平成29(ワ)29565 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年6月21日 東京地方裁判所
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判決文本文20,915 文字)

令和元年6月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第29565号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成31年4月9日判決主文 1 被告は,原告Aに対し,363万円及びこれに対する平成26年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,363万円及びこれに対する平成26年10月16日から支払済みまで年5分の 割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,302万5000円及びこれに対する平成26年10月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,484万円及びこれに対す る平成26年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告Aに生じた費用を25分し,その11を原告Aの負担とし,その余を被告の負担とし, 原告Bに生じた費用を25分し,その11を原告Bの負担とし,その余を被告の負担とし,原告Cに生じた費用を25分し,その12を原告Cの負担とし,その余を被告の負担とし,原告Dに生じた費用を50分し,その19を原告Dの負担とし,その余を被告の負担と し,被告に生じた費用を100分し,その11ずつを 原告らそれぞれの負担とし,その余を被告の負担とする。 7 この判決は,原告ら勝訴部分に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,650万円及びこれに対する平成26年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,650万円及びこれに対する平成26年10月16日から支払済みまで年5分の割合によ 円及びこれに対する平成26年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,650万円及びこれに対する平成26年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,585万円及びこれに対する平成26年10月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,780万円及びこれに対する平成26年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 原告らは,それぞれ,特殊詐欺グループに属し原告らの息子になりすました者からの電話を受け,緊急に金銭を必要としている事態にある旨を告げられその旨誤信して金員を指示されたとおりに振り込み,これを詐取されたところ,同グループに属するEが,指定暴力団稲川会(以下「稲川会」という。)の三次組織である習志野一家F組の構成員であり,その威力を利用して資金獲得行 為を行うについて当該詐欺をし,また,稲川会の事業の執行について当該詐欺をしたとして,稲川会の会長として同会を代表する被告に対し,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)31条の2本文又は民法715条1項による損害賠償請求権に基づき,原告らが詐取された金員相当額,慰謝料及び弁護士費用相当額の合計額並びにこれに対する 原告らが最後に詐欺に係る振込みをした日(最後の不法行為の日)から支払済 みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 1 争いのない事実(1) 被告は,暴力団である稲川会の会長であり,習志野一家F組は,稲川会傘下の三次組織であって,E,G,H(以下E,G及びHをまとめて「Eら」という。)は,いわゆるオレオレ詐欺の 争いのない事実(1) 被告は,暴力団である稲川会の会長であり,習志野一家F組は,稲川会傘下の三次組織であって,E,G,H(以下E,G及びHをまとめて「Eら」という。)は,いわゆるオレオレ詐欺の特殊詐欺グループ(以下「本件詐欺 グループ」という。)に属する者である。 (2) 平成25年6月17日,東京都公安委員会は,暴力団対策法3条の規定に基づき,稲川会(代表する者の氏名は被告)を同条に規定する暴力団として指定する旨を告示した(東京都公安委員会告示第199号)。 (3) Eらは,氏名不詳者らと共謀の上,平成26年9月28日から同年10月 3日にかけて,原告Aに対し,架け子役である氏名不詳者が原告Aの長男を装い,電話で,「お母さん,俺やけど,知り合いの女性を妊娠させてしまった。この女性の夫と弁護士から慰謝料請求された。示談金として100万円用意してほしい。」,「お母さん,俺やけど,相手の弁護士に払うお金が足りない」,「お母さん,今度は自分の弁護士への費用として,100万円が 必要となった。今度は半分くらいが戻ってくるから」等と虚偽の事実を申し向け,原告Aをして,原告Aの長男が至急現金を必要としているものと誤信させ,次のアからウまでのとおり,本件詐欺グループが管理する預金口座に合計300万円を振り込ませた。 ア平成26年9月28日 100万円 イ平成26年10月1日 100万円ウ平成26年10月3日 100万円(4) Eらは,氏名不詳者らと共謀の上,平成26年10月8日から同月16日にかけて,原告Bに対し,架け子役である氏名不詳者が原告Bの長男を装い,電話で,「もしもし,俺だけど」,「風邪をひいて急に熱が出た。帰る途中 にトイレに行きたくなって慌ててトイレに入ったら携帯と財布を落としてし ,架け子役である氏名不詳者が原告Bの長男を装い,電話で,「もしもし,俺だけど」,「風邪をひいて急に熱が出た。