判決平成14年8月23日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第868号,同14年(ワ)第773号賃金等請求事件 主文 1 被告は,平成13年(ワ)第868号事件原告らそれぞれに対し,平成13年4月から平成16年3月までの間(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定までの間),毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の同原告らに対応する各「月額請求額」欄記載の各金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,平成14年(ワ)第773号事件原告に対し,平成13年8月から平成16年3月までの間(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定までの間),毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の同原告に対応する「月額請求額」欄記載の金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らの訴えのうち,平成16年4月以降(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定以降)毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の各原告らに対応する「月額請求額」欄記載の各金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める部分を却下する。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 この判決の1,2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,平成13年(ワ)第868号事件原告らそれぞれに対し,平成13年4月から毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の同原告らに対応する「月額請求額」欄記載の各金員及びこれに対する,各月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 2 被告は,平成14年(ワ)第773号事 り,別紙「請求額一覧表」の同原告らに対応する「月額請求額」欄記載の各金員及びこれに対する,各月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 2 被告は,平成14年(ワ)第773号事件原告に対し,平成13年8月から毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の同原告に対応する「月額請求額」欄記載の金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,被告に対し,被告が,平成13年4月の就業規則の改定により,被告に勤務する原告らの賃金を50パーセントカットしたことを違法無効として争い,就業規則改定前の従前賃金との差額を支払うように求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者被告は,船舶貨物の積み込みや陸揚げの際に行う,貨物の個数または容積・重量の計算及び証明(検数業務)を業とする公益社団法人であり,我が国における代表的な公認検数機関の一つである。 被告は,全国の主要な国際港に10の事業所(「支部」と称されている。)を置いている。 原告らは,被告の10事業所の1つである神戸支部に勤務する従業員であり,「検数人」として,検数・検量等の業務に従事している。また,原告らは,職能別組合であるa傘下のb労組に所属する労働組合員である。 なお,平成14年(ワ)第773号事件原告は,平成13年1月から同年2月末まで一時帰休制度の対象となり,同年3月2日から7月15日までは病気休業し,同年7月16日に職場復帰した者である。 (2) 原告らの賃金の決定方法ア被告の就業規則第32条によれば,「従業員の給与に関する事項は,別に定める給与規定による。」と規定されているが,実際には, 場復帰した者である。 (2) 原告らの賃金の決定方法ア被告の就業規則第32条によれば,「従業員の給与に関する事項は,別に定める給与規定による。」と規定されているが,実際には,原告らの賃金は,被告とaとの間の労働協約である「賃金・勤務取扱に関する協定書」により定められていた。 イ前記「賃金・勤務取扱に関する協定書」は,当該年度の賃金の改定について定めた協定(以下「A協定」という。),「賃金・勤務取扱協定」(以下「B協定」という。),「賃金協定関係の覚書」(以下「C協定」という。)の3つの合意により構成されている。B協定及びC協定では賃金についての一般準則が定められ,毎春闘の結果を反映したA協定によって,当該年度の賃上げ額が定められていた。 ウ B協定第6条によれば,原告らには,所定基準内賃金として,本給・役付手当・特技手当・家族手当が支給され,その他の賃金として住宅手当が支給されることになっている。 エ本給の金額については,B協定第7条によれば,「別の定めによる」とされており,A協定によって,各年の3月31日現在の在職者の同年4月1日以降の本給の引き上げ額が定められている。 すなわち,原告ら従業員の毎年4月1日以降の本給の金額は,同年3月31日の本給額に同年A協定で定める引き上げ額を加算することによって定められていた。 オ B協定第20条によれば,原告らの住宅手当は,「別に定める」とされ,C協定に定める住宅手当事業所別一覧により,以下のとおり定められていた。 所帯者独身者神戸 3万6900円 3万3500円姫路 3万3600円 3万 。 所帯者独身者神戸 3万6900円 3万3500円姫路 3万3600円 3万0200円(3) 本件賃金カットに至る経緯ア被告は,平成11年3月2日,aに対し,「収支改善施策に関する提案について」と題する書面を提出し,①本給のカット,②労働基準法(以下「労基法」という。)を上回る労働条件の見直しと廃止,③一時帰休制度の導入を提案した(以下「3・2提案」という。)。 イ a及びその傘下の7労組のうちb労組を除く6労組は,平成11年12月25日,被告との間で,B協定中,労基法の最低基準を上回る労働条件を定めた部分の適用を一時停止する旨の暫定協定を締結した。 b労組は,上記暫定協定の締結を拒否したが,被告は,神戸支部につき,上記暫定協定に沿った就業規則の変更を行い,これに基づいて,原告らb労組従業員に対しても,同12年1月7日から,前記暫定協定と同様の労基法の最低基準を上回る労働条件の見直しと廃止を実施した。 ウ被告は,平成12年5月10日,神戸支部に所属する従業員に対し,同支部従業員全員の本給10パーセントカット,住宅手当の一律1万円減額を同年7月分給与から行う旨を提案し,これを実施した。しかし,被告は,その後間もなくこれを撤回し,減額分を全員に払い戻した。 エ aは,平成12年7月21日,前記被告の3・2提案の取扱いについて,神戸支部における収支改善施策にかかわる事項については,b労組に3権を委譲する旨を決定し,同日,被告に対しその旨を通知した。 オ被告は,平成12年8月31日,aに対し,その間で締結していた賃金に関する協定である平 にかかわる事項については,b労組に3権を委譲する旨を決定し,同日,被告に対しその旨を通知した。 オ被告は,平成12年8月31日,aに対し,その間で締結していた賃金に関する協定である平成10年4月27日付AないしC協定,同11年5月10日付A協定及び同12年5月10日付A協定(以下これらの協定を合わせて「本件賃金協定」という。)を,同年9月1日をもってb労組との関係でのみ破棄する旨を通告した。 その上で,被告は,平成12年9月20日,b労組に対し,上記通告により,本件賃金協定は平成12年11月30日をもって失効すると主張して,同年12月1日以降,月額固定給を20パーセントカットすること,平成13年1月1日から30名の一時帰休制度を導入することを提案した(以下「9・20提案」という。)。 カ被告とb労組は,平成12年12月18日,平成12年12月1日から同13年3月31日まで,月額基準内賃金を10パーセントカットする旨の暫定協定(以下「本件暫定協定」という。)を締結した。 キ被告は,平成12年12月22日,aに対し,同年8月31日に行った前記本件賃金協定の破棄通告を撤回したが,同時に,本件暫定協定期間が終了する平成13年3月31日をもって,本件賃金協定をb労組との関係でのみ破棄する旨の通告(以下「本件破棄通告」という。)をした。 さらに,被告は,同月26日,b労組に対し,神戸支部の従業員のみ,「平成13年4月から3年間,月額基準内賃金を50パーセントカット。ただし,41歳未満の者は30パーセントカット。一時金はゼロ。」という提案をし,また,平成13年1月以降,前記提案の一時帰休を実施した。 ク被告は,平成13年2月26日,b労組に対し,有限会社cへの 歳未満の者は30パーセントカット。一時金はゼロ。」という提案をし,また,平成13年1月以降,前記提案の一時帰休を実施した。 ク被告は,平成13年2月26日,b労組に対し,有限会社cへの転籍斡旋を行う旨の提案をした。 上記転籍斡旋の提案内容は,神戸支部従業員のうち,希望者を有限会社cに転籍させた上,有限会社cから神戸支部に派遣させ,同支部の検数業務に従事させるというもので,有限会社cに転籍した場合,有限会社cとの雇用契約期間は1年間の有期契約となり,また,転籍時の格付け(キーマンA,キーマンB,一般者)に応じて,これまでの基準内賃金の80パーセント,70パーセント,60パーセントが支給されるというものであった。 (4) 本件賃金カットの実施被告は,平成13年4月1日,神戸支部につき,「平成13年4月1日から同16年3月31日まで,基準内賃金(本給,役付手当,特技手当,家族手当〔子女の人数に応じて加算支給される子女扶養住宅補助を含む。以下においても同じ。〕,住宅手当)の支給額を50パーセント(平成13年4月1日現在の満年齢が41歳未満の者は30パーセント)引き下げる。本給,役付手当,特技手当及び住宅手当の合計額が15万6300円に満たない場合は,その差額を調整手当として支給する。」旨の就業規則の変更(以下「本件就業規則変更」という。)を行い,これを平成13年4月分給与(平成13年4月25日支払)から,原告らを含むb労組従業員に対して実施した(以下「本件賃金カット」という。)。 (5) 原告らの受給額等原告らの本件賃金カット前の平成13年3月時点での本給,役付手当,特技手当,家族手当(なお,別紙「請求額一覧表」では,本来の家族手当を家族手当3とし,子女の人数に応 原告らの受給額等原告らの本件賃金カット前の平成13年3月時点での本給,役付手当,特技手当,家族手当(なお,別紙「請求額一覧表」では,本来の家族手当を家族手当3とし,子女の人数に応じて加算支給される子女扶養住宅補助を家族手当4として,分けて記載している。),住宅手当及びその合計額は,別紙「請求額一覧表」の各欄に記載のとおりであり,本件賃金カットがなければ,平成13年4月分以降も同表「現行合計」欄記載の各金額を給与として支給されるはずであった。 しかし,原告らは,平成13年4月分以降,同表記載のとおり,本件賃金カット(いずれも50パーセントカット)を実施されたため,それに伴う調整手当の支給を合わせても,同表記載の「新合計額」記載のとおりの額しか給与を支給されていない。 なお,被告における給与の計算期間は当月1日から当月末日までで,その支払期日は当月25日である。 2 争点原告らの差額賃金請求権の有無 3 争点に対する当事者の主張(原告らの主張)(1) 本件賃金協定の有効性被告は,本件賃金協定が本件破棄通告により,原告らに対する関係でその効力がなくなったことを前提として,本件就業規則変更を行うとともに,本件賃金協定が失効した以上,原告らの賃金については前記変更後の就業規則が適用されるとして,変更後の就業規則に基づき原告らに対する本件賃金カットを強行した。 しかし,以下に述べるとおり,被告のした本件破棄通告は無効であって,本件賃金協定は失効していない。また,被告は,本件賃金協定は期間満了により失効した等とも主張するが,それら主張も理由がないことは以下に記載のとおりである。 したがって,原告らは,平成13年4月分以降も していない。また,被告は,本件賃金協定は期間満了により失効した等とも主張するが,それら主張も理由がないことは以下に記載のとおりである。 したがって,原告らは,平成13年4月分以降も本件賃金協定に基づく賃金支払請求権を有するから,原告らは,平成13年4月分以降,別紙「請求額一覧表」の「新合計額」欄記載の給与しか支払わない被告に対し,同表の「月額請求額」欄記載の金員を賃金差額として請求できる権利を有している。 ア本件賃金協定の内,b労組にかかる部分のみの一部解約の有効性(ア) 本件破棄通告は,被告とaとを当事者とする労働協約の「b労組」にかかる部分のみを一部解約する旨の通告であるが,一つの労働協約は一体をなすものであるから,当事者の一方がその一部のみを解約することは原則として許されず,無効である。例外的に,協約自体の中に客観的に他と分別することのできる部分があり,かつ,分別して扱われることもあり得ることを当事者としても予想し得たと考えるのが合理的であると認められる場合には,労働協約の一部分を取り出して解約できる余地があるとしても,本件には到底当てはまらない。 本来,賃金に関する基本事項については,被告の各支部労組が単独で協約を締結することも可能であり,その場合には,各支部の規模,業務内容及び業績等を反映して,各支部毎に内容の異なる協約が締結される可能性があったものである。にもかかわらず,各支部労組は,賃金,労働時間,休日などの基本的な労働条件について全国統一の基準を設けた方がよいと判断し,その結果,上記労働条件についての協約締結権限をaに委譲し,aは,被告との間で本件賃金協定を締結したのである。そして,本件賃金協定締結に当たっては,各支部の実情をどの程度反映させて全国共通 判断し,その結果,上記労働条件についての協約締結権限をaに委譲し,aは,被告との間で本件賃金協定を締結したのである。そして,本件賃金協定締結に当たっては,各支部の実情をどの程度反映させて全国共通の基準とするかについて,被告とaとの間で様々な議論と駆け引きが行われた。したがって,本件賃金協定は,全国各支部にもれなくその拘束力を及ぼすことが協約当事者であるa及び被告双方の意思であり,各支部ごとに分別して取り扱うことには合理性もなく,誰にも予想不可能であった。 また,本件のごとき賃金に関する中央協定をb労組との間でのみ排除することは労働協約の変更であり,aとの交渉手続が必要である。 さらに,本件賃金協定の遵守が困難であるならば,被告は,本件賃金協定全体を破棄(解約)し,aとの間で新たに賃金協定を締結し直すか,各支部の労組とそれぞれ賃金協定を締結する方法によるべきであり,これと本件一部破棄を同視することは,労働協約には相手方があることを忘れた議論である。 (イ) 3権委譲の意味について被告は,被告が平成11年12月25日にa及びb労組を除く被告各支部労組との間で暫定協定を締結していること,その締結を拒絶したb労組は,遅くとも平成12年7月21日には,aから神戸支部における収支改善施策にかかわる事項について3権の委譲を受けたことを理由に,3権委譲を受けた時点でb労組は本件賃金協定の単独の当事者となったとして,本件破棄通告は,一部解約ではない旨を主張する。 しかし,平成11年12月25日付暫定協定締結の趣旨は,あくまで本件賃金協定が有効に存在することを前提として,その一部の条項の適用を一時的に制限するものにすぎない。