主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人は,控訴人に対し,金35万円を支払え。 (2) 控訴人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを3分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人の各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 被控訴人は,控訴人に対し,金50万円を支払え。 2 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要次のとおり補正するほかは,原判決の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決1丁裏末行の「慰謝料」の次に「40万円及び弁護士費用10万円」を加える。 2 同2丁表7行目の「相続人」を「の元所有者であるA(以下「亡A」という。)の相続人の一人」と改め,同8行目の「本件事業」の前に「被控訴人としては,」を加え,同9行目から10行目にかけての「本件土地」を「亡A」と改め,同10行目の「無断で」の次に「,同人らの」を加える。 3 同2丁裏1行目の次に改行して「3 本件偽造をした被控訴人の職員は,被控訴人の事業の執行につき本件偽造に及んだのであるから,被控訴人は,民法715条により本件偽造により控訴人が被った損害を賠償すべき義務がある。」を加え,同2行目の「(請求原因)」を削除し,同5行目の「原告は」から「押印なく」までを「亡Aの相続人の代表者の立場にあった控訴人は,他の相続人から,控訴人ら亡Aの相続人の署名,押印がなされないまま,本件事業に係る」と,同3丁表2行目の「費やせる」を「費やさせる」と,同7行目の「なお」から同8行目の「とすれば」までを次のとおりそれぞれ改める。 「本件偽造は,被控訴人の職員が上司の命令に従って行 事業に係る」と,同3丁表2行目の「費やせる」を「費やさせる」と,同7行目の「なお」から同8行目の「とすれば」までを次のとおりそれぞれ改める。 「本件偽造は,被控訴人の職員が上司の命令に従って行ったのであり,当時の被控訴人の代表者もその事情を知りながら,本件偽造の経緯及びこれに関与した職員を秘匿するなどした,いわば組織ぐるみの犯行であって」第3 当裁判所の判断 1 損害額(慰謝料及び弁護士費用)前記争いのない事実に証拠(甲4ないし8,11ないし13,17,21,22,25,26,乙1)を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 本件土地は,亡Aの相続人である同人の妻B,その子C,D,E,控訴人及びFが所有し,E及び控訴人が田として耕作していた。 (2) 本件土地は,本件事業の開発対象地域であり,亡Aの相続人の代表者的な立場にあった控訴人を窓口として,同事業につき説明がなされた。控訴人は,先祖伝来の本件土地を守るため,他の相続人の了解を得て,本件土地の買収に応じないこととし,その旨被控訴人に伝え,被控訴人による事業説明会にも1度出席したのみで,その後は出席しなかった。 (3) 被控訴人は,本件土地の買収を断念したが,本件土地が事業用地と国有地(里道)を挟んだ位置にあったことから,国有地との境界確認をする必要があり,被控訴人は,控訴人らに対し境界確認のための立会を要請したが,控訴人らはこれに応じなかった。ところが,被控訴人の職員により本件偽造がなされ,被控訴人が作成したa企業団地実施設計図(甲4)中の「隣接者同意書」の箇所に,隣接者が平成4年7月21日に立会し,「私所有地と法定外公共用財産との境界は現地及び図面で表示された通り異議ありません。」と境界確認を承諾したとして,B,C,E及び控訴人の署名(ただし,控訴人の署 隣接者が平成4年7月21日に立会し,「私所有地と法定外公共用財産との境界は現地及び図面で表示された通り異議ありません。」と境界確認を承諾したとして,B,C,E及び控訴人の署名(ただし,控訴人の署名は「K」となっている。),押印がなされている。 (4) その後,本件事業による開発工事が進み,完成した。控訴人は,工事途中で被控訴人から関係書類への押印を求められたが,応じなかったのに工事が完成したことから,不審に思い,平成8年末ころ被控訴人に問い合わせるなどしたが,明確な回答がないまま推移した。控訴人は,他の相続人に対し経過説明をしていたが,同人らは,必ずしもこれに納得せず,同人らから,控訴人が他の相続人に秘して被控訴人に協力したのではないかと疑われるような状況となった。 (5) そこで,控訴人は,真相を明らかにするため,平成12年1月24日,被控訴人を訪問し,控訴人が関係書類に押印していないのに,本件事業が完成した経緯を明らかにするよう申し入れた。被控訴人は,調査により同月末までには本件偽造が行われた事実を把握していたが,同月31日付けの控訴人に対する回答書においてその事実を明らかにしなかった。控訴人は,事実関係確認のため,その後十数回にわたって被控訴人を訪問したほか,県庁や山口県徳山土木建築事務所等に赴いた。被控訴人は,その後も本件偽造の事実を明らかにしなかったが,控訴人が同年3月15日付けで情報公開請求をし,同月24日被控訴人の正式書面として保管されていた前記実施設計図(隣接者同意書添付)が開示された結果,ようやく本件偽造の事実が明らかになった。 (6) 控訴人は,同年3月,本件偽造に係る犯罪の告訴について警察に相談したが,既に私文書偽造罪の公訴時効期間(5年)が経過しており,受理できないとの回答があり,告訴を断念した。 かになった。 (6) 控訴人は,同年3月,本件偽造に係る犯罪の告訴について警察に相談したが,既に私文書偽造罪の公訴時効期間(5年)が経過しており,受理できないとの回答があり,告訴を断念した。 (7) 平成12年1月31日付けで退職した被控訴人の前理事長Gの被控訴人業務引継書(甲21)には,事情が分かる職員から直接聴取した内容として,本件偽造が上司の命により行われた旨記載されている。また,本件偽造当時の被控訴人の用地担当職員(嘱託)Hの弟であるIの日記(甲25,平成12年6月23日の部分)には,Hが本件偽造に関与したとの報道について,Iが当時の被控訴人の常務理事Jに確認したところ,本件偽造に関し,「組織としてやったことで責任を感じている。」と発言した旨記載されている。 前記認定に照らせば,本件偽造は,担当職員の一存で行われたものではなく,上司の指示により組織的に行われた疑いが濃厚であると認められる(被控訴人の内部調査委員会の平成12年8月11日付け報告書(乙1)では,本件偽造に担当職員の上司が関与したか否かについては不明であるとされているが,G前理事長が前記業務引継書に本件偽造は上司の指示によるとの記載をした経過について十分解明された形跡がなく,前記報告書は,本件偽造が組織的に行われた疑いが濃厚であるとの前記認定を左右するものではないというべきである。)。 以上によれば,控訴人は,本件事業による本件土地買収に反対の意思を明らかにして買収を拒否し,被控訴人の要請による境界確認のための立会にも応じなかったのに,公共性の高い被控訴人が組織的に本件偽造を敢行し,その結果,控訴人らが境界確認に立会して,境界確認をしたような書面が作成され,被控訴人の正式書面として保管されていたのであって,控訴人がこれによって少なからぬ精神的苦 人が組織的に本件偽造を敢行し,その結果,控訴人らが境界確認に立会して,境界確認をしたような書面が作成され,被控訴人の正式書面として保管されていたのであって,控訴人がこれによって少なからぬ精神的苦痛を被ったであろうことは想像に難くない。その上,被控訴人は,真相究明に乗り出した控訴人に対し,早い段階で本件偽造の事実を把握しながら,これを明らかにしないなどその対応が不誠実であり,そのため,控訴人は,事実解明のため多くの時間と労力を費やさざるを得なかったこと,また,控訴人は,本件偽造に係る犯罪につき刑事告訴の機会を失ったこと(平成8年末に控訴人が被控訴人に問い合わせた際に本件偽造が判明しておれば,当時は,私文書偽造罪の公訴時効期間が経過していなかったので,告訴が受理される可能性があった。)など本件に現れた諸般の事情を総合的に考慮すれば,控訴人が本件偽造によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は,30万円と認めるのが相当である。 そして,本件事案及び訴訟の経過等にかんがみ,被控訴人に請求し得る弁護士費用は5万円と認めるのが相当である。 2 結論以上の次第で,控訴人の本訴請求は,被控訴人に対し,本件偽造による損害賠償として,慰謝料30万円及び弁護士費用5万円の合計35万円の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は失当であるから棄却すべきであり,これと異なる原判決を前記のとおり変更し,訴訟費用の負担について民事訴訟法67条2項本文,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部裁判長裁判官高升五十雄裁判官布村重成裁判官松井千鶴子 高升五十雄 布村重成 松井千鶴子
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