令和7(ネ)21 不当利得返還等本訴請求、同反訴請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月18日 福岡高等裁判所 宮崎支部 宮崎地方裁判所 令和6(ワ)115
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判決文本文7,942 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の本訴請求をいずれも棄却する。 3 被控訴人は、控訴人に対し、3000万円及びこれに対する令和6年6月15日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 以下、略称は、本判決で定めるもののほかは、原判決のものによる。 1 本件本訴は、地方公共団体である被控訴人が、食肉販売業等を目的とする控訴人に対し、控訴人との間でふるさと納税推進事業に関する返礼品調達業務及び配送業務等に関する業務委託契約(本件契約)を締結し、同契約に基づき控訴人に対して委託料1億4824万7000円を支払い、株式会社さとふる (さとふる)に対して配送費用3602万4558円を支払ったところ、控訴人が産地を偽装した上で地場産品ではない生鮮鶏肉を調達して寄附者に配送したため(本件産地偽装)、本件契約の約款に基づいて本件契約を解除したと主張して、①不当利得返還請求権に基づき、上記委託料から未払委託料361万2400円及び弁済金6000万円を控除した残額8463万4600円及び これに対する令和5年11月22日(催告日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払(本訴請求1)、②本件契約の債務不履行よる損害賠償請求権に基づき、さとふるに支払った配送費用相当額3602万4558円及びこれに対する前同日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払(本訴請求2)、③本件契約に係る都城市役務提供単価契 約約款(約款)19条1項に基づき、上記委託料の10%相当額の違約金14 82万4700円及びこれに対する令和6年3月21日( (本訴請求2)、③本件契約に係る都城市役務提供単価契 約約款(約款)19条1項に基づき、上記委託料の10%相当額の違約金14 82万4700円及びこれに対する令和6年3月21日(約款19条1項に基づいて被控訴人が支払期限として指定した日の翌日)から支払済みまで約款24条に基づく政府契約における利率である年2.5%(政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率(最終改正令和3年3月9日財務省告示第49号))の割合による遅延損害金(本訴請求3)の支払を求める事案である。 本件反訴は、控訴人が、被控訴人に対し、①本件契約に基づき、未払委託料361万2400円及びこれに対する令和6年6月15日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払(反訴請求1)、②錯誤により被控訴人に6000万円を支払ったと主張して、不当利得返還請求権に基づき、その一部2638万7600円及びこれに対する 前同日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払(反訴請求2)を求める事案である。 原審は、被控訴人の本訴請求をいずれも認容し、控訴人の反訴請求をいずれも棄却したところ、控訴人が上記判断を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実及び当事者の主張は、下記(1)のとおり補正し、当審における控訴 人の補充主張を下記(2)のとおり加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」(以下「原判決第2」という。)の1から3までに記載のとおりであるから、これを引用する。以下、補正して引用する原判決第2の1の前提事実を、同1の符号により「前提事実(1)」などという。 (1) 原判決の補正 ア原判決3頁7行目の「添付された約款には」を「添付されていた仕様書には以下の定めが、添付 決第2の1の前提事実を、同1の符号により「前提事実(1)」などという。 (1) 原判決の補正 ア原判決3頁7行目の「添付された約款には」を「添付されていた仕様書には以下の定めが、添付された約款には」と改め、同頁8行目と9行目の間に以下のとおりを加える。 「1 業務概要本業務は、「肉と焼酎のふるさと・都城」を全国へ発信し、本市の 認知度及び関心の向上に向けたPR戦略を推進する目的を達成するた めに、市にふるさと納税をされた方(以下、「寄附者」という。)へ贈るお礼の品(以下、「返礼品」という。)