aは,平成12年7月21 しかし,平成11年12月25日付暫定協定締結の趣旨は,あくまで本件賃金協定が有効に存在することを前提として,その一部の条項の適用を一時的に制限するものにすぎない。aは,平成12年7月21日の収支改善施策にかかわる事項についての3権委譲に先立って,賃金問題は,aの中央協定事項であること,賃金カット実施に当たっては,労使合意と本人同意が必要であることを各支部労組宛に確認説明している。3権委譲は,aが,神戸支部と交渉し,「労使合意」を条件として暫定協定(中央協定を前提として,協約に定めた労働条件に関する協定を一定期間解除凍結すること)を締結する権限をb労組に対して委譲したものであり,本件賃金協定そのものを破棄したり,当事者能力をb労組に委譲したものではない。なお,b労組は,平成12年12月18日付で暫定協定(本件暫定協定)を締結していることから,この段階で3権委譲は消滅し,中央協定の原則に戻っているものである。さらに,平成13年春闘の賃上げについては,aが被告との間で労働協約(A協定。甲34の1・2)を締結し,b労組組合員にもその協定が適用されており,本件賃金協定に関する権限がaに帰属していることに変わりはない。 また,被告は,本件暫定協定に関して3権が委譲されたことを根拠に,b労組との関係では,本件賃金協定の内容が本件暫定協定のとおりに変更され,同協定の終了によりb労組の組合員に適用される部分がなくなった旨主張する。 しかし,本件暫定協定は,あくまで,a内部の合意によって,aが締結主体となった本件賃金協定の存続を前提とし,その暫定的な扱いについて,被告各支部と各支部組合との間での交渉及び協定の可能性を認めたものにすぎない。すなわち,本件賃金協定は解約されたわけでも失効したわけでもない た本件賃金協定の存続を前提とし,その暫定的な扱いについて,被告各支部と各支部組合との間での交渉及び協定の可能性を認めたものにすぎない。すなわち,本件賃金協定は解約されたわけでも失効したわけでもないから,3権委譲により本件賃金協定の内容が本件暫定協定どおりに変更されることはあり得ない。 (ウ) 本件賃金協定は期間満了により失効したか。 被告は,本件賃金協定は元々有効期間が1年間であり,期間が延長されたとしても労働組合法15条1項により協定を締結した平成10年4月1日から3年を経過した同13年3月31日をもって期間満了により終了したとも主張する。 しかし,被告とaとの間では,A協定が締結される際には,当然B・C協定も同時更新されていたものである。更新は同一内容の協約を新たに締結することであるから,同一内容の協約が通算して3年を超えて存続しても,労組法15条1項違反の問題は生じない。 したがって,本件賃金協定は有効に存続する。 (エ) 平成13年度の賃金改訂と本件賃金協定の適用被告は,b労組組合員についての平成13年度賃金改訂は,本件就業規則変更後の賃金改訂であり,他の支部労組組合員と異なる取扱いであると主張する。 しかし,本件就業規則変更後の就業規則(乙54)によれば,その第6条で「賃金の構成及び種類は次のとおりとする。」とされ,所定内賃金として,本給,役付手当,特技手当,家族手当,調整手当が定められ(本件就業規則変更により調整手当が追加された),本給は第7条で「別の定めによる」とされ,「但し,平成13年4月分から16年3月分までは各人本給の50パーセントを引き下げる」と規定されているものの,本 件就業規則変更により調整手当が追加された),本給は第7条で「別の定めによる」とされ,「但し,平成13年4月分から16年3月分までは各人本給の50パーセントを引き下げる」と規定されているものの,本給の金額は就業規則では定められておらず,従前同様に「別の定めによる」とされている。したがって,原告らの平成13年度の賃金改訂は,就業規則の変更のみでは不可能であって,原告らb労組の組合員の本給は,「別の定め」である平成13年4月24日付被告・a間の「協定書」及び「覚書」(甲34の1・2)によらなければ決まらないのである。そして,前記「協定書」は,まさに従来のA協定に該当するものであり,B協定及びC協定の適用を前提として,当該年度の春闘の結果を踏まえた賃上げ額を合意したものにほかならない。すなわち,b労組組合員の平成13年度の賃金もまさに本件賃金協定を適用することによって定められているのであり,この点からも,本件賃金協定がb労組との関係でのみ失効しているとの被告の主張が失当であることは明白である。 (2) 本件就業規則変更の無効仮に本件賃金協定が,平成13年4月1日以降その効力を失ったと認められるとしても,本件賃金カットは,以下に述べるとおり,原告らの被る不利益があまりにも過大なうえ,本件就業規則変更は,その必要性も内容の合理性も欠くものであることが明らかであるから,本件賃金カットを規定した本件就業規則変更は無効であって,原告らに対してはその効力を有しない。 そうすると,原告らと被告間の労働契約中の賃金に関する部分については,本件賃金協定は既に失効しているうえ,本件就業規則変更も効力を有しないことから,空白を生ずることとなるが,この場合には,従来妥当してきた協約内容,すなわち,本件賃金協定が暫定的に る部分については,本件賃金協定は既に失効しているうえ,本件就業規則変更も効力を有しないことから,空白を生ずることとなるが,この場合には,従来妥当してきた協約内容,すなわち,本件賃金協定が暫定的にその空白部分を補充するものと解するのが相当である。 したがって,本件賃金協定が平成13年4月1日以降失効したと認められた場合でも,原告らは,本件賃金協定に基づく給与の支払を同日以降受ける権利を有する。 ア原告ら労働者の被る不利益の程度原告らは,いずれも41歳以上で,その平均年齢は52歳であり,年間所得はおよそ500万円,子供2人と妻の4人が平均的家族構成であるところ,既にこれまでの労働条件の切り下げ等により原告らの家計赤字は限界に来ているにもかかわらず,本件賃金カットは,基準内賃金の50パーセントをカットするという前例のない労働条件の一方的切り下げを強行するものであり,原告らが被る不利益はあまりにも大きい。本件賃金カットにより基準内賃金が15万6300円(港湾産別協定最低賃金)を下回る場合は,その差額を調整手当として支給されることになっているが,このことが本件賃金カットの性格を如実に物語っている。すなわち,これでは住宅ローンを抱えている世帯や子供が高校や大学に在学中という世帯は到底ローンや学資の支払が不可能であり,自宅売却や大学等の中退・就職を余儀なくされざるを得ない。多少の貯蓄のある世帯でもこの状態が半年も続けば破産状態になることは火を見るより明らかであり,家庭生活の破壊,家族関係の崩壊に至ってしまう。 イ被告における本件就業規則変更の必要性がないこと被告の平成10年度以降の全国収支は黒字であり,平成11年度には累積赤字も解消しており,被告の業績は好転し しまう。 イ被告における本件就業規則変更の必要性がないこと被告の平成10年度以降の全国収支は黒字であり,平成11年度には累積赤字も解消しており,被告の業績は好転しているから,被告において本件就業規則変更の必要性は乏しい。 被告は,平成12年度末の剰余金は,退職給与引当金繰入限度の税制変更がなされた結果,税務計算上の取り崩し益が17億1551万円発生したために生じたものであり,同税制変更がなければかかる巨額の取り崩し益は発生せず,月次欠損の7億2977万0984円がそのまま年次欠損になったと推測されると主張する。しかし,退職給与引当金の取り崩しは,現実に多数の退職者が生じた結果発生したのであり,税制変更がなくとも発生していたものである。また,退職給与引当金の取り崩しは,経理上は益金を発生させるが,同時に退職金という損金を発生させ,この損金は事業支出として計上されている。従って,既に事業支出として退職給与を計上した上で,さらに取り崩し益を差し引くのは,損益を二重評価することになり,実態を歪曲するものである。 また,被告の赤字は計数上創出されたものと言える。被告は,3億5201万円が同年度末剰余金となるところ,内金3億円を将来の退職金支払い資金の確保を図るためにあえて有税で退職引当金に繰り入れた結果,5201万円が最終年度末剰余金として算出されたと主張するが,逆に言えば,税法基準どおりの退職給与引当金の繰入を行うならば,当期の剰余金は3億5201万円にのぼるということである。この時期に3億円もの金額を一時に繰り入れる必然性はない。被告には,定年制の定めがあり,労働者の年齢構成も把握されているから,各期毎に何名の退職金が生じるか,現実に支払うべき退職金がどれだけ必要かは予 の時期に3億円もの金額を一時に繰り入れる必然性はない。被告には,定年制の定めがあり,労働者の年齢構成も把握されているから,各期毎に何名の退職金が生じるか,現実に支払うべき退職金がどれだけ必要かは予測可能である。退職給与引当金は,将来の退職給与の支払いに充てるため損金計上が税法上認められたものであって,資金の外部流出を伴うものではない。この資金は,現金・預金として確保しておくのか,不動産,有価証券等の固定資産で保有する方法をとるのかは経営者の裁量によるところであるが,いずれにせよ,いつでも支払いに充当できるよう確保されていなければならない。平成12年度の特別損失を計上するに至った理由として被告が主張するところは,被告の経営責任に属する問題に過ぎず,その失敗のしわ寄せを原告ら労働者に押しつけることは許されない。 仮に,被告の主張を前提としても,本件就業規則変更の必要性は認められない。すなわち,被告は,平成13年3月期に退職準備金として実際には26億円を計上していたところ,退職者が当初の予想を大幅に超過したため32億円が必要となり(超過分約6億円),その資金調達のため資産売却を行った結果特別損失(約2億8000万円)が生じたと主張するから,これは通常の事業年度では発生しない特別な事情といえる。そして,被告が主張する平成13年3月期の欠損金7億2977万0984円を前提としても,通常の事業年度であれば,上記特別事情による損失約8億8000万円を除外した約1億5000万円の剰余金が生じたこととなる。退職給与引当金の取り崩し益から算出すると,当期の会計上の退職金負担額は全従業員の6.7パーセント以上に相当する137名分(1人当たり退職金1300万円とした場合)に相当し,通常を大きく上回る退職金を負担したことになる。それにもかか ると,当期の会計上の退職金負担額は全従業員の6.7パーセント以上に相当する137名分(1人当たり退職金1300万円とした場合)に相当し,通常を大きく上回る退職金を負担したことになる。それにもかかわらず,上記剰余金が発生する状況にあることは,被告の財務内容が改善していることを表しており,原告らに対する賃金50パーセントカットの措置を講じる必要性がないことの証である。 さらに,被告の役員(会長,副会長,常務理事3名,理事5名,監事2名)の報酬カット率がわずか5パーセントに過ぎず,しかも,平成10年9月から同11年3月までは12パーセントカットとされていたのに,同年4月以降は5パーセントに減額率が引き下げられたことは,被告経営陣が経営危機と認識していないことの現れである。また,原告ら従業員に対する極端な賃金カットとはおよそ均衡がとれない。 ウ変更後の就業規則の内容の不合理性(ア) 本件就業規則変更の目的本件就業規則変更は,被告が全国単一の企業であるにもかかわらず,神戸支部の労働者である原告らにのみ賃金コストの抑制の負担という一方的不利益を負わせるものである。 被告は,本件賃金カットとともに有限会社cへの転籍斡旋の制度を提示したが,その狙いは,原告らがおよそ生活できない異常な賃金カットを突きつけ,労働条件切り下げや派遣社員化はそれよりましではないかとあきらめさせることである。すなわち,その目的は,神戸支部従業員の退職強要と派遣社員化という不安定雇用化にあり,退職を事実上強制するものである。 (イ) 変更後の本件就業規則の内容の不均衡かつ不公正性a 被告の公益法人性及び神戸支部の収支悪化の要因等 り,退職を事実上強制するものである。 (イ) 変更後の本件就業規則の内容の不均衡かつ不公正性a 被告の公益法人性及び神戸支部の収支悪化の要因等被告は,検数業務の中立性と公正性を図るために全国組織として設立された公益法人であり,全国統一労働条件,教育訓練活動による検数人・検量人の資質向上,検数及び検量業務の社会的地位の高揚を設立理念としている。業務の中立性,公正性を確保するため,検数・検量・検査業務は,国土交通省の免許事業とされ,認可料金制が敷かれ,原告ら従業員は国土交通省令に定める検数人としての資格試験を受け,地方運輸局に住所氏名を登録しなければならない。もし検数人の業務執行に当たり不正な行為があれば,登録の取消及び罰則も定められる等種々の規制が敷かれている。また,検数業務は,国際貿易において,商品の受け渡しが正しく行われているかを第三者として証明することを内容とするが,輸出入品の安全性の確保と密輸出入の防止をも図っており,国民生活にも重要な関わりを有している。現在においても,検数業務の中立性及び公正性の確保の必要性は変わらず,国民生活の安全性確保の要請はますます強くなっている。それ故,業績の善し悪しによって検数人の資質が左右されることは許されない。 従って,被告の各支部毎の業績のばらつきをそのまま労働条件に反映させることは上記設立経緯や設立理念にも反することになる。 神戸支部の収支悪化の主たる要因は,阪神・淡路大震災による取扱貨物量の減少であって,原告らには何の責任もない。原告らは被災者であり,神戸港の復興のために努力を惜しまなかったのであって,全国単一企業体において,このような災害による収支の悪化の負担を被災した支部 貨物量の減少であって,原告らには何の責任もない。原告らは被災者であり,神戸港の復興のために努力を惜しまなかったのであって,全国単一企業体において,このような災害による収支の悪化の負担を被災した支部にのみ負わせるのは,著しく均衡を欠くものである。 b 役員報酬,管理職賃金のカット率との不均衡被告の役員報酬及び本部職員の賃金等の本部人件費は,「本部固定費」から支出される。被告が平成11年3月26日に策定した「事業基盤確立3か年計画」の実施以前は,本部固定費は,全国各支部の事業収入に全国一律の一定割合を掛けたものを各支部が負担していたが,前記事業基盤確立3か年計画によって支出許可額制度が導入された後は,予算で定められた本部固定費を各支部の正規職員の頭数に応じて割り振る方法に切り替えられた。すなわち,本部固定費は各支部の事業収支が赤字になっても予算どおり確保されることになった結果,赤字支部の収支をさらに圧迫させることになった。かかるシステムの下,本部役員及び本部管理職は,たった5パーセントの報酬及び賃金カットしか実施しなかった。また,各支部に負担させている開発費については,総額5億円の内,実際には3億500万円しか支出していないのに,余剰金を支部に還元しなかった。このように,支出許可額制度によって,収支悪化の責任を支部従業員に押しつけ,本部財政は確保したのである。 また,神戸支部の管理職は,賃金の20パーセントしか減額されておらず,この点でも原告らとの間に大きな不均衡がある。 本部役員及び管理職の報酬及び賃金と原告らの賃金額には格段の差があり,生活への打撃の大きさの点では比べようもない。 c 他支部の従業員との不均衡 本部役員及び管理職の報酬及び賃金と原告らの賃金額には格段の差があり,生活への打撃の大きさの点では比べようもない。 c 他支部の従業員との不均衡被告主張によれば,神戸支部のみならず,北陸支部に対しては,平均32.8パーセントの基準内賃金カット,中国支部に対しては,平均36.8パーセントの基準内賃金カットを各実施し,大阪支部に対しては平均23.6パーセントカットを実施する予定であるとし,各支部とも平成14年3月31日までの期限付きであるというが,原告らに対する賃金カット率及び実施期間は,北陸支部,中国支部,大阪支部に比べあまりに大きく,従業員に対する不利益の程度は比べものにならない。