の欠陥によって他人の生命,身体又は財産を侵害した場合に,これによって被害者に生じた損害を当該製造物の製造者に賠償させることを内容とするものであるが,このような責任を負担させるに当たり,製造者の過失を要件としておらず,従来の不法行為責任における基本原則である過失責任主義とは異なった新たな理念に基づく法的責任といえる。過失責任主義を修正した法の立法趣旨とするところは,被害者救済の見地からの立証負担の軽減にあると解される。すなわち,従来の不法行為法理の原則である過失責任主義からすれば,被害者が直接の契約関係に立たない製造者に対して損害賠償責任を追及する場合には,被害者において製造者に過失があったことの立証が必要とされる。しかし,経済活動が複雑化,高度化,技術化したため,製品事故等が発生した場合に,専門的知識を有しない被害者が科学的,技術的に高度化した製品の製造過程等の過誤を調査することは との立証が必要とされる。しかし,経済活動が複雑化,高度化,技術化したため,製品事故等が発生した場合に,専門的知識を有しない被害者が科学的,技術的に高度化した製品の製造過程等の過誤を調査することは困難であり,また,事業規模の拡大した事業者の個々の従業員等の過失行為を特定して立証することには多大な困難を伴うことになる。そこで,法は,その立証の困難性に鑑み,製造物責任を追及する場合においては,主観的要件である過失に代えて,客観的性状である製造物の欠陥を要件とすることで,立証の負担を軽減することとして,被害者の保護を図っているものと解される(法1条,3条参照)。 そして,製造業者が過失を要件としないで損害賠償責任を負担するものとされた根拠としては,①製造物の安全性の確保はその製造又は加工の過程に携わる製造業者に依存しており,当該製造物の持つ危険性を制御すべき立場にある製造業者がその危険が顕現した場合の損害を負担すべきであるとの危険責任の法理,②製造業者は製造物を製造又は加工するというその事業活動によって利益を得ており,当該製造物の欠陥によって他人に損害を与えた場合にはこのような利益を得ている製造業者においてその損害を負担すべきであるとの報償責任の法理,③製造物の利用者は製造業者が当該製造物の安全性を確保していることを信頼してこれを利用しており,この信頼に反して損害が発生した場合にはそのような信頼を与えた製造業者が損害を負担すべきであるとの信頼責任の法理を背景として,公平の観点から,製造物の欠陥によって損害が発生した場合にはその損害を製造業者に負担させ,被害者の円滑かつ適正な救済を図ることが適切であると考えられたものと解される。 (2) 法は,製造物を「製造又は加工された動産」と定義し(法2条1項),製造物の欠陥により発生した損害につい させ,被害者の円滑かつ適正な救済を図ることが適切であると考えられたものと解される。 (2) 法は,製造物を「製造又は加工された動産」と定義し(法2条1項),製造物の欠陥により発生した損害について製造業者等が賠償責任を負うものとしている(法3条)。そして,製造物の「欠陥」の意義については,当該製造物の特性,その通常予見される使用形態,その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して,当該製造物が通常有すべき安全性を欠くことをいうとの定義規定(同条2項)が存するものの,「製造又は加工」の意義については特に定義規定を置いていない。 そこで,「製造又は加工」の意義について検討するに,法において「製造又は加工」された動産のみが製造物としてその適用対象とされているのは,「製造又は加工」の過程を経た人為的産物について製造業者等に製造物責任を負わせることが,上記(1)に説示した危険責任,報償責任,信頼責任の各法理に照らして適切であり,他面,未加工農林水産物など自然の状態から収穫された一次産品を製造物の範疇から除外して,製造物責任の成立する範囲を画そうとした趣旨であると解される。 このような観点からすれば,法にいう「製造又は加工」とは,原材料に人の手を加えることによって,新たな物品を作り(「製造」),又はその本質は保持させつつ新しい属性ないし価値を付加する(「加工」)ことをいうものと解するのが相当である。そして,食品の加工について,より具体的にいえば,原材料に加熱,味付けなどを行ってこれに新しい属性ないし価値を付加したといえるほどに人の手が加えられていれば,法にいう「加工」に該当するというべきである。 (3) そこで,以上の検討結果を踏まえ,被告が本件イシガキダイを調理して本件料理にしたことが,法にいう「製造又は るほどに人の手が加えられていれば,法にいう「加工」に該当するというべきである。 (3) そこで,以上の検討結果を踏まえ,被告が本件イシガキダイを調理して本件料理にしたことが,法にいう「製造又は加工」に該当するか否かを検討する。 証拠(甲5,乙9及び被告本人)によれば,被告は,本件イシガキダイを平成11年8月8日に仲卸業者であるOから仕入れ,I店内の水槽に放しておいた後,同月12日にこれを捌き,内臓を除去して3枚におろし,身,腹す,兜,中骨に分けて,同月13日,身の部分を氷水で締めてアライにして原告らに提供したほか,兜や中骨の部分を塩焼きにし,本件料理として原告らに提供したことが認められる。 そうすると,被告は,本件イシガキダイという食材に手を加え,客に料理として提供できる程度にこれを調理したものといえるから,このような被告の調理行為は,原材料である本件イシガキダイに人の手を加えて新しい属性ないし価値を加えたものとして,法にいう「加工」に該当するものというべきである。 (4) 本件料理が動産であることは明らかであるから,本件料理は,加工された動産として製造物に該当する。また,食品は,その性質上,無条件的な安全性が求められる製品であり,およそ食品に食中毒の原因となる毒素が含まれていれば,当該食品は通常有すべき安全性を欠いているものというべきであるから,本件料理がシガテラ毒素を含んでいたことは,製造物の欠陥に当たる。したがって,被告は,法3条に基づき,このような製造物の欠陥による製造物責任を負うものというべきである。 (5) この点,仮に,被告が第2・4(1)イ(イ)で主張するように,法にいう「加工」の概念について,製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与したことが必要であると解するときは,被害者が製造物 ,被告が第2・4(1)イ(イ)で主張するように,法にいう「加工」の概念について,製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与したことが必要であると解するときは,被害者が製造物責任を追及するためには,「製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去することができる程度」を明らかにした上で,当該製造業者が当該製造物の加工についてその「程度に関与したこと」を立証しなければならないことになり,そのためには,被害者において,欠陥の発生原因及びその回避手段を詮索しなければならないとともに,製造業者の行った当該製造物の加工の過程を明らかにしなければならないこととなる。 しかしながら,そもそも法は,製造物責任の要件として「加工」と侵害行為との因果関係を明示的に求めておらず,求められているのは引き渡された製造物と侵害行為との因果関係である上,被告の主張するところは,結局,製造業者の過失の立証を求めるのと異ならないのであって,上記(1)に説示したとおり,製造業者等の損害賠償責任の帰責根拠を製造業者の「過失」から製造物の「欠陥」に置き換えることによって被害者の立証の負担を軽減し,被害者の救済を図ろうとした法の立法趣旨を没却しかねないことは明らかである。 もっとも,本件食中毒においては,もともとの食材である本件イシガキダイにシガテラ毒素が含まれており(第2・2(3)),また,本件全証拠によっても,シガテラ毒素が被告による本件イシガキダイの調理の過程で付加ないし増加したものとまでは認め難いことは被告の指摘するとおりであって,本件に限定すれば,「加工」の概念を「製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与したこと」と捉え,被告がこれに該当するか否かを検討することは,被害者である原告らに必ずしも不可能を強いるもの ,「加工」の概念を「製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与したこと」と捉え,被告がこれに該当するか否かを検討することは,被害者である原告らに必ずしも不可能を強いるものではないともいい得ないわけではない。