【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人長谷川正明、同長谷川正幸の上告理由第二点について。 原判決の認定
主 文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人長谷川正明、同長谷川正幸の上告理由第二点について。 原判決の認定、判断の要旨は、次のとおりである。 第一審判決添付物件目録(一)記載の建物(以下「本件(一)の建物」という。)は、 もと訴外Dの所有であつたが、同人から被上告人の父亡Eへ、ついで、昭和一六年 八月Eから被上告人へと順次所有権が移転し、現に被上告人がその所有権者である。 ところが、上告人らの亡父Fは、明治四四年頃、右Dから本件(一)の建物を賃借し たが、昭和二〇年八月Fが死亡したため、上告人A1が相続により右賃借人の地位 を承継して賃貸人である被上告人との間に賃貸借契約が継続し、賃料は、被上告人 の意思表示によつて昭和三九年九月一日から一箇月金一万二五一三円に増額された。 そして、上告人A1は、被上告人所有の第一審判決添付物件目録(三)記載の土地( 以下「本件土地」という。)の上に、右物件目録(二)記載の建物(以下「本件(二) の建物」という。)を所有して本件土地を占有しているものであるが、右建物は、 大正四年頃本件(一)の建物の当時の賃借人亡Fが、本件土地(本件(一)の建物の敷 地の一部であつて、右建物の裏手にあたる部分)の上に、当時の賃貸人でありかつ 本件土地の所有者であつた前記Dの承諾をえて建築したものであり、Fが死亡し、 相続により上告人A1がその所有権を取得するにいたつたものである。そして、昭 和二六年七月頃上告人A1が本件(二)の建物を被上告人に無断で改造しようとした ことから紛争が生じ、その結果、両者の間に、被上告人は上告人A1が本件(二)の 建物を改造することを承諾し、その代償として同上告人は被上告人が本件土地を必 要とするときには、被上告人の申出により本件(二 ことから紛争が生じ、その結果、両者の間に、被上告人は上告人A1が本件(二)の 建物を改造することを承諾し、その代償として同上告人は被上告人が本件土地を必 要とするときには、被上告人の申出により本件(二)の建物を収去して本件土地を明 - 1 - 渡す旨の合意(以下「本件合意」という。)が成立した。そして、上告人A1は、 本件(二)の建物の一部を物置等として自ら使用し、上告人A2は、実兄である上告 人A1の承諾をえて右建物の一部に妻子と共に居住し、上告人A2も上告人A1と 別個に独立して本件土地を占有している。ところで、本件土地は、上告人A1の先 代Fが賃借した本件(一)の建物の敷地の一部に含まれており、右Fは、本来本件土 地を本件(一)の建物の敷地の一部として利用する権限を有していたもので、右賃借 建物の効用を増加させるため敷地利用の一方法として、当時の所有者前記Dの承諾 をえて本件土地上に本件(二)の建物を建築したものであるから、上告人A1の本件 土地に対する占有は、本件(一)の建物の賃貸借契約と別個独立に本件(二)の建物の 所有を目的として締結された土地の賃貸借契約ないしは使用貸借契約に基づくもの ということはできないが、本件(一)の建物の賃貸借契約に付随してなされた特約に 基づく正当なものというべきであつて、被上告人と上告人A1との間に成立した本 件合意は、建物の賃借人がその賃貸人に対し建物の敷地として利用していた空地の 一部を返還する旨の合意と同一の性質を有するから、これをもつて借地法一一条に いう借地人に不利な特約に当るものということはできない。また、本来建物の賃借 人は、その敷地の一部に空地部分があつても、該空地に自己の建物を建築したりい つたん建築した建物を改造したりなどするについては、特段の事情のないかぎり、 建物賃貸人の承諾を要するものと解すべきであるところ は、その敷地の一部に空地部分があつても、該空地に自己の建物を建築したりい つたん建築した建物を改造したりなどするについては、特段の事情のないかぎり、 建物賃貸人の承諾を要するものと解すべきであるところ、本件合意は、前記認定の ように上告人A1が改造の承諾という代償をえてなされたものであるから、これを もつて、借家法六条にいう借家人に不利な特約に当るものともいうこともできない。 