1 令和5年3月24日宣告 大津地方裁判所刑事部判決 令和2年(わ)第489号、同第521号、同第568号、令和3年(わ)第61号、 同第94号 傷害致死、恐喝未遂、傷害被告事件 主 文 被告人を懲役24年に処する。 未決勾留日数中600日をその刑に算入する。 理 由 【当裁判所が認定した事実】 第1 令和5年1月19日宣告の部分判決(以下「部分判決」という。)の第1の 記載を引用する。 第2 部分判決の第2の記載を引用する。 第3 部分判決の第3の記載を引用する。 第4〔令和2年12月16日付け起訴状記載の公訴事実(令和4年6月3日付け請求書に 基づく訴因変更後のもの)関係〕 (犯行に至る経緯等) 被告人は、平成30年10月当時、滋賀県愛知郡a町bc番地d所在の被告 人方において、実子であるBと生活していたが、その頃、知人の夫である被害 者④が、結婚生活の不満を訴え、被告人から同居を提案されたことなどから、 被告人方で生活するようになった。また、同年11月頃には、被告人の実子で あるAが被告人方で生活するようになり、Aの交際相手であるCも頻繁に被告 人方を訪れて寝泊りするようになった。 被告人は、かねてから、Bに対し、暴力を振るったり、食事の量や回数を制 限したりしており、被害者④と同居開始後は、Bに指示して、被害者④に暴力 を振るわせたり、タイマンと称して互いに暴力を振るわせたりしていたが、平 成31年1月末頃に、Bが被告人方を出た後は、被害者④を「ハゲ」などと呼 ぶようになり、機嫌が悪いときなどに被害者④に暴力を振るったり、被害者④ 2 に与える食事を減らすようになった。また、Aも、同じ解体業者で働いていた 被害者④に対し、仕事でミスをしたなどとして暴力を振るうようになったほか、 被告人方 に被害者④に暴力を振るったり、被害者④ 2 に与える食事を減らすようになった。また、Aも、同じ解体業者で働いていた 被害者④に対し、仕事でミスをしたなどとして暴力を振るうようになったほか、 被告人方において、被害者④のそばを通る際などに暴力を振るうようになった。 被告人は、被害者④が同年4月に仕事を辞め、給料が入らなくなると、被害者 ④への暴力や食事制限を激しくしていった。 (罪となるべき事実) 被告人は、Aと共に被害者④を虐待しようと考え、Aと共謀の上、令和元年 6月頃から同年10月25日までの間、被告人方又はその周辺において、被害 者④に対し、被告人が、仕事をしていないことなどを理由に、多数回にわたり、 手拳や平手で被害者④の顔面を殴打したり、木刀や金属製の棒で、手足、腕、 肩、腹部等を殴ったりし、Aが、被害者④のそばを通るときに邪魔だなどと言 って殴ったり、スパーリングと称して一方的に被害者④の顔や上半身、腹部等 を殴り、足を蹴ったりするなどの暴行を日常的に加え、被害者④に左眼球結膜 下出血、左上眼瞼及び前額部表皮剥脱、第7頚椎骨折、第1及び第2胸椎骨折、 左上腕骨骨折、右下腿脛骨骨膜損傷、右側胸部及び左前腕皮下出血等の傷害を 負わせるとともに、これら一連の暴行等によって被告人らを畏怖し、被告人ら の意のままに従わざるを得ない状況にあった被害者④に対し、被告人が与える 飲食物以外の摂取を禁止し、十分な飲食物を与えずにその食事を制限し、前記 一連の暴行及びそれに起因する傷害並びに食事制限によって、その免疫力を著 しく低下させるなどして、肺炎、肺真菌症、十二指腸穿孔に基づく腹膜炎を発 症させ、同月26日午後10時48分頃、同県東近江市e町f番地g所在のh 病院において、被害者④(当時25歳)を前記腹膜炎等に起因する敗血症性シ ョックにより死亡させた。 第5〔令和 基づく腹膜炎を発 症させ、同月26日午後10時48分頃、同県東近江市e町f番地g所在のh 病院において、被害者④(当時25歳)を前記腹膜炎等に起因する敗血症性シ ョックにより死亡させた。 第5〔令和2年11月4日付け起訴状記載の公訴事実関係〕 被告人は、被害者④の生活費等の名目で、被害者④の実兄である被害者⑤か ら現金を脅し取ろうと考え、Aと共謀の上、令和元年8月13日から同年10 3 月中旬頃までの間、複数回にわたり、滋賀県内又はその周辺から、岐阜県恵那 市i町jk番地l所在の自宅にいた被害者⑤に電話をかけ、被害者⑤に対し、 被告人が、「被害者④が仕事をしていなくて、飯も食わしとる」「お金を払わな いなら、やくざを連れてすぐそっちいくぞ」などと告げ、Aが「タイマン張れ や」「お前が払うのが筋やろう」などと告げたほか、Aが「おらっ、今被害者 ④を殴ったぞ」「被害者④が吐いたので床が汚れた、どうしてくれるんや」と 告げ、被告人も「今被害者④をAが殴ったぞ」などと告げて現金20万円の交 付を要求し、さらに、その後支払をしない被害者⑤に対し、被告人が「金どう なっとる」「やくざそっちに連れていくぞ」などと告げ、Aが「約束が違うや んけ」「兄だからお前が払え」「お前を殴るぞ」などと告げて、現金150万円 の交付を要求し、もしその要求に応じなければ、被害者⑤及び被害者④の生命、 身体等に危害を加える旨の気勢を示して脅迫し、被害者⑤から現金を脅し取ろ うとしたが、被害者⑤が被告人らの要求に応じなかったため、その目的を遂げ なかった。 