しかしながら,法の要件である「加工」という概念の解釈は,法解釈の予測可能性の観点等を踏まえれば,当該事案に限定して解すればよいわけではなく,立法趣旨等を踏まえて,他の事案等にも適用し得るように統一的になされるべきであって,そうであれば,先に指摘した諸点から,「加工」の概念につき,「製造業者が製造物の危険を回避し,あるいは発見,除去できる程度に関与したこと」が必要であると解することは当を得ない。 したがって,被告が第2・4(1)イ(イ)で主張するような解釈は採用できない。 (6)アまた,被告は,個人で飲食店を経営する調理師にすぎず,ある意味では一消費者と変わらない立場にあって,客である原告らとほぼ同等の力関係にある被告が,調理師として要求される義務を尽くして料理を提供しても,なお本件イシガキダイに含まれていたシガテラ毒素を発見,除去し得なかったという本件のような極めて稀有な食中毒事例においてまで,法を適用し,原告らに生じた損害を被告に一方的に転嫁することは,損害の公平な分担という不法行為責任の基本原理からみて不合理であり,そのような結論は社会通念上も相当でないなどとも主張する(第2・4(1)イ(ア))。 イそこで,上記主張の当否を検討すると,そもそも,法3条にいう製造物責任を負うべき主体は,当該製造物を「業として」製造,加工又は輸入した者(若しくはそのような表示をした者)に限られている(法2条3項)のであって,製造物責任の主体となり得るか否かは,製造物の製造,加工又は輸入を業として反復継続する 「業として」製造,加工又は輸入した者(若しくはそのような表示をした者)に限られている(法2条3項)のであって,製造物責任の主体となり得るか否かは,製造物の製造,加工又は輸入を業として反復継続する者であるか否かによって画されていることは明らかである。また,法が製造業者等の事業態様や経営規模については特段の制約を設けていないこともまた明らかである。 そして,法が製造業者等の事業態様や経営規模について特段の制約を設けていないのは,(1)で記載した危険責任及び報償責任の観点を背景としつつ,さらに,製造物の製造,加工又は輸入を反復継続することを予定する業者としては,そのような業務を行うに当たって,当該製造物に欠陥が存在した場合には過失を前提としない製造物責任を負担すべき危険が伴うことをも企業計算に織り込み,このような危険を分散,回避するための措置を予め講じておくことが可能であることも考慮に入れたものであると解される。現に,我が国において法が公布されたのが平成6年7月1日,施行されたのが平成7年7月1日であったところ,当時,法の施行によって製造業者等が厳格な製造物責任を負うこととなり,製造物の欠陥に起因する損害賠償責任を負担すべき危険が大きくなることが予想されたことから,そのような危険を分散するための制度の必要性が強調され,法の施行までの間に,これに備えた責任保険制度等の普及が図られたことは公知の事実である。 このように,製造業者等は,その事業態様や経営規模等にかかわらず,予め危険を分散する手段の有無という点で,これを持たないのが一般である消費者とは性質を異にしているのであって,そうであれば,製造業者等が製造物責任により他人の被った損害を転嫁されることになったとしても,そのことが,損害の公平な分担という不法行為責任の基本原理からみて不合理で 性質を異にしているのであって,そうであれば,製造業者等が製造物責任により他人の被った損害を転嫁されることになったとしても,そのことが,損害の公平な分担という不法行為責任の基本原理からみて不合理であるとはいえないというべきである。 ウ加えて,具体的に本件に即して検討してみても,証拠(甲53,55及び被告本人)によれば,被告は,本件食中毒の発生以前から,社団法人J協会との間で,同協会を共済責任者として,提供した食品が原因で客が食中毒になった場合等の食品事故を共済事故とする責任共済(食品営業賠償共済)に加入していること,同共済は,法にも対応した制度となっており,そのパンフレット(甲53)の表紙には,キャッチコピーとして「PL時代の万全対策に」と記載してあること,被告は補償限度額5000万円の範囲で共済金の支払を受けて損害を填補することができるものであることが認められるところであるから,本件において,被告が製造物責任を負担し,原告らの被った損害を賠償すべきこととなっても,そのことが公平の原理に反し,具体的妥当性を欠くものとは到底いえない。 2 争点(1)イ(製造物責任の成否 ― 開発危険の抗弁の成否)について(1) 法4条は,製造業者等が「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては,当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」(同条1号)を証明したときは,法3条の製造物責任を負わない旨を規定している(いわゆる開発危険の抗弁)。この規定の立法趣旨とするところは,製造業者が科学技術に関する知見を如何に駆使しても当該製造物に存在する欠陥をおよそ認識することができない場合には,そのような欠陥による損害の発生も賠償すべき責任の限度も全く予測できないにもかかわらず,なお製造業者 術に関する知見を如何に駆使しても当該製造物に存在する欠陥をおよそ認識することができない場合には,そのような欠陥による損害の発生も賠償すべき責任の限度も全く予測できないにもかかわらず,なお製造業者が製造物責任を負担しなければならないとすると,製造業者においてこのような負担を恐れて新製品の開発意欲が失われ,研究開発や技術革新が停滞し,ひいては産業活力が損なわれて国民経済の健全な発展が阻害されると考えられたため,政策的配慮から,このような事態を回避しようとしたことにあると解される。他方,この開発危険の抗弁が安易に認められると,被害者救済を目的とする製造物責任制度を導入した意義が失われることは明らかであって,上記のような政策的配慮を背景とする開発危険の抗弁の立法趣旨に鑑みれば,その適用範囲は限定的に解するのが相当である。 加えて,法には,不法行為における「加害者の過失」という主観的な要件を排し,物の客観的性状である「製造物の欠陥」を要件とすることで,主観的な要素である「加害者の過失」の判断に必然的に伴うばらつきを解消し,製品事故における損害賠償責任の法的安定性を確保する意義もあると解されるから,この観点からすると,上記「科学又は技術に関する知見」の基準を加害者の知見に求めるのは相当でない。 以上を踏まえて法の規定を解釈すれば,法4条1号にいう「科学又は技術に関する知見」とは,科学技術に関する諸学問の成果を踏まえて,当該製造物の欠陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識のすべてをいい,それは,特定の者が有するものではなく客観的に社会に存在する知識の総体を指すものであって,当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学技術の水準がその判断基準とされるものと解するのが相当である。そして,製造業者等は に存在する知識の総体を指すものであって,当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学技術の水準がその判断基準とされるものと解するのが相当である。そして,製造業者等は,このような最高水準の知識をもってしても,なお当該製造物の欠陥を認識することができなかったことを証明して,初めて免責されるものと解するのが相当である。 (2) そこで,本件において上記の証明がされているかどうかを検討すると,第2・2(4)記載の当事者間に争いのない事実に,証拠(甲46の1ないし4,48の1及び2,乙1,2,8,9並びに被告本人)を総合すれば,次の事実を認めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 アシガテラ毒素を原因とする食中毒は,シガトキシンとその関連毒によって起こるもので,海藻の表面に付着棲息する鞭毛藻により生産される毒が食物連鎖により草食魚から肉食魚に蓄積毒化され,ヒトが草食魚を直接,あるいは肉食魚を介して摂取することにより生じるものといわれている。シガテラ中毒は,主として南方産の魚の摂食によって起きる食中毒であり,日本国内においても,沖縄や奄美諸島では古くから相当数発生しているとされ,公式に報告された発症例としても,沖縄県を中心に複数の例が報告されている。