の調達に係る業務等を委託するものである。 2 業務内容受注者は、寄附者へ贈る返礼品の調達、配送、その他関連業務につ いて、次に掲げる業務を履行するものとする。 (1) 返礼品の調達に係る業務ア本契約締結時において、「都城市ふるさと納税推進事業返礼品選定審査会(以下、「審査会」という。)において認定された返礼品がない場合のふるさと納税関係法令及び別に定める発注者作 成のガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)を遵守した返礼品候補の提案イ発注者の指定した期間におけるふるさと納税関係法令及びガイドラインを遵守した返礼品候補の提案ウ審査会において認定された返礼品の品質管理及び安定的な供給 (2) 返礼品の配送に係る業務(中略)(3) 寄附者からの問い合わせに関する業務(中略)(4) その他前2号に規定する業務に伴う次に掲げる業務 ア発注者が指定するシステムを介した寄附情報の管理イ返礼品ごとの配送予定日及び出荷(配送)可能数の報告ウ常時、発注者と連絡調整が可能な事務担当者などの適正配置(5) 都城ブランド確立及びPR戦略推進のため テムを介した寄附情報の管理イ返礼品ごとの配送予定日及び出荷(配送)可能数の報告ウ常時、発注者と連絡調整が可能な事務担当者などの適正配置(5) 都城ブランド確立及びPR戦略推進のための業務」イ原判決3頁9行目の「被告から、」の次に「被控訴人のふるさと納税の 返礼品(地場産品)としての要件を満たす返礼品候補として、」を、同頁 11行目の「提案を受け、」の次に「本商品がふるさと納税の返礼品(地場産品)としての要件を満たすことを審査、確認の上、」を、同頁12行目の「甲6」の次に「、弁論の全趣旨」をそれぞれ加え、同頁26行目の「確認した旨公表した。」を「確認し、控訴人の行為が食品表示法第4条第1項の規定に基づき定められた食品表示基準第18条第1項の表の「原 産地」の項の規定に違反すると判断した旨を公表した。」と改める。 ウ原判決4頁23行目と24行目の間に以下のとおりを加える。 「(8) 控訴人は、令和6年5月7日の原審第1回口頭弁論期日において陳述されたとみなされた答弁書において、被控訴人に対し、前記(5)の6000万円の支払につき、支払義務があると誤信して支払ったから、 民法95条に基づき取り消すとの意思表示をした(弁論の全趣旨)。」エ原判決7頁4行目の「取り消す」を「取り消すとの意思表示をした(前提事実(8))。」と改める。 (2) 当審における控訴人の補充主張アふるさと納税寄附に対する返礼行為が単なる贈与にとどまるものであれ ば、控訴人が寄附者に配送した本商品が産地偽装されたものであったとしても、被控訴人は寄附者に対し商品を再度配送する法的義務を負うものでないから、本件産地偽装によって被控訴人に損失(民法709条)は生じない。 イ控訴人は、本件契約に定められた範囲 のであったとしても、被控訴人は寄附者に対し商品を再度配送する法的義務を負うものでないから、本件産地偽装によって被控訴人に損失(民法709条)は生じない。 イ控訴人は、本件契約に定められた範囲の義務を負うにとどまり、それを 超える義務を負わないから、被控訴人のために総務大臣の指定取消しを防止する義務はない。控訴人が産地品偽装のような不完全履行や瑕疵ある業務を行った場合、契約解除と違約金の定めのほかに代金額全額の返還を控訴人に義務付ける法的根拠は存在しない。解除による契約の将来に向けての失効と、違約金支払以外の出来高精算については、請負及び準委任に関 する民法の規定が適用されるべきである。 ウ被控訴人の原状回復義務が履行不能となったのは、返礼品受領者(寄附者)が返礼品を消費したからであって、控訴人の違法行為によるものではない。一方、被控訴人には、ふるさと納税寄附を受けたことによる利得が現存している。被控訴人が契約解除を主張するのであれば、原状回復義務の履行不能による代償価格金返還をすることが必要であり、その額は、控 訴人が主張する支払済み委託料から原材料の差額を控除した金額に一致する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する本訴請求はいずれも理由があり、控訴人の被控訴人に対する反訴請求は理由がないと判断する。その理由は、下記 2のとおり補正し、当審における控訴人の補充主張に対する判断を下記3のとおり加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」(以下「原判決第3」という。)の1から7までに記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正 (1) 原判決7頁11行目から25行目までを以下のとおりと改める。 「2 本件契約の業 原判決第3」という。)