主文 1 被告東芝は、別紙2認容額等一覧表の「原告番号及び氏名」欄記載の各原告に対し、同各原告に係る同一覧表の「損害元金」欄記載の各金員及びこれに対する同一覧表の「損害金起算日」欄記載の各日から各支払済みまで「利率」欄記載の割合による金員を支払え。 2 前項の原告らのその余の請求及び別紙3棄却原告一覧表記載の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、別紙4訴訟費用負担一覧表記載の費用を同表記載の各原告の負担とし、その余の費用を被告東芝の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告東芝、被告E、被告F、被告G及び被告Hは、連帯して(ただし、下記2項及び3項の限度で、被告B、被告C及び被告Dとも連帯して)、別紙5請求の趣旨一覧表の「原告名」欄記載の各原告に対し、各原告に係る同別紙の「損 害合計」欄記載の各金員及びこれに対する平成27年5月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは、被告東芝、被告E、被告F、被告G及び被告Hと連帯して、別紙5請求の趣旨一覧表の「原告名」欄記載の各原告に対し、各原告に係る同別紙の「損害合計(B分)」欄記載の各金員及びこれに対する平成27年5月8日 から各支払済みまで年5分の割合による金員を、亡Aの相続財産の限度において支払え。 3 被告C及び被告Dは、被告東芝、被告E、被告F、被告G及び被告Hと連帯して、別紙5請求の趣旨一覧表の「原告名」欄記載の各原告に対し、各原告に係る同別紙の「損害合計(C・D分)」欄記載の各金員及びこれに対する平成 27年5月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を、亡Aの相続財 産の限度において支払え。 第2 事 係る同別紙の「損害合計(C・D分)」欄記載の各金員及びこれに対する平成 27年5月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を、亡Aの相続財 産の限度において支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、被告東芝が発行する株式(以下「被告株式」という。)の取引をした原告らが、被告東芝が提出し公衆の縦覧に供された平成20年度(第170期) から平成26年度(第176期)第3四半期までの期間に係る有価証券報告書及び四半期報告書には、被告東芝の不適切な会計処理に起因する重要な事項についての虚偽記載があり、これによって損害を被ったと主張して、①被告東芝に対しては、金融商品取引法(以下、平成26年法律第44号による改正の前後を問わず、「金商法」という。)21条の2、民法709条に基づき、②被告 東芝の役員であった亡A(以下「亡A」という。)、被告E、被告F、被告G及び被告H(以下「被告役員ら」という。)に対しては、金商法24条の4が準用する22条、民法709条、719条、会社法429条1項及び2項1号ロ、430条に基づき、別紙5の「損害合計」欄記載の各金員及びこれに対する前記虚偽記載後の日である平成27年5月8日から各支払済みまで平成29年法 律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(被告東芝と被告役員らは民法719条1項の関係)を求める事案である。 なお、原告番号39、55、88、109、118及び142は、本件訴訟係属中に死亡し、その相続人が本件訴訟をそれぞれ承継した。また、亡Aは、本件訴訟係属中の平成29年12月8日に死亡し、被告B、被告C及び被告D が亡Aの相続を限定承認して本件訴訟を承継したため、これらの相続人らについては、前記損害賠償金及び遅延損 また、亡Aは、本件訴訟係属中の平成29年12月8日に死亡し、被告B、被告C及び被告D が亡Aの相続を限定承認して本件訴訟を承継したため、これらの相続人らについては、前記損害賠償金及び遅延損害金につき、各相続分に応じて他の被告らとの連帯支払を求める請求に変更された。 2 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記の証拠(枝番のある証拠で、枝番を付記しないものは全てを含む趣旨である。以下同じ。)及び弁論の全 趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等ア原告らは、被告株式を募集又は売出しによらないで取得した者である。 イ被告東芝は、電気機械器具製造業、計量器、医療機械器具等の製造業等を目的とする株式会社(取締役会設置会社、会計監査人等設置会社、令和5年12月までは指名委員会等設置会社)であり、被告株式は、東京証券 取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場(いずれも令和4年4月4日の市場区分再編前は市場第一部)に上場されていた。その事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までである。 ウ被告役員らは、いずれも被告東芝の役員を務めていた者であり、その在任期間等は、別紙6被告役員一覧記載のとおりである。 亡Aは、平成29年12月8日に死亡し、その妻である被告B並びに子である被告C及び被告Dが、亡Aの財産に属した権利義務を承継した。前記被告らは、横浜家庭裁判所に対し、限定承認をする旨の申述をし、同申述は、平成31年3月26日に受理され、被告Dが相続財産管理人に選任された。(乙Bア1~3) ⑵ 被告東芝による有価証券報告書等の提出被告東芝は、別紙7虚偽記載一覧表記載のとおり、平成21年6月から平成27年2月までにかけて、第170期から第175期までの有価証券報告書及び ⑵ 被告東芝による有価証券報告書等の提出被告東芝は、別紙7虚偽記載一覧表記載のとおり、平成21年6月から平成27年2月までにかけて、第170期から第175期までの有価証券報告書及び第176期第1四半期から第3四半期までの各四半期報告書(以下、有価証券報告書と四半期報告書を併せて「有価証券報告書等」といい、同別 紙記載の有価証券報告書等を「本件有価証券報告書等」という。)を関東財務局長に対して提出した。本件有価証券報告書等は、各提出の頃、公衆の縦覧に供された。 本件有価証券報告書等の連結財務諸表には、「当期純利益」、「株主資本」、「純資産」及び「継続事業からの税金等調整前当期純利益(△損失)」(以下 「継続事業税引前当期純損益」という。)の各項目について、別紙7の「虚偽 記載の該当部分」欄のとおり記載されていた。 (甲ア2~12、34~39、乙Aア4、5)⑶ 原告らによる被告株式の取得及び処分原告ら(ただし、訴訟承継のあった原告については承継前原告である。)は、別紙8取引履歴一覧記載のとおり、被告株式を取得し、処分した。(争いのな い事実、各調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)⑷ 本件有価証券報告書等の訂正に至る経緯等ア被告東芝は、平成27年2月12日、証券取引等監視委員会から、金商法26条に基づく報告命令を受けるとともに工事進行基準案件等について開示検査を受けた。 イ被告東芝は、平成27年4月3日、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」と題する書面を公表した。 同書面には、①平成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明したこと、②「工事進行基準案件に係る会計処理の適正性を検証し、検証結果を踏まえ改 善・再発 成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明したこと、②「工事進行基準案件に係る会計処理の適正性を検証し、検証結果を踏まえ改 善・再発防止に関して提言する」ことを目的として、社外の専門家を含む特別調査委員会を設置し、事実関係の調査を行うことが記載された。 また、当該公表を受けて、平成27年4月3日以降、インフラ工事の一部で不適切な会計処理があった疑いがあることや、平成25年度の会計処理では、工事費用を少なく見積もって利益を実際より多く計上していた可 能性があることが報道された。 (乙Aア6、36)ウ被告東芝は、平成27年5月8日、「第三者委員会設置のお知らせ」、「業績予想の修正に関するお知らせ」及び「剰余金の配当(期末)に関するお知らせ」と題する各書面を公表した。 これらの書面には、①特別調査委員会による調査の過程で、一部インフ ラ関連の工事進行基準案件において、工事原価総額が過少に見積もられ、工事損失(工事損失引当金を含む。)が適時に計上されていない等の事象が判明した上、工事進行基準案件における工事原価総額の見積りの問題以外にも、更なる調査を必要とする事項が判明したこと、②前記①の状況に鑑みて、特別調査委員会による調査の枠組みから、日本弁護士連合会の定め るガイドラインに準拠した、被告東芝と利害関係を有しない中立・公正な外部の専門家から構成される第三者委員会による調査の枠組みに移行すると決定したこと、③特別調査委員会による調査結果によれば、平成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性が生じており、平成26年度の決算発表は平成27年6月以降となる見込みであること、④平成26年度通 期の業績予想について、平成26年9月18日に公表 成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性が生じており、平成26年度の決算発表は平成27年6月以降となる見込みであること、④平成26年度通 期の業績予想について、平成26年9月18日に公表した前回予想を修正し、業績予想を未定とすること、⑤平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当につき、無配とするとの決議をしたこと等が記載された。 また、当該公表を受けて、平成27年5月8日以降、被告東芝が、一部のインフラ関連工事における不適切な会計処理についての調査の必要か ら、同年3月期の連結業績予想を取り消し、「未定」とすると発表したことが報道された。 (乙Aア14、34)エ被告東芝は、平成27年5月13日、「現時点で判明している過年度修正額見込み及び第三者委員会設置に関する補足説明」と題する書面を公表し た。 同書面には、①「現時点で判明している過年度修正額見込み」として、工事原価総額の過少見積りとそれに伴う工事損失(引当金)計上時期に関する過年度の要修正額が、平成23年度から平成25年度までの累計の営業損益ベースで▲(マイナスを示す。以下同じ。)500億円強を見込んで いるが、この見込みは平成27年5月13日時点のものであり、新たに設 置される第三者委員会における判断とは異なる可能性があること、②特別調査委員会の調査の過程で、工事進行基準案件以外にも更なる調査が必要な事項(損失引当計上の時期及び金額の妥当性、経費計上時期の妥当性、在庫評価の妥当性等)が判明しており、これらの事項について、被告東芝として、全社的、網羅的に調査する必要があると判断したこと、③前記② に記載した事項によって更なる過年度決算の修正が必要となるか否か及び必要となった場合の要修正額の規模は同日時点では不明であること等 、全社的、網羅的に調査する必要があると判断したこと、③前記② に記載した事項によって更なる過年度決算の修正が必要となるか否か及び必要となった場合の要修正額の規模は同日時点では不明であること等が記載された。 また、当該公表を受けて、平成27年5月13日以降、被告東芝が、平成23年度から平成25年度までの累計の営業損益ベースで▲500億 円強を見込んでいるなどと報道がされた。 (甲ウ17、乙Aア24)オ被告東芝は、平成27年5月22日、「第三者委員会の調査対象に関するお知らせ」と題する書面を公表した。 同書面には、①工事進行基準に係る会計処理、②映像事業における経費 計上に係る会計処理、③ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業における在庫の評価に係る会計処理、④パソコン事業における部品取引等に係る会計処理の事項について、第三者委員会に調査を委嘱すること等が記載された。 また、当該公表を受けて、平成27年5月22日以降、被告東芝が、前 記①~④の事項につき、第三者委員会による調査の対象とすると発表したことが報道され、同年7月4日には、被告東芝の不適切会計が1500億円超に拡大する可能性が高いと判明したことが報道された。 (甲ウ18~22、乙Aア25)カ(ア) 第三者委員会は、被告東芝の取締役や執行役等からのヒアリング等を 経て、平成27年7月20日、前記オ①~④の各調査事項について、調 査報告書(以下「本件調査報告書」という。)を被告東芝に提出した。(甲ア17)本件調査報告書では、①工事進行基準案件(インフラ関連案件)においては、工事原価総額の過少見積りによる工事損失引当金の過少計上又は未計上等の不適切な会計処理があったこと、②映像事業においては、 C/O 報告書では、①工事進行基準案件(インフラ関連案件)においては、工事原価総額の過少見積りによる工事損失引当金の過少計上又は未計上等の不適切な会計処理があったこと、②映像事業においては、 C/O(キャリーオーバー。当期で引き当てるべき引当金を計上しなかったり、経費の計上を翌期以降に先延ばしにしたりすることで見かけ上の当期利益を嵩上げすること。)