平成25(わ)186 殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成26年3月17日 徳島地方裁判所
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判決文本文8,812 文字)

殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件主文被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中180日を上記刑に算入する。 押収してある包丁1本(平成26年押第2号の1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成25年4月7日午前7時40分ころ,徳島市a町b番地の歩道において,殺意をもって,包丁(平成26年押第2号の1)でA(当時74歳)の右側胸部等を複数回突き刺したが,通行人に制止されたため,全治約1か月を要する胸部刺創,肝損傷等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げず,第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時,場所において,前記包丁1本を携帯したものである。 (争点に対する判断) 1 殺人未遂の実行行為の有無等について 被告人は,判示日時,場所において,何者かに包丁を向けて脅したことはあるが,これを相手に突き刺したことも怪我をさせたこともなく,また,包丁を向けて脅した相手は被害者ではないなどと供述し,弁護人もこのような被告人供述を前提に,被告人は本件殺人未遂の実行行為に及んでいない旨主張するので,当裁判所が判示のとおり認定した理由について説明する。  被害者であるAは,判示日時に露店のテントが倒れないようにロープで括っていた際,本件現場付近に被告人が立っていることに気付いたところ,その直後に,突っ込んできた被告人に判示のとおり右側胸部等を複数回包丁で 刺されて胸部刺創等の傷害を負った旨供述しているので,その信用性について検討する。 まず,被害者供述のうち本件被害に関する部分についての信用性について検討する。この点に関する被害者供述は,関係各証拠により認められる被害者が本件後にB病院へ救急搬送されたこと,同病院において診断された ず,被害者供述のうち本件被害に関する部分についての信用性について検討する。この点に関する被害者供述は,関係各証拠により認められる被害者が本件後にB病院へ救急搬送されたこと,同病院において診断された被害者の傷害の部位や形状等,被害者が本件当時着用していた衣類の破綻状況等と高度に整合しており,その供述内容に不自然,不合理な点はない上,C供述も,被害者が何者かに襲われたという限度では被害者供述に沿うものであることに照らし,その信用性を認めるに十分である。 次に,被害者供述のうち,上記犯行を行ったのが被告人であるとの点について検討する。被害者と被告人とは,何度か銭湯で顔を合わせた際には会話をしたり,古米の売買を行ったこともあるなどかねてから顔見知りの関係にあったことを考慮すると,被害者が本件犯行を行った第3者を被告人と見間違える可能性は乏しく,以前に古米売買を巡るトラブルはあったものの,被害者に被告人を本件殺人未遂の犯人に仕立て上げるだけの動機も窺われない。 更に,関係各証拠によれば,被告人は,本件後被告人宅に帰っていたところ,事件発生の約30分後に被告人方に臨場した警察官に対し,さっき徳島市内の市場で面識のある男性の腹を2回刺したと認め,本件包丁が被告人の指示どおり被告人方敷地内から発見され,その包丁には被害者の血液が付着していたことが認められ,上記被害者供述はこのような事実によっても裏付けられている。以上によれば,本件犯行の犯人が被告人である旨の被害者供述は十分信用できる。 これに反する被告人の供述は,前記認定に合理的疑いを抱かせるものとは解されない。  次に,被告人の行為が殺人未遂の実行行為に当たるか否かについて検討する。 関係各証拠によれば,被害者の負った判示傷害の程度は全治約1か月にとどまっているが,こ とは解されない。  次に,被告人の行為が殺人未遂の実行行為に当たるか否かについて検討する。 