また,全国10支部の内,上記3支部以外の6支部では賃金カットの提案さえされていなく,名古屋支部及び東京支部では,平成13年3月末に臨時の期末手当(名古屋3万円,東京4万円)が支給され,極めて不均衡な扱いがなされている。 エ代償措置その他関連する他の労働条件の改善の不実施。 被告は,有限会社cへの転籍をもって代償措置と主張するが,転籍はおよそ代償措置ではあり得ない。代償措置は,就業規則の不利益変更の合理性を判断する要素である以上,当該職場での勤務を前提としてのことであり,退職を前提とする転籍が,在職を前提とする労働条件の代償措置とはなり得ない。さらに,有限会社cにおける転籍後の雇用契約は1年間の有期契約で,転籍者の地位は極めて不安定であって,将来の雇用継続や労働条件の保証はなく,内容的にも代償措置といえるものではない。 ところで,有限会社cへの転籍によって賃金50パーセントカットを回避できるのであれば,神戸支部においても有限会社cにおける の保証はなく,内容的にも代償措置といえるものではない。 ところで,有限会社cへの転籍によって賃金50パーセントカットを回避できるのであれば,神戸支部においても有限会社cにおける所定労働時間,年休等を実施すれば,賃金50パーセントカットを回避できるはずである。また,そもそも,転籍者が有限会社cから支給される賃金の原資は,被告が同社に支払う派遣料に他ならないのであるから,同社に転籍すればなぜカット率の低い賃金が支払われるのかという点についても合理的理由が見出しがたい。結局,有限会社cへの転籍は,代償措置といえないばかりか,賃金の50パーセントカットが不可避であるという被告の主張が根拠を欠くものであることをも示すものでしかない。 オ b労組との交渉における被告の不誠実な態度(ア) b労組は,被告の経営環境の厳しさは承知していたことから,以下のとおり,被告から提案された収支改善に協力してきた。 ① 昭和62年円高不況と取扱量の減少で,被告は,b労組従業員の被告東京支部への転勤・出張を提案してきたが,これについては同年2月4日,覚書を交わし,東京への作業出張に合意した。 ② 昭和62年及び同63年には,厳しい情勢を踏まえて検数の将来についての政策提言を昭和62年9月の大会で行い,翌63年1月16日付で人材育成と資質の向上(多能工化)を図るための全社的交流と研修体制・研修実施の協定を締結した。 ③ 昭和63年には,被告が東京支部の作業繁忙を理由とする有期転勤を提案し,これについても転勤につき支部労組として合意承認する確認書を締結した。 ④ 東京支部への転勤はその後も継続して協議対象となり,平成2年4月24日,転勤期間や実施に 転勤を提案し,これについても転勤につき支部労組として合意承認する確認書を締結した。 ④ 東京支部への転勤はその後も継続して協議対象となり,平成2年4月24日,転勤期間や実施に伴う条件について仮確認書を交わし,同3年5月23日には東京への1年間の有期転勤について前年同様の条件で確認,実施した。 ⑤ 平成7年1月17日,阪神・淡路大震災が発生し,神戸港の取扱荷物が大幅に減少したが,b労組は独自に5大港を訪問し,職員の受け入れについて要請し,成果を勝ち取った。 ⑥ 平成7年,震災と不況により神戸港の取扱量が大幅に減少する中で,b労組として将来の検数業務を考え,作業体制の変更が不可欠との趣旨で組合大会議案書で被告に提案した。同提案に基づいて,平成8年2月23日,「覚書」に署名し,現行の海上,沿岸業務とに区分された作業消化体制を「誰でも,何処でも,どんな業務」にも対応できる作業消化体制実施に向けて協議することとした。 (イ) ところが,被告は,b労組に対し,以下のとおり,不誠実な交渉態度をとり続けてきた。 ① 被告は,平成11年に3・2提案をした後,aに対し,同年9月13日,本件賃金協定を破棄し,提案内容の強行実施行う旨を通告した。aは,本件賃金協定の破棄の撤回を求めたが,3・2提案のうち,「労基法を上回る労働条件の見直しと廃止」については,暫定協定の締結を各支部労組の協議に委ねた。被告は,b労組を除くa傘下の6労組との間で上記暫定協定を締結したが,b労組は,真の収支改善を実現するためにも,上記暫定協定の締結に反対した。しかし,被告は,上記暫定協定に沿った就業規則変更を行ってこれを強行した。 ② 平成12年5月10日の神戸支部従業員に対 の収支改善を実現するためにも,上記暫定協定の締結に反対した。しかし,被告は,上記暫定協定に沿った就業規則変更を行ってこれを強行した。 ② 平成12年5月10日の神戸支部従業員に対する本給10パーセントカット等の通告は,本件賃金協定解約の手続きを一切取らず,一方的通告のみで賃金カットを強行しようとするものであった。aは,「労基法を上回る労働条件の見直しと廃止」以外の事項については暫定運用も含めて支部毎の協議を認めていなかったのであり,賃金に関しても中央交渉事項であったから,b労組がaに無断で争議行為を行うことはaの争議権との抵触を生ずる懸念があった。他方,aは,神戸支部における賃金カットについて全体として直ちに争議権を行使することは事実上困難であったため,平成12年5月10日付賃金カット提案について,本件賃金協定の存続を前提に,その暫定運用について支部協議に応ずる権限を認め,協議が整わなければ争議権を行使するのもやむなしという趣旨で3権をb労組に委譲した。b労組は,aから委譲された争議指令権に基づき,同年7月24日及び25日にストライキを決行した。被告は,上記ストライキを含む強い抗議を無視し,平成12年7月25日支払い分の給与について,本給10パーセント,住宅手当1万円カットを実施した。 もっとも,被告は,b労組が直ちに組合員全員を原告として提訴の準備に入ったことを察知するや,同年8月になって上記カット分を払い戻した。 ③ 被告は,平成12年8月31日,b労組との関係でのみ本件賃金協定を破棄する旨の通告をなし,同年9月20日には,月額固定給20パーセントカットと平成13年1月1日から30名の一時帰休制度の導入するとの9・20提案をした。b労組は,上記賃金の一方的カットを強行 定を破棄する旨の通告をなし,同年9月20日には,月額固定給20パーセントカットと平成13年1月1日から30名の一時帰休制度の導入するとの9・20提案をした。b労組は,上記賃金の一方的カットを強行する等の被告の不誠実な対応があったにもかかわらず,同提案について被告との交渉に応じ,平成12年11月には,「労基法を上回る労働条件の見直しと廃止」についての暫定協定を締結し,同年12月18日には本件暫定協定を締結した。aは,賃金に関する事項は中央協定事項であるという立場を堅持しつつも,神戸支部に対する賃金カット提案については,本件賃金協定を存続させることを前提に,その暫定運用を神戸支部で協議することを認めていたので,b労組は本件暫定協定の締結に応じたのである。 ④ ところが,本件暫定協定締結のわずか4日後の平成12年12月22日,被告は,再度,aに対し,本件賃金協定をb労組との関係でのみ破棄し,同協定を平成13年3月31日をもって終了させる旨の本件破棄通告をなし,平成12年12月26日には,b労組に対し,50パーセントの賃金カットを提案したのである。本件暫定協定に先立つ同月15日の被告本部役員会では,10パーセントカットでは不十分であり,50パーセントカット提案をすることが議論されていたにもかかわらず,50パーセントカット提案の予定を隠したまま,同月18日に本件暫定協定を締結したのである。これは,b労組及び原告ら組合員からみればだまし討ちである。 また,上記交渉の過程において,被告は,b労組に対し,税務当局や監督官庁に提出している決算書類に示された収支の内容についてしか説明しなかった。その結果によれば平成12年度の被告全体の収支は黒字であった。ところが,本件に関する仮処分申立後,被告は,突然平成1 や監督官庁に提出している決算書類に示された収支の内容についてしか説明しなかった。その結果によれば平成12年度の被告全体の収支は黒字であった。ところが,本件に関する仮処分申立後,被告は,突然平成12年度決算では7億3000万円も赤字であったと主張し出した。しかし,それほどの赤字やその理由については,b労組には一切明らかにされなかったし,本件訴訟においてもその裏付けとなる資料の提出を拒んだ。また,被告は,団体交渉の席上,役員の賃金カットを実施していると回答するのみで,当初はカット率さえ公表しなかった。平成11年当時5パーセントカットしたことは公表したものの,役員報酬総額さえも開示しなかった。 カ他の労働組合の対応被告とd組合との間では,50パーセントの賃金カットについて協定が成立しているが,これにより,d組合員数170名の内,78名が有限会社cに転籍し,d組合の組合員数は100名を割ってしまった。このように多数の組合員が組合を脱退した経過を見れば,上記50パーセントの賃金カットへのd組合の同意は,必ずしも同組合員の多数意思を反映したものではない。 キ同種事項に関する我が国の一般的状況被告は,50パーセントの賃金カットは類例のないものではなく,実施している企業も存在すると主張するが,酷い事例であることは明白であり,単年度でも黒字でかつ累積赤字を任意積立金で解消して全体で黒字経営の経営状況である本件事例と同種であるとは到底思われず,本件には当てはまらない。 (3) よって,原告らは,被告に対し,前記第1の1,2に記載のとおり,平成13年(ワ)第868号事件原告らについては,平成13年4月分以降の差額賃金とその各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定年5分の割合による 告らは,被告に対し,前記第1の1,2に記載のとおり,平成13年(ワ)第868号事件原告らについては,平成13年4月分以降の差額賃金とその各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の,平成14年(ワ)第773号事件原告については,平成13年8月分以降の差額賃金とその各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める。 (被告の主張)(1) 本件賃金協定の効力についてア本件賃金協定は,以下に記載のとおり,被告のした本件破棄通告により,b労組との関係では平成13年3月31日をもって失効したものである。 (ア) 原告らは,本件破棄通告は労働協約の一部解約であるとして,これが無効であると主張する。しかし,b労組は,平成12年7月21日にaから神戸支部における収支改善施策に関わる事項についての3権を委譲され,神戸支部における収支改善施策にかかわる事項については,専らb労組だけが団体交渉権,労働協約締結権を持つに至ったものであるから,b労組は,その時点で,本件賃金協定の単独の当事者になったものというべきである。したがって,本件破棄通告は,労働協約の一部解約には当たらない。労働協約の一部解約であることを理由として本件破棄通告が無効であるとする前記原告ら主張は,理由がない。 (イ) 仮に,本件破棄通告が,労働協約である本件賃金協定の一部解約に該当するとしても,労働協約の一部解約が禁じられる趣旨は,労働協約が数々の交渉事項の妥協の産物として締結されることが多いので,自分に有利な条項のみを残して不利な条項のみを解約することを許さないということにあることからすれば,神戸支部との関係で,本件賃金協定を全部破棄する旨の本件破棄通告は,事情を異 されることが多いので,自分に有利な条項のみを残して不利な条項のみを解約することを許さないということにあることからすれば,神戸支部との関係で,本件賃金協定を全部破棄する旨の本件破棄通告は,事情を異にするものであり,上記禁じられる一部解約には当たらないというべきである。 また,本件は,労働協約の一部解約が例外的に許される「①協約自体に客観的に他と区別することができる部分があり,かつ,②分別して扱われることもあり得ることを当事者として予想し得たと考えるのが合理的であると認められる場合」に該当する。すなわち,本件賃金協定は,一個の独立した協定であり,協定全部を神戸支部に限って破棄するものであり,他と客観的に区別することができる部分がある上,b労組は,a中央とは別個に独自の行動をしていたことから,収支改善策について3権委譲を受けたもので,分別して扱われることもあり得ることを当事者として予想し得た。したがって,本件破棄通告は,労働協約の一部解約に当たるとしても,これが許される場合に該当し,有効である。 なお,被告は,本件賃金協定全体を破棄(解約)し,aとの間で新たに賃金協定を締結し直すか,各支部の労組とそれぞれ賃金協定を締結する方法もとり得たが,神戸支部についてのみ本件賃金協定を破棄しても,aや各支部労組には何ら不利益はなく,本件賃金協定全体を破棄することはかえって不合理である。この点からしても,本件破棄通告は有効というべきである。 イ本件破棄通告が無効であるとしても,以下の事由により,本件賃金協定又は少なくとも同協定の変更部分は,平成13年3月31日をもって失効するに至っている。 (ア) 本件賃金協定の終期は平成11年3月31日であり,例外的に平成11年度の協定が成立する 又は少なくとも同協定の変更部分は,平成13年3月31日をもって失効するに至っている。 (ア) 本件賃金協定の終期は平成11年3月31日であり,例外的に平成11年度の協定が成立するまでは期間延長により有効とされているが(甲13,B協定第36条1項),同日以降改めてB協定が締結されたことはないから,仮に期間延長によるとしても,労働協約の有効期間は労働組合法15条によって最大3年とされているから,本件賃金協定は,遅くとも平成13年3月31日をもって期間満了により終了しており,以後はその効力を有しない。 (イ) また,少なくとも本件暫定協定については,原告らも認めるとおり,3権がaからb労組に委譲されたのであるから,その限りにおいてaと被告との本件賃金協定の内容が変更されたと言える。すなわち,本件賃金協定はb労組との関係においてのみ一部その内容が変更されたのである。したがって,平成13年3月31日の本件暫定協定の終了によって,b労組との関係においては本件賃金協定の変更部分は終了したものである。 (2) 本件就業規則変更の有効性(本件就業規則の不利益変更の必要性・合理性)について本件賃金カットを定めた本件就業規則変更は,原告らの労働条件を不利益に変更するものではある。しかし,以下に述べるとおり,神戸支部は最悪閉鎖という選択肢も視野に入れなければならない逼迫した状況にあり,本件賃金カットは雇用調整を回避するために採られた最終手段にほかならず,50パーセントの賃金カットもやむを得ないところであるうえ,有限会社cへの転籍制度という代償措置が採られていること,被告は,本件賃金カットに至るまで,誠意をもって労使交渉を進めてきたにもかかわらず,b労組は終始非協力的な態度をとり続けたこと,神戸 るうえ,有限会社cへの転籍制度という代償措置が採られていること,被告は,本件賃金カットに至るまで,誠意をもって労使交渉を進めてきたにもかかわらず,b労組は終始非協力的な態度をとり続けたこと,神戸支部におけるもう一つの労働組合であるd組合は本件賃金カットに同意していること,他支部の労働組合もそれぞれ賃金カットに応じていること,本件と同様の賃金カットは,我が国社会の経済不況の下では少なからず存在すること等に鑑みれば,本件賃金カットを定めた本件就業規則変更は,これによって被る原告ら労働者の不利益を法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである。 したがって,本件賃金カットを規定した本件就業規則変更は有効である。 ア本件就業規則変更の必要性(ア) 被告の現状と改革の必要性被告業務の基盤である港湾物流及び港湾運送の分野における規制緩和の加速度的潮流は,港湾物流の構造的変革をもたらし,被告の中核業務である検数・検量業務の従前の取引形態も激変し,当該業務を利用するか否かは利用者の価値判断に委ねざるを得ないのが近年の実情である。