【判示第4及び第5の事実認定に関する補足説明】 第1 争点 被告人は、傷害致死事件(判示第4)について、被害者④に対し軽微な暴行を加 えたことはあるが、ひどい怪我をするような暴行をしたり、被害者④の食事を制限 したりしたことはないし、暴行等に 第1 争点 被告人は、傷害致死事件(判示第4)について、被害者④に対し軽微な暴行を加 えたことはあるが、ひどい怪我をするような暴行をしたり、被害者④の食事を制限 したりしたことはないし、暴行等についてAに指示したこともなく、また、恐喝未 遂事件(判示第5)について、被害者⑤に対し生活費等の援助を依頼したことはあ るが、自分やAが公訴事実記載のような言動をして脅したことはない旨供述し、弁 護人も、同供述を前提に、被告人は、暴行や食事制限といった傷害の実行行為や恐 喝の実行行為をしておらず、これらに関しAとの共謀も認められないから、いずれ も無罪である旨主張する。そこで、当裁判所が、判示第4及び第5のとおり事実を 認定した理由について、以下、補足して説明する(なお、平成31年ないし令和元 年の出来事については年の記載を省略する。)。 4 第2 傷害致死事件について 1 被害者④の身体の状況等 関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 同居開始時の被害者④の身体の状態 被害者④は、平成30年7月の健康診断時、身長172.2cm、体重51.6 kgで、経過観察や治療を要する所見はなく、血液検査でも栄養状態や免疫状態を 示す項目に異常はなかった。平成30年10月頃に被告人方での同居生活を開始し た時点においても、異常に痩せていたり、怪我等をしたりしている様子はなかっ た。 イ 同居生活中の被害者④の心身の状況等 被害者④は、同居開始後まもなく、それまで働いていた勤務先を辞め、平成30 年11月頃から、Aが働いていた解体業者で働くようになったが、4月末頃から仕 事に行かなくなり、以後、ほぼ被告人と行動を共にして、被告人方にいるか、被告 人が毎日のようにパチンコ店に行くのについて行くかしていた。 被害者④は、6月頃以降は、常に両目の周りが腫れており、鼻が 事に行かなくなり、以後、ほぼ被告人と行動を共にして、被告人方にいるか、被告 人が毎日のようにパチンコ店に行くのについて行くかしていた。 被害者④は、6月頃以降は、常に両目の周りが腫れており、鼻がつぶれたような 状態で、夏頃には、左腕が腫れて、曲がったまま動かせない状態となり、左手指を 火傷していた。また、6月頃から目立ってやせ細り、夏以降は、複数の者がこのま までは死んでしまうと思うほどの状態になった。被害者④は、9月17日頃にパチ ンコ店で万引きをして、後日、警察で事情聴取を受けたが、その際、極度にやせ細 った状態の姿が写真撮影されている。同月末頃に、被告人らの知人であるDが被告 人方を訪れた際、上記のような状況を見て被告人に問いただしたり、被害者④に連 れ出してやると言ったりしたが、被告人は被害者④に対する暴力や食事制限を否定 し、被害者④も被告人が言うとおりに答え、被告人方を出ていこうとしなかった。 10月中旬頃に被害者④やAの元同僚であるEが被告人方を訪れた際は、被害者④ は、言葉を発せず、しんどそうな(疲れたような)様子だった。 ウ 救急搬送時の状況 5 被害者④は、10月25日午後2時25分頃、被告人とパチンコ店を訪れたが、 午後4時頃、被告人に支えられて同店を退店し、被告人方に戻った後、意識を失っ た。被告人の119番通報により、同日午後11時2分頃、救急隊が臨場したとこ ろ、被害者④は心肺停止の状態であり、病院に救急搬送され、医師による心肺蘇生 により一時心拍が再開したものの、翌26日午後10時48分、死亡が確認された。 エ 司法解剖時の被害者④の身体の状況 10月28日の司法解剖の結果、被害者④の頭部、顔面、胸腹部、背部や両手、 両足には多数の皮下出血や表皮剥脱があり、左腕、肋骨、胸椎等にも複数の骨折跡 が認められたほか、左手には指先から広 身体の状況 10月28日の司法解剖の結果、被害者④の頭部、顔面、胸腹部、背部や両手、 両足には多数の皮下出血や表皮剥脱があり、左腕、肋骨、胸椎等にも複数の骨折跡 が認められたほか、左手には指先から広がるように真皮が露呈するほどの火傷の跡 が残っており、右の脛には骨に達するまで皮膚がえぐれた皮膚潰瘍等認められたが、 これらのうち、胸部や臀部、両腕や右足の皮下出血等は、受傷後1、2週間以内の 真新しいものであると認められた。 