平成22年(行ク)第46号仮の義務付け申立て事件(本案事件平成22年(行ウ)第91号署名簿の署名効力決定義務付け等請求事件)決定 主文 本件申立てをいずれも却下する。 申立費用は,申立人らの負担とする。 理由 第1申立ての趣旨及び理由申立ての趣旨及びその理由は,別紙2の1「仮の義務付けの申立書」,別紙2の2「請求の趣旨並びに申立ての原因訂正申出書」及び別紙2の3,4の各「反論書」記載のとおりであり,これに対する相手方の主張は,別紙3の1,2の各「意見書」記載のとおりである。 第2事案の概要 申立人(本案事件原告)らは,地方自治法(以下「法」という。)76条の規定に基づき,請求代表者として名古屋市議会の解散請求をするための署名を集め,その署名簿を平成22年10月4日に名古屋市の各区選挙管理委員会に提出し,署名簿に署名した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めたところ,各区選挙管理委員会は,法76条4項,74条の2第1項所定の審査期間を延長し,いまだ署名の効力の決定等を行っていない。 本件の本案事件は,申立人らが,①処分行政庁である各選挙管理委員会が,a法が定める証明のための審査期間の終期である同月24日までに,法76条4項,74条の2第1項に定める審査を行わず,署名の効力を決定せず,その旨の証明をしなかったこと,b法76条4項,74条の2第2項に定める署名簿の関係人に対する縦覧をしなかったこと及び,c法76条4項,74条の2第3項に定める署名簿の縦覧の期間及び場所について予めこれを告示し,かつ,公衆の見やすい方法によりこれを公表しないことは違法であることの確認を求めるとともに,②処分行政庁である 76条4項,74条の2第3項に定める署名簿の縦覧の期間及び場所について予めこれを告示し,かつ,公衆の見やすい方法によりこれを公表しないことは違法であることの確認を求めるとともに,②処分行政庁である各選挙管理委員会に対し,a法76条4項,74条の2第1項に定める審査をし,各管轄区域の選挙人名簿に記載のある者によりされた署名については,当該管轄区域の各選挙管理委員会がこれを有効であると決定し,その旨の証明をすること,b法76条4項,74条の2第2項に定める署名簿の関係人に対する縦覧をすること及び,c法76条4項,74条の2第3項に定める署名簿の縦覧の期間及び場所について予めこれを告示し,かつ,公衆の見やすい方法によりこれを公表することの義務付けを求める事案であり,本件は,申立人らが,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づき,上記②について仮の義務付けを求めるものである。 政令指定都市における市議会解散請求の概要等市議会の解散請求は,当該市の議員及び長の選挙権を有する者(以下「選挙権者」という。)の総数の3分の1(選挙権者の総数が40万を超える場合にあっては,その超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもってする(法76条1項)。政令指定都市におけるその具体的な手続(ただし,署名に関する異議の申出までの手続)の流れは,次のとおりである。 (1) 解散請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」という。)は,その請求の要旨その他必要な事項を記載した解散請求書を添えて,市選挙管理委員会に対し,文書により「解散請求代表者証明書」の交付を申請する(地方自治法施行令〔以下「令」という。〕100条,91条1項)。市選挙管理委員会は,請求代表者が選挙人名簿に登録された者であると確認した場 対し,文書により「解散請求代表者証明書」の交付を申請する(地方自治法施行令〔以下「令」という。〕100条,91条1項)。市選挙管理委員会は,請求代表者が選挙人名簿に登録された者であると確認した場合は,請求代表者に対し,上記証明書を交付するとともに,その旨を告示する(令100条,91条2項)。 (2) 請求代表者は,選挙権者の連署を求めるために,区ごとに市議会解散請求者署名簿(以下「署名簿」という。)を作成する(令100条,93条)。署名簿は,地方自治法施行規則(以下「規則」という。)11条1項,9条1項所定の様式により作成しなければならない。請求代表者は,解散請求書又はその写し及び請求代表者証明書又はその写しを付して,選挙権者に対し署名押印を求めなければならない(令100条,92条1項)。