そして,これらの点は,昭和55年に発行された「医学のあゆみ」第112巻第13号や,昭和62年に発行された「実務食品衛生」などの文献に掲載されている。 イ千葉県内で発生したシガテラ中毒としては,勝浦沖において漁獲されたヒラマサ(南方で毒化した魚が回遊したものと推測されている。)を原因魚種とするものが昭和42年5月に発症した例が報告されており,そのことは,上記アに列挙した文献から知ることができる。 ウイシガキダイを原因魚種とするシガテラ中毒 ものと推測されている。)を原因魚種とするものが昭和42年5月に発症した例が報告されており,そのことは,上記アに列挙した文献から知ることができる。 ウイシガキダイを原因魚種とするシガテラ中毒としては,昭和63年8月に沖縄県那覇市において発症した例が報告されていたほか,平成4年3月に同県具志川市において発症した例が「平成4年全国食中毒事件録」に,平成8年2月に同県那覇市において発症した例が「平成8年全国食中毒事件録」に,それぞれ掲載されているが,これらの文献は市販され,保健所等において一般に閲覧することも可能である。 エシガテラ中毒の原因となるシガテラ毒魚は数百種類あるといわれているが,実際上問題となるのは数十種類と考えられており,また,同一魚種であっても,その毒性は顕著な地域差,個体差,部位差及び年変化を示すことが文献等で指摘されている。 オなお,被告は,本件食中毒の発生の前日である平成11年8月12日にも,原告らとは別の客に対してイシガキダイの料理を提供しており,この客についても,シガテラ中毒の疑いのある症状が見られたが,被告がこのことを知ったのは,同月14日に原告Aから本件食中毒の発生を知らされた後である同月16日のことであった。 (3) 以上の認定事実を踏まえて検討するに,上記(2)オの例を除いて,本件食中毒の発生以前に,千葉県勝浦市近辺の海域において漁獲されたイシガキダイによりシガテラ中毒が発症した例が存在したものとは認められないところであるが,上記(2)アないしエに認定したところの既存の知識を総合すれば,毒化したイシガキダイが千葉県勝浦市近辺の海域で漁獲されることも予測できないことではないから,本件イシガキダイを食材とする本件料理がシガテラ毒素を含有することを認識することが全く不可能であったとはいえ したイシガキダイが千葉県勝浦市近辺の海域で漁獲されることも予測できないことではないから,本件イシガキダイを食材とする本件料理がシガテラ毒素を含有することを認識することが全く不可能であったとはいえないし,これらの知識を入手することが不可能であったとも認めることはできない。現に,被告自身も,平成11年8月16日に保健所から本件食中毒がシガテラ中毒であることを知らされた後,自ら医療機関に問い合わせて文献を取り寄せたり,文献の著者に照会するなど,専ら情報の収集を内容とする調査をした結果,既存の知識として存在していた上記(2)アないしエの点をある程度は認識するに至ったものであると認められる(乙9及び被告本人)。 そうすると,被告が原告らに本件料理を提供した当時において,入手可能な最高の科学技術の水準をもってしても,本件料理にシガテラ毒素が含まれるとの欠陥があったことを認識することはできなかったことの証明があったものとはいえないし,そもそも,上記(1)に説示したところに照らせば,既存の文献を調査すれば判明するような事項については開発危険の抗弁が認められる余地はないと解すべきであるから,本件において,法4条による免責を被告に認めることはできないというべきである。 (4) なお,被告は,シガテラ毒魚の識別が著しく困難であること,シガテラ中毒の有効な予防対策がないことをも免責の根拠として主張するけれども,法4条の規定する証明がされない限り,たとえ欠陥の発生の防止措置や発見方法が存在しないことが証明されても,製造業者等が製造物責任を負うことを免れるものではないと解するほかないから,このような被告の主張は失当であるといわざるを得ない。 3 小括以上の検討によれば,被告(製造業者)は,その調理(加工)した本件料理(製造物)を原告らに提供(引渡)し ないと解するほかないから,このような被告の主張は失当であるといわざるを得ない。 3 小括以上の検討によれば,被告(製造業者)は,その調理(加工)した本件料理(製造物)を原告らに提供(引渡)し,これに含まれていたシガテラ毒素(欠陥)により,本件料理を食した原告らを本件食中毒に罹患させた(身体を侵害した)ものと認められ,開発危険の抗弁による免責も認められないから,法3条に基づき,本件食中毒によって原告らが被った損害を賠償する責任を負うとべきである。 そして,瑕疵担保責任の規定によった場合に,法3条の規定による場合の損害額を超えて,その賠償が認められるということはないから,争点(2)(瑕疵担保責任の成否)については判断する必要は認められない。 4 争点(3)(原告らの損害)について(1) 原告A  173万2803円原告Aの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしカの合計額である173万2803円であると認められる。 ア診療費  12万1740円(請求12万1740円)(ア) 証拠(甲6の1及び3,14並びに15の1ないし26)によれば,原告Aは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間,医療法人社団P病院,医療法人社団Q病院及びR大学医学部附属病院(以下「R大病院」という。)に合計29日通院し,その診療費として合計12万1740円を支出した事実を認めることができる。 (イ) ところで,被告は,本件食中毒により2年間もの長期にわたる治療を要することは何人においても想定困難であるとして,そのような長期の通院治療を継続したことを前提とする原告ら主張の診療費,薬剤費及び通院交通費については,その全額が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にある することは何人においても想定困難であるとして,そのような長期の通院治療を継続したことを前提とする原告ら主張の診療費,薬剤費及び通院交通費については,その全額が本件食中毒と相当因果関係の範囲内にある損害とはいえないと主張する。 しかし,証拠(甲46の1ないし4,甲49,乙2,5,6及び8)によれば,シガテラ中毒の症状が治癒するまでの期間については,2,3日で回復するとの指摘も過去には存在したものの,今日では,概ね数週間から数か月,長いときは1年以上を要するものと考えられていることが認められる。したがって,この点についての被告の主張は,先の認定,判断を左右することはできない。なお,この点の被告の主張が理由がないことは,原告Aの薬剤費及び通院交通費並びに治療の長期化したその余の原告らの診療費,薬剤費及び通院交通費についても同様であるので,以下特にこの点については判断を摘示しない。 イ薬剤費  1万4990円(請求1万4990円)証拠(甲30及び31の1ないし7)によれば,原告Aは,平成11年8月19日から同年11月2日までの間に,本件食中毒の治療のための薬剤費として合計1万4990円を支出した事実を認めることができる。 ウ通院交通費  2100円(請求2万5770円)証拠(甲36)によれば,原告Aが平成11年8月19日から同年10月5日までの間に,通院のためにタクシーを利用し,合計2万5770円を支出したことが認められないではなく,証拠(甲14並びに15の1ないし6及び9)によれば,千葉市花見川区y町所在のQ病院への6回の通院及び千葉市中央区z所在のR大病院への2回目の通院の際に利用したのではないかと推認できないではない。 しかしながら,原告Aが通院交通費の立証として提出する甲第36号証は,その記載内容についての裏付け び千葉市中央区z所在のR大病院への2回目の通院の際に利用したのではないかと推認できないではない。 しかしながら,原告Aが通院交通費の立証として提出する甲第36号証は,その記載内容についての裏付けを欠くものであり,また,損害賠償の理念である損害の公平な分担の観点に照らして考えると,不法行為の被害者が加害者に対して請求し得る通院交通費は,当該不法行為により被害者が不可避的に支出を余儀なくされた費用に限られるというべきところ,原告Aの住居からQ病院及びR大病院への距離,交通状況,原告Aの症状,体調等に照らして,原告Aが上記各病院への通院にタクシーを利用しなければならなかったという事情は,本件全証拠によっても認められない。 一方,証拠(甲37)によれば,原告Aと同居している原告Bの住居からQ病院及びR大病院までは,いずれも往復約15キロメートルの距離があることが認められ,その距離を何らかの交通手段を用いないで通院することは困難であると推認される。そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメートルにつき20円を要するものと認められるから,往復15キロメートルの距離がある上記各病院に自家用車で通院した場合の交通費は1往復についていずれも300円と評価され,この金額は,上記各病院への通院に公共交通機関を利用した場合の費用に比べても高額に失することはないものと認められる。 以上検討した結果によれば,原告Aが本件食中毒の治療のために不可避的に支出した通院交通費は,上記各病院への計7回の通院に要した交通費2100円であると認められ,原告Aの通院交通費の請求はこの限度で理由がある。 エ休業損害  43万3973円(請求150万円)原告Aが,本件食中毒の発生当時,K社に勤 の通院に要した交通費2100円であると認められ,原告Aの通院交通費の請求はこの限度で理由がある。 エ休業損害  43万3973円(請求150万円)原告Aが,本件食中毒の発生当時,K社に勤務し,月60万円の給与を得ていたことについては当事者間に争いがないところ,この当事者間に争いのない事実に,証拠(甲1,6の3,42及び原告B本人)を総合すれば,原告Aは,本件食中毒のために,平成11年8月13日から同年10月31日まで就業不可能と診断され,このうち同年8月16日から同年9月14日までの30日間は出勤していなかったこと,原告Aの平成10年度の年収は720万円であり,この金額は月額60万円の給与の12か月分に相当するものであることが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。そして,原告Aの稼働日数が,平成11年5月は21日,同年6月及び7月はいずれも22日であることに照らすと,原告Aの勤務は週5日であると推認されるので,同年8月16日から同年9月14日までのうち,原告Aが欠勤として給与を支給されなかったのは,週2日の休暇日を除いた22日であったと考えられる。 以上によれば,原告Aは,上記欠勤期間の給与(年収720万円の365分の22)に相当する43万3973円を支給されなかったとの損害を被ったというべきである。 オ慰藉料  100万円(請求300万円)上記アで認定したとおり,原告Aは,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に合計29日通院したほか,証拠(甲1,6の3及び4,57,59並びに原告B本人)によれば,原告Aは,本件食中毒によって下痢,皮膚掻痒症,体のだるさ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたことが認められる。 他方,原告Aの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの, Aは,本件食中毒によって下痢,皮膚掻痒症,体のだるさ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたことが認められる。 他方,原告Aの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠(甲6の1及び3,14並びに15の1ないし26)によれば,原告Aの通院状況は,平成11年8月から同年9月上旬にかけては頻繁であったものの,その後はほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっていると認められるところであり,慰藉料の算定に当たっては,こうした状況も斟酌せざるを得ない。 以上の事実によれば,原告Aは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは明らかであり,諸般の事情を総合考慮すれば,これを慰藉するための慰藉料としては,100万円が相当であると認められる。 カ裁判関係費用  16万円(請求60万円)上記アないしオの合計額は157万2803円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Aが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して16万円が相当であると認められる。 (2) 原告B  219万5465円原告Bの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしカの合計額である219万5465円であると認められる。 ア診療費  23万4675円(請求23万4675円)証拠(甲7の1及び3,16並びに17の1ないし36)によれば,原告Bは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月14日から平成13年6月11日までの間,P病院,医療法人社団S病院,医療法人社団T病院,Q病院及びR大病院に少なくとも合計34日通院し,その診療費として合計23万4675円を支出した事実 1年8月14日から平成13年6月11日までの間,P病院,医療法人社団S病院,医療法人社団T病院,Q病院及びR大病院に少なくとも合計34日通院し,その診療費として合計23万4675円を支出した事実を認めることができる。 イ薬剤費  17万3760円(請求17万3760円)証拠(甲32,33の1ないし24及び原告B本人)によれば,原告Bは,平成11年8月26日から平成13年4月20日までの間に,本件食中毒のための薬剤費として合計17万3760円を支出した事実を認めることができる。 ウ通院交通費  8400円(請求1万5300円)証拠(甲7の3,16及び17の3ないし36)によれば,原告Bは,平成11年8月19日から平成13年6月11日までの間に,Q病院に3回,R大病院に少なくとも28回通院したことが認められる(甲第16号証によれば,R大病院への通院回数は32回と記載されているが,前掲各証拠によれば,平成12年4月11日,同年6月13日,同年8月8日については,それぞれ次の通院日にその診察費等が支払われていると認められ,その通院の事実を推認することができるけれども,通院日不詳の同年11月から平成13年2月までの4回分については,通院の事実を裏付けるに足りる証拠はないから,甲第16号証の記載からは,この4回の通院の事実を認めることはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。)。 一方,第3・4(1)ウで認定したとおり,原告Bの住居からQ病院及びR大病院までは,いずれも往復約15キロメートルの距離があることが認められ,その距離を何らかの交通手段を用いないで通院することは困難であると推認される。そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメートルに を何らかの交通手段を用いないで通院することは困難であると推認される。そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメートルにつき20円を要するものと認められるから,往復15キロメートルの距離がある上記各病院に自家用車で通院した場合の交通費は1往復についていずれも300円と評価され,この金額は,上記各病院への通院に公共交通機関を利用した場合の費用に比べても高額に失することはないものと認められる。 以上検討した結果によれば,原告Bが本件食中毒の治療のために不可避的に支出した通院交通費は,上記各病院への計28回の通院に要した交通費8400円であると認められ,原告Bの通院交通費の請求はこの限度で理由がある。 エ休業損害  57万8630円(請求200万円)原告Bが,本件食中毒の発生当時,Lの名称で金融業を営み,月80万円の給与を得ていたことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲1,7の3,43,59及び原告B本人)によれば,原告Bは,本件食中毒のため,平成11年8月13日から同年10月31日まで就業不可能と診断され,このうち同年8月及び9月に合計22日欠勤していて給与を支給されていなかったことが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 以上によれば,原告Bの年収は960万円と認められ(賞与等の支払の事実は認めるに足りる証拠はない。),原告Bは,上記欠勤期間の給与(年収960万円の365分の22)に相当する57万8630円を支給されなかったとの損害を被ったというべきである。 