血液検査の結果、被害者④の血糖値は、意識朦朧や異常行動等を起こし昏睡に至 るとされる30mg/dLを大きく下回る14mg/dLであったことに加え、栄 養状態を示す総蛋白、アルブミン、コリンエステラーゼが基準値の半分程度やそれ 以下であり、免疫機能の状態を示す白血球やリンパ球等の値も低く、低栄養かつ低 免疫状態と認められた。 司法解剖時、被害者④の身長は174.0cm、体重は36.8kgで、極度の るい痩の状態であった。 2 目撃者らの証言の信用性 ア Cの証言内容 Aの交際相手であり、被告人方に頻繁に行っていたCは、当公判廷において、要 旨以下のとおり証言する。 6月以前の状況 被告人は、従前Bに対して暴力を振るったり、食事を与えないなどしていたとこ ろ、Bが被告人方から出ていくと、暴力や食事制限の対象を被害者④へと変え、2 6 月頃以降、被害者④に対する食事の量を減らしたり、被害者④が言いつけられた家 事をしていないなどとして機嫌を損ね、その顔や頭を手拳や平手で叩いたり、木刀 で殴ったりするようになった。また、Aも、その頃から、通行の邪魔であるなどと して、被害者④の肩や首を蹴るようになったほか、スパーリングの名目で、互いに グローブ等を着けて被害者④を殴るようになった。 6月以降の暴行等について 被害者④が4月末に仕事を辞め、 であるなどと して、被害者④の肩や首を蹴るようになったほか、スパーリングの名目で、互いに グローブ等を着けて被害者④を殴るようになった。 6月以降の暴行等について 被害者④が4月末に仕事を辞め、被告人に給料を渡せなくなった6月以降、被告 人は、それまでの暴行に加え、長さ50cmほどの金属製の棒で、被害者④の肩や 腕、足を殴るようになり、さらに9月以降は、暴行を加える頻度が増え、ほぼ毎日 のように被害者④に対し暴行を加えるようになった。9月20日に被害者④がパチ ンコ店の景品を万引きしたことが発覚した際には、被告人は、手癖が悪いから自分 で叩けなどと言って、被害者④が火傷していた左手の甲を自ら金属製の棒で叩かせ た上、その力が弱いとして、被告人が金属製の棒で被害者④の左手を強く叩いたり、 肩や足を叩いたりした。 Aも、6月以降、スパーリングと称し、グローブ等を着けず一方的に被害者④の 顔や上半身、腹等を殴ったり、足を蹴ったりするようになり、9月以降はほぼ毎日 のように暴力を加えるようになった。被告人は、Aが被害者④に暴力を振るってい るのを見て笑ったり、暴力を煽ったりする一方、暴力を振るうAを止めたり、注意 をすることはなかった。 また、被告人は、6月頃から、被害者④に対し、逃げたらやくざがいるから見付 ける、実家に追込みをかけるなどと何度も告げていた(以下、これを「やくざ発言」 という。)。 6月以降の食事制限について 被告人は、6月頃から、被害者④の食事を一日2食から一日1食に減らし、その 内容も、子供用の茶碗に盛った少量のご飯に腐った味噌汁をかけたものと被告人の 食べ残したおかず数口分を与える程度になり、2Lのペットボトルに入れられた腐 7 ったような色の飲み物以外を飲むことを禁じた。被害者④は、その頃から、被告人 方を訪れる者が食べ物を与えようとして 人の 食べ残したおかず数口分を与える程度になり、2Lのペットボトルに入れられた腐 7 ったような色の飲み物以外を飲むことを禁じた。被害者④は、その頃から、被告人 方を訪れる者が食べ物を与えようとしても、被告人が怖いなどと言って、食べ物に 手を付けないようになった。被告人とAは、このような状態にあった被害者④に命 じて、ゴキブリの足を食べさせたこともあった。 被害者④は、9月頃には、目に見えてやせ細っていったが、被告人は、その頃か ら更に被害者④の食事の回数を減らし、数日に一食、少量の食事しか与えなくなっ た。 イ 他の目撃者らの証言内容 被告人の実子であり、1月頃から8月頃までの間、被告人方を訪れた際に1 0回ないし15回くらい被害者④を見たというFは、被告人及びAの被害者④に対 する暴行、被告人の食事制限、やくざ発言について、C証言と同様の証言をしてい る。 6月頃から8月頃まで週3、4回、9月頃は週1、2回くらい被告人方を訪 れていたEは、Aの暴行や被告人の食事制限について、C証言と同様の証言をして いる。 被告人らの知人であり、平成30年12月頃から8月頃まで週2回くらい被 告人方に行っていたGは、被告人の暴行や食事制限、やくざ発言について、C証言 と同様の証言をしている。 Aの友人で、Aと遊ぶために被告人方に行っていたHは、Aの暴行及び被告 人の食事制限についてC証言と同様の証言をしており、Hの友人で、同人と一緒に 被告人方に行っていたIも、Aの暴行について、C証言と同様の証言をしている。 