と称する損益調整による当期利益の嵩上げ等の不適切な会計処理があったこと、③ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業においては、滞留在庫について適切な時期で の評価損の不計上、期中前工程のTOV(標準原価)改定による当期利益の嵩上げ等の不適切な会計処理が行われたこと、④パソコン事業において、マスキング価格を用いたODM先とのBuy-Sell取引(被告東芝又はその子会社が部品を購入してODM先に有償支給する部品取引と、部品供給を受けたODM先が自己調達部品と合わせてパソコンを 製造して前記子会社に納入する完成品取引を総称する取引をいう。)により部品供給量を調整し、取引実態に沿わない利益が計上される等の不適切な会計処理がされたことが認定され、平成20年度から平成26年度まで総額1518億円の税引前利益の過年度決算の修正が必要であるとされた。(甲ア17、18) なお、第三者委員会の調査及び調査の結果については、被告東芝における調査対象に関する事実の確認と、調査対象たる会計処理が適切性を欠くと判断した場合において、被告東芝におけるその発生原因の究明と再発防止策の策定・評価のために用いられることを予定しており、それ以外の目的のために用いられることを予定していないこと、前記調査結 果は、被告東芝からの委嘱を受けて、被告東芝のためだけに行われたも のである ために用いられることを予定しており、それ以外の目的のために用いられることを予定していないこと、前記調査結 果は、被告東芝からの委嘱を受けて、被告東芝のためだけに行われたも のであるから、第三者に依拠されることは予定していないことが留保された。 (イ) 被告東芝は、本件調査報告書の公表と併せて、自主チェックとして、前記期間の累計で過年度修正額(税引前損益)44億円の修正が更に必要であり、要修正額は合計1562億円となると公表した。(甲ウ24) キ被告東芝は、平成27年7月21日、「第三者委員会の調査報告書全文の公表及び当社の今後の対応並びに経営責任の明確化についてのお知らせ」と題する書面とともに、本件調査報告書の全文を公表した。(甲ア18)ク被告東芝は、平成27年8月18日、「新経営体制及びガバナンス体制改革策並びに過年度決算の修正概要及び業績予想についてのお知らせ」と題 する書面を公表した。 同書面には、平成20年度から平成26年度までの過年度修正額について、平成27年8月18日時点において、未確定であるものの、自主チェック、固定資産減損分及びその他の派生する影響を含む修正額を加えると、累計▲2130億円(第170期:▲803億円、第171期:▲372 億円、第172期:153億円、第173期:▲854億円、第174期:▲796億円、第175期:▲9億円、第176期第1四半期から第3四半期まで:551億円)であることが記載された。 (甲ア49)ケ被告東芝は、平成27年9月7日、「過年度決算の修正、2014年度決 算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ」と題する書面を公表した。 同書面には、過年度決算の修正作業及び平成26年度の の修正、2014年度決 算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ」と題する書面を公表した。 同書面には、過年度決算の修正作業及び平成26年度の決算作業が監査手続も含めて終了したこと、本件調査報告書記載の要修正額に自主チェック、固定資産減損分及びその他の派生影響等を含む修正額を加えた平成2 0年度から平成26年度までの「継続事業税引前当期純損益」の過年度修 正額が、累計▲2248億円(第170期:▲764億円、第171期:▲415億円、第172期:71億円、第173期:▲840億円、第174期:▲847億円、第175期:14億円、第176期第1四半期から第3四半期まで:533億円)であること等が記載された。 (甲ア21、乙Fア1) ⑸ 被告東芝による本件有価証券報告書等の訂正被告東芝は、平成27年9月7日、関東財務局長に対し、本件有価証券報告書等の各期について訂正を行う旨の報告書(以下、併せて「本件訂正報告書」という。)を提出した。 本件訂正報告書では、本件有価証券報告書等のうち、「売上高」、「継続事業 税引前当期純損益」、「当期純損益」、「株主資本」、「純資産額」、「総資産額」等の項目について訂正がされたところ、訂正前後の各項目の数値は、別紙7の「虚偽と真実の内容」の項記載のとおりである。 (甲ア4、6、8、10、12、35、37、39、乙Aア33)⑹ 被告株式の特設注意市場銘柄指定等 被告東芝は、前記⑸のとおり本件有価証券報告書等に虚偽記載をしていたことを受けて、東京証券取引所及び名古屋証券取引所から、内部管理体制等について深刻な問題を抱えており、当該内部管理体制等について改善の必要性が高いとして、平成27年9月15日付けで、被告 をしていたことを受けて、東京証券取引所及び名古屋証券取引所から、内部管理体制等について深刻な問題を抱えており、当該内部管理体制等について改善の必要性が高いとして、平成27年9月15日付けで、被告株式につき、上場廃止に準ずる措置である特設注意市場銘柄に指定する旨の通知を受けた。(乙F イ2)⑺ 金融庁による課徴金納付命令等証券取引等監視委員会は、平成27年12月7日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、被告東芝の有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令の発出を勧告した(甲ア15、乙Aア2、乙Fア2)。 金融庁長官は、当該勧告を受けて、被告東芝に対し、金商法違反に係る審 判手続開始決定通知書を送付した。これに対し、被告東芝は、平成27年12月17日、課徴金に係る金商法178条1項2号及び4号に掲げる事実並びに納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を提出した。そのため、審判期日が開かれることはなく(金商法183条2項)、同月24日、金融庁長官は、前記勧告のとおり、被告東芝に対し、重要な事項につき虚偽の記載のあ る有価証券報告書を提出したなどとして、課徴金73億7350万円を平成28年2月25日までに国庫に納付するよう命ずる決定をした。(甲ア16、乙Aア3、乙Dウ17、乙Eア4、乙Fイ4の1)⑻ 被告株式の特設注意市場銘柄指定の解除等被告東芝は、前記⑹のとおり特設注意市場銘柄指定処分を受けたことから、 平成28年9月15日、当該指定処分をした東京証券取引所及び名古屋証券取引所に対し、内部管理体制確認書を提出した。被告東芝は、同年12月19日、両取引所から、特設注意市場銘柄の指定を継続する旨の通知を受けたため、平成29年3月15日、内部管理体制確認書を再提出し、審査を受けたところ、同年1 確認書を提出した。被告東芝は、同年12月19日、両取引所から、特設注意市場銘柄の指定を継続する旨の通知を受けたため、平成29年3月15日、内部管理体制確認書を再提出し、審査を受けたところ、同年10月12日付けで、特設注意市場銘柄や監理銘柄の指定が 解除された。(乙Fイ2)⑼ 被告株式の株価推移及び株式併合被告株式の平成27年4月3日から平成28年1月12日までの株価(終値。以下、特に記載のない限り、株価については終値を表記する。)の推移は別紙9株価の推移のとおりである(乙Aア15、39、乙Fイ1)。 被告東芝は、①平成30年10月1日に被告株式10株を1株に併合する株式併合をし、②令和5年12月20日、上場を廃止し、これに伴い9300万株を1株に併合する株式併合をしたところ、前記②の株式併合によって1株に満たない端数を有する株主に対しては、当該株式併合前の1株当たり4620円(前記①の株式併合前の1株当たりに引き直すと462円)が交 付された(以下、平成30年10月1日以降の被告株式の株価を記載する場 合であっても、同日の株式併合前の単価に引き直した価格を記載する。)。 ⑽ 本件訴訟の提起原告らは、①平成27年12月14日に第1事件に係る訴えを、②平成28年3月28日に第2事件に係る訴えを、③平成28年8月10日に第3事件に係る訴えを、④平成29年4月14日に第4事件に係る訴えをそれぞれ 提起した。 3 争点⑴ 被告東芝の責任ア本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(争点⑴) イ金商法21条の2及び民法709条の責任の有無(争点⑵)⑵ 被告役員らの責任ア本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(争点 びその範囲(争点⑴) イ金商法21条の2及び民法709条の責任の有無(争点⑵)⑵ 被告役員らの責任ア本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(争点⑶)イ金商法24条の4、22条、民法709条、719条、会社法429条 1項及び2項の各責任の有無(争点⑷)⑶ 損害額及び相当因果関係の有無(争点⑸) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(被告東芝関係))について (原告らの主張)ア虚偽の記載金商法21条の2第1項にいう「虚偽の記載」とは、真実でない記載と解すべきである。そして、一般に、有価証券報告書等の訂正が行われるのは、訂正前の有価証券報告書等の内容が真実でなかったことが理由である から、本件有価証券報告書等において訂正されている箇所については、「虚 偽の記載」があったといえる。 なお、原告らは、訂正前の本件有価証券報告書等に記載された数値の基礎となった会計処理が一般に認められた公正な会計原則に反する方法により行われたことについて、高度の信用性がある本件調査報告書の記載を引用するなどして主張している。また、被告東芝が平成29年10月20 日付けで公表した「内部管理体制の改善報告」において過年度決算訂正事項について不正会計があったと認めていること及び被告東芝が被告役員らに対して提起した損害賠償請求訴訟(以下「別件訴訟」という。)における被告東芝の主張内容に照らしても、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」があったことは明らかである。 イ重要な事項金商法21条の2第1項の「重要な事項」に当たるか否かは、投資者の投資判断に重要な影響を与えるか否かによ 件有価証券報告書等に「虚偽の記載」があったことは明らかである。 イ重要な事項金商法21条の2第1項の「重要な事項」に当たるか否かは、投資者の投資判断に重要な影響を与えるか否かにより判断すべきであるところ、企業の財務諸表における項目は、法定記載事項とされていることなどから、当然に重要である。 そして、本件有価証券報告書等については、主位的には「当期純利益」、「株主資本」、「純資産」に係る訂正前の金額の記載が、予備的には「税引前当期純損益」に係る訂正前の金額の記載が、「重要な事項」についての「虚偽の記載」に該当する。 (被告東芝の主張) ア虚偽の記載金商法上、財務書類に関する「虚偽の記載」の有無は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に従って財務書類が作成されているか否かにより決せられる。そのため、原告らは、訂正前の本件有価証券報告書等における財務書類の内容が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準 を逸脱していることを具体的に主張立証する必要があり、具体的には、原 告らが虚偽であると主張する財務情報ごとに、①会計処理の基礎となる個別具体的な事実関係、②被告東芝が違反したとする会計基準の内容及び理由、③会計基準違反の結果として生じた虚偽記載の内容等について主張立証する必要がある。しかるに、原告らは、これらの主張立証をしない。 被告東芝は、過年度決算の訂正に際して、会計基準において許容される 範囲で、可能な限り保守的な手法により減損損失を追加計上したのであって、訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきであったことを理由に追加計上したのではない。したがって、本件有価証券報告書等の「当期純損益」の訂正のうち、減損損失の追加計上分は「虚偽の記載」に当たらない。 決算時点において減損損失を認識すべきであったことを理由に追加計上したのではない。したがって、本件有価証券報告書等の「当期純損益」の訂正のうち、減損損失の追加計上分は「虚偽の記載」に当たらない。 イ重要な事項有価証券報告書等における虚偽記載が、「重要な事項」についてのものと認められるか否かは、当該虚偽記載が投資者の投資判断に重大な影響を与えるものであったか否かを基準として判断される。そして、その判断に当たっては、当該企業規模に照らした訂正額の多寡や訂正比率が重要であり、 このほかに、財務諸表のうちいかなる項目の訂正であるかということや、投資者の投資判断の前提となる企業の経営環境等も考慮されるべきである。 被告東芝は、第171期(平成22年3月期)、第173期(平成24年3月期)及び第174期(平成25年3月期)の各有価証券報告書の連結 当期純損益に、「重要な事項について虚偽の記載」が存在することについては争わない。 しかし、第172期(平成23年3月期)及び第175期(平成26年3月期)の各有価証券報告書並びに第176期(平成27年3月期)の第3四半期の四半期報告書における訂正後の当期純損益は、むしろ改善して いることから、これらの書類について、「重要な事項について虚偽の記載」 が存在することは争う。 