1令和4年3月24日判決言渡令和3年(ネ)第10075号 意匠権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第14629号)口頭弁論終結日 令和4年1月25日判 決5 控訴人 クレア株式会社 同訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫同 河 部 康 弘10同 神 田 秀 斗 被控訴人 株式会社ミツキ 同訴訟代理人弁護士 平 山 博 史15同 都 筑 康 一同 内 田 真 央同補佐人弁理士 森 本 聡主 文1 本件控訴を棄却する。 202 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,輸入し又は販25売の申出をしてはならない。 23 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の製品及び半製品(別紙被告意匠目録記載の構成態様を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。 4 被控訴人は,控訴人に対し,726万円及びこれに対する令和2年5月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 5第2 事案の概要等1 事案の概要(1) 本件は,意匠に係る物品をヘアキャッチャーとする意匠権(意匠登録第1620963号。以 日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 5第2 事案の概要等1 事案の概要(1) 本件は,意匠に係る物品をヘアキャッチャーとする意匠権(意匠登録第1620963号。以下「本件意匠権」といい,本件意匠権に係る意匠を「本件意匠」という。)を有する控訴人が,被控訴人による別紙被告製品目録記載10の製品(以下「被告製品」という。)の販売等が本件意匠権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,意匠法37条1項に基づく被告製品の販売等の差止め,同条2項に基づく被告製品及びその半製品の廃棄並びに民法709条に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 原審は,被告製品の意匠は本件意匠に類似しているとはいえないとして,15控訴人の請求をいずれも棄却した。これを不服として,控訴人は,本件控訴を提起した。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正し,後記3のとおり当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実20及び理由」の第2の2ないし4(原判決2頁14行目ないし9頁17行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決6頁8行目の「及び時」を「及び9時」に改める。 (2) 原判決6頁16行目の「平成30年1月22日」を「令和2年6月12日」に改める。 25(3) 原判決6頁24行目の「乙」の後に「8,11,」を加える。 3(4) 原判決8頁13行目及び14行目の「過流生成部」をいずれも「渦流生成部」に改める。 3 当審における補充主張(いずれも争点1(被告意匠は本件意匠と類似するか)に関するもの)〔控訴人の主張〕5(1) 本件意匠の要部認定についてア 甲20及 渦流生成部」に改める。 3 当審における補充主張(いずれも争点1(被告意匠は本件意匠と類似するか)に関するもの)〔控訴人の主張〕5(1) 本件意匠の要部認定についてア 甲20及び21のヘアキャッチャーには,いずれも堰部が設けられており,かつ,当該堰部が垂直方向に突出している。また,公知意匠である乙3ないし6のヘアキャッチャーにも,水の流れを調整する堰部が設けられている。加えて,これらの公知意匠においては,堰部が形成されているこ10とによって渦流生成部が分割され,斜面体が形成されている。そうすると,これらの公知意匠も,斜面体と堰部それぞれによって二重の明確な渦状模様を生じさせるという印象を与えるものである。 したがって,ヘアキャッチャーに接した需要者において,堰部の存在に着目するということはあり得ず,原審は,着目すべき要部を誤ったもので15ある。 イ 本件意匠の実施品である控訴人の製品(以下「原告製品」という。)の需要者の各種レビュー(甲22の1ないし15)には,渦流生成部を形成する斜面体が段差構造のみによって境界を形成するものであるという点に着目したものは全く見当たらず,かえって,渦流生成部を形成する堰部又20は構造体がフランジ部よりも上方に張り出していないという点に着目し,凹凸が少ない点を評価するものが複数存在する。 