ウ 各証言の信用性について 上記各目撃者等のうち、特に、Cの証言は、被告人及びAによる暴行及び食事制 限が始まった経緯や内容について具体的に述べるもので、前述のような救急搬送時 の被害者④の負傷状況や体重の状況、被告人方から被害者④の血液が付着した金属 、Cの証言は、被告人及びAによる暴行及び食事制 限が始まった経緯や内容について具体的に述べるもので、前述のような救急搬送時 の被害者④の負傷状況や体重の状況、被告人方から被害者④の血液が付着した金属 製の棒が発見されていることなどと整合する。また、上記のとおり、Cの証言のう 8 ち、被告人の暴行についてはF及びG、Aの暴行についてはF、E、H及びI、や くざ発言についてはF及びG、食事制限の点はF、E、G及びHが、それぞれ同様 の証言しており、このように異なる場面を目撃した複数の者が同様の証言をしてい ることは、Cの証言を裏付けるものといえる。 これに対し、弁護人は、Cの証言は、①被告人が拳で殴ったか平手で殴ったかな どの暴行態様に関し変遷している、②被告人らと一緒に食事をとっていたわけでは ないから、食事制限に関する証言は信用性に乏しい、③本件後に入籍したAをかば うため被告人に不利な証言をしている可能性があるなどと主張する。 しかしながら、①弁護人が変遷を指摘する点は、時間の経過により記憶が薄れて もやむを得ないような部分であるし、②Cは、台所に置かれた被害者④の茶碗や食 材の状況、被害者④の様子等を踏まえて食事制限に関する証言をしているから、被 告人らと一緒に食事をしていなかったとしても、信用性に欠けるとはいえない。ま た、③Cは、Aの更生を願っていると述べ、被告人の暴行や食事制限のみならず、 A自身が否定する同人の暴行等についても率直に証言していることからすると、C がAをかばうために虚偽の証言をしているとは認められない。 弁護人は、また、①Fは、被告人により児童養護施設に預けられた恨みから虚偽 供述の動機があるし、被害者④の怪我の状態、怪我や暴力等の目撃時期、やくざ発 言の有無について供述の変遷がある、②Gは、自身の被害者④に対する暴力につい て過少に り児童養護施設に預けられた恨みから虚偽 供述の動機があるし、被害者④の怪我の状態、怪我や暴力等の目撃時期、やくざ発 言の有無について供述の変遷がある、②Gは、自身の被害者④に対する暴力につい て過少に証言しており、被告人への悪感情から虚偽供述の動機もある、③その他の 証人についても、目撃している場面が限定的であるし、公訴事実である6月以降の 暴行等を目撃していない者が多いと主張する。 しかし、①F証言に、変遷や曖昧な部分があることは否定できないものの、同人 の証言内容は相応に具体的なもので、同人が作り話をしているとは考えられないし、 木刀や金属製の棒は見ていないとか、被告人の暴行によって被害者④が怪我をした 状況は見ていないと証言するなど、殊更被告人に不利な証言をしようとしている様 子もうかがえない。そして、Fの証言内容の多くは、Cらの証言と一致しており、 9 ラインの履歴等の客観的証拠とも整合していることからすると、Fの証言も、大筋 において信用に足るということができる。また、②Gは、被告人に利用されたり、 金を要求されたりした旨証言しており、被告人に対しよからぬ感情を持っている可 能性はあるし、自身の被害者④に対する暴力もわい小化して証言している可能性が ないではないが、Gは被告人の暴行については証言しておらず、Aの暴行や被告人 の食事制限についても、他の証人の証言内容と比して誇張された内容とはなってお らず、Gが被告人に不利な内容の虚偽証言をしているとは認められない。そして、 ③各証人が目撃した場面が限定されるとしても、その内容は相互に符合しており、 前記C証言を十分に裏付けるものといえる。 3 Aの証言の信用性 Aは、被告人が被害者④に対し、仕事をしていないことや家事をしないことなど を理由に、素手で頭や肩を殴ったり、金属製の棒で手足を殴ったりしたほか、指で に裏付けるものといえる。 3 Aの証言の信用性 Aは、被告人が被害者④に対し、仕事をしていないことや家事をしないことなど を理由に、素手で頭や肩を殴ったり、金属製の棒で手足を殴ったりしたほか、指で 両眼を押さえたり、手指で鼻を突きあげる暴行を加えており、他の者も被害者④に 暴力を振るっていたが、被告人の暴行が一番ひどかったと証言し、食事制限につい ても、大筋においてCらと同様の証言をする一方で、自身の暴行については、仕事 の出来が悪い時などに頭を2、3回叩いたり、スパーリングの際に頭や肩を殴った りしたことはあったが、本気の半分くらいの力でしかなく、被害者④に怪我をさせ たこともなかったなどと証言し、やくざ発言についても否定する証言をしている。 Aは、傷害致死事件及び恐喝未遂事件等で、被告人の共犯者として起訴されて有 罪判決を受け、事実認定に不服があるとして控訴をしている。また、その証言内容 を他の目撃者らの証言内容と比較すると、供述が一致しない点の多くは、自分自身 の暴行の程度のほか、被告人や自身以外の者が被害者④に加えた暴行の有無程度 等、自身の関与や責任を軽くするような内容となっており、これらの点について、 Aは自身の刑責を免れるために、虚偽の供述をしていると認められる。