関係各証拠によれば,被害者の負った判示傷害の程度は全治約1か月にとどまっているが,これは被害直後に適切な医療措置が採られたからであって,被害者の右側胸部を判示包丁で突き刺す行為は,肺や心臓などの重要臓器や動脈などを損傷して死の結果を生じさせる危険性が極めて高いものであり,現実に被害者に生じた傷害結果も,出血量は1500ccと多量で,救命可能性の乏しい出血性ショックに至る危険すらあったのであり,肝損傷(Ⅱ)による死亡率も低くはない。右側胸部の刺創の深さは最長でも,本件包丁の刃体の長さと比べると比較的浅い約4.6㎝にとどまっているものの,これは肋骨に阻まれて包丁をそれ以上深く刺すことが困難だったからにすぎず,右腕の刺創の一つは腕を貫通しており,判示包丁の切っ先がとがっていなかったことをも考慮すると,被告人は相当の力を込めて包丁を突き刺したと考えられる。以上に加え,被告人は,複数回にわたって被害者を包丁で突き刺そうとした上,周囲の者に制止されてもなお複数回包丁を突き出していたことからしても,被告人の判示行為は,被害者を死亡させる極めて高度の危険性を有する行為であったと認められる。 また,被告人がテントのロープを括ろうとしていた被害者に突っ込んで行き,突然その右側胸部を2回突き刺すなどしたことからすると,被告人は,被害者の右側胸部付近を狙ったものと認められる。その犯行態様は,包丁で切り付けることなどよりもはるかに殺傷性の高いものであり,そのような行為を相当の力を込めて複数回繰り返していることに照らせば,判示行為が被害者を死亡させる高度の危険性を有することを被告人が認識していたことは明らかであり,これが否定される余地は存し あり,そのような行為を相当の力を込めて複数回繰り返していることに照らせば,判示行為が被害者を死亡させる高度の危険性を有することを被告人が認識していたことは明らかであり,これが否定される余地は存しない。そして,本件犯行の被害者の生命に対する危険性やその認識状況を踏まえれば,被告人は,犯行当時,被害者に対する相当強固な殺意を有していたというべきであり,単に被害者に怪我を負わせるにとどめるつもりであったとみる余地はない。  なお,被告人は,捜査段階において,本件犯行について,殺意は否認した ものの客観的行為自体は概ね認めていた模様であるが,その後,相手を脅すため本件包丁を示したにすぎない旨供述を変遷させ,当公判廷においては,相手がカッターナイフで切り付けてきたのであって正当防衛であるとの趣旨の供述もするに至っているが,その変遷は妄想型統合失調症による妄想が自己防衛的に発展を遂げて変容したものと解され,これが前記判断を左右するとは解されない。関係各証拠に照らしても,正当防衛状況があったことは全く窺われない。  更に,弁護人は,被告人による本件包丁の所持は銃砲刀剣類所持等取締法22条本文にいう「携帯」に当たらず,仮にこれに当たるとしても「正当な理由による場合」であった旨主張するが,被告人は,本件包丁を本件犯行直前に購入し,その包丁を新聞紙で巻いてビニール袋に入れた状態で手に持って本件現場に行った後,本件犯行時には被害者を殺害する目的でその新聞紙等から本件包丁を取り出して左手に持ち,被害者を突き刺した後は本件包丁を手に持ったまま現場を立ち去ったのであり,その所持が同条の「携帯」に当たり,本件包丁を被害者を殺害するために取り出して被害者に突き刺した際の携帯に正当な理由がないことは明らかである。 2 被告人の責任能力につい 場を立ち去ったのであり,その所持が同条の「携帯」に当たり,本件包丁を被害者を殺害するために取り出して被害者に突き刺した際の携帯に正当な理由がないことは明らかである。 2 被告人の責任能力について 弁護人は,被告人は本件犯行当時罹患していた妄想型統合失調症に支配されており,心神喪失状態にあった旨主張しているので,以下この点について検討する。  関係各証拠によれば,本件に至るまで及び本件当時の被告人の精神状態等は,概ね以下のとおりであったと考えられる。 ア被告人は,本件当時及び現在も妄想型統合失調症に罹患しているが,その症状として,自我障害や緊張病性症候群は顕著ではなかった。その発症時期は明確ではないが,昭和46年ころから昭和48年ころに発症したと考えて不自然ではない。 