【DRY-RUN】主 文 本件各上告を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人Dの負担とする。 理 由 被告人A、同Bの弁護人島田武夫、同島田徳郎の上告趣意第一点につ
主文本件各上告を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人Dの負担とする。 理由被告人A、同Bの弁護人島田武夫、同島田徳郎の上告趣意第一点について。 論旨は、原審が「国民金融公庫の役員及び職員たる地位は、それが公務員とされると否とに拘らずその役職員となろうとする者の自由意思に基き任命権者の任命により取得される身分関係であるから、憲法一四条にいわゆる社会的身分には該当しない」と判示したのは、憲法一四条の解釈を誤つたか又は判例に違反したものであると主張する。 成程、原審が昭和二四年法律第四九号国民金融公庫法を改正した昭和二七年法律第一五三号の下においても、同公庫の役員及び職員たる地位を以つて、憲法一四条の「社会的身分」に該当しないものとして居ることは、所論の通りである。しかし原判決の確定した所によれば、右被告人両名の本件収賄は、昭和二七年法律第一五三号による国民金融公庫法改正前に実行せられた犯罪てあつて、右改正後の同法の適用を受けることがないのであるから、改正後の同法の下における本件公庫の役職員たる地位が憲法一四条の「社会的身分」に該当するか否かは、原判決の結論に全く影響を及ぼさない。この点に関する原判示は、畢竟無用の判断であつて、論旨中かかる判示の違憲、判例違反の主張も亦、原判決に影響なく、上告適法の理由とならない。 以下、その余の論旨について説明する。 右改正前の国民金融公庫法一七条は、本件公庫の役職員を国家公務員とする旨規定して居る。その趣旨とする所は、同公庫が、民生の安定と社会秩序の維持とをはかる必要上、銀行その他一般の金融機関より資金の融通を受けることを困難とする- 1 -国民大衆に対して、必要な事業資金の供給を行うことを目的とする公法人であり、その資金の全額を政府に の維持とをはかる必要上、銀行その他一般の金融機関より資金の融通を受けることを困難とする- 1 -国民大衆に対して、必要な事業資金の供給を行うことを目的とする公法人であり、その資金の全額を政府において出資するものであること等その準行政機関的性格を有するに鑑み、立法政策の要請上、特に国家公務員を以つて同公庫の役職員に当てるとするに在るものと解すべきであつて、同条が、専ら罰則適用のためにのみ設けられた規定と解すべき趣旨の如きは、右改正前の国民金融公庫法上何処にも認め得られず、またかく解し得る余地はない。この点において同条は、右改正後の同条と全くその意義を異にする。すなわち右改正前の同法は、同公庫の役職員の職務上犯した非行に対する処罰はあげてこれを刑法の律する所に委ねて居るのである。換言すれば、同公庫の役職員に対し刑法一九七条が適用せらるべきか否かは、同公庫の役職員が刑法七条にいう公務員と解せられるか否かにかかる。同公庫の役職員は、右改正前の一七条により国家公務員とされているが故に刑法一九七条の適用を受けるのではなく、それが刑法七条にいう公務員と認められるが故にその適用を受けるのである。右改正前の一七条は、同公庫の役職員が刑法七条にいう公務員に当ると解すべき一根拠に過ぎない。しかも刑法七条にいう公務員の職務上犯した非行を処罰する刑法一九七条が憲法一四条に違反しないことは、既に当裁判所判例の示す所である(昭和三三年(あ)第二二一号同三四年一二月九日大法廷判決、刑集一三巻一二号三、一八六頁)。されば本件においては、所論の如く、本件公庫の役職員たる地位なるものを、刑法七条にいう公務員と別個独立に取上げ、それが憲法一四条にいわゆる「社会的身分」に該当するか否かを論ずるが如きは、事案の解決には全く無用の議論に外ならない。従つて、この点に関する原判決 なるものを、刑法七条にいう公務員と別個独立に取上げ、それが憲法一四条にいわゆる「社会的身分」に該当するか否かを論ずるが如きは、事案の解決には全く無用の議論に外ならない。従つて、この点に関する原判決の判示は、その結論には何等の影響を及ぼさないのみならず、所論引用判決は、本件公庫の役職員たる地位が憲法一四条にいう「社会的身分」に当るか否の点については何等の判示もしていないのであるから、所論はすべてその前提において失当で採るを得ない。 同第二点について。 - 2 -論旨は本件公庫は、その業務が国民大衆に対する金融であり、行政権の主体たる行政官庁とは本質的に異るものであるから、原判示の如く、その資金全額が政府の出資にかかる公法人であり、またその業務が公共的性格を持つて居るとしても、そのことから直に、同公庫の役職員が実質的に公務員であると解すべき根拠となし得ないのみならず、右改正前の国民金融公庫法一七条が同公庫の役職員を「国家公務員とする」旨規定して居つても、それは本来国家公務員でない者を国家公務員とみなした擬制に過ぎないのであり、そのことは右改正後の同法一七条により明文上確認せられて居るところであり、本来国家公務員でない者を国家公務員とみなして、これと同じく刑事上の制裁を科する改正前の同法一七条は、本来国家公務員たる身分を有する者との比較において、明かに不平等な差別待遇をするものであり、また公務員でない者を刑事上の制裁についてのみ公務員とみなして居る改正後の同法一七条は、公務員でない一般国民との比較上不平等の差別待遇をなすものであつて、同法一七条は改正の前後を通じて憲法一四条に違反すると主張する。 