一方で、A が証言する被告人の暴行や食事制限については、他の証人の証言と比して誇張され た内容となっておらず、殊更に被告人に不利な証言をしようとしている様子はうか 10 がわれない。そうすると、Aの供述は、Cらの供述と一致する限度においては十分 信用するに足るということができる。 4 被告人の公判供述の信用性 被告人は、2、3月頃から被害者④と交際関係にあり、互いに暴力を振るったり、 自分が金属製の棒で叩いたりすることもあったが、叩く力は強くはなく、骨折する ようなものではなかった、被害者 判供述の信用性 被告人は、2、3月頃から被害者④と交際関係にあり、互いに暴力を振るったり、 自分が金属製の棒で叩いたりすることもあったが、叩く力は強くはなく、骨折する ようなものではなかった、被害者④の火傷や右脛のえぐれた怪我は自分が被害者④ から目を離したり、被害者④が転倒したときにできた、Aが被害者④を殴ったり、 スパーリングをしていることもあったが、力は強いものではなかった、自分がAに 対し被害者④に暴力を振るうよう指示したり、煽ったりしたことはない、被害者④ は、職場でH等から仕事ができないとして暴力を振るわれていたほか、被告人方で もGやJから暴力を振るわれており、Jが木刀で被害者④の身体を手加減なく叩い たことから、8月頃には被害者④の左腕が折れて曲がりにくい状態となっていた、 被害者④は6月頃から胃が痛く食欲がないと言い、8月には一日1食でいいと言い 始めた、自分もうつ病が悪化して体調が悪く、十分な生活費がなかったため、食事 を作れないこともあったが、それでも一日1食は作っていたし、作った食事を被害 者④が食べないこともあった、などと供述する。 しかしながら、このような被告人の供述は、自身やAの暴行の程度、食事制限の 有無、被害者④への扱い、やくざ発言等、多くの点においてことごとく他の証人の 証言内容と食い違っている。また、被害者④と普段から行動を共にしており、6月 以降、被害者④が絶えず体中に怪我を負い、極度にやせ細っていった状況を十分認 識していたはずであるところ、被害者④と交際関係にあったといいながら、他の者 による暴力を止めず、被害者④に適切な治療も受けさせないまま、同人を衰弱する に任せていた点において甚だしく不自然であるし、被害者④の怪我や火傷の原因に ついても、関係者から尋ねられる度に説明を変えており、その内容も、被害者④の 怪我の状況を全く けさせないまま、同人を衰弱する に任せていた点において甚だしく不自然であるし、被害者④の怪我や火傷の原因に ついても、関係者から尋ねられる度に説明を変えており、その内容も、被害者④の 怪我の状況を全く説明できておらず、不自然・不合理というほかない。さらに、う つ病で体調が悪く、食事が作れなかったという点も、毎日のように被害者④を連れ 11 てパチンコ店に行っていたことや、Aらは被告人方で普通に食事をしていたことな どと矛盾している。 以上のとおり、被告人の供述は、自己の刑責を免れるために、自身やAの被害者 ④に対する暴行をわい小化したり、食事制限を否定したりしていることが明らかで、 到底信用することができない。 5 被害者④の死亡原因について ア 医師であり、m大学n教授である証人Xは、被害者④が死亡に至った原因に ついて、「被害者④の死因は、敗血症性ショック(血液中に菌が入ることや感染症 により、全身に炎症反応が起こり、諸臓器が機能不全に陥る病態)であり、その原 因は、肺炎、肺真菌症及び腹膜炎である。肺炎と肺真菌症は、免疫力の低下により 肺に病原体が侵入したことが原因であり、腹膜炎は、ストレスや免疫力の低下、低 栄養状態により生じた十二指腸潰瘍が悪化して十二指腸穿孔になり、腹腔内に菌が 流出したことが原因である。被害者④は、食事摂取不足による低栄養状態とストレ スが相まって免疫力が低下し、日常的な暴行による多数の外傷とストレスによって も免疫力が低下したと考えられる。」旨証言している。 X医師の証言は、専門的知見に基づいた的確なものであり、弁護人もその内容を 積極的に争っておらず、信用性が高いと認められる。 イ ところで、弁護人は、上記被告人の供述のとおり、①被害者④の怪我は本人 の不注意やJの木刀による殴打等、他の者の暴行が原因である可能性があり、②被 害 的に争っておらず、信用性が高いと認められる。 イ ところで、弁護人は、上記被告人の供述のとおり、①被害者④の怪我は本人 の不注意やJの木刀による殴打等、他の者の暴行が原因である可能性があり、②被 害者④が痩せた原因も、被害者④本人の体調不良が原因であるという趣旨の主張を している。 