オ慰藉料  100万円(請求300万円)上記ア及びウで認定したとおり,原告Bは,平成11年8月14日から平成13年6月11日までの間に少なくとも合計34日通院したほか,証拠(甲1, る。 オ慰藉料  100万円(請求300万円)上記ア及びウで認定したとおり,原告Bは,平成11年8月14日から平成13年6月11日までの間に少なくとも合計34日通院したほか,証拠(甲1,7の3ないし5,54,59及び原告B本人)によれば,原告Bは,本件食中毒によって下痢,嘔吐,冷感亢進,筋肉痛,発疹等の症状が出現し,上記通院中に抗炎症剤等による対症療法を受けたが,発赤部の疼痛があるため歩行に困難を来たすなどして仕事に支障が生じていたこと,ステロイド剤の投与により脱毛や体のだるさといった副作用も見られたことが認められる。 他方,原告Bの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠(甲7の1及び3,16並びに17の1ないし36)によれば,原告BのR大病院の通院状況は,平成11年8月から同年10月にかけては頻繁であったものの,その後はほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっていると認められるので,慰藉料の算定に当たっては,こうした状況も斟酌せざるを得ない。 以上の事実によれば,原告Bは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは明らかであり,諸般の事情を総合考慮すれば,これを慰藉するための慰藉料としては,100万円が相当であると認められる。 カ裁判関係費用  20万円(請求70万円)上記アないしオの合計額は199万5465円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Bが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して20万円が相当であると認められる。 (3) 原告C  307万5804円原告Cの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしカの合 食中毒時の価額に引き直して20万円が相当であると認められる。 (3) 原告C  307万5804円原告Cの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしカの合計額である307万5804円であると認められる。 ア診療費  84万6194円(請求84万6194円)証拠(甲8の1及び3,18並びに19の1ないし30)によれば,原告Cは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間,P病院,医療法人社団U病院及びR大病院に合計29日入院したほか,少なくとも合計26日通院し,その診療費として合計84万6194円を支出した事実を認めることができる。 イ薬剤費  1万4514円(請求1万4514円)証拠(甲34及び35の1ないし3)によれば,原告Cは,平成11年8月20日から同年10月2日までの間に,本件食中毒の治療のための薬剤費として合計1万4514円を支出した事実を認めることができる。 ウ通院交通費  1万3360円(請求3万4680円)証拠(甲8の3,18及び19の1ないし30)によれば,原告Cは,平成11年8月16日から平成13年5月15日までの間に,U病院に5回通院するとともに,平成11年8月26日から同月29日まで入院し,また,R大病院に21回通院するとともに,同年9月29日から同年10月20日まで及び平成12年3月15日に入院したことが認められる(平成11年9月7日の通院の事実については,甲第18号証は裏付けを欠いており,これにより上記事実を認めることはできず,他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。)。 ところで,先に判示したとおり,損害賠償の理念である損害の公平な分担の観点に照らして考えると,不法行為の被害者が加害者に対して請求し得る ことはできず,他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。)。 ところで,先に判示したとおり,損害賠償の理念である損害の公平な分担の観点に照らして考えると,不法行為の被害者が加害者に対して請求し得る通院交通費は,当該不法行為により被害者が不可避的に支出を余儀なくされた費用に限られるというべきである。原告Cの請求する通院交通費のうち,甲第38号証に記載された入退院に利用したタクシー料金については,証拠(甲39の8ないし10)によれば,平成11年10月1日,同月3日及び同月8日に利用したものと認められるけれども,他方,先に認定したとおり,原告Cは同年9月29日から同年10月20日までの間R大病院に入院していたと認められ,本件全証拠によっても,原告Cがなぜ上記の各日にタクシーを利用する必要があったのかは明らかではない。また,入院中の原告Cの見舞い等に来た家族の駐車料金については,本件事案において原告Cが本件食中毒により不可避的に支出した費用とは認められない。 一方,証拠(甲38)によれば,原告Cの住居からU病院及びR大病院までは,それぞれ片道2キロメートル,14キロメートルの距離があることが認められ,その距離を何らかの交通手段を用いないで通院(入退院のための往復を含む。以下,同様。)することは困難であると推認される。そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメートルにつき20円を要するものと認められるから,それぞれ片道2キロメートル,14キロメートルの距離がある上記各病院に自家用車で通院した場合の交通費は1往復についてそれぞれ80円,560円と評価され,これらの金額は,上記各病院への通院に公共交通機関を利用した場合の費用に比べても高額に失することはないものと認めら 家用車で通院した場合の交通費は1往復についてそれぞれ80円,560円と評価され,これらの金額は,上記各病院への通院に公共交通機関を利用した場合の費用に比べても高額に失することはないものと認められる。 以上検討した結果によれば,原告Cが本件食中毒の治療のために不可避的に支出した通院交通費は,U病院に6回,R大病院に23回の合計29回の通院に要した交通費1万3360円であると認められ,原告Cの通院交通費の請求はこの限度で理由がある。 エ休業損害  42万1736円(請求62万3200円)原告Cが,本件食中毒の発生当時,M器械に勤めていたこと,平成11年8月25日から同年9月7日までの間に10日及び同月29日から同年10月20日までの間に15日の合計25日分の有給休暇を取得していたことは当事者間に争いがなく,この当事者間に争いのない事実に,証拠(甲8の3,19の6及び7,44並びに原告C本人)を総合すれば,原告CがR大病院の医師により平成11年8月13日から同年10月31日まで就業不可能と診断されていること,原告Cが,平成11年8月25日から同年9月7日まで土曜日及び日曜日を除き,病気治療を理由として欠勤し,同月29日から同年10月20日まではR大病院に入院していたこと,そのため,原告Cが合計25日分の有給休暇の取得を余儀なくされたこと,当時原告CがM器械から支給されていた給与所得は年間615万7350円であったことが認められる。 ところで,有給休暇はその日の労働なくして給与を受けるもので,労働者の持つ権利として財産的価値を有するものといえるから,他人による不法行為の結果,有給休暇を費消することを余儀なくされた場合には,被害者は,加害者に対して,それを財産的損害として賠償を求め得るというべきであり,給与所得者の年間所得には のといえるから,他人による不法行為の結果,有給休暇を費消することを余儀なくされた場合には,被害者は,加害者に対して,それを財産的損害として賠償を求め得るというべきであり,給与所得者の年間所得には賞与も含まれていることを併せ考えると,特段の事情のない限り,1日の有給休暇の持つ財産的価値は被害者の年収を1年間の日数で除した額によって算出するのが相当である。 以上の認定判断によれば,原告Cは,本件食中毒と相当因果関係がある損害として25日分の有給休暇に相当する財産的損害を被ったというべきであり,その額は,原告Cの年間所得の365分の25に相当する42万1736円であると認められる。 