したがって,需要者は,本件意匠について,段差構造のみで境界を形成しているという点を要部として認識していないといえる。 ウ 被告製品の需要者の各種レビュー(甲23の1ないし5)にも,堰部に25着目したものは一切見当たらない。また,被告製品の販売元も,顧客に対4して堰部に着目した訴求は行っていない。 したがって,需要者は,被告製品について,堰部には一切着目していないと 25着目したものは一切見当たらない。また,被告製品の販売元も,顧客に対4して堰部に着目した訴求は行っていない。 したがって,需要者は,被告製品について,堰部には一切着目していないといえる。なお,甲23の5のレビューにおいては,「セットした姿もすっきり」という表題の下で,「見た目もシンプルですっきりとしています。」と評価されているが,これは,需要者が被告製品から受ける印象が,上記5イのとおり凹凸のない原告製品から受ける印象と共通していることを示している。 エ 以上によれば,ヘアキャッチャーについて,堰部の有無は要部とはなり得ない。 (2) 類否判断について10ア 原審は,乙16の公知意匠のみから,需要者は渦流生成部を区分けする構造体がフランジ部よりも上方に張り出していない形態には全く着目しないと判断したが,飽くまでも公知意匠は,需要者が着目すべき要部を特定する判断資料でしかない。 翻って,甲22の1等の原告製品のレビューにおいては,凹凸がないと15いう点に着目されており,これは,前記のとおり,構造体がフランジ部よりも上方に張り出していない点を強調するものと考えられる。そうすると,本件意匠及び被告意匠のいずれについても,斜面体(の堰部)がフランジ部よりも上方に張り出していない結果として,凹凸がないという評価がされているものといえる。 20イ また,被告意匠における堰部は,各公知意匠と比較しても,突出の程度も面積も小さいから,当該堰部を重視することはできない。 ウ 以上によれば,本件意匠及び被告意匠のいずれについても,フランジ部よりも上方に張り出す凹凸がない結果として,需要者は平板な印象を受けるものであり,美感が共通するものである。 25〔被控訴人の主張〕5 ば,本件意匠及び被告意匠のいずれについても,フランジ部よりも上方に張り出す凹凸がない結果として,需要者は平板な印象を受けるものであり,美感が共通するものである。 25〔被控訴人の主張〕5(1) 本件意匠の要部認定についてア 公知意匠に係る控訴人の主張は,公知意匠を参酌して被告意匠の要部を特定しようとするものであるが,公知意匠を参酌することで把握される意匠の要部とは,登録意匠の要部であって被疑侵害意匠の要部ではないから,失当である。 5イ ブログ記事等のレビューは,誰がどのような意図で書いたものかが不明であるから,その内容は一般需要者の客観的な意見であるとは全くいえないことなどからすれば,ブログ記事等に基づいて本件意匠の要部を特定しようとする控訴人の主張は,失当である。 (2) 類否判断について10ア 意匠の類否判断において,公知意匠に係る部分は,創作の実質的価値が低いために当該部分が要部から除外される。そして,渦流生成部を区分けする構造体がフランジ部よりも上部に張り出していない形状は,乙16の公知意匠に開示されているのであるから,本件意匠及び被告意匠の類否判断に当たって,当該形状が共通することを大きく取り扱うことは相当でな15い。 イ 原審は,本件意匠及び被告意匠の斜面体の形状の差異は大きなものとはいえないと判断したが,本件意匠においては,斜面体を区画する3本の区画線のうち2本が直線状であるのに対し,被告意匠においては,3本の区画線の全てが湾曲線で区画されているから,両意匠の斜面体の形状は全く20異なるものであり,また,当該差異が類否判断に与える影響は非常に大きいというべきである。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。 異なるものであり,また,当該差異が類否判断に与える影響は非常に大きいというべきである。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。 25その理由は,次のとおりである。 61 争点1(被告意匠は本件意匠と類似するか)について(1) 類否判断の基準意匠権者は,業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しているところ(意匠法23条本文),登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて5行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,登録意匠に係る物品の性質,用途,使用態様を考慮し,更には公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者の視覚を通じて最も注意を惹きやすい部分(意匠の要部)を把握し,この部分を中心に,両意匠の構成を全体的に観察・対比して認定された共通点と差異点10を総合して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かによって判断するのが相当である。 