しかし、論旨中、改正後の国民金融公庫法一七条の違憲を主張する部分は、上告趣意第一点について説明した通り、右被告人等の本件犯罪が同法改正前に実行 は改正の前後を通じて憲法一四条に違反すると主張する。 しかし、論旨中、改正後の国民金融公庫法一七条の違憲を主張する部分は、上告趣意第一点について説明した通り、右被告人等の本件犯罪が同法改正前に実行せられたものであつて、改正後の同法一七条の適用を受けることはあり得ないのであるから、同条の違憲か否かは、原判決の結論に全く影響しない。この点に関する原判示は結局無用の判断に帰するのであつて、その限り論旨も亦原判決に影響なく、上告適法の理由とならない。 以下その余の論旨について説明する。 金融事業と雖も前述の如き公共的性質を持つものは、これを行政官庁の所管に置くべきかはた独立の公法人の目的事業となすべきか或はかかる公法人の役職員を国家公務員を以つて当つべきか否か等は、挙げて国家がその立法政策上の要請より決すべき事項である。改正前の国民金融公庫法は、この見地に立ち、その一七条によ- 3 -り同公庫の役職員には、国家公務員を以つて当てることとしたものと解すべきである。而して前述の通り同条は、専ら罰則適用のためにのみ設けられたものではない。 改正後の同法一七条は、右役職員は、刑法その他の罰則適用については、法令により公務に従事する職員とみなす旨規定して居ることは、所論の通りであるけれども、改正前の同法一七条をこれと同趣旨に解する要あるものとは、考えられない。 されば右改正前の同法下においては、同公庫の役職員は、本来国家公務員たる身分を持つて居つたのであつて、所論のように同法一七条の擬制によりはじめて国家公務員とみなされたものとは到底解し得ない。論旨は、その前提において既に失当であつて、その引用の判例は、事案を異にする本件に適切でない。 同第三点について。 論旨は、憲法三一条違反をも主張するけれども、その実質はすべて、単なる法令違反を論ずるに帰す 前提において既に失当であつて、その引用の判例は、事案を異にする本件に適切でない。 同第三点について。 論旨は、憲法三一条違反をも主張するけれども、その実質はすべて、単なる法令違反を論ずるに帰するのであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らないから採用し得ない。〔国民金融公庫は、その目的、出資者が前述のとおりの公法人であり(同公庫法一条、二条、三条)、その業務は大蔵大臣の定める計画及び指示に従うことを要し(同法一八条)、その業務については同大臣の監督を受けその訴訟については法務総裁の監督を受けるのであり(同法二八条)、その役職員は国家公務員とされ(右改正前の一七条)、またその予算は国会に提出しその議決を要し、その決算は会計検査院の検査に服するのである(同法二一条、昭和二四年法律二七号三条、五条、一一条)。従つて、それは国の行政機関そのものでないとしても、これに準ずるものと認められ、その事務は刑法七条にいう「公務」に当たると解するを相当とする。〕同第四点について。 論旨は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らないから、採用し得ない。 - 4 -被告人Cの弁護人深沢貞雄の上告趣意について。 論旨は、上告理由を発見し得ないとして居るのであるから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。 被告人Dの弁護人鹿島恒雄の上告趣意第一点について。 論旨は、違憲を主張するけれどもその採用できないことは、被告人A、同Bの弁護人島田武夫、同島田徳郎の上告趣意第一点、第二点について説明した所により、諒解すべきである。 同第二乃至第四点について。 論旨は要するに、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らないから、採用し得ない。 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて同 論旨は要するに、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らないから、採用し得ない。 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条(被告人Dに対してのみ)により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。 昭和三五年九月一三日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官石坂修一裁判官島保裁判官河村又介裁判官垂水克己裁判官高橋潔- 5 -
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