その他の本件有価証券報告書等及び当期純損益以外の項目(純資産、株主資本及び税引前当期純損益)について、「重要な事項について虚偽の記載」があることは争う。 ⑵ 争点⑵(金商法21条の2及び民法709条の責任の有無(被告東芝関係)) について(原告らの主張)ア金商法21条の2の責任前記⑴アのとおり、本件有価証券報告書等には「重要な事項について虚偽の記載」があるから、被告東芝 9条の責任の有無(被告東芝関係)) について(原告らの主張)ア金商法21条の2の責任前記⑴アのとおり、本件有価証券報告書等には「重要な事項について虚偽の記載」があるから、被告東芝は、金商法21条の2の責任を負う。 イ民法709条の責任(ア) 被告東芝は、有価証券報告書等を提出する際、その重要な事項について虚偽記載をしないように配慮すべき注意義務、具体的には、①ある会計年度において重要な事項について新たな虚偽記載をしないように配慮すべき注意義務及び②過去の会計年度の有価証券報告書等の重要な事項に ついて虚偽記載を速やかに発見し、修正し、公表する注意義務を負っていたにもかかわらず、本件有価証券報告書等において、合計金額2306億円にも上る巨額の虚偽記載を行ったのであるから、前記①及び②の義務に違反したことは明らかであり、民法709条の責任を負う。 (イ) また、証券取引所に上場している被告東芝は、一般投資家に対し、発行 する有価証券に関する投資判断に影響を与える重要な会社情報を直ちに開示すべき義務を負っていたにもかかわらず、虚偽記載の事実を小出しに公表し、株主の投資判断に必要な情報を速やかに開示せず、また、ウエスティングハウス社の減損処理に関していまだ明確な会計処理方針を発表していないから、前記義務に違反したことは明らかであり、民法7 09条の責任を負う。 (被告東芝の主張)ア金商法21条の2の責任前記⑴イのとおり、第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の連結当期純損益に「重要な事項について虚偽の記載」が存在することは争わないが、本件有価証券報告書等のうちその余について「重要 な事項について虚偽の記載」が存在することは争う。 イ民法709条の 結当期純損益に「重要な事項について虚偽の記載」が存在することは争わないが、本件有価証券報告書等のうちその余について「重要 な事項について虚偽の記載」が存在することは争う。 イ民法709条の責任(ア) 原告らが主張する本件有価証券報告書等の訂正には、被告東芝の複数の事業における複数の案件に関する記載が含まれており、原告らが不適切な会計処理が行われたと主張する複数の案件においては、各会計処理 に関与した被告東芝の役職員は異なっている。したがって、原告らが被告東芝の不法行為の成立を主張するのであれば、会計処理ごとに被告東芝のいかなる行為を加害行為と主張し、当該加害行為について、法人である被告東芝の故意又は過失(注意義務の存在及びその違反)が誰のいかなる認識・注意義務違反により基礎付けられると主張するのかを明確 にする必要があるが、原告らは、そのような具体的な主張を行わない。 (イ) 一般に、証券取引所の自主規制である適時開示の義務に違反したとしても、投資者との関係でそれが直ちに加害行為に該当するものではない。 また、本件有価証券報告書等の虚偽記載の開示について、被告東芝は、東京証券取引所等の適時開示に関する規制に従って、適時に各時点で開 示できる情報を開示しているから、適時開示義務違反に該当する行為もない。さらに、原告らが指摘するウエスティングハウス社の減損損失は、被告東芝の連結決算上においては計上の必要性が認められず、当時において、当該減損損失が適時開示基準の要件に該当するか必ずしも一義的に明らかではなかったのであるから、これらの事象を開示しなかった不 作為が投資者に対する加害行為に当たるということはできない。 ⑶ 争点⑶(本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範 から、これらの事象を開示しなかった不 作為が投資者に対する加害行為に当たるということはできない。 ⑶ 争点⑶(本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(被告役員ら関係))について(原告らの主張)前記⑴アのとおりである。 (被告役員らの主張) 金商法21条の2、22条における「虚偽の記載」に当たるか否かは、当該有価証券報告書等に記載された内容が公正な会計慣行に反しているか否かという観点から実質的に判断されるべきものであるが、原告らは、この点の主張立証をしていない。本件有価証券報告書等に虚偽の記載があると主張するのであれば、いかなる公正な会計慣行を、どのように違反した結果、いく らの虚偽の記載が生じたのかについて主張立証すべきである。 また、本件調査報告書は、被告東芝がより適切な会計処理を行うためにのみ用いられることが予定されており、有価証券報告書等の内容が一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に反するか否かという点を調査の対象にしていない。また、第三者委員会において、どのような方法で会計処理の適切 性について判断したのかは明らかでなく、本件調査報告書はその信用性を欠く。 ⑷ 争点⑷(金商法24条の4、22条、民法709条、719条、会社法429条1項及び2項の各責任の有無(被告役員ら関係))について(原告らの主張) ア金商法24条の4が準用する22条1項及び会社法429条2項1号ロの責任被告役員らは、本件有価証券報告書等の虚偽記載が行われた当時、被告東芝の役員であったか、又は、既に退任していても、相談役や顧問等として被告東芝の経営に携わり、強い影響力を発揮し、取締役、執行役に「準 ずる者」といえるから、金商法24条の4が準用する22 告東芝の役員であったか、又は、既に退任していても、相談役や顧問等として被告東芝の経営に携わり、強い影響力を発揮し、取締役、執行役に「準 ずる者」といえるから、金商法24条の4が準用する22条1項及び会社 法429条2項1号ロの責任を負う。また、被告役員らにおいて、相当の注意を尽くしたが本件有価証券報告書等の虚偽記載を知ることができなかったとはいえないから、金商法の前記責任は免責されない。 イ民法709条、719条、会社法429条1項の責任(ア) 被告役員らは、有価証券報告書等を提出する会社の役員として、その 重要な事項について虚偽記載をしないように配慮すべき注意義務、具体的には、①ある会計年度において重要な事項について新たな虚偽記載をしないように配慮すべき注意義務、②過去の会計年度の有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載を速やかに発見し、修正し、公表する注意義務、③役員の地位を退く際に、自分の任期中に提出された有価 証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載を速やかに発見し、修正し、公表する注意義務、④引継ぎを受ける立場の後任の新役員においては、前任者時代に提出された有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載を速やかに発見し、修正し、公表する注意義務を負っていた。 それにもかかわらず、被告役員らは、本件有価証券報告書等において、 合計2306億円もの巨額の粉飾決算を行い、是正措置をとらなかったから、民法709条及び会社法429条1項の責任を負う。また、本件有価証券報告書等の虚偽記載は、一連一体の1個の注意義務違反行為であって、不正会計に関与した役員は、役員退任後に積極的に不正会計の解消に尽力して初めて注意義務違反が消滅する。したがって、被告役員 らは、その任期や不正会計の年度 体の1個の注意義務違反行為であって、不正会計に関与した役員は、役員退任後に積極的に不正会計の解消に尽力して初めて注意義務違反が消滅する。したがって、被告役員 らは、その任期や不正会計の年度にかかわらず、本件有価証券報告書等の虚偽記載の全てについて責任を負う。 (イ) 前記⑵イ(イ)の被告東芝の不法行為は、現実には被告役員らによって行われたものであるから、被告役員らは、会社法429条1項に基づき、被告東芝と共同して、本件有価証券報告書等の虚偽記載によって生じた 損害を賠償する責任を負う。また、被告役員らの不法行為は、現実には、 同一の会議又は組織の中の分業及び権限分掌の結果行われたものであるから、被告役員らも共同して、本件有価証券報告書等の虚偽記載によって生じた損害を賠償する責任を負う。 (被告役員らの主張)ア金商法24条の4が準用する22条1項及び会社法429条2項1号ロ の責任前記⑶のとおり、原告らは、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」があることについて、具体的に主張立証していないから、被告らは、金商法24条の4が準用する22条1項及び会社法429条2項1号ロの責任を負わない。 イ民法709条、719条、会社法429条1項の責任有価証券報告書等を提出する会社の役員が、一般的・抽象的に有価証券報告書等の重要な事項について虚偽の記載をしないように配慮すべき義務を負うとしても、具体的な状況の下、個々の役員の職務内容に照らして、具体的に如何なる注意義務が存在するのかを主張しなければならない。し かるに、原告らは、この点について全く明らかにしていないし、被告役員らのどのような行為が注意義務違反に該当するのかを特定して主張していないから、原告らの主張は失当である。 ⑸ 争点⑸(損 かるに、原告らは、この点について全く明らかにしていないし、被告役員らのどのような行為が注意義務違反に該当するのかを特定して主張していないから、原告らの主張は失当である。 ⑸ 争点⑸(損害額及び相当因果関係の有無)について(原告らの主張) ア主位的主張(取得自体損害)本件有価証券報告書等においては、悪質かつ甚大な規模の虚偽記載が行われていた。そして、原告らは、このような虚偽記載がなく、被告東芝の企業実態が当初から正しく明らかにされていれば、被告株式を取得することはなかった。そうすると、原告らは、本件有価証券報告書等における虚 偽記載の結果、取得価格に相当する金員を支出して虚偽記載がされた株式 を取得したといえるから、この支出自体が損害となる。 イ予備的主張(高値取得等損害)仮に取得自体損害が認められないとしても、被告東芝の株価は、被告東芝による本件有価証券報告書等の虚偽記載によって、本来あるべき株価よりも嵩上げされており、原告らはその嵩上げされた株価で購入せざるを得 なかったから、嵩上げ額相当の損害を被った。加えて、前記虚偽記載の発覚によって、①被告東芝に対する社会的な信用が毀損され、それに伴って被告株式の株価は下落し、また、②通常の市場取引における売買状況とは大きく異なる多数の株式売買が行われ、それに伴って被告株式の株価は暴落し、ろうばい売り損害が発生した。このような前記虚偽記載と相当因果 関係のある株価の下落は、有価証券報告書の虚偽記載に関して明示に公表された平成27年5月8日から「業績予想に関するお知らせ」が公表された同年12月21日までにされた一連一体で不可分の公表行為を起点として、被告株式が1株当たり155円に下落した平成28年2月12日まで継続した。 から「業績予想に関するお知らせ」が公表された同年12月21日までにされた一連一体で不可分の公表行為を起点として、被告株式が1株当たり155円に下落した平成28年2月12日まで継続した。 そうすると、平成28年2月12日までに被告株式を売却した株主との関係では、購入時の株価と売却時の株価の差額が損害として賠償されなければならず、他方、同日以降も被告株式を保有していた者については、その後の株価の上昇にかかわらず、各原告の1株ごとの株式購入価格から155円を控除した額が損害として賠償されなければならない。 ウ損害額の算定方法(ア) 損害賠償請求の対象となる被告株式a 虚偽記載がされた有価証券報告書は、長期間をかけて作成されるものであるから、不正な会計処理という不法行為が行われていた期間には、実際には、有価証券報告書の公表前の時期も含まれる。したがっ て、平成22年6月23日よりも前に取得された被告株式についても 損害賠償請求の対象となる。 b 被告東芝による平成27年4月3日の公表は、有価証券報告書の虚偽記載が存在したという表現が使用されていないほか、極めて抽象的なアナウンスにとどまっていることから、同月4日時点では、一般投資家において、被告東芝の不正会計の全体像を認識することは不可能 であった。 また、同年5月8日の公表では、有価証券報告書の虚偽記載があったと明示されており、一般投資家が被告東芝の不正会計を認識することが可能になったものの、不正会計についての十分な情報が提供されたわけではなく、本件有価証券報告書等に重要な不備があったと公表 した同年9月7日までの間、被告東芝は、一般投資家に対して十分な情報開示を行っておらず、平成28年3月期の業績予想を示した「業績予想に関す く、本件有価証券報告書等に重要な不備があったと公表 した同年9月7日までの間、被告東芝は、一般投資家に対して十分な情報開示を行っておらず、平成28年3月期の業績予想を示した「業績予想に関するお知らせ」を公表するまで、虚偽記載と関連する公表が継続した。 そして、被告東芝による有価証券報告書の虚偽記載に関する公表は、 同年12月21日までの間、一連の行為として行われたものであるから、少なくとも、同日までに取得された被告株式については、損害賠償請求の対象となる。 (イ) 損害賠償請求の対象となる株式の特定方法本件の損害賠償請求の対象株式を特定するに当たっては、棚卸資産の 評価や原価計算をする際に先に仕入れた物品から先に払い出されたと仮定する方法として一般的に広く行われている先入先出法を用いるべきである。市場で流通する株式については、その購入した日で特定できるため、日付順に先入先出法によって整理すれば足り、あえて総平均法を適用する理由はない。 また、現物取引と信用取引は、もともと異なる取引であるから、区別 して請求対象株式の特定を行うことが合理的である。 エ取引諸経費現物取引及び信用取引のいずれを行うに当たっても、手数料及び消費税のほか諸経費の支払が必要となるが、これらの費用は、金商法21条の2第1項の「損害」に含まれる。 オ弁護士費用本件において、被告東芝が負うこととなる責任の本質は不法行為責任であるから、各原告が被った損害賠償金の1割相当額を弁護士費用として損害に計上すべきである。 カ除斥期間の主張について 除斥期間の主張は争う。 キ以上によれば、原告らの損害は、別紙10の各原告の損害算定表記載のとおりである。 (被告東芝の主張)ア主位的主 である。 カ除斥期間の主張について 除斥期間の主張は争う。 キ以上によれば、原告らの損害は、別紙10の各原告の損害算定表記載のとおりである。 (被告東芝の主張)ア主位的主張(取得自体損害)について 原告らは、本件有価証券報告書等の虚偽記載がなければ被告株式を取得することがなかったとはいえないから、被告株式の取得単価から処分単価を控除した残額(取得自体損害)が原告らの損害であるとは認められない。 イ予備的主張(高値取得等損害)について原告らの損害として認められ得るのは、高値取得損害(虚偽記載によっ て嵩上げされていた株式の価値に相当する部分)の部分のみである。信用毀損及びろうばい売りによる株価下落は、会社の業績悪化や事故による株価下落と同様に、株主が一般的にその地位に基づいて被る損失であるから、虚偽記載と相当因果関係がないものとして、賠償の対象となる損害から控除すべきである。 また、原告らが被った損害は高値取得損害の部分に限られるから、被告 株式取得後の虚偽記載に起因する株価下落は、損害賠償請求の対象とはならない。 ウ損害額の算定方法(ア) 損害賠償請求の対象となる被告株式虚偽記載のある本件有価証券報告書等の提出日より前に被告株式を取 得した者は、虚偽記載による影響を受けることなく被告株式を取得したのであるから、損害賠償の対象とはならない。 被告東芝は、平成27年4月3日に公表した「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」において、平成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、特別調査委員会を設置して調 査を行う旨公表しており、同日時点では、一般投資家において、被告東芝の過年度の有価証券報告書等の記載が訂正される疑いを ラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、特別調査委員会を設置して調 査を行う旨公表しており、同日時点では、一般投資家において、被告東芝の過年度の有価証券報告書等の記載が訂正される疑いを認識できる状態となっている。それにもかかわらず同月4日以降に被告株式を取得した原告らは、過年度決算修正が必要になり得ることを認識し、そのリスクを引き受けていたといえるから、本件有価証券報告書等の虚偽記載に よってその権利等を侵害されたとはいえない。 したがって、損害賠償請求の対象となる株式の取得期間の始期は、早くとも平成22年6月24日であり、終期は、遅くとも平成27年4月3日である。 (イ) 損害賠償請求の対象となる株式の特定方法 株式は、会社の構成員たる地位あるいは会社に対する持分の細分化された割合的単位に過ぎず、1株1株に個性はない。そして、株券が発行されず数量のみによって把握される振替株式制度の下では、特定の株券と紐づけられた特定の株式が売買されるのではなく、投資者の会社に対する持分割合が増減するだけであるから、先入先出法は、振替株式の特 性に適合せず、会計実務や税法上の取扱いに照らしても適用すべきでは ない。そのため、総平均法と同様の考え方によって、請求対象株式を特定すべきである。 また、信用取引と現物取引は、投資資金の調達方法に違いがあるだけであって、いずれの取引においても株式売買の損益は投資者に帰属するから、投資者の損害を算定するに当たって両取引を区別する合理的な理 由はなく、両取引を区別せずに請求対象株式を特定すべきである。 (ウ) 具体的な損害額(高値取得損害)の算定a 一般に、虚偽記載により嵩上げされていた高値取得部分(嵩上げ額)は、虚偽記載に関する事実の公表後の株価下落に ずに請求対象株式を特定すべきである。 (ウ) 具体的な損害額(高値取得損害)の算定a 一般に、虚偽記載により嵩上げされていた高値取得部分(嵩上げ額)は、虚偽記載に関する事実の公表後の株価下落により解消されるから、嵩上げ額は、虚偽記載に関する事実を公表した後に生じる虚偽記載に 起因する株価下落の額を上回ることはない。そこで、高値取得損害の算定に当たっては、まず、高値取得損害の上限として公表後の株価下落額を求めた上で、当該株価下落額から、嵩上げ額とは無関係な部分、すなわち、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等による株価の下落や、信用毀損、ろうばい売り等の部分を差し引くことで、嵩上げ額を 推定する方法をとるべきである。 本件では、本件有価証券報告書等の訂正報告書の公表による影響は当該訂正報告書が公表された平成27年9月7日(被告東芝による虚偽記載に関する事実の公表日)から約1か月後の同年10月9日までの間の株価に織り込まれており、その後は原告らの主張する虚偽記載 に起因する株価下落は解消されていると評価できる。 そして、同年5月8日から同年10月9日までの株価下落は、中国株式市場の影響等、電機産業の事業環境の悪化による下落がほとんど全てである。 また、かかる株価下落のうちに原告らが主張する虚偽記載に起因す る株価下落が含まれているとしても、それは信用毀損やろうばい売り 等、虚偽記載の公表によって過剰に反応したものであって、原告らの主張する虚偽記載による嵩上げ額が解消したことで生じる株価下落は全くなかったから、原告らに高値取得損害は生じていない。なお、被告株式の株価は、平成27年9月29日に底を打ったが、それはシャープ株式会社等電機産業5銘柄の市場株価ないし日経平均株価と連動 したことが主 たから、原告らに高値取得損害は生じていない。なお、被告株式の株価は、平成27年9月29日に底を打ったが、それはシャープ株式会社等電機産業5銘柄の市場株価ないし日経平均株価と連動 したことが主たる要因である。 b 仮に、高値取得損害が存在するとしても、被告株式の1株当たりの株価は、平成27年5月8日時点で483.3円であったものが、平成28年2月12日に158円と底を打ち、同年12月15日に475.2円まで回復し、それ以降は、一時下落する時期はあったものの、 令和3年4月14日には497.5円を記録し、同年11月4日には平成27年4月3日の終値である512.4円を超えていた。したがって、平成28年12月15日から令和3年4月14日までの間に被告株式を売却した原告らについては、取得単価(ただし、これが483.3円を超えるものについては483.3円)から平成28年12 月15日以降売却までの間の最高値を控除した額が損害額の上限となるし、それ以降も被告株式を保有し続けた原告らについても、株価上昇分は損害額から控除されるべきである。 エ取引諸経費について前記アのとおり、原告らは、本件有価証券報告書等の虚偽記載がなけれ ば被告株式を取得することはなかったとはいえず、原告らは、いずれにせよ、取引諸経費を支出した上で、被告株式を取得して株主となっていたといえるから、取引諸経費は、虚偽記載とは無関係な要因による支出であり、原告らが負担すべきものである。 オ弁護士費用について 本件の請求金額は多額であるが、それと比例的に弁護士費用が多額とな るものではないから、原告らの損害額の5%を超える部分については、弁護士費用相当額の賠償責任が認められない。 カ遅延損害金について遅延損害金の起算点 比例的に弁護士費用が多額とな るものではないから、原告らの損害額の5%を超える部分については、弁護士費用相当額の賠償責任が認められない。 カ遅延損害金について遅延損害金の起算点は、損害の発生時である。具体的には、投資者が有価証券を、取得単価より低い金額で処分した場合には、当該時点で投資者 が不利益を被ったことが確定するため、処分時点で損害が発生したとみて、同時点を遅延損害金の起算点とする。また、投資者が、損害賠償請求の時点で、有価証券を未だ処分せず保有している場合には、請求時から遅延損害金を起算すべきである。 キ除斥期間について 金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権は、請求権者が虚偽記載等に係る書類が提出された時から5年間行使しないときは消滅する(21条の3、20条)。本件において、訴え提起が最も早かった第1事件の訴えの提起日が平成27年12月14日であるから、原告らの損害賠償請求権のうち、平成22年6月23日に提出された第171期(平成22年3 月期)及びそれ以前の有価証券報告書等の虚偽記載を理由とする金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権は、除斥期間の経過により消滅した。 (被告役員らの主張)原告らの主張はいずれも争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(被告東芝関係))について⑴ 虚偽記載の判断基準等について金商法の規定に基づき提出される財務計算に関する書類は、一般に公正妥 当と認められる企業会計の基準に従って作成しなければならないとされ(金 商法193条、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則1条1項参照)、会社法においても、株式会社の会計は、一般に公 認められる企業会計の基準に従って作成しなければならないとされ(金 商法193条、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則1条1項参照)、会社法においても、株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとされている(会社法431条)。そして、これらの規定が投資者を含む利害関係人の保護をもその目的としていると解されることに照らせば、有価証券報告書等の記載につき、不法行為責任が成立し得 る虚偽記載であるか否か及び金商法21条の2第1項にいう「虚偽の記載」に該当するか否かは、投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成に重要な影響を与える事項について、当該記載が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に違反した会計処理に基づいてされたかによって判断すべきである。 ⑵ 原告らの主張について原告らは、本件有価証券報告書等において訂正されている箇所については、訂正前の有価証券報告書等には虚偽の記載があったといえること、訂正前の本件有価証券報告書等に記載された数値の基礎となった会計処理が一般に認められた公正な会計原則に反する方法により行われたことについては、本件 調査報告書の記載を引用する等して主張していること、被告東芝が公表した「内部管理体制の改善報告」の記載及び被告東芝が被告役員らに対して提起した別件訴訟における被告東芝の主張内容に照らしても、本件有価証券報告書等に虚偽の記載があったことは明らかであることを主張する。 しかしながら、本件調査報告書においては、訂正前の本件有価証券報告書 等に記載された数値の基礎となった会計処理及び一般に公正妥当と認められる企業会計の基準をいずれも特定しないまま、被告東芝による会計処理が不適切なものであったと結論付けるにとどまっており、本 等に記載された数値の基礎となった会計処理及び一般に公正妥当と認められる企業会計の基準をいずれも特定しないまま、被告東芝による会計処理が不適切なものであったと結論付けるにとどまっており、本件有価証券報告書等における虚偽の記載を基礎付ける違法な会計処理の存在について、調査・検討をした結果は記載されていない(前提事実⑷カ、甲ア17、18)。また、 被告東芝が平成29年10月20日付けで公表した「内部管理体制の改善報 告」には、不正な会計処理が行われた原因と改善策が記載されているものの、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に違反する方法により行われたものであることは報告されていない(甲ア22)。さらに、別件訴訟における被告東芝の主張(甲ア40~48)をみても、本件有価証券報告書等の訂正額との関連性が明らかであるとはいえない。なお、原告らは、被告東芝の別 件訴訟の主張と本件の主張は矛盾しており、被告東芝は本件有価証券報告書等の虚偽記載の発生を全面的に認めるべきであるとも主張するが、被告東芝は、別件訴訟において違法性を主張している会計処理については、本件において会計処理の違法性を争っていないから、被告東芝の主張が本件と別件訴訟との間で矛盾しているとはいえない。 以上によれば、原告らが、本件有価証券報告書等に金商法21条の2第1項の「虚偽の記載」があったことを基礎付ける具体的な事実を主張しているとはいえない。 