以上を前提に,本件意匠及び被告意匠が類似するといえるか否かについて検討する。 (2) 本件意匠及び被告意匠の各構成15ア 本件意匠の構成は,前提事実(3)(原判決3頁1行目ないし4頁13行目)のとおりである(別紙本件意匠及び別紙本件意匠説明図も参照)。 イ 被告意匠の構成は,前提事実(5)(原判決4頁20行目ないし6頁15行目)のとおりである(別紙被告意匠目録及び別紙被告意匠説明図も参照)。 (3) 本件意匠の要部認定20ア 意匠に係る物品の性質,用途,使用態様本件意匠に係る物品はヘアキャッチャーであるところ,ヘアキャッチャーは,排水内の毛 告意匠説明図も参照)。 (3) 本件意匠の要部認定20ア 意匠に係る物品の性質,用途,使用態様本件意匠に係る物品はヘアキャッチャーであるところ,ヘアキャッチャーは,排水内の毛髪等を捕捉するために,浴室の排水口等の上に設置されて使用される生活用品である。 そうすると,本件意匠の需要者は,個人消費者であると認められる。そ25して,個人消費者がヘアキャッチャーを観察する場合には,排水口の上に7設置された状態で,上方又は斜め上方から視認するのが通常であるといえるから,本件意匠に係る物品の需要者は,毛髪等を捕捉するための渦流生成部及び捕捉部の形状等に注意を惹かれやすいといえる。 イ 公知意匠(ア) 本件意匠の出願当時において,次の公知意匠が存在したことが認め5られる。 a 意匠登録第1554062号公報(乙3(各枝番号を含む。以下同じ)。平成28年7月19日公報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠1」という。)b 意匠登録第1570084号公報(乙4。平成29年2月20日公10報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠2」という。)c 意匠登録第1531898号公報(乙5。平成27年8月24日公報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠3」という。)d 意匠登録第1544259号公報(乙6。平成28年2月22日公報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠4」という。)15e 公開実用昭和51-105866号(乙16。昭和51年8月24日公開)に記載された意匠(以下「公知意匠5」という。)(イ) 公知意匠1ないし4は,いずれもヘアキャッチャーに係る意匠であり,次のとおりの構成を有する。 a 平面視において全体が円形状かつ有底の灰皿状に形成されており,20その 5」という。)(イ) 公知意匠1ないし4は,いずれもヘアキャッチャーに係る意匠であり,次のとおりの構成を有する。 a 平面視において全体が円形状かつ有底の灰皿状に形成されており,20その中心に位置する円形状の捕捉部と,その外側に形成されて捕捉部に向かう水流を生成する渦流生成部と,その外側に形成されて排水口への装着を担う円環状のフランジ部とで構成されており,捕捉部は,平面視において円形上に形成された底壁と,底壁の外周縁から上方に伸びる筒壁とからなり,上方開口を有する椀状に形成され,渦流生成25部は,捕捉部の上端外縁から水平外方向に向かって張り出し形成され,8フランジ部は,渦流生成部の上端外縁から水平外方向に向かって張り出し形成されている。 b 渦流生成部に,捕捉部に向かう渦状模様が現出されている。 c 捕捉部と渦流生成部に多数個の排水孔が形成されている。 d 正面視において,捕捉部がおおむね隅丸矩形状である(公知意匠15及び2のみ)。 e 渦流生成部が,捕捉部を中心とする等角度位置に配置された複数(公知意匠1が3個ずつ,公知意匠2が2個ずつ,公知意匠3が4個ずつ,公知意匠4が2個ずつ)の斜面体及び渦状壁で構成されており,平面視において,渦状壁が斜面体に類する面積を占め,正面視において,10渦状壁の上部がフランジ部よりも上方に張り出している。 f 各斜面体が,隣接して形成された渦状壁によって区分けされている。 (ウ) 公知意匠5は,排水口に装着するための排水誘導具の意匠である。 この排水誘導具は,中くぼみ状の円形皿形であり,その表面には,外縁から中心に向かい,かつ,中心には達しない複数のらせん状山形が突15設形成されており,これらのらせん状山形以外の谷部分には,複数の流水孔が穿設されている。