帰る途中 にトイレに行きたくなって慌ててトイレに入ったら携帯と財布を落としてし まい,携帯を修理に出したから番号が変わった」,「旦那さんのいる女の人に手を出して妊娠させてしまった。不倫が旦那さんにバレてしまい,裁判にかけると言っている。示談金として500万円を要求されている」,「誠意を見せないと裁判を起こされてしまう。自分で何とか50万はかき集めて用意した。100万でも200万でもいいから用意してくれないか」,「弁護 士料が高くなってしまった。後で返すからお金を用意してほしい,あと200万円貸してくれないか」等と虚偽の事実を申し向け,原告Bをして,原告Bの長男が至急現金を必要としているものと誤信させ,次のア及びイのとおり,本件詐欺グループが管理する預金口座に合計300万円を振り込ませた。 ア平成26年10月9日 200万円 イ平成26年10月16日 100万円(5) Eらは,氏名不詳者らと共謀の上,平成26年10月9日から同月16日にかけて,原告Cに対し,架け子役である氏名不詳者が原告Cの次男を装い,電話で,「お母さん,(次男の名前)だけど,今38度の熱がでちゃった」「お母さん,実は大変なことが起きているんだよ。実は付き合っている女の 人を妊娠させちゃった。検査の結果お腹の中の子は99パーセント自分の子らしい。女の人には旦那さんがいて,その旦那さんがとても怒っていて500万円請求された。でも弁護士さんが間に入ってくれて,なんとか250万円になった。お母さん250万円なんとかならないかな。」等と虚偽の事実を申し向け,原告Cをして,原告Cの次男が至急現金を必要としているもの と誤信さ 士さんが間に入ってくれて,なんとか250万円になった。お母さん250万円なんとかならないかな。」等と虚偽の事実を申し向け,原告Cをして,原告Cの次男が至急現金を必要としているもの と誤信させ,次のアからオまでのとおり,本件詐欺グループが管理する預金口座に合計250万円を振り込ませた。 ア平成26年10月9日 50万円イ平成26年10月9日 50万円ウ平成26年10月10日 50万円 エ平成26年10月10日 50万円 オ平成26年10月10日 50万円(6) Eらは,氏名不詳者らと共謀の上,平成26年9月8日から同月11日にかけて,原告Dに対し,架け子役である氏名不詳者が原告Dの三男を装い,電話で,「(三男の名前)だけど」,「携帯が使えなくなったから,新しい番号になった」,「すごい困ったことになった。知り合いの女性を妊娠させ てしまった。その女性は人妻なんだ。」,「相手の旦那が怒ってて示談をしなければならない。示談金と弁護士費用などに300万円ほど必要だけど助けてほしい。」,「今日中に150万円ほど支払って誠意を見せないと裁判沙汰になってしまう。」,「示談金はあと50万円で片付くけど,弁護士費用100万円を今日中に支払わなければならない」等と虚偽の事実を申し向 け,原告Dの三男が至急現金を必要としているものと誤信させ,以下のアからオまでのとおり,本件詐欺グループが管理する預金口座に合計400万円を振り込ませた。 ア平成26年9月9日 100万円イ平成26年9月9日 50万円 ウ平成26年9月10日 100万円エ平成26年9月11日 50万円オ平成26年9月11日 100万円(以下,前記(3)から(6)の各詐欺を併せて「本件各詐欺」という。) ウ平成26年9月10日 100万円エ平成26年9月11日 50万円オ平成26年9月11日 100万円(以下,前記(3)から(6)の各詐欺を併せて「本件各詐欺」という。) 2 争点 (1) Eは,本件各詐欺の当時,暴力団対策法31条の2本文所定の稲川会の指定暴力団員であったかア原告らの主張Eは,稲川会の指定暴力団員であった。 (ア) 暴力団対策法31条の2本文所定の指定暴力団員とは,暴力団対策 法9条本文によれば,指定暴力団等(暴力団対策法2条5号)の暴力団 員(暴力団対策法2条6号)であり,ここでいう暴力団員とは,暴力団対策法2条6号によれば,暴力団の構成員をいうところ,この構成員とは,団体に所属する者であると客観的に認められるものをいうのであって,構成員に当たるか否かは,単に当該団体の名簿に登載されていることなどのみから形式的に判断するのではなく,客観的事実を総合して実 質的に判断すべきものである。 (イ) そして,Eは,指定暴力団である稲川会傘下の三次組織である習志野一家F組の構成員であるから,稲川会の構成員に当たり,稲川会の指定暴力団員に当たる。 イ被告の主張 Eが稲川会の指定暴力団員であったことは否認する。 (ア) F組は,Fが組長であり,I,Jのみがその配下の組員であって,組の事務所はない。 (イ) Eは,Iの養子であり,その縁で,F組長の依頼に基づきF組員が本来であれば務めることになっていた直近上部の習志野一家事務所の当 番等を手伝っていたが,これを除けば,F組長との間に純粋に個人的な関係があるのみである。また,Eは,F組長との間で,いわゆるヤクザ世界の上下関係を形成する盃事も取り結んでいない。したがって,Eは,F組の構成員ではな が,これを除けば,F組長との間に純粋に個人的な関係があるのみである。また,Eは,F組長との間で,いわゆるヤクザ世界の上下関係を形成する盃事も取り結んでいない。したがって,Eは,F組の構成員ではないから,稲川会の指定暴力団員に当たらない。 (2) 本件各詐欺は,稲川会の威力利用資金獲得活動を行うについて(暴力団対 策法31条の2本文)されたものかア原告らの主張本件各詐欺は,稲川会の威力利用資金獲得活動を行うについてされたものであった。 (ア) 暴力団対策法31条の2本文所定の威力利用資金獲得行為における 「威力を利用して」とは,指定暴力団員が,当該指定暴力団に所属して いることにより,資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい,当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結びついている一切の場合をいうのであって,威力の利用方法に限定はないと解されるから,必ずしも不法行為の相手方に対してこのような威力を示すことは要件とならない。このことは,暴力的要 求行為を禁じるに当たって,暴力団対策法9条本文が相手方に対して威力を示すことを明文で規定しているのに対し,同法31条の2本文があえて相手方に対して威力を示すことを明文で規定していないことからも明らかである。 