他方で、被告東芝は、第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の連結当期純損益に「重要な事項について虚偽の記載」が存在する ことについては争わないと主張していること(前記第2の4⑴(被告東芝の主張)イ参照)に鑑み、なお本件有価証券報告書等に重要な事項についての虚偽記載が認められ 項について虚偽の記載」が存在する ことについては争わないと主張していること(前記第2の4⑴(被告東芝の主張)イ参照)に鑑み、なお本件有価証券報告書等に重要な事項についての虚偽記載が認められるかについて、以下、検討する。 ⑶ 第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の当期純損益について ア被告東芝は、第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の当期純損益につき「重要な事項について虚偽の記載」があることは争わないとした上で、当該当期純損益の訂正のうち、以下の減損損失の追加計上分及び組替えによる訂正部分についてのみ、虚偽の記載に該当しないと具体的に主張する(前記第2の4⑴(被告東芝の主張)ア参照)。 第171期 ▲53億1000万円(減損損失の追加計上分) 第173期 ▲386億5100万円(減損損失の追加計上分▲350億円と組替えによる訂正部分▲36億5100万円の合計)第174期 ▲162億6000万円(減損損失の追加計上分▲160億9300万円と組替えによる訂正部分1億6700万円の合計)被告東芝は、特別調査委員会を設置してインフラ関連案件の会計処理に ついて調査を開始し、第三者委員会を設置して前記案件を含む案件の会計処理に関する調査を委託するなどして調査を行った上で(前提事実⑷イ~オ)、金融庁による金商法違反審判事件において、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認め(前提事実⑺)、本件訴訟においても、前記のとおり争う点と争わない点を明確に区別して対応している。そうすると、被 告東芝は、十分な調査を前提に、かつ、本件有価証券報告書等のうちに「重要な事項について虚偽の記載」があることを認めることによる法的効果を十分に理解した上で、「重要な事項 いる。そうすると、被 告東芝は、十分な調査を前提に、かつ、本件有価証券報告書等のうちに「重要な事項について虚偽の記載」があることを認めることによる法的効果を十分に理解した上で、「重要な事項について虚偽の記載」のあることを認めているというべきであるから、被告東芝が争わないと明確に主張する範囲については、これを基礎付ける具体的事実について主張立証がなくても、 裁判所はこれを前提として判断することができると解するのが相当である。 したがって、原告らと被告東芝の間においては、訂正前後の前記各有価証券報告書の当期純損益について、前記争いのある部分を控除した次の差額部分は、「重要な事項について虚偽の記載」がされたということができる (以下、第171期、第173期及び第174期の訂正前の各有価証券報告書の当期純損益の記載を「本件虚偽記載」という。)。 (ア) 第171期 ▲288億9000万円訂正額▲342億円(197億4300万円-539億4300万円)-減損▲53億1000万円 (イ) 第173期 ▲318億6000万円 訂正額▲705億1100万円(31億9400万円-737億0500万円)-減損及び組替え▲386億5100万円(ウ) 第174期 ▲478億4800万円訂正額▲641億0800万円(134億2500万円-775億3300万円)-減損及び組替え▲162億6000万円 イ他方、被告東芝が「虚偽の記載」であることを争う部分については、前記⑵のとおり、原告らは、訂正前の前記各有価証券報告書等に記載された財務情報について、虚偽の記載に該当する具体的事実を主張していないから、前記各有価証券報告書等に「虚偽の記載」があるとはいえない。 ⑷ 第172期及び第175期の各有価 有価証券報告書等に記載された財務情報について、虚偽の記載に該当する具体的事実を主張していないから、前記各有価証券報告書等に「虚偽の記載」があるとはいえない。 ⑷ 第172期及び第175期の各有価証券報告書並びに第176期の第1四 半期~第3四半期報告書の当期純損益について被告東芝は、これら有価証券報告書等について、「重要な事項について虚偽の記載」があることを争っており、かつ、原告らは、前記⑶イと同様、訂正前の前記各有価証券報告書等に記載された財務情報について、虚偽の記載に該当する具体的事実を主張していないから、前記各有価証券報告書等に「虚 偽の記載」があるとはいえない。 また、前記各有価証券報告書等の当期純損益は訂正後に改善していること(前提事実⑵、⑷ケ)に照らしても、投資者の投資判断に重大な影響を与える事項に関する「虚偽の記載」があるとは認められない。 ⑸ 第170期の有価証券報告書の当期純損益について 前記⑷と同様に、被告東芝は、「重要な事項について虚偽の記載」があることを争っており、かつ、原告らは、訂正前の前記有価証券報告書に記載された財務情報について、虚偽の記載に該当する具体的事実を主張していないから、前記有価証券報告書に「虚偽の記載」があるとは認められない。 ⑹ 本件有価証券報告書等における当期純損益以外の項目について 「純資産」及び「株主資本」の各項目は、当該企業が従前株式を発行して 集めた資金や、当該企業が内部に留保した利益等の計算上の合計値であって、企業の現在の収益力を直接的に示すものではないから、それ自体が独自に有意性を有する事情がない限り、投資者の投資判断に重要な影響を与えるような事項であるとまでは認められない。 また、最終の当期純損益の情報は、企業の現在の収益力を すものではないから、それ自体が独自に有意性を有する事情がない限り、投資者の投資判断に重要な影響を与えるような事項であるとまでは認められない。 また、最終の当期純損益の情報は、企業の現在の収益力を直接的に示すも のであるから、投資者の投資判断に影響を与える重要な事項であるが、税引前当期純損益は、当期純損益を算出するための計算過程において、法人税等の影響を考慮する前の段階の金額を示す項目にすぎないから、投資者の投資判断に独立して影響を与える重要な事項であるとは認められない。 2 争点⑵(金商法21条の2及び民法709条の責任の有無(被告東芝関係)) について⑴ 本件有価証券報告書等の虚偽記載に関する責任についてア民法709条の責任について法人については、法人の一個の組織体としての行動の結果として他人の法益が侵害され、代表者又は被用者のいずれかに過失があると認められる 場合においては、業務遂行に関わる代表者又は被用者の個々の行為や過失を個別に問題とすることなく、法人が民法709条に基づいて不法行為責任を負うこともあり得るものと解される。 これを本件についてみると、被告東芝の代表取締役社長、事業グループ担当執行役又は財務部担当執行役といった経営トップらが、意図的な見か け上の当期利益の嵩上げの実行、費用・損失計上の先送りの実行又はその継続を認識したにもかかわらず、中止や是正を指示しなかったことや、幹部職員等の担当者らが、経営トップらが有している見かけ上の当期利益の嵩上げという目的の下で、不適切な会計処理を実行し又は継続してきたことが、本件虚偽記載に係る不適切な会計処理の原因となったと認められる (甲ア18の2・276、277頁、弁論の全趣旨)。このことに照らせば、 被告東芝の組織体として は継続してきたことが、本件虚偽記載に係る不適切な会計処理の原因となったと認められる (甲ア18の2・276、277頁、弁論の全趣旨)。このことに照らせば、 被告東芝の組織体としての行動として、不適切な会計処理が行われ、本件虚偽記載がされた本件有価証券報告書等が作成及び提出され、その結果、投資者の財産権という法益が侵害されたものであり、かつ、少なくとも前記の者のいずれかに過失があるということができる。 そうすると、法人としての被告東芝は、有価証券報告書等の提出に当た り、その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠ったものとして、原告らに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 イ金商法21条の2の責任について被告東芝の金商法21条の2に基づく損害賠償責任には、除斥期間の制 限があるため、同条に基づく認容額は、これと選択的併合の関係にある本件有価証券報告書等の虚偽記載に関する不法行為に基づく請求の認容額を超えないというべきであるから、金商法21条の2に基づく損害賠償責任については、検討を要しない。 ⑵ 適時開示に関わる責任について 原告らは、被告東芝が、発行する有価証券に関する投資判断に影響を与える重要な会社情報につき、一般投資家に対し直ちに開示すべき義務を負っていたにもかかわらず、同被告は、ウエスティングハウス社の減損処理に関して明確な会計処理方針を発表しないなどしてこれを怠ったと主張する。 しかしながら、前提事実⑷のとおり、被告東芝は、本件有価証券報告書等 の訂正について、各時点において判明した内容の概要や調査を必要とする事項の存在等を可能な限り開示していたものといえ、会社情報の開示に関する注意義務に違反したと認めるに足りる証拠はな 報告書等 の訂正について、各時点において判明した内容の概要や調査を必要とする事項の存在等を可能な限り開示していたものといえ、会社情報の開示に関する注意義務に違反したと認めるに足りる証拠はない。 また、ウエスティングハウス社の減損処理について、適時開示義務を負うと認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告東芝が、適時開示義務違反による責任を負うとは認めら れない。 3 争点⑶(本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載の有無及びその範囲(被告役員ら関係))について⑴ 金商法24条の4の「重要な事項について虚偽の記載」の意義及び虚偽記載の判断基準は、前記1⑴で説示した金商法21条の2第1項の「重要な事 項について虚偽の記載」の意義及び虚偽記載の判断基準と同様であると解される。そうすると、前記1⑵で説示したとおり、原告らが、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」があったことを基礎付ける具体的な事実を主張しているとはいえない。そして、被告役員らは、被告東芝と異なり、本件有価証券報告書等の一部について「虚偽の記載」のあることを認める旨の主張をし ていない。 ⑵ したがって、被告役員らとの関係では、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」があるとは認められない。 4 争点⑷(金商法24条の4、22条、民法709条、719条、会社法429条1項及び2項の各責任の有無(被告役員ら関係))について ⑴ 前記3のとおり、被告役員らとの関係では、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」があるとは認められないから、被告役員らが、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」のあることを前提とする、金商法24条の4で準用する22条1項、民法709条、会社法429条2項1号ロの責任を負うとは認められない。 から、被告役員らが、本件有価証券報告書等に「虚偽の記載」のあることを前提とする、金商法24条の4で準用する22条1項、民法709条、会社法429条2項1号ロの責任を負うとは認められない。 ⑵ また、前記2⑵のとおり、被告東芝が適時開示義務違反による責任を負うとは認められず、被告役員らも、適時開示義務違反に関して民法709条、会社法429条1項の責任を負うとは認められない。 5 争点⑸(損害額及び相当因果関係の有無)について⑴ 総論 投資者が有価証券報告書等に虚偽記載がされている振替株式である上場株 式を取引所市場において取得した場合に、当該虚偽記載によって被った損害は、対象となる期間中の取引を評価して、投資者に生じたといえる虚偽記載と相当因果関係のあるものをいうと解される。 以下では、①虚偽記載による損害の内容を確認した上で(後記⑵)、②被告株式の下落した株価のうち相当因果関係のある部分に係る損害額の算定方法 を検討し(後記⑶ないし⑹)、③損害賠償請求の対象となる被告株式の範囲(被告株式の取得時期及び処分時期に基づいてその範囲を確定させる。)を定め、本件で損害賠償請求の対象となる被告株式(以下「算定対象株式」という。)を確定させること(後記⑺)で損害額を決定する。 ⑵ 虚偽記載による損害の内容 ア取得自体損害について原告らは、被告東芝による本件有価証券報告書等に係る虚偽記載がなければ原告らが被告株式を取得することはなかったとして、取得に要した費用の総額と処分単価との差額が損害であると主張する。 しかしながら、別紙8(取引履歴一覧)によれば、原告らが一般投資家 によって被告東芝の不正会計を認識することが可能になった時点と主張する平成27年5月8日の後においても、原告ら 主張する。 しかしながら、別紙8(取引履歴一覧)によれば、原告らが一般投資家 によって被告東芝の不正会計を認識することが可能になった時点と主張する平成27年5月8日の後においても、原告らのうち31名は被告株式を取得しているとおり、有価証券報告書等に虚偽記載があるとしても、取引市場における市場価額が投資者の想定する市場価額よりも低額であれば、当該投資者が株式を取得する可能性は十分にあると考えられる。 