また,正面 形であり,その表面には,外縁から中心に向かい,かつ,中心には達しない複数のらせん状山形が突15設形成されており,これらのらせん状山形以外の谷部分には,複数の流水孔が穿設されている。また,正面視において,各らせん状山形の上部が外縁部よりも上方には張り出していない(乙16の第1図及び第2図)。 ウ 本件意匠の要部(ア) 上記ア及びイを基に,本件意匠の要部について検討するに,上記ア20のとおり,本件意匠に係る物品の性質,用途,使用態様を考慮すると,本件意匠の構成のうち需要者の注意を惹きやすい部分は,渦流生成部及び捕捉部の形状等であるといえる。 (イ) そして,上記イの各公知意匠において開示されている構成を考慮すると,本件意匠の渦流生成部及び捕捉部の形状等のうち,公知意匠には25ない新規な創作部分であるといえるのは,渦流生成部が,斜面体のみで9構成され,各斜面体の境界を区切る構造体がなく,段差構造のみによって境界が形成されている形状であること(本件意匠の具体的構成態様①及び②に係る部分)といえる。 そうすると,需要者が本件意匠の実施品を観察する場合には,上記の形状に着目することになるといえるところ,このような形状は,各斜面5体が,反時計回り及び時計回りいずれに向かっても漸次幅寸法が小さくなる二つの曲線及び一つの概ね直線で囲まれた形状であり,捕捉部を中心として等角度位置に計6個配置されていることとも相まって,需要者に対し,渦流生成部において水が渦を巻くように整然と流れるような構造であるという印象を与えつつ,渦流生成部に斜面体以外の構造体が設10けられていないことにより,全体として凹凸が少なくシンプルですっきりとした印象を与えるものとして,需要者の注意を特に惹きやすい形状であるといえる。 流生成部に斜面体以外の構造体が設10けられていないことにより,全体として凹凸が少なくシンプルですっきりとした印象を与えるものとして,需要者の注意を特に惹きやすい形状であるといえる。 (ウ) 以上によれば,本件意匠の構成のうち,渦流生成部が,斜面体のみで構成され,各斜面体を区切る渦流壁等の構造体がなく,段差構造のみ15によって各斜面体の境界が形成されている形状は,需要者の最も注意を惹きやすい部分であるといえ,この部分が本件意匠の要部であると認められる。 (4) 対比ア 共通点20本件意匠及び被告意匠は,基本的構成態様①ないし③が共通するほか,次の各点において,具体的構成態様が共通する。 ① 渦流生成部が捕捉部を中心とする等角度位置に配置された複数の斜面体で構成されている点② 各斜面体が反時計回り及び時計回りいずれに向かっても漸次幅寸法25が小さくなる三つの線で囲まれた形状である点10③ フランジ部の外周縁の12時,3時,6時及び9時の位置に略円弧状の凹み部が形成されている点④ フランジ部の12時及び6時の位置に爪が形成されている点⑤ フランジ部の裏面に易破断用の薄肉部が形成されている点イ 差異点5本件意匠及び被告意匠においては,次の各点において,具体的構成態様に差異がある。 ① 被告意匠においては各斜面体の反時計方向側の外周部に堰部が形成されているのに対し,本件意匠には堰部が存在しない点② 本件意匠の斜面体の数が6個であるのに対し,被告意匠の斜面体の数10は4個である点③ 各斜面体の形状④ 被告意匠においては捕捉部の中心部に整流体が形成されているのに対し,本件意匠には整流体が存在しない点⑤ 被告意匠においてはピンがフランジ部の裏面 10は4個である点③ 各斜面体の形状④ 被告意匠においては捕捉部の中心部に整流体が形成されているのに対し,本件意匠には整流体が存在しない点⑤ 被告意匠においてはピンがフランジ部の裏面の1時,4時,7時及び1510時の位置に下方に向かって突設されているのに対し,本件意匠にはピンが存在しない点⑥ 本件意匠のフランジ部の1時,4時,7時及び10時の位置には「コ」字状の切り欠きが形成されているのに対し,被告意匠には切り欠きが存在しない点20ウ 共通点及び差異点の検討(ア) 前記(3)及び上記イで検討したところによれば,本件意匠及び被告意匠においては,被告意匠には各斜面体の反時計方向側の外周部に堰部が形成されているのに対し,本件意匠には堰部が存在しない点に差異があるところ,これは,本件意匠の要部(渦流生成部が,斜面体のみで構25成され,各斜面体を区切る渦流壁等の構造体がなく,段差構造のみによ11って各斜面体の境界が形成されている形状)における差異点であるといえる。 そして,前記(3)で検討したとおり,本件意匠の要部である上記形状は,各斜面体が,反時計回り及び時計回りいずれに向かっても漸次幅寸法が小さくなる二つの曲線及び一つのおおむね直線で囲まれた形状であり,5捕捉部を中心として等角度位置に計6個配置されていることとも相まって,需要者に対し,渦流生成部において水が渦を巻くように整然と流れるような構造であるという印象を与えつつ,渦流生成部に斜面体以外の構造体が設けられていないことにより,全体として凹凸が少なくシンプルですっきりとした印象を与えるものといえる。 