このような解釈から考えれば,資金獲得を行う組織の内部統制の維持 のために,組織の内部の者に対し,自らが指定暴力団員に所属していることを認識させた状態の下で,その影響力を利用して,指示,命令に従わずに裏切り行為をした場合には組織的な暴行,脅迫が加えられる可能性があることを認識させることによって,当該犯行グループの指示,命令ないし規律の実効性を高める方法で威力を利用する場合も,暴力団対 策法31条の した場合には組織的な暴行,脅迫が加えられる可能性があることを認識させることによって,当該犯行グループの指示,命令ないし規律の実効性を高める方法で威力を利用する場合も,暴力団対 策法31条の2本文にいう「威力を利用して」に当たる。 (イ) 特殊詐欺の事業としての要諦を充足するためには,暴力団としての影響力や便益を利用することが極めて有効である。まず,暴力団は,その特殊なネットワークから,犯罪をいとわない者を多く集めることができるため,役割が細分化され,多くの人員が必要な特殊詐欺の組織を構 築すること自体に,暴力団の影響や便益,すなわち威力が利用されているといえ,それが最も役立つのが,検挙のリスクが高い出し子の確保及び管理である。次に,特殊詐欺が犯罪であることは明白であり,犯罪であることを認識しながらも,これを上命下達の指揮系統の下に組織的に実行することは,合法的な通常の組織では当然困難である。この点,暴 力団組織においては,序列的擬制的血縁関係によって上位者が下位者を 包括的,全人格的に服従統制下に置いており,上位者の威力を背景とした指揮命令は絶対であって,下位者にこれを拒否する選択肢はないから,その構成員をして特殊詐欺に従事させることは,特殊詐欺の指揮系統の実効性を担保する上で,非常に有効である。そして,暴力団は組織化された暴力を背景とした威力を行使して資金獲得行為を行う組織であり, 暴力団組織の外部の者にとっても,その威力は畏怖の対象となるから,特殊詐欺に従事することとなった暴力団員以外の者に対する指揮系統の実効性を担保する上でも,暴力団の威力は極めて有効である。 (ウ) 本件において,Eは,本件詐欺グループに対し,出し子役を担う人材を手配,紹介し,自らが手配,紹介した出し子へ支払われる報酬の大 の実効性を担保する上でも,暴力団の威力は極めて有効である。 (ウ) 本件において,Eは,本件詐欺グループに対し,出し子役を担う人材を手配,紹介し,自らが手配,紹介した出し子へ支払われる報酬の大 部分を抜き取ることをもって,自らのいわゆるしのぎとしていた。また,Eは,勤め先を失い行き場所のなかったHを自宅に招き入れ,居候させ,また,Hを習志野一家の事務所当番に連れていき,F組の関係者として組の仕事をさせる等して面倒を見ていたほか,Hが出し子をするために事務所当番に来ることができないときは,Eが別の者を用意し,Hの事 務所当番を免除していた。すなわち,Eは,Hに対し,特殊詐欺を実行する上で重要な役割である出し子を行うように指示をし,出し子の仕事に専念させていたといえる。 この際,EとHとの間では,Hが暴力団組織幹部であるEの指示,命令に従わず,裏切り行為をした場合には組織的な暴力,脅迫が加えられ る可能性があることが暗黙の了解となっていたのであり,そうであるからこそ,HはEの指示に従っていたのである。このように,Eは,暴力団組織の幹部である自らの地位を利用して,行く当てのないHを自らが所属する暴力団組織の舎弟分として囲い込み,支配下に置くことにより,本件詐欺グループへ出し子として手配,紹介することを容易にし,また, E自身は一切手を汚さずに現金収入を得ることが可能となったのである。 このように,Eが暴力団組織幹部であったことは,Eによる資金獲得を容易にしていたといえるから,Eが暴力団の威力を利用して本件各詐欺をしたといわなければならない。 イ被告の主張本件各詐欺が稲川会の威力利用資金獲得活動を行うについてされたもの であったことは否認し又は争う。 (ア) 暴力団対策法9条は,暴力的 欺をしたといわなければならない。 イ被告の主張本件各詐欺が稲川会の威力利用資金獲得活動を行うについてされたもの であったことは否認し又は争う。 (ア) 暴力団対策法9条は,暴力的要求行為の禁止として,同条1号から27号までの行為類型を挙示し,暴力団員又は暴力団組織による刑法上の脅迫,恐喝又は強盗に至らないような事案(人の自由意思を制圧して自己の要求を通させようとするについて,明示の脅迫又は暴力的行為を 用いることなく,自己の所属する暴力団に対して人が持っている畏怖感を利用するような事案)を取り締まる規定である。暴対法31条の2の規定もその延長線上にあるから,同条の対象となる威力利用行為は,暴対法9条各号が規定する行為類型に限られると解釈すべきであるし,暴力団対策法31条の2本文の威力利用資金獲得行為に係る「威力を利用 して」は,被害者に対して威力を行使することを意味すると限定的に解釈すべきである。 (イ) そうすると,本件では,Eは本件各詐欺の被害者とはまったく接触していないのであるから,暴力団対策法31条の2本文にいう「威力を利用した」に当たるということはできない。このように解釈しなければ, 暴力団所属組員数名が共謀して敢行した財産的犯罪の全てが「威力利用資金獲得行為」に該当するという不当な結論になる。なお,EとHとの関係は親睦的であり,EがF組の威勢を利用してHに対し振込詐欺の出し子役を強制強要し,離脱すれば制裁を加えるというような関係になかったことは明らかである。 (3) 被告は,本件各詐欺により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若 しくは事業の遂行のための資金を得ることがない(暴力団対策法31条の2第1号)かア被告の主張被告は,本件各詐欺により直接 詐欺により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若 しくは事業の遂行のための資金を得ることがない(暴力団対策法31条の2第1号)かア被告の主張被告は,本件各詐欺により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得ることがない。 (ア) Eは,本件各詐欺により得た利得金をすべて自己において費消したのであって,F組の組長は,Eが本件各詐欺に関与していたことさえ知らなかったし,何らの経済的利得も直接間接を問わず収受していない。 (イ) また,F組は三次組織にすぎないから,Eが,養父であるIやF組長を飛び越えて,習志野一家や稲川会に資金を上納することはあり得な い。 イ原告らの主張被告が本件各詐欺により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得ることがないことは否認する。 稲川会には上納金制度があり,被告は,同会の構成員が特殊詐欺を含む 不法行為により資金を獲得し,このような資金を上納金の原資としていることを認識,認容し,これを黙認していた。 (4) 本件各詐欺は,稲川会の事業の執行について(民法715条1項)されたものかア原告らの主張 本件各詐欺は,稲川会の事業の執行についてされたものであった。 暴力団の事業には,詐欺的手法を駆使した資金獲得活動も含まれるところ,このような活動は,暴力団の多数の構成員が構成員であるという立場を利用して組織的に実行されるものであって,かつ,その収益が上納金等の形で上部組織に取り込まれているという上納金制度の存在を背景 に,暴力団構成員による詐欺的手法を駆使した資金獲得活動を余儀なく させているものであるから,本件各詐欺が稲川会を代表する被告の事業に含まれること いるという上納金制度の存在を背景 に,暴力団構成員による詐欺的手法を駆使した資金獲得活動を余儀なく させているものであるから,本件各詐欺が稲川会を代表する被告の事業に含まれることは明らかである。 イ被告の主張本件各詐欺は,稲川会の事業の執行についてされたものであったことは否認する。 Eは稲川会の構成員ではなく,被告はEとは何ら関係を持っていないのであり,稲川会又は被告が,Eらによる本件各詐欺に係る事業の主体となり得ないことは明らかであり,また,稲川会においては,幹部会等において,振込詐欺又は同種の特殊詐欺事犯には関与しないように指導をしているのであり,本件各詐欺に係る事業の主体は,Eらの本件詐欺グ ループなのであって,稲川会とは無関係である。 (5) 被告とEは,本件各詐欺の当時,使用者と被用者との関係であったか(民法715条1項)ア原告らの主張被告とEは,民法715条1項所定の使用者と被用者の関係であった。 暴力団の代表者等は,上納金制度の存在を背景に,暴力団構成員による詐欺的手法を駆使した資金獲得活動を余儀なくさせているところ,稲川会においては,構成員に対し,上納金を納入させ,詐欺的手法を駆使した資金獲得活動による収益が被告の直接の支配下にある稲川会総本部に取り込まれる体制が執られ,また,稲川会は,本件各詐欺の当時,構成 員相互の盃事による擬制的血縁関係の連鎖により構成され,末端組織の構成員も含めた役割制度を設け,被告を頂点とする階層的組織を形成していたのであって,会長による意思決定事項は,月一回行われる定例幹部会の席上で二次組織の組長へ伝達され,伝達を受けた二次組織の組長が,さらにそれぞれの月寄り等と呼ばれる定例会により各構成員へ指示, 伝達することによ よる意思決定事項は,月一回行われる定例幹部会の席上で二次組織の組長へ伝達され,伝達を受けた二次組織の組長が,さらにそれぞれの月寄り等と呼ばれる定例会により各構成員へ指示, 伝達することにより末端の構成員にまで会長の意思決定事項を徹底させ る体制が執られ,また,緊急の場合には,稲川会本部から各二次組織を通じて,電話又はファクシミリにより,末端の構成員まで指示,伝達が徹底される体制が執られていることからみれば,稲川会の詐欺的手法を駆使した資金獲得活動としての事業についても,被告は,下部組織の構成員を稲川会執行部や二次組織を通じるなどして,直接に指揮監督する ことができる地位にあったものというべきであり,Eらとの間に,当該事業について,実質的な指揮監督関係が存在していたということができるから,被告とEは,民法715条1項所定の使用者と被用者の関係であったことは明らかである。 イ被告の主張 被告とEが民法715条1項所定の使用者と被用者の関係であったことは否認する。 Eは稲川会構成員ではなく,被告又は稲川会関係者のいずれも,Eに対して何ら指揮監督をする地位にはなかったから,被告とEが民法715条1項所定の使用者と被用者の関係にないことは明らかである。 (6) 本件各詐欺により原告らが被った損害及びその額ア原告らの主張(ア) 財産的損害原告らは,本件各欺行為により,それぞれ,次のとおり,本件詐欺グループが管理する預金口座に金員を振り込まされ,同額の財産的損害を 被った。 a 原告A 300万円b 原告B 300万円c 原告C 250万円d 原告D 400万円 (イ) 精神的損害 本件各詐欺は,いずれも,原告らの息子になりすま 原告A 300万円b 原告B 300万円c 原告C 250万円d 原告D 400万円 (イ) 精神的損害 本件各詐欺は,いずれも,原告らの息子になりすますことによって実の息子の非常事態を装い,息子を案じる原告らの親心に乗じて多額の金員を騙取したものであり,犯行態様が極めて悪質であることに照らすと,原告らが受けた精神的苦痛は計り知れないのであって,財産的損害が回復することによっても慰謝されないところ,その精神的損害の額は,事 案の悪質性や被害額を考慮し,原告ら1人当たり200万円を下らない。 (ウ) 弁護士費用本件各詐欺は,指定暴力団の組員による組織的かつ悪質性の高い事案であり,その性質上,多数の弁護士による弁護団を結成して対応せざるを得ないものであったから,本件各詐欺と相当因果関係のある弁護士費 用は,一般的に認められているものよりも相当程度高い割合で認められるべきであり,原告が被った財産的損害及び精神的損害の合計金額の3割程度である次の額が相当である。 