しかしながら、①被害者④の怪我はほぼ全身にわたって多数の皮下出血や表皮剥 脱を伴うものであって、転んで偶然できるような形状の傷ではなく、木刀や金属製 の棒、拳等による殴打痕とみて矛盾しないこと、また、Jは交通事故により9月末 に死亡しており、被告人やAが、GやHが被害者④に暴力を振るったと供述してい る時期も、被害者④が仕事をしていた4月以前であって、被告人らの供述によって 12 も、10月以降に被害者④に暴力を振るった者は被告人及びA以外には見当たらな いところ、司法解剖時の被害者④の身体には、受傷後1、2週間から1か月以内の 真新しい外傷が多数存していたことが認められ、これらの傷は、被告人及びAが被 害者④に日常的な暴行を続けていたことによるものとしか考えられない。また、② 被害者④の体調不良を指摘する点についても、被害者④に飲食の意欲があったこと や、被害者④に食べ物を与えようとしても被告人を恐れて手を出そうとしなかった ことは、複数の証人が証言するとおりであって、被害者④が食事をしたくても被告 人に禁じられてできない状況にあったことは優に認められる。したがって、弁護人 の上記主張はいずれも採用することができない。 6 Aとの間で傷害致死の共同正犯が成立することについて 信用できるCらの前記証言によれば、被告人は、被害者④に対し、自ら凶器を使 って暴力を振るうなどして日常的に暴行を加えるとともに、Aが被害者④に対し暴 力を振るってもこれを止めようとはせず、かえってこれを面白 きるCらの前記証言によれば、被告人は、被害者④に対し、自ら凶器を使 って暴力を振るうなどして日常的に暴行を加えるとともに、Aが被害者④に対し暴 力を振るってもこれを止めようとはせず、かえってこれを面白がったり、煽ったり していたこと、Aも、自ら相当な力で日常的に暴行を加えるとともに、被告人が被 害者④に暴行を加えている姿を見ても、積極的にこれを止めようとしなかったこと が認められる。 また、被告人は、このような日常的な暴行によって被告人らに従わざるを得ない 状況にあった被害者④に対し、与える食事を徐々に減らすなどして十分な食事を与 えず、被告人以外の者が与える食事の摂取を禁止したことが認められる。 このような被告人とAによる暴行や食事制限は、それぞれ被害者④に対する虐待 の一環として行われており、被告人らの被害者④に対する精神的な支配をより深め る手段にもなっていたところ、被告人とAは、互いにその時々のストレスのはけ口 として被害者④を痛めつけ、暴力や食事制限の程度をより激しいものにしていった と認められることからすると、暴行及び食事制限は、それぞれ独立した行為という よりは、被害者④を精神的・肉体的に虐待することに向けられた一体の行為として 評価することが相当である。 13 そうすると、被害者④に対する食事制限自体は、被告人が主導していたものであ るとしても、Aも、被告人による食事制限や、これにより被害者④がやせ細ってい ることを認識しながら、被告人を制止したり被害者④に十分な食事を与えたりする ことをせず、むしろ日常的な暴行をより激しいものとしていったのであるから、被 告人による食事制限によって被害者④が衰弱している状況を利用し、自らの欲求を 満たしていたもので、判示第4の事実全体について、自己の犯罪として積極的に関 与していたと評価でき、暴行のみならず食事制限 被 告人による食事制限によって被害者④が衰弱している状況を利用し、自らの欲求を 満たしていたもので、判示第4の事実全体について、自己の犯罪として積極的に関 与していたと評価でき、暴行のみならず食事制限についても、被告人とAとの間の 共謀が認められる。 7 以上によれば、被告人が、Aと共謀の上、判示第4記載の暴行や食事制限を 行い、被害者④に傷害を負わせるとともに、これらによるストレス等によって被害 者④の免疫力を著しく低下させ、敗血症性ショックによって被害者④を死に至らし めたと認められる。 第3 恐喝未遂事件について 1 被害者⑤の証言内容とその信用性 ア 被害者⑤は、公判廷において、要旨以下のとおり証言する。 5月以降、被害者④や被告人から電話で生活費を貸してほしいと何度も頼まれ、 直接会って話をしてからと言うと、被告人からやくざを30人ぐらい連れてそっち にいくぞと言われた、8月13日、被告人から電話があり、生活費として20万円 を要求され、払わないならやくざを連れてそっちへいくぞと言われ、電話を替わっ たAからも、タイマン張れとか、被害者④を今殴ったぞと言われ、被害者④の「お えっ」という吐いたような声や「痛い」という声が聞こえた後、被告人からも、A が被害者④を殴ったぞなどと言われた、一旦払うと答えると、被告人は急に優しい 態度に変わったが、支払わないままでいると、10月8日、また被告人から電話が あり、お金がどうなってるか、やくざを連れていくぞなどと言われた、被告人から、 怒った口調で、生活費や被害者④が事故した車の修理代等様々な名目で合計150 万円を払えと言われ、払えないと答えると、被告人は再びやくざの話をし、Aから 14 も約束が違うやんけ、兄やからお前が払え、お前を殴るぞなどと言われた、それ以 外の日にも被告人から度々電話があり、お 万円を払えと言われ、払えないと答えると、被告人は再びやくざの話をし、Aから 14 も約束が違うやんけ、兄やからお前が払え、お前を殴るぞなどと言われた、それ以 外の日にも被告人から度々電話があり、お金の話をされた旨証言する。 