主文 1 原告a及び同bの訴えをいずれも却下する。 2 第2事件中,予算支出差止請求にかかる訴えをいずれも却下する。 3 その余の第1事件原告らの請求及び第2事件原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件(原告ら)(1) 被告cは,植木町に対し,金1億4754万1673円を支払え。 (2) 訴訟費用は同被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言(被告c)(1) 別紙原告目録記載の第1事件原告番号19番ないし267番の原告らの訴えをいずれも却下する。 (2) その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は原告らの負担とする。 2 第2事件(原告ら)(1) 被告cは,植木町に対し,金2000万円を支払え。 (2) 被告植木町長は,植木都市計画事業植木中央土地区画整理事業の施行のため,予算を支出してはならない。 (3) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (4) (1)につき仮執行宣言(被告ら)(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の概要(第1事件)本件は,被告cが,植木町長として土地区画整理事業に関し,平成9年及び平成10年に予算を執行したが,植木都市計画事業土地区画整理事業施行規程(昭和45年植木町条例13号。以下「旧規程」という。)に基づく植木都市計画事業植木土地区画整理事業(以下「旧事業」という。)は既に廃止されているから,上記各予算執行は違法であるとして,第1事件原告らが,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,同町に代位して,被告cに対し,損害賠償の支払を求めた住民訴訟の事案である。 (第2事件)本件は,被告cが,平成11年2月8日から同年8月29日 下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,同町に代位して,被告cに対し,損害賠償の支払を求めた住民訴訟の事案である。 (第2事件)本件は,被告cが,平成11年2月8日から同年8月29日までの間に,植木都市計画事業植木中央土地区画整理事業(以下「新事業」という。)に関して予算を執行し,また,植木町議会は,平成11年度の区画整理事業費を議決したが,新事業の予算を執行するための手続がなされていないので,上記予算執行は違法であるなどとして,第2事件原告らが,法242条の2第1項4号に基づき,同町に代位して,被告cに対し損害賠償を,同項1号に基づき,被告植木町長に対し平成11年度の区画整理事業費の予算執行の差止めをそれぞれ求めた住民訴訟の事案である。 1 争いのない事実(1) 被告cは,熊本県鹿本郡植木町の町長である。 (2) 植木町議会は,昭和45年9月26日,旧規程を制定し,同年10月7日,同規程を公布した。 (3) 熊本県は,昭和46年10月11日,植木都市計画事業及び植木土地区画整理事業を認可した。 (4) 植木町議会は,昭和49年6月7日,旧規程を廃止する条例を可決し,同月13日,同条例を公布した。同条例は,同日施行された。 (5) 植木町議会は,平成11年6月21日,植木都市計画事業植木中央土地区画整理事業施行規程(以下「新規程」という。)を議決し,同月25日,新規程を植木町条例第10号として公布した。 (6) 第1事件原告番号1番から18番までの原告らは,平成10年12月21日,平成9年12月22日から平成10年3月末日までになされた土地区画整理事業に対する支出は違法であるとして,植木町長に対し損害賠償の支払を求めるとともに,土地区画整理事業は不当な手続によるものであるとして,土地区画整理事業の差止めを求めて措置請求を行 れた土地区画整理事業に対する支出は違法であるとして,植木町長に対し損害賠償の支払を求めるとともに,土地区画整理事業は不当な手続によるものであるとして,土地区画整理事業の差止めを求めて措置請求を行った(以下「第1次措置請求」という。)。また,第1事件原告番号19番から267番まで(ただし,35番は欠番)の原告らは,平成11年2月8日,平成10年4月1日から平成11年2月7日までになされた土地区画整理事業に対する支出は違法であるとして,同様の理由で植木町長に対し損害賠償を求めるとともに,土地区画整理事業の差止めを求める措置請求を行った(以下「第2次措置請求」という。)。そして,第2事件原告番号1番から405番まで(ただし,152番は欠番)の原告らは,同年8月30日,同年2月8日から同年8月29日までの土地区画整理事業に対する予算の支出は違法であるとして,同様の理由で植木町長に対し損害賠償を求めるとともに,土地区画整理事業に基づく予算執行の差止めを求める措置請求を行った(以下「第3次措置請求」という。)。 (7) 植木町監査委員は,平成11年2月5日,第1次措置請求につき,理由がないという判断をした。また,同委員は,同月8日,第2次措置請求につき,第1次措置請求と同一内容の措置請求であるとして却下し,さらに,同年9月8日,第1次及び第2次措置請求と同一内容の措置請求であるとして,第3次措置請求を却下した。 2 争点(1) 第1事件につき本案前の主張(監査請求経由の有無,原告適格の有無)(被告cの主張)ア住民訴訟は,普通地方公共団体の住民であることに加え,①監査委員の監査結果又は勧告に不服があるとき,②勧告を受けた機関又は職員の措置に不服があるとき,③監査委員が監査又は勧告を監査請求があった日から60日以内に行わないとき,④勧告を受け ことに加え,①監査委員の監査結果又は勧告に不服があるとき,②勧告を受けた機関又は職員の措置に不服があるとき,③監査委員が監査又は勧告を監査請求があった日から60日以内に行わないとき,④勧告を受けた機関又は職員が当該勧告に明示された期間内に必要な措置を講じないときのいずれかに該当する場合でなければ提起できない(法242条の2第1項)。 第2次措置請求は,植木町監査委員によって却下されており,上記のいずれの場合にも該当しない。