また,次の(3)のとおり,署名の収集を他の選挙権者(後記,受任者)に委任する場合には,上記のものに加え,後記の委任状(原本)を付した署名簿を用いなければならない(令100条,92条2項)。 (3) 請求代表者は,署名の収集を選挙権を有する者に委任することができる(令100条,92条2項)。請求代表者からの署名収集の委任は,規則11条1項,9条1項所定の様式を備えた署名収集委任状(以下「委任状」という。)を受任者(以下「受任者」という。)に交付することより行い,請求代表者がこの委任を行ったときは,直ちに,市選挙管理委員会及び受任者の属する区の区選挙管理委員会に文書をもって届け出なければならない(令100条,92条3項,98条の3)。 なお,受任者が署名収集できる範囲は,当該受任者が属する区の区域に限られるが,請求代表者には,この制限はない(令100条,92条2項,98条の3)。 (4) 署名収集の期間は,原則として,解散請求代表者証明書交付の告示があった日 囲は,当該受任者が属する区の区域に限られるが,請求代表者には,この制限はない(令100条,92条2項,98条の3)。 (4) 署名収集の期間は,原則として,解散請求代表者証明書交付の告示があった日から1か月である(令100条,92条4項)。 (5) 署名簿の様式は,有効無効の印を押す欄,番号を付す欄,署名年月日の記載欄,署名者の住所,生年月日,氏名の各記載欄及び押印欄,代筆した場合の所定事項の記載欄並びに備考欄から成るとされており(規則11条,9条),署名者は,この署名簿に,氏名を自署し(一定の場合には,代筆が認められている〔法76条4項,74条7項,8項〕。),押印し,その他の所定事項を記載することが必要である(令100条,92条1項,2項)。 (6) 請求代表者は,署名収集を終えたときは,署名収集期間満了の日の翌日から起算して5日以内に,署名簿に署名し印を押した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めるため,署名簿を区選挙管理委員会に提出しなければならない(法76条4項,74条の2第1項,令100条,94条1項,98条の3)。 (7) 署名簿の提出を受けた区選挙管理委員会は,提出の日から20日以内に審査を行い,署名の効力を決定し,その旨を証明しなければならない(法76条4項,74条の2第1項,令98条の3)。 (8) 収集された署名のうち,法令の定める成規の手続によらない署名及び何人であるかを確認し難い署名は,無効となる(法76条4項,74条の3第1項)。 (9) 区選挙管理委員会は,署名の効力を決定するに当たり,必要があると認めるときは,関係人の出頭及び証言を求めることができ,その場合には,法に特別の規定がある場合を除き,民事訴訟法の証人尋問に関する規定が準用される(76条4項,74条の3第3項,4項,100条2項,3項,7項 は,関係人の出頭及び証言を求めることができ,その場合には,法に特別の規定がある場合を除き,民事訴訟法の証人尋問に関する規定が準用される(76条4項,74条の3第3項,4項,100条2項,3項,7項,8項,令98条の3)。 (10)区選挙管理委員会は,署名簿の審査が終了したときは,個々の署名ごとに署名簿の有効,無効の欄に印を押す方法により,署名の効力の証明を行う(令100条,94条2項,98条の3)。 (11)区選挙管理委員会は,署名簿の審査,効力の決定,証明が終了したときは,直ちに署名簿に署名し印を押した者の総数及び有効署名の総数を告示し,かつ,公衆の見やすい方法により掲示する(令100条,95条の2,98条の3)。 (12)区選挙管理委員会は,署名簿の署名の証明が終了したときは,その日から7日間,指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供する。区選挙管理委員会は,予め,署名簿の縦覧の機関及び場所を公示し,かつ,公衆の見やすい方法によりこれを公表しなければならない(法76条4項,74条の2第2項,3項,令98条の3)。 (13)署名簿の署名に関し異議がある関係人は,上記縦覧期間内に区選挙管理委員会に異議を申し出ることができる。区選挙管理委員会は,その異議の申出を受けた日から14日以内に決定をしなければならない。なお,区選挙管理委員会が14日以内に決定をしないときは,申出を退ける決定があったものとみなされる(法76条4項,74条の2第4項,5項,257条2項,令98条3項)。 