の1から7までに記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正 (1) 原判決7頁11行目から25行目までを以下のとおりと改める。 「2 本件契約の業務概要及び業務内容は、前提事実(2)のとおり「肉と焼酎のふるさと・都城」を全国へ発信し、被控訴人の認知度及び関心の向上に向けたPR戦略を推進する目的を達するため、寄附者に対し贈る返礼品の調達に係る業務等を委託するものであるところ、控訴人は、返礼 品の調達に係る業務として、ふるさと納税関係法令及びガイドラインを遵守した返礼品候補を提案し、返礼品の品質管理及び安定的な供給を図ること、寄附者からの問合わせに関する業務として、返礼品の内容及び配送状況に関する問合わせに加え、寄附者からの返礼品に関するクレーム対応や再配送、返礼品の再配送が必要な場合に、被控訴人が指示する 文書を同梱の上、再配送することが求められている(前提事実(2)、甲 4、5)。 以上のように、本件契約において、被控訴人が、控訴人に対し、返礼品の寄附者への引渡しのみならず、法令等の基準に沿った返礼品候補の提案業務や顧客対応業務等、「肉と焼酎のふるさと・都城」を全国へ発信し、被控訴人の認知度及び関心の向上に向けたPR戦略を推進する目 的を達成するための複数の業務を行うこととされていることからすると、控訴人が主張するように、本件契約を、控訴人と被控訴人の間における商品の売買契約であり、その配送先を寄附者とする単純なものということはできない。本件契約内の業務のうち、寄附者が指定する返礼品を調達してこれを配送することに関わる業務については仕事の完成を目的と する請負契約の、その他、都城ブランドの確立及びPR戦略推進のための業務を含むその余の業務について 寄附者が指定する返礼品を調達してこれを配送することに関わる業務については仕事の完成を目的と する請負契約の、その他、都城ブランドの確立及びPR戦略推進のための業務を含むその余の業務については法律行為でない事務の委託を目的とする準委任契約の性質を有するといえるから、本件契約は請負契約及び準委任契約の性質を併有する契約と考えるのが相当である。」(2) 原判決8頁1行目から9頁6行目までを以下のとおりと改める。 「 2で認定したとおり、本件契約は、「肉と焼酎のふるさと・都城」を全国へ発信し、被控訴人の認知度及び関心の向上に向けたPR戦略を推進する目的を達するために、寄附者に対し贈る返礼品の調達に係る業務等を委託するものであるところ、返礼品が宮崎県産であることは、食肉の供給地としての被控訴人の認知度及び関心の向上のために必要不可欠であって、 本件契約の根幹に関わる本質的要素といえるものであるし、返礼品の配送等が適法、適正に行われることも上記目的を実現する上で必要不可欠である。約款17条が本件契約に違反し、その違反によりこの契約の目的を達することができないと認められるとき又はこの契約の締結及び履行に関して法令等に違反したとき(3号)及び業務等の実施につき受注者に不正の 行為があったとき(4号)を本件契約の解除事由としているのは、本件契 約のこのような内容を反映したものと理解される(なお、寄附金税額控除について定める地方税法37条の2第2項3号(令和5年3月31日法律第1号の改正前は2号)も、地方公共団体が寄附金の受領に伴い当該寄附金を支出した者に対する返礼品等につき、「都道府県等が提供する返礼品等が当該都道府県等の区域内において生産された物品又は提供される役務 その他これらに類するものであって 附金の受領に伴い当該寄附金を支出した者に対する返礼品等につき、「都道府県等が提供する返礼品等が当該都道府県等の区域内において生産された物品又は提供される役務 その他これらに類するものであって、総務大臣が定める基準に適合するものであること」を要するとしている。)。 ところが、控訴人は、対象期間において、宮崎県内で生産された鶏肉を使用して製造した生鮮鶏肉であるはずの本商品ではなく、ブラジル産又はタイ産の鶏肉を原料とした鶏肉を調達し、本商品として寄附者に配送して いるから(前提事実(4))、本件契約の目的や契約内容に沿うものでないことは明らかで、本件契約に基づく受託業務の一部の履行とも評価できないというべきである。そこで、被控訴人が控訴人に対し、本件産地偽装を理由として約款17条3号及び4号に基づき本件契約を解除するとの意思表示をし(前提事実(5))、本件契約を約款17条3号及び4号に基づい て解除した以上、控訴人は、上記1で認定した委託料1億4824万7000円の全部について法律上の原因なく利得を得、反面、被控訴人は同額の損失を被ったことになる。 したがって、被控訴人は、控訴人に対し、外国産鶏肉と宮崎県産鶏肉との価額の差額にとどまらず、上記1億4824万7000円から、前提事 実(6)のとおり相殺及び充当した合計6361万2400円(相殺分361万2400円及び充当分6000万円)を控除した8463万4600円の返還を請求することができる。」