したがって,原告番号19番から267番までの原告らは,原告適格を有しない。 イ原告a(第1事件原告番号94番。以下「原告a」という。)は,平成10年11月25日大阪市αへ,原告b(第1事件原告番号205番。以下「原告b」という。)は,平成11年4月19日熊本市へ,それぞれ転出の届出をしており,第2次監査請求がなされたときには植木町の住民ではなかったのであるから,いずれも原告適格を有しない。 ウ原告d(第1事件原告番号183番)は,町議会議員を通じて,監査請求をした事実はない旨の申入れがなされているので,原告適格を有しない。 エ第1事件の原告番号22番,40番,142番,160番,202番,218番,233番,257番の原告らについては,植木町民であることに疑いがある。 (原告らの主張)ア監査委員が監査請求を却下した場合において,監査請求却下の判断が違法である場合は,「監査委員が監査を行わないとき」(法242条の2第3項)に該当するので,住民訴訟を提起しうる。 植木町監査委員は,第2次監査請求について,「一事不再理の原則」に該当することを理由に却下した。しかし,一事不再理の原則とは,同一請求人による同一内容の再監査請求を排除するものであって,請求人が異なる場合には,同一内容の監査請求であってもその監査請求は適 則」に該当することを理由に却下した。しかし,一事不再理の原則とは,同一請求人による同一内容の再監査請求を排除するものであって,請求人が異なる場合には,同一内容の監査請求であってもその監査請求は適法である。第2次措置請求は,第1次措置請求と異なる請求人によるものであり,しかも第1次措置請求とは異なる予算支出を監査対象とするものであるから,一事不再理の原則には該当しない。 したがって,植木町監査委員のなした却下の判断は違法であるから,第1事件の原告番号19番から267番までの原告らは原告適格を有する。 イまた,原告dは,第2次監査請求をしているので,原告適格を有する。なお,原告aが平成10年11月25日に大阪市αへ,原告bが平成11年4月19日に熊本市への転出の届出をしたことは認める。 (2) 第1,第2事件につき予算執行の適法性(原告らの主張)植木町は,昭和49年6月13日,旧規程を廃止する条例を公布した後,平成11年6月21日に新規程が制定されるまでの間,土地区画整理事業に関し,何らの措置もとっていない。また,植木町は,旧規程廃止後,土地区画整理法76条の建築制限を行わずに,土地区画整理地内に都市計画法54条の許可基準以上の建物の建築許可申請に関わるなどしている。このような事実からすると,旧規程のみならず,旧事業も廃止されたといわざるをえない。平成9年度及び平成10年度予算は,旧事業が継続していることを前提に予算が策定され,植木町議会の承認を得ているのであって,新事業に対する予算として植木町議会の承認を得てはいない。したがって,土地区画整理事業に対する平成9年度及び平成10年度の予算の執行は違法である。平成11年2月8日から同年6月21日までの支出についても同様である。 また,植木町は,新規程制定後,新事業に対する予算の執行に 整理事業に対する平成9年度及び平成10年度の予算の執行は違法である。平成11年2月8日から同年6月21日までの支出についても同様である。 また,植木町は,新規程制定後,新事業に対する予算の執行に必要な手続を行っていないから,同月22日から同年8月29日までの支出についても違法である。 この点,被告は,支出したのは調査費用である旨主張する。しかし,新事業の区域は旧事業の区域と大部分重なっているところ,植木町は,昭和45年から昭和47年にかけて調査を行っており,平成5年には地積調査も行っているのであって,事業に必要な調査の大部分を終了している。したがって,新事業に対する調査費用は必要でなく,被告の主張には理由がない。 (被告cの主張)町が支出負担行為をするには,法令又は予算の定めるところに従いなされる必要がある(法232条の3)。平成9年度及び平成10年度の町予算に計上された土地区画整理事業基本計画調査事業委託料,土地区画整理事業基本計画作成委託料等は,土地区画整理事業を行うための調査費用であるところ,土地区画整理事業は,本来的に地方自治体の事務であり(都市計画法3条,平成11年7月法律87号による改正前の地方自治法2条3項12号),事業計画の変更又は新しい事業計画の策定のために町が調査費を支出することも町の事務に当たる。そして,建設省告示第1876号による植木都市計画用途地域の指定,建設省告示第1955号による植木都市計画植木土地区画整理事業を施行すべき区域の決定,建設省告示第3003号による植木都市計画区域の決定もなされている。さらに,これらの支出は予算に基づく支出である。したがって,被告植木町長の行った支出は適法なものである。 これらの予算支出は,いずれも新事業のために支出されたものであるが,これを旧事業の変更事業のための支出 らの支出は予算に基づく支出である。したがって,被告植木町長の行った支出は適法なものである。 これらの予算支出は,いずれも新事業のために支出されたものであるが,これを旧事業の変更事業のための支出と見るか,旧事業とは異なる事業のための支出と見るかは評価の問題である。したがって,被告植木町長のなした予算の執行には,何ら違法はない。 なお,原告らが主張するように,植木町は土地区画整理地内の建物につき都市計画法54条の許可基準以上の許可申請に関わっているが,これは,施行規程が廃止されれば事業も廃止されるという見解と施行規程が廃止されても事業は休止の状態であるという見解の対立から派生した問題で,その時々の町長の見解によって生じてきたものである。 (3) 第2事件につき予算支出差止めの可否(原告らの主張)平成11年6月21日に制定され,同月25日に公布された新規程を定める条例は,その制定に必要な手続を経ていないから,新事業に対する予算の支出は違法である,植木町議会は,区画整理事業費として同年3月23日付けで1億9712万4000円,同年6月21日付けで8875万7000円,同年9月8日付けで52万円とする平成11年度の予算を議決し,植木町は,町役場に植木都市計画事業植木中央土地区画整理事業計画という文書を掲示する等していることから,今後も新事業について予算を支出する蓋然性が高い。