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いのない事実及び後掲の証拠から容易に認定できる事実である。)(1) 当事者申立人らは,いずれも名古屋市民であり,平成22年8月17日(以下「平成22年」の記載は省略する。)に名古屋市選挙管理委員会(以下「市選挙管理 証拠から容易に認定できる事実である。)(1) 当事者申立人らは,いずれも名古屋市民であり,平成22年8月17日(以下「平成22年」の記載は省略する。)に名古屋市選挙管理委員会(以下「市選挙管理委員会」という。)に対し,名古屋市議会解散請求書を提出するとともに,その請求代表者証明書の交付を申請し,同月27日付で市選挙管理委員会からその証明書の交付を受けた者である。 被告は,市選挙管理委員会及び別紙当事者目録記載の各区選挙管理委員会(合計16の区選挙管理委員会。以下総称して「区選挙管理委員会」という。)が属する地方公共団体である。 区選挙管理委員会は,法76条4項,74条の2第1項,令100条,98条の3第1項により,署名簿の署名の効力を決定し,その旨を証明する権限を有する機関である。 市選挙管理委員会は,区選挙管理委員会を指揮監督する権限を有する機関である(令174の48第1項)。 (2) 本件の経過等ア申立人らは,上記(1)のとおり,8月27日,名古屋市議会解散請求の請求代表者証明書の交付を受け,市選挙管理委員会は,同日,請求代表者証明書の交付の告示をした。したがって,申立人らが署名を収集することができる期間は,同日から9月27日までである(以下,この期間を「署名収集期間」といい,署名収集期間中に署名を集める活動を「本件署名収集活動」という。)。 イ署名収集期間中,市選挙管理委員会に対し,本件署名収集活動について,「署名簿が回覧で来た」などといった署名の収集方法の問題点を指摘する情報が寄せられた。そこで,市選挙管理委員会の委員長は,8月31日,署名の仕方や署名収集の方法については,法に厳格な定めがあり,これに基づかない署名は無効となること,及び署名が無効となる主な事例を委員長談話として発表し,その内容は報道された。その後も,市 31日,署名の仕方や署名収集の方法については,法に厳格な定めがあり,これに基づかない署名は無効となること,及び署名が無効となる主な事例を委員長談話として発表し,その内容は報道された。その後も,市選挙管理委員会には違法な署名の収集についての情報が伝えられたので,市選挙管理委員会は,本件署名収集活動の推進母体であるA事務局宛てに,情報が寄せられた問題となる署名収集の具体的な事例を知らせるとともに是正を促した(甲11,乙3から5〔枝番を含む。〕)。 ウ申立人らは,10月4日,区選挙管理委員会に対し署名簿を提出し,署名簿に署名し印を押した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めた。区選挙管理委員会に提出された署名簿の冊数は合計6万5190冊,署名は合計46万5594筆であった(甲2の1から16,乙6)。なお,名古屋市の場合,今回の解散請求において必要とされる人数は36万6124人である(乙7,8)。 エ区選挙管理委員会は,申立人らからの署名簿の提出を受けて,審査を開始した。 オ申立人らは,本件署名収集活動における署名簿の様式について,請求代表者が署名を集める場合も,受任者が署名を集める場合も,同一のものを使用していた。すなわち,署名簿に請求代表者が受任者に交付すべき委任状の書式が付されていたが,これには,委任状に受任者の住所及び氏名の記載がある署名簿と,記載のない署名簿が混在していた。委任状に受任者の氏名及び住所が記載されていない署名簿の数は,合計2万0768冊(全体の31.86%),署名の数は,合計11万4805筆(全体の24.66%)に上った(以上につき,甲1,乙10)。 カ市選挙管理委員会は,委任状に受任者の氏名及び住所の記載のない署名簿に記載された署名について,全数調査を実施する必要があると判断して,10月21日に開催さ に上った(以上につき,甲1,乙10)。 カ市選挙管理委員会は,委任状に受任者の氏名及び住所の記載のない署名簿に記載された署名について,全数調査を実施する必要があると判断して,10月21日に開催された市選挙管理委員会及び区選挙管理委員会の合同会議において,審査期間を1か月程度延長し,委任状に受任者の氏名及び住所の記載のない署名簿の署名者全員に対し,調査票を送付して,署名を求められた状況の調査を行う方針を確認した(甲19の1から4,甲27,乙11の1,2。