a 原告A 150万円b 原告B 150万円 c 原告C 135万円d 原告D 180万円(エ) 損害額合計a 原告A 650万円b 原告B 650万円 c 原告C 585万円d 原告D 780万円イ被告の主張原告らの主張はいずれも否認し又は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について (1) 証拠(甲10,甲11,甲12,甲13,甲16,甲19の2,甲20の1,2,甲21,甲22の1,2,乙11,乙12,乙17,乙21,乙22,乙25)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア警視庁組織犯罪対策部組織犯罪 3,甲16,甲19の2,甲20の1,2,甲21,甲22の1,2,乙11,乙12,乙17,乙21,乙22,乙25)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策課第三課長は,第一東京弁護士会からの弁護士会照会に対し,回答書(平成30年8月31日付)により,同 課においては,平成26年9月頃から同年10月頃の時点において,Eについて,指定暴力団稲川会習志野一家F組の構成員として把握している旨回答した。(甲16)さらに,同課長は,回答書(平成30年12月13日付)により,上記回答の根拠は,平成26年1月頃,Eが千葉県習志野市の食品販売者に対 してみかじめ料を要求した事実につき,平成26年4月11日,千葉県習志野警察署長から,暴力団対策法に基づく中止命令の発出を受け,これを稲川会習志野一家組員として受領していること,及び,平成26年10月,被疑者取調べにおいてE自身が稲川会習志野一家F組に所属している旨自供していたことである旨回答した。(甲20の1,2) イ千葉県警察本部刑事部組織犯罪対策本部捜査第四課長は,第一東京弁護士会からの弁護士会照会に対し,回答書(平成31年2月25日付)により,同課においては,Eについて,同人の氏名等が記載されている暴力団関係資料(平成27年3月11日入手に係る稲川会習志野一家の組織名簿の写し及び当番表の写し並びに平成27年4月6日入手に係る稲川会習志 野一家の組織名簿の写し,当番表の写し及び連絡表の写し)のほか,暴力団員である旨をEが自認していたことやその他の事情を根拠に,総合的な判断により,稲川会習志野一家の構成員と認定している旨回答した。(甲22の1,2)ウ習志野一家に所属する8つの組が8日に1度交代で担当することとされ たことやその他の事情を根拠に,総合的な判断により,稲川会習志野一家の構成員と認定している旨回答した。(甲22の1,2)ウ習志野一家に所属する8つの組が8日に1度交代で担当することとされ ていた。)稲川会習志野一家の事務所当番について,F組がその担当にな ったときには,そのほとんどをEとHの2人がこれを務めた。(甲11,乙11)エ平成27年4月27日,Hは,本件詐欺グループに係る被疑事件についての検察官の取調べにおいて,「Eが逮捕されたら動ける組員が3人になってしま」うなどと述べた。(甲13,乙12) オ平成27年7月1日,Eは,本件詐欺グループに係る被疑事件についての検察官の取調べにおいて,「私がヤクザの組に入った後,1か月ほど遅れてKが同じ組に入ってきました。」,「その後,しばらく音信がなかったのですが,1,2年前頃,Kが(伏せ字)で一緒だった人からF組長への伝言を預かったらしく,Kが習志野一家の本部事務所に電話をかけてき たことがありました。」などと述べた。(乙17)カ平成27年11月28日,Hは,Eを被告人とする本件詐欺グループに係る刑事被告事件の公判に証人として出廷した際,「Eの組長のFが,もうこの仕事やめろと言ってるからっていうことで,もう上も怒ってるし,自分もちょっと大変なんで辞めましたっていうことはEに伝えました。」, 「(Iについて)Eが所属する組の人間ですね。」などと証言した。(甲12,乙21)キ平成28年1月7日,Eは,自らを被告人とする本件詐欺グループに係る刑事被告事件の公判における被告人質問において,検察官が「習志野一家というのは,あなたが所属している暴力団。」と問うたのに対し,「所 属している組です,はい。」と,「でも,あなたも一応,一応とい 事被告事件の公判における被告人質問において,検察官が「習志野一家というのは,あなたが所属している暴力団。」と問うたのに対し,「所 属している組です,はい。」と,「でも,あなたも一応,一応というか習志野一家なんですよね。」と問うたのに対し,「はい,私もそうです。」と述べた。(甲10,乙22)ク Eは,自らを被告人とする本件詐欺グループに係る刑事被告事件の控訴趣意補充書(平成28年8月12日付)に添付された手書きの上申書に おいて,「この日が私がうけもつ一家本部当番日です。」,「本来なら ば平成26年9月29日(月)も本部当番なのですが月末が一家本部のみかじめ料の集金日なので私のことですから2日連続で事務所にはいないのではないかということで」,「私の事務所当番は10月1日に発表されます。これは事務所第一に考えあらかじめ当番日がわかっていれば予定を組みやすくするためです。」,「みかじめ料の集金については山 本組だった人間がまかされます。Jと私です。おもにF組で行います。」などと記載した。(甲21)ケ東京拘置所又は青森刑務所に収監されていたEに,平成29年8月31日以降,次とおり,面会者が訪れた。なお,Lは習志野一家の事務局長であり,FはF組の組長であり,JはF組の組員であった。(甲19の2, 乙25)(ア) 平成29年9月1日(面会した者)L,F,J面会の際,Lは,Eに対し,「お前の件,会長が訴えられた。弁護士へ行く。」と述べ,Eは,「そうですか。今上告中です。習志野一家と は関係ないと言ってます。」と述べた。 (イ) 同月4日(面会した者)F面会の際,Fは,Eに対し,「今回の事件は大変な事態になってるから,トップを守ってから俺の処分になる。お前は本当 は関係ないと言ってます。」と述べた。 (イ) 同月4日(面会した者)F面会の際,Fは,Eに対し,「今回の事件は大変な事態になってるから,トップを守ってから俺の処分になる。お前は本当は無罪にならない といけないんだけど無理らしい。」と述べた。 (ウ) 同月12日(面会した者)F(エ) 同月14日(面会した者)L,J (オ) 同月21日 (面会した者)L,J面会の際,Lは,Eに対し,「今回出て来てもお前の居場所無いぞ。」と述べた。 (カ) 同月28日(面会した者)L コ Eと関係者との信書の授受東京拘置所又は青森刑務所に収監されていたEは,平成29年9月1日から平成30年9月30日までの間,次のとおり,信書を授受した。