そして,一旦巨額な予算が支出されれば,その損害の回復は困難である。したがって,平成11年度の区画整理事業費として決定された予算の支出は差し止められなければならない。 (被告植木町長の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の主張(監査請求経由及び原告適格の有無)について(争点1)(1) 原告a及び同bについて法242条の2第1項は,住民訴訟について,「普 植木町長の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の主張(監査請求経由及び原告適格の有無)について(争点1)(1) 原告a及び同bについて法242条の2第1項は,住民訴訟について,「普通公共団体の住民」が裁判所に対し訴えを提起することができる旨規定しているところ,「住民」とは,当該市町村の区域内に住所を有する者であるから(法10条1項),住民訴訟においては,その原告が口頭弁論終結時において当該地方公共団体の区域内に住所を有することが訴訟要件として必要である。 本件において,原告aは,平成10年11月25日に大阪市αへ,同bは,平成11年4月19日に熊本市へ転出の届出をしているから,原告a及び同bは,口頭弁論終結時において植木町に住所を有しないことが明らかである。したがって,原告a及び同bには,原告適格が認められない。 (2) 第1事件原告番号19番から267番までについて被告cは,第1事件原告番号19番から267番までの原告がした第2次措置請求が却下されているから,上記原告らには原告適格がない旨主張する。 しかしながら,監査委員が適法な監査請求を不適法であるとして却下した場合,当該請求をした原告は,適法な監査請求を経たものとして,住民訴訟を提起することができると解するのが相当である(最高裁平成10年12月18日第3小法廷判決・民集52巻9号2039頁参照)。 そこで,本件について検討するに,監査委員は,第1次措置請求と同一内容の請求であるとの理由で第2次措置請求を却下しているが,本件の第2次措置請求は,第1次措置請求とは異なる住民によってなされている上,対象とされた財務会計行為も異にするものであるから,適法なものと認められる。したがって,上記原告らの訴えは,適法な監査請求を経たものとして,適法というべきである。 (3) 住民によってなされている上,対象とされた財務会計行為も異にするものであるから,適法なものと認められる。したがって,上記原告らの訴えは,適法な監査請求を経たものとして,適法というべきである。 (3) 第1事件原告番号22番,40番,142番,160番,183番,202番,218番,233番,257番の原告らについて被告cは,第1事件原告番号22番,40番,142番,160番,202番,218番,233番及び257番の原告らは,訴状記載の氏名からは植木町の住民ということはできず,また,原告番号183番の原告は,第2次措置請求をしていないので原告適格がない旨主張する。 しかし,原告番号183番の原告は,第2次措置請求を行っており(甲5,69),また,その余の原告らについては氏名の訂正がなされ,訂正された氏名の原告らが植木町の住民であることは,答弁書から認められるから,いずれの原告にも原告適格が認められる。 2 予算執行の適法性について(争点2)(1) 上記争いのない事実に加え,主に各項末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア昭和44年5月10日,建設省告示第1876号によって,植木都市計画用途地域の指定がなされた。 (乙1)イところで,当時の植木町長であったe(以下「e元町長」という。)は,昭和43年11月29日,建設大臣(現在の国土交通大臣)に対し,熊本県鹿本郡β等を含む面積87.6ヘクタールの地域につき,この地域が植木町の中心部以西に位置する平坦地で,1級国道δ線バイパスの新設に伴い,急速に宅地化への動きが高まり,近い将来において市街化が予想されるので,土地区画整理事業を施行して,公共施設の整備改善を行い,健全な市街地の造成に寄与することを理由として,旧事業を施行すべき地域として決定されるよう申請した。 り,近い将来において市街化が予想されるので,土地区画整理事業を施行して,公共施設の整備改善を行い,健全な市街地の造成に寄与することを理由として,旧事業を施行すべき地域として決定されるよう申請した。この申請を受け,昭和44年5月14日,建設省告示第1955号によって,旧事業を施行すべき区域が決定された。なお,決定された区域は,別紙1の赤線で囲まれた部分である。 (乙2の1・2)ウ昭和44年5月31日,建設省告示第3003号によって,熊本県鹿本郡γ等の地域が,植木都市計画区域として決定された。 (乙3)エ植木町議会は,昭和45年9月26日,旧規程を定める条例を可決した。同条例は,同年10月7日公布され,同年11月6日より施行された。 (乙4,5)オ昭和46年5月13日,当時の植木町長であったf(以下「f元町長」という。)は,熊本県知事に対し旧事業計画の認可を申請し,熊本県知事は,同年10月11日旧事業を認可した。 (乙37の2)カ昭和46年10月18日,f元町長は,①施行者を植木町,②事業施行期間を昭和46年10月18日から昭和50年3月31日まで,③施行地区として,第1工区を熊本県εの全部等,第2工区を同町ζ等とし,④土地区画整理事業の名称を植木都市計画事業植木土地区画整理事業とし,⑤事務所の所在地を植木町役場とする旧事業の計画を定めて公告した。 旧事業の施行区域の面積は,50.5ヘクタールである。なお,旧事業施行区域は,別紙1の青線で囲まれた部分である。 (乙6,7)キしかし,国道δ線の植木バイパスの完成により,国道δ線沿いの土地の利用が円滑に行われ,開発利益を受けることができるようになったこと,農業における増産意欲が強く,区画整理の減歩に対する反対意見が多く出たことなどから,昭和48年9月20日に行われた植木町議会全 地の利用が円滑に行われ,開発利益を受けることができるようになったこと,農業における増産意欲が強く,区画整理の減歩に対する反対意見が多く出たことなどから,昭和48年9月20日に行われた植木町議会全体協議会において旧事業の中止が満場一致で採択された。 