以下,この延長を「本件延長」という。)。 キ区選挙管理委員会は,10月25日から,調査票の作成及び発送のための準備を始め,11月9日に,同月17日を回答期限とする調査票の発送を開始した(乙11の1,2)。 本件の争点本件の争点は,①市選挙管理委員会を処分行政庁として,仮の義務付けを求める申立ての適法性,②本件申立ては「本案について理由があると見えるとき」に当たるか否か,すなわち,本件延長が適法であるか否か,③仮の義務付けをすることにつき,償うことのできない損害を避けるため緊急の必要性があるか否かである。 第3当裁判所の判断 市選挙管理委員会を処分行政庁として,仮の義務付けを求める申立ての適法性について政令指定都市における市選挙管理委員会は,区選挙管理委員会を指揮監督し,区選挙管理委員会の処分が法令等に違反すると認めるときは,その処分を取り消し,又は停止することができる(令174条の48第1項,法154条の2)が,申立人らが仮の義務付けとして求めている市議会解散請求における署名の効力の決定等を行うべき地位にあるのは,区選挙管理委員会である(法76条4項,74条の2第1項,令100条,98条の3第1項)。 よって,本件申立てのうち,市選挙管理委員会を処分行政庁として,仮の義務付け 決定等を行うべき地位にあるのは,区選挙管理委員会である(法76条4項,74条の2第1項,令100条,98条の3第1項)。 よって,本件申立てのうち,市選挙管理委員会を処分行政庁として,仮の義務付けを求める部分は,権限のない者を処分行政庁として仮の義務付けを求めるものであり,不適法である。 本件延長が適法であるか否かについて(1) 区選挙管理委員会が署名の効力を決定するために審査すべき内容等ア請求代表者が,区選挙管理委員会に対し,署名簿に署名し印を押した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めた場合,①法令の定める成規の手続によらない署名,②何人であるかを確認し難い署名は無効とされている(法76条4項,74条の3第1項)から,区選挙管理委員会は,その審査に当たり,これらの点を検討することになる。具体的には,署名簿に署名し印を押した者が選挙人名簿に登録された者であるか否かの他に,①に関しては,次の事項等について審査することになる。 a署名簿そのものに様式違反等の瑕疵があるか否かb署名収集の主体,方法に瑕疵があるか否かc署名が自署であるか否かd押印があるか否かe署名簿の他の記載事項に不備があるか否かまた,署名収集の具体的な方法は,戸別訪問によると街頭で署名を求める方法によると自由であるが,前記第2の2(2),(3)記載のとおり,請求代表者又は受任者が所定の署名簿を使用して署名を収集しなければならないことに照らせば,署名収集の方法は,対面による方法に限られ,郵送等の方法によることは認められていないと解される。したがって,対面以外の方法で収集された署名は,方法に瑕疵がある署名として無効となる。 イ上記のとおり,署名の効力の証明を求められた区選挙管理委員会は,署名簿に記載された署名が,選挙人名簿に登録された者の署名 対面以外の方法で収集された署名は,方法に瑕疵がある署名として無効となる。 イ上記のとおり,署名の効力の証明を求められた区選挙管理委員会は,署名簿に記載された署名が,選挙人名簿に登録された者の署名であることの確認のみならず,その署名が法令の定める成規の手続による署名であるか否かを確認する必要があるのであるから,区選挙管理委員会が行うべき審査は,選挙人名簿と署名簿の署名の単純な対比,確認作業にとどまるものではなく,署名が法令の定める成規の手続によるものか否かという実質を含んだ判断を求められているものと解される。令及び規則は,署名の効力について,できるだけ画一的,形式的に判断できるように,前記第2の2(5)のとおりの署名簿の様式を定めているが,その様式に従った署名簿に署名をしても,例えば,当該署名簿により署名を求めた者が請求代表者であったか否か,あるいは対面により署名を求めたか否かなど,それだけでは署名が法令の定める成規の手続によるものか否かの判断ができない場合があることは否定できないところである。 したがって,署名の効力の証明を求められた区選挙管理委員会は,署名簿を外形的,形式的に審査するだけではなく,署名の効力について判断するために必要な調査をする権限を有していると解するのが相当であり,どのような調査をどの範囲で行うかについては,当該選挙管理委員会の合理的な裁量に委ねられていると解される。