10これに対し,被告意匠において各斜面体の反時計方向側の外周部に形成されている堰部は,別紙被告意匠目録及び別紙被 り,全体として凹凸が少なくシンプルですっきりとした印象を与えるものといえる。 10これに対し,被告意匠において各斜面体の反時計方向側の外周部に形成されている堰部は,別紙被告意匠目録及び別紙被告意匠説明図の平面図及び斜視図のとおり,需要者が上方又は斜め上方から観察した場合において,容易に看取される程度の高さや幅を有するものであり,各斜面体を区切るために独立して設けられた構造体であると認識される形状及15び大きさであるといえる上,堰部が斜面体と共に明確な渦状模様を顕出させることにより,需要者に対し,斜面体に何らの構造体が設けられていない場合と比較して,より勢いのある水流が生じる構造であるという印象を与えるものといえる。 以上の事情を考慮すると,本件意匠及び被告意匠における上記差異点20は,需要者に対して大きく異なる美感を生じさせるものというべきである。 (イ) そして,上記アのとおり,本件意匠及び被告意匠は,基本的構成態様①ないし③が共通するほか,上記アの①ないし⑤の点において具体的構成態様が共通するものの,前記(3)イによれば,これらは公知意匠にお25いて開示されている構成であるか,又は需要者が観察する際に特に着目12しない部分であるといえるから,いずれも需要者の注意を惹きやすい部分における共通点ではないというべきであるばかりか,上記イのとおり,具体的構成態様において差異点②ないし⑥も存するところである。 そうすると,本件意匠及び被告意匠の全体を観察したとしても,両者は要部において顕著な相違があり,上記共通点を考慮しても,全体とし5て差異点が共通点を凌駕しており,両意匠が視覚を通じて起こさせる全体としての美感を異にするものであるというべきである。 (ウ) したがって,本件意匠及び被告 ,上記共通点を考慮しても,全体とし5て差異点が共通点を凌駕しており,両意匠が視覚を通じて起こさせる全体としての美感を異にするものであるというべきである。 (ウ) したがって,本件意匠及び被告意匠は,全体として美感を共通にするものとはいえない。 エ 小括10以上検討したところによれば,被告意匠は,本件意匠と類似するものとは認められない。 (5) 控訴人の主張に対する判断ア 控訴人は,本件意匠及び被告意匠は堰部の有無にかかわらず内側に向かう渦の流れという美感が共通するから,堰部の有無は美感に係る判断に影15響しない旨主張する(原審における控訴人の主張)。 しかしながら,前記(3)イのとおり,捕捉部に向かう渦状模様が現出されている渦流生成部の形状については公知意匠(公知意匠1ないし4)が存在することからすれば,そのような形状は,需要者の注意を惹きやすい部分であるとはいえないから,本件意匠の要部であると認めることはできな20い。そして,本件意匠については,渦流生成部が,斜面体のみで構成され,各斜面体を区切る渦流壁等の構造体がなく,段差構造のみによって各斜面体の境界が形成されている形状を要部として認定すべきであること,本件意匠及び被告意匠における堰部の有無の差異は,上記要部に係る差異点であり,需要者に対して大きく異なる美感を生じさせるものであることは,25前記のとおりである。 13したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 イ 控訴人は,公知意匠1ないし4はいずれも正面視において渦流壁がフランジ部よりも上方に張り出しているものであるのに対し,本件意匠及び被告意匠はいずれもこのような形状ではなく,全体的に平面的な美感を共通にする旨主張する(原審における控 れも正面視において渦流壁がフランジ部よりも上方に張り出しているものであるのに対し,本件意匠及び被告意匠はいずれもこのような形状ではなく,全体的に平面的な美感を共通にする旨主張する(原審における控訴人の主張)。 5しかしながら,前記(3)イ(ウ)によれば,渦流生成部を区分けする構造体がフランジ部よりも上部に張り出していない形状については,公知意匠(公知意匠5)が存在することからすれば,そのような形状は,需要者の注意を惹きやすい部分であるとはいえないから,本件意匠の要部であると認めることはできない。そして,本件意匠及び被告意匠が上記のような形10状を共通にすることを考慮しても,両意匠が全体として美感を共通にするものとはいえないことは,前記のとおりである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ 控訴人は,本件意匠の要部認定に関し,各公知意匠においては,斜面体と堰部それぞれによって二重の明確な渦状模様を生じさせるという印象15を与えるから,ヘアキャッチャーに接した需要者において,堰部の存在に着目するということはあり得ない旨主張する(当審における控訴人の補充主張(1)ア)。 