このような現状において,被告は,その存立のため,組織・業務改革を図らなければならない状況にある。 被告業務における取扱量,事業収入は減少の一途をたどっており,平成12年度の取扱量は平成元年度に比べ約28パーセント減少し,事業収入は約25パーセント減少している。平成13年度の事業収入は,平成12年度より約17億700万円減少(前年比約8.5パーセントの減少)しており,回復の見通しは立っていない。 被告は,必死の営業努力にもかかわらず,平成6年度 収入は,平成12年度より約17億700万円減少(前年比約8.5パーセントの減少)しており,回復の見通しは立っていない。 被告は,必死の営業努力にもかかわらず,平成6年度から同9年度までの4期連続赤字決算となり,平成10年度から同12年度も,収支決算上は黒字決算となってはいるものの,これは平成10年度の税制改正で退職引当金等が見直しされたことによるものであって,実質上は赤字である。すなわち,平成12年度決算についてみると,実際には同年度月次収支決算において7億2977万0984円の欠損であったものの,法人税法改正による退職給与引当金繰入限度の税制変更がなされた結果,税務計算上の取り崩し益が17億1551万円発生したために,3億5201万円が同年度末剰余金となるところ,内金3億円を将来の退職金支払い資金の確保を図るためにあえて有税で退職引当金に繰り入れた結果,5201万円が最終年度末剰余金として算出されたのである。上記取り崩し益は,税法上の正当な計算結果であり,被告の決算結果としては,剰余金計上が正確である。然し,被告においては,退職給与引当金計上の可能な資金で不動産等を購入し,固定資産確保による被告の財務体質強化と固定資産による従業員の福利厚生の充実を図ってきたが,今般の取り崩し益金に相当する資金を捻出するためには当該不動産を売却するほかないものの,近年の不動産市況の暴落による不動産の売却は極めて困難であり,税務上の取り崩し益が生じたとしても,これに相当する資金の確保は現実には不可能であるのが現状であり,年度の業績の実体としては欠損計上と言わざるを得ない。税制改正がなされていなければ,上記月次欠損の7億2977万0984円がそのまま年次欠損になったと推測される。 なお,平成12年度 実体としては欠損計上と言わざるを得ない。税制改正がなされていなければ,上記月次欠損の7億2977万0984円がそのまま年次欠損になったと推測される。 なお,平成12年度の特別損失の計上については,同年度の退職準備金として実際には26億円を計上していたところ,退職者が当初の予想を大幅に超過し,金32億円余の退職金を計上するに至ったため,その資金調達の方法として,やむを得ず資産売却により退職金支払いに充当した。しかし,平成10年度に換価性のある資産は売却済みであったため,平成12年度の売買は売却損を発生することとなり,この結果,特別損失が発生した。 (イ) 事業基盤確立3か年計画について上記(ア)のような危機的状況において,被告は,被告の全国組織を維持するとともに,雇用確保を図るためにも,各支部の自立的運営体制の確立こそが急務であると認識し,平成11年3月26日,「事業基盤確立3か年計画」(以下「基盤計画」という。)を策定,決議し,同年4月1日から同14年3月31日までに期間を限定して実施することとなった。 基盤計画における具体的施策は,業務関係施策(事業収支確保施策),経理関係施策(支部独立採算的運営施策),労務関係施策(労働問題関係施策),総務・人事関係施策(組織・機能再構築施策),教育訓練関係施策(人的経営資源の強化施策),組織風土改善施策,危機管理施策(不測事態対応施策)の7項目であり,これらの施策により,当該3か年の経営目標を策定した。 前記施策のうち,経理関係施策(支部独立採算的運営施策)とは,被告本部の一層のスリム化・機能化によるコスト削減を図るとともに,各支部においては,年度の欠損金を原則として認めず 前記施策のうち,経理関係施策(支部独立採算的運営施策)とは,被告本部の一層のスリム化・機能化によるコスト削減を図るとともに,各支部においては,年度の欠損金を原則として認めず,あらゆる手段・対策を講じて収支均衡を実行し,「事業収入(事業外収入を含む)の枠内による運営」を求め,もって,被告全国組織を維持することを目的とするものである。その具体的運営方法としては,以下の「支出許可額制度」を施策,実施した。 a 各支部の支出許可額を4半期毎に本部が決定し,各支部長はその許可額の範囲で支部を運営する。 b 支部の支出額が許可額を超過した場合,その超過額分を次期の許可額から控除して通知し,その通知は許可額決定時に行う。 c 支部の支出額が許可額の範囲内で終了した場合,通年での欠損の補充に充てること,一時金に相当分を加算支給すること,年度末に期末手当として支給することがそれぞれ可能となる。 d組合支出許可額を超えた支出額の改善については,支部において改善の実行ができない場合,被告本部からの資金送金は支出許可額内で行うものとして,資金不足については,支部においてあらゆる施策を講じて改善しなければならない。 (ウ) 神戸支部の突出した赤字と「神戸支部再生3ヶ年計画」の実施a 被告における基盤計画の実施により,事業収支の全国計は計算上の剰余金計上に至っている。 しかしながら,神戸支部における取扱作業量・事業収支は激減の一途をたどり,収支に至っては,平成元年度以来12年間で平成4年度を除き合計11か年度が支出超過となっている。とりわけ,阪神・淡路大震災の影響は神戸港の物流基地としての存立自体に深 事業収支は激減の一途をたどり,収支に至っては,平成元年度以来12年間で平成4年度を除き合計11か年度が支出超過となっている。とりわけ,阪神・淡路大震災の影響は神戸港の物流基地としての存立自体に深刻な影響を与えたため,神戸支部単独の赤字額(支出超過額)が全国他支部の黒字額(収支超過額)をも越えたため,全国計の収支が赤字決算となった。 神戸支部の赤字額は,基盤計画の初年度は,前年度赤字額に対比すれば減少したものの,翌12年度は倍増し,約9億7000万円もの赤字になった。 神戸支部は,同支部の赤字削減のため,本件賃金カットを行うまでに,役員・管理職の賃金カット,役員・支部長車の廃止,マイカー通勤制度,新規採用中止及び補助労働力(OB)の活用,労働基準法を上回る部分の労働条件の切り下げ,賃金10パーセントカット,一時帰休制度,支部間転勤(有期及び永久),役職定年制度,勧奨退職等の各経費削減策を実施したが,一向に神戸支部の赤字を解消することはできなかった。 かかる状況において,被告は,基盤計画内における神戸支部の収支改善の実行は不可能と判断し,同計画から切り離した「神戸支部再生3ヶ年計画」(以下「再生計画」という。)を策定・実施することとした。 b 神戸支部における再生計画は,平成13年4月1日実施の3か年に亘る計画であるが,その骨子は,神戸支部の生存,再生を目指し,基盤計画における過去2年度(平成11,12年度)の累積赤字を一旦棚上げの上,平成13年度以降分でのみ被告本部の支出許可額の範囲内での運営を実施することにより,再生3か年の期間中に償還を実施することを目指すものである。神戸支部に対するこの特別措置としての再生計画が実行できなければ,神 以降分でのみ被告本部の支出許可額の範囲内での運営を実施することにより,再生3か年の期間中に償還を実施することを目指すものである。神戸支部に対するこの特別措置としての再生計画が実行できなければ,神戸支部の存続か消滅かを最終決断することになる。 再生計画の主たる内容は,以下の7項目である。 (a) 月額賃金の50パーセント減額を3年間実施(b) 平成13年度以降は年間一時金を支給しない。 (c) 退職金,本部固定費,開発費は所定の基準により分担する。 (d) 時差出勤等の導入によるオーバータイムゼロ化。 (e) 他支部への転勤斡旋。 (f) 剰余金が得られた場合は一時金を支給。 (g) 退職者には所定の基準による退職金を支給。 c 再生計画の合理性(なぜ50パーセントカットか)神戸支部の収支は,平成12年12月18日に締結された本件暫定協定による10パーセントの賃金カットによっても,平成13年度中に平成11年度及び同12年度の赤字を解消できないことはもちろん,平成13年度単年度でも赤字になることは明白であった。 他方,基盤計画による諸施策により,他支部の収支は改善され,赤字支部は神戸支部を含めて4支部となったが,平成12年度に赤字決算であった北陸支部,中国支部,大阪支部は平成13年度中には収支均衡が図れる見込みであり,神戸支部のみが大幅な赤字欠損を継続させることとなれば,被告全体の収支が悪化し,被告全体の運営が成り立たない事態に直面し,神戸支部の閉鎖という最悪の選択肢を 年度中には収支均衡が図れる見込みであり,神戸支部のみが大幅な赤字欠損を継続させることとなれば,被告全体の収支が悪化し,被告全体の運営が成り立たない事態に直面し,神戸支部の閉鎖という最悪の選択肢を視野に入れざるを得なくなるのであって,このような事態を回避するためには神戸支部従業員である原告らの賃金50パーセントカットもやむを得なかった。また,昨今の厳しい経済状況の中,特に被災地神戸の現状では失業しても再就職の見込みは相当厳しいものにならざるを得ず,多くの従業員を路頭に迷わせないために被告が選択した最後の方法が本件賃金カットであった。 なお,賃金カット率が50パーセントとなったのは,以下の理由による。すなわち,再生計画及び同計画に伴う具体的施策が実現されても,平成15年度までに神戸支部の収支を均衡させ,同11年度及び同12年度の10億円超の繰越欠損を解消するためには,平成13年度約64パーセント,同14年度約64パーセント,15年度約72パーセントの賃金カットを実施しなければならない計算になるが,原告らの生活実態を考慮し,41歳未満30パーセント,41歳以上50パーセントという本件賃金カット率が策定された。なお,港湾産別協定の最低賃金(月額)15万6300円は調整手当で確保しているので,実際のカット率は50パーセントになっていない。 イ本件就業規則変更の合理性(原告ら労働者の被る不利益の程度及び代償措置等)(ア) 原告らの被る不利益の程度原告らの雇用を確保するためには賃金カットはやむを得ない選択であったし,実際に神戸支部の収支を改善するには,50パーセントを超える賃金カットが必要であったが,原告らの生活実態を考慮し,41歳未満30パーセント, 保するためには賃金カットはやむを得ない選択であったし,実際に神戸支部の収支を改善するには,50パーセントを超える賃金カットが必要であったが,原告らの生活実態を考慮し,41歳未満30パーセント,41歳以上50パーセントというカット率を策定したものであること,調整手当によって,港湾産別協定の最低賃金(月額)15万6300円の支給は確保されており,実際のカット率は50パーセントになっていないことは,既に述べたとおりであり,本件賃金カットは合理的な根拠に基づいている。 (イ) 有限会社cへの転籍制度について有限会社cは,株式会社eから,同社関西支店が平成12年10月2日に事実上分社化してできた会社である。株式会社eは昭和48年5月25日に設立されてから今日まで,被告その他への派遣会社としての実績を有している。従って,実質的には,有限会社cは,株式会社eの関西方面での営業基盤を引き継いでおり,今後の活躍が十分期待できる会社である。 原告らは,本件転籍斡旋制度について,①転籍者の格付けが明らかにされず,一方的に決められること,②転籍後の雇用契約が1年の有期契約であり,転籍者の地位が極めて不安定であること,③神戸支部従業員が転籍すれば,なぜに被告に在籍するよりもカット率の低い賃金が支払われるのか,について疑問を呈し,本件転籍斡旋制度は,神戸支部従業員を短期間で検数業務から放逐するための提案であると主張する。 しかし,①転籍者の格付け基準については,労使交渉の場等を通じて,原告らに対し,十分に説明している。キーマンAとキーマンBとの差異は,転籍時に退職金を精算するか否かという点,キーマンAの場合,将来被告への復帰が可能であるという条件付転籍であるとい 場等を通じて,原告らに対し,十分に説明している。キーマンAとキーマンBとの差異は,転籍時に退職金を精算するか否かという点,キーマンAの場合,将来被告への復帰が可能であるという条件付転籍であるという点だけである。なお,実際の人選は,出向者・派遣特勤者,各所属での店社(顧客)との実績を有しており確保したい人材,支部の新規事業にかかわるリーダー格として促進を図る人材,特殊技能者等の基準に基づき行われており,何ら不合理はない。平成13年4月から実際に有限会社cに転籍した者は全てキーマンとして格付けされている。②転籍者の格付けが1年契約なのは,派遣業法上,1年以上の有期契約が認められていないからである。 被告としては,転籍者の定年までの継続的雇用を当然の前提としていたのであり,だからこそ,雇用期間については「1年毎の更新を原則とする。」と規定し,契約の更新を原則としていた。③転籍者よりも残留者の方が賃金カット率が高いのは,所定労働時間,年休,港湾年金の取り扱い等で労働条件が異なること,本件転籍斡旋制度が,50パーセントの賃金カットに耐えられない従業員のための窮余の策であることからも合理的に説明できる。 以上により,有限会社cへの転籍制度は,本件賃金カットにより原告らが被る不利益を補うに足る重要な代償措置であり,合理性がある。 (ウ) 赤字他支部及び神戸支部の他労組との比較被告の中では,神戸支部のみならず,平成12年度赤字であった北陸支部,中国支部,大阪支部についても賃金カット協定を締結するなど,収支改善施策を行った。具体的には,北陸支部については,a傘下の全日検北陸支部労働組合との間で,平成13年5月30日に平均32.8パーセントの賃金カットの協定を締結し,同年6月から実 締結するなど,収支改善施策を行った。具体的には,北陸支部については,a傘下の全日検北陸支部労働組合との間で,平成13年5月30日に平均32.8パーセントの賃金カットの協定を締結し,同年6月から実施している。中国支部についても,全日検中国支部労働組合との間で,平成13年5月21日に平均36.8パーセントの賃金カットの協定を締結し,同年5月17日から実施している。なお,大阪支部については,被告は,平均23.6パーセントの賃金カットを提案している。 また,原告らと同じく神戸支部で働くd組合(組合員数139名)は,神戸支部の厳しい赤字状況を理解し,平成13年3月31日,本件賃金カットの提案を受け入れる旨の「確認書」を締結した。 被告の各支部のうち,収支が黒字であった各支部には,それぞれ期末手当が支給されたが,これは基盤計画に基づく支部独立採算的運営の中で,支部運営が支出許可額の範囲内で終了したため,これを期末手当として支給したものであり,被告の職員と同業他社(日検)の職員とで,一時金の支給額が著しい不均衡(平成12年度の名古屋支部の場合,夏季一時金の差額は13万4968円,冬季一時金の差額は9万8907円)となった背景を考慮した上でのものであり,何ら不合理な点はない。 (エ) 被告とb労組との交渉経緯及びb労組の非協力的態度a 原告らは,労使交渉の中で,被告が財務諸表の一部しか開示していないと主張するが,被告は,行政指導指針に基づく所定の情報開示を行っている。さらに,被告は,港湾運送事業法及び同法会計規則に規定されている報告を関東運輸局に提出しているが,全部で18ある財務諸表の様式全てが提出を義務づけられているものではない。 いる。さらに,被告は,港湾運送事業法及び同法会計規則に規定されている報告を関東運輸局に提出しているが,全部で18ある財務諸表の様式全てが提出を義務づけられているものではない。 また,被告は,原告らに対して,毎年被告の定期通常総会後,その年度事業報告書(収支計算書,貸借対照表,財産目録)を交付しており,労組の開示要求に沿って適宜これに応じている。 