そして,法が関係人に対して出頭及び証言を求めることができると規定している(法76条4項,74条の3第3項,100条2項,3項,7項,8項)のは,このような場合を想定してのことであると理解できる。 (2) 審査期間の延長の可否について議会の解散請求の場合,請求代表者が,署名簿に署名した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めた場合の審査期間は2 想定してのことであると理解できる。 (2) 審査期間の延長の可否について議会の解散請求の場合,請求代表者が,署名簿に署名した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めた場合の審査期間は20日とされている。ところで,署名簿の署名に関し異議を申し立てた場合,市町村の選挙管理委員会は,申出を受けた日から14日以内にこれを決定しなければならず(法76条4項,74条の2第4項,5項),もし市町村の選挙管理委員会が14日以内に決定をしない場合には,当該申出を退ける旨の決定があったものとみなされる(法257条2項)が,署名簿に署名した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めた場合の選挙管理委員会における審査期間が20日を超えた場合に,法257条2項に相当するような当該署名を有効又は無効であるとみなす旨を定めた規定は存在しない。そして,この20日の期間は,当該署名活動が行われた地方公共団体の規模や必要とされる署名数の多寡を問わず一律に決められている上,上記のとおり,選挙管理委員会は,署名が法令の定める成規の手続によるものか否かについて実質的な判断義務を負い,そのために必要な調査をすることができると解されることに照らせば,上記20日の審査期間は,延長することができない期間と理解するのは相当でなく,その期間を定めた規定は,訓示規定と解するのが相当である。この点,申立人らは,審査期間の20日は延長することができない期間であると主張するが,以上の判示に照らし,採用できない。 もっとも,法が訓示規定であれ審査期間を20日と定めた趣旨は,議会の解散を求める民意を可及的に早く次の手続に反映させることを求めるものと解されるので,選挙管理委員会が20日間の審査期間を延長できるとしても,もとより,選挙管理委員会が恣意的に延長をすることは許されず,審査期 める民意を可及的に早く次の手続に反映させることを求めるものと解されるので,選挙管理委員会が20日間の審査期間を延長できるとしても,もとより,選挙管理委員会が恣意的に延長をすることは許されず,審査期間の延長が認められるためには,延長してまでも審査を必要とする合理的な理由が必要であり,また,延長する期間も必要とされる審査を行うために相当な期間に限られるというべきである。 (3) 本件延長の適否について以上の観点から,本件延長の適否について検討する。 ア審査期間を延長する必要性について(ア) 前記第2の3(2)オのとおり,本件署名収集活動により区選挙管理委員会に提出された署名簿には,請求代表者が受任者に交付すべき委任状の書式が付されていたが,委任状に受任者の住所及び氏名の記載がある署名簿と,それらの記載のない署名簿が混在しており,委任状に受任者の氏名及び住所が記載されていない署名簿の数は,合計2万0768冊(全体の31.86%),署名の数は,合計11万4805筆(全体の24.66%)であった。なお,委任状に受任者の氏名及び住所が記載されていない署名簿に記載された署名をすべて請求代表者(10名)が集めたとした場合,請求代表者1人につき,署名簿にして約2000冊,署名者数にして約1万1400筆の署名を集めたこととなる。 また,証拠(乙3から5〔枝番を含む。