なお,Mは習志野一家の事務局長であり,Nは習志野一家の会長であった。(甲22の1,2,乙25) (ア) Mとの間発信9通,受信13通(イ) Lとの間発信3通(ウ) Nとの間 発信1通なお,Eは,当該発信に係る信書に,「私の行動のため,図らずとも一家の信用を失う羽目になりすみません。」と記載した。 (エ) Jとの間発信1通 (2) 前記(1)でみたところによれば,Eは,習志野一家の事務所当番をF組が担当する際にこれを務め,当該事務所に定期的,継続的に出入りしていたというのであって,また,E及びHは,いずれも,本件詐欺グループに係る刑事手続において,EがF組の構成員である旨を述べ,事務所当番のみでなく,みかじめ料の集金といった構成員の任務を行っていたことについても具体的 に述べていたというのであり,さらに,習志野一家及びF組の関係者が,刑 事施設に を述べ,事務所当番のみでなく,みかじめ料の集金といった構成員の任務を行っていたことについても具体的 に述べていたというのであり,さらに,習志野一家及びF組の関係者が,刑 事施設に収監されていたEに繰り返し面会し,併せて,E及びこれらの関係者は,信書も授受していたのであって,その面会時の発言や信書の記載にも,EがF組の構成員であることを前提にしているものが見受けられるというのであって,これらの事実に,EをF組の構成員として把握している旨の警視庁や千葉県警察本部が捜査情報からEをF組の構成員として把握していたこ とを考え併せれば,本件各詐欺の当時,EがF組の構成員であったことが推認されるというべきであって,この推認を覆すに足りる事実や証拠は見受けられない。 被告は,EがF組の組員であることを否認し,EがF組の組長であったFと盃事を取り結んでいないと主張するが,いわゆる盃事を取り結んでいなか ったからといって,上記の推認を覆すに足りないといわなければならない。 また,関係書の陳述書(乙1,3,5,24,25)には,EがF組の組員ではない旨の陳述部分があるが,これらの陳述書は,EがF組の組長と盃事を取り結んでいない(乙1),保護司からEがヤクザと関係がないと聞いた(乙3),稲川会ではEを構成員として把握していない(乙5,24),E は別の組(竹ノ内組)の組員であったがこれを脱退しその後はどこの組にも所属していない(乙25)といった内容であって,いずれも,その裏付けがないものであり,あるいは,上記の推認を覆すに足る事情ということはできない。なお,Eの陳述書(乙4の1,2)には,自分はF組の組員ではない,警察ではF組の若い衆であると決め付けられて誘導され,昔ヤクザをしてい たこともあったことから,警察でヤ ということはできない。なお,Eの陳述書(乙4の1,2)には,自分はF組の組員ではない,警察ではF組の若い衆であると決め付けられて誘導され,昔ヤクザをしてい たこともあったことから,警察でヤクザであると嘘の供述をした,警察でも検察でも自分がヤクザであると言ってしまい引っ込みがつかなくなった,等の陳述部分があるが,この陳述書は,本件訴訟が提起された平成29年8月31日より後に作成されたものであることからみて,被告に責任が及ぶことを回避する目的でした陳述部分である可能性が否定できないことから考えて, Eのこのような陳述部分から,EがF組の構成員であったとの上記の推認を 覆すことはできない。 (3)以上でみたところによれば,Eは,本件各詐欺の当時,F組の構成員であったと認められるから,暴力団対策法31条の2所定の指定暴力団員に当たる。 2 争点(2)について (1) 証拠(甲3,甲5,甲6,甲7)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア稲川会は,平成4年6月23日に東京都公安委員会から暴力団対策法3条に基づく指定を初めて受け,これ以降,平成7年,同10年,同13年,同16年,同19年,同22年,同25年及び同28年の9回にわたり東 京都公安委員会により暴力団対策法3条に基づく指定を受けている。 稲川会の勢力範囲は1都1道19県に及び,平成26年12月末日時点における構成員数は約2900人(準構成員を含めると6600人)であって,指定暴力団六代目山口組,住吉会に次ぐ日本国内第3位であり,暴力団構成員全体(2万2300人)の13%を占めていた。そして, 平成26年中,全国の暴力団構成員等(構成員及び準構成員)検挙人員は2万2495人であったが,そのうち稲川会は3585人(約16%) 成員全体(2万2300人)の13%を占めていた。そして, 平成26年中,全国の暴力団構成員等(構成員及び準構成員)検挙人員は2万2495人であったが,そのうち稲川会は3585人(約16%)で,山口組と住吉会に次いで日本国内で3番目に多かった。(甲6)東京都内においては,平成26年中の暴力団構成員等の検挙人員4923人のうち稲川会は763人(約15%)であり,ここでも住吉会,山 口組に次いで3番目であった。(甲3)イ第169回国会衆議院内閣委員会において,政府参考人であるO警察庁刑事局組織犯罪対策部長は,暴力団対策法31条の21号の免責規定について,「この規定の仕方は,例えば一つの組,指定暴力団であれば,制度として,その暴力団がいわゆる上納金システムを一切持っていない,こう いう場合を想定しておりまして,現実問題として,そういう指定暴力団と いうのは,現在私ども(警察庁)把握しておりません」と答弁した。(甲7)ウいわゆるオレオレ詐欺等の特殊詐欺は,標的とする高齢者の名簿,捜査機関による摘発を逃れるために他人名義で契約した携帯電話であるいわゆる「トバシの携帯」など,合法的な手段では入手することが困難な道具を 必要とするものであり,また,特殊詐欺の遂行には,首謀者のほかに,電話をかけてだます役の架け子,現金を引き出す役の出し子,見張り役など,犯罪に関与する多くの人員を要し,かつ,このような人員を組織化し,統率の下におくことが求められる。 エ警察庁組織犯罪対策本部暴力団対策課及び組織犯罪対策企画課作成に係 る平成26年の暴力団情勢(平成27年3月付)には,次のとおり記載されていた。(甲6)(ア) 平成26年時点において,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 に係 る平成26年の暴力団情勢(平成27年3月付)には,次のとおり記載されていた。