オ慰藉料  150万円(請求500万円)上記アで認定したとおり,原告Cは,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に29日入院するとともに少なくとも合計26日通院したほか,証拠(甲1,8の3及び4,57並びに原告C本人)によれば,原告Cは,本件食中毒によって痺れ感,下痢,皮膚冷感,鳥肌発作,皮膚掻痒症,体のだるさ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたほか,脊髄に針を入れて骨髄液を採取したり身体に針を刺して電流を流したりといった身体的に相当な苦痛を伴う検査を繰り返し受けたこと,それにもかかわらず病状は容易には回復せず,体も痩せて体重が10キログラム程度減少したこと,上記通院の開始から約7か月を経ても,なお体のだるさや鳥肌発作等の症状が持続しており,その症状は他の原告らと比較しても重かったと考えられること,その間,勤務先を欠勤したり,無理に出勤して仕事をしても従来より長時間を費やさなければならない状況であり,将来の昇給や昇進にも影響する旨を勤務先の上司などから言われたこともあったことが認められる。 以上の事実によれば,原 り,無理に出勤して仕事をしても従来より長時間を費やさなければならない状況であり,将来の昇給や昇進にも影響する旨を勤務先の上司などから言われたこともあったことが認められる。 以上の事実によれば,原告Cは,本件食中毒によって相当程度の精神的苦痛を被ったことは明らかであり,本件に現れた事情を総合考慮すれば,これを慰藉するための慰藉料としては,150万円が相当であると認められる。 カ裁判関係費用  28万円(請求90万円)上記アないしオの合計額は279万5804円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Cが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して28万円が相当であると認められる。 (4) 原告D  179万1034円原告Dの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしオの合計額である179万1034円であると認められる。 ア診療費  21万9306円(請求21万9306円)証拠(甲1,9の1及び3,20及び21の1ないし28)によれば,原告Dは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間,P病院,U病院及びR大病院に合計31日通院し,その診療費として合計21万9306円を支出した事実を認めることができる。 イ通院交通費  1万3920円(請求2万1000円)証拠(甲8の3,20及び21の1ないし28)によれば,原告Dは,平成11年8月16日から平成13年5月15日までの間に,U病院に6回,R大病院に24回通院したことが認められる(平成11年9月7日の通院の事実については,甲第20号証は裏付けを欠いており,これにより上記 年8月16日から平成13年5月15日までの間に,U病院に6回,R大病院に24回通院したことが認められる(平成11年9月7日の通院の事実については,甲第20号証は裏付けを欠いており,これにより上記事実を認めることはできず,他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。)。 一方,証拠(甲40)によれば,原告Dの住居からU病院及びR大病院までは,それぞれ片道2キロメートル,14キロメートルの距離があることが認められ,その距離を何らかの交通手段を用いないで通院することは困難であると推認される。 そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメートルにつき20円を要するものと認められるから,それぞれ片道2キロメートル,14キロメートルの距離がある上記各病院に自家用車で通院した場合の交通費は1往復についてそれぞれ80円,560円と評価され,これらの金額は,上記各病院への通院に公共交通機関を利用した場合の費用に比べても高額に失することはないものと認められる。 以上検討した結果によれば,原告Dが本件食中毒の治療のために不可避的に支出した通院交通費としては,上記各病院への計30回の通院に要した交通費である1万3920円の限度で理由がある。 ウ休業損害  39万7808円(請求137万5000円)原告Dが,本件食中毒の発生当時,K社に勤務し,月55万円の給与を得ていたことについては当事者間に争いがないところ,この当事者間に争いのない事実に,証拠(甲1,9の3及び甲45)を総合すれば,原告Dは,本件食中毒のために,平成11年8月13日から同年10月31日まで就業不可能と診断され,このうち同年8月16日から同年9月14日までの30日間は出勤していなかったこと,原告Dの平成10年度の Dは,本件食中毒のために,平成11年8月13日から同年10月31日まで就業不可能と診断され,このうち同年8月16日から同年9月14日までの30日間は出勤していなかったこと,原告Dの平成10年度の年収は660万円であり,この金額は月額55万円の給与の12か月分に相当するものであることが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 そして,原告Dの稼働日数が,平成11年5月は21日,同年6月及び7月はいずれも22日であることに照らすと,原告Dの勤務は週5日であると推認されるので,同年8月16日から同年9月14日までのうち,原告Dが欠勤として給与を支給されなかったのは,週2日の休暇日を除いた22日であったと考えられる。 以上によれば,原告Dは,上記欠勤期間の給与(年収660万円の365分の22)に相当する39万7808円を支給されなかったとの損害を被ったというべきである。 エ慰藉料  100万円(請求300万円)上記ア及びイで認定したとおり,原告Dは,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に合計31日通院したほか,証拠(甲1,9の3及び4,57並びに原告C本人)によれば,原告Dは,本件食中毒によって下痢,皮膚掻痒症,体のだるさ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたほか,身体的な苦痛を伴う検査を何度か受けたこと,それにもかかわらず体調が回復しなかったため一旦はK社を退職せざるを得なかったことが認められる。 他方,原告Dの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠(甲9の1及び3,20並びに21の1ないし28)によれば,原告Dの通院状況は,平成11年8月中は頻繁であったものの,その後はほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっていると認められるので,慰藉料の算定に当たっては,こうし ないし28)によれば,原告Dの通院状況は,平成11年8月中は頻繁であったものの,その後はほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっていると認められるので,慰藉料の算定に当たっては,こうした状況も斟酌せざるを得ない。 以上の事実によれば,原告Dは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは明らかであり,諸般の事情を総合考慮すれば,これを慰藉するための慰藉料としては,100万円が相当であると認められる。 オ裁判関係費用  16万円(請求60万円)上記アないしエの合計額は163万1034円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Dが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして,賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して16万円が相当であると認められる。 (5) 原告E  120万4616円原告Eの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしウの合計額である120万4616円であると認められる。 ア診療費  9万4616円(請求9万4616円)証拠(甲1,10の1及び3,22並びに23の1ないし24)によれば,原告Eは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間,P病院,U病院及びR大病院に少なくとも合計27日通院し,その診療費として合計9万4616円を支出した事実を認めることができる。 