〕)によれば,署名収集期間中,市選挙管理委員会に対し,①回覧により署名を求めていた,②郵便受けに署名簿を入れ,署名を求めていた,③街頭で署名簿を配り,署名を求めていた,④マンションの掲示板に署名簿を掲示し,署名を求めていた,⑤店主等が請求代表者又は受任者でない店舗に署名簿を据え置き,署名を求めていた,⑥請求代表者又は受任者以外の者が署名を求めていた,⑦受任者が収集する場合であっても,委任状に受 示し,署名を求めていた,⑤店主等が請求代表者又は受任者でない店舗に署名簿を据え置き,署名を求めていた,⑥請求代表者又は受任者以外の者が署名を求めていた,⑦受任者が収集する場合であっても,委任状に受任者の氏名及び住所が記載されていない署名簿で署名を求めていた,⑧受任者が自分の区以外の区の署名を求めていた,⑨受任者になる申出をしていないにもかかわらず,署名簿等が送付されてきた,⑩受任者でないにもかかわらず,署名を集めるように求められた,⑪勤務先の会社の人事課から署名簿が回ってきて,家族の分の署名も書くように言われた,⑫居酒屋で署名を求められたが,家族の分も書くように依頼された,⑬ホームセンターの従業員休憩所に署名簿が置いてあり,店長の「署名のご協力お願いします」とのメモが添えられていた,といった情報が寄せられたことが認められる。 そして,証拠(甲19,乙11,13〔いずれも枝番を含む。〕)によれば,①市選挙管理委員会は,形式的には委任状に受任者の氏名及び住所が記載されていない署名簿は請求代表者が署名を収集したものと判断されるとしながらも,上記事情に照らし,請求代表者1人当たり約2000冊,約1万1400筆の署名を集めることが可能か,更には委任状に受任者の氏名及び住所の記載のない署名簿を成規の署名簿として有効と扱ってよいか疑義を抱くようになった,②そこで,市選挙管理委員会は,委任状に受任者の氏名及び住所の記載のない署名簿に記載された署名について,全数調査を実施する必要があると判断し,調査票を送付して署名者に回答を求めることとし,調査期間については,調査対象となる署名数が大量であるため,調査票の準備期間,郵送期間,返送期間及び回答の処理期間を考慮して,法76条4項,74条の2第1項で定める20日間の審査期間を,1か月程度延長する必要があると判断 査対象となる署名数が大量であるため,調査票の準備期間,郵送期間,返送期間及び回答の処理期間を考慮して,法76条4項,74条の2第1項で定める20日間の審査期間を,1か月程度延長する必要があると判断し,10月21日に開催された市選挙管理委員会及び区選挙管理委員会の合同会議において,本件延長を正式に決定したことが認められる。 (イ) 以上の事実関係に照らせば,市選挙管理委員会及び区選挙管理委員会が,本件署名収集活動により提出された署名簿に記載された署名の有効性につき疑問を抱き,その効力を判断するために,更なる審査が必要であるとして,審査期間を延長したことには合理的な理由があったと認められる。 イ延長期間の相当性について(ア) 前記2(1)イのとおり,区選挙管理委員会は署名の効力について判断するために必要な調査をする権限を有しており,その場合,どのような調査をどの範囲で行うかについては,当該選挙管理委員会の合理的な裁量に委ねられていると解される。 本件では,委任状に受任者の氏名及び住所が記載されていない署名簿に記載された署名の有効性が問題となっているところ,これを判断するためには,当該署名者に,誰からどのような状況で署名を求められたのかを確認することが最も直截であると認められる。そして,どのような調査票をどの範囲の署名者に送付するかは,区選挙管理委員会の合理的な裁量に委ねられていると解されるところ,署名の効力は,個々の署名ごとに判断すべきものであるから,疑義のある署名者すべてに調査票を送付したことが,裁量権を濫用し又はその範囲を逸脱したものとは認められない。また,調査票の質問内容及び回答方法は,①署名をしたか否か,②どのように署名を求められたか,③誰から署名を求められたかについて,あらかじめ設定された選択肢の中から選んで回答するものであり( れない。また,調査票の質問内容及び回答方法は,①署名をしたか否か,②どのように署名を求められたか,③誰から署名を求められたかについて,あらかじめ設定された選択肢の中から選んで回答するものであり(甲19の4),署名に関連する客観的な事実を聞くものであり,不相当な質問であるとは認められない。 この点,申立人らは,質問が求められて署名したことが前提となっており,自発的に署名した人達に対する質問事項がないと主張するが,令100条で準用する令92条1項は「請求代表者は,解散請求署名簿に(中略)署名をし印をおすことを求めなければならない。」と規定しており,調査票は,その文言どおりに記載したものと認められ,不当な質問方法であるとは認められない。 さらに,申立人らは,本件署名収集活動に賛同して署名した者が,署名の際に受任者又は請求代表者がその場にいることを確認する法的義務はないから,上記③の質問に明確に回答できないと思われるのに,このような質問により署名の有効性について判断することができるか疑問であると主張する。