なお,被告がその役員報酬を公表しないのは,プライバシー保護と,詳細な経営情報の公開による職場混乱を回避するためである。 b 原告らは,原告らの主張(2)オ(ア)①ないし⑥のとおり,収支改善のため被告に協力してきたと主張するが,①,③及び④については,いずれの覚書や確認書にも「本人の意思を尊重する。」との規定を盛り込むことを要求したり,「仮確認書」として当事者としての責務を回避できる余地を残し,実施に当たり絶えず支障が生じる原因となったし,平成3年5月23日の東京への有期転勤についての合意・確認後も断固反対との立場を主張して矛盾した態度をとり続けたものであって,b労組が真に被告に協力する意思があったのかは極めて疑問である。また,②やb労組が提案・実施した⑤及び⑥の収支改善策では,取扱作業量の減少をくい止めることはできず,かえって経費削減策実施の必要性が強まったというべきである。 平成9年4月23日,神戸支部とb労組との間で,被告名古屋支部へ3名及び被告東京支部へ21名の合計24名の有期転勤についての合意が成立したが,同合意においても「本人の意思を尊重する。」との規定が盛り込まれ,労使間でその解釈が問題となった。さらに,実施後の転勤者の内訳は,管理職が1名,d組合(平成13年3月3 についての合意が成立したが,同合意においても「本人の意思を尊重する。」との規定が盛り込まれ,労使間でその解釈が問題となった。さらに,実施後の転勤者の内訳は,管理職が1名,d組合(平成13年3月31日時点で128名)が18名,b労組(平成13年3月31日時点で177名)が5名であり,構成比からすると,b労組から転勤した者は,d組合から転勤した者に比べ極端に少なく,同支部労組の非協力的態度が如実に現れている。 また,平成12年10月27日,同年11月11日及び同13年1月22日にも他支部への転勤を斡旋したが,b労組の協力は皆無に等しかった。 被告は,平成10年4月2日及び同年5月1日にそれぞれ,b労組及び全従業員に対し,平成10年4月1日以降退職時現在で勤続25年以上でかつ年齢55歳以上の者及び管理職を含む全従業員を対象とする勧奨退職(勧奨期間平成10年4月1日から同年9月30日まで)を実施する旨通知した。その場合の優遇措置として,勧奨退職に応じた場合に限り,退職年金として,60歳から5年間で300万円を支給すること,勧奨退職に応じた者に対し,定年退職者扱いとして,「定年退職者報奨制度」を準用することが定められていた。しかし,b労組は,上記制度に対しても,全く協力しなかった。 c 3・2提案以降の神戸支部とb労組との労使交渉経過について被告は,3・2提案以降,平成11年4月9日から同月22日までの間に,基盤計画の協力要請のため,神戸支部の全従業員との職場懇談会を実施し,平成11年5月20日,同12年2月23日,同年3月16日には,被告役員と企業内労組代表者との懇談会において,被告の現状,基盤計画,収支改善施策の協力要請事項 支部の全従業員との職場懇談会を実施し,平成11年5月20日,同12年2月23日,同年3月16日には,被告役員と企業内労組代表者との懇談会において,被告の現状,基盤計画,収支改善施策の協力要請事項及び労組質問事項等について説明を行い,平成12年4月27日には,支部独立採算的運営に基づく収支改善策として,10パーセントの賃金カット及び住宅手当1万円減額を同年7月給与分から実施することを口頭で説明し,b労組の理解を求め,同年5月10日には同提案をb労組に通知し,同月18日には,神戸支部の事業収入・人件費・諸経費・収支推移表(平成5年度ないし同12年度)を提示して,被告を取り巻く環境と支部経営実態の厳しい現状を説明したが,同月24日,b労組は,基盤計画及び上記4月27日付賃金カットの撤回を求める旨の要請文を被告会長宛に提出した。被告は,同年6月5日,b労組に対し,上記要請文に対する見解を説明した上,同月6日,上記交渉内容に関する書面を従業員に宛てて職場掲示し,同月20日,「収支改善施策の実行について(お願い文書)」及び「基盤計画とその実行について」等を各従業員宛家庭へ郵送したところ,b労組は,労使協議中に労組に連絡なく各従業員の家庭へ上記文書を郵送したことは絶対に許されない旨主張した。被告は,同月23日,上記「収支改善施策の実行について(お願い文書)」の家庭郵送文書に関してさらに周知するため,全従業員を対象とした職場業務懇談会を開催しようとしたところ,b労組は,上記業務懇談会の開催中止を申し入れ,b労組組合員に不参加を呼びかける旨を主張した。 b労組は,同年7月10日,被告に対し,賃金カットについては,aにおける中央協定課題であり,b労組では提案できないこと,仮に支部労使課題となったとしても賃金カットには応じられない旨を主張した。被告は,同月 は,同年7月10日,被告に対し,賃金カットについては,aにおける中央協定課題であり,b労組では提案できないこと,仮に支部労使課題となったとしても賃金カットには応じられない旨を主張した。被告は,同月17日,従業員宛に「収支改善策(賃金減額)の実施について」の同月からの実施を文書で通知したが,b労組は賃金カットについて今まで交渉してきた認識はない旨を主張し,上記通知書を返却し,同月18日,神戸支部宛に抗議文を提出した。aと被告との間で,同月21日,神戸支部における収支改善施策にかかわる事項すなわち賃金カット問題については,aからb労組に3権を委譲する旨が決定され,b労組は,同月24日,半日ストライキを行い,同月25日には24時間ストライキを実施した。 神戸支部は,同年9月20日,b労組に対し,月額固定給20パーセントカット及び一時帰休制度の導入についての9・20提案を行うとともに,同年11月7日,9・20提案の収支改善策の内容について,及び,当該改善策を同年12月1日より実施しても平成12年度の赤字解消は見込めず,依然厳しい状況にあることをb労組に説明した。神戸支部は,同年11月27日,賃金カット率の引き下げを提案したが,b労組は,応じられない旨を主張した。神戸支部は,同年12月7日,b労組に対し,9・20提案の最終見解を説明したが,b労組は,平成13年4月以降20パーセントや30パーセントの賃金カットをすれば経営責任が問われると主張した。被告とb労組は,平成12年12月18日,本件暫定協定を締結したが,被告は,同月22日,aに対し本件破棄通告をなし,同月26日,b労組に対して再生計画の提案をした。神戸支部は,平成13年1月16日,b労組に対し,平成12年12月までの神戸支部及び全国の事業収入概算についての説明,本件賃金カットの内容及び算 し,同月26日,b労組に対して再生計画の提案をした。神戸支部は,平成13年1月16日,b労組に対し,平成12年12月までの神戸支部及び全国の事業収入概算についての説明,本件賃金カットの内容及び算出根拠についての説明,他支部への転勤の斡旋を行い,平成13年1月26日,本件賃金カットの内容及び他支部への転勤の斡旋について再度説明した。神戸支部は,同年2月6日,神戸支部はb労組に対し労使交渉の申し入れをしたが,これを拒否されたため,b労組の代表者と協議を行い,再生計画の必要性を説明した。これに対し,b労組は,本件賃金カット提案及び本件破棄通告の撤回を行うよう主張した。神戸支部は,同月7日,b労組に対し,「平成12年度(4月~12月)の神戸支部事業収入の前年度比の増減要因分析結果」と題する書面を交付し,同月20日,「2月20日神戸支部再生3か年計画に向けての三役折衝」と題する書面に基づきその基本骨子を説明した。神戸支部は,同月26日,b労組に対し,平成13年1月の事業収入(全国及び支部別)及び神戸支部の現状について説明し,また,再生計画に伴う具体的施策の実施を提示・説明したところ,b労組は,再度本件賃金カット提案及び本件破棄通告の撤回を行うよう主張し,さらに,公開質問状を提出した。神戸支部は,同年3月9日,b労組に対し,平成13年2月の事業収入(全国及び各支部)等について説明し,上記公開質問状に対する回答書を交付したところ,b労組は,上記回答書は全く回答になっていないとか,有限会社cへの転籍は退職強要の制度だと受け止めているなどと主張した。神戸支部は,同月27日,28日,同年4月3日,b労組に対し,有限会社cへの転籍状況等について説明した。 上記労使交渉の経緯からすれば,b労組が,終始,神戸支部に対して非協力 は,同月27日,28日,同年4月3日,b労組に対し,有限会社cへの転籍状況等について説明した。 上記労使交渉の経緯からすれば,b労組が,終始,神戸支部に対して非協力的な態度をとり続けたことは明らかである。 (オ) 他労組及び他支部の協力原告らは,d組合は賃金カットに応じたが,d組合の同意が同組合員の総意に基づくものとはいえない旨主張する。 しかし,d組合は,度重なる労使交渉の結果,被告提案の賃金カットに同意したものである。 また,原告らは,被告北陸支部,中国支部,大阪支部の収支改善施策について,原告ら神戸支部よりも賃金カット率が低く,平成14年3月31日までの期限付きであるという点から不利益の程度が著しく異なっている旨主張する。 確かに,上記各支部と神戸支部とでは賃金カット率及び実施期間の点で異なっているが,これは上記各支部が平成13年度中に収支を均衡させるという基盤計画の目標を達成できるからである。 (カ) 同種事項に関する我が国社会における一般的状況現在の我が国社会の経済不況の下では,倒産する企業は後を絶たず,神戸支部と同程度の経営危機に陥っている企業が無数に存在することは容易に推測できる。さらに,原告らは,50パーセントの賃金カットは類を見ないと主張するが,実際上,前記企業の中には賃金の50パーセントカットを実施しているところは存在する。 (3) 以上のとおりで,本件賃金協定は,平成13年3月31日をもって本件破棄通告ないし期間満了等により失効している。そして,被告がした本件就業規則変更は有効な就業規則変更であるから 。 (3) 以上のとおりで,本件賃金協定は,平成13年3月31日をもって本件破棄通告ないし期間満了等により失効している。そして,被告がした本件就業規則変更は有効な就業規則変更であるから,同年4月分以降の原告らの給与は,本件賃金協定ではなく,変更後の就業規則によって決定されるものであり,被告は,変更後の就業規則に基づき,同就業規則の定める本件賃金カットを行っているのである。 したがって,本件賃金協定がなお効力を有することを前提として,これに基づく賃金差額金を請求する原告らの請求は,いずれも理由がない。 第3 争点に対する判断 1 原告らの請求は,被告が,本件就業規則変更を行い,変更後の就業規則に基づいて平成13年4月分以降の原告らの給与につき50パーセントに及ぶ本件賃金カットを行ったことを争い,平成13年4月分以降も,本件賃金協定に基づき算定された別紙「請求額一覧表」の「現行合計」欄記載の金額を給与として支払を受ける権利を有すると主張して,その差額賃金の支払いを求めるものであるところ,被告は,本件賃金協定は平成13年3月31日をもって失効しており,平成13年4月分以降の原告らの賃金は,本件就業規則変更後の就業規則によって決まるので,同就業規則によって本件賃金カットを行ったものであるから,原告らに差額賃金請求権は発生しないとして,これを争うものである。 しかし,本件賃金カットがなければ支給されることとなる原告らの平成13年4月分以降の各給与額が,原告らの請求する別紙「請求額一覧表」の「現行合計」欄記載の金額となることについては,被告もこれを争わない。すなわち,本件賃金カットがなければ支給される原告らの給与額が本件賃金協定によって決まるのか,就業規則によって決まるのかの点については争いはあるが,そ 金額となることについては,被告もこれを争わない。すなわち,本件賃金カットがなければ支給される原告らの給与額が本件賃金協定によって決まるのか,就業規則によって決まるのかの点については争いはあるが,その結果としての額には争いがない。そうとすれば,原告らの請求の当否を当裁判所が判断するについては,本件賃金カットを定めた本件就業規則変更の効力の有無を判断すれば足り,平成13年4月1日以降も本件賃金協定が効力を有するか否かの点については,立ち入る必要はないものといえる。 2 そこで,本件就業規則変更の有効性について検討する。 (1) 前記争いのない事実,証拠(甲1~12,22~25,26の1・2,27の1・2,28の1~3,29の1~3,30,31,36,37,乙2~4,5の1・2,8,10~20,21の1・2,23の1・2,24~30,31の1・2,32~47,51,52,57,58,60,証人f,原告本人g,被告代表者h)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告の組織及び経営状況等(甲1,36,乙51,証人f,弁論の全趣旨)(ア) 被告は,昭和29年4月23日に,検数業務の中立性と公正性を図るために全国組織として設立された公益法人であり,昭和30年10月1日から業務を開始した。 被告の事業目的は,海事に関する公益を増進するため,貨物検数,検量及び検査業務の改善合理化を図ることであり,主たる業務受託先は,港湾運送事業者及び荷主・商社・メーカー並びに船社である。 被告の基本金は,8億2200万円であり,平成13年度(平成13年4月1日から平成14年3月31日まで。以下においても各年度は当年4月1日から翌年3月31日までである。)の年間事業収入 被告の基本金は,8億2200万円であり,平成13年度(平成13年4月1日から平成14年3月31日まで。以下においても各年度は当年4月1日から翌年3月31日までである。)の年間事業収入予算は,190億8800万円であった。 被告は,本部,東京支部,横浜支部,名古屋支部,大阪支部,神戸支部,中国支部,九州支部,東北支部,北陸支部及び北海道事業所により構成されている。被告役員は,会長及び副会長各1名,常務理事3名,理事5名,監事2名であり,平成13年6月1日時点で,本部職員59名,支部職員2037名(東京支部234名,横浜支部297名,名古屋支部455名,大阪支部219名,神戸支部254名,中国支部115名,九州支部165名,東北支部141名,北陸支部78名,北海道事業所79名)の合計2096名(内管理職330名)であった。 (イ) 被告は,昭和29年の設立以降,高度経済成長と相まって組織を拡大し,ピーク時には従業員約5500名を擁するに至った。 しかし,産業の国際化及び国内産業の低迷化,国際物流における輸出入貨物の輸送革新・輸送形態の変革等により,個品貨物輸送形態からコンテナ一環輸送形態へ改善合理化され,被告の検数対象取扱貨物量は次第に減少し,被告全体の取扱作業量は,平成元年度実績の1億5081万5000トンから平成12年度実績の1億0840万7000トンへと28パーセント減少した。 また,平成12年11月に実施された検数・検量事業等の一部を除く港湾の規制緩和の潮流に伴い,港湾運送事業者間における業務受託コスト競争は激化し,さらに,輸送形態の合理化に伴う被告得意先各店社の自社貨物の自家検数化や検数業務の省力化が進み,被告の事業収入は,平成3年度 規制緩和の潮流に伴い,港湾運送事業者間における業務受託コスト競争は激化し,さらに,輸送形態の合理化に伴う被告得意先各店社の自社貨物の自家検数化や検数業務の省力化が進み,被告の事業収入は,平成3年度の280億2539万円(千円以下切り捨て)を頂点とし,年々減収した。特に阪神・淡路大震災以降,減収幅は拡大し,平成6年度の276億3580万円(千円以下切り捨て)から同12年度の201億6044万円(千円以下切り捨て)へと,7年間で約75億円の大幅な減収となった。なお,平成13年度の事業収入は同12年度より約17億0700万円減少(前年比約8.5パーセントの減少)し,被告全体の事業収入の減少は現在も続いている。 被告は,平成6年度から同9年度まで連続4期赤字決算であったため,任意積立金(諸施設拡充準備金)を取り崩し,これを平成9年度までの累積欠損15億6000万円に充てた。 