イ慰藉料  100万円(請求300万円)上記アで認定したとおり,原告Eは,平成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に少なくとも合計27日通院した(平成11年9月7日の通院の事実については,甲第22号証は裏付けを欠いており,これにより上記事実を認めることはでき 成11年8月14日から平成13年5月15日までの間に少なくとも合計27日通院した(平成11年9月7日の通院の事実については,甲第22号証は裏付けを欠いており,これにより上記事実を認めることはできず,他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。)ほか,証拠(甲1,10の3及び4,57及び原告C本人)によれば,原告Eは,本件食中毒によって下痢,皮膚掻痒症,体のだるさ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたことが認められる。 他方,原告Eの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠(甲10の1及び3,22並びに23の1ないし24)によれば,原告Eの通院状況は,平成11年8月中は頻繁であったものの,その後はほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっていると認められるので,慰藉料の算定に当たっては,こうした状況も斟酌せざるを得ない。 以上の事実によれば,原告Eは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは明らかであり,諸般の事情を総合考慮すれば,これを慰藉するための慰藉料としては,100万円が相当であると認められる。 ウ裁判関係費用  11万円(請求40万円)上記ア及びイの合計額は109万4616円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Eが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して11万円が相当であると認められる。 (6) 原告F  18万2052円原告Fの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしウの合計額である18万2052円であると認められる。 ア診療費  1万7052円(請求1万7052円)原告Fが平成11年8月14 食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしウの合計額である18万2052円であると認められる。 ア診療費  1万7052円(請求1万7052円)原告Fが平成11年8月14日から同月31日まで通院治療したことは当事者間に争いはなく,この当事者間に争いのない事実に,証拠(甲11の1及び2,24並びに25の1及び2)を総合すれば,原告Fは,本件食中毒の治療のため,上記の期間,P病院及びU病院に合計5日通院し,その診療費として合計1万7052円を支出した事実を認めることができる。 イ慰藉料  15万円(請求20万円)上記アで認定したとおり,原告Fは,平成11年8月14日から同月31日までの間に合計5日通院したほか,証拠(甲1,11の2及び原告C本人)によれば,原告Fは,本件食中毒によって嘔吐,下痢,末梢神経障害,自律神経障害の症状が出現し,上記通院中に対症療法を受けたこと,上記通院の末日当時においても,自然に軽快する見込みであったとはいえ,なお軽度の自律神経・末梢神経障害を残していたこと,他の原告らと比較して症状は軽かったものの,それは,本件料理を食した当日の夜から身体の変調を感じ,水を飲んでは自分で口内に指を入れて吐くことを繰り返したことによることが認められる。 以上の事実によれば,原告Fは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは認められるものの,他の原告らに比して軽症にとどまっており,通院期間もごく短期であったこと等を総合考慮すれば,これを慰藉するための慰藉料としては,15万円が相当であると認められる。 ウ裁判関係費用  1万5000円(請求5万円)上記ア及びイの合計額は16万7052円であるところ,本件事案の難易度,前記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Fが被告に対し,本件食中毒と ウ裁判関係費用  1万5000円(請求5万円)上記ア及びイの合計額は16万7052円であるところ,本件事案の難易度,前記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Fが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して1万5000円が相当であると認められる。 (7) 原告G  108万6508円原告Gの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしオの合計額である108万6508円であると認められる。 ア診療費  7万2516円(請求7万2516円)証拠(甲2,12の1及び3,26並びに27の1ないし20)によれば,原告Gは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間,V内科,W大学付属X病院(以下「W大病院」という。)及びR大病院に合計20日通院し,その診療費として合計7万2516円を支出した事実を認めることができる。 イ通院交通費  1万3992円(請求2万3736円)証拠(甲12の3,26及び27の1ないし20)によれば,原告Gは,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間に,V内科に2回,W大病院に2回,R大病院に16回通院したことが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 一方,証拠(甲41)によれば,原告Gの住居からV内科,W大病院及びR大病院までは,それぞれ片道2.9キロメートル,12キロメートル,20キロメートルの距離があることが認められ,その距離を何らかの交通手段を用いないで通院することは困難であると推認される。そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメ その距離を何らかの交通手段を用いないで通院することは困難であると推認される。そして,公知の事実である近時のガソリン価格等に照らして考えると,その通院に自家用車を用いた場合には,少なくとも1キロメートルにつき20円を要するものと認められるから,それぞれ片道2.9キロメートル,12キロメートル,20キロメートルの距離がある上記各病院に自家用車で通院した場合の交通費は1往復についてそれぞれ116円,480円,800円と評価され,これらの金額は,上記各病院への通院に公共交通機関を利用した場合の費用に比べても高額に失することはないものと認められる。 以上検討した結果によれば,原告Gが本件食中毒の治療のために不可避的に支出した通院交通費は,上記各病院への計20回の通院に要した交通費1万3992円であると認められ,原告Gの通院交通費の請求はこの限度で理由がある。 ウ休業損害  0円(請求214万3770円)原告Gが,本件食中毒の発生当時,Nホームの代表取締役を務め,従業員を指揮監督するにとどまらず,自らも建築現場に赴いて監督,作業等もしていたことについては当事者間に争いがないところ,証拠(甲2,3,12の3及び原告G本人)によれば,原告Gは,総合建築請負業を営むNホームの代表者として,従業員への指示や現場作業等,同社の業務全般においてその役割を担っていたこと,原告Gは,医師により平成11年8月13日から同年10月31日まで就業不可能と診断されていたが,それにもかかわらず,Nホームにおける上記のような立場上,上記期間においても仕事を休むことをせず就業していたことが認められる。 しかしながら,損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであり,ここにいう損害とは,もし加害行為がなかったとしたならばあるべき利益状態 就業していたことが認められる。 