しかし,署名を求めることができる者は請求代表者と受任者に限られているのであるから,署名を求めた主体が誰であるかは署名の効力に関わる事項であり,受任者が使用する署名簿には委任者(請求代表者)及び受任者の氏名等が記載された委任状が付されているから,署名者が署名の際に,これを確認する場合がないとはいえず,質問が不当であるとまでは認められない。 確かに,署名を求めている者が誰であるかを確認せずに署名する者が相当数いることは否定できず,その回答の扱い方によっては,署名の効力の決定における結論の相当性に疑問が生じる可能性があることは否定できない。しかし,現時点において,その回答と署名の効力の判断の関係は当裁判所には判明しておらず,この点は,区選挙管理委員会 署名の効力の決定における結論の相当性に疑問が生じる可能性があることは否定できない。しかし,現時点において,その回答と署名の効力の判断の関係は当裁判所には判明しておらず,この点は,区選挙管理委員会が署名の効力を決定した後の異議の申出において判断するのが相当である。 よって,上記主張は採用できない。 なお,申立人らは調査方法が一種の思想調査であり憲法19条に違反すると主張するが,上記の判示に照らせば,採用できない。 (イ) 上記のとおり,市選挙管理委員会及び区選挙管理委員会が採用した調査の方法は相当なものであると認められるところ,証拠(乙11の1)によれば,調査票の発送の準備,回答期間,回答結果の検討,集計のために必要な期間として,1か月程度は必要であったと認められる。よって,本件延長における延長期間も相当なものと認められる。 この点,申立人らは,本来区選挙管理委員会がすべき署名の効力の判断に関し,市選挙管理委員会が全数調査する必要があると判断するなど主体的に関与しており,市選挙管理委員会の委員の多くが元名古屋市議会議員であったことを考えれば,本件延長は政治的意図の下に行われた可能性があると主張する。しかし,政令指定都市における市選挙管理委員会は,区選挙管理委員会を指揮監督し,区選挙管理委員会の処分が法令等に違反すると認めるときは,その処分を取り消し,又は停止することができる(令174条の48第1項,法154条の2)から,本件において,市選挙管理委員会が関与することが違法であるとは認められない。 また,申立人らは,市選挙管理委員会は,本件延長の期間を「1か月程度」と示したのみで,その終期の明示がなく,また11月24日に選挙管理委員会を開催すると述べるが,あくまでも予定にすぎないと主張する。確かに,市選挙管理委員会は,本件延長の終期を明示してい 1か月程度」と示したのみで,その終期の明示がなく,また11月24日に選挙管理委員会を開催すると述べるが,あくまでも予定にすぎないと主張する。確かに,市選挙管理委員会は,本件延長の終期を明示していない。しかし,被告は,本件において,本来の審査期間の終期(10月24日)から1か月目の日である11月24日に選挙管理委員会を開催して,署名の効力に関する決定をすると述べている。そして,同日までに,区選挙管理委員会が署名の効力に関する決定をすれば,相当とされる期間を遵守して上記決定をしたことになる。また,現在のところ,この予定が守られないことを示す証拠はない。そうすると,本件延長の相当期間である1か月が経過していない現在の時点において,本件延長の終期が明示されていないことをもって,本件延長が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとすることはできない。 ウ以上によれば,本件延長は,適法であると認められるので,本件申立ては行政事件訴訟法37条の5第1項にいう「本案について理由があると見えるとき」に当たるとは認められない。 第4 結論 よって,本件申立てのうち,市選挙管理委員会を処分行政庁として仮の義務付けを求める部分は不適法であり,その余の申立ては,その余の点を判断するまでもなく理由がないので,本件申立てをいずれも却下することとし,主文のとおり決定する。 平成22年11月19日名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官増田稔裁判官鳥居俊一裁判官杉浦一輝〔別紙の添付省略〕 杉浦一輝
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