【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人岩松孝雄上告趣意書は、『原判決は被告人の第一の行為を強盗未遂、第二 の行為を恐喝なりと認定し夫々の法条を適用して処
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人岩松孝雄上告趣意書は、『原判決は被告人の第一の行為を強盗未遂、第二の行為を恐喝なりと認定し夫々の法条を適用して処断した。しかしながら第一の行為と第二の行為との異る点は、第一の行為は被告人が小型庖丁様の刃物を出して「五千円貸して呉れ」と威嚇したのに対し、第二の行為は懐中時計を出して之を相手方に示し之れが買求めを求め拒絶せらるるや小型庖丁様の刃物を相手方に示し「之れで傷つけてやる」と脅したのであつて、一は無担保で金借を申込み、二は価値の低い物品を差出して高価に買取を求めた点にあるのであつて其目的達成の方法として小型庖丁様の刃物を相手方に示して威圧を加へた点は何れも同様なのである。そして其結果第一第二の相手方とも畏怖心を起したが何れも意思活動の自由を失ふことなく、第一の相手方は「実家へ行つて借りて来てあげる」と云つて被告人と共に屋外に出、第二の相手方は財布から金を出して勘定したのであつて、両人とも被告人の用ひた威嚇の手段に依つて抗拒不能に陥り機械的に被告人のなすがままに行動した事実はない。しからば両行為とも恐喝罪を以て論ずべきものであるに拘らず原審に於ては、二は物品を提供して買取を求めたものであるから恐喝罪なりと誤解し、強盗罪と恐喝罪の区別が物品提供の有無に拘らず、被害者の意思決定の自由を剥奪したるか、又は意思決定の自由を制限し、若くは意思の自由を妨害したかの点に存する事実を看過し第二の行為と同種同一の行為である第一の行為に対し強盗未遂罪の法条を適用処断したことは擬律に錯誤あり破毀すべきものと信ずる』と云うのである。 ところで、原判決が被告人に対して認定した(一)の事実は、被告人は昭和二十二年四月八日飲酒の上午後七時頃盛岡市a字bc番地A方に赴き、同人に対 律に錯誤あり破毀すべきものと信ずる』と云うのである。 ところで、原判決が被告人に対して認定した(一)の事実は、被告人は昭和二十二年四月八日飲酒の上午後七時頃盛岡市a字bc番地A方に赴き、同人に対し、所- 1 -携の庖丁を突付け、五千円を借せと申向けて脅迫し金銭を強取しょうとしたが、同人が応じなかつたため、その目的を遂げなかつたと云うのであるが、この判示事実を判示証拠に照合してみるに、被告人の右脅迫の所為たるや、相手方たるAの意思の自由を抑圧するに足るものであつたことが明かであるから、同人が偶々被告人の要求に応ぜず、従つて意思の自由を抑圧されなかつたとしても、被告人の判示所為は強盗罪の実行をもつて目さなければならない。それ故、右脅迫の結果金員を強取するに至らなかつた被告人は、強盗未遂罪の刑責に服すべきこと、固より論なき所である。してみれば、原判決が右事実に対し刑法第二百三十六条第一項第二百四十三条を適用して被告人を処断したのは、まことに、その所であり、毫も擬律錯誤の廉はない。所論は畢竟独自の見解たるに過ぎない。従つて論旨は理由なきものと云わなくてはならない。 右の理由により、刑事訴訟法第四百四十六条に則つて、主文のとおり判決する。 この判決は裁判官の全員一致の意見によるものである。 検察官福尾彌太郎関与昭和二十三年六月二十六日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 2 - 茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 2 -
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