なお,平成10年度から同12年度の収支決算上は黒字であったが,これは,平成10年度に法人税法改正により退職給与引当金繰入限度の税制変更がなされたために,税務計算上の取り崩し益が発生した結果である。同取り崩し益は,税務計算上は剰余金として計上されるものであるが,被告においては,従来,退職給与引当金計上の可能な資金で不動産等を購入してきたところ,近年の不動産市況の暴落のため,不動産売却による取り崩し益金相当の資金捻出は困難となり,現実に資金を確保することが不可能となった。すなわち,上記取り崩し益相当の資金のキャッシュ・フローは,現実には存在しなかった。 イ神戸支部の収支等(甲24,乙2,10,21の1・2,35,51,60,被告代表者h,弁論の全趣旨)神戸支部の取扱作業量は,平成元年度実績の2 在しなかった。 イ神戸支部の収支等(甲24,乙2,10,21の1・2,35,51,60,被告代表者h,弁論の全趣旨)神戸支部の取扱作業量は,平成元年度実績の2217万1000トンから,平成12年度実績の1203万8000トンまで落ち込んだ。特に,平成元年度から平成5年度までは,ほぼ横ばいだった取扱作業量が,阪神・淡路大震災が発生した平成6年度には,前年度の2189万7000トンから1781万5000トンへと激減した。 上記取扱作業量の減少に伴って,神戸支部の事業収入は,平成元年度の49億7329万4000円から,平成12年度には,約半分の26億3024万7000円へと落ち込んだ。 神戸支部の収支は,平成4年度に252万5000円の黒字となった他は,平成元年度から同12年度まですべて赤字であった。特に,阪神・淡路大震災の影響により,平成6年度の事業収支は,前年度のマイナス1億0179万1000円から,マイナス5億0529万円へと赤字が大幅に増大し,基盤計画実施中も,神戸支部の事業収支は改善せず,平成11年度は約4億5000万円,同12年度は約9億7000万円の赤字であった。 上記のような,神戸支部の収支悪化の主要因は,平成7年1月17日の阪神・淡路大震災であった。 平成6年の主要5大港(東京,横浜,神戸,名古屋,大阪)の外貿コンテナ取扱量(輸出入合計)は,神戸港が4218万3974トンと突出し,次いで横浜港が3344万0207トン,名古屋港が2216万0830トン,東京港が2036万4690トン,大阪港が1319万9654トンであったところ,阪神・淡路大震災の影響により,神戸港の取扱量が激減したことから,他の 万0207トン,名古屋港が2216万0830トン,東京港が2036万4690トン,大阪港が1319万9654トンであったところ,阪神・淡路大震災の影響により,神戸港の取扱量が激減したことから,他の4港の取扱量が飛躍的に伸び,平成7年実績では横浜港が4057万9130トンで首位に立ち,次いで東京港が2412万8257トン,名古屋港が2690万3889トン,大阪港が2153万9044トンとなり,神戸港は2113万0337トンと前年比半減まで落ち込んだ。 平成8年には,神戸港の復興により,同港の外貿コンテナ取扱量は3195万6717トンまで増加したが,平成10年には,長期化する国内経済の低迷とアジア地域の通貨危機に伴う経済不振の影響を受けて,国内主要港は軒並み大きく落ち込んだ。平成11年,同12年には,アジア経済の回復基調により各主要港とも増勢が続き,神戸港でも3年ぶりに3000万トンを超える実績となった。 しかし,平成13年2月の神戸港における外貿コンテナ貨物取扱量は,コンテナ個数ベースでは,輸出入合計で前年同月比10.8パーセント減,トン数ベースでは,11.5パーセント減となった。平成13年度上半期のコンテナ取扱量は,対前年比17パーセント減と急激に減少した。 ウ被告が実施した収支改善施策(乙1,51,証人f)被告は,平成8年度から,経営改善を目指し,以下の諸施策を実行した。 (ア) 被告会長の報酬を,平成8年10月から同10年8月までの間は10パーセント,同10年9月から同11年3月までの間は12パーセント各減額し,他の役員の報酬もその職階に応じて減額した。平成11年4月以降は,役員報酬を一律5パーセント減額し,現在まで継続している。 (イ) 平成9 11年3月までの間は12パーセント各減額し,他の役員の報酬もその職階に応じて減額した。平成11年4月以降は,役員報酬を一律5パーセント減額し,現在まで継続している。 (イ) 平成9年10月から支部長及び部次長につき賃金の2パーセントカットを実施し,同10年9月から支部長・部次長につき5パーセント,課長につき3パーセント,係長につき2パーセントの賃金カットを各実施した。平成11年10月以降は,全管理職の賃金を一律5パーセント(ただし,一部の支部では7パーセント以上)減額し,現在に至っている。 (ウ) 役員を従来の15名から現在の12名まで減員した。 (エ) 平成10年4月から同年10月まで,役員・支部長車の削減と廃止を行った。 (オ) 6か所の保養所全館を休館とし,本部及び横浜支部の従業員食堂を廃止し,固定費の圧縮を図った。 (カ) 平成10年4月から9月まで役職定年者の退職奨励及び勧奨退職を実施し,同年10月から管理職の役職定年制度を導入した。 (キ) 平成9年度から従業員の新規採用を一時中止した。同13年度から,一部支部で採用を再開した。 (ク) 平成10年の冬期一時金を前年度比55パーセント減の支給とし,同11年度の夏期・冬期一時金の支給から,赤字支部は,夏期15万円,冬期20万円の支給とし,黒字支部は,前記金額のそれぞれ2倍を限度とする額の支給とした。なお,赤字支部の前記支給原資は,黒字支部の剰余原資をもってこれに充てた。 (ケ) 平成10年12月1日以降,退職者への退職金支払いについて,従来は退職後1か月以内に支払ってきたものを,6か月後払いとし,運営資金の確保を行った。 (コ) 平成10年6 (ケ) 平成10年12月1日以降,退職者への退職金支払いについて,従来は退職後1か月以内に支払ってきたものを,6か月後払いとし,運営資金の確保を行った。 (コ) 平成10年6月から同11年2月まで,社宅用マンション(3物件),旧本部事務所,神戸市深紅浜の土地,保養所(1か所)及びゴルフ会員権の売却を行い,10億円を調達した。 (サ) 保養所に対する長期総合保険を中途解約し,解約益1200万円を確保した。 (シ) 平成10年9月以降,各業者への支払いを,2か月後払いから3か月後払いに繰り延べ支払いを行うことで資金繰りを行った。 (ス) 基盤計画に基づく支出許可額制度の導入及びその実施被告は,平成11年4月1日から同14年3月31日までと期間を限定し,基盤計画を実施した。基盤計画に基づく経理関係の具体的施策である「支部独立採算的運営施策」は,各支部において,年度の欠損金を原則として認めず,事業収入(事業外収入を含む)の枠内による運営を行うものであり,その具体的運営方法として,以下の「支出許可額制度」を策定,実施した。 支出許可額制度とは,支部の当月収入合計額から,本部固定費,開発費(各年度5億円),退職準備金(各年度26億円),減価償却費及び消費税の各支部負担額を除いた額の中で支部運営を行うものである。 被告本部は,各支部の支出許可額を4半期毎に決定し,各支部長はその許可額の範囲で支部を運営する。支部の支出額が許可額の範囲内で終了した場合には,その剰余金を,前年度の欠損がある場合は優先的に赤字の補填に充てるほか,次年度の支出許可額に充当すること,一時金に相当分を加算して支給することあるいは年度末に期末手当 額の範囲内で終了した場合には,その剰余金を,前年度の欠損がある場合は優先的に赤字の補填に充てるほか,次年度の支出許可額に充当すること,一時金に相当分を加算して支給することあるいは年度末に期末手当として支給することなどができる。これに対し,支部の支出額が許可額を超過した場合,超過額が事業収入の5パーセント以内であれば,その支部は,翌年度中にその超過額を解消しなければならず,超過額が事業収入の5パーセントを超える支部は,翌年度単年度は黒字にしたうえ,翌々年度で前記の5パーセントを超える超過額を解消しなければならず,また,その実行のための再建(収支改善)計画書の提出を義務づけられる。 被告が実施した上記支出許可額制度について,平成12年度までの支出許可額残がマイナスとなった支部,すなわち,支出額が支出許可額を超過した支部は神戸支部,大阪支部,中国支部,北陸支部及び九州支部の5支部であった。特に,神戸支部の赤字は,平成11年度は約4億5000万円,同12年度は約9億7000万円と突出していた。 エ本件賃金カットに至る労使交渉の経緯(甲2~12,22~25,26の1・2,27の1・2,28の1~3,29の1~3,30,31,乙8,10~15,23の1・2,24~30,31の1・2,32~47,52,被告代表者h,弁論の全趣旨)(ア) 被告は,昭和62年以降,原告らb労組従業員に対し,同東京支部等の他支部への転勤・出張を幾度も提案したが,原告らは,当事者の意思を尊重するとの条件付きで同意したことから,b労組従業員が他支部へ転勤することはほとんどなかった。また,被告は,平成10年4月1日以降,全職場において,退職時現在で勤続25年以上で,年齢55歳以上の者らを対象とする勧奨退職(勧奨期間平成1 b労組従業員が他支部へ転勤することはほとんどなかった。また,被告は,平成10年4月1日以降,全職場において,退職時現在で勤続25年以上で,年齢55歳以上の者らを対象とする勧奨退職(勧奨期間平成10年4月1日から同年9月30日まで)を実施する旨通知し,その場合の優遇措置として,退職年金300万円(60歳から5年間)を支給し,また,定年退職者扱いとして,「定年退職者報奨制度」を準用することとしたが,b労組からこれに応じた者はいなかった。 (イ) b労組は,神戸支部との間で,昭和63年1月16日には,全従業員の多種・多能な人材育成と技能の習得及び資質の向上を図ることを目的として,全社的交流体制確立のための研修の実施に関する協定を締結し,また,平成8年2月23日には,活力ある職場作りのため,海上と沿岸とに区分された作業消化体制を,「誰でも,何処でも,どんな業務」にも対応できる作業消化体制とすることに向けて協議していくことを確認し,覚書を交わした。 (ウ) 被告は,平成11年3月2日にaに対して3・2提案を行い,その後の同年4月1日から基盤計画を実施することとした。 a及びその傘下のb労組を含む7労組は,平成11年4月15日,被告が基盤計画で打ち出した支部独立採算的運営に反対し,経理内容に関する納得のできる資料の開示等を求めるとして,被告に対し,港湾運送事業法に基づく監査諸表の提示,役員・管理職の報酬,未収金・欠損金の内訳,退職積立金の内訳,平成6年度の支出明細,すべての固定資産・有価証券資産,資産売却の内訳等を明らかにするよう申入れを行ったところ,これに対し,被告は,被告の事業収入減少の要因分析に加え,未収金の内訳や平成6年度の支出明細,固定資産・有価証券資産,資産売却の内訳等を明らかにし 却の内訳等を明らかにするよう申入れを行ったところ,これに対し,被告は,被告の事業収入減少の要因分析に加え,未収金の内訳や平成6年度の支出明細,固定資産・有価証券資産,資産売却の内訳等を明らかにした。 被告は,平成11年5月20日,同12年2月23日,同年3月16日には,被告役員と企業内労組代表者との懇談会において,被告の現状,基盤計画,収支改善施策の協力要請事項及び労組質問事項等について説明を行った。また,被告は,神戸支部全従業員を対象に,平成11年4月9日から同月22日までの間,基盤計画に対する協力を要請するため,9回に分けて職場懇談会を実施し,基盤計画についての説明を行った。 被告は,平成11年12月25日,a及びその傘下の7労組のうちb労組を除く6労組との間で,B協定中,労基法の最低基準を上回る労働条件を定めた部分の適用を一時停止する旨の暫定協定を締結した。そして,被告は,同暫定協定の締結を拒否したb労組との関係では,就業規則の変更を行い,それに基づいてb労組組合員らに対しても,労基法の最低基準を上回る労働条件の見直しと廃止を実行した。 被告は,平成12年4月27日,b労組との支部労使交渉において,支部独立採算的運営に基づく収支改善策として,神戸支部従業員につき10パーセントの賃金カット及び住宅手当の1万円減額を同年7月給与分から実施することを口頭で説明した。 被告は,同年5月10日,b労組に対し,上記賃金カット(10パーセントの賃金カット及び住宅手当の1万円減額)の提案を文書で正式に通知し,同月18日の神戸支部との労使交渉においては,神戸支部の事業収入・人件費・諸経費・収支推移表(平成5年度ないし同12年度)を提示して,被告の厳しい経 住宅手当の1万円減額)の提案を文書で正式に通知し,同月18日の神戸支部との労使交渉においては,神戸支部の事業収入・人件費・諸経費・収支推移表(平成5年度ないし同12年度)を提示して,被告の厳しい経営環境と支部経営実態の厳しい現状を説明して協力を求めた。これに対し,b労組は,同月24日,基盤計画及び上記賃金カットの撤回を求める旨の要請文を被告会長宛に提出した。被告は,同年5月31日,b労組の委員長・副委員長2名・書記長・書記次長の計5名から成る三役との折衝を持ち,上記賃金カットについて再度の説明をした。 被告は,同年6月5日,b労組との支部交渉において,上記要請文に対する見解を説明した上,同月6日,上記交渉内容に関する書面を従業員に宛てて職場掲示した。また,神戸支部は,同月20日,上記賃金カットの実施についての協力等を求める「収支改善施策の実行について(お願い文書)」と題する文書を神戸支部各従業員宛家庭へ郵送し,さらにその周知徹底を図るため,同月22日,23日,28日に,神戸支部全従業員を対象とした職場業務懇談会を開催し,合計106名の従業員の参加を得た。これに対し,b労組は,上記文書の郵送に抗議するとともに,職場業務懇談会開催の中止を神戸支部に申し入れたが,神戸支部はこれを受け入れず,上記のとおり職場業務懇談会を開催した。 被告は,同年7月5日及び6日,b労組との三役折衝において,上記賃金カットを含む収支改善施策の実行に関する支部労使交渉の申し入れを行ったが,b労組は,賃金カットはaでの中央協定課題であるとして,この交渉を受け入れない旨主張し,同月10日の神戸支部における交渉の場でも,b労組は,被告に対し,賃金カットについては,aにおける中央協定課題であり,b労組では提案できないこと,仮 題であるとして,この交渉を受け入れない旨主張し,同月10日の神戸支部における交渉の場でも,b労組は,被告に対し,賃金カットについては,aにおける中央協定課題であり,b労組では提案できないこと,仮に支部労使課題となったとしても賃金カットには応じられない旨を主張した。被告は,同月17日,b労組に対し,上記賃金カットを同年7月給与分から実施することを文書で通知した。これに対し,b労組は,神戸支部に対し,上記通知書を返却するとともに,抗議文を提出し,さらに,同月21日になされたaからのb労組に対する3権委譲(3・2提案の取扱いについて,神戸支部における収支改善施策にかかわる事項は,b労組に3権を委譲する旨の決定)によって委譲を受けた争議指令権に基づくストライキであるとして,同月24日に午後1時以降の半日ストライキ,同月25日に24時間ストライキを各実施したが,被告は,上記賃金カットを同月25日実行した。また,神戸支部は,同年8月1日,b労組に対し,同月分からチェックオフを中止する旨を通知した。 b労組は,上記賃金カット及びチェックオフ中止の撤回を求めて,神戸支部と交渉を持ち,その結果,同年8月17日までの交渉で,被告において上記賃金カットを一時中止し,7月給与のカット分は返却すること,チェックオフの中止も凍結することとなり,一応の決着をみた。 被告は,前記b労組との交渉の中で,本件賃金協定をb労組の関係で破棄する手続に入ることを予告したうえ,平成12年8月31日,aに対し,同年9月1日をもって本件賃金協定を破棄する旨を通告した。