被告人は,平成23年6月12日に前刑の服役を終えて出所後,廃品回収や古米の取引によって生計を立て,仕事上のトラブルや対人関係上の問題も特段窺われないなど,支障なく日常生活を送っていたことから,その社会的職業的機能は維持されており,被告人の統合失調症は重篤ではなかった。D医師も被告人の統合失調症は軽度であるとしている。本件当日も廃品回収の取引相手と会う約束をしており,その前に軽トラックを運転して本件犯行場所に赴き,回収した自転車のタイヤを切断するのに使うために本件包丁を購入するなど,本件直前もその行動に異常な点は窺われなかった。 イ 本件犯行は,被告人が本件現場で被害者と遭遇したことを契機に,自分の娘や家族を被害者に殺害されたといった妄想着想等が生じて精神運動興奮状態に陥って前記妄想に基づいて被害者にダメージを与えて反省させ,謝らせようとして敢行されたものであり,被告人は精神運動興奮を含む急性精神病エピソードを呈してい いった妄想着想等が生じて精神運動興奮状態に陥って前記妄想に基づいて被害者にダメージを与えて反省させ,謝らせようとして敢行されたものであり,被告人は精神運動興奮を含む急性精神病エピソードを呈していた。被告人は,犯行後,速やかに現場を離れ,自宅に帰って戸締まりをし,警察官の到着を待っていたところ,これら行動に照らせば,被告人の精神運動興奮状態は犯行直後に既に消褪していた。犯行後の経過に関する被告人供述には変遷も窺われるが,犯行当時の記憶は保たれており,本件現場を立ち去った理由や帰宅途中に警察とすれ違った際の心情について事件を起こして捕まると思った旨供述し,自首について現行犯逮捕では成立しないが自宅で待っていれば成立し,また,本件包丁を隠滅すれば成立しなくなるため捨てなかった,自首になれば刑が軽くなるなどと供述していることに照らせば,被告人には自身の行為の認識にとどまらず,その反規範性,反道徳性の意識もあったことが認められる。前記精神運動興奮状態の消褪には本件犯行の実行による精神エネルギーの消失に加え,本件犯行に対する反道徳性などの意識が影響している。 犯行態様に関する被告人供述も前記のとおり変遷が見られるが,これは被告人の妄想体験の内容が変容し,自己弁護的,自己防衛的に妄想が発展を遂げて変容したことによるものである。  なお,E医師とD医師の所見が多少なりとも相違している点について,若干の検討を加える。 まず,本件犯行の契機となった前記妄想の発生時期について,E医師は,本件犯行直前であるとの所見を示し,D医師は,その可能性を認めながらも,犯行以前から生じていた可能性もあるとの所見を示している。 そこで検討するに,被告人と被害者の間には,被害者が平成24年10月に被告人から購入した古米に石等が混入してい は,その可能性を認めながらも,犯行以前から生じていた可能性もあるとの所見を示している。 そこで検討するに,被告人と被害者の間には,被害者が平成24年10月に被告人から購入した古米に石等が混入していたとして交換を求め,被告人はこれに応じたものの,被害者による嫌がらせであると邪推し迷惑料の支払を求めるというトラブルが存在し,被告人は,そのころ被害者から「お前の娘ぶち殺したったわ,お前もぶち殺したるわ」などと言われた旨供述しているが,E医師の所見は,被告人が古米取引を巡るトラブルの際に被害者に対して何ら粗暴的言動に及んでおらず,平成25年3月24日ころの日曜市では,被告人が普通に被害者からアイスクリームを購入するなど,本件犯行に至るまでは前記トラブル以外に被害者との関係に特段の問題が生じていないことを合理的に説明していると考えられる。従って,この点についてはE医師の所見を採用するのが相当である。 次に,E医師は,被告人は妄想着想後,精神運動興奮に陥ったとの所見を示しているのに対し,D医師は,精神科医によって「精神運動興奮」という概念に対する理解・意味づけに幅があることを前提にしながらも,これと異なる所見を示している。E医師の所見もD医師の所見も共に精神科医師の専門的知見に基づくものであり,いずれも相応の根拠を有していると考えられるが,ICD-10では妄想型統合失調症の症 状として,妄想,幻聴,幻聴以外の幻覚に加え,気分障害が挙げられ,幻覚,妄想に伴い易刺激性,突然の怒り,恐怖心,猜疑心といった気分の障害もよく見られ,そのために暴力を生じやすいことがある旨指摘されており,通常人の興奮よりも妄想型統合失調症に起因する精神運動興奮にあったとする方が被告人に有利であることに照らし,E医師の所見を採用するのが相当である。