そこで,f元町長は,旧事業を廃止したいとの意向の下に,昭和49年3月その方針を熊本県山鹿土木事務所長や熊本県知事に伝え,さらに,同年4月熊本県計画課長に対し,土地区画整理法76条による建築行為等の制限について,許可申請を要しないものとしての取扱いを願い出るなどした。 そして,f元町長は,旧規程を廃止すれば旧事業も廃止されるとの考えの下に,同年6月7日旧規程を定める条例を廃止する条例を制定し,同条例は同月13日に公布と同時に施行されて,旧規程は廃止された。 (甲10,11,34,35,乙8,17ないし19,31,証人g,被告c本人)ク平成10年9月までの旧事業に関する植木町の対応(ア) ところで,土地区画整理事業の廃止に関しては,個人施行の場合には土地区画整理法13条が「廃止及び終了」の手続について規定し,組合施行の場合は,同法45条1項所定の事由により解散ができる旨規定しているが,これ以外には明文の規定がない。当時は,公共団体施行の場合には上記のように明文の規定がないことから,同法は公共団体施行の事業の廃止を認めていないと解釈されており(当時の代表的な解説書であった「土地区画整理法50講」),当時の建設省も,この解釈に基づいて実務を運用していた。 (乙36)(イ) 昭和49年ころ当時の植木町助役が建設省に赴き旧事業の廃止の意向を示したところ,担当者から「土地区画整理事業の廃止はない。」旨厳しく指摘され,その後も,旧事業が存続していることを前提として都市計画法53条による建築制限が課 助役が建設省に赴き旧事業の廃止の意向を示したところ,担当者から「土地区画整理事業の廃止はない。」旨厳しく指摘され,その後も,旧事業が存続していることを前提として都市計画法53条による建築制限が課せられるとの問題が生じたため,昭和55年ころ,当時の植木町長であったh(以下「h元町長」という。)は,同年6月9日開催の植木町議会において,この問題を解決するため再度区画整理に取り組むこと,下水道事業についても区画整理との関連において考えていくことなどを説明した。 その後,植木町企画課長i(以下「i課長」という。)は,平成元年10月17日に開催された植木町議会において,都市計画事業に関し,「区画整理事業は,昭和49年に中止し本日に至っているが,熊本県や建設省は『中止はあり得ない。』という考えでいるので,中止でなく変更という形で今後進めていく必要があると思う。」旨説明し,平成2年12月11日及び平成4年12月14日に開催された植木町議会においても,同様の説明をした。 平成2年4月に策定された植木町振興計画基本構想や基本計画においても,「昭和46年に事業認可を受けた区画整理事業は現在休止又は中断状態にあるが,区域の変更,事業の見直しを図ることにより,事業の推進を図っていくこと」がうたわれていた。 (乙25ないし27,31ないし35,証人g,被告c本人)(ウ) 被告cは,平成5年3月町長に就任したが,土地区画整理事業は旧規程が廃止されても休止ないし中断状態にあると認識していた。同被告は,植木町の発展のためには,中心的な部分を先行してでも土地区画整理事業を実施する必要があると考え,積極的に推進することとし,調査研究や地元説明等を指示した。 i課長は,同年9月16日に開催された植木町議会において,「条例は廃止されているが,事業は認可されている状態にあ 施する必要があると考え,積極的に推進することとし,調査研究や地元説明等を指示した。 i課長は,同年9月16日に開催された植木町議会において,「条例は廃止されているが,事業は認可されている状態にあり,区画整理事業は施行中であるというのが建設省の見解である。」旨説明した。 (乙28,31,32,証人g,被告c本人)(エ) その後,植木町は,平成6年秋ころから,度々地元懇談会を開催して,区画整理事業について説明するとともに住民に意見を聴き,平成9年9月ころ「植木土地区画整理事業基本構想(案)」を作成して,区域をA,B,Cの3地区に分け,先行的に,市街化が進み区画整理の必要性が高い中心部(回遊型商業地・A地区)につき土地区画整理事業を推進する案を示した。その概要は,施行地区15. 5ヘクタール,総事業費約75億円で,交通,住宅,公共設備の整備等を行おうとするものであった。そして,植木町は,同年,上記構想を説明した「植木地区のまちづくりに向けて」と題するパンフレットを作成し,さらに,平成10年3月,植木土地区画整理事業基本計画調査基本構想報告書概要版を作成した。 (甲13,38,乙9ないし11,32,被告c本人)(オ) 被告cは,平成10年6月開催の植木町議会においても,昭和55年6月開催の植木町議会でのh元町長の発言等を指摘し,昭和44年5月に決定された87.6ヘクタールの計画地域や旧事業認可区域は現在も生きている旨の説明をし,区画整理事業と併せて中心市街地の活性化のための基本計画策定について説明した。 (甲7,32ないし35,37,証人g,被告c本人)ケ旧規程廃止後の旧事業施行区域内における建築等についてところで,都市計画法53条は,都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において,建築物を建築しようとする者は,政令で定める 本人)ケ旧規程廃止後の旧事業施行区域内における建築等についてところで,都市計画法53条は,都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において,建築物を建築しようとする者は,政令で定める軽易な行為(階数が2階以下で地階を有しない木造建築物の改築又は移転)等を除き,都道府県知事の許可を受けなければならないと規定し,また,同法54条は,都道府県知事は,上記申請にかかる建築物が,階数で2階以下で地階を有しないこと,主要構造部が木造,鉄骨造り,コンクリートブロック造り等に該当し,かつ,容易に移転し若しくは除却できるものと認められる場合は,許可しなければならないと規定しており,それ以外の建物については,市街地開発事業の施行区域内において,原則として建築が許可されないこととされている。 