しかるところ、被上告人は、勤務先の会社の定年退職を前にし、本件土地上に貸家 を建築して退職後の収入の道を開くため、上告人らに対して本件土地の明渡を求め ているものである。したがつて、上告人A1は、本件合意に基づき被上告人に対し、 本件(二)の建物を収去して本件土地を明渡す義務を負うものであり、上告人A2は、 - 2 - 被上告人に対し本件(二)の建物から退去して本件土地を明渡すべき義務を負うもの というべきである。 というのである。 ところで、一般に、建物の賃借人は、建物賃貸借契約の性質上当然に、当該建物 使用の目的の範囲内においてその敷地利用権を有するものと解すべきであるから、 建物の賃借人が、賃借建物を居宅として使用する場合には、その敷地上に物置、風 呂、便所など賃借建物の使用収益に不可欠な簡易な建物を建築したり、いつたん建 築したこれらの建物を改造したりすることはいちがいにこれを禁じられるものでは なく、建物の賃貸人としては、特段の事情のない限り、賃借人の右のような範囲内 における敷地利用権を制限する行為は許されないものというべきである。したがつ て、賃借建物の敷地の一部分についてであつても、これを賃貸人の請求次第明渡す 旨の特約は、当該敷地部分が賃借建物の使用収益に不可欠なものとはいえない場合 はともかく、然らざる場合は、建物賃借人の敷地利用権を消滅させ、ひいては、建 物賃貸借の目的の達成を を賃貸人の請求次第明渡す 旨の特約は、当該敷地部分が賃借建物の使用収益に不可欠なものとはいえない場合 はともかく、然らざる場合は、建物賃借人の敷地利用権を消滅させ、ひいては、建 物賃貸借の目的の達成を妨げ、賃貸借契約の終了を余ぎなくさせるものであつて、 借家法六条に定める賃借人に不利な特約に当ると解するのが相当である。 このような見解に立つて本件をみるに、原判決が確定するところによれば、上告 人らの先代亡Fは、本件(一)の建物を賃借して葬儀屋を営んでいたのであるから、 同人は、本件土地を右建物の敷地の一部として利用する権限を有していたものであ り、右賃借建物の効用を増加させるため敷地利用の一方法として当時の所有者Dの 承諾をえて本件土地上に本件(二)の建物を建築し、右建物を材料置場や仕事場等と して使用してきたというのであるところ、現在、本件(二)の建物のうち一部は、上 告人A2の一家の居住の用に供されているものであるから、本件(二)の建物ひいて はその敷地がその全部について上告人A1の本件(一)の建物使用に必要なものとは いえまいけれど、右(二)の建物のうちには上告人A1の使用する浴室、物置の部分 - 3 - もあるのであるから、これらの部分を収去してもなお本件土地以外の場所にこれら の設備を求めることができるなど特段の事情があればともかく、そうでないかぎり、 本件土地のうち右の浴室、物置を設置するに必要な部分は、上告人A1が本件(一) の建物を賃借目的に従つて使用するに不可欠なものと解すべき余地がないではない。 要するに、原判決は、本件土地が本件(一)の建物を賃借目的に従つて使用するにつ いて不可欠なものであるか否かの点についてまでは審理判断していない。それゆえ、 右の点を明らかにすることなく、賃貸人たる被上告人が必要とするときには被上告 人の申出により本件(二)の建 つて使用するにつ いて不可欠なものであるか否かの点についてまでは審理判断していない。それゆえ、 右の点を明らかにすることなく、賃貸人たる被上告人が必要とするときには被上告 人の申出により本件(二)の建物を収去して本件土地を明渡す旨の本件合意をもつて、 本件(二)の建物の改造についての承諾の代償としてなされたものであることを理由 に、借家法六条にいう借家人に不利な特約にあたらないとした原判決は、同法条の 解釈を誤り、審理不尽、理由不備の違法あるものであり、この点に関する論旨は理 由があり、原判決は破棄を免れない。 よつて、その余の論点に対する判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、裁判官全 員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 岸 盛 一 裁判官 岩 田 誠 裁判官 大 隅 健 一 郎 裁判官 藤 林 益 三 裁判官 下 田 武 三 - 4 -
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