イ 弁護人は、被害者⑤の上記証言について、①何度も脅されたと言いながら も、被害者④の死亡後まで被害申告しておらず、経緯が不自然である、②脅された とする後も、被告人と親しげなラインのやり取りをするなど証言内容が不自然であ る、③9月までの被告人との電話回数についての供述に変遷がある、④被害者④の 死に対する被告人への恨みから虚偽供述の動機があると主張する。 しかしながら、①②被害者⑤は、被告人からやくざを連れていくと言われて怖か ったなどと供述する一方で、被告人が被害者④を殴っているのはあくまで遊び程度 で、本気で殴られているとは思っていなかったなどとも証言しているし、岐阜県内 の被害者⑤方は被告人方から離れており、要求する金を支払うと言えば、被告人ら は態度を急変させていたとも証言していること、Cも被害者⑤は脅されても怖がっ ていなかった旨証言していることからすると、被害者⑤は、当時、被害者④が置か れていた状況や自身に対する危険をさほど深刻とまでは受け止めていなかったと考 えられる。そうすると、被害者⑤が、警察への被害申告をせずにいたことや、上記 被害後も、被告人らと電話やラインのやり取りを続けていたことは直ちに不自然と はいえない。また、③関係証拠によれば、被告人と被害者⑤との間には、8月及び 9月に2、3回ずつ、10月頃には、約3時間の通話を含め、多数の通話履歴が存 することが認められ、被害者⑤の証言は、これらの客観的証拠とも整合しており、 被告人がやくざを持ち出して被害者⑤を脅迫したことや、Aも被害者⑤に金を要求 したことについて 通話を含め、多数の通話履歴が存 することが認められ、被害者⑤の証言は、これらの客観的証拠とも整合しており、 被告人がやくざを持ち出して被害者⑤を脅迫したことや、Aも被害者⑤に金を要求 したことについては、Cの証言によっても裏付けられている。そして、④被害者⑤ の上記証言は、被告人やAとの間のやり取りについて、当時の心情も交えつつ具体 的に証言するもので、殊更に事実関係を誇張したり、歪曲したりして証言している 様子もうかがえない。したがって、被害者⑤の上記証言は、基本的に信用すること ができるというべきである。 2 被告人の公判供述の信用性 15 被告人は、被害者④が被告人と一緒になるため、妻に慰謝料を払って離婚したが っており、被害者④の父親からお金を借りようとしたが、被害者④の家族が被害者 ④の妻を良く思っていないため、引越代、生活費、出産費用などの名目で100万 円貸してほしいと説明していた、自分からも被害者⑤に金を貸してほしいと頼むこ とはあったが、やくざを連れて行くとか被害者④を殴ったなどの発言をしたことは ないし、Aも被害者⑤とは挨拶程度しか電話で話していないなどと供述する。 しかしながら、被害者④が被告人と一緒になろうとしていたなどとは考えられな いことは前記のとおりであるし、被害者④が妻に慰謝料を払おうとしていたという 点も不自然というほかない。被告人の供述は、傷害致死事件に関するものと同様に、 自己の刑責を免れるため、自身やAの言動等について虚偽の供述をしていることが 明らかであり、到底信用することができない。 3 以上のとおり、信用できる被害者⑤の証言によれば、被告人及びAが、被害 者⑤に対し、判示第5のとおりの脅迫文言を告げて現金の交付を要求した事実が認 められる。また、上記のとおり、被害者⑤は、被告人らの脅迫を実際にはさほど深 刻に受け止 の証言によれば、被告人及びAが、被害 者⑤に対し、判示第5のとおりの脅迫文言を告げて現金の交付を要求した事実が認 められる。また、上記のとおり、被害者⑤は、被告人らの脅迫を実際にはさほど深 刻に受け止めていなかったと考えられるが、全く畏怖していなかったわけではない し、上記認定の脅迫行為が一般人を畏怖させるに十分なものであることは明らかで ある。そして、被告人及びAが、それぞれこのような脅迫及び現金要求をしている ことからして、両者に恐喝の共謀があったことも明らかである。したがって、被告 人には、Aとの間で恐喝未遂罪の共同正犯が成立すると認められる(なお、公訴事 実中、Aが被害者④を実際に殴ったとする点については的確な証拠がなく、また、 被害者⑤証言を前提にしても、被害者④の悲鳴を聞かせたとまでは認められないた め、判示のとおりの認定にとどめた。)。 【判示第1ないし第3の事実認定に関する補足説明】 部分判決の【事実認定の補足説明】記載のとおり。 