ところが,旧規程が廃止された昭和49年6月以降,歴代の町長や町担当者は,建設省の上記見解に反して,旧事業が廃止されたかのごとく上記建築制限を緩和して運用するという矛盾した対応をしており,旧事業の施行区域内に,地下1階,地上3階建ての鉄骨造りの百貨店や地上4階建ての鉄筋コンクリート造りの建物等の建築が許可された。 また,植木町は,有限会社山田興業からなされた地上2階建て鉄骨造りの店舗建築申請に対し,平成9年2月7日付け建築確認申請書調査報告書を作成したが,同報告書の「都市計画法等の手続状況」欄の「土地区画整理」欄には,誤って「なし」の記載に丸印がなされている。建築主事は,上記報告書を参考に有限会社山田興業の建築確認申請につき検討したが,別途提出されていた都市計画法53条の許可申請につき許可されたことから,同建物は適合であるとされた。 (甲16の1ないし16の各1・2,17,18の1ないし5,18の6の1ないし6,18の7の1ないし10,18の8,22, 法53条の許可申請につき許可されたことから,同建物は適合であるとされた。 (甲16の1ないし16の各1・2,17,18の1ないし5,18の6の1ないし6,18の7の1ないし10,18の8,22,25の1・2,66,67,68,証人g,証人j,被告c本人,原告k本人)コ平成10年9月以降の植木町の対応等(ア) 平成10年9月22日,当時建設省都市局区画整理課l課長補佐(以下「l補佐」という。)は,参議院議員m宛に「植木町の土地区画整理事業について」(以下「lメモ」という。)を送付した。lメモには,植木町の土地区画整理事業について,「結論として,違法ではないと認識しています。昭和45年に事業計画決定した『植木土地区画整理事業』に関しては,『施行規程』が昭和49年に廃止されているため,既に廃止されたものと認識しています。したがって,植木町が今回新たに立ち上げようとしている土地区画整理事業は,昭和49年に施行規程が廃止された『植木土地区画整理事業』とは別個の新規事業であり,今回新たに土地区画整理事業を立ち上げることは,昭和49年に施行規程を廃止したことと矛盾するものではないと考えます。なお,施行規程及び事業計画決定に先立つ都市計画決定については,これまで廃止されておらず,今日まで有効であると認識しています。」と記載されていた。 (甲8)(イ) 被告cは,平成10年11月ころlメモを読み,それまで「土地区画整理事業の廃止はない。」というのが建設省の見解であると認識して作業を進めていたが,lメモによって建設省の見解が変化したと認識し,今後はこの見解に従う方向で作業するほかないと考えた。 (乙32,被告c本人)(ウ) 都市計画課課長補佐区画整理係長事務取扱gは,平成11年4月ころ建設省区画整理課に赴き,l補佐の後任者に都市区画整理事業に関す に従う方向で作業するほかないと考えた。 (乙32,被告c本人)(ウ) 都市計画課課長補佐区画整理係長事務取扱gは,平成11年4月ころ建設省区画整理課に赴き,l補佐の後任者に都市区画整理事業に関する建設省の見解を尋ねたところ,建設省の見解は,lメモに記載されているとおり,旧規程の廃止に伴って旧事業も廃止されるというものであることを確認した。 (乙31,証人g)(エ) 被告cは,平成10年12月8日開催の植木町議会において,lメモとの関連で,土地区画整理事業につき,「これまで旧事業認可は生きていると説明してきていたが,今回,旧認可は失効したものとみなす,あるいは旧認可を失効したものとみなさなければ新規の事業認定ができないという見解が示された。これは,事業を再開する前提であるならば,旧認可を廃止したものとみなして,中心部の15.5ヘクタールにつき新たな認可として取り扱ってはどうかという判断が示唆されたものと考えている。」旨述べた。 また,n都市計画課長は,同月9日開催の植木町議会において,建設省が旧事業は廃止されているとの見解を示したことにつき,「15.5ヘクタールを新しく立ち上げるためには事業認可が必要であるが,その際,昭和46年の旧事業の変更手続で行うのか,あるいは新しい形で認可を取り扱うのか,2つの方法が検討された。昭和44年に都市計画決定された土地区画整理事業施行区域は有効に存在しているのであり,今回事業再開する前提であれば,旧認可を廃止したものとみなして15.5ヘクタールにつき新たな事業認可として取り扱ってはどうかという判断が町,県に示唆されたものと考えている。」旨述べた。 (甲32,37,61,乙32,証人g,被告c本人)(オ) 被告cは,上記の考えに基づき,以後は新たな事業として土地区画整理事業を推進することとし,上記 に示唆されたものと考えている。」旨述べた。 (甲32,37,61,乙32,証人g,被告c本人)(オ) 被告cは,上記の考えに基づき,以後は新たな事業として土地区画整理事業を推進することとし,上記のとおり先行的に土地区画整理事業を進めるものとされていたA地区に役場跡地を加えた17.6ヘクタールの区域(以下「植木中央地区」という。)を事業地区とし,事業期間を平成11年度から平成25年度までとする土地区画整理事業を施行することとして,所要の手続を進めた。そして,平成11年5月7日熊本県告示第372号により,植木都市計画土地区画整理事業,植木土地区画整理事業について,都市計画の区域を一部変更して,従前の区域の東側に位置する区域を加えることを内容とする都市計画変更の告示がなされた。また,植木町議会は,平成11年6月21日に賛成17,反対2で新規程を議決し,同月25日に公布され,平成12年2月21日から施行された。 植木町都市計画課は,「植木中央土地区画整理事業」と題するパンフレットを作成して上記事業の概要を知らせ,その後,「植木中央土地区画整理事業,事業計画(案)の概要」と題するパンフレットを作成し,植木都市計画事業植木中央土地区画整理事業(施行地区17.6ヘクタール)について,平成11年6月町議会で可決された上記新規程を含めて説明したが,これには,事業の目的は,植木中央地区は熊本市に隣接し,交通の要衝として地理的条件に恵まれた地域であり,植木町の中心市街地・中心商業地でもあるという立地条件を生かし,魅力ある商業及び住環境の整備により,利便性と快適性を併せ持った中心市街地・中心商業地に再生するため,幹線道路を含めた公共施設の整備改善を行うものである旨説明した。 (甲52,乙12ないし16,31,32,39,被告c本人)(カ) 平成12年2月 を併せ持った中心市街地・中心商業地に再生するため,幹線道路を含めた公共施設の整備改善を行うものである旨説明した。 (甲52,乙12ないし16,31,32,39,被告c本人)(カ) 平成12年2月21日,植木町公告第7号において,①土地区画整理事業の名称を植木都市計画事業植木中央土地区画整理事業,②施行者を植木町,③施行地区をη等とし,④事業施行期間を平成12年2月21日から平成26年3月31日までとし,⑤事務所の所在地を植木町役場とする新事業の事業計画が公告された。なお,新事業施行区域は,別紙2の青線で囲まれた部分である。 (乙16,32,40,被告c本人)サ平成9年度の予算について(ア) 被告cは,平成9年3月10日,平成9年度植木町一般会計予算案を提出し,同予算は,同月21日植木町議会において議決されたが,同予算には,都市計画総務費として6622万6000円,都市計画事業推進費として1048万7000円が計上されていた。 (イ) その後,5回にわたる補正予算編成により,最終的には,平成9年度植木町一般会計の中で,都市計画総務費は6308万6000円に,都市計画事業推進費は6421万4000円となった。 (乙21の1ないし6)シ平成9年度における土地区画整理事業に関する支出及び同年度の決算について(ア) 被告cは,コンサルタント会社である東武計画株式会社の熊本支店(以下「東武計画」という。)に対し基本計画調査等につき業務委託し,同社は,基本構想報告書,基本構想報告書概要版,区画整理事業計画報告書,地区整備基本構想パンフレット作成等の事務を行い,平成10年3月31日,平成9年度植木土地区画整理事業基本計画調査業務委託費用として,3202万5000円(消費税込み)を請求した。被告cは,平成10年4月22日,平成9年度一般会計の都 事務を行い,平成10年3月31日,平成9年度植木土地区画整理事業基本計画調査業務委託費用として,3202万5000円(消費税込み)を請求した。被告cは,平成10年4月22日,平成9年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より上記費用を支出した。 被告cは,西村総合法律事務所に所属するo弁護士(以下「o弁護士」という。)に土地区画整理事業に関する法律相談を行い,同弁護士は,同年3月20日,弁護士相談委託料として42万円(消費税込み)を請求した。被告cは,同月26日,平成9年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より上記費用を支出した。 また,被告cは,土地区画整理事業に関して人件費等も支出しており,上記各費用との合計は,5599万6898円である。費用の内訳は,別紙3のとおりである。 (イ) 被告cは,平成10年12月8日,平成9年度植木町一般会計歳入歳出決算を議会の認定に付した。都市計画総務費の支出合計額は6257万2543円で,都市計画事業推進費の支出合計額は6404万7988円である。上記決算は,同月18日,植木町議会において議決された。 (甲1の1・2,乙22,29の1・2)ス平成10年度の予算について(ア) 被告cは,平成10年3月9日,平成10年度植木町一般会計予算を提出し,同予算は,同月20日,植木町議会において議決されたが,同予算には,都市計画総務費として4838万4000円,都市計画事業推進費として6651万7000円が計上されていた。 (イ) その後,4回にわたる補正予算編成により,最終的には,平成10年度植木町一般会計の中で,都市計画総務費は6589万9000円に,都市計画事業推進費は6824万円にそれぞれ補正された。 (乙23の1ないし5)セ平成10年度における土地区画整理事業に関する支出及び同年度の決 会計の中で,都市計画総務費は6589万9000円に,都市計画事業推進費は6824万円にそれぞれ補正された。 (乙23の1ないし5)セ平成10年度における土地区画整理事業に関する支出及び同年度の決算について(ア) 東武計画は,①将来交通量の推計,②交差点の現示計画と交差点詳細図作成,③都市計画道路線形の検討,④都市計画道路縦断図の作成,⑤都市計画素案図書(縦覧図書・参考図書)の作成,⑥原案図書の作成等の事務を行い,平成11年3月31日,平成10年度都市計画道路交通解析及び都市計画決定図書等作成業務委託費用として1995万7013円(消費税込み)を請求した。被告cは,平成11年4月7日,平成10年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より上記費用を支出した。 また,東武計画は,①区画整理調査等報告書,②調査等報告書概要版,③まちづくりデザイン計画報告書,④その他資料作成事務を行い,平成11年3月31日,平成10年度植木土地区画整理事業基本計画書作成業務委託費用として,3378万9000円(消費税込み)も請求した。被告cは,平成11年4月7日,平成10年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より上記費用を支出した。 被告cは,株式会社九州不動産鑑定所に鑑定評価を委託し,同社は,鑑定評価業務事務を行い,平成10年11月24日,鑑定評価業務委託料として420万円を請求した。被告cは,同年12月2日,平成10年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より上記費用を支出した。 o弁護士は,土地区画整理事業法律調査業務を行い,同年4月16日,土地区画整理事業に関する法律調査業務委託料として10万3701円(消費税込み)を請求した。被告cは,同月24日,上記費用を平成10年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より支出した。 また,被告cは,土 理事業に関する法律調査業務委託料として10万3701円(消費税込み)を請求した。