そのうえで,被告は,同年9月20日,b労組に対し,月額固定給20パーセントカット及び一時帰休制度の導入の提案(9・20提案)を行い,同月21日,同年10月11日,20日, を破棄する旨を通告した。そのうえで,被告は,同年9月20日,b労組に対し,月額固定給20パーセントカット及び一時帰休制度の導入の提案(9・20提案)を行い,同月21日,同年10月11日,20日,27日のb労組との交渉の中で,神戸支部の過去14年間の収支状況,平成元年から同11年度までの主たる取扱貨物の増減,昭和60年から平成12年度までの神戸支部の人員推移,被告の収入増を図る諸施策についての業務対応,平成9年度から同12年度までの収支改善施策,本部固定費・開発費・退職準備金の計算基準,支出許可額制度の事業運営等につき,資料を示して説明のうえ,9・20提案に対する協力を求め,さらに,同年11月7日の交渉では,9・20提案の内容について,関係資料を提示して説明し,その際,当該改善策を同年12月1日より実施しても平成12年度の赤字解消は見込めず,依然厳しい状況にあることについても説明した。その後2度の支部交渉を経て,神戸支部は,同年11月27日のb労組との三役折衝において,賃金カット率を月額固定給12パーセントに引き下げる旨を提案し,同月30日には,月額固定給10パーセントカット,本給12パーセントカット,期間は平成13年3月までの暫定協定とし,同13年4月以降は新たな提案をする旨を最終案として提案し,その後何度か交渉を重ねたが,b労組はこれを受け入れなかった。被告とb労組は,平成12年12月18日になって,平成12年12月1日から同13年3月31日まで月額基準内賃金(月額固定給)を10パーセントカットする旨の本件暫定協定を締結した。また,一時帰休の実施については,同日までに労使合意ができなかったことから,被告は,b労組に対し,平成13年1月から就業規則に基づき一時帰休を実施する旨を通告した。 (エ) 被告は,平成12年12 の実施については,同日までに労使合意ができなかったことから,被告は,b労組に対し,平成13年1月から就業規則に基づき一時帰休を実施する旨を通告した。 (エ) 被告は,平成12年12月22日,aに対し,同年8月31日に行った前記本件賃金協定の破棄通告を撤回するとともに,本件暫定協定が終了する平成13年3月31日をもって,本件賃金協定をb労組との関係でのみ破棄する旨の本件破棄通告を行った。その上で,被告は,同月26日,b労組に対し,神戸支部につき,その生存,再生をめざすとして,本件賃金カット,一時金支給ゼロ,他支部への転勤斡旋等を内容とする再生計画の実施を提案し,その後,平成13年1月16日から同年4月24日までの間,12回にわたりb労組との間で交渉を行った。その中で,被告は,b労組に対し,再生計画が神戸支部の生存,再生のためにはやむを得ない計画であり,その内容は厳しいものではあるが,神戸支部従業員らの生活実態等も考慮したものであること等を,「平成12年度(4月~12月)の神戸支部事業収入の前年度比の増減要因分析結果」と題する書面やその他の資料を交付し,あるいは口頭で説明し,b労組からの公開質問状に対しても回答を行うなどして,その実施に向けての協力を求め,また,同年2月26日には,有限会社cへの転籍斡旋を行う旨を提案した。しかし,本件賃金カット提案及び本件賃金協定破棄の撤回を求める神戸支部との間で,再生計画実施のための労使合意は容易にできず,そのため,被告は,本件賃金カットを定めた本件就業規則変更を行い,その変更後の就業規則に基づいて,平成13年4月分給与から,原告らに対する本件賃金カットを行った。 (オ) なお,b労組は,被告との労使交渉の中で,被告に対し,経理内容の公開を求め,そのための資料提示要求等を いて,平成13年4月分給与から,原告らに対する本件賃金カットを行った。 (オ) なお,b労組は,被告との労使交渉の中で,被告に対し,経理内容の公開を求め,そのための資料提示要求等をしてきたところ,被告は,税務報告書関係書類,各役員の給与・報酬・退職金,取引先との料金契約内容等といった資料に関してはその提示に応じなかったが,毎年の定期通常総会後,当該年度の事業報告書(収支計算書,貸借対照表,財産目録)を交付してきたほか,個別の提示要求にも,その都度可能な範囲ではこれに応じ,あるいは,資料の提示に代わる説明を行うなどしていた。 オ原告らに提示された有限会社cへの転籍斡旋制度の内容等(乙5の1・2,16~20,57,58,被告代表者h)有限会社cの平成13年10月1日時点での出資者の構成は,総出資口数60口中,株式会社eが38口,その他は被告の管理職OBが出資者であった。 また,株式会社eの株式比率についてみると,平成13年6月1日時点で,総株式数6万株のうち,過半数である3万6000株を有限会社c及び被告とは無関係の他社が所有しており,被告役員及びOBの所有する株式は過半数に満たない。 本件転籍斡旋制度は,神戸支部従業員のうち,希望者を有限会社cに転籍させた上,有限会社cから神戸支部に派遣させ,神戸支部の検数業務に従事させるというものであった。 有限会社cに転籍した場合の月額基準内賃金は,各自の職務遂行能力,被告での実績と将来の職務・担当作業に基づき,転籍時の格付け(キーマンA,キーマンB,一般者)に応じて,平成13年3月31日現在の基準内賃金(減額前)を基礎として,以下のとおり個別に格付けの上,決定される。 キーマンAは,退職金は精算 け(キーマンA,キーマンB,一般者)に応じて,平成13年3月31日現在の基準内賃金(減額前)を基礎として,以下のとおり個別に格付けの上,決定される。 キーマンAは,退職金は精算せずに転籍し,将来,被告への復帰を希望すれば復帰でき(転籍期間中は,勤続年数に加算する。),基準内賃金の80パーセントを支給される者,キーマンBは,本人の就労意思及び能力並びに該当作業がある場合には,60歳までの就労が可能である者で,基準内賃金の70パーセントが支給される者,その他の転籍者が一般者であり,基準内賃金の60パーセントが支給される者である。キーマンB及び一般者は,退職金は精算して転籍するものとされていた。 これら転籍者と有限会社cとの雇用契約期間は,いずれの者についても,1年間の有期契約であり,1年毎の更新を原則とされていた。 なお,被告は,平成13年3月31日,d組合との間で,平成13年4月1日付有限会社cへの転籍者キーマンAが,神戸支部の再生を前提として,3年後,被告へ復帰できるものとすること,被告は平成16年3月の再生計画終了時までに目的達成のため努力すること,労使は,有限会社cがキーマンの雇用維持のために必要な職域確保及び労使関係安定化に必要な支援・協力をし,60歳まで雇用できるよう最大限努力すること等を確認する旨の覚書(乙5の2)を交わしている。 平成13年4月1日時点において,d組合員128名中76名,b労組組合員177名中18名,その他職員4名が有限会社cへ転籍した。上記転籍者のうち,キーマンAが80名,キーマンBが18名であった。 カ神戸支部の原告ら以外の従業員・管理職,他支部従業員,役員のカット率等(乙3,4,5の1・2,52,55,56,証人 記転籍者のうち,キーマンAが80名,キーマンBが18名であった。 カ神戸支部の原告ら以外の従業員・管理職,他支部従業員,役員のカット率等(乙3,4,5の1・2,52,55,56,証人f,被告代表者h)(ア) d組合は,平成13年3月31日,原告らに対する本件賃金カットと同内容の賃金カットの平成13年4月1日からの実施を受け入れ,被告との間で,労使協定(乙5の1)を締結した。 神戸支部の管理職に関しては,部次長は平成9年10月から,課長,課長代理,係長は平成10年9月から,2ないし5パーセントの賃金カットを受けていたところ,平成11年以降は全管理職が7ないし11パーセントの賃金カットを受け,さらに平成13年4月からは,全管理職につき20パーセントの賃金カットがなされている。 (イ) 被告は,平成12年度赤字であった北陸支部,中国支部,大阪支部の各従業員に対し,賃金カットを行うこととし,北陸支部については,a傘下の全日検北陸支部労働組合との間で,平成13年5月30日,平均32.8パーセントの賃金カットを平成13年6月1日から平成14年3月31日まで行う旨の協定を締結して,これを実施した。中国支部については,a傘下の全日検中国支部労働組合との間で,平成13年5月21日,平均36.8パーセントの賃金カットを行う旨の協定を締結し,同年5月17日から実施した。大阪支部については,平均23.6パーセントの賃金カットの平成13年7月からの実施に取り組んだ。 また,被告は,九州支部については,全日本検数九州支部労働組合との間で,平成13年10月16日,家族手当の減額,子女扶養補助手当の廃止,住宅手当の半額減額を平成13年10月から同14年3月まで実施する旨の協定を ,九州支部については,全日本検数九州支部労働組合との間で,平成13年10月16日,家族手当の減額,子女扶養補助手当の廃止,住宅手当の半額減額を平成13年10月から同14年3月まで実施する旨の協定を締結して,これを実施し,北海道事業所については,全日検北海道支部労働組合との間で,平成13年11月17日,家族手当の減額,平成13年度燃料補助費の支給中止,平成13年度越年一時金の支給額50パーセントカットのほか,45歳から55歳までの従業員の本給13パーセントカット,56歳から59歳までの従業員の本給16パーセントカット等を平成13年12月1日から同14年3月31日までの間行う旨の暫定協定を締結し,これを実施した。 被告の各支部のうち,収支が黒字であった東京支部,横浜支部,名古屋支部及び東北支部の従業員については,賃金カットはなされず,それぞれ夏期・冬期の一時金が支給された。さらに,名古屋支部及び東京支部では,平成13年3月末に臨時の期末手当(名古屋3万円,東京4万円)が支給された。 (ウ) 被告が,役員報酬については,平成8年10月から同10年8月までの間,会長につき10パーセントの減額を行い,他の役員もその職階に応じて減額し,平成10年9月から同11年3月までの間は,会長につき12パーセントの減額を行い,他の役員も職階に応じて減額し,平成11年4月以降は,役員報酬を一律5パーセントの減額(ただし,一部支部については7パーセント以上)を行い,現在に至っていることは,既に認定したとおりである。そして,神戸支部の常務理事で支部長のhは,平成8年10月から7パーセントの減額を受けており,かつ,その後,その減額率は徐々に引き上げられ,平成13年4月からは50パーセントの減額となっている。 キ原告 務理事で支部長のhは,平成8年10月から7パーセントの減額を受けており,かつ,その後,その減額率は徐々に引き上げられ,平成13年4月からは50パーセントの減額となっている。 キ原告らの本件賃金カット後の現状(甲32,37,原告本人g)原告らは,本件賃金カット実施当時いずれも41歳以上であったもので,その平均年齢は52歳であり,原告らの多くは高校生,大学生の子を扶養しているし,阪神・淡路大震災で被災した者を含め,住宅ローンを抱えている者も多い。 しかし,原告らの月額賃金は,別紙「請求額一覧表」から明らかなとおり,本件賃金カットによって,大幅に減額され,最も多い者でも18万8160円にすぎず,最も少ない者では15万6300円にまで減少している。そのため,原告らの中には,子女の学費の支払いや住宅ローンの支払に窮したり,生命保険や財形貯蓄を解約して生活費を捻出したり,親と同居してその援助を受けてようやく生活している者もある。 (2) 原告らは,本件就業規則変更により,基準内賃金(本給,役付手当,特技手当,家族手当,住宅手当)の支給額を50パーセント減額された(ただし,本給,役付手当,特技手当及び住宅手当の合計額が15万6300円に満たない場合は,その差額を調整手当として支給された)のであるから,本件就業規則変更が原告らの重要な労働条件を不利益に変更することは明らかである。 ところで,新たな就業規則の作成又は変更によって,労働者の既得の権利を奪い,不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として許されないと解すべきであるが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者にお ることは,原則として許されないと解すべきであるが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒否することは許されないというべきである。そして,上記にいう当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい,特に,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるものというべきである。そして,上記の合理性の有無は,具体的には,就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度,使用者側の変更の必要性の内容・程度,変更後の就業規則の内容自体の相当性,代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況,労働組合等との交渉の経緯,他の労働組合又は他の従業員の対応,同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである(最高裁昭和40年(オ)第145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁,最高裁昭和55年(オ)第379号,第969号同58年11月25日第二小法廷判決・裁判集民事140号505頁,最高裁昭和60年(オ)第104号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号60頁,最高裁平成3年(オ)第581号同4年7月13日第 年11月25日第二小法廷判決・裁判集民事140号505頁,最高裁昭和60年(オ)第104号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号60頁,最高裁平成3年(オ)第581号同4年7月13日第二小法廷判決・裁判集民事165号185頁,最高裁平成5年(オ)第650号同8年3月26日第三小法廷判決・民集50巻4号1008頁参照)。 (3) そこで,以下,本件就業規則変更が上記のような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるといえるか否かを検討する。 ア被告の経営状態と本件就業規則変更の必要性被告は,被告の経営は危機的状況にあり,とりわけ神戸支部は,閉鎖という選択肢も視野に入れなければならないほどの逼迫した状況にあり,本件就業規則変更による本件賃金カットは,雇用調整を回避するための最終手段にほかならない旨を主張するところ,確かに,前記認定の事実によれば,被告は,その取扱作業量及び事業収入が全国的に落ち込み,特に神戸支部においては,阪神・淡路大震災以降,大幅な減収となり,その状態が現在も続いていること,そこで被告は,平成8年度から,役員報酬や管理職の賃金の減額等やその他の経営改善施策を行い,特に平成11年4月以降は,各支部毎に独立採算的運営を行うことなどを内容とする基盤計画を実施したものの,経営状態回復の見込みがなく,とりわけ神戸支部においては大幅な赤字が続いていることが認められる。 これに対し,原告らは,被告の平成10年度以降の全国収支は黒字であり,平成11年度には累積赤字も解消して,被告の業績は好転しており,被告は計数上赤字を創出しているものである旨を主張するけれども,前記認定の事実によれば,被告は,事業収 年度以降の全国収支は黒字であり,平成11年度には累積赤字も解消して,被告の業績は好転しており,被告は計数上赤字を創出しているものである旨を主張するけれども,前記認定の事実によれば,被告は,事業収入が減少したため,各業者への諸支払いや退職金の支払いを繰り延べて資金繰りを行ったり,従業員の新規採用の一時中止,役員の減員,遊休資産の売却,固定費の圧縮等の経費削減を行ったりしていたことが認められるのであって,その経営状況が逼迫していたことは明らかである。