しかしながら,損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであり,ここにいう損害とは,もし加害行為がなかったとしたならばあるべき利益状態(原状)と加害がなされた結果である現在の利益状態(現状)との差を金銭で評価したものであるから,加害行為による被害者の労働能力の喪失・減退にもかかわらず,ここにいう損害が発生しなかった場合,換言すれば,現在又は将来における収入の減少が認められない場合には,それを理由とする賠償請求は認める余地がないというべきである。 したがって,上記の期間原告Gの収入が実際に減少したとは認められない以上,原告Gについて休業損害が発生したとは認められない。原告Gが医師が就業不可能と診断していた期間も就業していた点は,後記慰藉料の額を算定する際に考慮すれば足りる。 エ慰藉料  90万円(請求300万円)上記アないしウで認定したとおり,原告Gは,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間に合計20日通院し,医師により就業不可能と診断された平成11年8月13日から同年10月31日までの期間も,Nホームの代表取締役としての立場上就業していたほか,証拠(甲2,12の3及び4並びに原告G本人)によれば,原告Gは,本件食中毒によって下痢,痺れ感,体のだるさ・痛痒さ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたことが認められる。 他方,原告Gの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠(甲2,3,12の1及び3,26並びに27の1ないし20)によれば,原告Gの通院状況は,平成11年8月下旬から同年9月にかけては頻繁であったものの,その後2か月以上通院せず,同年12月以降もほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっている上,原 によれば,原告Gの通院状況は,平成11年8月下旬から同年9月にかけては頻繁であったものの,その後2か月以上通院せず,同年12月以降もほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっている上,原告Gは,本件食中毒の発生直後の平成11年8月15日からは家族で京都へ旅行に出かけており,その初診は同月24日と本件料理を食してから相当の日時を経てからであることが認められ,こうした事実に照らすと,直ちに通院して治療を受けた他の原告らに比べれば,原告Gの症状の程度は軽かったと推認されるところであって,慰藉料の算定に当たっては,こうした事実も考慮すべきである。 以上の事実によれば,原告Gは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは明らかであるところ,医師が就業不可能と診断した期間も,役職上就業を余儀なくされた反面,平成11年10月から同年11月までの間は全く通院しない等から,その症状は比較的軽かったものと窺われるのであって,こうした諸般の事情を総合考慮すれば,原告Gの被った精神的苦痛を慰藉するための慰藉料としては,90万円が相当であると認められる。 オ裁判関係費用  10万円(請求70万円)上記アないしエの合計額は98万6508円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Gが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して10万円が相当であると認められる。 (8) 原告H  89万8997円原告Hの被った損害として本件食中毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしエの合計額である89万8997円であると認められる。 ア診療費  11万8997円(請求11万8997円)証拠(甲13の1及び3,2 毒と相当因果関係があると認められる金額は,下記アないしエの合計額である89万8997円であると認められる。 ア診療費  11万8997円(請求11万8997円)証拠(甲13の1及び3,28並びに29の1ないし24)によれば,原告Hは,本件食中毒の治療のため,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間,V内科,W大病院及びR大病院に合計22日通院し,その診療費として合計11万8997円を支出した事実を認めることができる。 イ休業損害  0円(請求81万9090円)証拠(甲3,13の3及び原告G本人)によれば,原告Hは,本件食中毒の発生当時,夫である原告Gが代表者を務めるNホームの事務所で週5日ほど手伝いをしていたものの,配偶者控除の受けられる範囲での給与しか取得しておらず,主に家庭の主婦として家事労働に従事していたものであることが認められる。 しかしながら,本件全証拠によるも,原告HがNホームから支給されていた給与が本件食中毒による休業等により減額された事実はもとより,原告Hの体調不良のため,家事労働を補助する者を雇傭することを余儀なくされたというような事実も認められない。 以上のとおり,原告Hの収入が実際に減少したとは認められないから,原告Hについて休業損害が発生したとは認められない。 ウ慰藉料  70万円上記アで認定したとおり,原告Hは,平成11年8月24日から平成13年5月15日までの間に合計22日通院したほか,証拠(甲3,13の3及び4並びに原告G本人)によれば,原告Hは,本件食中毒によって下痢,舌先の痺れ,手の痺れ・痛み,体のだるさ・痛痒さ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたことが認められる。 他方,原告Hの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠 舌先の痺れ,手の痺れ・痛み,体のだるさ・痛痒さ,冷感亢進等の症状が出現し,上記通院中に薬物治療を受けたことが認められる。 他方,原告Hの通院期間は,先に認定したとおり,長期間に及ぶものの,証拠(甲2,3,13の1及び3,28並びに29の1ないし24)によれば,原告Hの通院状況は,平成11年8月下旬から同年9月にかけては頻繁であったものの,その後はほぼ1か月に1回程度と相当に間隔を空けたものになっている上,原告Hは,本件食中毒の発生直後の平成11年8月15日からは家族で京都へ旅行に出かけており,その初診は同月24日と本件料理を食してから相当の日時を経てからであることが認められ,こうした事実に照らすと,直ちに通院して治療を受けた他の原告らに比べれば,原告Hの症状の程度は軽かったものと推認されるところであって,慰藉料の算定に当たっては,こうした事実も考慮すべきである。 以上の事実によれば,原告Hは,本件食中毒によって精神的苦痛を被ったことは認められるものの,原告F及び原告Gを除く他の原告らに比べれば軽症の感を否定できず,こうした諸般の事情を総合考慮すれば,原告Hの被った精神的苦痛を慰藉するための慰藉料としては,70万円が相当であると認められる。 エ裁判関係費用  8万円(請求70万円)上記アないしウの合計額は81万8997円であるところ,本件事案の難易度,上記認容額等本件に現れた諸事情に照らし,原告Hが被告に対し,本件食中毒と相当因果関係にある損害であるとして賠償を求め得る弁護士費用等裁判関係費用は,本件食中毒時の価額に引き直して8万円が相当であると認められる。 第4 結論以上によれば,原告らの請求は,それぞれ,原告Aにつき173万2803円,原告Bにつき219万5465円,原告Cにつき307万5804円,原告Dにつき179 が相当であると認められる。 第4 結論以上によれば,原告らの請求は,それぞれ,原告Aにつき173万2803円,原告Bにつき219万5465円,原告Cにつき307万5804円,原告Dにつき179万1034円,原告Eにつき120万4616円,原告Fにつき18万2052円,原告Gにつき108万6508円,原告Hにつき89万8997円及びこれらに対する本件食中毒の発生の日である平成11年8月13日から支払済みまで民法所定年5分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらをいずれも認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第4部裁判長裁判官深見敏正裁判官吉田彩裁判官大野博隆

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