【量刑の理由】 本件は、被告人が、同居生活をしていた被害者4名に対し、未成年の実子を含む 16 共犯者らと共に、日常的に暴行を繰り返したり、食事を制限したりする虐待を加え、 3名にそれぞれ重篤な傷害を負わせる(判示第1ないし第3)とともに、1名を死 亡させた(同第4)という傷害3件及び傷害致死1件と、傷害致死の被害者の実兄 から現金を脅し取ろうとしたという恐喝未遂1件(同第5)からなる事案である。 1 犯罪行為そのものに関する事情(犯情) まず、傷害致死の犯行についてみると、被告人は、約5か月という長期間にわた り、被害者に暴行や食事制限を加えつつ、やくざを使って見付けるなどと告げて逃 げ出すことのできない状態にした上で、極度にやせ細り衰弱しつつあった被害者に 対し、連日のように暴行を加えるとともに、数日に1 、被害者に暴行や食事制限を加えつつ、やくざを使って見付けるなどと告げて逃 げ出すことのできない状態にした上で、極度にやせ細り衰弱しつつあった被害者に 対し、連日のように暴行を加えるとともに、数日に1 回しか食事を与えないという 虐待行為を続け、遂には死亡するに至らせたもので、その行為態様は、被害者を人 として扱わない残酷で卑劣極まりないものである。被害者の受けた長期間に及ぶ苦 痛や飢餓感、絶望感等は計り知れず、遺族の衝撃や無念さも察するに余りあるので あって、被害者の父が被告人の厳罰を希望しているのも当然である。 また、各傷害の犯行のうち、第3の事件は、傷害致死事件におけるのとほぼ同様 に、約5か月間にわたり暴行や食事制限を行った結果、被害者に回復見込みのない 高次脳機能障害の後遺症が残る重大な脳損傷を負わせたものであり、第1及び第2 の事件も、各被害者を一定期間支配下に置き、継続的に暴力を振るって重傷を負わ せたもので、各犯行の態様や結果もまた極めて悪質である。 さらに、恐喝未遂の犯行も、犯行自体による被害は重大とはいえないものの、被 害者を暴力的に支配するにとどまらず、金銭面でも搾取の対象としていたことの表 れであり、看過することはできない。 被告人は、上記傷害致死等の犯行において、各被害者を容易に逃げ出せない状況 に置いた上で、自ら強度の暴行を加えたほか、第1、第2の事件においては、共犯 者に対し各被害者への暴行を指示し、第3、第4の事件では、共犯者の暴行を煽っ たり、各被害者に対する食事制限を主導したりしており、いずれの犯行においても 首謀者の立場にあったといえる。 17 被告人は、ストレスのはけ口として各被害者を弄び、あるいは各被害者を自己の 支配下に置き、虐待を加えることで自己のゆがんだ欲望を満たそうとして上記傷害 致死等の犯行に及んだものと考えられ 。 17 被告人は、ストレスのはけ口として各被害者を弄び、あるいは各被害者を自己の 支配下に置き、虐待を加えることで自己のゆがんだ欲望を満たそうとして上記傷害 致死等の犯行に及んだものと考えられ、その身勝手な動機、経緯に酌むべき点は全 くない。また、被告人が、約9年の間、3名に対する傷害の犯行を繰り返しながら、 その態様をエスカレートさせ、知人等からの制止や忠告を聞き入れないまま、より 重大な傷害致死の犯行に至った点は、特に厳しい非難に値する。 以上の諸点に照らすと、本件傷害致死の犯行は、長期間に及ぶ苛烈な暴行や食事 制限によって被害者に計り知れない苦痛を与えた点において、同種事案の中でも犯 情が際立って悪質であり、傷害3件の犯行も、動機、態様等が共通しており、うち 1件では被害者に回復の見込みのない重大な傷害結果を生じさせていることも踏ま えると、本件は同種事案における量刑傾向に比して、格段に重く処罰すべき事案に 当たるといわなければならない。 2 犯罪行為以外の事情(一般情状) 被告人は、いずれの事件についても犯行を否認し、共犯者や知人らに責任を押し 付け、その場しのぎの言い訳としか評価し得ない不合理な弁解に終始しており、自 らの罪に向き合う姿勢が全く見られない。 このように、被告人に反省が見られず、更生のための手立ても見当たらない状況 にあっては、被告人に古い前科しかないことや、体調不良を訴えていることなどを 考慮するとしても、再犯防止のための処罰の必要性は高いといわざるを得ない。 3 結論 当裁判所は、以上の理由から、被告人に対し科すべき刑は検察官の求刑意見を下 回るものではないと判断し、主文掲記のとおり刑を量定した。 (検察官の求刑-懲役24年) 令和5年3月27日 大津地方裁判所刑事部 18 裁判長裁判官 求刑意見を下 回るものではないと判断し、主文掲記のとおり刑を量定した。 (検察官の求刑-懲役24年) 令和5年3月27日 大津地方裁判所刑事部 18 裁判長裁判官 畑 山 靖 裁判官 沖 敦 子 裁判官 中 野 彩 華
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