(3) 原判決9頁9行目の「認められる。」を「認められ、これにより、被控訴人は、本件産地偽装に係る本商品の配送費用としてさとふるに支払った36 02万4558円につき損害を被ったといえる。」と、同頁17行目の「い るところ」を「おり、同違約金の額 控訴人は、本件産地偽装に係る本商品の配送費用としてさとふるに支払った36 02万4558円につき損害を被ったといえる。」と、同頁17行目の「い るところ」を「おり、同違約金の額は、上記1で認定した委託料1億4824万7000円の10分の1相当額である1482万4700円であると認められる。また」と、同頁22行目の「の違約金を」を「である1482万4700円を約款19条1項に基づく違約金として」とそれぞれ改める。 (4) 原判決10頁6行目の冒頭から7行目の「主張するが」までを「控訴人は、 被控訴人に対して債務を承認してそのうち6000万円を支払ったが、支払義務があるものと誤信して支払ったから、錯誤がある旨を主張するが」と改める。 3 当審における控訴人の補充主張について控訴人は、①ふるさと納税寄附に対する返礼行為が贈与にとどまるものであ れば、控訴人が寄附者に配送した本商品が産地偽装されたものであったとしても、被控訴人は寄附者に対し、商品を再度配送する法的義務を負うものでないから、本件産地偽装によって被控訴人に損失(民法709条)は生じない、②控訴人は、本件契約に定められた範囲の義務を負うにとどまり、それを超える義務は負わないから、被控訴人のために総務大臣の指定取消しを防止する義務 はないし、控訴人が産地品偽装のような不完全履行や瑕疵ある業務を行った場合、契約解除と違約金の定めのほかに代金額全額の返還を控訴人に義務付ける法的根拠は存在しないから、解除による契約の将来に向けての失効と、違約金支払以外の出来高精算については、請負及び準委任に関する民法の規定が適用されるべきである、③被控訴人の原状回復義務が履行不能となったのは、返礼 品受領者(寄附者)が返礼品を消費したからであって、控訴人の 出来高精算については、請負及び準委任に関する民法の規定が適用されるべきである、③被控訴人の原状回復義務が履行不能となったのは、返礼 品受領者(寄附者)が返礼品を消費したからであって、控訴人の違法行為によるものではない、一方、被控訴人には、ふるさと納税寄附を受けたことによる利得が現存しているから、被控訴人が契約解除を主張するのであれば、原状回復義務の履行不能による代償価格金返還をすることが必要であり、その額は、控訴人が主張する支払済み委託料から原材料の差額を控除した金額に一致する 旨を主張する。 しかしながら、①控訴人が寄附者に配送した本商品は、本来送付すべき商品とは異なるものであって、被控訴人が寄附者に対して本商品の配送義務を免れるものではなく、また、②控訴人が、被控訴人との本件契約に定められた範囲の義務を負うにとどまり、それを超える義務は負わないのは、控訴人が主張するとおりであるが、本件産地偽装を行って本商品を調達し、配送したことは、 本件契約に基づく受託業務の履行とはいえないから、控訴人が被控訴人から受領した1億4824万7000円の全額が不当利得となることは、前記補正して引用する原判決第3の3のとおりであり、請負及び準委任に関する民法の規定が適用される結果、本件契約に基づく受託業務を履行していないにもかかわらず、本件契約に基づいて支払われた委託料につき、不当利得として返還する 義務を負わないことになるものではない。さらに、③返礼品受領者(寄附者)が返礼品を消費したことによって、被控訴人が本件契約に基づく受託業務を履行していないとの事実が異なるものではないし、宮崎県産ではなくブラジル産又はタイ産の鶏肉を原料とした返礼品を配送しても、「肉と焼酎のふるさと・都城」を全国に発信し、被控訴人の認知度 づく受託業務を履行していないとの事実が異なるものではないし、宮崎県産ではなくブラジル産又はタイ産の鶏肉を原料とした返礼品を配送しても、「肉と焼酎のふるさと・都城」を全国に発信し、被控訴人の認知度及び関心の向上に向けたPR戦略を 推進する目的を達成することに資するものではなく、被控訴人に何らかの利得が現存しているものではない。 したがって、控訴人の上記主張はいずれも採用することができない。 第4 結論以上によれば、被控訴人の控訴人に対する本訴請求はいずれも理由があり、 控訴人の被控訴人に対する反訴請求は理由がないから、被控訴人の本訴請求を認容し、控訴人の反訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所宮崎支部 裁判長裁判官 西森政一 裁判官俣木泰治 裁判官鈴木麻奈美

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