被告cは,同月24日,上記費用を平成10年度一般会計の都市計画事業推進費の委託料より支出した。 また,被告cは,土地区画整理事業に関して人件費等も支出しており,上記各費用との合計は1億0725万3346円である。なお,費用の内訳は別紙3のとおりである。 (イ) 被告cは,平成11年12月8日,平成10年度植木町会計歳入歳出決算を議会の認定に付した。都市計画総務費の支出合計額は,6597万5249円,都市計画事業推進費の支出合計額は,6649万6652円である。上記決算は,同月17日,植木町議会において議決された。 (乙30の1ないし4,38)ソ平成11年度予算について(ア) 被告cは,平成11年3月10日,平成11年度一般会計予算を植木町議会に提出し,同予算は,同月23日議決されたが,同予算には区画整理事業費として1億9712万4000円が計上されていた。 (イ) その後,2回の補正予算編成により,最終的には,平成11年度植木町一般会計の中で,区画整理事業費は2億8640万1000円に補正された。 (乙24の1ないし3)(2) 上記認定事実によれば,被告cは,土地区画整理事業を推進するに当たり,当初は,かねてからの建設省の見解であり,平成2年の町の基本構想においても示されている「旧規程が廃止されても,旧事業は廃止されずに存続しており,休止又は中断状態にある。」との考えに基づき,その認識の下で,旧事業全体ないし先行的に施行することとした一部地域(A地区・植木中央地区)につき,土地区画整理事業を施行するため,基本計画調査業務や法律調査業務等の調査事務を委託し,平成9年度,平成10年度予算に基づき都市計画事業推進費の委託料や人件費等を支払っていたが,平成1 地区)につき,土地区画整理事業を施行するため,基本計画調査業務や法律調査業務等の調査事務を委託し,平成9年度,平成10年度予算に基づき都市計画事業推進費の委託料や人件費等を支払っていたが,平成10年11月ころlメモの存在を知ってからは,上記見解を改め,既に執行した予算も含めて新事業のためのものと捉え直して,新事業を実施するための費用として支出したものである。 ところで,土地区画整理事業の廃止に関しては,公共団体施行の場合には,土地区画整理法に何ら明文の規定がないため,事業の廃止が可能か否か争いがあるが,都市計画事業の認可等は認可等の中で定められた事業施行期間を徒過すると失効すると解されるから,本件においては,旧事業の事業計画の決定・認可の効力は,施行期間(昭和50年3月31日まで)の経過により失効し,旧事業は廃止されていたといわざるをえない(なお,甲63,64によれば,現在,建設省(国土交通省)も都市計画法63条(事業計画の変更)の手続により,事業施行期間を短縮することにより,認可等の効力を失わせて事業を廃止できると解釈していることが窺われる。)。 (3) しかして,普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為は,法令又は予算の定めるところに従い,これをしなければならない(法232条の3)ところ,被告cは,平成12年2月21日に事業計画が公告された新事業のために支出するまでは,旧事業ないしこれを一部変更した「植木中央地区土地区画整理事業」を遂行するものとして支出していたことは上記説示のとおりである。 しかしながら,もともと,普通地方公共団体は,その事務を処理するため必要な経費を支弁するものとする旨定められているところ(法232条1項),普通地方公共団体が土地区画整理事業を行うことは,その事務に該当し(平成11年7月法律8 方公共団体は,その事務を処理するため必要な経費を支弁するものとする旨定められているところ(法232条1項),普通地方公共団体が土地区画整理事業を行うことは,その事務に該当し(平成11年7月法律87号による改正前の地方自治法2条3項12号),また,都道府県又は市町村が施行する土地区画整理事業にあっては,当該普通地方公共団体自身が,当該土地区画整理事業を施行する公共的必要性のある地域であると判断し,都市計画的な観点に立って計画的に市街地の造成を図ろうとするものであるから(土地区画整理法3条3項,3条の5第1項),当該普通地方公共団体が当該土地区画整理事業を立案,計画し,これを円滑に遂行するために必要な事務も,その事務に属するものと解される。そして,土地区画整理法118条1項も「施行者が土地区画整理事業の費用を負担する。」旨規定しているから,公共団体施行の場合,その費用は施行規程の定めを待つまでもなく当然に当該公共団体の負担となるのである。 上記認定事実によれば,被告cは,東武計画等に調査業務等を委託して,土地区画整理事業の基本構想の作成,その構想を説明したパンフレットの作成,土地区画整理事業に関する調査及び調査報告書の作成,土地区画整理事業に関連する法律問題,交通量及び土地評価等の各種調査等の事務を行わせて,平成9年度,平成10年度予算から植木土地区画整理事業基本計画調査業務委託費用等として支出したが,これらの事務は,旧事業ないしその一部変更事業を実施する場合はもちろん,新たに土地区画整理事業として実施する場合にも,事業を始めるに当たり,あらかじめ,土地区画整理事業を立案,計画するために必要な調査事務ということができるから,上記業務委託契約等は,法令に基づいたものであり,これらの支出は法令に基づいたものというべきである。 (4) これに じめ,土地区画整理事業を立案,計画するために必要な調査事務ということができるから,上記業務委託契約等は,法令に基づいたものであり,これらの支出は法令に基づいたものというべきである。 (4) これに対し,原告らは,旧事業は既に廃止されていたのであるから,土地区画整理事業に対する予算の執行は違法である旨主張する。 なるほど,被告cは,上記のとおり,予算執行時点では旧事業が有効に存続しているとの認識の下,旧事業の一部を変更して「植木中央地区土地区画整理事業」を施行しようとしていたのであるが,実際には既に旧事業は廃止されていたものである。しかしながら,上記説示のとおり,土地区画整理事業の施行に関連する調査の実施は,旧事業の事業計画の決定・認可あるいは旧規程がなければ行うことができないというものではなく,土地区画整理事業の施行を企図する公共団体として,仮に旧事業の事業計画の決定・認可あるいは旧規程がないとしても,新規の事業を策定,立案するために実施できると解される。