(甲6)(ア) 平成26年時点において,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。)の検挙人員について,詐欺は2337人で,前年に比べ16人増加して過去最多となり,初めて窃盗の検挙人員 を上回った。 (イ) 特殊詐欺とは,被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預貯金口座への振込みその他の方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝も含む)の総称であり,振り込め詐欺(オレオレ詐欺,架空請求詐欺,融資保証金 詐欺及び還付金等詐欺)のほか,金融商品等取引名目,ギャンブル必勝情報提供名目,異性との交際あっせん名目等の詐欺がある。近年,暴力団構成員等の検挙人員のうち詐欺の検挙人員が占める割合が増加傾向にあり,26年においては10.4%を占めるところ,特殊詐欺の検挙人員(1990人)のうち暴力団構成員等占める割合は34.6%(68 9人)であった(前年比6.4ポイント増)。これらの者は,犯行グル ープのリーダーや中核メンバーのほか,「架け子」,「受け子」等,特殊詐欺に関する様々な役割を担っており,暴力団が特殊詐欺に関与して,その犯罪収益を資金源としている状況がうかがわれることから,警察においては,暴力団等の関与する特殊詐欺に関する情報の収集と,その一元的な集約,分析に基づき,特殊詐欺に関与する組織の実態解明及び捜 査の推進に努めている。 (ウ) 平成17年以降,詐欺の検挙人員が増加傾向にあるところ,平成26年においても,暴力団構成員等の詐欺の検挙人員は前年に比べ増加しており,暴力団が詐欺を資金獲得の手段としている傾向は続いているとみられる。 7年以降,詐欺の検挙人員が増加傾向にあるところ,平成26年においても,暴力団構成員等の詐欺の検挙人員は前年に比べ増加しており,暴力団が詐欺を資金獲得の手段としている傾向は続いているとみられる。 オ平成27年版警察白書「組織犯罪対策の歩みと展望」(平成27年7月24日付)には,次のとおり記載されていた。(甲5)(ア) 暴力団は,その活動実態を不透明化させ,経済・社会の発展等に対応して資金獲得活動を多様化させており,強固な人的・経済的基盤を維持しているとみられる。また,最近では,巧妙に組織化されたグループ により敢行される特殊詐欺といった新たな問題も浮上しており,これらへの対応が喫緊の課題となっている。 (イ) 暴力団は,暴力と組織の威力を最大限に利用しつつ,より巧妙かつ効率的に経済的利益を得るため,経済・社会の発展に対応して,その資金獲得活動を変化させ続けている。 (ウ) 近年,暴力団は,その実態を隠蔽しながら各種の事業活動へ進出するなどし,一般社会での不透明な資金獲得活動を活発化させているほか,各種公的給付制度等を悪用した詐欺,振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺への関与を深めるなど,その活動分野を更に拡大している状況がうかがわれる。 (エ) 近年の暴力団構成員等の罪種別検挙状況をみると,恐喝,傷害等の 暴力団の威力をあからさまに示す形態の犯罪の割合が減少傾向又は横ばいで推移する一方で,必ずしも暴力団の威力を示す必要のない詐欺の割合が増加している。この背景としては,数次にわたる暴力団対策法の改正による規制の強化,社会における暴力団排除活動の進展により,暴力団の威力をあからさまに示して行う資金獲得活動が困難化したことなど が考えられる。 (オ) 警察庁が,平成26年12月から27年 正による規制の強化,社会における暴力団排除活動の進展により,暴力団の威力をあからさまに示して行う資金獲得活動が困難化したことなど が考えられる。 (オ) 警察庁が,平成26年12月から27年1月にかけて,警視庁及び道府県警察本部の情報官等を対象としたアンケートを実施したところ,特殊詐欺等の新たな分野への暴力団の進出を指摘する意見も多く見られ,「警察の取締りによって恐喝やみかじめ料等から得られる利益が枯渇し ているため,暴力団が一度に多額の利益を得られる特殊詐欺に進出してきていると思われる。」との意見も述べられている。 (カ) また,近年被害が急増している特殊詐欺については,巧妙に組織化されたグループにより敢行されている状況がみられることなどから,警察ではこれを新たな脅威となっている組織犯罪と位置づけ,警察組織全 体で情報収集を行い実態を解明するなど,犯行グループそのものの壊滅に向けた取締りを推進している。 (キ) 特殊詐欺の犯行グループは,リーダーや中核メンバーを中心として,電話を繰り返しかけて被害者をだます「架け子」,自宅等に現金等を受け取りに行く「受け子」等が役割を分担し,組織的に犯罪を敢行してい る。 (ク) 検挙された「受け子」や「架け子」等の発言として,「暴力団関係者から恐喝され,金を稼ぐために「受け子」をやるよう指示された。」「生活に困っていたところ,知り合いのヤクザから「会社を起業して金を稼げ」と言われ,詐欺の被害者の名簿を渡された。」「特殊詐欺のア ジトには「架け子」の仕事を監督するヤクザがおり,犯行グループを厳 しく統制していた。」というものが紹介されている。 (2) 前記(1)でみたところによれば,本件各詐欺のような特殊詐欺は,それ自体が当然に暴力団としての威力を利用 おり,犯行グループを厳 しく統制していた。」というものが紹介されている。 (2) 前記(1)でみたところによれば,本件各詐欺のような特殊詐欺は,それ自体が当然に暴力団としての威力を利用する犯罪類型であるとまではいえないものの,暴力団の構成員の多くが,典型的な威力利用資金獲得行為に対する種々の規制,取締りを回避して,新たな資金獲得源を確保すべく,暴力団の 威力の利用を背景としてこれを実行しているという実態があり,本件当時において,このような実態が社会一般に認識されていたというべきであって,稲川会も,日本第3位の規模の指定暴力団であることから,その下部組織を含め,このような特殊詐欺に従事,加担する構成員が多数いたであろうことが社会一般に認識されていたといわなければならない。 