そして、被告東芝においては、本件虚偽記載がなく、本件訂正報告書のとおりの訂正後の数値により有価証券報告書等が当初から作成されていたとしても、本件虚偽記載の対象期間において、上場廃止基準に抵触するものとはうかがわれず、およそ一般投資家の投資対象となり得なかったといえるものではない。また、本件虚偽記載の存在が明らかになった後、被 告東芝は、平成27年9月7日、本件訂正報告書を関東財務局長に提出し、 東京証券取引所及び名古屋証券取引所から、内部管理体制等の改善の必要性が高いとして、同月15日付けで、被告株式につき、上場廃止に準ずる措置である特設注意市場銘柄に指定する処分を受けたものの、内部管理体制確認書の提出を経て、平成29年10月12日付けで前記指定が解除され、被告株式の上場が維持された(前提事実⑸、⑹、⑻)。これらの経過に 照らしても、被告株式がおよそ一般投資家の投資対象とはなり得なかったとはいえない。 以上によれば、本件虚偽記載がなければ原告らが被告株式を取得することはなかった関係にあるとはいえず、原告らについて、前記主張に係る取得自体損害があるとは認められない。 イ高値取得損害について原告らは、被告東芝による本件有価証券報告書等の虚偽記載によって、被告東芝の株価は、本来あるべ らについて、前記主張に係る取得自体損害があるとは認められない。 イ高値取得損害について原告らは、被告東芝による本件有価証券報告書等の虚偽記載によって、被告東芝の株価は、本来あるべき株価よりも嵩上げされており、原告らはその嵩上げされた株価で購入せざるを得ず、嵩上げ額相当の損害を被った旨を主張する。 本件においては、本件有価証券報告書等に記載された内容が真実であるとの信頼の下で市場価格が形成されていたと認められるから、嵩上げされた株式の価値を含む市場価格に相当する金銭等を支出して被告株式を取得した投資者について、仮に虚偽記載がなければ形成されていたであろう被告株式の市場価額(想定価額)と実際の取得価格との差額(以下「高値 取得分」という。)は、本件虚偽記載と相当因果関係のある損害に当たるというべきである(なお、このことについては、被告東芝も争っていない。)。 ウ信用毀損・ろうばい売りによる損害について(ア) 原告らは、本件有価証券報告書等の虚偽記載の発覚によって、被告東芝に対する社会的な信用が毀損され、それに伴って被告株式の株価は下 落し、また、通常の市場取引における売買状況とは大きく異なる多数の 株式売買が行われ、それに伴って被告株式の株価は暴落し、ろうばい売りによる損害が発生しているのであって、このような損害は、前記虚偽記載と相当因果関係があると主張する。 そして、本件虚偽記載が発覚したことで、信用毀損等が生じ、投資者が保有する株式を売却する行動に出ること(以下「ろうばい売り等」と いう。)は、通常生じ得ることであって、被告東芝においても予見可能であるから、ろうばい売り等から生ずる株価の下落についても虚偽記載という不法行為によって通常生ずる損害というべきである。 (イ いう。)は、通常生じ得ることであって、被告東芝においても予見可能であるから、ろうばい売り等から生ずる株価の下落についても虚偽記載という不法行為によって通常生ずる損害というべきである。 (イ) これに対し、被告東芝は、ろうばい売り等から生ずる株価の下落は、会社の業績悪化や事故による株価下落と同様に、株主が一般的にその地 位に基づいて被る損失であるから、虚偽記載と相当因果関係がないものとして、賠償の対象となる損害から控除されるべきである旨を主張する。 しかしながら、被告株式が多数の投資者によって保有される上場株式であることからすれば、本件有価証券報告書等の虚偽記載及びその発覚によって信用毀損や過剰反応等が生じ、被告株式が値下がりすることは、 通常予想される事態であるから、このような株価下落についても、有価証券報告書等の虚偽記載という不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 したがって、被告東芝の前記主張は採用することができない。 エ小括 以上によれば、本件虚偽記載と相当因果関係のある損害は、高値取得分及びろうばい売り等から生ずる損害であるといえる。そして、前記損害は、本件虚偽記載が発覚して株価が下落する過程で顕在化し、その下落分に反映されるものと考えられる。 そうすると、損害の算定に当たっては、下落分を把握する必要があり、 まず、①虚偽記載発覚後の株価の推移を見て、その前後の株価の下落のう ち、虚偽記載と因果関係のある株価下落の時的範囲(始期及び終期)を確定する(後記⑶)。次に、②前記①の時的範囲の株価下落に、市場要因など、虚偽記載と無関係な要因によると認められる下落分がある場合には、その下落分は相当因果関係のある損害とはいえないから、これを控除する(後記⑷)。さらに 、②前記①の時的範囲の株価下落に、市場要因など、虚偽記載と無関係な要因によると認められる下落分がある場合には、その下落分は相当因果関係のある損害とはいえないから、これを控除する(後記⑷)。さらに、③本件虚偽記載は継続的に行われて累積して増加しており、 取得時期によって虚偽記載の程度は異なるから(虚偽記載発覚時に取得時期が近いほど虚偽記載部分は増加するから)、それに応じた修正を行う必要がある(後記⑸)。また、④原告らが処分した被告株式の中には、取得時期及び処分時期によっては、処分単価が取得単価を上回るものなどがあるから、投資者が虚偽記載によって被った損害について、相当因果関係の見 地等から、取得単価と処分単価を考慮して損害額を認定する必要がある(後記⑹)。 以上を踏まえて損害額を検討するが、高値取得分及びろうばい売り等が株価下落分に与えた程度は、その性質上、正確に把握することは困難なものである上、本件では複数期にわたって内容の異なる虚偽記載がされてお り、被告株式の取得時期に応じて高値取得分は異なり、また、ろうばい売り等による株価下落への影響も異なるため、株価下落分の把握は極めて困難というべきであって、前記損害は、損害の性質上その額を立証することが極めて困難なときに当たるから、民訴法248条を適用して、相当な損害額を認定するのが相当である。 ⑶ 本件虚偽記載と因果関係のある株価下落の時的範囲ア認定事実被告株式の株価の推移等は、前提事実⑷~⑹、⑼によると、以下のとおりである。 (ア) 被告東芝は、平成27年4月3日、工事進行基準案件に係る会計処理 の適正性を検証することを目的として特別調査委員会を設置することを 公表し、同日以降、インフラ工事の一部で不適切な会計処理があった可能性 年4月3日、工事進行基準案件に係る会計処理 の適正性を検証することを目的として特別調査委員会を設置することを 公表し、同日以降、インフラ工事の一部で不適切な会計処理があった可能性があることが報道され、同日時点で512.4円であった被告株式の株価は、翌取引日の同月6日には487.4円に下落した。 (イ) その後、平成27年4月中、株価は478.6円から495.8円の間で推移したが、同年5月8日、特別調査委員会の調査の結果、更なる 調査が必要であるとして第三者委員会を設置すること及び平成26年度通期の業績予想は未定とし、平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を無配とすることが公表されたところ、同年5月8日時点で483.3円であった株価は、翌取引日の同月11日に403.3円まで下落した。 (ウ) 平成27年7月4日に、被告東芝の不適切会計が1500億円超に拡大する可能性が高いことが報道され、同月16日、株価は369.3円にまで下落した。他方で、同月20日には、本件調査報告書と共に過年度修正額が合計1562億円となることが公表され、同年8月18日には、過年度修正額が568億円追加されることが公表されたが、株価は、 同月31日(第176期の有価証券報告書提出期限日)には、384円にまで回復した。 (エ) 被告株式の株価は、平成27年9月以降、再び下落し、本件訂正報告書が提出された同月7日には352.7円に、被告株式が特設注意市場銘柄に指定された同月15日には309円にまで下落し、同月16日以 降、本件訂正報告書提出の1か月後の同年10月7日までは、291. 9円(同年9月29日)から323.3円(同月17日)の間で推移し、本件訂正報告書提出から1か月を経過した後の同年10月8日以降、同月中は 件訂正報告書提出の1か月後の同年10月7日までは、291. 9円(同年9月29日)から323.3円(同月17日)の間で推移し、本件訂正報告書提出から1か月を経過した後の同年10月8日以降、同月中は329.3円から356.1円の間で推移した。 イ検討 前記認定事実によれば、本件虚偽記載の原因となった不適切会計の可能 性が公表された平成27年4月3日(512.4円)から、本件訂正報告書が提出された後1か月以内で最も値を下げた同年9月29日(291. 9円)までは、本件虚偽記載の公表に反応して株価が形成されたものと認められる。 したがって、本件虚偽記載公表前後の株価下落分のうち、本件虚偽記載 と相当因果関係のある下落の始期は平成27年4月3日、終期は同年9月29日と認められ、前記期間の下落分は220.5円(512.4円-291.9円)である。 ⑷ 本件虚偽記載と無関係な要因によると認められる下落分本件虚偽記載と無関係な要因によると認められる下落分として、市場全体 の傾向による下落分について検討する。 ア認定事実市場全体の傾向による下落分に関しては、顕著な事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 (ア) 日経平均株価は、平成27年4月3日の終値が1万9435円08銭 であったのに対し、同年9月29日の終値が1万6930円84銭であり、この間に約13%下落した。この株価下落に関連して、電気機器業界の下落が目立ち、中国景気の急減速等の市場要因によるものであるとの報道が同年7月15日にされた。(乙Aア26、49)(イ) 被告東芝の属する大手電機・重電産業において、被告東芝同様に中国 向け売上比率の高いパナソニック、三菱重工、シャープ、三菱電機、日立の5社 年7月15日にされた。(乙Aア26、49)(イ) 被告東芝の属する大手電機・重電産業において、被告東芝同様に中国 向け売上比率の高いパナソニック、三菱重工、シャープ、三菱電機、日立の5社(以下「電機産業5社」という。)の株式の株価は、平成27年4月3日から同年9月29日までの間に、別紙11電機産業5社の株価推移表1及び表2記載のとおりに変動し、平均して約29%下落している。(乙Aア50~54) イ検討 前記認定事実によれば、被告株式のみならず、日経平均株価や電機産業5社についても、平成27年4月3日と同年9月29日の株価を比較すると、下落傾向にあったものと認められる。 そして、この頃、中国景気の急減速等の市場要因によって電気機器業種の株価の下落が目立つ等と報道されており、中国向け売上比率の高い被告 東芝や電機産業5社の株価の下落は、前記市場要因の影響を受けたものとうかがわれるのであって、本件虚偽記載の公表前後の株価下落には、本件虚偽記載とは無関係な市場要因の影響による部分もあると考えられる。 そこで、かかる市場要因の影響についてみると、平成27年4月3日から同年9月29日までの被告東芝と電機産業5社の株価の下落率は別紙 11表2のとおりであって、下落の開始時期は異なる上(同別紙表1参照)、被告株式と電機産業5社の株価が前記期間を通じて連動しているとはいえないが、6月以降は概ね共通した上昇、下落の傾向を示している。もっとも、このうちシャープについては、平成27年5月の中期経営計画の公表が市場の失望売りを招くなどした点もあって、他4社よりも下落率が高 くなった可能性も否定することはできないから(弁論の全趣旨)、同社を除く他4社の下落率(平均25.8%)等を考慮し、被告東芝の株価下 の失望売りを招くなどした点もあって、他4社よりも下落率が高 くなった可能性も否定することはできないから(弁論の全趣旨)、同社を除く他4社の下落率(平均25.8%)等を考慮し、被告東芝の株価下落(43.0%)のうち、市場要因の影響は、本件虚偽記載の公表前後の株価下落分のうちの60%を占めるものと認めるのが相当である。 ⑸ 取得時期に応じた修正 ア本件虚偽記載は、第171期、第173期及び第174期有価証券報告書においてされたものであるところ、有価証券報告書の提出が継続して行われることによって虚偽記載が累積し、その影響が増大することを考慮すると、被告株式の取得時期に応じた虚偽記載公表後の株価下落に与えた影響は、次のとおりとみるのが相当である。 (ア) 平成22年6月24日(第171期有価証券報告書の提出日翌日)か ら平成24年6月22日(第173期有価証券報告書の提出日)までの間に被告株式を取得した場合 30%(イ) 平成24年6月23日(第173期有価証券報告書の提出日翌日)から平成25年6月25日(第174期有価証券報告書の提出日)までの間に被告株式を取得した場合 60% (ウ) 平成25年6月26日(第174期有価証券報告書の提出日翌日)から平成27年4月3日(対象期間の期末)までの間に被告株式を取得した場合 100%イ原告らの主張について原告らは、被告株式を取得した後の虚偽記載に関しても被告東芝に対す る損害賠償請求が認められるべきである旨主張する。 