この点は,旧事業の事業計画の決定・認可によって発生した事業施行権に基づく処分(仮換地指定処分等)について,旧事業が無効であった場合や後に旧事業が取り消されたり,廃止されていたことが判明した場合とは異なるというべきである。そうすると,旧事業の廃止により,土地区画整理事業の施行のための調査の実施が直ちに法令上の根拠を欠いて違法となるものではないのであって,上記土地区画整理事業の施行のための調査自体は,旧事業が廃止されていたとしても,植木町として,これとは別個に実施できるというべきである。 (5) また,原告らは,旧事業が継続していることを前提に予算が策定され,植木町議会の承認を得ており,新事業のための予算執行のために必要な手続を行っていないから,新事業に対する予算の執行であったとしても違 また,原告らは,旧事業が継続していることを前提に予算が策定され,植木町議会の承認を得ており,新事業のための予算執行のために必要な手続を行っていないから,新事業に対する予算の執行であったとしても違法である旨主張する。 なるほど,上記のとおり,平成9年度及び平成10年度予算は,旧事業が有効に存続していることを前提に,旧事業ないしその一部を変更して植木中央地区の土地区画整理事業を施行するものとして策定されて,議会で議決されたものである。 町議会における予算議決の前提とされた事業の対象が旧事業であったことは,相当ではなかったといわざるをえないが,「旧事業が有効に存続している。」との見解は,上記説示のとおり建設省のかねてからの見解であり,それを前提に熊本県からも指導されていたという経緯がある上,土地区画整理法に事業廃止につき明文の規定がないことに照らせばこの見解も理由がないとも言い難いから,この見解の下に,旧事業ないしその一部変更事業と考えて,新たな事業としての手続をとることなく支出したことはやむをえなかったといわざるをえない。そして,本件において,被告cがことさらに旧事業として手続を進めようとする意図があったことを認めるに足りる証拠はない(新事業のための新規程が賛成多数で可決成立したことに照らせば,仮に平成9年,平成10年当時も新たな土地区画整理事業として施行しようとすれば可能であったと解される。)。また,上記認定の事実に照らせば,全体的な調査の結果,昭和44年5月10日に指定された植木都市計画用途地域の中で,先行的に土地区画整理事業を施行すべき地区が植木中央地区とされたことから,植木中央地区の土地区画整理事業の推進に必要な調査事務等の費用に充てるために予算が策定されたのに対し,町議会は,上記調査及び上記地区につき土地区画整理事業を実施す 区が植木中央地区とされたことから,植木中央地区の土地区画整理事業の推進に必要な調査事務等の費用に充てるために予算が策定されたのに対し,町議会は,上記調査及び上記地区につき土地区画整理事業を実施すること自体についてはこれを承認して上記予算を議決したものと解される(平成9年ころは旧事業全体が調査の対象となっていたが,これも先行的に土地区画整理事業を実施すべき植木中央地区の調査に関連しているものと認められる。)。そして,新規に土地区画整理事業の計画を立案,計画するための調査事務を遂行するについては,新たな事業計画や施行規程が成立している必要はないから,新事業のための予算執行としての手続が具備していなくとも違法とはいえないというべきである。さらに,実際にも上記予算は,上記土地区画整理事業施行のために必要かつ有用な使途に使われているのであって,その使途に不当な点はない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (6) さらに,原告らは,植木町は昭和45年から昭和47年にかけて調査を行っており,平成5年には地積調査も行っているのであって,事業に必要な調査の大部分は終了したといえるので調査費用は不要である旨主張する。 確かに,旧事業と新事業の施行地区は重なっている部分が多いが,調査が行われてから20年以上経過しており,交通状況,居住状況,経済状況等は旧事業当時と全く異なっているものと認められる。そうすると,新たな土地区画整理事業の立案,計画及びその円滑な遂行のために,新たに交通状況や土地の価格状況等を調査する必要があるといわざるをえない。したがって,原告らの上記主張も採用できない。 (7) そうすると,被告cが,土地区画整理事業に関し,平成9年度及び平成10年度予算から支出したことは,法令及び予算に従ったものであって,適法な行為というべきであ 告らの上記主張も採用できない。 (7) そうすると,被告cが,土地区画整理事業に関し,平成9年度及び平成10年度予算から支出したことは,法令及び予算に従ったものであって,適法な行為というべきである。なお,平成11年8月29日までの平成11年度予算の執行についても同様に適法である(原告らは,新規程を定める条例は必要な手続を経ていないから,新事業に関する予算の支出も違法である旨主張するが,上記認定事実に照らせば,新規程を定める条例は,その手続に何ら違法な点はなく,植木町議会の議決を経た上で公布されており有効であるから,原告らの上記主張は採用できない。)。 3 予算支出差止めの可否について(争点3)第2事件原告らは,新規程を定める条例は必要な手続を経ていないとして,平成11年度予算の区画整理事業費の予算支出の差止めを求めているが,弁論の全趣旨によれば,上記予算は既に支出されたことが認められるから,法242条の2第1項1号所定の差止め請求としての訴えの利益がなく,却下を免れない。 第4 結論以上によれば,原告a及び同bには原告適格が認められないので,両原告の訴えはいずれもこれを却下し,第2事件中,予算支出差止請求にかかる訴えは訴えの利益を欠き,不適法であるからいずれもこれを却下し,その余の第1事件原告らの請求及び第2事件原告らのその余の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第3部裁判長裁判官永松健幹裁判官渡部市郎裁判官久布白千咲
▼ クリックして全文を表示