また,被告が計数上赤字を創出していることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,被告が,被告及び神戸支部の経営状況について主張するところは,決して誇大な主張とはいえず,上記のような被告及び神戸支部の状況に鑑みると,賃金カットによる人件費の圧縮といった経費削減策が,経営上,必要かつ有効な収支改善策の一つであることは誰しも否定できないところと考えられる。 なお,原告らは,被告の経営の悪化は被告経営陣の経営責任の問題にすぎず,そのしわ寄せを労働者に押しつけることはできないとも主張するが,たとえ被告の経営悪化について被告経営陣の経営責任が問題になるとしても,そのことと,経営状況改善のための施策を行う必要性があることとは,別問題というべきである。 イ本件賃金カットによる原告らの不利益の程度とその内容の合理性原告らは,いずれも41歳以上であり,本件賃金カットによって,基準内賃金(本給,役付手当,特技手当,家族手当,住宅手当)の50パーセントを,平成13年4月1日から平成16年3月31日まで,3年間にわたって減額されるものであるところ,被告は,この点につき,本件賃金カットが雇用調整を回避するための最終手段にほかならないことに加え,平成15年度までに神戸支 日から平成16年3月31日まで,3年間にわたって減額されるものであるところ,被告は,この点につき,本件賃金カットが雇用調整を回避するための最終手段にほかならないことに加え,平成15年度までに神戸支部の収支を均衡させ,同支部の同11年度及び同12年度の10億円超の繰越欠損を解消するためには,平成13年度約64パーセント,同14年度約64パーセント,同15年度約72パーセントの賃金カットを実施しなければならない計算になるが,原告らの生活実態を考慮し,41歳未満30パーセント,41歳以上50パーセントという本件賃金カット率を策定し,かつ,調整手当により,港湾産別協定の最低賃金(月額)15万6300円は確保することとしたもので,合理的なカット率である旨を主張する。また,前記認定のとおり,d組合は,本件賃金カットと同様のカット率について同意していることが認められることも,本件賃金カットのカット率がやむを得ないものであることを裏付けるかのようでもある。 しかし,原告らは,いずれも41歳以上で,かつ,平均年齢は52歳であり,子女が高校生や大学生であったり,住宅ローンを抱えていることが予想される世代であるにもかかわらず,基準内賃金の50パーセントを3年間にもわたってカットされることになれば,早晩,家計に破綻をきたすことは明らかというべきであり,現に,原告らの月額賃金額は,本件賃金カットにより,最も多い者でも18万8160円にすぎず,最も少ない者では15万6300円にまで減少しており,原告らの中には,子女の学費の支払や住宅ローンの支払に窮したり,生命保険や財形貯蓄を解約して生活費を捻出したり,親と同居してその援助を受けてようやく生活している者もあることも,前記認定のとおりであり,原告らが本件賃金カットによって被る不利益はあまりに大き り,生命保険や財形貯蓄を解約して生活費を捻出したり,親と同居してその援助を受けてようやく生活している者もあることも,前記認定のとおりであり,原告らが本件賃金カットによって被る不利益はあまりに大きく,50パーセントの賃金カット率及び調整手当による港湾産別協定の最低賃金の確保が,原告らの生活実態を考慮した合理性を有するものとはにわかには認めがたい。また,d組合は本件賃金カットと同様のカット率について同意しているとの事実も,その不利益の大きさに照らすと,その合理性を裏付けるものとはにわかには認めがたい。 しかも,神戸支部の赤字が突出しているのは事実としても,前記認定のとおり,その赤字の原因としては,阪神・淡路大震災という客観的外部的要因の影響が大きいことからすれば,それによる不利益を神戸支部の従業員のみに負担させるのは酷である。また,被告が,その経営改善策として,各支部毎の独立採算的運営を重視しているとはいっても,本来的には全国規模の単一の事業体であることからすれば,前記のような客観的外部的要因の影響が大きい神戸支部の赤字への対応については,被告を挙げての取り組みがむしろ必要と考えられ,他の支部においても相応の負担をするといった運営が考慮されて然るべきである。支部独立採算的運営による神戸支部独力による赤字の解消を図るために必要なカット率に緩和措置を行ったというだけで,50パーセントもの本件賃金カットを合理的であるとする被告の主張は,この点からもにわかに採用しがたい。 また,被告は,前記認定のとおり,神戸支部以外の北陸支部,中国支部,大阪支部,九州支部及び北海道事業所においても,賃金カットを行っているが,そのカット率は,最も大きい中国支部でも平均36.8パーセントにとどまっており,また,その期間も3年に の北陸支部,中国支部,大阪支部,九州支部及び北海道事業所においても,賃金カットを行っているが,そのカット率は,最も大きい中国支部でも平均36.8パーセントにとどまっており,また,その期間も3年にも及ぶのは神戸支部のみであるなど,他の支部で実施の賃金カットと比較しても,本件賃金カットは,そのカット率及びカット期間の両面で突出しており,支部独立採算的運営の名のもとに,神戸支部の従業員のみに過大な不利益を押しつけるものといわざるを得ない。この点でも,本件賃金カットの内容が合理性を有するものとは認めがたい。 ウ代償措置の十分性被告は,原告らに対し,本件賃金カットの代償措置として,希望者を有限会社cに転籍させた上で,同社から神戸支部へ派遣させ,神戸支部の検数業務に従事させるという転籍斡旋制度を提案している。 しかしながら,有限会社cへの転籍者は,賃金の減額率こそ20ないし40パーセントにとどまるものの,同社との間で1年毎に更新される有期労働契約の下で派遣社員として働くことになるのであって,被告の下での労働条件と比べると著しく不安定な身分に陥ることが明らかである。 これに対して,被告は,転籍者については定年までの更新が続くことが原則であることや,キーマンAとして選別された者については,将来,被告への復帰が可能という条件付転籍であることを主張するところ,前記認定のとおり,有限会社cは,その出資口の過半数を株式会社eが有し,残余は被告の管理職OBが有している等,被告と密接な関係にあることは認められるが,だからといって,前記更新継続や被告への復帰について,これが将来にわたって確実に遵守される法律上の裏付けがあるわけではなく,転籍者の身分が不安定なものに変化することには何ら変わりは は認められるが,だからといって,前記更新継続や被告への復帰について,これが将来にわたって確実に遵守される法律上の裏付けがあるわけではなく,転籍者の身分が不安定なものに変化することには何ら変わりはない。 そうすると,有限会社cへの転籍制度は,本件賃金カットの十分な代償措置と認めることはできない。 エ役員や管理職の報酬・賃金の減額措置前記認定のとおり,被告は,役員報酬の減額を平成8年10月から行い,最大で12パーセントの減額をするとともに,平成11年4月1日以降は,一律5パーセント(ただし,一部支部については7パーセント以上)の減額を行って現在に至っている。のみならず,役員のうち,神戸支部長で常務理事のhは,平成8年10月から7パーセントの減額を受けており,かつ,その後,その減額率は徐々に引き上げられ,平成13年4月からは50パーセントの減額を受けている。また,神戸支部の管理職らも,前記認定のとおり,部次長は平成9年10月から,課長,課長代理,係長は平成10年9月から,2ないし5パーセントの賃金カットを受け,平成11年以降は全管理職が7ないし11パーセントの賃金カットを受け,さらに平成13年4月からは,全管理職につき20パーセントの賃金カットがなされている。 しかしながら,本件賃金カットが,原告らに対する支給額を50パーセントも減額するものであって,極めて重大な不利益を原告らにもたらすものであることや,被告の役員や管理職の報酬・給与は原告らの給与と比較してもともと高額であると推認されることを考慮すると,減額が先行してなされ,hに限っては現在50パーセントの減額を受けているとはしても,被告役員の報酬,管理職の賃金の減額の程度は軽微であって,本件賃金カットとはあまりにも大きな不均衡 ことを考慮すると,減額が先行してなされ,hに限っては現在50パーセントの減額を受けているとはしても,被告役員の報酬,管理職の賃金の減額の程度は軽微であって,本件賃金カットとはあまりにも大きな不均衡があるといわざるを得ない。 オ労使交渉の経緯原告らは,b労組と被告との労使交渉において,被告が不誠実な態度を取り続けたと主張し,一方,被告は,b労組が非協力的な態度を取り続けたと主張する。 被告とb労組との間では,平成11年ころから,被告の支部独立採算的運営による業務改善方策である基盤計画の実施を巡って対立が続き,同12年においても,神戸支部における賃金カットに関して交渉が難航していたが,同年12月18日になって,ようやく本件暫定協定が締結されたこと,ところが,被告は,本件暫定協定締結の4日後である同月22日に本件破棄通告をし,同月26日には本件賃金カットを含む再生計画の提案に及んだこと,その後,本件賃金カットをめぐる交渉が重ねられたが,b労組がこれに応じなかったことから,被告は,平成13年4月1日,本件就業規則変更によって本件賃金カットの実施に及んだことは,前記各認定のとおりである。 以上のとおり,被告は,本件暫定協定締結直後に,本件破棄通告及び本件賃金カットの提案を行っているのであって,被告がかかる対応に出たことは,本件暫定協定の締結が遅れたというやむを得ない面もあったとはいえ,その賃金カット率の大きさをも併せ考えると,唐突な提案であったという認定は免れない。また,その後,本件賃金カット提案についての交渉が重ねられたとはいえ,それが容易に妥結に至るとは思われない提案であることは明らかであることからすれば,被告が,本件賃金カットの提案後わずか3か月余りの後に,本件就業規則変更によって 案についての交渉が重ねられたとはいえ,それが容易に妥結に至るとは思われない提案であることは明らかであることからすれば,被告が,本件賃金カットの提案後わずか3か月余りの後に,本件就業規則変更によって本件賃金カットの実施に及んだことは,性急に過ぎるといわざるを得ない。 カ同種事項に関する我が国社会における一般的状況等我が国が現在深刻な経済不況下にあり,倒産する企業も後を絶たず,多くの企業が何らかの人件費削減措置を講じていることは公知の事実であるし,証拠(乙49)によれば,本件のような大幅な賃金減額を行っている企業も一部には存在することが認められる。しかしながら,それら事実のみから,我が国において,本件のような大幅な賃金の減額率が一般的であるとまでは到底認めることはできないし,その他に,かかる事実を認めるに足りる証拠はない。 キ以上みてきたところによれば,本件賃金カットを定めた本件就業規則変更は,41歳以上の神戸支部従業員である原告らのみに対して,専ら大きな不利益のみを与えるものと言わざるを得ないうえ,その内容や十分な代償措置等がなされているかといったこと等を検討しても,その変更に同意しない原告らに対し,その不利益を法的に受忍させることを許容するに足りる高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるとは認められない。したがって,本件就業規則変更は,原告らにその効力を及ぼすことができないというべきである。 3 原告らが請求できる賃金の額(1) 前記認定のとおり,本件賃金カットを定めた本件就業規則変更は無効であるから,原告らは,本件賃金カット期間である平成13年4月1日から平成16年3月31日までの間についても,本件賃金カットなしの給与の支払を受ける権利を有するところ,本件賃金カットがなければ原告ら あるから,原告らは,本件賃金カット期間である平成13年4月1日から平成16年3月31日までの間についても,本件賃金カットなしの給与の支払を受ける権利を有するところ,本件賃金カットがなければ原告らが被告から支払を受けることとなる本件賃金カットしない場合の給与額が別紙「請求額一覧表」の「現行合計」欄記載の金額であることは,前記のとおり,当事者間に争いがない。 そうすると,無効な本件賃金カットを受けている原告らは,被告に対し,本件賃金カット前の給与額と本件賃金カット後の給与額との差額である別紙「請求額一覧表」の「月額請求額」欄記載の各金員及びそれに対する附帯金の支払を求めることができることとなる。 (2) しかし,原告らは,その将来請求分につき終期を定めずにその支払を求めるが,本件賃金カット期間は,平成16年3月31日までであり,したがって,平成16年4月分以降の給与については,本件賃金カットなしの給与が支払われるはずであるから,現時点において,平成16年4月分以降の給与についての本件賃金カットによる差額を将来給付としてその請求をしておかなければならない必要性はこれを認めることができない。また,本件賃金カット期間が終了する平成16年3月31日より前に本件判決が確定すれば,それ以降は,本件判決に従った給付がなされることが期待できるから,平成16年3月31日より前に本判決が確定した場合には,その確定日より後に弁済期が到来する給与についても,将来給付としてその請求をしておかなければならない必要性はこれを認めることができない。 4 結論以上の次第で,原告らの本訴請求は,平成13年(ワ)第868号事件原告らについては,平成13年4月から平成16年3月までの間(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定ま 結論 以上の次第で,原告らの本訴請求は,平成13年(ワ)第868号事件原告らについては,平成13年4月から平成16年3月までの間(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定までの間),毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の同原告らに対応する各「月額請求額」欄記載の各金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を,平成14年(ワ)第773号事件原告については,平成13年8月から平成16年3月までの間(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定までの間),毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の同原告に対応する「月額請求額」欄記載の金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を,それぞれ求める限度で理由があるので,その限度でこれを認容し,原告らの訴えのうち,平成16年4月以降(ただし,それまでに本判決が確定したときは本判決確定以降)毎月25日限り,別紙「請求額一覧表」の各原告らに対応する「月額請求額」欄記載の各金員及びこれに対する各月26日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める部分は,不適法としてこれを却下することとする。 よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判長裁判官上田昭典裁判官太田敬司裁判官島田環 田環
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