しかし、株主は、自らが構成員となった会社において執行機関による不正会計等の不法行為が行われないよう注意を払い、取締役の選解任その他を通じて、会社の不正会計による損害の発生を未然に防止することが求められる立場にある上 が構成員となった会社において執行機関による不正会計等の不法行為が行われないよう注意を払い、取締役の選解任その他を通じて、会社の不正会計による損害の発生を未然に防止することが求められる立場にある上、取締役らが不正会計を行った場合には、株主代表訴 訟により取締役らに対して損害賠償請求をし、会社の損害を回復することを通じて、株主の持分価値に係る損害を回復することが予定されているから、会社法上、株主が、会社に対して、自らが株主である間にされた虚偽記載に関して直接請求することは予定されていないというべきである。 そうすると、株主が株式を取得した後に、会社が虚偽記載を行った場合、 これによって株価が下落したとしても、株主は会社に対して直接にその下落分の損害賠償請求をすることはできないと解するのが相当であり、原告らの前記主張は採用することができない。 ⑹ 取得単価及び処分単価による修正ア相当因果関係の見地からの修正 原告らの損害は、高値取得分を含む価額により取得した被告株式を平成 27年4月3日より後に処分することで現実化する(前記⑵、⑶)。したがって、1株当たりの損害額としては、原則として取得単価から処分単価を控除した金額となるというべきであるが、相当因果関係の見地から、以下のとおり修正することが相当である。 なお、本件においては、前記⑵アで説示したとおり、原告らにおいて、 本件虚偽記載がなければ被告株式を取得することはなかった関係にあるとは認められないから、被告株式の取得及び売却に要した取引諸経費は、本件虚偽記載と相当因果関係のある損害であるとは認められず、取得単価及び処分単価の算定に当たっても、取引諸経費は除外して検討するのが相当である。 イ取得単価の修正本件で損害賠償の対 本件虚偽記載と相当因果関係のある損害であるとは認められず、取得単価及び処分単価の算定に当たっても、取引諸経費は除外して検討するのが相当である。 イ取得単価の修正本件で損害賠償の対象となる算定対象株式は、平成27年4月3日以前に取得されたものであるが、取得単価が同日の株価である512.4円よりも高額な場合、その差額は本件虚偽記載と無関係に上昇していたものであるから、本件虚偽記載と相当因果関係がある損害とはいえない。したが って、この場合、取得単価からではなく、512.4円から控除することが相当である。 他方、取得単価が512.4円よりも低額な場合についても、その差額は本件虚偽記載と無関係に下落していた結果であるから、本件虚偽記載と相当因果関係がある損害とはいえない。したがって、この場合、512.4円 ではなく、取得単価から控除することが相当である。 ウ処分単価の修正処分単価が291.9円(本件虚偽記載に起因する最も値下がりした株価)を超える場合、原告らの損害は現実化したものに限られるから、291.9円ではなく、これを上回る処分単価を基準として損害を算定すべき である。したがって、この場合、291.9円ではなく、処分単価を控除す ることが相当である。 他方、処分単価が291.9円を下回る場合、その差額は本件虚偽記載と無関係に下落していた結果であるから、処分単価ではなく、291.9円を基準として損害を算定すべきである。したがって、この場合、処分単価ではなく、291.9円を控除することが相当である。 エ被告東芝の主張について被告東芝は、前記第2の4⑸(被告東芝の主張)ウ(ウ)bのとおり、被告株式の株価の回復をもって、その株価上昇分は損害額から控除すべきである旨主張す 当である。 エ被告東芝の主張について被告東芝は、前記第2の4⑸(被告東芝の主張)ウ(ウ)bのとおり、被告株式の株価の回復をもって、その株価上昇分は損害額から控除すべきである旨主張する。 前記⑵で説示したとおり、本件虚偽記載と相当因果関係のある損害は、 損害の性質上その額を立証することが極めて困難であることから、民訴法248条により相当な損害額を認定することとして、本件虚偽記載と相当因果関係がある株価下落の始期と終期を定め、その株価の差額を算定した上、その損害の算定に当たって、取得単価と損害が現実化した処分単価をも考慮して、本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲を求め ることとした。以上のような民訴法248条による損害の認定方法は、推計として合理性を有するものであり、前記⑷及び前記アで説示したとおり、それ以外の要因による株価の下落や株式取得時期による調整を経て損害額を算定していることからすると、このような方法による場合には、取得自体損害を認める場合とは異なり、投資者において、株価下落分の全額に ついて賠償を受けられることを期待しつつ、株式を売却せずに保有し続けることができる結果にはならない。 したがって、被告株式の株価の回復による株価上昇分を損害額から控除する必要があるとはいえず、被告東芝の前記主張を採用することはできない。 オまとめ 以上の取得単価及び処分単価における修正をまとめると、本件虚偽記載と相当因果関係がある株価の下落の範囲を求める算式は、以下のとおりである(ただし、その算出額がマイナスになる場合、0とする。)。なお、後記⑺オのとおり、取得単価は、損害賠償請求の対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)中の株式取得数に対する約定金額 る(ただし、その算出額がマイナスになる場合、0とする。)。なお、後記⑺オのとおり、取得単価は、損害賠償請求の対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)中の株式取得数に対する約定金額の 合計を、同期間中の株式取得数の合計で除することによって算出することが相当である。 (ア) 取得単価<512.4円、かつ、処分単価<291.9円の株式:取得単価-291.9円(イ) 取得単価<512.4円、かつ、処分単価≧291.9円の株式 :取得単価-処分単価(ウ) 取得単価≧512.4円、かつ、処分単価<291.9円の株式:512.4円-291.9円(エ) 取得単価≧512.4円、かつ、処分単価≧291.9円の株式:512.4円-処分単価 ⑺ 算定対象株式の範囲及び特定方法についてア期間による範囲の限定(ア) 有価証券報告書等に虚偽記載があったことにより被る損害は、①虚偽記載のある有価証券報告書等が公衆の縦覧に供されてから、虚偽記載があり、又はそのおそれがあることが発覚するまでに取得した株式を、② その発覚した以降に処分した際に現実化するものと解される。 これを本件についてみると、被告東芝が虚偽記載のある第171期有価証券報告書を提出したのは平成22年6月23日における取引終了後であり、被告東芝が平成27年4月3日に「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」と題する書面を公表した時点で本件有価報告書等に本件 虚偽記載が存在するおそれが発覚したものといえる。 したがって、算定対象株式は、①平成22年6月24日以降、平成27年4月3日までに取得され、かつ、②同日までに未処分であることを要するというべきである。 (イ) これに対し、原告らは、(a)不正な会計処理が行われ 対象株式は、①平成22年6月24日以降、平成27年4月3日までに取得され、かつ、②同日までに未処分であることを要するというべきである。 (イ) これに対し、原告らは、(a)不正な会計処理が行われた期間は有価証券報告書の公表前も含まれるから、平成22年6月23日よりも前に取得 された被告株式も損害賠償請求の対象となること、(b)平成27年12月21日までの間、本件虚偽記載について十分な情報開示が行われないまま虚偽記載の公表が一連の行為として行われたから、少なくとも同日までに取得された被告株式は、損害賠償請求の対象となることを主張する。 しかしながら、前記(a)については、被告東芝の不法行為は、有価証券 報告書等の提出に当たり、その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠り、本件虚偽記載のある本件有価証券報告書等を提出し、公衆の縦覧に供したというものであり、有価証券報告書等の継続開示制度の趣旨が、投資者に投資の判断材料を提供する点にあることに照らせば、算定対象株式は、本件虚偽記載を前提に投資判断をし た結果として取得されたものに限られるというべきであるから、平成22年6月23日以前に取得された株式に生じた株価下落は、前記不法行為と相当因果関係のある損害とはいえない。 また、前記(b)については、被告東芝は、平成27年4月3日、平成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理につい て調査を要する事項が判明したとして特別調査委員会を設置すること等を書面により公表し、同書面には被告東芝の業績に影響を及ぼす可能性がある旨が記載されていたこと、同日から、被告東芝につき、インフラ工事の一部で不適切な会計処理があった疑いがある、平成25年度の会計処理では、工事費用を少なく見積もって利益 業績に影響を及ぼす可能性がある旨が記載されていたこと、同日から、被告東芝につき、インフラ工事の一部で不適切な会計処理があった疑いがある、平成25年度の会計処理では、工事費用を少なく見積もって利益を実際より多く計上して いた可能性があるなどと報道されたことが認められる(前提事実⑷イ)。 これらの事情によれば、投資者は、同日中には被告東芝の過年度の有価証券報告書等に虚偽記載がある疑いがあることを認識し得たということができる。そうすると、翌日の同月4日以降に取得した被告株式については、今後の株価の動向が虚偽記載による影響を受ける可能性があることを認識した上で、あえて株価下落のリスクを引き受けて同株式を取得 したものと認められる。したがって、その後の被告株式の株価の下落は、同株式を取得した時点で同株式に内在しており、かつ、認識されていたリスクが現実化したにすぎないから、この株価の下落に係る損害と虚偽記載との間には相当因果関係が認められない。 したがって、原告らの前記主張は採用することができない。 (ウ) 以上によれば、算定対象株式については、①平成22年6月24日から平成27年4月3日までに取得され、かつ、②同日の取引終了時において未処分であったことが必要となる。 この点に関し、本件有価証券報告書等が公衆の閲覧に供された時点で既に被告株式を保有し、かつ、当該時点の後にも被告株式を取得し、そ の後、本件虚偽記載が存在するおそれがあることが発覚するまでの間に被告株式の一部を処分し、他の一部は平成27年4月3日まで未処分であったような場合には、処分した株式(算定対象株式ではない株式)と未処分の株式(算定対象株式)を区別し、特定する必要が生じる。 イ算定対象株式の特定方法について 原告らは、算 未処分であったような場合には、処分した株式(算定対象株式ではない株式)と未処分の株式(算定対象株式)を区別し、特定する必要が生じる。 イ算定対象株式の特定方法について 原告らは、算定対象株式の特定に当たっては、先入先出法を用いるべきであって総平均法を適用する理由はなく、また、現物取引と信用取引とを区別することが合理的である旨主張する。 そこで検討すると、株式は、細分化された割合的単位によって把握される会社の構成員たる地位であって、個別の株式に個性はない。特に、被告 株式は、上場廃止となるまで振替株式であり、株券が発行されず、特定の 株券に表章された特定の株式が売買される関係にはなく、株式の取得及び処分は、その株式の持分割合の増減として把握されていた。このような被告株式の性質からすれば、個々の取得と処分とを紐付けせず、一定期間内の取得と処分とを割合的に捉えて取得単価を算定するという総平均法の考え方を算定対象株式の特定に用いることが相当である(ただし、前記⑸ のとおり、取得時期に応じた修正については行う必要がある。)。 また、現物取引と信用取引は、投資資金の調達方法が異なるものの、いずれも株式売買の損益は投資者に帰属するから、損害額の算定において算定対象株式を特定するに当たっては、現物取引と信用取引を区別する必要はないというべきである。 ウ算定対象株式の数量について前記イによる総平均法の考えを用いて算定対象株式の数量を算定する場合、次の計算式で算出するのが合理的である。すなわち、(ア)損害賠償請求の対象期間の終期(平成27年4月3日時点)の保有株式数(未処分株式数)〔後記(計算式)の⑥(B~D)〕に、(イ) 対象期間中(平成22年6 月24日から平成27年4月3日まで)の取 賠償請求の対象期間の終期(平成27年4月3日時点)の保有株式数(未処分株式数)〔後記(計算式)の⑥(B~D)〕に、(イ) 対象期間中(平成22年6 月24日から平成27年4月3日まで)の取得株式数〔後記(計算式)の②〕を乗じ、(ウ)対象期間の始期(平成22年6月24日時点)の保有株式数(損害賠償請求の対象外のもの)〔後記(計算式)の⑥(A)〕と対象期間中の取得株式数〔後記(計算式)の②〕の合計で除して得た数量を、算定対象株式の数量とするのが相当である。なお、以下の計算式の符号は、 別紙12(裁判所による各原告についての損害算定表)の各原告の算定対象株式及び損害額を算定する表1から3までの符号に対応したものである。 (計算式)算定対象株式の数量⑦=終期の未処分株式数⑥(B~D)×対象期間中 の取得株式数②/(始期の保有株式数⑥(A)+対象期間中の取得株式数 ②)原告らに係るものについてみると、終期の未処分株式数は別紙12の表1の⑥(B~D)欄、始期の保有株式数は同表⑥(A)欄、対象期間の取得株式数は同表②欄記載のとおりであり、これを基に計算をすると、算定対象株式の数量は、同表⑦欄記載のとおりとなる。 