従っ に暴力を生じやすいことがある旨指摘されており,通常人の興奮よりも妄想型統合失調症に起因する精神運動興奮にあったとする方が被告人に有利であることに照らし,E医師の所見を採用するのが相当である。従って,本件犯行には妄想型統合失調症に起因する精神運動興奮の影響があったと考えるのが相当である。 ウ弁護人は,被告人に多彩な被害妄想,誇大妄想が存在することを捉え,被告人の妄想型統合失調症が重篤であった旨主張するものと解されるが,弁護人指摘の妄想はいずれも慢性的な妄想追想や被害関係妄想であって,本件犯行に直接影響を与えたとは解されない。  そこで,犯行当時における被告人の是非弁別能力や行動制御能力の有無・程度について検討する。 本件犯行の動機は,前記妄想に基づき被害者にダメージを与えて反省させ,謝らせようというものであるところ,その妄想の基礎となる事実はなく,了解不能である。もっとも,前記妄想の内容は,被害者にその場で娘を殺されたなどというものではなく,被告人は被害者に娘を殺されたことを思い出したというものであり,被害者への加害行為を正当化するものでも,直ちに本件犯行へと駆り立てるほどの衝動性を持つものでもない。 本件犯行は精神運動興奮の状態に陥って実行されたものであるが,精神運動興奮の状態は短時間で発生・消褪しており,その犯行態様は,前記妄想に基づく被告人なりの動機,目的に沿った合理的かつ一貫したものであって,不自然,不合理な点はなく,被告人の犯行当時の記憶が保たれていること,被告人の犯行後の行動やこれに関する供述内容,犯行態様に関する供述が自己弁護的に発展,変容していることに照らせば,被告人は自己の行為の意味を認識,理解していたのみならず,その反規範性,反道徳性の意識もあった と認められる。 なお, 様に関する供述が自己弁護的に発展,変容していることに照らせば,被告人は自己の行為の意味を認識,理解していたのみならず,その反規範性,反道徳性の意識もあった と認められる。 なお,被告人は,昭和58年以降,殺傷事犯を含む粗暴事犯の前科5犯を有しているものの,いずれも統合失調症発症が疑われる時期以降の犯行であるから,これらの犯行に統合失調症が影響した可能性は否定できない。D医師は,統合失調症発症前から被告人は粗暴傾向があったとの所見を示しているが,統合失調症発症前の被告人の人格や性格,行動傾向を推知する資料は乏しく,幼いころから粗暴であったとするものがある一方,これを否定するものもあることに鑑み,これについては判然としないというほかない。  以上によれば,被告人の妄想型統合失調症は重篤ではなく,その症状として自我障害や緊張病性症候群も顕著ではなかった上,本件犯行の契機となった妄想の内容に照らして,妄想型統合失調症が本件犯行を直接引き起こすようなものであったということはできない。もっとも,本件犯行は,前記妄想が契機となり,これに伴う統合失調症に由来する精神運動興奮状態の影響を受けて実行されたものであり,被告人の妄想型統合失調症が本件犯行に及ぼした影響は小さくはないが,妄想内容や精神運動興奮の程度が上記のとおりであったことに加え,本件犯行の態様,犯行後の行動等も踏まえれば,被告人は自己の行為の内容を認識,理解していたのみならず,その反規範性や反道徳性についての意識もありながら本件犯行に及んだものというべきであり,本件犯行が被告人の意思によって敢行されたという側面も大きい。それゆえ,本件当時,被告人が妄想型統合失調症のために是非弁別能力や行動制御能力を失っていたり,著しく制限されていた蓋然性があるとは解されず,本件当 告人の意思によって敢行されたという側面も大きい。それゆえ,本件当時,被告人が妄想型統合失調症のために是非弁別能力や行動制御能力を失っていたり,著しく制限されていた蓋然性があるとは解されず,本件当時,被告人が心神喪失や心神耗弱の状態になかったことは明らかである。 したがって,本件犯行への妄想型統合失調症の影響は小さくはないものの被告人は本件犯行当時,完全責任能力を有していたというべきである。 (累犯前科)被告人は,平成21年12月24日徳島地方裁判所で傷害,銃砲刀剣類所持等 取締法違反の罪により懲役1年6月に処せられ,平成23年6月12日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は前科調書(乙9)によって認める。 (法令の適用) 1 罰条 判示第1の行為につき刑法203条,199条 判示第2の行為につき銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第3号,22条 2 刑種選択各所定刑中判示第1の罪については有期懲役刑を,判示第2の罪については懲役刑を選択 3 再犯加重刑法56条1項,57条(前記前科があるので判示第1及び判示第2の各罪の刑についてそれぞれ再犯の加重。ただし,判示第1の罪の刑については同法14条2項の制限内での加重) 4 併合罪加重同法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重) 5 宣告刑の決定懲役7年 6 未決勾留日数の算入同法21条(未決勾留日数中180日を上記刑に算入) 7 没収同法19条1項2号,2項本文(押収してある被告人以外の者に属しない殺人未遂の犯罪行為の用に供した包丁1本〔平成26年押第2号の1〕につき) 8 訴訟費用の不 上記刑に算入) 7 没収同法19条1項2号,2項本文(押収してある被告人以外の者に属しない殺人未遂の犯罪行為の用に供した包丁1本〔平成26年押第2号の1〕につき) 8 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)本件犯行は未遂にとどまり,被害者の死亡という最悪の事態には至っていないものの,これは本件犯行後速やかに被害者が救急搬送されて迅速かつ適切な救命措置が施されたことによるものである。被害者に生じた傷害結果は全治約1か月を要する胸部刺創,肝損傷等と重大であり,その傷害の部位や程度,出血量等に照らせば被害者が死亡する高度の危険性があったといえる。本件犯行は,右側胸部への本件包丁の刺突によって肺や心臓などのより重要な臓器や動脈が損傷された危険性も高く,これが相当強固な殺意に基づき強い力を込めて執拗に繰り返されていることに照らし,現実に被害者に生じた負傷結果以上に被害者の生命を侵害する危険性の高いものであって,態様極めて悪質である。多くの人が買い物をする日常的一場面である日曜市において,突如,何らの落ち度なく本件に遭遇した被害者の恐怖,精神的苦痛も甚大である。 また,本件犯行は妄想型統合失調症による妄想や精神運動興奮の影響を一定程度受けた偶発的,衝動的な犯行であるが,被告人の自我自体はさほど崩れておらず,被告人は自立した日常の社会生活を送っていた上,本件の契機となった妄想自体は直ちに犯行決意に至らせるような内容ではなく,精神運動興奮も短時間に発生,消褪していることなどを考慮すると,その影響の度合いを軽視することはできないものの,この点を過度に被告人に有利に考慮することは相当ではない。 被告人には殺人の前科があり,その刑執行終了後には累犯前科である傷害等の罪によって服役し,その刑執行 の度合いを軽視することはできないものの,この点を過度に被告人に有利に考慮することは相当ではない。 被告人には殺人の前科があり,その刑執行終了後には累犯前科である傷害等の罪によって服役し,その刑執行終了後2年足らずで本件犯行に及んでいるところ,前記前科に係る犯罪に妄想型統合失調症が影響している可能性を考慮しても,人の生命・身体の安全を軽視する被告人自身の反規範性,行動傾向を軽くみることはできない。 以上のとおり,本件犯行は刃物を用いた殺人未遂事案の中でも悪質な部類に属するものであり,妄想型統合失調症の一定程度の影響を考慮しても,なお相応の 責任非難がなされるべき事案というべきである。被告人の刑事責任は重く,検察官の懲役6年の求刑意見はいささか軽きに失するといわざるを得ない。そこで,被告人を主文の刑に処し,相応の贖罪を果たさせるのが相当と判断した。 (求刑・懲役6年,主文掲記の物件についての没収)平成26年3月17日徳島地方裁判所刑事部 裁判長裁判官 井広幸 裁判官入江恭子 裁判官杉山文洋

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