そして,前記第2の1(3)から(6)まででみた本件各詐欺の具体的な態様は,いずれも,本件詐欺グループを構成した者らが役割を分担して本件詐欺グループが管理する預金口座に金員を振りこませるという組織的,計画的なものであって,上記でみた暴力団の構成員が従事,加担し,暴力団の威力の利用を背景として資金を獲得する活動に係るものに通有する類型であるというこ とができる。 そうすると,本件各詐欺は,いずれも,F組の構成員すなわち稲川会の指定暴力団員であったEがこれを実行した以上,稲川会の構成員による威力利用資金獲得行為と関連する行為であるというほかないのであって,本件各詐欺は,稲川会の指定暴力団員であるEにおいて,威力利用資金獲得行為を行 うについて他人の財産を侵害したものといわなければならない。 (3) 被告は,暴力団対策法31条の2本文所定の威力利用資金獲得行為に当たるためには,被害者に対して威力を示す必要があるところ,Eは,本件各詐欺 他人の財産を侵害したものといわなければならない。 (3) 被告は,暴力団対策法31条の2本文所定の威力利用資金獲得行為に当たるためには,被害者に対して威力を示す必要があるところ,Eは,本件各詐欺の被害者(原告ら)とはまったく接触していないのであるから,本件各詐欺は威力利用資金獲得行為に当たるということはできないと主張するが,前 記(2)でみたとおり,本件各詐欺は,威力利用資金獲得行為を行うについて された行為(威力利用資金獲得行為と関連性を有する行為)であって,それ自体が威力を利用することを必要とするものではないのであるから,Eと原告らが直接接触せず,稲川会の威力が原告らに示されなかったからといって,本件各詐欺が威力利用資金獲得行為を行うについてされたものであること(関連性)が否定されることにはならないのであって,被告の主張はその前 提を欠く。このように,本件各詐欺は,その行為態様等から,稲川会の指定暴力団員による威力利用資金獲得行為に関連してなされたものというべきであって,被告あるいは稲川会がこれに関与していないとして被告が免責を得るためには,暴力団対策法31条の2第1号又は第2号所定の事由を主張立証するしかない。 3 争点(3)について証拠(乙5)によれば,平成29年12月21日,稲川会総本部は,各会員に宛てて,「総本部御通知」と題する書面を発出し,特殊詐欺等の事件には関わらないことを厳守するよう通知したことが認められるが,このような事実があることのみによって,被告が被告以外の稲川会の指定暴力団員が行う威力利 用資金獲得行為により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得ることがなかったということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 4 争点( 威力利 用資金獲得行為により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得ることがなかったということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 4 争点(6)について(1) 前記第2の1(3)ないし(6)でみたところによれば,原告らは,本件各詐欺 により,それぞれ,次のアからエまでの額の金員を,本件詐欺グループが管理する預金口座に金員を振り込まされ,これにより同額の財産的損害を被った。 ア原告A 300万円イ原告B 300万円 ウ原告C 250万円 エ原告D 400万円(2) 前記第2の1(3)ないし(6)でみたところによれば,原告らは,いずれも,本件各詐欺において原告らの息子に示談金が必要である等の虚偽の事実を告げられ,これにより生じた不安な心理状態を利用されて金銭を詐取され,精神的苦痛を受けたというのであり,本件各詐欺は,組織的かつ計画的なもの であり,家族を心配する心理につけこむものであったというのであるから,原告らの被った精神的損害の額は,次のアからエまでのとおり,財産的損害の1割の額とすることが相当である。 ア原告A 30万円イ原告B 30万円 ウ原告C 25万円エ原告D 40万円(3) 原告らが被った本件各詐欺と相当因果関係のある弁護士費用相当損害は,次のアからエまでのとおり,財産的損害と精神的損害の合計額の1割とすることが相当である。 ア原告A 33万円イ原告B 33万円ウ原告C 27万5000円エ原告D 44万円(4) 以上でみたところによると,原告らの損害合計額は,次のアからエまでの とおりである。 ア原告A 363万円イ原告B 363万円 27万5000円エ原告D 44万円(4) 以上でみたところによると,原告らの損害合計額は,次のアからエまでの とおりである。 ア原告A 363万円イ原告B 363万円ウ原告C 302万5000円エ原告D 484万円 5 以上によれば,その余の点(争点(4)及び争点(5))について判断するまでもな く,原告Aの請求は,363万円及びこれに対する最後の不法行為の日である平成26年10月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がなく,原告Bの請求は,363万円及びこれに対する最後の不法行為の日である平成26年10月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を 求める限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がなく,原告Cの請求は,302万5000円及びこれに対する最後の不法行為の日である平成26年10月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がなく,原告Dの請求は,484万円及びこれに対する最後の不法行為の日である平成26年9月11日か ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がない。 東京地方裁判所民事第48部 裁判長裁判官氏本厚司 裁判官鈴木友一 裁判官西條壮優 (別紙当事者目録)は記載 官鈴木友一 裁判官西條壮優 (別紙当事者目録)は記載を省略

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