エ損害賠償請求の対象期間後に処分した株式における取得時期ごとの算定対象株式の割合前記のとおり、有価証券報告書等に虚偽記載があったことにより被る損害は、有価証券報告書等に虚偽記載があることが発覚した以降に処分した際に現実化するものと解されるところ、当該時期に処分した被告株式には、 損害賠償請求の対象外のもの(平成22年6月23日以前に取得したもの又は平成27年4月4日以降に取得したもの)が含まれるとともに、被告株式を取得した時期に応じて虚偽記載の影響の程度も異なるから、損害の算 償請求の対象外のもの(平成22年6月23日以前に取得したもの又は平成27年4月4日以降に取得したもの)が含まれるとともに、被告株式を取得した時期に応じて虚偽記載の影響の程度も異なるから、損害の算定に当たって、処分株式数に対する取得時期(別紙12の対象期間(B)ないし(D))ごとの算定対象株式の割合を算出する必要がある。 原告らは、損害賠償請求の対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)後、遅くとも令和5年12月20日の上場廃止に伴う株式併合までに保有していた被告株式を全て処分しており、各原告の被告株式の処分総数(平成27年4月4日以降に取得した株式の処分数も含む。)は、別紙12表1⑤(E)欄記載のとおりである。 そして、損害賠償請求の対象期間後に処分した株式に対する取得時期ごとの算定対象株式の割合は、以下の計算式により求めることができる。その結果は、別紙12表2⑧欄記載のとおりである。 (計算式)対象期間後に処分した株式に占める取得時期ごとの算定対象株式の割 合⑧=算定対象株式の数量⑦/対象期間後の処分総数⑤(E)×対象期間 の(B)~(D)の取得数①(B)、(C)又は(D)/対象期間内の取得数合計②オ損害賠償請求の対象期間中に取得した株式の取得単価の算出損害賠償請求の対象期間中(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)に取得した株式の取得単価(平均単価)は、以下の計算式によ り求めることが相当である。その結果は、各原告につき別紙12表1④欄記載のとおりである。 (計算式)取得単価④=対象期間中の取得株式数に対応する取得額合計③/対象期間中の取得株式数の合計② カ株式の処分ごとの1株当たりの損害額前記⑹で説示したところを踏まえ、取得単 (計算式)取得単価④=対象期間中の取得株式数に対応する取得額合計③/対象期間中の取得株式数の合計② カ株式の処分ごとの1株当たりの損害額前記⑹で説示したところを踏まえ、取得単価及び処分単価を修正して、修正取得単価⑰と修正処分単価⑯を算出し、以下の区分に従い、株式の処分(売却)ごとに1株当たりの損害額を算出する。その計算結果は、各原告につき、別紙12表3⑱欄記載のとおりである。なお、修正処分単価が 取得単価を上回る場合、1株当たりの損害額は0円とする。 (ア) 取得単価④<512.4円、かつ、処分単価⑮<291.9円の株:取得単価④-291.9円(イ) 取得単価④<512.4円、かつ、処分単価⑮≧291.9円の株式:取得単価④-処分単価⑮ (ウ) 取得単価④≧512.4円、かつ、処分単価⑮<291.9円の株式:512.4円-291.9円(エ) 取得単価④≧512.4円、かつ、処分単価⑮≧291.9円の株式:512.4円-処分単価⑮キ本件虚偽記載と相当因果関係のない市場要因による株価下落分の控除 前記⑷のとおり、本件虚偽記載と相当因果関係のない市場要因による株 価下落分は、本件虚偽記載の公表前後の株価下落分の60%であると認められる。したがって、前記カで求めた1株当たりの損害額から、前記60%を控除する。そこで、原告ごとの1株当たり損害額(別紙12表3⑲欄)に市場要因による株価下落分を控除するため40%を乗ずることとし、その計算結果は、同表⑲欄(市場要因控除後)記載のとおりである。 ク取得時期に応じた影響額分の反映前記⑸のとおり、被告株式の取得時期に応じて原告らに生じた損害額は異なると考えられ、本件有価証券報告書等の縦覧期間ごとに損害を算定する必 おりである。 ク取得時期に応じた影響額分の反映前記⑸のとおり、被告株式の取得時期に応じて原告らに生じた損害額は異なると考えられ、本件有価証券報告書等の縦覧期間ごとに損害を算定する必要がある。そこで、前記エで求めた損害賠償請求の対象期間後に処分した株式に対する取得時期ごとの算定対象株式の割合(別紙12表3⑧ (B)~(D))に、前記⑸アで検討した取得時期に応じた虚偽記載の影響の割合(対象期間(B)につき30%、対象期間(C)につき60%、対象期間(D)につき100%)を乗じたものを取得時期別に算出し、これを合計したものを、取得時期を考慮した調整率(別紙12表2⑪)とする。 ケ小括 各原告につき、株式の処分数(別紙12表3⑬)に、市場要因控除後の1株当たり損害額(同表⑲)及び取得時期による調整率(同別紙表2⑪)を乗じ、取得時期調整後損害額を算定する。以上の計算過程を経て得られた取得時期調整後損害額は、同別紙表3⑳欄記載のとおりである。 ⑻ 各原告の損害算定等に係る補足説明等 以下では、別紙12で判断した各原告の損害の有無及び損害額に当たって検討した個別事情について補足して説明する。 ア取引による取得時期等が不明である被告株式について別紙8によれば、取引履歴上、他の証券会社の証券口座から被告株式を移管したこと等から「預り」等と記載されているものの、原告らが損害賠 償の請求対象期間内(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで) に取得したか否かが不明な株式が存在しており、具体的には、原告番号17(平成25年10月9日)及び原告番号180(平成23年1月19日)、原告番号187(平成25年3月12日)の各「預り」ないし「入庫」については、各原告が被告株式を取得した時期 的には、原告番号17(平成25年10月9日)及び原告番号180(平成23年1月19日)、原告番号187(平成25年3月12日)の各「預り」ないし「入庫」については、各原告が被告株式を取得した時期を認めるに足りる的確な証拠はない。これらの被告株式の取得については、損害の算定に当たっては、 損害賠償請求の対象期間の開始前(平成22年6月23日以前)に取得したものと扱うことが相当である。 イ取引履歴の取得可能時期以前に明らかに株式の売買があったと認められる場合の扱いについて別紙8によれば、取引履歴を取得可能な限度である時期まで遡って調査 した結果、損害賠償請求の対象期間の開始前(平成22年6月23日以前)から、現物取引の株式売却又は信用取引の信用決済が存在するものの、これに先立って行われる株式購入及び信用建が記録されていないものがあり、具体的には、原告番号48、81、102、116、126及び154の各取引が挙げられる。これらの原告の取引については、株式売却又は 信用決済に対応した株式購入及び信用建が存在したことは明らかであるから、処分数に対応した株式購入及び信用建を認定し、これを別紙8において「裁判所認定」と付記している。 ウ原告番号66の平成25年1月29日付け現物取引について大和証券に対する調査嘱託の結果によれば、取引履歴上、原告番号66 は、平成25年1月29日に被告株式2000株を売却して81万2850円を支払った旨の記載があると認められるところ、同原告が現物取引のみを行っており、信用取引を行ったとはうかがわれないことを考慮すれば、81万2850円を支払ったとの記載は明らかに誤記と認められ、同額を売却代金として取得したものと認める。 エ原告番号125の平成27年4月3日時点の保 とはうかがわれないことを考慮すれば、81万2850円を支払ったとの記載は明らかに誤記と認められ、同額を売却代金として取得したものと認める。 エ原告番号125の平成27年4月3日時点の保有株式数について 別紙12の原告番号125に係る記載のとおり、取引履歴によれば、原告番号125の保有株式数は、損害賠償請求の対象期間の末日(平成27年4月3日時点)でマイナス6000株とされており、同日以前に株式の購入があったとうかがわれるものの、同原告が株式を取得した時期や取得株式数を認めるに足りる的確な証拠はないから、同原告が同日時点で被告 株式を保有していたとは認められない。 オ原告番号155の平成26年6月30日付け株式取得について別紙8の原告番号155に係る記載のとおり、同原告は、平成26年6月30日に被告株式3万株を取得しているところ、この株式の取得は、同原告が勤務先の会社の取締役を退任することに伴い、同会社の平成26年 6月2日付け株主総会決議において、同月1日の被告株式3万株の終値時価が3345万円であることを前提に役員退職金の支払に代えて譲渡されたものと認められる(甲イ155の1、弁論の全趣旨)。 しかしながら、本件各証拠によっても、同原告に対して役員退職金の支払に代えて被告株式が譲渡されることとなった経過や理由は不明であっ て、同原告が虚偽記載のある本件有価証券報告書等の記載を信頼して被告株式を取得したとは認められないから、前記3万株は、算定対象株式に該当するものとはいえない。 カ原告番号156の平成26年5月13日付け株式取得について別紙8の原告番号156に係る記載のとおり、同原告は、平成26年5 月13日に被告株式2000株を取得しているところ、この株式は、バー 番号156の平成26年5月13日付け株式取得について別紙8の原告番号156に係る記載のとおり、同原告は、平成26年5 月13日に被告株式2000株を取得しているところ、この株式は、バークレイズ・バンク・ピーエルシーが発行する他社株転換条項付円建社債の償還に代えて取得されたものであり、同社債については、満期償還日が平成26年5月1日、行使価格が平成25年5月2日の終値517円、償還判定日(平成26年4月16日)の対象株式終値は421円とされていた ことが認められる(甲イ156の1、弁論の全趣旨)。 しかしながら、前記社債の契約書や目論見書は見当たらず、本件各証拠によっても、前記社債の償還による被告株式の取得等に係る詳細な条件は不明であるから、同原告が本件虚偽記載を信頼して投資判断をした結果、被告株式の取得に至ったものと認めることはできず、前記2000株は、算定対象株式に該当するものとはいえない。 ⑼ 弁護士費用について被告東芝の不法行為による損害が認められる原告らについては、同不法行為と相当因果関係ある弁護士費用として、本件事案の内容及び性質、本件訴訟の審理経過等を考慮して、取得時期調整後損害額の10%に相当する損害額を認めるのが相当であり、これを加算した後の損害額は、別紙12表3の ㉑欄の弁護士費用加算後の損害額記載のとおりである。 ⑽ 損害額合計以上によれば、被告東芝の不法行為に基づく損害額の合計は、別紙2の「原告番号及び氏名」欄記載の各原告に係る同別紙の「損害元金」欄記載のとおりの金額となる。 ⑾ 遅延損害金について不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に、何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解される(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9 金額となる。 ⑾ 遅延損害金について不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に、何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解される(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。 そして、原告らが被った本件虚偽記載に係る損害は、本件虚偽記載が発覚 した後、被告株式を処分して初めて現実化して発生したといえるから、損害の発生は処分時であるというべきである。そうすると、被告株式の処分時から遅延損害金の発生が認められ、利率については、処分日が令和2年3月31日以前である場合は平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分を、令和2年4月1日以降である場合は民法所定の年3%を適用すべき であり、遅延損害金の起算日については、処分日が平成27年5月7日以前 である場合は、原告らが遅延損害金の起算日として主張する同月8日とすることが相当である。 したがって、被告東芝は、原告らに対し、各原告に係る別紙2の「損害元金」欄記載の各金員に対する同別紙の「損害金起算日」欄記載の各日から各支払済みまで「利率」欄記載の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 第4 結論以上によれば、別紙2認容額等一覧表の「原告番号及び氏名」欄記載の各原告の請求は、被告東芝に対し同別紙の「損害元金」欄記載の各金員及びこれに対する「損害金起算日」欄記載の各日から各支払済みまで「利率」欄記載の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、そ の余はいずれも理由がないから棄却し、別紙3棄却原告一覧表記載の各原告の被告らに対する請求は全部理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第4民事部 主文 ずれも理由がないから棄却し、別紙3棄却原告一覧表記載の各原告の被告らに対する請求は全部理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官谷口哲也 裁判官黒田吉人 裁判官佐藤克郎 (別紙の掲載省略)
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