しかしながら,前記(3)ウで検討したところに照らせば,斜面体に堰部が存在する公知意匠が存在するからといって,そもそも斜面体に堰部その他20の構造体が設けられていない本件意匠の要部の認定に係る前記の判断が左右されるものではないというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 エ 控訴人は,本件意匠の要部認定に関し,原告製品及び被告製品に係るブログ等におけるレビューの内容を基に,需要者は渦流生成部を形成する堰25部又は構造体がフランジ部よりも上方にないという点に着目するもので は,本件意匠の要部認定に関し,原告製品及び被告製品に係るブログ等におけるレビューの内容を基に,需要者は渦流生成部を形成する堰25部又は構造体がフランジ部よりも上方にないという点に着目するもので14あり,堰部の有無には着目しない旨主張する(当審における控訴人の補充主張(1)イ及びウ)。 しかしながら,前記(3)イ(ウ)で検討したとおり,渦流生成部を区分けする構造体がフランジ部よりも上方に張り出していない形状については公知意匠(公知意匠5)が存在することからすれば,そのような形状は,需5要者の注意を惹きやすい部分であるとはいえないから,本件意匠の要部であると認めることはできない上,ブログ等におけるレビューの内容のみをもって,本件意匠の要部の認定に係る前記の判断が左右されるものではないというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 10なお,控訴人は,意匠の類否判断に関しても同様の主張をするが(当審における控訴人の補充主張(2)ア),採用することができない。 オ 控訴人は,意匠の類否判断に関し,被告意匠における堰部は突出の程度も面積も小さいから,当該堰部を重視することはできない旨主張する(当審における控訴人の補充主張(2)イ)。 15しかしながら,上記(4)ウ(ア)で検討したとおり,被告意匠において各斜面体の反時計方向側の外周部に形成されている堰部は,需要者が上方又は斜め上方から観察した場合において,容易に看取される程度の高さや幅を有するものであり,各斜面体を区切るために独立して設けられた構造体であると認識される形状及び大きさであるといえるから,被告意匠における20堰部の突出の程度や面積について,類否判断において重視することができない程度に小さなものであるということはで られた構造体であると認識される形状及び大きさであるといえるから,被告意匠における20堰部の突出の程度や面積について,類否判断において重視することができない程度に小さなものであるということはできない。そして,本件意匠及び被告意匠における堰部の有無の差異は,上記要部に係る差異点であり,需要者に対して大きく異なる美感を生じさせるものであることは,前記のとおりである。 25したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 152 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも棄却すべきであるから,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 5知的財産高等裁判所第3部 10裁判長裁判官東 海 林 保 15裁判官中 平 健 20裁判官都 野 道 紀16(別 紙) 被告製品目録 「おふろのまとまる排水口カバー」と称するヘアキャッチャー5 17(別 紙)本件意匠 【斜視図】 5 10 【下方から見た参考斜視図】15 20 2518 【正面図】 5 10 【左側面図】 15 20 20 2518 【正面図】 5 10 【左側面図】 15 20 19 【平面図】 5 10 【底面図】 15 20 2520 【A-A断面図】 521(別 紙)本件意匠説明図【平面図】【正面図】 22 【捕捉部】 【平面図】(拡大) 523 【斜面体】【斜視図】 24 【底面図】 25(別 紙)被告意匠目録 【斜視図】 5 10 【下方から見た参考斜視図】15 20 25 26 【正面図】 5 10 【左側面図】15 20 25 27 【平面図】 5 10 【底面図】15 20 28(別 紙)被告意匠説明図【平面図】【正面図】 29 【捕捉部】【平面図】(拡大) 30 【斜面体】【斜視図】 31 【底面図】 5 【斜視図】 31 【底面図】 5
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